本発明の望ましい実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は発明の実施形態を例示するものであり、本発明はこれに限定して解釈されるものではなく、本発明の目的・効果を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
<塗液含有強化繊維テープの製造方法の概略>
まず、図1a〜dにより本発明の塗液含有強化繊維テープの製造方法の概略を述べる。図1aは本発明の一実施形態に係る塗液含有強化繊維テープの製造方法および装置を示す概略断面図である。塗工装置100には、強化繊維テープ1aを実質的に鉛直方向下向きZに走行させる走行機構である搬送ロール13、14と、搬送ロール13、14の間に設けられ、塗液2が溜められた塗布部20が具備されている。また、塗工装置100の前後には、強化繊維1を巻き出すクリール11と、巻き出された強化繊維1を一方向に配列した強化繊維テープ1a(図1では紙面奥行き方向に配列)を得る配列装置12と塗液含有強化繊維テープ1bの巻取り装置15を備えることができ、また、図示していないが塗工装置100には塗液の供給装置が具備されている。さらに、必要に応じ、離型テープ3を供給する供給装置16を備える。なお、本発明において、塗液含有強化繊維テープとは、塗液が強化繊維テープに付与されたものを言い、塗液は表面に存在していてもよいし、塗液の一部、あるいは全部が強化繊維テープ内部に含浸されていてもよい。また図1aには塗工装置が鉛直方向に走行している機構を示しているが、後述の通り、図1bのように水平方向に走行してもよい。
また、図1cは図1aの塗工装置100の前の工程に焼成工程を有している塗液含有強化繊維テープの製造方法の概略図である。本発明の製造方法においては、強化繊維テープとして炭素繊維テープを用い、最高到達温度が1000〜3000℃となる焼成工程11から塗液が付与される工程までが連続的であってもよい。なお、ここでいう「連続的」とは、炭素繊維が焼成されてからテープ状に整えられて強化繊維テープとされ、また、塗液が該強化繊維テープに付与されるまでの間で炭素繊維の切断工程を有しないことをいう。すなわち、炭素繊維が製造される線速度と塗布部において塗液が付与される線速度と塗液含有強化繊維テープが巻き取られる時の線速度は原則的に等しくなる。ここで、塗液が付与される前に、後述する表面処理工程、サイジング工程、乾燥工程や炭素繊維テープの平滑化装置や拡幅装置を経ることができる。炭素繊維は焼成工程11を出て塗工装置100に導かれる。塗工装置100には、図1aと同様に、炭素繊維からなる強化繊維テープ1aを塗工装置100の内部へ導く搬送ロール13、14と、搬送ロール13、14の間に設けられ、塗液2が溜められた塗布部20が具備されている。また、図1aと同様に、塗工装置100の後には、巻取り装置15を備えることができ、また、図示していないが塗工装置100には塗液の供給装置が具備されている。さらに、必要に応じ、図1aと同様に、離型テープ3を供給する供給装置16を備える。また図1cには塗工装置が鉛直方向に走行している機構を示しているが、後述のとおり、図1dのように強化繊維テープは水平方向に走行させてもよい。なお、焼成された炭素繊維をテープ状に整える際には、焼成工程の出口において炭素繊維の走行経路が整然と配列されていれば特別の装置を用いなくとも得ることができるので、図1c、図1dには焼成された炭素繊維をテープ状に整える装置の図示はされていない。もちろん、炭素繊維をテープ状に整えるにあたり、ガイドやロールなどの繊維の配列を整える機構を用いることもできる。
<強化繊維テープ>
ここで、強化繊維1としては、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、金属酸化物繊維、金属窒化物繊維、有機繊維(アラミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維など)などを例示することができるが、炭素繊維を用いることが、FRPの力学特性、軽量性の観点から好ましい。
強化繊維テープとしては、複数本の強化繊維を一方向に面上で配列させた一方向材(UD基材)や、強化繊維を多軸で配列させる、またはランダム配置してテープ化した強化繊維ファブリックが挙げられる。
UD基材を形成する方法は公知の方法を用いることができ、特に制限は無いが、単繊維をあらかじめ配列させた強化繊維束を形成し、この強化繊維束を更に配列させて強化繊維テープを形成させることが、工程効率化、配列均一化の観点から好ましい。例えば炭素繊維では、テープ状の強化繊維束である「トウ」がボビンに巻かれているが、ここから引き出されたテープ状の強化繊維束を1糸条で用いる、あるいはこれらを複数糸条配列させて強化繊維テープを得ることができる。また、クリールにかけられたボビンから引き出された強化繊維束を整然と並べ、強化繊維テープ中で強化繊維束の望ましくない重なりや折りたたみ、強化繊維束間の隙間を無くするための強化繊維配列機構を有することが好ましい。強化繊維配列機構としては公知のローラーやくし型配列装置などを用いることができる。また、予め配列した強化繊維テープを複数枚重ねることも強化繊維間の隙間を減じる観点から有用である。なお、クリールには強化繊維を引き出す際に張力制御機構が付与されていることが好ましい。張力制御機構としては、公知のものを使用可能であるが、ブレーキ機構などが挙げられる。また、糸道ガイドの調整などによっても張力を制御することができる。本発明では、所望の強化繊維テープの幅となるように、強化繊維束を配列させることができる。
一方、強化繊維ファブリックの具体例としては、織物や編物などの他、強化繊維を2次元で多軸配置したものや、不織布やマット、紙など強化繊維をランダム配向させたものを挙げることができる。この場合、強化繊維はバインダー付与、交絡、溶着、融着などの方法を利用してテープ化することもできる。織物としては、平織、ツイル、サテンの基本織組織の他、ノンクリンプ織物やバイアス構造、絡み織、多軸織物、多重織物などを用いることができる。バイアス構造とUD基材を組み合わせた織物は、UD構造により塗布・含浸工程での引っ張りでの織物の変形を抑制するだけでなく、バイアス構造による擬似等方性も併せ持っており、好ましい形態である。また、多重織物では織物上面/下面、また織物内部の構造・特性をそれぞれ設計できる利点がある。編物では塗布・含浸工程での形状安定性を考慮すると経編が好ましいが、筒状編み物であるブレードを用いることもできる。強化繊維ファブリックをテープ化する場合には、最初から所望の幅となるように強化繊維ファブリックを作製してもよいし、強化繊維ファブリックを形成後、所望の幅となるようにカットすることもできる。
これらの中で、FRPの力学特性を優先させる場合には、UD基材を用いることが好ましく、UD基材は、強化繊維を一方向にテープ状に配列させる既知の方法により作製することができる。
<塗液含有強化繊維テープの使用方法について>
近年では、プリプレグの積層工程を効率化するため、プリプレグテープを自動積層していくAFP(Automated Fiber Placement)と呼ばれる装置が航空機用途などで広く用いられるようになってきており、これに適合した幅とするためには、テープ幅は3〜30mm(3mm以上かつ30mm以下)とすることが重要である。また、圧力容器などでは、従来からフィラメントワイディングと呼ばれる製造方法が用いられており、この時には強化繊維束1糸条(トウ)に、樹脂槽中でマトリックス樹脂を付与し、そのまま圧力容器ライナーにこれを巻きつけている。この用途に用いる場合では、強化繊維テープ幅は1糸条のトウと同程度(通常は6〜12mm程度)となるが、場合によっては拡幅処理を施すことで、1糸条であっても幅30mmまで広くすることも可能である。幅広の強化繊維テープとすると、塗液含有強化繊維テープを積層した時に、テープ間の隙間、すなわち強化繊維が無い部分が発生し難く、好ましい。
<炭素繊維テープ>
本発明における炭素繊維テープは、強化繊維である炭素繊維をテープ状としたもので、炭素繊維1糸束から形成されてもよいし、複数の炭素繊維糸条から形成されてもよい。
炭素繊維としては、アクリル系,ピッチ系,セルロース系などの各種繊維を前駆体として公知の方法で得られた、いわゆる炭化糸,黒鉛糸,またこれらを表面酸化処理したものや、これらにサイジング処理したものが含まれる。
炭素繊維の中でも、ポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法を例にして説明する。炭素繊維の前駆体繊維を得るための紡糸方法としては、湿式、乾式および乾湿式等の紡糸方法を用いることができる。
湿式紡糸方法において、紡糸原液には、ポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合体を溶剤に溶解した溶液を用いることができる。溶剤としてはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの有機溶剤や、硝酸、ロダン酸ソーダ、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液を使用する。
上記の紡糸原液を口金に通して紡糸し、紡糸浴中に吐出して凝固させる。紡糸浴としては、紡糸原液の溶剤として使用した溶剤の水溶液を用いることができる。紡糸浴中で凝固した繊維を、水洗および、延伸して前駆体繊維を得る。得られた前駆体繊維に焼成工程として耐炎化処理と炭化処理を行い、必要によってはさらに黒鉛化処理を実施することにより炭素繊維を得る。焼成工程における加熱温度は最高到達温度1000〜3000℃において実施する。
炭素繊維テープは、前駆体繊維をその断面形状を扁平な形状、例えば長楕円形、に成形し、焼成して得ることや、得られた炭素繊維糸束をその断面形状を扁平な形状に成形して得ることや複数の炭素繊維糸条を並べてテープ状の形状として得ることなどの方法で得ることができる。
<炭素繊維テープの表面処理>
炭素繊維テープは炭素繊維単糸ごとに、マトリックス樹脂との接着性を向上させるために、必要に応じて、酸化処理が施され、酸素含有官能基が表面に導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられる。生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が一般的に用いられる。
液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカリ性電解液が挙げられる。酸性電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、ホウ酸、および炭酸等の無機酸;酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸;または硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。アルカリ性電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液;アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。
マトリックス樹脂と炭素繊維表面の酸素含有官能基との共有結合形成が促進され、接着性がさらに向上するという観点から、炭素繊維テープをアルカリ性電解液で電解酸化処理した後、または炭素繊維テープを酸性水溶液中で電解酸化処理し、続いてアルカリ性水溶液で洗浄した後、マトリックス樹脂を塗布することがある。
洗浄に用いられるアルカリ性水溶液としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液;アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。炭素繊維テープをアルカリ性水溶液で洗浄する方法としては、例えば、ディップ法とスプレー法を用いることができる。
炭素繊維テープを液相電解酸化処理またはアルカリ性水溶液で洗浄した後、水洗および乾燥することがある。
<サイジング工程>
得られた炭素繊維テープに集束性を付与するために、炭素繊維テープにサイジング処理をすることもできる。サイジング剤の付与方法は特に限定されないが、後述する塗工装置100を用いることで、塗布量の精度良く、またテープ内部までサイジング剤を炭素繊維テープに塗布できるため、好ましい。また塗工装置100を用いる場合、図1aの通り鉛直方向に炭素繊維テープを走行させても良いし、図1bのように水平方向に炭素繊維テープを走行させてもよい。
サイジング剤としては、水溶液もしくは水分散液,または有機溶剤溶液として用いられるものであって、炭素繊維テープに集束性を与え、耐屈曲性や耐擦過性を向上させ、かつ該炭素繊維テープを複合材料の補強繊維として使用した場合に良好な複合材料特性が得られるサイジング剤であればよい。
水溶液および/または水分散液として用いられるサイジング剤には、例えばポリアルキレンオキサイドおよびその誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂、あるいは各種界面活性剤を添加することによって水分散性となるエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など公知の各種樹脂が挙げられる。
また、有機溶剤溶液として用いられるサイジング剤には、例えばグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂肪族エポキサイド型などのエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂など公知の各種樹脂が挙げられる。
有機溶剤としては、上記樹脂を安定に溶解させるものであればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、四塩化炭素、トリクレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、あるいはセロソルブなどの変性エーテル類などが挙げられるが、特に、上記の樹脂に限定されるものではない。沸点、工業的な取扱いの良さで適宜選択すれば良い。なお、有機溶媒系サイジング剤は2種類以上を混合して用いてもよい。
