ここで、前側車体にバッテリ等の電源系統を設けると共に、後側車体にモータ等を設ける構成においては、モータに電力を供給するための高圧ハーネスを前側車体と後側車体との間に架け渡す必要が生じる。このとき、前側車体は後側車体に対してロール方向に揺動することから、高圧ハーネスが揺動動作の影響を受けないよう配慮する必要があるが、特許文献1では、高圧ハーネスの取り回しについては検討されていなかった。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、前側車体と後側車体との間に架け渡される高圧ハーネスを良好に取り回すことができる鞍乗型電動三輪車を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は、単一の前輪(WF)を支持する前側車体(BF)と、左右一対の駆動輪としての後輪(WR)を支持する後側車体(BR)と、前記後輪(WR)を支持すると共にモータ(M)を収納するパワーユニット(90)と、前記前側車体(F)の下部に取り付けられて前記後側車体(BR)をロール方向に揺動可能に軸支する揺動装置(50)とを含む鞍乗型電動三輪車(1)において、前記前側車体(BF)に設けられる電源装置(B,J)と、前記モータ(M)への供給電力を制御すると共に前記後側車体(BR)に設けられる制御装置(64)とを含み、前記電源装置(B,J)と前記制御装置(64)とを接続する高圧ハーネス(H1)に、前記揺動装置(50)の前方の位置で、前方を凸としてU字状に湾曲する湾曲部(C)が設けられている点に第1の特徴がある。
また、前記電源装置(B,J)は、シート(22)の下方に配設されるバッテリ(B)と、該バッテリ(B)の後方に配設される配線ターミナルとしてのジャンクションボックス(J)からなり、前記高圧ハーネス(H1)は、前記ジャンクションボックス(J)と前記制御装置(64)とを接続する点に第2の特徴がある。
また、前記バッテリ(B)は、前記シート(22)の下方に車幅方向に2つ並んで配設されており、前記バッテリ(B)の底部にそれぞれ設けられるバッテリ側端子(100)に下方から接続される左右一対の車体側端子(99)を具備し、前記高圧ハーネス(H1)は、前記ジャンクションボックス(J)から前記湾曲部(C)に向かう部分で、左右の前記車体側端子(99)の間を通って配索される点に第3の特徴がある。
また、前記高圧ハーネス(H1)は、前記湾曲部(C)から前記制御装置(64)に向かう部分で、前記揺動装置(50)の側面(58)に隣接配置されており、前記車体側端子(99)が、カバー部材(30R)によって下方から覆われており、前記カバー部材(30R)の下部に、下方に延びる延出部(30a)が設けられており、前記延出部(30a)が、前記揺動装置(50)の側面(58)に隣接配置された前記高圧ハーネス(H1)の車幅方向外側に配設されている点に第4の特徴がある。
また、前記高圧ハーネス(H1)は、前記湾曲部(C)から前記制御装置(64)に向かう部分で、前記揺動装置(50)の側面(58)に固定される点に第5の特徴がある。
また、前記高圧ハーネス(H1)は、前記制御装置(64)の車幅方向左側から延出して、前記揺動装置(50)の車幅方向右側の側面(58)に固定される点に第6の特徴がある。
また、前記制御装置(64)が、車体中心線(O)に対して右側にオフセットして配設されている点に第7の特徴がある。
また、前記モータ(M)が、前記車体中心線(O)に対して左側にオフセットして配設されている点に第8の特徴がある。
また、前記後側車体(BR)に、前記パワーユニット(90)の上方に設けられる荷台(19)を支持する後側車体フレーム(70)が設けられており、前記制御装置(64)は、前記後側車体フレーム(70)に固定されると共に、前記後側車体(BR)の前方に向けて露出する点に第9の特徴がある。
さらに、前記前側車体(BF)の後部を覆う後部カバー(15)を有し、前記後部カバー(15)の後面(15a)は、その下部より上部の方が後方に位置するように後傾しており、前記制御装置(64)は、前記後部カバー(15)の後面(15a)に合わせて後傾して配設されている点に第10の特徴がある。
