図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分には同一の参照符号を付与する。以下において、冷却器230の熱交換部233の厚み方向をZ方向、Z方向に直交し、複数のパワーモジュール110の並び方向をX方向と示す。また、Z方向及びX方向の両方向に直交する方向をY方向と示す。特に断わりのない限り、上記したX方向及びY方向により規定されるXY面に沿う形状を平面形状とする。
(第1実施形態)
本実施形態の電力変換装置は、たとえば電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)などの車両に適用可能である。以下では、ハイブリッド自動車に適用される例について説明する。
(駆動システム)
先ず、図1に基づき、電力変換装置が適用される駆動システムの概略構成について説明する。
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3,4と、直流電源2とモータジェネレータ3,4との間で電力変換を行う電力変換装置5を備えている。
直流電源2は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの充放電可能な二次電池である。モータジェネレータ3,4は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、図示しないエンジンにより駆動されて発電する発電機(オルタネータ)、及び、エンジンを始動させる電動機(スタータ)として機能する。モータジェネレータ4は、車両の走行駆動源、すなわち電動機として機能する。また、回生時には発電機として機能する。車両は、走行駆動源として、エンジン及びモータジェネレータ4を備えている。
電力変換装置5は、コンバータ6と、インバータ7,8と、制御回路部9と、平滑コンデンサC2と、フィルタコンデンサC3などを備えている。コンバータ6及びインバータ7,8は、電力変換部である。コンバータ6は、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換するDC−DC変換部であり、インバータ7,8は、DC−AC変換部である。これら電力変換部は、上下アーム回路10とコンデンサC1を有する並列回路11を、それぞれ備えている。
上下アーム回路10は、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2を有している。本実施形態では、スイッチング素子Q1,Q2として、nチャネル型のIGBTを採用している。上アーム10Uは、スイッチング素子Q1に、還流用のダイオードD1が逆並列に接続されてなる。下アーム10Lは、スイッチング素子Q2に、還流用のダイオードD2が逆並列に接続されてなる。なお、スイッチング素子Q1,Q2は、IGBTに限定されない。たとえばMOSFETを採用することもできる。ダイオードD1,D2としては、寄生ダイオードを用いることもできる。
上アーム10Uと下アーム10Lは、上アーム10UをVHライン12H側として、VHラインとNライン13との間で直列接続されている。高電位側の電力ラインであるPライン12は、上記したVHライン12Hに加えて、VLライン12Lを有している。VLライン12Lは、直流電源2の正極端子に接続されている。VLライン12LとVHライン12Hとの間にコンバータ6が設けられており、VHライン12Hの電位は、VLライン12Lの電位以上とされる。Nライン13は、直流電源2の負極に接続されており、接地ラインとも称される。このように、電力ライン間で上アーム10Uと下アーム10Lが直列接続されて、上下アーム回路10が構成されている。後述する半導体装置20は、1つのアームを構成する。
なお、スイッチング素子Q1のコレクタ電極がVHライン12Hに接続され、スイッチング素子Q2のエミッタ電極がNライン13に接続されている。スイッチング素子Q1のエミッタ電極と、スイッチング素子Q2のコレクタ電極が接続されている。
コンデンサC1の正極端子は、上アーム10Uを構成するスイッチング素子Q1のコレクタ電極に接続されている。コンデンサC1の負極端子は、下アーム10Lを構成するスイッチング素子Q2のエミッタ電極に接続されている。すなわち、コンデンサC1は、対応する上下アーム回路10に並列接続されている。並列回路11は、上下アーム回路10とコンデンサC1とが並列接続されてなる。並列回路11は、共通配線11P,11Nを有している。上アーム10UとコンデンサC1の正極端子との接続点は、共通配線11Pを介して、VHライン12Hに接続されている。下アーム10LとコンデンサC1の負極端子との接続点は、共通配線11Nを介して、Nライン13に接続されている。
本実施形態では、平滑コンデンサC2やフィルタコンデンサC3とは別に、コンデンサC1が設けられている。コンデンサC1は、並列接続された上下アーム回路10を構成するスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング時に必要な電荷を供給する機能を有せばよい。スイッチングによってエネルギーロス(損失)が発生し、上下アームの両端間の電圧が落ち込むため、不足する電荷を、並列接続されたコンデンサC1から供給する。このため、コンデンサC1の静電容量は、平滑コンデンサC2やフィルタコンデンサC3の静電容量に対して十分に小さい値とされている。たとえば、平滑コンデンサC2の静電容量が1000μFとされ、コンデンサC1の静電容量が10μF〜20μFとされている。後述するパワーモジュール110は、1つの並列回路11を構成する。
フィルタコンデンサC3は、VLライン12LとNライン13との間に接続されている。フィルタコンデンサC3は、直流電源2に並列に接続されている。フィルタコンデンサC3は、たとえば直流電源2からの電源ノイズを除去する。フィルタコンデンサC3は、平滑コンデンサC2よりも低電圧側に配置されるため低圧側コンデンサとも称される。なお、Nライン13及びVLライン12Lの少なくとも一方には、直流電源2とフィルタコンデンサC3との間に、図示しないシステムメインリレー(SMR)が設けられている。
コンバータ6は、上記した並列回路11と、リアクトルを有している。本実施形態のコンバータ6は、多相コンバータ、具体的には二相コンバータとして構成されている。コンバータ6は、2組の並列回路11と、並列回路11ごとに設けられたリアクトルR1,R2を有している。並列回路11は、VHライン12HとNライン13との間で並列接続されている。リアクトルR1,R2の一端はVLライン12Lに接続され、他端は、昇圧配線14をそれぞれ介して、対応する並列回路11における上アーム10U及び下アーム10Lの接続点に接続されている。すなわち、VLライン12Lと対応する上下アーム回路10の接続点との間に、リアクトルR1,R2が配置されている。リアクトルR1,R2は、VLライン12LとNライン13との間で、互いに並列に接続されている。
コンバータ6は、制御回路部9によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換する。コンバータ6は、直流電源2から供給される直流電圧を昇圧する機能を有している。また、平滑コンデンサC2の電荷を用いて直流電源2を充電する降圧機能も有している。
平滑コンデンサC2は、VHライン12HとNライン13との間に接続されている。平滑コンデンサC2は、コンバータ6とインバータ7,8との間に設けられており、コンバータ6及びインバータ7,8と並列に接続されている。平滑コンデンサC2は、たとえばコンバータ6で昇圧された直流電圧を平滑化し、その直流電圧の電荷を蓄積する。平滑コンデンサC2の両端間の電圧が、モータジェネレータ3,4を駆動するための直流の高電圧となる。平滑コンデンサC2の両端間の電圧は、フィルタコンデンサC3の両端間の電圧以上とされる。平滑コンデンサC2は、フィルタコンデンサC3よりも高電圧側に配置されるため高圧側コンデンサとも称される。
インバータ7は、平滑コンデンサC2を介してコンバータ6に接続されている。インバータ7は、上記した並列回路11を3組分、有している。すなわち、インバータ7は、三相分の上下アーム回路10を有している。U相の上下アーム回路10の接続点は、モータジェネレータ3の固定子に設けられたU相巻線に接続されている。同様に、V相の上下アーム回路10の接続点は、モータジェネレータ3のV相巻線に接続されている。W相の上下アーム回路10の接続点は、モータジェネレータ3のW相巻線に接続されている。各相の上下アーム回路10の接続点は、相ごとに設けられた出力配線15を介して対応する相の巻線に接続されている。
インバータ7は、制御回路部9によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動される。また、インバータ7は、エンジンの出力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路部9によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、VHライン12Hへ出力することもできる。このように、インバータ7は、コンバータ6とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行なう。
同様に、インバータ8も、平滑コンデンサC2を介してコンバータ6に接続されている。インバータ8も、上記した並列回路11を3組分、有している。すなわち、インバータ8は、三相分の上下アーム回路10を有している。U相の上下アーム回路10の接続点は、モータジェネレータ4の固定子に設けられたU相巻線に接続されている。V相の上下アーム回路10の接続点は、モータジェネレータ4のV相巻線に接続されている。W相の上下アーム回路10の接続点は、モータジェネレータ4のW相巻線に接続されている。各相の上下アーム回路10の接続点は、相ごとに設けられた出力配線15を介して対応する相の巻線に接続されている。
インバータ8は、制御回路部9によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ4へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動される。また、インバータ8は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ4が発電した三相交流電圧を、制御回路部9によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、VHライン12Hへ出力することもできる。このように、インバータ8は、コンバータ6とモータジェネレータ4との間で双方向の電力変換を行なう。
制御回路部9は、インバータ7,8のスイッチング素子を動作させるための駆動指令を生成し、図示しない駆動回路部(ドライバ)に出力する。制御回路部9は、図示しない上位ECUから入力されるトルク要求や各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。
各種センサとしては、モータジェネレータ3,4の各相の巻線に流れる相電流を検出する電流センサ、モータジェネレータ3,4の回転子の回転角を検出する回転角センサ、平滑コンデンサC2の両端電圧、すなわちVHライン12Hの電圧を検出する電圧センサ、フィルタコンデンサC3の両端電圧、すなわちVLライン12Lの電圧を検出する電圧センサ、昇圧配線14に設けられ、リアクトルR1,R2を流れる電流を検出する電流センサなどがある。電力変換装置5は、これらの図示しないセンサを有している。制御回路部9は、具体的には、駆動指令としてPWM信号を出力する。制御回路部9は、たとえばマイコン(マイクロコンピュータ)を備えて構成されている。
なお、駆動回路部は、制御回路部9からの駆動指令に基づいて駆動信号を生成し、対応する上下アーム回路10のスイッチング素子Q1,Q2のゲート電極に出力する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。本実施形態では、駆動回路部が上下アーム回路10ごとに設けられている。
次に、電力変換装置5を説明する前に、その構成要素である半導体装置20、半導体装置20を備えたパワーモジュール110について説明する。
(半導体装置)
本実施形態の電力変換装置5に適用可能な半導体装置20の一例について説明する。以下に示す半導体装置20は、上下アーム回路10の一方、すなわち1つのアームを構成するように構成されている。すなわち、2つの半導体装置により、上下アーム回路10が構成される。このような半導体装置20は、1つのアームを構成する要素単位でパッケージ化しているため、1in1パッケージとも称される。半導体装置20は、上アーム10Uと下アーム10Lとで、基本的な構成が同じであり、たとえば共通部品とすることもできる。
図2〜図7に示すように、半導体装置20は、封止樹脂体30、半導体チップ40、導電部材50、ターミナル60、主端子70、及び信号端子80を備えている。なお、図5は、図2に対して、封止樹脂体30を省略した図である。図6は、封止樹脂体30の成形後であって、タイバーなど、リードフレーム100の不要部分を除去する前の状態を示している。図7は、半導体チップ40と主端子70との位置関係を示す平面図であり、封止樹脂体30の一部、導電部材50E、及びターミナル60を省略して図示している。
半導体装置20を含むパワーモジュール110が後述する冷却器230に配置された状態で、半導体チップ40の板厚方向は、冷却器230の熱交換部233の厚み方向であるZ方向と略平行となる。また、複数の主端子70の並び方向及び複数の信号端子80の並び方向が、複数のパワーモジュール110の並び方向であるX方向と略平行となる。このため、以下の説明においても、半導体チップ40の板厚方向をZ方向、主端子70や信号端子80の並び方向をX方向と示す。
封止樹脂体30は、たとえばエポキシ系樹脂からなる。封止樹脂体30は、たとえばトランスファモールド法により成形されている。図2〜図4に示すように、封止樹脂体30は、半導体チップ40の板厚方向に平行なZ方向において、一面31と、一面31と反対の裏面32を有している。一面31及び裏面32は、たとえば平坦面となっている。封止樹脂体30は、一面31と裏面32とをつなぐ側面を有している。本例では、封止樹脂体30が、平面略矩形状をなしている。
半導体チップ40は、Si、SiC、GaNなどの半導体基板に、素子が形成されてなる。半導体装置20は、半導体チップ40を1つ備えている。半導体チップ40には、上記した1つのアームを構成する素子(スイッチング素子及びダイオード)が形成されている。すなわち、素子としてRC(Reverse Conducting)−IGBTが形成されている。たとえば上アーム10Uとして用いる場合、半導体チップ40に形成された素子はスイッチング素子Q1及びダイオードD1として機能し、下アーム10Lとして用いる場合、半導体チップ40に形成された素子はスイッチング素子Q2及びダイオードD2として機能する。
素子は、Z方向に主電流が流れるように縦型構造をなしている。図示を省略するが、素子はゲート電極を有している。ゲート電極はトレンチ構造をなしている。図3に示すように、半導体チップ40は、Z方向の両面に主電極を有している。具体的には、一面側に主電極としてコレクタ電極41を有し、一面と反対の裏面側に主電極としてエミッタ電極42を有している。コレクタ電極41はダイオードのカソード電極も兼ねており、エミッタ電極42はダイオードのアノード電極も兼ねている。コレクタ電極41は、一面のほぼ全面に形成されている。エミッタ電極42は、裏面の一部に形成されている。
図3及び図7に示すように、半導体チップ40は、エミッタ電極42が形成された裏面に、信号用の電極であるパッド43を有している。パッド43は、エミッタ電極42とは別の位置に形成されている。パッド43は、エミッタ電極42と電気的に分離されている。パッド43は、Y方向において、エミッタ電極42の形成領域とは反対側の端部に形成されている。
本例では、半導体チップ40が、5つのパッド43を有している。具体的には、5つのパッド43として、ゲート電極用、エミッタ電極42の電位を検出するケルビンエミッタ用、電流センス用、半導体チップ40の温度を検出する温度センサ(感温ダイオード)のアノード電位用、同じくカソード電位用を有している。5つのパッド43は、平面略矩形状の半導体チップ40において、Y方向の一端側にまとめて形成されるとともに、X方向に並んで形成されている。
導電部材50は、半導体チップ40と主端子70とを電気的に中継する。すなわち、主電極の配線としての機能を果たす。本例では、半導体チップ40(素子)の熱を半導体装置20の外部に放熱する機能も果たす。このため、導電部材50は、ヒートシンクとも称される。導電部材50は、電気伝導性及び熱伝導性を確保すべく、Cuなどの金属材料を少なくとも用いて形成されている。
導電部材50は、半導体チップ40を挟むように対をなして設けられている。導電部材50のそれぞれは、Z方向からの投影視において、半導体チップ40を内包するように設けられている。半導体装置20は、一対の導電部材50として、半導体チップ40のコレクタ電極41側に配置された導電部材50Cと、エミッタ電極42側に配置された導電部材50Eを有している。導電部材50Cがコレクタ電極41と後述する主端子70Cとを電気的に中継し、導電部材50Eがエミッタ電極42と後述する主端子70Eとを電気的に中継する。
図3,図5,及び図7に示すように、導電部材50Cは、Z方向において厚肉の部分である本体部51Cと、本体部51Cよりも薄肉の部分である延設部52Cを有している。本体部51Cは、厚みがほぼ一定の平面略形状をなしている。本体部51Cは、Z方向において、半導体チップ40側の実装面53Cと、実装面53Cと反対の放熱面54Cを有している。延設部52Cは、Y方向において、本体部51Cの端部から延設されている。延設部52Cは、本体部51CとX方向の長さ、すなわち幅を同じにしてY方向に延設されている。延設部52Cにおける半導体チップ40側の面は、本体部51Cの実装面53Cと略面一となっており、半導体チップ40と反対の面は、封止樹脂体30によって封止されている。延設部52Cは、少なくとも主端子70の配置側の端部に設けられれば良い。本例では、本体部51Cの両端にそれぞれ設けられている。図7では、本体部51Cと延設部52Cとの境界を二点鎖線で示している。
図3及び図5に示すように、導電部材50Eは、Z方向において厚肉の部分である本体部51Eと、本体部51Eよりも薄肉の部分である延設部52Eを有している。本体部51Eは、厚みがほぼ一定の平面略形状をなしている。本体部51Eは、Z方向において、半導体チップ40側の実装面53Eと、実装面53Eと反対の放熱面54Eを有している。延設部52Eは、Y方向において、本体部51Eの端部から延設されている。延設部52Eは、本体部51EとX方向の長さ、すなわち幅を同じにしてY方向に延設されている。延設部52Eにおける半導体チップ40側の面は、本体部51Eの実装面53Eと略面一となっており、半導体チップ40と反対の面は、封止樹脂体30によって封止されている。延設部52Eは、少なくとも主端子70の配置側の端部に設けられれば良い。本例では、本体部51Eの両端にそれぞれ設けられている。なお、本例では、導電部材50C,50Eとして共通部品を採用している。
導電部材50Cの本体部51Cにおける実装面53Cには、半導体チップ40のコレクタ電極41が、はんだ90を介して接続されている。接続方法としては、はんだ接合に限定されない。導電部材50Cの大部分は封止樹脂体30によって覆われている。導電部材50Cの放熱面54Cは、封止樹脂体30から露出されている。放熱面54Cは、一面31と略面一となっている。導電部材50Cの表面のうち、はんだ90との接続部、放熱面54C、及び主端子70の連なる部分を除く部分が、封止樹脂体30によって覆われている。
ターミナル60は、半導体チップ40と導電部材50Eとの間に介在している。ターミナル60は略直方体をなしており、その平面形状(平面略矩形状)はエミッタ電極42とほぼ一致している。ターミナル60は、半導体チップ40のエミッタ電極42と導電部材50Eとの電気伝導、熱伝導経路の途中に位置するため、電気伝導性及び熱伝導性を確保すべく、Cuなどの金属材料を少なくとも用いて形成されている。ターミナル60は、エミッタ電極42に対向配置され、はんだ91を介してエミッタ電極42と接続されている。接続方法としては、はんだ接合に特に限定されない。ターミナル60は、後述するリードフレーム100の一部分として構成されてもよい。
導電部材50Eの本体部51Eにおける実装面53Eには、半導体チップ40のエミッタ電極42が、はんだ92を介して電気的に接続されている。具体的には、導電部材50Eとターミナル60とが、はんだ92を介して接続されている。そして、エミッタ電極42と導電部材50Eとは、はんだ91、ターミナル60、及びはんだ92を介して、電気的に接続されている。導電部材50Eも、封止樹脂体30によって大部分が覆われている。導電部材50Eの放熱面54Eは、封止樹脂体30から露出されている。放熱面54Eは、裏面32と略面一となっている。導電部材50Eの表面のうち、はんだ92との接続部、放熱面54E、及び主端子70の連なる部分を除く部分が、封止樹脂体30によって覆われている。
主端子70は、半導体装置20と外部機器とを電気的に接続するための外部接続端子のうち、主電流が流れる端子である。半導体装置20は、複数の主端子70を備えている。主端子70は、対応する導電部材50に連なっている。同一の金属部材を加工することで、主端子70を対応する導電部材50と一体的に設けてもよいし、別部材である主端子70を接続によって導電部材50に連なる構成としてもよい。本例では、図6に示すように、主端子70は、信号端子80とともに、リードフレーム100の一部分として構成されており、導電部材50とは別部材とされている。図3に示すように、主端子70は、封止樹脂体30の内部で、対応する導電部材50に連なっている。
図3及び図4に示すように、主端子70のそれぞれは、対応する導電部材50からY方向に延設され、封止樹脂体30の1つの側面33から外部に突出している。主端子70は、封止樹脂体30の内外にわたって延設されている。主端子70は、半導体チップ40の主電極と電気的に接続された端子である。半導体装置20は、主端子70として、コレクタ電極41と電気的に接続された主端子70Cと、エミッタ電極42と電気的に接続された主端子70Eを有している。主端子70Cはコレクタ端子、主端子70Eはエミッタ端子とも称される。