具体的には、(A)エポキシ樹脂、(B)不飽和二塩基酸とビスフェノ−ル類のアルキレンオキシド付加物との縮合物および(C)フェノ−ル類のアルキレンオキシド付加物とからなるサイジング剤が挙げられ、さらに具体的に挙げれば、(A)のエポキシ樹脂として用いられるものとしては、グリシジル型エポキシ樹脂、非グリシジル系(過酢酸系)エポキシ樹脂が挙げられる。グリシジル型エポキシ樹脂としてはビスフェノ−ル型のもの、たとえばエピクロルヒドリンとビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF,2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタンなどのビスフェノ−ル類との縮合によって得られるものなどがあり、フェノ−ル系のもの、たとえばノボラック型フェノ−ル樹脂にエピクロルヒドリンを作用させたものなどがあり、エステル系のもの、たとえばメタクリル酸グリシジルエステルとエチレン性二重結合含有単量体(たとえばアクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル)との共重合物などがあげられる。また、非グリシジル系エポキシ樹脂としては 環状樹脂族エポキシ樹脂、エポキシ化ブタジエン、エポキシ化グリセライド、エポキシ化大豆油などがあげられる。
(B)の縮合物において不飽和二塩基酸としてはフマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などがあげられ、ビスフェノ−ル類のアルキレンオキシド付加物としては(A)の項で述べたビスフェノ−ル類のアルキレンオキシド(エチレンオキシド(EC)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド(BO)など)付加物(2種以上のアルキレンオキシド付加物の場合はランダムまたはブロック付加物)があげられる。
(C)成分としては単環フェノ−ル(芳香環1個有するフェノ−ル)たとえば、フェノ−ル、アルキル基を1個または複数有するフェノ−ル、多価フェノ−ルおよび多環フェノ−ル(芳香環を2個以上有するフェノ−ル)、たとえばフェニルフェノ−ル、クミルフェノ−ル、ベンジルフェノ−ル、ハイドロキノンモノフェニルエ−テル、ナフト−ル、ビスフェノ−ル、単環フェノ−ルなどとスチレン類(スチレン、α−メチルスチレンなど)との反応生成物(スチレン化フェノ−ル類という)から選ばれるフェノ−ル類のアルキレンオキシド(たとえばEO、PO、BO)付加物(2種以上のアルキレンオキシド付加物の場合はブロックまたはランダム付加物があげられる。
サイジング剤の水溶液、水分散液あるいは有機溶媒溶液はサイジング剤の特性に応じて従来公知の方法で調合すればよい。また、炭素繊維テープはサイジング剤含有液を塗布した場合、熱処理し、サイジング剤含有液に含まれる溶媒を除去および乾燥することにより得ることができる。
このように、本発明の製造方法は炭素繊維テープにサイジング剤を付与するための方法として用いることができる。また、サイジング剤が付与された炭素繊維テープに、後述するように、樹脂を塗工するための方法としても用いることができる。
<強化繊維の張力制御>
本発明の製造方法においては、クリールに架けられた強化繊維を均一に引き出し、強化繊維テープ、ひいては塗液含有強化繊維テープの幅精度を向上させるために、強化繊維をクリールから引き出す時の張力を制御することが好ましい。このためには、糸条を引き揃えてニップし、駆動装置により後工程の設備と速度差を持たせて張力を制御する方法や特開2005−248360号公報記載のように方向転換ガイドロールを駆動させる方法、特開2004−162055号公報記載のようにパウダーブレーキを連結したロールを用いる方法などを挙げることができる。また、強化繊維ボビンを架けるスピンドル部分にブレーキ機構を備えているクリールを用いることもできる。ブレーキ機構としては、バンドブレーキや、電磁式などがある。電磁式としては永久磁石を用いてなる磁力式トルク制御設備をスピンドル軸に設ける方法などがある。電磁式ブレーキ機構としては、例えば特開2012−184076号公報などに記載されているものを例示できる。さらにダンサロールを介して張力制御を行うこともできる。これらのうち、電磁式ブレーキ機構を備えたクリールを用いることが、張力制御の精密性、製造装置のコンパクト化の観点から好ましい。
<強化繊維テープの平滑化>
本発明においては、強化繊維テープ表面の平滑性を高くすることで、塗布部での塗布量の均一性を向上させることができる。このため、強化繊維テープを平滑化処理した後、液溜り部に導くことが好ましい。平滑化処理法は特に制限は無いが、対向ロールなどで物理的に押しつける方法や空気流を用いて強化繊維を動かす方法などを例示できる。物理的に押しつける方法は簡便かつ、強化繊維の配列を乱しにくいため好ましい。より具体的にはカレンダー加工などを用いることができる。空気流を用いる方法は擦過が起こりにくいだけでなく、強化繊維テープを拡幅する効果もあり好ましい。
<強化繊維テープの拡幅>
また、本発明において、強化繊維テープを拡幅処理した後、塗布部に導くことも、広い塗液含有強化繊維テープを効率的に製造できる観点から好ましい。テープ幅が広いとプリプレグテープ積層時のカバー面積が大きくなり、積層時の隙間を抑制できるメリットがあると考えられる。拡幅処理方法は特に制限は無いが、機械的に振動を付与する方法、空気流により強化繊維束を拡げる方法などを例示できる。機械的に振動を付与する方法としては、例えば特開2015−22799号公報記載のように、振動するロールに強化繊維シートを接触させる方法がある。振動方向としては、強化繊維テープの進行方向をX軸とすると、Y軸方向(水平方向)、Z軸方向(垂直方向)の振動を与えることが好ましく、水平方向振動ロールと垂直方向振動ロールを組み合わせて用いることも好ましい。また振動ロール表面は複数の突起を設けておくと、ロールでの強化繊維の擦過を抑制でき、好ましい。空気流を用いる方法としては、例えば、SEN−I GAKKAISHI,vol.64,P−262−267(2008).記載の方法を用いることができる。
<強化繊維テープの予熱>
また、本発明において、塗液温度を室温より高く設定する場合には、強化繊維テープを加熱した後、液溜り部に導くと、テープの温度低下を抑制し、塗液の粘度均一性を向上させられるため好ましい。強化繊維テープは塗液温度近傍まで加熱されることが好ましいが、このための加熱手段としては、空気加熱、赤外線加熱、遠赤外線加熱、レーザー加熱、接触加熱、熱媒加熱(スチームなど)など多様な手段を用いることができる。中でも赤外線加熱は装置が簡便であり、また強化繊維テープを直接加熱できるため、走行速度が速くても所望の温度まで効率よく加熱が可能であり、好ましい。
<塗液>
本発明で用いる塗液は付与する目的に応じ適宜選択することができる。塗液としては、前述の通りサイジング剤や表面改質剤など集束性や機能性を付与する剤を含む液体の他、プリプレグテープとするためのマトリックス樹脂などを例示することができる。
本発明で用いるマトリックス樹脂は、後述する各種樹脂や粒子、硬化剤、更に各種添加剤を含む、樹脂組成物として用いることができる。本発明をプリプレグテープの製造に適用する場合には、強化繊維テープに塗液であるマトリックス樹脂が含浸した状態となり、そのままプリプレグテープとして積層、成形してFRPからなる部材を得ることができる。含浸度は、塗布部の設計や、塗布以降の追含浸により制御することができる。マトリックス樹脂としては、用途に応じ適宜選択可能であるが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることが一般的である。マトリックス樹脂は、加熱し溶融させた溶融樹脂でも室温でマトリックス樹脂のものでも良い。また、溶媒を用いて溶液やワニス化したものでも良い。なお、本発明をプリプレグテープの製造に用いる場合には、塗液含有強化繊維テープをプリプレグテープと言い換える場合がある。
マトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などFRPに一般的に使用されるものを用いることができる。また、これらは室温で液体であればそのまま用いても良いし、室温で固体や粘稠液体であれば、加温して低粘度化する、あるいは溶融し融液として用いても良いし、溶媒に溶解し溶液やワニス化して用いても良い。
熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素・炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合、カルボニル結合から選ばれる結合を有するポリマーを用いることができる。具体的には、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミドイミド(PAI)などを例示できる。航空機用途などの耐熱性が要求される分野では、PPS、PES、PI、PEI、PSU、PEEK、PEKK、PAEKなどが好適である。一方、産業用途や自動車用途などでは、成形効率を上げるため、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンやPA、ポリエステル、PPSなどが好適である。これらはポリマーでも良いし、低粘度、低温塗布のため、オリゴマーやモノマーを用いても良い。もちろん、これらは目的に応じ、共重合されていても良いし、各種を混合しポリマーブレンドやポリマーアロイとして用いることもできる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アセチレン末端を有する樹脂、ビニル末端を有する樹脂、アリル末端を有する樹脂、ナジック酸末端を有する樹脂、シアン酸エステル末端を有する樹脂があげられる。これらは、一般に硬化剤や硬化触媒と組合せて用いることができる。また、適宜、これらの熱硬化性樹脂を混合して用いることも可能である。
本発明に適した熱硬化性樹脂として、耐熱性、耐薬品性、力学特性に優れていることからエポキシ樹脂が好適に用いられる。特に、アミン類、フェノール類、炭素・炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、アミン類を前駆体とするエポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体、フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、炭素・炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂としては脂環式エポキシ樹脂等があげられるが、これに限定されない。またこれらのエポキシ樹脂をブロモ化したブロモ化エポキシ樹脂も用いられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンに代表される芳香族アミンを前駆体とするエポキシ樹脂は耐熱性が良好で強化繊維との接着性が良好なため本発明に最も適している。
熱硬化性樹脂は硬化剤と組合せて、好ましく用いられる。例えばエポキシ樹脂の場合には、硬化剤はエポキシ基と反応しうる活性基を有する化合物であればこれを用いることができる。好ましくは、アミノ基、酸無水物基、アジド基を有する化合物が適している。具体的には、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が適している。具体的に説明すると、ジシアンジアミドはプリプレグの保存性に優れるため好んで用いられる。またジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好な硬化物を与えるため本発明には最も適している。アミノ安息香酸エステル類としては、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエートやネオペンチルグリコールジ−p−アミノベンゾエートが好んで用いられ、ジアミノジフェニルスルホンに比較して、耐熱性に劣るものの、引張強度に優れるため、用途に応じて選択して用いられる。また、もちろん必要に応じ硬化触媒を用いることも可能である。また、マトリックス樹脂のポットライフを向上させる意味から、硬化剤や硬化触媒と錯体形成可能な錯化剤を併用することも可能である。
また本発明では、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を混合して用いることも好適である。熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物は、熱硬化性樹脂を単独で用いた場合より良好な結果を与える。これは、熱硬化性樹脂が、一般に脆い欠点を有しながらオートクレーブによる低圧成型が可能であるのに対して、熱可塑性樹脂が、一般に強靭である利点を有しながらオートクレーブによる低圧成型が困難であるという二律背反した特性を示すため、これらを混合して用いることで物性と成形性のバランスをとることができるためである。混合して用いる場合は、プリプレグテープを硬化させてなるFRPの力学特性の観点から熱硬化性樹脂を50質量%より多く含むことが好ましい。
<ポリマー粒子>
また、本発明では、無機粒子や有機粒子を塗液やマトリックス樹脂に含有させることができる。無機粒子は特に制限されないが、例えば、導電性、伝熱性、チクソトロピー性などを付与するために、カーボン系粒子や窒化ホウ素粒子、二酸化チタン粒子、二酸化珪素粒子などを好適に用いることができる。有機粒子も特に制限されないが、特に、ポリマー粒子を用いると、得られるFRPの靱性や耐衝撃性、制振性などを向上させることができ、好ましい。この時、ポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)または融点(Tm)はマトリックス樹脂温度よりも20℃以上高くすると、マトリックス樹脂中でポリマー粒子の形態を保持し易く、好ましい。ポリマー粒子のTgは温度変調DSCを用い、以下の条件で測定することができる。温度変調DSC装置としては、TA Instrments社製
Q1000などが好適であり、窒素雰囲気下、高純度インジウムで校正して用いることができる。測定条件は、昇温速度は2℃/分、温度変調条件は周期60秒、振幅1℃とすることができる。これで得られた全熱流から可逆成分を分離し、階段状シグナルの中点の温度をTgとすることができる。
