本発明の態様に係る製造システムについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、実質的に同一のもの、または、当業者が容易に想定できるものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態のデバイス製造システム(処理システム、製造システム)10の概略的な構成を示す概略構成図である。図1に示すデバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイの一部のパターン層(薄膜トランジスタの電極層、バスライン配線層、絶縁層、透明電極層等のうちの1つの層構造)を製造するライン(フレキシブル・ディスプレイ製造ライン)である。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイまたは液晶ディスプレイ等がある。このデバイス製造システム10は、可撓性のシート基板(以下、基板)Pをロール状に巻回した供給用ロールFR1から、該基板Pが送り出され、送り出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、処理後の基板Pを回収用ロールFR2で巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式となっている。この基板Pは、基板Pの移動方向(搬送方向)が長尺となり、幅方向が短尺となる帯状の形状を有する。第1の実施の形態のデバイス製造システム10では、フィルム状のシートである基板Pが供給用ロールFR1から送り出され、供給用ロールFR1から送り出された基板Pが、少なくとも処理装置PR1、PR2、PR3、PR4、PR5を経て、回収用ロールFR2に巻き取られるまでの例を示している。図1では、X方向、Y方向およびZ方向が直交する直交座標系となっている。X方向は、水平面内において、基板Pの搬送方向であり、供給用ロールFR1および回収用ロールFR2を結ぶ方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(鉛直方向)である。
この処理装置PR1は、供給用ロールFR1から搬送されてきた基板Pを長尺方向に沿った搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対してプラズマ表面処理の処理工程を行う表面処理装置である。この処理装置PR1によって、基板Pの表面が改質され、感光性機能層の接着性が向上する。処理装置(第1の処理装置)PR2は、処理装置PR1から搬送されてきた基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、感光性機能層の成膜処理の処理工程(第1処理工程)を行う成膜装置(塗布装置)である。処理装置PR2は、基板Pの表面に感光性機能液を選択的または一様にすることで、基板Pの表面に感光性機能層(感光性薄膜、被覆層、被膜層)を選択的または一様に形成する。また、処理装置(第2の処理装置)PR3は、処理装置PR2から送られてきた表面に感光性機能層が形成された基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、露光処理の処理工程(第2処理工程)を行う露光装置である。処理装置PR3は、基板Pの表面(感光面)にディスプレイパネル用の回路または配線等のパターンに応じた光パターンを照射する。これにより、感光性機能層に前記パターンに対応した潜像(改質部)が形成される。処理装置(第3の処理装置)PR4は、処理装置PR3から搬送されてきた基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、湿式による現像処理の処理工程(第3処理工程)を行う現像装置である。これにより、感光性機能層に潜像に応じた前記パターンのレジスト層等が出現する。処理装置PR5は、処理装置PR4から搬送されてきた基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、パターンが形成された感光性機能層をマスクとしてエッチング処理の処理工程を行うエッチング装置である。これにより、基板P上に電子デバイス用の配線や電極の導電材料、半導体材料、絶縁材料等によるパターンが出現する。
処理装置PR2と処理装置PR3との間には、基板Pを所定長に亘って蓄積可能な第1蓄積装置(第1蓄積部)BF1が設けられ、処理装置PR3と処理装置PR4との間には、基板Pを所定長に亘って蓄積可能な第2蓄積装置(第2蓄積部)BF2が設けられている。したがって、処理装置PR3には、第1蓄積装置BF1を介して処理装置PR2から送られてきた基板Pが搬入し、処理装置PR3は、第2蓄積装置BF2を介して基板Pを処理装置PR4に搬出する。処理装置PR1〜PR5は、製造工場の設置面に配置される。この設置面は、設置土台上の面であってもよく、床であってもよい。処理装置PR3、第1蓄積装置(蓄積装置、蓄積部)BF1、および、第2蓄積装置(蓄積装置、蓄積部)BF2は、パターン形成装置12を構成する。
上位制御装置14は、デバイス製造システム10の各処理装置PR1〜PR5、第1蓄積装置BF1、および、第2蓄積装置BF2を制御する。この上位制御装置14は、コンピュータと、プログラムが記憶された記憶媒体とを含み、該コンピュータが記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の上位制御装置14として機能する。なお、本第1の実施の形態のデバイス製造システム10は、5つの処理装置PRを備えるようにしたが、2以上の処理装置PRを備えるものであればよい。例えば、本第1の実施の形態のデバイス製造システム10は、処理装置PR2、PR3、または、処理装置PR3、PR4の計2つ処理装置PRを備えるものであってもよいし、処理装置PR2〜PR4の計3つの処理装置PRを備えるものであってもよい。
次に、デバイス製造システム10の処理対象となる基板Pについて説明する。基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、搬送される際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。電子デバイスとして、フレキシブルなディスプレイパネル、タッチパネル、カラーフィルター、電磁波防止フィルタ等を作る場合、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂シートが使われる。
基板Pは、例えば、基板Pに施される各種処理において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。また、ベースとなる樹脂フィルムに、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等の無機フィラーを混合すると、熱膨張係数を小さくすることもできる。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、またはアルミや銅等の金属層(箔)等をラミネートした積層体であってもよい。
ところで、基板Pの可撓性とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲と言える。
このように構成された基板Pは、ロール状に巻回されることで供給用ロールFR1となり、この供給用ロールFR1が、デバイス製造システム10に装着される。供給用ロールFR1が装着されたデバイス製造システム10は、電子デバイスを製造するための各種の処理を、供給用ロールFR1から送り出される基板Pに対して順次実行する。このため、処理後の基板Pには、複数の電子デバイスの各々が形成されるデバイス形成領域Wが長尺方向に所定の余白領域(余白部)を挟んで連なった状態で配置される。つまり、供給用ロールFR1から送り出される基板Pは、多面取り用の基板となっている。
電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが積層された多層構造)が所定の誤差範囲内で重ね合わされることで構成される。図1の各処理装置PR1〜PR5で構成されるデバイス製造システム10によって1つのパターン層が生成されるが、多層構造の電子デバイスを生成するためには、図1に示すようなデバイス製造システム10を複数設けて、基板Pを複数のデバイス製造システム10を通して順次処理することになる。
処理後の基板Pは、ロール状に巻回されることで回収用ロールFR2として回収される。回収用ロールFR2は、図示しないダイシング装置に装着されてもよい。回収用ロールFR2が装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを、電子デバイスごとに分割(ダイシング)することで、複数個(枚葉)の電子デバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
〔処理装置PR2(成膜装置)の構成〕
図2は、処理装置PR2の構成を示す図である。処理装置PR2は、案内ローラR1、R2、エッジポジションコントローラEPC1、テンション調整ローラRT1、RT2、回転ドラムDR1、駆動ローラNR1、NR2、アライメント顕微鏡AU、ダイコータヘッド(ダイコータ方式の塗布ヘッド部)DCH、インクジェットヘッドIJH、乾燥装置16、および、下位制御装置18を備える。回転ドラムDR1、および、駆動ローラNR1、NR2によって基板Pが搬送される。
案内ローラR1は、処理装置PR1から処理装置PR2に搬送された基板PをエッジポジションコントローラEPC1に案内する。エッジポジションコントローラEPC1は、複数のローラを有し、所定のテンションが掛けられた状態で搬送されている基板Pの幅方向の両端部(エッジ部)の位置が、基板Pの幅方向においてばらつかないように制御する。具体的には、エッジポジションコントローラEPC1は、エッジ部の位置が、エッジ部の幅方向の目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、エッジ部の位置を検出するセンサーからの信号に応答して、基板Pを支持するローラを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を修正しながら、基板Pを案内ローラR2に向かって搬送する。案内ローラR2は、搬送されてきた基板Pを回転ドラムDR1に案内する。エッジポジションコントローラEPC1は、回転ドラムDR1に搬入する基板Pの長尺方向が、回転ドラムDR1の中心軸AX1の軸方向と直交する(蛇行しない)ように、基板Pの幅方向における位置を調整する。
回転ドラムDR1は、Y方向に延びる中心軸AX1と、中心軸AX1から一定半径の円筒状の外周面とを有し、外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AX1を中心に回転して基板Pを+X方向に搬送する。回転ドラムDR1は、アライメント顕微鏡AUによって撮像される基板P上の領域(部分)、および、ダイコータ(ダイコート)ヘッドDCHやインクジェットヘッドIJHによって処理される基板P上の領域(部分)を円周面で支持する。
アライメント顕微鏡AU(AU1〜AU3)は、図5に示す基板P上に形成されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出するためのものであり、Y方向に沿って3つ設けられている。このアライメント顕微鏡AU(AU1〜AU3)の検出領域は、回転ドラムDR1の円周面上にY方向に並ぶように一列で配置されている。アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)は、電子デバイスが形成される基板P上の電子デバイスの形成領域(デバイス形成領域)Wと基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)は、基板Pの幅方向の両端部に、基板Pの長尺方向に沿って一定間隔で形成されているとともに、基板Pの長尺方向に沿って並んだデバイス形成領域W間で、基板Pの幅方向中央に形成されている。なお、処理装置PR3によってこの基板P上のデバイス形成領域(パターン形成領域)Wにディスプレイパネル用の回路または配線等のパターンに応じた光パターンが照射(露光)される。
アライメント顕微鏡AU(AU1〜AU3)は、アライメント用の照明光を基板Pに投影して、CCD、CMOS等の撮像素子でその反射光を撮像することで、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出する。つまり、アライメント顕微鏡AU1は、アライメント顕微鏡AU1の検出領域(撮像領域)内に存在する基板Pの+Y方向側の端側に形成されたアライメントマークKs1を撮像する。アライメント顕微鏡AU2は、アライメント顕微鏡AU2の検出領域内に存在する基板Pの−Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs2を撮像する。アライメント顕微鏡AU3は、アライメント顕微鏡AU3の検出領域内に存在する基板Pの幅方向中央に形成されたアライメントマークKs3を撮像する。このアライメント顕微鏡AU(AU1〜AU3)が撮像した画像データは、下位制御装置18に送られ、下位制御装置18は、画像データに基づいてアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の基板P上の位置や位置誤差を算出(検出)することになる。このアライメント顕微鏡AU(AU1〜AU3)の検出領域の基板P上の大きさは、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の大きさやアライメント精度に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。
図5に示すように、基板Pの位置を精密に検出するためのアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)は、一般的にはデバイス形成領域(電子デバイスの形成領域)Wの外周部に設けられるが、必ずしも外周部である必要はなく、デバイス形成領域W内であってデバイス用の回路パターンが存在しない空白部分に設けられてもよい。さらに、デバイス形成領域W内に形成される回路パターンの一部のうち、特定の位置に形成されるパターン(画素領域、配線部、電極部、端子部、ビアホール部等の部分パターン)自体をアライメントマークとして画像認識して位置検出するようなアライメント系を用いてもよい。
ダイコータヘッド(ダイコータヘッド部、ダイコートヘッド部)DCHは、感光性機能液を基板Pに対して幅広く一様に塗布する。インクジェットヘッドIJHは、感光性機能液を基板Pに対して選択的に塗布する。ダイコータヘッドDCHおよびインクジェットヘッドIJHは、アライメント顕微鏡AU(AU1〜AU3)を用いて検出されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の基板P上の位置に基づいて、感光性機能液を選択的に基板Pに塗布することが可能である。ダイコータヘッドDCHおよびインクジェットヘッドIJHは、電子デバイスの形成領域Wに感光性機能液を塗布する。ダイコータヘッドDCHおよびインクジェットヘッドIJHは、アライメント顕微鏡AU(AU1〜AU3)に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、インクジェットヘッドIJHは、ダイコータヘッドDCHに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。インクジェットヘッドIJHは、基板Pの搬送方向(+X方向)に沿って複数設けられている。ダイコータヘッドDCHおよびインクジェットヘッドIJHによって感光性機能液が塗布される基板P上の領域は、回転ドラムDR1の円周面で支持されている。
乾燥装置16は、ダイコータヘッドDCHおよびインクジェットヘッドIJHに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、ダイコータヘッドDCHおよびインクジェットヘッドIJHにより塗布された基板P上の感光性機能液を乾燥させることで、基板P上に感光性機能層を形成する。乾燥装置16は、熱風またはドライエアー等の乾燥用エアーを吹き付けることで、感光性機能液に含まれる溶剤または水を除去して感光性機能液を乾燥させる。
感光性機能液の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは、紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能液として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)や半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、パターン層を形成することができる。感光性機能液として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が改質されてメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含む無電解メッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にする場合は、処理装置PR3に送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属製薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。本第1の実施の形態では、感光性機能層としてフォトレジストが用いられる。
乾燥装置16には、基板P上に形成された感光性機能層の膜厚や膜厚ムラ等の処理品質を計測する膜厚計測装置16aが設けられている。この膜厚計測装置16aは、電磁式、過電流式、過電流位相式、蛍光X線式、電気抵抗式、β線後方散乱式、磁気式、または、超音波式等によって接触または非接触に膜厚を計測する。乾燥装置16によって、感光性機能層が形成された基板Pは、駆動ローラNR1に導かれる。駆動ローラNR1は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転することで、基板Pを駆動ローラNR2に導く。駆動ローラNR2は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転することで、駆動ローラNR1によって搬送された基板Pを第1蓄積装置BF1に供給する。テンション調整ローラRT1は、−Z方向に付勢されており、回転ドラムDR1に搬送される基板Pに対して所定のテンションを付与している。テンション調整ローラRT2は、−X方向に付勢されており、駆動ローラNR2に搬送される基板Pに対して所定のテンションを付与している。基板Pを搬送する駆動ローラNR1、NR2、および、回転ドラムDR1は、下位制御装置18によって制御されるモータや減速機等を有する回転駆動源(図示略)からの回転トルクが与えられることで回転する。この駆動ローラNR1、NR2、および、回転ドラムDR1の回転速度によって、処理装置PR2内の基板Pの搬送速度が規定される。また、駆動ローラNR1、NR2、および、回転ドラムDR1等に設けられた図示しないエンコーダから送られてくる回転速度信号(基板Pの搬送速度信号)は、下位制御装置18に送られる。
下位制御装置18は、上位制御装置14の制御にしたがって、処理装置PR2の各部を制御する。例えば、下位制御装置18は、処理装置PR2内で搬送される基板Pの搬送速度、エッジポジションコントローラEPC1、アライメント顕微鏡AU1〜AU3、ダイコータヘッドDCH、インクジェットヘッドIJH、および、乾燥装置16を制御する。また、下位制御装置18は、アライメント顕微鏡AU(AU1〜AU3)によって検出された基板P上のアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の位置情報、膜厚計測装置16aが検出した膜厚情報、回転速度情報(処理装置PR2内の基板Pの搬送速度情報)等を上位制御装置14に出力する。下位制御装置18は、コンピュータと、プログラムが記憶された記憶媒体とを含み、該コンピュータが記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の下位制御装置18として機能する。この下位制御装置18は、上位制御装置14の一部であってもよく、上位制御装置14とは別の制御装置であってもよい。
図3は、ダイコータヘッドDCHの具体的な構成の一例を示す部分断面図である。ダイコータヘッドDCHは、感光性機能液としての塗布液LQcを蓄えるヘッド本体200A、ヘッド本体200Aの基板P側の先端に、Y方向(基板Pの幅方向)に延びて形成されたスリット部200B、ヘッド本体200A内の塗布液LQcをスリット部200Bから押し出すために軸線AKに沿って移動可能なピストン部201、ヘッド本体200Aの内壁とピストン部201との間で塗布液LQcが漏れないようにシールするパッキン部202、塗布時にピストン部201を軸線AKに沿って押し下げる駆動部203、および、ヘッド本体200A内に塗布液LQcを供給するための供給口204で構成される。ダイコータヘッドDCHの全体は、上下動駆動部206によって、塗布時に基板Pとスリット部200Bとの間のギャップを調整したり、基板Pから大きく退避したりするために軸線AKに沿って上下動される。
ヘッド本体200A内に溜められる塗布液LQcの容量には制限があるため、ピストン部201が許容位置まで押し下げられた後、ピストン部201を上昇させつつ、塗布液補充部207から供給口204を介して新たな塗布液LQcを補充する。この補充動作の際、基板Pに対する塗布作業は中断(基板Pの搬送の停止または減速)され、ダイコータヘッドDCHは基板Pから少し離れるように上下動駆動部206によって移動される。また、駆動部203内には、ピストン部201の移動量を計測するセンサー(リニアエンコーダ等)が設けられ、その計測情報は図2中の下位制御装置18に逐次送られる。
下位制御装置18は、ピストン部201の移動量に基づいて、ヘッド本体200A内に残留する塗布液LQcの量を算定し、算定された塗布液LQcの残留量と設定された塗布条件(ピストン部201の押出し速度等)に基づいて、継続可能な塗布作業の時間(継続可能時間)や、次の塗布液LQcの補充動作開始までの時間(補充開始時間)を逐次予測する。塗布液LQcの補充動作が必要か否かは、一次的には下位制御装置18によって判定されるが、予測された継続可能時間や補充開始時間の情報は図1中の上位制御装置14にも送られ、ライン全体の稼働状態(特に基板Pの搬送状況)を考慮して、上位制御装置14から下位制御装置18に補充動作を指示することもできる。
