[第一実施形態]
<画像形成装置>
まず、本実施形態の画像形成装置の構成について、図1及び図2を用いて説明する。本実施形態では、記録材Sにトナー像を形成する画像形成装置100に、画像形成装置100によりトナー像が定着された記録材Sに対し表面加工を行うための表面加工装置が接続されている。
表面加工装置としては、例えばPP(ポリプロピレン)貼り、プレスコート、ニスコート、箔押し等の、記録材上の少なくとも一部あるいは全部をコートする表面加工を行うものが挙げられる。ただし、以下では説明を理解しやすくするために、表面加工装置としてトナー像が定着された記録材Sに対しニスを塗布するニスコータ200を用いた場合を例に説明する。なお、PP貼りは記録材上にポリプロピレン(PP)を貼りつけるものであり、プレスコートは水性の樹脂系のニスを記録材に塗って、その後、蒸気で暖められた大きなシリンダーで溶かしながら固めて鏡面仕上げを行うものである。箔押しは、例えばトナーのみに付着するホットスタンプ箔を記録材上に熱転写して加飾するものである。
図1に示す画像形成装置100は、電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する。画像形成装置100は、装置本体100Aに接続された原稿読取装置(不図示)又は装置本体100Aに対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器(不図示)からの画像信号に応じてトナー像を記録材Sに形成する。
なお、本実施形態の場合、画像形成部Pa~Pd、一次転写ローラ24a~24d、中間転写ベルト130、複数のローラ13~15、二次転写外ローラ11により、記録材Sにトナー像を形成する画像形成ユニット300(画像形成手段)が構成されている。また、記録材Sとしては、普通紙、厚紙、ラフ紙、凹凸紙、コート紙等の用紙、プラスチックフィルム、布など、といった様々な種類のシート材が挙げられる。
図1に示すように、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは装置本体100A内(装置本体内)において、中間転写ベルト130の移動方向に沿って並べて配置されている。中間転写ベルト130は複数のローラ(13、14、15)に張架されて、矢印R2方向に走行するように構成されている。そして、中間転写ベルト130は一次転写されたトナー像を担持して搬送する。中間転写ベルト130を張架する二次転写内ローラ14と中間転写ベルト130を挟んで対向する位置には、二次転写外ローラ11が配置され、中間転写ベルト130上のトナー像を記録材Sに転写する二次転写部T2を構成している。二次転写部T2の記録材搬送方向下流には、定着手段としての定着装置8が配置されている。
画像形成装置100の下部には、記録材Sが収容されたカセット10が配置されている。記録材Sは、搬送ローラ16によりカセット10からレジストレーションローラ12に向けて搬送される。その後、レジストレーションローラ12が後述するようにして中間転写ベルト130上に形成されたトナー像と同期して回転開始されることにより、記録材Sは二次転写部T2に搬送される。なお、ここではカセット10を1つだけ示したが、カセット10はサイズや厚さの異なる記録材Sを収容可能に複数が配置されていてもよく、その場合、複数のカセット10のいずれかから選択的に記録材Sが搬送される。また、カセット10に収容された記録材Sに限らず、手差し給送部(不図示)に載置された記録材Sが搬送されるようにしてもよい。
画像形成装置100が備える4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、現像色が異なることを除いて実質的に同一の構成を有する。したがって、ここでは代表してイエローの画像形成部Paについて説明し、その他の画像形成部Pb、Pc、Pdについては説明を省略する。
画像形成部Paには、感光体として円筒型の感光ドラム3aが配設されている。感光ドラム3aは、矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム3aの周囲には帯電装置2a、露光装置La、現像装置1a、一次転写ローラ24a、ドラムクリーニング装置4aが配置されている。
画像形成装置100により、例えばフルカラーの画像を形成するプロセスについて説明する。まず、画像形成動作が開始されると、回転する感光ドラム3aの表面が帯電装置2aによって一様に帯電される。帯電装置2aは、例えばコロナ放電に伴う荷電粒子を照射して感光ドラム3aを一様な負極性の暗部電位に帯電させるコロナ帯電器などである。次いで、感光ドラム3aは、露光装置Laから発せられる画像信号に対応したレーザ光により走査露光される。これにより、感光ドラム3aの表面に画像信号に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム3aに形成された静電潜像は、現像装置1a内に収容されているトナーとキャリアを含む現像剤によって可視像であるトナー像に現像される。本実施形態の場合、現像装置1a~1dはそれぞれ、非磁性のトナーと磁性を有するキャリアとを含む二成分現像剤を使用している。
感光ドラム3aに形成されたトナー像は、中間転写ベルト130を挟んで配置される一次転写ローラ24aとの間で構成される一次転写部T1にて、中間転写ベルト130に一次転写される。この際、一次転写ローラ24aには一次転写バイアスが印加される。一次転写後に感光ドラム3aの表面に残ったトナーは、ドラムクリーニング装置4aによって除去される。
このような動作をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部Pa~Pdで順次行い、中間転写ベルト130上で4色のトナー像を重ね合わせる。その後、トナー像の形成タイミングにあわせてカセット10に収容された記録材Sが二次転写部T2に搬送される。そして、二次転写外ローラ11に二次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト130上に形成されたフルカラーのトナー像が記録材Sに一括して二次転写される。二次転写後に中間転写ベルト130上に残ったトナーは、ベルトクリーニング装置22によって除去される。
<定着装置>
次いで、トナー像が転写された記録材Sは定着装置8に搬送される。ここで、定着装置8について図2を用いて詳しく説明する。図2に示すように、本実施形態の定着装置8は、記録材Sの未定着トナー像が形成された面に接触して回転可能な第一回転体としての定着ローラ40と、定着ローラ40に圧接して定着ニップ部T3を形成する第二回転体としての加圧ローラ41とを有する。なお、ここでは、定着ローラ40と加圧ローラ41とを例に挙げたがこれに限らず、定着ローラ40と加圧ローラ41の一方もしくは両方が、回転可能な無端状のベルト(エンドレスベルト)であってもよい。
