本発明の一つの態様においては、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、半導体基板に設けられたトランジスタ部と、半導体基板に設けられ、予め定められた配列方向に沿って前記トランジスタ部と配列された隣接素子部と、を備える半導体装置を提供する。トランジスタ部および隣接素子部の双方は、半導体基板の内部においてドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、半導体基板の上面からベース領域を貫通し、半導体基板の上面において配列方向と直交する延伸方向に延伸し、内部に導電部が設けられた複数のトレンチ部と、半導体基板の下面側に、トランジスタ部から隣接素子部まで連続して設けられ、ライフタイムキラーを含む第1下面側ライフタイム制御領域と、を有する。第1下面側ライフタイム制御領域は、半導体基板の上面視で、配列方向において、トランジスタ部の全体および隣接素子部の一部に設けられる。
半導体基板の下面側には、半導体基板の下面を基準として第1下面側ライフタイム制御領域よりも深い位置に設けられ、且つ、半導体基板の上面視において第1下面側ライフタイム制御領域と重なって設けられ、ライフタイムキラーを含む第2下面側ライフタイム制御領域をさらに有してよい。第2下面側ライフタイム制御領域は、配列方向において、前記トランジスタ部から前記隣接素子部まで連続して設けられ、且つトランジスタ部の一部および隣接素子部の一部に設けられてよい。
トランジスタ部は、半導体基板の上面側に、ライフタイムキラーを含む上面側ライフタイム制御領域をさらに有してよい。トランジスタ部において、第2下面側ライフタイム制御領域の端部は、上面側ライフタイム制御領域の端部よりも、配列方向における隣接素子部の側に設けられてよい。
トランジスタ部の配列方向における端部において、第1下面側ライフタイム制御領域および第2下面側ライフタイム制御領域は、半導体基板の深さ方向において重なってよい。隣接素子部は、ダイオード部と、配列方向にダイオード部とトランジスタ部とに挟まれた境界部と、を有してよい。第1下面側ライフタイム制御領域および第2下面側ライフタイム制御領域は、境界部において、前記半導体基板の深さ方向において重なってよい。
ダイオード部の配列方向における端部において、第1下面側ライフタイム制御領域および第2下面側ライフタイム制御領域は、半導体基板の深さ方向において重ならなくてよい。上面側ライフタイム制御領域は、半導体基板の上面側に、トランジスタ部から隣接素子部まで、配列方向に連続して設けられてよい。上面側ライフタイム制御領域は、配列方向において、トランジスタ部の一部および隣接素子部の全体に設けられてよい。
半導体装置は、半導体基板の上面視で、複数のトレンチ部と重なって設けられた第2導電型のウェル領域をさらに備えてよい。上面側ライフタイム制御領域の一部は、ウェル領域の端部からウェル領域の外に、延伸方向に予め定められた長さで設けられてよい。予め定められた長さは、半導体基板の深さ方向の厚さよりも大きくてよい。
第2下面側ライフタイム制御領域の一部は、半導体基板の上面視で、ウェル領域の端部からウェル領域の外に、延伸方向に予め定められた長さで設けられてよい。予め定められた長さは、前記半導体基板の深さ方向の厚さよりも大きくてよい。第1下面側ライフタイム制御領域の一部は、半導体基板の上面視で、ウェル領域の端部からウェル領域の外に、延伸方向に予め定められた長さで設けられてよい。予め定められた長さは、半導体基板の深さ方向の厚さよりも大きくてよい。
半導体装置は、トランジスタ部および隣接素子部が設けられた活性部を備えてよい。半導体装置は、上面視において活性部を囲むエッジ終端構造部を備えてよい。エッジ終端構造部の少なくとも一部の領域には、第1下面側ライフタイム制御領域が設けられていなくてよい。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本明細書においては、半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の深さ方向をZ軸とする。
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
図1aは、本実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70およびトランジスタ部70と隣り合って設けられた隣接素子部80を備える半導体チップである。一例としてトランジスタ部70および隣接素子部80は、Y軸方向に並んで配置されている。トランジスタ部70および隣接素子部80は、Y軸方向において交互に配置されていてよい。トランジスタ部70および隣接素子部80は、Y軸方向において接して設けられていてよい。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。隣接素子部80は、ダイオード部81を有する。また、隣接素子部80は、Y軸方向においてダイオード部81およびトランジスタ部70に挟まれる境界部90を有してもよい。図1aにおいては、隣接素子部80がダイオード部81および境界部90を有する例を示している。ダイオード部81は、半導体基板の上面において境界部90またはトランジスタ部70と接して設けられたFWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。図1aにおいては、チップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
また、図1aにおいては、半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
本例の半導体装置100は、半導体基板の内部に設けられ、且つ、半導体基板の上面に露出するゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、互いに分離して設けられる。
エミッタ電極52およびゲート金属層50と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図1aでは省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。
エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25と半導体基板の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が設けられる。
ゲート金属層50は、コンタクトホール49を通って、ゲートランナー48と接触する。ゲートランナー48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲートランナー48は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
本例のゲートランナー48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部まで設けられる。ゲートランナー48と半導体基板の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が設けられる。ゲートトレンチ部40の先端部において、ゲート導電部は半導体基板の上面に露出している。ゲートトレンチ部40は、ゲート導電部の当該露出した部分にて、ゲートランナー48と接触する。
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成されてよい。ゲート金属層50の少なくとも一部の領域は、アルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成されてよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。また、エミッタ電極52およびゲート金属層50は、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、所定の配列方向(本例ではY軸方向)に沿って所定の間隔で配列される。本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板の上面に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではX軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分39と、2つの延伸部分39を接続する接続部分41を有してよい。接続部分41の少なくとも一部は、曲線状に設けられることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分39の端部を接続することで、延伸部分39の端部における電界集中を緩和できる。ゲートランナー48は、ゲートトレンチ部40の接続部分41において、ゲート導電部と接続してよい。
本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、半導体基板の上面においてU字形状を有してよい。即ち、本例のダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分29と、2つの延伸部分29を接続する接続部分31を有してよい。
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。ウェル領域11は第2導電型である。ウェル領域11は、一例としてP+型である。本例のウェル領域11は、活性領域の端部から、活性領域の内側に向かって予め定められた範囲で設けられる。本例のウェル領域11は、上面視において、活性領域の端部に配置されたゲート金属層50およびゲートランナー48の全体と重なって設けられている。ウェル領域11は、上面視において、ゲート金属層50およびゲートランナー48より、活性領域の内側にも設けられてよい。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域は、ウェル領域11に設けられる。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域11に覆われてよい。
トランジスタ部70において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。ダイオード部81において、コンタクトホール54は、ベース領域14の上方に設けられる。境界部90において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。いずれのコンタクトホール54も、X軸方向両端に設けられたベース領域14およびウェル領域11の上方には設けられていない。
半導体基板の上面と平行な面内において、Y軸方向には各トレンチ部に接してメサ部が設けられる。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板の部分であって、半導体基板の上面から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。各トレンチ部の延伸部分(39、29)を1つのトレンチ部としてよい。即ち、2つの延伸部分(39、29)に挟まれる領域をメサ部としてよい。
トランジスタ部70においては、第1メサ部60が設けられる。トランジスタ部70のメサ部は、全て第1メサ部60であってよい。境界部90のメサ部のうち、Y軸方向においてトランジスタ部70側に配置された1つ以上のメサ部が第1メサ部60である。本明細書において、トランジスタ部70側のように、所定の部材側と称した場合、当該部材との距離が近い側を指す。また、境界部90のメサ部のうち、Y軸方向においてダイオード部81側に配置された1つ以上のメサ部が第2メサ部62である。ダイオード部81においては、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域に第3メサ部64が設けられる。ダイオード部81のメサ部は、全て第3メサ部64であってよい。
一例として、第1メサ部60、第2メサ部62および第3メサ部64の各メサ部において、X軸方向の両端部には、半導体基板の上面に、第2導電型のベース領域14が設けられる。本例のベース領域14は、P−型である。なお、図1aは、各メサ部のX軸方向の一方の端部のみを示している。
第1メサ部60の上面には、ゲートトレンチ部40と接してエミッタ領域12が設けられる。エミッタ領域12は、第1メサ部60を挟んでX軸方向に延伸する2本のトレンチ部の一方から他方まで、Y軸方向に延伸して設けられてよい。エミッタ領域12は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。図1aにおいては、半導体基板の上面視でコンタクトホール54と重なるエミッタ領域12の境界を、破線で示している。
エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してよく、接しなくてもよい。本例においては、エミッタ領域12がダミートレンチ部30と接する。本例のエミッタ領域12は第1導電型である。本例のエミッタ領域12は、一例としてN+型である。
第1メサ部60の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。第1メサ部60において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40の延伸方向に沿って交互に設けられてよい。コンタクト領域15は、第1メサ部60を挟んでX軸方向に延伸する2本のトレンチ部の一方から他方まで、Y軸方向に延伸して設けられてよい。コンタクト領域15は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。図1aにおいては、半導体基板の上面視でコンタクトホール54と重なるコンタクト領域15の境界を、破線で示している。
コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40と接してよく、接しなくてもよい。また、コンタクト領域15は、ダミートレンチ部30と接してよく、接しなくてもよい。本例においては、コンタクト領域15が、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40と接する。
