以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
≪賦形シートの構成≫
以下、図1に基づいて、本発明の一実施形態に係る賦形シート1の構成について説明する。図1は、賦形シート1の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、賦形シート1は、凹凸面10を有する。凹凸面10を構成する凹凸の中心線平均粗さRa、最大高さRmax及び平均間隔Smは、以下の範囲である。これにより、賦形シート1を使用して製造されるメラミン化粧板の凹凸面が、低い艶を有するとともに、優れた易掃性を有するものとなる。
賦形シート1の凹凸面10を構成する凹凸の中心線平均粗さRaは、1.7μm以上2.7μm以下、好ましくは1.8μm以上2.6μm以下、さらに好ましくは1.9μm以上2.6μm以下である。中心線平均粗さRaの定義は、JIS B0601-1982に従う。
賦形シート1の凹凸面10を構成する凹凸の最大高さRmaxは、11μm以上16μm以下、好ましくは13μm以上16μm以下、さらに好ましくは15μm以上16μm以下である。最大高さRmaxの定義は、JIS B0601-1982に従う。
賦形シート1の凹凸面10を構成する凹凸の平均間隔Smは、30μm以上65μm以下、好ましくは30μm以上64μm以下、さらに好ましくは32μm以上64μm以下である。平均間隔Smの定義は、JIS B0601-1994に従う。
Ra、Rmax及びSmの測定は、表面粗さ測定器(小坂研究所製三次元表面粗さ測定器 SE-30K)及び表面粗さ解析装置(小坂研究所製サーフコーダーAY-31)を使用して、下記の条件に従って測定した。
1)表面粗さ検出部の触針
・先端径:R2μm
・スキッド:R40mm×R2mm
・材質:サファイア
・針圧:0.7μN
・触針の送り速さ:0.5mm/s
2)測定条件
・カットオフ値(基準長さ):0.08mm
・測定長さ(カットオフ値×100):8mm
・縦倍率:1000倍
・横倍率:10倍
賦形シート1の凹凸面10の60°光沢度は、好ましくは20以下、さらに好ましくは17以下である。60°光沢度の下限値は特に限定されないが、好ましくは11、さらに好ましくは12である。60°光沢度は、JIS Z8741:1997に準拠して測定される。具体的には、グロス計として、村上色彩技術研究所製GMX-202を使用して、入射角=60°の条件で、賦形シート1の凹凸面10の60°光沢度が測定される。
図1に示すように、賦形シート1は、支持層11と、支持層11上に設けられた樹脂層12とを備える。
<支持層>
以下、図1に基づいて、支持層11について説明する。
図1に示すように、支持層11は、第1主面S1と、第1主面S1の反対側に位置する第2主面S2とを有する。
図1に示すように、支持層11は、基材シート111と、基材シート111上に設けられたプライマー層112とを備える。
図1に示すように、基材シート111は、第1主面T1と、第1主面T1の反対側に位置する第2主面T2とを有する。
基材シート111は、その上に設けられた層を支持し得る限り特に限定されない。基材シート111は可撓性を有することが好ましい。基材シート111が可撓性を有すると、賦形シート1を被賦形体から剥離させやすい。基材シート111は、例えば、プラスチックシートである。プラスチックシートを構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル樹脂等のアクリル樹脂;ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース樹脂、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらのうち、耐熱性及び寸法安定性に優れている点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、特に2軸延伸したポリエステル樹脂が好ましい。
基材シート111上に設けられる層との密着性を向上させるために、基材シート111の表面に易接着層を形成してもよい。易接着層(プライマー層、アンカー層と呼ばれることもある)に含まれる易接着性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
基材シート111上に設けられる層との密着性を向上させるために、基材シート111の表面に酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施してもよい。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
基材シート111の厚さは特に制限はないが、基材シート111としてプラスチックシートを使用する場合、プラスチックシートの厚さは、好ましくは25μm以上75μm以下、さらに好ましくは35μm以上50μm以下である。
プライマー層112は、基材シート111の第1主面T1に設けられている。プライマー層112は、基材シート111の第1主面T1の全体に形成されていてもよいし、基材シート111の第1主面T1の一部に形成されていてもよい。プライマー層112が基材シート111の第1主面T1の全体に形成される場合、支持層11の第1主面S1はプライマー層112の表面により形成される。プライマー層112が基材シート111の第1主面T1の一部に形成される場合、支持層11の第1主面S1は、基材シート111の第1主面T1の一部(プライマー層112が設けられていない部分)及びプライマー層112の表面により形成される。
