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JP6754565B2 - グリース、転がり軸受、転がり軸受装置及び情報記録再生装置 - Google Patents

グリース、転がり軸受、転がり軸受装置及び情報記録再生装置 Download PDF

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JP6754565B2 JP2015236921A JP2015236921A JP6754565B2 JP 6754565 B2 JP6754565 B2 JP 6754565B2 JP 2015236921 A JP2015236921 A JP 2015236921A JP 2015236921 A JP2015236921 A JP 2015236921A JP 6754565 B2 JP6754565 B2 JP 6754565B2
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Description

本発明は、グリース、転がり軸受、転がり軸受装置及び情報記録再生装置に関する。
各種の情報を磁気的又は光学的にディスクに記録及び再生させるものとして、ハードディスクドライブ(HDD)等の情報記録再生装置が知られている。該情報記録再生装置は、一般に、ディスクに信号を記録再生するヘッドジンバルアセンブリ(磁気ヘッド)が先端に設けられたスイングアームと、スイングアームの回動の支点となる転がり軸受装置と、スイングアームを回動させるアクチュエータとを備える。スイングアームを回動させて磁気ヘッドをディスクの所定位置に移動させることで信号の記録や再生が行える。
転がり軸受装置は、一般に、内輪と外輪の間に複数の球状の転動体が設けられた2つの転がり軸受と、該転がり軸受の内側に挿入されたシャフトとを備える。複数の転動体の転動によってシャフトの軸周りに外輪が回動し、それに伴って外輪と接続されたスイングアームが回動する。該転がり軸受では、長期的に安定して作動することが要求されるため、内輪と外輪の間の転動体の動きを滑らかにする目的でグリースが用いられる。
情報記録再生装置の転がり軸受用グリースには、転がり軸受のトルクを低くし、かつ優れたトルク平滑性(転がり軸受の回動方向においてトルクが一様である性質)を得ることができ、さらに転がり軸受の耐久性を高められることが要求される。また、グリースからのアウトガスが磁気ヘッドとディスクの隙間等に溜まると情報記録再生装置の読み書きに不具合が生じるため、転がり軸受用グリースはアウトガス量が少ないことも重要である。
情報記録再生装置の転がり軸受用グリースとしては、例えば、鉱油及びポリ−α−オレフィン(以下、「PAO」と記す。)を含む基油と、増ちょう剤(ウレア化合物等)と、極圧剤(有機リン化合物等)とを含むものが知られている(特許文献1)。該グリースは、アウトガス量が比較的少なく、また転がり軸受を、トルクが低く、トルク平滑性に優れ、かつ耐久性に優れたものにできる。しかし、近年ではHDDの高密度化や、サーバー用途の要求の高まりに伴い、ディスクと磁気ヘッドの距離がナノオーダーになっていることから、さらなるアウトガス量の低下及び耐久性の向上が求められている。
アウトガス量を低減できるグリースとしては、PAOに比べてアウトガス量の多い鉱油を用いずに、基油としてPAOのみを用いた転がり軸受用グリースが提案されている(特許文献2)。しかし、該グリースでは、アウトガス量は少ないものの、充分な耐久性を有する転がり軸受が得られにくい。
特開2003−239954号公報 特開2013−174334号公報
本発明は、アウトガス量が充分に低減され、かつ適用した装置の優れた耐久性を確保できるグリース、並びに該グリースを用いた転がり軸受、転がり軸受装置及び情報記録再生装置を提供することを目的とする。
本発明のグリースは、基油及び増ちょう剤を含み、前記基油は、鉱油及びPAOを含み、前記基油100質量%に対して前記鉱油の割合が10〜40質量%であり、前記鉱油の40℃における動粘度νは前記PAOの40℃における動粘度νよりも高い。
本発明のグリースでは、前記基油中の前記鉱油の割合よりも前記PAOの割合の方が多いことが好ましい。
また、前記動粘度νに対する前記動粘度νの比ν/νが1.3以上であることが好ましい。
前記動粘度νは、40mm/s以上であることが好ましい。
前記動粘度νは、20mm/s以上であることが好ましい。
前記基油の40℃における動粘度νは、25〜45mm/sであることが好ましい。
本発明のグリースにおいて、前記基油は、米国石油協会が定める基油カテゴリーでグループIIIに分類される精製鉱油を含み、且つ、前記精製鉱油の引火点が240℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。
前記ポリ−α−オレフィンは、炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の混合物を含むことが好ましい。
前記増ちょう剤は、ウレア化合物であることが好ましい。
本発明の転がり軸受は、本発明のグリースを備える。
本発明の転がり軸受装置は、シャフトと、本発明の転がり軸受と、を備える。
本発明の情報記録再生装置は、本発明の転がり軸受装置を備える。
本発明のグリースは、アウトガス量が充分に低減されており、かつ適用した装置の優れた耐久性を確保できる。
また、本発明の転がり軸受、転がり軸受装置及び情報記録再生装置は、グリースからのアウトガス量が充分に低減されており、かつ耐久性に優れる。