また、本第1の実施の形態では、ヘッド本体200Aが上方に退避した状態のときに、ヘッド本体200Aと基板P(回転ドラムDR1)との間の空間に挿入されて、ヘッド本体200Aの先端部(スリット部200B)を洗浄するクリーニング部210が設けられる。クリーニング部210は、Y軸と垂直なXZ面内での内壁の断面形状が、ヘッド本体200Aの先端の断面形状に合わせたV字状に形成され、駆動部211によってY方向に移動可能(挿脱可能)に設けられている。クリーニング部210には、洗浄液供給部212Aからの洗浄液を流入する注入口CPaと、ヘッド本体200Aの先端部とクリーニング部210のV字状の内壁との間の空隙を通った洗浄液を洗浄液回収部212Bに排出する排出口CPbとが設けられている。さらにクリーニング部210には、洗浄後にヘッド本体200Aの先端部を乾燥させるために、気体供給部213Aからの気体を流入する注入口CPcと、ヘッド本体200Aの先端部とクリーニング部210のV字状の内壁との間の空隙を通った気体を気体回収部213Bに排出する排出口CPdとが設けられている。なお、洗浄液供給部212Aと洗浄液回収部212Bは、クリーニング部210のV字状の内壁から洗浄液が溢れ出ないように、洗浄液の供給/排出の流量を調整する機能を備えている。
洗浄・乾燥動作は、塗布作業が一定時間経過するごとに、図2の下位制御装置18の判断で指示される。しかしながら、ライン全体の稼働状態(特に基板Pの搬送状況)を考慮する必要があるため、塗布作業を所定の時間後に一時的に止められるか否かは、図1の上位制御装置14によって判定され、塗布作業が一時的に停止可能と判定された場合は、指定された時刻に洗浄・乾燥動作を開始する。また、膜厚計測装置16aによって膜厚ムラ等が計測された場合は、直ちに洗浄・乾燥動作を実施することが望ましいが、その場合も、下位制御装置18から図1の上位制御装置14に不定期な洗浄・乾燥動作が必要である旨のリクエストを行う。
以上の構成により、本実施の形態のダイコータヘッドDCHは、一時的に塗布作業を中断して、塗布液LQcを補充した後、引き続き塗布作業を継続することができる。塗布液LQcの補充動作は、比較的に短時間で行うことが可能であり、例えば30秒程度である。また、補充動作の際に、クリーニング部210による洗浄・乾燥動作を併せて行ってもよい。洗浄・乾燥動作も比較的に短時間で可能であり、例えば60秒〜120秒程度である。さらに、補充動作だけを行う場合であっても、ダイコータヘッドDCH全体を大きく引き上げて、ヘッド本体200Aの先端部と基板Pの間にクリーニング部210を挿入しておくと、補充動作中にスリット部200Bから漏れだす(染み出す)塗布液LQcが基板Pに落下することを防止できる。その場合、クリーニング部210の挿脱動作に要する時間とダイコータヘッドDCHの上下動の時間とが必要となるが、いずれも短時間の動作で済む。塗布液LQcの補充動作、クリーニング部210による洗浄・乾燥動作は、いずれも処理装置PR2での基板Pの処理品質の劣化を避けるための付加作業である。
〔処理装置PR3を含むパターン形成装置12の構成〕
図4は、パターン形成装置12の構成を示す図である。パターン形成装置12の第1蓄積装置BF1は、駆動ローラNR3、NR4と複数のダンサーローラ20とを有している。駆動ローラNR3は、処理装置PR2から送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら回転して、基板Pを第1蓄積装置BF1内に搬入する。駆動ローラNR4は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転して、第1蓄積装置BF1内の基板Pを処理装置PR3に搬出する。複数のダンサーローラ20は、駆動ローラNR3と駆動ローラNR4との間に設けられ、基板Pに対して所定のテンションを付与するものである。複数のダンサーローラ20は、Z方向に移動可能であり、上側(+Z方向側)のダンサーローラ20(20a)は、+Z方向側に付勢され、下側(−Z方向側)のダンサーローラ20(20b)は、−Z方向側に付勢されている。このダンサーローラ20aとダンサーローラ20bとはX方向に関して交互に配置されている。
第1蓄積装置BF1に搬入する基板Pの搬送速度が、第1蓄積装置BF1から搬出する基板Pの搬送速度に対して相対的に速くなると、第1蓄積装置BF1に蓄積される基板Pの長さ(蓄積長)は増加する。第1蓄積装置BF1の蓄積長が長くなると、付勢力によってダンサーローラ20aが+Z方向に、ダンサーローラ20bが−Z方向に移動する。これにより、第1蓄積装置BF1の蓄積量が増加した場合であっても、基板Pに所定のテンションを付与した状態で、基板Pを所定長に亘って蓄積することができる。逆に、第1蓄積装置BF1に搬入する基板Pの搬送速度が、第1蓄積装置BF1から搬出する基板Pの搬送速度に対して相対的に遅くなると、第1蓄積装置BF1に蓄積される基板Pの長さ(蓄積長)は減少する。第1蓄積装置BF1の蓄積長が減少すると、付勢力に抗してダンサーローラ20aが−Z方向に、ダンサーローラ20bが+Z方向に移動する。いずれにせよ、第1蓄積装置BF1は、基板Pに所定のテンションを付与した状態で基板Pを蓄積することができる。駆動ローラNR3、NR4は、下位制御装置24によって制御されるモータや減速機等を有する回転駆動源(図示略)からの回転トルクが与えられることで回転する。この駆動ローラNR3の回転速度によって、第1蓄積装置BF1に搬入する基板Pの搬送速度が規定され、駆動ローラNR4の回転速度によって、第1蓄積装置BF1から搬出する基板Pの搬送速度が規定される。また、駆動ローラNR3、NR4に設けられた図示しないエンコーダから送られてくる回転速度信号は、パターン形成装置12の下位制御装置24に送られる。
パターン形成装置12の第2蓄積装置BF2は、駆動ローラNR5、NR6と複数のダンサーローラ22とを有している。駆動ローラNR5は、処理装置PR3から送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら回転して、基板Pを第2蓄積装置BF2内に搬入する。駆動ローラNR6は、基板Pの表裏両面を挟持しながら、第2蓄積装置BF2内の基板Pを処理装置PR4に搬出する。複数のダンサーローラ22は、駆動ローラNR5と駆動ローラNR6との間に設けられ、基板Pに対して所定のテンションを付与するものである。複数のダンサーローラ22は、Z方向に移動可能であり、上側(+Z方向側)のダンサーローラ22(22a)は、+Z方向に付勢されており、下側(−Z方向側)のダンサーローラ22(22b)は、−Z方向に付勢されている。このダンサーローラ22aとダンサーローラ22bとはX方向に関して交互に配置されている。このような構成を有することにより、第2蓄積装置BF2は、第1蓄積装置BF1と同様に、基板Pに所定のテンションを付与した状態で、基板Pを蓄積することができる。なお、第1蓄積装置BF1と第2蓄積装置BF2の構成は同一とする。駆動ローラNR5、NR6は、下位制御装置24によって制御されるモータや減速機等を有する回転駆動源(図示略)からの回転トルクが与えられることで回転する。この駆動ローラNR5の回転速度によって、第2蓄積装置BF2に搬入する基板Pの搬送速度が規定され、駆動ローラNR6の回転速度によって、第2蓄積装置BF2から搬出する基板Pの搬送速度が規定される。また、駆動ローラNR5、NR6に設けられた図示しないエンコーダから送られてくる回転速度信号は、下位制御装置24に送られる。
パターン形成装置12の処理装置PR3は、本第1の実施の形態ではマスクを用いない直描方式の露光装置EX、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置EXであり、第1蓄積装置BF1を介して処理装置PR2から供給された基板Pに対して、ディスプレイ(電子デバイス)用の回路や配線等のパターンに応じた光パターンを照射する。ディスプレイ用の回路や配線のパターンとしては、ディスプレイを構成するTFTのソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線等のパターン、または、TFTのゲート電極とそれに付随する配線等のパターン等が挙げられる。処理装置PR3は、基板PをX方向に搬送しながら、露光用のレーザ光LBのスポット光を基板P上で所定の走査方向(Y方向)に1次元走査しつつ、スポット光の強度をパターンデータ(描画データ)に応じて高速に変調(オン/オフ)することによって、基板Pの表面(感光面)に光パターンを描画露光する。つまり、基板Pの+X方向への搬送(副走査)と、スポット光の走査方向(Y方向)への走査(主走査)とで、スポット光が基板P上で2次元走査されて、基板Pにパターンに対応した光エネルギー(エネルギー線)が照射される。これにより、感光性機能層に所定のパターンに対応した潜像(改質部)が形成される。このパターンデータは、パターン形成装置12の下位制御装置24の記憶媒体に記憶されていてもよいし、上位制御装置14の記憶媒体に記憶されていてもよい。
処理装置PR3は、搬送部30、光源装置32、光導入光学系34、および、露光ヘッド36を備えている。搬送部30は、第1蓄積装置BF1を介して処理装置PR2から搬送される基板Pを、処理装置PR4に向けて搬送する。搬送部30は、基板Pの搬送方向に沿って上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC2、案内ローラR3、テンション調整ローラRT3、回転ドラムDR2、テンション調整ローラRT4、および、エッジポジションコントローラEPC3を有する。
エッジポジションコントローラEPC2は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に、複数のローラを有し、基板Pの幅方向の両端部(エッジ)が、基板Pの幅方向においてばらつかないように目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を修正しながら、基板Pを回転ドラムDR2に向かって搬送する。エッジポジションコントローラEPC2は、回転ドラムDR2に搬入する基板Pの長尺方向が、回転ドラムDR2の中心軸AX2の軸方向と直交する(蛇行しない)ように、基板Pの幅方向における位置を調整する。案内ローラR3は、エッジポジションコントローラEPC2から送られてきた基板Pを回転ドラムDR2に案内する。
回転ドラムDR2は、図5にも示すように、Y方向に延びる中心軸AX2と、中心軸AX2から一定の半径の円筒状の外周面とを有し、外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AX2を中心に回転して基板Pを+X方向に搬送する。回転ドラムDR2は、基板P上で光パターンが露光される部分(露光領域)をその円周面で支持する。
エッジポジションコントローラEPC3は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に、複数のローラを有し、基板Pの幅方向の両端部(エッジ)が、基板Pの幅方向においてばらつかないように目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を修正しながら、基板Pを処理装置PR4に向かって搬送する。テンション調整ローラRT3、RT4は、−Z方向側に付勢されており、回転ドラムDR2に巻き付けられて支持されている基板Pに所定のテンションを与えている。回転ドラムDR2は、下位制御装置24によって制御されるモータや減速機等を有する回転駆動源(図示略)からの回転トルクが与えられることで回転する。この回転ドラムDR2の回転速度によって、処理装置PR3内の基板Pの搬送速度が規定される。また、回転ドラムDR2等に設けられたエンコーダシステムから送られてくる回転速度信号(基板Pの搬送速度信号)や搬送移動量等の計測情報は、下位制御装置24に送られる。
そのエンコーダシステムは、図5に示すように、回転ドラムDR2の中心軸AX2の方向(Y方向)の両端側に設けられて、回転ドラムDR2の回転角度位置、或いは回転ドラムDR2の外周面(基板Pの表面)の周方向の移動量を計測するためのスケール部(スケール円盤)ESa、ESbと、スケール部ESa、ESbに刻設された回折格子状の目盛を読み取る読取ヘッドEC1a、EC1b、EC2a、EC2bとで構成される。スケール部ESa、ESbと各読取ヘッドEC1a、EC1b、EC2a、EC2bの配置関係については、例えば国際公開第2013/146184号パンフレットに詳細に説明されているので、ここでは簡略化して示してある。
スケール部ESa、ESbと各読取ヘッドEC1a、EC1b、EC2a、EC2bで構成されるエンコーダシステムの計測結果から基板Pの搬送距離や搬送速度が求められる。また、エンコーダシステムは、アライメント顕微鏡AM1〜AM3による基板PのアライメントマークKs1〜Ks3の検出位置から、基板P上のデバイス(パターン)のデバイス形成領域Wの露光位置や図5に示した余白部Swの位置を求めるのに使用される。さらに、エンコーダシステムは、キャリブレーション(較正)動作の際の回転ドラムDR2の位置管理、或いは、基板Pの搬送を一時的に逆転させる際の回転ドラムDR2の位置管理にも使われる。
光源装置32は、レーザ光源を有し、露光に用いられる紫外線のレーザ光(照射光、露光ビーム)LBを射出するものである。このレーザ光LBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であってもよい。レーザ光LBは、発光周波数Fsで発光したパルス光であってもよい。光源装置32が射出したレーザ光LBは、光導入光学系34に導かれて露光ヘッド36に入射するとともに、強度センサ37に入射する。この強度センサ37は、レーザ光LBの強度を検出するセンサである。
露光ヘッド36は、光源装置32からのレーザ光LBがそれぞれ入射する複数の描画ユニットU(U1〜U5)を備えている。つまり、光源装置32からのレーザ光LBは、反射ミラーやビームスプリッタ等を有する光導入光学系34に導かれて複数の描画ユニットU(U1〜U5)に入射する。露光ヘッド36は、回転ドラムDR2の円周面で支持されている基板Pの一部分に、複数の描画ユニットU(U1〜U5)によって、パターンを描画露光する。露光ヘッド36は、構成が同一の描画ユニットU(U1〜U5)を複数有することで、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッド36となっている。描画ユニットU1、U3、U5は、回転ドラムDR2の中心軸AX2に対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に配置され、描画ユニットU2、U4は、回転ドラムDR2の中心軸AX2に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置されている。
各描画ユニットUは、入射したレーザ光LBを基板P上で収斂させてスポット光にし、且つ、そのスポット光を走査ラインに沿って走査させる。図5に示すように、各描画ユニットUの走査ラインLは、Y方向(基板Pの幅方向)に関して互いに分離することなく、繋ぎ合わされるように設定されている。図5では、描画ユニットU1の走査ラインLをL1、描画ユニットU2の走査ラインLをL2で表している。同様に、描画ユニットU3、U4、U5の走査ラインLをL3、L4、L5で表している。このように、描画ユニットU1〜U5全部でデバイス形成領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各描画ユニットUは走査領域を分担している。なお、例えば、1つの描画ユニットUによるY方向の描画幅(走査ラインLの長さ)を20〜50mm程度とすると、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の描画ユニットU2、U4の2個との計5個の描画ユニットUをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を100〜250mm程度に広げている。
次に、図6を用いて描画ユニットUについて説明する。なお、各描画ユニットU(U1〜U5)は、同一の構成を有することから、描画ユニットU2についてのみ説明し、他の描画ユニットUについては説明を省略する。
図6に示すように、描画ユニットU2は、例えば、集光レンズ50、描画用光学素子(光変調素子)52、吸収体54、コリメート(コリメータ)レンズ56、反射ミラー58、シリンドリカルレンズ60、反射ミラー64、ポリゴンミラー(光走査部材)66、反射ミラー68、f−θレンズ70、および、シリンドリカルレンズ72を有する。
描画ユニットU2に入射するレーザ光LBは、鉛直方向の上方から下方(−Z方向)に向けて進み、集光レンズ50を介して描画用光学素子52に入射する。集光レンズ50は、描画用光学素子52に入射するレーザ光LBを描画用光学素子52内でビームウェストとなるように集光(収斂)させる。描画用光学素子52は、レーザ光LBに対して透過性を有するものであり、例えば、音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)が用いられる。
描画用光学素子52は、下位制御装置24からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときは、入射したレーザ光LBを吸収体54側に透過し、下位制御装置24からの駆動信号(高周波信号)がオンの状態のときは、入射したレーザ光LBを回折させて反射ミラー58に向かわせる。吸収体54は、レーザ光LBの外部への漏れを抑制するためにレーザ光LBを吸収する光トラップである。このように、描画用光学素子52に印加すべき描画用の駆動信号(超音波の周波数)をパターンデータ(白黒)に応じて高速にオン/オフすることによって、レーザ光LBが反射ミラー58に向かうか、吸収体54に向かうかがスイッチングされる。このことは、基板P上で見ると、感光面に達するレーザ光LB(スポット光SP)の強度が、パターンデータに応じて高レベルと低レベル(例えば、ゼロレベル)のいずれかに高速に変調されることを意味する。
コリメートレンズ56は、描画用光学素子52から反射ミラー58に向かうレーザ光LBを平行光にする。反射ミラー58は、入射したレーザ光LBを−X方向に反射させて、シリンドリカルレンズ60を介して反射ミラー64に照射する。反射ミラー64は、入射したレーザ光LBをポリゴンミラー66に照射する。ポリゴンミラー(回転多面鏡)66は、回転することでレーザ光LBの反射角を連続的に変化させて、基板P上に照射されるレーザ光LBの位置を走査方向(基板Pの幅方向)に走査する。ポリゴンミラー66は、下位制御装置24によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機等)によって一定の速度で回転する。また、ポリゴンミラー66に設けられた図示しないエンコーダから送られてくる回転速度信号(スポット光SPの走査速度信号)は、下位制御装置24に送られる。
反射ミラー58と反射ミラー64との間に設けられたシリンドリカルレンズ60は、前記走査方向と直交する非走査方向(Z方向)に関してレーザ光LBをポリゴンミラー66の反射面上で集光(収斂)する。このシリンドリカルレンズ60によって、前記反射面がZ方向に対して傾いている場合(XY面の法線と前記反射面との平衡状態からの傾き)があっても、その影響を抑制することができ、基板P上に照射されるレーザ光LBの照射位置がX方向にずれることを抑制する。
ポリゴンミラー66で反射したレーザ光LBは、反射ミラー68によって−Z方向に反射され、Z軸と平行な光軸AXuを有するf−θレンズ70に入射する。このf−θレンズ70は、基板Pに投射されるレーザ光LBの主光線が走査中は常に基板Pの表面の法線となるようなテレセントリック系の光学系であり、それによって、レーザ光LBをY方向に正確に等速度で走査することが可能になる。f−θレンズ70から照射されたレーザ光LBは、母線がY方向と平行となっているシリンドリカルレンズ72を介して、基板P上に直径数μm程度(例えば、3μm)の略円形の微小なスポット光SPとなって照射される。スポット光(走査スポット光)SPは、ポリゴンミラー66によって、Y方向に延びる走査ラインL2に沿って一方向に1次元走査される。
図7は、図6の描画ユニットU(U1〜U5)中に設けられる反射光モニター系の構成を示す図である。集光レンズ50を通った直線偏光のレーザ光LBは、集光レンズ50によって描画用光学素子(AOM)52の内部の偏向部52aでビームウェストとなるように収斂され、駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときに、偏向部52aを直進する0次光LB0は、吸収体(光トラップ)54に吸収される。駆動信号(高周波信号)がオンの状態のときに、偏向部52aで1次回折光として偏向されたレーザ光LBは、偏光ビームスプリッタ55Aと1/4波長板55Bを透過して円偏光となってコリメートレンズ56に入射し、再び平行光束に整形される。コリメートレンズ56を通ったレーザ光LBは、図6の反射ミラー58、シリンドリカルレンズ60、反射ミラー64、ポリゴンミラー66、反射ミラー68、f−θレンズ70、およびシリンドリカルレンズ72を通って、基板P(回転ドラムDR2)上に照射される。
レーザ光LBのスポット光SPによって照射される基板P(または回転ドラムDR2)の表面の反射率に応じて、スポット光SPの照射位置からは、反射光(正反射光、散乱光等)が発生する。f−θレンズ70から射出するレーザ光LBの主光線が基板P(回転ドラムDR2)の表面と垂直となるように、f−θレンズ70をテレセントリック系としたので、その反射光のうちの正反射光は、シリンドリカルレンズ72から入射してレーザ光LBの光路を逆進して、コリメートレンズ56まで戻ってくる。図7に示すように、コリメートレンズ56まで戻ってきた正反射光LRfは、1/4波長板55Bで円偏光から直線偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ55Aで反射されて受光部62に達する。受光部62の受光面は基板Pの表面と光学的に共役になるように配置され、受光部62は受光面での正反射光LRfの光強度に応じた光電信号SDaを出力するPINフォトダイオード等の光電素子を備える。
偏光ビームスプリッタ55A(1/4波長板55B)と受光部62で構成される反射光モニター系は、回転ドラムDR2上に形成された基準パターン(基準マーク)を横切るようにスポット光SPで走査された際に、基準パターンから発生する正反射光の強度変化を光電検出して、回転ドラムDR2の基準パターンを基準とした走査ラインL2(L)の傾き、スポット光SPの走査位置をモニターする。これによって、描画ユニットU1〜U5の各々によるパターン描画位置の相対的な位置関係の変動(継ぎ精度の変動等)、および、図5に示すアライメント顕微鏡AM1〜AM3によるマーク検出位置(検出領域Vw1〜Vw3)と走査ラインL1〜L5の各位置との相対的な位置関係、いわゆるベースラインの変動を較正(キャリブレーション)することができる。回転ドラムDR2に形成する基準パターンやキャリブレーションについては、国際公開第2014/034161号パンフレットに開示されているので、詳細説明は省略する。また、図7に示す反射光モニター系は、基準パターン(または回転ドラムDR2の外周面)の反射率が既知の値である場合、反射光の光量(光電信号SDaの強度)計測に基づいて、スポット光SPの強度(照度)を推定することができるので、パターン描画時に描画ユニットU1〜U5の各々が基板Pに与える露光量、または描画ユニットU1〜U5間の露光量の差を求めることができる。以上のようなベースライン変動の較正動作(計測動作)、露光量の計測動作は、いずれも露光装置EXとしての処理品質を劣化させないための付加作業と言える。