定着装置8では、定着ニップ部T3においてトナー像を担持した記録材Sを挟持搬送することで記録材Sを加熱及び加圧し、トナーを溶融して記録材Sに定着させる。そのために、定着ローラ40はその内部に設けられたヒータ40aにより加熱される。加熱手段としてのヒータ40aは、例えばハロゲンヒータである。そして、定着ローラ40の表面温度を検出するためにサーミスタ42aが設けられている。なお、ここではヒータ40aとして定着ローラ40内に設けられているハロゲンヒータを例に挙げたが、これに限らず、例えば外部から定着ローラ40を加熱するハロゲンヒータであってもよい。あるいは、ヒータ40aはハロゲンヒータに限らず、例えば誘導加熱によって加熱するヒータなどであってもよい。
定着ローラ40は、基層としての金属製の中空の芯軸40b上に、ゴム層からなる弾性層40cを設け、更にその上に表層として離型層40dを被覆して形成される。芯軸40bは、例えば外径「68mm」の円筒形状に形成されたアルミニウム製の部材から構成され、内部にヒータ40aが配置可能である。弾性層40cは、例えばJIS-A硬度20度のシリコーンゴムを厚さ「1.0mm」で成形したものから構成されている。離型層40dは、例えば厚さ「50μm」に成形されたフッ素樹脂などの、離型性に優れかつ温度上昇によって軟化する材料から構成されている。なお、離型層40dは、フッ素樹脂として、例えばPFA樹脂(4フッ化エチレン樹脂、パーフロロアルコキシエチレン樹脂の共重合体)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)などが用いられる。本実施形態では、離型層40dとしてPFA樹脂チューブを用いた。離型層40dの厚さは、例えば「30~100μm」に構成されていることが好ましい。ここで、離型層40dは、チューブ形状に限らず、例えば弾性層40cをコーティングすることによって弾性層40cを被覆してもよい。
定着ローラ40は、芯軸40bの長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた支持部材(不図示)によって回転自在に支持されており、駆動手段としてのモータ92によって図2中矢印方向に所望の回転速度で回転駆動される。本実施形態の場合、後述するように、定着ローラ40はニスコータ200によるニスコートの有無に応じて異なる回転速度で回転されるようにしている。なお、本実施形態ではモータ92によって定着ローラ40を回転駆動する例を示したが、これに限らず、定着ローラ40と加圧ローラ41の少なくともいずれかを回転駆動すればよい。
加圧ローラ41は、基層としての金属製の中空の芯軸41b上に、ゴム層からなる弾性層41cを設け、更にその上に表層として離型層41dを被覆して形成される。芯軸41bは、例えば外径「48mm」の円筒形状に形成されたアルミニウム製の部材から構成される。弾性層41cは、例えばJIS-A硬度20度のシリコーンゴムを厚さ「2.0mm」で成形したものから構成される。離型層41dは、例えば厚さ「50μm」に成形されたフッ素樹脂などの、離型性に優れた材料から構成されており、弾性層41cを被覆している。
また、本実施形態の場合、記録材Pの裏側(記録材Sの未定着トナー像が形成される面と反対側の面)からも記録材Sを加熱するために、加圧ローラ41の内部にハロゲンヒータなどのヒータ41aが配置されている。そして、加圧ローラ41の表面には、加圧ローラ41の表面温度を検出するために、サーミスタ42bが設けられている。なお、本実施形態では、定着ローラ40と加圧ローラ41の両方を加熱する例を示したが、これに限らず、定着ローラ40と加圧ローラ41の少なくともいずれかを加熱すればよい。
加圧ローラ41は、芯軸41bの長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた不図示の支持部材によって回転自在に支持されている。また、加圧ローラ41の長手方向両端部の支持部材が付勢手段としての加圧バネ96によってそれぞれ付勢されることによって、加圧ローラ41は定着ローラ40に圧接して記録材Sの搬送方向に所定幅の定着ニップ部T3を形成する。また、加圧ローラ41は、定着ローラ40に当接されることで定着ローラ40に従動して回転する。なお、加圧バネ96は加圧ローラ41の定着ローラ40に対する加圧力を調整可能であり、本実施形態において、加圧ローラ41は例えば加圧力「400N」で定着ローラ40を加圧している。
図1に戻り、定着装置8は、定着ローラ40と加圧ローラ41とによって形成された定着ニップ部T3においてトナー像が形成された記録材Sを挟持搬送することにより、搬送される記録材Sを加熱、加圧してトナー像を記録材Sに定着させる。即ち、加熱、加圧によって記録材Sに形成されたトナー像のトナーが溶融、混合され、フルカラーの画像として記録材Sに定着される。このようにして、一連の画像形成プロセスは終了する。
本実施形態の場合、画像形成装置100は両面印刷可能である。片面印刷の場合、定着装置8を通過した記録材Sは、排出搬送路31を通り装置本体外に排出される。他方、両面印刷の場合、定着装置8を通過した記録材Sは搬送路32へ搬送されて反転路33へ送られる。反転路33に送られた記録材Sは、両面搬送路34に向けてスイッチバック搬送されることにより、記録材Sの表面と裏面とが入れ替えられる。表面と裏面とが入れ替えられた記録材Sは、両面搬送路34をレジストレーションローラ12に向けて搬送され、片面へのトナー像形成時と同様の過程を経て、他方の面にもトナー像が形成される。そして、両面にトナー像が定着された記録材Sは、排出搬送路31を通り装置本体外に排出される。
<現像剤>
ここで、感光ドラム3aに形成された静電潜像をトナー像に現像するために用いる現像剤について説明する。本実施形態では、トナーとキャリアを含む二成分現像剤が用いられる。トナーは低融点であり、結着樹脂、着色剤、および離型剤(ワックス)を含有している。トナーに含まれる結着樹脂は、公知のものを用いることができる。例えば、スチレン-(メタ)アクリル共重合体に代表されるビニル系共重合体、ポリエステル樹脂、ビニル系共重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合されたハイブリッド樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体等の樹脂を使用できる。
トナーは均一で高い光沢を得るために、トナーの重量平均分子量(Mw)が100万以上であり、トナーの重量平均分子量(Mw)とトナーの数平均分子量(Mn)との比「Mw/Mn」が「100以上」であることが好ましい。トナーの重量平均分子量(Mw)が100万未満では高温側のオフセット性が低下する傾向にあり、定着温度によって光沢度の変化が大きくなる可能性がある。また、上記の比「Mw/Mn」が「100未満」である場合は、定着温度領域が狭くなる可能性がある。例えば、トナーの重量平均分子量(Mw)が「70000以上」、トナーの数平均分子量(Mn)が「3500乃至4500」の結着樹脂を使用する。そして、芳香族カルボン酸誘導体もしくは芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物を用い、トナー製造工程の一部である混練時に、結着樹脂中に存在するカルボキシル基と上記した芳香族カルボン酸の金属化合物の中心金属との金属架橋反応を適度に起こさせる。こうすることで、トナーの分子量分布を上記のように調整できるが、これに限定されるものではない。
