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JP6763542B2 - 窒化鉄材及び窒化鉄材の製造方法 - Google Patents

窒化鉄材及び窒化鉄材の製造方法 Download PDF

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JP6763542B2 JP2016227023A JP2016227023A JP6763542B2 JP 6763542 B2 JP6763542 B2 JP 6763542B2 JP 2016227023 A JP2016227023 A JP 2016227023A JP 2016227023 A JP2016227023 A JP 2016227023A JP 6763542 B2 JP6763542 B2 JP 6763542B2
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Description

本発明は窒化鉄材及び窒化鉄材の製造方法に関する。
従来、モーターや発電機などに利用される永久磁石として、Nd(ネオジム)やSm(サマリウム)といった希土類元素を含有する希土類磁石が広く使用されている。しかしながら、希土類磁石は磁気特性に優れるものの、磁石に含まれる希土類元素が希少元素であるため、使用量の低減が求められている。希土類磁石の代替品としては、窒化鉄材を用いた磁石が注目されている。特に、飽和磁化が非常に高く、磁気特性に優れた窒化鉄材としてα’’−Fe16が知られている。
鉄の窒化物層を形成する方法は種々検討されており、例えば、非特許文献1には鋼材をガス窒化処理することによって窒素を鋼材中に浸透拡散させる方法が記載されている。また、分子線エピタキシー法によって鉄の窒化物層を形成する方法が非特許文献2に、スパッタリング法によって鉄の窒化物層を形成する方法が非特許文献3に記載されている。他には、めっき法による方法があり、例えば、特許文献1には窒化物イオンを含む溶融塩の電解浴中で鋼材を作用極として溶融塩電解を行ない、窒化物層を形成する方法が記載されている。
特開2009−052104号公報
梅田孝彰 宮部一夫、「窒化ポテンシャル制御を適用した窒化処理の生産技術開発」、KOMATSU TECHNICAL REPORT、2014年、VOL.60、No.167、pp17−23 M.Komuro et al.,"Epitaxial growth and magnetic properties of Fe16N2 films with high saturation magnetic flux density(invited)" Journal of Applied Physics,1990,vol.67,No.9,pp.5126−5130 M.Takahashi et al.,"Magnetic moment of α’’−Fe16N2 films(invited)" Journal of Applied Physics,1994,vol.76,No.10,pp.6642−6647
非特許文献1に記載のガス窒化方法は、炉内にNHガスを導入して500℃〜580℃に加熱することで鋼材に窒素を浸透拡散させる処理であり、ε相(FeN)やγ’相(FeN)が生成するが、α’’−Fe16を形成することはできない。これは、α’’−Fe16は250℃を越えると不安定になるため、500℃〜580℃の加熱処理では生成しないと考えられる。
また、非特許文献2や非特許文献3に記載の方法によればα’’−Fe16を形成できるものの成長速度に限界があるため、成膜に時間を要するという問題がある。また、真空などの環境が必要であるため連続的な処理が難しく、工業的な生産には向いていない。
特許文献1に記載の方法は、鋼材(クロムを含有する鋼材、基本的にはステンレス鋼)を、窒化物イオンを含有する溶融塩の電解浴中に配置し、415℃以下、好ましくは315℃以下の浴温で鋼材を作用極として溶融塩電解を行って耐食性の優れた窒化物層を形成させるというものである。しかしながら、形成される窒化物層にα’’−Fe16生成に関する記述や示唆はない。これは、特許文献1に記載の方法では溶融塩電解を415℃以下、好ましくは315℃以下で行なうこととされているが、この範囲であっても250℃より高温ではα’’−Fe16を形成することはできないためであると考えられる。また、表面窒化処理の対象としている材料は鋼材(ステンレス鋼)であり、鋼材にはFe以外にCr等が含まれているため、これらの元素がNと反応して窒化物を生成してしまい、α’’−Fe16を形成することはできない。なお、鋼材にはCが含まれており、CはNと共存して安定なFe(C、N)となり、Fe16の生成に影響を与えることが考えられる。また、その場合には磁気特性が変化してしまうと考えられる。
そこで本発明は、鉄基材の表面にα’’−Fe16を含有する緻密な窒化物層を有する窒化鉄材を提供することを目的とする。更には、前記窒化鉄材を比較的短時間で簡易に製造することが可能な窒化鉄材の製造方法を提供することを目的とする。
発明の一態様に係る窒化鉄材の製造方法は、