主端子70Cは、導電部材50Cに連なっている。具体的には、延設部52Cの1つにおける半導体チップ40側の面に、はんだ93を介して接続されている。接続方法としては、はんだ接合に特に限定されない。主端子70Cは、導電部材50CからY方向に延設され、封止樹脂体30の側面33から外部に突出している。主端子70Eは、導電部材50Eに連なっている。具体的には、延設部52Eの1つにおける半導体チップ40側の面に、はんだ94を介して接続されている。接続方法としては、はんだ接合に特に限定されない。主端子70Eは、導電部材50Eから主端子70Cと同じ方向であるY方向に延設され、図3及び図4に示すように、主端子70Cと同じ側面33から外部に突出している。主端子70C,70Eの詳細については、後述する。
信号端子80は、対応する半導体チップ40のパッド43に接続されている。半導体装置20は、複数の信号端子80を有している。本例では、ボンディングワイヤ95を介して接続されている。信号端子80は、封止樹脂体30の内部でボンディングワイヤ95と接続されている。各パッド43に接続された5つの信号端子80は、それぞれY方向に延設されており、封止樹脂体30における側面33と反対の側面34から外部に突出している。信号端子80は、上記したようにリードフレーム100の一部分として構成されている。なお、同一の金属部材を加工することで、信号端子80を、主端子70Cとともに導電部材50Cと一体的に設けてもよい。
なお、リードフレーム100は、図6に示すようにカット前の状態で、外周枠部101と、タイバー102を有している。主端子70及び信号端子80のそれぞれは、タイバー102を介して外周枠部101に固定されている。封止樹脂体30の成形後、外周枠部101やタイバー102など、リードフレーム100の不要部分を除去することで、主端子70及び信号端子80が電気的に分離され、半導体装置20が得られる。リードフレーム100としては、厚みが一定のもの、部分的に厚みが異なる異形材のいずれも採用が可能である。
以上のように構成される半導体装置20では、封止樹脂体30により、半導体チップ40、導電部材50それぞれの一部、ターミナル60、主端子70それぞれの一部、及び信号端子80それぞれの一部が、一体的に封止されている。すなわち、1つのアームを構成する要素が封止されている。このため、半導体装置20は、1in1パッケージとも称される。
また、導電部材50Cの放熱面54Cが、封止樹脂体30の一面31と略面一とされている。また、導電部材50Eの放熱面54Eが、封止樹脂体30の裏面32と略面一とされている。半導体装置20は、放熱面54C,54Eがともに封止樹脂体30から露出された両面放熱構造をなしている。このような半導体装置20は、たとえば、導電部材50を、封止樹脂体30とともに切削加工することで形成することができる。また、放熱面54C,54Eが、封止樹脂体30を成形する型のキャビティ壁面に接触するようにして、封止樹脂体30を成形することによって形成することもできる。
次に、主端子70について詳細に説明する。
主端子70は、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数有している。主端子70Cと主端子70Eとは、板面同士が対向するのではなく、側面同士が対向するように、主端子70の板幅方向であるX方向に並んで配置されてる。半導体装置20は、隣り合う主端子70C,70Eによる側面対向部を複数有している。板面とは、主端子70の表面のうち、主端子70の板厚方向の面であり、側面とは板面をつなぐ面であって主端子70の延設方向に沿う面である。主端子70の残りの表面は、延設方向における両端面、すなわち突出先端面と後端面である。側面対向部を構成する側面は、主端子70の板厚方向において少なくとも一部が対向すればよい。たとえば板厚方向にずれて設けられてもよい。ただし、全面対向の方が効果的である。また、対向とは、対向する面が少なくとも向き合っていればよい。面同士が略平行とするのが良く、完全な平行状態がより好ましい。
主端子70の側面は、板面よりも面積が小さい面である。主端子70C,70Eは、互いに隣り合うように配置されている。互いに隣り合うことにより、主端子70C,70Eをそれぞれ複数有する構成では、主端子70Cと主端子70Eとが交互に配置されることとなる。主端子70C,70Eは、順に配置されている。
図7に示すように、X方向において配置が連続する3つ以上の主端子70により主端子群71が構成されている。上記したように主端子70C,70Eは隣り合って配置されており、主端子群71は主端子70C,70Eを両方含み、且つ、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数含んで構成されている。主端子群71を構成する主端子70は、それぞれの少なくとも一部が所定の領域A1内に配置されている。領域A1は、X方向において、半導体チップ40の一方の端面44から仮想的に延長された延長線EL1と、端面44とは反対の端面45から仮想的に延長された延長線EL2との間の領域である。X方向において、延長線EL1,EL2間の長さは、半導体チップ40の幅、すなわち素子幅に一致する。
本例では、主端子70C,70Eが、その全長において同じ方向(Y方向)に延設されている。主端子70は、平面一直線状をなし、X方向への延設部分を有してない。主端子70Cの厚みは、本体部51Cよりも薄くされており、たとえば延設部52Cとほぼ同じとされている。主端子70Eの厚みは、本体部51Eよりも薄くされており、たとえば延設部52Eとほぼ同じとされている。主端子70の厚みは全長でほぼ一定とされており、主端子70C,70Eでほぼ同じ厚みとされている。主端子70の幅W1は全長でほぼ一定とされており、主端子70C,70Eで同じ幅とされている。また、X方向において隣り合う主端子70の間隔P1も、すべての主端子70で同じとされている。間隔P1は、端子間ピッチとも称される。
主端子70のそれぞれは、封止樹脂体30内に屈曲部を2箇所有している。これにより、主端子70はZY平面において略クランク状をなしている。主端子70において、上記した屈曲部よりも先端の部分は平板状をなしており、この平板状部分の一部が、封止樹脂体30から突出している。封止樹脂体30からの突出部分、すなわち上記した平板状部分において、主端子70C,70Eは、図3及び図4に示すように、Z方向においてほぼ同じ位置に配置されている。また、平板状部分において、主端子70C,70Eの板厚方向は、Z方向に略一致している。これにより、主端子70Cの側面と主端子70Eの側面が、Z方向のほぼ全域で対向している。さらに、主端子70C,70Eの平板状部分の延設長さがほぼ同じであり、Y方向においてほぼ同じ位置に配置されている。これにより、主端子70C,70Eの側面は、平板状部分においてほぼ全面で対向している。
図2,図5〜図7に示すように、半導体装置20は、奇数本の主端子70、具体的には9本の主端子70を備えている。うち4本が主端子70C、残りの5本が主端子70Eとなっている。主端子70C,70EはX方向において交互に配置されており、これにより半導体装置20は、側面対向部を8つ有している。X方向両端には主端子70Eが配置されており、両端の主端子70Eを除く7本の主端子70により、主端子群71が構成されている。主端子群71は、奇数本(7本)の主端子70、具体的には4本の主端子70Cと3本の主端子70Eによって構成されている。主端子群71を構成しない2本の主端子70Eは、それぞれの全体がX方向において領域Aの外に配置されている。主端子群71を構成する主端子70のほうが、主端子群71を構成しない主端子70よりも多い構成となっている。
主端子群71を構成する7本の主端子70のうち、両端に位置する2本の主端子70Cは、X方向においてそれぞれの一部が領域A1内に配置されている。残りの5本の主端子70は、X方向においてそれぞれの全体が領域A1内に配置されている。このように、主端子群71を構成する一部の主端子70は、それぞれの全体が領域A1内に配置され、残りの主端子70は、それぞれの一部が領域A1内に配置されている。特に本例では、主端子群71を構成する複数(5本)の主端子70それぞれの全体が領域A1内に配置されている。
上記したように、主端子70C,70Eは同じ幅W1とされており、主端子70C,70Eの間隔P1も、すべての主端子70で同じとされている。そして、奇数本の主端子70のうち、X方向において真ん中(中央)に配置された主端子70Eにおける幅の中心が、半導体チップ40の中心を通る中心線CL上に位置している。このように、主端子70C,70Eは、X方向において、半導体チップ40の中心を通る中心線CLに対して線対称配置とされている。なお、複数の主端子70Cは中心線CLに対して線対称配置とされ、複数の主端子70Eは中心線CLに対して線対称配置とされている。また、主端子群71を構成する奇数本の主端子70も、中心線CLに対して線対称配置とされている。中心線CLの延設方向は、Z方向及びX方向に直交している。
次に、上記した半導体装置20の効果について説明する。
上記した半導体装置20は、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数有しており、主端子70C,70EがX方向において隣り合って配置されている。そして、隣り合う主端子70C,70Eの側面同士が対向している。主端子70C,70Eで主電流の向きは逆向きとなる。このように、主端子70C,70Eは、主電流が流れたときに生じる磁束をお互いに打ち消すように配置されている。したがって、インダクタンスを低減することができる。特に本例では、主端子70C,70Eの側面対向部を複数有するため、インダクタンスを効果的に低減することができる。同じ種類の主端子70を複数にして並列化するため、インダクタンスを低減することができる。
また、連続して配置された少なくとも3本の主端子70によって主端子群71が構成されている。主端子群71を構成する主端子70は、それぞれの少なくとも一部が、X方向において、半導体チップ40の両端面44,45から延長された延長線EL1,EL2間の領域A1内に配置されている。すなわち、複数の側面対向部が領域A1内に配置されている。これにより、主端子群71を構成する主端子70と半導体チップ40の主電極との電流経路を簡素化、具体的には電流経路を短くすることができる。したがって、インダクタンスを低減することができる。
以上により、上記した半導体装置20によれば、従来よりも主回路配線のインダクタンスを低減することができる。なお、側面同士が対向するように複数の主端子70がX方向に並んで配置され、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数有し、連続して配置された少なくとも3本の主端子70により主端子群71が構成され、一部分において同じ種類の主端子70が連続して配置されるようにしてもよい。これによれば、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数にして並列化するため、インダクタンスを低減することができる。また、主端子群71を有することで、主端子群71を構成する主端子70と半導体チップ40の主電極との電流経路を簡素化することができる。これにより、インダクタンスを低減することができる。したがって、本例に準ずる効果を奏することができる。しかしながら、本例に示すように、主端子70C,70Eを隣り合うように配置したほうが、磁束打消しの効果によってインダクタンスをさらに低減することができる。
主端子群71において、X方向において全体が領域A1内に配置される主端子70のほうが、一部のみが領域A1に配置される主端子70よりも、電流経路の簡素化の点ではより好ましい。本例では、主端子群71を構成する主端子70の一部についてそれぞれの全体が領域A1内に配置され、残りの主端子70についてそれぞれの一部が領域A1内に配置されている。主端子群71が、電流経路の簡素化についてより効果的な主端子70を含むため、インダクタンスを効果的に低減することができる。特に本例では、全体が領域内に配置される主端子70を複数含んでいる。電流経路の簡素化についてより効果的な主端子70を複数含むため、インダクタンスをより効果的に低減することができる。
本例では、主端子70の本数が奇数とされている。奇数の場合、X方向において対称性をもたせやすく、主端子70との半導体チップ40との電流経路の偏りを抑制することができる。また、X方向における主端子70の並び順が、一面31側から見ても、裏面32側から見ても同じである。したがって、半導体装置20の配置の自由度を向上することができる。
特に本例では、主端子70C,70Eが、X方向において、半導体チップ40の中心線CLに対して線対称配置とされている。これにより、半導体チップ40の主電流は、中心線CLに対して線対称となるように流れる。主電流は、中心線CLの左右でほぼ均等に流れる。したがって、インダクタンスをさらに低減することができる。また局所的な発熱を抑制することができる。
図8〜図10は別例を示している。図8〜図10では、便宜上、封止樹脂体30及び信号端子80を省略して図示している。図8〜図10では、便宜上、領域A1の図示を省略し、領域A1を規定する延長線EL1,EL2を示している。
図8では、半導体装置20が3本の主端子70、具体的には、1本の主端子70Cと2本の主端子70Eを備えている。すなわち、2つの側面対向部を有している。そして、すべての主端子70によって主端子群71が構成されている。真ん中に配置された主端子70Cは、X方向において全体が上記した領域A1に配置され、両端の主端子70Eは、それぞれの一部が領域A1に配置されている。
図9では、半導体装置20が5本の主端子70、具体的には、2本の主端子70Cと3本の主端子70Eを備えている。すなわち、4つの側面対向部を有している。そして、すべての主端子70によって主端子群71が構成されている。両端の主端子70Eは、それぞれの一部が領域A1に配置され、残り3本の主端子70はそれぞれの全体が領域A1に配置されている。
図10では、半導体装置20が7本の主端子70、具体的には、3本の主端子70Cと4本の主端子70Eを備えている。すなわち、6つの側面対向部を有している。そして、すべての主端子70によって主端子群71が構成されている。両端の主端子70Eは、それぞれの一部が領域A1に配置され、残り5本の主端子70はそれぞれの全体が領域A1に配置されている。
図11は、半導体装置20が備える主端子トータルのインダクタンスについて磁場解析を行った結果を示している。この磁場解析(シミュレーション)では、導電部材50のX方向の長さ(幅)を17mm、主端子70の間隔P1を1.0mmとした。また、同じ半導体装置20を構成する主端子70において、幅W1を互いに等しいものとした。たとえば主端子70を3本有する構成の場合、図11では3端子と示している。図11では、比較例として主端子を2本のみ有する構成(2端子)を示している。9端子は、図7に示した構成と同じ配置の結果である。同様に、3端子、5端子、7端子は、図8〜図10に示した構成と同じ配置の結果である。
端子数が増えるほど、1本当たりの幅は狭くなり、インダクタンス(自己インダクタンス)は増加する。しかしながら、側面対向部が増加し、主端子群71を構成する主端子70の本数も、所定の端子数までは端子数が増えるほど増加するため、インダクタンスを低減できる。3端子、5端子、及び7端子は、図8〜図10に示したように、すべての主端子70によって主端子群71が構成されている。すなわち、すべての主端子70が領域A1内に配置されている。また、9端子は、図7に示したように、7本の主端子70によって主端子群71が構成されている。
図11の結果から、3本以上の主端子70により構成される主端子群71を備えることで、体格の増大を抑制しつつ、比較例に較べて主端子トータルのインダクタンスを低減できることが明らかである。3端子以上では、上記したインダクタンス低減の効果が幅減少によるインダクタンス増加を上回り、インダクタンスが低減するためであると考えられる。特に5本以上の主端子70による主端子群71を備える構成とすると、比較例に較べてインダクタンスを半減以下にできる、すなわちインダクタンス低減に効果的であることが明らかである。
なお、9端子は、上記したように主端子群71を構成する7本の主端子70と、領域A1の外に配置された2本の主端子70を備えている。このように2本の主端子70が領域A1外とされてはいるものの、主端子群71を構成しない主端子70よりも多い主端子70、すなわち大部分の主端子70が領域A1に配置されている。また、側面対向部の数も7端子に較べて側面対向部が2つ多い。よって、7端子よりも低いインダクタンスを示している。
上記した例では、主端子70Eが両端に配置される構成、すなわち主端子70Eのほうが主端子70Cよりも多い構成の例を示したがこれに限定されない。奇数本の主端子70において、主端子70Cを主端子70Eよりも多い構成としてもよい。
すべての主端子70において、封止樹脂体30からの突出部分の長さが等しい例を示したが、これに限定されない。バスバーなどとの接続性を考慮し、隣り合う主端子70C,70Eで突出部分の長さを異ならせてもよい。図12に示す別例では、主端子70Cを主端子70Eよりも長くしている。
図13に示す別例では、本数が少ない主端子70Cの断面積を、本数が多い主端子70Eの断面積よりも大きくし、これにより、主端子70Cトータルと主端子70Eトータルのインピーダンスをほぼ一致させている。したがって、本数が少ない主端子70Cの発熱を抑制することができる。図13では、幅を広くすることにより主端子70Cの断面積を主端子70Eの断面積よりも大きくしているが、主端子70Cの厚みを主端子70Eよりも厚くしてもよい。また、幅と厚みの両方を調整してもよい。図13では、本数が少ない主端子70Cの延設方向の長さを、主端子70Eの延設方向の長さよりも長くしている。長いほうが断面積が大きいため、主端子70の剛性を確保することができる。図12及び図13では7端子の例を示しているが、これに限定されるものではない。
封止樹脂体30からの突出部分において、延設方向の全長で隣り合う主端子70C,70Eが対向する例を示したが、これに限定されない。突出部分の一部で、側面同士が対向しない構成としてもよい。たとえば主端子70C,70Eの少なくとも一方において、突出先端部分が屈曲しており、これにより突出先端部分で対向しない構成としてもよい。延設長さが等しくても、バスバーなどとの接続性を高めることができる。しかしながら、インダクタンス低減の効果は減少する。
主端子70の本数が奇数において、主端子群71を構成する主端子70の本数も奇数の例を示したが、これに限定されない。主端子群71を、偶数本(4本以上)の主端子70により構成してもよい。
半導体装置20は、少なくとも1つの半導体チップ40を備えればよい。たとえば複数の半導体チップ40を備え、これら半導体チップ40が主端子70C,70Eの間で互いに並列接続される構成において、各半導体チップ40に対して上記した主端子70の配置を適用してもよい。
主端子群71を構成するすべての主端子70それぞれの全体が、領域A1内に配置されてもよい。図14に示す別例では、7本の主端子70のうち、5本の主端子70によって主端子群71が構成されている。そして、主端子群71を構成する5本の主端子70は、それぞれの全体が領域A1内に配置されている。これによれば、半導体チップ40の主電極との間の電流経路をより簡素化できる。
主端子70を偶数本(4本以上)を備えてもよい。図15に示す別例では、半導体装置20が、主端子70C,70Eを2本ずつ備えている。主端子70Cと主端子70Eは交互に配置されている。4本の主端子70は、幅W1及び厚みのそれぞれが互いに等しくされている。すなわち、延設方向に直交する断面積が互いに等しくされている。また、Y方向の延設長さも、4本の主端子70で互いに等しくされている。また、すべての主端子70により主端子群71が構成されている。両端に配置された2本の主端子70C,70Eは、X方向においてそれぞれの一部が領域A1内に配置されている。真ん中の2本の主端子70C,70Eは、X方向においてそれぞれの全体が領域A1内に配置されている。
このような構成としても、主端子70C,70Eの側面対向部を複数有するため、インダクタンスを効果的に低減することができる。また、主端子群71を有するため、主端子群71を構成する主端子70と半導体チップ40の主電極との電流経路を簡素化し、インダクタンスを低減することができる。以上により、従来よりも主回路配線のインダクタンスを低減することができる。図11には、4端子の結果も示している。図11の結果から、4端子の場合でも、体格の増大を抑制しつつ、比較例に較べて主端子トータルのインダクタンスを低減できることが明らかである。
図15では、すべての主端子70によって主端子群71が構成されているため、インダクタンスを効果的に低減することができる。なお、主端子70の本数が偶数の場合にも、連続して配置された3本以上の主端子70によって主端子群71が構成されればよい。したがって、4本の主端子70を備える構成において、3本により主端子群71が構成され、残りの1本が領域A1の外に配置された構成としてもよい。このように、主端子70の本数が偶数において、主端子群71を、奇数本(3本以上)の主端子70により構成してもよい。
主端子70の本数が偶数の場合、主端子70Cと主端子70Eとが同じ本数であるため、主端子70Cと主端子70Eとで流れる主電流が均等となり、これにより発熱のばらつきを抑制することができる。図15に示す例では、主端子70C,70Eの延設長さが等しく、且つ、断面積も等しくされており、これにより、主端子70Cと主端子70Eのインピーダンスがほぼ等しくなっている。したがって、発熱ばらつきを効果的に抑制することができる。
偶数の本数は4本に限定されない。4本以上の偶数であればよい。たとえば6本の主端子70を備える構成、8本の主端子70を備える構成としてもよい。奇数本同様、隣り合う主端子70C,70Eで突出部分の長さを異ならせてもよい。また、主端子70C,70Eのうち、突出部分の長さが長いほうの断面積を、短いほうの断面積よりも大きくしてもよい。これにより剛性を確保することができる。また、主端子70Cと主端子70Eとでインピーダンスを揃えることができる。突出部分の一部で、側面同士が対向しない構成としてもよい。