トナーに含まれる着色剤は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに関して、それぞれ公知のものを用いることができる。なお、着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。上記着色剤の使用量は、結着樹脂「100質量部」に対して「0.1質量部以上30質量部以下」とするのが好ましい。より好ましくは「0.5質量部以上20質量部以下」とし、最も好ましくは「3質量部以上15質量部以下」とするのがよい。
トナーに含まれる離型剤としては、例えば次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量オレフィン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、ベヘン酸ベヘニルやステアリン酸ベヘニルなどの高級脂肪酸と高級アルコールとの合成反応物であるエステルワックス、および脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらには、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。その中でも好ましいのは脂肪族炭化水素系ワックスであり、特に好ましいのはパラフィンワックスである。
上記の離型剤は、結着樹脂「100質量部」に対して、「2質量部乃至20質量部」、好ましくは「3質量部乃至15質量部」とするのがよい。離型剤は「2質量部」よりも少ないと離型剤としての効果が低下する傾向にあり、離型剤は「20質量部」を超えると感光ドラムなどにトナーが付着しやすくなる傾向にある。
上記の現像剤には、必要に応じて荷電制御剤が含まれていてもよい。また、流動性向上剤がトナーの表面に添加されていてもよい。そして、トナーは、重量平均粒径が「4μm乃至10μm」であると好ましい。トナーの重量平均粒径を小粒径化することにより、トナー像の輪郭部分、特に文字やラインパターンの現像での再現性が良好なものとなる。重量平均粒径が「4μm未満」であると、例えば感光ドラムの表面への付着力が高くなり、転写不良に基づく画像の不均一ムラが生じる原因となりやすい。また、トナーの単位質量あたりの帯電量が高くなるので、例えば低温低湿環境下において画像濃度を低下させる原因となりやすい。さらに、流動性の低下や付着性の増加により、例えばキャリアとの摩擦帯電がスムーズに行われにくく、充分に帯電し得ないトナーが増大し、非画像部のカブリが目立つ様になる。他方、重量平均粒径が「10μm」を超えている場合、高画質化に寄与し得る微粒子が少ないため、トナーの流動性に優れるというメリットがある。しかしながら、感光ドラム上の微細な静電荷像上に付着しづらく、ハーフトーン部の再現性が低下し、さらに濃度の階調性も低下する虞がある。また、感光ドラム3aなどにトナーが付着しやすくなる。
なお、「4μm以下」の粒径を有するトナーの含有率が「3個数%乃至40個数%」であり、「10μm以上」の粒径を有するトナーの含有率が「10体積%以下」であると、現像性、転写性のバランスの取れたトナーが得られやすく、特に好ましい。また、トナーの製造方法としては、粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法など、公知の方法を用いてよい。
<ニスコータ>
図1に示すように、本実施形態の場合、装置本体100Aに表面加工装置としてのニスコータ200が接続されている。ニスコータ200は画像形成装置100の機能を拡張するために後付け可能な周辺機(オプションユニットなどと呼ばれる)の1つとして、画像形成装置100に接続自在に構成されている。ニスコータ200は、記録材Sの付加価値を高めるための光沢付与や表面保護を目的とした表面加工として、装置本体100Aから排出される記録材Sに対しニスを塗布して表面全体をコートする。なお、ニスコータ200は画像形成装置100に接続されていなくてもよく、また画像形成装置100とは別の場所に配置されていても構わない。その場合、画像形成装置100から排出されたトナー像定着後の記録材Sは、ユーザによる手渡しでの手動供給やロボットによる自動供給などにより、ニスコータ200に供給されればよい。
上記のニスコータ200について説明する。ニスコータ200は、ニスを貯蔵する不図示のタンクと、記録材Sを挟持搬送しつつタンクから供給されるニスを記録材S上に塗布する塗布ローラ201及び対向ローラ202と、記録材S上に塗布されたニスを硬化するための紫外線ランプ203とを有する。そして、ニスコータ200内は、記録材Sにニスが塗布されるニス塗布ルート205と、記録材Sにニスが塗布されないニスバイパスルート204とに分かれており、記録材Sの搬送経路をどちらか一方に切り替えることができるようになっている。即ち、フラッパ206を切り替えることで、ニスコートを施す場合にはニス塗布ルート205へと記録材Sを搬送し、ニスコートを施さない場合にはニスバイパスルート204へと記録材Sを搬送し得る。ここで使用するニスとしては所望の風合いに応じて、紫外線で硬化するUVニスを用いることができる。
塗布ローラ201は、不図示のタンクから供給されたニスを、記録材Sの搬送方向と直交する幅方向のおよそ全域に亘ってニスを塗布可能な大きさに形成されている。紫外線ランプ203は、塗布ローラ201にて記録材S上に塗布されたニスを、ニスに対応した波長のUV光を照射してニスを硬化させる。紫外線ランプ203は、塗布ローラ201と同様に、記録材Sの幅方向のおよそ全域に紫外線(UV光)を照射可能であり、ニス塗布時のみ点灯される。
なお、ニスを記録材Sへ塗布する手段としては塗布ローラ201及び対向ローラ202によるローラ方式を用いることに限らず、例えばインクジェット方式のラインヘッドを用いてもよい。ラインヘッドを用いる場合は、記録材S上の任意の位置にニスを塗布することが可能である。また、ニスとしてUVニスを用いたがこれに限らず、油性ニスや水性ニスなどを用いてもよい。ただし、油性ニスや水性ニスを用いる場合は、ニスを乾燥させるための乾燥手段として紫外線ランプ203ではなく、IR(赤外線)ランプを用いるのが望ましい。また、温風によってニスを乾燥させてもよいし、あるいはIRランプと温風とを併用してニスを乾燥させてもよい。
<制御部>
図1に示すように、画像形成装置100は制御部80を備えている。制御部80について、図1及び図2を参照しながら図3を用いて説明する。ただし、制御部80には図示した以外にも画像形成装置100を動作させるモータや電源等の各種機器が接続されているが、ここでは発明の本旨でないのでそれらの図示及び説明を省略する。