第1の特徴によれば、単一の前輪(WF)を支持する前側車体(BF)と、左右一対の駆動輪としての後輪(WR)を支持する後側車体(BR)と、前記後輪(WR)を支持すると共にモータ(M)を収納するパワーユニット(90)と、前記前側車体(F)の下部に取り付けられて前記後側車体(BR)をロール方向に揺動可能に軸支する揺動装置(50)とを含む鞍乗型電動三輪車(1)において、前記前側車体(BF)に設けられる電源装置(B,J)と、前記モータ(M)への供給電力を制御すると共に前記後側車体(BR)に設けられる制御装置(64)とを含み、前記電源装置(B,J)と前記制御装置(64)とを接続する高圧ハーネス(H1)に、前記揺動装置(50)の前方の位置で、前方を凸としてU字状に湾曲する湾曲部(C)が設けられているので、揺動装置の前方に湾曲部を設けることで、揺動装置の近傍で高圧ハーネスをロール方向の揺動軸に沿って直線的に配索することが容易となる。これにより、後側車体に対して前側車体がロール方向に揺動する際にも、高圧ハーネスが揺動動作の影響を受けにくくすることができる。
第2の特徴によれば、前記電源装置(B,J)は、シート(22)の下方に配設されるバッテリ(B)と、該バッテリ(B)の後方に配設される配線ターミナルとしてのジャンクションボックス(J)からなり、前記高圧ハーネス(H1)は、前記ジャンクションボックス(J)と前記制御装置(64)とを接続するので、前側車体における高圧ハーネスの接続先が、前側車体の後方寄りに位置するジャンクションボックスである場合でも、湾曲部が設けられていることで、揺動装置の近傍の位置で高圧ハーネスを前後方向に直線的に配索することが可能となる。
第3の特徴によれば、前記バッテリ(B)は、前記シート(22)の下方に車幅方向に2つ並んで配設されており、前記バッテリ(B)の底部にそれぞれ設けられるバッテリ側端子(100)に下方から接続される左右一対の車体側端子(99)を具備し、前記高圧ハーネス(H1)は、前記ジャンクションボックス(J)から前記湾曲部(C)に向かう部分で、左右の前記車体側端子(99)の間を通って配索されるので、左右の車体側端子の間のスペースを利用して高圧ハーネスを配索することが可能となる。また、バッテリの下方に揺動装置を配設する場合は、バッテリと揺動装置との間に高圧ハーネスが配索されることとなり、高圧ハーネスを飛び石や外力等から保護することが可能となる。
第4の特徴によれば、前記高圧ハーネス(H1)は、前記湾曲部(C)から前記制御装置(64)に向かう部分で、前記揺動装置(50)の側面(58)に隣接配置されており、前記車体側端子(99)が、カバー部材(30R)によって下方から覆われており、前記カバー部材(30R)の下部に、下方に延びる延出部(30a)が設けられており、前記延出部(30a)が、前記揺動装置(50)の側面(58)に隣接配置された前記高圧ハーネス(H1)の車幅方向外側に配設されているので、揺動装置の側方に位置する部分の高圧ハーネスを、カバー部材の延出部によって飛び石や外力等から保護することが可能となる。
第5の特徴によれば、前記高圧ハーネス(H1)は、前記湾曲部(C)から前記制御装置(64)に向かう部分で、前記揺動装置(50)の側面(58)に固定されるので、揺動装置に高圧ハーネスを固定することで、揺動装置の側方のデッドスペースを有効利用すると共に、高圧ハーネスを安定的に配索することが可能となる。また、後側車体に対して前側車体がロール方向に揺動しても、その動きを揺動装置より前方の高圧ハーネスに伝えることを防ぐことができる。
第6の特徴によれば、前記高圧ハーネス(H1)は、前記制御装置(64)の車幅方向左側から延出して、前記揺動装置(50)の車幅方向右側の側面(58)に固定されるので、制御装置の左側から出る高圧ハーネスが、前方に位置する揺動装置の右側に向けて配索されることで、制御装置と揺動装置との間の位置に、高圧ハーネスが概ね車幅方向に指向する部分を作ることができる。これにより、前側車体が揺動しても高圧ハーネスがねじられにくく、高圧ハーネスが少し湾曲するだけで前側車体の揺動動作を吸収することが可能となって高圧ハーネスの耐久性が高められる。
