以下、本発明の液体噴射装置および液体噴射方法の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
1.第1実施形態
まず、第1実施形態に係る液体噴射装置について説明する。
図1は、第1実施形態に係る液体噴射装置を示す概念図である。図2は、図1に示す液体噴射装置のノズルユニットを示す断面図である。図3は、図2の部分拡大図である。図4は、図3のA部拡大図である。
図1に示す液体噴射装置1は、ノズルユニット2と、液体Lを貯留する液体容器3と、ノズルユニット2と液体容器3とをつなぐ液体供給管4と、送液ポンプ5と、制御部6と、を備えている。このような液体噴射装置1は、ノズルユニット2から液体Lを噴射させ、作業対象物Wに衝突させることにより、各種作業を行う。各種作業とは、例えば、洗浄、バリ取り、剥離、はつり、切除、切開、破砕等が挙げられる。
以下、液体噴射装置1の各部について詳述する。
1.1 ノズルユニット
ノズルユニット2は、図2に示すように、ノズル22と、液体搬送管24と、振動生成部26と、を備えている。このうち、ノズル22は、液体Lを作業対象物Wに向けて噴射させる。また、液体搬送管24は、ノズル22と振動生成部26とをつなぐ流路である。この液体搬送管24は、振動生成部26からノズル22まで液体Lを搬送する。さらに、振動生成部26は、液体容器3から液体供給管4を介して供給された液体Lに対し、矢印B1で示すような振動を付与する。このようにして液体Lに振動を付与することにより、ノズル22から噴射する液体Lの圧力が周期的に変動する。これにより、ノズル22から噴射される液体Lが液滴L2に変化するまでの距離、いわゆる液滴化距離DDを短縮することができる。
なお、本願の各図では、説明の便宜上、ノズル22と作業対象物Wとを結ぶ軸をX軸とし、振動生成部26との接続部近傍における液体供給管4の軸であって、X軸に直交する軸をZ軸とする。また、X軸およびZ軸の双方と直交する軸をY軸とする。また、X軸のうち、ノズル22から作業対象物Wへ向かう方向を「X軸プラス側」または「先端側」とし、その反対方向を「X軸マイナス側」または「基端側」とする。そして、ノズルユニット2のX軸プラス側の端部を「先端」といい、X軸マイナス側の端部を「基端」という。さらに、Z軸のうち、液体供給管4から液体搬送管24へ向かう方向を「Z軸プラス側」とし、その反対方向を「Z軸マイナス側」とする。
以下、ノズルユニット2の各部について詳述する。
ノズル22は、液体搬送管24の先端部に装着されている。ノズル22は、その内部に、液体Lが通過するノズル流路220を備えている。ノズル流路220は、その基端部の内径よりも先端部の内径が小さくなっている。液体搬送管24内をノズル22に向かって搬送されてきた液体Lは、ノズル流路220を介して細流状に成形され、噴射される。なお、ノズル22は、液体搬送管24とは別の部材であっても、一体であってもよい。
液体搬送管24は、ノズル22と振動生成部26とをつなぐ管体であり、その内部に、液体Lを搬送する液体流路240を備えている。前述したノズル流路220は、液体流路240を経て、液体供給管4に連通している。液体搬送管24は、直管であっても、一部または全部が湾曲した湾曲管であってもよい。
ノズル22および液体搬送管24は、液体Lを噴射する際に変形しない程度の剛性を有していればよい。ノズル22の構成材料としては、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられる。液体搬送管24の構成材料としては、例えば、金属材料、樹脂材料等が挙げられ、特に金属材料が好ましく用いられる。
ノズル流路220の内径は、作業内容や作業対象物Wの材質等に応じて適宜選択されるが、一例として、0.05mm以上1.0mm以下であるのが好ましく、0.10mm以上0.30mm以下であるのがより好ましい。
振動生成部26は、筐体261と、筐体261内に設けられている圧電素子262および補強板263と、ダイアフラム264と、を備えている。