制御手段としての制御部80は、画像形成動作などの画像形成装置100の各種制御を行うものである。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)81、RAM(Random Access Memory)82、ROM(Read Only Memory)83などを有する。ROM83には、例えば画像形成ジョブや後述する「加熱制御処理」(図8参照)などの各種プログラムや各種データ等が記憶されている。CPU81は、ROM83に記憶されている各種プログラムを実行して、画像形成ユニット300や定着装置8、ニスコータ200などの動作を制御可能である。本実施形態の場合、後述するように、CPU81は「加熱制御処理」の実行により、定着装置8における記録材Sの搬送速度や、定着ローラ40及び加圧ローラ41の温度などを制御し得る。RAM82には、作業用データや入力データが記憶される。なお、RAM82は、各種プログラムの実行に伴う演算処理結果などを一時的に記憶することもできる。
CPU81にはバス84を介して、RAM82やROM83の他に、入出力インタフェース部(I/F部)85、ニスコータ制御部86、入力受付部87、温度検出部88、モータ制御部90などが接続されている。取得手段としての入出力インタフェース部(I/F部)85には、操作部95が接続される。操作部95は選択部93と表示部94とを有し、選択部93はユーザによる画像形成ジョブなどの各種プログラムの実行指示や各種データ入力などを受け付ける例えば操作パネルなどである。表示部94は、画像形成装置100やニスコータ200の動作状態を表示する表示画面や、実行可能な各種プログラムを提示するメニュー画面などの各種画面を適宜に表示可能な例えば液晶画面等である。
本実施形態では、ユーザが画像形成ジョブの実行を指示する際に、カラー、モノクロのいずれで印刷するかの情報や記録材Sの種類の情報などとともに、ニスコートを行う第一モードとニスコートを行わない第二モードのいずれを実行するかの情報を入力できる。なお、表示部94に操作部95のスイッチ等を模した仮想操作子を表示しておき、この仮想操作子を利用してユーザによる各種プログラムの実行操作や各種データの入力操作などを受け付けできるようにしてよい。つまり、操作部95は所謂タッチパネルであってよい。
CPU81は、有線あるいは無線の通信ネットワーク等を介して接続されているパーソナルコンピュータ等の外部機器91から、取得手段としての入力受付部87を介して画像信号や各種データ等を取得し得る。また、本実施形態では、外部機器91から画像形成ジョブの実行命令を取得した際に、ニスコートを行う第一モードとニスコートを行わない第二モードとのいずれを実行するかの情報を取得し得る。なお、図示を省略したが、画像形成装置100は原稿読取装置を備えており、CPU81は原稿読取装置により読み取られた原稿の画像信号を入力受付部87により取得可能であってもよい。取得した画像信号は、画像データとしてRAM82に記憶される。
温度検出部88は、サーミスタ42a、42bの検出結果に基づいて定着ローラ40、加圧ローラ41の温度を検出する。CPU81は、温度検出部88により検出された温度に基づいてヒータ制御部89を制御する。ヒータ制御部89は、定着ローラ40、加圧ローラ41の温度が目標の温度となるように、ヒータ40a、41aを制御する。本実施形態において、CPU81は、記録材Sにトナー像を定着可能な目標温度として、定着ローラ40の表面温度が例えば「140~190℃」の範囲で所望の温度となるように、ヒータ制御部89によりヒータ40aを制御し得る。定着ローラ40の目標温度は、記録材Sに対するトナーの定着性と、定着後のトナー像のグロスを両立させるために、記録材Sの坪量に応じて予め決められた温度に設定されている。他方、加圧ローラ41の表面温度が例えば「100℃」に維持されるように、CPU81はヒータ制御部89によりヒータ41aを制御し得る。図4に、定着ローラ40の目標温度(定着装置8の制御温度とも呼ぶ)の一例を示す。
本実施形態では、ニスコートを施す第一モードが行われる場合と、ニスコートを施さない第二モードが行われる場合とで、定着装置8の制御温度を変えている。図4から理解できるように、ニスコートを施さない場合(通常の制御温度T0)、記録材Sの坪量が大きい場合に制御温度を高くするようにしている。ここでは、坪量が「64~128g/m2」の場合に「160℃」、「129~209g/m2」の場合に「170℃」、「210~300g/m2」の場合に「180℃」、「301~350g/m2」の場合に「190℃」のように高くしている。これは、坪量が大きくなるにつれて、定着ローラ40から記録材Sに対し熱が伝導し難くなるからである。ニスコートを施す場合については後述する。
図3の説明に戻り、モータ制御部90は、モータ92の回転を制御する。CPU81はモータ制御部90を介して定着ローラ40の回転速度を制御することで、トナー像定着時の定着装置8における記録材Sの搬送速度を調整し得る。
ニスコータ制御部86は、画像形成装置100に接続されたニスコータ200を制御する。CPU81は、バス84を介した電気信号の送受信によってニスコータ200を制御する。そうであるから、画像形成装置100とニスコータ200との間でバス84を介した電気信号の送受信ができない場合、CPU81は画像形成装置100とニスコータ200とが接続されていないと判定することができる。
<グロス評価及びトナー像とニスの密着性の評価>
次に、坪量の異なる5種類のコート紙を用いて、定着装置8の制御温度を120℃から210℃までそれぞれ変更してフルカラー画像を出力した後に、ニスコートを行った場合の評価を、図5乃至図7に示す。図5は、ニスコート前のトナー像の60°グロスの評価結果を示す。図6は、ニスコート後のトナー像の60°グロスの評価結果を示す。図7は、トナー像とニスの密着性の評価結果を示す。なお、コート紙としては、王子製紙(株)製の「OKトップコートプラス」、坪量「84.9g/m2」と「127.9g/m2」のものを用いた。また、UPM社製の「UPM FINESSE GLOSS」、坪量「200g/m2」と「300g/m2」と「350g/m2」のコート紙を用いた。フルカラー画像としては、画像比率を0%から10%ごとに100%まで11段階に分けて、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの単色と、イエロー、マゼンタ、シアンを適宜に混合したレッド、ブルー、ブラック、グリーン(8色)の画像を出力した。
まず、コート紙におけるニスコート前のグロス評価について、図5を用いて説明する。上述の各コート紙に出力したフルカラー画像のニスコート前における各色の画像比率100%の部分の60°グロスを、日本電色(株)製のハンディ光沢計「PG-1M」にて測定した。ここで、画像形成していない各コート紙の60°グロスは「30乃至40」であったことから、本評価においては出力後の60°グロスが上記範囲内にあれば合格とした。図5に測定結果を示す。ここで、ニスコート前の60°グロスが上記範囲内に収まる場合を〇印、上記範囲よりも低い場合を▼印、上記範囲よりも高い場合を▲印、画像不良が発生した場合はその現象名をそれぞれ表記した。
図5に示すように、定着装置8(具体的には定着ローラ40)の温度が図4に示した通常の制御温度T0よりも高い場合には、光沢が高くなったり光沢ムラが生じたり、あるいは定着ローラ40へのトナー付着よる濃度低下(ホットオフセット)が生じ得る。他方、定着装置8の温度が図4に示した通常の制御温度T0よりも低い場合には、光沢が低くなるなどの定着不良が生じ得る。