また、処理装置PR3には、図4および図5に示すように、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出するための3つのアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)が設けられている。このアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)の検出領域Vw(Vw1〜Vw3)は、回転ドラムDR2の円周面上でY軸方向に一列に並ぶように配置されている。アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、アライメント用の照明光を基板Pに投影して、CCD、CMOS等の撮像素子でその反射光を撮像することで、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出する。つまり、アライメント顕微鏡AM1は、検出領域(撮像領域)Vw1内に存在する基板Pの+Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs1を撮像する。アライメント顕微鏡AM2は、検出領域Vw2内に存在する基板Pの−Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs2を撮像する。アライメント顕微鏡AM3は、検出領域Vw3内に存在する基板Pの幅方向中央に形成されたアライメントマークKs3を撮像する。
このアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)が撮像した画像データは、下位制御装置24内に設けられる画像処理部に送られ、下位制御装置24の画像処理部は、画像データに基づいてアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の位置や位置誤差を算出(検出)する。この検出領域Vw(Vw1〜Vw3)の基板P上の大きさは、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の大きさやアライメント精度に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。また、アライメント用の照明光は、基板P上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長幅500〜800nm程度のブロードバンド光、或いは紫外域の波長を含まない白色光等である。
下位制御装置24は、上位制御装置14の制御にしたがって、パターン形成装置12を構成する第1蓄積装置BF1、第2蓄積装置BF2、および、処理装置PR3の各部を制御する。例えば、下位制御装置24は、処理装置PR3内で搬送される基板Pの搬送速度、エッジポジションコントローラEPC2、EPC3、アライメント顕微鏡AM1〜AM3、光源装置32、ポリゴンミラー66の回転、および、描画用光学素子52等を制御する。また、下位制御装置24は、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)によって検出された基板P上のアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の位置情報、回転速度情報(処理装置PR3内の基板Pの搬送速度情報、スポット光SPの走査速度情報)、強度センサ37が検出したレーザ光LBの強度情報等を上位制御装置14に出力する。下位制御装置24は、コンピュータと、プログラムが記憶された記憶媒体とを含み、該コンピュータが記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の下位制御装置24として機能する。この下位制御装置24は、上位制御装置14の一部であってもよく、上位制御装置14とは別の制御装置であってもよい。
〔処理装置PR4(湿式処理装置)の構成〕
図8は、処理装置PR4の構成を示す図である。処理装置PR4は、現像液LQが貯留される処理槽BTと、基板Pが処理槽BTに貯留された現像液LQに浸されるように基板Pの搬送経路を形成する案内ローラR4〜R7と、駆動ローラNR7、NR8と、下位制御装置80とを有する。処理槽BTの底部には、現像液LQの温度を調整するためのヒータH1、H2が設けられており、ヒータH1、H2は、下位制御装置80の制御の下、ヒータ駆動部82によって駆動して発熱する。
駆動ローラNR7は、第2蓄積装置BF2を介して処理装置PR3から送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら回転して基板Pを案内ローラR4に導く。案内ローラR4は、+X方向に搬送されてきた基板Pを−Z方向側に折り曲げて案内ローラR5に導く。案内ローラR5は、−Z方向に搬送されてきた基板Pを+X方向側に折り曲げて案内ローラR6に導く。案内ローラR6は、+X方向に搬送されてきた基板Pを+Z方向側に折り曲げて案内ローラR7に導く。案内ローラR7は、+Z方向に搬送されてきた基板Pを+X方向側に折り曲げて駆動ローラNR8に導く。駆動ローラNR8は、送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら、基板Pを処理装置PR5に搬送する。この案内ローラR5、R6によって、基板Pが現像液LQに浸漬される。駆動ローラNR7、NR8は、下位制御装置80によって制御されるモータや減速機等を有する回転駆動源(図示略)からの回転トルクが与えられることで回転する。この駆動ローラNR7、NR8の回転速度によって、処理装置PR4内の基板Pの搬送速度が規定される。また、駆動ローラNR7、NR8に設けられた図示しないエンコーダから送られてくる回転速度信号(基板Pの搬送速度信号)は、下位制御装置80に送られる。なお、処理装置PR4内には、現像された基板Pの表面を撮像する撮像装置(顕微鏡カメラ等)83が設けられている。この撮像装置83は、駆動ローラNR8に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。撮像装置83は、現像によって感光性機能層に形成されたデバイス用のパターンの一部を拡大して撮像する。
案内ローラR4、R5は、可動部材84に設けられており、可動部材84は、リニアモータ等の駆動部を有し、ガイドレール86に沿ってX方向に移動可能である。可動部材84には、可動部材84のX方向における位置を検出する位置センサ87が設けられており、位置センサ87が検出した可動部材84の位置情報は、下位制御装置80に送られる。この可動部材84がガイドレール86に沿って−X方向側に移動すると、案内ローラR5、R6間の距離は長くなるので、基板Pが現像液LQに浸漬する時間(浸液時間)は長くなる。また、可動部材84が+X方向側に移動すると、案内ローラR5、R6間の距離は短くなるので、基板Pが現像液LQに浸漬する時間(浸漬時間)は短くなる。このようにして、基板Pが現像液LQに浸漬する時間(接液長さ)を調整することができる。
また、処理装置PR4は、現像液LQの温度を検出する温度センサTs、現像液LQの濃度を検出する濃度センサCsを有する。基板Pが現像液LQに浸漬されることで、感光性機能層に形成された潜像(改質部)に応じたパターンが感光性機能層に形成される。感光性機能層がポジ型のフォトレジストの場合は、紫外線が照射された部分が改質され、改質部が現像液LQによって溶解し除去される。また、感光性機能層がネガ型のフォトレジストの場合は、紫外線が照射された部分が改質され、紫外線が照射されていない非改質部が現像液LQによって溶解し除去される。本第1の実施の形態では、感光性機能層はポジ型として説明する。なお、図示しないが処理装置PR4は、処理装置PR5に搬送される基板Pに対して、基板Pに付着している現像液LQを純水等で除去する洗浄・乾燥機構を有している。
さらに、処理装置PR4の案内ローラR5、R6は、モータ駆動によってZ方向に移動可能な機構を備え、基板Pを図8のように現像液LQに浸した状態と、現像液LQから引き上げた状態とに切り替えることができる。これにより、処理装置PR4の機能不全(故障)による製造ライン全体の停止、または処理装置PR4の調整のための短時間の一時停止の場合に、基板Pへの現像処理を速やかに中断できるとともに、基板Pが現像液LQに長い時間浸ることによる現像液LQの劣化等を低減できる。
下位制御装置80は、上位制御装置14の制御にしたがって、処理装置PR4の各部を制御する。例えば、下位制御装置80は、処理装置PR4内で搬送される基板Pの搬送速度、ヒータ駆動部82、および、可動部材84、案内ローラR5、R6のZ方向への移動等を制御する。また、下位制御装置80は、温度センサTsおよび濃度センサCsによって検出された現像液LQの温度情報、濃度情報、位置センサ87が検出した可動部材84の位置情報、撮像装置83が検出した画像データ、および、回転速度情報(処理装置PR4内の基板Pの搬送速度情報)等を上位制御装置14に出力する。下位制御装置80は、コンピュータと、プログラムが記憶された記憶媒体とを含み、該コンピュータが記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の下位制御装置80として機能する。この下位制御装置80は、上位制御装置14の一部であってもよく、上位制御装置14とは別の装置であってもよい。
なお、感光性機能層が感光性シランカップリング剤や感光性還元剤の場合は、処理装置PR4の処理槽BTには、現像液LQの代わりに、例えば、パラジウムイオン等の電子デバイス用の材料(金属)を含む無電解メッキ液(以下、メッキ液と呼ぶこともある)が貯留される。つまり、この場合は、処理装置PR4は、メッキ処理の処理工程(第3処理工程)を行うメッキ装置となる。基板Pをメッキ液に浸漬することで、感光性機能層に形成された潜像(改質部)に応じてメッキ核(金属パラジウム)が析出する。さらに、追加の電解または無電解のメッキ工程によって、そのメッキ核に電子デバイス用の金属材料(NiP、Cu、Au等)を析出させると、基板Pに金属層(導電性)のパターンが形成される。
エッチングを行う処理装置PR5は、基本的に、処理装置PR4と同一の構成を有しているので図示しないが、処理槽BTには、現像液LQに代えてエッチング液(腐食液)を貯留している。したがって、処理装置PR5の可動部材84が−X方向側に移動すると、基板Pがエッチング液に浸漬する時間(浸漬時間)は長くなり、可動部材84が+X方向側に移動すると、基板Pがエッチング液に浸漬する時間(浸漬時間)は短くなる。また、処理装置PR5の温度センサTsによってエッチング液の温度が検出され、濃度センサCsによってエッチング液の濃度が検出される。この処理装置PR5によって基板Pがエッチング液に浸漬することで、パターンが形成された感光性機能層をマスクとして、感光性機能層の下層に形成された金属性薄膜(AlまたはCu等)がエッチングされる。これにより、基板P上に金属層のパターンが出現する。処理装置PR5の撮像装置83は、エッチングによって基板P上に形成された金属層のパターンを撮像する。処理装置PR5によって処理が行われた基板Pは、次の処理を行う処理装置PRに送られてもよい。処理装置PR4で、メッキ処理が行われた場合は、エッチング処理は不要となるので、処理装置PR5の代わりに別の処理装置PR、例えば、洗浄・乾燥等を行う処理装置PRが設けられる。
〔第1の実施の形態の動作〕
以上の各処理装置PR1〜PR5の設定条件は、各処理装置PR1〜PR5によって施される実処理(実際の処理)の状態が、目標の処理状態となるように予め設定されている。各処理装置PR1〜PR5の設定条件は、各処理装置PR1〜PR5に設けられた図示しない記憶媒体に記憶されていてもよく、上位制御装置14の図示しない記憶媒体に記憶されていてもよい。また、デバイス製造システム10内では、基板Pは一定の速度で搬送されるものとし、処理装置PR1〜PR5の各々に設定されている設定条件のうち基板Pの搬送速度条件は、基本的には同一の規定速度Vpp(例えば、5mm/秒〜50mm/秒の範囲の一定速度)に設定される。基板P上に形成される電子デバイス用のパターンの品質を維持するために、処理装置PR1〜PR5の各々に設定されている設定条件のうち、基板Pの処理条件だけを動的に調整することに加えて、基板Pの搬送速度条件を各処理装置毎に個別に調整可能とすることによって、パターンの品質を維持しつつ、製造ライン(デバイス製造システム10)全体を極力止めないようなライン管理が可能である。そのようなライン管理については、後の実施の形態にて説明する。
以上の図2、図4、図8に示す処理装置PR2〜PR4(PR5)の各々は、時々、基板Pに対する処理を中断して、処理品質の劣化防止(性能維持)のための付加作業(計測動作、調整動作、切替え動作、清掃動作、保守動作等)を行うことが望ましい場合がある。例えば、処理装置PR2としての成膜装置(塗布装置)では、ダイコータヘッドDCHやインクジェットヘッドIJHに供給される塗布液(感光性機能液)の補充動作、ヘッドDCH、IJHのノズル部や回転ドラムDR1の清掃動作、或いはヘッドDCH、IJHの交換/切替え動作等を行うことがある。処理装置PR3としての露光装置EXでは、パターンの露光位置(スポット光SPの走査による走査ラインL1〜L5)と、アライメント顕微鏡AM1〜AM3の検出領域Vw1〜Vw3との相対的な位置関係(ベースライン長)の変動を計測したり、基板P(回転ドラムDR2)に達するスポット光SPの強度(照度)を計測したりするキャリブレーション(較正)動作、光源装置32(レーザ光源、紫外線ランプ等)の劣化時の交換を想定して予め増設した予備光源装置への切替え動作等を行うことがある。さらに、処理装置PR4(PR5)としての湿式処理装置では、現像液LQやメッキ液の濃度低下や酸化による劣化を抑えるためのリフレッシュや交換等の保守動作、或いは現像液LQやメッキ液を溜める処理槽(液槽)BT中の微細なゴミを除去する清掃動作等を行うことがある。
これらの付加作業の動作が比較的に短時間に済ませることが可能である場合、各処理装置PR2〜PR4(PR5)は、適当なタイミングで基板Pの処理を一時的に中断して、その付加作業を実行し、付加作業完了後に基板Pの処理を再開して通常動作に復帰させることができる。その場合、付加作業を実行する処理装置では、基板Pの搬送が一時的に停止、或いは減速される。処理装置PR2〜PR4(PR5)のうちの2つ以上がともに付加作業を実行しないように制限してもよいが、同程度の停止時間の付加作業であれば、同時実行を許可してもよい。基板Pの搬送を一時的に停止する時間は、付加作業の内容によって異なるが、その付加作業の実行時間の間、他の処理装置が基板Pの処理を継続できるようにする。そのためには、図1、図4中の第1蓄積装置BF1、第2蓄積装置BF2の各々における基板Pの既蓄積長や新規蓄積可能長を、付加作業を実施する処理装置と前後の処理装置との各処理状況に応じて、付加作業の開始前に調整しておく必要が生じる場合もある。既蓄積長とは、蓄積装置BF1、BF2が既に蓄積している基板Pの蓄積長を意味し、新規蓄積可能長とは、蓄積装置BF1、BF2がこれから新たに蓄積することが可能な基板Pの蓄積長を意味する。
付加作業が実行される適当なタイミングは、例えば処理装置PR2(ダイコータ方式/インクジェット方式の塗布装置)や処理装置PR3(露光装置EX)においては、基板Pの長尺方向に沿って並ぶデバイス形成領域W(図5参照)の1つに対する処理(塗布、または露光)が終わった直後に設定できる。すなわち、次のデバイス形成領域Wに対する処理が始まる前の余白部Swが、処理位置である塗布位置(ヘッドDCH、IJHと対向する位置)や処理位置である露光位置(走査ラインL1〜L5が形成される位置)に来た時点に設定できる。
なお、余白部Swの上流側と下流側とで、基板P上に形成すべきデバイスの品種、デバイス形成領域Wの大きさや配列等を異ならせて、多品種・少量生産に対応するような製造ラインとすることも可能である。例えば、余白部Swの下流側には、第1の画面サイズ(32インチ等)の表示パネル用の回路パターンを基板Pの長手方向に一列に並べて形成し、余白部Swの上流側には、第1の画面サイズよりも小さい第2の画面サイズの表示パネル用の回路パターンを基板Pの幅方向に2面取りにして長手方向に並べて形成するような場合、余白部Swの上流側と下流側とで、処理装置PR2〜PR4(PR5)の各々における処理条件や設定条件を異ならせる場合がある。特に、処理装置PR3では、描画(露光)すべきパターンが変わるため、描画データの切替え作業が必要になる。図4、図6に示したような直描方式のマスクレス露光機では、描画データの切替え時のデータ転送時間とともに、各種パラメータ(描画倍率、走査ラインLの傾き、露光量等)の変更/調整の時間を含むセットアップ操作の時間が必要となる。そのようなセットアップ操作は、処理装置PR3の通常動作を中断することになるので、付加作業の1つとして扱うことができる。もちろん、他の処理装置PR2、PR4(PR5)においても、処理条件を大きく異ならせる必要があれば、その調整作業がセットアップ操作となり、付加作業として扱える。処理装置PR3が円筒マスクを用いる投影露光装置である場合は、例えば、特許第5494621号公報に開示されているような円筒マスクの交換作業等がセットアップ操作に含まれる。
そこで、図10、図11のフローチャートに基づいて、第1の実施の形態の動作を説明するが、その前に、第1の実施の形態に好適な基板Pのデバイス形成領域W等の配置を、図9を用いて説明する。図9は、先の図5に示した基板P上に形成される複数のデバイス形成領域W1、W2・・・、アライメントマークKs1〜Ks3の具体的な配置例を示す。さらに、基板P上には、デバイス形成領域W1、W2・・・の各々に付随して、基板Pの幅方向の両側部に形成された情報パターンMsa、Msbが設けられている。情報パターンMsa、Msbの位置は、デバイス形成領域W1、W2・・・の各々の処理開始位置、余白部Swの領域(範囲)を表す。情報パターンMsa、Msbは、図2の処理装置(塗布装置)PR2内の回転ドラムDR1、および図4の処理装置(露光装置)PR3内の回転ドラムDR2の周囲に配置されたリーダ部によって読み取られる。情報パターンMsa、Msbが1次元または2次元のバーコードで形成されている場合、バーコードは、余白部Swの基板Pの長手方向の寸法、デバイス形成領域W1、W2・・・の長手方向の寸法と短手方向の寸法、デバイス形成領域W1、W2・・・のロット番号等の情報を含ませることができる。
第1の実施の形態の場合、図2の処理装置(塗布装置)PR2は、情報パターンMsa、Msbをリーダ部で検出することで、基板P上の余白部Sw上に塗布液(感光性機能液)LQcを塗布しないように、選択的な塗布制御が可能である。したがって、基板Pの余白部Swが処理装置(露光装置)PR3内の回転ドラムDR2上の露光領域(図5中の走査ラインL1〜L5を含む矩形領域)に位置した状態のとき、基板Pが透明なPET、PENである場合、基板Pの透明部を介して、描画ユニットU1〜U5の各々に設けられた反射光モニター系(図7の受光部62)からの光電信号SDaに基づいて、回転ドラムDR2の表面の基準パターンRMPを検出することができる。これにより、余白部Sw(感光性機能液の未塗布領域)が露光領域に入った状態で基板Pを一時的に停止させることで、キャリブレーション動作が可能となる。アライメント顕微鏡AM1〜AM3のキャリブレーション(ベースライン管理)が必要な場合は、基板Pの余白部Sw(透明部)がアライメント顕微鏡AM1〜AM3の各検出領域Vw1〜Vw3の位置にもたらされたときに、基板Pを一時停止、または搬送速度を減速させて、回転ドラムDR2上の基準パターンRMPを検出すればよい。
〔動作のフロー〕
図10、図11のフローチャートは、主に図1中の上位制御装置14によって実行されるが、下位制御装置18、24、80によって実行してもよい。また、図10は、下位制御装置18から上位制御装置14に送られてくる処理装置PR2のステータス情報(割込み要求)、下位制御装置24から上位制御装置14に送られてくる処理装置PR3のステータス情報(割込み要求)、および下位制御装置80から上位制御装置14に送られてくる処理装置PR4(PR5)のステータス情報(割込み要求)等に基づいて、処理装置PR2、PR3、PR4(PR5)を個別に短時間だけ停止させたり、製造ライン全体を停止させたりするためのフローである。図11は、図10中で判定される処理装置PR2〜PR4(PR5)の停止可能性をシミュレーションするフローチャートである。また、図10のプログラムは、上位制御装置14の判断で一定の時間間隔(インターバル)で実行されるが、下位制御装置18、24、80の各々からの割込み要求(停止要求)によって実行してもよい。
図10において、ステップS1は、処理装置PR2の下位制御装置18からのステータス情報、処理装置PR3の下位制御装置24からのステータス情報、或いは処理装置PR4(PR5)の下位制御装置80からのステータス情報を受けて、処理装置PR2〜PR4(PR5)のいずれかが長時間停止の割込み要求(リクエスト)を出しているか否かを判断する。長時間停止の要求は、主に処理装置に機能不全(突発的な故障等)が生じた場合の緊急停止の際にも発生する。ステップS1で、ステータス情報(割込み要求)が長時間停止の場合、当該処理装置の機能不全を復旧させるための部品交換等の保守作業が必要であることから、製造ライン全体を停止せざるを得ないことが多い。そのため、長時間停止の要求に対しては、ステップS9のライン停止を指示するルーチンに進む。
ステップS9では、図1の製造ラインの全体を安全に緊急停止させるように、処理装置PR1〜PR5(下位制御装置18、24、80)の各々に対して、適切な停止タイミング、停止ルーチンを指示する。例えば、緊急停止が必要な処理装置が処理装置PR4(PR5)の場合で、他の処理装置PR2、PR3が正常に処理動作を継続可能であるとき、処理装置PR2は、図9に示した基板Pの余白部Swが、例えばダイコータヘッドDCHのヘッド本体200Aと対向して塗布作業が中断可能となったときに緊急停止する。同様に処理装置PR3は、図9に示した基板Pの余白部Swが描画ユニットU1〜U5による露光領域と対向して、露光作業が中断可能となったときに緊急停止する。その場合、処理装置(露光装置)PR3の上流側の第1蓄積装置BF1と下流側の第2蓄積装置BF2の各々での基板Pの蓄積状況が、各処理装置の完全停止までの時間内で処理装置PR間の基板Pの搬送速度の大きな差(例えば、一方が速度ゼロ)を吸収して余裕を持つように設定されている。