本発明の情報記録再生装置の一例を示した斜視図である。 図1の情報記録再生装置における転がり軸受装置周辺を示した縦断面図である。 図2の転がり軸受装置を示した断面図である。 図3の転がり軸受装置における転がり軸受を示した平面図である。 図4の転がり軸受のA−A断面図である。 図5の転がり軸受のリテーナを示した斜視図である。 グリースを85℃で静置したときの静置時間と蒸発損失との関係を示したグラフである。 グリースを100℃で静置したときの静置時間と蒸発損失との関係を示したグラフである。 グリースを130℃で静置したときの静置時間と蒸発損失との関係を示したグラフである。
[グリース]
本発明のグリースは、基油及び増ちょう剤を含む。
(基油)
基油は、鉱油及びPAOを含む。
鉱油としては、基油として用いられる公知の鉱油を使用でき、例えば、ナフテン系鉱油、パラフィン系鉱油、水素化系鉱油、溶剤精製鉱油、高精製鉱油等が挙げられる。
鉱油としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、動粘度の異なる複数の鉱油を混合し、目的の動粘度(平均動粘度)に調整したものを使用してもよい。
鉱油としては、よりアウトガス量が少なく、耐熱性に優れるとともに、低温特性にも優れたグリースが得られる点から、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループIII(GrIII)に分類される精製鉱油が好ましい。前記精製鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得た潤滑油留分をさらに高度水素化精製したパラフィン系鉱油等が挙げられる。前記グループIIIに分類される精製鉱油は、引火点が240℃以上であるものが好ましく、250℃以上であるものがより好ましい。このような精製鉱油は精製度が高く、アウトガス量をより一層低減することができる。この理由として、アウトガスの原因になる低分子量の成分が低減されていることが推測される。
PAOとしては、基油として用いられる公知のPAOを制限なく使用でき、例えば、α−オレフィン(1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン等)の3〜5量体等が挙げられる。なかでも、PAOとしては、アウトガス量及び蒸発損失が低減され、耐酸化劣化特性に優れ、適切な粘度が得られるという観点から、炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
PAOとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、動粘度の異なる複数のPAOを混合し、目的の動粘度(平均動粘度)に調整したものを使用してもよい。アウトガス量及び長期蒸発損失が少なく、耐酸化劣化特性に優れる点から、炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の混合物を使用することが特に好ましい。
基油は、鉱油及びPAOに加えて、鉱油及びPAO以外の他の油成分を含んでもよい。他の油成分としては、例えば、エステル油等の合成油が挙げられる。
他の油成分としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<動粘度>
本発明のグリースにおいては、鉱油の40℃における動粘度νを、PAOの40℃における動粘度νよりも高くする。鉱油の動粘度νがPAOの動粘度νよりも高いことで、鉱油の耐熱性が優れたものとなる。その結果、鉱油からのアウトガス量が少なくなり、結果として基油からのアウトガス量が充分に低減される。また、鉱油の動粘度νよりも低い動粘度νのPAOが組み合わされていることで、基油の動粘度νが充分に低くなる。そのため、転がり軸受の転動体が転動している部分等のグリースを必要とする部分にグリースが充分に供給され、グリースによる潤滑効果が充分に得られる。
なお、本発明における油の動粘度は、JIS K2283に準拠して40℃で測定された値を意味する。
また、動粘度の異なる複数の同種の基油を混合させた場合には、その混合物の動粘度を基油の動粘度として考える。
PAOの動粘度νに対する鉱油の動粘度νの比ν/νは、アウトガス量を低減しやすい点から、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。また、比ν/νは、転がり軸受の低トルク化の点から、4以下が好ましく、2以下がより好ましい。
鉱油の動粘度νは、アウトガス量を低減しやすい点から、40mm/s以上が好ましく、45mm/s以上がより好ましい。また、鉱油の動粘度νは、転がり軸受の転動面等のグリースを必要とする面にグリース又は基油が供給されやすくなる点から、80mm/s以下が好ましく、60mm/s以下がより好ましい。
PAOの動粘度νは、アウトガス量を低減しやすい点から、20mm/s以上が好ましく、30mm/s以上がより好ましい。また、PAOの動粘度νは、転がり軸受の転動面等のグリースを必要とする部分にグリース又は基油が供給されやすくなる点から、60mm/s以下が好ましく、40mm/s以下がより好ましい。
基油の40℃における動粘度νは、25〜45mm/sが好ましく、30〜40mm/sがより好ましい。基油の動粘度νが前記下限値以上であれば、アウトガス量を低減しやすい。基油の動粘度νが前記上限値以下であれば、転がり軸受の転動面等のグリースを必要とする部分にグリース又は基油が供給されやすい。また低温での安定した動作が求められる用途(例えば−30℃の低温でも安定した動作が求められる車載用途)においても低トルクで動作が行える。特に基油100質量%に対する鉱油の割合が30質量%以下の場合には、基油の40℃における動粘度νは、25mm/s以上であればアウトガス量はより小さいものとなる。