純度が99質量%以上の鉄基材の表面にα’’−Fe 16 を含む窒化物層を有し、前記窒化物層の平均膜厚が10nm以上、100μm以下である窒化鉄材を製造する方法であって、
溶融塩中に窒化物イオン(N3−)を溶解させて電解液を形成する電解液形成工程と、
前記電解液中に設けたアノード及びカソードを用いて溶融塩電解を行なうことにより前記アノードの表面にα’’−Fe16を含む鉄の窒化物を電析させて窒化物層を形成する電解工程と、
を有し、
前記電解工程において前記電解液の温度は250℃以下であり、前記アノードは純度が99質量%以上の鉄基材であり、前記アノードに印加する電位はLi/Li基準で0.5V以上、1.5V以下である、窒化鉄材の製造方法、である。
上記発明によれば、鉄基材の表面にα’’−Fe16を含有する緻密な窒化物層を有する窒化鉄材を提供することを提供することができる。更には、前記窒化鉄材を比較的短時間で簡易に製造することが可能な窒化鉄材の製造方法を提供することができる。
窒化鉄材における窒化物層の平均膜厚を測定する方法において、窒化鉄材上にエリアA〜Eを定めた状態の一例を表す概略図である。 図1に示す窒化鉄材のエリアAを走査型電子顕微鏡で観察した場合の視野(i)の一例を表す概念図である。 図1に示す窒化鉄材のエリアAを走査型電子顕微鏡で観察した場合の視野(ii)の一例を表す概念図である。 図1に示す窒化鉄材のエリアAを走査型電子顕微鏡で観察した場合の視野(iii)の一例を表す概念図である。 本発明の実施形態に係る窒化鉄材の製造方法における電解工程の一例の概略を表す図である。 本発明の実施形態に係る窒化鉄材の製造方法における電解液形成工程及び電解工程において用いることが可能なガス電極の構成の一例の概略を表す図である。 本発明の実施形態に係る窒化鉄材の製造方法における電解液形成工程及び電解工程において用いることが可能なガス電極の構成の別の一例の概略を表す図である。 本発明の実施形態に係る窒化鉄材の製造方法における電解液形成工程及び電解工程において用いることが可能なガス電極の構成の更に別の一例の概略を表す図である。 本発明の実施形態に係る窒化鉄材の製造方法における電解液形成工程及び電解工程において用いることが可能なガス電極の構成の更に別の一例の概略を表す図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係る窒化鉄材は、
純度が99質量%以上の鉄基材の表面にα’’−Fe16を含む窒化物層を有し、
前記窒化物層は平均膜厚が10nm以上、100μm以下である、窒化鉄材、である。
上記(1)に記載の発明の態様によれば、鉄基材の表面にα’’−Fe16を含有する緻密な窒化物層を有する窒化鉄材を提供することができる。
(2)上記(1)に記載の窒化物層は、表面に防食層を備えていることが好ましい。
(3)上記(2)に記載の防食層は、ε−Fe2―3N、炭化鉄又は酸化鉄であることが好ましい。
上記(2)又は上記(3)に記載の発明の態様によれば、大気等の雰囲気の影響を受け難く、劣化され難い窒化鉄材を提供することができる。
(4)本発明の一態様に係る窒化鉄材の製造方法は、
上記(1)に記載の窒化鉄材を製造する方法であって、
溶融塩中に窒化物イオン(N3−)を溶解させて電解液を形成する電解液形成工程と、
前記電解液中に設けたアノード及びカソードを用いて溶融塩電解を行なうことにより前記アノードの表面にα’’−Fe16を含む鉄の窒化物を電析させて窒化物層を形成する電解工程と、
を有し、
前記電解工程において前記電解液の温度は250℃以下であり、前記アノードは純度が99質量%以上の鉄基材であり、前記アノードに印加する電位はLi/Li基準で0.5V以上、1.5V以下である、窒化鉄材の製造方法、である。
上記(4)に記載の発明の態様によれば、鉄基材の表面にα’’−Fe16を含有する緻密な窒化物層を有する窒化鉄材を比較的短時間で簡易に製造することが可能な窒化鉄材の製造方法を提供することができる。
(5)上記(4)に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記電解工程の前に、前記アノードに用いる前記鉄基材の表面に形成されている酸化物層を除去する前処理工程を有することが好ましい。
上記(5)に記載の発明の態様によれば、前処理工程によって鉄の酸化膜を除去することができるため、酸素成分の少ない窒化物層を有する窒化鉄材を製造することが可能となる。
(6)上記(4)又は上記(5)に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記電解工程の後に、前記窒化物層の表面に防食層を形成する防食層形成工程を有することが好ましい。
(7)上記(6)に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記防食層が、ε−Fe2−3N、炭化鉄又は酸化鉄であることが好ましい。
上記(6)又は上記(7)に記載の発明の態様によれば、大気等の雰囲気の影響を受け難く、劣化され難い窒化鉄材の製造方法を提供することができる。
(8)上記(4)から上記(7)に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記溶融塩が、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物又はこれらの混合物であることが好ましい。