また、Tmは通常のDSCで昇温速度10℃/分で測定し、融解に相当するピーク状シグナルのピークトップ温度をTmとすることができる。
また、ポリマー粒子としては、マトリックス樹脂に溶けないことが好ましく、このようなポリマー粒子としては、例えば、WO2009/142231パンフレット記載などを参照し、適切なものを用いることができる。より、具体的には、ポリアミドやポリイミドを好ましく用いることができ、優れた靭性のため耐衝撃性を大きく向上できる、ポリアミドは最も好ましい。ポリアミドとしてはポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66やポリアミド6/12共重合体、特開平01−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたポリアミド(セミIPNポリアミド)などを好適に用いることができる。この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため、本発明の製造法では特に好ましい。また、球状であれば応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点でも好ましい態様である。
ポリアミド粒子の市販品としては、SP−500、SP−10、TR−1、TR−2、842P−48、842P−80(以上、東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)、“グリルアミド(登録商標)”TR90(エムザベルケ(株)社製)、“TROGAMID(登録商標)”CX7323、CX9701、CX9704、(デグサ(株)社製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
また、FRPの耐熱性への要求が厳しくない時には、塗液のレオロジー特性を調整したりFRPの靭性や制振性を向上させる目的で、ポリウレタン系やゴム系、コアシェルゴム系などの粒子を用いることも可能である。
FRPの強化繊維層間樹脂層を高靭性化するためには、ポリマー粒子を強化繊維層間樹脂層に留めておくことが好ましい。そのため、ポリマー粒子の数平均粒径は5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは7〜40μmの範囲、さらに好ましくは10〜30μmの範囲である。数平均粒径を5μm以上とすることで、粒子が強化繊維の束の中に侵入せず、得られる繊維強化複合材料の強化繊維層間樹脂層に留まることができる。数平均粒径を50μm以下とすることで、プリプレグテープ表面のマトリックス樹脂層の厚みを適正化し、ひいては得られるFRPにおいて、繊維質量含有率を適正化することができる。
<塗液の粘弾性>
本発明で用いる塗液は、工程通過性・安定性の観点から最適な粘度を選択することが好ましい。具体的には、粘度を0.01〜60Pa・sの範囲とすると、狭窄部出口での液垂れを抑制するとともに強化繊維シートの高速走行性、安定走行性を向上させることができ、好ましい。塗液粘度は2Pa・s以下とすると、強化繊維テープの走行速度を100m/分以上としても安定走行が可能であり、さらに塗液の飛散を抑制できるため、好ましい。塗液粘度は好ましくは0.9Pa・s以下である。
ここで、前記粘度とは、液溜り部で測定した塗液温度での塗液粘度を言うものであり、より具体的には、平行円盤型やコーン型などの粘弾性測定装置を用い、歪み速度3.14s−1で測定した、前記液溜り部で測定した塗液温度での粘度のことである。また、前記損失弾性率とは、前記した粘度測定と同様に測定することができ、液溜り部での塗液温度、歪み速度3.14s−1での損失弾性率である。
また、室温付近である25℃での粘弾性を制御することで、塗液含有強化繊維テープの粘着性を低くすることが可能である。これにより、製造工程でのロールやガイド類に塗液含有強化繊維テープが貼りつくことが抑制され、工程安定化できるメリットもある。さらに、これにより、離型テープなどを併用せず直接、塗液含有強化繊維テープを巻き取ることが可能となるだけでなく、巻き取った塗液含有強化繊維テープの解舒性も良好となり、高速解舒が可能となる。これは、塗液含有強化繊維テープをプリプレグテープとした場合には、自動積層装置などでの高速積層が可能となり、好ましい。さらに、離型テープを併用しないため、プリプレグテープの巻き取りパッケージあたりの分量も多くなり、自動積層装置稼働時間を長くできるため長時間での積層効率が向上し、好ましい。これは航空機用AFPなどの自動積層装置のみならず、圧力タンク用などのトウプリプレグの巻き付け装置でも同様の効果が得られる。
具体的には、25℃、歪み速度3.14s−1 で測定される粘度を10Pa・s以下、あるいは106Pa・s以上とすることが好ましい。
<鉛直方向下向きに強化繊維テープを走行させての塗布工程>
UD基材を例として、図1aを参照して塗布工程を説明すると、塗工装置100における塗液2を強化繊維テープ1aに付与する方法は、クリール11から巻き出された複数本の強化繊維1を、配列装置12によって一方向(紙面奥行き方向)に配列して強化繊維テープ1aを得た後、強化繊維テープ1aの両面に塗液2を付与するものである。これにより、塗液含有強化繊維テープ1bを得ることができる。
次に図2a〜図4により、強化繊維テープ1aへの塗液2の付与工程について詳述する。図2aは、図1における塗布部20を拡大した詳細横断面図である。塗布部20は、所定の隙間Dを開けて対向する壁面部材21a、21bを備え、壁面部材21a、21bの間には、鉛直方向下向きZ(すなわち強化繊維テープの走行方向)に断面積が連続的に減少する液溜り部22と、液溜り部22の下方(強化繊維シート1aの搬出側)に位置し、液溜り部22の上面(強化繊維テープ1aの導入側)の断面積よりも小さい断面積を有するスリット状の狭窄部23が形成されている。図2aにおいて、強化繊維テープ1aは、紙面の奥行き方向に配列されている。すなわち、強化繊維テープの幅方向が紙面の奥行き方向に一致している。
塗布部20において、液溜り部22に導入された強化繊維テープ1aは、その周囲の塗液2を随伴しながら、鉛直方向下向きZに走行する。その際、液溜り部22の断面積は鉛直方向下向きZ(強化繊維シート1aの走行方向)に向かって減少するため、随伴する塗液2は徐々に圧縮され、液溜り部22の下部に向かうにつれて塗液2の圧力が増大する。液溜り部22の下部の圧力が高くなると、前記随伴液流がそれ以上は下部に流動し難くなり、壁面部材21a、21b方向に流れ、その後、壁面部材21a、21bに阻まれ、上方へ流れるようになる。結果、液溜り部22内では強化繊維テープ1aの平面と、壁面部材21a、21b壁面に沿った循環流Tを形成する。これにより、仮に強化繊維テープ1aが毛羽を液溜り部22に持ち込んだとしても毛羽は循環流Tに沿って運動し、液圧の大きな液溜り部22下部や狭窄部23に近づくことができない。さらに下で述べるとおり、気泡が毛羽に付着することにより毛羽が循環流Tから上方に移動し、液溜り部22の上部液面付近を通過する。そのため、毛羽が液溜り部22の下部および狭窄部23に詰まることが防止されるだけでなく、滞留する毛羽は液溜り部22の上部液面から容易に回収することも可能となる。さらに、強化繊維テープ1aを高速で走行させた場合、前記の液圧はさらに増大するため、毛羽の排除効果がより高くなる。その結果、強化繊維テープ1aにより高速で塗液脂2を付与することが可能となり、生産性が大きく向上する。
また、前記の増大した液圧により、塗液2が強化繊維テープ1aの内部に含浸しやすくなる効果がある。これは、強化繊維束のような多孔質体にマトリックス樹脂が含浸される際、その含浸度がマトリックス樹脂の圧力で増大する性質(ダルシーの法則)に基づく。これについても、強化繊維テープ1aをより高速で走行させた場合、液圧がより増大することから、含浸効果をより高めることができる。なお、塗液2は強化繊維テープ1aの内部に残留する気泡と気/液置換で含浸されるが、気泡は前記の液圧と浮力により強化繊維テープ1aの内部の隙間を通って、繊維の配向方向(鉛直方向上向き)に排出される。このとき、気泡は含浸してくる塗液2を押しのけずに排出されるため、含浸を阻害しない効果もある。また、気泡の一部は強化繊維テープ1aの表面から面外方向(法線方向)に排出されるが、この気泡も前記の液圧と浮力により速やかに鉛直方向上向きに排除されるため、含浸効果の高い液溜り部22の下部に留まらず、効率よく気泡の排出が進む効果もある。これらの効果により、強化繊維テープ1aに塗液2を効率よく含浸させることが可能となり、その結果、塗液2が均一に含浸された高品質の塗液含有強化繊維テープ1bを得ることが可能となる。
さらに、前記の増大した液圧により、強化繊維テープ1aが隙間Dの中央に自動的に調心され、強化繊維テープ1aが液溜り部22や狭窄部23の壁面に直接擦過せず、ここでの毛羽発生を抑制する効果もある。これは、外乱などにより強化繊維テープ1aが隙間Dのどちらかに接近した場合、接近した側ではより狭い隙間に塗液2が押し込まれて圧縮されるため、接近した側で液圧がより増大し、強化繊維テープ1aを隙間Dの中央に押し戻すためである。
狭窄部23は、液溜り部22の上面よりも断面積が小さく設計される。図2aから理解されるとおり専ら強化繊維シートによる疑似平面の垂線方向の長さが小さい、すなわち部材間の間隔が狭い、ことで断面積は小さくなる。これは、前記のように狭窄部で液圧を高くすることで、含浸や自動調心効果を得るためである。また、狭窄部23の最上部の面の断面形状は、液溜り部22の最下部の面の断面形状と一致させることが、強化繊維テープ1aの走行性や塗液2の流れ制御の観点から好ましいが、必要に応じ狭窄部23の方を若干大きくしてもよい。
ここで、図2aの塗布部20では、強化繊維テープ1aが完全に鉛直方向下向きZ(水平面から90度)に走行しているが、これに限定されず、前記の毛羽回収、気泡の排出効果が得られ、強化繊維テープ1aが安定して連続走行可能な範囲で、実質的に鉛直方向下向きであればよい。
また、強化繊維テープ1aに付与される塗液2の総量は、狭窄部23の隙間Dで制御可能であり、例えば、強化繊維テープ1aに付与する塗液2の総量を多くしたい(目付けを大きくしたい)場合は、隙間Dが広くなるよう、壁面部材21a、21bを設置すればよい。
図1cには強化繊維テープ1aが炭素繊維からなり、焼成装置11aを付属した例を示している。この例にあっては、焼成工程と塗布工程が連続的に行われ、また、強化繊維テープ1aは鉛直方向下向きに走行している。
また後述の通り、塗布部20では、強化繊維テープ1aが実質的に水平方向または傾斜方向に通過させること可能である。強化繊維テープ1aを鉛直下向き方向か、水平方向または傾斜方向に通過させるかは、例えば装置設置のスペースや前後の工程との関係によって決定できる。
<水平方向または傾斜方向に強化繊維テープを走行させての塗布工程>
図1bを参照して強化繊維テープ1aが水平方向または傾斜方向に走行する際のマトリックス樹脂の塗布工程を説明すると、塗工装置100におけるマトリックス樹脂2を強化繊維シート1aに付与する方法は、クリール11から巻き出された複数本の強化繊維1を、配列装置12によって一方向(紙面奥行き方向)に配列して強化繊維テープ1aを得た後、塗布部20に水平方向または傾斜方向に通過させて、強化繊維シート1bの両面にマトリックス樹脂2を付与するものである。ここで、水平方向とは図1bにおけるX方向のことを言うものであり、傾斜方向とは図1bにおけるX方向とZ方向の中間の方位を言うものである。また、図1bのように塗布部20に対し、水平に強化繊維シート1aを導入すると、強化繊維シート1aの走行経路が直線化され、強化繊維シート1aの厚みに起因する強化繊維シート1aの乱れが発生し難く、好ましい。このときには強化繊維シート1aの塗布部20への導入部においてマトリックス樹脂2が漏れ出さない様なシール機構を有していることが好ましい。
図1dには強化繊維テープ1aが炭素繊維からなり、焼成装置11aを付属した例を示している。この例にあっては、焼成工程と塗布工程が連続的に行われ、また、強化繊維テープ1aは水平方向に走行している。
次に図2b〜2eにより、強化繊維テープ1bが水平方向または傾斜方向に走行する際の炭素繊維テープへの塗液2の付与工程について詳述する。図2bは、図1bにおける塗布部20を拡大した詳細横断面図である。塗布部20は、所定の隙間Dを開けて対向する壁面部材21aおよび21bを備え、壁面部材は強化繊維テープ1b導入側および出口側に一体となっている。上面の壁面部材21a、下面の壁面部材21bの間には、液溜り部22と、液溜り部22の出口側に位置し、液溜り部22の最大部よりも小さい断面積を有するスリット状の狭窄部23が形成されている。
塗布部20において、液溜り部22に導入された強化繊維テープは、その周囲の塗液2を随伴しながら、水平方向に走行する。その際、鉛直方向下向きに強化繊維テープを走行させるときと同様に、液溜り部22のうち、強化繊維テープの走行方向に向かって断面積が連続的に減少する領域22bにおいて、随伴される塗液2は徐々に圧縮され、液溜り部22の出口に向かうにつれて塗液2の圧力が増大する。液溜り部22の出口近傍の圧力が高くなると、前記随伴液流がそれ以上は出口方向には流動し難くなり、強化繊維テープの垂線方向に流れ、その後、壁面部材21a、壁面部材21bに阻まれ、強化繊維テープの走行方向と逆方向へ流れるようになる。結果、液溜り部22内では強化繊維テープの平面と、壁面部材21a、壁面部材21b壁面に沿った循環流Tを形成する。これにより、仮に強化繊維テープが毛羽を液溜り部22に持ち込んだとしても毛羽は循環流Tに沿って運動し、液圧の高い液溜り部22出口近傍や狭窄部23に近づくことができない。強化繊維テープの走行速度を大きくした場合、前記の液圧はさらに増大するため、毛羽が出口近傍や狭窄部23に近づくことができない効果がより高くなり、生産性が大きく向上する。
また、鉛直方向下向きに強化繊維テープを走行させる時と同様に、前記の増大した液圧により、塗液2が強化繊維テープの内部に含浸しやすくなる効果がある。これは、炭素繊維束のような多孔質体にマトリックス樹脂が含浸される際、その含浸度がマトリックス樹脂の圧力で増大する性質(ダルシーの法則)に基づく。これについても、強化繊維テープ1bをより高速で走行させた場合、液圧がより増大することから、含浸効果をより高めることができる。なお、塗液2は強化繊維テープの内部に残留する気泡と気/液置換で含浸されるが、気泡は前記循環流Tと浮力により、断面積が減少しない領域22aと断面積が連続的に減少する領域22bの境界近傍に多く集まるようになる。このため、この近傍に、塗液2から気泡を脱気するための脱気機構56を設置することが好ましい。