筐体261は、箱状をなしており、第1ケース261a、第2ケース261b、および第3ケース261cの各部位を含んでいる。第1ケース261aおよび第2ケース261bは、それぞれ基端から先端にかけて貫通する貫通孔を備えた筒状をなしている。そして、第1ケース261aの基端側の開口と第2ケース261bの先端側の開口との間には、ダイアフラム264が挟まれている。ダイアフラム264は、例えば弾性または可撓性を有する膜状の部材である。
第3ケース261cは、板状をなしている。そして、第2ケース261bの基端側の開口には、第3ケース261cが固着されている。第2ケース261b、第3ケース261cおよびダイアフラム264で形成される空間が、収容室265である。収容室265には、圧電素子262および補強板263が収容されている。圧電素子262の基端は、第3ケース261cに接続され、圧電素子262の先端は、補強板263を介してダイアフラム264に接続されている。
また、第1ケース261aが有する貫通孔は、基端から先端にかけて貫通している。このような貫通孔は、内径が相対的に大きい基端側の領域と、内径が相対的に小さい先端側の領域と、を含んでいる。このうち、内径が小さい領域には、先端側の開口から液体搬送管24が挿入されている。また、内径が大きい領域には、基端側からダイアフラム264が被せられた状態になっている。そして、内径が大きい領域とダイアフラム264とで形成される空間が、液体室266である。
さらに、液体室266と液体搬送管24との間の空間が、出口流路267である。一方、液体室266には、出口流路267とは異なる入口流路268が連通している。入口流路268の一端は液体室266に連通し、他端にはZ軸マイナス側から前述した液体供給管4が挿入されている。これにより、液体供給管4の内部流路は、入口流路268、液体室266、出口流路267、液体流路240およびノズル流路220に連通する。その結果、液体供給管4を介して入口流路268に供給された液体Lは、液体室266、出口流路267、液体流路240およびノズル流路220を順次経由して噴射されることになる。
圧電素子262からは、筐体261を介して配線291が引き出されている。この配線291を介して、圧電素子262と制御部6とが電気的に接続されている。圧電素子262は、制御部6から供給される駆動信号S1により、逆圧電効果に基づいて、図2中に矢印B1で示すように、X軸に沿って伸長および収縮を繰り返すように振動する。圧電素子262が伸長すると、ダイアフラム264がX軸プラス側に押される。このため、液体室266の容積が減少し、液体室266内の圧力が上昇する。そうすると、液体室266内の液体Lが、出口流路267に送り込まれ、ノズル流路220内の液体Lが噴射される。一方、圧電素子262が収縮すると、ダイアフラム264がX軸マイナス側に引っ張られる。このため、液体室266の容積が拡大し、液体室266内の圧力が低下する。そうすると、入口流路268内の液体Lが液体室266内に送り込まれる。
圧電素子262は、X軸に沿って伸縮振動する素子であってもよく、屈曲振動する素子であってもよい。
圧電素子262は、例えば、圧電体と、圧電体に設けられた電極と、を備える。圧電体の構成材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電セラミックス等が挙げられる。
圧電素子262は、ダイアフラム264を変位させ得る任意の素子や機械要素で代替可能である。かかる素子または機械要素としては、例えば、磁歪素子、電磁アクチュエーター、モーターとカムとの組み合わせ等が挙げられる。
なお、筐体261は、液体室266内の圧力が上昇または低下したとき、変形しない程度の剛性を有していればよい。
また、図2に示す振動生成部26は、液体搬送管24の基端部に設けられているが、その位置は特に限定されない。例えば、振動生成部26は、液体搬送管24の途中に設けられていてもよい。
1.2 液体容器
液体容器3は、液体Lを貯留する。液体容器3に貯留された液体Lは、液体供給管4を介してノズルユニット2に供給される。
液体Lとしては、例えば水が好ましく用いられるが、有機溶剤等であってもよい。また、水や有機溶剤には、任意の溶質が溶解していてもよく、任意の分散質が分散していてもよい。
液体容器3は、密閉された容器であってもよく、開放された容器であってもよい。