なお、本発明には、プライマー層112が省略された実施形態も包含される。プライマー層112が省略された実施形態において、支持層11の第1主面S1は、基材シート111の第1主面T1により形成される。また、本発明には、基材シート111とプライマー層112との間に1又は2以上の層が設けられた実施形態も包含される。このような層は、当該層に求められる機能に応じて適宜選択することができる。
プライマー層112は、バインダー樹脂を含む。バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
プライマー層112は、微粒子を含むことが好ましい。プライマー層112に含まれる微粒子は、樹脂層12の表面の凹凸形状に寄与し得る。微粒子は、公知の艶消し剤(マット剤)の中から適宜選択することができる。微粒子としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子等が挙げられるが、樹脂層12の表面に微細な凹凸形状を付与し得る点から、無機微粒子が好ましい。有機微粒子としては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、シリコーンビーズ、ナイロンビーズ、スチレンビーズ、メラミンビーズ、ウレタンアクリルビーズ、ポリエステルビーズ、ポリエチレンビーズ等の合成樹脂微粒子が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素(シリカ)、カオリン等からなる微粒子が挙げられる。これらのうち、樹脂層12の表面に微細な凹凸形状を付与し得る点から、シリカ微粒子が好ましい。微粒子は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。微粒子の平均粒径は、好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは2μm以上3μm以下である。平均粒径は、JIS Z8825:2013に準拠するレーザー回折・散乱法によって、体積基準で測定される。レーザー回折・散乱法によって体積基準の粒度分布を測定するための市販の機器としては、例えば、ベックマンコールター社製の粒度分布測定装置LS-230が挙げられる。
プライマー層112に含まれる微粒子の量は、樹脂層12の表面の凹凸形状に寄与し得る限り特に制限されない。プライマー層112に含まれる微粒子の量は、プライマー層112の総質量を基準として、好ましくは15質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上25質量%以下である。プライマー層112に含まれる微粒子の量は、プライマー層112に含まれるバインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは20質量部以上35質量部以下、さらに好ましくは25質量部以上30質量部以下である。なお、プライマー層112の総質量は、プライマー層112の乾燥時の総質量(すなわち、プライマー層112の固形分総質量)を意味する。
プライマー層112は、必要に応じて、安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、蛍光増白剤等の1種又は2種以上の添加剤を含んでもよい。
プライマー層112の厚みは特に限定されないが、好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは2μm以上3μm以下である。
<樹脂層>
以下、図1に基づいて、樹脂層12について説明する。
図1に示すように、樹脂層12は、支持層11の第1主面S1の全体に設けられている。樹脂層12は、支持層11の第1主面S1の一部に設けられていてもよい。樹脂層12が支持層11の第1主面S1の一部に設けられている場合、支持層11の第1主面S1のうち樹脂層12が設けられる領域は、連続した1つの領域であってもよいし、不連続な複数の領域であってもよい。樹脂層12は、連続した1つの層で構成されていてもよいし、不連続な複数の層で構成されていてもよい。
図1に示すように、樹脂層12の表面は、凹凸形状を有し、賦形シート1の凹凸面10を形成している。
樹脂層12は、硬化樹脂を含有する層であり、例えば、(A)微粒子及び硬化性樹脂を含む樹脂層形成用組成物を支持層11に塗布して樹脂層形成用組成物の塗膜を形成した後、塗膜を硬化させる方法、(B)硬化性樹脂を含む樹脂層形成用組成物を支持層11に塗布して樹脂層形成用組成物の塗膜を形成した後、所定の凹凸面を有する型を塗膜に押し付けて塗膜を硬化させる方法(例えば、ドラムプリンティング法、ナノインプリント法)等により形成することができる。これらのうち、製造が容易である点から、方法Aが好ましい。なお、ドラムプリンティングシステム(Drum Printing System)とは、特開平5-238196号公報、特許第3083380号公報等に開示されるような、版面上の凹凸形状を其の微細構造部分も含めて電離放射線硬化性樹脂層表面に忠実に賦形することができる輪転式の凹版印刷方式である。