さらに、鉛直方向下向きに強化繊維テープを走行させる時と同様に、前記の増大した液圧により、強化繊維テープが隙間Dの中央に自動的に調心され、強化繊維テープが液溜り部22や狭窄部23の壁面に直接擦過せず、ここでの毛羽発生を抑制する効果もある。これは、外乱などにより強化繊維テープが隙間Dのどちらかに接近した場合、接近した側ではより狭い隙間にマトリックス樹脂2が押し込まれて圧縮されるため、接近した側で液圧がより増大し、強化繊維テープを隙間Dの中央に押し戻すためである。
狭窄部23は、液溜り部22の最大部よりも断面積が小さく設計される。図2bから理解されるとおり専ら強化繊維テープによる疑似平面の垂線方向の長さが小さい、すなわち部材間の間隔が狭い、ことで断面積は小さくなる。これは、前記のように狭窄部23で液圧を高くすることで、含浸や自動調心効果を得るためである。また、狭窄部23の入口部の断面形状は、これと接する液溜り部22の面の断面形状と一致させることが、強化繊維テープ1bの走行性やマトリックス樹脂2の流れ制御の観点から好ましいが、必要に応じ狭窄部23の方を若干大きくしてもよい。
ここで、図2bの塗布部20内では、強化繊維テープが完全に水平方向に走行しているが、これに限定されず、前記の毛羽回収、気泡の排出効果が得られ、炭素繊維シート1aが安定して連続走行可能な範囲で、塗布部20内で傾斜方向に走行してもよい。また、塗布部20を傾斜させることも可能である。
また、強化繊維テープに付与される塗液2の総量は、鉛直方向下向きに強化繊維テープを走行させる時と同様に、狭窄部23の隙間Dで制御可能であり、例えば、炭素繊維シート1aに付与する塗液2の総量を多くしたい(目付けを大きくしたい)場合は、隙間Dが広くなるよう調整すればよい。
図2bでは強化繊維テープ1枚を水平方向から塗布部に導入する場合を図示しているが、強化繊維テープの塗布部への導入はこれに限らず、必要に応じ、強化繊維テープを複数枚としてもよいし、導入方向も傾斜方向としてもよい。これを図2c〜2eを用いて説明する。
図2cには、1枚の強化繊維テープ1aが上から斜め下方向に走行し、開口部60から塗布部20に導入されている。そして、強化繊維テープ1aは方向転換部材61で走行方向を水平方向に変えられ、狭窄部23より引出されている。ここで、方向転換部材61は、少なくとも強化繊維テープ1aが接する面は曲面で構成されていることが好ましい。また、強化繊維テープ1aの巻き付きを防止する観点からは、方向転換部材61は固定されていることが好ましい。これらより、方向転換部61は曲面を有する固定バーであることが好ましく、その断面形状は円形、楕円形、鞍型などを例示することができる。また、方向転換部材61と強化繊維テープ1aが接する部分は曲面と平面が混在していても良いが、強化繊維テープ1aの接地開始部と終了部が曲面であると、毛羽の発生を抑制でき、好ましい。さらに、特に走行速度を高速化する場合には、強化繊維テープ1aと方向転換部材61との擦過を抑制する観点からは、回転可能なローラーとすることも可能である。
また、方向転換部材61には強化繊維テープ1aが押し付けられるため、強化繊維テープ1a内の気体と塗液2の置換により含浸が行われる場合もある。特に図2eに示すように、複数本の方向転換部材61に角度を付けて当接させることにより、より効率的に含浸を進めることができる。
また、方向転換部材61の設置位置は、循環流Tの流れを阻害しない観点から、断面積が減少しない領域22aと断面積が連続的に減少する領域22bの境界位置から1cm以上、断面積が減少しない領域22a側とすることが好ましい。
図2dには、2枚の強化繊維テープ1aが上から斜め下方向に走行し、開口部60から塗布部20に導入されている。そして、2枚の強化繊維テープ1aはそれぞれ方向転換部材61で走行方向を水平方向に変えられ、2枚が積層された後、狭窄部23より引出されている。この時、2枚の強化繊維テープ1aの間にマトリックス樹脂2を含有して積層されるため、断面積が連続的に減少する領域22bや狭窄部23において、より含浸が進み易くなり、好ましい。
図2eには、2枚の強化繊維テープ1aが上から斜め下方向に走行し、開口部60から塗布部20に導入されている。そして、2枚の強化繊維テープ1aはそれぞれ複数の方向転換部材61を通過する間に含浸が進められ、最終的に2枚が積層された後、狭窄部23より引出されている。この時、含浸を進めるための方向転換部材61の形状や個数を目的に応じ、種々選択することが可能である。また、方向転換部材61と強化繊維テープ1aの接触長や接触部両端と方向転換部材61の中心部が成す角度(wrap angle)も目的に応じ選択することができる。
図2d、2eには強化繊維テープ1aが2枚の例を示したが、もちろん3枚以上の任意の枚数とすることができる。
図3は、塗布部20を、図2aのAの方向から見た下面図である。塗布部20には、強化繊維テープ1aの配列方向両端から塗液2が漏れるのを防ぐための側壁部材24a、24bが設けられており、壁面部材21a、21bと側壁部材24a、24bに囲われた空間に狭窄部23の出口25が形成されている。ここで、出口25はスリット状をしており、断面アスペクト比(図3のU/D)は塗液2を付与したい強化繊維テープ1aの形状に合わせて設定すればよい。
図4aは塗布部20を、Bの方向から見た場合の塗布部内部の構造を説明する断面図である。なお、図を見やすくするため壁面部材21bは省略してあるほか、強化繊維テープ1aは強化繊維1を、隙間を開けて配列しているように描画しているが、実際には強化繊維1を隙間無く配列することが、プリプレグテープ(塗液含有強化繊維テープの一態様)の品位、また、それを成形したFRPの力学特性の観点から好ましい。
図4bは隙間26での塗液2の流れを示している。隙間26が大きいと塗液2には、Rの向きに渦流れが発生する。この渦流れRは、液溜り部22の下部では外側に向かう流れ(Ra)となるため、強化繊維テープを引き裂いてしまう(割れが発生する)場合や強化繊維間の間隔を拡げてしまい、そのために塗液含有強化繊維テープとしたときに強化繊維の配列ムラを発生する可能性がある。一方、液溜り部22の上部では、内側に向かう流れ(Rb)となるため、強化繊維テープ1aが幅方向に圧縮され、その端部が折れてしまう場合がある。特許文献2(特許第3252278号公報)に代表されるような、一体物のシート状基材(特にフィルム)に塗液を両面塗布する装置ではこのような隙間26での渦流れが発生しても品質への影響が少ないため、注意がされていなかった。
そこで、本発明においては、隙間26を小さくする幅規制を行い、端部での渦流れの発生を抑制することが好ましい。具体的には、液溜り部22の幅L(mm)、すなわち、側板部材24aと24bの間隔L(mm)は、狭窄部23の直下で測定した強化繊維テープの幅W(mm)と以下の関係を満たすよう構成することが好ましい。
L≦1.1×W。
これにより、端部での渦流れ発生が抑制され、強化繊維テープ1aの割れや端部折れを抑制でき、塗液含有強化繊維テープ1bの全幅(W)にわたって均一に強化繊維1が配列された、高品位で安定性の高い塗液含有強化繊維テープ1bを得ることができる。さらに、この技術をプリプレグテープに適用した場合には、プリプレグテープの品位、品質を向上させるのみならず、これを用いて得られるFRPの力学特性や品質を向上させることができる。
また、Lの下限は、0.9×W以上となるよう調整することが、好ましい。このように、側板部材24aと24bの間隔Lを制御することは、塗液含有強化繊維テープ1bの幅方向の寸法精度を向上させる観点からも好ましい。
なお、この幅規制は、液溜り部22下部の高い液圧による渦流れR発生を抑制する観点から、少なくとも液溜り部22の下部(図4aのGの位置)で行うことが好ましい。さらに、この幅規制はより好ましくは、液溜り部22の全域で行うと、渦流れRの発生をほぼ完全に抑制することができ、その結果、強化繊維テープの割れや端部折れをほぼ完全に抑制することが可能となる。
また、前記幅規制は、前記隙間26の渦流れ抑制の観点からは、液溜り部22だけでもよいが、狭窄部23も同様に行うと塗液含有強化繊維テープ1bの側面に過剰な塗液2が付与されることを抑制する観点から好ましい。
<幅規制機構>
前記では幅規制を側壁部材24a、24bが担う場合を示したが、図5aに示すように、側壁部材24a、24b間に幅規制機構27a、27bを設け、かかる機構で幅規制を行うこともできる。これにより、幅規制機構によって規制される幅を自在に変更可能とすることで一つの塗布部により、種々の幅の塗液含有強化繊維テープを製造できる観点から好ましい。ここで、狭窄部の直下における強化繊維テープの幅W(mm)と該幅規制機構下端において幅規制機構により規制される幅L2(mm)との関係はL2≦1.1×Wとすることが好ましい。また、L2の下限は、0.9×W以上となるよう調整することができる。このように、幅規制機構により規制される幅L2を制御することは、塗液含有強化繊維テープ1bの幅方向の寸法精度を向上させる観点からも好ましい。
幅規制機構の形状および材質に特に制限は無いが、板形状のブッシュであると簡便であり、好ましい。また、上部、すなわち液面に近い場所では壁面部材21a、21bとの間隔よりも小さい幅(図5a参照。「Z方向からみた図」中、幅規制機構の上下方向の長さを指す)を有することで、塗液の水平方向の流れを妨げないようにでき、好ましい。一方、幅規制機構の中間部から下部にかけては塗布部の内部形状に沿った形状とすることが液溜り部での塗液の滞留を抑制でき、塗液の劣化を抑制できることから好ましい。この意味から、幅規制機構は狭窄部23まで挿入されることが好ましい。図5aは、幅規制機構として板形状ブッシュの例を示しているが、ブッシュの中間より下部が液溜り部22のテーパー形状に沿い、狭窄部23まで挿入される例を示している。図5aにはL2が液面から出口まで一定の例を示しているが、幅規制機構の目的を達成する範囲で部位によって規制する幅を変更してもよい。幅規制機構は任意の方法で塗布部20に固定することができるが、板形状ブッシュの場合には、上下方向で複数の部位で固定することで、高液圧による板形状ブッシュの変形による規制幅の変動を抑制することができる。例えば、上部はステーを用い、下部は塗布部に差し込むようにすると、幅規制機構による幅の規制が容易であり、好ましい。
<塗液含有強化繊維テープの幅精度>
前記したように、本発明では、塗布工程で種々の幅規制により強化繊維テープの走行安定性を向上可能であるが、同様にこれにより塗液含有強化繊維テープの幅精度を向上することもできる。より具体的には、塗液含有強化繊維テープ幅の変動係数(CV)は5%以下とする。
なお、テープ幅の変動係数(CV)は以下のようにして求めることができる。まず、塗液含有強化繊維テープの幅(Wn)を、テープ長手方向に30点以上計測する。幅計測方法としては、得られた塗液含有強化繊維テープをオフラインでノギスなどを用いて離散的に計測しても良いし、塗布部下方でのテープ走行を動画撮影し、この中でテープ幅をノギスなどで計測することもできる。この時も離散的に計測となる。離散的に計測する場合には、測定点間距離はテープ長手方向に30cm以上離すものとする。また、光学式などの幅測定器を塗布部下方に設置し連続的に幅計測を行っても良い。幅測定器としては、たとえばキーエンス社製LS−7030などを例示することができる。連続的に計測する場合には、テープ長手方向に10m以上計測し、30点以上のデータ(Wn)を取得する。そしてこれらの計測値(Wn)からテープ幅の平均値(WA)、標準偏差(σW)を求め、(1)式より幅変動係数(CV)を求めることができる。
CV(%)=(σW/WA)×100(%) (1)。
特許文献5のようなキスロールを用いる方法では、塗液を付与するロール上で強化繊維テープに幅規制が無いため、塗液のしみ込みにより強化繊維が幅方向に移動し易く、本質的に幅が変動し易いと考えられる。実際、特許文献5ではキスロールによる樹脂塗布後に幅規制ロールを作用させており、これは塗布部であるキスロール上での幅精度が不十分であることを示していると考えられる。一方、本発明では、前記したように液溜り部の幅Lを制御したり、幅規制機構を付加することで、塗布部でテープ幅を制御できるため、このような高度なテープ幅精度が得られるのである。特許文献5のようにマトリックス樹脂付与後に幅規制を行うと、幅規制部で余分なマトリックス樹脂が付着し、工程を不安定化したり清掃周期が短くなるなどの問題が発生する可能性が予測される。これに比べ、本発明のように塗布部で幅規制を行うと、幅規制後に付与する塗液(マトリックス樹脂など)の計量が行えるため、余分な塗液が工程下流を汚す可能性が低いこともメリットである。
<塗布直後冷却>
図5bに示すように、塗布工程に連続して冷却工程をおいて塗液含有強化繊維テープを冷却することも可能である。ここで、塗布工程と冷却工程が連続するとは、塗布工程を行う装置と冷却工程を行う装置との間に搬送ロール14などのその他の装置類を存在させないで各工程を行うことをいう。塗布直後にて塗液含有強化繊維テープを冷却することで、強化繊維テープに含浸された樹脂の粘度を大きくし、強化繊維テープ中の樹脂流動を抑制することで幅精度が良好な状態を維持することが可能である。塗布部20と冷却装置62間の距離は特に限定されないが、近いほど効果が高く、好ましくは500mm以下である。冷却装置の形態は特に限定されないが、例えば、液溜まり部の塗液よりも低い温度の空気を塗液含有強化繊維テープに当てる方法などがあげられる。
<液溜り部の形状>
前記で詳述したように、本発明においては、液溜り部22で強化繊維テープの走行方向に断面積が連続的に減少することで、強化繊維テープの走行方向に液圧を増大させることが重要であるが、ここで強化繊維テープの走行方向に断面積が連続的に減少するとは、走行方向に連続的に液圧を増大可能であれば、その形状には特に制限は無い。液溜り部の横断面図において、テーパー状(直線状)であったり、ラッパ状などのように曲線的な形態を示してもよい。また、断面積減少部は液溜り部全長にわたって連続してもよいし、本発明の目的、効果が得られる範囲であれば、一部に断面積が減少しない部分や逆に拡大する部分を含んでいてもよい。これらについて、以下に図6〜9で例を挙げて詳述する。
