JP7359842B2 - 銀付調皮革様シート - Google Patents

Description

本発明は、耐スクラッチ性に優れた銀付調皮革様シートに関する。

鞄や衣料や靴等の表皮材として、天然皮革に似せた銀面調の外観を有する銀付調皮革様シートが知られている。このような銀付調皮革様シートの表面を尖ったもので引っ掻いたとき、スクラッチ（引掻き傷）が発生する。このようなスクラッチは、銀付調皮革様シートの外観を損なう。従来、銀付調皮革様シートのスクラッチを発生しにくくしたり、発生したスクラッチを目立ちにくくしたりする技術がいくつか提案されている。

例えば、下記特許文献１は、耐スクラッチ性を改良された皮革様成形品として、コラーゲンを合成樹脂素材に添加もしくは一部反応させた成形品上、または基材上にコラーゲンを分散させた合成樹脂層を設けた上に、最上層が積層されており、該最上層は、コラーゲンを添加もしくは一部反応させていない合成樹脂素材からなる皮革様成形品を開示する。

また、下記特許文献２は、表面の平滑感と艶感、色の鮮明感があり、耐傷性、耐擦過傷性および折れしわ防止性に優れ、さらに風合いの良好な銀付調皮革様シートを開示する。具体的には、繊維基材層、ポリウレタン無孔質層、バインダーポリウレタンと粒子径１～５０μｍのポリウレタン微粒子を含むポリウレタン表面層が順次積層された銀付調皮革様シートであって、ポリウレタン無孔質層と該ポリウレタン表面層の合計厚さが１５０μｍ以上であり、該ポリウレタン表面層は、該ポリウレタン微粒子を該バインダーポリウレタン１００質量部に対して１０～４０質量部含有し、該ポリウレタン微粒子がポリウレタン表面層の表面に露出していない銀付調皮革様シートを開示する。

また、下記特許文献３は、傷や圧し型が付いたときに加熱することにより傷を容易に修復できる皮革様シートとして、形状記憶性ポリウレタンエラストマーを含有する銀面層を有する皮革様シートを開示する。

また、下記特許文献４は、塗膜の傷に対する自己修復性と耐久性を両立する自己修復性に優れた、アクリル樹脂とポリイソシアネートと添加剤とを含む自己修復型形成性コーティング組成物を開示する。

特開平５－２７９９６７号公報 国際公開２００６／１３７３９４号 特開２０１６－２１１１２９号公報 特開２０１２－１０７１０１号公報

銀付調皮革様シートにおいて、スクラッチが残りやすいという問題があった。本発明は、スクラッチが残りにくい銀付調皮革様シートを提供することを目的とする。

本発明者らは、耐スクラッチ性に優れた銀付調皮革様シートを得るために、スクラッチが残りにくい銀付調皮革様シートの表面状態を見出し、本発明に想到するに至った。

すなわち、本発明の一局面は、繊維基材と、繊維基材に積層された厚さ１００～６００μｍの多孔質のポリウレタン中間層と、ポリウレタン中間層に積層された厚さ２～３０μｍのポリウレタン表皮膜とを備える銀付調皮革様シートであって、ポリウレタン表皮膜がシリコーン変性ポリウレタンを含み、ISO25178に基づく面粗さの、最大高さ（Ｓｚ），スキューネス（Ｓｓｋ），及びクルトシス（Ｓku）が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を有する銀付調皮革様シートである。このような銀付調皮革様シートは、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍのように高低差が大きく、－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２のように細かい谷が多く、さらに、３≦Ｓku≦４のように表面に鋭い山や谷が多い凹凸表面を有し、シリコーン変性ポリウレタンを含むポリウレタン表皮膜の表面を有する。このような表面によれば、スクラッチが付きにくく、微細な凹凸表面により、スクラッチが残りにくい銀付調皮革様シートになる。ポリウレタン中間層は、ポリウレタン多孔質層であることがクッション性に優れ、また、折り曲げたときにシワが残りにくくなる点から好ましい。

また、銀付調皮革様シートの凹凸表面は、最大山高さ（Ｓp）が２０μｍ≦Ｓｐ≦７０μｍを満たすこと、最大谷深さ（Ｓv）が２０μｍ≦Ｓv≦１００μｍを満たすこと、算術平均高さ（Ｓa）が２≦Ｓa≦１０を満たすこと、または二乗平均平方根高さ（Ｓq）が１≦Ｓq≦１０を満たすことが好ましい。