リードフレームの一部として、主端子70C,70Eの少なくとも一方とともに設けられた連結部をさらに備え、連結部によって、主端子70C,70Eの少なくとも一方において、同じ主端子同士が連結されてもよい。図16に示す別例では、半導体装置20が5本の主端子70、具体的には2本の主端子70Cと3本の主端子70Eを備えている。また、上記したリードフレーム100が、主端子70E同士を連結する連結部96を有している。封止樹脂体30からの突出長さは、主端子70Eのほうが主端子70Cよりも長くされており、連結部96は主端子70Eの突出先端部分を連結している。連結部96はX方向に延設されており、Y方向において主端子70Cとは離れて設けられている。連結部96は、Z方向において主端子70C,70Eの突出部分と同じ位置に配置されている。
このように、連結部96によって同電位の主端子70(主端子70E)を連結すると、バスバーなどとの接続点を減らすことができる。すなわち、接続性を向上することができる。特に図16では、本数の多い主端子70Eを連結している。これによれば、同一のリードフレーム100に主端子70C,70E及び連結部96を備える構成において、接続点をより少なくすることができる。なお、主端子70Eに代えて、主端子70Cを連結部96にて連結してもよい。主端子70C,70Eのうち、本数の少ないほうを連結してもよい。主端子70の本数及び配置は図16に示す例に限定されない。主端子70C,70Eの一方のみに連結部96を設ける場合、連結部96を上記したように主端子70C,70Eの突出分と同一平面に設けることもできる。偶数本の主端子70を備える構成と組み合わせてもよい。
また、主端子70C,70Eのそれぞれを連結部にて連結してもよい。図17及び図18に示す別例では、導電部材50C,50Eが本体部51C,51Eを有し、延設部52C,52Eを有していない。そして、同一のリードフレームに、導電部材50C、主端子70C、及び信号端子80が構成されている。また、主端子70Cを含むリードフレームとは別のリードフレームに、導電部材50E及び主端子70Eが構成されている。主端子70C,70Eは対応する導電部材50C,50Eから延設されている。図18は、図17のXVIII-XVIIIに沿う半導体装置20の断面図である。
図17及び図18では、主端子70C側のリードフレームに連結部96Cが設けられ、主端子70E側のリードフレームに連結部96Eが設けられている。そして、連結部96Cにより、突出先端部にて主端子70C同士が連結されている。また、連結部96Eにより、突出先端部にて主端子70E同士が連結されている。主端子70C,70Eは突出部分に屈曲部を有しており、これにより連結部96C,96EがZ方向において離反している。すなわち、連結部96C,96Eは、Z方向において互いに異なる位置に配置されている。したがって、延設長さが同じでも、主端子70C,70Eのそれぞれを連結部96C,96Eにて連結することができる。そして、接続点数をさらに少なくすることができる。
図19及び図20に示す別例では、半導体装置20が、互いに並列接続される複数の半導体チップ40を備えている。具体的には、半導体チップ40として、半導体チップ40aと、半導体チップ40bを備えている。なお、図19は、図20に示すXIX-XIX線に対応する半導体装置20の断面図である。半導体チップ40a,40bのコレクタ電極41は、同じ導電部材50Cの実装面53Cに接続されている。また、半導体チップ40a,40bのエミッタ電極42は、個別に配置されたターミナル60を介して、同じ導電部材50Eの実装面53Eに接続されている。本実施形態では、2つの半導体チップ40a,40bが、互いにほぼ同じ平面形状、具体的には平面略矩形状をなすとともに、互いにほぼ同じ大きさとほぼ同じ厚みを有している。半導体チップ40a,40bは、Z方向においてほぼ同じ高さに位置するとともに、X方向において横並びで配置されている。
図20に示すように、X方向において配置が連続する2本以上の主端子70によって主端子群72が構成されている。半導体装置20は、主端子群72として、半導体チップ40aに対応する主端子群72aと、半導体チップ40bに対応する主端子群72bを有している。主端子群72aを構成する主端子70それぞれの少なくとも一部が、X方向において、半導体チップ40aの両端面44a,45aから延長された延長線EL1a,EL2a間の領域A1a内に配置されている。また、主端子群72bを構成する主端子70それぞれの少なくとも一部が、X方向において、半導体チップ40bの両端面44b,45bから延長された延長線EL1b,EL2b間の領域A1b内に配置されている。
半導体装置20は、5本の主端子70を備えている。具体的には、2本の主端子70Cと3本の主端子70Eを備えている。主端子70の幅W1及び厚みは互いに等しく、間隔P1もすべて等しくされている。そして、真ん中の主端子70Eが領域A1a,A1bの外に配置されている。X方向において真ん中の主端子70Eよりも半導体チップ40a側に配置された2本の主端子70C,70Eにより主端子群72aが構成され、真ん中の主端子70Eよりも半導体チップ40b側に配置された2本の主端子70C,70Eにより主端子群72bが構成されている。
さらに、主端子群72aを構成する主端子70C,70Eはそれぞれの全体が領域A1aに配置されている。同じく、主端子群72bを構成する主端子70C,70Eはそれぞれの全体が領域A1bに配置されている。そして、2つの半導体チップ40の素子的中心を通る中心線CLmに対して、5本の主端子70が線対称配置とされている。素子的中心とは、半導体チップ40a,40bの並び方向において中心間の中央位置であり、中心線CLmは、並び方向に直交し、素子的中心を通る仮想線である。
このように、複数の半導体チップ40が並列接続された半導体装置20において、主端子70Cと主端子70Eとが交互に配置されている。そして、隣り合う主端子70C,70Eの側面同士が対向している。このように、主端子70Cと主端子70Eとの側面対向部を複数、具体的には4つ有するため、インダクタンスを効果的に低減することができる。また、主端子群72aを構成する主端子70C,70Eそれぞれの少なくとも一部が、領域A1a内に配置されている。したがって、主端子群72aを構成する主端子70C,70Eと半導体チップ40aの主電極との電流経路を簡素化し、これによりインダクタンスを低減することができる。同じく、主端子群72bを構成する主端子70C,70Eそれぞれの少なくとも一部が領域A1b内に配置されている。したがって、主端子群72bを構成する主端子70C,70Eと半導体チップ40bの主電極との電流経路を簡素化し、これによりインダクタンスを低減することができる。以上により、従来よりも主回路配線のインダクタンスを低減することができる。
また、奇数本の主端子70が、2つの半導体チップ40の中心線CLmに対して線対称配置とされている。換言すれば、側面対向部が線対称配置とされている。したがって、半導体チップ40a,40bの主電流は、中心線CLmに対して線対称となるように流れる。すなわち、半導体チップ40a側のインダクタンスと、半導体チップ40b側のインダクタンスがほぼ等しくなっている。このように、インダクタンスを揃えることで、電流アンバランスを抑制することができる。
2つの半導体チップ40が並列接続される例を示したが、これに限定されない。3つ以上の半導体チップ40が並列接続される構成にも適用できる。主端子70の本数も特に限定されない。主端子群72のそれぞれが、主端子70C,70Eを含む2本以上の主端子70により構成されればよい。たとえば、7本の主端子70を備え、3本ずつの主端子70によって主端子群72a,72bが構成されてもよい。図16〜図18に示した連結部96(86C,86E)を組み合わせてもよい。
スイッチング素子とダイオードが同じ半導体チップ40に一体的に形成される例を示したが、これに限定されない。スイッチング素子とダイオードを別チップとしてもよい。両面放熱構造の半導体装置20として、ターミナル60を備える例を示したが、これに限定されない。ターミナル60を備えない構成としてもよい。たとえば、ターミナル60の代わりに、導電部材50Eに、エミッタ電極42に向けて突出する凸部を設けてもよい。放熱面54C,54Eが、封止樹脂体30から露出される例を示したが、封止樹脂体30から露出されない構成としてもよい。たとえば図示しない絶縁部材によって放熱面54C,54Eを覆ってもよい。絶縁部材を放熱面54C,54Eに貼り合わせた状態で、封止樹脂体30を成形してもよい。
(パワーモジュール)
本実施形態の電力変換装置5に適用可能なパワーモジュール110の一例について説明する。パワーモジュール110は、上記した1組の並列回路11を構成する。
図21〜図27に示すように、パワーモジュール110は、半導体装置20と、冷却器120と、コンデンサC1と、Pバスバー130と、Nバスバー140と、出力バスバー150と、駆動基板160と、外部接続端子170と、保護部材180を備えている。図21、図23〜図26は平面図ではあるが、保護部材180の内部要素を分かりやすくするために、内部要素を実線で示している。図27は、半導体装置20、コンデンサC1、及び各バスバー130,140,150の接続を説明するための模式的な図である。
半導体装置20は、上記した1in1パッケージ構造をなしている。パワーモジュール110は、2つの半導体装置20を備えている。半導体装置20の1つが上アーム10Uを構成し、別の1つが下アーム10Lを構成する。すなわち、半導体装置20として、上アーム10Uを構成する半導体装置20Uと、下アーム10Lを構成する半導体装置20Lを備えている。半導体装置20U,20Lの基本構成は、互いにほぼ同じとなっている。半導体装置20U,20Lは、7本の主端子70、具体的には、3本の主端子70C及び4本の主端子70Eをそれぞれ有している。主端子70C,70Eは、X方向に交互に配置されている。以下では、半導体装置20Uが備え、上アーム10Uを構成する半導体チップ40を半導体チップ40Uと示し、半導体装置20Lが備え、下アーム10Lを構成する半導体チップ40を半導体チップ40Lと示す。
半導体装置20Lは、図12に示した構造と同じ構成となっている。主端子70Cのほうが主端子70Eよりも、封止樹脂体30からの突出長さが長い構成となっている。半導体装置20Uは、半導体装置20Lとは逆の構成となっている。主端子70Eのほうが主端子70Cよりも、封止樹脂体30からの突出長さが長い構成となっている。このように、半導体装置20Uでは主端子70Eが長くされ、半導体装置20Lでは主端子70Cが長くされている。半導体装置20Uの主端子70Cと半導体装置20Lの主端子70Eが同じ長さとされ、半導体装置20Uの主端子70Eと半導体装置20Lの主端子70Cが同じ長さとされている。
半導体装置20U,20Lは、所定の隙間を有しつつX方向に並んで配置されている。すなわち、半導体チップ40の板厚方向、すなわちZ方向に対して直交する方向に並んで配置されている。半導体装置20U,20Lは、Z方向において、封止樹脂体30の一面31同士が同じ側となり、裏面32同士が同じ側となるように配置されている。半導体装置20U,20Lの一面31同士はZ方向において略面一の位置関係とされ、裏面同士はZ方向において略面一と位置関係とされている。
半導体装置20U,20Lのそれぞれにおいて、信号端子80における封止樹脂体30からの突出部分は、略L字状をなしている。信号端子80の突出部分は、略90度の屈曲部を1つ有している。信号端子80の突出部分のうち、封止樹脂体30の根元から屈曲部までがY方向に延設され、屈曲部から突出先端までがZ方向であって、コンデンサC1とは反対側に延びている。
冷却器120は、主として、半導体装置20を冷却する。冷却器120は、熱伝導性に優れた金属材料、たとえばアルミニウム系の材料を用いて形成されている。冷却器120は、供給管121と、排出管122と、熱交換部123を有している。冷却器120は、パワーモジュール110に設けられているため、モジュール内冷却器とも称される。
熱交換部123は、一対のプレート124,125によって構成されている。プレート124,125は、平面略矩形状の金属薄板を用いて形成されている。プレート124,125の少なくとも一方は、プレス加工することで、Z方向に膨らんだ形状、たとえば底の浅い鍋底形状をなしている。本例では、プレート124が鍋底形状をなしている。また、プレート124,125の外周縁部同士が、かしめなどによって固定されるとともに、ろう付けなどによって全周で互いに接合され、これにより、プレート124,125の間に流路126が形成されている。
熱交換部123は、全体として扁平形状の管状体となっている。冷却器120は、2つの熱交換部123を有しており、熱交換部123は、Z方向に2段配置されている。2つの半導体装置20U,20Lは、X方向に並んで配置された状態で、2つの熱交換部123により挟持されている。2つの熱交換部123は、プレート124同士が対向するように配置されている。熱交換部123の1つは半導体装置20の一面31側に配置され、熱交換部123の別の1つは裏面32側に配置される。上記したように放熱面54C,54Eが封止樹脂体30から露出する構成では、半導体装置20と熱交換部123のプレート124との間に、グリース、セラミック板、樹脂材などの電気絶縁部材が配置される。
供給管121は、その内部に流路が形成された筒状体であり、Z方向に延設されている。供給管121は、平面略矩形状の熱交換部123に対し、X方向における一方の端部であって、Y方向における主端子70側の端部に配置されている。そして、熱交換部123のそれぞれに接続され、供給管121の流路が熱交換部123の流路126に連通している。Z方向において、供給管121の一端は開口しており、他端が2段目の熱交換部123に接続されている。1段目の熱交換部123の流路126は、供給管121の延設途中で、供給管121の流路に連なっている。なお、1段目が供給管121及び排出管122の開口端に近い側、2段目が遠い側である。供給管121の開口端から一部分は、保護部材180の外へ突出している。
排出管122は、その内部に流路が形成された筒状体であり、Z方向に延設されている。排出管122は、平面略矩形状の熱交換部123に対し、X方向において供給管121とは反対の端部であって、Y方向において信号端子80側の端部に配置されている。そして、熱交換部123のそれぞれに接続され、排出管122の流路が熱交換部123の流路126に連通している。排出管122は、供給管121とZ方向の同じ側で開口している。開口端とは反対の端部が2段目の熱交換部123に接続されている。1段目の熱交換部123の流路126は、排出管122の延設途中で、排出管122の流路に連なっている。排出管122の開口端から一部分は、保護部材180の外へ突出している。
図26に二点鎖線の矢印で示すように、供給管121から流入した冷媒は、熱交換部123内の流路126を拡がり、排出管122から排出される。上記したように、供給管121と排出管122は、平面略矩形状の対角位置に設けられている。このように、対角位置に設けることで、X方向及びY方向において、供給管121と排出管122の間に配置された半導体チップ40U,40Lを効果的に冷却することができる。なお、図示しないが、熱交換部123の流路126内に、インナーフィンを配置してもよい。インナーフィンは、波型に屈曲形成された金属板である。インナーフィンの配置により、プレート124,125と、流路126を流れる冷媒との間における熱伝達を促進することができる。
流路126に流す冷媒としては、水やアンモニアなどの相変化する冷媒や、エチレングリコール系などの相変化しない冷媒を用いることができる。冷却器120は、主として半導体装置20を冷却するものである。しかしながら、冷却機能に加えて、環境温度が低い場合に温める機能を持たせてもよい。この場合、冷却器120は温度調節器と称される。また、冷媒は熱媒体と称される。
コンデンサC1は、パワーモジュール110が備える1組の半導体装置20U,20Lの近傍に配置され、上記したように、少なくともスイッチング時に必要な電荷を供給する機能を有せばよい。このため、コンデンサC1の静電容量は、たとえば10〜20μFとされている。コンデンサC1は、略直方体状をなしている。コンデンサC1は扁平形状をなしており、厚み、すなわちZ方向の長さが、X方向の長さ及びY方向の長さに対して十分に短くされている。このように、コンデンサC1は小型なものとされている。コンデンサC1としては、たとえばフィルムコンデンサを用いることができる。
本例では、Y方向よりもX方向に長い平面長方形をなしている。Z方向の投影視において、コンデンサC1の大部分は、冷却器120の熱交換部123と重なる位置に配置されている。同投影視において、半導体装置20U,20Lの大部分、具体的には主端子70の突出部分及び信号端子80の突出部分を除く部分と重なっている。したがって、コンデンサC1は、Z方向において半導体装置20U,20Lと並んで配置されている。平面長方形のコンデンサC1は、X方向の両端部分が、冷却器120と重ならない位置、すなわち冷却器120の外側に配置されている。
コンデンサC1は、半導体装置20との間に熱交換部123を挟むように配置されている。コンデンサC1は、熱交換部123に対して、半導体装置20とは反対側に配置されている。本例では、コンデンサC1が、1段目の熱交換部123に対して半導体装置20とは反対側に配置されている。すなわち、供給管121及び排出管122の開口端側に配置されている。コンデンサC1は、Z方向において、供給管121及び排出管122の開口端よりも半導体装置20に近い位置に配置されている。コンデンサC1は、Z方向において熱交換部123側の面に外部接続用の図示しない正極端子を有し、正極端子とは反対の面に図示しない負極端子を有している。
Pバスバー130、Nバスバー140、及び出力バスバー150は、導電性に優れる金属、たとえば銅を含む金属板材である。本例では、各バスバーにおいて厚みがほぼ均一とされている。Pバスバー130、Nバスバー140、及び出力バスバー150は、互いにほぼ同じ厚みとされている。金属板材としては、部分的に厚みの異なる異形条を用いることもできる。Pバスバー130、Nバスバー140、及び出力バスバー150は、冷却器120と電気的に分離されている。
Pバスバー130は、接続部131と、共通配線部132と、並列配線部133を有している。接続部131は、コンデンサC1の正極端子に接続される部分である。本例では、Z方向の投影視において、コンデンサC1と重なる部分全体が接続部131とされている。なお、図示しないが、X方向又はY方向の投影視においてコンデンサC1と重なる部分、すなわちコンデンサC1の側面に接続部131を設けてもよい。
共通配線部132は、接続部131におけるY方向の一端から延設されている。共通配線部132は、Pバスバー130のうち、上記した共通配線11Pとして機能する部分である。これにより、パワーモジュール110内に構成される1組の上下アーム回路10とコンデンサC1とが、それぞれ単独で上記したVHライン12Hに接続されるのではなく、共通で接続されることとなる。共通配線部132は、接続部131よりもX方向の長さ、すなわち幅が狭くされている。共通配線部132は、X方向において、接続部131の中央部分に連なっている。共通配線部132は、接続部131に対して略面一で、Y方向に延設されている。共通配線部132の一部分は、保護部材180の外へ突出している。
並列配線部133は、少なくとも、コンデンサC1の正極端子と上下アーム回路10の上アーム10Uとを電気的に接続する配線、すなわち上下アーム回路10とコンデンサC1とを並列接続する配線として機能する。さらに本例では、上アーム10Uを共通配線11P、すなわち共通配線部132に電気的に接続する配線としても機能する。並列配線部133は、接続部131に対し、共通配線部132とは反対の端部から延設されている。
並列配線部133は、接続部131よりも幅が狭くされている。並列配線部133は、一定の幅で延設されている。並列配線部133は、X方向においてコンデンサC1を二等分する中心線CL1(図23参照)を跨がないように、中心線CL1に対して一方に偏って配置されている。並列配線部133は、半導体装置20U,20Lの並び方向において、半導体装置20U(半導体チップ40U)の側で接続部131に連なっている。
並列配線部133は、略L字状をなしている。並列配線部133は、接続部131との境界部からY方向に沿って延びる平行部134と、平行部134に対して折り曲げられ、Z方向に沿って延びる折曲部135を有している。このため、平行部134は、Y方向延設部とも称される。折曲部135は、Z方向延設部とも称される。平行部134は、Y方向であって、共通配線部132とは反対側に延設されている。平行部134は、接続部131に対して略面一で、Y方向に延設されている。
平行部134は、Z方向の投影視において、半導体装置20Uの7本の主端子70C,70Eのそれぞれの少なくとも一部と重なっている。平行部134は、半導体装置20Uの主端子70Cの突出先端とほぼ同じ位置まで延設されており、3本の主端子70Cの突出部分全体が投影視において重なっている。4本の主端子70Eは、コンデンサC1に対して、平行部134よりも離れた位置まで延設されている。
折曲部135は、Z方向において、コンデンサC1とは反対側に延びている。折曲部135の板厚方向は、Y方向に略平行とされている。本例では、折曲部135全体が、Y方向において出力バスバー150と対向する対向部135aとされている。対向部135aと出力バスバー150は、板厚方向の面、すなわち板面同士が対向している。対向部135aの先端、すなわち並列配線部133の延設の先端には、半導体装置20Uの主端子70Cが接続されるように凸部136が形成されている。凸部136は主端子70Cごとに設けられている。主端子70Cは、対応する凸部136の先端面に配置された状態で、レーザ溶接などによって接合されている。このように凸部136を設けると、凸部136設けられていない凹の部分を主端子70Eが通過するため、Pバスバー130と主端子70Eとの接触を防ぐことができる。
Nバスバー140は、接続部141と、共通配線部142と、並列配線部143を有している。接続部141は、コンデンサC1の負極端子に接続される部分である。本例では、Z方向の投影視において、コンデンサC1と重なる部分全体が接続部141とされている。なお、接続部131同様、X方向又はY方向の投影視においてコンデンサC1と重なる部分、すなわちコンデンサC1の側面に接続部141を設けてもよい。コンデンサC1及びコンデンサC1の両面に配置された接続部131,141は、冷却器120と電気的に分離されている。接続部131,141を含むコンデンサC1と冷却器120との間には、電気絶縁部材が介在している。