方法Aにおいて、硬化性樹脂が硬化してバインダー樹脂となる際、微粒子が存在しない部分においては、硬化性樹脂が硬化収縮を起こすため全体的に収縮する。これに対して、微粒子が存在する部分においては、微粒子が硬化収縮を起こさないため、微粒子の上下に存在する硬化性樹脂のみが硬化収縮を起こす。これにより、微粒子が存在する部分は微粒子が存在しない部分に比べて樹脂層12の膜厚が厚くなるので、樹脂層12の表面が凹凸形状となる。したがって、微粒子の種類、粒径、含有量等、硬化性樹脂の種類等を適宜選択して塗膜形成条件を調整することにより、所望の凹凸形状を有する樹脂層12を形成することができる。
以下、樹脂層12が微粒子及びバインダー樹脂を含む実施形態(樹脂層12が方法Aにより形成される実施形態)について説明する。
樹脂層12に含まれる微粒子は、好ましくは有機微粒子である。有機微粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、例えば、アクリルビーズ、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリル-スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。これらのうち、アクリルビーズが好ましい。アクリルビーズは、樹脂層形成用組成物に含まれる溶媒に対して膨潤しにくい。また、樹脂層形成用組成物が電離放射線硬化性樹脂を含む場合、アクリルビーズは、電離放射線硬化性樹脂の硬化物と結合した状態で樹脂層12に存在し得るので、樹脂層12から剥がれにくい。
樹脂層12に含まれる微粒子の平均粒径は、好ましくは6μm以上15μm以下、さらに好ましくは7μm以上14μm以下である。平均粒径は、JIS Z8825:2013に準拠するレーザー回折・散乱法によって、体積基準で測定される。レーザー回折・散乱法によって体積基準の粒度分布を測定するための市販の機器としては、例えば、ベックマンコールター社製の粒度分布測定装置LS-230が挙げられる。
樹脂層12に含まれる微粒子の量は、樹脂層12の総質量を基準として、好ましくは35質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上55質量%以下である。樹脂層12に含まれる微粒子の量は、樹脂層12に含まれるバインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以上150質量部以下、さらに好ましくは65質量部以上120質量部以下である。なお、樹脂層12の総質量は、樹脂層12の乾燥時の総質量(すなわち、樹脂層12の固形分総質量)を意味する。
微粒子の単粒子状態での形状は、球状が好ましい。微粒子の形状が球状であると、凹凸面10の形状を調整しやすい。なお、球状には、例えば、真球状、楕円球状等が含まれる。
方法Aにより形成される樹脂層12は、微粒子及び硬化性樹脂を含む樹脂層形成用組成物の硬化により形成された層であり、硬化性樹脂の硬化物をバインダー樹脂として含む。樹脂層形成用組成物に含まれる硬化性樹脂は、好ましくは電離放射線硬化性樹脂であり、樹脂層12は、好ましくは電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む。樹脂層形成用組成物に含まれる微粒子は、電離放射線硬化性樹脂の硬化物と結合した状態で樹脂層12に存在し得る。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、1種又は2種以上の電離放射線硬化性樹脂を含む。電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が使用されるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、安定な硬化特性が得られる点で好ましい。
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合、カチオン重合性官能基等を分子中に有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等の1種以上を使用することができる。電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される電離放射線硬化性樹脂は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられ、特に、多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、特に限定されない。