1.3 送液ポンプ
送液ポンプ5は、液体供給管4の途中または端部に設けられる。液体容器3に貯留された液体Lは、送液ポンプ5によって吸引され、所定の圧力でノズルユニット2に供給される。
また、送液ポンプ5には、配線292を介して後述する制御部6が電気的に接続されている。送液ポンプ5は、制御部6から出力される駆動信号に基づいて、供給する液体Lの流量を変更する機能を有する。
送液ポンプ5の流量は、一例として、5[mL/min]以上500[mL/min]以下であるのが好ましく、10[mL/min]以上200[mL/min]以下であるのがより好ましい。
なお、送液ポンプ5は、必要に応じて逆止弁を内蔵していてもよい。このような逆止弁を備えていることにより、振動生成部26において液体Lに付与された振動に伴って、液体Lが液体供給管4を逆流してしまうのを防止することができる。なお、逆止弁は、液体供給管4の途中に独立して設けられていてもよい。
1.4 制御部
制御部6は、配線291を介してノズルユニット2と電気的に接続されている。また、制御部6は、配線292を介して送液ポンプ5と電気的に接続されている。
図1に示す制御部6は、圧電素子制御部62と、ポンプ制御部64と、記憶部66と、を有している。
圧電素子制御部62は、圧電素子262に駆動信号S1を出力する。この駆動信号S1により、圧電素子262の駆動が制御される。これにより、例えば所定の周波数および所定の変位量で、ダイアフラム264を変位させることができる。
ポンプ制御部64は、送液ポンプ5に駆動信号を出力する。この駆動信号により、送液ポンプ5の駆動が制御される。これにより、例えば所定の圧力および所定の駆動時間で、ノズルユニット2に液体Lを供給することができる。
なお、制御部6は、送液ポンプ5の駆動と、圧電素子262の駆動と、を協調して制御することもできる。
このような制御部6の機能は、演算装置、メモリー、外部インターフェース等のハードウェアによって実現される。
このうち、演算装置としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が挙げられる。
また、メモリーとしては、ROM(Read Only Memory)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等が挙げられる。
1.5 液体噴射装置の作動
次に、液体噴射装置1の作動について説明する。
液体容器3に貯留された液体Lは、送液ポンプ5によって液体供給管4を介して振動生成部26に所定の流量で供給される。振動生成部26では、液体室266に供給された液体Lに対し、圧力を変動させる。この圧力変動は、液体Lに脈動流を発生させる。脈動流とは、流量または流速が経時的に変動する液体Lの流動のことをいう。脈動流を伴う液体Lは、図2に示す液体流路240およびノズル流路220を経て噴射される。
以上のようにして液体噴射装置1から噴射された液体Lは、例えば図3に示すような挙動を示しながら空気中を飛翔する。図3は、液体噴射装置1から噴射された液体Lの形状を模式的に示す側面図である。
液体噴射装置1から噴射された液体Lは、噴射直後、連続した柱状の噴流L1として飛翔する。このような連続した噴流L1は、ノズル22の先端から所定の距離の領域において生じる。この領域を「連続流領域R1」という。一方、連続流領域R1よりも作業対象物W側では、連続した噴流L1の形状が乱れ、液滴L2に変化する。このような液滴L2が発生する領域を「液滴流領域R2」という。こうして発生した液滴L2を作業対象物Wに衝突させると、噴流L1を衝突させる場合に比べて、同じ流量であっても衝撃圧を高めることができる。その結果、作業効率を高めることができる。
図4は、図3に示すノズル22から液体Lが噴射されたとき、形成された噴流L1の形状の例を示す図である。噴流L1には、図4に示すような直径の揺らぎ(脈動)が形成される。その後、噴流L1には、表面張力による復元過程で揺らぎが拡大し、液体Lの分断が生じる。これにより、噴流L1が液滴L2に変化する。噴流L1が液滴L2に変化する位置を、「液滴化位置PD」という。また、ノズル22の先端から液滴化位置PDまでの距離を「液滴化距離DD」という。ノズル流路220の内径をDとするとき、連続した柱状をなす噴流L1の平均の直径もほぼDとなる。