(9)上記(8)に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記アルカリ金属のハロゲン化物が、アルカリ金属の臭化物、ヨウ化物又は臭化物とヨウ化物の混合物であることが好ましい。
(10)上記(8)又は上記(9)に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記アルカリ土類金属のハロゲン化物が、アルカリ土類金属の臭化物、ヨウ化物又は臭化物とヨウ化物の混合物であることが好ましい。
(11)上記(8)から上記(10)のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記アルカリ金属は、Li、K及びCsからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
(12)上記(8)から上記(11)のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記アルカリ土類金属が、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
(13)上記(4)から上記(12)のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記溶融塩が、LiBr−KBr−CsBrもしくはLiI−KI−CsIであることが好ましい。
(14)上記(4)から上記(13)のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記溶融塩がLi、K及びCsを含有し、Liの含有率が40mol%以上、80mol%以下、Kの含有率が5mol%以上、30mol%以下、Csの含有率が10mol%以上、40mol%以下であることが好ましい。
上記(8)から上記(14)のいずれか一項に記載の発明の態様によれば、α’’−Fe16が安定な温度範囲の溶融塩を、比較的入手が容易であり、また、取扱も容易な材料種によって形成することができる。
(15)上記(4)から上記(14)のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記溶融塩にLiNを添加して窒化物イオン(N3−)が溶解した電解液を形成することが好ましい。
上記(15)に記載の発明の態様によれば、容易に窒化物イオンを溶融塩中に溶解させることができる。
(16)上記(4)から上記(15)のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法は、
前記溶融塩に窒素ガス還元電極を設け、前記窒化ガス還元電極に窒素ガスを供給して電気化学的に還元することにより窒化物イオン(N3−)が溶解した電解液を形成することが好ましい。
上記(16)に記載の発明の態様によれば、窒化物イオンを連続的に溶融塩中に供給することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る窒化鉄材及びその製造方法の具体例を以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
<窒化鉄材>
本発明の実施形態に係る窒化鉄材は、基材である鉄の表面にα’’−Fe16を含む緻密な窒化物層を有するものである。
(鉄基材)
鉄基材は、純度が99質量%以上の鉄であればよい。
また、1質量%以下であれば、鉄基材に鉄以外の成分が意図的に又は不可避的に含まれていても構わない。例えば、鉄以外の成分としては、Ni、Cu等が含まれていてもよい。
なお、鉄基材の形状は特に限定されるものではなく、平板状等、目的に応じて適宜選択すればよい。
(窒化物層)
窒化物層は、後述するように溶融塩電解によって形成されるものであるため、鉄基材の表面に強固に密着しており、また、緻密な層として形成されている。
窒化物層は平均膜厚が10nm以上、100μm以下であればよい。窒化鉄材において窒化物層の平均膜厚が10nm以上であることにより、飽和磁化が高いα’’−Fe16の特性を十分に発揮することができる。また、窒化物層の平均膜厚が100μm以下であることにより、記録媒体等に用いることが可能な、薄膜の磁性膜とすることができる。これらの観点から、窒化物層の平均膜厚は20nm以上、10μm以下であることがより好ましく、50nm以上、1μm以下であることが更に好ましい。
窒化物層の平均膜厚は、窒化物層の断面を以下のようにして電子顕微鏡によって観察することにより測定されるものをいうものとする。平均膜厚の測定方法の概略を図1〜図4に示す。
まず、窒化物層を有する窒化鉄材を任意に偏りなくエリア分けし、測定箇所として5箇所(エリアA〜エリアE)を選択する。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)によって各エリアにおける窒化物層の断面を観察する。SEMの倍率は、窒化物層の厚み方向の全体が確認でき、かつ、出来うる限り一視野内で厚み方向が大きく見えるように設定する。そして、視野を変えて各エリアにおいて3箇所ずつ窒化物層の最大厚みと最小厚みを測定し、その平均を窒化物層の平均膜厚という。