(増ちょう剤)
増ちょう剤は、グリースを半固体状に保つ役割を果たす。
増ちょう剤としては、グリースに通常使用される公知の増ちょう剤を制限なく使用できる。増ちょう剤の具体例としては、例えば、ウレア化合物、リチウムセッケン等が挙げられる。なかでも、増ちょう剤としては、耐熱性に優れる点から、ウレア化合物であることが好ましく、1分子中に2個のウレア結合を有するジウレア化合物がより好ましい。
ジウレア化合物としては、例えば、末端が脂肪族基である脂肪族ジウレア化合物、末端が脂環族基である脂環族ジウレア化合物、末端が芳香族基である芳香族ジウレア化合物等が挙げられる。
ジウレア化合物の具体例としては、例えば、ジイソシアネート(フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等)とモノアミン(オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、アニリン、p−トルイジン等)との反応で得られる化合物が挙げられる。
リチウムセッケンとしては、例えば、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム等が挙げられる。
増ちょう剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(他の成分)
本発明のグリースは、必要に応じて、基油及び増ちょう剤に加えて、基油及び増ちょう剤以外の他の成分を含んでもよい。
他の成分としては、グリースに通常使用される公知の成分が使用でき、例えば、極圧剤、酸化防止剤、防錆剤、油性向上剤、金属不活性化剤等の添加剤が挙げられる。
極圧剤としては、例えば、有機モリブデン化合物(モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオフォスフェート等)、有機脂肪酸化合物(オレイン酸、ナフテン酸、コハク酸等)、有機リン化合物(トリオクチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート等)、リン酸エステル等が挙げられる。また、極圧剤としては、亜鉛ジチオカーバメート、アンチモンジチオカーバメート等を使用してもよい。
極圧剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等)、アミン系酸化防止剤(p,p’−ジオクチルジフェニルアミン等)等が挙げられる。酸化防止剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明のグリースが酸化防止剤を含む場合、フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤を組み合わせて使用することが好ましい。またこの場合、グリース中のアミン系酸化防止剤の含有量がフェノール系酸化防止剤の含有量よりも多いことがより好ましい。
防錆剤としては、例えば、有機スルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(カルシウムスルフォネート、マグネシウムスルフォネート、バリウムスルフォネート等)、多価アルコール(ソルビタンモノオレエート等)の部分エステル等が挙げられる。
防錆剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(各成分の割合)
本発明のグリース100質量%に対する基油の割合は、75〜93質量%が好ましく、80〜90質量%がより好ましい。基油の割合が前記下限値以上であれば、転がり軸受の転動面等のグリースを必要とする面にグリース又は基油が供給されやすい。基油の割合が前記上限値以下であれば、グリースは半固形状であり、漏れにくく飛散しにくい。
基油100質量%に対する鉱油の割合は、10〜40質量%であり、20〜30質量%が好ましい。鉱油の割合が前記下限値以上であれば、優れた耐久性とトルク平滑性のバランスのとれたグリースが得られる。鉱油の割合が前記上限値以下であれば、アウトガス量が十分に低減されたグリースが得られる。
基油100質量%に対するPAOの割合は、50〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。PAOの割合が前記下限値以上であれば、アウトガス量が十分に低減されたグリースが得られやすい。PAOの割合が前記上限値以下であれば、優れた耐久性とトルク平滑性のバランスのとれたグリースが得られる。
基油100質量%に対する鉱油とPAOの合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。鉱油とPAOの合計の割合が前記下限値以上であれば、低トルクなグリースが得られやすい。前記の鉱油とPAOの合計の割合の上限値は100質量%である。
本発明のグリースでは、アウトガス量の低減と優れた耐久性を両立しやすい点から、基油中の鉱油の割合よりもPAOの割合の方が多いことが好ましい。
基油中の鉱油に対するPAOの質量比(PAO/鉱油)は、1.25〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。前記質量比が前記下限値以上であれば、アウトガス量を充分に低減しやすい。前記質量比が前記上限値以下であれば、優れた耐久性、トルク平滑性が得られやすい。
本発明のグリース100質量%に対する増ちょう剤の割合は、7〜20質量%が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。増ちょう剤の割合が前記下限値以上であれば、グリースは半固体状であり、漏れにくく飛散しにくい。増ちょう剤の割合が前記上限値以下であれば、転がり軸受の転動面等のグリースを必要とする面にグリース又は基油が供給されやすい。