共通配線部142は、接続部141におけるY方向の一端から延設されている。共通配線部142は、Nバスバー140のうち、上記した共通配線11Nとして機能する部分である。これにより、パワーモジュール110内に構成される1組の上下アーム回路10とコンデンサC1とが、それぞれ単独で上記したNライン13に接続されるのではなく、共通で接続されることとなる。共通配線部142は、接続部141よりも幅が狭くされており、共通配線部132とほぼ同じ幅とされている。共通配線部142は、X方向において、接続部141の中央部分に連なっている。共通配線部142は、接続部141に対して略面一で、Y方向に延設されている。共通配線部132の一部分は、保護部材180の外へ突出している。
Z方向の投影視で共通配線部132,142はほぼ一致する。共通配線部132,142は、Z方向に、コンデンサC1の厚みと略等しい間隔を有して対向配置されている。これにより、主回路配線のインダクタンスを低減することができる。
並列配線部143は、少なくとも、コンデンサC1の負極端子と上下アーム回路10の下アーム10Lとを電気的に接続する配線、すなわち上下アーム回路10とコンデンサC1とを並列接続する配線として機能する。さらに本例では、下アーム10Lを共通配線11N、すなわち共通配線部142に電気的に接続する配線としても機能する。並列配線部143は、接続部141に対し、共通配線部142とは反対の端部から延設されている。
並列配線部143は、接続部141よりも幅が狭くされている。並列配線部143は、一定の幅で延設されている。並列配線部143は、コンデンサC1の中心線CL1を跨がないように、中心線CL1に対して並列配線部133とは反対側に配置されている。並列配線部143は、半導体装置20U,20Lの並び方向において、半導体装置20L(半導体チップ40L)の側で接続部141に連なっている。
並列配線部143は、略L字状をなしている。並列配線部143は、接続部141との境界部からY方向に沿って延びる平行部144と、平行部144に対して折り曲げられ、Z方向に沿って延びる折曲部145を有している。平行部144は、Y方向であって、共通配線部142とは反対側に延設されている。平行部144は、接続部141に対して略面一で、Y方向に延設されている。平行部134,144は、電気的な絶縁が確保できる間隔を有して、X方向に横並びで配置されている。平行部134,144は、側面同士が対向している。これにより、主回路配線のインダクタンスを低減することができる。
平行部144は、Z方向の投影視において、半導体装置20Lの7本の主端子70C,70Eのそれぞれの少なくとも一部と重なっている。平行部144は、半導体装置20Lの主端子70Eの突出先端とほぼ同じ位置まで延設されており、4本の主端子70Eの突出部分全体が投影視において重なっている。3本の主端子70Cは、コンデンサC1に対して、平行部144よりも離れた位置まで延設されている。半導体装置20Uの主端子70Cと半導体装置20Lの主端子70Eの突出先端は、Y方向でほぼ同じ位置とされており、これにより平行部134,144の延設の先端も互いにほぼ同じ位置とされている。
折曲部145は、Z方向において、コンデンサC1とは反対側に延びている。折曲部145の板厚方向は、Y方向に略平行とされている。折曲部145の延設の先端は、Pバスバー130の折曲部135の延設の先端とほぼ同じ位置とされている。折曲部135,145も、電気的な絶縁が確保できる間隔を有して、X方向に横並びで配置されている。折曲部135,145は、側面同士が対向している。これにより、主回路配線のインダクタンスを低減することができる。
本例では、Nバスバー140のほうが、Pバスバー130よりも半導体装置20からZ方向に離れた位置とされている。そして、折曲部145の一部が、Y方向において出力バスバー150と対向する対向部145aとされている。対向部145aと出力バスバー150は、板面同士が対向している。対向部145aの先端、すなわち並列配線部143の延設の先端には、半導体装置20Lの主端子70Eが接続されるように凸部146が形成されている。凸部146は主端子70Eごとに設けられている。主端子70Eは、対応する凸部146の先端面に配置された状態で、レーザ溶接などによって接合されている。このように凸部146を設けると、凸部146設けられていない凹の部分を主端子70Cが通過するため、Nバスバー140と主端子70Cとの接触を防ぐことができる。
並列配線部133と半導体装置20Uの主端子70Cによって、コンデンサC1の正極と上アーム10Uのコレクタ電極が接続され、並列配線部143と半導体装置20Lの主端子70Eによって、コンデンサC1の負極と下アーム10Lのエミッタ電極が接続されている。このように、並列配線部133及び半導体装置20Uの主端子70Cと、並列配線部143及び半導体装置20Lの主端子70Eによって、上下アーム回路10とコンデンサC1が並列接続され、並列回路11が構成されている。そして、共通配線部132,142によって、並列回路が電力ラインであるVHライン12H、Nライン13に接続されるように構成されている。
出力バスバー150は、上アーム10Uと下アーム10Lとの接続点を、モータジェネレータの三相巻線に接続するためのバスバーである。出力バスバー150は、Oバスバーとも称される。出力バスバー150は、Y方向において、信号端子80側ではなく、主端子70側に配置されている。出力バスバー150は、板厚方向をY方向として、屈曲部を有することなくX方向に延設されている。出力バスバー150は、上記した出力配線15の少なくとも一部を構成する。なお、出力バスバー150の周辺に、図示しない電流センサを配置することもできる。
出力バスバー150は、Z方向の長さ、すなわち幅の広い幅広部151と、幅広部151よりも幅の狭い幅狭部152を有している。幅狭部152は、幅広部151の一端に連なり、幅広部151に対して略面一で、X方向に延設されている。幅広部151は、その全体が保護部材180の内部に配置されており、幅狭部152は一部が保護部材180の内部に配置され、残りの部分が保護部材180の外に突出している。
幅広部151は、X方向において、並列配線部143の中心線CL1に対して遠い端部と、並列配線部133の中心線CL1に対して遠い端部との範囲とほぼ一致するように設けられている。X方向において、幅広部151の先には、供給管121が配置されている。幅広部151は、Y方向において、折曲部135,145との間に所定の間隔を有して設けられている。所定の間隔とは、たとえば半導体装置20Uにおいて、主端子70C,70Eの突出先端間の長さから、出力バスバー150の板厚を引いた長さにほぼ一致する。幅広部151は、Z方向において、コンデンサC1とオーバーラップする位置から、2段目の熱交換部123を構成するプレート125までの範囲に設けられている。
幅広部151には、複数の貫通孔153が形成されている。この貫通孔153には、半導体装置20Uの主端子70Eと、半導体装置20Lの主端子70Cが挿入される。挿入状態で、主端子70は、レーザ溶接などにより、幅広部151(出力バスバー150)に接続されている。また、貫通孔153を避けるように、Pバスバー130との対向部154pと、Nバスバー140との対向部154nが構成されている。出力バスバー150の対向部154pとPバスバー130の対向部135aがY方向に所定の間隔を有して対向し、出力バスバー150の対向部154nとNバスバー140の対向部145aがY方向に所定の間隔を有して対向している。
供給管121が存在するため、並列配線部143は並列配線部133よりも幅が狭くされている。これにより、対向部145aは対向部135aより幅が狭くされている。しかしながら、コンデンサC1において、負極端子を熱交換部123とは反対側に配置することで、対向部145aにおける延設長さを稼いでおり、対向部145aは対向部135aよりもZ方向(延設方向)の長さが長くされている。これにより、対向部135a及び対向部154pの対向面積と、対向部145a及び対向部154nの対向面積がほぼ等しくなっている。X方向において体格の増大を抑制しつつ、インダクタンスを低減することができる。
駆動基板160は、プリント基板に図示しない電子部品が実装されてなる。駆動基板160には、制御回路部9から駆動指令が入力される上記した駆動回路部(ドライバ)が形成されている。駆動基板160が、回路基板に相当する。駆動基板160は、平面略矩形状をなしている。本例では、駆動基板160の大きさが、X方向において冷却器120の熱交換部123とほぼ一致し、Y方向において熱交換部123よりも長くされている。Z方向からの投影視において、駆動基板160は、半導体装置20U,20Lの大部分と重なるように設けられている。具体的には、主端子70の一部分を除いて重なるように設けられている。Y方向において、主端子70の一部、折曲部135,145、出力バスバー150は、駆動基板160と重ならないように配置されている。また、主端子70とは反対側において、共通配線部132,142が駆動基板160よりも外側に突出している。
駆動基板160には、半導体装置20の信号端子80が接続されている。本例では、駆動基板160に図示しない複数の貫通孔が形成され、貫通孔のそれぞれに信号端子80が挿入実装されている。これにより、駆動基板160に形成された駆動回路部から、信号端子80を通じて駆動信号が出力される。信号端子80は、X方向に並んで配置されている。複数の信号端子80は、駆動基板160におけるY方向の一方の端部付近で、X方向に一列に並んで挿入実装されている。
外部接続端子170は、制御回路部9が形成された後述する制御基板290と駆動基板160とを電気的に接続するための端子である。駆動基板160には、複数の外部接続端子170が接続されている。本例では、駆動基板160に図示しない複数の貫通孔が形成され、貫通孔のそれぞれに外部接続端子170が挿入実装されている。外部接続端子170の一部は、制御回路部9の駆動指令を、駆動基板160の駆動回路部に伝達する。
外部接続端子170は、略L字状をなしている。外部接続端子170は、略90度の屈曲部を1つ有している。外部接続端子170のうち、駆動基板160との接続部から屈曲部までがZ方向に延設され、屈曲部から先端までがY方向の共通配線部132,142側に延設されている。そして、先端から所定範囲の部分が、保護部材180の外へ突出している。
保護部材180は、パワーモジュール110を構成する他の要素を保護している。保護部材180は、パワーモジュール110の外郭をなしている。保護部材180としては、他の要素を一体的に封止する封止樹脂体、予め成形されたケースなどを用いることができる。ケースの場合、保護性を高めるために、ポッティング材などを併用してもよい。本例では、保護部材180として封止樹脂体を採用している。封止樹脂体は、エポキシ樹脂などの樹脂材料を用いて成形されたものであり、モールド樹脂、樹脂成形体とも称される。封止樹脂体は、たとえばトランスファモールド法により成形される。
保護部材180は、Z方向において、一面181と、一面181と反対の裏面182を有している。一面181及び裏面182は、Z方向に直交する平面となっている。本例の保護部材180は、略四角錐台形状をなしている。このため、保護部材180は、4つの側面183〜186を有している。一面181を基準面とすると、いずれの側面183〜186も一面181となす角度が鋭角の傾斜面となっている。
パワーモジュール110を構成する要素は、一面181側から裏面182に向けて、Nバスバー140の接続部141、コンデンサC1、Pバスバー130の接続部131、1段目の熱交換部123、半導体装置20、2段目の熱交換部123、駆動基板160の順で配置されている。供給管121及び排出管122は、一面181から保護部材180の外へ突出している。裏面182からは、何も突出していない。なお、図示しないが、一面181側から裏面182に向けて、駆動基板160、1段目の熱交換部123、半導体装置20、2段目の熱交換部123、Nバスバー140の接続部141、コンデンサC1、Pバスバー130の接続部131の順で配置されてもよい。
Pバスバー130及びNバスバー140の共通配線部132,142は、Y方向において信号端子80側の側面183から保護部材180の外へ突出している。側面183からは、外部接続端子170も突出している。図21に示すように、X方向において、半導体装置20U側の外部接続端子170と、半導体装置20L側の外部接続端子170の間に、共通配線部132,142が配置されている。また、図22に示すように、外部接続端子170は裏面182に近い位置で突出し、共通配線部132,142は一面181に近い位置で突出している。側面183とは反対の側面184、すなわち主端子70側の側面184からは、何も突出していない。出力バスバー150の幅狭部152は、X方向において半導体装置20U側の側面185から保護部材180の外へ突出している。側面185とは反対の側面186、すなわち半導体装置20L側の側面からは、何も突出していない。
このように、保護部材180の一面181からは、供給管121及び排出管122のみが突出している。このため、一面181側に、パワーモジュール110とは別の冷却器を配置し、これによりパワーモジュール110を冷却する場合、別の冷却器と供給管121及び排出管122と接続しやすい。共通配線部132,142と出力バスバー150とが異なる側面から突出しているため、電力ラインや三相巻線との接続を簡素化することができる。
ここで、上下アーム回路10のスイッチングに伴い生じるサージは、単位時間当たりの電流変化量(電流変化率)が大きいほど、また、配線インダクタンスが大きいほど大きくなる。上記パワーモジュール110では、配線インダクタンスを小さくすることで、上記サージの低減を図っている。以下、上記したパワーモジュール110の構造のうち、配線インダクタンスを小さくしてサージ低減を可能にする構造について説明する。
図28は、図1の等価回路図からインバータ7、平滑コンデンサC2及びモータジェネレータ3を抽出して示した回路図であり、回路に寄生している配線インダクタンスを図示している。図28中の一点鎖線に示すように、各相のパワーモジュール110は、Pライン12及びNライン13の間で並列に接続されていることは先述した通りである。
そして、Pライン12のうち、各相のパワーモジュール110が接続されている間の部分で生じる配線インダクタンスを、相間上インダクタンスL2Pと呼ぶ。具体的には、Pライン12のうち、U相の共通配線部132との接続箇所とV相の共通配線部132との接続箇所との相間部分で生じる配線インダクタンスが相間上インダクタンスL2Pである。また、Pライン12のうち、V相の共通配線部132との接続箇所とW相の共通配線部132との接続箇所との相間部分で生じる配線インダクタンスが相間上インダクタンスL2Pである。また、相間上インダクタンスL2Pに比例して生じるインピーダンスを相間上インピーダンスと呼ぶ。
また、Nライン13のうち、各相のパワーモジュール110が接続されている間の部分で生じる配線インダクタンスを、相間下インダクタンスL2Nと呼ぶ。具体的には、Nライン13のうち、U相の共通配線部142との接続箇所とV相の共通配線部142との接続箇所との相間部分で生じる配線インダクタンスが相間下インダクタンスL2Nである。また、Nライン13のうち、V相の共通配線部142との接続箇所とW相の共通配線部142との接続箇所との相間部分で生じる配線インダクタンスが相間下インダクタンスL2Nである。また、相間下インダクタンスL2Nに比例して生じるインピーダンスを相間下インピーダンスと呼ぶ。
パワーモジュール110の内部における、コンデンサC1の正極端子から上アーム10Uまでの電気経路の配線インダクタンスを相内上インダクタンスL1Pと呼ぶ。具体的には、Pバスバー130の平行部134および折曲部135で生じる配線インダクタンスが相内上インダクタンスL1Pである。また、相内上インダクタンスL1Pを形成する部分の配線を上配線11Paと呼び、相内上インダクタンスL1Pに比例して生じるインピーダンスを相内上インピーダンスと呼ぶ。
パワーモジュール110の内部における、コンデンサC1の負極端子から下アーム10Lまでの電気経路の配線インダクタンスを、相内下インダクタンスL1Nと呼ぶ。具体的には、Nバスバー140の平行部144および折曲部145で生じる配線インダクタンスが相内下インダクタンスL1Nである。また、相内下インダクタンスL1Nを形成する部分の配線を下配線11Naと呼び、相内下インダクタンスL1Nに比例して生じるインピーダンスを相内下インピーダンスと呼ぶ。
図28では、インバータ7を例に各インピーダンスを説明しているが、インバータ8及びコンバータ6についても、以下のように各インピーダンスは対応する。すなわち、各相のうち第1相に設けられたパワーモジュール110を第1パワーモジュールとし、第2相に設けられたパワーモジュール110を第2パワーモジュールとする。そして、第1パワーモジュールにおける、コンデンサC1の正極端子から上アーム10Uまでの電気経路のインピーダンスが相内上インピーダンスに相当する。第1パワーモジュールに係るコンデンサC1の正極端子から、第2パワーモジュールに係る上アーム10Uまでの電気経路のインピーダンスを相間上インピーダンスに相当する。第1パワーモジュールにおける、コンデンサC1の負極端子から下アーム10Lまでの電気経路のインピーダンスが相内下インピーダンスに相当する。第1パワーモジュールに係るコンデンサC1の負極端子から、第2パワーモジュールに係る下アーム10Lまでの電気経路のインピーダンスが相間下インピーダンスに相当する。
そして、相間上インダクタンスL2Pを形成する配線長さは、相内上インダクタンスL1Pを形成する配線長さよりも長い。そのため、相間上インダクタンスL2Pは相内上インダクタンスL1Pよりも大きく、相間上インピーダンスは相内上インピーダンスより大きい。相間下インダクタンスL2Nを形成する配線長さは、相内上インダクタンスL1Pを形成する配線長さよりも長い。そのため、相間下インダクタンスL2Nは相内下インダクタンスL1Nよりも大きく、相間下インピーダンスは相内下インピーダンスより大きい。なお、相間上インダクタンスL2Pおよび相間下インダクタンスL2Nのそれぞれは、相内上インダクタンスL1Pに相内下インダクタンスL1Nを加算した値よりも大きい。
図28中の矢印Y1は、V相の並列回路11で形成される閉ループ回路において、サージ電圧がコンデンサC1に吸収される経路を示す。このサージ電圧は、V相のスイッチング素子Q1,Q2のターンオンおよびターンオフ時に生じるものである。U相及びW相においても同様にして、矢印Y1の如くサージ電圧がコンデンサC1に吸収される。このように同一相内で発生と吸収が為されるサージ電圧は、以下の説明では自己サージ電圧とも呼ばれる。
閉ループ回路は、上記並列回路11により形成され、コンデンサC1の正極端子、上配線11Pa、上下アーム回路10、下配線11Na及びコンデンサC1の負極端子が順に直列接続された、電力ラインを含まない回路である。閉ループ回路は、上述の如くサージ電圧が吸収される経路であるとともに、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング時に必要な電荷がコンデンサC1からスイッチング素子Q1,Q2へ供給される経路であるとも言える。
また、閉ループ回路は、共通配線11P,11Nを含まない回路である。換言すれば、Pバスバー130は、上配線11Paを形成する図28中の二点鎖線に示す部分と、共通配線11Pを形成する部分とに分岐している。Pバスバー130の共通配線11Pは、Pライン12及び上配線11Paを接続する上電力配線とも呼ばれる。Nバスバー140は、下配線11Naを形成する図28中の二点鎖線に示す部分と、共通配線11Nを形成する部分とに分岐している。Nバスバー140の共通配線11Nは、Nライン13及び下配線11Naを接続する下電力配線とも呼ばれる。
図28中の矢印Y2は、V相で生じた自己サージ電圧が、V相の閉ループ回路から電力ラインを通じてW相の閉ループ回路へ伝播する場合の経路を示す。このように複数の上下アーム回路10どうしで干渉するサージ電圧は、以下の説明では干渉サージ電圧とも呼ばれる。V相とW相との間で伝播する干渉サージ電圧と同様にして、V相とU相との間やW相とU相との間でも干渉サージ電圧は生じ得る。但し、相間上インダクタンスL2Pは相内上インダクタンスL1Pよりも十分に大きいので、他相から自相へ伝播される干渉サージ電圧は殆ど生じず、その干渉サージ電圧は自己サージ電圧に比べて極めて小さい。
なお、並列接続された上下アーム回路10へ電荷を供給すると、平滑コンデンサC2からコンデンサC1へ瞬時に電荷が供給される。これにより、コンデンサC1が再び電荷を供給可能な状態となる。
次に、上記したパワーモジュール110の効果について説明する。
パワーモジュール110は、上下アーム回路10と、コンデンサC1と、上配線11Paと、下配線11Naと、上電力配線としての共通配線11Pと、下電力配線としての共通配線11Nと、を備える。上配線11Paは、コンデンサC1の正極端子及び上アーム10Uを接続し、下配線11Naは、コンデンサC1の負極端子及び下アーム10Lを接続する。共通配線11P,11Nは、上配線11Pa及び下配線のそれぞれを電力ラインに接続する。
したがって、パワーモジュール110は、電力ラインを含まない閉ループ回路を形成することになる。そのため、上下アーム回路10のスイッチング時に必要な電荷がコンデンサC1から供給されるにあたり、その電荷供給経路には電力ラインが含まれない。よって、その経路の配線、つまり上配線11Paと下配線11Naを短くできる。一方、本実施形態に反してコンデンサC1を廃止した場合には、平滑コンデンサC2からスイッチング時に必要な電荷を供給することになる。その場合には、平滑コンデンサC2から上下アーム回路10へ電荷を供給する電気経路に電力ラインが含まれることになるので、その電気経路を十分に短くすることができない。
以上により、上記パワーモジュール110によれば、サージ電圧発生の要因の1つである配線の長さを短くすることを、コンデンサC1を廃止した場合に比べて容易に実現できる。よって、自己サージ電圧に係る配線インダクタンスL1P,L1Nを小さくでき、上下アーム回路10で生じる自己サージ電圧を低減できる。しかも、上記閉ループ回路は電力ラインを含んでいないので、自己サージ電圧が電力ラインに重畳しにくくなる。そのため、電力ラインを通じて他の上下アーム回路10に自己サージ電圧を干渉させてしまうことを抑制できる。
また、上述の如くサージ電圧を低減できるパワーモジュール110が、各相それぞれに設けられている。そのため、電力ラインを通じた上下アーム回路10同士が自己サージ電圧を干渉し合うことの抑制を促進できる。
