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JP6657702B2 - 有機エレクトロニクス材料及び該材料を含むインク組成物、並びに有機エレクトロニクス素子及び有機エレクトロルミネセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロニクス材料及び該材料を含むインク組成物、並びに有機エレクトロニクス素子及び有機エレクトロルミネセンス素子 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロニクス材料及び該材料を含むインク組成物に関する。また、本発明は、上記インク組成物を用いて作製される有機エレクトロニクス素子及び有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
有機エレクトロニクス素子は、有機物を用いて電気的な動作を行う素子であり、省エネルギー、低価格、柔軟性といった特長を発揮できると期待され、従来のシリコンを主体とした無機半導体に替わる技術として注目されている。
有機エレクトロニクス素子の一例としては、有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)、有機光電変換素子、有機トランジスタなどが挙げられる。
有機エレクトロニクス素子の中でも有機EL素子は、例えば、白熱ランプ、ガス充填ランプの代替えとして、大面積ソリッドステート光源用途として注目されている。また、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイ(LCD)に置き換わる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されており、製品化が進んでいる。
有機EL素子は、用いる有機材料から、低分子型有機EL素子と、高分子型有機EL素子との2種に大別される。これまで双方の素子について、発光効率及び素子寿命といった素子特性の改善に向けて様々な研究が行われている。
例えば、有機EL素子の有機層を多層化することによって素子特性を高める方法が知られている。低分子型有機EL素子では、低分子量の有機材料が使用され、主に真空系の蒸着法に従って成膜が行われる。そのため、用いる有機材料を順次変更しながら蒸着を行うことで容易に多層化が達成できる。
一方、高分子型有機EL素子では、高分子量の有機材料が使用され、印刷やインクジェットといった湿式プロセスに従って成膜が行われる。高分子型有機EL素子は、真空系での成膜が必要な低分子型有機EL素子と比較して、印刷やインクジェットなどの簡易な方法での成膜が可能であるため、今後の大画面有機ELディスプレイには不可欠な素子として期待されている。しかし、湿式プロセスに従って多層の有機層を作製する場合、上層を塗布する際に下層が溶解してしまい多層化が困難となる傾向がある。
これに対し、多層の有機層を有する高分子型有機EL素子について、いくつかの報告がある。非特許文献1は、溶解度の大きく異なる化合物を利用した3層構造の素子を開示している。また、特許文献1は、PEDOT:PSS上にインターレイヤー層と呼ばれる層を導入した3層構造の素子を開示している。さらに、非特許文献2〜4及び特許文献2は、薄膜を溶剤に対して不溶化することを目的として、シロキサン化合物、又はオキセタン基及びビニル基などの重合性官能基を含む化合物を用いた素子を開示している。
しかし、特に、水溶性のPEDOT:PSSを使用した場合には、水分によって素子が劣化し易いため、薄膜中に残存する水分を除去する必要がある。また、シロキサン化合物を使用した場合にも、化合物が空気中の水分に対して不安定であり、素子が劣化しやすい傾向がある。このように、高分子型有機EL素子の分野では、発光効率及び素子寿命といった素子特性のさらなる改善が求められている。
そもそも、優れた素子特性を有する高分子型有機EL素子を簡便な方法で製造するためには、湿式プロセスに適した高分子量の有機材料が必要であり、さらにその有機材料の特性を向上させることが必要である。特性のなかでも、発光効率を改善するためには、例えば、正孔輸送材としてバンドギャップが広い有機材料が望まれる。これに対し、特許文献3は、トリフェニルアミン構造中の1つのフェニル基に対して2つのフルオレニル基を導入した化合物を開示している。より具体的には、フェニル基に対して、2つのフルオレニル基を互いにメタ位の位置関係になるように導入した化合物に関する。特許文献3は、このような化合物によれば、フルオレニル基による高い移動度、及び高いTg(ガラス転移温度)を確保しながら、広いバンドギャップが得られることを開示している。しかし、開示された化合物は低分子量の化合物であるため、このような化合物を使用して湿式プロセスを実施することは困難である。
特開2007−119763号公報 国際公開第2008/010487号 特開2007−291064号公報
Y. Goto, T. Hayashida, M. Noto, IDW ‘04 Proceedings of The 11th International Display Workshop, 1343-1346(2004) H. Yan, P. Lee, N. R. Armstrong, A. Graham, G. A. Evemenko, P. Dutta, T. J. Marks, J. Am. Chem. Soc., 127, 3172-4183(2005) E. Bacher, M.Bayerl, P. Rudati, N. Reckfuss, C. David, K. Meerholz, O. Nuyken, Macromolecules, 38, 1640(2005) M. S. Liu, Y. H. Niu, J. W. Ka, H. L. Yip, F. Huang, J. Luo, T. D. Wong, A. K. Y. Jen, Macromolecules, 41, 9570(2008)