本発明のグリース100質量%に対する極圧剤の割合は、0.2〜4質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
本発明のグリース100質量%に対する酸化防止剤の割合は、0.05〜4質量%が好ましく、0.2〜2質量%がより好ましい。
本発明のグリース100質量%に対する防錆剤の割合は、0.2〜4質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
(用途)
本発明のグリースの用途としては、情報記録再生装置、電子機器製造装置における転がり軸受に用いられるグリースとして特に有用である。電子機器製造装置としては、例えば、半導体製造装置、液晶製造装置、プリント基板製造装置等が挙げられる。また、本発明のグリースは、リニヤガイド、ボールネジに封入されるグリースとして使用することもできる。
(作用機構)
以上説明した本発明のグリースにおいては、PAOに加えて、PAOの動粘度νよりも動粘度νが高い鉱油を特定の割合で含むため、アウトガス量を充分に低減できるうえ、転がり軸受等のグリースが必要な装置において優れた耐久性も確保できる。前記効果が得られる要因は、以下のように考えられる。
例えば情報記録再生装置における転がり軸受では、スイングアームのスイングスピード、回動範囲等の動作条件が複雑で広範囲である。特許文献2のような、基油として分子量分布の狭いPAOのみを使用したグリースでは、転がり軸受の様々な動作条件に対応することが難しい。そのため、スイングアームの動きを充分に滑らかにすることができず、優れた耐久性を確保しにくい。
これに対して、本発明のグリースでは、PAOに比べて分子量分布の広い鉱油をPAOと併用するため、転がり軸受の様々な動作条件への対応が可能となる。例えばスイングアームの動きが低速の場合でも、鉱油における分子量が高く粘度の高い成分の影響で充分な厚さの油膜が形成され、充分な潤滑効果が発揮される。またスイングアームの動きが高速の場合や、スイングアームが微小な範囲で動く場合でも、鉱油における分子量が低く粘度の低い成分の影響によって、転動体が転動する部分にグリースが充分に供給される。このように、転がり軸受の広範囲な動作条件に対応可能であるため、優れた耐久性を確保できる。
加えて、本発明のグリースにおける鉱油は、動粘度νがPAOの動粘度νよりも高いため耐熱性に優れており、動粘度が低い鉱油に比べてアウトガスが発生しにくい。そして、本発明のグリースでは、基油中の該鉱油の割合が特定の範囲に制御されている。そのため、アウトガス量が充分に低減される。また、鉱油よりも動粘度νが低いPAOによって基油全体としての動粘度νは充分に低くできるため、転がり軸受等のトルクを抑えられるとともに、転がり軸受における転動体の転動面等のグリースを必要とする面にグリースが充分に供給される。そのため、アウトガスの低減効果と耐久性の向上効果を両立させることができる。
また、PAOは極性を有しないため、極性を有する増ちょう剤や添加剤との親和性が低く、基油としてPAOのみを使用すると増ちょう剤や添加剤を均一に分散させにくく、それらの効果が充分に得られにくい。しかし、本発明のグリースでは極性を有する鉱油をPAOと併用することで、基油と増ちょう剤や添加剤との親和性が良好になる。これにより基油中で合成される増ちょう剤のサイズのばらつきが抑えられ、またサイズも小型化できるとともに増ちょう剤の分散性が優れるため、トルク平滑性が優れる。そして添加剤の効果も充分に発揮される。
[情報記録再生装置]
本発明の転がり軸受、転がり軸受装置及び情報記録再生装置は、本発明のグリースを用いる以外は公知の態様を採用できる。以下、本発明の転がり軸受、転がり軸受装置及び情報記録再生装置の一例を示して説明する。
本実施形態の情報記録再生装置1は、ディスク(磁気記録媒体)Dに対して垂直記録方式で書き込みを行う装置であって、図1に示すように、ディスクDと、スイングアーム2と、光導波路3と、レーザ光源4と、ヘッドジンバルアッセンブリ(HGA)5と、転がり軸受装置6と、アクチュエータ7と、スピンドルモータ(回転駆動部)8と、制御部9と、ハウジング10と、を備えている。
ハウジング10は、情報記録再生装置1における各構成部分を収容するものである。
ハウジング10は、平面視四角形状の底部10aと、底部10aの周縁から立設する周壁部(不図示)と、周壁部の上部に着脱可能に固定され、開口部を塞ぐ蓋体(不図示)と、を備える。ハウジング10では、底部10a上における周壁部の内側に、各構成品が収容されるようになっている。図1では、便宜上、周壁部及び蓋体を省略している。
ハウジング10の材質は、特に限定されず、例えば、アルミニウム等の金属材料が挙げられる。
ハウジング10の底部10aの略中心にスピンドルモータ8が取り付けられている。また、ディスクDの中心に形成された中心孔がスピンドルモータ8に嵌め込まれることで、3枚のディスクDが着脱自在に装着されている。スピンドルモータ8により、回転軸線L1を軸にディスクDを一定方向に回転させることができるようになっている。
ハウジング10の底部10aの一つの隅角部に、ディスクDの外側に位置するようにアクチュエータ7が取り付けられている。アクチュエータ7には、ディスクDに向かって延びるスイングアーム2が連結されている。スイングアーム2の基端側の部分には転がり軸受装置6が設けられている。アクチュエータ7による駆動によって、スイングアーム2が転がり軸受装置6の回転軸線L2を軸に水平面内で回動するようになっている。