第2メサ部62の上面には、コンタクト領域15が設けられる。一つの第2メサ部62の上面に設けられるコンタクト領域15の面積は、一つの第1メサ部60の上面に設けられるコンタクト領域15の面積よりも大きい。一つの第2メサ部62の上面に設けられるコンタクト領域15の面積は、一つの第3メサ部64の上面に設けられるコンタクト領域15の面積よりも大きくてよい。第2メサ部62のX軸方向における両端部にはベース領域14が設けられている。第2メサ部62の上面におけるコンタクト領域15は、当該両端部のベース領域14に挟まれる領域全体に設けられてよい。第2メサ部62に大きい面積のコンタクト領域15を設けることで、ターンオフ時のキャリアの引き抜きを容易に行うことができる。
第3メサ部64の上面には、X軸方向における両端部にコンタクト領域15が設けられる。また、第3メサ部64の上面において、当該両端部に設けられるコンタクト領域15に挟まれる領域には、ベース領域14が設けられる。ベース領域14は、X軸方向において当該コンタクト領域15に挟まれる領域全体に設けられてよい。
第3メサ部64には、コンタクト領域15およびベース領域14が、第3メサ部64を挟む一方のダミートレンチ部30から、他方のダミートレンチ部30に渡って設けられる。即ち、半導体基板の上面において、第3メサ部64のY軸方向の幅と、第3メサ部64に設けられたコンタクト領域15またはベース領域14のY軸方向の幅は、等しい。
第3メサ部64には、エミッタ領域12が設けられなくてよく、設けられてもよい。本例においては、第3メサ部64にエミッタ領域12が設けられない。
本例の半導体装置100は、ダイオード部81において、ダミートレンチ部30が設けられる。隣り合うダミートレンチ部30のそれぞれの直線状の延伸部分29は、接続部分31で接続されてよい。本例の第3メサ部64は、それぞれのダミートレンチ部30の延伸部分29に挟まれる領域である。
ダイオード部81は、半導体基板の下面側において、第1導電型のカソード領域82を有する。本例のカソード領域82は、一例としてN+型である。図1aに、半導体基板の上面視でカソード領域82が設けられる領域を一点鎖線部で示している。ダイオード部81は、カソード領域82を半導体基板の上面に投影した領域であってよい。また、カソード領域82が部分的に設けられた第3メサ部64全体と、当該第3メサ部64に接するダミートレンチ部30とをダイオード部81に含めてもよい。カソード領域82を半導体基板の上面に投影した領域は、コンタクト領域15からX軸方向正側に離れていてよい。
半導体基板の下面においてカソード領域82が設けられていない領域には、第2導電型のコレクタ領域が設けられてよい。本例のコレクタ領域は、一例としてP+型である。ダイオード部81におけるコンタクトホール54のX軸方向の端部を半導体基板の下面に投影した位置には、コレクタ領域が設けられてよい。
トランジスタ部70は、コレクタ領域を半導体基板の上面に投影した領域のうち、ゲートトレンチ部40がY軸方向に一定の周期で配置される領域である。本例では、Y軸方向でダイオード部81に挟まれた領域において、それぞれのダイオード部81に最も近いゲートトレンチ部40を、トランジスタ部70のY軸方向における両端とする。また、Y軸方向においてトランジスタ部70と、ダイオード部81とに挟まれた領域を境界部90とする。境界部90は、2つのダミートレンチ部30に挟まれた1つ以上のメサ部を有してよい。図1aにおいては、境界部90に接するゲートトレンチ部40と、当該ゲートトレンチ部40よりもY軸方向正側の領域とが、トランジスタ部70である。トランジスタ部70のY軸方向正側には、図1aに図示されない境界部90が存在してよい。図1aのトランジスタ部70は、Y軸方向正側の境界部90(境界部90が設けられない場合はダイオード部81)に接するゲートトレンチ部40から、Y軸方向負側の境界部90(境界部90が設けられない場合はダイオード部81)に接するゲートトレンチ部40までの領域である。なお、トランジスタ部70のY軸方向の範囲については、図7aにおいて詳細に説明する。各図においてX軸、Y軸、Z軸の各矢印が指す側を正側、矢印とは逆側を負側として説明する場合がある。正側および負側は、当該方向における相対的な位置を指している。
本例の半導体装置100は、少なくとも一部のメサ部において、蓄積領域16を有する。蓄積領域16は、ベース領域14の下方に設けられたN+型の領域である。図1aにおいては、上面視において蓄積領域16が設けられる範囲を破線で示している。
本例の半導体装置100は、ライフタイムキラーを含む上面側ライフタイム制御領域72が、半導体基板の深さ方向(Z軸方向)において局所的に設けられている。図1aにおいて、半導体基板の上面視で、上面側ライフタイム制御領域72が設けられた領域を破線部で示している。
本例の上面側ライフタイム制御領域72は、半導体基板の上面側に、トランジスタ部70から隣接素子部80まで、Y軸方向に連続して設けられてよい。即ち、上面側ライフタイム制御領域72は、トランジスタ部70における境界部90に接する領域から、境界部90およびダイオード部81にわたって、Y軸方向に連続して設けられてよい。
本例の上面側ライフタイム制御領域72は、X軸方向においてトランジスタ部70の少なくとも一部および隣接素子部80の少なくとも一部に設けられてよい。上面側ライフタイム制御領域72は、X軸方向においてトランジスタ部70の少なくとも一部の第1メサ部60と、隣接素子部80の少なくとも一部のメサ部を覆う範囲に設けられてよい。上面側ライフタイム制御領域72は、ゲート金属層50と重ならない範囲に設けられてよく、ゲート金属層50と重なる範囲に設けられてもよい。なお、上面側ライフタイム制御領域72のY軸方向の範囲については、図7aにおいて詳細に説明する。
また、上面側ライフタイム制御領域72は、Y軸方向において、トランジスタ部70の一部に設けられてよい。また、上面側ライフタイム制御領域72は、隣接素子部80の全体に設けられてよい。本例の上面側ライフタイム制御領域72は、トランジスタ部70のうち、Y軸方向において隣接素子部80から離れた領域の一部には設けられない。上面側ライフタイム制御領域72は、隣接素子部80のY軸方向における全範囲と、Y軸方向において隣接素子部80に接する2つのトランジスタ部70の一部分とに連続して設けられてよい。
本例の半導体装置100は、ライフタイムキラーを含む第1下面側ライフタイム制御領域74が、半導体基板の深さ方向において、上面側ライフタイム制御領域72の下方に局所的に設けられる。つまり、第1下面側ライフタイム制御領域74は、半導体基板の上面を基準として、上面側ライフタイム制御領域72よりも深い位置に設けられている。上面視において第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられる範囲は、上面側ライフタイム制御領域72と重なる範囲に限定されない。図1aにおいて、半導体基板の上面視で第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられる領域を破線部で示している。ライフタイムキラーは、キャリアの再結合中心であって、結晶欠陥であってよく、空孔、複空孔、これらと半導体基板10を構成する元素との複合欠陥、転位、ヘリウム、ネオンなどの希ガス元素、白金などの金属元素などでよい。ライフタイムキラーを半導体基板に注入することで、半導体基板中のキャリアのライフタイムを調整できる。
本例の第1下面側ライフタイム制御領域74は、Y軸方向において、トランジスタ部70の全体および隣接素子部80の一部に設けられる。第1下面側ライフタイム制御領域74は、隣接素子部80のうち、トランジスタ部70に接する隣接領域に設けられてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74は、トランジスタ部70から、隣接素子部80の当該隣接領域まで連続して設けられる。なお、第1下面側ライフタイム制御領域74のY軸方向の範囲については、図7aにおいて詳細に説明する。
半導体基板の上面視で、上面側ライフタイム制御領域72が設けられる領域内のトレンチ部は、全てダミートレンチ部30であってもよい。この場合、トランジスタ部70のY軸方向における端部には、1つ以上のダミートレンチ部30が配置される。これにより、上面側から粒子線を注入して上面側ライフタイム制御領域72を形成する場合でも、粒子線によるゲートトレンチ部40のゲート絶縁膜へのダメージを避けることができる。このため、上面側ライフタイム制御領域72内のトレンチ部をダミートレンチ部30にすることで、ゲート閾値変動やゲート絶縁膜の破壊を防ぐことができる。
図1bは、図1aにおけるa−a'断面の一例を示す図である。a−a'断面は、トランジスタ部70のエミッタ領域12、境界部90のコンタクト領域15およびダイオード部81のベース領域14を通過するYZ面である。本例の半導体装置100は、a−a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10の上面21および層間絶縁膜38の上面に設けられる。
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で設けられる。
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10は、シリコン基板である。
本例の半導体基板10は、第1導電型のドリフト領域18を備える。本例のドリフト領域18は、一例としてN−型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。即ち、ドリフト領域18のドーピング濃度は半導体基板10のドーピング濃度であってよい。
ドリフト領域18の下方には第1導電型のバッファ領域20が設けられてよい。本例のバッファ領域20は、一例としてN+型である。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、第2導電型のコレクタ領域22および第1導電型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
ダイオード部81は、バッファ領域20の下方に第1導電型のカソード領域82を有する。トランジスタ部70および境界部90は、バッファ領域20の下方に第2導電型のコレクタ領域22を有する。
カソード領域82は、半導体基板10の深さ方向において、コレクタ領域22と同じ深さに設けられてよい。カソード領域82が、コレクタ領域22と同じ深さに設けられることにより、ダイオード部81は、インバータ等の電力変換回路で、他の半導体装置100のトランジスタ部70がターンオフする場合に、逆方向に導通する還流電流を流す還流ダイオード(FWD)として機能してよい。
コレクタ領域22は、境界部90までY軸方向に延伸して設けられてよい。コレクタ領域22は、境界部90の全体にわたって設けられてよい。本例のコレクタ領域22は、境界部90においてダイオード部81に最も近い第2メサ部62の下面23側の領域までY軸方向に延伸して設けられてよい。第2メサ部62の下面23までコレクタ領域22が延伸していることにより、トランジスタ部70のエミッタ領域12とダイオード部81のカソード領域82との距離を確保できる。また、境界部90のエミッタ領域12とダイオード部81のカソード領域82との距離も確保できる。このため、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12を含むゲート構造部からドリフト領域18に注入される電子が、ダイオード部81のカソード領域82に流出することを防ぐことができる。
本例においては、カソード領域82が第2メサ部62の直下まで設けられる場合と比べて、第2メサ部62のコンタクト領域15と、ダイオード部81のカソード領域82との距離も長くできる。これにより、ダイオード部81が導通する場合に、ベース領域14よりも高いドーピング濃度のコンタクト領域15から、カソード領域82へ正孔が注入されることを抑えることができる。
第1メサ部60および第2メサ部62においては、ドリフト領域18の上方に第1導電型の蓄積領域16が設けられてよい。本例の蓄積領域16は、一例としてN+型である。蓄積領域16は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。蓄積領域16は、ダミートレンチ部30に接してよく、接さなくてもよい。
蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。蓄積領域16は、ドリフト領域18と同じ導電型のドーパントが蓄積した領域であってよい。蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、トランジスタ部70のオン電圧を低減できる。
第1メサ部60および第2メサ部62においては、蓄積領域16の上方に第2導電型のベース領域14が設けられる。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。
第1メサ部60においては、ベース領域14と上面21との間にエミッタ領域12が設けられる。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してよく、接さなくてもよい。エミッタ領域12のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。エミッタ領域12のドーパントの一例はヒ素(As)である。
第2メサ部62においては、蓄積領域16の上方に第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。第2メサ部62において、コンタクト領域15はゲートトレンチ部40に接して設けられる。第2メサ部62には、エミッタ領域12が設けられなくてよい。
第3メサ部64においては、ドリフト領域18の上方に第1導電型の蓄積領域16が設けられてよい。また、第3メサ部64においては、蓄積領域16の上方にベース領域14が設けられてよい。第3メサ部64においては、エミッタ領域12は設けられなくてよい。
上面21には、1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、上面21からドリフト領域18まで設けられる。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられる領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