例として、図1に、略正方形の鉄基材の表面に窒化物層を有する窒化鉄材1について、四隅をエリアA〜エリアDとし、中央部をエリアEとした場合の概略図を示す。また、図2には、図1に示す窒化鉄材1のエリアAをSEMによって観察した場合の視野(i)の概念図を示す。同様に、図3にはエリアAの視野(ii)の概念図を、図4にはエリアAの視野(iii)の概念図を示す。
窒化鉄材1のエリアAをSEMで観察した場合の視野(i)〜視野(iii)において、窒化物層3が最大となる厚み(最大厚みA(i)、最大厚みA(ii)、最大厚みA(iii))と、窒化物層3が最小となる厚み(最小厚みa(i)、最小厚みa(ii)、最小厚みa(iii))を測定する。窒化物層3の厚みとは、鉄基材2から垂直方向に伸びる窒化物層3の長さをいうものとする。これにより、エリアAにおいて3箇所の視野の最大厚みA(i)〜最大厚みA(iii)と、最小厚みa(i)〜最小厚みa(iii)が決定する。エリアB、C、D、EについてもエリアAと同様にして、3箇所の視野における窒化物層の最大厚みと最小厚みを測定する。
以上のようにして測定された窒化物層の最大厚みA(i)〜最大厚みE(iii)と、最小厚みa(i)〜最小厚みe(iii)の平均を窒化物層の平均膜厚という。
窒化物層におけるα’’−Fe16の含有率は高ければ高いほど好ましい。窒化物層におけるα’’−Fe16の含有率が30質量%以上であることにより、飽和磁化が高いα’’−Fe16の特性を十分に発揮することができる。窒化物層におけるα’’−Fe16の含有率は、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。窒化物層には、α’’−Fe16以外の成分が意図的又は不可避的に含まれていても構わない。α’’−Fe16以外の成分としては、例えば、Fe、FeN、FeN、FeO、Fe、Fe、FeOH等が含まれていてもよい。
(防食層)
本発明の実施形態に係る窒化鉄材は、雰囲気による劣化を抑制するために窒化物層の表面に防食層を有していることが好ましい。防食層としては、例えば、α’’−Fe16とは組成が異なる窒化鉄が考えられる。例えば、耐食性の高いε−Fe2−3Nを用いることができる。防食層としての窒化鉄はα’’−Fe16と窒化率が異なる相であるため、窒化処理の条件を変えることで生成させることが可能である。詳細は後述するが、本発明の実施形態に係る窒化鉄材の製造方法のように溶融塩電解によって窒化物層を形成する場合には、アノードの電位を制御することでα’’−Fe16と窒化率が異なる相を生成することができる。このため、窒化物層の生成条件を連続的に変化させることで、α’’−Fe16を含有する窒化物層に続けて防食層を連続的に生成させることも可能である。
その他の防食層としては、炭化鉄や酸化鉄を適用することができる。酸化鉄の場合、窒化物層の形成後に緩やかな酸化処理を施すことで形成できる。また、鉄系以外にも、SiOやAlを窒化物層の表面に設けても、防食層とすることができる。
また、防食層の厚みは、0.5nm以上、20nm以下であることが好ましい。防食層の厚みが0.5nm以上であることにより、大気等の雰囲気による窒化物層の劣化を抑制できる。また、防食層の厚みが20nm以下であることにより、窒化物層にひずみなどの影響を与えることが抑えられ、また、多大な手間や時間をかけることなく防食層を生成することができる。防食層の厚みは、1nm以上、10nm以下であることがより好ましい。
<窒化鉄材の製造方法>
本発明の実施形態に係る窒化鉄材の製造方法は、上記の本発明の実施形態に係る窒化鉄材を製造する方法であり、電解液形成工程と、電解工程とを有し、更に、前処理工程と防食層形成工程を選択的に有する。電解液形成工程は溶融塩中に窒化物イオン(N3−)を溶解させて電解液を形成する工程である。電解工程は、図5に示すように、電解液53中に設けたアノード51及びカソード52を電源54に接続して溶融塩電解を行なうことによりアノード1の表面にα’’−Fe16を含む鉄の窒化物を電析させて窒化物層を形成する工程である。電源54は電位を制御することができるものであればよく、例えば、ポテンショ・ガルバノスタットを好ましく用いることができる。前処理工程は、電解工程の前に行う工程であり、アノードに用いる鉄基材の表面に形成されている酸化物層を除去する工程である。防食層形成工程は、電解工程後に行なう工程であり、電解工程において形成された窒化物層の表面に防食層を形成する工程である。以下に各工程を詳述する。
(電解液形成工程)
上述のように、この工程は溶融塩中に窒化物イオン(N3−)を溶解させて電解液を形成する工程である。
−溶融塩−
溶融塩は250℃以下で溶融して液体となるものを選択すればよい。低融点で、かつ、比較的入手が容易な溶融塩としては、例えば、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物又はこれらの混合物であることが好ましい。一般に、溶融塩は一成分の塩を用いるよりも多成分の塩を用いる方が低融点となるため、複数種の塩を混合して用いることが好ましい。また、アルカリ金属のハロゲン化物は臭化物、ヨウ化物又は臭化物とヨウ化物の混合物であることが好ましい。同様に、アルカリ土類金属のハロゲン化物も臭化物、ヨウ化物又は臭化物とヨウ化物の混合物であることが好ましい。ヨウ化物や臭化物の塩は低い温度で溶融させることができ、また、取扱も容易であるため好ましい。