スイングアーム2は、アクチュエータ7に連結される基部2aと、基部2aからディスクDに向かって延設されたアーム部2bとを備える。スイングアーム2は、例えば、基部2aとアーム部2bを削り出し加工等により一体形成することで得られる。
基部2aは、略直方体形状であり、転がり軸受装置6を囲うように転がり軸受装置6に回動可能に支持されている。
アーム部2bは平板状であり、かつ基端部から先端部に向かって先細るテーパ形状になっている。アーム部2bは、基部2aにおけるアクチュエータ7が取り付けられた後面2cと反対側の前面(隅角部と反対側の面)2dから、基部2aの上面の面方向(水平面内方向)に延出するように設けられている。
また、この例のスイングアーム2では、3枚のアーム部2bが、基部2aの高さ方向(垂直方向)に、各アーム部2bの間にディスクDが挟まれるように設けられている。つまり、アーム部2bとディスクDとが互いに高さ方向に交互に位置するように配置されており、アクチュエータ7の駆動によってアーム部2bがディスク面(ディスクDの表面)D1に平行な方向に移動するようになっている。
スイングアーム2におけるアーム部2bの先端にはヘッドジンバルアッセンブリ5が設けられている。スイングアーム2の基部2aの側面部にはレーザ光源4が設けられている。スイングアーム2の基部2a及びアーム部2bには、レーザ光源4とヘッドジンバルアッセンブリ5とを結ぶ光導波路3が設けられている。これにより、レーザ光源4から光導波路3を介してヘッドジンバルアッセンブリ5に光を供給できるようになっている。
ヘッドジンバルアッセンブリ5は、サスペンション5aと、サスペンション5aの先端に取り付けられたスライダ5bとを備えている。
スライダ5bは近接場光発生素子を有している。レーザ光源4から光がスライダ5bに導かれた際に該近接場光発生素子から近接場光が発生される。該近接場光を利用することで、ディスクDに各種情報を記録したり、再生させたりすることができる。
近接場光発生素子は、例えば、光学的微小開口や、ナノメートルサイズに形成された突起部等により構成される。
ヘッドジンバルアッセンブリ5は、アクチュエータ7の駆動によって、スイングアーム2のアーム部2bとともにディスク面D1に平行な方向に移動する。なお、スイングアーム2及びヘッドジンバルアッセンブリ5は、ディスクDの回転停止時にはアクチュエータ7の駆動によってディスクD上から退避するようになっている。
制御部9は、レーザ光源4と接続されている。制御部9においては、情報に応じて変調した電流により、ヘッドジンバルアッセンブリ5のスライダ5bに供給する光の光束を制御できるようになっている。
(転がり軸受装置)
転がり軸受装置6は、図2及び図3に示すように、シャフト20と、シャフト20の外側にシャフト20と同軸上に設置されたスリーブ21と、シャフト20とスリーブ21の間に設置された2つの転がり軸受22と、を備える。
シャフト20は、円柱形状の棒状部材であり、ハウジング10の底部10aから立設されている。シャフト20の中心軸が、スイングアーム2が回動する際の回転軸線L2となる。
シャフト20におけるハウジング10の底部10a側の部分には、本体部20aよりも拡径したフランジ部20bと、本体部20aよりも縮径した縮径部20cとが、基端に向かって順に設けられている。縮径部20cの外周面には雄ねじ20dが形成されている。ハウジング10の底部10aに設けられた穴10bにシャフト20の縮径部20cを挿入し、穴10bの内周面に形成された雌ねじ10cと縮径部20cの雄ねじ20dとを螺合することで、シャフト20がハウジング10の底部10aに立設される。このとき、フランジ部20bの下面がハウジング10の底部10aに接することで、シャフト20の高さ方向の位置決めがなされる。
スリーブ21は、円筒形状に形成された部材である。スリーブ21の内径は、フランジ部20bの外径と略同径とされている。
スリーブ21は、シャフト20を径方向外側から囲むように、かつその内周面がシャフト20の外周面に対して所定間隔で離間するように設置されている。シャフト20の中心軸とスリーブ21の中心軸は一致するようになっている。
また、スリーブ21は、スイングアーム2の基部2aに形成された取付孔2e内に直接圧入されるか、波型に形成された金属リング等の弾性体を介して圧入されるか、又は接着嵌合されることで、スイングアーム2と一体的に組み合わされている。
スリーブ21の内周面における高さ方向の中央部には、周方向に全周にわたって内側に突出するスペーサ部21aが形成されている。シャフト20とスリーブ21の間においては、スペーサ部21aの上下にそれぞれ2つの転がり軸受22が設置され、それら2つの転がり軸受22の間隔が所定距離に保持されるようになっている。
<転がり軸受>
転がり軸受装置6に備えられている2つ転がり軸受22は、同じものである。
転がり軸受22は、図3〜6に示すように、内輪30と、外輪31と、リテーナ32と、複数の転動体33と、2つのシールド板34と、を備える。
内輪30は、円筒状の部材である。
内輪30の内径は、シャフト20の挿入が可能な寸法とされる。本実施形態では、内輪30の内径は、シャフト20の外径よりも若干大きくなっている。内輪30の内側にシャフト20が挿し込まれ、接着剤等で内輪30がシャフト20に固定される。
なお、内輪30の内径は、シャフト20に設置できる範囲であれば、シャフト20の外径と同一か、若干小さくなっていてもよい。この場合は、内輪30にシャフト20が圧入固定される。
転がり軸受22では、内輪30にシャフト20に対して軸方向に相対的に予圧が付与された状態で内輪30をシャフト20に固定する、いわゆる内輪予圧を採用できる。これにより、転がり軸受22を高剛性化でき、転がり軸受装置6の共振周波数(共振点)を高くできる。そのため、より高速回転に対応可能な転がり軸受装置6となる。