本発明によれば、スクラッチが残りにくい銀付調皮革様シートが得られる。

図１は、実施形態の銀付調人工皮革１０の厚さ方向の断面を模式的に説明する模式断面図である。 図２は、実施形態の他の例の銀付調人工皮革２０の厚さ方向の断面を模式的に説明する模式断面図である。 図３は、実施例の評価結果を説明するための銀付調皮革様シートの表面の写真である。

本実施形態の銀付調皮革様シートは、繊維基材と、繊維基材に積層された厚さ１００～６００μｍの多孔質のポリウレタン中間層と、ポリウレタン中間層に積層された厚さ２～３０μｍのポリウレタン表皮膜を備える銀付調皮革様シートであって、ポリウレタン表皮膜がシリコーン変性ポリウレタンを含み、ISO25178に基づく面粗さの、最大高さ（Ｓｚ），スキューネス（Ｓｓｋ），及びクルトシス（Ｓku）が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を有する。

図１は、本実施形態の銀付調皮革様シートの一例である銀付調人工皮革１０の厚さ方向の断面を模式的に説明する模式断面図である。銀付調人工皮革１０は、繊維基材１と、繊維基材１に積層されたポリウレタン中間層２と、ポリウレタン中間層２に被着されたポリウレタン表皮膜３とを備える。ポリウレタン表皮膜はシリコーン変性ポリウレタンを含む。そして、ポリウレタン表皮膜３の表面には、微細な凹凸表面３ａが形成されている。

そして、微細な凹凸表面は、ISO25178に基づく面粗さの、最大高さ（Ｓｚ），スキューネス（Ｓｓｋ），及びクルトシス（Ｓku） が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす。

ここで、ISO25178に基づく面粗さの最大高さ（Ｓｚ）は、平均面に対して最も高い点から最も低い点までの距離を表すパラメータである。本実施形態の銀付調皮革様シートの表面は６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍであることにより、平均面に対して山の最高点と谷の最低点との差が大きい表面が形成されている。Ｓz＜６０μｍの場合には、スクラッチが山や谷に隠れにくくなって目立ちやすくなる。また、Ｓz＞１５０μｍの場合には、表面に高く表出する山の部分にスクラッチが付きやすくなる。

最大高さ（Ｓｚ）は、表面の平均面からの高さの最大値である最大山高さ（Ｓp）と表面の平均面からの高さの最小値の絶対値である最大谷深さ（Ｓv）との差である。最大山高さ（Ｓp）としては、２０μｍ≦Ｓｐ≦７０μｍ，さらには２０μｍ≦Ｓｐ≦６０μｍであることが、スクラッチが山に隠れやすくなって目立ちにくくなる点から好ましい。また、最大谷深さ（Ｓv）としては、２０μｍ≦Ｓv≦１００μｍ，さらには２０μｍ≦Ｓv≦６０μｍであることが、谷にスクラッチ傷が入りにくくなる点から好ましい。

また、ISO25178に基づく面粗さのスキューネス（Ｓsｋ）は、高さ分布の対称性を表すパラメータである。Ｓsｋ＝０のとき、平均面に対する高さ分布が上下に対称であることを示す。Ｓsｋ＞０のとき、平均面に対して細かい山が多い表面であることを示す。Ｓsｋ＜０のとき、細かい谷が多い表面であることを示す。本実施形態の銀付調皮革様シートの最表層の表面は、－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２であることにより、細かい谷が多い表面が形成されている。－０．２＜Ｓsｋ場合には、平均面に対する高さ分布が上下に対称または細かい山が多い表面になり、表面に多く表出する山の部分にスクラッチが付きやすくなる。また、Ｓsｋ＜－０．４の場合には、細かい谷が多くなりすぎて、細かい山が少なくなり、表面に付いたスクラッチが目立ちやすくなる。

また、ISO25178に基づく面粗さのクルトシス（Ｓku）は、高さ分布の鋭さを表すパラメータである。Ｓku＝３のとき、平均面に対して高さ分布が正規分布であることを示す。Ｓku＞３のとき、平均面に対して鋭い山や谷が多いことを示す。Ｓku＜３のとき、表面が平坦であることを示す。本実施形態の銀付調皮革様シートの最表層の表面は、３≦Ｓku≦４であることにより、平均面に対して鋭い山や谷が多く分布している表面が形成されている。Ｓku＜３の場合には、高さ分布が小さく、平坦な表面になるために、表面に付いたスクラッチが目立ちやすくなる。また、Ｓku＞４の場合には、表面に鋭い山や谷が多すぎて鋭い山の部分にスクラッチがはいりやすくなる。