アルカリ金属はLi、K及びCsからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。また、アルカリ土類金属はMg、Ca、Sr及びBaからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これらのアルカリ金属やアルカリ土類金属のハロゲン化物は低融点で溶融させることができ、また、比較的入手が容易である。
上記の観点から、溶融塩は、例えば、LiBr−CsBr、LiBr−KBr−CsBr、Li−KI、Li−CsI、Li−KI−CsI等であることが好ましい。
また、溶融塩がLi、K及びCsを含有する場合には、Liの含有率が40mol%以上、80mol%以下、Kの含有率が5mol%以上、30mol%以下、Csの含有率が10mol%以上、40mol%以下であることが好ましい。これにより低融点の溶融塩とすることができる。
溶融塩におけるLiの含有率は、45mol%以上、75mol%以下であることがより好ましく、50mol%以上、70mol%以下であることが更に好ましい。
溶融塩におけるKの含有率は、7mol%以上、25mol%以下であることがより好ましく、9mol%以上、20mol%以下であることが更に好ましい。
溶融塩におけるCsの含有率は、15mol%以上、35mol%以下であることがより好ましく、20mol%以上、30mol%以下であることが更に好ましい。
−窒化物イオンの生成−
窒化物イオンを溶融塩に溶解させる方法は特に限定されるものではない。例えば、溶融塩中にLiNを添加して溶解させることで溶融塩中に窒化物イオンを生成させることができる。窒化物イオンの添加量は、例えば、LiNの濃度が0.05mol%以上、5mol%以下となるようにLiNを溶融塩に添加すればよい。LiNの濃度が0.05mol%以上となるようにすることで、電解液形成工程に続けて行なう電解工程においてα’’−Fe16を電析させるのに十分な量の窒化物イオンを溶融塩中に生成することができる。また、LiNの濃度が5mol%以下となるようにすることで、溶融塩の融点の上昇を抑制することができる。これらの観点から、LiNの添加量は、LiNの濃度が0.1mol%以上、3mol%以下となるようにすることがより好ましく、0.2mol%以上、2mol%以下となるようにすることが更に好ましい。
なお、後述する電解工程においてα’’−Fe16が電析し始めると電解液中の窒化物イオンが消費されるため、α’’−Fe16を含有する窒化物層を大量に生成させる場合には、電解工程においても適宜溶融塩中にLiNを添加してもよい。
溶融塩に窒素ガス還元電極(以下では単に「ガス電極」と記載する)を設けて窒素ガスを供給し、窒素を電気化学的に還元することによっても溶融塩中に窒化物イオンを生成させることができる。ガス電極は、窒素ガスを含むガスを電極表面に供給することが可能な電極であればよく公知のものを利用可能であるが、図6〜図9に示す構造のガス電極であることが好ましい。
図6に示すガス電極は、窒素ガスを含むガスの流路となる内部空間を有する筒状電極部材62を備えるガス電極である。筒状電極部材62にリード線61を接続して電源の陰極側に接続し、対極を電源の陽極側に接続して電位をアノードに印加すればよい。そして、窒素ガスを含むガスを筒状電極部材62の内部空間に供給することで、内部空間の表面において窒素ガスを還元し、溶融塩中に窒化物イオン(N3−)として溶解させることができる。
また、図7に示すガス電極のように、筒状電極部材72の内部空間の先端部には、導電性の多孔質部材73を配置することが好ましい。多孔質部材73は一方の面と他方の面との間において連通する連通孔を多数有するものであればよい。多孔質部材73が連通孔を有することで、ガス電極の内部空間に供給されたガスをガス電極の外部に通流させることができる。また、連通孔は、例えば、多孔質部材73の一方の面から他方の面に向かって直進する孔であってもよいし、三次元網目状構造のように複雑な構造によって形成されている孔であってもよい。多孔質部材73を内部空間の先端部に備えるガス電極を溶融塩中に配置すると、連通孔の内部は溶融塩で満たされる。筒状電極部材72にリード線71を接続して電源の陰極側に接続し、対極を電源の陽極側に接続して電位をアノードに印加すればよい。多孔質部材73は導電性であるから、ガス電極の内部空間に窒素ガスを含むガスを供給することで、多孔質部材73の連通孔の表面において窒素ガスが還元される。これにより窒化物イオン(N3−)を溶融塩中に溶解させることができる。
筒状電極部材(62、72)及び多孔質部材73は溶融塩中において不活性な材料であることが望ましい。例えば、白金、金、もしくはこれらの合金、グラッシーカーボン、グラファイト、ステンレス、ニッケル、又はニッケル系合金等を好ましく用いることができる。なお、筒状電極部材72及び多孔質部材73は同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