第7の特徴によれば、前記制御装置(64)が、車体中心線(O)に対して右側にオフセットして配設されているので、制御装置の車幅方向左側に高圧ハーネスを接続するスペースを確保することが容易となる。
第8の特徴によれば、前記モータ(M)が、前記車体中心線(O)に対して左側にオフセットして配設されているので、左側にオフセットしたモータに対応して、制御装置が右側にオフセットして配設されることとなり、左右方向の重量バランスを整えることが可能となる。
第9の特徴によれば、前記後側車体(BR)に、前記パワーユニット(90)の上方に設けられる荷台(19)を支持する後側車体フレーム(70)が設けられており、前記制御装置(64)は、前記後側車体フレーム(70)に固定されると共に、前記後側車体(BR)の前方に向けて露出するので、制御装置を荷台フレームに安定的に固定できると共に、走行風により効果的に冷却することが可能となる。
第10の特徴によれば、前記前側車体(BF)の後部を覆う後部カバー(15)を有し、前記後部カバー(15)の後面(15a)は、その下部より上部の方が後方に位置するように後傾しており、前記制御装置(64)は、前記後部カバー(15)の後面(15a)に合わせて後傾して配設されているので、後部カバーと制御装置との間隔を確保しつつ、車両の前後長を短縮することが可能となる。また、後部カバーの表面に沿って流れる走行風によって制御装置を効果的に冷却することができる。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る鞍乗型電動三輪車1の斜視図である。また、図2は鞍乗型電動三輪車1の左側面図であり、図3は図2の状態から外装部品を取り外した鞍乗型電動三輪車1の左側面図である。
鞍乗型電動三輪車1は、1つの前輪WFを支持する前側車体BFと2つの後輪WRを支持する後側車体BRとを、揺動装置50によってロール方向に揺動可能に軸支したスクータ型の電動車両である。後輪WRを駆動するモータMに電力を供給する高圧のバッテリ(メインバッテリ)Bは、前側車体BFに設けられるシート22の下方に、車幅方向に2本並んで収納される。2本のバッテリBは、開閉式のシート22を開いた状態で上方に引き抜くことで、車体から取り外すことができる。操向ハンドル2とシート22との間には、運転者が足を乗せる低床フロア12が設けられている。
前側車体BFを構成する車体フレームFは、操向ハンドル2が固定されるステアリングステムF1を揺動可能に軸支するヘッドパイプF2と、ヘッドパイプF2から後方下方に延びるダウンフレームF3と、該ダウンフレームF3の両側面に接続されて下方に延びて後方に湾曲する左右一対の湾曲フレームF6と、該湾曲フレームF6に連結されて後方に延びる左右一対のフロアフレームF4とを含む。
操向ハンドル2には、左右一対のバックミラー3およびメータ装置4が取り付けられている。操向ハンドル2を支持するステアリングステムF1の下端部にはボトムブリッジF5が固定されており、このボトムブリッジF5に、前輪WFを回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク9が固定されている。
前側車体BFと後側車体BRとを揺動可能に支持する揺動装置50は、バッテリBの下方の位置でフロアフレームF4の下部に固定されている。大型の荷台19を有する後側車体BRには、ピボット24によって揺動自在に軸支される左右一対のスイングアーム16が設けられ、このスイングアーム16の後部に、後輪WRを支持するパワーユニット90が取り付けられている。
ヘッドパイプF2の前方は、左右一対のサイドカウル10に連なるセンタカウル5で覆われており、ヘッドパイプF2の後方にはレッグシールド11が配設されている。ヘッドライト7を支持する延出部の左右には前側フラッシャランプ6が取り付けられており、前輪WFの上方を覆うフロントフェンダ8は、フロントフォーク9に支持されている。