ゲートトレンチ部40は、上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ゲートトレンチ部40は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。
ゲート導電部44は、ゲート絶縁膜42を挟んでベース領域14と対向する領域を含む。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に、電子の反転層によるチャネルが形成される。
ダミートレンチ部30は、図1bにおいて、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、上面21側に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミートレンチ部30は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。
本例の半導体装置100は、半導体基板10の下面23側に設けられた第1下面側ライフタイム制御領域74を有する。本例の第1下面側ライフタイム制御領域74は、ダイオード部81の一部から、境界部90およびトランジスタ部70にわたってY軸方向に連続して設けられている。半導体基板10の下面23側とは、上面側ライフタイム制御領域72よりも下方の領域である。下面23側とは、半導体基板10の厚さ方向における中央よりも下側を指してよい。つまり第1下面側ライフタイム制御領域74は、半導体基板10の下面23から、半導体基板10の厚さTの1/2の範囲に設けられてよい。同様に、半導体基板10の上面21側とは、半導体基板10の厚さ方向における中央よりも上側を指してよい。つまり半導体基板10の上面21側とは、半導体基板10の上面21から、半導体基板10の厚さTの1/2の範囲を指してよい。第1下面側ライフタイム制御領域74は、ダイオード部81のうち、境界部90に接する領域に設けられ、境界部90から離れた領域の少なくとも一部には設けられない。即ち、第1下面側ライフタイム制御領域74のY軸方向の端部(図1bではY軸方向負側の端部Krbを示している)は、ダイオード部81に設けられる。
第1下面側ライフタイム制御領域74は、Y軸方向においてトランジスタ部70を挟む2つのダイオード部81の一方から他方まで、Y軸方向に連続して設けられてよい。この場合、第1下面側ライフタイム制御領域74は、Y軸方向において、トランジスタ部70の全体にわたって設けられている。なお、第1下面側ライフタイム制御領域74のY軸方向の範囲については、図7aにおいて詳細に説明する。
第1下面側ライフタイム制御領域74は、下面23から、半導体基板10の厚さTの1/3の範囲に設けられてよく、1/4の範囲に設けられてもよい。第1下面側ライフタイム制御領域74を深い位置に設けることで、トランジスタ部70のリーク電流を抑制できる。
本例の半導体装置100は、上面21側に、上面側ライフタイム制御領域72を有する。本例の上面側ライフタイム制御領域72は、トランジスタ部70の一部から境界部90およびダイオード部81にわたって、Y軸方向に連続して設けられている。上面側ライフタイム制御領域72は、トランジスタ部70のうち境界部90に接する領域に設けられ、境界部90から離れた領域の少なくとも一部には設けられない。即ち、上面側ライフタイム制御領域72のY軸方向の端部(図1bでは、Y軸方向正側の端部Klsを示している)は、トランジスタ部70に設けられる。上面側ライフタイム制御領域72は、Y軸方向において隣接素子部80を挟む2つのトランジスタ部70の一方から他方まで、Y軸方向に連続して設けられてよい。この場合、上面側ライフタイム制御領域72は、Y軸方向において、隣接素子部80の全体にわたって設けられている。
上面側ライフタイム制御領域72は、上面21から、半導体基板10の厚さTの1/3の範囲に設けられてよく、1/4の範囲に設けられてもよい。ただし、上面側ライフタイム制御領域72は、トレンチ部の底部よりも深い位置に設けられる。上面側ライフタイム制御領域72を、上面21を基準として浅い位置に設けることで、ダイオード部81のベース領域14からカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。また、境界部90のドリフト領域18において、ダイオード部81よりも高濃度のキャリアが過剰に蓄積されることを防ぎ、境界部90でのスイッチング時の破壊を防ぐことができる。
上面側ライフタイム制御領域72および第1下面側ライフタイム制御領域74は、半導体基板10の深さ方向において局所的に設けられている。即ち、上面側ライフタイム制御領域72および第1下面側ライフタイム制御領域74は、半導体基板10の他の領域に比べ、欠陥密度が高くなっている。ライフタイムキラーの一例は、所定の深さ位置に注入されたヘリウムである。ヘリウムを注入することで、半導体基板10の内部に結晶欠陥を形成できる。
ライフタイムキラーを半導体基板10に注入することで、ドリフト領域18に生じる少数キャリアである正孔のキャリアライフタイムを短くできる。一方で、結晶欠陥等に起因してトランジスタ部70のリーク電流をもたらし得る。上面側ライフタイム制御領域72は、上面21を基準として、半導体基板10の深さ方向に浅い位置に設けられるので、第1下面側ライフタイム制御領域74よりもトランジスタ部70のリーク電流をもたらし易い。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70において、境界部90と接する領域を除き、上面側ライフタイム制御領域72が存在しないので、上面側ライフタイム制御領域72がトランジスタ部70のY軸方向全体に存在する場合よりも、トランジスタ部70のリーク電流を抑制できる。
また、本例の半導体装置100は、トランジスタ部70において、境界部90と接する領域を除き、上面側ライフタイム制御領域72が存在しないので、上面側ライフタイム制御領域72がトランジスタ部70のY軸方向全体に存在する場合よりも、キャリアライフタイムを長くできる。このため、トランジスタ部70のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善できる。
上面側ライフタイム制御領域72に加え、第1下面側ライフタイム制御領域74が存在する場合、ドリフト領域18をドリフトするキャリアの一部は、上面側ライフタイム制御領域72および第1下面側ライフタイム制御領域74の双方において再結合して消滅する。本例の半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74の下面23からの深さを調整することで、半導体基板10の下面23側から注入されたキャリアのライフタイムを調整することできる。例えば、第1下面側ライフタイム制御領域74と下面23との距離を小さくすると、下面23側から注入されたキャリアが第1下面側ライフタイム制御領域74にとらえられやすくなるので、平均ライフタイムは短くなる。このため、トランジスタ部70におけるリーク電流への寄与が大きい上面側ライフタイム制御領域72の濃度および深さ位置を所定の範囲に維持しつつ、トランジスタ部70のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善できる。なお、第1下面側ライフタイム制御領域74を、Y軸方向においてトランジスタ部70の全体に設けても、トランジスタ部70の特性は、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフの範囲内で変化する。このため、トランジスタ部70の特性は悪化しない。
端部Rは、ダイオード部81のY軸方向における端部である。本例では、端部Rは、カソード領域82と、コレクタ領域22との境界部分である。ダイオード部81は、端部Rにおいて、XZ面と平行な端面を有してよい。
幅Waは、上面側ライフタイム制御領域72のY軸方向における端部Klsから、端部RまでのY軸方向の幅である。ライフタイム制御領域の端部は、Y軸方向においてドリフト領域18からライフタイム制御領域に向けてライフタイムキラーの濃度分布を測定した場合に、ライフタイムキラーの濃度がドリフト領域18におけるライフタイムキラーの濃度よりも高くなり始める点である。ただし、当該点が不明瞭な場合には、ライフタイムキラーの濃度が、ライフタイム制御領域におけるピーク濃度の半値(または1/10)となる位置を端部としてもよい。
幅Wbは、第1下面側ライフタイム制御領域74の端部Krbから、端部RまでのY軸方向の幅である。幅Waは、幅Wbの3倍以上15倍以下であってよい。幅Waは、90μm以上150μm以下であってよい。幅Wbは、10μm以上30μm以下であってよい。
本例の半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74が、トランジスタ部70からダイオード部81まで連続して設けられ、且つトランジスタ部70の全体およびダイオード部の一部に設けられる。このため、ダイオード部81が動作する場合に、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12から、ダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
図1cは、図1bのb−b'断面における上面側ライフタイム制御領域72および第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度分布の一例を示す図である。図1cにおいて縦軸は、ライフタイムキラー濃度を示す対数軸である。横軸は、半導体基板10の深さ方向における位置を示す線形軸である。上面側ライフタイム制御領域72は、ヘリウムイオンを上面21側から注入した例である。また、第1下面側ライフタイム制御領域74は、ヘリウムイオンを下面23側から注入した例である。図1bでは、ライフタイム制御領域のライフタイムキラー濃度のピーク位置を×印で示している。ヘリウムイオン等を上面21側から注入する場合は、ピーク位置より上面21側に、ピーク濃度より低い濃度のライフタイムキラーが分布してよい。
第1下面側ライフタイム制御領域74を、ヘリウムイオンを下面23側から注入して形成する場合は、ピーク位置よりも下面23側に、ピーク濃度より低い濃度のライフタイムキラー(ライフタイムキラーのテイル部分)が分布してよい。第1下面側ライフタイム制御領域74における、このライフタイムキラーのテイル部分78−2は、ライフタイムキラーの通過領域である。テイル部分78−2は、ライフタイムキラーの注入面(本例では下面23)からピーク濃度の位置76−2まで分布してよい。これに対し、第1下面側ライフタイム制御領域74におけるライフタイムキラーのピーク濃度位置76−2を挟む前後の高濃度領域を、ライフタイムキラーの飛程領域と言ってもよい。飛程領域は、ピーク濃度位置76−2から、濃度がほぼゼロに減衰するエンド位置77−2までの領域を含んでよい。第1下面側ライフタイム制御領域74のエンド位置77−2は、ピーク位置76−2よりも上面21側に配置している。
上面側ライフタイム制御領域72についても同様であり、ヘリウムイオンを上面21側から注入して形成する場合は、ピーク位置よりも上面21側に、ピーク濃度より低い濃度のライフタイムキラー(ライフタイムキラーのテイル部分78−1)が分布してよい。上面側ライフタイム制御領域72における、このライフタイムキラーのテイル部分78−1は、ライフタイムキラーの通過領域である。テイル部分78−1は、ライフタイムキラーの注入面(本例では上面21)からピーク濃度の位置76−1まで分布してよい。これに対し、上面側ライフタイム制御領域72におけるライフタイムキラーのピーク濃度位置76−1を挟む前後の高濃度領域を、ライフタイムキラーの飛程領域と言ってもよい。飛程領域は、ピーク濃度位置76−1から、濃度がほぼゼロに減衰するエンド位置77−1までの領域を含んでよい。上面側ライフタイム制御領域72のエンド位置77−1は、ピーク位置76−1よりも下面23側に配置している。
第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度のピーク濃度P2は、上面側ライフタイム制御領域72のピーク濃度P1より高くてよく、低くてもよい。第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度のピーク濃度P2は、上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度のピーク濃度P1よりも2倍から5倍高くてよい。
上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度分布の幅w1は、第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度分布の幅w2より大きくてよい。幅w1およびw2は、ピーク濃度P1またはピーク濃度P2の半値全幅(FWHM)であってよい。あるいは、幅w1およびw2は、ピーク濃度P1またはピーク濃度P2の10%の値における全幅(F10%WHM)であってよい。あるいは、幅w1およびw2は、ピーク濃度P1またはピーク濃度P2の1%の値における全幅(F1%WHM)であってよい。
幅w1が幅w2よりも大きい場合は、上面21から、ピーク濃度P1の深さ位置Dp1までの距離が、下面23から、ピーク濃度P2の深さ位置Dp2までの距離より大きくてよい。逆に、幅w1が幅w2よりも小さい場合は、上面21から、ピーク濃度P1の深さ位置Dp1までの距離が、下面23から、ピーク濃度P2の深さDp2までの距離より小さくてよい。ピーク濃度の位置を深くする場合、半導体基板10の深さ方向においてライフタイム制御領域を大きな幅で形成すると、再結合中心の濃度分布がなだらかにできる。これにより、印加電圧の増加によってリーク電流が急激に増加することを防ぐことができる。