さらに本例では、上アーム10Uは、上配線11Paに接続される主端子70Cを複数有し、下アーム10Lは、下配線11Naに接続される主端子70Eを複数有する。そのため、隣合う互いの主端子70C,70Eどうしで自己サージ電圧が打ち消し合うように作用し、相内上インダクタンスL1P及び相内下インダクタンスL1Nを低減することができる。よって、自己サージ電圧の低減が促進される。
さらに本例では、上アーム10Uが有する主端子70E及び下アーム10Lが有する主端子70Cを接続する出力バスバー150(つまり出力配線15)を備える。出力バスバー150は、上配線11Pa及び下配線11Naと対向する対向部154p,154nを有する。そのため、出力バスバー150の対向部154p,154nと上配線11Pa及び下配線11Naとの間で、自己サージ電圧が打ち消し合うように作用し、相内上インダクタンスL1P及び相内下インダクタンスL1Nを低減することができる。よって、自己サージ電圧の低減が促進される。特に本例では、1in1パッケージ構造の半導体装置20を備える構成において、上記したように、Y方向において、Pバスバー130及びNバスバー140と出力バスバー150とを対向させている。また、Y方向の投影視において、出力バスバー150と半導体装置20が重なっており、Y方向において、半導体チップ40Uと出力バスバー150との間に、Pバスバー130の対向部135aが配置されている。同様に、Y方向において、半導体チップ40Lと出力バスバー150との間に、Nバスバー140の対向部145aが配置されている。したがって、半導体チップ40Uを介したPバスバー130から出力バスバー150への電流経路、及び、半導体チップ40Lを介した出力バスバー150からNバスバー140への電流経路は、図23に二点鎖線の矢印で示すようになる。したがって、上下アーム回路10を構成する2つの半導体チップが1パッケージ化された2in1パッケージに較べて、電流ループの面積を小さくすることができる。これにより、自己サージ電圧をさらに低減することができる。
さらに本例では、相間上インピーダンスが相内上インピーダンスより大きい。また、相間下インピーダンスが相内下インピーダンスより大きい。そのため、図28の矢印Y2に示すように、各相の閉ループ回路を跨いでサージ電圧が伝播して干渉することを抑制できる。
さらに本例では、上下アーム回路10に並列に接続され、電力ラインの電圧を平滑化する平滑コンデンサC2を備える。これによれば、電力ラインの電圧変動を抑制することができる。また、コンデンサC1に平滑コンデンサC2から瞬時に電荷を供給できるため、コンデンサC1の静電容量を抑えることができる。これにより、コンデンサC1の小型化が可能となる。
半導体装置20として、1in1パッケージ構造の半導体装置20を2つ用いる例を示したが、これに限定されない。上下アーム回路10を構成する2つのアーム(上アーム10U及び下アーム10L)を構成する要素単位でパッケージ化した2in1パッケージ構造の半導体装置を用いることもできる。
主端子70の配置も上記例に限定されない。1in1パッケージの場合、主端子70C,70Eを少なくとも1本ずつ有せばよい。同電位とされる主端子70を複数に分割してもよい。たとえば主端子70Cを複数本に分割してもよい。複数本の並列化によって、分割した主端子全体のインダクタンスを低減することができる。2in1パッケージの場合、上アーム10U側の主端子70Cと、下アーム10L側の主端子70Eと、出力端子をそれぞれ少なくとも1本有せばよい。
図27に示す例では、共通配線部132,142が、接続部131,141に対して平行部134,144の反対側に延設している。これに対し、図29に示すように、共通配線部132,142が、接続部131,141に対して平行部134,144と同じ側に延設していてもよい。また、上アーム10Uと下アーム10Lとで、共通配線部132,142が延設する向きを異ならせてもよい。例えば、共通配線部132,142は互いに対向配置していなくてもよい。
図27に示す例では、上アーム10U及び下アーム10Lは主端子70C,70Eを複数有しているが、1つの主端子70C,70Eを有していればよい。また、図27に示す例では、主端子70C及び主端子70Eが交互に並べて配置されているが、複数の主端子70Cが並べて配置されていてもよいし、複数の主端子70Eが並べて配置されていてもよい。
図27に示す例に反して、相間上インピーダンスが相内上インピーダンスより小さくてもよい。また、相間下インピーダンスが相内下インピーダンスより小さくてもよい。
上記パワーモジュール110の別例として、上記パワーモジュール110が備える冷却器120、駆動基板160及び保護部材180の少なくとも1つが廃止されていてもよい。また、平滑コンデンサC2が廃止された電力変換装置5であってもよい。コンデンサC1が、保護部材180の外に配置された構成としてもよい。冷却器120の構造は、上記例に限定されない。上下アーム回路10を構成する半導体装置20の一部が、冷却器120内の流路126に挿入され、冷媒に浸漬される構成としてもよい。この構成において、コンデンサC1を冷却器120上に配置し、コンデンサC1と半導体装置20を接続してもよい。浸漬により、半導体装置20を両面側から冷却しつつ、サージ電圧を抑制することができる。
(電力変換装置)
図30〜図44に示すように、電力変換装置5は、筐体を構成するケース210及びカバー220と、冷却器230と、複数のパワーモジュール110と、入力端子台240と、出力端子台250と、リアクトル260と、コンデンサユニット270と、バスバー280と、制御基板290を備えている。図30及び図31は分解斜視図である。図30及び図31では、便宜上、後述する貫通孔217a,217bを省略している。また、パワーモジュール110の冷却器120の供給管121及び排出管122が取り付けられる孔についても、省略している。図32〜図35に示す斜視図では、ケース210及びカバー220内に収容された要素について実線で図示している。図36〜図41に示す平面図でも、ケース210及びカバー220内に収容された要素について実線で図示している。
ケース210とカバー220とを組み付けて構成される筐体の内部空間に、その他の要素それぞれの少なくとも一部が収容されている。ケース210及びカバー220の構成材料としては、いずれも金属材料、いずれも樹脂材料、一方を金属材料、他方を樹脂材料とする構成が可能である。本例では、ケース210及びカバー220が、いずれも金属材料、具体的にはアルミニウム系材料を用いてダイカスト法により成形されている。
ケース210は、一面が開口する箱状をなしている。ケース210は、X方向を長手方向とする平面略長方形の底壁211と、底壁211の四辺それぞれに連なる側壁212〜215を有している。側壁212〜215は、底壁211に対してZ方向に立設されており、底壁211の内面を取り囲むように平面略矩形環状に設けられている。
図30、図31、及び図36などに示すように、X方向の側壁212には、取り付け部216が形成されている。取り付け部216は、側壁212を貫通する貫通孔216aを有している。入力端子台240は、貫通孔216aに挿入された状態で、ケース210に固定されている。貫通孔216aは、ZY断面において略8の字状をなしている。すなわち、貫通孔216aは、Y方向に横並びの2つの貫通孔が1つに繋がった形状をなしている。
取り付け部216は、直流電源2側の端子部の少なくとも一部を収容する収容部216bを有している。収容部216bは筒状をなしており、側壁212の外面からX方向に延設されている。収容部216bは、X方向からの投影視において、筒内部に貫通孔216aを内包するように設けられている。直流電源2の端子部は、収容部216bに固定された状態で、入力端子台240の端子部と電気的に接続される。収容部216bは、たとえば直流電源2側の端子部のハウジングと嵌合する。貫通孔216aを含む取り付け部216は、Y方向において、側壁212の中央部分よりも一端側、具体的には側壁215側の領域に設けられている。
側壁212と反対の側壁213には、図32〜図34などに示すように、貫通孔217a,217bが形成されている。貫通孔217aには冷却器230の供給管231が挿通しており、供給管231と貫通孔217aの開口周囲との間には、図示しない防水シール部が形成されている。貫通孔217bには、冷却器230の排出管232が挿通しており、排出管232と貫通孔217bの開口周囲との間には、図示しない防水シール部が形成されている。
2つの貫通孔217a,217bは、Z方向において同じ位置であって、Y方向において互いに離間して設けられている。貫通孔217aは、Y方向において、側壁213の中央部分よりも一端側、具体的には側壁214側の領域に設けられている。貫通孔217bは、側壁213の中央部分に対して他端側、具体的には側壁215側の領域に設けられている。
図31及び図35などに示すように、Y方向の側壁214には、開口部218が形成されている。開口部218は、側壁214をY方向に貫通しており、Z方向よりもX方向に長い長孔とされている。開口部218は、出力端子台250の端子と、負荷であるモータジェネレータ3,4の三相巻線とを接続するために設けられている。開口部218は、X方向において、側壁213に近い位置に形成されている。なお、側壁214と反対に位置する側壁215には、貫通孔などが形成されてない。
カバー220は、ケース210に較べて底の浅い箱状をなしている。カバー220は、X方向を長手方向とする平面略長方形の底壁221と、底壁221の四辺それぞれに連なる側壁222〜225と、フランジ部226を有している。底壁221は、Z方向においてケース210の底壁211と対向している。側壁222〜225は、底壁221に対してZ方向に立設されており、底壁221の内面を取り囲むように平面略矩形環状に設けられている。側壁222〜側壁225は、ケース210の側壁212〜側壁215に対応している。たとえば側壁223は、X方向において側壁213側に設けられており、側壁224はY方向において側壁214側に設けられている。
フランジ部226は、カバー220の外周縁部であり、側壁222〜225における底壁221とは反対の端部に連なっている。フランジ部226は、側壁222〜225からY方向において収容空間とは反対の外側に延設されている。フランジ部226と、ケース210における側壁212〜215の端部、具体的には、底壁211とは反対の端部とが対向した状態で、ケース210とカバー220が、締結などによって組み付けられている。ケース210及びカバー220の外周縁部の間には、図示しないシール部材、たとえばOリングや硬化前で液状の接着材などが介在し、防水シール部が形成されている。
カバー220には、凹部227が形成されている。凹部227は、制御基板290を、後述するコネクタ291に対応して設けられている。凹部227は、側壁223を含んで設けられており、側壁223の開口部分は、箱状をなすカバー220の一面側の開口部分に連なっている。このように、凹部227は、一面だけでなく側壁223にも開口している。凹部227は、底壁211から遠ざかる方向に凹んでいる。凹部227は、側壁223において、平面略台形状の開口空間を提供する。凹部227は、Y方向において、側壁223の中央部分よりも側壁224側の領域に設けられている。Z方向からの投影視において、側壁223における凹部227の開口部分は、貫通孔217aと重なる位置に設けられている。
冷却器230は、主として、電力変換装置5を構成する筐体内の要素を冷却する。冷却器230は、たとえば熱伝導性に優れた金属材料、たとえばアルミニウム系の材料を用いて形成されている。図30及び図31などに示すように、冷却器230は、供給管231と、排出管232と、熱交換部233を有している。冷却器230の大部分はケース210内に配置されており、一部分がケース210から外へ突出している。
供給管231は、その内部に流路が形成された筒状体であり、X方向に延設されている。供給管231は、Z方向を厚み方向とする平板状の熱交換部233に対し、Y方向における一方の一端側、具体的には、ケース210の側壁215側に設けられている。供給管231の一端は開口しており、他端は熱交換部233に接続されている。そして、供給管231の流路が、熱交換部233の流路234に連通している。供給管231の一部分は、ケース210の側壁213に設けられた貫通孔217aを通じて、ケース210の外へ突出している。供給管231と貫通孔217aの壁面との間には、図示しないシール部材によって防水シール部が形成されている。
排出管232は、その内部に流路が形成された筒状体であり、X方向に延設されている。排出管232は、Y方向において供給管231とは離れた位置、具体的にはケース210の側壁214側に設けられている。排出管232の一端は開口しており、他端は供給管231と同じ側で熱交換部233に接続されている。そして、排出管232の流路が、熱交換部233の流路234に連通している。排出管232の一部分は、ケース210の側壁213に設けられた貫通孔217bを通じて、ケース210の外へ突出している。排出管232と貫通孔217bの壁面との間には、図示しないシール部材によって防水シール部が形成されている。
熱交換部233は、内部に冷媒が流れる流路234を有している。流路234の一方の端部には供給管231が接続され、供給管231とは反対の端部には排出管232が接続されている。供給管231から流入した冷媒は、熱交換部233内の流路234を流通し、排出管232から排出される。熱交換部233は、Z方向において、一面233aと、一面233aと反対の裏面233bを有している。本例では、電力変換装置5が複数のパワーモジュール110を備えており、一面233a及び裏面233bにパワーモジュール110がそれぞれ配置されている。電力変換装置5は、一面233aに配置されるパワーモジュール110と、裏面233bに配置されるパワーモジュール110を備えている。このように、熱交換部233の両面にパワーモジュール110がそれぞれ配置されている。パワーモジュール110は、熱交換部233に隣接配置されている。
熱交換部233は、上記したように平板状をなしている。熱交換部233のZ方向の長さ、すなわち厚みは、少なくとも流路234の形成部分においてほぼ一定とされている。本例では、Z方向の長さが、Z方向に直交する方向の最小長さ、すなわちX方向の最小長さ、Y方向の最小長さよりも十分に短くされている。すなわち、薄板状とされている。
熱交換部233は、ケース210内において、入力端子台240及び出力端子台250を除く領域の大部分に配置されている。図30及び図37などに示すように、熱交換部233は、切り欠き部235を有している。これにより、熱交換部233は、略U字状をなしている。略U字の熱交換部233が備える2本のアームは、X方向に延設されている。そして、熱交換部233のU字の両端側がX方向において側壁212側となるように、冷却器230がケース210に収容されている。すなわち、熱交換部233の2本のアームがY方向に並ぶように配置されている。供給管231及び排出管232は、U字の端部ではなく、端部とは反対側でアームに接続されており、上記したように側壁213から外部に突出している。供給管231は熱交換部233のアームの1つに接続されており、排出管232は別のアームに接続されている。
熱交換部233の2本のアームのうち、供給管231が接続されたアームには、パワーモジュール110が配置されている。排出管232が接続されたアームには、リアクトル260及びコンデンサユニット270が配置されている。このように、本例では、冷却器230(熱交換部233)によって、パワーモジュール110、リアクトル260、及びコンデンサユニット270を冷却するように構成されている。なお、熱交換部233(冷却器230)は、複数の支持部236により、ケース210の底壁211に対して所定高さに支持されている。そして、支持状態で、ねじ締結等により、ケース210に固定されている。
流路234に流す冷媒としては、水やアンモニアなどの相変化する冷媒や、エチレングリコール系などの相変化しない冷媒を用いることができる。冷媒は、たとえばラジエータにて冷却され、冷却器230に供給される。冷却器230は、主として電力変換装置5を構成する要素、具体的にはパワーモジュール110、リアクトル260、及びコンデンサユニット270を冷却するものである。しかしながら、冷却機能に加えて、環境温度が低い場合に温める機能を持たせてもよい。この場合、冷却器230は温度調節器と称される。また、冷媒は熱媒体と称される。
本例の電力変換装置5は、パワーモジュール110を8つ備えている。各パワーモジュール110は、上記した構成(図21〜図26参照)と基本的に同じであるが、他の要素との接続性などを考慮して、一部に屈曲部を設けたり、長さを異ならせたりしている。8つのパワーモジュール110のうち、2つはコンバータ6を構成し、残りの6つはインバータ7,8を構成している。8つのパワーモジュール110は、4つが1セットでX方向に所定間隔で配置され、このセットがZ方向で2段配置となっている。以下において、カバー220の底壁221側に配置されたセットを上段、ケース210の底壁211側に配置されたセットを下段とも称する。
上段は、コンバータ6の第1の相を構成するパワーモジュール110と、インバータ7の三相(U,V,W)を構成する3つのパワーモジュール110を含んでいる。以下において、コンバータ6の第1の相をコンバータ6a、第2の相をコンバータ6bとも称する。上段のパワーモジュール110は、略U字状をなす熱交換部233のアームの1つであって、一面233a上に配置されている。具体的には、側壁213側から、インバータ7のU相、V相、W相、コンバータ6aの順に、4つのパワーモジュール110が配置されている。
下段は、コンバータ6bを構成するパワーモジュール110と、インバータ8の三相(U,V,W)を構成する3つのパワーモジュール110を含んでいる。下段のパワーモジュール110は、略U字状をなす熱交換部233において、上段と同じアームであって、裏面233b上に配置されている。具体的には、側壁213側から、インバータ8のU相、V相、W相、コンバータ6bの順に、4つのパワーモジュール110が配置されている。
各パワーモジュール110は、図37に示すように、保護部材180の側面183、すなわち、Pバスバー130及びNバスバー140の共通配線部132,142と外部接続端子170の突出する面がケース210の側壁215側、側面184が側壁214側となるように配置されている。また、上段のパワーモジュール110と、下段のパワーモジュール110とは、Z方向の投影視において互いに重なるように配置されている。すなわち、4対のパワーモジュール110が熱交換部233を挟んでいる。
図44に示すように、パワーモジュール110は、いずれも保護部材180の一面181を熱交換部233側として配置されている。パワーモジュール110は、接着、締結などの固定手段によって、熱交換部233に固定されている。上段の4つの出力バスバー150は、所定の間隔を有してX方向に並んで配置されている。下段の4つの出力バスバー150も、上段と同じ間隔を有してX方向に並んで配置されている。上下で対をなすパワーモジュール110は、Y方向を軸として2回対称の配置とされている。このため、上段と下段とで、出力バスバー150の位置はX方向にずれている。上下で対をなすパワーモジュール110において、出力バスバー150の突出位置は、上段では保護部材180におけるX方向の一端側とされ、下段では上段とは反対の端部側とされている。このため、隣り合う対において、上段の出力バスバー150と下段の出力バスバー150とが、X方向において近傍配置となっている。
一方、Pバスバー130及びNバスバー140の共通配線部132,142は、X方向における中心を通り、Y方向に平行な中心線上に設けられている。共通配線部132,142は、この中心線に対して線対称配置とされている。パワーモジュール110は、出力バスバー150の突出部分を除く部分において、上記中心線に対して線対称配置とされている。上下で対をなすパワーモジュール110において、上段における共通配線部132,142と、下段における共通配線部132,142とが、Z方向の投影視において重なっている。パワーモジュール110の流路を含む冷却構造の詳細については、後述する。
入力端子台240は、直流電源2と電力変換装置5とを電気的に接続するための正極端子241及び負極端子242と、これら端子241,242を保持するハウジング243を有している。正極端子241及び負極端子242は、たとえば直流電源2から供給された直流電圧を、電力変換装置5に入力するための端子として機能する。正極端子241及び負極端子242のそれぞれは、1つの導電部材(たとえばバスバー)により構成されてもよいし、電気的に接続された複数の導電部材により構成されてもよい。入力端子台240は、平面略矩形状をなすケース210の四隅の1つの近傍に設けられている。具体的には、側壁212,215により規定される隅部の近傍に配置されている。入力端子台240は、底壁211上に配置されている。入力端子台240は、Z方向において、底壁211から熱交換部233の一面233aよりもカバー220に近い位置まで配置されている。
正極端子241は直流電源2の正極と電気的に接続され、負極端子242は直流電源2の負極と電気的に接続される。ハウジング243は、電気絶縁材料、たとえば樹脂材料を用いて形成されている。本例では、樹脂材料からなるハウジング243が、正極端子241及び負極端子242と一体的に成形されている。正極端子241及び負極端子242は、直流電源2との接続側から少なくとも一部の範囲において、Z方向において同じ位置であって、Y方向に所定の間隔を有して並んで配置されている。
ハウジング243は、電源接続部244a,244bと、バスバー固定部245を有している。電源接続部244a,244bは、直流電源2との接続端から所定範囲の部分である。電源接続部244aは、その一端から正極端子241が露出するように正極端子241を覆っている。これにより、正極端子241と直流電源2の正極との電気的な接続が可能となっている。電源接続部244bは、その一端から負極端子242が露出するように負極端子242を覆っている。これにより、負極端子242と直流電源2の負極との電気的な接続が可能となっている。
電源接続部244a,244bのそれぞれは、略円柱状をなすとともに、Y方向において1つに繋がっている。これにより、ハウジング243の外面が、貫通孔216aに対応して略8の字状をなしている。電源接続部244a,244bの先端部分が貫通孔216aに配置された状態で、電源接続部244a,244bの外面とケース210における貫通孔216aの壁面との間に図示しないシール部材が配置され、防水シール部が形成されている。