低床フロア12の左右両端部には、フロアフレームF4の側方および下方を覆うアンダカウル13が連結されている。シート22の下方には、バッテリケース29を前方から覆うシート下カウル14と、シート下カウル14の後部に連結される後部カバー15が配設されている。
図3に示すように、バッテリBの後方で、後部カバー15の内側の位置には、配線ターミナルであるジャンクションボックスJが配設されている。バッテリBおよびジャンクションボックスJは、モータMに電力を供給する電源装置を構成する。一方、電源装置B,Jから供給される電力をモータMに伝達するための制御装置(PCU:パワーコントロールユニット)64は、後側車体BRの前端部に配設されている。バッテリBの下端部には、車体側の端子を覆うカバー部材としてのバッテリ下部カバー30が配設されている。
後側車体BRの荷台19には、荷物のずれを防ぐ細パイプ状のストッパ18が設けられている。薄板状の合成樹脂等からなる荷台19は、後側車体フレーム70の上部に配設されており、後側車体フレーム70の下部には、後輪WRの上方を覆うリヤフェンダ17が固定されている。荷台19は、後側車体フレーム70に固定された金属製の丸パイプ材からなる荷台フレーム32に支持されている。荷台19の前端部には、荷台フレーム32の上方にアーチ状をなして立設する部分を覆う荷台フレームカバー20が配設されている。荷台フレームカバー20の前方側の面には、ノートやバインダ等の板状部材21の収納に好適な収納部23が設けられている。車体左側のリヤフェンダ17の前方には、左側電装部品カバー25が取り付けられている。主に金属製の角パイプ材からなる後側車体フレーム70の後端部には、テールランプ27、左右一対の後側フラッシャランプ28およびライセンスプレートホルダ26が固定されている。
図4は、前側車体BFを構成する車体フレームFの斜視図である。主に金属製の丸パイプ材で構成される車体フレームFは、ヘッドパイプF2から後方下方に延びるダウンフレームF3と、該ダウンフレームF3の両側面に接続されて下方に延びて後方に湾曲する左右一対の湾曲フレームF6と、該湾曲フレームF6に連結されて後方に延びる左右一対のフロアフレームF4とを含む。車幅方向中央のダウンフレームF3は、下端部で後方に湾曲して、左右一対のフロアフレームF4に固定されるガセットF7に連結される。
ガセットF7の後方の位置で、フロアフレームF4の上部には、低床フロア12を支持する長尺の低床フロア支持ステー33が架け渡されている。低床フロア支持ステー33の後方には、バッテリケース29を下方から支持する前側バッテリケース支持ステー34および後側バッテリケース支持ステー37が、それぞれ左右一対で取り付けられている。
後側バッテリケース支持ステー37の内側の位置には、車幅方向に指向して左右のフロアフレームF4を連結するクロスフレームF8が配設されており、クロスフレームF8の下部には、揺動装置50の後方寄りの位置を支持する後側ステー38が設けられている。一方、前側バッテリケース支持ステー34の下方の位置には、揺動装置50の前方寄りの位置を支持する前側ステー35が左右一対で設けられている。
図5は、揺動装置50の斜視図である。この図では、右側後方上方から見た状態を示している。金属製のケーシングを有する揺動装置50は、後側車体BRに固定される金属製の揺動軸60を揺動自在に軸支すると共に、揺動軸60を中立位置に戻す付勢力を与える付勢機構を内蔵した構造体である。揺動軸60は、車幅方向に貫通する2本のボルト61およびナット62によって後側車体BRに固定される。
揺動装置50の前端部には、左右に分割された前側支持部51L,51Rが設けられており、揺動装置50の後方寄りの車幅方向中央には、上方に立設する後側支持部55が設けられている。前側支持部51L,51Rは、ボルト53、カラー部材52およびナット54を用いて、前側車体BFの車体フレームFに設けられた前側ステー35(図4参照)に固定される。また、後側支持部55は、ボルト56およびナット57を用いて、車体フレームFに設けられた後側ステー38(図4参照)に固定される。揺動装置50の車幅方向右側には、平坦な側面58が形成されている。