上述のように、高分子型有機EL素子の分野では、素子特性のさらなる改善に向けて、湿式プロセスに適した高分子量の有機材料の開発が望まれている。例えば、バンドギャップが広く、発光効率を向上することができる有機エレクトロニクス材料の実現が望まれている。したがって、本発明の実施形態は、有機EL素子の発光効率を向上することができる有機エレクトロニクス材料及びインク組成物を提供することを目的とする。また、本発明の別の実施形態は、上記有機エレクトロニクス材料及びインク組成物を用いて、優れた発光効率を有する有機エレクトロニクス素子及び有機EL素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、電荷輸送性ポリマーにおいて、2つのベンゼン環が結合してなる構造の特定の位置に置換基を導入することによって、有機エレクトロニクス素子の発光効率を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下に記載の事項に関する。
[1]分子内に下式で表される構造(I)を有する電荷輸送性ポリマーを含む、有機エレクトロニクス材料。
Figure 0006657702
[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。]
[2]上記構造(I)が、下式で表される置換ビフェニレン構造(I−1)を含む、上記[1]に記載の有機エレクトロニクス材料。
Figure 0006657702
[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。]
[3]上記電荷輸送性ポリマーが、電荷輸送性を有する2価の構造単位と、電荷輸送性を有する3価以上の構造単位とを含む、上記[1]又は[2]に記載の有機エレクトロニクス材料。
[4]上記2価の構造単位及び上記3価以上の構造単位の少なくとも一方が、上記構造(I)を含む、上記[3]に記載の有機エレクトロニクス材料。
[5]上記2価の構造単位と上記3価以上の構造単位とが結合してなる部分構造が、上記構造(I)を含む、上記[3]に記載の有機エレクトロニクス材料。
[6]上記2価の構造単位及び上記3価以上の構造単位の少なくとも一方が、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、及びベンゼン構造、及びこれらの1種又は2種以上を含む構造から選択される構造を含む、上記[3]〜[5]のいずれか1つに記載の有機エレクトロニクス材料。
[7]上記2価の構造単位及び上記3価以上の構造単位が、それぞれ、置換又は非置換の芳香族アミン構造を含む、上記[3]〜[5]のいずれか1つに記載の有機エレクトロニクス材料。
[8]上記電荷輸送性ポリマーが、分子内に1以上の重合性官能基をさらに有する、上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の有機エレクトロニクス材料。
[9]上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の有機エレクトロニクス材料と、溶媒とを含む、インク組成物。
[10]さらに、重合開始剤を含む、上記[9]に記載のインク組成物。
[11]基板と、上記[9]又は[10]に記載のインク組成物を用いて形成された有機層とを含む有機エレクトロニクス素子。
[12]上記基板が、樹脂フィルムである、上記[11]に記載の有機エレクトロニクス素子
[13]上記[9]又は[10]に記載のインク組成物を用いて形成された有機層を有する有機エレクトロルミネセンス素子。
[14]上記有機層が、正孔注入層である、上記[13]に記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
[15]上記有機層が、正孔輸送層である、上記[13]に記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
[16]陽極及び陰極からなる一対の電極をさらに有し、上記有機層が上記一対の電極間に配置される、上記[13]〜[15]のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明の実施形態である有機エレクトロニクス材料及びインク組成物によれば、有機EL素子の発光効率を向上させることができる。また、本発明の別の実施形態によれば、上記有機エレクトロニクス材料及びインク組成物を用いて、優れた発光効率を有する有機エレクトロニクス素子及び有機EL素子を提供することができる。
本発明の実施形態である有機EL素子の構造の一例を示す断面模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
<有機エレクトロニクス材料>
本発明の一実施形態である有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性ポリマーを含有する。電荷輸送性ポリマーは、分子内に以下に示す構造(I)を含む。
Figure 0006657702
式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。「*」は、他の構造との結合部位を表す。ここで、上記炭素数1〜4のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基といった直鎖のアルキル基であっても、i−プロピル基及びt−ブチル基といった分岐のアルキル基であってもよい。上記炭素数1〜4のアルキル基は、好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
上記電荷輸送性ポリマーは、いかなる形態であれ、分子内に構造(I)を含んでいればよい。一実施形態において、上記電荷輸送性ポリマーは、以下に示す置換ビフェニレン構造(I−1)を含むことが好ましい。
Figure 0006657702