液体噴射装置1の取り扱い性を高めるためには、液滴化距離DDを短縮することが求められる。液滴化距離DDを短縮することにより、ノズルユニット2と作業対象物Wとの距離、いわゆるスタンドオフ距離を短くしても、作業対象物Wに液滴L2を衝突させることができる。その結果、液体噴射装置1を使用する作業者は、作業効率を低下させることなく、作業対象物Wとノズルユニット2との位置関係を把握しやすくなり、作業性が高められる。
振動生成部26によって液体搬送管24に振動を付与すると、噴流L1にも振動が付与され、直径の揺らぎを拡大することができる。これにより、噴流L1の液滴化が促進されるため、液滴化位置PDをよりノズル22側に近づけることができる。つまり、振動生成部26は、液体噴射装置1の小型化を図りつつ、液滴化距離DDを短縮することができる。その結果、小型で作業効率が高い液体噴射装置1を実現することができる。
この際、本実施形態では、振動生成部26が液体搬送管24に振動を付与する際、その周波数fを最適化する。これにより、液滴化距離DDを特に短縮することができる。以下、その周波数fについて説明する。
まず、図4に示す噴流L1の直径の揺らぎ、すなわち脈動は、所定の波長λを有している。この波長λを、λ=αDとする。ここで、αは定数であるが、4≦α≦5の場合、レイリーの不安定性で生じる状態に近い状態となる。これにより、噴流L1が不安定になり、効率的に液滴化が促進される。
ここで、噴流L1の流速をVとし、送液ポンプ5の流量をQとする。このとき、噴流L1の流速Vは、V=Q/{π(D/2)2}で表される。そうすると、時間Tの間に噴流L1が飛翔する距離は、Q・T/{π(D/2)2}で表される。
したがって、噴流L1の脈動における波長λと、振動が付与された噴流L1が時間Tの間に飛翔する距離と、が一致するとき、効率的に液滴化が促進されることになる。これを踏まえると、振動生成部26によって付与されるべき振動の周波数1/Tは、1/T=4Q/(απD3)で表されることになる。したがって、制御部6は、圧電素子262に対して、かかる周波数を含む振動の条件を与える駆動信号S1を出力する。
すなわち、本実施形態に係る液体噴射装置1は、液体Lを噴射するノズル22と、液体Lをノズル22まで搬送する液体搬送管24と、ノズル22から噴射される液体Lに付与する振動を生成する振動生成部26と、液体搬送管24に液体Lを送る送液ポンプ5と、振動生成部26に振動の条件を与える駆動信号S1を出力する制御部6と、を備える。そして、図2に示す振動生成部26のダイアフラム264は、液体Lに接し、液体Lに振動を付与している。また、ノズル流路220の内径をDとし、送液ポンプ5による液体Lの流量をQとし、定数αを4≦α≦5とするとき、制御部6が振動生成部26に出力する振動の周波数は4Q/(απD3)である。
このような液体噴射装置1によれば、従来のような液化ガスを使用するための設備等が不要になるため、容易に小型化を図ることができる。また、振動生成部26が生成する振動の周波数を上記のように設定することで、噴流L1の脈動の周期と振動生成部26によって付与される振動の周期とが一致するため、噴流L1を特に不安定化させることができる。これにより、液滴化距離DDを特に短縮することができる。その結果、液滴化距離DDが短く、かつ小型の液体噴射装置1を実現することができる。このような液体噴射装置1は、スタンドオフ距離を短くしても、液滴L2による処理を行うことができる。このため、液体噴射装置1による作業の作業性を高めることができる。
なお、定数αが前記下限値未満である場合、および、前記上限値超である場合、噴流L1の脈動の周期と、振動生成部26によって付与される振動の周期と、のずれが大きくなる。このため、噴流L1の液滴化を十分に促進することができないおそれがある。
なお、振動生成部26によって付与される振動の周波数を変動させる場合には、上記周波数を満たす時間帯が含まれていればよい。
また、以上の計算式を踏まえると、振動生成部26の周波数fは、以下のようにして算出することができる。