また、ISO25178に基づく面粗さの算術平均高さ（Ｓa）は、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表すパラメータである。本実施形態の銀付調皮革様シートの最表層の表面のＳaとしては、２≦Ｓa≦１０であることが好ましい。さらに、ISO25178に基づく面粗さの二乗平均平方根高さ（Ｓq）は、平均面からの距離の標準偏差に相当するパラメータである。本実施形態の銀付調皮革様シートの最表層の表面のＳqとしては、１≦Ｓq≦１０であることが高さのバラつきが適度に均質である点から好ましい。

図１を参照すれば、繊維基材１としては、不織布、織物、編物、またはそれらにポリウレタン等の高分子弾性体を含浸付与された基材等、従来知られた、人工皮革の製造に用いられている人工皮革基材や、合成皮革に用いられている合成皮革繊維基材が特に限定なく用いられる。繊維基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、３００～３０００μｍ、さらには５００～１５００μｍであることが好ましい。

また、繊維基材を形成する繊維の種類は特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ），変性ポリエチレンテレフタレート，ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＴ），ポリトリメチレンテレフタレート（ＰＴＴ），ポリトリエチレンテレフタレート，ポリヘキサメチレンテレフタレート，ポリプロピレンテレフタレート，ポリエチレンナフタレート，等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸，ポリエチレンサクシネート，ポリブチレンサクシネート，ポリブチレンサクシネートアジペート，ポリヒドロキシブチレート－ポリヒドロキシバリレート共重合体等の脂肪族ポリエステル系樹脂等のポリエステル繊維；ポリアミド６，ポリアミド６６，ポリアミド６１０，ポリアミド１０，ポリアミド１１，ポリアミド１２，ポリアミド６－１２等のポリアミド系樹脂；ポリプロピレン，ポリエチレン，ポリブテン，ポリメチルペンテン，塩素系ポリオレフィン，エチレン酢酸ビニル共重合体，スチレンエチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂；エチレン単位を２５～７０モル％含有する変性ポリビニルアルコール等から形成される変性ポリビニルアルコール系樹脂；及び、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの結晶性エラストマー等が挙げられる。これらの中では、ポリアミド系樹脂や芳香族ポリエステル系樹脂が各種特性のバランスに優れる点から好ましい。

繊維の繊度や形態は特に限定されない。例えば、繊度は１ｄｔｅｘ超のようなレギュラー繊維であっても、１ｄｔｅｘ未満の極細繊維であってもよい。また、繊維の形態は、中実繊維であっても、中空繊維やレンコン状繊維のような空隙を有する繊維であってもよい。

また、図１を参照すれば、銀付調人工皮革１０においては、ポリウレタン中間層２は、繊維基材１の表面に積層された多孔質のポリウレタン層である。

ポリウレタン多孔質層は、例えば、湿式凝固するポリウレタン溶液を繊維基材の表面に塗布した後、水に浸漬して多孔質のポリウレタンを凝固させることにより形成される。湿式凝固するポリウレタン溶液に含まれるポリウレタンの具体例としては、例えば、ポリエチレンアジペート，ポリブチレンアジペート，ポリプロピレンアジペート，ポリヘキサメチレンアジペート，ポリカプロラクトン，ポリメチルバレロラクトン等をポリオール成分とするポリエステルグリコール系ポリウレタン；ポリプロピレングリコール系ポリウレタン；ポリテトラメチレングリコール系ポリウレタン；ポリカーボネート系ポリウレタン；ポリテトラメチレングリコール－ポリカーボネート共重合体系ポリウレタン等が挙げられる。また、ポリウレタン溶液に含まれる溶媒としては、親水性溶媒である、例えばジメチルホルムアミド（ＤＭＦ）等が挙げられる。

ポリウレタン中間層の厚さは、１００～６００μｍ、さらには２００～４００μｍ程度であることが好ましい。

なお、ポリウレタン中間層は、形態安定性を付与するために、繊維基材の内部に浸透していてもよい。繊維基材の内部にポリウレタン中間層を浸透させる方法としては、繊維基材に予めポリウレタン溶液を含浸させておき、さらに、ポリウレタン溶液をコーティングした後、水に浸漬して凝固させる方法が挙げられる。

そして、本実施形態の銀付調皮革様シートは、ポリウレタン中間層に、直接または他のポリウレタン層を介して、積層された微細な凹凸表面を有するポリウレタン表皮膜を少なくとも備える。図１を参照すれば、銀付調人工皮革１０においては、微細な凹凸表面３ａを有するポリウレタン表皮膜３がポリウレタン中間層２に被着されている。

微細な凹凸表面を有するポリウレタン表皮膜３を形成する方法は、上述した面粗さのスキューネス（Ｓｓｋ）、クルトシス（Ｓku）及び最大高さ（Ｓｚ）の範囲の凹凸表面が形成される限り、特に限定されない。一例としては、次のような方法が挙げられる。