式中、R〜Rは、先に構造(I)で説明したR〜Rと同様である。すなわち、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキル基は、直鎖又は分岐であってよい。好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。「*」は、他の構造との結合部位を表す。
上記構造(I)及び(I−1)に示したように、2つのベンゼン環が結合した構造において、その結合部位を起点としてオルトの位置(R〜R)に少なくとも1つの置換基が存在すると、立体障害によって、2つのベンゼン環は互いにねじれた構造をとり易くなる。このことから、電荷輸送性ポリマーが分子内に上記構造(I)を有する場合、共役分子は共役構造を取り難くなり、分子内の共役が切断されやすくなる。そして、分子内にねじれた構造を導入することによって、バンドギャップの広い電荷輸送性ポリマーを得ることが容易になる。したがって、上記構造(I)を有する電荷輸送性ポリマーを含む本発明の有機エレクトロニクス材料を使用することによって、有機EL素子の発光効率を容易に向上させることができる。上記有機エレクトロニクス素子は、電荷輸送性ポリマーを1種のみ含有しても、又は2種以上含有してもよい。以下、電荷輸送性ポリマーの実施形態についてより具体的に説明する。
[電荷輸送性ポリマー]
電荷輸送性ポリマーは電荷を輸送する能力を有する。電荷輸送性ポリマーは、電荷輸送性を有する構造単位を含む。電荷輸送性ポリマーは、直鎖状であっても、又は、分岐構造を有していてもよい。電荷輸送性ポリマーは、好ましくは、電荷輸送性を有する2価の構造単位Lと末端部を構成する1価の構造単位Tとを少なくとも含み、分岐部を構成する3価以上の構造単位Bを更に含んでもよい。電荷輸送性ポリマーは、各構造単位を、それぞれ1種のみ含んでいても、又は、それぞれ複数種含んでいてもよい。電荷輸送性ポリマーにおいて、各構造単位は、「1価」〜「3価以上」の結合部位において互いに結合している。
(構造)
電荷輸送性ポリマーに含まれる部分構造の例として、以下が挙げられる。電荷輸送性ポリマーは以下の部分構造を有するポリマーに限定されない。部分構造中、「L」は構造単位Lを、「T」は構造単位Tを、「B」は構造単位Bを表す。「*」は、他の構造単位との結合部位を表す。以下の部分構造中、複数のLは、互いに同一の構造単位であっても、互いに異なる構造単位であってもよい。T及びBについても、同様である。
直鎖状の電荷輸送性ポリマー
Figure 0006657702
分岐構造を有する電荷輸送性ポリマー
Figure 0006657702
本発明において電荷輸送性ポリマーは、分子内に先に示した構造(I)を有する。一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、構造単位L、B、及びTの少なくとも1つの構造単位中に構造(I)を含む。好ましくは、構造単位L及び構造単位Bの少なくとも一方が、構造単位中に構造(I)を含む。より好ましくは、少なくとも構造単位Bが構造(I)を含む。別の実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、構造単位L、B、及びTが結合してなる部分構造中に構造(I)を含む。より好ましくは、構造単位LとBとが結合してなる部分構造中に構造(I)を含む。ここで、各実施形態において、構造(I)は、より好ましくは置換ビフェニレン構造(I−1)である。以下、電荷輸送性ポリマーを構成する各構造単位について具体的に説明する。
(構造単位L)
構造単位Lは、電荷輸送性を有する2価の構造単位である。構造単位Lは、電荷を輸送する能力を有する原子団を含んでいればよく、特に限定されない。構造単位Lは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ビフェニレン構造、ターフェニレン構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、テトラセン構造、フェナントレン構造、ジヒドロフェナントレン構造、ピリジン構造、ピラジン構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造、ジアザフェナントレン構造、フラン構造、ピロール構造、オキサゾール構造、オキサジアゾール構造、チアゾール構造、チアジアゾール構造、トリアゾール構造、ベンゾチオフェン構造、ベンゾオキサゾール構造、ベンゾオキサジアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、ベンゾチアジアゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。芳香族アミン構造は、好ましくはトリアリールアミン構造であり、より好ましくはトリフェニルアミン構造である。
一実施形態において、構造単位Lは、優れた正孔輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることが好ましい。他の実施形態において、構造単位Lは、優れた電子輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、フルオレン構造、ベンゼン構造、フェナントレン構造、ピリジン構造、キノリン構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることが好ましい。
特に限定するものではないが、一実施形態において、構造単位Lは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、ベンゼン構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される構造を含む。以下、構造単位Lについてより具体的に説明する。
(構造単位L1)