なお、図1cの縦軸に示される、上面側ライフタイム制御領域72および第1下面側ライフタイム制御領域74の濃度分布は、ヘリウム濃度であってもよいし、ヘリウム注入によって形成された結晶欠陥密度であってもよい。結晶欠陥は、格子間ヘリウム、空孔、複空孔等であってよい。これらの結晶欠陥により、キャリアの再結合中心が形成される。形成された再結合中心のエネルギー準位(トラップ準位)を介して、キャリアの再結合が促進される。ライフタイムキラー濃度は、トラップ準位密度に対応する。図1cの縦軸に示される、上面側ライフタイム制御領域72および第1下面側ライフタイム制御領域74の濃度分布は、再結合中心の濃度であってもよく、再結合中心のエネルギー準位の密度であってもよい。
第1下面側ライフタイム制御領域74のピーク濃度の位置76−2は、バッファ領域20よりも上面21側にあってもよく、バッファ領域20の内部にあってもよい。本例では、第1下面側ライフタイム制御領域74のピーク濃度の位置76−2はバッファ領域20よりも上面21側にある。
上面側ライフタイム制御領域72のピーク濃度の位置76−1は、トレンチ部の底よりも下面23側にあってもよく、第1メサ部60、第2メサ部62または第3メサ部64の内部にあってもよい。上述したように、第1メサ部60、第2メサ部62または第3メサ部64は、トレンチ部の底よりも上面21側の領域である。本例では、上面側ライフタイム制御領域72のピーク濃度の位置は、トレンチ部の底よりも下面23側にある。
上面側ライフタイム制御領域72のピーク濃度の位置は、半導体基板10の深さ方向における中央(すなわち、上面21からT/2の深さ位置)よりも深い位置に設けられてもよい。この場合は、上面側ライフタイム制御領域72のテイル部分78−1が、ピーク濃度位置76−1よりも上面21側に設けられてよい。これにより、特にダイオード部81の上面21側の蓄積キャリアを低減し、ソフトリカバリを達成できる。
本例においては、第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度P2を、上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度P1よりも高くすることで、リーク電流に寄与する上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度を維持しつつ、半導体基板10全体のライフタイムキラー濃度を高めることができる。これにより、トランジスタ部70のリーク電流特性を維持しつつ、トランジスタ部70のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフを調整できる。
図2aは、比較例の半導体装置150の上面を部分的に示す図である。図2aの半導体装置150は、下面23側に第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられない。上面側ライフタイム制御領域272は、半導体基板10の上面視で図1aと同じ位置に設けられる。
図2bは、図2aにおけるz−z'断面の一例を示す図である。図2bに示すように、比較例の半導体装置150は、下面23側に第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられない。上面側ライフタイム制御領域272は、z−z'断面において図1bと同じ位置に設けられる。
比較例の半導体装置150は、第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられないので、ダイオード部81の動作時にトランジスタ部70のエミッタ側からの正孔の注入と、注入された正孔のカソード領域82への流入を抑制することができない。また、第1下面側ライフタイム制御領域74の深さ等を調整することができない。このため、トランジスタ部70のリーク電流特性を改善することができず、また、トランジスタ部70のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善することができない。
図3aは、図1aにおけるa−a'断面の他の一例を示す図である。図3aに示す半導体装置100は、図1bに示す半導体装置100において、第2下面側ライフタイム制御領域75−1がさらに設けられる点で、図1bに示す半導体装置100と異なる。また、第1下面側ライフタイム制御領域74の端部Krb1が、Y軸方向において境界部90に設けられる点で、図1bに示す半導体装置100と異なる。
第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、下面23側に設けられている。第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、下面23を基準として第1下面側ライフタイム制御領域74よりも深い位置に設けられる。本例の第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、深さ方向において、第1下面側ライフタイム制御領域74と、上面側ライフタイム制御領域72との間に配置されている。第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、半導体基板10の上面視において第1下面側ライフタイム制御領域74と重なって設けられてよい。また、第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、トランジスタ部70から隣接素子部80まで、Y軸方向に連続して設けられてよい。本例の第2下面側ライフタイム制御領域75−1のY軸方向における一方の端部Klb2はトランジスタ部70に配置され、他方の端部Krb2は隣接素子部80に配置されている。より具体的には、端部Krb2は、ダイオード部81に配置されている。
本例の半導体装置100において、幅Wb'は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1のY軸方向の端部Krb2から、端部RまでのY軸方向の幅である。幅Wcは、上面側ライフタイム制御領域72のY軸方向の端部Klsから、第2下面側ライフタイム制御領域75−1のY軸方向の端部Klb2までのY軸方向の幅である。本例の端部Klsは、トランジスタ部70に配置されている。幅Wtkは、第2下面側ライフタイム制御領域75−1のY軸方向の端部Klb2から、端部RまでのY軸方向の幅である。
端部Sは、図3aに示す通り、トランジスタ部70のY軸方向における端部である。本例では、Y軸方向においてダイオード部81の最も近くに配置されたゲートトレンチ部40の、Y軸方向における中央を端部Sとする。端部Sを通過するXZ面を、トランジスタ部70と隣接素子部80との境界とする。本例の半導体装置100において、幅Wtは、第2下面側ライフタイム制御領域75−1のY軸方向の端部Klb2から、端部SまでのY軸方向の幅である。幅Wkは、第1下面側ライフタイム制御領域74のY軸方向の端部Krb1から、端部SまでのY軸方向の幅である。端部Krb1は、隣接素子部80に配置されている。
本例の半導体装置100において、幅Waは、幅Wb'の3倍以上15倍以下であってよい。幅Wcは、幅Waの0.1倍以上0.3倍以下であってよい。幅Wtkは、幅Waの0.5倍以上0.9倍以下であってよい。幅Wtは、幅Waの0.1倍以上0.3倍以下であってよい。幅Wkは、幅Waの0.05倍以上0.2倍以下であってよい。
本例の半導体装置100において、幅Waは、90μm以上150μm以下であってよい。幅Wb'は、10μm以上30μm以下であってよい。幅Wcは、20μm以上30μm以下であってよい。幅Wtkは、80μm以上120μm以下であってよい。幅tは、20μm以上30μm以下であってよい。幅Wkは、10μm以上20μm以下であってよい。
第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、Y軸方向において、トランジスタ部70から隣接素子部80まで連続して設けられよい。第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、トランジスタ部70の一部および隣接素子部80の一部に設けられてよい。これにより、ダイオード部81が動作する場合に、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12から、ダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善し、さらに境界部90のスイッチング破壊を防止できる。
トランジスタ部70において、第2下面側ライフタイム制御領域75−1の端部Klb2のY軸方向における位置は、上面側ライフタイム制御領域72の端部Klsよりも、隣接素子部80(またはダイオード部81)側に設けられてよい。つまり、Y軸方向において、第2下面側ライフタイム制御領域75−1がトランジスタ部70に設けられる長さは、上面側ライフタイム制御領域72がトランジスタ部70に設けられる長さよりも小さい。端部Klb2が端部Klsよりも隣接素子部80側に設けられることで、ダイオード部81が動作する場合に、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12から、ダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善し、さらに境界部90のスイッチング破壊を防止できる。
コレクタ領域22は、図3aにおいてr−r'線で示すように、端部Klsから端部Klb2へ至る経路の延長線上に設けられてよい。即ち、端部Klsと端部Klb2を結ぶ直線は、コレクタ領域22と交差してよい。当該直線は、第1下面側ライフタイム制御領域74とも交差してよい。端部Klsと端部Klb2を結ぶ直線がコレクタ領域22と交差するように設けられることで、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82へ移動する正孔の一部は、第1下面側ライフタイム制御領域74等のライフタイム制御領域において再結合して消滅しやすくなる。このため、本例の半導体装置100は、ダイオード部81の動作時に、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善し、さらに境界部90のスイッチング破壊を防止できる。
端部Sにおいて、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、図3aに示す通り、半導体基板10の深さ方向において重なってよい。Y軸方向において、トランジスタ部70のうち境界部90と接する領域において、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が重なっていてよい。また、境界部90のうちトランジスタ部70と接する領域において、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が重なってよい。第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、トランジスタ部70および境界部90の両方において重なっていてよい。
本例の半導体装置100は、端部Sにおいて、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が半導体基板10の深さ方向に重なる。このため、端部Sにおいて、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が半導体基板10の深さ方向に重ならない場合よりも、トランジスタ部70のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82へ移動する正孔の一部は、再結合して消滅しやすくなる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を図1aに示す半導体装置100よりも改善し、さらに境界部90のスイッチング破壊を防止できる。
端部Rおいて、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、図3aに示す通り、半導体基板10の深さ方向において重ならなくてよい。本例の半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、トランジスタ部70からダイオード部81にわたってY軸方向に連続して設けられる。このため、端部Rにおいて第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられなくても、第2下面側ライフタイム制御領域75−1の存在により、ダイオード部81が動作する場合に、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善し、さらに境界部90のスイッチング破壊を防止できる。
第1下面側ライフタイム制御領域74は、トランジスタ部70から境界部90まで、Y軸方向に連続して設けられてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74は、ダイオード部81に接する境界部90の一部と、ダイオード部81には設けられなくてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74が、境界部90においてダイオード部81に接する領域に設けられないことで、境界部90のコレクタ領域22からダイオード部81への正孔を注入できる。このため、ダイオード部81のソフトリカバリ特性を良好にできる。
図3bは、図3aのc−c'断面における上面側ライフタイム制御領域72、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度分布を示す図である。図3bにおいて縦軸は、ライフタイムキラー濃度を示す対数軸である。横軸は、半導体基板10の深さ方向における位置を示す線形軸である。上面側ライフタイム制御領域72は、ヘリウムイオンを上面21側から注入した例である。また、第1下面側ライフタイム制御領域74は、ヘリウムイオンを下面23側から注入した例である。図3aでは、ライフタイム制御領域のライフタイムキラー濃度のピーク位置を×印で示している。ヘリウムイオン等を上面21側から注入する場合は、ピーク位置より上面21側に、ピーク濃度より低い濃度のライフタイムキラーが分布してよい。