図6は、後側車体BRの左側面図である。この図では、揺動装置50を後側車体BRに固定した状態で、前側車体BFを除去した状態を示す。揺動装置50の前側支持部51L,51Rには、ボルト53を通す貫通孔51aが形成されている。また、揺動装置50の後側支持部55には、ボルト56を通す貫通孔55aが形成されている。
本実施形態では、バッテリBの電力を、配線ターミナルであるジャンクションボックスJに一旦送り、ジャンクションボックスJから延びる高圧ハーネスH1,H2によって、後側車体BRに送るように構成されている。ジャンクションボックスJから下方前方に延びる高圧ハーネスH1,H2は、前側支持部51L,51Rの前方に位置する湾曲部CでUターンするように湾曲した後、揺動装置50の右側を通って後方に向けて配索される。なお、電源装置としてのジャンクションボックスJを廃して、バッテリBから直接後側車体BRに電力を供給する構成としてもよい。
荷台19は、荷物を載せる平板部19aの前端に、上方に立設する立設部19bを備えた形状とされる。荷台フレームカバー20は、荷台フレーム32のアーチ部分と荷台19の立設部19bとを同時に覆う構成とされる。
図7は、後側車体BRの斜視図である。前記したように、荷台フレームカバー20の前面部には、収納部23が設けられている。モータMに供給する電力を制御する制御装置64は、この収納部23の下方の位置で、複数の冷却フィンが車体前方に露出するように配設されている。制御装置64の左右には、左側電装部品カバー25および右側電装部品カバー63が配設されている。
図8は、荷台フレームカバー20の斜視図である。また、図9は荷台19の平面図である。合成樹脂製の薄板部材からなる荷台フレームカバー20には、収納部23を構成する貫通孔20aが形成されており、収納部23の底部は、荷台19の立設部19bに形成された方形の凹部19cによって構成されている。凹部19cの後方には、車体上方に立設する荷台フレーム32が通るスリット19dが形成されている。また、荷台19の平板部19aには、細パイプ状のストッパ18を通す計6個の貫通孔19eが形成されている。
図10は、荷台19を支持する後側車体フレーム70の斜視図である。また、図11は外装部品を取り外した状態の後側車体BRの斜視図であり、図12は同後側車体BRの斜視図である。図11では、左側前方上方から見た状態を示し、図12では、右側前方上方から見た状態を示す。
後側車体フレーム70は、主に、金属製の角パイプからなる左右一対のメインフレーム71を、車幅方向に指向する複数のクロスパイプ等で連結した構成とされる。前方下方に湾曲した先のメインフレーム71の先端部には、スイングアーム16のピボット24が通る貫通孔74が形成されている。貫通孔74の上方の位置には、左右のメインフレーム71を連結する角状の第1クロスパイプ72が設けられている。第1クロスパイプ72の下部には、ピボット24を通す円筒カラー73が固定されている。一方、第1クロスパイプ72の後部には、揺動軸60を固定するための左右一対の固定板75が取り付けられている。固定板75には、ボルト61を通す貫通孔76が形成されている。また、第1クロスパイプ72の上部には、制御装置64の下部を支持するための下側支持板77が取り付けられている。
第1クロスパイプ72の上方で、メインフレーム71が後方に湾曲する部分の近傍には、丸パイプからなる第2クロスパイプ78が設けられている。第2クロスパイプ78には、制御装置64の上部を支持するための上側支持板79が左右一対で取り付けられている。第2クロスパイプ78の後方で、右側のメインフレーム71の内側には、ダウンレギュレータ86を固定するための板状ステー81が取り付けられている。板状ステー81の上方の位置には、荷台フレーム32の前方側を支持するための前側箱状ステー80が、左右一対で設けられている。