例えば、内径Dを0.1mmとし、流量Qを10mL/minとし、定数αを4としたとき、周波数fは、(4×10)/{4π×(0.1)3}≒53.1[kHz]となる。
そして、このような計算により、内径Dや流量Qに応じた、周波数fの好ましい範囲を求めることができる。
例えば、内径Dを0.1mmとし、流量Qを10mL/minとし、定数αを4≦α≦5としたとき、周波数fは、42.4kHz以上53.1kHz以下であるのが好ましい。
よって、内径Dを0.1mmとし、流量Qを200mL/minとし、定数αを4≦α≦5としたとき、周波数fは、848.8kHz以上1061.0kHz以下であるのが好ましい。
さらに、内径Dを0.2mmとし、流量Qを10mL/minとし、定数αを4≦α≦5としたとき、周波数fは、5.3kHz以上6.6kHz以下であるのが好ましい。
また、内径Dを0.2mmとし、流量Qを200mL/minとし、定数αを4≦α≦5としたとき、周波数fは、106.1kHz以上132.6kHz以下であるのが好ましい。
制御部6から圧電素子262に出力する駆動信号S1の電圧は、圧電素子262の構成に応じて若干異なるが、1V以上100V以下であるのが好ましい。これにより、圧電素子262が必要かつ十分な振幅で振動するため、液滴L2をより安定して発生させることができる。
制御部6から圧電素子262に出力する駆動信号S1の波形は、特に限定されないが、例えば、正弦波、矩形波、のこぎり波等が挙げられる。
また、振動生成部26は、前述したように、ダイアフラム264を介して液体室266に供給されている液体Lの圧力を変動させる。そして、ノズル22から噴射される液体Lに振動を付与する。これにより、液体搬送管24やノズル22を振動させることなく、ノズル22から噴射される液体Lに振動を付与することができる。その結果、液滴L2の着弾位置の精度を高めることができ、作業性が良好な液体噴射装置1を実現することができる。これに加え、ダイアフラム264を介して液体Lに振動を付与することにより、圧電素子262またはそれに代わる機械要素等の構造や材質等を選択する際、自由度を高めやすいという利点がある。さらに、液体Lの圧力を変動させる際、ダイアフラム264の位置は特に限定されないため、その点においても自由度を高めやすい。
また、本実施形態に係る液体噴射方法は、送液ポンプ5からノズル22に向かって液体Lを送り、ノズル22から液体Lを噴射する方法である。そして、かかる液体噴射方法では、ノズル流路220の内径をDとし、送液ポンプ5による液体Lの流量をQとし、定数αを4≦α≦5とするとき、送液ポンプ5からノズル22に至るまでの液体Lに、4Q/(απD3)で表される周波数の振動を付与する。
このような方法によれば、ノズル22から液体Lを噴射して得られる噴流L1を特に不安定化させることができる。これにより、噴流L1の液滴化を促進し、液滴化距離DDを特に短縮することができる。
以下、液体噴射方法の手順の一例について、図1に示す液体噴射装置1に基づいて説明する。
まず、制御部6に対し、ノズル流路220の内径Dおよび定数αを入力する。制御部6の記憶部66は、定数αをあらかじめ保存しておいてもよい。圧電素子制御部62は、保存された定数αを読み出し、周波数fの算出に用いるようにすればよい。
次に、ポンプ制御部64は、送液ポンプ5による液体Lの流量Qの実測値を取得する。なお、流量Qは、ポンプ制御部64が送液ポンプ5に出力する流量の設定値であってもよい。そして、この流量Qを圧電素子制御部62に出力する。圧電素子制御部62は、内径D、流量Qおよび定数αと、周波数f=4Q/(απD3)の計算式に基づいて、周波数fを求める。なお、ノズル流路220の内径Dおよび定数αがあらかじめ決まっていれば、ポンプ制御部64で設定された流量Qを変更した際に、流量Qの実測値に応じて、あらかじめ計算式に基づいて計算しておいた周波数fを読み出して使う方法でも構わない。
次に、圧電素子制御部62は、求めた周波数fの駆動信号S1を振動生成部26の圧電素子262に出力する。これにより、ノズル22から噴射される噴流L1の液滴化を促進することができる。