処理装置PR2、PR3が処理を中断可能なタイミングは、図9に示すような余白部Swが塗布位置(ダイコータヘッド部)または露光位置(走査ラインL1〜L5)に対向したときであり、緊急停止の指示が発生されてから、実際に処理が中断(基板Pが停止)するまでの最大の遅延時間Tdは、余白部Swの基板Pの長手方向の間隔距離Lss(略デバイス形成領域Wの長手方向の長さ)と基板Pの搬送速度Vppから、Td=Lss/Vppで決まる。したがって、緊急停止(長時間停止)の指示が発生した時点で、蓄積装置BF1、BF2の一方は、最大の遅延時間Tdに対応した長さの基板Pを既蓄積長として蓄積していればよく、蓄積装置BF1、BF2の他方は、最大の遅延時間Tdに対応した長さの基板Pを新規蓄積可能長として蓄積可能になっていればよい。このような蓄積装置BF1、BF2の蓄積状態は、上位制御装置14によって管理される。また、緊急停止の場合、湿式処理を行う処理装置PR4(PR5)は、余白部Swで丁度よく処理を中断させることが難しいので、直ちに基板Pの搬送を停止して、図8中の案内ローラR5、R6を+Z方向(上方)に移動させて基板Pを現像液LQ(或いはメッキ液)から引き揚げた状態にする。
緊急停止状態の発生時期を、処理装置PR2〜PR4(PR5)の各々が内部で取得している稼動ログ情報から予測することも不可能ではないが、一般的には予測し難い。そこで、製造ライン全体が正常に稼動して、基板Pが所定の規定速度Vppで安定に搬送されている間、蓄積装置BF1、BF2の各々が、少なくとも最大遅延時間Tdに対応した長さLssの基板Pを蓄積し、且つ長さLssの基板Pを新たに蓄積できる余裕(新規蓄積可能長)を持つように、蓄積状態を管理しておくとよい。
ステップS1で、長時間停止ではないと判断されると、短時間の付加作業の要求が発生したと判断し、ステップS2に進む。ステップS2では、それ以前に発生した短時間の付加作業の要求に基づいて、処理装置PR2〜PR4(PR5)のいずれかを停止状態に移行させるために既に調整中であるか否かが判定される。このステップS2で調整中であると判断されると、図10のフローは終了する。また、ステップS2で、調整中でないと判断されると、ステップS3において、短時間の付加作業を要求してきた処理装置PR(以下、停止要求装置PRdとも呼ぶ)が処理装置PR2、PR3の場合は、処理している基板Pの現在の処理位置情報(図9中のデバイス形成領域W1、W2・・・、余白部Sw等の処理位置)、当該停止要求装置PRdの上流または下流における蓄積装置BF1、BF2の基板Pの蓄積状態(既蓄積長や新規蓄積可能長等)に関する蓄積情報、および停止要求装置PRdの下位制御装置(18、24、80)から送られてくる付加作業の内容と作業時間(必要な停止時間)や、要求が発生してから付加作業を実際に開始するまでに待てる待機時間(遅延可能時間)に関する作業情報等を確認する。停止要求装置PRdが処理装置PR4(PR5)の場合は、ステップS3において、第2蓄積装置BF2の蓄積状態に関する蓄積情報(既蓄積長や新規蓄積可能長等)と作業情報(作業内容、作業時間、遅延可能時間)とが確認される。処理装置PR2のダイコータヘッドDCHに充填されている塗布液LQcが無くなると塗布作業を継続することができないので、処理装置PR2における遅延可能時間とは、例えば、塗布液LQcが無くなるまでの時間等である。処理装置PR3における遅延可能時間とは、例えば、キャリブレーション動作を行うまでに待てる時間、予備光源装置への切替え動作を行うまでに待てる時間等である。処理装置PR4(PR5)における遅延可能時間とは、例えば、現像液LQやメッキ液のリフレッシュや交換等の保守動作を行うまでに待てる時間等である。
ここで、停止要求装置PRdが処理装置PR2である場合、ステップS3では、基板Pの搬送速度Vppと作業情報(停止時間、遅延可能時間)とに基づいて、特に蓄積情報を検証する。処理装置PR2が一時的に停止している間、製造ライン(デバイス製造システム10)全体を止めないためには、他の処理装置PR3、処理装置PR4(PR5)が継続して基板Pを搬送できていればよい。そこで、処理装置PR2が停止要求装置PRdの際は、処理装置PR2の停止時間(中断時間)をTS2とし、第1蓄積装置BF1の現在の既蓄積長Lf1が、基板Pの搬送速度Vppとの関係から、Lf1>Vpp・TS2になっているかが検証される。つまり、第1蓄積装置BF1の蓄積状態(現在の既蓄積長Lf1)が、必要蓄積状態を満たすか(Vpp・TS2以上であるか)否かが検証される。第1蓄積装置BF1の蓄積状態が必要蓄積状態を満たす場合は、停止要求装置PRd(PR2)の停止時間中に第1蓄積装置BF1の蓄積状況が正常に推移する。この場合は、停止要求装置PRd(PR2)の停止時間中に第1蓄積装置BF1の蓄積長が一定の速度(一定の割合)で徐々に短くなる。
また、停止要求装置PRdが処理装置PR3の場合、ステップS3では、基板Pの搬送速度Vppと作業情報(停止時間、遅延可能時間)とに基づいて、蓄積装置BF1、BF2の両方の蓄積情報が検証(判定)される。この場合、処理装置PR2と処理装置PR4(PR5)は稼動し続けるので、第1蓄積装置BF1に関しては、処理装置PR3の停止時間(中断時間)TS3と基板Pの搬送速度Vppとの関係から、Vpp・TS3で決まる長さ以上の新規蓄積可能長があるか否かが検証(判定)される。また、第2蓄積装置BF2に関しては、停止時間TS3と基板Pの搬送速度Vppとの関係から、第2蓄積装置BF2の現在の既蓄積長Lf2が、基板Pの搬送速度Vppとの関係から、Lf2>Vpp・TS3になっているかが検証(判定)される。つまり、第1蓄積装置BF1の蓄積状態(新規蓄積可能長)が、必要蓄積状態を満たすか(Vpp・TS3以上であるか)否かが検証され、第2蓄積装置BF2の蓄積状態(既蓄積長Lf2)が、必要蓄積状態を満たすか(Vpp・TS3以上であるか)否かが判断される。蓄積装置BF1、BF2の蓄積状態が必要蓄積状態を満たす場合は、停止要求装置PRd(PR3)の停止時間中に、蓄積装置BF1、BF2の蓄積状況が正常に推移する。この場合は、停止要求装置PRd(PR3)の停止時間中に、第1蓄積装置BF1の蓄積長が一定の速度(一定の割合)で徐々に長くなり、第2蓄積装置BF2の蓄積長が一定の速度(一定の割合)で徐々に短くなる。
停止要求装置PRdが処理装置PR4(PR5)の場合は、第2蓄積装置BF2に関して、処理装置PR4(PR5)の停止時間(中断時間)TS4(TS5)と基板Pの搬送速度Vppとの関係から、Vpp・TS4(TS5)で決まる長さ以上の新規蓄積可能長があるか否かが検証される。つまり、第2蓄積装置BF2の蓄積状態(新規蓄積可能長)が、必要蓄積状態を満たすか(Vpp・TS4(TS5)以上であるか)否かが検証される。第2蓄積装置BF2の蓄積状態が必要蓄積状態を満たす場合は、停止要求装置PRd(PR4(PR5))の停止時間中に、第2蓄積装置BF2の蓄積状況が正常に推移する。この場合は、停止要求装置PRd(PR4(PR5))の停止時間中に、第2蓄積装置BF2の蓄積長が一定の速度(一定の割合)で徐々に長くなる。なお、処理装置PR4と処理装置PR5との間には蓄積装置がないので、処理装置PR4と処理装置PR5との基板Pの搬送速度を略同一にする必要がある。したがって、停止要求装置PRdが処理装置PR4の場合であって、処理装置PR4を停止時間TS4の間一時停止させる場合は処理装置PR5も停止時間TS4の間停止させる。また、停止要求装置PRdが処理装置PR5の場合であって、処理装置PR5を停止時間TS5の間一時停止させる場合は処理装置PR4も停止時間TS5の間一時停止させる。また、停止要求装置PRdが処理装置PR4、PR5の両方の場合であって、処理装置PR4、PR5をともに一時停止させる場合は、停止時間TS4、TS5のうち長い方の停止時間で処理装置PR4、PR5を停止させる。
次のステップS4では、ステップS3で検証された結果に基づいて、停止要求装置PRdを停止させることが可能であるか否かを判断する。つまり、停止要求装置PRdを付加作業のために停止(中断)させた場合に、その停止(中断)時間中に蓄積装置BF1、BF2の蓄積状況が正常に推移するか否かが判断される。停止要求装置PRdが処理装置PR2またはPR3の場合は、基板P上の直近の余白部Swが塗布位置(処理位置)または露光位置(処理位置)に至ったときに基板Pを停止可能か否かがステップS4で判断される。ステップS3で確認された第1蓄積装置BF1や第2蓄積装置BF2での既蓄積長や新規蓄積可能長等の蓄積状態が必要とされる状態(必要蓄積状態)になっている場合は、基板Pの余白部Swで処理装置PR2またはPR3を停止させることが可能であるので、ステップS4でYesに分岐してステップS5に進み、停止要求装置PRd(PR2またはPR3)に停止指示(停止許可)を与える。停止指示を受けた処理装置PR2またはPR3は、基板Pの直近の余白部Swがくるまで処理を続けた後、余白部Swが塗布位置または露光位置に至った時点で基板Pの搬送を停止させ、直ちに所定の付加作業を実行する。つまり、処理装置PR2および処理装置PR3は、余白部Swの基板Pの長尺方向の長さより短い範囲で処理を施すものであることから、停止要求装置PRd(PR2またはPR3)の処理位置(塗布位置または露光位置)が余白部Swにきた時点で、停止要求装置PRdにおける基板Pの搬送および処理を付加作業のために一時停止が可能である。また、停止要求装置PRdが処理装置PR4(PR5)のときは、ステップS3で第2蓄積装置BF2での基板Pの蓄積状態(新規蓄積可能長)が必要とされる状態(必要蓄積状態)になっていると確認された場合は、処理装置PR4(PR5)を停止させることが可能であるので、ステップS4でYesに分岐してステップS5に進み、停止要求装置PRd(PR4、PR5)に停止指示(停止許可)を与える。処理装置PR4(PR5)は、余白部Swの基板Pの長尺方向の長さより長い範囲で処理を施すものであることから、停止要求装置PRd(PR4(PR5))の処理位置にかかわらず、第2蓄積装置BF2の蓄積状態が必要蓄積状態になっていると確認された場合に、直ちに停止要求装置PRdにおける基板Pの搬送および処理を付加作業のために一時停止させる。
ステップS3で確認された蓄積装置BF1、BF2での蓄積状態(既蓄積長や新規蓄積可能長)が必要な状態(必要蓄積状態)になっていなかった場合は、処理装置PR2〜PR4(PR5)のいずれかを付加作業のために停止させると、付加作業中に第1蓄積装置BF1または第2蓄積装置BF2における基板Pの既蓄積長や新規蓄積可能長が不足してしまい、結果的に製造ライン全体(全ての処理装置PR1〜PR5)を停止させることになる。そこで、本第1の実施の形態では、ステップS4のタイミングで停止不可と判断して、ステップS6において停止可能条件(状態)のシミュレーションが実行される。このシミュレーションでは、蓄積装置BF1、BF2の蓄積状態が、停止要求装置PRdの付加作業のために停止可能な状態に遷移できるか、すなわち、各処理装置PR2〜PR4(PR5)での基板Pに対する処理条件や基板Pの搬送速度Vppを変えた場合に、必要とされる既蓄積長や新規蓄積可能長に改善できる適当な条件を見いだせるか否かが探索される。ステップS6のシミュレーションについては、図11を参酌して後で説明する。
ステップS6のシミュレーションによって、必要とされる既蓄積長や新規蓄積可能長を確保するための各処理装置PR2〜PR4(PR5)の処理条件の変更例と基板Pの搬送速度Vppの変更例との候補が少なくとも1つ以上挙げられると、次のステップS7において、処理条件の変更例と基板Pの搬送速度の変更例のいずれか一方、或いは両者の組み合せによって調整した状態で所定時間(調整時間とも呼ぶ)が経過すると、停止要求装置PRdが停止可能な状態に至るか否かが判断される。ステップS7では、停止要求装置PRdから提示される作業情報(作業内容、作業時間、遅延可能時間)のうち、特に遅延可能時間(待機時間)に着目し、調整時間が遅延可能時間よりも短いか否かが判断される。上述したように遅延可能時間(待機時間)は、付加作業を開始するまでに停止要求装置PRdが待てる最大時間であるため、調整時間が遅延可能時間より長い場合は、製造ライン全体(全ての処理装置PR1〜PR5)を停止しなければならない。なお、ステップS6のシミュレーションにおいて、遅延可能時間よりも短い調整時間が得られるという制限条件を設定した上で、処理条件の変更例と搬送速度の変更例を探索してもよい。その場合は、ステップS7の段階で、各種条件を変更させながら基板Pを処理する調整時間後に、停止要求装置PRdを停止可能であることが判っている。
遅延可能時間(待機時間)は、処理装置PR2〜PR4(PR5)の各々の付加作業の内容によって変わる場合もある。ステップS4で停止要求装置PRdをすぐに停止できないと判断されるような状況では、各処理装置PR2〜PR4(PR5)による基板Pの処理を続けながら、蓄積装置BF1、BF2での基板Pの既蓄積長や新規蓄積可能長を改善させる調整時間が必要となる。その調整時間は、必要とされる既蓄積長や新規蓄積可能長が得られるまでの基板Pの搬送長の程度(改善度合い)によっても大きく変化する。一般に、処理装置PR3のような露光装置では、光源からのビーム強度が決まっているため、パターン露光時に基板Pの感光層に所定露光量を与えるための基板Pの搬送速度には上限がある。そのため、処理装置PR3では、光源の劣化によるビーム強度の低下を考慮して、規定の搬送速度Vppを上限速度よりも低めに設定し、その規定の搬送速度Vppにおいて適正露光量が得られるように、ビーム強度を調整(減光)したりしている。したがって、処理装置PR3のような露光装置では、基板Pの搬送速度を規定速度Vppよりも低く設定することは容易でも、高く設定することは難しい。
一方、処理装置PR2のような塗布装置や、処理装置PR4のような湿式処理装置では、基板Pの搬送速度の調整範囲を比較的に広く設定できる。処理装置PR2がダイコータヘッドDCHで塗布作業を行う場合、図3に示したヘッド本体200Aの先端のスリット部200Bと基板Pとの間のギャップ、ピストン部201による塗布液LQcの押し出し流量といった処理条件(設定条件)を調整することで、基板Pの搬送速度が変化しても、塗布液LQcを適正な膜厚で基板P上に塗布することが可能である。また処理装置PR4では、図8中の案内ローラR5、R6のX方向(基板Pの搬送方向)の間隔(処理条件)を基板Pの搬送速度の変化に応じて調整することで、処理液(現像液LQ)の基板Pとの接液長(処理条件)を変えられるので、適正な接液時間(現像時間)を保つことができる。このように、処理装置PR2、PR4は、基板Pの搬送速度の変化に比較的容易に対応できるが、基板Pの搬送速度の急激な変化は避けるのが好ましい。基板Pの搬送速度を規定速度Vppから変化させる場合は、変化率を小さくして徐々に速度を変えつつ、処理条件(設定条件)を徐々に調整していくのがよい。
以上のような状況も踏まえて、ステップS6でのシミュレーションが行われ、ステップS7において、条件変更を行うことで遅延可能時間(待機時間)の経過前に停止要求装置PRdの付加作業が開始可能と判断されると、ステップS8において、処理(設定)条件や基板Pの搬送条件(速度の変化量等)を調整する指示を、対象となる処理装置(調整対象装置)の下位制御装置(18、24、80)に送る。このステップS8によって、製造ラインを構成する処理装置PR2〜PR4(PR5)の少なくとも1つにおける基板Pの搬送速度の調整が始まり、第1蓄積装置BF1または第2蓄積装置BF2の既蓄積長や新規蓄積可能長の不足分が徐々に改善され、遅延可能時間(待機時間)の経過前に、停止要求装置PRdは付加作業を開始することができるとともに、その他の処理装置の各々は変更された処理(設定)条件や基板Pの搬送条件の下で、処理品質を低下させずに処理を継続することができる。なお、図10では、ステップS8で調整対象となる処理装置に一度調整指示が出されると、ステップS2での判定によって、再度、ステップS3〜S7を実行しないフローになっているが、ステップS2を省略して、一定の時間インターバルごとに、ステップS3〜S8を実行してもよい。その場合、ステップS3で取得される処理位置情報、蓄積情報、および作業情報等は、時間インターバルごとに更新されていくので、一度ステップS8が実行された後は、時間インターバルごとのステップS4での判定に応答して、ステップS5(停止要求装置PRdに停止指示)が実行されるので、より正確な制御が可能となる。
しかしながら、ステップS6でのシミュレーションの結果、処理装置PR2〜PR4の各々での処理(設定)条件や基板Pの搬送条件(速度)の好適な変更例(調整パターン)が見いだせない場合もある。その場合は、ステップS7において調整不可と判断され、先に説明した緊急停止時のシーケンスと同様のステップS9が実行される。
以上、図10の動作フローのステップS1〜S8を実行することによって、付加作業のために処理装置を一時的に短時間だけ停止させても、他の処理装置の稼働を継続させることが可能となり、電子デバイスの生産性の著しい低下を抑制できる。なお、付加作業のために停止した処理装置を復帰させる場合は、いずれの処理装置においても基板Pの搬送速度が規定速度Vppになるように、変更していた処理(設定)条件を徐々に元に戻せばよい。
次に、ステップS6で実行されるシミュレーションの一例を図11のフローチャートに基づいて説明する。図11において、ステップS21は、停止要求装置PRdの上流側に基板Pの蓄積装置があるか否かを判定するものである。図1、図4に示したように、本実施の形態では処理装置PR2の上流側、および処理装置PR4(PR5)の下流側には蓄積装置が設けられていない。したがって、停止要求装置PRdが処理装置PR2の場合は、ステップS21の判定により、ステップS26に進む。停止要求装置PRdが処理装置PR3、または処理装置PR4の場合は、ステップS21の判定により、ステップS22に進む。以下、説明の重複を避けるため、停止要求装置PRdが処理装置PR3である場合を最初に説明する。
停止要求装置PRdが処理装置PR3のとき、ステップS22が実行されるということは、処理装置PR3の上流側の第1蓄積装置BF1における基板Pの新規蓄積可能長と、下流側の第2蓄積装置BF2における基板Pの既蓄積長とのどちらか一方、または双方が不足していることを意味する。処理装置PR3を停止させる場合は、付加作業の開始時点で第1蓄積装置BF1によってこれから蓄積可能な新規蓄積可能長が、上流側の処理装置PR2での基板Pの搬送速度(規定速度Vpp)と付加作業の作業時間(停止時間TS3)との積で決まる長さ以上になっている必要がある。新規蓄積可能長が不足している場合は、その不足分を停止要求装置PRdである処理装置PR3の遅延可能時間の経過前までに処理装置PR2(場合によっては処理装置PR3自体)等の処理条件や基板搬送速度の調整によって解消可能か否かをシミュレートする必要がある。そこで、ステップS22では、上流側の第1蓄積装置BF1での新規蓄積可能長が不足している場合に、その不足を解消するような上流側の処理装置PR2と停止要求装置PRdである処理装置PR3(当該装置)との各種の条件変更の候補(組合せ)が、新規蓄積可能長の不足を解消するまでの待ち時間(調整時間)Tw1(秒)を停止要求装置PRdでの遅延可能時間よりも短くするという条件の下で選定される。なお、先のステップS21では、上流側に蓄積装置があるかどうかを判定したが、上流側の蓄積装置での新規蓄積可能長が不足しているか否かを判定してもよい。
ステップS22において選定される各種条件変更の候補(組合せ)は、処理装置PR3(停止要求装置PRd)が付加作業を開始するまでに待てる遅延可能時間(待機時間)よりも待ち時間Tw1が短くなるように設定される。ここで、処理装置PR3(停止要求装置PRd)が付加処理を開始するまでの遅延可能時間(待機時間)をTdp3(秒)、第1蓄積装置BF1での新規蓄積可能長の不足量をΔLs1とし、処理装置PR3での基板Pの搬送速度を規定速度Vppから上げられないとすると、上流側の処理装置PR2での基板Pの搬送速度を規定速度Vppから下げる最適な速度変化特性V2(t)が、
Tdp3>Tw1 ・・・ 式1
Tw1・V2(t)≧ΔLs1 ・・・ 式2
の両方を満たすようにシミュレートされる。その際、規定速度Vppから下げられる搬送速度の値や、速度の低下率を幾通りか設定してシミュレーションが行われる。その結果、適正な候補として求められた速度変化特性V2(t)のもとで、処理装置PR2のダイコータヘッドDCHの処理条件(スリット部200Bと基板Pのギャップ量、ピストン部201の押し下げ速度等)が連動して調整可能かが判断される。こうして求められた速度変化特性V2(t)と処理条件(設定条件)の変更(調整)によって、処理装置PR2での塗布工程が処理品質を保って継続可能であるか否かが、次のステップS23で判断される。なお、シミュレーションの結果、式1の条件を満たす待ち時間Tw1の値も再計算される。このステップS22、S23によって、処理の品質を保ちながら、処理装置PR2の処理条件および基板Pの搬送速度を変更することで、遅延可能時間Tdp3内で、第1蓄積装置BF1の蓄積状態を必要蓄積状態にさせることができるか否かを判断している。
ステップS22のシミュレーションの結果、ダイコータヘッドDCHの処理条件の変更が対応し切れない等の状況によって、適当な速度変化特性V2(t)が見いだせなかった場合は、ステップS23の判断により、ステップS24に進み、停止要求装置PRd(処理装置PR3)の付加作業のために、遅延可能時間Tdp3の経過前に停止要求装置PRd(処理装置PR3)を単独に停止させることが不可能であると判断し、シミュレーションを終了する。ステップS24を経た場合は、先の図10のステップS7において停止不可と判断され、ステップS9のライン停止指示が行われる。
一方、ステップS22のシミュレーションの結果、ダイコータヘッドDCHの処理条件の変更による対応が可能で、適当な速度変化特性V2(t)が見いだせた場合は、ステップS23の判断により、ステップS25に進み、下流側の蓄積装置が有るか否かが判定される。処理装置PR3の場合、下流側に第2蓄積装置BF2があり、処理装置PR3を付加作業のために停止させる場合は、付加作業の開始時点で第2蓄積装置BF2に蓄積済みの基板Pの既蓄積長が、下流側の処理装置PR4(PR5)での基板Pの搬送速度(規定速度Vpp)と付加作業の作業時間(停止時間TS3)との積で決まる長さ以上になっている必要がある。しかしながら、図10のステップS6(図11のシミュレーション)が実行された時点で、第2蓄積装置BF2での既蓄積長は不足している。その不足分を、停止要求装置PRd(処理装置PR3)が提示している遅延可能時間(待機時間)Tdp3の経過前までに処理装置PR4等の処理条件(設定条件)や基板Pの搬送速度の調整によって解消可能か否かが、次のステップS26でシミュレートされる。第2蓄積装置BF2での既蓄積長の不足を解消するためには、上流側の処理装置PR3での基板Pの搬送速度を上げるか、下流側の処理装置PR4(PR5)での基板Pの搬送速度を下げるかの少なくとも一方を行う必要がある。先に説明したように、処理装置PR3が露光装置である場合は基板Pの搬送速度を上げることが難しいため、ここでは、処理装置PR4(PR5)での基板Pの搬送速度を徐々に低下させることで対応する。