前側箱状ステー80の後方の位置には、左右のメインフレーム71を連結する第3クロスパイプ82が設けられている。第3クロスパイプ82の近傍で、左右のメインフレーム71の下面には、リヤクッション88の上端部を支持するリヤクッション支持部83が取り付けられている。また、左側のリヤクッション支持部83の後方には、荷台19の水平を保つためのスタビライザを支持するスタビライザステー84が取り付けられており、メインフレーム71の後端部の上面には、荷台フレーム32の後方側を支持するための長尺の後側箱状ステー85が取り付けられている。
図11,12を参照して、ジャンクションボックスJ(図6参照)から延びる高圧ハーネスH1は、制御装置64の左側部に接続される。この接続部分は、左側電装部品カバー25によって覆われている。パワーユニット90への電力供給は、制御装置64の上部に設けられた配線コネクタ64aから延出する三相ハーネス89によって行われる。ジャンクションボックスJから延びる高圧ハーネスH2は、制御装置64の後方に配設されるダウンレギュレータ86に接続される。
丸パイプ材で構成される荷台フレーム32は、荷台19の外縁を支持する略方形の外枠部32bと、外枠部32bの前方寄りの位置からアーチ状に立設する立設部32aと、車幅方向に指向して左右の立設部32aを連結する左右連結部32cと、左右連結部32cと外枠部32bとを連結する左右一対の上下連結部32dとを含む。右側電装部品カバー63の内側には、低圧のサブバッテリ87やヒューズボックス等の電装部品が配設されている。
図13は、外装部品を取り外した状態の鞍乗型電動三輪車1の一部拡大左側面図である。この図では、左側の後輪WRを取り外してブレーキドラム91が露出した状態を示している。モータMやデファレンシャルギヤ等を収納すると共に、後輪WRを軸支するパワーユニット90は、ピボット24によって揺動自在に軸支される左右一対のスイングアーム16に取り付けられている。スイングアーム16の後端部には、リヤクッション88の下端部が揺動軸16aを介して取り付けられており、リヤクッション88の上端部は、揺動軸83aを介してリヤクッション支持部83に取り付けられる。スタビライザステー84には、パワーユニット90に連結されるスタビライザ92が固定される。
バッテリケース29の下方には、バッテリBの周囲を囲むように、丸パイプ状のガードフレーム95,96が配設されている。ジャンクションボックスJは、バッテリBの後方に位置するガードフレーム95に固定されている。制御装置64は、ジャンクションボックスJに対向するように、後方に傾斜した状態で後側車体フレーム70に固定されている。
図14は、高圧ハーネスH1,H2の接続関係を示すブロック図である。2つのバッテリBの電力は、不図示のハーネスを介してジャンクションボックスJに送られる。ジャンクションボックスJから延出する高圧ハーネスH1は、制御装置64に連結されており、制御装置64から延出する三相ハーネス89がモータMに接続される。一方、ジャンクションボックスJから延出する高圧ハーネスH2は、ダウンレギュレータ86に接続されており、ダウンレギュレータ86からサブバッテリ87に電力が供給される。高圧ハーネスH1は、制御装置64に電力を供給するほか、モータMの回生発電によって生じた電力をバッテリB側に戻す機能を有する。
図15は、外装部品を取り外した状態の後側車体BRの平面図である。揺動装置50は、揺動軸60の軸心が車体中心線Oに重なるように車幅方向中央に配設されている。パワーユニット90に内蔵されるモータMは、車体中心線Oに対して車幅方向左側にオフセットして配設されている。一方、制御装置64は、車体中心線Oに対して車幅方向右側にオフセットして配設されている。さらに、サブバッテリ87は、制御装置64の右側に配設されており、ダウンレギュレータ86は、車体中心線Oに対して車幅方向右側にオフセットして配設されている。本実施形態では、重量物であるモータMが車幅方向左側にオフセットして配設されていることに対応して、制御装置64のほか、サブバッテリ87やダウンレギュレータ86を車幅方向右側寄りに配設することで、左右方向の重量バランスを整えている。また、制御装置64を右側にオフセットして配設することで、制御装置64の左側部からハーネスを延出させることが容易となる。