ガス電極は図8に示すように、電極部材83と筒状部材82とを備えるものであってもよい。筒状部材82は、窒素ガスを含むガスの流路となる内部空間を有しており、電極部材83は筒状部材82の内部空間に配置されていればよい。そして、電極部材83にリード線81を接続して電源の陰極側に接続し、対極を陽極側に接続して電位をアノードに印加すればよい。このとき、窒素ガスを含むガスを筒状部材82の内部空間に供給することで、電極部材82の表面において窒素ガスを還元し、溶融塩中に窒化物イオン(N3−)として溶解させることができる。
また、電極部材83としては、図9に示すように、三次元網目状構造の骨格を有する多孔体93を用いることが好ましい。これにより、電極の表面積を大きくし、筒状部材92の内部の空間に供給される窒素ガスの溶融塩への溶解効率をより高めることができる。
筒状部材(82、92)は導電性である必要は特になく、溶融塩中において安定な材質であればよい。一方、電極部材83及び多孔体93は導電性であって、溶融塩中において不活性な材料であることが望ましい。電極部材83としては、例えば、白金、金、もしくはこれらの合金、グラッシーカーボン、グラファイト、ステンレス、ニッケル、又はニッケル系合金等を好ましく用いることができる。また、多孔体93としては、例えば、三次元網目状構造の骨格を有するニッケル多孔体が挙げられる。
前記ガス電極は、窒素ガス、溶融塩、及びガス電極の通電部、の三相界面を形成する部分が多いほど高効率である。このため、通電部に多孔質の部材を用いる図7及び図9に示す態様のガス電極がより効果的である。
前述のように、ガス電極には窒素ガスを含むガスを供給する。これにより、電極表面で窒素ガスが還元されて溶融塩中に窒化物イオンとなって溶解する。
ガス電極に供給するガスは、窒素ガスの他にも、溶融塩に影響を与えないガスと窒素ガスとの混合ガスを用いることもできる。窒素ガスに混合させるガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)ガスを好ましく利用することができる。窒素ガスと他のガスとの混合ガスを供給する場合には、電極表面での反応効率を考慮すれば窒素ガスの濃度が高いガスであることが好ましい。すなわち、使用する電極で反応が可能な最大量の窒素ガスを供給するような濃度に調整するのが望ましい。
窒素ガスを含むガスの流量は、窒化物イオンの生成効率を高くする観点から、電極で反応可能な最大量の窒素ガスを供給できる流量とすることが好ましい。
また、ガス電極から排出される未反応のガスを回収して、ガス電極に再度供給するように循環させてもよい。
(電解工程)
この工程は、上述の電解液形成工程において作製した電解液を用いて溶融塩電解を行ない、アノードの表面にα’’−Fe16を含む鉄の窒化物を電析させる工程である。電解工程では、図5に示すように、アノード51とカソード52を電解液53中に設け、アノード51を電源4の陽極側に、カソード52を電源54の陰極側に接続する。そして電位をアノード51に印加することでアノード51の表面にα’’−Fe16を電析させることができる。
−電解液−
電解液は上述の電解液形成工程において作製した電解液を用いる。電解液の温度が250℃を超えるとα’’−Fe16が不安定となり電析させることができなくなるため、電解液の温度は250℃以下となるようにする。また、電解液として用いる溶融塩の融点よりも低い温度では塩が液状にならないため、電解液の溶融塩の融点以上の温度となるようにすればよい。
−アノード−
アノードには純度が99質量%以上の鉄基材を用いる。鉄基材には、1質量%以下であれば鉄以外の成分が意図的に又は不可避的に含まれていても構わないが、鉄よりも窒化しやすい成分や、α’’−Fe16の磁気特性に影響を与える成分はできる限り含まれていない方が好ましい。例えば、Ti、V、Cr、Mn、ランタノイドや、Al、Siなどの軽金属は鉄よりも窒化しやすいため、電解時に窒素拡散を阻害してα’’−Fe16の生成を阻害してしまう。
また、鉄基材の形状は特に限定されるものではなく、平板状等、目的に応じて適宜選択すればよい。
−カソード−
カソードには、導電性であって、電解液中で安定なものを用いればよい。例えば、白金、金、もしくはこれらの合金、グラッシーカーボン、グラファイト、ステンレス、アルミナ、ニッケル、又はニッケル系合金などを好ましく用いることができる。
また、カソードに前述のガス電極を用いることもできる。ガス電極を用いることで溶融塩電解時に窒化物イオンを連続的に電解液に供給することができる。ガス電極の構成は、前述の電解液形成工程において説明したガス電極と同様のものとすればよい。
−電解条件−
溶融塩電解時にアノードに印加する電位は、Li/Li基準で0.5V以上、1.5V以下程度とすればよい。電位を0.5V(vs.Li/Li)以上とすることで、アノードとして用いる鉄基材の表面に良好にα’’−Fe16を形成することができる。一方、電位を1.5V(vs.Li/Li)以下とすることで、アノードの鉄を溶解させずにα’’−Fe16を形成することができる。アノードに印加する電位は、Li/Li基準で0.55V以上、1.2V以下程度とすることがより好ましく、0.6V以上、1.0V以下程度とすることが更に好ましい。