図3bに示すように、第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度のピーク濃度P2は、第1下面側ライフタイム制御領域74よりも上面21側に設けられた第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度のピーク値P3よりも高くてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度P2は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度P3の2倍から5倍高くてよい。
上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度分布の幅w1は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度分布の幅w3より大きくてよい。第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度分布の幅w3は、第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度分布の幅w2より大きくてよい。
なお、図3bの縦軸に示される、上面側ライフタイム制御領域72、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1の濃度分布は、ヘリウム濃度であってもよいし、ヘリウム注入によって形成された結晶欠陥密度であってもよい。結晶欠陥は、格子間ヘリウム、空孔、複空孔等であってよい。これらの結晶欠陥により、キャリアの再結合中心が形成される。図3bの縦軸に示される、上面側ライフタイム制御領域72、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1の濃度分布は、再結合中心の濃度であってもよく、再結合中心のエネルギー準位の密度であってもよい。
第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1のピーク濃度の位置76−2、76−3は、バッファ領域20よりも上面21側にあってもよく、バッファ領域20の内部にあってもよい。本例では、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1のピーク濃度の位置76−2、76−3はバッファ領域20よりも上面21側にある。
第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度P2を第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度P3よりも高くしてよい。第2下面側ライフタイム制御領域75−1を設けることで、上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度を高くせずに、半導体基板10の全体ライフタイムキラー濃度を高くできる。このため、上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラーに起因する、トランジスタ部70のリーク電流特性を、図1bに示す半導体装置100よりも改善できる。また、トランジスタ部70のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフを良好にできる。
図3cは、図1aにおけるa−a'断面の他の一例を示す図である。図3cに示す半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1のY軸方向の端部Klb2が、境界部90に設けられる点で、図3aに示す半導体装置100と異なる。即ち、本例の半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、境界部90からダイオード部81にわたってY軸方向に連続して設けられる。トランジスタ部70には、第2下面側ライフタイム制御領域75−1が設けられていない。第1下面側ライフタイム制御領域74のY軸方向の端部Krb1は、図3aに示す半導体装置100と同様に、境界部90に設けられる。
本例の半導体装置100において、幅Wc'は、幅Waの0.1倍以上0.3倍以下であってよい。幅Wtk'は、幅Waの0.3倍以上0.8倍以下であってよい。幅Wt'は、幅Waの0.1倍以上0.3倍以下であってよい。幅Wk'は、幅Waの0.25倍以上0.6倍以下であってよい。
本例の半導体装置100において、幅Wc'は、50μm以上70μm以下であってよい。幅Wtk'は、50μm以上80μm以下であってよい。幅Wt'は、20μm以上30μm以下であってよい。幅Wk'は、40μm以上60μm以下であってよい。
本例の半導体装置100は、図3cに示す通り、境界部90において、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、半導体基板10の深さ方向において重なる。境界部90において、トランジスタ部70と接するトランジスタ側領域には第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられ、第2下面側ライフタイム制御領域75−1が設けられていなくてよい。境界部90において、ダイオード部81と接するダイオード側領域には第2下面側ライフタイム制御領域75−1が設けられ、第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられていなくてよい。境界部90において、トランジスタ側領域とダイオード側領域との間の中間領域には、第1下面側ライフタイム制御領域74と第2下面側ライフタイム制御領域75−1の両方が設けられてよい。本例の半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が境界部90においてZ軸方向に重なるので、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82へ移動する正孔の一部は、再結合して消滅する。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
本例の半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、境界部90からダイオード部81にわたってY軸方向に連続して設けられる。このため、第1下面側ライフタイム制御領域74をダイオード部81に設けなくても、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、図3aに示す半導体装置100と同様に、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
本例の半導体装置100は、図3aに示す半導体装置100と同様に、第2下面側ライフタイム制御領域75−1の端部Klb2が、上面側ライフタイム制御領域72の端部Klsよりも、Y軸方向においてダイオード部81側に設けられる。このため、図3aに示す半導体装置100と同様に、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
本例の半導体装置100は、コレクタ領域22が、図3cにおいてr−r'線で示すように、端部Klsから端部Klbへ至る経路の延長線上に設けられる。このため、図3aに示す半導体装置100と同様に、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。第1下面側ライフタイム制御領域74も、当該経路の延長線上に設けられてよい。
本例の半導体装置100は、端部Rにおいて、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、Z軸方向において重ならない。本例の半導体装置100は、境界部90からダイオード部81にわたってY軸方向に連続して第2下面側ライフタイム制御領域75−1が設けられる。このため、第1下面側ライフタイム制御領域74をダイオード部81に設けなくても、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、図3aに示す半導体装置100と同様に、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
本例の半導体装置100は、図3aに示す半導体装置100と同様に、第1下面側ライフタイム制御領域74は、トランジスタ部70から境界部90の一部の領域まで、Y軸方向に連続して設けられてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74は、境界部90の一部とダイオード部81では、設けられなくてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74が、境界部90の一部に設けられないことで、境界部90のコレクタ領域22からダイオード部81への正孔の注入が阻害されない。このため、ダイオード部81のソフトリカバリ特性を良好にできる。
図4aは、図1aにおけるa−a'断面の他の一例を示す図である。図4aに示す半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74が、トランジスタ部70から、ダイオード部81のうち境界部90に接する一部の領域まで、Y軸方向に連続して設けられる点で、図3aに示す半導体装置100と異なる。第1下面側ライフタイム制御領域74のY軸方向の端部Krb1および第2下面側ライフタイム制御領域75−1のY軸方向の端部Krb2は、ダイオード部81に配置されている。端部Krb1および端部Krb2は、Y軸方向における位置が一致してよいが、異なってもよい。
本例の半導体装置100は、図4aに示す通り、端部Sおよび端部Rの双方において、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、半導体基板10の深さ方向において重なる。本例の第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、Y軸方向において、トランジスタ部70のうち境界部90に接する領域と、境界部90全体と、ダイオード部81のうち境界部90に接する領域において、Z軸方向に重なっている。このため、トランジスタ部70および境界部90から、ダイオード部81のカソード領域82の端部Rの近傍に流れる正孔が、図3aおよび図3cに示す半導体装置100よりも、再結合して消滅しやすくなる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を、図3aおよび図3cに示す半導体装置100よりも改善できる。
図4bは、図1aにおけるa−a'断面の他の一例を示す図である。図4bに示す半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74が、トランジスタ部70から、ダイオード部81のうち境界部90に接する一部の領域まで、Y軸方向に連続して設けられる点で、図3cに示す半導体装置100と異なる。第1下面側ライフタイム制御領域74のY軸方向の端部Krb1および第2下面側ライフタイム制御領域75−1のY軸方向の端部Krb2は、ダイオード部81に配置されている。端部Krb1および端部Krb2は、Y軸方向における位置が一致してよいが、異なってもよい。
本例の半導体装置100は、図4bに示す通り、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、端部Rにおいて、半導体基板10の深さ方向に重なる。本例の第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、Y軸方向において、境界部90のうちダイオード部81に接する領域と、ダイオード部81のうち境界部90に接する領域において、Z軸方向に重なっている。このため、トランジスタ部70および境界部90から、ダイオード部81のカソード領域82の端部Rの近傍に流れる正孔が、図3aおよび図3cに示す半導体装置100よりも、再結合して消滅しやすくなる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を、図3aおよび図3cに示す半導体装置100よりも改善できる。
図5aは、図1aにおけるa−a'断面の他の一例を示す図である。図5aに示す半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75が、Z軸方向に異なる深さで複数設けられる点で、図3aに示す半導体装置100と異なる。図5aは、第2下面側ライフタイム制御領域75が4つ設けられる一例を示している。本例では、複数の第2下面側ライフタイム制御領域75を、下面23側から順番に、第2下面側ライフタイム制御領域75−1、75−2、75−3、75−4とする。
それぞれの第2下面側ライフタイム制御領域75は、図5aに示すように、トランジスタ部70内に端部Klbを有する。より下面23側に設けられた第2下面側ライフタイム制御領域75の端部Klbの方が、より上面21側に設けられた第2下面側ライフタイム制御領域75の端部Klbよりも、Y軸方向においてダイオード部81側に設けられてよい。即ち、図5aの破線t−t'で示すように、より下面23側に配置された端部Klbほど、Y軸方向においてダイオード部81側に配置されてよい。
それぞれの第2下面側ライフタイム制御領域75は、図5aに示すように、ダイオード部81内に端部Krbを有する。より下面23側に設けられた第2下面側ライフタイム制御領域75の端部Krbの方が、より上面21側に設けられた第2下面側ライフタイム制御領域75の端部Krbよりも、トランジスタ部70から離れて設けられてよい。即ち、図5aの破線u−u'で示すように、より下面23側に配置された端部Krbほど、Y軸方向においてトランジスタ部70から離れて配置されてよい。
本例の半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75の端部Klbが、上面側ライフタイム制御領域72の端部Klsよりもダイオード部81側に設けられている。また、複数の第2下面側ライフタイム制御領域75の複数の端部Klbは、下面23に近いほど、ダイオード部81側に設けられる。このため、ダイオード部81の動作時に、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。なお、複数の第2下面側ライフタイム制御領域75のY軸方向のそれぞれの長さは、相互に異なっていてもよい。