なお、転がり軸受22では、外輪31にシャフト20に対して軸方向に相対的に予圧が付与された状態で外輪31をスリーブ21に固定する、いわゆる外輪予圧を採用してもよい。
内輪30の外周面における軸方向の中間部には、転動体33の転動をガイドする凹条の内輪転動面30aが内輪30の全周にわたって形成されている。内輪転動面30aは、内輪30の中心軸を通る平面で切断したときの断面形状が円弧状になっている。
内輪30の材質としては、例えばステンレス等の金属材料が挙げられる。内輪30は、例えば鍛造や機械加工等により製造できる。
外輪31は、内輪30よりも直径が大きい、内輪30と同様の円筒状の部材である。
外輪31はスリーブ21の内側に固定されることで、内輪30の外側に、内輪30から離間した状態で設置される。内輪30と外輪31とは、それらの中心軸がともにシャフト20の中心軸と一致するように同軸上に設置される。
外輪31の内周面における軸方向の中間部には、内輪30の内輪転動面30aと対向するように、転動体33の転動をガイドする凹条の外輪転動面31aが外輪31の全周にわたって形成されている。外輪転動面31aは、外輪31の中心軸を通る平面で切断したときの断面形状が円弧状になっている。
外輪31の材質としては、例えばステンレス等の金属材料が挙げられる。内輪30は、例えば鍛造や機械加工等により製造できる。
リテーナ32は、図6に示すように、円環状の本体部32aと、本体部32aの上部から形成され、先端に向かって互いの距離が接近するように円弧状に立ち上がる七対の爪部32b,32cとを備える。七対の爪部32b,32cは、リテーナ32の周方向に等間隔に設けられている。それぞれの対になった爪部32bと爪部32cの内側には転動体33を転動可能に保持する正面視略円状のボールポケットBが形成されている。
なお、爪部の対の数、すなわちボールポケットBの数は、7個には限定されず、6個以下であってもよく、8個以上であってもよい。
リテーナ32の内径は内輪30の外径よりも大きく、またリテーナ32の外径は外輪31の内径よりも小さくなっている。内輪30と外輪31の間にリテーナ32が設置された状態で、各々のボールポケットBに転動体33がそれぞれ転動可能に保持される。このように、内輪30及び外輪31とリテーナ32とが互いに干渉しない状態で、内輪30の内輪転動面30aと外輪31の外輪転動面31aとの間に転動体33が配置される。
リテーナ32は、各々のボールポケットBにそれぞれ転動体33を転動可能に保持した状態で中心軸L2回りを回転できるようになっている。
リテーナ32の材質としては、特に限定されず、例えば、ポリアミド樹脂等の樹脂が挙げられる。
リテーナ32の上部における一対の爪部32b,32cと、その隣りの一対の爪部32b,32cの間には、ボールポケットBに比べて深さが浅いグリースポケットGが形成されている。すなわち、リテーナ32には、複数対の爪部32b,32cによって周方向にボールポケットBとグリースポケットGが交互に形成されている。
グリースポケットGに本発明のグリースが配置され、ボールポケットBに転動体33が配置された状態でリテーナ32とともに転動体33が回動する際には、グリースポケットGから内輪30及び外輪31と転動体33との間にグリースが染み出し、グリースによる潤滑効果が得られる。
グリースポケットGを利用して転がり軸受22にグリースを使用することで、グリースの使用量を少なくすることができる。これにより、グリース量が過度となって転がり軸受22のトルクが増大することが抑制されやすくなり、またディスクDへの読み書きのために要求される充分なクリーン度が得られやすくなる。
この例の転動体33は、球状である。転動体33は、内輪30の内輪転動面30aと外輪31の外輪転動面31aとの間において、リテーナ32のボールポケットB内に配置され、内輪転動面30aと外輪転動面31aに沿って転動するようになっている。各々の転動体33は、リテーナ32によって周方向に均等に配列される。
転動体33の数は、この例では7個であるが、リテーナ32におけるボールポケットBの数に応じて決定すればよく、6個以下であってもよく、8個以上であってもよい。
転動体33の材質としては、例えば、軸受鋼等の金属材料が挙げられる。
シールド板34は、内輪30と外輪31との間に形成された円環状の空間の上下を塞ぐ環状の板部材である。シールド板34は、内輪30と外輪31との間におけるリテーナ32及び複数の転動体33の上下に設置される。それぞれのシールド板34は、その外周縁部が外輪31に形成された係合用の環状溝部40内に入り込んだ状態で外輪31に固定されている。
(作用機構)
情報記録再生装置1では、転がり軸受22におけるリテーナ32のグリースポケットGに本発明のグリースを配置する。アクチュエータ7の駆動によってスイングアーム2が回動する際には、グリースポケットGに配置したグリースが内輪30及び外輪31とリテーナ32の側面を通り、内輪30及び外輪31と転動体33の間に供給され、グリースによる潤滑効果が発揮される。
情報記録再生装置1においては、本発明のグリースを用いているため、アウトガス量が充分に低減されている。そのため、アウトガスがヘッドジンバルアッセンブリとディスクDの隙間等に溜まりにくく、安定して読み書きが行える。また、優れた耐久性を確保でき、低トルクでトルク平滑性に優れた状態を長期間維持できる。
(他の実施形態)
なお、本発明の転がり軸受、転がり軸受装置及び情報記録再生装置は、本発明のグリースを用いたものであればよく、前記したものには限定されない。