多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、特に、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端又は側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート等であってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも使用することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコン(メタ)アクリレートとは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコンの末端又は側鎖に(メタ)(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、樹脂層12の硬度をより一層高める観点からは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。これらのオリゴマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、樹脂層形成用組成物を支持層11に塗布する際、樹脂層形成用組成物が支持層11へ浸み込みにくいので、樹脂層形成用組成物の塗膜を形成しやすい。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、樹脂層形成用組成物の粘度を、塗布に適した粘度に調整しやすい。
なお、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
電離放射線硬化性樹脂は、重量平均分子量が500以上である多官能モノマー及びオリゴマーから選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような多官能モノマー又はオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂が挙げられる。
樹脂層形成用組成物は、必要に応じて、電離放射線硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、光重合開始剤(増感剤)を含んでもよい。例えば、紫外線の照射により電離放射線硬化性樹脂を硬化させる場合、樹脂層形成用組成物は光重合開始剤(増感剤)を含むことが好ましい。なお、電離放射線硬化性樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するので、電子線の照射により電離放射線硬化性樹脂を硬化させる場合、樹脂層形成用組成物は光重合開始剤(増感剤)を含まなくてもよい。
電離放射線硬化性樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,N-ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種を使用することができる。また、電離放射線硬化性樹脂がカチオン重合性官能基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種を使用することができる。
樹脂層形成用組成物に含まれる光重合開始剤の量は特に限定されないが、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、通常0.1質量部以上10質量部以下である。
樹脂層12は、必要に応じて、溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)、熱硬化性樹脂等を含んでもよい。樹脂層形成用組成物に溶剤乾燥型樹脂を添加することにより、樹脂層12を形成する際に、樹脂層形成用組成物の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用することができ、熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
なお、方法Bにより形成される樹脂層12は、例えば、硬化性樹脂を含む樹脂層形成用組成物の硬化により形成された層であり、硬化性樹脂の硬化物を含む。樹脂層形成用組成物に含まれる硬化性樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等であり、好ましくは電離放射線硬化性樹脂である。電離放射線硬化性樹脂に関する説明は上記と同様である。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。樹脂層形成用組成物は、必要に応じて、熱硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、触媒、硬化剤(架橋剤、重合開始剤、重合促進剤等を含む)等を含んでもよい。例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の硬化剤としては、イソシアネート、有機スルホン酸塩等が挙げられ、エポキシ樹脂等の硬化剤としては、有機アミン等が挙げられ、不飽和ポリエステル樹脂のラジカル開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等が挙げられる。
樹脂層12の厚みは特に限定されないが、好ましくは5μm以上12μm以下、さらに好ましくは6μm以上10μm以下である。なお、樹脂層12の最小厚み及び最大厚みの両者が、上記範囲内であることが好ましい。
≪賦形シートの製造≫
以下、方法Aを使用した賦形シート1の製造について説明する。