本例の半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74のダイオード部81側のY軸方向の端部Krb1が、境界部90に設けられる。本例の半導体装置100は、端部Sにおいて、第1下面側ライフタイム制御領域74および2つ以上の第2下面側ライフタイム制御領域75が、Z軸方向において重なる。端部Sにおいては、全ての(本例では4つ)第2下面側ライフタイム制御領域75がZ軸方向において重なってよい。本例においては、第2下面側ライフタイム制御領域75が複数設けられるので、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82へ移動する正孔の一部は、図3aに示す半導体装置100よりも再結合して消滅しやすくなる。このため、本例の半導体装置100は、図3aに示す半導体装置100よりも、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
本例では、図3aおよび図3cに示す半導体装置100と同様に、第1下面側ライフタイム制御領域74は、トランジスタ部70から境界部90まで、Y軸方向に連続して設けられてよい。また、第1下面側ライフタイム制御領域74は、ダイオード部81に接する境界部90の領域と、ダイオード部81には設けられなくてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74が、境界部90の一部およびダイオード部81に設けられないことで、境界部90のコレクタ領域22からダイオード部81へ正孔を注入できる。このため、ダイオード部81のソフトリカバリ特性を良好にできる。
図5bは、図5aのd−d'断面における上面側ライフタイム制御領域72、第1下面側ライフタイム制御領域74および複数の第2下面側ライフタイム制御領域75のライフタイムキラー濃度分布を示す図である。図5bにおいて縦軸は、ライフタイムキラー濃度を示す対数軸である。横軸は、半導体基板10の深さ方向における位置を示す線形軸である。下面23側に設けられた第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度P2は、第1下面側ライフタイム制御領域74よりも上面21側に設けられた複数の第2下面側ライフタイム制御領域75のライフタイムキラー濃度P3−1、P3−2、P3−3、P3−4のいずれよりも高くてよい。また、複数の第2下面側ライフタイム制御領域75に関しては、より下面23側に設けられた第2下面側ライフタイム制御領域75ほど、ライフタイムキラー濃度P3が高くてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度P2は、第2下面側ライフタイム制御領域75のライフタイムキラー濃度P3のうちの最大濃度(本例ではP3−1)の2倍から5倍高くてよい。
本例の半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度P2を、第2下面側ライフタイム制御領域75のライフタイムキラー濃度P3よりも高く、且つ、複数の第2下面側ライフタイム制御領域75のライフタイムキラー濃度P3を下面23側ほど高くしている。本例の半導体装置100は、リーク電流に寄与しやすい上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度P1を維持しつつ、半導体基板10全体のライフタイムキラー濃度を高めることができる。これにより、トランジスタ部70のリーク電流特性を維持しつつ、トランジスタ部70のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフを調整できる。
なお、複数の第2下面側ライフタイム制御領域75のライフタイムキラー濃度P3は、上面21側から下面23側にかけて、全体的に高くなっていればよい。即ち、第2下面側ライフタイム制御領域75−3のライフタイムキラー濃度P3−3が、第2下面側ライフタイム制御領域75−2のライフタイムキラー濃度P3−2より高い等、局所的にライフタイムキラー濃度の高低が逆になっていてもよい。複数の第2下面側ライフタイム制御領域75のライフタイムキラー濃度P3のうち、最も下面23側の第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度P3−1が最大値であってよい。複数の第2下面側ライフタイム制御領域75のライフタイムキラー濃度P3のうち、最も上面21側の第2下面側ライフタイム制御領域75−4のライフタイムキラー濃度P3−4が最小値であってよい。
また、ライフタイムキラー濃度の分布は、各ピーク濃度P3の間に谷の部分を有する。ライフタイムキラー濃度のそれぞれの谷の部分の濃度の極小値V3は、下面23側ほど高くてよい。さらに、最も下面23側に設けられる第1下面側ライフタイム制御領域74の濃度のピークP2から下面23までの間におけるライフタイムキラー濃度の極小値は、複数のピークP3の間におけるそれぞれの谷の部分の濃度の極小値V3より高くてよい。
また、それぞれの谷の部分の濃度の極小値V3は、下面23側の谷の部分の濃度が、上面21側の谷の部分の濃度より全体的に高くなっていればよい。即ち、第2下面側ライフタイム制御領域75―3と第2下面側ライフタイム制御領域75−4との間の谷の部分のライフタイムキラー濃度が、第2下面側ライフタイム制御領域75―2と第2下面側ライフタイム制御領域75−3との間の谷の部分のライフタイムキラー濃度よりも高い等、局所的にライフタイムキラー濃度の高低が逆になっていてもよい。複数の谷の部分のライフタイムキラー濃度V3のうち、最も下面23側の谷のライフタイムキラー濃度V3−1が最大値であってよい。複数の谷の部分のライフタイムキラー濃度V3のうち、最も上面21側の谷のライフタイムキラー濃度V3−4が最小値であってよい。
第2下面側ライフタイム制御領域75−4のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−4は、第2下面側ライフタイム制御領域75−3のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−3より大きくてよい。第2下面側ライフタイム制御領域75−3のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−3は、第2下面側ライフタイム制御領域75−2のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−2より大きくてよい。第2下面側ライフタイム制御領域75−2のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−2は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−1より大きくてよい。第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−1は、第1下面側ライフタイム制御領域74のライフタイムキラー濃度分布の幅w2より大きくてよい。上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度分布の幅w1は、第2下面側ライフタイム制御領域75−4のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−4より大きくてよい。上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度分布の幅w1は、第2下面側ライフタイム制御領域75−3のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−3より大きく、第2下面側ライフタイム制御領域75−4のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−4より小さくてもよい。上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度分布の幅w1は、第2下面側ライフタイム制御領域75−2のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−2より大きく、第2下面側ライフタイム制御領域75−3のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−3より小さくてもよい。上面側ライフタイム制御領域72のライフタイムキラー濃度分布の幅w1は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−1より大きく、第2下面側ライフタイム制御領域75−2のライフタイムキラー濃度分布の幅w3−2より小さくてもよい。
図5cは、図1aにおけるa−a'断面の他の一例を示す図である。図5cに示す半導体装置100は、2つ以上の第2下面側ライフタイム制御領域75のY軸方向の端部Klbが、それぞれ境界部90に設けられる点で、図5aに示す半導体装置100と異なる。全ての第2下面側ライフタイム制御領域75のY軸方向の端部Klbが、境界部90に設けられてよい。
本例の半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74および複数の第2下面側ライフタイム制御領域75が、境界部90においてZ軸方向に重なる。本例においても図5aに示す半導体装置100と同様に、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82へ移動する正孔の一部は、各ライフタイム制御領域において再結合して消滅する。このため、本例の半導体装置100は、図5aに示す半導体装置100と同様に、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
図5dは、図1aにおけるa−a'断面の他の一例を示す図である。図5dに示す半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74が、トランジスタ部70からダイオード部81にわたってY軸方向に連続して設けられる点で、図5aに示す半導体装置100と異なる。
本例の半導体装置100は、図5dに示す通り、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75が、トランジスタ部70からダイオード部81にわたってZ軸方向に重なる。このため、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82へ移動する正孔の一部は、再結合して消滅しやすくなる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を、図5aおよび図5cに示す半導体装置100よりも改善できる。本例の第1下面側ライフタイム制御領域74は、ダイオード部81内にY軸方向の端部Krb1を有する。端部Krb1は、それぞれの第2下面側ライフタイム制御領域75の端部Krbに比べて、トランジスタ部70から離れて配置されてよい。つまりダイオード部81において、第1下面側ライフタイム制御領域74は、それぞれの第2下面側ライフタイム制御領域75よりも、Y軸方向に長く設けられていてよい。
図5eは、図1aにおけるa−a'断面の他の一例を示す図である。図5eに示す半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74が、トランジスタ部70からダイオード部81にわたってY軸方向に連続して設けられる点で、図5cに示す半導体装置100と異なる。
本例の半導体装置100は、図5eに示す通り、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、境界部90からダイオード部81にわたってZ軸方向に重なる。このため、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82へ移動する正孔の一部は、図5aおよび図5cに示す半導体装置100よりも、再結合して消滅しやすくなる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を、図5aおよび図5cに示す半導体装置100よりも改善できる。
図6は、図1aにおける半導体装置100において、ウェル領域11の外側に位置するエッジ終端構造部96を含めた上面の一例を示す図である。端部Eは、ウェル領域11のX軸方向負側の端であり、且つエッジ終端構造部96のX軸方向正側の端である。また、端部Fは、エッジ終端構造部96のX軸方向負側の端である。端部Fは、半導体装置100を含む半導体チップの外周端であってよい。図6において、X軸方向負側は半導体チップの外周端側を指し、X軸方向正側は半導体チップの中央側を指す。
エッジ終端構造部96には、ガードリング97が設けられてよい。本例において、ガードリング97はP+型である。ガードリング97は、トランジスタ部70の耐圧維持のために設けられる。ガードリング97は、ウェル領域11のX軸方向負側においては、トランジスタ部70と隣接素子部80の配列方向に延伸して設けられてよい。また、ガードリング97は、半導体基板10の上面視でX軸方向に複数設けられてよい。図6においては、ガードリング97−1からガードリング97−4の4つを明示しているが、4つ以上設けられてもよい。本例において、ガードリング97−4は、ガードリング97のうち、X軸方向の最も負側に設けられるガードリングである。
端部Gは、上面側ライフタイム制御領域72、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75のX軸方向負側の端である。端部Gは、半導体基板10の上面視で、X軸方向の最も負側に設けられるガードリング97−4と、ガードリング97−4にX軸方向正側で隣りあうガードリング97−3とのX軸方向における間に設けられてよい。
上面側ライフタイム制御領域72、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75は、図6に示すように、ウェル領域11の外に、X軸方向に予め定められた長さLで設けられてよい。図6の例では、端部Eから端部GまでのX軸方向における距離がLである。長さLは、半導体基板10の厚さTよりも大きくてよい。長さLは、厚さTの1.2倍以上であってよい。長さLが厚さTよりも大きいことで、トランジスタ部70の耐圧を維持できる。