なお、液体噴射方法では、前述した振動生成部26による振動の付与に限定されない。例えば、液体Lにガスを周期的に導入し、それによる圧力変化に基づいて、ノズル22から噴射される液体Lに振動を付与するようにしてもよい。この場合も、ガスを導入する操作の周波数を前述したようにして求めることができる。
また、振動生成部26は、前述したように、圧電素子262以外の機械要素を含んでいてもよいが、図2に示す振動生成部26は、圧電素子262を含んでいる。圧電素子262は、電気信号を効率よく、かつ、少ないタイムラグで機械的な振動に変換することができる。このため、周波数fを制御する際の精度を高めやすく、結果的に、作業効率を比較的容易に高めることができる。また、圧電素子262は、他の機械要素に比べて小型化が容易である。このため、圧電素子262は、液体噴射装置1の小型化にも寄与する。
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る液体噴射装置について説明する。
図5は、第2実施形態に係る液体噴射装置を示す概念図である。
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図5において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
第2実施形態は、ノズルユニット2の構成が異なる以外、第1実施形態と同様である。
具体的には、第1実施形態に係る振動生成部26では、ダイアフラム264を介して液体Lに振動を付与している。これに対し、本実施形態に係る振動生成部26Aでは、ダイアフラム264が省略され、圧電素子262が液体搬送管24に振動を付与するよう構成されている。具体的には、図5に示す振動生成部26Aは、圧電素子262と、支持体269と、を備えている。
図5に示す液体搬送管24は、基端部がZ軸マイナス側に向かって折れ曲がっている。これにより、図5に示す液体搬送管24は、先端側の部位であって、X軸に沿って延在するX軸延在部241と、基端側の部位であって、Z軸に沿って延在するZ軸延在部242と、を含んでいる。
そして、図5に示す振動生成部26Aは、Z軸延在部242のうち、Z軸プラス側の端部の外面を押圧するように構成されている。具体的には、圧電素子262は、Z軸延在部242の外面と支持体269との間に設けられている。換言すれば、図5に示す圧電素子262は、ノズル22の軸線A1上に設けられている。支持体269は、液体搬送管24から独立した部材である。圧電素子262がX軸に沿って伸縮するように、すなわち図5に矢印B1で示すように振動すると、Z軸延在部242もX軸に沿って振動する。これにより、Z軸延在部242に連続するX軸延在部241およびノズル22も、図5に矢印B2で示すようにX軸に沿って振動する。その結果、ノズル22から噴射される液体Lも、振動が付与された噴流L1として噴射される。
ここで、本実施形態においても、第1実施形態と同様、振動生成部26Aによって液体搬送管24に付与される振動の周波数を、ノズル流路220の内径D、送液ポンプ5による液体Lの流量Q、および定数αに基づいて求める。
すなわち、本実施形態に係る振動生成部26Aは、液体搬送管24を加振することにより、ノズル22から噴射される液体Lに振動を付与する。そして、その振動の周波数を、4Q/(απD3)とする。
このような振動生成部26Aによれば、液体搬送管24を加振すればよいので、構造の簡素化を図ることができる。このため、より小型の液体噴射装置1を実現することができる。
なお、本実施形態では、液体搬送管24が、弾性または可撓性を有しているのが好ましい。これにより、振動生成部26Aにより、ノズル22または液体搬送管24を加振した際、液体搬送管24を撓ませることができる。その結果、ノズル22から噴射される液体Lを振動させることができる。
なお、圧電素子262の一端は、Z軸延在部242の外面に接していればよい。したがって、圧電素子262の一端とZ軸延在部242との間の接続状態は、接着や固着等の固定状態であってもよく、単なる接触でもよい。