ステップS26においても、ステップS22と同様に、第2蓄積装置BF2での既蓄積長の不足を解消するような下流側の処理装置PR4(PR5)と処理装置PR3(当該装置)との各種の条件変更の候補(組合せ)が、既蓄積長の不足を解消するまでの待ち時間(調整時間)Tw2(秒)を遅延可能時間(待機時間)Tdp3よりも短くするという条件の下で選定される。ここで、第2蓄積装置BF2での既蓄積長の不足量をΔLs2とし、処理装置PR3での基板Pの搬送速度を規定速度Vppから上げられないとすると、下流側の処理装置PR4(PR5)での基板Pの搬送速度を規定速度Vppから下げる最適な速度変化特性V4(t)(V5(t))が、
Tdp3>Tw2 ・・・ 式3
Tw2・V4(t)(V5(t))≧ΔLs2 ・・・ 式4
の両方を満たすようにシミュレートされる。その際、規定速度Vppから下げられる搬送速度の値や、速度の低下率を幾通りか設定してシミュレーションが行われる。その結果、適正な候補として求められた速度変化特性V4(t)(V5(t))のもとで、処理装置PR4(PR5)の処理条件(案内ローラR5、R6の間隔調整による接液長の変更)が連動して可能か否かが判断される。こうして求められた速度変化特性V4(t)(V5(t))と処理条件(設定条件)の変更(調整)によって、処理装置PR4(PR5)での現像工程(湿式処理)が所定の品質を保って継続可能であるか否かが、次のステップS27で判断される。なお、シミュレーションの結果、式3の条件を満たす待ち時間Tw2の値も再計算される。このステップS26、S27によって、処理の品質を保ちながら、処理装置PR4(PR5)の処理条件および基板Pの搬送速度を変更することで、遅延可能時間Tdp3内で、第2蓄積装置BF2の蓄積状態を必要蓄積状態にさせることができるか否かを判断している。
ステップS26のシミュレーションの結果、処理装置PR4(PR5)の処理条件(接液長)の変更が対応し切れない等の状況によって、適当な速度変化特性V4(t)(V5(t))が見いだせなかった場合は、ステップS27の判断により、ステップS24に進み、停止要求装置PRd(処理装置PR3)の付加作業のために、遅延可能時間(待機時間)Tdp3の経過前に停止要求装置PRd(処理装置PR3)を単独に停止させることが不可能であると判断し、シミュレーションを終了する。ステップS24を経た場合は、先の図10のステップS7において停止不可と判断され、ステップS9のライン停止指示が行われる。また、ステップS26のシミュレーションの結果、処理装置PR4(PR5)の処理条件(接液長等)の変更による対応が可能で、適当な速度変化特性V4(t)(V5(t))が見いだせた場合は、ステップS27の判断により、ステップS28に進み、遅延可能時間Tdp3の経過前に停止要求装置PRd(処理装置PR3)を単独に停止可能であると判断してシミュレーションを終了する。なお、先のステップS25において、下流側に蓄積装置が無い場合は、ステップS28に進む。ステップS28を経た場合は、先の図10のステップS7において、遅延可能時間(待機時間)の経過前に停止要求装置PRdを停止することが可能と判断され、ステップS8に進む。
以上の図11のシミュレーションでは、処理装置PR3での基板Pの搬送速度を規定速度Vppから変えない場合で説明したが、処理装置PR3(露光装置)の構成によっては、処理装置PR3を通る基板Pを規定速度Vppよりも早く搬送させることが可能である。例えば、基板Pの搬送方向に複数の回転ドラムDR2を並べ、各回転ドラムDR2の位置で基板P上の長尺方向に分割された複数の領域を、複数の露光ヘッドや投影光学系の各々で個別に露光するような構成、いわゆるタンデム型の露光装置の場合、或いは、露光用の光源を複数搭載して、必要に応じて複数の光源からのビームを合成して照度アップさせる構成とした場合は、基板Pの搬送速度を規定速度Vppに対して高めることも可能である。その場合は、ステップS22、S26でのシミュレーションにおいて、処理装置PR3での基板Pの搬送速度の調整を変更条件として加味すればよい。処理装置PR3での基板Pの搬送速度を高められると、ステップS22、S26のシミュレーション結果として求められる待ち時間Tw1、Tw2、すなわち、処理装置PR3の付加作業のための停止に備えた各処理装置PR2〜PR4(PR5)での調整時間を短縮することができる。
また、以上の説明では、停止要求装置PRdを処理装置PR3としたが、他の処理装置PR2、PR4(PR5)であっても、図11のシミュレーションは同様に適用可能である。停止要求装置PRdが処理装置PR2であって、図10のステップS4での判断により、ステップS6(図11)のシミュレーションを行う場合は、上流側に蓄積装置が無く、下流側に第1蓄積装置BF1が有るので、図11のステップS21、S26、S27の後、ステップS24かS28の一方が実行される。また、停止要求装置PRdが処理装置PR4(PR5)であって、図10のステップS4での判断により、ステップS6(図11)のシミュレーションを行う場合は、下流側に蓄積装置が無く、上流側に第2蓄積装置BF2が有るので、図11のステップS21、S22、S23の後、ステップS24とステップS28のいずれか一方が実行される。さらに、停止要求装置PRdが処理装置PR2、またはPR4(PR5)の場合、処理装置PR3での基板Pの搬送速度の調整を条件変更に加えることができる。その場合に、処理装置PR3での基板Pの搬送速度を規定速度Vppから低下させる場合は、図6に示したポリゴンミラー66の回転速度と、描画データ(パターンの画素データ)に応じて描画用光学素子(光変調素子)52をOn/Offするクロックパルスの周波数とを、同じ比率で低下させるようにすればよい。
また、本第1の実施の形態では、停止要求装置PRdの付加作業の際の停止時間が予め指定されており、その停止時間の間に規定速度Vppで搬送され得る基板Pの搬送長に対して、各蓄積装置BF1、BF2での既蓄積長や新規蓄積可能長が長くなるように設定可能なので、基板Pの搬送速度を規定速度Vppから変更していた処理装置は、停止要求装置PRdが付加作業を開始した直後から、基板Pの搬送速度を規定速度Vppに戻すように制御することができる。
なお、第1蓄積装置BF1および第2蓄積装置BF2の蓄積状態(既蓄積長、新規蓄積可能長)は、蓄積装置BF1、BF2に搬入する基板Pの速度と、蓄積装置BF1、BF2から搬出される基板Pの速度との差から求めるようにしてもよい。また、各ダンサーローラ20、22のZ方向における位置を検出する位置センサを設け、各ダンサーローラ20、22のZ方向における位置から蓄積装置BF1、BF2の蓄積長を求めるようにしてもよい。
また、図10、図11においては、処理装置PR1について説明しなかったが、処理装置PR1と処理装置PR2との間には蓄積装置がないので、処理装置PR1と処理装置PR2との基板Pの搬送速度を略同一にする必要がある。したがって、処理装置PR2を停止時間TS2の間一時停止させる場合は、処理装置PR1も停止時間TS2の間停止させる。つまり、処理装置PR1は、処理装置PR2における基板Pの搬送および処理と連動して、基板Pを搬送して処理を行う。
[第1の実施の形態の変形例]
上記第1の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)ところで、処理装置PR3のようなパターニング装置(露光装置、インクジェット描画機)では、図5、図9で説明したように、アライメント顕微鏡AM1〜AM3の撮像素子等によって、基板Pの長尺方向の移動によって、各検出領域Vw1〜Vw3内を横切るアライメントマーク(マーク)Ks1〜Ks3の像を、エンコーダシステム(読取ヘッドEC1a、EC1b)による計測結果から捕捉して、高速に画像検出する必要がある。しかしながら、例えば、デバイス形成領域Wの露光(描画)開始位置を定める最初のアライメントマークKs1〜Ks3に何らかの損傷が有ったり、消失したりしたミスアライメントの発生により、そのデバイス形成領域Wに対する露光が不良になる可能性がある。また、デバイス形成領域Wの全体の変形を精密に計測するために、回転ドラムDR2を露光時の速度(規定速度Vpp)よりも遅く回転させて、各アライメントマークKs1〜Ks3の画像検出の精度(再現性等)を高める場合もある。
そのような場合、処理装置PR3は、1つのデバイス形成領域Wに対する露光動作を中断して飛ばすか、または、一定の距離だけ基板Pを逆方向に戻してから、再度順方向に搬送するリトライ動作を行うこともある。そのようなリトライ動作では、基板Pの逆転移動等の期間中に処理装置PR3による実質的な露光動作は停止していることになるので、リトライ動作も付加作業の1つに含ませることができる。そのリトライ動作の場合、図10、図11の動作フローでは規定速度Vppの下で求められた各蓄積装置BF1、BF2での既蓄積長や新規蓄積可能長の不足分に対して、基板Pの一定距離に渡る逆送による長さ分を加味することになる。
(変形例2)以上の第1の実施の形態では、各処理装置PR2〜PR4(PR5)を通る基板Pの搬送速度は、規定速度Vppに揃えることを前提としたが、処理装置PR2〜PR4(PR5)毎に、基板Pの搬送速度の規定値を少し異ならせてもよい。その場合、蓄積装置BF1、BF2は、前後の処理装置での基板Pの搬送速度の差分によって生じる基板Pの余剰や不足を常時吸収するように動作するので、ステップS3で取得される情報に基づいて求められる各蓄積装置BF1、BF2での既蓄積長や新規蓄積可能長も、差分吸収のための基板蓄積や基板放出の分だけ、早く変化することになる。図11のシミュレーションでは、そのような早い変化にも対応するように、図10のプログラムの実行インターバルを短く設定すればよい。
以上の第1の実施の形態と変形例によれば、複数の処理装置の各々にシート状の基板を順次搬送して電子デバイス(電子回路)を製造するデバイス製造システムにおいて、複数の処理装置のうちの第1の処理装置において基板の搬送を一時的に停止させる付加作業の際は、予想される停止時間、または停止に至るまでの遅延可能時間(待機時間)Tdpと、隣接する第2の処理装置との間に設けられた蓄積装置での基板の蓄積状況(既蓄積長や新規蓄積可能長)とに基づいて、第2の処理装置の処理動作を継続させつつ、第1の処理装置を一時的に停止可能とする条件を設定することができるので、第1の処理装置の一時的な停止に引きずられて、他の処理装置(第2の処理装置)が停止するような可能性が低減され、製造ライン全体を止めるリスクが減少するとともに、付加作業による処理装置の性能維持等も可能となり、製造される電子デバイスの品質を高品位に保つことができる。
[第2の実施の形態]
以上の第1の実施の形態では、各処理装置PR2〜PR4が付加作業のために一時的に停止させる場合であっても、製造ラインの全体を極力止めないようにしたものであるが、各処理装置PR2〜PR4が、経時変化等によって、設定された条件に対して徐々に処理誤差を増していくこと、すなわち各処理装置での処理品質が徐々に低下することもある。複数の異なる処理装置に基板Pを通して連続処理する場合、どこか1つの処理装置での処理誤差が増加していくと、その誤差が最後まで累積して、製造されるデバイスの品質が劣化して、製造ライン全体の停止に至る可能性がある。第2の実施の形態では、複数の処理装置の各々が、製造されるデバイスの最終的な品質を維持するように、処理条件や基板Pの搬送条件を動的に調整して、製造ライン全体が極力止まらないように制御するものである。
上記第2の実施の形態においても、上記第1の実施の形態で説明したデバイス製造システム10および基板P(図1〜図9)を用いるものとする。上述したように、デバイス製造システム10によって、基板Pに所望する金属層のパターンを出現させるために、各処理装置PR1〜PR5は、設定条件にしたがって基板Pに対して各処理を行う。例えば、処理装置PR1の設定条件として、プラズマを射出するための電圧およびプラズマを照射する照射時間等を規定する処理条件と、基板Pの搬送速度条件とが設定されている。処理装置PR1は、該設定条件にしたがって基板Pを搬送しつつ基板Pに対してプラズマ表面処理を行う。処理装置PR2の設定条件(第1の設定条件)として、感光性機能層を形成する領域を規定する領域条件および感光性機能層の膜厚を規定する膜厚条件等を含む処理条件(第1処理条件)と、基板Pの搬送速度条件とが設定されている。処理装置PR2は、該設定条件にしたがって基板Pを搬送しつつ感光性機能層の成膜処理を行う。
処理装置PR3の設定条件(第2の設定条件)として、レーザ光LBの強度を規定する強度条件、スポット光SPの走査速度(ポリゴンミラー66の回転速度)を規定する走査速度条件、多重露光回数を規定する露光回数条件、および、描画するパターンを規定するパターン条件(パターンデータ)等を含む処理条件(第2処理条件)と、基板Pの搬送速度条件とが設定されている。処理装置PR3は、該設定条件にしたがって基板Pを搬送しつつ基板Pに対して露光処理を行う。処理装置PR4の設定条件(第3の設定条件)として、現像液LQの温度を規定する温度条件、現像液LQの濃度を規定する濃度条件、および、浸漬時間を規定する浸漬時間条件等を含む処理条件(第3処理条件)と、基板Pの搬送速度条件とが設定されている。処理装置PR4は、該設定条件にしたがって基板Pを搬送しつつ現像処理を行う。処理装置PR5の設定条件として、エッチング液の温度を規定する温度条件、濃度を規定する濃度条件、および、浸漬時間を規定する浸漬時間条件等を含む処理条件と、基板Pの搬送速度条件とが設定されており、処理装置PR5は、該設定条件にしたがって基板Pを搬送しつつエッチング処理を行う。なお、処理装置PR4がメッキ処理を行う場合は、処理装置PR4の設定条件(第3の設定条件)として、メッキ液の温度を規定する温度条件、メッキ液の濃度を規定する濃度条件、および、浸漬時間を規定する浸漬時間条件等を含む処理条件(第3処理条件)と、基板Pの搬送速度条件とが設定されている。したがって、処理装置PR4は、該設定条件にしたがって基板Pを搬送しつつ、メッキ処理を行うことになる。
この各処理装置PR1〜PR5の設定条件は、各処理装置PR1〜PR5によって施される実処理(実際の処理)の状態が、目標の処理状態となるように予め設定されている。各処理装置PR1〜PR5の設定条件は、各処理装置PR1〜PR5に設けられた図示しない記憶媒体に記憶されていてもよく、上位制御装置14の図示しない記憶媒体に記憶されていてもよい。また、デバイス製造システム10内では、基板Pは一定の速度で搬送されるので、各処理装置PR1〜PR5で設定されている設定条件の搬送速度条件は、基本的には同一の速度(例えば、5mm/秒〜50mm/秒の範囲の一定速度)となっている。
各処理装置PR1〜PR5は、設定条件にしたがって基板Pに対して処理を行っているが、実処理(実際の処理)の状態が、目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを生じる場合がある。例えば、経年劣化等によって光源装置32のレーザ光源が発光するレーザ光LBの強度が低下したり、現像液LQ、エッチング液の温度・濃度が低下したりする場合があるため、実処理の状態が目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを生じる場合がある。例えば、レーザ光LBの強度が低下した場合は露光量が低下するので、フォトレジストの場合は、スポット光SPを照射した領域の一部分、つまり、スポット光SPを照射した領域の外周部分の感光性機能層(フォトレジスト層)が深部まで改質されない。そのため、現像処理によって感光性機能層に形成されるパターンの線幅が所望するパターンの線幅(目標線幅)に対して太くなってしまう。つまり、光が照射されて改質された部分が現像によって溶解し、残ったレジスト層の部分(非改質部)の領域がディスプレイパネル用の回路または配線等の金属層(導電性)のパターンとしてエッチング後に残留するので、露光量が低下するとパターンの線幅が太くなってしまう。その結果、基板Pに出現する金属層のパターンが所望のパターンとは異なってしまう。
現像液LQの温度・濃度が低下した場合若しくは現像液LQの浸漬時間が短くなった場合は、現像液LQによる感光性機能層の改質部の除去を十分に行うことができない。そのため、処理装置PR4が感光性機能層に形成された潜像に応じて、感光性機能層に形成するパターンの線幅が目標線幅からずれてくる。その結果、基板Pに出現する金属層のパターンは所望のパターンとならない。
エッチング液の温度・濃度が低下した場合若しくはエッチング液の浸漬時間が短くなった場合は、パターンが形成された感光性機能層をマスクとして感光性機能層の下層に形成された金属性薄膜(導電性の薄膜)のエッチングを十分に行うことができない。そのため、処理装置PR5がエッチングにより形成する金属層のパターンの線幅が目標線幅からずれてくる。つまり、エッチングにより金属性薄膜が除去されなかった部分がディスプレイパネル用の回路または配線等のパターンとなるので、パターンが形成された感光性機能層をマスクとしてエッチングが十分に行われない場合は、パターンの線幅が太くなる。その結果、基板Pに出現する金属層のパターンは所望のパターンとはならない。
また、感光性機能層(フォトレジスト)の膜厚が厚くなると、スポット光SPが照射された領域の感光性機能層の深部が改質され難くなるので、現像液LQによる改質部の除去により、感光性機能層に形成されるパターンの線幅が目標値からずれてくる。その結果、基板Pに出現する金属層のパターンは所望のパターンとならない。
このように、各処理装置PR1〜PR5が設定条件にしたがって基板Pに対して施した実処理の状態のいずれか1つが目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを有している場合には、基板Pに所望の金属層のパターンを出現させることはできず、パターンの形状または寸法が変動してしまう。そこで、本第2の実施の形態では、上位制御装置14は、各処理装置PR1〜PR5の各々において基板Pに施される実処理の状態の少なくとも1つが、目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを呈する場合は、処理誤差Eを発生する処理装置PR以外の他の処理装置PRの設定条件を処理誤差Eに応じて変化させる。この処理誤差Eは、基板Pに形成されるパターンの形状または寸法が目標のパターンの形状または寸法に対してどの程度変化しているかを示すものである。
処理誤差Eを呈する設定条件が、処理装置PR3の設定条件の場合は、まず、処理誤差Eが生じないように若しくは処理誤差Eが許容範囲に収まるように、処理装置PR3の設定条件を変更する。そして、処理装置PR3の設定条件を変更しただけでは対応することができない場合は、処理誤差Eが生じないように若しくは処理誤差Eが許容範囲に収まるように、他の処理装置PR(PR1、PR2、PR4、PR5)の設定条件をさらに変更する。このとき、他の処理装置PRの設定条件の変更完了後に、処理装置PR3の設定条件を元に戻してもよい。また、処理誤差Eを呈する設定条件が処理装置PR3以外の処理装置PRの場合は、処理誤差Eが生じないように若しくは処理誤差Eが許容範囲に収まるように、優先的に処理装置PR3の設定条件を変更させる。
図1に示した上位制御装置14は、処理装置PR1〜PR5毎に処理の目標値となるような設定条件(レシピ)を設定したり、それらの設定条件を修正したり、各処理装置PR1〜PR5の処理状況をモニターしたりするための操作装置を備えている。その操作装置は、データ、パラメータ、コマンド等を入力するキーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置と、処理装置PR1〜PR5毎の設定条件、処理状態、処理誤差Eの発生状況、その処理誤差Eの補正のために設定条件の変更が可能な処理装置PRの候補、その補正の規模(補正量、補正時間等)等を表す情報、および基板Pの搬送速度の調整に関する情報を表示するモニター装置(ディスプレイ)とで構成される。
〔第2の実施の形態の動作〕
以下、各処理装置PR1〜PR5が設定条件にしたがって基板Pに対して施した実処理の状態のいずれか1つが目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを有した場合のデバイス製造システム10の動作について詳しく説明する。図12は、許容範囲を超えて処理誤差Eが発生している処理装置PRを判定するためのデバイス製造システム10の動作を示すフローチャートである。まず、上位制御装置14は、感光性機能層の膜厚が許容範囲内であるか否かを判断する(ステップS31)。つまり、実際に形成された感光性機能層の膜厚が、目標の処理状態となるように設定した膜厚条件(以下、目標の膜厚条件)に対して許容範囲内にあるか否かを判断する。この判断は、膜厚計測装置16aが計測した膜厚に基づいて行う。すなわち、ステップS31では、処理装置PR2の設定条件に起因して基板Pに形成されるパターンの品質(形状や寸法の忠実度や均一性等)が目標に対して許容範囲を超えて変化(低下)しているか否かを検知している。ステップS31で、膜厚計測装置16aが計測した膜厚が目標の膜厚に対して許容範囲内にないと判断すると、上位制御装置14は、処理装置PR2に許容範囲を超えて処理誤差E(E2)が発生していると判定する(ステップS32)。つまり、処理装置PR2が施した実処理の状態が目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差E2を有していると判定する。
一方、ステップS31で、膜厚計測装置16aが計測した膜厚が許容範囲内にあると判断すると、上位制御装置14は、処理装置PR3によって基板P上に照射されたレーザ光LBの露光量が目標の露光量に対して許容範囲内にあるか否かを判断する(ステップS33)。この判断は、強度センサ37が検出したレーザ光LBの強度が目標の処理状態となるように設定した強度条件(以下、目標の強度条件)に対して許容範囲内にあるか否かを判断することで行う。つまり、レーザ光LBの強度に応じて感光性機能層に形成されるパターンの線幅も変わってくるので、露光量を示すレーザ光LBの強度に基づいて、露光量が許容範囲内にあるか否かを判断する。なお、ステップS33では、露光量を示す他の情報、例えば、スポット光SPの走査速度等が目標の処理状態となるように設定した走査速度条件(以下、目標の走査速度条件)に対して許容範囲内にあるか否かを判断してもよい。また、複数の情報(レーザ光LBの強度およびスポット光SPの走査速度等)に基づいて露光量が許容範囲内にあるか否かを判断してもよい。すなわち、ステップS33では、処理装置PR3の設定条件に起因して基板Pに形成されるパターンの品質(形状や寸法の忠実度や均一性等)が目標に対して許容範囲を超えて変化(低下)しているか否かを検知している。ステップS33で、露光量が目標の露光量(目標の処理状態となるように設定された処理条件)に対して許容範囲内にないと判断すると、上位制御装置14は、処理装置PR3に許容範囲を超えて処理誤差E(E3)が発生していると判定する(ステップS34)。つまり、処理装置PR3が施した実処理の状態が目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差E3を有していると判定する。