はじめに、繊維基材に積層されたポリウレタン中間層の表面にシリコーン変性ポリウレタンを含むポリウレタン表皮膜を積層して、平滑な銀面層を有する銀付調皮革様シート基材を形成する。

ポリウレタン表皮膜を形成するポリウレタンは、シリコーン変性ポリウレタンを含む。ポリウレタン表皮膜を形成するポリウレタンがシリコーン変性ポリウレタンを含むことにより、銀付調人工皮革の表面にスクラッチが発生しにくくなる。

シリコーン変性ポリウレタンは、ポリウレタンの主鎖や側鎖にシロキサン結合が導入されたポリウレタンである。シリコーン変性ポリウレタンは、公知のポリウレタンの製造方法を用いて、例えば、ポリオール、鎖伸長剤、活性水素基含有オルガノポリシロキサン、及びポリイソシアネートを反応させることによって製造される。

また、シリコーン変性ポリウレタンとしては、ポリオール成分の違いによって、シリコーン変性ポリカーボネート系ポリウレタン、シリコーン変性ポリエステル系ポリウレタン、シリコーン変性ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられるが、これらの中では、シリコーン変性ポリカーボネート系ポリウレタンが耐久性にとくに優れている点から好ましい。

ポリウレタン表皮膜には、シリコーン変性ポリウレタン以外のシリコーン未変性のポリウレタンを含んでもよい。シリコーン未変性のポリウレタンの具体例としては、シリコーン変性されていない、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。

ポリウレタン表皮膜を形成するポリウレタン中のシリコーン変性ポリウレタンの含有割合としては、ジメチルシロキサンを有する場合、例えば１０～５０質量％のジメチルシロキサンを含有することが好ましい。

ポリウレタン表皮膜には、シリコーン変性ポリウレタンを含むポリウレタンの他、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン以外の、合成ゴム，ポリエステルエラストマー，シリコーン弾性体等のポリマーや、耐光剤、分散剤などの添加剤を含有してもよい。また、ポリウレタン表皮膜は顔料で着色されていることが好ましい。ポリウレタン表皮膜は、非発泡性（非多孔性）であっても、発泡性（多孔性）であってもよいが、非発泡性であることがとくに好ましい。

図１を参照すれば、銀付調人工皮革１０においては、シリコーン変性ポリウレタンを含むポリウレタン表皮膜３をポリウレタン中間層２に被着させる方法としては、ポリウレタン中間層２の表面にポリウレタン表皮膜３を形成するためのポリウレタン組成物の溶液または分散液を、グラビアロールコータ－，コンマコータ－，スプレーコーターなどを用いて、目的とする厚さを形成するための必要量を塗布し、乾式法や湿式法で凝固または固化させる方法が挙げられる。このようにして、平滑な銀面層を有する銀付調皮革様シート基材が形成される。

ポリウレタン中間層層に被着させるポリウレタン表皮膜の厚さは、２～３０μｍであり、さらには、５～２０μｍであることが上述した微細な凹凸を有する表面を形成しやすい点から好ましい。

そして、上述したような表面形状を形成するための凹凸を周面に有するエンボスロールを用いて、平滑な銀面層を有する銀付調皮革様シート基材のポリウレタン表皮膜の表面に、微細な凹凸（シボ）を形成させる。

エンボスロールには、銀付調皮革様シート基材のポリウレタン表皮膜の表面に、ISO25178に基づく面粗さの、最大高さ（Ｓｚ），スキューネス（Ｓｓｋ），及びクルトシス（Ｓku）が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を形成させるための凹凸が周面に形成されている。

エンボスロールの周面の凹凸形状としては、例えば、エンボス処理面の全周に、平均深さが２０～１００μｍである凹部を１０～４０個／ｍｍ^２有する微細な凹凸柄であることが好ましい。

また、ポリウレタン表皮膜やポリウレタン中間層の厚さや組成に応じて調整されるが、エンボスロールの表面温度は１６０～１９０℃、さらには、１７０～１８０℃であることが、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を形成させやすい点から好ましい。

また、ポリウレタン表皮膜やポリウレタン中間層の厚さや組成に応じて調整されるが、エンボスロールの線圧は５～３０ｋｇ／ｃｍ、さらには、１０～２０ｋｇ／ｃｍであることが、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を形成させやすい点から好ましい。