一方、圧電素子262の他端と支持体269との間の接続状態は、前述した圧電素子262の一端とZ軸延在部242との間の接続状態に応じて適宜選択される。例えば、圧電素子262の一端とZ軸延在部242とが固定されている場合には、圧電素子262の他端と支持体269との間は、少なくとも接していればよい。また、圧電素子262の一端とZ軸延在部242とが単に接している場合には、圧電素子262の他端と支持体269との間は、固定されているのが好ましい。
支持体269は、圧電素子262が伸縮するときの圧力を受けても変形しない程度の剛性を有している。これにより、圧電素子262の伸縮量の多くを液体搬送管24の揺動に利用することができる。なお、支持体269の配置や形状は、特に限定されない。
また、圧電素子262によってZ軸延在部242の外面が押圧され、振動が生じると、それに伴ってノズル22もX軸に沿って振動する。本実施形態では、図5に示すように、Z軸延在部242のうち、Z軸プラス側の端部に圧電素子262が接している。一方、Z軸延在部242のうち、Z軸マイナス側の端部は、支持体269に固定されている。このような構成のノズルユニット2では、支持体269による固定部位が支点P1となり、圧電素子262が接している部位が力点P2となって、液体搬送管24およびノズル22を揺動させることができる。この場合、力点P2の位置が支点P1から離れているため、液体搬送管24の弾性を利用することによって、ノズル22を十分に大きく変位させることができる。これにより、圧電素子262の変位量が小さい場合でも、十分な振幅を得ることができる。したがって、液体噴射装置1のさらなる小型化を図ることができる。
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
2.1 第1変形例
次に、第2実施形態の第1変形例について説明する。
図6は、第2実施形態に係る液体噴射装置1の第1変形例を示す概念図である。以下、第1変形例について説明するが、以下の説明では、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
前述した第2実施形態では、図5に示すように、Z軸延在部242に圧電素子262が設けられている。一方、本第1変形例では、図6に示すように、X軸延在部241のX軸マイナス側の端部に圧電素子262が設けられている。つまり、本第1変形例に係る振動生成部26Bは、第2実施形態とは異なる位置に設けられた圧電素子262を備えている。そして、図6に示す圧電素子262は、Z軸に沿って伸縮するように、すなわち図6に矢印B1で示すように振動する。それに伴い、X軸延在部241およびノズル22も、図6に矢印B2で示すようにZ軸に沿って振動する。その結果、ノズル22から噴射される液体Lも、振動が付与された噴流L1として噴射される。
以上のような第1変形例においても、第2実施形態と同様の効果が得られる。
2.2 第2変形例
次に、第2実施形態の第2変形例について説明する。
図7は、第2実施形態に係る液体噴射装置1の第2変形例を示す概念図である。以下、第2変形例について説明するが、以下の説明では、第1変形例との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
前述した第1変形例では、図6に示すように、X軸延在部241のX軸マイナス側の端部に圧電素子262が設けられている。一方、本第2変形例に係る振動生成部26Cでは、図7に示すように、ノズル22に圧電素子262が設けられている。そして、図7に示す圧電素子262は、Z軸に沿って伸縮するように、すなわち図7に矢印B1で示すように振動する。それに伴い、ノズル22も、図7に矢印B2で示すようにZ軸に沿って振動する。その結果、ノズル22から噴射される液体Lも、振動が付与された噴流L1として噴射される。
以上のような第2変形例においても、第2実施形態と同様の効果が得られる。
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る液体噴射装置について説明する。
図8は、第3実施形態に係る液体噴射装置を示す概念図である。図9は、図8に示す液体噴射装置をX軸プラス側から見た図である。
