JP6801494B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、および溶接継手の製造方法 - Google Patents
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Description
SM=[Si]+[Mn]・・・(式a)
Ceq=[C]+(1/24)×[Si]+(1/6)×[Mn]+(1/40)×[Ni]+(1/5)×[Cr]+(1/4)×[Mo]+(1/14)×[V]・・・(式b)
但し、式a及び式bに記載の括弧が付された元素記号は、前記元素記号にかかる元素であって前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を構成しないものの、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない元素の含有量は0とみなす。
X=[NaF]+[MgF2]+[Na3AlF6]+1.50×([K2SiF6]+[K2ZrF6]+[LiF]+[BaF2])+3.50×([CaF2])・・・(式c)
但し、式cに記載の括弧が付された化学式は、前記化学式に係る化合物の、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない化合物の含有量は0とみなす。
(2)上記(1)に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記フラックス入りワイヤ中の前記REMの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.0100%以下であってもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記フラックス入りワイヤ中の前記CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10%未満であってもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記フラックス入りワイヤが、ワイヤ全質量に対する質量%で、MgCO3、Na2CO3、LiCO3、CaCO3、K2CO3、BaCO3、FeCO3及びMnCO3からなる群から選択される1種または2種以上を含む前記炭酸塩を合計で2.00%以下含有してもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接によって得られる溶着金属の引張強さが、日本工業規格JISZ3111−2005に規定された溶着金属の引張試験において、660〜980MPaであってもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮にスリット状の隙間が無くてもよい。
(7)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮にスリット状の隙間が有ってもよい。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮の表面にパーフルオロポリエーテル油が塗布されていてもよい。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記フラックスの充填率が5.0〜30.0%であってもよい。
(10)本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法では、板厚が6〜100mmであり、Niの含有量が5.5〜9.5質量%であり、引張強さが660〜900MPaである鋼板に対し、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて溶接する。
(11)上記(10)に記載の溶接継手の製造方法では、前記ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、シールドガスを100%CO2として仮付け溶接してもよい。
(12)上記(10)または(11)に記載の溶接継手の製造方法では、前記ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、シールドガスとして純Arガス、Arと1.5体積%以下のO2またはCO2との混合ガス、純Heガス、及び、Heと1.5体積%以下のO2またはCO2との混合ガスからなる群から選択された1種を用いて本溶接してもよい。
(弗化物の種類:CaF2、MgF2、Na3AlF6、LiF、NaF、K2ZrF6、BaF2、及び、K2SiF6からなる群から選択された一種以上を含む)
本実施形態に係るフラックス入りワイヤでは、CaF2、MgF2、Na3AlF6、LiF、NaF、K2ZrF6、BaF2、及び、K2SiF6からなる群から選択された一種以上の弗化物を、フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値で、合計0.21%以上含有させる。フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値とは、弗化物に含まれる弗素(F)の量を、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で示すものである。例えば、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%でn%のCaF2がフラックス入りワイヤに含まれる場合、CaF2のF換算値は以下の式dで求められる。