図6は、図2とは別の実施形態の塗布部20bの詳細横断面図である。液溜り部22を構成する壁面部材21c、21dの形状が異なる以外は、図2の塗布部20と同じである。図6の塗布部20bのように、液溜り部22が、鉛直方向下向きZに断面積が連続的に減少する領域22aと、断面積が減少しない領域22bに分かれていてもよい。このとき、断面積が連続的に減少する鉛直方向高さHは10mm以上であることが好ましい。さらに好ましい断面積が連続的に減少する鉛直方向高さHは50mm以上である。これにより、強化繊維テープ1aによって随伴された塗液2が、液溜まり部22の断面積が連続的に減少する領域22aで圧縮される距離が確保され、液溜り部22の下部で発生する液圧を十分に増大させることができる。その結果、液圧により毛羽が狭窄部23に詰まるのを防止し、また液圧により塗液2が強化繊維テープ1aに含浸する効果を得ることができる。
ここで、図2の塗布部20や図6の塗布部20bのように、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aをテーパー状とする場合、テーパーの開き角度θは小さい方が好ましく、具体的には鋭角(90°以下)にすることが好ましい。これにより、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22a(テーパー部)でマトリックス樹脂2の圧縮効果を高め、高い液圧を得やすくすることができる。
図7は、図6とは別の実施形態の塗布部20cの詳細横断面図である。液溜り部22を構成する壁面部材21e、21fの形状が2段テーパー状となっている以外は、図6の塗布部20bと同じである。このように、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aを2段以上の多段テーパー部で構成してもよい。このとき、狭窄部23に最も近いテーパー部の開き角度θを鋭角にするのが、前記の圧縮効果を高める観点から好ましい。またこの場合も、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aの高さHを10mm以上にすることが好ましい。さらに好ましい断面積が連続的に減少する鉛直方向高さHは50mm以上である。図7のように液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aを多段のテーパー部にすることで、液溜り部22に貯留できる塗液2の体積を維持しつつ、狭窄部23に最も近いテーパー部の角度θをより小さくすることができる。これにより液溜り部22の下部で発生する液圧がより高くなり、毛羽の排除効果や塗液2の含浸効果をさらに高めることが可能となる。
図8は、図6とは別の実施形態の塗布部20dの詳細横断面図である。液溜り部22を構成する壁面部材21g、21hの形状が階段状となっている以外は、図6の塗布部20bと同じである。このように、液溜り部22の最下部に断面積が連続的に減少する領域22aがあれば、本発明の目的である液圧の増大効果は得られるため、液溜り部22の他の部分に断面積が断続的に減少する領域22cを含んでいてもよい。液溜り部22を図8のような形状にすることで、断面積が連続的に減少する領域22aの形状を維持しつつ、液溜り部22の奥行きBを拡大して貯留できる塗液2の体積を大きくすることができる。その結果、塗布部20dに塗液2を連続して供給できない場合でも、長時間、強化繊維テープ1aに塗液2を付与し続けることが可能となり、塗液含有強化繊維テープ1bの生産性がより向上する。
図9は、図6とは別の実施形態の塗布部20eの詳細横断面図である。液溜り部22を構成する壁面部材21i、21jの形状がラッパ状(曲線状)となっている以外は、図6の塗布部20bと同じである。図6の塗布部20bでは、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aはテーパー状(直線状)だが、これに限定されず、例えば図9のようにラッパ状(曲線状)でもよい。ただし、液溜り部22の下部と、狭窄部23の上部は滑らかに接続することが好ましい。これは、液溜り部22の下部と、狭窄部23の上部の境界に段差があると、強化繊維シート1aが段差に引っ掛かり、この部分で毛羽が発生する懸念があるためである。また、このように液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域をラッパ状とする場合は、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aの最下部における仮想接線の開き角度θを鋭角にするのが好ましい。
なお、上記は滑らかに断面積が減少する例をあげて説明したが、本発明の目的を損なわない限り、本発明において液溜まり部の断面積は必ずしも滑らかに減少しなくともよい。
図10は本発明とは別の実施形態の塗布部30の詳細横断面図である。本発明の実施形態とは異なり、図10の液溜り部32は鉛直方向下向きZに断面積が連続的に減少する領域を含まず、狭窄部23との境界33で断面積が不連続で急激に減少する構成である。このため、強化繊維テープ1aが詰まり易い。
また、塗布部内で強化繊維テープを複数本のバーに接触させることで含浸効果を向上させることも可能である。図11にバー(35a、35bおよび35c)を3本用いた例を示しているが、バーは本数が大きいほど、強化繊維テープとバーの接触長が長いほど、接触角が大きいほど、含浸率を向上させることができる。図11の例では含浸率を90%以上とすることが可能である。なお、係る含浸効果の向上手段は複数種を組み合わせて用いても良い。
<樹脂フィルム付与工程>
本発明では前記塗布工程から引き出された塗液含有強化繊維テープ1bにさらに樹脂フィルムを付与することもできる。図1で説明すると、供給装置16から離型テープ3の代わりに樹脂フィルムを供給し、搬送ロール14上で塗液含有強化繊維テープ1bに積層することができる。図1では、樹脂フィルムは1枚となるが、樹脂フィルムを塗液含有強化繊維テープ1bの両面から付与することももちろん可能であるし、どちらかを離型フィルムとすることもできる。また、樹脂フィルムを2枚用いる場合には、同じ樹脂フィルムとしても良いし、異なる種類の樹脂フィルムとしても良い。また、樹脂フィルムは離型テープなどの支持体の上に塗工されたものでもよいし、支持体を含まないものでもよい。
本発明においては、樹脂フィルムに用いる樹脂には特に制限は無く、目的に応じて適宜選択できる。樹脂フィルムとする樹脂は、単独の樹脂でも良いし、異種ポリマーのブレンド物としたり、さまざまな成分のブレンド物である樹脂組成物とすることもできる。ここで用いる樹脂フィルムには、前記粒子を含むことができる。前記塗布工程で、塗液として粒子を含むマトリックス樹脂を用いると粘度が高くなり易く、強化繊維シートの高速走行時に塗布均一性が悪化する場合がある。このため、粒子を樹脂フィルム付与工程で付与すると、塗布工程での強化繊維テープの高速走行安定性が向上し、好ましい。この時、粒子を含有する樹脂フィルムとしては、マトリックス樹脂から成る樹脂フィルムとすることができる。このようにすることで、粒子を前記塗布工程とは別に付与しつつ、マトリックス樹脂も付与できるため効率的である。この時、粒子を含有するマトリックス樹脂のマトリックス樹脂としては、前記塗布工程で用いるマトリックス樹脂成分と同じとしても良いし、異なっていても良い。前記塗布工程における高速走行安定性や前記塗布部での貯留でのポットライフも考慮して、前記塗布工程で用いるマトリックス樹脂と樹脂フィルム化するマトリックス樹脂の成分を調整することができる。
また、マトリックス樹脂から、ある樹脂成分を取り出して、これを樹脂フィルム化することもできる。例えば、FRPでは、熱硬化性樹脂を主体とするマトリックス樹脂に熱可塑性樹脂をブレンドし樹脂靭性を向上させることができるが、この熱可塑性樹脂がマトリックス樹脂粘度を増加させる場合がある。このような場合、この熱可塑性樹脂を前記塗布工程で付与するマトリックス樹脂から除き、樹脂フィルムとして塗液含有強化繊維テープに付与することで、塗布安定性を向上させることができる。このような熱可塑性樹脂としては、PESやPEI、PIなどが用いられる場合が多い。また、このような熱可塑性樹脂フィルムは支持体を必要としない自己支持フィルムとできる場合もあり、支持体を省略できる観点から有用である。
樹脂フィルムの製造は公知の方法を用いることができ、例えば、ロールコーターやコンマコーター、ナイフコーター、ダイコーター、スプレーコーター等の各種公知のコーターを用い、フィルム形成することできる。また、必要に応じ離型シートなどの支持体上に樹脂を塗工し、フィルム形成することができる。
<走行機構>
強化繊維テープや塗液含有強化繊維テープを搬送するための走行機構としては、公知のローラー等を好適に用いることができる。本発明では強化繊維テープが鉛直下向きに搬送されるため、塗布部を挟んで上下にローラーを配置することが好ましい。
また、本発明では、強化繊維の配列乱れや毛羽立ちを抑制するため、強化繊維テープの走行経路はなるべく直線状であることが好ましい。また、塗液含有強化繊維テープは離型テープとの積層体であるシート状一体物とすることが多いが、これの搬送工程において、屈曲部を有すると、内層と外層の周長差による皺が発生する場合が有るため、シート状一体物の走行経路もなるべく直線状であることが好ましい。この観点からは、シート状一体物の走行経路中では、ニップロールを用いる方が好ましい。
S字ロールとニップロールのどちらを用いるかは、製造条件や製造物の特性に応じ、適宜選択することが可能である。
<高張力引き取り装置>
本発明では、塗布部から塗液含有強化繊維テープを引き出すための高張力引き取り装置を塗布部より工程下流に配置することが好ましい。これは、塗布部で、強化繊維テープと塗液の間で高い摩擦力、せん断応力が発生するため、それに打ち勝って塗液含有強化繊維テープを引き出すためには、工程下流で高い引き取り張力を発生させることが好ましいためである。高張力引き取り装置としては、ニップロールやS字ロールなどを用いることができるが、いずれもロールと塗液含有強化繊維テープの間の摩擦力を高めることで、スリップを防止し、安定した走行を可能とすることができる。このためには、摩擦係数の高い材料をロール表面に配したり、ニップ圧力やS字ロールへの塗液含有強化繊維テープの押し付け圧を高くすることが好ましい。スリップを防止する観点からは、S字ロールの方がロール径や接触長などで容易に摩擦力を制御でき、好ましい。
<離型テープ供給装置>
本発明を用いての塗液含有強化繊維テープやFRPの製造においては適宜、離型テープ供給装置を用いることができ、そのようなものとしては公知のものを使用することができるが、巻き出し張力を巻き出し速度にフィードバックできる機構を備えていることが離型テープの安定走行の観点から好ましい。
<追含浸>
所望の含浸度に調整するために、本発明にさらに塗布後に別途、含浸装置を用いて更に含浸度を高める手段を組み合わせることも可能である。ここでは、塗布部での含浸と区別するために、塗布後に追加で含浸することを追含浸、そのための装置を追含浸装置と称することとする。追含浸装置として用いられる装置には特に制限は無く、目的に応じて公知のものから適宜選択することができる。例えば、特開2011−132389号公報やWO2015/060299パンフレット記載のように、シート状炭素繊維束と樹脂の積層体を、熱板で予熱しシート状炭素繊維束上の樹脂を十分軟化させた後、やはり加熱されたニップロールで加圧する装置を用いることで含浸を進めることができる。予熱のための熱板温度やニップロール表面温度、ニップロールの線圧、ニップロールの直径・数は所望の含浸度になるように適宜選択することができる。また、WO2010/150022パンフレット記載のようなプリプレグシートがS字型に走行する“S−ラップロール”を用いることも可能である。本発明では“S−ラップロール”を単に“S字ロール”と称することとする。WO2010/150022パンフレット図1ではプリプレグシートがS字型に走行する例が記載されているが、含浸が可能であれば、U字型や、V型またはΛ型のようにシートとロールの接触長を調整してもよい。また、含浸圧を高め含浸度を上げる場合には、対向するコンタクトロールを付加することも可能である。さらにWO2015/076981パンフレット図4記載のように、“S−ラップロール”に対向してコンベヤーベルトを配することで含浸効率を向上させ、プリプレグの製造速度の高速化をはかることも可能である。また、WO2017/068159パンフレットや特開2016−203397号公報などに記載のように、含浸前にプリプレグに超音波を付与し、プリプレグを急速昇温することで、含浸効率を向上させることも可能である。また、特開2017−154330号公報記載のように、超音波発生装置で複数の“しごき刃”振動させる含浸装置を用いることも可能である。また、特開2013−22868号公報記載のようにプリプレグを折り畳んで含浸することも可能である。
<簡易追含浸>
上記では、従来の追含浸装置を適用する例を示したが、塗布部直下では未だ塗液含有強化繊維テープの温度が高い場合があり、そのような場合には塗布部を出て後、あまり時間が経っていない段階で追含浸操作を加えると、塗液含有強化繊維テープを再昇温するための熱板などの加熱装置を省略あるいは簡略化し、含浸装置を大幅に簡略化・小型化することも可能である。このように塗布部直下に位置させる含浸装置を簡易追含浸装置と称することとする。簡易追含浸装置としては加熱ニップロールや加熱S字ロールを用いることができるが、通常の含浸装置に比較し、ロール径や設定圧力、塗液含有強化繊維テープとロールの接触長を減じることができ、装置を小型化できるだけでなく消費電力なども減じることができ、好ましい。
また、塗液含有強化繊維テープが簡易追含浸装置に入る前に、塗液含有強化繊維テープに離形テープを付与すると、塗液含有強化繊維テープの走行性が向上し好ましい。