上面側ライフタイム制御領域72、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75の端部GのX軸方向における位置は、図6において、理解を容易にするため異ならせて示しているが、半導体基板10の上面視で一致してよい。また、上面側ライフタイム制御領域72、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75の端部GのX軸方向における位置は、半導体基板10の上面視で一致しなくてもよい。即ち、上面側ライフタイム制御領域72、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75は、端部Eからウェル領域11の外に、X軸方向に相互に異なる長さで設けられてもよい。
また、第1下面側ライフタイム制御領域74のY軸方向負側の端と、第2下面側ライフタイム制御領域75のY軸方向負側の端のY軸方向における位置は、図6において、理解を容易にするため異ならせて示しているが、半導体基板10の上面視で一致してよい。また、第1下面側ライフタイム制御領域74のY軸方向負側の端と、第2下面側ライフタイム制御領域75のY軸方向負側の端のY軸方向における位置は、半導体基板10の上面視で異なっていてもよい。
図7aは、図1bに示す断面図を、トランジスタ部70をY軸方向に挟む2つの隣接素子部80−1、80−2まで含めて示す図である。トランジスタ部70および隣接素子部80−2の構造は、図1bに示した構造と同様である。つまり、上面側ライフタイム制御領域72−2が、トランジスタ部70のうち隣接素子部80−2に接する一部の領域から、隣接素子部80−2にわたって、Y軸方向に連続して設けられている。
隣接素子部80−1と、隣接素子部80−1に接するトランジスタ部70の領域とにおける各ライフタイム制御領域は、隣接素子部80−2と、隣接素子部80−2に接するトランジスタ部70の領域とにおける各ライフタイム制御領域を、Y軸方向において反転した構造を有する。つまり、上面側ライフタイム制御領域72−1が、トランジスタ部70のうち隣接素子部80−1に接する一部の領域から、隣接素子部80−1にわたって、Y軸方向に連続して設けられている。また、図7aに示す半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74が、隣接素子部80−1から、隣接素子部80−2まで、Y軸方向に連続して、幅Wbbにて設けられている。なお、隣接素子部80−2と、隣接素子部80−1に接するトランジスタ部70の領域とにおける各ライフタイム制御領域の構造は、図1aから図6において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同一であってよい。この場合においても、隣接素子部80−1と、隣接素子部80−1に接するトランジスタ部70の領域とにおける各ライフタイム制御領域は、隣接素子部80−2と、隣接素子部80−2に接するトランジスタ部70の領域とにおける各ライフタイム制御領域を、Y軸方向において反転した構造を有する。
上面側ライフタイム制御領域72−1は、トランジスタ部70において端部Krsを有する。上面側ライフタイム制御領域72−2は、トランジスタ部70において端部Klsを有する。Y軸方向において、端部Krsと端部Klsとの間のトランジスタ部70には、上面側ライフタイム制御領域72が設けられない。
幅WIは、トランジスタ部70のY軸方向における幅である。トランジスタ部70の幅WIは、トランジスタ部70と隣接素子部80−1との境界から、トランジスタ部70と隣接素子部80−2との境界までの幅である。幅WIは、一例として1500μmである。
幅Wsは、トランジスタ部70において、端部Krsから端部KlsまでのY軸方向における幅である。半導体基板10の上面21側に設けられる上面側ライフタイム制御領域72は、トランジスタ部70のリーク電流をもたらし得る。本例においては、幅Wsは、幅WIの95%以上99%以下であってよい。即ち、上面側ライフタイム制御領域72は、幅WIの大半にわたり、設けられなくてよい。これにより、トランジスタ部70のリーク電流を抑制できる。
第1下面側ライフタイム制御領域74は、Y軸方向に幅Wbbにわたって設けられる。幅Wbbは、幅WIの105%以上120%以下であってよい。即ち、第1下面側ライフタイム制御領域74は、Y軸方向においてトランジスタ部70を含む範囲であって、トランジスタ部70の幅WI以上の幅の範囲に設けられてよい。半導体基板10の下面23側に設けられる第1下面側ライフタイム制御領域74は、上面側ライフタイム制御領域72よりもトランジスタ部70のリーク電流への影響が小さい。このため、第1下面側ライフタイム制御領域74をトランジスタ部70のY軸方向全体にわたり設けることで、トランジスタ部70のリーク電流の増大を抑制しつつ、半導体基板10の全体のライフタイムキラーの量を調整できる。
図7bは、図3aに示す断面図を、トランジスタ部70をY軸方向に挟む2つの隣接素子部80−1、80−2まで含めて示す図である。本例では、トランジスタ部70および隣接素子部80−2の各ライフタイム制御領域の構造は、図3aに示した構造と同様である。また、トランジスタ部70および隣接素子部80−1の各ライフタイム制御領域は、トランジスタ部70および隣接素子部80−2の各ライフタイム制御領域をY軸方向に反転した構造を有する。図7bに示す半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1a、75−1bがさらに設けられる点で、図7aに示す半導体装置100と異なる。また、図7bに示す半導体装置100は、第1下面側ライフタイム制御領域74の端部Klb1および端部Krb1が、Y軸方向において境界部90に設けられる点で、図7aに示す半導体装置100と異なる。
本例では、第2下面側ライフタイム制御領域75−1bの端部Klb2が、Y軸方向においてトランジスタ部70に設けられる。また、第2下面側ライフタイム制御領域75−1bの端部Krb2が、Y軸方向においてダイオード部81−2に設けられる。また、第2下面側ライフタイム制御領域75−1aの端部Krb2が、Y軸方向においてトランジスタ部70に設けられる。また、第2下面側ライフタイム制御領域75−1aの端部Klb2が、Y軸方向においてダイオード部81−1に設けられる。
それぞれの第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、下面23を基準として、第1下面側ライフタイム制御領域74よりも深い位置に設けられてよい。それぞれの第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、トランジスタ部70からダイオード部81まで、Y軸方向に連続して設けられてよい。それぞれの第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、Y軸方向においてトランジスタ部70の一部と、隣接素子部80の一部に設けられてよい。第2下面側ライフタイム制御領域75−1bの端部Klb2は、上面側ライフタイム制御領域72−2の端部Klsよりも、配列方向(Y軸方向)における隣接素子部80−2側に設けられてよい。第2下面側ライフタイム制御領域75−1aの端部Krb2は、上面側ライフタイム制御領域72−1の端部Krsよりも、配列方向(Y軸方向)における隣接素子部80−1側に設けられてよい。
本例の半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、Y軸方向において、トランジスタ部70から隣接素子部80まで連続して設けられ、且つトランジスタ部70の一部および隣接素子部80の一部に設けられる。このため、ダイオード部81が動作する場合に、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12から、ダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
幅Wbb'は、第1下面側ライフタイム制御領域74の端部Klb1から端部Krb1までのY軸方向の幅である。本例の第1下面側ライフタイム制御領域74は、端部Klb1および端部Krb1が、Y軸方向において境界部90に設けられる。このため、幅Wbb'は、図7aに示す半導体装置100における幅Wbbよりも小さい。
それぞれの端部Sにおいて、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、半導体基板10の深さ方向において重なってよい。本例の半導体装置100は、端部Sにおいて、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、半導体基板10の深さ方向に重なるので、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82へ移動する正孔の一部は、再結合して消滅する。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
それぞれの端部Rにおいて、第1下面側ライフタイム制御領域74および第2下面側ライフタイム制御領域75−1は、半導体基板10の深さ方向において重ならなくてよい。本例の半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75−1が、トランジスタ部70からダイオード部81にわたってY軸方向に連続して設けられる。このため、第1下面側ライフタイム制御領域74が、Y軸方向にトランジスタ部70からダイオード部81まで設けられなくても、第2下面側ライフタイム制御領域75−1の存在により、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。
図7cは、図5aに示す断面図を、トランジスタ部70をY軸方向に挟む2つの隣接素子部80−1、80−2まで含めて示す図である。本例では、トランジスタ部70および隣接素子部80−2の各ライフタイム制御領域の構造は、図5aに示した構造と同様である。また、トランジスタ部70および隣接素子部80−1の各ライフタイム制御領域は、トランジスタ部70および隣接素子部80−2の各ライフタイム制御領域をY軸方向に反転した構造を有する。図7cに示す半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75が、下面23を基準として、Z軸方向に異なる深さで複数設けられる点で、図7bに示す半導体装置100と異なる。図7cは、第2下面側ライフタイム制御領域75が4つ設けられる一例を示している。
第2下面側ライフタイム制御領域75は、図7cに示すように、下面23側に設けられた第2下面側ライフタイム制御領域75−1の方が、上面21側に設けられた第2下面側ライフタイム制御領域75−4よりも、配列方向(Y軸方向)における隣接素子部80の側に設けられてよい。即ち、第2下面側ライフタイム制御領域75のトランジスタ部70における端部Klbは、下面23側ほど、Y軸方向において隣接素子部80の側に設けられてよい。また、第2下面側ライフタイム制御領域75のダイオード部81における端部Krbは、下面23側ほど、Y軸方向において隣接素子部80の側に設けられてよい。
本例の半導体装置100は、第2下面側ライフタイム制御領域75の端部Klbが、上面側ライフタイム制御領域72の端部Klsよりも、ダイオード部81側に設けられている。また、複数の第2下面側ライフタイム制御領域75の複数の端部Klbは、下面23に近いほどダイオード部81側に設けられる。このため、ダイオード部81の動作時に、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82への正孔の注入を抑制できる。このため、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。
本例の半導体装置100は、複数の第2下面側ライフタイム制御領域75が、Z軸方向に異なる深さで4つ設けられる。このため、トランジスタ部70のエミッタ領域12および境界部90のエミッタ領域12からダイオード部81のカソード領域82へ移動する正孔の一部は、図7bに示す半導体装置100よりも、再結合して消滅しやすくなる。このため、本例の半導体装置100は、図7bに示す半導体装置100よりも、ダイオード部81の逆回復特性を改善できる。なお、複数の第2下面側ライフタイム制御領域75のY軸方向のそれぞれの長さは、相互に異なっていてもよい。
図8は、半導体基板10の上面の構造を示す図である。本明細書では、上面視における半導体基板10の外周の端部を、外周端140とする。上面視とは、半導体基板10の上面側からZ軸と平行に見た場合を指す。
半導体装置100は、活性部120およびエッジ終端構造部96を備える。活性部120は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に半導体基板10の上面と下面との間で主電流が流れる領域である。つまり、半導体基板10の上面から下面、または下面から上面に、半導体基板10の内部を深さ方向に電流が流れる領域である。活性部120は、半導体基板10の上面視においてエミッタ電極が設けられた領域、および、エミッタ電極が設けられた領域に挟まれた領域とすることもできる。
活性部120には、トランジスタ部70および隣接素子部80が設けられている。図8においては、隣接素子部80としてダイオード部81だけを示しているが、ダイオード部81とトランジスタ部70の間には、境界部90が設けられていてよい。各上面図において、トランジスタ部70の領域に記号I、ダイオード部81の領域に記号Fを付す場合がある。図8に示すように、トランジスタ部70およびダイオード部81は、Y軸方向において交互に配置されていてよい。
それぞれのダイオード部81には、半導体基板10の下面23に接する領域にカソード領域82が設けられている。図8においては、カソード領域82が設けられた領域を実線で示している。半導体装置100において、半導体基板10の下面23に接する領域のうちカソード領域82以外の領域は、P+型のコレクタ領域である。
ダイオード部81は、カソード領域82をZ軸方向に投影した領域である。本明細書では、カソード領域82をZ軸方向に投影した領域を、X軸方向に活性部120の端部、または、ゲートランナー48まで伸ばした延長領域83も、ダイオード部81に含める。活性部120において、Y軸方向における両端には、トランジスタ部70が設けられてよい。