溶融塩電解を行なう時間は特に限定されるものではなく、目的となるα’’−Fe16が十分に形成される時間行なえばよい。
また、溶融塩電解後の窒化鉄材に対して熱処理を行うことで、α’’−Fe16の生成を促す場合もある。この場合、熱処理後に熱処理温度から急速冷却を行って、クエンチすることで、よりα’’−Fe16の生成が促進されることもある。
窒化鉄材の熱処理は、室温以上、溶融塩電解処理温度より低い温度で、例えば15℃以上、200℃以下程度で行なうことが好ましい。また、熱処理を行なう雰囲気は特に限定されず、電解液中で行なってもよいし、ガス雰囲気中で行なってもよい。
(前処理工程)
この工程は、電解工程の前に行う工程であり、アノードに用いる鉄基材の表面に形成されている酸化物層を除去する工程である。
鉄基材の表面に形成されている酸化物層を除去する方法は特に限定されず、例えば、電解によりアノード溶解させて除去する方法や、薬品によって除去する方法が好ましい方法として挙げられる。
酸化物層をアノード溶解によって除去するには、例えば、前述の電解工程と同様に、電解液中にカソードと、鉄基材からなるアノードを設け、Li/Li基準で2.0V以上の電位をアノードに印加することでアノード表面の酸化物層を溶解させて除去することができる。なお、酸化物層を除去した後には、電位をLi/Li基準で0.5V以上、1.5V以下にすることで電解工程を行なうことができる。
また、酸化物層の除去は、鉄基材を酸系の薬品で酸化物層を溶解させることによっても行なうことができる。酸系の薬品としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等を用いることができる。
(防食層形成工程)
防食層形成工程は、電解工程の後に行なう工程であり、電解工程によって形成された窒化物層の表面に防食層を形成する工程である。窒化物層の表面に形成する防食層は、ε−Fe2−3N、炭化鉄又は酸化鉄であること好ましい。
防食層として、ε−Fe2−3Nのように、α’’−Fe16と窒化率が異なる相の窒化鉄を形成する場合には、例えば、前記電解工程における電解条件を変えることによって形成することができる。すなわち、電解工程後にアノードを、α’’−Fe16を生成させた電位より貴な電位に制御することで、耐食性に優れたε−Fe2−3Nを含む窒化鉄による防食層を窒化物層の表面に形成することができる。
また、電解処理を用いずに、表面に窒素プラズマを照射して窒化鉄による防食層を形成させることもできる。
防食層として炭化鉄を形成する場合には、例えば、窒化処理後、カーバイドイオン(C 2−)を溶融塩に添加し電解により窒化鉄表面を炭化処理する、もしくは洗浄後に炭化材(液状炭化水素等)を塗布して不活性雰囲気炉で焼く、または、CO雰囲気中で熱処理をする、といった処理を施せばよい。
防食層として酸化鉄を形成する場合には、アノード表面に窒化物層が形成された窒化鉄材を緩やかな条件で酸化処理すればよい。緩やかな酸化処理の条件としては、例えば、洗浄後に100℃程度の熱処理でFeを形成すればよい。
その他、防食層として、Crイオンを反応させて窒化クロム層を形成したり、またはSiOやAlを形成してもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であって、本発明の窒化鉄材及びその製造方法はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
[実施例1]
−電解液形成工程−
LiBr、KBr及びCsBrを、混合比率がモル比で56.1:18.9:25.0となるように混合して250℃に加熱し、溶融塩を作製した。この溶融塩にLiNを、濃度が1.0mol%となるように添加し、電解液を作製した。
−電解工程−
溶融塩電解はArフロー雰囲気のグローブボックス内で行なった。
アノードとして5mm×5mm×1mmtのFe板を、カソードとしてグラッシーカーボン棒を電解液中に配置した。また、参照極としてAl−Li合金を用いた。電解液の温度は240℃とした。
アノードとカソードを、電位を制御できる電源としてポテンショ・ガルバノスタットに接続してLi/Li基準で0.8Vの電位をアノードに印加し、定電位で溶融塩電解を3時間行うことで窒化鉄材No.1を製造した。
[実施例2]
実施例1において電解液の温度を245℃とした以外は実施例1と同様にして窒化鉄材No.2を製造した。
[比較例]
実施例1において電解液の温度を255℃とした以外は実施例1と同様にして窒化鉄材No.3を製造した。
−評価−
(生成相)
実施例1、実施例2、及び比較例のすべての条件でアノードのFe板の表面に窒化物層の生成が認められた。
得られた窒化物層の生成相をX線回折装置により分析した。その結果を表1に示した。
Figure 0006763542
表1の結果より、溶融塩電解時に電解液の温度を250℃以下とすることでα’’−Fe16を含有する窒化物層が得られるが、250℃を超えると得られないことがわかる。
(平均膜厚)