例えば、転がり軸受22、転がり軸受装置6を備える情報記録再生装置1は近接場光を利用するものであったが、本発明のグリースを用いた転がり軸受及び転がり軸受装置を備える一般的なHDDや光ディスクD装置等であってもよい。
また、転がり軸受装置は、スリーブを備えないものであってもよい。具体的には、例えば、シャフトの外側において軸方向に離間して配置される2つの転がり軸受の間に、互いの転がり軸受の間隔を所定距離に保持する環状のスペーサリングを備え、スリーブを備えない転がり軸受装置としてもよい。この場合は、スイングアームの基部に形成された取付孔に転がり軸受の外輪が直接圧入又は接着嵌合される態様とすることができる。
また、転がり軸受における転動体は、円筒状のころであってもよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[動粘度]
鉱油、PAO及び基油の動粘度は、キヤノン−フェンスケ粘度計を用い、JIS K2283に準拠して40℃で測定した。
[アウトガス量の測定]
15mm角のアルミニウム箔上に、ガラス棒によってサンプルのグリース(4.5〜5.5mg)を満遍なく塗り、測定サンプルとした。該測定サンプルを、標準試薬(ヘキサデカン)5μL(100ng)とともにオーブンにより85℃で3時間加熱し、発生したガスを捕集管に吸着させた。次いで、該捕集管を加熱脱着装置(TD−100)に設置して320℃に加熱し、該捕集管から生じるガスをガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)に送った。GC−MSでは、40℃で2分保持し、12℃/分で20分間かけて280℃まで昇温し、280℃で20分保持する温度プロファイルによってクロマトグラムデータを得て、GC−MS内部のライブラリーにより成分同定を行った。アウトガス量は、標準試薬(ヘキサデカン)のクロマトグラフピーク(100ng相当)を基に標準試薬換算として算出した。
[耐久試験]
図3〜6に例示した転がり軸受装置6を作製し、リテーナ32のグリースポケットGに各例のグリースを配置し、下記の動作条件で連続動作を行わせ、連続動作前の初期トルクに対する連続動作後のトルクの比としてトルク変動幅(ハッシュ)を測定した。
<動作条件>
動作周波数:30Hz
動作角度:10deg
動作時間:100時間
動作環境温度:80℃
[グリースバンプ試験]
図3〜6に例示した転がり軸受装置6を作製し、リテーナ32のグリースポケットGに各例のグリースを配置し、下記の動作条件で連続動作を行わせ、連続動作直後のトルクを測定し、以下の基準に従って評価した。
<動作条件>
動作周波数:15Hz
動作角度:5deg
動作時間:50時間
動作環境温度:室温
<評価基準>
○:連続動作前の初期トルクに比べて連続動作直後のトルクがほとんど変化しない。
×:連続動作前の初期トルクに比べて連続動作直後のトルクが大きく変化する。
[低温トルク試験]
JIS K 2220(Low Temparature Torque Test、ベアリング:6204)に準拠して0℃と−30℃において低温トルク試験を行い、起動トルク(初期トルク)と、起動後にトルクが安定した後の回転トルクとをそれぞれ測定した。
[長期蒸発損失試験]
外径41mm、内径37mm、高さ8mm(収納高さ5mm)のシャーレ内にグリースを5g入れ、表面を滑らかに平らした状態で、85℃、100℃又は130℃の各温度の恒温槽に静置し、一定時間ごとに取り出してグリースの質量を測定した。恒温槽に静置する前のグリースの質量に対する各時間の質量の変化からグリースの蒸発損失(質量%)を算出した。
[実施例1]
精製鉱油(API基油カテゴリーでグループIIIに分類されるもの。動粘度ν=47mm/s(40℃)、引火点250℃以上であるもの)と、PAO(炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の混合物、動粘度ν=30mm/s(40℃))とを質量比3:7で混合し、基油(動粘度ν=34mm/s(40℃))とした。
次いで、前記基油と、増ちょう剤として脂環族ジウレア化合物を用いてグリース化し、酸化防止剤及び防錆剤を添加混合した。各成分の割合は、グリース100質量%に対して、基油が86.0質量%、増ちょう剤が12.5質量%、酸化防止剤が0.5質量%、防錆剤が1.0質量%であった。
[実施例2]
前記基油と、増ちょう剤として脂環族ジウレア化合物を用いてグリース化し、酸化防止剤及び防錆剤に加えてさらに極圧剤を添加混合した以外は、実施例1と同様にした。各成分の割合は、グリース100質量%に対して、基油が85.0質量%、増ちょう剤が12.5質量%、酸化防止剤が0.5質量%、防錆剤が1.0質量%、極圧剤が1.0質量%であった。
[比較例1]
鉱油(動粘度ν=52mm/s(40℃)、引火点220℃以上)、PAO(炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の混合物、動粘度ν=52mm/s(40℃))を用い、それらを質量比1:1で混合し、基油(動粘度ν=52mm/s(40℃))とした。次いで、前記基油と、増ちょう剤として脂環族ジウレア化合物を用いてグリース化し、酸化防止剤及び防錆剤を添加混合した。
[比較例2]
基油として、PAO(炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の混合物、動粘度ν=30mm/s(40℃))を用いた以外は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
[比較例3]