以下、第3実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図8および図9において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
第3実施形態は、ノズルユニット2の構成が異なる以外、第1実施形態と同様である。
前述した第1実施形態では、振動生成部26が液体搬送管24を加振する圧電素子262を備えている。これに対し、本実施形態に係る振動生成部26Eは、支持体273と、弾性部材274と、電磁石275と、鉄片276と、を備えている。
支持体273は、筒状をなしており、液体搬送管24のX軸マイナス側端部を挿入可能な挿通孔2731を備えている。この挿通孔2731に液体搬送管24が挿通されている。そして、支持体273と液体搬送管24との間が4本の弾性部材274で接続されている。
弾性部材274としては、例えば、コイルばね、金属ばね、ゴムばね等が挙げられる。弾性部材274は、図9に示すように、Y-Z面内において、Y軸およびZ軸の双方に対して傾斜するように延在している。そして、2本の弾性部材274が液体搬送管24を挟んで同一直線上に位置するように配置されている。また、別の2本の弾性部材274も液体搬送管24を挟んで別の同一直線上に位置するように配置されている。これにより、挿通孔2731内において、液体搬送管24を吊り下げることができる。
電磁石275は、支持体273の挿通孔2731の内面に2つ設けられている。具体的には、電磁石275は、挿通孔2731の内面のうち、液体搬送管24よりもZ軸プラス側の位置と、液体搬送管24よりもZ軸マイナス側の位置と、にそれぞれ設けられている。また、電磁石275は、弾性部材274よりもX軸マイナス側の位置に設けられている。なお、電磁石275の個数は、特に限定されず、1つまたは3つ以上であってもよい。
鉄片276は、液体搬送管24の外面のうち、電磁石275に向かい合う位置に設けられている。図示しない配線を介して電磁石275に電流信号を入力すると、電磁石275に発生した磁力によって鉄片276を引き寄せる力を発生させることができ、それに伴って液体搬送管24を引き寄せることができる。したがって、互いに向かい合う電磁石275および鉄片276は、磁力発生部として機能する。なお、鉄片276の個数も、特に限定されず、1つまたは3つ以上であってもよい。
本実施形態では、Z軸に沿って、液体搬送管24を挟む両側にそれぞれ磁力発生部が設けられている。このため、一方の磁力発生部と他方の磁力発生部に対して、交互に電流信号を入力することによって、液体搬送管24をZ軸に沿って振動させることができる。
以上のような第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、弾性部材274や磁力発生部の配置は、図8および図9に示す位置に限定されない。例えば、弾性部材274は、いかなる方向に延在するものであってもよい。同様に磁力発生部も、いかなる方向に磁力を発生させるものであってもよい。
以上、本発明の液体噴射装置および液体噴射方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
例えば、本発明の液体噴射装置は、前記実施形態の各部の構成が、同様の機能を有する任意の構成に置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成が追加されたものであってもよい。
また、振動生成部の配置は、前記各実施形態の位置に限定されず、液体搬送管に振動を付与し得る位置であれば、いかなる位置であってもよい。さらに、本発明の液体噴射装置は、複数の振動生成部を備えていてもよい。その場合、前記各実施形態または前記各変形例の中から2つ以上を組み合わせるようにしてもよい。
また、液体搬送管の屈曲形状、屈曲方向も、前記各実施形態における屈曲形状、屈曲方向に限定されず、いかなる形状、方向であってもよい。
さらに、本発明の液体噴射装置は、噴射した液体を吸引する吸引装置を備えていてもよい。この吸引装置は、例えば、液体搬送管と並列または液体搬送管を内蔵するように設けられた吸引管、吸引管に接続された吸引ポンプ、吸引管で吸引した液体を貯留するタンク等を備えていればよい。