(CaF2のF換算値)=n×(19.00×2/78.08)・・・(式d)
上の式d中の「19.00」は、Fの原子量であり、「2」は、1個のCaF2に含まれるF原子の個数であり、「78.08」は、CaF2の分子量である。CaF2以外の弗化物に関しても、同様にF換算値が算出できる。フラックス中に複数種類の弗化物が含まれる場合、各弗化物のF換算値の合計値が、フラックスに含まれる弗化物のF換算値とみなされる。本実施形態において記号「α」は、各弗化物のF換算値の合計値を示す。
CaF2は、MgF2、Na3AlF6、LiF、NaF、K2ZrF6、BaF2、及び、K2SiF6と比べて、100%CO2ガスを使用するガスシールドアーク溶接において、スパッタを多量に発生させるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤに添加しないことが好ましい。従って、本実施形態に係るフラックス入りワイヤではCaF2含有量を0.50%未満に制限する。CaF2含有量を0.50%未満に制限すれば、スパッタの問題は無視できる。スパッタの発生をさらに確実に回避するために、CaF2含有量の上限値を0.40%、又は、0.30%としてもよい。また、CaF2含有量の下限値を0.10%又は、0.00%としてもよい。
ガスシールドアーク溶接、特にシールドガスが100%CO2ガスであるガスシールドアーク溶接において、弗化物のうち、CaF2がスパッタを増加させることは上述した。さらに、本発明者らは、弗化物の種類とスパッタ量との関係を調査するために、多種の弗化物を含有させて、鋼製外皮にスリット状の隙間のない(植物油を外皮に塗布した)1.2mmφのワイヤを多数作成した。銅製の捕集箱内で、鋼板上に、ビードオンプレートで、溶接電流280A、電圧27V、溶接速度25cm/min、シールドガス100%CO2(25 l/min)、及び予熱なしの条件で、上述の種々のフラックス入りワイヤを用いて、1分間、溶接ビードを作製した。この溶接ビードの作成の間に箱内に飛散したスパッタおよび鋼板に付着したスパッタを回収し、これらのうち直径1.0mm超のものの総重量を測定した。スパッタ発生量、弗化物の種類、及び各弗化物の含有量のデータを多元解析した結果、式cを用いて算出されるX値とスパッタ発生量との間に、図1に示される良好な相関関係があることが見出された。
X=[NaF]+[MgF2]+[Na3AlF6]+1.50×([K2SiF6]+[K2ZrF6]+[LiF]+[BaF2])+3.50×([CaF2])・・・(式c)
(CaOを除く酸化物の、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での合計含有量(β):0.30%以上3.50%未満)
本実施形態に係るフラックス入りワイヤのフラックスは、酸化物を合計で0.30%以上3.50%以下含有する。この酸化物の種類は、Fe酸化物、Ba酸化物、Na酸化物、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Mg酸化物、Al酸化物、Mn酸化物、及びK酸化物からなる群から選択される1種または2種以上を含み、CaOを除く。本実施形態では、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での、CaOを除く酸化物の含有量の合計を「β」と定義する。本実施形態では、「CaOを除く酸化物」を単に「酸化物」と称する場合がある。
Ti酸化物は、溶接ビード形状の改善に寄与する。CaOを除く酸化物の含有量の合計が0.30%以上3.50%未満である場合でも、CaOを除く酸化物に含まれるTi酸化物が0.10%未満である場合、溶接ビード形状が悪くなることがある。従って、Ti酸化物の含有量の下限値を0.10%とする必要がある。Ti酸化物をアーク安定剤として用いることで、さらに良好な溶接ビード形状を得るために、Ti酸化物の含有量の下限値を0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.40%、又は、0.45%としてもよい。一方、Ti酸化物の含有量が2.50%超である場合、溶接金属の靭性を低下させることがある。従って、Ti酸化物の含有量を2.50%以下とする必要がある。溶接金属の靱性のさらなる改善のために、Ti酸化物の含有量の上限値を2.40%、2.20%、2.00%、1.80%、1.50%、1.25%、1.00%、0.90%、0.80%、0.70%、0.60%、又は0.50%としてもよい。