まず、基材シート111の第1主面T1に、プライマー層112を形成する。プライマー層112を形成する前に、基材シート111の第1主面T1に対して、易接着層の形成、あるいは、酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を行ってもよい。これにより、プライマー層112の密着性を高めることができる。
プライマー層112は、基材シート111の第1主面T1に、プライマー層形成用組成物を塗布することにより形成することができる。プライマー層形成用組成物を塗布する方法としては、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
プライマー層形成用組成物は、例えば、溶剤又は分散媒と、バインダー樹脂、微粒子等の固形分との混合物である。溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
プライマー層形成用組成物の塗布量は特に限定されないが、好ましくは1g/m2以上5g/m2以下、さらに好ましくは2g/m2以上3g/m2以下である。
プライマー層112の形成後、プライマー層112上に、樹脂層形成用組成物を塗布する。樹脂層形成用組成物の塗布方法の具体例は、上記と同様である。
樹脂層形成用組成物は、例えば、溶剤又は分散媒と、電離放射線硬化性樹脂、微粒子等の固形分との混合物である。溶剤又は分散媒の具体例は、上記と同様である。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。樹脂層形成用組成物は、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光重合開始剤等を含んでもよい。また、樹脂層形成用組成物は、樹脂層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える等を目的として、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を含んでもよい。
樹脂層形成用組成物の塗布量は特に限定されないが、好ましくは5g/m2以上12g/m2以下、さらに好ましくは6g/m2以上10g/m2以下である。
プライマー層112上に樹脂層形成用組成物を塗布した後、樹脂層形成用組成物の塗膜を乾燥させる。乾燥条件を調整することにより、微粒子の分布状態を調整することができる。乾燥温度は、好ましくは40℃以上100℃以下、さらに好ましくは40℃以上60℃以下である。このような乾燥条件での乾燥処理を1回又は複数回行うことにより微粒子の分布状態を所望の状態に調整することができる。
樹脂層形成用組成物の塗膜の乾燥後、紫外線、電子線等の電離放射線を照射して電離放射線硬化性樹脂を硬化させ、樹脂層12を形成する。
電離放射線硬化性樹脂を硬化させるための電離放射線として紫外線を使用する場合には、紫外線源として、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を使用することができる。紫外線の波長は、通常190nm以上380nm以下である。電離放射線硬化性樹脂を硬化させるための電離放射線として電子線を使用する場合には、電子線源として、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器を使用することができる。電子線のエネルギーは、通常100keV以上1000keV以下、好ましくは100keV以上300keV以下である。電子線の照射量は、通常2Mrad以上15Mrad以下である。
≪賦形シートの使用≫
賦形シート1は、凹凸面を有するメラミン化粧板を製造するために使用される。以下、図2A~図2Cに基づいて、賦形シート1を使用して、凹凸面を有するメラミン化粧板を製造する方法の一実施形態について説明する。図2A~図2Cは、賦形シート1を使用してメラミン化粧板3を製造する方法を説明するための図である。
本実施形態に係るメラミン化粧板の製造方法は、(a)積層体2を準備する工程、(b)積層体2を加圧及び加熱する工程、及び、(c)賦形シート1を剥離する工程を含む。
図2Aに示すように、工程(a)で準備される積層体2は、コア層21と、コア層21上に設けられた、化粧板用原紙にメラミン樹脂の未硬化物を含浸して形成される未硬化メラミン樹脂層22と、未硬化メラミン樹脂層22上に設けられた賦形シート1とを備える。賦形シート1は、賦形シート1の凹凸面10が未硬化メラミン樹脂層22と接するように、未硬化メラミン樹脂層22上に設けられている。これにより、未硬化メラミン樹脂層22の表面は、賦形シート1の凹凸面10に沿った凹凸形状に賦形されている。なお、メラミン樹脂の未硬化物は、メラミンとホルムアルデヒドとを中性又はアルカリ性条件下で反応させて得られ、メラミンとホルムアルデヒドとの反応生成物は、メチロールメラミン類(モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン)を含有する。メラミン樹脂は、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂とも呼ばれる。
コア層21は、例えば、フェノール樹脂含浸紙又はその積層体である。フェノール樹脂含浸紙としては、坪量150~300g/m2程度のクラフト紙に、フェノール樹脂を主成分とする樹脂を、後述の式で算出される含浸率が30~80%程度となるように含浸させ、乾燥させることにより得られる。