一方、ステップS33で、露光量が許容範囲内にあると判断すると、上位制御装置14は、処理装置PR4が現像処理を行うことによって感光性機能層に形成されたパターンの線幅が許容範囲内にあるか否かを判断する(ステップS35)。上位制御装置14は、処理装置PR4内に設けられた撮像装置83が撮像した画像データに基づいて感光性機能層に形成されたパターンの線幅を計測する。原則として感光性機能層に形成されるパターンの線幅が目標線幅となるように処理装置PR4の設定条件が定められているが、例えば、現像液LQの温度、濃度、または、浸漬時間が目標の処理状態となるように設定した温度条件(以下、目標の温度条件)、濃度条件(以下、目標の濃度条件)、または、浸漬時間条件(以下、目標の浸漬時間条件)より低く若しくは短くなった場合は、形成されるパターンの線幅が目標線幅よりずれてしまう。すなわち、ステップS35では、処理装置PR4の設定条件に起因して基板Pに形成されるパターンの品質(形状や寸法の忠実度や均一性等)が目標に対して許容範囲を超えて変化(低下)しているか否かを検知している。ステップS35で、感光性機能層に形成したパターンの線幅が目標線幅に対して許容範囲内にないと判断すると、上位制御装置14は、処理装置PR4に許容範囲を超えて処理誤差E(E4)が発生していると判定する(ステップS36)。つまり、処理装置PR4が施した実処理の状態が目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差E4を有していると判定する。
一方、ステップS35で、感光性機能層に形成されたパターンの線幅が許容範囲内にあると判断すると、上位制御装置14は、処理装置PR5がエッチングすることによって基板P上に出現した金属層のパターンの線幅が許容範囲内にあるか否かを判断する(ステップS37)。上位制御装置14は、処理装置PR5内に設けられた撮像装置83が撮像した画像データに基づいて金属層のパターンの線幅を計測する。原則として金属層のパターンの線幅が目標線幅となるように処理装置PR5の設定条件が定められているが、例えば、エッチング液の温度、濃度、または、浸漬時間が、目標の処理状態となるように設定した温度条件(以下、目標の温度条件)、濃度条件(以下、目標の濃度条件)、または、浸漬時間条件(以下、目標の浸漬時間条件)より低く若しくは短くなった場合は、形成される金属層のパターンの線幅は目標線幅よりずれてしまう。すなわち、ステップS37では、処理装置PR5の設定条件に起因して基板Pに形成されるパターンの品質(形状や寸法の忠実度や均一性等)が目標に対して許容範囲を超えて変化(低下)しているか否かを検知している。ステップS37で、金属層のパターンの線幅が目標線幅に対して許容範囲内にないと判断すると、上位制御装置14は、処理装置PR5に許容範囲を超えて処理誤差E(E5)が発生していると判定する(ステップS38)。つまり、処理装置PR5が施した実処理の状態が目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差E5を有していると判定する。一方、ステップS37で、金属層のパターンの線幅が許容範囲内にあると判断すると、処理装置PR2〜PR5に処理誤差Eが発生していないと判定する(ステップS39)。
図12のステップS34で、処理装置PR3に許容範囲を超えて処理誤差E3が発生していると判定された場合のデバイス製造システム10の動作を説明する。図13は、処理装置PR3に許容範囲を超えて処理誤差E3が発生している場合のデバイス製造システム10の動作を示すフローチャートである。上位制御装置14は、処理装置PR3に処理誤差E3が発生している場合は、処理装置PR3の設定条件のうち、処理条件を変更することで該処理誤差E3をカバーすることができるか否かを判断する(ステップS41)。つまり、処理条件を変更することで処理誤差E3を無くすことができるか若しくは処理誤差E3を許容範囲に収めることができるか否かを判断する。例えば、露光量が目標の露光量に対して許容範囲を超えて少ない場合には、露光量を目標の露光量まで多くする必要があり、処理条件を変えることで目標の露光量にすることができるか否かを判断する。この露光量は、レーザ光LBの強度およびスポット光SPの走査速度等によって決まるので、ステップS41では、強度条件および走査速度条件等を変更することで、実際の露光量を目標の露光量まで上げることができるか否かを判断する。
ステップS41で、処理条件を変更することでカバーすることができると判断すると、上位制御装置14は、処理誤差E3に応じて処理装置PR3の設定条件の処理条件(強度条件や走査速度条件、パターン条件等)を変更する(ステップS42)。一方、ステップS41で、処理条件を変更するだけではカバーできないと判断すると、上位制御装置14は、処理誤差E3に応じて処理装置PR3の処理条件と搬送速度条件とを変更する(ステップS43)。例えば、実際の露光量が目標の露光量に対して許容範囲を超えて少ない場合は、処理条件を変更するとともに、基板Pの搬送速度が遅くなるように搬送速度条件を変更する。搬送速度条件を遅くすることで、露光量を増やすことができる。なお、処理誤差E3のうち、処理条件を変えることによってカバーできる処理誤差をE3aとし、搬送速度条件を変えることによってカバーできる処理誤差をE3bとする。したがって、E3=E3a+E3b、となる。処理条件のみを変えることによって処理誤差E3をカバーできる場合は、E3a=E3となり、E3b=0となる。また、処理条件を変更することができない場合、例えば、現在設定されている強度条件が最大の強度となっている場合等は、処理誤差E3に応じて搬送速度条件のみを変えて対応することになる。この場合は、E3a=0となり、E3b=E3となる。
ここで、処理装置PR1〜PR5は、基板Pを一定の速度で搬送しているが、処理装置PR3は、第1蓄積装置BF1と第2蓄積装置BF2との間に設けられているので、処理装置PR3内での基板Pの搬送速度を独立して変更することができる。つまり、処理装置PR3の搬送速度と処理装置PR3以外の処理装置PRとの搬送速度の差を、第1蓄積装置BF1および第2蓄積装置BF2とで吸収することができる。処理装置PR3内の基板Pの搬送速度を一定の速度より遅く搬送させると、第1蓄積装置BF1の基板Pの蓄積量は徐々に増加し、第2蓄積装置BF2の蓄積量は徐々に低下する。逆に、処理装置PR3内の基板Pの搬送速度を一定の速度より速く搬送させると、第1蓄積装置BF1の基板Pの蓄積量は徐々に低下し、第2蓄積装置BF2の蓄積量は徐々に増加する。第1蓄積装置BF1または第2蓄積装置BF2の蓄積長が所定の蓄積長以下となると、第1蓄積装置BF1または第2蓄積装置BF2に基板Pが余分に蓄積されなくなるため、処理装置PR3内での基板Pの搬送速度を独立して変更することができなくなる。また、第1蓄積装置BF1または第2蓄積装置BF2は、所定長以上の長さの基板Pを蓄積することができない。そのため、一時的に処理装置PR3内での基板Pの搬送速度を変えることはできても、一定の時間以上、基板Pの搬送速度を変えることはできない。
そのため、第1蓄積装置BF1および前記第2蓄積装置BF2の蓄積長を所定の範囲内に収めるために、処理装置PR3での基板Pの搬送速度を元に戻す必要がある。そのため、ステップS43で、処理装置PR3の処理条件と搬送速度条件とを変更すると、上位制御装置14は、いずれか1つの他の処理装置PRの処理条件を変更することで、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3bをカバー(補完)することができる否かを判断する(ステップS44)。つまり、処理装置PR3の搬送速度を元に戻すと、露光量が減るので、それによって生じる不具合いを他の処理装置PRで補うことで、パターンの線幅を目標線幅にすることができるか否かを判断する。
ステップS44で、いずれか1つの他の処理装置PRの処理条件を処理誤差E3bに応じて変更することでカバーできると判断すると、カバーできると判断された当該他の処理装置PRの処理条件を、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3bに応じて変更して(ステップS45)、ステップS47に進む。例えば、処理条件を変更することでカバーできると判断された他の処理装置PRが処理装置PR2の場合は、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3b(例えば、露光量不足)に応じて処理装置PR2の処理条件(膜厚条件等)を変更する。処理誤差E3が露光量不足の場合には、膜厚が薄くなるほど露光量が少なくても感光性機能層の深部まで改質されるので、膜厚条件の厚さを薄くすることで、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3b(露光量不足)をカバーすることができる。その結果、現像処理によって感光性機能層に形成されるパターンの線幅および出現する金属層のパターンの線幅を目標線幅にすることができる。
処理条件を変更することでカバーできると判断された他の処理装置PRが処理装置PR4の場合は、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3bに応じて処理装置PR4の処理条件(温度条件、濃度条件、浸漬時間条件)を変更する。例えば、現像液LQの温度・濃度が高いほど、また、基板Pが現像液LQに浸漬する浸漬時間が長いほど、感光性機能層が溶解し除去される領域が広がるので、感光性機能層を深部まで除去することができる。したがって、処理誤差E3が露光量不足の場合には、温度条件、濃度条件、および、浸漬時間条件の少なくとも1つを高く若しくは長くすることで、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3b(露光量不足)をカバーすることができ、パターンの線幅を目標線幅にすることができる。処理装置PR4の下位制御装置80は、温度条件にしたがって、処理装置PR4のヒータH1、H2を制御し、浸漬時間条件にしたがって、処理装置PR4の可動部材84を移動させる。また、処理装置PR4の処理槽BTには、処理槽BTにある現像液LQを回収するとともに、処理槽BTに新たな現像液LQを供給する循環系が設けられ、処理装置PR4の下位制御装置80は、該処理槽BTに供給する現像液LQの濃度を濃度条件によって変更させる。
処理条件を変更することでカバーできると判断された他の処理装置PRが処理装置PR5の場合は、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3bに応じて処理装置PR5の処理条件(温度条件、濃度条件、浸漬時間条件)を変更する。例えば、パターンが形成された感光性機能層をマスクとして感光性機能層の下層に形成された金属性薄膜がエッチングされるが、エッチング液の温度・濃度が高いほど、また、基板Pがエッチング液に浸漬する浸漬時間が長いほど、エッチングされる部分が広がる。したがって、処理誤差E3が露光量不足の場合には、エッチング液の温度条件、濃度条件、および、浸漬時間条件の少なくとも1つを高く若しくは長くすることで、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3b(露光量不足)をカバーすることができ、パターンの線幅を目標線幅にすることができる。処理装置PR5の下位制御装置80は、温度条件にしたがって、処理装置PR5のヒータH1、H2を制御し、浸漬時間条件にしたがって、処理装置PR5の可動部材84を移動させる。また、処理装置PR5の処理槽BTには、処理槽BTにあるエッチング液を回収するとともに、処理槽BTに新たなエッチング液を供給する循環系が設けられ、処理装置PR5の下位制御装置80は、該処理槽BTに供給するエッチング液の濃度を濃度条件によって変更させる。
ここで、処理装置PR3の搬送速度条件を変更せずに、初めから処理装置PR3以外の他の処理装置PRの処理条件を変更することで処理装置PR3に発生した処理誤差E3bをカバーすることも考えられる。しかしながら、処理装置PR3(露光装置EX等のパターニング装置)においては、処理条件が変わるとそれに応じて実処理の処理状態を瞬時に変えることが可能であるが、処理装置PR3以外の他の処理装置PR(主に湿式処理装置)においては、処理条件を変更しても実際に実処理の状態が変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態となるまでにはある程度の時間がかかり、処理装置PR3で発生した処理誤差E3bを迅速にカバーすることができない。例えば、処理装置PR2の処理条件(膜厚条件等)を変えても、基板Pに成膜される感光性機能層の膜厚は時間の経過とともに徐々に変わる。また、処理装置PR4、PR5の処理条件(温度条件、濃度条件、浸漬時間条件)を変えても、現像液LQおよびエッチング液の温度・濃度、浸漬時間が時間の経過とともに徐々に変わる。そのため、他の処理装置PRの実処理の状態が変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態となるまでは、処理装置PR3の基板Pの搬送速度を徐々に変えることで処理誤差E3bに対処している。他の処理装置PRの処理条件の変更後は、当該他の処理装置PRによる実処理の処理状態が変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態に徐々に近づいていくので、上位制御装置14は、それに応じて処理装置PR3内での基板Pの搬送速度条件を徐々に戻す。上位制御装置14は、膜厚計測装置16a、温度センサTs、濃度センサCs、位置センサ87等の検出結果に基づいて処理装置PR3内での基板Pの搬送速度条件を変更前の搬送速度条件に徐々に近づける。
なお、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3bをカバーすることができる処理装置PRが複数ある場合は、処理装置PR3に近い処理装置PRの処理条件を変更させてもよい。例えば、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3bをカバーすることができる処理装置PRが、処理装置PR2と処理装置PR5の場合には、処理装置PR3に近い処理装置PR2の処理条件を変更してもよい。また、ステップS44では、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3bを、他の処理装置PRでカバーできるか否かを判断したが、処理装置PR3に発生した処理誤差E3、つまり、処理装置PR3の処理条件と搬送速度条件とを元に戻した場合に発生する処理誤差E3を、他の処理装置PRでカバーできるか否かを判断してもよい。このときは、ステップS45では、カバーできると判断された他の処理装置PRの処理条件を変更することで、処理装置PR3に発生した処理誤差E3をカバーする。この場合は、他の処理装置PRの処理条件の変更後は、当該他の処理装置PRによる実処理の処理状態が変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態に徐々に近づいていくので、上位制御装置14は、それに応じて処理装置PR3の搬送速度条件に加えて処理条件も徐々に戻すことになる。
一方、ステップS44で、いずれか1つの他の処理装置PRの処理条件を変更するだけでは、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3b(例えば、露光量不足)をカバーすることができないと判断すると、上位制御装置14は、複数の他の処理装置PRの処理条件を、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻した場合に発生する処理誤差E3bに応じて変更して(ステップS46)、ステップS47に進む。この場合は、複数の他の処理装置PRの実処理の処理状態は、時間の経過とともに変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態に近づいていくので、上位制御装置14は、それに応じて処理装置PR3内での基板Pの搬送速度条件を徐々に元に戻す。
なお、複数の他の処理装置PRの処理条件を、処理装置PR3に発生した処理誤差E3に応じて変更してもよい。この場合は、複数の他の処理装置PRの処理条件の変更後は、実処理の処理状態が変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態に徐々に近づいていくので、上位制御装置14は、それに応じて処理装置PR3の搬送速度条件に加えて処理条件も徐々に戻すことになる。
ステップS47に進むと、上位制御装置14は、処理条件の変更が完了したか否かを判断する。つまり、ステップS45またはS46で処理条件が変更された処理装置PRによる実処理の状態が、変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態になったか否かを判断する。この判断は、膜厚計測装置16a、温度センサTs、濃度センサCs、位置センサ87等の検出結果に基づいて行う。ステップS47で、処理条件の変更が完了していないと判断すると、ステップS47に留まり、処理条件の変更が完了したと判断すると、処理装置PR3の搬送速度条件を元に戻す(ステップS48)。なお、処理装置PR3に発生した処理誤差E3を他の処理装置PRでカバーした場合は、処理装置PR3の搬送速度条件に加えて処理条件も元に戻す。
なお、ステップS46で、複数の他の処理装置PRの処理条件を変更しても、処理装置PR3の処理誤差E3bをカバーすることができない場合は、複数の他の処理装置PRの搬送速度条件を変更することができるか否かを判断し、変更できる場合は、全ての処理装置PR1〜PR5の搬送速度条件が同一となるように、変更してもよい。例えば、処理装置PR1、PR2、PR4、PR5の搬送速度条件をステップS43で変更した処理装置PR3の搬送速度条件と同一となるように変更してもよい。
次に、図12のステップS32、S36、または、S38で、処理装置PR3以外の処理装置PR(PR2、PR4、または、PR5)に許容範囲を超えて処理誤差E(E2、E4、または、E5)が発生していると判定された場合のデバイス製造システム10の動作を説明する。図14は、処理装置PR3以外の処理装置PRに許容範囲を超えて処理誤差Eが発生している場合のデバイス製造システム10の動作を示すフローチャートである。上位制御装置14は、処理装置PR3以外の処理装置PRに処理誤差E(E2、E4、または、E5)が発生している場合は、処理装置PR3の処理条件を変更することでこの処理誤差E(E2、E4、または、E5)をカバーすることできるか否かを判断する(ステップS51)。例えば、処理誤差Eが発生した他の処理装置PRが処理装置PR2の場合であって、実際に形成されている感光性機能層の膜厚が目標の膜厚条件より厚い場合は、処理装置PR4で感光性機能層に形成されるパターンの線幅は太くなるので、処理装置PR3の処理条件を変更することで、露光量を増やして感光性機能層に形成されるパターンの線幅を目標線幅にできるか否かを判断する。また、処理誤差Eが発生した他の処理装置PRが処理装置PR4、PR5の場合であって、実際の現像液LQ、エッチング液の温度、濃度、または、浸漬時間が、目標の温度条件、濃度条件、または、浸漬時間条件より低い若しくは短い場合は、感光性機能層に形成されるパターン、金属層のパターンの線幅は太くなるので、処理装置PR3の処理条件を変更することで、露光量を増やして感光性
機能層に形成されるパターン、金属層のパターンの線幅を目標線幅にできるか否かを判断する。
ステップS51で、処理装置PR3の処理条件を変更することで対応可能であると判断すると、上位制御装置14は、処理誤差E(E2、E4、または、E5)に応じて処理装置PR3の処理条件(強度条件や走査速度条件、パターン条件等)を変更する(ステップS52)。一方、ステップS51で、処理条件を変更することで対応できないと判断すると、上位制御装置14は、処理誤差E(E2、E4、または、E5)に応じて処理装置PR3の処理条件と搬送速度条件とを変更する(ステップS53)。なお、処理条件を変更することができない場合、例えば、現在設定されている強度条件が最大の強度となっている場合等は、処理誤差E(E2、E4、または、E5)に応じて搬送速度条件のみを変えて対応することになる。
次いで、上位制御装置14は、処理誤差E(E2、E4、または、E5)が発生している処理装置PR(PR2、PR4、または、PR5)の処理条件を変更することで、処理装置PR3の設定条件を元に戻した場合でも処理誤差E(E2、E4、または、E5)をカバーすることができるか判断する(ステップS54)。つまり、処理誤差Eが発生している処理装置PRの処理条件を変更することで、処理装置PR3の設定条件を元に戻した場合でも発生した処理誤差Eを無くすことができるか否かを判断する。例えば、処理誤差Eを発生した処理装置PRが処理装置PR2の場合であって、実際に形成されている感光性機能層の膜厚が目標の膜厚条件に対して処理誤差E2を呈する場合は、処理誤差E2に応じて膜厚条件を変えることができるか否かを判断する。また、処理誤差Eを発生した他の処理装置PRが処理装置PR4、PR5の場合であって、実際の現像液LQ、エッチング液の温度、濃度、または、浸漬時間が、目標の温度条件、濃度条件、または、浸漬時間条件に対して処理誤差E4、E5を呈する場合は、処理誤差E4、E5に応じて、温度条件、濃度条件、または、浸漬時間条件を変えることができるか否かを判断する。
ステップS54で、処理誤差Eが発生している処理装置PRの処理条件を変更することで、処理装置PR3の設定条件を元に戻した場合でもこの処理誤差Eをカバーできると判断すると、上位制御装置14は、処理誤差Eを発生している処理装置PRの処理条件を変更する(ステップS55)。例えば、処理誤差Eを発生した処理装置PRが処理装置PR2の場合であって、実際に形成されている感光性機能層の膜厚が目標の膜厚条件に対して厚い場合は、処理誤差E2に応じて膜厚条件を薄くする。また、処理誤差Eを発生した処理装置PRが処理装置PR4またはPR5の場合であって、実際の現像液LQ、エッチング液の温度、濃度、および、浸漬時間の少なくとも1つの処理条件が、目標の温度条件、濃度条件、浸漬時間条件に対して低い若しくは短い場合は、処理誤差E4またはE5に応じて、温度条件、濃度条件、および、浸漬時間の少なくも1つの処理条件を高く若しくは長くする。この場合は、処理誤差Eを発生している処理装置PRの実処理の処理状態は、時間の経過とともに変化していくので、上位制御装置14は、それに応じて処理装置PR3の設定条件を徐々に元に戻す。