バスバー固定部245は、X方向において電源接続部244a,244bに連なっており、その全体がケース210内に収容されている。バスバー固定部245は、一部のバスバー280が固定される部分であり、バスバー280を固定しやすいように、平坦な搭載面を有している。本例では、後述するVLバスバー281が固定される搭載面245aと、Nバスバー282が固定される搭載面245bを有している。バスバー固定部245は、略直方体状をなしており、Z方向において、同じ側に搭載面245a,245bが設けられている。搭載面245a,245bはY方向に並んでおり、且つ、Z方向の位置がずれて設けられている。すなわち、バスバー固定部245は、バスバー280の固定面側が段差形状をなしている。搭載面245bのほうが搭載面245aよりもカバー220の底壁221から離れて設けられている。搭載面245a,245bは、いずれも熱交換部233の一面233aよりカバー220に近い位置とされている。
出力端子台250は、パワーモジュール110に接続される複数の端子251と、これらを保持するハウジング252と、ケース210内に出力端子台250を固定するための支持部253を有している。端子251は、1つの導電部材(たとえばバスバー)により構成されてもよいし、電気的に接続された複数の導電部材により構成されてもよい。出力端子台250は、側壁214の隣りに配置されている。出力端子台250は、側壁214のほぼ全域と対向している。出力端子台250は、側壁212,213,214により規定される領域に配置されている。出力端子台250は、Y方向において、上段のパワーモジュール110、熱交換部233、下段のパワーモジュール110と対向するように設けられている。すなわち、上段及び下段のパワーモジュール110それぞれの少なくとも一部は、Y方向に投影視において、出力端子台250と重なっている。そして、出力端子台250の隣りにパワーモジュール110が配置されている。これにより、端子251と出力バスバー150との配線長を短くすることができる。
本例では、出力端子台250がパワーモジュール110の個数に対応して、8本の端子251を有している。8本のうち、2本がコンバータ6を構成する2つのパワーモジュール110に対応し、残りの6本がインバータ7,8を構成する6つのパワーモジュール110に相当する。コンバータ6に対応する端子251は、たとえば、リアクトル260とパワーモジュール110とを接続する端子として機能する。また、後述するIL電流をモニタするための端子として機能させることもできる。インバータ7,8に対応する端子251は、負荷であるモータジェネレータ3,4に対して、所望の交流電圧を出力するための端子として機能する。このため、出力バスバー150とともに、図1に示した出力配線15に相当する。
ハウジング252は、電気絶縁材料、たとえば樹脂材料を用いて形成されている。本例では、樹脂材料からなるハウジング252が、端子251と一体的に成形されている。ハウジング252は、X方向を長手方向とする略直方体状をなしておいる。ハウジング252(出力端子台250)は、Y方向両端それぞれ配置された支持部253を介してケース210に固定されている。ハウジング252には、図示しない電流センサが封入されている。コンバータ6に対応する端子251に設けられた電流センサは、昇圧配線14に流れる電流(IL電流)を検出する。インバータ7,8に対応する端子251に設けられた電流センサは、相電流を検出する。電流センサの検出信号は、バスバーなどの導電部材を介して、制御基板290に出力される。上記したように、電流センサをパワーモジュール110(出力バスバー150)に設ける場合は、ハウジング252に電流センサがなくてもよい。
端子251は、第1接続部251aと、第2接続部251bを有している。Y方向において、ハウジング252の一面から第1接続部251aが突出し、一面と反対の裏面に第2接続部251bが露出している。第1接続部251a及び第2接続部251bはハウジング252の内部で電気的に接続されている。
第1接続部251aは、ハウジング252の一面から突出して、Y方向に延設されている。第1接続部251aには、パワーモジュール110の出力バスバー150(幅狭部152)が接続されている。ハウジング252は、パワーモジュール110側の一面に突起部252aを有している。ハウジング252は、5つの突起部252aを有している。突起部252aは、Z方向に所定の高さをもってY方向に突出している。第1接続部251aは、突起部252aから突出している。
上段の出力バスバー150が接続される第1接続部251aは、側壁213側から4つの突起部252aにそれぞれ設けられている。下段の出力バスバー150が接続される第1接続部251aは、側壁214側から4つの突起部252aにそれぞれ設けられている。側壁213に最も近い突起部252aには、上段の出力バスバー150、具体的には、インバータ7のU相の出力バスバー150に対応する第1接続部251aのみ、設けられている。側壁212に最も近い突起部252aには、下段の出力バスバー150、具体的には、コンバータ6bの出力バスバー150に対応する第1接続部251aのみ、設けられている。
第2接続部251bは、ハウジング252において、第1接続部251aとは反対の面、すなわち側壁214との対向面から露出している。8つの第2接続部251bのうち、Y方向において、側壁213側の6つの第2接続部251bは、インバータ7,8を構成する各相の出力バスバー150に電気的に接続されている。これら第2接続部251bは、側壁214に設けられた開口部218に臨んでいる。これにより、開口部218を通じて、モータジェネレータ3,4の三相巻線と電気的に接続することができる。残りの2つ、すなわち側壁212側の2つの第2接続部251bは、たとえば上記したIL電流を検出する電流センサの出力部として用いることができる。ケース210における開口部218の周囲と出力端子台250との対向部分には、図示しないシール部材が介在し、防水シール部が形成されている。
リアクトル260は、コンバータ6のリアクトルR1,R2を構成している。リアクトル260は、熱交換部233の2本のアームのうち、パワーモジュール110とは別のアームに配置されている。本例では、2つのリアクトル260を有し、1つがリアクトルR1を構成し、残りの1つがリアクトルR2を構成している。R1側のリアクトル260は熱交換部233の一面233a上に配置され、R2側のリアクトル260は裏面233b上に配置されている。リアクトル260は、ねじ締結などによって、熱交換部233に固定されている。R1側のリアクトル260とR2側のリアクトル260は、Z方向の投影視においてほぼ一致する配置となっている。リアクトル260は、X方向において、コンデンサユニット270と並んで配置されている。リアクトル260は、側壁212側に配置されている。Y方向において、リアクトル260及びコンデンサユニット270と、出力端子台250の間に、パワーモジュール110が配置されている。
リアクトル260は、外部接続端子として、第1端子261及び第2端子262をそれぞれ有している。第1端子261は、直流電源2の正極及びフィルタコンデンサC3の正極と電気的に接続される端子である。第2端子262は、コンバータ6を構成するパワーモジュール110の出力バスバー150と電気的に接続される端子である。リアクトル260の本体部は、Y方向を長手とする平面略長方形をなしている。そして、側壁212に対向する長手辺から、板厚方向をY方向にして第1端子261及び第2端子262が突出している。
コンデンサユニット270は、平滑コンデンサC2及びフィルタコンデンサC3を構成している。コンデンサユニット270は、たとえばフィルムコンデンサをケース内に収容してなる。コンデンサユニット270は、上記したように、熱交換部233の2本のアームのうち、リアクトル260と同じアームに配置されている。コンデンサユニット270は、ねじ締結などによって熱交換部233に固定されている。
本例では、コンデンサユニット270が、熱交換部233の一面233a及び裏面233bのそれぞれに配置されている。以下において、一面233a側を上段、裏面233bを下段とも称する。上段側のコンデンサユニット270に、平滑コンデンサC2の一部とフィルタコンデンサC3が構成され、下段側のコンデンサユニット270に平滑コンデンサC2が構成されている。上段側のコンデンサユニット270と下段側のコンデンサユニット270は、Z方向の投影視においてほぼ一致する配置となっている。コンデンサユニット270は、リアクトル260に対して側壁213側に配置されている。
コンデンサユニット270は、外部接続端子として、正極端子271及び負極端子272を有している。正極端子271は、上記したVHライン12Hと電気的に接続される端子である。負極端子272は、Nライン13と電気的に接続される端子である。コンデンサユニット270は、X方向を長手とする平面略長方形をなしている。そして、側壁214に対向する長手辺の中央部分から、板厚方向をZ方向にして正極端子271及び負極端子272が突出している。正極端子271及び負極端子272とパワーモジュール110の共通配線部132,142は、Y方向において互い向き合う面から突出している。正極端子271及び負極端子272とパワーモジュール110の共通配線部132,142とは、Y方向において互いに近づくように延設されている。また、正極端子271及び負極端子272は、Z方向において互いに対向している。これにより、主回路配線のインダクタンスを低減することができる。
図42及び図43に示すように、正極端子271及び負極端子272は、Z方向において、パワーモジュール110の共通配線部132,142よりも熱交換部233から離れた位置に配置されている。具体的には、上段において、熱交換部233の一面233aに近い側から、Nバスバー140の共通配線部142、Pバスバー130の共通配線部132、負極端子272、正極端子271の順に配置されている。下段についても同様に、熱交換部233の裏面233bに近い側から、Nバスバー140の共通配線部142、Pバスバー130の共通配線部132、負極端子272、正極端子271の順に配置されている。
コンデンサユニット270は、正極端子271及び負極端子272以外にも、図示しない外部接続端子を有している。この外部接続端子は、上記したVLライン12Lと電気的に接続される端子である。
バスバー280は、電力変換装置5を構成する他の要素間を電気的に接続する。バスバー280は、銅などの導電性に優れる金属板材を加工、たとえばプレス加工して形成されている。バスバー280は、VLバスバー281と、Nバスバー282と、ILバスバー283と、VHバスバー284を有している。各バスバー280は、ケース210内に収容されている。
VLバスバー281は、上記したVLライン12Lを構成している。VLバスバー281は、入力端子台240の正極端子241とリアクトル260とを接続するとともに、正極端子241とコンデンサユニット270とを接続している。VLバスバー281は、図36に示すように、板厚方向がZ方向に略平行となるように入力端子台240の搭載面245aに配置されている。VLバスバー281は、この配置状態で、ねじ締結により正極端子241と電気的に接続されている。VLバスバー281は、複数に分岐している。
分岐したVLバスバー281の1つは、入力端子台240との固定部分に対して、板厚方向がX方向となるように屈曲され、R1側のリアクトル260の第1端子261に接続されている。分岐したVLバスバー281の別の1つは、入力端子台240の固定部分からR1側のリアクトル260の長辺に沿って側壁215側に延びるY方向延設部と、R1側のリアクトル260の短辺と側壁215との間をX方向に延び、コンデンサユニット270に接続されるX方向延設部を有している。Y方向延設部は、X方向延設部との境界の手前に屈曲部分を有しており、この屈曲部によって板厚方向がX方向に切り換わっている。X方向延設部の板厚方向は、Y方向と略平行とされている。分岐した別のVLバスバー281は、上記したY方向延設部の屈曲部分から、Z方向の底壁211側に延設され、R2側のリアクトル260の第1端子261に接続されている。
Nバスバー282は、上記したNライン13を構成している。Nバスバー282は、図35及び図36に示すように、板厚方向がZ方向に略平行となるように入力端子台240の搭載面245bに配置されている。Nバスバー282は、この配置状態で、ねじ締結により負極端子242と電気的に接続されている。Nバスバー282は、図37及び図41に示すように、入力端子台240への固定部分から、板厚方向を同じにしてY方向の側壁214側に延設されている。そして、Z方向の投影視において、熱交換部233の切り欠き部235と重なる領域において、板厚方向がY方向と略平行となるように折り曲げられている。
Nバスバー282のうち、板厚方向がY方向と略平行となるようにされた折曲部は、図37に示すように、X方向において、コンバータ6a,6bを構成するパワーモジュール110の共通配線部142(Nバスバー140)よりも側壁212に近い位置まで延設されている。Nバスバー282の折曲部は、インバータ7,8のU相を構成するパワーモジュール110の共通配線部142(Nバスバー140)よりも側壁213に近い位置まで延設されている。Nバスバー282の折曲部は、図42及び図43に示すように、Z方向において、上段の負極端子272から下段の負極端子272にわたって設けられている。このように、Nバスバー282は、Z方向に所定の幅を有しつつX方向に延設されている。
そして、Nバスバー282の折曲部に、コンデンサユニット270の負極端子272のそれぞれと、パワーモジュール110の共通配線部142のそれぞれが接続されている。このように、Z方向の投影視において切り欠き部235と重なる領域において、Nバスバー282は、コンデンサユニット270及びパワーモジュール110と接続されている。すなわち、Nライン13と、平滑コンデンサC2、フィルタコンデンサC3、及び各上下アーム回路10の共通配線11Nとが、接続されている。
ILバスバー283は、上記した昇圧配線14を構成している。ILバスバー283は、リアクトル260の第2端子262と、コンバータ6を構成するパワーモジュール110の出力バスバー150とを接続している。本例では、図30に示すように、2本のILバスバー283を備えている。ILバスバー283の1つは、一面233a側において、R1側のリアクトル260の第2端子262と、コンバータ6aを構成するパワーモジュール110の出力バスバー150を接続している。ILバスバー283の別の1つは、裏面233b側において、R2側のリアクトル260の第2端子262と、コンバータ6bを構成するパワーモジュール110の出力バスバー150を接続している。
ILバスバー283は、第2端子262との接続部分からパワーモジュール110側に延設された第1延設部と、第1延設部に対して屈曲され、Y方向の側壁212側に延設された第2延設部と、第2延設部から側壁212に沿って側壁214側に延びる第3延設部を少なくとも有している。ILバスバー283は、直接的に出力バスバー150に接続されてもよいし、上記した端子251を介して出力バスバー150に接続されてもよい。
VHバスバー284は、上記したVHライン12Hを構成している。図37などに示すように、VHバスバー284は、Z方向からの投影視において、切り欠き部235と重なる領域に配置されている。VHバスバー284は、板厚方向がY方向と略平行となるように、切り欠き部235と重なる領域に配置されている。VHバスバー284は、図37に示すように、X方向において、コンバータ6a,6bを構成するパワーモジュール110の共通配線部132(Pバスバー130)よりも側壁212に近い位置まで延設されている。VHバスバー284は、インバータ7,8のU相を構成するパワーモジュール110の共通配線部132(Pバスバー130)よりも側壁213に近い位置まで延設されている。VHバスバー284は、図42及び図43に示すように、Z方向において、上段の正極端子271から下段の正極端子271にわたって設けられている。このように、VHバスバー284は、Z方向に所定の幅を有しつつX方向に延設されている。
そして、VHバスバー284に、コンデンサユニット270の正極端子271のそれぞれと、パワーモジュール110の共通配線部132のそれぞれが接続されている。このように、Z方向の投影視において切り欠き部235と重なる領域において、VHバスバー284は、コンデンサユニット270及びパワーモジュール110と接続されている。すなわち、VHライン12Hと、平滑コンデンサC2及び各上下アーム回路10の共通配線11Pとが、接続されている。
本例では、Y方向の投影視において、VHバスバー284がNバスバー282の折曲部を内包している。すなわち、Nバスバー282の折曲部の全体が、VHバスバー284とY方向において対向している。これにより、主回路配線のインダクタンスを低減することができる。Y方向において、Nバスバー282の折曲部はリアクトル260及びコンデンサユニット270側に配置され、VHバスバー284はパワーモジュール110側に配置されている。このため、パワーモジュール110において、側面183からの突出長さは、共通配線部142のほうが共通配線部132よりも長くされている。また、コンデンサユニット270において、正極端子271のほうが負極端子272よりも長くされている。
制御基板290には、制御回路部9が形成されている。制御基板290は、プリント基板に電子部品が実装されてなる。制御基板290は、電子部品としてマイコンを含んでいる。制御基板290には、コネクタ291も実装されている。制御回路部9は、コネクタ291を通じて、上位ECUなどと電気的に接続される。このようなコネクタ291は、低圧コネクタとも称される。
制御基板290(プリント基板)は、X方向を長手とする平面略長方形をなしている。X方向において、制御基板290は、側壁212の内面から側壁213の内面までの長さとほぼ同じか若干短い長さとされている。制御基板290は、Y方向において、側壁214側に偏って配置されている。制御基板290は、Y方向において、出力端子台250、パワーモジュール110、及び熱交換部233の切り欠き部235と重なり、リアクトル260及びコンデンサユニット270と重ならないように設けられている。制御基板290は、図44などに示すように、カバー220に収容されている。
コネクタ291は、X方向の端部、具体的には側壁213側の端部付近に実装されている。コネクタ291は制御基板290に挿入実装されている。コネクタ291は、ケース210とカバー220とを組み付けた状態で、凹部227とケース210との間で形成される開口部から突出している。コネクタ291のハウジングとケース210、カバー220との対向部分には、図示しないシール部材が介在し、防水シール部が形成されている。
制御基板290には、パワーモジュール110の外部接続端子170が接続されている。外部接続端子170は、制御基板290に挿入実装されている。図37に示すように、外部接続端子170は、Z方向の投影視において、切り欠き部235と重なる領域で、制御基板290に実装されている。すなわち、Y方向の一端側、具体的には側壁215側の端部付近に実装されている。図34及び図37などに示すように、パワーモジュール110の外部接続端子170は、側面183からY方向に突出し、略90度の角度で屈曲されてカバー220の底壁221側に延設されている。すなわち、側面183からの突出分が略L字状をなしている。制御基板290がカバー220側に配置されているため、外部接続端子170の延設長さは、上段のパワーモジュール110よりも下段のパワーモジュール110のほうが長くされている。下段の外部接続端子170は、切り欠き部235を挿通している。上段と下段と外部接続端子170同士が干渉しないように、屈曲部分は、下段のほうが上段よりもリアクトル260やコンデンサユニット270に近い位置とされている。これにより、制御基板290において、外部接続端子170の実装位置はY方向に2段となっている。基板端部側が下段の実装位置である。
次に、図45及び図46に基づき、冷却構造について説明する。図45は、冷却器とパワーモジュール、リアクトル、及びコンデンサユニットの配置を示す模式図である。図46は、流路を示す模式的な断面図である。図46では、便宜上、パワーモジュール110が備える半導体装置20を1つとしている。
図45に示すように、冷却器230の熱交換部233は、平面略U字状をなしている。熱交換部233のU字の一方のアーム233cにパワーモジュール110が配置されている。また、別のアーム233dにリアクトル260及びコンデンサユニット270が配置されている。X方向の長さはアーム233cのほうがアーム233dよりも長くされ、Y方向の長さはアーム233dのほうがアーム233cよりも長くされている。各アーム233c、233dにおいてX方向が長手方向とされている。冷却器230の熱交換部233は、内部に流路234を有している。熱交換部233は、上記した切り欠き部235に加えて、内部に仕切り部237,238を有している。
仕切り部237は、アーム233cに設けられている。仕切り部237はX方向に延設されており、アーム233c内の流路234をY方向において2つの領域に区切っている。仕切り部237は、流路234を、供給管231の流路に連なる上流側領域234aと、排出管232の流路に連なる下流側領域234bとに区切っている。供給管231は、熱交換部233に対して、U字の両端とは反対側で、熱交換部233に接続されている。アーム233cにおいて、上流側領域234a及び下流側領域234bはX方向に延設されている。上流側領域234aは、一端に供給管231の流路が連なり、他端はアーム233cの先端側において行き止まりとなっている。下流側領域234bは、アーム233cの先端側において行き止まりとなっており、他端はアーム233d側に連なっている。アーム233cにおいて、上流側領域234aのほうが下流側領域234bよりも、Y方向の長さ、すなわち幅が広くされている。
仕切り部238は、アーム233dに設けられている。仕切り部238は、U字の両端とは反対側の壁面からX方向に延設されている。仕切り部238を設けることで、アーム233d内の流路234(下流側領域234b)が折り返し構造となっている。排出管232は、熱交換部233に対して、U字の両端とは反対側で、熱交換部233に接続されている。排出管232の流路は、折り返し構造の終端、すなわち流路234の終端に連なっている。このように、アーム233dにおいて仕切り部238を用いた流路234(下流側領域234b)の折り返し構造を採用しているため、アーム233d内の流路234内を冷媒が偏って流れることを抑制し、リアクトル260及びコンデンサユニット270を効果的に冷却することができる。