基油として、PAO(炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の混合物、動粘度ν=30mm/s(40℃))を用いた以外は、実施例2と同様にしてグリースを得た。
[参考例1]
グリースとして、市販の情報記録再生装置の転がり軸受用グリースαを用意した。なお、グリースαは増ちょう剤としてウレア化合物を含む。
各実施例及び比較例のアウトガス量測定、耐久試験、グリースバンプ試験の結果を表1に示す。また、実施例2と参考例1のグリースの低温トルク試験の結果を表2、長期蒸発損失試験の結果を図7〜9に示す。
Figure 0006754565
Figure 0006754565
表1、2に示すように、PAOの動粘度νよりも動粘度νが高い鉱油を本発明の比率で使用した基油を含む実施例1、2のグリースは、アウトガス量が少なかった。また、実施例1、2では、耐久試験及びグリースバンプ試験のいずれにおいてもトルクの変動が少なく、優れた耐久性を示した。また、実施例2のグリースは、参考例1の市販のグリースαに比べて低温特性に優れ、蒸発損失も少なかった。
一方、鉱油の割合が多い比較例1のグリースは、アウトガス量が多かった。また、比較例1では、耐久試験におけるトルク変動幅が大きく、実施例1、2に比べて耐久性が劣っていた。さらに、グリースバンプ試験においては、連続動作前のトルクに比べて連続動作後のトルクが6倍程度まで上昇した。これは、連続動作における動作範囲の縁部分に酸化劣化したグリースが溜まってバンプが形成されること、もしくは連続動作における動作範囲の縁部分で摩耗が激しくなることが要因であると考えられる。
また、鉱油を用いない比較例2、3のグリースでは、アウトガス量は少ないものの、耐久性に劣っていた。
[実験例1]
以下の4つの成分A〜Dについて、前記したアウトガス量の測定を行った。
成分A:炭素数10のα−オレフィンの3〜5量体の混合物(動粘度ν=30mm/s(40℃)。以下、PAO(decene)という。)。
成分B:炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の混合物(動粘度ν=30mm/s(40℃)。以下、PAO(MIX)という。)。
成分C:PAO(decene)に酸化防止剤を、PAO(decene)及び酸化防止剤の総質量に対して酸化防止剤の含有量が0.2質量%となるように添加した成分。
成分D:PAO(MIX)に酸化防止剤を、PAO(MIX)及び酸化防止剤の総質量に対して酸化防止剤の含有量が0.2質量%となるように添加した成分。
結果を表3に示す。
Figure 0006754565
表3に示すように、PAOが単一成分である成分A、Cに比べて、PAOが炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の混合物である成分B、Dは、アウトガス量が少なかった。
[実験例2]
前記成分A〜Dについて、耐酸化劣化試験を行った。具体的には、ビーカー(寸動外径×高さ:30mm×40mm)内に各成分を5g採取し、100℃の恒温槽に静置した。240時間経過後、24時間毎に各ビーカー中の成分をFT−IRで測定し、酸化劣化の有無を確認した。酸化劣化が初めて確認された時間を表4に示す。
Figure 0006754565
表4に示すように、PAOが単一成分である成分A、Cに比べて、PAOが炭素数8〜12のα−オレフィンの3〜5量体の混合物である成分B、Dは、耐酸化劣化性に優れていた。
1 情報記録再生装置
2 スイングアーム
3 光導波路
4 レーザ光源
5 ヘッドジンバルアッセンブリ
6 転がり軸受装置
7 アクチュエータ
8 スピンドルモータ
9 制御部
10 ハウジング
20 シャフト
21 スリーブ
22 転がり軸受
30 内輪
31 外輪
32 リテーナ
33 転動体
34 シールド板
B ボールポケット
G グリースポケット

Claims (7)

  1. 基油及び増ちょう剤を含み、
    前記増ちょう剤がウレア化合物であり、
    前記基油は、鉱油及びポリ−α−オレフィンを含み、
    前記ポリ−α−オレフィンが、炭素数8〜12のα−オレフィンから選ばれる2種以上の3〜5量体の混合物であり、
    前記基油100質量%に対して、前記鉱油の割合が10〜40質量%であり、前記ポリ−α−オレフィンの割合が50〜90質量%であり、前記鉱油と前記ポリ−α−オレフィンの合計の割合が80質量%以上であり、
    前記鉱油の40℃における動粘度νが40mm/s以上、60mm/s以下であり、
    前記ポリ−α−オレフィンの40℃における動粘度νが20mm/s以上、40mm/s以下であり、
    前記動粘度νは前記動粘度νよりも高く、
    前記基油の40℃における動粘度νが25〜45mm/sである、グリース。
  2. 前記動粘度νに対する前記動粘度νの比ν/νが1.3以上である、請求項1に記載のグリース。
  3. 前記基油は、米国石油協会が定める基油カテゴリーでグループIIIに分類される精製鉱油を含み、且つ、前記精製鉱油の引火点が240℃以上である、請求項1又は2に記載のグリース。
  4. 前記基油は、米国石油協会が定める基油カテゴリーでグループIIIに分類される精製鉱油を含み、且つ、前記精製鉱油の引火点が250℃以上である、請求項1又は2に記載のグリース。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載のグリースを備える転がり軸受。
  6. シャフトと、請求項に記載の転がり軸受と、を備える転がり軸受装置。
  7. 請求項に記載の転がり軸受装置を備える情報記録再生装置。
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