コア層21は、ガラスクロス又はガラス不織布、あるいは、ガラスクロス又はガラス不織布を基材とするプリプレグであってもよい。プリプレグとしては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を含有する樹脂組成物をガラスクロス又はガラス不織布に含浸させることにより得られる。
未硬化メラミン樹脂層22は、例えば、メラミン樹脂含浸紙又はその積層体である。メラミン樹脂含浸紙は、例えば、坪量70~140g/m2程度の化粧板用原紙に、メラミン樹脂の未硬化物、代表的にはメチロールメラミンを主成分とする樹脂を、後述の式で算出される含浸率が70~160%程度となるように含浸させ、乾燥させることにより得られる。
未硬化メラミン樹脂層22は、メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙又はメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を含む積層体であってもよい。メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙は、例えば、坪量23~60g/m2程度のオーバーレイ原紙に、メラミン樹脂の未応化物、代表的にはメチロールメラミンを主成分とする樹脂を、後述の式で算出される含浸率が200~400%程度となるように含浸させ、乾燥させることにより得られる。メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙は、例えば、化粧板用原紙上に積層した後、未硬化メラミン樹脂層22として使用することができる。
未硬化メラミン樹脂層22は、メラミン樹脂含浸紙及びメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙の両方を含む積層体であってもよい。
フェノール樹脂含浸紙及びメラミン樹脂含浸紙における含浸率は、次式に基づいて求められる。
含浸率(%)=〔(含浸後の含浸紙の質量)-(含浸前の原紙の質量)〕/(含浸前の原紙の質量×100
工程(b)における積層体2の加圧及び加熱は、例えば、図2Bに示すように、積層体2を2枚の鏡面加工金属板P1,P2の間に挟んだ状態で実施される。積層体2の加圧及び加熱により、未硬化メラミン樹脂層22に含まれるメラミン樹脂の未硬化物が硬化する。積層体2の加圧及び加熱により、未硬化メラミン樹脂層22は、その表面が賦形シート1の凹凸面10に沿った凹凸形状に賦形された状態で硬化し、メラミン樹脂の硬化物を含む硬化樹脂層が形成される。硬化樹脂層は、賦形シート1の剥離後に表面層32となる。積層体2の加圧及び加熱により、コア層21からコア層31が形成される。コア層21として、フェノール樹脂含浸紙又はその積層体が使用される場合、コア層21に含まれるフェノール樹脂もこの段階で硬化する。
鏡面加工金属板P1,P2によって加えられる圧力は、通常9.0N/m2以上10.5N/m2以下である。加熱温度は、通常130℃以上180℃以下、加熱時間は、通常5分以上50分以下である。
工程(c)において、賦形シート1を積層体2の残部から剥離することにより、図2Cに示すように、凹凸面30を有するメラミン化粧板3が製造される。メラミン化粧板3は、コア層31と、メラミン樹脂の硬化物を含む表面層32とを備える。表面層32の表面は、賦形シート1によって付与された凹凸形状を有し、メラミン化粧板3の凹凸面30を形成している。コア層31の前駆層は、積層体2のコア層21であり、積層体2が工程(b)で加圧及び加熱されることにより、コア層21からコア層31が生じる。表面層32の前駆層は、積層体2の未硬化メラミン樹脂層22であり、積層体2が工程(b)で加圧及び加熱されることにより、未硬化メラミン樹脂層22から硬化樹脂層である表面層32が生じる。
メラミン化粧板3の凹凸面30を構成する凹凸の中心線平均粗さRa、最大高さRmax及び平均間隔Smは、以下の範囲であることが好ましい。これにより、メラミン化粧板3の凹凸面30が、低い艶を有するとともに、優れた易掃性を有するものとなる。
メラミン化粧板3の凹凸面30を構成する凹凸の中心線平均粗さRaは、好ましくは1.6μm以上2.4μm以下、さらに好ましくは1.8μm以上2.4μm以下である。中心線平均粗さRaの定義は、JIS B0601-1982に従う。
メラミン化粧板3の凹凸面30を構成する凹凸の最大高さRmaxは、好ましくは14μm以上19.5μm以下、さらに好ましくは17μm以上19.5μm以下である。最大高さRmaxの定義は、JIS B0601-1982に従う。
メラミン化粧板3の凹凸面30を構成する凹凸の平均間隔Smは、好ましくは50μm以上110μm以下、さらに好ましくは50μm以上100μm以下である。平均間隔Smの定義は、JIS B0601-1994に従う。
メラミン化粧板3は、例えば、暗色を呈する。メラミン化粧板3が暗色を呈するか否かは、メラミン化粧板3の凹凸面30側からメラミン化粧板3を視認して判断することができる。なお、「暗色」とは、その色調が低明度の有彩色又は無彩色であることを意味する。例えば、黒色、濃い灰色等の無彩色、及び、紺色、茶褐色、黄褐色、深緑色、濃紫色、臙脂色等の有彩色が暗色に該当する。暗色は、好ましくは黒色である。