上記したように、アーム233c,233dの間には切り欠き部235が設けられている。切り欠き部235は、仕切り部238同様に機能する。切り欠き部235及び仕切り部238により、流路234の下流側領域234bは蛇行形状をなしている。このように、蛇行形状を採用することで、X方向に並ぶすべてのパワーモジュール110を冷却しつつ、リアクトル260やコンデンサユニット270も効果的に冷却することができる。また、切り欠き部235を挟んで、パワーモジュール110と、リアクトル260及びコンデンサユニット270が対向するため、上記したように効果的に冷却をしつつ、バスバー280を含めた接続構造を簡素化することができる。
複数のパワーモジュール110は、アーム233c上において、供給管231側から、インバータ7,8のU相、V相、W相、コンバータ6を構成する順に配置されている。具体的には、一面233a上において、供給管231側から、インバータ7のU相、V相、W相、コンバータ6aを構成する順に配置されている。また、裏面233b上において、供給管231側から、インバータ8のU相、V相、W相、コンバータ6bを構成する順に配置されている。複数のパワーモジュール110は、アーム233cにおける冷媒の流れ方向に沿って、並んで配置されている。図45では、冷媒の流れを実線矢印で示している。
また、リアクトル260及びコンデンサユニット270は、アーム233d上においてX方向に並んで配置されている。具体的には、一面233a上において、排出管232側から、コンデンサユニット270、R1側のリアクトル260の順に配置されている。また、裏面233b上において、排出管232側から、コンデンサユニット270、R2側のリアクトル260の順に配置されている。
本例では、パワーモジュール110が冷却器120を有している。パワーモジュール110は、図22に示す構造をなしている。すなわち、保護部材180の一面181側から、コンデンサC1、1段目の熱交換部123、半導体装置20、2段目の熱交換部123、駆動基板160の順で配置されている。図46に示すように、上流側領域234aと下流側領域234bとは、パワーモジュール110の流路126を介して、連通している。流路234の上流側領域234a、流路126、及び流路234の下流側領域234bにより、1つの流路が形成されている。したがって、流路126,234には、同じ冷媒が流れる。
パワーモジュール110は、熱交換部233の一面233a及び裏面233bにそれぞれ配置されている。パワーモジュール110が備える冷却器120の供給管121及び排出管122は、保護部材180の一面181からZ方向に突出している。熱交換部233の一面233a側及び裏面233b側には、供給管121及び排出管122を取り付けるための貫通孔233e,233fが、パワーモジュール110ごとに設けられている。
本例では、供給管121が、上流側領域234aに連なる貫通孔233eに挿入され、供給管121の流路が流路234(上流側領域234a)に連なった状態で、供給管121と熱交換部233が接続されている。供給管121と熱交換部233との接続部は、環状の弾性部材(たとえばOリング)、硬化前で液状のシール材、溶接などによって液密にシールされている。同様に、排出管122が、下流側領域234bに連なる貫通孔233fに挿入され、排出管122の流路が流路234(下流側領域234b)に連なった状態で、排出管122と熱交換部233が接続されている。排出管122と熱交換部233との接続部も液密にシールされている。
上記した構造により、冷媒は以下に示すように流れる。冷却器230の供給管231から流路234に供給された冷媒は、図45に示すように、上流側領域234aをアーム233cの先端(U字先端)に向けて流れる。そして、冷媒は、上流側領域234aから、パワーモジュール110の流路126を通じて、下流側領域234bに流れる。これにより、パワーモジュール110の要素、たとえば半導体装置20及びコンデンサC1が冷却される。
具体的には、上流側領域234aから、供給管121を通じて2段の熱交換部123のそれぞれに冷媒が流れ、排出管122から下流側領域234bに排出される。供給管121と排出管122は、上記したように平面略矩形状の熱交換部123に対し、対角位置に設けられている。また、供給管121のほうが排出管122よりもX方向において供給管231に近い位置とされている。したがって、冷媒は、図45及び図46に破線矢印で示すように熱交換部123内の流路126を流れる。
流路126から下流側領域234bに流れ込んだ冷媒は、アーム233cの部分から切り欠き部235を迂回して、アーム233d側へ流れる。そして、下流側領域234bを仕切り部238に沿って流れ、アーム233dの先端側で折り返して排出管232から排出される。このように、アーム233d側において、冷媒が流路234を流れることで、リアクトル260及びコンデンサユニット270が冷却される。
次に、本実施形態の電力変換装置5の効果について説明する。
上記したように、電力変換装置5は、冷却器230と、電力変換部を構成する複数のパワーモジュール110を備えている。パワーモジュール110は、上下アーム回路10を構成する半導体装置20だけでなく、上下アーム回路10に並列接続されたコンデンサC1をそれぞれ有している。このように、パワーモジュール110ごとに、換言すれば上下アーム回路10ごとに、コンデンサC1をもたせている。さらに、パワーモジュール110において、半導体装置20とコンデンサC1とを、Z方向に並んで配置させている。
そして、このような構成のパワーモジュール110を、冷却器230(熱交換部233)の一面233a及び裏面233bの両面に配置させている。それぞれの面に配置されたパワーモジュール110は、冷却器230によって冷却される。したがって、半導体装置20を冷却しつつ、Z方向に直交する方向において電力変換装置5の体格を小型化することができる。また、冷却器の一面に半導体装置、裏面にコンデンサを配置し、半導体装置とコンデンサを並列接続する構成に較べて、半導体装置の近傍にコンデンサを配置することができる。よって、半導体装置とコンデンサを接続する配線のインダクタンスを低減し、ひいてはサージ電圧を抑制することができる。
また、冷却器230において、熱交換部233のZ方向の長さ、すなわち厚みが、Z方向に直交するX方向の最小長さ、Y方向の最小長さよりも短くされている。このように、冷却器230は、厚みの薄い扁平形状をなしている。したがって、流路234内において厚み方向に冷媒の温度分布、具体的には、一面233a側の表層と裏面233b側の表層での温度差が生じにくい。これにより、両面に配置されたパワーモジュール110のそれぞれを効果的に冷却することができる。
また、パワーモジュール110も、冷却器120を備えている。冷却器120の流路126は、冷媒が、冷却器230の流路234から流路126を介して流路234に戻るように、流路234に連結されている。このように、冷却器230からパワーモジュール110内の冷却器120に冷媒を引き込み、パワーモジュール110内において半導体装置20を冷却することができる。半導体装置20は冷却器120の一面に配置されている。冷却器120は、冷却器230よりも半導体装置20の近傍に配置されている。よって、半導体装置20を効果的に冷却することができる。また、冷却器120において、半導体装置20と反対側には、コンデンサC1が配置されている。したがって、コンデンサC1も効果的に冷却することができる。なお、冷却器230が第1冷却器、流路234が第1流路、冷却器120が第2冷却器、流路126が第2流路に相当する。
また、冷却器230の流路234が、上流側領域234aと下流側領域234bとに区画されている。そして、パワーモジュール110の流路126が、上流側領域234aと下流側領域234bとを繋いでいる。これによれば、冷却器120の流路126側に冷媒が流れ込みやすい。したがって、半導体装置20やコンデンサC1をより効果的に冷却することができる。
なお、図47に示す別例のように、区画されない流路234を有する熱交換部233に対してパワーモジュール110を配置し、流路126を繋げてもよい。図47は、図46に対応している。しかしながら、パワーモジュール110の体格を考慮すると、冷媒の流れ方向において、流路126の断面積のほうが流路234より小さくなる。冷却器230の流路234は複数のパワーモジュール110に共通の主流路であり、冷却器120の流路126は副流路である。よって、本例に示すように、冷却器120側に冷媒が流れ込みやすい構成を採用するのが好ましい。
たとえば図示を省略するが、冷却器230が、上流側領域234aと下流側領域234bとをつなぐ連結領域を有し、この連結領域の断面積を、上流側領域234aや下流側領域234bよりも小さくしてもよい。連結領域を有することで、上流側領域234aから下流側領域234bに流れ込む抵抗を高め、冷却器120側に流れ込みやすくなる。しかしながら、本例で示したほうが、より効果的である。
また、冷却器120の熱交換部123が2段配置となっている。すなわち、冷却器120が、Z方向において2段に分岐している。冷却器120(熱交換部123)は、インナーフィンを設けるなどして、冷却器230(熱交換部233)よりも熱伝達率が高められている。そして、2段の熱交換部123によって半導体装置20が挟まれ、熱交換部123の2段の少なくとも1つに対して半導体装置20とは反対側にコンデンサC1が配置されている。これによれば、2段の熱交換部123によってZ方向における両面側から半導体装置20を冷却することができる。したがって、半導体装置20をさらに効果的に冷却することができる。また、熱交換部123によってコンデンサC1を冷却することができる。特に本例では、冷却器230に近い1段目の熱交換部123と熱交換部233との間に、コンデンサC1が配置されている。したがって、コンデンサC1を効果的に冷却することができる。
また、コンデンサC1が熱交換部123の2段の1つに対して半導体装置20と反対側に配置され、駆動基板160が熱交換部123の2段の別の1つに対して半導体装置20と反対側に配置されている。そして、半導体装置20の信号端子80が駆動基板160に接続されている。これによれば、Z方向に直交する方向の体格を小型化しつつ駆動基板160を冷却することができる。また、信号端子80を短くすることができる。半導体装置20と駆動基板160とを短距離で接続することができるため、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフタイミングの遅延を抑制することができる。また、耐ノイズ性を向上させることができる。
また、電力変換装置5は、インバータ7,8を構成する複数のパワーモジュール110とともに、平滑コンデンサC2を含むコンデンサユニット270を備えている。そして、平滑コンデンサC2の静電容量は、パワーモジュール110それぞれが備えるコンデンサC1の静電容量よりも大きくされている。このように、コンデンサC1とは別に平滑コンデンサC2を備えるため、コンデンサC1は、並列接続された上下アーム回路10を構成するスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング時に必要な電荷を供給する機能を有せばよい。したがって、コンデンサC1の体格を小さくすることができる。また、平滑コンデンサC2を備えることで、直流電圧の変動を抑制することができる。特に本例では、コンデンサC1及び上下アーム回路10が、上記した共通配線11P,11Nを介して、電力ラインであるVHライン12H及びNライン13に接続されている。具体的には、コンデンサC1及び上下アーム回路10が、共通配線部132,142を介して、VHバスバー284及びNバスバー282に接続されている。したがって、上記したように、サージ電圧を抑制することもできる。なお、コンデンサC1が第1コンデンサに相当し、平滑コンデンサC2が第2コンデンサに相当する。
また、平滑コンデンサC2を構成するコンデンサユニット270は、冷却器230の熱交換部233の両面にそれぞれ配置されている。このように、Z方向において、コンデンサユニット270の間に冷却器230が配置されている。したがって、Z方向に直交する方向において体格を小型化しつつ、平滑コンデンサC2を含むコンデンサユニット270を効果的に冷却することができる。
また、冷却器230が、パワーモジュール110が配置される領域と、平滑コンデンサC2を含むコンデンサユニット270が配置される領域とを区画する切り欠き部235を有している。これにより、熱交換部233の両面にパワーモジュール110及びコンデンサユニット270を配置しつつ、Nライン13を構成するNバスバー282、VHライン12Hを構成するVHバスバー284と、パワーモジュール110、コンデンサユニット270との接続を簡素化することができる。したがって、主回路配線のインダクタンスを低減することもできる。また、パワーモジュール110と制御基板290との接続を簡素化、たとえば短距離で接続することができる。
また、電力変換装置5が、コンバータ6を構成するリアクトル260及びパワーモジュール110を備えている。そして、リアクトル260とコンデンサユニット270とがZ方向に直交する一方向に並んで配置されている。このように、リアクトル260とコンデンサユニット270が、互いに近傍に配置されている。これにより、電力変換装置5の体格を小型化することができる。また、VLバスバー281を短くし、これにより銅損を低減することができる。
また、リアクトル260及びコンデンサユニット270は、複数のパワーモジュール110の並び方向であるX方向において並んで配置されている。このように並び方向を揃えることで、電力変換装置5の体格を小型化することができる。そして、Y方向において、リアクトル260及びコンデンサユニット270は、パワーモジュール110と対向している。パワーモジュール110のそれぞれは、Y方向の投影視において、リアクトル260及びコンデンサユニット270の少なくとも一方と重なっている。パワーモジュール110と、リアクトル260、コンデンサユニット270との距離が短くなり、ILバスバー283や、Nバスバー282及びVHバスバー284を介したパワーモジュール110からコンデンサユニット270までの接続距離を短くすることができる。これにより、銅損を低減することができる。
また、コンバータ6として、複数のリアクトルR1,R2を含む多相コンバータを採用している。そして、R1側のリアクトル260が熱交換部233の一面233a上に配置され、R2側のリアクトル260が裏面233b上に配置されている。すなわち、冷却器230の両面にリアクトル260が配置されている。したがって、Z方向に直交する方向の体格を小型化しつつ、リアクトル260を効果的に冷却することができる。
また、パワーモジュール110が流路234の上流側に配置され、リアクトル260及びコンデンサユニット270は、パワーモジュール110よりも流路234の下流側に配置されている。これによれば、パワーモジュール110だけでなく、リアクトル260やコンデンサユニット270の効果的に冷却することができる。また、単位時間当たりの温度変化が大きいパワーモジュール110、具体的にはスイッチング素子Q1,Q2が形成された半導体チップ40を、単位時間当たりの温度変化の小さいリアクトル260及びコンデンサユニット270よりも温度の低い冷媒によって、効果的に冷却することができる。
なお、電力変換装置5に適用されるパワーモジュール110は、本例に示した構成に限定されない。上記したように、たとえば2in1パッケージ構造の半導体装置20を備えるパワーモジュール110を採用することもできる。また、主端子70の配置についても、上記した例以外の構成を採用することもできる。
パワーモジュール110において、半導体装置20を2段の熱交換部123の間に配置する例を示したが、これに限定されない。コンデンサC1を2段の熱交換部123の間に配置し、半導体装置20を熱交換部233と1段目の熱交換部123の間に配置してもよい。しかしながら、冷却器230との間に保護部材180が介在する構成の場合、単位時間当たりの温度変化が大きい半導体装置20を2段の熱交換部123の間で冷却するほうが好ましい。
複数のパワーモジュール110の配置は、上記例に限定されない。たとえば図48に示す別例では、インバータ7を構成する一部のパワーモジュール110を熱交換部233の一面233a上に配置し、残りのパワーモジュール110を裏面233b上に配置している、また、インバータ8を構成する一部のパワーモジュール110を熱交換部233の一面233a上に配置し、残りのパワーモジュール110を裏面233b上に配置している。具体的には、一面233a上に、コンバータ6a、インバータ7のU相及びV相、インバータ8のW相を構成する4つのパワーモジュール110を配置している。裏面233b上に、コンバータ6b、インバータ7のW相、インバータ8のU相及びV相を構成する4つのパワーモジュール110を配置している。
パワーモジュール110において、半導体装置20を冷却器230側とする例を示したが、これに限定されない。コンデンサC1を熱交換部123,233の間に配置してもよい。しかしながら、単位時間当たりの温度変化が大きい半導体装置20を熱交換部123,233の間で冷却するほうが好ましい。
出力端子台250の端子251を介さず、コンバータ6を構成するパワーモジュール110の出力バスバー150と、ILバスバー283とを直接的に接続してもよい。すなわち、出力端子台250には、インバータ7,8用の端子251を設けてもよい。
(第2実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した駆動システム1、電力変換装置5、半導体装置20、及びパワーモジュール110と共通する部分についての説明は省略する。
図49に示すように、本実施形態では、パワーモジュール110が備える冷却器120において、熱交換部123が1段配置となっている。図49は、図46に対応している。本実施形態でも、冷却器230の熱交換部233における一面233a及び裏面233bの両面に、パワーモジュール110が配置されている。そして、半導体装置20が、熱交換部123,233の間に配置され、半導体装置20に並列接続されたコンデンサC1は、熱交換部123に対して、半導体装置20とは反対側に配置されている。また、パワーモジュール110が、駆動基板160を備えない構成とされている。それ以外の構成は、先行実施形態(たとえば図46参照)と同じである。
このように、本実施形態でも、半導体装置20とコンデンサC1とを、Z方向に並んで配置させている。そして、このような構成のパワーモジュール110を、冷却器230(熱交換部233)の一面233a及び裏面233bの両面に配置させている。したがって、半導体装置20を冷却しつつ、Z方向に直交する方向において電力変換装置5の体格を小型化することができる。
また、同じパワーモジュール110において、半導体装置20のほうがコンデンサC1よりも熱交換部233の近傍に配置されている。したがって、冷却器230の熱交換部233により、半導体装置20を効果的に冷却することができる。
また、先行実施形態同様、冷却器230(熱交換部233)は、厚みの薄い扁平形状をなしている。Z方向において冷媒の温度差が生じにくいため、両面に配置されたパワーモジュール110のそれぞれを効果的に冷却することができる。
また、半導体装置20は、熱交換部123,233の間に配置されている。したがって、熱交換部123,233により、半導体装置20をZ方向における両面側から冷却することができる。これにより、半導体装置20をさらに効果的に冷却することができる。コンデンサC1についても、熱交換部123によって冷却することができる。
なお、熱交換部233は、図49に示す構成に特に限定されない。たとえば図47に示したように、区画されていない流路234を有する構成や、上記した連結領域を有する構成を採用してもよい。
パワーモジュール110において、半導体装置20を冷却器230側とする例を示したが、これに限定されない。コンデンサC1を熱交換部123,233の間に配置してもよい。しかしながら、単位時間当たりの温度変化が大きい半導体装置20を熱交換部123,233の間で冷却するほうが好ましい。
(第3実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した駆動システム1、電力変換装置5、半導体装置20、及びパワーモジュール110と共通する部分についての説明は省略する。
図50に示すように、本実施形態では、パワーモジュール110が上記した冷却器120及び駆動基板160を備えていない。本実施形態でも、冷却器230の熱交換部233における一面233a及び裏面233bの両面に、パワーモジュール110が配置されている。そして、半導体装置20が、冷却器230側に配置されている。また、冷却器230の熱交換部233は、上流と下流とで区画されていない。それ以外の構成は、先行実施形態(たとえば図46参照)と同じである。
このように、本実施形態でも、半導体装置20とコンデンサC1とを、Z方向に並んで配置させている。そして、このような構成のパワーモジュール110を、冷却器230(熱交換部233)の一面233a及び裏面233bの両面に配置させている。したがって、半導体装置20を冷却しつつ、Z方向に直交する方向において電力変換装置5の体格を小型化することができる。
また、同じパワーモジュール110において、半導体装置20のほうがコンデンサC1よりも熱交換部233の近傍に配置されている。したがって、冷却器230の熱交換部233により、半導体装置20を効果的に冷却することができる。
また、先行実施形態同様、冷却器230(熱交換部233)は、厚みの薄い扁平形状をなしている。Z方向において冷媒の温度差が生じにくいため、両面に配置されたパワーモジュール110のそれぞれを効果的に冷却することができる。
パワーモジュール110において、半導体装置20を冷却器230側とする例を示したが、これに限定されない。コンデンサC1を冷却器230側としてもよい。しかしながら、単位時間当たりの温度変化が大きい半導体装置20を冷却器230側にして冷却するほうが好ましい。
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、パワーモジュール110とは別の発熱体におけるひとつの面が熱交換部233によって冷却される例を示した。これに代えて、この実施形態では、発熱体の複数の面が熱交換部233によって冷却されるように構成されている。