図16は、外装部品を取り外した状態の鞍乗型電動三輪車1の一部拡大右側面図である。前記したように、バッテリBの周囲には、丸パイプ材からなるガードフレーム95,96,97が配設されており、後側のガードフレーム95にはジャンクションボックスJが固定されている。一方、前側のガードフレーム97には、コンタクタ98が固定されており、前側のガードフレーム97の下端部は、フロアフレームF4に設けられた前側バッテリケース支持ステー34に固定されている。
ジャンクションボックスJから延出する高圧ハーネスH1,H2は、バッテリBの下方を通って前方に導かれた後、揺動装置50の前方に設けられる湾曲部CでUターンして、揺動装置50の右側に導かれる。湾曲部Cの後方の位置では、前側車体BFの電装部品に電力を供給するハーネスH3と合流して3本のハーネスとなり、揺動装置50の右側を通って後方に導かれる。
車幅方向右側のバッテリBの下方には、右側バッテリ下部カバー30Rが配設されている。右側バッテリ下部カバー30Rの下部には、下方に延びる板状の延出部30aが設けられており、揺動装置50の右側を通る3本のハーネスH1,H2,H3を飛び石や外力等から保護できるように構成されている。
前記したように、揺動装置50はフロアフレームF4の下部に固定されており、揺動装置50の前側支持部51L,51Rは、車体前後方向で、バッテリBの前端と同等の位置に配設されている。これにより、例えば、車体フレームの後端部に揺動装置を取り付ける構成に比して、バッテリBの下方に揺動装置50が配設されることとなり、前側車体の前後寸法を低減すると共にマスの集中を図ることが可能となる。
また、車体側端子99は、左右のバッテリ下部カバー30L,30Rによって下方から覆われており、バッテリ下部カバー30L,30Rと揺動装置50とが、車体側面視で、互いに重なるように構成されている。これにより、揺動装置50が前側車体BFの下面に近づくこととなり、前側車体BFの上下方向の寸法を低減することができる。
図17は、図16の鞍乗型電動三輪車1の底面図である。バッテリBと車体とを電気的に接続するための車体側端子99は、バッテリ側端子(図18,19参照)の位置に合わせて、車幅方向外側寄りに配設されている。左右のバッテリ下部カバー30L,30Rは、この車体側端子99を下方から覆って端子を保護する機能を有する。車幅方向中央に位置する揺動装置50は、車体平面視で、左右一対の車体側端子99の間に配設されることとなる。これにより、左右の車体側端子99間のスペースを利用して揺動装置50を配設することで、揺動装置50を前側車体側に寄せて配置することが可能となり、前側車体BFの前後方向の寸法を低減しやすくなる。
また、フロアフレームF4が、左右一対の車体側端子99の間に配設され、左右一対のフロアフレームF4の間に、揺動装置50が配設されることとなる。これにより、左右の車体側端子間にフロアフレームF4が収まることで、前側車体BFの車幅方向寸法を低減することが可能となる。また、左右のフロアフレームF4の間に揺動装置50が配設されることで、前側車体BFの上下寸法も低減できる。
前記したように、バッテリ側端子に対応する車体側端子99は、バッテリBの車幅方向外側寄りの位置に配設されている。このため、車体側端子99が車幅方向に離間することとなり、揺動装置50を収めるスペースが広がると共に、揺動装置50を車幅方向中央に配設することが容易となる。
図18は、図3のXVIII−XVIII線断面図である。また、図19は図3のXIX−XIX線断面図である。前記したように、左右のバッテリBの底部に埋設されるバッテリ側端子100は、それぞれ車幅方向外側寄りの位置に配設されており、これに合わせて、車体側端子99も車幅方向外側寄りに配設される。車体側端子99は、レバー操作により上下する牽引部材99aによって上下動し、バッテリ側端子100との着脱動作が行われる。
フロアフレームF4は、左右のバッテリ下部カバー30L,30Rの間に収められており、このフロアフレームF4の間に、揺動装置50の上部が収まるように構成されている。これにより、前側車体BFの前後上下の寸法低減およびマスの集中が図られる。