表面層32が暗色を呈することにより、メラミン化粧板3は暗色を呈することができる。未硬化メラミン樹脂層22が暗色顔料を含むことにより、表面層32は暗色を呈することができる。暗色顔料は、例えば、化粧板用原紙に含まれる。暗色顔料は、公知の暗色顔料の中から適宜選択することができる。暗色顔料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。黒色顔料としては、例えば、有機黒色顔料、無機黒色顔料等が挙げられる。有機黒色顔料としては、例えば、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、アニリンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、ランプブラック、ベンズイミダゾロンピグメントブラウン25(茶)とフタロシアニンブルー(青)との混合顔料等が挙げられる。無機黒色顔料としては、例えば、複合酸化物、鉄黒、チタンブラック等が挙げられる。複合酸化物は、少なくとも2種の金属元素を含む酸化物である。複合酸化物は、少なくともマンガン元素を含む複合酸化物、すなわち、マンガン元素と、マンガン元素以外の少なくとも1種の金属元素を含む酸化物であることが好ましい。複合酸化物に含まれるマンガン元素以外の金属元素は、特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。複合酸化物に含まれるマンガン元素以外の金属元素は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。複合酸化物に含まれるマンガン元素以外の金属元素としては、例えば、カルシウム元素、バリウム元素等の第2族元素;イットリウム元素、ランタン元素、プラセオジム元素;ネオジム元素等の第3族元素、チタン元素、ジルコニウム元素等の第4族元素;ホウ素元素、アルミニウム元素、ガリウム元素、インジウム元素等の第13族元素;アンチモン元素、ビスマス元素等の第15族元素等の金属元素が挙げられる。これらのなかでも、第2族元素、第4族元素、第15族元素が好ましく、カルシウム元素、チタン元素、及びビスマス元素がより好ましく、カルシウム元素及びチタン元素がさらに好ましい。複合酸化物の特に好ましい具体例としては、マンガン元素、カルシウム元素及びチタン元素を含む複合酸化物が挙げられる。
メラミン化粧板3は、例えば、白色を呈する。メラミン化粧板3が白色を呈するか否かは、メラミン化粧板3の凹凸面30側からメラミン化粧板3を視認して判断することができる。
表面層32が白色を呈することにより、メラミン化粧板3は白色を呈することができる。未硬化メラミン樹脂層22が白色顔料を含むことにより、表面層32は白色を呈することができる。白色顔料は、例えば、化粧板用原紙に含まれる。白色顔料は、公知の白色顔料の中から適宜選択することができる。白色顔料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。白色顔料としては、例えば、チタン白、アンチモン白等が挙げられる。
メラミン化粧板3が暗色を呈する場合、メラミン化粧板3の凹凸面30の60°光沢度は、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。60°光沢度の下限値は特に限定されないが、好ましくは1.5、さらに好ましくは1.7である。
メラミン化粧板3が白色を呈する場合、メラミン化粧板3の凹凸面30の60°光沢度は、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。60°光沢度の下限値は特に限定されないが、好ましくは2.0、さらに好ましくは2.5である。
メラミン化粧板3の凹凸面30の60°光沢度は、JIS Z8741:1997に準拠して測定される。具体的には、グロス計として、村上色彩技術研究所製GMX-202を使用して、入射角=60°の条件で、メラミン化粧板3の凹凸面30の60°光沢度が測定される。
以下、実施例に基づいて、本発明について説明する。
〔実施例1〕
(1)賦形シートの製造
厚み50μmの易接着性ポリエステル(PET)フィルム(東洋紡社製A4100)の易接着性面上に、グラビア印刷法を使用して、シリカ微粒子(平均粒径:3μm)及び2液硬化型ウレタン樹脂(昭和インク工業社製EBF)をプライマー層形成用組成物を厚み1μmで塗布し、プライマー層を形成した。プライマー層形成用組成物に含まれるシリカ微粒子及び2液硬化型ウレタン樹脂の量は、それぞれ、プライマー層形成用組成物に含まれる固形分の総質量を基準として、28質量%及び70質量%である。
プライマー層上に、グラビア印刷法を使用して、アクリルビーズ(平均粒径:12μm)及び4官能アクリレートオリゴマー(重量平均分子量:2,000)を含有する電子線硬化性樹脂組成物を塗布し、80℃で1分間乾燥して溶剤分を除いた。なお、電子線硬化性樹脂組成物に含まれるアクリルビーズ量は、電子線硬化性樹脂組成物に含まれる固形分の総質量を基準として50質量%であり、電子線硬化性樹脂組成物のP/V比(アクリルビーズ量/アクリレートオリゴマー量)は1.0である。電子線硬化性樹脂組成物の塗膜は、乾燥後の重量が9.0g/m2となるように調整した。乾燥後の塗膜を165KV、50kGryの条件で電子線を照射して硬化させ、露出面(プライマー層とは反対側の面)として凹凸面を有する樹脂層を形成し、賦形シートを得た。賦形シートの製造条件及び特性(60°光沢度、表面粗さ)を表1に示す。賦形シートは、50℃で24時間加熱養生した後、メラミン化粧板の製造に使用した。