次に、ニスコート後のグロス評価について、図6を用いて説明する。上述の各コート紙に出力したフルカラー画像のニスコート後における各色の画像比率100%の部分の60°グロスを、上述と同様に測定した。ここで、使用したニスを、トナー像が形成されていない上述のコート紙にコートして得られたサンプルの60°グロスを測定したところ、「45乃至60」であったことから、本評価においてはニスコート後の60°グロスが上記範囲内にあれば合格とした。図6に測定結果を示す。ここで、ニスコート後の60°グロスが上記範囲内に収まる場合を〇印、上記範囲よりも高い場合を▲印、画像不良が発生した場合はその現象名をそれぞれ表記した。図6に示すように、ニスコート後の60°グロスは定着装置8の制御温度によらず、ほぼ一定であることがわかる。
さらに、ニスとトナー像の密着性評価について、図7を用いて説明する。上述の各コート紙に出力したフルカラー画像のニスコート後における各色すべてのトナー像部分に対して、ニスとトナー像との密着性を評価した。ニスとトナー像との密着性の評価は、「JIS K5600-5-4」にて標準化されている、引っかき硬度(鉛筆法)にて行った。ここで、使用したニスを、トナー像が形成されていないガラス板にコートして硬化させて得られた基準サンプルに対して、上記の引っかき硬度を測定したところ、「6H」の硬度を示したことから、本評価においては引っかき硬度「6H」以上を合格とした。その結果を図7に示す。ここで、各色すべてのトナー像の硬度が「6H」である場合を〇、高濃度部のトナー像の硬度が「4H乃至5H」、それ以外のトナー像の硬度が「6H」以上である場合を△、高濃度部のトナー像の硬度が「3H」以下である場合を×で、それぞれ表記した。図7に示すように、図4に示した定着装置8の制御温度T0では、高濃度部においてニスとトナーの密着性が一部不十分な場合が生じることがわかる。
<加熱制御処理>
以上の評価結果から、記録材Sに対して定着性およびグロス、ニスの密着性のすべてを満足するためには、ニスコートを施さない場合とニスコートを施す場合とで、定着装置8の制御温度を切り替える必要があることがわかる。具体的には、ニスコートを施す場合の定着装置8の制御温度Tnを、定着不良が発生しない範囲においてニスコートを施さない場合の定着装置8の制御温度T0より低く設定すればよい。以下、そのような制御を実現する第一実施形態の「加熱制御処理」について、図1乃至図3を参照しながら図8を用いて説明する。ここに示す「加熱制御処理」は、制御部80のCPU81によって、画像形成装置100の主電源オンに応じて開始され、主電源オフまで繰り返し実行される。
図8に示すように、CPU81は操作部95から画像形成ジョブの開始命令を受信する(S1)。CPU81は、操作部95から画像形成ジョブの開始命令を受信するまで処理を待機している。CPU81は画像形成ジョブの開始命令を受信すると、ユーザにより操作部95から入力されたニスコートを施すか否かの情報に基づき、後加工としてニスコータ200により記録材Sに対しニスコートを施すか否かを判定する(S2)。記録材Sに対しニスコートを施さない場合(S2のNO)、CPU81は定着装置8の制御温度を通常の制御温度T0に設定する(S5)。この際に、CPU81は記録材Sの坪量に応じて予め決められている制御温度を設定する(図4参照)。そして、CPU81は、記録材Sがニスバイパスルート204を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S6)。
他方、記録材Sに対しニスコートを施す場合(S2のYES)、CPU81は定着装置8の制御温度を通常の制御温度T0からニスコートを施す場合の制御温度Tnへと変更する(S3)。この際に、CPU81は記録材Sの坪量に応じて予め決められている制御温度を設定する(図4参照)。図4に示した例の場合、坪量が「64~128g/m2」の場合に「140℃」、「129~209g/m2」の場合に「155℃」、「210~300g/m2」の場合に「165℃」、「301~350g/m2」の場合に「170℃」に設定される。即ち、ニスコートを施す場合の制御温度Tnは、ニスコートを施す場合の通常の制御温度T0よりも低い温度に設定される。また、記録材Sの坪量が第一坪量である場合は第一温度に設定され、記録材Sの坪量が第一坪量よりも大きい第二坪量である場合は第一温度よりも高い第二温度に設定される。
このように、通常の制御温度T0及びニスコート時の制御温度Tnは記録材Pの坪量に応じて適宜設定されるが、制御温度Tnは記録材Pへの定着性を損なわない範囲内で通常の制御温度T0よりも低く設定される。そして、CPU81は、記録材Sがニス塗布ルート205を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S4)。そして、CPU81はニスコートの有無に応じて定着装置8の制御温度の設定と、ニスコータ200における記録材Sの搬送経路を変更したのち、画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
以上のように、本実施形態では、ニスコートを施す場合に、定着装置8の制御温度を、ニスコートを施さない場合の制御温度よりも下げることによって、未定着トナーへ付与する熱エネルギーを減少させる。即ち、ニスコートを施す場合に未定着トナーへ付与する熱エネルギーが、ニスコートを施さない場合に未定着トナーへ付与する熱エネルギーよりも減少される。これにより、トナー像の定着時にトナーに含まれる離型剤がトナー像の表面に析出し難くなり、ニスコート時に離型剤によってニスがはじかれ難くなるので、トナー像とニスの高い密着性を得ることができる。したがって、後加工としてトナー像定着後の記録材Sへのコートを適切に行い得る。なお、未定着トナーへ付与する熱エネルギーを減少させたとしても、ニスコートを行うことにより、高光沢なトナー像を得ることができる。
[第二実施形態]
ところで、記録材Sとしてコート層を持たない普通紙もしくは厚紙を用いた場合、塗布ローラ201にて記録材Sの表面にニス(UVニス)が塗布されると、記録材Sの内部にニスが浸透しやすい。その場合、紫外線ランプ203が照射するUV光が記録材Sの内部まで到達できないため、ニスを十分に硬化することができない場合がある。そこで、記録材Sとしてコート層を持たない普通紙もしくは厚紙などの非コート紙を用いる場合には、例えニスコートを施す第一モードが入力されたとしても、記録材Sに対してニスコートを行わないのが望ましい。そうする場合には、上記のようにトナー像定着後の記録材Sがニスバイパスルート204を通過するように制御することに限らず、例えば画像形成ジョブの実行を中止して、非コート紙に対するニスコートである旨をユーザに対して報知するようにしてもよい。
以下、それを実現可能な第二実施形態の「加熱制御処理」について、図1乃至図3を参照しながら図9を用いて説明する。ただし、第二実施形態において第一実施形態の「加熱制御処理」(図8参照)と同様の処理については同じ符号を付し、それらの処理については簡単に説明する。