一方、ステップS54で、処理誤差E(E2、E4、または、E5)が発生している処理装置PR(PR2、PR4、または、PR5)の処理条件を変更しても処理誤差E(E2、E4、または、E5)を無くすことができないと判断すると、上位制御装置14は、他の処理装置PR(処理装置PR3を除く)の処理条件を変更することでこの処理誤差Eをカバーすることができるかを判断する(ステップS56)。例えば、処理誤差Eを発生した処理装置PRが処理装置PR2の場合であって、実際に形成されている感光性機能層の膜厚が目標の膜厚条件に対して許容範囲を超えて処理誤差E2を呈する場合は、処理装置PR4またはPR5の処理条件を変更することで処理誤差E2をカバーできるか否かを判断する。実際に形成されている感光性機能層の膜厚が目標の膜厚条件より厚い場合は、パターンの線幅は太くなるので、現像液LQまたはエッチング液の温度・濃度、浸漬時間を高く若しくは長くすることで、パターンの線幅を目標線幅にすることができるかどうかを判断する。
ステップS56で、他の処理装置PRの処理条件を変更することで対応可能であると判断すると、上位制御装置14は、処理誤差Eに応じて当該他の処理装置PRの処理条件を変更して(ステップS57)、ステップS59に進む。例えば、処理誤差Eを発生した処理装置PRが処理装置PR2の場合であって、実際に形成されている感光性機能層の膜厚が目標の膜厚条件に対して厚い場合は、処理誤差E2に応じて処理装置PR4またはPR5の温度条件、濃度条件、および、浸漬時間の少なくとも1つの処理条件を高く若しくは長くする。この場合は、他の処理装置PRの実処理の処理状態は、時間の経過とともに変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態に近づいていくので、上位制御装置14は、それに応じて処理装置PR3の設定条件を徐々に元に戻す。
一方、ステップS56で、他の処理装置PRの処理条件を変更しても対応することができないと判断すると、上位制御装置14は、処理装置PR3以外の複数の他の処理装置PRの処理条件をこの処理誤差Eに応じて変更して(ステップS58)、ステップS59に進む。この場合は、複数の他の処理装置PRの実処理の処理状態は、時間の経過とともに変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態に近づいていくので、上位制御装置14は、それに応じて処理装置PR3の設定条件を徐々に元に戻す。
ステップS59に進むと、上位制御装置14は、処理条件の変更が完了したか否かを判断する。つまり、ステップS55、S57、または、S58で処理条件が変更された処理装置PRによる実処理の状態が、変更後の処理条件によって定められる目標の処理状態になったか否かを判断する。この判断は、膜厚計測装置16a、温度センサTs、濃度センサCs、位置センサ87等の検出結果に基づいて行う。ステップS59で、処理条件の変更が完了していないと判断すると、ステップS59に留まり、処理条件の変更が完了したと判断すると、処理装置PR3の設定条件を元に戻す(ステップS60)。
なお、ステップS52で、処理装置PR3の処理条件のみを変更した場合は、図13に示す動作と同様に、図14に示す動作を終了してもよい。つまり、この場合は、ステップS54〜S60の動作は不要となる。また、ステップS60では、処理装置PR3の設定条件を元に戻すようにしたが、処理装置PR3の搬送速度条件のみを元に戻すようにしてもよい。この場合は、ステップS55、S57、または、S58では、処理装置PR3の搬送速度条件のみを元に戻した場合に発生する処理誤差に応じて処理条件が変更される。
このように、処理装置PR2〜PR5のいずれかの処理装置PRによる実処理の状態(実処理結果)が目標の処理状態(設計値)に対して処理誤差Eを有する場合は、処理誤差Eに応じた他の処理装置PRの設定条件を動的に変更するので、製造ラインを止めることなく、継続して安定した品質の電子デバイスを製造することができる。また、処理装置PRとして、露光装置(描画装置)EXやインクジェット印刷機のようなパターニング装置では、基板P上に既に形成されている下地層のパターンに対して重ね合わせ露光や重ね合わせ印刷を行う。その重ね合わせの精度は、薄膜トランジスタの層構造(ゲート電極層、絶縁装置、半導体層、ソース/ドレイン電極層)等を作るときに特に重要である。例えば、薄膜トランジスタの層構造において、層間の相対的な重ね合わせ精度やパターン寸法の忠実度(線幅再現性)は、パターニング装置の性能(位置決め精度、露光量、インク吐出量等)に依存する。そのパターニング装置の性能は、何らかの重大なトラブルによって突然大きく劣化する場合を除き、一般的には徐々に劣化する。第2の実施の形態によれば、そのように徐々に性能劣化するパターニング装置の状態をモニターして、他の処理装置PRの処理条件を調整したりするので、パターニング装置の性能が許容範囲内で変動する場合、または許容範囲外に至った場合であっても、最終的に基板P上に形成されるパターンの寸法(線幅)精度を目標とする範囲に収めることができる。
なお、本第2の実施の形態においては、処理装置PR3の前後に第1蓄積装置BF1と第2蓄積装置BF2とを配置することで、処理装置PR3の基板Pの搬送速度を自由に変更できるようにしたが、例えば、処理装置PR2または処理装置PR4の前後に第1蓄積装置BF1と第2蓄積装置BF2とを配置し、処理装置PR2または処理装置PR4の基板Pの搬送速度を自由に変更できるようにしてもよい。また、例えば、複数の処理装置PRの前後に第1蓄積装置BF1と第2蓄積装置BF2とを配置することで、複数の処理装置PRで基板Pの搬送速度を自由に変更できるようにしてもよい。このように、複数の処理装置PRの各々での搬送速度条件を変えることは、各々の処理装置PRの実処理の状態が変わることを意味する。例えば、処理装置PR2に関して、仮に膜厚条件を含む処理条件を変更しなくても、搬送速度条件を遅くすることで、形成される感光性機能層の膜厚を厚くすることができる。逆に、搬送速度条件を速くすることで、形成される感光性機能層の膜厚を薄くすることができる。また、処理装置PR4、PR5に関して、仮に、浸漬時間条件等の処理条件を変更しなくても、搬送速度条件を遅くすることで、結果的に、基板Pが現像液LQまたはエッチング液に浸漬する時間が長くなる。逆に搬送速度条件を速くすることで、結果的に、基板Pが現像液LQまたはエッチング液に浸漬する時間が短くなる。この場合も、各々の第1蓄積装置BF1および第2蓄積装置BF2の蓄積長が所定の範囲内に収まるように、各処理装置PRの搬送速度条件の設定が変更される。
また、図12のステップS33では、露光量が許容範囲内にあるか否かを判断したが、感光性機能層に形成されたパターンの線幅が許容範囲内にあるか否かを判断してもよい。この場合は、パターンの線幅が許容範囲内にないと判断すると、ステップS34で処理装置PR3に処理誤差E3が発生していると判断し、パターンの線幅が許容範囲内にあると判断するとステップS35を飛ばしてステップS37に進むようにしてもよい。したがって、この場合は、ステップS35およびステップS36の動作は不要となる。現像処理の条件によってパターンの線幅も変わるが、パターンの線幅は、処理装置PR3の実処理の状態によって大きく変わると考えられるため、感光性機能層に形成されたパターンの線幅に基づいて、処理装置PR3に処理誤差E3が発生しているか否かを判断する。
また、現像後のフォトレジスト層に形成されるパターンの線幅変化は、露光量の変化やレジスト層の厚み変化に対して比較的に敏感で線形性を持つ。それに対して、感光性シランカップリング材等による感光性機能層は、その厚みとはほとんど無関係に、一定の露光量(照度)が与えられたか否かで、非改質状態から改質状態に切り替わる。そのため、感光性機能層の厚み調整や露光量の調整による線幅の補正は実質的には難しい。ただし、必要以上の露光量を与えた場合は、改質すべき部分の線幅が若干太くなる傾向はある。したがって、感光性シランカップリング材等の感光性機能層を用いた場合は、例えばメッキ処理後に析出した金属性のパターンの線幅測定値に基づいて、メッキ処理の条件を修正したり、感光性機能層を露光する際のパターンの線幅自体を設計値に対して修正(描画データを修正)したりすることが有効である。
以上、本発明の第2の実施の形態によれば、複数の処理装置PRのうち、実処理の状態が目標の処理状態に対して処理誤差Eを発生している処理装置PRがある場合は、処理誤差Eに応じて他の処理装置PRの設定条件を変更するので、製造ラインを止めることなく、継続して電子デバイスを製造することができる。すなわち、複数の処理装置PRによってシート基板P上に電子デバイスの層構造やパターン形状を順次形成していく過程において、特定の処理装置PRによる実処理結果が、予め設定される設定条件(設計値)に対して処理誤差を発生した場合でも、特定の処理装置PR自体がその処理誤差を抑えるように自己制御するだけでなく、特定の処理装置PRに対して上流側または下流側に位置する他の処理装置PRが、その処理誤差に起因する不具合を結果的に打ち消す、または抑制するように処理条件を動的に変更する。これによって、製造ライン中のどこかの工程で発生する処理誤差に起因した処理装置PRの処理中断、および製造ライン全体の一時停止の確率を大幅に抑制することができる。
また、本発明の第2の実施の形態は、必ずしも3つの異なる処理装置PR(処理部)が基板Pの搬送方向(長尺方向)に並ぶ製造ラインに限られず、基板Pを順次処理する少なくとも2つの処理装置PR(処理部)が並んでいれば、適用可能である。その場合、2つの処理装置PR間で、予め設定される設定条件に対して発生した処理誤差に起因する不具合(線幅変化等)を結果的に打ち消す、または抑制するように2つの処理装置PRの各処理条件の動的な調整、或いは2つの処理装置PRの各々での基板Pの搬送速度の一時的な変更を行えばよい。この場合、第2の実施の形態が適用される2つの処理装置PR(処理部)は、必ずしも基板Pの搬送方向(長尺方向)に相前後して配置される必要はなく、第2の実施の形態が適用される2つの処理装置PR(処理部)の間に少なくとも1つの別の処理装置PR(処理部)を配置した構成であってもよい。例えば、露光処理の後に現像処理を行う場合、第2の実施の形態では基板Pを露光部を通して直ちに現像部に送るとしたが、露光後のフォトレジスト層を比較的に高い温度で加熱するポストベーク処理を施してから現像する場合、そのポストベーク処理用の加熱装置(加熱部)等が、その別の処理装置PRに対応し得る。
なお、上記第2の実施の形態では、説明を簡単にするため、実処理の状態が目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを呈する処理装置PRが1つの場合を例に挙げて説明したが、実処理の処理状態が目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを呈する処理装置PRが2つ以上であってもよい。この場合も、上述したように、処理誤差Eが生じた処理装置PRが処理装置PR3を含まない場合は、優先的に処理装置PR3の設定条件を変える。また、処理誤差Eを発生した処理装置PRが処理装置PR3を含む場合は、まず、処理装置PR3の設定条件を変更する。
また、説明をわかり易くするために、本発明の態様にかかるデバイス製造システム10を第1の実施の形態と第2の実施の形態とに分けて説明した。したがって、第2の実施の形態で説明したデバイス製造システム10が有する構成、機能、特性、性能、性質等は、必要に応じて第1の実施の形態でも引用することができる。逆に、第1の実施の形態で説明したデバイス製造システム10が有する構成、機能、特性、性能、性質等も、必要に応じて第2の実施の形態で引用することができる。したがって、第1の実施の形態と第2の実施の形態とをともに、デバイス製造システム10(製造ライン)内で実施するように組み合わせてもよい。その組み合せによれば、各処理装置の性能や精度を長期間に渡って安定的に維持できるので、複数の処理工程中のどこかで生じるプロセス変動による処理誤差を正確にカバーすることが可能となり、製造ラインを長期に渡って稼動させることができる。
[第2の実施の形態の変形例]
上記第2の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)以上の第2の実施の形態では、図1に示したデバイス製造システム(製造ライン)10に設置される複数の処理装置PR(PR1〜PR5)の各々が、各処理装置PRの処理条件や設定条件の調整に応じて、各処理装置を通るシート状の基板Pの搬送速度を処理動作中に調整可能とした。しかしながら、各処理装置PRを通る基板Pの搬送速度は、その処理装置PR毎に一定とし、処理装置PR間での基板Pの搬送速度の差に起因する基板Pの搬送量(搬送長)の過不足は、処理装置PR間に設けた第1蓄積装置BF1、或いは第2蓄積装置BF2で吸収する構成としてもよい。このような構成の場合、処理装置PR間での基板Pの搬送速度の差の許容範囲は、概ね、連続処理すべき基板Pの全長Lfと、第1蓄積装置BF1、または、第2蓄積装置BF2の最大の蓄積長とによって決まる。
例えば、第1蓄積装置BF1の上流側の処理装置PR2での基板Pの搬送速度をVa、第1蓄積装置BF1の下流側(すなわち、第2蓄積装置BF2の上流側)の処理装置PR3(露光装置EX等のパターニング装置)での基板Pの搬送速度をVb、第2蓄積装置BF2の下流側の処理装置PR4(または処理装置PR5)での基板Pの搬送速度をVcとする。この場合、全長Lfの基板Pの連続処理の間に必要な第1蓄積装置BF1の必要蓄積長Lac1は、搬送速度Va、VbがVa>Vbの関係の場合は、Lac1=Lf(1−Vb/Va)となり、Vb>Vaの場合は、Lac1=Lf(1−Va/Vb)となる。同様に、全長Lfの基板Pの連続処理の間に必要な第2蓄積装置BF2の必要蓄積長Lac2は、搬送速度Vb、VcがVb>Vcの関係の場合は、Lac2=Lf(1−Vc/Vb)となり、Vc>Vbの場合は、Lac2=Lf(1−Vb/Vc)となる。
そこで、処理装置PR2〜PR4の各々の処理条件の下で適切に設定される基板Pの目標となる搬送速度Va、Vb、Vcが決められたら、上記の計算により、第1蓄積装置BF1の必要蓄積長Lac1と第2蓄積装置BF2の必要蓄積長Lac2を求め、その必要蓄積長Lac1、Lac2が確保できるように、第1蓄積装置BF1と第2蓄積装置BF2の各々の最大の蓄積長を調整する。最大の蓄積長の調整は、図4中の第1蓄積装置BF1内の複数のダンサーローラ20、および、第2蓄積装置BF2内の複数のダンサーローラ22で基板Pを折り返す回数(基板Pを支持するダンサーローラ20、22の本数)を異ならせることで可能である。ダンサーローラ20、22による基板Pの折り返し回数を少なくすることは、基板Pに形成される薄膜層や電子デバイス用のパターンにダメージを与える可能性、異物(塵埃)の付着可能性を低減させるので望ましい。また、個々のダンサーローラ20、22の位置を、最大の蓄積長に応じて変えることができるようにしておく。つまり、ダンサーローラ20、22の各々を個別にZ方向に移動して、その位置を調整することができるアクチュエータを第1蓄積装置BF1および第2蓄積装置BF2内に設ける。このアクチュエータは、上位制御装置14または下位制御装置24によって制御される。
なお、図4に示した第1蓄積装置BF1(第2蓄積装置BF2も同様)は、それ自体が単体のユニットとして取り外し可能、または、タンデム(直列)に増設可能な構成にすることができる。したがって、上記の計算で得られた必要蓄積長Lac1(Lac2)が長くなる場合は、第1蓄積装置BF1(第2蓄積装置BF2)の複数をタンデムに接続することで、基板Pの最大蓄積長を容易に増やせる。その後、供給用ロールFR1から引き出された基板Pの先端を、順次、処理装置PR1〜PR5、および、蓄積装置BF1、BF2に通して回収用ロールFR2に巻き付け、蓄積装置BF1、BF2での基板Pの蓄積長を初期状態に設定してから、各処理装置PR1〜PR5による処理動作(搬送速度Va、Vb、Vcによる基板Pの搬送)が開始される。本変形例1の場合も、処理装置PR2〜PR4の各々が設定された一定の搬送速度Va、Vb、Vcで基板Pを搬送し続ける間、基板Pに形成されるパターンの品質が、例えば、図8中の撮像装置83によるパターンの画像データ解析結果に基づいて、変化している(低下している)と検知されたときは、処理装置PR2〜PR4の各々の搬送速度以外の処理条件(設定条件)の変更可否の判定、処理条件を変更可能な処理装置PRの特定、変更する条件の程度の演算等が、例えば、上位制御装置14によって適宜行われる。上位制御装置14は、特定された処理装置PRに設定条件の変更内容、変更タイミング等を指令する。これによって、基板P上に形成される電子デバイス用のパターン等の品質(形状や寸法の忠実度や均一性等)を、基板Pの全長Lfに渡って所定の許容範囲内に収めることができる。
(変形例2)第1蓄積装置BF1(第2蓄積装置BF2)を増設しない場合、1つの第1蓄積装置BF1(第2蓄積装置BF2)の最大蓄積長は有限であるため、連続処理する基板Pの全長Lfが長かったり、搬送速度の比Va:Vb(Vb:Vc)が大きかったりすると、全長Lfに渡る連続処理の途中で、第1蓄積装置BF1(第2蓄積装置BF2)での基板Pの蓄積長が満杯になったり、蓄積長がゼロになったりする。そこで、本変形例2では、予め定められる第1蓄積装置BF1、第2蓄積装置BF2の最大蓄積長Lm1、Lm2に基づいて、全長Lfに渡る基板Pの連続処理を滞る(一時停止する)こと無く実施するように、処理装置PR2〜PR4の各々での基板Pの搬送速度Va、Vb、Vcを予め設定する。すなわち、第1蓄積装置BF1の最大蓄積長Lm1が、Lm1≧Lf(1−Vb/Va)、または、Lm1≧Lf(1−Va/Vb)の条件を満たし、第2蓄積装置BF2の最大蓄積長Lm2が、Lm2≧Lf(1−Vc/Vb)、または、Lm2≧Lf(1−Vb/Vc)の条件を満たすように、各搬送速度Va、Vb、Vcを予め設定する。
そして、処理装置PR2〜PR4の各々は、設定された基板Pの搬送速度Va、Vb、Vcにおいて最適な処理を施すように、各部の設定条件を予め調整しておく。少なくとも全長Lfの基板Pを連続処理する間、すなわち処理装置PR2〜PR4の各々が設定された搬送速度Va、Vb、Vcで基板Pを搬送し続ける間、基板Pに形成されるパターンの品質が低下する傾向にあることが検知された場合は、処理装置PR2〜PR4の各々の搬送速度以外の処理条件(設定条件)の変更可否の判定、処理条件を変更可能な処理装置PRの特定、変更する条件の程度の演算等を、例えば、上位制御装置14によって適宜行いながら、基板Pを処理することができる。これによって、基板P上に形成される電子デバイス用のパターン等の品質(形状や寸法の忠実度や均一性等)を、基板Pの全長Lfに渡って所定の許容範囲内に収めることができる。
また、変形例1、変形例2のように、処理装置PR2〜PR4の各々における基板Pの搬送速度Va、Vb、Vcを予め設定してから、基板Pの全長Lfに渡る連続処理を開始した後に、例えば、処理装置PR2によって塗布されるレジスト層の厚み変動によって、処理装置PR4(PR5)の後に出現するパターンの品質が目標値に対して変動してきた場合、処理装置PR3、処理装置PR4(PR5)の各々における各種処理条件(設定条件)を調整する。その際、上述の第2の実施の形態のように、処理装置PR3や処理装置PR4に予め設定された基板Pの搬送速度Vb、Vcを微調整するモードを組み込んだ制御方法に移行することもできる。なお、変形例1や変形例2は、3つの処理装置PR2、PR3、PR4(PR5)と2つの蓄積装置BF1、BF2とを前提に説明したが、2つの処理装置PRと、その間に設けられた1つの蓄積装置とで構成される製造システムの場合でも同様に適用可能である。また、変形例1、変形例2において、処理装置PR2〜PR4の各々における基板Pの搬送速度Va、Vb、Vcは、可能であれば、所定の誤差範囲内(例えば、±数%以内)で互いに等しく設定するのが望ましい。
以上の変形例1、変形例2においては、長尺の可撓性のシート状の基板Pを長尺方向に沿って搬送しながら、基板Pに電子デバイス用のパターンを形成する際に、基板Pに対して互いに異なる処理を施す第1処理工程(例えば、処理装置PR2による成膜工程)、第2処理工程(例えば、処理装置PR3による露光工程と処理装置PR4、PR5による現像工程、メッキ工程等)の順番で基板Pを搬送する搬送工程と、第1処理工程の処理装置PRに設定される第1処理条件の下で、基板Pの表面に被膜層(感光性機能層)を選択的または一様に成膜することと、第2処理工程の処理装置PRに設定される第2処理条件の下で、被膜層にパターンに対応した改質部を生成し、改質部と非改質部のいずれか一方を除去する処理、または改質部と非改質部のいずれか一方に電子デバイス用の材料を析出する処理を施して基板P上にパターンを出現させることと、第2処理工程において出現したパターンが、目標となる形状または寸法に対して変動する傾向(品質が低下する傾向)を示す場合は、その傾向に応じて、第1処理条件と第2処理条件の少なくとも一方の条件の変更可否を判定することと、を行うことで、製造ライン全体を止める可能性を低減させたデバイス製造方法が実施できる。すなわち、第1処理条件と第2処理条件の少なくとも一方の条件の変更が可能であると判定された場合は、基板P上に形成されるパターンの品質を維持した製造ラインの稼働が継続可能であることを事前に通報できることを意味する。そのため、生産現場のオペレータが製造ラインを早計に止めることを回避できる。このことは、先の第2の実施の形態でも同様である。
[第1および第2の実施の形態の変形例]
上記第1および第2の実施の形態(変形例も含む)は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)変形例1では、処理装置PR3および処理装置PR4を、図15のように、1つの処理ユニットPU2として構成する。つまり、処理ユニットPU2は、処理装置PR2から搬送されてきた基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、露光処理および現像処理の処理工程(第2処理工程)を行う装置である。この露光処理によって、感光性機能層にパターンに対応した潜像(改質部)が形成され、現像処理によって、改質部または非改質部のいずれか一方が溶解し除去されて、感光性機能層にパターンが出現する。なお、処理ユニットPU2は、露光処理およびメッキ処理の処理工程を行う装置であってもよく、この場合は、メッキ処理によって、改質部または非改質部のいずれか一方にパラジウムイオン等の電子デバイス用の材料(金属)が析出される。
図15の処理ユニットPU2の構成において、上記第1および第2の実施の形態と同一の構成については同様の符号を付して、その説明を省略するとともに、本変形例1を説明するのに特に必要のない構成についてはその図示を省略している。処理ユニットPU2は、搬送部100、露光ヘッド36、処理槽BT、および、乾燥部102を備える。なお、図示しないが、処理ユニットPU2は、光源装置32、光導入光学系34、強度センサ37、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)、ヒータH1、H2、ヒータ駆動部82、温度センサTs、濃度センサCs、および、撮像装置83等も有している。また、処理ユニットPU2は、図示しない下位制御装置によって制御される。第1蓄積装置BF1は、処理装置PR2と処理ユニットPU2との間に設けられ、第2蓄積装置BF2は、処理ユニットPU2と処理装置PR5との間に設けられている。