(2)賦形シートを使用したメラミン化粧板の製造
水溶性メチロールメラミン(日本カーバイド社製ニカレジンS-260)100質量部を水60質量部で希釈してメラミン-ホルムアルデヒド水溶液を調製した後、坪量80g/m2の化粧板用原紙に対して含浸量80g/m2(乾燥時)となるように含浸させて乾燥し、メラミン樹脂含浸紙を製造した。この際、化粧板用原紙としてチタン紙を使用し、白色化粧板を製造する際には、チタン原紙として、KJ特殊紙社製KW-801Pを、黒色化粧板を製造する際には、チタン原紙として、KJ特殊紙社製PM-802PKを使用した。
フェノール樹脂を含有する樹脂組成物をクラフト紙に含浸させて調製された、坪量245g/m2のフェノール樹脂含浸コア紙(太田産業社製太田コア)を2枚積層し、フェノール樹脂含浸コア紙の積層体の上にメラミン樹脂含浸紙を積層し、さらに、樹脂層の凹凸面(賦形シートの賦形面)がメラミン樹脂含浸紙と接するように、メラミン樹脂含浸紙の上に賦形シートを積層した。
こうして形成された積層体を2枚のプレス板で挟み、温度135℃、プレス圧9.8N/m2の条件で30分間、プレス加工を行った。プレス加工後、賦形シートを剥離し、凹凸面を有するメラミン化粧板を得た。メラミン化粧板の特性(60°光沢度、表面粗さ、易掃性)を表1に示す。
(3)評価方法
賦形シート及びメラミン化粧板の特性の評価方法は、以下の通りである。
[表面粗さ]
賦形シートの凹凸面及びメラミン化粧板(黒色チタン紙を使用して製造したメラミン化粧板)の凹凸面に関し、凹凸面を構成する凹凸の中心線平均粗さRa(JIS B0601-1982)、凹凸面を構成する凹凸の最大高さRmax(JIS B0601-1982)、及び、凹凸面を構成する凹凸の平均間隔Sm(JIS B0601-1994)を、表面粗さ測定器(小坂研究所製三次元表面粗さ測定器SE-30K)及び表面粗さ解析装置(小坂研究所製サーフコーダーAY-31)を使用して、下記の条件に従って測定した。
1)表面粗さ検出部の触針
・先端径:R2μm
・スキッド:R40mm×R2mm
・材質:サファイア
・針圧:0.7μN
・触針の送り速さ:0.5mm/s
2)測定条件
・カットオフ値(基準長さ):0.08mm
・測定長さ(カットオフ値×100):8mm
・縦倍率:1000倍
・横倍率:10倍
[60°光沢度]
賦形シートの凹凸面及びメラミン化粧板(黒色チタン紙を使用して製造したメラミン化粧板及び白色チタン紙を使用して製造したメラミン化粧板)の凹凸面に関し、凹凸面の60°光沢度を、JIS Z8741:1997に準拠して測定した。具体的には、グロス計として、村上色彩技術研究所製GMX-202を使用して、入射角=60°の条件で、凹凸面の60°光沢度を測定した。
[易掃性]
メラミン化粧板(白色チタン紙を使用して製造したメラミン化粧板)の凹凸面に関し、水性サインペン(ぺんてる社製)を使用して凹凸面に文字を書いた後、乾いた布で拭き取り、凹凸面の状態を以下の基準で評価した。
A:サインペンで書いた文字が容易に拭き取れ、インキによる汚染がまったく生じていない。
B:サインペンで書いた文字が拭き取れ、インキによる汚染がほとんど生じていない。
C:サインペンで書いた文字が拭き取れず、インキによる汚染が生じている。
〔実施例2~4及び比較例1~8〕
アクリルビーズの配合量及び平均粒径を変更した点を除き、実施例1と同様にして、賦形シートを製造し、製造した賦形シートを使用してメラミン化粧板を製造した。賦形シートの製造条件及び特性(60°光沢度、表面粗さ)、並びに、メラミン化粧板の特性(60°光沢度、表面粗さ、易掃性)を表1及び表2に示す。
〔比較例9〕
凹凸面形成手段として、アクリルビーズの代わりに、平均粒径4μmの不定形シリカを使用した点を除き、実施例1と同様にして、賦形シートを製造し、製造した賦形シートを使用してメラミン化粧板を製造した。賦形シートの製造条件及び特性(60°光沢度、表面粗さ)、並びに、メラミン化粧板の特性(60°光沢度、表面粗さ、易掃性)を表2に示す。
〔比較例10~11〕
賦形シートとして、ソマール社製サンドブラストPET W3(比較例10)又はきもと社製サンドブラストPET UG(比較例11)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、賦形シートを使用してメラミン化粧板を製造した。賦形シートの特性(60°光沢度、表面粗さ)、並びに、メラミン化粧板の特性(60°光沢度、表面粗さ、易掃性)を表2に示す。
表1及び表2に示されるように、賦形シートの凹凸面を構成する凹凸に関し、中心線平均粗さRaが1.7μm以上2.7μm以下であり、最大高さRmaxが11μm以上16μm以下であり、平均間隔Smが30μm以上65μm以下であると、艶が低く(メラミン化粧板が黒色を呈する場合には、メラミン化粧板の凹凸面の60°光沢度が3以下、メラミン化粧板が白色を呈する場合には、メラミン化粧板の凹凸面の60°光沢度が4以下)、易掃性に優れた凹凸面を有するメラミン化粧板を製造することができる。