CaOは、他の酸化物とは異なる性質を有し、0.20%超含有されると、シールドガスが100%CO2ガスであるガスシールドアーク溶接において、スパッタを多く発生させる。さらに、CaOは、大気に触れると水素を含む化合物であるCaOHに変化するので、溶接金属の拡散性水素を増加させる。このような知見が得られた実験について図3に示す。図3から、CaOが増加するにつれて溶接金属中の拡散性水素量が増加することがわかる。一方、CaOが0.20%以下である場合、溶接金属中の拡散性水素量が1.5ml/100g以下となる。溶接金属中の拡散性水素量が1.5ml/100g以下である場合、予熱作業を低減する効果が得られるため、0.20%以下のCaOは許容される。CaOはフラックス原料に不純物として含まれる場合があるので、CaO含有量が0.20%以下になるように、フラックスの原料を選定する必要がある。CaO含有量は好ましくは0.18%以下、0.10%以下、又は0.10%未満である。CaOは本実施形態に係るフラックス入りワイヤに必要とされないので、CaO含有量の下限値は0%である。CaO含有量の下限値を0.01%、0.02%、または0.05%としてもよい。
(炭酸塩の種類:MgCO3、Na2CO3、LiCO3、CaCO3、K2CO3、BaCO3、FeCO3、及び、MnCO3からなる群から選択される1種又は2種以上を含む)
(MgCO3、Na2CO3、及びLiCO3の含有量の合計値:フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0〜3.00%)
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、炭酸塩を含有する必要はない。従って本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおける炭酸塩の合計含有量の下限値は0%である。しかし本実施形態に係るフラックス入りワイヤには、更に、MgCO3、Na2CO3、LiCO3、CaCO3、K2CO3、BaCO3、FeCO3、及び、MnCO3からなる群から選択される1種又は2種以上の炭酸塩を、合計で3.50%以下含有させることが好ましい。
Cは、溶接金属の強度を向上させる元素である。溶接金属の強度を確保するためには、Cを0.003%以上含有させる必要がある。溶接金属の強度の向上のため、C含有量の下限を0.005%、0.008%、0.010%、又は0.013%としてもよい。一方で、C含有量が0.080%を超えると、溶接金属が極めて硬化し、溶接金属の靭性が大きく低下する。後述される通り、本実施形態に係るフラックス入りワイヤから得られる溶接金属は、6〜16%のNiを含有し、硬いマルテンサイト組織を有するからである。マルテンサイトの硬さにCが及ぼす影響は非常に大きいので、C含有量の上限を0.080%とする。安定して溶接金属の靭性を確保するためには、C含有量の上限を0.070%、0.050%、0.040%、0.035%又は、0.030%としてもよい。
Siは、溶接金属の清浄度を向上させ、且つブローホールなどの溶接欠陥の発生を抑制するために必要な元素である。これらの効果を得るためには、0.001%以上のSiをフラックス入りワイヤに含有させる必要がある。溶接欠陥の発生をさらに防止するために、Si含有量の下限を0.005%、0.008%、0.010、0.020%、0.030%又は0.060%としてもよい。一方で、6〜16%のNiを含有する溶接金属では、Siはミクロ偏析しやすく、Si含有量が0.800%超になると、Siの偏析部で顕著な脆化が生じる。従って、Si含有量の上限を0.800%とする。また、溶接金属の靭性を安定して確保するためには、Si含有量の上限を0.600%、0.500%、0.400%、0.200%、又は0.150%としてもよい。
Mnは、溶接金属の清浄度を向上させる。さらに、Mnは、MnSを形成することで、Sを無害化し、溶接金属の靭性を向上させる元素である。その効果を得るためには、0.10%以上のMnをフラックス入りワイヤに含有させる必要がある。溶接金属の靭性の一層の向上のために、Mn含有量の下限を0.20%、0.30%、0.35%又は0.40%としてもよい。一方、6〜16%のNiを含有する溶接金属では、Mnはミクロ偏析しやすく、Mn含有量が1.50%を超えると、Mnの偏析部で顕著な脆化が生じる。従って、Mn含有量の上限を1.50%とする。また、溶接金属の靭性を安定して確保するためには、Mn含有量の上限を1.20%、1.00%、0.80%、0.60%、又は0.50%としてもよい。
Pは不純物元素であり、溶接金属の靭性を劣化させる。従って、P含有量を極力低減する必要があるが、P含有量を0.020%以下に制限すれば、この悪影響は許容される。溶接金属の靭性の一層の向上のために、P含有量の上限を0.015%、0.010%、0.008%又は0.006%としてもよい。P含有量の下限を制限する必要はなく、P含有量の下限は0%である。
Sは、不純物元素であり、溶接金属の靭性を著しく劣化させる。従って、S含有量を極力低減することが好ましい。S含有量を0.010%以下に制限すれば、溶接金属の靭性への悪影響が許容できる範囲内となる。溶接金属の靭性の一層の向上のために、S含有量の上限を0.008%、0.006%、0.004%又は0.003%としてもよい。S含有量の下限を制限する必要はなく、S含有量の下限は0%である。
Alは脱酸元素であり、Si及びMnと同様に、溶接金属の清浄度向上に効果があり、その効果を発揮するために0.003%以上含有させる。一方、0.050%を超えてAlを含有させると、Alが窒化物及び酸化物等を形成して、溶接金属の靭性を阻害する。従って、Al含有量の上限を0.050%とする。また、溶接金属の靭性を向上する効果を十分に得るためには、Al含有量の下限を0.005%、0.007%、0.009%又は0.011%としてもよい。酸化物の生成抑制のために、Al含有量の上限を、0.040%、0.035%、0.030%又は0.025%としてもよい。