図13aには、追含浸装置を具備した塗液含有強化繊維テープ製造工程の一例を示している。塗布部430の直下に簡易追含浸装置453を備えている。ここでは、簡易追含浸装置453はニップロールの例を示しているが、ニップローラーは加熱機構を備えていることが好ましい。また、ニップロールの段数は目的により適宜選択可能であるが、工程簡略化の観点からは3段以下が好ましい(図13aでは2段の例を示している)。また、ニップローラーは駆動装置を備えていることが塗液含有強化繊維テープ搬送の張力制御が容易である観点から好ましい。ニップ圧力は所望の含浸度に合わせ、適宜調整可能である。
また、ニップロール表面は塗液含有強化繊維テープが貼りつかないように適切な離型処理が施されていたり、塗液含有強化繊維テープとニップロールの間に離型テープを挿入したりすることが好ましい(簡略化のため図13aには描画していない)。塗液含有強化繊維テープとニップロールの間に離型シートを挿入する場合には、塗布部430側から挿入し、高張力引き取り装置444側のロールで離型テープを塗液含有強化繊維テープから引き離すことが好ましい。引き離された離型テープはそのまま巻き取ってもよいし、そのまま再度、塗布部430側から挿入するようサーキット走行させてもよい。
また、追含浸装置としてはニップロールのほか、前記した“S−ラップロール”や固定バー等を用いることもできる。
なお、図13aでは、簡易追含浸、マトリックス樹脂フィルム付与した後、そのまま追含浸装置450に導く例を記載している。
<巻取>
本発明では、塗液含有強化繊維テープを、トラバースさせて巻き取る、あるいは円盤状に巻き取ることで塗液含有強化繊維テープパッケージを形成できるが、このための巻き取り装置(ワインダー)は、目的に合わせて公知のものを使用できる。
トラバースさせて巻き取る際のワインダーは、例えば特開平4−119123号公報、特開2008−37650号公報、特開2012−12224号公報などに例示されている。
また、特に100m/分以上の高速での巻き取りを行う場合には、ボビントラバース方式のワインダーを用いると、塗液含有強化繊維テープの糸道をストレート化できるため、塗液含有強化繊維テープの折れや捩れ、パッケージ端面での巻き乱れなどを抑制できるため、好ましい。ボビントラバース方式のワインダーとしては例えば特開2004−168466号公報などに例示されている。
円盤状に巻き取る時には、つば付ロールなどを用いたリール形状のワインダーを使用することができる。
巻き取り条件は、特許文献5や特開2017−82209号公報などを参考に設定することができる。
塗液含有強化繊維テープを巻き取った塗液含有強化繊維テープパッケージは、スクエアエンド型などのボビン形状であるとラージパッケージ化に有利であり、塗液含有強化繊維テープの製造工程の生産性向上のみならず、後工程において塗液含有強化繊維テープパッケージを載せかえる時間を削減できるため、後工程の生産性も向上できるため、好ましい。円盤状パッケージは糸道がストレートであるため、巻き取り、解舒工程の双方で塗液含浸強化繊維テープの折れや捩れ、テープの引っかかりなどが発生し難く好ましい。
<プリプレグテープ>
本発明の製造方法で得られる塗液含有強化繊維テープはプリプレグテープとして用いる場合には、マトリックス樹脂の含浸率は10%以上であることが望ましい。マトリックス樹脂の含浸の様子は、採取したプリプレグテープを裂き、内部を目視することで含浸の有無を確認することができ、より定量的には例えば剥離法で評価することが可能である。剥離法によるマトリックス樹脂の含浸率は以下のようにして測定することができる。すなわち、採取したプリプレグテープを粘着テープで挟み、これを剥離し、マトリックス樹脂が付着した強化繊維とマトリックス樹脂が付着していない強化繊維を分離する。そして、投入した強化繊維テープ全体の質量に対するマトリックス樹脂が付着した強化繊維の質量の比率を剥離法によるマトリックス樹脂の含浸率とすることができる。また、含浸度が高いプリプレグテープでは、毛細管現象による吸水率により含浸度を評価することもできる。具体的には、特表2016−510077号公報に記載の方法にならい、プリプレグテープの下端5mmを水に5分間浸漬した時の質量変化から計算することができる。
<多ライン化>
図14には一例として、塗布部を5つ並列方向に連結した例を示している。この時、5枚の強化繊維テープ416は、それぞれ独立した5つの強化繊維予熱装置420、塗布部430を通過し、5枚の塗液含有強化繊維テープ471が得られるようにしても良いし、強化繊維予熱装置420、塗布部430は並列方向に一体化されていてもよい。この場合には、塗布部430中で幅規制機構、塗布部出口幅を独立に5つ備えればよい。
また、図15記載のように、広幅の塗布部の入り口を所望のテープ幅が得られるように仕切り、幅を調整した塗布部に通すこともできる。さらに、図16、17記載のように塗布部を水平方向や鉛直方向にずらして配置することも可能である。
<本発明の変形態様(バリエーション)および応用態様>
本発明においては、塗布部を複数個用い、更なる製造工程の効率化やの高機能化を図ることができる。
例えば、複数枚の塗液含有強化繊維テープを積層させるように複数の塗布部を配置することができる。図18には一例として、2つの塗布部を用いて塗液含有強化繊維テープの積層を行う態様の例を示している。第1の塗布部431と第2の塗布部432から引き出された2枚の塗液含有強化繊維テープ471は方向転換ロール445を経て、その下方の積層ロール447で離型テープや樹脂フィルム443とともに積層することも可能である。塗液含有強化繊維テープと方向転換ロール間に離型テープを位置させると、プリプレグがニップロールに貼りつくことを抑制し、走行を安定化することができ、好ましい。図18では、2つの方向転換ロール445に離型テープ446をサーキット走行させている装置を例示している。なお、方向転換ロールは、離型処理の施された方向転換ガイド等で代用することも可能である。図18では高張力引き取り装置444は塗液含有強化繊維テープ471の積層後に配置しているが、積層前に配置することももちろん可能である。
このような積層型の塗液含有強化繊維テープとすることで、塗液含有強化繊維テープをプリプレグテープとして用いる場合には、プリプレグ積層工程の効率化を図ることができ、例えば厚ものFRPを作製する場合に有効である。また、薄ものプリプレグテープを多層積層することで、FRPの靱性や耐衝撃性が向上することが期待でき、本製造方法を適用することで、薄もの多層積層プリプレグテープを効率的に得ることができる。さらに、異なる種類のプリプレグテープを容易に積層することで、機能性を付加したヘテロ結合プリプレグテープを容易に得ることができる。この場合、強化繊維の種類や繊度、フィラメント数、力学物性、繊維表面特性などを変更することが可能である。また、マトリックス樹脂も異なるものを用いることが可能である。例えば、厚みの異なるプリプレグテープや力学物性が異なるものを積層したヘテロ結合プリプレグテープとすることができる。また、第1の塗布部で力学物性の優れる樹脂を付与し、第2の塗布部でタック性に優れる樹脂を付与し、これらを積層することで力学物性とタック性を両立できるプリプレグテープを容易に得ることができる。また、逆に表面にタック性の無い樹脂を配置することも可能である。また、第1の塗布部で粒子なしの樹脂を付与し、第2の塗布部で粒子含有樹脂を付与することもできる。
また、別の様態としては、強化繊維テープの走行方向に対して塗布部を直列に複数個配置させることができる。図19には一例として、2つの塗布部を直列に配置させた例を示している。第1の塗布部431と第2の塗布部432の間には高張力引き取り装置448を配置させると強化繊維テープ416の走行を安定化させる観点から好ましいが、塗布条件、工程下流の引き取り条件によっては省略することも可能である。また、第1の塗布部から引き出した塗液含有強化繊維テープと高張力引き取り装置448間に離型テープを位置させると、塗液含有強化繊維テープがニップロールに貼りつくことを抑制し、走行を安定化することができ、好ましい。図19では、高張力引き取り装置448をニップロールとし、また、2つのロールに離型テープト446をサーキット走行させている装置を例示している。
このような直列型の配置とすることで、塗液含有強化繊維テープの厚み方向に塗液種類を変えることができる。また、同じ種類の塗液であっても、塗布部によって塗布条件を変えることで、走行安定性や高速走行性などを向上することもできる。例えば、第1の塗布部で力学物性の優れるマトリックス樹脂を付与し、第2の塗布部でタック性に優れるマトリックス樹脂を付与し、これらを積層することで力学物性とタック性を両立できるプリプレグテープを容易に得ることができる。また、逆に表面にタック性の無いマトリックス樹脂を配置することも可能である。また、第1の塗布部で粒子なしの樹脂を付与し、第2の塗布部で粒子含有マトリックス樹脂を付与することもできる。
以上のように、複数の塗布部を配置させる様態をいくつか示したが、塗布部の数に特に制限は無く、目的に応じ種々、適用することができる。また、これらの配置を複合させることももちろん可能である。更に、塗布部の各種サイズ・形状や塗布条件(温度など)も混合して用いることもできる。
以上述べてきたように、本発明の製造方法は製造効率化・安定化のみならず、製品の高性能化・機能化も可能であり、拡張性にも優れた製造方法である。上では鉛直方向に強化繊維テープが走行している例をもって示したが、水平方向または傾斜方向に強化繊維テープを走行させ、塗液を塗布させた場合にも同じような簡易追含浸、多ライン化、変形態様をとることができる。
以上述べてきたように、本発明の製造方法は製造効率化・安定化のみならず、製品の高性能化・機能化も可能であり、拡張性にも優れた製造方法である。
<塗液供給機構>
本発明において塗布部内に塗液は貯留されているが、塗工が進行するので塗液を適宜補給することが好ましい。塗液を塗布部に供給する機構には特に制限は無く、公知の装置を使用することができる。塗液は連続的に塗布部に供給することが、塗布部の上部液面を乱さず、強化繊維テープの走行を安定化でき、好ましい。例えば、塗液を貯留する槽から自重を駆動力として供給したり、ポンプなどを用いて連続的に供給することができる。ポンプとしては、ギヤポンプやチューブポンプ、圧力ポンプなど塗液脂の性質に応じ適宜使用することができる。また、塗液が室温で固体の場合には、貯留層上部にメルターを備えておくことが好ましい。また、連続押し出し機などを用いることもできる。また、塗液供給量は塗液の塗布部上部の液面がなるべく一定となるよう、塗布量に応じ連続供給できる機構を備えることが好ましい。このためには、例えば液面高さや塗布部重量などをモニタリングし、それを供給装置にフィードバックするような機構が考えられる。
<オンラインモニタリング>
また、塗布量のモニタリングのために、塗布量をオンラインモニタリングできる機構を備えることが好ましい。オンラインモニタリング方法についても特に制限は無く、公知のものを使用可能である。例えば、厚みを計測する装置として、例えばベータ線計などを用いることができる。この場合は、強化繊維テープ厚みと塗液含有強化繊維シートの厚みを計測し、その差分を解析することで塗布量を見積もることが可能である。オンラインモニタリングされた塗布量は、直ぐに塗布部にフィードバックされ、塗布部の温度や狭窄部23の隙間D(図2参照)の調整に利用することができる。塗布量モニタリングは、もちろん欠点モニタリングとしても使用可能である。厚み計測位置としては、例えば図12a〜図12cで言えば、方向転換ロール419近傍で強化繊維シート416の厚みを計測し、塗布部430から方向転換ロール441の間でプリプレグの厚みを計測することができる。また、赤外線、近赤外線、カメラ(画像解析)などを用いたオンライン欠点モニタリングを行うことも好ましい。
以下、本発明の具体例を更に詳細に説明する。
図12aは本発明を用いたプリプレグの製造工程・装置の例の概略図である。複数個の強化繊維ボビン412はクリール411に掛けられているが、クリールに付与されたブレーキ機構により一定張力で強化繊維束414を引き出すことができる。ここで強化繊維を一定張力で引き出すことで、強化繊維テープの幅精度を向上することができる。そして、強化繊維を引き出す際の張力制御装置としては、スピンドル部分に電磁式ブレーキ機構を備えたクリールを用いることが、幅精度向上、装置全体をコンパクト化する観点から好ましい。引き出された複数本の強化繊維束414は強化繊維配列装置415により整然と配列され、強化繊維テープ416が形成される。強化繊維テープとして強化繊維束1糸条を用いる場合には、強化繊維配列装置414を用いないこともできる。なお、図12aでは強化繊維束は3糸条しか描画されていないが、実際には、1糸条〜数百糸条とすることができる。その後、拡幅装置417、平滑化装置418を経て、方向転換ロール419を経て、鉛直下向きに搬送される。図12aでは、強化繊維配列装置415〜方向転換ロール419まで強化繊維テープ416は装置間を直線状に搬送される。なお、拡幅装置417、平滑化装置418は、目的に応じ、適宜スキップすることもできるし、装置を配置しないこともできる。また、強化繊維配列装置415、拡幅装置417、平滑化装置418の配列順序は目的に応じ適宜変更することもできる。強化繊維テープ416は方向転換ロール419から鉛直下向きに走行し、強化繊維予熱装置420、塗布部430を経て方向転換ロール441に到達する。強化繊維テープを複数同時に製造する場合には、図14に示したように強化繊維テープと塗布部を1対1対応させてもよいし、図15のように広幅の塗布部の内部を仕切り、そこに強化繊維テープをそれぞれ通してもよい。また、複数の塗布部は図14のように並列させることもできるし、図16のように千鳥配置とすることもできる。また、図17のように上下に千鳥配置させることも可能である。さらに、塗布部430は本発明の目的を達成する範囲で任意の塗布部形状を採用することができる。例えば、図2a、図6〜図9のような形状が挙げられる。また、必要に応じ図5aのようにブッシュを備えることもできる。さらに、図11のように、塗布部内にバーを備えることもできる。図12aでは、樹脂フィルム供給装置442から巻き出された樹脂フィルム443を方向転換ロール441上で塗液含有強化繊維テープ471の片面に積層し、更に引き続いて塗液含有強化繊維テープ471の別の片面に樹脂フィルムを積層することができる。ここで、樹脂フィルムは離型テープとの積層体であり、樹脂面を塗液含有強化繊維テープ表面に密着させることが好ましい。離型テープには離型紙や離型フィルムなどを用いることができる。樹脂フィルムや離型テープは必要に応じ付与すればよく、場合によっては、これらに関わる装置は省略可能である。これを高張力引取り装置444で引き取ることができる。また、塗布直後には図5bに示すように冷却装置を備えてもよい。図12aでは高張力引き取り装置444としてニップロールを描画している。なお、塗液が低粘度の場合や塗液含有強化繊維テープのライン数が少ない時には、高張力引取装置は省略可能である。その後、シート状一体物は熱板451と加熱ニップロール452を備えた追含浸装置450を経て、冷却装置461で冷却された後、引き取り装置462で引き取られ、上側の離型テープ446を剥がした後、ワインダー464で巻き取り、製品となるプリプレグテープ/離型テープからなるシート状一体物472を得ることができる。追含浸も必要に応じて施せばよく、場合によっては、追含浸機や冷却装置は省略可能である。方向転換ロール441からワインダー464までシート状一体物は基本直線状に搬送されるため、皺の発生を抑制することができる。ワインダーはトラバース巻き取り、円盤状巻き取りのもののいずれも使用可能であるが、トラバース巻き取りの際は、特開平4−119123号公報、特開2008−37650号公報、特開2012−12224号公報などに例示されるように、塗液含有強化繊維テープの折れや捩れ、パッケージ端面での乱れなどを抑制するためにガイド類やトラバース機構をテープに適合した設計のものを使用することができる。巻き取り速度を100m/分以上の高速とする場合には、ボビントラバース形式のワインダーを用いることが好ましいが、製造装置全体のレイアウト、コストなどを勘案して選択すればよい。なお、図12aでは、マトリックス樹脂供給装置、オンラインモニタリング装置の描画は省略してある。