図9に示すように、CPU81は操作部95から画像形成ジョブの開始命令を受信する(S1)。CPU81は画像形成ジョブの開始命令を受信すると、ユーザにより操作部95から入力されたニスコートを施すか否かの情報に基づき、後加工としてニスコータ200により記録材Sに対しニスコートを施すか否かを判定する(S2)。記録材Sに対しニスコートを施さない場合(S2のNO)、CPU81は定着装置8の制御温度を通常の制御温度T0に設定する(S5)。この際に、CPU81は記録材Sの坪量に応じて予め決められている制御温度を設定する(図4参照)。そして、CPU81は、記録材Sがニスバイパスルート204を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S6)。その後、CPU81は画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
他方、記録材Sに対しニスコートを施す場合(S2のYES)、CPU81はユーザにより操作部95から入力された記録材Sの種類に基づき、記録材Sが「非コート紙」であるか否かを判定する(S11)。記録材Sが非コート紙である場合(S11のYES)、CPU81は画像形成ジョブを実行させずに中止する(S12)。画像形成ジョブを中止した場合には、ユーザに対し画像形成ジョブの実行を中止した旨、またジョブ中止理由として非コート紙に対するニスコートである旨を、表示部94に表示するなどしてユーザに対して報知するのが好ましい。
記録材Sが非コート紙でない場合つまりコート紙である場合(S11のNO)、CPU81は定着装置8の制御温度を通常の制御温度T0からニスコートを施す場合の制御温度Tnへと変更する(S3)。この際に、CPU81は記録材Sの坪量に応じて、ニスコートを施す場合の制御温度Tnとして、ニスコートを施す場合の通常の制御温度T0よりも低い温度に設定する(図4参照)。このように、ニスコート時の制御温度Tnは、記録材Pへの定着性を損なわない範囲内で通常の制御温度T0よりも低く設定される。そして、CPU81は、記録材Sがニス塗布ルート205を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S4)。こうして、CPU81はニスコートの有無に応じて定着装置8の制御温度の設定と、ニスコータ200における記録材Sの搬送経路を変更したのち、画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
以上のように、第二実施形態では、ニスコータ200にて塗布するニスが浸透し難いコート紙(もしくは樹脂メディア)にニスコートを施し、ニスが浸透しやすい非コート紙にはニスコートを施さないようにした。そして、コート紙にニスコートを施す場合は、定着装置8の制御温度を、ニスコートを施さない場合の制御温度よりも下げて、未定着トナーへ付与する熱エネルギーを減少させている。したがって、第二実施形態においても、ニスコート時に離型剤によってニスがはじかれ難くなるので、トナー像とニスの高い密着性を得ることができ、もって後加工としてトナー像定着後の記録材Sへのコートを適切に行い得る、という効果が得られる。
[第三実施形態]
電子写真方式の画像形成装置では、多様な種類の記録材に対応するために、定着装置8における記録材Sの搬送速度(プロセススピードと呼ぶ)を複数の中から選択できる場合がある。一例として、通常よりもプロセススピードを遅くして記録材Sへの加熱時間を長くすることによって、記録材S上に形成されたトナー像により多くの熱エネルギーを与えて高光沢なトナー像を得る、所謂「高光沢モード」がある。しかし、高光沢モードにて高光沢なトナー像が定着された記録材Sに対しニスコートを施す場合に、従来ではトナーから析出した離型剤によりニスがはじかれてしまい、トナー像とニスとの密着性が損なわれることがあった。そこで、高光沢モードにて高光沢なトナー像が定着された記録材Sに対し、適切なニスコートを施すことが望まれていた。
以下、それを実現可能な第三実施形態の「加熱制御処理」について、図1乃至図3を参照しながら図10を用いて説明する。ただし、第三実施形態において第一実施形態の「加熱制御処理」(図8参照)と同様の処理については同じ符号を付し、それらの処理については簡単に説明する。
図10に示すように、CPU81は操作部95から画像形成ジョブの開始命令を受信する(S1)。CPU81は画像形成ジョブの開始命令を受信すると、ユーザにより操作部95から高光沢モードにてトナー像を定着させることが選択されているか否かを判定する(S21)。高光沢モードが選択されていない場合(S21のNO)、CPU81は上述した第一実施形態の「加熱制御処理」のステップS2~S7の処理を実行する(S24)。
他方、高光沢モードが選択されている場合(S21のYES)、CPU81は後加工としてニスコータ200により記録材Sに対しニスコートを施すか否かを判定する(S2)。記録材Sに対しニスコートを施さない場合(S2のNO)、CPU81は定着装置8のプロセススピードを通常の「350mm/sec」でなく高光沢モードの「200mm/sec」に設定する(S23)。そして、CPU81は、記録材Sがニスバイパスルート204を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S6)。その後、CPU81は画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
記録材Sに対しニスコートを施す場合(S2のYES)、CPU81は定着装置8のプロセススピードを通常の「350mm/sec」に設定する(S22)。言い換えるならば、記録材Sに対しニスコートを施す場合は、ニスコートを施さない場合よりもモータ92の回転速度を速くする。そして、CPU81は、記録材Sがニス塗布ルート205を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S4)。その後、CPU81は画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
以上のように、第三実施形態によれば、高光沢モードが選択されていても、記録材Sに対しニスコートを施す場合は、定着装置8のプロセススピードを高光沢モードの「200mm/sec」に遅くすることなく、通常の「350mm/sec」に維持する。本実施形態の場合、定着装置8が記録材Sを加熱する加熱時間が短くなり、トナーへ付与する熱エネルギーが減少される。これにより、トナーに含まれる離型剤によってニスがはじかれることがないので、トナー像とニスの高い密着性を得ることができ、もって後加工としてトナー像定着後の記録材Sへのコートを適切に行い得る、という効果が得られる。