高圧ハーネスH1,H2は、ジャンクションボックスJから湾曲部Cに向かう部分で、左右の車体側端子99の間を通って配索される。これにより、左右の車体側端子99の間のスペースを利用して高圧ハーネスH1,H2を配索することが可能となる。また、高圧ハーネスH1,H2は、バッテリBと左右のフロアフレームF4を連結するクロスフレームF8との間を通って前後方向に指向して配索される。さらに、バッテリBと揺動装置50との間に高圧ハーネスH1,H2が配索されることとなり、高圧ハーネスH1,H2を飛び石や外力等から保護することが可能となる。
図19を参照して、揺動装置50には、揺動軸60を中立位置に戻す付勢機構が取り付けられる軸部50aが設けられている。軸部50aの車幅方向右側に位置する揺動装置50の側面58には、クランプHCによってハーネスH1,H2,H3が取り付けられている。ハーネスH1,H2,H3の右側は、右側バッテリ下部カバー30Rから下方に延びる延出部30aによって保護される。
図20は、バッテリBと揺動装置50との位置関係を示す右側面図である。この図では、説明のために車体フレームFを除去した状態を示している。高圧ハーネスH1,H2には、揺動装置50の前方の位置で、前方を凸としてU字状に湾曲する湾曲部Cが設けられている。これにより、揺動装置50の近傍で高圧ハーネスH1,H2を揺動軸60に沿って直線的に配索することが容易となる。その結果、後側車体BRに対して前側車体BFがロール方向に揺動する際にも、高圧ハーネスH1,H2が揺動動作の影響を受けにくくなる。
図21は、バッテリBと揺動装置50との位置関係を示す斜視図である。この図では、車両の右側後方下方から鞍乗型電動三輪車1の底部を見た状態を示している。前記したように、左右一対のバッテリ側端子100および車体側端子99は、それぞれ車幅方向外側寄りの位置に配設されている。これにより、揺動装置50の配設スペースを確保すると共に、揺動装置50を車幅方向中央に配設することが容易となる。ジャンクションボックスJから前方下方に延びる高圧ハーネスH1,H2は、車幅方向中央でバッテリBの下方を通って前方に導かれ、揺動装置50の前方に設けられる湾曲部Cで大きく湾曲して、揺動装置50の側面58に導かれる。揺動装置50の側方では略直線をなすハーネスH1,H2,H3は、クランプHCによって揺動装置50に固定される。
図22は、バッテリBと揺動装置50との位置関係を示す左側面図である。この図では、説明のために車体フレームFを除去した状態を示している。揺動装置50は、その後端が、制御装置64と前後方向で重なるように配設される。これにより、車両の前後寸法を低減すると共に、マスの集中を図ることができる。
また、高圧ハーネスH1は、制御装置64の車幅方向左側から延出して、揺動装置50の右側の側面58に固定される。さらに、高圧ハーネスH2は、ダウンレギュレータ86から延出した後に、高圧ハーネスH1と同様に配索される。これにより、制御装置64と揺動装置50との間の位置に、高圧ハーネスH1,H2が概ね車幅方向に指向する部分を作ることができ、前側車体BFが揺動しても高圧ハーネスH1,H2がねじられにくく、高圧ハーネスH1,H2が少し湾曲するだけで前側車体の揺動動作を吸収することが可能となって、耐久性が高められる。
また、前側車体BFの後部を覆う後部カバー15の後面15aは、その下部より上部の方が後方に位置するように後傾しており、制御装置64は、後部カバー15の後面15aに合わせて後傾して配設されている。これにより、後部カバー15と制御装置64との間隔を確保しつつ、車両の前後長を短縮することが可能となる。また、後部カバー15の表面に沿って流れる走行風によって制御装置64を効果的に冷却することができる。
なお、鞍乗型電動三輪車の形態、前側車体および後側車体の形状や構造、バッテリやモータの構成、制御装置の形状や配置、車体フレームの形状や構造、揺動装置の構造や配置、高圧ハーネスの配索方法等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。