図51に示すように、本実施形態の電力変換装置5においても、ケース210とカバー220とを組み付けて構成される筐体の内部空間に、その他の要素それぞれの少なくとも一部が収容されている。冷却器230の大部分はケース210内に配置されており、一部分、具体的には供給管231及び排出管232それぞれの一部分が、ケース210から外へ突出している。図51では、電力変換装置5を簡素化して図示している。
熱交換部233は、上記したように、アルミニウムなどの金属材料を用いて形成されている。熱交換部233は、冷却筐体と称される場合がある。図52及び図53に示すように、熱交換部233は、本体部2330と、支持部2331を備えている。図52〜図56に示すように、本体部2330に流路234が設けられている。図53及び図54では、便宜上、栓部2343を省略して図示している。図55及び図56では、便宜上、リアクトル260、パワーモジュール110を簡易的に示している。
本体部2330には、すべてのパワーモジュール110が配置されている。パワーモジュール110は、本体部2300において、一面233a及び裏面233bのそれぞれに配置されている。本実施形態では、本体部2330の一面233a側に、コンバータ6を構成する要素が配置されている。
具体的には、コンバータ6a,6bを構成する2つのパワーモジュール110と、2つのリアクトル260(R1,R2)が配置されている。一面233a側には、一面233aに配置されたパワーモジュール110とは別の発熱体であるリアクトル260が配置されている。裏面233bとは反対側に、リアクトル260が配置されている。本体部2330の裏面233b側には、インバータ7,8の各相に対応する6つのパワーモジュール110が配置されている。
本体部2330は、基部2330aと、凸部2330bと、被挿入部2330cを有している。基部2330aは、X方向を長手方向とする平面略長方形をなしている。凸部2330bは、基部2330aからZ方向に突出している。凸部2330bは、一面233a側において、基部2330aの一部分に設けられている。本体部2330において、基部2330a上に凸部2330bが設けられた部分は厚肉部であり、基部2330a上に凸部2330bが設けられていない部分は薄肉部である。
凸部2330bも、X方向を長手方向とする平面略長方形をなしている。凸部2330bは、基部2330aの四隅のひとつを含むように設けられている。凸部2330bは、X方向において、平面略長方形をなす基部2330aの2つの短辺の一方に偏って設けられている。X方向において、基部2330aの側面のひとつに凸部2330bの側面のひとつが略面一で連なり、熱交換部233の側面233gをなしている。基部2330aの側面の他のひとつは、側面233gとは反対の側面233hをなしている。凸部2330bは、Y方向において、基部2330aの2つの長辺の一方に偏って設けられている。凸部2330bの側面の一部及び突出先端面は、一面233aの一部分をなしている。
被挿入部2330cは、本体部2330に設けられた凹部である。被挿入部2330cには、発熱体の少なくとも一部分が挿入配置されている。本実施形態の被挿入部2330cは、有底の孔部である。被挿入部2330cは、Z方向からの平面視において、凸部2330bと重なる位置に設けられている。被挿入部2330cは、凸部2330bを貫通し、基部2330aの途中まで達している。被挿入部2330cも、X方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。
被挿入部2330cには、発熱体である2つのリアクトル260が挿入配置されている。本実施形態では、ひとつの被挿入部2330c内に、2つのリアクトル260(R1,R2)が並んで配置されている。被挿入部2330c内において、リアクトル260はX方向に並んでいる。リアクトル260のそれぞれは、長手方向をX方向として配置されている。2つのリアクトル260は、互いにほぼ同じ構造をなしており、X方向からの投影視において、ほぼ全域が互いに重なる(オーバーラップする)ように配置されている。
Z方向において、リアクトル260の大部分は被挿入部2330c内に配置され、残りの一部分は被挿入部2330cから突出している。リアクトル260の被挿入部2330c内に配置された部分の表面は、その一部が被挿入部2330cの壁面との間に隙間を有してもよい。この隙間には、図示しない熱伝導部材(たとえば熱伝導ゲル)を配置してもよい。これにより、熱伝導部材を配置しない構成に較べて、リアクトル260をより効果的に冷却することができる。熱伝導部材には、必要に応じて電気絶縁性をもたせてもよい。
コンバータ6を構成する2つのパワーモジュール110は、図52、図55などに示すように、基部2330aにおいて、凸部2330bの設けられていない領域に配置されている。パワーモジュール110は、2つのリアクトル260の並びの延長上に配置されている。2つのリアクトル260及び2つのパワーモジュール110は、X方向に沿って配置されている。X方向において、パワーモジュール110のひとつは、凸部2330bとの間にわずかな隙間を有して配置されている。
一面233a側に配置されたパワーモジュール110のそれぞれは、平面略長方形をなしている。パワーモジュール110は、長手方向をY方向として配置されている。パワーモジュール110は、Y方向における一端側に出力バスバー150を有し、他端側に共通配線部132,142を有している。
裏面233b側に配置されたパワーモジュール110も、長手方向をY方向として配置されている。6つのパワーモジュール110は、長手方向をY方向とし、X方向に並んで配置されている。一面233a側に配置されたリアクトル260及びパワーモジュール110の直下領域に、6つのパワーモジュール110が配置されている。
流路234は、上記したように、上流側領域234aと下流側領域234bとに区画されている。上流側領域234a及び下流側領域234bは、一面233a側に配置されたパワーモジュール110とリアクトル260との並び方向に延びている。流路234は、側面233gから反対の側面233hに向けて延びている。リアクトル260は、並び方向に直交する方向において、流路234の上流側領域234aと下流側領域234bとの間に配置されている。そして、リアクトル260のひとつの側面260aが流路234の上流側領域234aを流れる冷媒によって冷却され、側面260aとは反対の側面260bが下流側領域234bを流れる冷媒によって冷却されるようになっている。リアクトル260は、両側面260a,260b側に配置された熱交換部233(本体部2330)によって挟まれている。
本実施形態では、Z方向からの平面視において、上流側領域234a及び下流側領域234bが、パワーモジュール110とリアクトル260との並び方向であるX方向に略平行に延びている。Y方向において、上流側領域234aと下流側領域234bとの間にリアクトル260が配置されている。上流側領域234aと下流側領域234bとの間に被挿入部2330cが設けられている。Y方向において、上流側領域234aが支持部2331側に設けられている。
上流側領域234a及び下流側領域234bは、延設部2340と、繋ぎ部2341,2342をそれぞれ有している。延設部2340は、X方向に沿って延設されている。延設部2340は、第1延設部2340aと、第2延設部2340bを含んでいる。上流側領域234aの延設部2340と下流側領域234bの延設部2340とは、Y方向からの投影視において互いに重なる位置に設けられている。換言すれば、ZX平面において同じ位置に配置されている。
第1延設部2340aは、凸部2330bに設けられている。第1延設部2340aの一端は側面233gに開口している。この開口端には、上流側領域234aにおいて供給管231が接続され、下流側領域234bにおいて排出管232が接続されている。開口端と反対の端部は閉じている。凸部2330bにおける側面233gとは反対の側面233iに開口しないように、第1延設部2340aを設けてもよい。側面233iに開口するように第1延設部2340aを設け、後述する栓部2343によって閉じた状態としてもよい。他の閉じた部分についても同様である。
図55に示すように、凸部2330bにおいて被挿入部2330cを挟む一方の側に上流側領域234aの第1延設部2340aが設けられ、他方の側に下流側領域234bの第1延設部2340aが設けられている。そして、上流側領域234aの第1延設部2340aと下流側領域234bの第1延設部2340aとの間に、リアクトル260が配置されている。
第2延設部2340bは、第1延設部2340aよりも裏面233bに近い位置に設けられている。第2延設部2340bは、基部2330aに設けられている。第2延設部2340bは、Z方向からの投影視において第1延設部2340aと重なるように設けられている。第2延設部2340bの両端は閉じている。本実施形態では、第2延設部2340bが側面233gに開口し、側面233hの手前までX方向に延びている。そして、側面233g側の端部が、栓部2343によって閉塞されている。第2延設部2340bは、一面233a側に配置され、側面233hに近い側のパワーモジュール110よりも、側面233hに近いまで延設されている。第2延設部2340bは、第1延設部2340aよりも長く延設されている。
図55に示すように、基部2330aにおいて被挿入部2330cを挟む一方の側に上流側領域234aの第2延設部2340bが設けられ、他方の側に下流側領域234bの第2延設部2340bが設けられている。そして、上流側領域234aの第2延設部2340bと下流側領域234bの第2延設部2340bとの間に、リアクトル260が配置されている。図56などに示すように、上流側領域234aの第2延設部2340b、及び、下流側領域234bの第2延設部2340bとの直上に、パワーモジュール110が配置されている。パワーモジュール110は、Z方向からの投影視において、長手方向の一端側が上流側領域234aの第2延設部2340bと重なり、長手方向の他端側が下流側領域234bの第2延設部2340bと重なるように配置されている。
繋ぎ部2341は、流路234の同じ領域側の異なる延設部2340同士を連結している。繋ぎ部2341は、Z方向に延設されている。繋ぎ部2341は、第1繋ぎ部2341aと第2繋ぎ部2341bを含んでいる。上流側領域234aの繋ぎ部2341と下流側領域234bの繋ぎ部2341とは、Y方向からの投影視において互いに重なる位置に設けられている。換言すれば、ZX平面において同じ位置に配置されている。繋ぎ部2341は、Z方向からの投影視において、延設部2340と重なる位置に設けられている。
第1繋ぎ部2341aは、第1延設部2340aの開口端側に設けられ、第2繋ぎ部2341bは、第1延設部2340aの閉塞端側に設けられている。第1繋ぎ部2341の一端は凸部2330bの突出先端面に開口し、栓部2343により閉塞されている。第1繋ぎ部2341aは一端側で第1延設部2340aに連結され、他端側で第2延設部2340bに連結されている。第2繋ぎ部2341bについても同様である。
繋ぎ部2342は、図54に示すように、流路234において、パワーモジュール110が備える冷却器120の流路126に繋がる部分である。繋ぎ部2342は、パワーモジュール110のそれぞれに対応して設けられている。繋ぎ部2342は、パワーモジュール110の供給管121及び排出管122と重なる位置に設けられている。繋ぎ部2342は、Z方向に延設されている。繋ぎ部2342は、一端が本体部2330の基部2330aの表面に開口し、他端が第2延設部2340bに連結されている。コンバータ6のパワーモジュール110に対応する繋ぎ部2342は、一面233aに開口している。インバータ7,8のパワーモジュールに対応する繋ぎ部2342は、裏面233bに開口している。
図53に示す二点鎖線の矢印及び図54に示す実線の矢印は、冷媒の流れを示している。供給管231から流路234の上流側領域234aに冷媒が導入されると、第1延設部230a→第1繋ぎ部2340a及び第2繋ぎ部2340b→第2延設部2340b→繋ぎ部2342→パワーモジュール110の順に冷媒が流れる。そして、パワーモジュール110内を流れた冷媒は、下流側領域234bにおいて、繋ぎ部2342→第2延設部2340b→第1繋ぎ部2340a及び第2繋ぎ部2340b→第1延設部2340aの順に流れ、排出管232から排出される。
支持部2331は、本体部2330に一体的に連なっている。支持部2331は、本体部2330からY方向に延設されている。支持部2331は、凸部2330b側の長辺からY方向に延設されている。支持部2331の一面233a及び裏面233bの少なくとも一方に、たとえば電力変換装置5を構成する要素の一部が配置されている。本実施形態では、図示しないコンデンサユニット270が配置されている。コンデンサユニット270は、支持部2331の少なくとも裏面233b上に配置され、ねじ締結等により支持部2331に固定されている。コンデンサユニット270は、支持部2331によって冷却される。
上記したように本実施形態では、パワーモジュール110と、該パワーモジュール110とは別の発熱体であるリアクトル260とが、冷却器230の熱交換部233における一面233a側に配置されている。パワーモジュール110とリアクトル260は、X方向に並んで配置されている。流路234の上流側領域234aと下流側領域234bとは、パワーモジュール110とリアクトル260の並び方向に延びている。リアクトル260は、並び方向に直交する方向において、流路234の上流側領域234aと下流側領域234bとの間に配置されている。そして、リアクトル260のひとつの側面260aが上流側領域234aを流れる冷媒によって冷却され、側面260aとは反対の側面260bが下流側領域234bを流れる冷媒によって冷却されるようになっている。
このように、発熱体であるリアクトル260の両側面260a,260b側に流路234を設けたので、両側面260a,260b側からリアクトル260を冷却することができる。したがって、リアクトル260をひとつの面から冷却する構成に較べて、リアクトル260を効果的に冷却することができる。また、冷却性能が等しい場合、ひとつの面から冷却する構成に較べて、Z方向に直交する方向の体格を小型化することができる。
特に本実施形態では、上流側領域234a及び下流側領域234bが、X方向に沿って延設されている。そして、図53に示すように、上流側領域234a及び下流側領域234bとの間に配置されているリアクトル260の幅W10は、パワーモジュール110の幅W11よりも狭くされている。したがって、リアクトル260を効果的に冷却しつつ、特にY方向の体格を小型化することができる。
本実施形態では、上流側領域234aの第1延設部2340aと下流側領域234bの第1延設部2340aとの間に、リアクトル260が配置されている。第1延設部2340aによって、リアクトル260が挟まれている。したがって、第1延設部2340aを流れる冷媒により、両側面260a,260b側からリアクトル260を効果的に冷却することができる。また、上流側領域234aの第2延設部2340bと下流側領域234bの第2延設部2340bとの間に、リアクトル260が配置されている。第2延設部2340bによって、リアクトル260が挟まれている。したがって、第2延設部2340bを流れる冷媒により、両側面260a,260b側からリアクトル260を効果的に冷却することができる。
なお、熱交換部233において、流路234周辺だけでなく、流路234から離れた部分も、流路234を流れる冷媒によって冷える。このため、流路234から離れた部分も熱交換の機能を発揮する。リアクトル260は、たとえばリアクトル260の底面側に位置する本体部2330によっても冷却される。
本実施形態では、上流側領域234aの第2延設部2340bと下流側領域234bの第2延設部2340bの直上に、パワーモジュール110が配置されている。したがって、第2延設部2340bを流れる冷媒により、パワーモジュール110を効果的に冷却することができる。
本実施形態では、本体部2330に凸部2330bが設けられ、凸部2330bに被挿入部2330cが設けられている。これにより、熱交換部233とリアクトル260との対向面積、特に側面260a,260bとの対向面積を大きくすることができる。したがって、Z方向と直交する方向の体格増大を抑制しつつ、リアクトル260を効果的に冷却することができる。
本実施形態では、基部2330aに被挿入部2330cを設けている。これにより、リアクトル260を一面233a側に配置されたパワーモジュール110よりも裏面233bに近づけて配置することができる。したがって、対向面積を大きくしてリアクトル260を効果的に冷却しつつ、Z方向の体格増大を抑制することができる。
本実施形態では、コンバータ6を構成するパワーモジュール110とリアクトル260がともに一面233a側に配置されている。したがって、パワーモジュール110とリアクトル260との接続構造を簡素化、たとえば接続距離(配線長)を短くすることができる。
流路234の上流側領域234a及び下流側領域234bの構成は上記した例に限定されない。たとえば図57に示す例では、下流側領域234bがひとつの延設部2340を備えている。延設部2340は、Z方向の幅が広い幅広部2340cと、幅広部2340cに連なり、幅広部2340cよりも幅が狭くされた幅狭部2340dを有している。なお、上流側領域234aも同様の構成となっている。
幅狭部2340dは、第2延設部2340bのうち、基部2330aに設けられた部分に相当する。幅広部2340cは、本体部2330において、第1延設部2340aと、第2延設部2340bと、第1繋ぎ部2341aと、第2繋ぎ部2341bとの間の部分をなくして、一体化した構造となっている。すなわち、区画する部分をなくしてひとつの幅広部2340cとしている。これによれば、リアクトル260と対向する流路234の面積をさらに増やし、リアクトル260をより効率よく冷却することができる。
図58に示す例においても、下流側領域234bがひとつの延設部2340を備えている。延設部2340は、上記した第2延設部2340bに相当する。上流側領域234aも同様の構成である。延設部2340によってリアクトル260が挟まれているため、リアクトル260を両側面260a,260bから冷却することができる。
上流側領域234aと下流側領域234bとで構造が同じ例を示したが、これに限定されない。すなわち、上流側領域234a及び下流側領域234bとで異なる構造としてもよい。
熱交換部233が支持部2331を備える例を示したが、支持部2331を備えない構成としてもよい。この場合、本体部2330に、コンデンサユニット270も配置されることとなる。本実施形態では、Y方向において、上流側領域234a側に支持部2331が連なっている。これにより、支持部2331に流路234を設けなくても、支持部2331に配置された要素を効果的に冷却することができる。
熱交換部233が凸部2330bを有さない構成としてもよい。たとえば本体部23330が基部2330aのみを有し、基部2330aに被挿入部2330cが設けられた構成としてもよい。
被挿入部2330cが、凸部2330bのみに設けられてもよい。凸部2330bの突出先端面とともに側面のひとつに開口する場合、被挿入部2330cは、切り欠きとして提供される。
発熱体としてリアクトル260の例を示したがこれに限定されない。たとえば図59に示すように、発熱体であるコンデンサユニット270を側面270a,270bの両側から冷却するようにしてもよい。図59では、便宜上、コンデンサユニット270を簡易的に示している。リアクトル260及びコンデンサユニット270を発熱体としてもよい。リアクトル260、コンデンサユニット270、パワーモジュール110をX方向に沿って一列に配置してもよい。
パワーモジュール110と発熱体が一面233a側に配置される例を示したがこれに限定されない。一面233a及び裏面233bの少なくとも一方に配置されればよい。たとえば一面233a、裏面233bの両方に配置されてもよい。
発熱体として、コンバータ6を構成するパワーモジュール110とは別のパワーモジュール110、具体的にはインバータ7,8を構成するパワーモジュール110を採用してもよい。すなわち、発熱量が異なるパワーモジュールを発熱体としてもよい。インバータ7,8を構成するパワーモジュール110に対し、コンバータ6を構成するパワーモジュール110を発熱体としてもよい。
発熱体として、バスバーを採用してもよい。たとえば、上記したVLバスバー281やVHバスバー284を採用してもよい。
上流側領域234aと下流側領域234bとが区画されている例を示したが、これに限定されない。たとえば上流側領域234aと下流側領域234bとが一体的に連なる略U字状の流路234にも適用することができる。
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
電力変換装置5において、パワーモジュール110の一部が、冷却器230の流路234に挿入され、冷媒に浸漬される構成としてもよい。たとえば、Y方向において、パワーモジュール110の一部分のみを浸漬させてもよい。具体的には、側面184から半導体装置20及びコンデンサC1の配置部分までを浸漬させ、側面183は浸漬されない構成としてもよい。この場合、出力バスバー150については、側面183から突出するように保護部材180内で引き回せばよい。
電力変換装置5が、多相のコンバータ6、モータジェネレータ3,4用のインバータ7,8、平滑コンデンサC2、及びフィルタコンデンサC3を構成する例をしめしたが、これに限定されない。電力変換装置5は、冷却器230と、冷却器230の両面にそれぞれ配置され、電力変換部を構成するパワーモジュール110を少なくとも備えればよい。したがって、冷却器230とともに、コンバータ6を構成するパワーモジュール110のみを備える構成や、これにリアクトル260、ILバスバー283を加えた構成を採用することもできる。コンバータ6としては、多相に限定されず、単層でもよい。また、冷却器230とともに、インバータ8を構成するパワーモジュール110のみを備える構成や、これに平滑コンデンサC2を含むコンデンサユニット270、Pライン12を構成するバスバー、Nバスバー282を加えた構成としてもよい。上記したように、直流電圧の平滑化の機能をコンデンサC1にもたせることで、平滑コンデンサC2を備えない構成としてもよい。この場合、三相インバータにおいて、各並列回路11のコンデンサC1の静電容量は、たとえば300μF程度となる。