なお、上述の第三実施形態では、記録材Sへの加熱時間を短くするために、定着装置8のプロセススピードを変更したが、これに限らない。例えば、定着装置8の定着ローラ40と加圧ローラ41により形成される定着ニップ部T3の周方向の接触範囲の大きさ(図2参照)を変更するようにしてもよい。定着ニップ部T3の周方向の接触範囲の大きさを小さくすることで、定着装置8が記録材Sを加熱する加熱時間を短くでき、もって未定着トナーへ付与する熱エネルギーを減少し得る。定着ニップ部T3の周方向の接触範囲の大きさは、図2に示すように、加圧バネ96の加圧力を調整することにより変更され得る。また、上述のように、定着装置8のプロセススピードを変更する場合には、画像形成ユニット300のプロセススピード(例えば、感光ドラム3a~3dや中間転写ベルト130等の回転速度)も定着装置8のプロセススピードに合わせ変更するのが好ましい。
[第四実施形態]
また、上述した「高光沢モード」とは別に、通常よりも定着装置8のプロセススピードを遅くして記録材Sへの加熱時間を長くして、記録材S上に形成されたトナー像により多くの熱エネルギーを与えて定着性を確保する、所謂「定着性アップモード」がある。定着性アップモードは、例えば、坪量350g/m2を超えるような厚紙や、表面に凹凸があるエンボス紙などを記録材Sとして用いる場合に適用される。しかし、定着性アップモードにてトナー像が定着された記録材Sに対しニスコートを施す場合に、従来ではトナーから析出した離型剤によりニスがはじかれてしまい、トナー像とニスとの密着性が損なわれることがあった。
ここで、上述の第三実施形態のように、定着性アップモードにて記録材Sに対しニスコートを施す場合であっても、記録材Sの加熱時間を短くしてトナー像へ付与する熱エネルギーを減少させることが考えられる。しかし、上記した厚紙やエンボス紙の場合に加熱時間を短くすると、定着不良が生じ得ることから、採用が難しい。そこで、定着性アップモードにてトナー像を定着させた場合でも、記録材Sに適切なニスコートを施すことが望まれる。
以下、それを実現可能な第四実施形態の「加熱制御処理」について、図1乃至図3を参照しながら図11を用いて説明する。ただし、第四実施形態において第一実施形態の「加熱制御処理」(図8参照)と同様の処理については同じ符号を付し、それらの処理については簡単に説明する。
図11に示すように、CPU81は操作部95から画像形成ジョブの開始命令を受信する(S1)。CPU81は画像形成ジョブの開始命令を受信すると、ユーザにより操作部95から定着性アップモードにてトナー像を定着させることが選択されているか否かを判定する(S31)。定着性アップモードが選択されていない場合(S31のNO)、CPU81は上述した第一実施形態の「加熱制御処理」のステップS2~S7の処理を実行する(S24)。
他方、定着性アップモードが選択されている場合(S31のYES)、CPU81は後加工としてニスコータ200により記録材Sに対しニスコートを施すか否かを判定する(S2)。記録材Sに対しニスコートを施さない場合(S2のNO)、CPU81は定着装置8のプロセススピードを通常の「350mm/sec」から定着性アップモードの「250mm/sec」に設定する(S33)。また、CPU81は、定着装置8の制御温度を通常の制御温度T0(例えば190℃)に設定する(S5)。そして、CPU81は、記録材Sがニスバイパスルート204を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S6)。その後、CPU81は画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
記録材Sに対しニスコートを施す場合(S2のYES)、CPU81は定着装置8のプロセススピードを通常の「350mm/sec」からニスコートを施す場合の「175mm/sec」に設定する(S32)。また、CPU81は定着装置8の制御温度を、通常の制御温度T0からニスコートを施す場合の制御温度Tn(例えば160℃)へと変更する(S3)。そして、CPU81は、記録材Sがニス塗布ルート205を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S4)。その後、CPU81は画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
以上のように、第四実施形態では、定着性アップモードにてトナー像が定着された記録材Pにニスコートを施す場合に、定着装置8のプロセススピードを定着性アップモードよりも遅くし、また定着装置8の制御温度を定着性アップモードよりも低くする。こうして、未定着トナーへ付与する熱エネルギーを減少させている。したがって、定着性アップモードにてトナー像を定着させた場合にも、ニスコート時に離型剤によってニスがはじかれ難くなるので、トナー像とニスの高い密着性を得ることができ、もって後加工としてトナー像定着後の記録材Sへのコートを適切に行い得る。
[第五実施形態]
次に、第五実施形態について、図12乃至図14を用いて説明する。図12は、定着装置を2個備えた画像形成装置を示す概略図である。図12に示す画像形成装置1000は、上述した図1の画像形成装置100に比較して、第一の定着装置8よりも記録材Sの搬送方向下流側に別の第二の定着装置9が配置されている点が異なり、その他の構成及び作用は同様である。したがって、図12の画像形成装置1000において、図1の画像形成装置100と同一の構成には同一の符号を付して説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、異なる部分を中心に説明する。
図12に示す画像形成装置1000は、記録材Sが定着装置8の定着ニップ部T3(上流定着ニップ部)により熱と圧力が加えられたのち、さらに定着装置9の定着ニップ部T5(下流定着ニップ部)にて熱と圧が加えられる。画像形成装置1000では、記録材Sを定着装置8の通過後に定着装置9に向けて搬送させるか、定着装置8の通過後に定着装置9を回避して搬送させるかを、切替手段としての定着フラッパ48により切り替えることができる。なお、定着フラッパ48の切り替え制御は、制御部80により行われる。
下流定着部としての定着装置9は、上流定着部としての定着装置8よりも記録材Sの搬送方向下流側に配置されている。定着装置9は、定着装置8により定着された記録材S上のトナー像にさらに光沢を付与する目的で使用される。そうするため、記録材Sがコート紙(例えば光沢紙や樹脂メディアなど)の場合、定着装置8及び定着装置9の両方にて定着が行われるように、定着装置8を通過した記録材Sは定着ルート30a(第一経路)を搬送される。これに対し、定着装置8だけで十分な光沢が得られる場合もしくは光沢が必要ない場合、定着装置9にて定着が行われないように、定着装置8を通過した記録材Sは定着装置9を回避する定着バイバスルート30b(第二経路)を搬送される。例えば、記録材Sが非コート紙(普通紙および厚紙、封筒等を含む)の場合、定着バイバスルート30bを搬送される。
定着装置9は、上述した定着装置8の構成と同様である。即ち、定着装置9は、記録材Sのトナー像が定着された面に接触して回転可能な定着ローラ46(第三回転体)と、定着ローラ46に圧接して定着ニップ部T5を形成する加圧ローラ47(第四回転体)とを有する。定着ローラ46はヒータ46a(下流加熱手段)により加熱され、加圧ローラ47はヒータ47aによって加熱される。これに限らず、定着ローラ46と加圧ローラ47の少なくともいずれかを加熱すればよい。そして、定着ローラ46、加圧ローラ47それぞれの表面温度を検出するために、サーミスタ43a、43bが設けられている。