図12aでは鉛直方向に強化繊維テープを走行させて、塗布部430で塗布した例を示したが、図12bのように塗布部430を図1b、図2b〜2eの様式とすることで、図12aと同様に強化繊維テープを水平方向または傾斜方向に走行し、塗布することが可能である。これは前記図18および以降に説明する図13aや図19〜22に表された態様においても同様である。
図12cは本発明を用いた強化繊維テープの製造工程・装置の例において、焼成装置411b以降を示した概略図である。表面処理装置412b、表面処理剤の乾燥装置413b、サイジング装置414b、サイジング剤の乾燥装置415bを経て、方向転換ロール419を経て、鉛直下向きに搬送される。図12cの例では、焼成装置411b〜方向転換ロール419まで強化繊維テープ416は装置間を直線状に搬送される。なお、拡幅装置417、平滑化装置418は、目的に応じ、適宜スキップすることもできるし、装置を配置しないこともできる。また、拡幅装置417、平滑化装置418の配列順序は目的に応じ適宜変更することもできる。さらに必要とする特性に応じて、表面処理装置412b、表面処理剤の乾燥装置413b、サイジング装置414b、サイジング剤の乾燥装置415bを配置しないことができる。強化繊維テープ416は方向転換ロール419から鉛直下向きに走行し、強化繊維予熱装置420、塗布部430を経て方向転換ロール441に到達する。強化繊維テープを複数同時に供給する場合には、図14に示したように強化繊維テープと塗布部を1対1対応させてもよいし、図15のように広幅の塗布部の内部を仕切り、そこに強化繊維テープをそれぞれ通してもよい。また、複数の塗布部は図14のように並列させることもできるし、図16のように千鳥配置とすることもできる。また、図17のように上下に千鳥配置させることも可能である。さらに、塗布部430は本発明の目的を達成する範囲で任意の塗布部形状を採用することができる。例えば、図2a、図6〜図9のような形状が挙げられる。また、必要に応じ図5aのようにブッシュを備えることもできる。さらに、図11のように、塗布部内にバーを備えることもできる。図12bでは、樹脂フィルム供給装置442から巻き出された樹脂フィルム443を方向転換ロール441上で塗液含有強化繊維テープ471の片面に積層し、更に引き続いて塗液含有強化繊維テープ471の別の片面に樹脂フィルムを積層することができる。ここで、樹脂フィルムは離型テープとの積層体であり、樹脂面を塗液含有強化繊維テープ表面に密着させることが好ましい。離型テープには離型紙や離型フィルムなどを用いることができる。樹脂フィルムや離型テープは必要に応じ付与すればよく、場合によっては、これらに関わる装置は省略可能である。これを高張力引取り装置444で引き取ることができる。また、塗布直後には図5bに示すように冷却装置を備えてもよい。図12bでは高張力引き取り装置444としてニップロールを描画している。なお、塗液が低粘度の場合や塗液含有強化繊維テープのライン数が少ない時には、高張力引取装置は省略可能である。その後、シート状一体物は熱板451と加熱ニップロール452を備えた追含浸装置450を経て、冷却装置461で冷却された後、引き取り装置462で引き取られ、上側の離型テープ446を剥がした後、ワインダー464で巻き取り、製品となるプリプレグ/離型シートからなるシート状一体物472を得ることができる。追含浸も必要に応じて施せばよく、場合によっては、追含浸機や冷却装置は省略可能である。方向転換ロール441からワインダー464までシート状一体物は基本直線状に搬送されるため、皺の発生を抑制することができる。ワインダーはトラバース巻き取り、円盤状巻き取りのもののいずれも使用可能であるが、トラバース巻き取りの際は、特開平4−119123号公報、特開2008−37650号公報、特開2012−12224号公報などに例示されるように、塗液含有強化繊維テープの折れや捩れ、パッケージ端面での乱れなどを抑制するためにガイド類やトラバース機構をテープに適合した設計のものを使用することができる。なお、図12bでは、マトリックス樹脂供給装置、オンラインモニタリング装置の描画は省略してある。
図12cでは焼成工程に連続して鉛直方向に強化繊維テープを走行させて、塗布部430で塗布した例を示したが、図12dのように塗布部430を図1b、図2b〜2eの様式とすることで、強化繊維テープを水平方向または傾斜方向に走行させて塗布することが可能である。これは前記図18および以降に説明する図13bや図19〜22に表された態様においても同様である。
図13aおよび図13bは本発明を用いたプリプレグテープの製造工程・装置の別の例の概略図である。ここでは、簡易追含浸装置を用いた例を示している。図13aおよび図13bにおいては、簡易追含浸装置453は塗布部430の直下に設置されているため、プリプレグテープ471が高温状態で簡易追含浸装置453に導かれるため、含浸装置を簡略化・小型化できる。図13aおよび図13bでは、一例として加熱ニップロール454を描画しているが、目的によっては、もちろん小型の加熱S字ロールでも良い。簡易追含浸装置を用いるとプリプレグテープ製造装置全体を非常にコンパクトにすることができることもメリットである。特に、樹脂フィルム443を粒子含有の樹脂フィルムとする場合には、プリプレグテープの含浸度を上げておくと、次工程で樹脂フィルム中の粒子をプリプレグテープ表層に配置することができ、好ましい。
図20は本発明を用いたプリプレグテープの製造工程・装置の別の例の概略図である。図19では、高張力引き取り装置として高張力引取りS字ロール449、追含浸装置として “S−ラップロール”型の加熱S字ロール455を2ロール−2セット(合計4個)用いた例を描画しているが、ロール数は目的に応じ、もちろん増減できる。また、図19では含浸効果を高めるためのコンタクトロール456も描画しているが、目的により省略することももちろん可能である。
図21は本発明を用いたプリプレグの製造工程・装置の別の例の概略図である。この例では“S−ラップロール”型の加熱S字ロールを高張力引き取り装置と兼用する例を示している。プリプレグ製造装置全体を非常にコンパクトにすることができるメリットがある。
以下例1〜4に、強化繊維として炭素繊維を用いた強化繊維テープを用い、焼成装置を付属し、焼成工程と塗布工程が連続して行われる塗液含有強化繊維テープの製造方法により、塗液含有強化繊維テープを得る例を記載する。
<例1:鉛直下向き走行、マトリックス樹脂A、サイジング剤あり>
樹脂含有強化繊維テープ製造装置として図22b記載の構成の装置を用いることができる。ワインダーとしては円盤状に巻き取るリール型のものを用いることができる。なお、図22bでは、塗液供給装置やオンライン計測装置の図示は省略してある。また図22bには、ワインダー464と塗布部430の間に方向転換ロール441を配しているが、方向転換ロール441を取り除き、塗布部430から出た塗液含有強化繊維テープ471を直接ワインダー464に巻き取っても良い。
塗布部はアクリル樹脂で作製し、内部の様子が観察できるようにすることができる。また、液溜り部での強化繊維テープの走行方向は鉛直下向き方向、液溜り部は2段テーパー状であるが、1段目テーパーは開き角度15〜20°、テーパー長さ(すなわちH)は10〜70mm、2段目テーパーは開き角度5〜10°とすることができる。また、幅規制機構として、図5a記載のような塗布部内部形状に合わせた板状ブッシュを備えることができ、さらにこの板状ブッシュの設置位置自在に変更することでL2を適宜調整することができる。狭窄部の隙間Dは0.2mm程度とし、所望の目付に応じて調整可能である。また、狭窄部出口から塗液が漏れないように、狭窄部出口下面においてブッシュより外側は塞いで使用することができる。また塗布部出口に塗液含有強化繊維テープ幅を測定する測定器を設置することができる。例えば、キーエンス社製の光学式幅測定器(LS−7030)を設置し、プロセス上で連続的に塗液含有強化繊維テープ幅を測定し、データロガーに取り込んで、得られたデータから塗液含有強化繊維テープ幅のCV値を計算することができる。
強化繊維テープについては次の(2)〜(4)の工程を経た炭素繊維テープを用いることができる。すなわち(2)アクリロニトリルとイタコン酸からなる共重合体を紡糸後、最高到達温度が1000〜3000℃となるよう焼成を実施する工程、(3)焼成後に炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、液相電解酸化処理した後、液相電解酸化処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、加熱空気中にて乾燥を実施する工程、(4)表面酸化処理後の炭素繊維テープにサイジング剤を付与し、加熱空気中にて乾燥を実施する工程。
そして、マトリックス樹脂として、エポキシ樹脂(芳香族アミン型エポキシ樹脂+ビスフェノール型エポキシ樹脂の混合物)、硬化剤(ジシアンジミミド)、硬化助剤の混合物(マトリックス樹脂A)を用いて、塗液含有強化繊維テープを作製することができる。なお、これの粘度をTA Instruments社製ARES−G2を用いて、測定周波数0.5Hz、昇温速度1.5℃/分で測定したところ、40℃で0.6Pa・s、25℃で3Pa・sである。そのマトリックス樹脂を用いて、強化繊維テープおよび塗液含有強化繊維テープの走行速度を1〜20m/minとして塗液含有強化繊維テープを作製することができる。
また、連続走行性の評価は下記のように行うことができる。すなわち、強化繊維テープを30分間連続走行させ、毛羽詰まり・糸切れが無いものを「Good」、毛羽が詰まり糸切れしたものを「Bad」とする。また、毛羽詰まりの兆候を評価するため、60分間および120分間の連続走行後に塗布部を分解して目視で観察し、毛羽の有無を調べる。連続走行後に狭窄部の付近に毛羽が付着しているものを毛羽防止性「Poor」、連続走行後に狭窄部から遠い部分(断面積が減少しない領域と断面積が連続的に減少する領域の境界付近)に毛羽が付着しているものを毛羽防止性「Fair」、連続走行後に壁面部材の接液面に毛羽が付着していないものを毛羽防止性「Good」とする。また、走行速度10m/分で60分間連続走行させ、断面積が減少しない領域と断面積が連続的に減少する領域の境界の強化繊維テープに、強化繊維テープの割れ(縦スジ状にシート状強化繊維束が裂けている部分)や強化繊維テープの端部折れ(強化繊維束が重なっている部分)がなく均一に走行している時間を測定する。繊維束の割れ、および繊維束の端部折れがなく均一に走行している時間の割合が全走行時間の90%以上を占めるものを「Excellent」、50%以上90%未満のものを「Good」、10%以上50%未満のものを「Fair」、10%未満のものを「Poor」とする。
そして、塗布部の1段目テーパーは開き角度17°、2段目テーパーは開き角度7°とし、幅規制機構下端部の幅L2と塗液含有強化繊維テープの幅Wの関係L2−Wを0mmとして、Hを種々変更し走行速度10m/分での走行性を評価すると、H≧30mmでは毛羽・糸詰まりが無く(Good)、毛羽防止性もGoodである。30mm>H≧10mmでは毛羽・糸詰まりが無く(Good)、毛羽防止性はFairである。10mm>H≧0mmでは20m/分で走行可能であるが、毛羽防止性はPoorである。なお、塗布部として、図13に示す断面積が連続的に減少する部分の無いもの(H=0)を用いると、10m/分で走行開始後、すぐに強化繊維シートが詰まり、連続走行性が不良となる。
次に、H=70mmとして、幅規制機構下端部の幅L2と塗液含有強化繊維テープの幅Wの関係L2/Wを種々変更して評価すると、1.1×W<L2(mm)は、強化繊維テープの割れはBad、強化繊維テープの端部折れBad、1.05×W<L2≦1.1×W(mm)では、強化繊維テープの割れはGood、強化繊維テープの端部折れGood、0.8×W≦L2(mm)では、強化繊維テープの割れはExcellent、強化繊維テープの端部折れExcellentである。
これらよりL2/Wが小さく、Hが大きい方が塗液含有強化繊維テープの安定走行性が向上することが分かる。また剥離法による含浸率は、いずれも50〜60%であり、塗布部で含浸が進んでいることがわかる。剥離法による含浸率は、採取した塗液含有強化繊維テープを粘着テープで挟み、これを剥離し、マトリックス樹脂が付着した炭素繊維とマトリックス樹脂が付着していない炭素繊維を分離し、投入した強化繊維テープ全体の質量に対するマトリックス樹脂が付着した強化繊維の質量の比率から計算する。