Niは、固溶靭化(固溶により靭性を高める作用)により、いかなる組織及び成分の溶接金属についても靭性を向上できる唯一の元素である。特に、−196℃での低温靭性を十分に確保するためにNiは必須の元素である。この効果を得るためには、Ni含有量は6.0%以上にする必要がある。一方、Ni含有量が16.0%を超えると、その効果が飽和するのに加え、溶接材料コストが過大となるため好ましくない。Ni含有量の上限を15.0%又は14.0%に制限してもよい。安定して溶接金属の低温靭性を確保するためには、Ni含有量の下限を7.0%又は、8.0%、更には、9.0%としてもよい。
Cuは、ワイヤの鋼製外皮、鋼製外皮の表面のめっき、および、フラックスに単体または合金として含有された場合には、溶接金属の強度を向上させる効果がある。Cu含有量の下限は0%とするが、フラックス入りワイヤがCuを含有してもよい。この場合、Cu含有量が0.5%を超えると溶接金属の靭性が低下するので、Cu含有量は0.5%以下とする。溶接金属の靭性の向上のために、Cu含有量の上限を0.3%、0.2%又は0.1%としてもよい。なお、Cuの含有量については、鋼製外皮及びフラックス中に含有されている分に加えて、ワイヤ表面に銅めっきされる場合にはその分も含む。上述の効果を得るためには、Cu含有量の下限を0.01%としてもよい。
Crは、溶接金属の強度を高めるために有効な元素である。Crの含有量の下限は0%とするが、Crを含有させる場合、Cr含有量が0.5%を超えると溶接金属の靭性が低下するので、Cr含有量は0.5%以下とする。靭性の向上のために、Cr含有量の上限を0.3%、0.2%又は0.1%としてもよい。上述の効果を得るためには、Cr含有量の下限を0.01%としてもよい。
Moは、析出強化により溶接金属の強度を高めるために有効な元素である。Moの含有量の下限は0%とするが、Moを含有させる場合、Mo含有量が0.5%を超えると溶接金属の靭性が低下するので、Mo含有量は0.5%以下とする。溶接金属の靭性の向上のために、Mo含有量の上限を0.3%、0.2%又は0.1%としてもよい。上述の効果を得るためには、Mo含有量の下限を0.01%としてもよい。
Vは、析出強化により溶接金属の強度を高めるために有効な元素である。Vの含有量の下限は0%とするが、Vを含有させる場合、V含有量が0.2%を超えると溶接金属の靭性が低下するので、Vを含有させる場合のV含有量は0.2%以下とする。溶接金属の靭性の向上のために、V含有量の上限を0.15%、0.1%又は0.05%としてもよい。上述の効果を得るためには、V含有量の下限を0.01%としてもよい。
Tiは、固溶Nを固定して、溶接金属の靭性への固溶Nの悪影響を緩和するために有効である。また、Tiは脱酸元素であり、溶接金属中のO量を低減させる効果がある。Tiの含有量の下限は0%とする。一方、Ti含有量が0.10%を超えて過剰になると、溶接金属中に炭化物が生成し、溶接金属の靭性を劣化させる。Tiを含有させる場合のTi含有量は、0.10%以下とする。溶接金属の靭性の向上のため、Ti含有量の上限を0.06%、0.04%又は0.02%としてもよい。上述の効果を得るためには、Ti含有量の下限を0.005%としてもよい。
Nbは、析出強化により溶接金属の強度を高めるために有効である。Nbの含有量の下限は0%とする。Nb含有量が0.10%を超えると、溶接金属中に粗大な析出物を形成して溶接金属の靭性を劣化させるので、Nbを含有させる場合のNb含有量は0.10%以下とする。溶接金属の靭性の向上のため、Nb含有量の上限を0.06%、0.04%又は0.02%としてもよい。上述の効果を得るためには、Nb含有量の下限を0.002%としてもよい。
Bは、溶接金属中に適正量含有させると、固溶Nと結びついてBNを形成して、溶接金属の靭性に対する固溶Nの悪影響を減じる効果がある。Bの含有量の下限は0%とする。B含有量が0.010%を超えると、溶接金属中のBが過剰となり、粗大なBNやFe23(C、B)6等のB化合物を形成して溶接金属の靭性を逆に劣化させる。従って、Bを含有させる場合のB含有量は0.010%以下とする。溶接金属の靭性の向上のため、B含有量の上限を0.006%、0.004%又は0.002%としてもよい。上述の効果を得るためには、B含有量の下限を0.0003%としてもよい。
Mgは、強脱酸元素であり、溶接金属の酸素を低減し、溶接金属の靭性の改善に効果がある。Mgの含有量の下限は0%とする。Mg含有量が0.6%を超えると、スパッタが増加し、溶接作業性を劣化させる。従って、Mgを含有させる場合のMg含有量は0.6%以下とする。溶接作業性の向上のため、Mg含有量の上限を0.4%、0.2%又は0.1%としてもよい。上述の効果を得るためには、Mg含有量の下限を0.05%としてもよい。
REMは、過剰に含有するとスパッタが激しくなり、溶接作業性が劣悪となる。このため、REM含有量の下限は0%とする。添加する場合でも、スパッタを低減し、アークを安定させるREM含有量は、0.0500%以下である。また、さらにスパッタの低減およびアークの安定に寄与するために、REM含有量の上限を0.0300%、0.0200%、0.0100%、0.0050%、又は0.0010%としてもよい。