さらに、ポリウレタン表皮膜やポリウレタン中間層の厚さや組成に応じて調整されるが、エンボスロールの直径と回転数に依存する、処理速度は０．５～５ｍ／分、さらには、１～３ｍ／分であることが、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を形成させやすい点から好ましい。

このようにして、本実施形態のISO25178に基づく面粗さの、最大高さ（Ｓｚ），スキューネス（Ｓｓｋ），及びクルトシス（Ｓku）が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を有する銀付調皮革様シートが得られる。

以上、図１を参照して、繊維基材１と、繊維基材１に積層されたポリウレタン中間層２と、ポリウレタン中間層２に被着されたポリウレタン表皮膜３とを備え、微細な凹凸表面３ａを有する銀付調人工皮革１０を例示して本実施形態の銀付調皮革様シートについて詳しく説明した。本発明に係る銀付調皮革様シートの層構成は上述したような層構成に限られず、ISO25178に基づく面粗さの、最大高さ（Ｓｚ），スキューネス（Ｓｓｋ），及びクルトシス（Ｓku） が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を有する銀付調皮革様シートであれば、特に限定されない。

例えば、上述した例においては、繊維基材１と、繊維基材１に積層されたポリウレタン中間層２と、ポリウレタン中間層２に接着層を介さずに被着されたポリウレタン表皮膜３であって、ポリウレタン表皮膜３の側からエンボスロールで型押して微細な凹凸表面３ａを形成した銀付調人工皮革１０を例示した。そのような形態の代わりに、表面に微細なシボ模様が形成された剥離紙上にポリウレタン表皮膜を形成することにより製造される、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を有する銀付調皮革様シートであってもよい。図２はこのようにして得られた銀付調人工皮革２０の厚さ方向の断面を模式的に説明する模式断面図である。

銀付調人工皮革２０は、繊維基材１と、繊維基材１に積層されたポリウレタン中間層２と、ポリウレタン中間層２に接着層４を介して接着されたポリウレタン表皮膜１３とを備える。そして、銀付調人工皮革２０のポリウレタン表皮膜１３の側の表面には、微細な凹凸表面１３ａが形成されている。

このような銀付調人工皮革２０は、例えば、次のようにして製造される。

銀付調人工皮革１０の製造工程と同様に、ポリウレタン中間層２が積層された繊維基材１を製造する。一方、表面に微細なシボ模様が形成された剥離紙上にポリウレタン表皮膜を形成する。具体的には、剥離紙上にポリウレタン溶液またはポリウレタン溶融樹脂を過剰量塗布し、例えば、ナイフコーター，バーコーター，ロールコーター等のコーターを用いて、それらのクリアランスの厚み分のポリウレタン溶液またはポリウレタン溶融樹脂を塗布する。そして、ポリウレタン溶液またはポリウレタン溶融樹脂を乾式法あるいは湿式法で凝固または固化させることにより、ポリウレタン表皮膜が形成される。ポリウレタン表皮膜は単層であっても、複数層からなるものであってもよい。

なお、ポリウレタン表皮膜が、ポリウレタン表皮中間層とポリウレタン表皮中間層に被着されたポリウレタン最表層（トップ層）とを含むような積層構造を有する場合、例えば、剥離紙上にポリウレタン最表層のフィルムを形成し、ポリウレタン最表層のフィルムにポリウレタン中間層を形成するためのポリウレタンフィルムを形成することにより、ポリウレタン最表層とポリウレタン表皮中間層との積層構造のポリウレタン表皮膜が形成される。

ポリウレタン表皮膜の厚さとしては、１０～１００μｍ、さらには、２０～５０μｍであることが好ましい。ポリウレタン表皮膜が薄すぎる場合には、表面の耐摩耗性が低下する傾向がある。

ポリウレタン表皮膜のフィルムにポリウレタン接着剤を塗布し、完全または不完全に溶媒を除去して乾燥させる。そして、このように剥離紙上に形成されたポリウレタン表皮膜のフィルムに積層されたポリウレタン接着剤をポリウレタン中間層の表面に貼り合せてプレスした後、ポリウレタン接着剤を硬化させることによりポリウレタン接着層を介してポリウレタン表皮膜を接着する。そして、ポリウレタン表皮膜の表面から剥離紙を剥離することにより、ポリウレタン表皮膜１３を有する銀付調人工皮革２０が得られる。

ポリウレタン接着層の厚さとしては、５～２００μｍ、さらには３０～７０μｍであることが好ましい。ポリウレタン接着層が厚すぎる場合には耐屈曲性が低下して接着強度が低下する傾向がある。

また、ポリウレタン表皮膜とポリウレタン接着層の合計厚さとしては、１０～３００μｍ、さらには３０～２００μｍ、とくには５０～１００μｍ程度であることが、機械的特性と風合いとのバランスを維持することができる点から好ましい。