また、前記のように採取した塗液含有強化繊維テープの長手方向の目付け均一性は、以下のように評価できる。塗液含有強化繊維テープを長手方向に100mmずつ合計1m切り出し、塗液含有強化繊維テープの質量、炭素繊維の質量をそれぞれ測定する。炭素繊維の質量は塗液含有強化繊維テープから樹脂を溶剤で溶出した残渣として測定する。これから、各値の平均値を算出し、その平均値とそれぞれの値を比較すると、炭素繊維、樹脂ともプラスマイナス2質量%の範囲に収まり、長手方向の目付け均一性に優れることが分かる。
さらに、塗液含有強化繊維テープの幅精度を評価したところ、測定長50m程度におけるデータ取得数が400個程度で、CVは4%程度と良好な幅精度である。
加えて、塗布中に塗布工程にて液の飛散は見られず、工程汚染はみられない。
<例2:水平または傾斜方向走行、マトリックス樹脂A、サイジング剤あり>
樹脂含有強化繊維テープ製造装置として図23記載の構成の装置を用いることができる。すなわち塗布部は斜方向に強化繊維テープを走行させ(強化繊維テープのパスは図2cと同様で寸法は例1と同様)、塗布部以外は例1と同様である。図23では、塗液供給装置やオンライン計測装置の図示は省略してあり、塗布部とワインダーの間の方向転換ロールは例1と同様に取り除くことが可能である。また、マトリックス樹脂も例1と同様のものを使用できる。
塗布部の1段目テーパーは開き角度17°、2段目テーパーは開き角度7°とし、H=70mm、L2=W×1(mm)とし、強化繊維テープ、塗液含有強化繊維テープの走行速度を10m/分として塗液含有強化繊維テープを作製し、走行性を評価すると、毛羽・糸詰まりが無く(Good)、毛羽防止性もGoodである。また、剥離法による含浸度は55%程度であり、長手方向の目付け均一性も±2%の範囲収まり良好である。
さらに、塗液含有強化繊維テープの幅精度を評価したところ、測定長50m程度におけるデータ取得数が400個程度で、CVは4%程度と良好な幅精度である。
加えて、塗布中に塗布工程にて液の飛散は見られず、工程汚染はみられない。
<例3:鉛直下向き走行、マトリックス樹脂A、サイジング剤なし>
樹脂含有強化繊維テープ製造装置として図24記載の構成の装置を用いることができる。ワインダーとしては円盤状に巻き取るリール型のものを用いることができる。なお、図24では、塗液供給装置やオンライン計測装置の図示は省略してある。また塗布部とワインダーの間の方向転換ロールは例1と同様に取り除くことが可能であり、塗布部は例1と同様であり、塗液は例1と同様にマトリックス樹脂Aを用いることができる。
強化繊維テープについては次の(2)および(3)の工程を経た強化繊維テープを用いることができる。すなわち(2)アクリロニトリルとイタコン酸からなる共重合体を紡糸後、加熱温度の最高到達温度が1000〜3000℃となるよう焼成を実施する工程、(3)焼成後に炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、液相電解酸化処理した後、液相電解酸化処理を施された強化繊維テープを続いて水洗し、加熱空気中にて乾燥を実施する工程。
塗布部の1段目テーパーは開き角度17°、2段目テーパーは開き角度7°とし、H=70mm、L2=W×1(mm)とし、強化繊維テープ、塗液含有強化繊維テープの走行速度を10m/分として塗液含有強化繊維テープを作製し、走行性を評価すると、毛羽・糸詰まりが無く(Good)、毛羽防止性もGoodである。強化繊維テープの割れはExcellent、強化繊維テープの端部折れExcellentであっったが、例1の同条件(H=70mm、L2=W×1(mm))と比較し、例3は強化繊維テープの割れや端部折れともに多かった。また、剥離法による含浸度は50%程度であり、長手方向の目付け均一性も±3%の範囲収まり良好である。
さらに、塗液含有強化繊維テープの幅精度を評価したところ、測定長50m程度におけるデータ取得数が400個程度で、CVは4%程度と良好な幅精度である。
加えて、塗布中に塗布工程にて液の飛散は見られず、工程汚染はみられない。
<例4:鉛直下向き走行、マトリックス樹脂B、サイジング剤あり>
樹脂含有強化繊維テープ製造装置として図25記載の構成の装置を用いることができる。すなわち例1の装置に加えて、離型テープ供給装置、高張力引取り装置、追含浸装置、冷却装置、引き取り装置、ワインダーを主に加えた装置構成が使用できる。なお、図25では、塗液供給装置やオンライン計測装置の図示は省略してある。また、塗布部をステンレス製とし、さらにマトリックス樹脂を加温するため、塗布部外周にプレートヒーターを貼り付け、熱電対で温度計測を行いながら、マトリックス樹脂の温度および粘度を調整できるようにすることができる。
強化繊維テープについては次の(2)および(3)の工程を経た炭素繊維テープを用いることができる。すなわち(2)アクリロニトリルとイタコン酸からなる共重合体を紡糸後、最高到達温度が1000〜3000℃となるよう焼成を実施する工程、(3)焼成後に炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、液相電解酸化処理した後、液相電解酸化処理を施された炭素繊維テープを続いて水洗し、加熱空気中にて乾燥を実施する工程。
そして、マトリックス樹脂として、エポキシ樹脂(芳香族アミン型エポキシ樹脂+ビスフェノール型エポキシ樹脂の混合物)、硬化剤(ジアミノジフェニルスルホン)、ポリエーテルスルホンの混合物(マトリックス樹脂B)を用いて、塗液含有強化繊維テープを作製することができる。なお、これの粘度をTA Instruments社製ARES−G2を用いて、測定周波数0.5Hz、昇温速度1.5℃/分で測定したところ、5℃で50Pa・s、90℃で15Pa・s、105℃で4Pa・sである。このマトリックス樹脂を用い、塗布部のマトリックス樹脂温度を75〜105℃とし、強化繊維テープおよび塗液含有強化繊維テープの走行速度を1〜20m/minとして塗液含有強化繊維テープを作製することができる。
塗布部の1段目テーパーは開き角度17°、2段目テーパーは開き角度7°とし、H=70mm、L2=W×1(mm)とし、塗布部のマトリックス樹脂温度を90℃として、強化繊維シート、強化繊維テープの走行速度を10m/分として塗液含有強化繊維テープを作製し、走行性を評価すると、毛羽・糸詰まりが無く(Good)、毛羽防止性もGoodである。また、剥離法による含浸度は55%程度であり、長手方向の目付け均一性も±2%の範囲収まり良好である。
さらに、塗液含有強化繊維テープの幅精度を評価したところ、測定長50m程度におけるデータ取得数が400個程度で、CVは4%程度と良好な幅精度である。
加えて、塗布中に塗布工程にて液の飛散は見られず、工程汚染はみられない。
<プリプレグテープ製造装置>
プリプレグ製造装置として図22a記載の構成の装置を用いた。クリールとしては電磁式のブレーキ機構を備えたものを用いた。ワインダーとしては円盤状に巻き取るリール型のものを用いた。また、ここでは、追含浸は行わなかった。なお、図22aでは、塗液供給装置やオンライン計測装置の図示は省略してある。
<塗布部>
図6の形態の塗布部20bタイプの塗布部を用いた。塗布部は、液溜り部および狭窄部を形成する壁面部材にはステンレス製のブロックを用い、また側板部材にはステンレス製のプレートを用いた。さらにマトリックス樹脂を加温するため、壁面部材および側板部材の外周にプレートヒーターを貼り付け、熱電対で温度計測を行いながら、マトリックス樹脂の温度および粘度を調整した。また強化繊維シートの走行方向は鉛直方向下向き、液溜り部のテーパーは開き角度30°とした。また、幅規制機構として、図5a記載のような塗布部内部形状に合わせた板状ブッシュを備えており、さらにこの板状ブッシュの設置位置自在に変更し、L2を適宜調整できるようにした。L2を10mmとなるようにした。狭窄部の隙間Dは0.2mmとした。また、狭窄部出口から塗液が漏れないように、狭窄部出口下面においてブッシュより外側は塞いで使用した。
<強化繊維テープ>
強化繊維としては下記のものを用いた。
強化繊維1:炭素繊維(東レ製、“トレカ(登録商標)”T800S(24K))
強化繊維2:炭素繊維(東レ製、“トレカ(登録商標)”T720S(36K))
そして、上記強化繊維の1糸条を強化繊維テープとして用いた。
<マトリックス樹脂>
マトリックス樹脂A:
エポキシ樹脂(芳香族アミン型エポキシ樹脂+ビスフェノール型エポキシ樹脂の混合物)、硬化剤、ポリエーテルスルホンの混合物を用いた。
これの粘度をTA Instruments社製ARES−G2を用いて、測定周波数0.5Hz、昇温速度1.5℃/分で測定したところ、90℃で15Pa・s、60℃で200Pa・sであった。
マトリックス樹脂B:
エポキシ樹脂(芳香族アミン型エポキシ樹脂+ビスフェノール型エポキシ樹脂の混合物)、硬化剤、硬化助剤の混合物である。これの粘度をTA Instruments社製ARES−G2を用いて、測定周波数0.5Hz、昇温速度1.5℃/分で測定したところ、40℃で0.6Pa・s、25℃で3Pa・sであった。
<連続走行性の評価>
強化繊維シートの塗布部での連続走行性を評価するため、30分間連続走行させ、毛羽詰まり・糸切れが無いものを「Good」、毛羽が詰まり糸切れしたものを「Bad」とした。
また、毛羽詰まりの兆候を評価するため、60分間および120分間の連続走行後に塗布部を分解して壁面部材の接液面を目視で観察し、毛羽の有無を調べた。連続走行後に狭窄部の付近に毛羽が付着しているものを毛羽防止性「Poor」、連続走行後に狭窄部23から遠い部分(液溜り部22の上部付近)に毛羽が付着しているものを毛羽防止性「Fair」、連続走行後に壁面部材21の接液面に毛羽が付着していないものを毛羽防止性「Good」として、毛羽防止性を評価した。
また、走行速度20m/分で60分間連続走行させ、液溜まり部直上の強化繊維シートに繊維束の割れ(縦スジ状にシート状炭素繊維束が裂けている部分)や繊維束の端部折れ(炭素繊維束が重なっている部分)がなく均一に走行している時間を測定した。繊維束の割れ、および繊維束の端部折れがなく均一に走行している時間の割合が全走行時間の90%以上を占めるものを「Excellent」、50%以上90%未満のものを「Good」、10%以上50%未満のものを「Fair」、10%未満のものを「Poor」とした。
<含浸度の評価>
採取したプリプレグテープを粘着テープで挟み、これを剥離し、マトリックス樹脂が付着した強化繊維とマトリックス樹脂が付着していない強化繊維を分離した。そして、投入した強化繊維テープ全体の質量に対するマトリックス樹脂が付着した強化繊維の質量の比率を剥離法によるマトリックス樹脂の含浸率とした。
<プリプレグテープの幅精度の評価>
塗布部直下にキーエンス社製の光学式幅測定器(LS−7030)を設置し、プロセス上で連続的にプリプレグテープ幅を測定し、データロガーに取り込んだ。得られたデータからプリプレグテープ幅のCV値を計算した。
[実施例1〜3、参考例1]
強化繊維としてCF1を、塗液としてマトリックス樹脂Aを用い、塗布部のマトリックス樹脂温度を90℃、強化繊維テープの走行速度を20m/分として、プリプレグテープの作製を行った。幅規制機構下端部の幅L2とプリプレグテープの幅Wの関係L2−Wと塗布部の断面積が連続的に減少する高さHを種々変更した時の塗布部でのプリプレグテープの走行安定性の評価結果を表1に示す。
これより、Hが大きいほど、L2−Wが小さいほど走行安定性や毛羽防止性が良好であることがわかる。
また、プリプレグテープの幅精度を評価したところ、表1に示すように実施例1〜3ではCV=5%以下と良好な幅精度を示した。なお、CV値を求めるに際してのテープ幅の測定数について説明すると、データ取得個数は、427個/57.2mであった。
また、いずれの実施例でも含浸率も50%以上であり、含浸が進んでいることを確認した。なお、プリプレグテープ全体に占める樹脂含有率は約25質量%であった。
[比較例1]
塗布部として、図10に示す断面積が連続的に減少する部分の無いもの(H=0)を用い、表1記載の条件で実施例1と同様にプリプレグを作製しようとしたが、20m/分で走行開始後、すぐに強化繊維シートが詰まり、連続走行性が不良であった。
[比較例2]
幅規制機構下端部の幅L2とプリプレグテープの幅Wの関係L2−Wを2mmとした以外は実施例5と同様にプリプレグテープの作製を実施した。プリプレグテープの幅精度を評価したところCV=6%であり、幅精度が実施例1〜4には及ばずテープ幅変動が大きかった。プリプレグテープ積層時にテープが重なり合い、局所的な厚み不良となる可能性があるため不合格とした。なおデータ取得個数は、427個/57.2mであった。
[参考例2]
プリプレグ製造装置として図22aに記載の構成の装置に冷却装置433を更に備えた図22c記載の構成の装置を用いた。強化繊維としてCF1を、塗液としてマトリックス樹脂Aを用い、塗布部のマトリックス樹脂温度を90℃、強化繊維テープの走行速度を20m/分として、プリプレグテープの作製を行った。なお、冷却装置433後の塗液含有強化繊維テープの温度は60℃であった。幅規制機構下端部の幅L2とプリプレグテープの幅Wの関係L2−Wと塗布部の断面積が連続的に減少する高さHは参考例1と同様とした。結果を表2に示す。プリプレグテープの幅精度を評価したところCV=4%となり、冷却装置を用いることで参考例1と比べて幅精度が良化した。
[実施例6]
強化繊維としてCF2を、塗液としてマトリックス樹脂Bを用い、塗布部のマトリックス樹脂温度を40℃、強化繊維テープの走行速度を125m/分として、プリプレグテープの作製を行った。幅規制機構下端部の幅L2とプリプレグテープの幅Wの関係L2−Wはゼロ、塗布部の断面積が連続的に減少する高さHは50mmとした。
この時、毛羽詰まりや糸切れなく、125m/分で30分以上、安定走行が可能であった。また、テープ端部での割れや折れも見られなかった。
次に、プリプレグテープの幅精度を評価したところ、CVは2%と優れた幅精度であった。なおデータ取得個数は、136個/114mであった。また、得られたプリプレグテープを手で裂いて内部を確認したところ、内部の強化繊維まで塗液(マトリックス樹脂B)で濡れており、含浸度も良好であることを確認した。なお、プリプレグテープ全体に占める樹脂含有率は約27質量%であった。
また、得られたプリプレグテープの巻き取りパッケージからプリプレグテープを解舒したところ、プリプレグテープ表面はタック性がほとんど感じられず、離型テープなどの支持体を併用していないにもかかわらず、解舒性は良好であった。