本実施形態の場合、温度検出部88(図3参照)は、サーミスタ43a、43bの検出結果に基づいて定着ローラ46、加圧ローラ47の温度を検出可能である。そして、CPU81は、温度検出部88により検出された温度に基づいてヒータ制御部89を制御する。また、ヒータ制御部89は、定着ローラ46及び加圧ローラ47の温度がそれぞれ目標温度となるように、定着ローラ46、加圧ローラ47に設けられたそれぞれのヒータ46a、47aを制御し得る。定着装置8及び定着装置9の制御温度は、記録材Sの坪量に応じて最適に設定される(後述の図13参照)。さらに、定着ローラ46はモータ92Aによって所望の回転速度で回転駆動される。CPU81はモータ制御部90(図3参照)を介して定着ローラ46の回転速度を制御することで、定着装置9における記録材Sの搬送速度を調整し得る。なお、本実施形態の場合、定着ローラ46がモータ92A(下流駆動手段)によって回転駆動されているが、これに限らず、定着ローラ46と加圧ローラ47の少なくともいずれかが回転駆動されていればよい。
図13に、定着ローラ40の目標温度(定着装置8の制御温度)と、定着ローラ46の目標温度(定着装置9の制御温度)の一例を示す。本実施形態の場合、普通紙などの非コート紙である場合には、定着装置8のみを用い、定着装置9を用いない。また、非コート紙にニスコートを施す場合とニスコートを施さない場合とで定着装置8の制御温度を変えず、記録材Sの坪量に応じてのみ定着装置8の制御温度を変えている。
他方、コート紙である場合、ニスコートを施す第一モードが行われる場合には定着装置8のみを用い、ニスコートを施さない第二モードが行われる場合には定着装置8と定着装置9の両方を用い、トナー像を記録材Sに定着させる。コート紙にニスコートを施す場合とコート紙にニスコートを施さない場合とに関わらず、記録材Sの坪量が大きい場合に制御温度を高くするようにしている。そして、コート紙にニスコートを施す場合、定着装置8の制御温度はコート紙にニスコートを施さない場合よりも低い温度に設定されている。
第五実施形態の「加熱制御処理」について、図3及び図12を参照しながら図14を用いて説明する。ただし、第五実施形態において第一実施形態の「加熱制御処理」(図8参照)と同様の処理については同じ符号を付し、それらの処理については簡単に説明する。
図14に示すように、CPU81は操作部95から画像形成ジョブの開始命令を受信する(S1)。CPU81は画像形成ジョブの開始命令を受信すると、ユーザにより操作部95から入力された記録材Sの種類に基づき、記録材Sが「非コート紙」であるか否かを判定する(S41)。記録材Sが非コート紙である場合(S41のYES)、CPU81は定着装置8の制御温度を通常の制御温度T0に設定する(S46)。この際に、CPU81は記録材Sの坪量に応じて予め決められている制御温度を設定する(図13参照)。そして、CPU81は、記録材S(非コート紙)が定着バイバスルート30bを通過するように定着フラッパ48を動作させる(S47)。また、CPU81は、記録材Sがニスバイパスルート204を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S6)。その後、CPU81は画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
記録材Sが非コート紙でない場合(S41のNO)、CPU81はユーザにより操作部95から入力されたニスコートを施すか否かの情報に基づき、後加工としてニスコータ200により記録材Sに対しニスコートを施すか否かを判定する(S2)。記録材Sに対しニスコートを施さない場合(S2のNO)、CPU81は定着装置8の制御温度と定着装置9の制御温度とをそれぞれ通常の制御温度T0に設定する(S44)。この際に、CPU81は記録材Sの坪量に応じて予め決められている制御温度を設定する(図13参照)。そして、CPU81は、記録材Sが定着バイバスルート30bを通過せずに定着装置9を通過する定着ルート30aを通るように定着フラッパ48を動作させる(S45)。また、CPU81は、記録材Sがニスバイパスルート204を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S6)。その後、CPU81は画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
他方、記録材S(コート紙や樹脂メディアなど)に対しニスコートを施す場合(S2のYES)、CPU81は定着装置8の制御温度を通常の制御温度T0からニスコートを施す場合の制御温度Tnへと変更する(S42)。この際に、CPU81は記録材Sの坪量に応じて、ニスコートを施す場合の制御温度Tnとして、ニスコートを施す場合の通常の制御温度T0よりも低い温度に設定する(図13参照)。このように、ニスコート時の制御温度Tnは、記録材Pへの定着性を損なわない範囲内で通常の制御温度T0よりも低く設定される。そして、CPU81は、記録材Sが定着バイバスルート30bを通過するように定着フラッパ48を動作させる(S43)。また、CPU81は、記録材Sがニス塗布ルート205を通過するように、ニスコータ制御部86によりフラッパ206を動作させる(S4)。その後、CPU81は画像形成装置100に画像形成ジョブを開始させる(S7)。
以上のように、第五実施形態ではニスコートを施す場合に、複数の定着装置8、9のうち定着装置8のみを用いてトナー像を定着させる。他方、ニスコートを施さない場合には、複数の定着装置8、9の両方を用いてトナー像を定着させる。こうすると、ニスコートを施す場合には、ニスコートを施さない場合よりも未定着トナーへ付与する熱エネルギーを減少できる。したがって、ニスコート時に離型剤によってニスがはじかれ難くなるので、トナー像とニスの高い密着性を得ることができ、もって後加工としてトナー像定着後の記録材Sへのコートを適切に行い得る。
[他の実施形態]
なお、上述した第五実施形態では、コート紙にニスコートを施す場合に定着ルート30aを搬送させ、コート紙にニスコートを施さない場合に定着バイバスルート30bを搬送させるようにしたが、これに限らない。コート紙にニスコートを施さない場合でも、定着ルート30aを搬送させてもよい。ただし、定着ルート30aを搬送させる場合には、ヒータ40a、41b(上流加熱手段、図2参照)及びヒータ46a、47a(下流加熱手段、図12参照)それぞれの温度を、コート紙にニスコートを施す場合よりも低くする。あるいは、コート紙にニスコートを施す場合にはヒータ40a、41bとヒータ46a、47aのいずれか一方を動作し、コート紙にニスコートを施さない場合にはヒータ40a、41bとヒータ46a、47aの両方を動作するようにしてもよい。また、コート紙にニスコートを施す場合には、モータ92(上流駆動手段、図2参照)とモータ92A(下流駆動手段、図12参照)それぞれの回転速度を、コート紙にニスコートを施さない場合よりも速くするようにしてもよい。