本実施形態のフラックス入りワイヤは、合金成分又は金属脱酸成分として以上の各元素を含有する。さらに、溶接金属の−196℃での低温靭性を十分に向上させるために、下記式aで表される、Si及びMnの含有量の合計SMが、0.20〜1.50%である必要がある。
SM=[Si]+[Mn]・・・(式a)
但し、式aに記載の括弧が付された元素記号は、元素記号にかかる元素であって弗化物、酸化物、及び炭酸塩を構成しないものの、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない元素の含有量は0とみなす。
さらに本実施形態のフラックス入りワイヤでは、下記式bで表される、日本溶接協会(WES)で定める炭素当量Ceqが0.25〜0.52%となるように、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、及びVの含有量をさらに調整する。
Ceq=[C]+(1/24)×[Si]+(1/6)×[Mn]+(1/40)×[Ni]+(1/5)×[Cr]+(1/4)×[Mo]+(1/14)×[V] ・・・(式b)
但し、式bに記載の括弧が付された元素記号は、元素記号にかかる元素であって弗化物、酸化物、及び炭酸塩を構成しないものの、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない元素の含有量は0とみなす。
鉄粉は、フラックス入りワイヤにおけるフラックスの充填率の調整のために、または溶着効率の向上のために必要に応じて含有させる場合がある。しかし、鉄粉の表層は酸化されているので、フラックスが鉄粉を過剰に含有すると、溶接金属の酸素量を増加させて靭性を低下させる場合がある。したがって、鉄粉は本実施形態に係るフラックス入りワイヤに含有させなくてもよい。つまり、鉄粉の含有量の下限は0%である。充填率の調整のために鉄粉を含有させる場合には、溶接金属の靭性を確保するために、鉄粉の含有量の上限を10.0%未満とする。
鋼製外皮の内側にある中空の空間にフラックスは充填される。フラックスの充填率は特に規定されず、適宜選択可能である。鋼製外皮の板厚によってフラックスの充填率は増減するが、安定的にフラックスを添加するために、フラックスの充填率の上限を30.0%としてもよい。充填率の上限を25.0%、20.0%又は15.0%としてもよい。また、フラックスの充填率が低すぎる場合、鋼製外皮の内側に充填されたフラックスと鋼製外皮との間の摩擦力が不足し、フラックスが鋼製外皮内を移動し、フラックス入りワイヤにおいてフラックスの疎密が生じてしまう恐れがある。よって充填率の下限値を5.0%としてもよい。
2 裏当金
3 溶接ビード
4 2mmVノッチシャルピー衝撃試験片
5 丸棒引張り試験片
Claims (12)
- 鋼製外皮と、前記鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備えるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、
前記フラックスが、
弗化物であって、CaF2、MgF2、Na3AlF6、LiF、NaF、K2ZrF6、BaF2、及び、K2SiF6からなる群から選択される1種又は2種以上の前記弗化物であって、前記弗化物の前記フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値の合計値αが0.21%以上である前記弗化物と、
酸化物であって、Fe酸化物、Ba酸化物、Na酸化物、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Mg酸化物、Al酸化物、Mn酸化物、及びK酸化物からなる群から選択される1種又は2種以上を含み、CaOを除き、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量の合計値βが0.30%以上3.50%未満である前記酸化物と、
前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量の合計値が0〜3.50%であり、MgCO3、Na2CO3、LiCO3、CaCO3、K2CO3、BaCO3、FeCO3及びMnCO3からなる群から選択される1種又は2種以上を含む炭酸塩と、を含み、
前記フラックス中の前記CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0%以上0.20%未満であり、
前記フラックス中の鉄粉の含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0%以上10.0%未満であり、
式cを用いて算出されるX値が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対して5.0%以下であり、
前記CaF2の含有量が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.50%未満であり、