以上説明した本実施形態の銀付調皮革様シートは、例えば、鞄や衣料や靴等の表皮材として、とくには、ランドセル（学生カバン）の表皮材として好ましく用いられる。

以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。

はじめに、本実施例の評価方法を以下にまとめて説明する。

（ISO25178に基づく面粗さ）
非接触式の表面粗さ・形状測定機である「ワンショット３Ｄ測定マクロスコープＶＲ－３２００」（株）キーエンス製）を用いてISO 25178（面粗さ測定）に準じて、銀付調皮革様シートのポリウレタン表皮膜側の表面の面粗さを測定した。具体的には、表面の５４ｍｍ×７２ｍｍの範囲を高輝度ＬＥＤから照射された構造化照明光により、４００万画素モノクロＣ－ＭＯＳカメラで１２倍の倍率で歪みの生じた縞投影画像撮影を行い、うねり除去５％の条件で歪みを補正した後に表面粗さを測定した。そして、ISO25178に基づいて、面粗さのスキューネス（Ｓｓｋ）、クルトシス（Ｓku）及び 最大高さ（Ｓｚ）を演算させた。

（耐スクラッチ性）
リニア摩耗試験機であるLinear Abraser5750（Tabor Industries社製）を用いて測定した。具体的には、銀付調皮革様シートのポリウレタン表皮膜の表面に対して、直径１．０ｍｍの半球状の先端を有するタングステンカーバイドチップにより、荷重 １ｋｇｆ、ストローク長 １ｉｎｃｈ、移動速度 １ｉｎｃｈ/秒の条件で１往復させた。そして、１時間後及び１か月後における、ポリウレタン表皮膜の表面に残った傷の状態を肉眼で観察し、以下の基準で判定した。なお、Ａ～Ｄと判定したときの画像を図３に示す。図３中、（ａ）はＡ、（ｂ）はＢ、（ｃ）はＣ、（ｄ）はＤである。
Ａ：スクラッチ及び圧し痕がほぼ判別できなかった。
Ｂ：キズは見えないが、圧し痕が残っている
Ｃ：少しキズが見える
Ｄ：はっきりキズが見える

［実施例１］
６－ナイロン４５質量部（海成分）とポリスチレン５５質量部（島成分）からなる海島型複合繊維を溶融紡糸により得た。これを３倍に延伸し、繊維油剤を付与し、機械捲縮をかけた後、乾燥した。得られた捲縮繊維を５１ｍｍにカットして３ｄｔｅｘのステープルとし、ウェッブを形成した後に、両面から交互に合わせて約５００パンチ／ｃｍ^２のニードルパンチングを行って不織布を得た。この不織布の目付は３５０ｇ／ｍ^２、見かけ比重（見掛け密度）は０．１７（ｇ/ｃｍ³）であった。この不織布をポリビニルアルコールの４％水溶液で処理し、厚さを約１．３ｍｍに圧縮固定し、表面をバフ掛けして平滑化した。そして、１３％濃度のポリエステル系ポリウレタンを主体とするポリウレタンのジメチルホルムアミド（以下、ＤＭＦと称す）溶液を含浸した。さらにその表面に同じポリウレタン溶液を固形分で１００ｇ／ｍ^２になる量を塗布した後、ＤＭＦ／水の混合液の中に浸してポリウレタンを多孔質状に湿式凝固させた。そして、熱トルエン中で島成分を溶出除去して複合繊維を中空繊維に変換することによりポリウレタン中間層であるポリウレタン多孔質層を積層された繊維基材を得た。マイクロスコープによる観察によれば、ポリウレタン多孔質層の厚みは３００μｍであった。

そして、ポリウレタン多孔質層の表面に、黒色顔料を含むシリコーン変性ポリカーボネート系ポリウレタン（大日精化工業（株）製 ＮＥＳ９０１５－２２：Ｓｉ変性ポリカーボネート系ＰＵ）のジメチルホルムアミド溶液を１５０ｍｅｓｈのグラビアロールを用いて、乾燥後の厚みが約８μｍになるように塗布し、着色された表皮膜を形成した。そして、平均深さが６０μｍである凹部を１８個／ｍｍ^２有する全面に微細な凹凸柄（パターンＡと称する）を有するエンボスロールを用いて、温度１７０℃、圧力１５ｋｇ／ｃｍ、処理速度１．５ｍ／分で型押しを行うことにより、凹凸表面を含むポリウレタン表皮膜を形成した。このようにして、銀付調皮革様シートである銀付調人工皮革を製造した。そして、上述した評価方法に沿って評価した。結果を表１に示す。