上記のようにして得られた窒化鉄材No.1〜No.3の平均膜厚を断面観察により測定した。
その結果、窒化鉄材No.1の平均膜厚は80nmであり、窒化鉄材No.2は80nmであり、窒化鉄材No.3は80nmであった。
(α’’−Fe16の含有率)
上記のようにして得られた窒化鉄材No.1、No.2の窒化物層におけるα’’−Fe16の含有率をX線回折装置により測定した。
その結果、窒化鉄材No.1の窒化物層におけるα’’−Fe16の含有率は55質量%であり、窒化鉄材No.2は32質量%であった。
A 窒化鉄材上の任意のエリア
B 窒化鉄材上の任意のエリア
C 窒化鉄材上の任意のエリア
D 窒化鉄材上の任意のエリア
E 窒化鉄材上の任意のエリア
1 窒化鉄材
2 鉄基材
3 窒化物膜
51 アノード
52 カソード
53 電解液
54 電源
61 リード線
62 筒状電極部材
71 リード線
72 筒状電極部材
73 多孔質部材
81 リード線
82 筒状部材
83 電極部材
91 リード線
92 筒状部材
93 多孔体

Claims (13)

  1. 純度が99質量%以上の鉄基材の表面にα’’−Fe 16 を含む窒化物層を有し、前記窒化物層の平均膜厚が10nm以上、100μm以下である窒化鉄材を製造する方法であって、
    溶融塩中に窒化物イオン(N3−)を溶解させて電解液を形成する電解液形成工程と、
    前記電解液中に設けたアノード及びカソードを用いて溶融塩電解を行なうことにより前記アノードの表面にα’’−Fe16を含む鉄の窒化物を電析させて窒化物層を形成する電解工程と、
    を有し、
    前記電解工程において前記電解液の温度は250℃以下であり、前記アノードは純度が99質量%以上の鉄基材であり、前記アノードに印加する電位はLi/Li基準で0.5V以上、1.5V以下である、窒化鉄材の製造方法。
  2. 前記電解工程の前に、前記アノードに用いる前記鉄基材の表面に形成されている酸化物層を除去する前処理工程を有する、請求項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  3. 前記電解工程の後に、前記窒化物層の表面に防食層を形成する防食層形成工程を有する、請求項又は請求項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  4. 前記防食層は、ε−Fe2−3N、炭化鉄又は酸化鉄である、請求項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  5. 前記溶融塩は、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物又はこれらの混合物である、請求項から請求項のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  6. 前記アルカリ金属のハロゲン化物は、アルカリ金属の臭化物、ヨウ化物又は臭化物とヨウ化物の混合物である、請求項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  7. 前記アルカリ土類金属のハロゲン化物は、アルカリ土類金属の臭化物、ヨウ化物又は臭化物とヨウ化物の混合物である、請求項又は請求項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  8. 前記アルカリ金属は、Li、K及びCsからなる群より選択される1種以上である、請求項から請求項のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  9. 前記アルカリ土類金属は、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群より選択される1種以上である、請求項から請求項のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  10. 前記溶融塩は、LiBr−KBr−CsBrもしくはLiI−KI−CsIである、請求項から請求項のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  11. 前記溶融塩はLi、K及びCsを含有し、Liの含有率が40mol%以上、80mol%以下、Kの含有率が5mol%以上、30mol%以下、Csの含有率が10mol%以上、40mol%以下である、請求項から請求項10のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  12. 前記溶融塩にLiNを添加して窒化物イオン(N3−)が溶解した電解液を形成する、請求項から請求項11のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  13. 前記溶融塩に窒素ガス還元電極を設け、前記窒化ガス還元電極に窒素ガスを供給して電気化学的に還元することにより窒化物イオン(N3−)が溶解した電解液を形成する、請求項から請求項12のいずれか一項に記載の窒化鉄材の製造方法。
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