前記Ti酸化物の含有量が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.10%以上2.50%未満であり、
前記MgCO3、前記Na2CO3、及び前記LiCO3の含有量の合計値が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜3.00%であり、
さらに、前記弗化物、前記酸化物、及び炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、
C:0.003〜0.080%、
Si:0.001〜0.800%、
Mn:0.10〜1.50%、
Al:0.003〜0.050%、
Ni:6.0〜16.0%、
P:0.020%以下、
S:0.010%以下、
Cu:0〜0.5%、
Cr:0〜0.5%、
Mo:0〜0.5%、
V:0〜0.2%、
Ti:0〜0.10%、
Nb:0〜0.10%、
B:0〜0.010%、
Mg:0〜0.6%、及び
REM:0〜0.0500%を含み
残部がFeおよび不純物からなり、
下記の式aで定義されるSMが0.20〜1.50%であり、
下記の式bで定義されるCeqが0.25〜0.52%である
ことを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
SM=[Si]+[Mn] ・・・(式a)
Ceq=[C]+(1/24)×[Si]+(1/6)×[Mn]+(1/40)×[Ni]+(1/5)×[Cr]+(1/4)×[Mo]+(1/14)×[V] ・・・(式b)
但し、式a及び式bに記載の括弧が付された元素記号は、前記元素記号にかかる元素であって前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を構成しないものの、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない元素の含有量は0とみなす。
X=[NaF]+[MgF2]+[Na3AlF6]+1.50×([K2SiF6]+[K2ZrF6]+[LiF]+[BaF2])+3.50×([CaF2])・・・(式c)
但し、式cに記載の括弧が付された化学式は、前記化学式に係る化合物の、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない化合物の含有量は0とみなす。 - 前記フラックス入りワイヤ中の前記REMの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.0100%以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記フラックス入りワイヤ中の前記CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記フラックス入りワイヤが、ワイヤ全質量に対する質量%で、MgCO3、Na2CO3、LiCO3、CaCO3、K2CO3、BaCO3、FeCO3及びMnCO3からなる群から選択される1種または2種以上を含む前記炭酸塩を合計で2.00%以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接によって得られる溶着金属の引張強さが、日本工業規格JIS Z3111−2005に規定された溶着金属の引張試験において、660〜980MPaであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮にスリット状の隙間が無いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮にスリット状の隙間が有ることを特徴する請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮の表面にパーフルオロポリエーテル油が塗布されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記フラックスの充填率が5.0〜30.0%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 板厚が6〜100mmであり、Niの含有量が5.5〜9.5質量%であり、引張強さが660〜900MPaである鋼板に対し、請求項1〜9のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて溶接することを特徴とする溶接継手の製造方法。
- 前記ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、シールドガスを100%CO2として仮付け溶接することを特徴とする請求項10に記載の溶接継手の製造方法。
- 前記ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、シールドガスとして純Arガス、Arと1.5体積%以下のO2またはCO2との混合ガス、純Heガス、及び、Heと1.5体積%以下のO2またはCO2との混合ガスからなる群から選択された1種を用いて本溶接することを特徴とする請求項10または11に記載の溶接継手の製造方法。
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