［実施例２］
実施例１において、温度１７０℃、圧力１５ｋｇ／ｃｍ、処理速度１．５ｍ／分の条件でエンボスロールを用いて型押しした代わりに、温度１７０℃、圧力１０ｋｇ／ｃｍ、処理速度２ｍ／分の条件でエンボスロールを用いて型押しした以外は実施例１と同様にして銀付調人工皮革を製造し、評価した。結果を表１に示す。

［実施例３］
実施例１において、シリコーン変性ポリカーボネート系ポリウレタンとして、大日精化工業（株）製 ＮＥＳ９０１５－２２を用いた代わりに、ＤＩＣ(株)製 ＮＹ－３２４を用いた以外は実施例１と同様にして銀付調人工皮革を製造し、評価した。結果を表１に示す。

［比較例１］
実施例１において、平均深さが６０μｍである凹部を１８個／ｍｍ^２有する全面に微細な凹凸柄（パターンＡ）を有するエンボスロールを用いて型押しした代わりに、平均深さが３０μｍである凹部を１８個／ｍｍ^２有する全面に微細な凹凸柄（パターンＢと称する）を有するエンボスロールを用いた以外は、実施例１と同様にして銀付調人工皮革を製造し、評価した。結果を表１に示す。

［比較例２］
実施例１において、平均深さが６０μｍである凹部を１８個／ｍｍ^２有する全面に微細な凹凸柄（パターンＡ）を有するエンボスロールを用いて型押しした代わりに、平均深さが２０μｍである凹部を２３個／ｍｍ^２有する全面に微細な凹凸柄（パターンＣと称する）を有するエンボスロールを用いた以外は、実施例１と同様にして銀付調人工皮革を製造し、評価した。結果を表１に示す。

［比較例３］
実施例１において、凹凸表面を含むポリウレタン表皮膜を形成するためのポリウレタンとして、シリコーン変性ポリカーボネート系ポリウレタンの代わりに、シリコーン未変性のポリカーボネート系ポリウレタン（大日精化工業（株） ＭＥ８２１０：ポリカーボネート系ＰＵ）を用いた以外は、実施例１と同様にして銀付調人工皮革を製造し、評価した。結果を表１に示す。

［比較例４］
シボ模様が形成された剥離紙（大日本印刷（株）製ＤＥ－１２５）の上に、シリコーン変性ポリカーボネート系ポリウレタン溶液（大日精化工業（株）製 ＮＥＳ９０１５－２２、樹脂分２５％）１００質量部、顔料ワニス（レザミンＤＵＴ４７９０黒（大日精化工業（株）製））２０質量部、ＤＭＦ３０質量部、および、メチルエチルケトン３０質量部を含む溶液を乾燥後の厚さが１５μｍになるように塗布し、乾燥することによりポリウレタン表皮膜を構成するトップ層を形成した。

そして、トップ層に、１液型ポリエーテル系ポリウレタン（大日精化工業（株）製レザミンＭＥ８１１６）１００質量部および顔料ワニス（レザミンＤＵＴ４７９０黒） ２０質量部を含むＤＭＦ溶液を乾燥後の厚さが２０μｍになるように塗布し、乾燥することにより、ポリウレタン表皮膜を構成するポリウレタン表皮中間層を形成した。得られたポリウレタン表皮膜の厚さは、トップ層と表皮中間層の合計で３５μｍであった。

そして、ポリウレタン表皮膜の中間層の表面に、ポリウレタン系接着剤溶液を１３０ｇ／ｍ²を塗布し、１２０℃で１５秒間乾燥させて溶剤を蒸発させて接着層を形成した。そして、実施例１で得られたものと同様のポリウレタン多孔質層を積層された繊維基材に接着層を貼りあわせて積層中間体を形成した。なお、ポリウレタン系接着剤溶液は、架橋型ポリウレタン系接着剤として、ＴＡ２０５ＦＴ（大日精化工業（株）製）１００質量部に架橋剤及び架橋促進剤を加えたものを接着剤成分として含有し、溶媒としてＤＭＦ５質量部及び酢酸エチル１０質量部を含有するものを用いた。

そして、得られた積層中間体を、ポリウレタン多孔質層と繊維基材の合計厚み１．５ｍｍの約６５％となる１．０ｍｍのクリアランスを設けたプレスロールでプレスすることにより圧着させながら接着層をポリウレタン多孔質層に浸透させた。そして、１３０℃で３分間乾燥した後、５０℃で３日間熟成処理した。そして、熟成処理後、剥離紙を剥離することにより銀付調人工皮革を得た。そして、上述した評価方法に沿って評価した。結果を表１に示す。