エッジ終端構造部96は、半導体基板10の上面において、活性部120と半導体基板10の外周端140との間に設けられる。エッジ終端構造部96は、半導体基板10の上面において活性部120を囲むように環状に配置されてよい。本例のエッジ終端構造部96は、半導体基板10の外周端140に沿って配置されている。
半導体基板10の上面において、エッジ終端構造部96および活性部120の間には、ゲート金属層50が設けられている。ゲート金属層50と半導体基板10との間には層間絶縁膜が設けられているが、図8では省略している。
ゲート金属層50は、半導体基板10の上面視で、活性部120を囲うように設けられてよい。ゲート金属層50は、活性部120の外に設けられるゲートパッド116と電気的に接続される。ゲートパッド116は、ゲート金属層50と、活性部120との間に配置されてよい。ゲート金属層50と活性部120との間には、エミッタ電極と電気的に接続されるエミッタパッド118等のパッドが設けられてよい。ゲート金属層50は、トランジスタ部70に電気的に接続され、トランジスタ部70にゲート電圧を供給する。
ゲートランナー48は、ゲート金属層50と、トランジスタ部70のゲート電極とを電気的に接続する。ゲートランナー48は、ゲート金属層50に沿って設けられてよい。本例のゲートランナー48は、ゲート金属層50に沿って、活性部120を囲んで設けられている。ゲートランナー48は、ゲート金属層50と重なるように設けられてよい。この場合、ゲートランナー48とゲート金属層50との間には層間絶縁膜が設けられてよい。層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールにより、ゲートランナー48とゲート金属層50とが接続される。
ゲートランナー48は、活性部120の上方まで延伸して設けられてよい。ゲートランナー48を活性部120の上方まで設けることで、ゲート金属層50から離れた領域に供給されるゲート電圧の遅延および減衰を抑制できる。少なくとも一つのゲートランナー48は、活性部120をY軸方向に横断して設けられてよい。つまり活性部120は、ゲートランナー48によりX軸方向に分割されてよい。活性部120のそれぞれの分割領域には、トランジスタ部70およびダイオード部81がY軸方向に交互に配置されている。
本例の半導体装置100は、温度センス部110、温度センス配線112および温度測定用パッド114を備える。温度センス部110は、活性部120の上方に設けられる。温度センス部110は、半導体基板10の上面視で、活性部120の中央に設けられてよい。温度センス部110は、活性部120の温度を検知する。温度センス部110は、単結晶または多結晶のシリコンで形成されるPN型温度センスダイオードであってよい。
温度センス配線112は、半導体基板10の上面視で、活性部120の上方に設けられる。温度センス配線112は、温度センス部110と接続される。温度センス配線112は、半導体基板10の上面において活性部120と外周端140との間の領域まで延伸し、温度測定用パッド114と接続される。温度センス配線112は、PN型温度センスダイオードのP型層に電気的に接続するアノード電極の配線112−1と、N型層に電気的に接続するカソード電極の配線112−2とを含んでよい。温度測定用パッド114は、アノードパッド114−1と、カソードパッド114−2とを含んでよい。
図8においては、各ライフタイム制御領域を省略している。それぞれのライフタイム制御領域が設けられる範囲は、図1aから図7cにおいて説明したいずれかの半導体装置100と同一である。
図9は、半導体基板10の上面視において、上面側ライフタイム制御領域72が設けられる範囲を示す図である。図9においては、上面側ライフタイム制御領域72が設けられる範囲に斜線のハッチングを付している。なお図9においては、図8に示した符号の一部を省略しているが、上面側ライフタイム制御領域72以外の構成は、図8において説明した例と同一である。
Y軸方向における上面側ライフタイム制御領域72の範囲は、図1aから図7cにおいて説明したいずれかの半導体装置100と同一である。X軸方向において上面側ライフタイム制御領域72は、ダイオード部81の全体と重なっていてよい。また、上面側ライフタイム制御領域72は、延長領域83の少なくとも一部と重なっていてよい。図9の例では、上面側ライフタイム制御領域72は、延長領域83の全体と重なっている。
上面側ライフタイム制御領域72は、X軸方向において、ゲート金属層50と重なる位置まで延伸して設けられていてよい。上面側ライフタイム制御領域72は、エッジ終端構造部96と重なる位置にも設けられていてよい。本例の上面側ライフタイム制御領域72のX軸方向の端部は、エッジ終端構造部96に配置されている。上面側ライフタイム制御領域72を、X軸方向においてカソード領域82よりも外側まで設けることで、エッジ終端構造部96等からカソード領域82に流れるキャリアを抑制できる。
図10は、半導体基板10の上面視において、第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられる範囲を示す図である。図10においては、第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられる範囲に斜線のハッチングを付している。Y軸方向における第1下面側ライフタイム制御領域74の範囲は、図1aから図7cにおいて説明したいずれかの半導体装置100と同一である。
X軸方向において第1下面側ライフタイム制御領域74は、上面側ライフタイム制御領域72よりも外側まで設けられている。本例において外側とは、外周端140に近い側を指す。第1下面側ライフタイム制御領域74は、上面視において、半導体基板10の全面に設けられてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74を広範囲に設けることで、エッジ終端構造部96等からカソード領域82に流れるキャリアを抑制できる。
図11は、第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられる範囲の他の例を示す図である。Y軸方向における第1下面側ライフタイム制御領域74の範囲は、図1b等に示した例と同様である。つまり、第1下面側ライフタイム制御領域74は、Y軸方向において、トランジスタ部70(または境界部90)に接するダイオード部81の領域には設けられているが、トランジスタ部70(または境界部90)から離れたダイオード部81の領域には設けられていない。図1b等に示すように、Y軸方向において、第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられる範囲と、上面側ライフタイム制御領域72が設けられる範囲は、部分的に重複している。
Y軸方向において、第1下面側ライフタイム制御領域74は、エッジ終端構造部96にも設けられてよい。第1下面側ライフタイム制御領域74は、外周端140まで設けられてもよい。X軸方向において、第1下面側ライフタイム制御領域74の範囲は、上面側ライフタイム制御領域72の範囲と同一であってよく、より広くてもよい。X軸方向において、第1下面側ライフタイム制御領域74は、外周端140まで設けられていてもよい。
図12は、図11の領域Aを拡大した上面図である。領域Aは、活性部120のY軸方向における端部を含む。活性部120のY軸方向の端部には、トランジスタ部70が設けられている。本例では、Y軸方向におけるトランジスタ部70とゲート金属層50との間に、第1終端領域152および第2終端領域154が設けられている。半導体装置100は、第1終端領域152および第2終端領域154の一方だけを備えていてもよい。第1終端領域152および第2終端領域154において、半導体基板10の下面23にはコレクタ領域22が設けられている。
図13は、図12におけるe−e'断面の一例を示す図である。e−e'断面は、ゲート金属層50、第1終端領域152、第2終端領域154およびトランジスタ部70を含むYZ断面である。
第2終端領域154は、Y軸方向においてトランジスタ部70と接している。第2終端領域154は、Y軸方向に配列された複数のダミートレンチ部30が設けられている。第2終端領域154は、第2メサ部62が設けられていてよい。つまり、第2終端領域154には、コンタクト領域15の面積が大きいメサ部が設けられてよい。これにより、第2終端領域154において正孔が引き抜きやすくなる。このため、外周端140側から流れる正孔が、トランジスタ部70のY軸方向の端部近傍に流れるのを抑制できる。
第2終端領域154の少なくとも一部のメサ部は、蓄積領域16が設けられなくてよい。図12および図13の例では、第2終端領域154において、トランジスタ部70側の一部のメサ部には蓄積領域16が設けられ、ゲート金属層50側の一部のメサ部には蓄積領域16が設けられていない。
第2終端領域154の少なくとも一部のダミートレンチ部30は、ウェル領域11の内部に設けられてもよい。図12および図13の例では、第2終端領域154において、ゲート金属層50側の一部のダミートレンチ部30が、ウェル領域11の内部に設けられている。つまり、活性部120において、Y軸方向に配列されたトレンチ部のうち、最も外側に配置されたトレンチ部が、ウェル領域11の内部に設けられている。これにより、比較的に電界が集中しやすいトレンチ部を保護できる。
第1終端領域152は、Y軸方向において第2終端領域154とゲート金属層50間に設けられている。第1終端領域152には、トレンチ部が設けられていない。第1終端領域152の上面には、コンタクト領域15が露出していてよい。第1終端領域152は、X軸方向に延伸する複数のコンタクトホール54を有してよい。コンタクトホール54は、エミッタ電極52と、コンタクト領域15とを接続する。第1終端領域152は、上面視においてウェル領域11と重なって設けられてよい。第1終端領域152におけるコンタクトホール54のX軸方向における長さは、トランジスタ部70におけるコンタクトホール54のX軸方向における長さと同一であってよく、より長くてもよい。
第1終端領域152を設けることで、第2終端領域154の外側でも正孔を引き抜くことができる。このため、外周端140側から流れる正孔が、トランジスタ部70のY軸方向の端部近傍に流れるのを抑制できる。
図14は、図11におけるf−f'断面の一例を示す図である。f−f'断面は、エッジ終端構造部96、ゲート金属層50、第1終端領域152、第2終端領域154、複数のトランジスタ部70および複数のダイオード部81を含むYZ断面である。
エッジ終端構造部96は、複数のガードリング97を有してよい。本例のガードリング97は、半導体基板10の上面21に設けられたP+型の領域である。ガードリング97は、ウェル領域11よりも外側において、活性部120を囲んで設けられている。ガードリング97を設けることで、活性部120からの空乏層を、外周端140の方向に伸ばすことができる。これにより、活性部120の耐圧を向上できる。
エッジ終端構造部96は、複数のフィールドプレート162を有してよい。本例のフィールドプレート162は、導電性の材料で形成されている。フィールドプレート162は、ガードリング97の上方に設けられており、ガードリング97と電気的に接続されてよい。フィールドプレート162に電圧を印加することで、ガードリング97からドリフト領域18に延びる空乏層を広げることができる。フィールドプレート162は、エミッタ電極52と電気的に接続されてよい。
エッジ終端構造部96は、チャネルストッパ164を有してよい。本例のチャネルストッパ164は、半導体基板10の上面21に設けられたN+型の領域である。チャネルストッパ164は、複数のガードリング97よりも外側において、ガードリング97を囲んで設けられている。チャネルストッパ164を設けることで、ガードリング97から伸びる空乏層が、半導体基板10の外周端140に到達することを抑制できる。エッジ終端構造部96は、チャネルストッパ164に接続された電極166を有してよい。電極166は、エミッタ電極52と電気的に接続されていてよい。
当該断面においては、第1下面側ライフタイム制御領域74−aと、第1下面側ライフタイム制御領域74−bとが設けられている。第1下面側ライフタイム制御領域74−bは、図1aから図13において説明した第1下面側ライフタイム制御領域74と同様である。
第1下面側ライフタイム制御領域74−aは、Y軸方向において最も端のトランジスタ部70−aの全体に設けられている。第1下面側ライフタイム制御領域74−aは、トランジスタ部70−aに接するダイオード部81にも設けられている。
第1下面側ライフタイム制御領域74−aは、ゲート金属層50の下方まで連続して設けられてよい。本例の第1下面側ライフタイム制御領域74−aは、Y軸方向において、ゲート金属層50の全体、第1終端領域152の全体、および、第2終端領域154の全体に設けられている。本例の第1下面側ライフタイム制御領域74−aは、エッジ終端構造部96の少なくとも一部には設けられていない。本例のエッジ終端構造部96は、第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられていないキラー無し領域172を有する。キラー無し領域172を設けることで、ダイオード部81が逆回復動作をするときに、ハードリカバリーを抑え、逆回復波形の発振を抑えることができる。
キラー無し領域172は、第1下面側ライフタイム制御領域74が設けられていない領域を、Z軸方向に投影した領域である。本例のキラー無し領域172には、他のライフタイム制御領域も設けられていない。キラー無し領域172は、Y軸方向において、エッジ終端構造部96の幅の半分以上にわたって設けられてよく、エッジ終端構造部96の全体にわたって設けられてもよい。キラー無し領域172は、半導体基板10の外周端140と接していてよい。
図8から図14において説明した半導体装置100においては、第2下面側ライフタイム制御領域75を省略しているが、図8から図14において説明した半導体装置100も、図1aから図7cにおいて説明したいずれかの第2下面側ライフタイム制御領域75を有してよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。