搬送部100は、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、駆動ローラNR10、テンション調整ローラRT10、回転ドラムDR2、案内ローラR10、回転ドラムDR3、案内ローラR12、テンション調整ローラRT12、および、駆動ローラNR12を有する。駆動ローラNR10は、第1蓄積装置BF1を介して処理装置PR2から送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら回転することで、基板Pを回転ドラムDR2に向かって搬送する。回転ドラムDR2は、外周面に倣って基板Pの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AX2を中心に回転して基板Pを案内ローラR10に搬送する。案内ローラR10は、回転ドラムDR2から送られてきた基板Pを回転ドラムDR3に導く。
回転ドラムDR3は、Y方向に延びる中心軸AX3と、中心軸AX3から一定半径の円筒状の円周面とを有し、外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AX3を中心に回転して基板Pを案内ローラR12に導く。回転ドラムDR3は、下側(−Z方向側、つまり、重力が働く方向側)の外周面の約半周面で基板Pを支持する。案内ローラR12は、送られてきた基板Pを駆動ローラNR12に向かって搬送する。駆動ローラNR12は、送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置PR5側に搬送する。テンション調整ローラRT10、RT12は、駆動ローラNR10と駆動ローラNR12との間で搬送される基板Pに対して所定のテンションを付与するものである。テンション調整ローラRT10は、+Z方向に付勢されており、テンション調整ローラRT12は、−Z方向に付勢されている。
駆動ローラNR10、NR12、回転ドラムDR2、DR3は、処理ユニットPU2の前記下位制御装置によって制御される回転駆動源(モータや減速機等)からの回転トルクが与えられることで回転する。この駆動ローラNR10、NR12、回転ドラムDR2、DR3の回転速度によって処理ユニットPU2内の基板Pの搬送速度が規定される。また、駆動ローラNR10、NR12、回転ドラムDR2、DR3に設けられた図示しないエンコーダから送られてくる回転速度信号(基板Pの搬送速度情報)は、処理ユニットPU2の前記下位制御装置を介して上位制御装置14に送られる。
回転ドラムDR3は、その円周面の一部が処理槽BTに貯留されている現像液LQに浸漬するように処理槽BTの上方に設けられている。したがって、回転ドラムDR3によって支持された基板Pを現像液LQに浸漬することができる。また、回転ドラムDR3(または処理槽BT)は、Z方向に移動可能となっており、回転ドラムDR3が+Z方向に移動(または処理槽BTが−Z方向に移動)すると、回転ドラムDR3の円周面が処理槽BTに貯留されている現像液LQに浸漬する面積が減少し、回転ドラムDR3が−Z方向に移動(または処理槽BTが+Z方向に移動)すると、回転ドラムDR3の円周面が処理槽BTに貯留されている現像液LQに浸漬する面積が増加する。これにより、回転ドラムDR3(または処理槽BT)をZ方向に移動することで、基板Pが現像液LQに浸漬する時間(浸漬時間)を変えることができる。この回転ドラムDR3(または処理槽BT)には、図示しないが回転ドラムDR3と処理槽BTとのZ方向の間隔(回転ドラムDR3の中心軸AX3と処理槽BT内の現像液LQの表面との間隔)を調整する駆動機構が設けられ、該駆動機構は、処理ユニットPU2の前記下位制御装置の制御によって駆動する。案内ローラR12は、乾燥部102に設けられ、乾燥部102は、回転ドラムDR3から案内ローラR12を介してテンション調整ローラRT12に搬送される基板Pに付着している現像液LQを除去する。
なお、感光性機能層が感光性シランカップリング剤や感光性還元剤の場合は、処理ユニットPU2の処理槽BTには、現像液LQの代わりに、例えば、パラジウムイオン等の電子デバイス用の材料(金属)を含むメッキ液が貯留される。つまり、この場合は、処理ユニットPU2は、露光処理とメッキ処理を行う装置となる。基板Pをメッキ液に浸漬することで、感光性機能層に形成された潜像(改質部)に応じて電子デバイス用の材料が析出され、基板Pにパターンが形成される。ポジ型の場合は、紫外線が照射された部分が改質され、紫外線が照射されていない非改質部に電子デバイス用の材料が析出される。ネガ型の場合は、紫外線が照射された部分が改質され、改質部に電子デバイス用の材料が析出される。これにより、基板Pに金属層(導電性)のパターンが出現する。ここでも、回転ドラムDR3と処理槽BTのZ方向の間隔を調整したり、処理槽BT内のメッキ液の量(液面高さ)を調整したりすることによって、基板Pのメッキ液への浸漬時間が調整でき、基板Pの表面に析出するパラジウムの金属核の濃度が調整できる。
処理ユニットPU2は、設定条件(第2の設定条件)にしたがって露光処理と現像処理(またはメッキ処理)を行う。処理ユニットPU2の設定条件として、レーザ光LBの強度を規定する強度条件、スポット光SPの走査速度(ポリゴンミラー66の回転速度)を規定する走査速度条件、多重露光回数を規定する露光回数条件、描画するパターンを規定するパターン条件(パターンデータ)、現像液LQ(またはメッキ液)の温度を規定する温度条件、現像液LQ(またはメッキ液)の濃度を規定する濃度条件、および、浸漬時間を規定する浸漬時間条件等を含む処理条件(第2処理条件)と、基板Pの搬送速度条件とが設定されている。露光処理は、強度条件、走査速度条件、露光回数条件、および、パターン条件等にしたがって行われる。現像処理(またはメッキ処理)は、温度条件、濃度条件、浸漬時間条件等にしたがって行われる。この設定条件は、処理ユニットPU2によって施される実処理の状態が、目標の処理状態となるように予め設定される。
設定条件の変更については、上記第2の実施の形態で説明したので詳しくは説明しないが、上位制御装置14は、処理装置PR1、PR2、PR5、および、処理ユニットPU2の各々において基板Pに施される実処理の状態の少なくとも1つが、目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを呈する場合は、処理誤差Eを発生する処理装置PRまたは処理ユニットPU2以外の他の装置の設定条件を処理誤差Eに応じて変化させる。その理由は、言うまでもないが、処理装置PR1、PR2、PR5、および、処理ユニットPU2が設定条件にしたがって基板Pに対して施した実処理の状態のいずれか1つが目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを有している場合には、基板Pに所望の金属層のパターンを出現させることはできないからである。
処理誤差Eを呈する設定条件が、処理ユニットPU2の設定条件の場合は、まず、処理誤差Eが生じないように若しくは処理誤差Eが許容範囲に収まるように、処理ユニットPU2の設定条件を変更する。そして、処理ユニットPU2の設定条件を変更しただけでは対応することができない場合は、処理誤差Eが生じないように若しくは処理誤差Eが許容範囲に収まるように、他の処理装置PR(PR2、PR5)の設定条件をさらに変更する。このとき、他の処理装置PRの設定条件の変更完了後に、少なくとも処理ユニットPU2の搬送速度条件を元に戻す。また、処理誤差Eを呈する設定条件が処理ユニットPU2以外の処理装置PRの場合は、処理誤差Eが生じないように若しくは処理誤差Eが許容範囲に収まるように、優先的に処理ユニットPU2の設定条件を変更させる。なお、第1蓄積装置BF1および第2蓄積装置BF2を、処理ユニットPU2の前後に設けるようにしたが、他の処理装置PRの前後に設けるようにしてもよい。
なお、図15のように、露光処理部(回転ドラムDR2、露光ヘッド36等)と湿式処理部(回転ドラムDR3、処理槽BT等)とを一体的に設けた処理ユニットPU2とした場合、処理ユニットPU2内でのシート基板Pの搬送速度は一定であり、露光処理部と湿式処理部とでシート基板Pの搬送速度を一時的に異ならせることができない。そのため、シート基板Pの搬送速度を一時的に異ならせたい場合は、案内ローラR10の位置に、図4で示したような蓄積装置BF1、BF2を設けることになる。つまり、処理ユニットPU2の前後に第1蓄積装置BF1および第2蓄積装置BF2を設けるとともに、回転ドラムDR2と回転ドラムDR3との間に、第1蓄積装置BF1(第2蓄積装置BF2)と同様の構成を有する蓄積装置を1つ設ける。また、第1蓄積装置BF1を処理装置PR2と回転ドラムDR2との間に、第2蓄積装置BF2を回転ドラムDR2と回転ドラムDR3との間に設けてもよい。また、第1蓄積装置BF1を回転ドラムDR2と回転ドラムDR3との間に、第2蓄積装置BF2を回転ドラムDR3と処理装置PR5との間に設けてもよい。
(変形例2)変形例2では、処理装置PR2および処理装置PR3を1つの処理ユニットPU1として構成する。つまり、処理ユニットPU1は、処理装置PR1から搬送されてきた基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、成膜処理および露光処理の処理工程(第1処理工程)を行う装置である。この成膜処理によって、基板Pの表面に感光性機能液を選択的または一様に塗布することで、基板Pの表面に感光性機能層が選択的または一様に形成され、露光処理によって、感光性機能層にパターンに対応した潜像(改質部)が形成される。
図16は、処理ユニットPU1の構成を示す図である。上記第1および第2の実施の形態と同一の構成については同様の符号を付して、その説明を省略するとともに、本変形例2を説明するのに特に必要のない構成ついてはその図示を省略している。処理ユニットPU1は、搬送部110、ダイコータヘッドDCH、インクジェットヘッドIJH、乾燥装置112、および、露光ヘッド36を備える。なお、図示しないが、処理ユニットPU1は、光源装置32、光導入光学系34、強度センサ37、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)、膜厚計測装置16a等も有している。また、処理ユニットPU1は、図示しない下位制御装置によって制御される。第1蓄積装置BF1は、処理装置PR1と処理ユニットPU1との間に設けられ、第2蓄積装置BF2は、処理ユニットPU1と処理装置PR4との間に設けられている。
搬送部110は、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、駆動ローラNR14、テンション調整ローラRT14、回転ドラムDR1、案内ローラR14、R16、テンション調整ローラRT16、回転ドラムDR2、案内ローラR18、および、駆動ローラNR16を有する。駆動ローラNR14は、第1蓄積装置BF1を介して処理装置PR1から送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら回転することで、基板Pを回転ドラムDR1に向かって搬送する。回転ドラムDR1は、外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AX1を中心に回転して基板Pを+X方向側に搬送する。案内ローラR14、R16は、回転ドラムDR1から送られてきた基板Pを回転ドラムDR2に搬送する。
回転ドラムDR2は、外周面に倣って基板Pの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AX2を中心に回転して基板Pを案内ローラR18に搬送する。案内ローラR18は、回転ドラムDR2から送られてきた基板Pを駆動ローラNR16に搬送する。駆動ローラNR16は、送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置PR4側に搬送する。テンション調整ローラRT14、RT16は、駆動ローラNR14と駆動ローラNR16との間で搬送される基板Pに対して所定のテンションを付与するものである。テンション調整ローラRT14、RT16は、−Z方向に付勢されている。
駆動ローラNR14、NR16、回転ドラムDR1、DR2は、処理ユニットPU1の前記下位制御装置によって制御される回転駆動源(モータや減速機等)からの回転トルクが与えられることで回転する。この駆動ローラNR14、NR16、回転ドラムDR1、DR2の回転速度によって処理ユニットPU1内の基板Pの搬送速度が規定される。また、駆動ローラNR14、NR16、回転ドラムDR1、DR2に設けられた図示しないエンコーダから送られてくる回転速度信号(基板Pの搬送速度情報)は、処理ユニットPU1の前記下位制御装置を介して上位制御装置14に送られる。
案内ローラR14は、乾燥装置112に設けられ、乾燥装置112は、回転ドラムDR1から案内ローラR14を介して案内ローラR16に搬送される基板Pに対して、熱風またはドライエアー等の乾燥用エアーを吹き付けることで、感光性機能液に含まれる溶質(溶剤または水)を除去して感光性機能液を乾燥させる。これにより、感光性機能層が形成される。
処理ユニットPU1は、設定条件(第1の設定条件)にしたがって成膜処理と露光処理を行う。処理ユニットPU1の設定条件として、感光性機能層を形成する領域を規定する領域条件、感光性機能層の膜厚を規定する膜厚条件、レーザ光LBの強度を規定する強度条件、スポット光SPの走査速度(ポリゴンミラー66の回転速度)を規定する走査速度条件、多重露光回数を規定する露光回数条件、および、描画するパターンを規定するパターン条件(パターンデータ)等を含む処理条件(第1処理条件)と、基板Pの搬送速度条件とが設定されている。成膜処理は、領域条件および膜厚条件等にしたがって行われる。露光処理は、強度条件、走査速度条件、露光回数条件、および、パターン条件等にしたがって行われる。この設定条件は、処理ユニットPU1によって施される実処理の状態が、目標とする状態となるように予め設定される。
設定条件の変更については、上記第2の実施の形態で説明したので詳しくは説明しないが、上位制御装置14は、処理装置PR1、PR4、PR5、および、処理ユニットPU1の各々において基板Pに施される実処理の状態の少なくとも1つが、目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを呈する場合は、処理誤差Eを発生する処理装置PRまたは処理ユニットPU1以外の他の装置の設定条件を処理誤差Eに応じて変化させる。その理由は、言うまでもないが、処理装置PR1、PR4、PR5、および、処理ユニットPU1が設定条件にしたがって基板Pに対して施した実処理の状態のいずれか1つが目標の処理状態に対して許容範囲を超えて処理誤差Eを有している場合には、基板Pに所望の金属層のパターンを出現させることはできないからである。
処理誤差Eを呈する設定条件が、処理ユニットPU1の設定条件の場合は、まず、処理誤差Eが生じないように若しくは処理誤差Eが許容範囲に収まるように、処理ユニットPU1の設定条件を変更する。そして、処理ユニットPU1の設定条件を変更しただけでは対応することができない場合は、処理誤差Eが生じないように若しくは処理誤差Eが許容範囲に収まるように、他の処理装置PR(PR4、PR5)の設定条件をさらに変更する。このとき、他の処理装置PRの設定条件の変更完了後に、少なくとも処理ユニットPU1の搬送速度条件を元に戻す。また、処理誤差Eを呈する設定条件が処理ユニットPU1以外の処理装置PRの場合は、処理誤差Eが生じないように若しくは処理誤差Eが許容範囲に収まるように、優先的に処理ユニットPU1の設定条件を変更させる。なお、第1蓄積装置BF1および第2蓄積装置BF2を、処理ユニットPU1の前後に設けるようにしたが、他の処理装置PRの前後に設けるようにしてもよい。
以上の変形例2では、図16のように、塗布処理部(回転ドラムDR1、ダイコータヘッドDCH、インクジェットヘッドIJH等)、乾燥処理部(乾燥装置112等)、露光処理部(回転ドラムDR2、露光ヘッド36等)を一体的に設けた処理ユニットPU1としたので、処理ユニットPU1内での基板Pの搬送速度はどこでも同じである。しかしながら、塗布処理部、乾燥処理部、露光処理部の各々で、基板Pの搬送速度を一時的に異ならせる場合は、例えば乾燥処理部(乾燥装置112等)の位置に、図4で示したような蓄積装置BF1、BF2を設けることになる。つまり、処理ユニットPU1の前後に第1蓄積装置BF1および第2蓄積装置BF2を設けるとともに、回転ドラムDR1と回転ドラムDR2との間に第1蓄積装置BF1(第2蓄積装置BF2)と同様の構成を有する蓄積装置を1つ設ける。また、第1蓄積装置BF1を回転ドラムDR1と回転ドラムDR2との間に、第2蓄積装置BF2を回転ドラムDR2と処理装置PR4との間に設けてもよい。また、第1蓄積装置BF1を処理装置PR1と回転ドラムDR1との間に、第2蓄積装置BF2を回転ドラムDR1と回転ドラムDR2との間に設けてもよい。
(変形例3)図17は、先の第1および第2の実施の形態で前提となる図1のデバイス製造システム10の変形例3によるデバイス製造システム10’の概略構成を示す。本変形例3は、図1のデバイス製造システム10における各処理装置の配置と基板Pの搬送経路を変えて、コンパクトな製造ラインを構築するものであり、図17中の各処理装置および基板Pについて、先の図2〜図9に示した構成と同じものとして同様の符号を付し、その詳細説明を省略するとともに、本変形例3を説明するのに特に必要のない構成についてはその図示も省略している。
図17に示すように、本変形例3では、基板Pの供給用ロールFR1と回収用ロールFR2とをデバイス製造システム10’の一方側に並べて配置するように、デバイス製造システム10’内での基板Pの搬送経路を折り返し、幾つかの処理装置を立体的(上下関係)に配置する。本変形例3のデバイス製造システム10’は、ダイコータヘッドDCHと回転ドラムDR1による塗布装置として構成される処理装置PR2と、第1蓄積装置BF1を含み、塗布後の基板Pを乾燥させる乾燥装置(図2の乾燥装置16に相当)として構成される処理装置PR2’と、光源装置32、光導入光学系34、露光ヘッド36、および、回転ドラムDR2等による露光装置として構成される処理装置PR3と、第2蓄積装置BF2と、現像液またはメッキ液を溜める縦型の液漕BT1と洗浄用の純水等を溜める縦型の洗浄漕BT2とを有して、湿式処理装置として構成される処理装置PR4’と、蓄積部としての機能も備えて湿式処理後の基板Pを乾燥する乾燥装置として構成される処理装置PR6とを備える。
供給用ロールFR1から送り出されるシート状の基板Pは、処理装置PR2の回転ドラムDR1で支持された状態で所定の速度で搬送され、ダイコータヘッドDCHによって塗布液LQcが塗布される。塗布後の基板Pは略水平に+X方向に送られ、デバイス製造システム10’の上方に配置された処理装置PR2’内の乾燥装置(乾燥部)で乾燥されてから、第1蓄積装置BF1内の多数のダンサーローラRdを通って、処理装置PR2’の−Z方向側に配置された処理装置PR3に送られる。第1蓄積装置BF1内の複数のダンサーローラRdは、基板PをXY面(床面)と略平行になるようにテンションをかけて折り返すように配置される。処理装置PR3は、−Z方向に送られる基板Pを回転ドラムDR2の下半分程度に掛け回した後、+Z方向にリリースするように搬送する。そのため、基板Pにパターン露光を行う露光ヘッド36は回転ドラムDR2の下方(−Z方向側)に設けられる。処理装置PR3で露光された基板Pは、処理装置PR3の−X方向側に配置された第2蓄積装置BF2に送られ、複数のダンサーローラRdを通って、第2蓄積装置BF2の−X方向側に配置された処理装置PR4’に送られる。処理装置PR4’は、送られてきた基板Pを現像液またはメッキ液を溜める液漕BT1、洗浄用の純水等を溜める洗浄漕BT2の順に通した後、処理装置PR4’の−X方向側に配置された処理装置PR6に送る。処理装置PR6内の複数のダンサーローラRdを通って乾燥された基板Pは、回収用ロールFR2に巻き取られる。
図17のように、処理装置(塗布装置)PR2、処理装置PR2’内の乾燥装置(乾燥部)、処理装置PR2’内の第1蓄積装置BF1、処理装置(露光装置)PR3、第2蓄積装置BF2、処理装置(湿式処理装置)PR4’、処理装置(乾燥部)PR6の各々を一列に並べるのではなく、上下(Z方向)にも立体的に配置することによって、製造システム全体の長さを抑えて設置床面積(フットプリント)をコンパクトにすることができる。先に説明した第1の実施の形態および第2の実施の形態によるデバイス製造システム10の管理方法、或いはデバイスの製造方法は、図17の変形例3のようなデバイス製造システム10’にも同様に適用できる。
なお、図17の構成において、処理装置PR2’は空間的に乾燥装置(乾燥部)と第1蓄積装置BF1とに分けたが、両者を空間的に別けずに兼用したものにしてもよい。さらに、処理装置PR2’の乾燥部内と処理装置PR6内とに、基板Pを乾燥させる100℃以下の温風を送る場合、その温風を作る温調装置(ヒータ、送風ファン、フィルタ等を含む)は、処理装置PR2’用と処理装置PR6用とで兼用してもよい。また、処理装置PR3による露光工程の後に、基板P上のレジスト層に100℃以下の熱を与えるポストベーク(露光後ベイク)処理を行う場合は、処理装置PR3と第2蓄積装置BF2との間、或いは第2蓄積装置BF2内に乾燥部を設けることができる。
(変形例4)以上の第1の実施形態と第2の実施形態では、例えば、停止要求装置PRdが停止要求を発生する際に、その時点での上流側の第1蓄積装置BF1、または下流側の第2蓄積装置BF2における基板Pの新規蓄積可能長や既蓄積長に関する蓄積状態の情報を得て、露光装置EXが付加作業するための一時停止が可能か否かを判定していたが、逆の判断を行っても良い。すなわち、停止要求装置PRdの上流側、または下流側の蓄積装置(BF1、BF2)における基板Pの新規蓄積可能長や既蓄積長に関する蓄積状態の情報を逐次更新して生成するようにし、逐次更新される蓄積状態の状態から、停止要求装置PRdが一時停止可能な時間を予測演算し、予測された停止時間の間に、停止要求装置PRdが必要とする付加作業が完了するか否かを判断しても良い。したがって、このような変形例では、第1処理装置と第2処理装置との間に設けられた蓄積部(BF1、BF2)における基板Pの蓄積状態に関する蓄積情報を逐次生成する情報生成部(上位制御装置14等)を設け、第1処理装置と第2処理装置の少なくとも一方の停止対象となる処理装置で基板Pの処理動作を停止させた場合の停止可能な継続時間を、情報生成部からの蓄積情報に基づいて予測演算し、予測される停止可能な継続時間のうちに停止対象となる処理装置での付加的な作業が実施可能な場合は停止対象となる処理装置の処理動作を停止させるような制御装置(上位制御装置14等)を設けた製造システムが構築できる。