［比較例５］
比較例４において、トップ層を次のように製造する工程に変更した以外は比較例４と同様にして、銀付調人工皮革を製造し、評価した。結果を表１に示す。

シボ模様が形成された剥離紙（大日本印刷（株）製Ｒ－７０Ｎ）の上に、ポリエーテル系ポリウレタン溶液（大日精化工業（株）製ＭＥ８１１６、樹脂分３０％）１００質量部、顔料ワニス（レザミンＤＵＴ４７９０黒（大日精化工業（株）製））２０質量部、ＤＭＦ３０質量部、及び、メチルエチルケトン３０質量部を含む溶液を乾燥後の厚さが１５μｍになるように塗布し、乾燥することによりポリウレタン表皮膜を構成するトップ層を形成した。

［比較例６］
比較例２において、凹凸表面を含むポリウレタン表皮膜を形成するためのポリウレタンとして、シリコーン変性ポリカーボネート系ポリウレタンの代わりに、シリコーン変性していないポリエチレンポリプロピレンアジペートをソフトセグメントとするＮ％が４．０％であるポリエステル系ポリウレタンを用いた以外は、実施例１と同様にして銀付調人工皮革を製造し、評価した。結果を表１に示す。

［比較例７］
比較例６において、平均深さが２０μｍである凹部を２３個／ｍｍ^２有する全面に微細な凹凸柄（パターンＣ）を有するエンボスロールを用いた代わりに、平均深さが６０μｍである凹部を１８個／ｍｍ^２有する全面に微細な凹凸柄（パターンＡ）を有するエンボスロールを用いて型押しした以外は、比較例６と同様にして銀付調人工皮革を製造し、評価した。結果を表１に示す。

表１に示すように、ポリウレタン表皮膜がシリコーン変性ポリウレタンを含み、最大高さ（Ｓｚ），スキューネス（Ｓｓｋ），及びクルトシス（Ｓku）が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を有する実施例１～３の銀付調皮革様シートは、スクラッチ評価において、１時間後及び１か月後において、スクラッチ及び圧し痕がほぼ判別できなかった。一方、ポリウレタン表皮膜がシリコーン変性ポリウレタンを含むが、最大高さ（Ｓｚ），スキューネス（Ｓｓｋ），及びクルトシス（Ｓku）が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たさない凹凸表面を有する比較例１，２，４の銀付調皮革様シートは、１時間後及び１か月後において、圧し痕が残ったか、キズが見えた。また、ポリウレタン表皮膜がシリコーン変性ポリウレタンを含まない比較例３，５，６の銀付調皮革様シートは、スクラッチ評価において、１時間後及び１か月後において、はっきりキズが見えた。また、ポリウレタン表皮膜がシリコーン変性ポリウレタンを含まず、最大高さ（Ｓｚ），及びクルトシス（Ｓku）が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，及び３≦Ｓku≦４、を満たさない凹凸表面を有する比較例７の銀付調皮革様シートも、スクラッチ評価において、１時間後及び１か月後において、はっきりキズが見えた。

Claims (5)

1. 繊維基材と、繊維基材に積層された厚さ１００～６００μｍの多孔質のポリウレタン中間層と、前記ポリウレタン中間層に積層された厚さ２～３０μｍのポリウレタン表皮膜とを備える銀付調皮革様シートであって、
   前記ポリウレタン表皮膜がシリコーン変性ポリウレタンを含み、
   ISO25178に基づく面粗さの、最大高さ（Ｓｚ），スキューネス（Ｓｓｋ），及びクルトシス（Ｓku）が、６０μｍ≦Ｓz≦１５０μｍ，－０．４≦Ｓsｋ≦－０．２，及び３≦Ｓku≦４、を満たす凹凸表面を有する、銀付調皮革様シート。
2. 最大山高さ（Ｓp）が２０μｍ≦Ｓｐ≦７０μｍを満たす前記凹凸表面を有する請求項１に記載の銀付調皮革様シート。
3. 最大谷深さ（Ｓv）が２０μｍ≦Ｓv≦１００μｍを満たす前記凹凸表面を有する請求項１または２に記載の銀付調皮革様シート。
4. 算術平均高さ（Ｓa）が２≦Ｓa≦１０を満たす前記凹凸表面を有する請求項１または２に記載の銀付調皮革様シート。
5. 二乗平均平方根高さ（Ｓq）が１≦Ｓq≦１０を満たす前記凹凸表面を有する請求項１または２に記載の銀付調皮革様シート。

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