一実施形態において、構造単位Lは、構造単位中に先に示した構造(I)を含む。以下、このような構造単位をL1と称す。例えば、構造単位L1は、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、ベンゼン構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される構造を含み、かつ構造単位中に先に示した構造(I)を含む。より好ましくは、構造単位L1は、置換又は非置換の、芳香族アミン構造及びカルバゾール構造の少なくとも一方を含む。さらに好ましくは、構造単位L1は、置換又は非置換の芳香族アミン構造を少なくとも含む。ここで、芳香族アミン構造は、好ましくはトリアリールアミン構造であり、より好ましくはトリフェニルアミン構造である。
構造単位L1の具体例として、以下が挙げられる。但し、構造単位L1は、以下に限定されない。
Figure 0006657702
Figure 0006657702
Figure 0006657702
Figure 0006657702
各式中、Rは、先に構造(I)で説明したR〜Rと同様である。すなわち、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキル基は、直鎖又は分岐であってよい。好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
(構造単位L2)
別の実施形態において、構造単位Lは、他の構造単位との結合によって構造(I)を形成可能な構造を有する。以下、このような2価の構造単位をL2と称す。例えば、構造単位L2は、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、ベンゼン構造及びこれらの1種又は2種以上を含む構造から選択され、かつ他の構造単位との結合によって構造(I)を形成可能な構造を有する。より好ましくは、構造単位L2は、置換又は非置換の、芳香族アミン構造及びカルバゾール構造の少なくとも一方を含む。さらに好ましくは、構造単位L2は、置換又は非置換の芳香族アミン構造を少なくとも含む。ここで、芳香族アミン構造は、好ましくはトリアリールアミン構造であり、より好ましくはトリフェニルアミン構造である。ここで、他の構造単位との結合によって構造(I)を形成可能な構造とは、構造単位中のベンゼン環において他の構造単位との結合箇所を起点としてオルト位に置換基Rを少なくとも1つ有する構造を意図する。
構造単位L2の具体例として、以下が挙げられる。但し、構造単位L2は、以下に限定されない。
Figure 0006657702
式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキル基は、直鎖又は分岐であってよい。好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
R’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜22の直鎖、環状もしくは分岐のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、及びアルキルアミド基、並びに炭素数6〜30のアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を示す。ここで、上記アリール基とは、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団であり、置換基を有していてもよい。また、上記式では1つのR’のみを示したが、分子内に2つ以上のR’を有してもよい。この場合、隣接するR’同士が結合して環を形成していてもよい。上記アリールに対する置換基の一例として、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、イミド基、スルホ基、カルボキシル基、及びホスホニル基が挙げられる。一実施形態において、R’は、水素原子又炭素数1〜8の直鎖のアルキルである。上記アルキル基は、直鎖であっても分岐であってもよく、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖のアルキル基である。
(構造単位L3)
別の実施形態において、構造単位Lは、構造単位中のベンゼン環において他の構造単位との結合箇所を起点としてオルト位に置換基を持たない構造を含んでもよい。以下、このような構造単位を構造単位L3と称す。構造単位L3は、例えば、先に説明した構造単位L2のRが全て水素原子となる構造を意図する。構造単位L3は、先に説明した構造単位L2と対比させて、R以外の箇所は、置換基R’でもよい。
構造単位L3の具体例として、以下が挙げられる。但し、構造単位L3は以下に限定されない。式中R’は、先に説明した構造単位L2におけるR’と同様である。以下に例示した構造単位L3の一実施形態において、R’は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖のアルキル基であり、上記アルキル基は好ましくは炭素数1〜4の直鎖のアルキルである。
Figure 0006657702
一実施形態において、構造単位Lは、先に記載した構造単位L1〜L3を含めて、以下に例示する2価の構造単位から選択することができる。構造単位Lの具体例として、以下が挙げられる。但し、構造単位Lは以下に限定されない。
Figure 0006657702
Figure 0006657702

Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。好ましくは、Rは、それぞれ独立に、−R、−OR、−SR、−OCOR、−COOR、−SiR、ハロゲン原子、及び、後述する重合性官能基を含む基からなる群から選択される。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基;又は、炭素数2〜30個のアリール基又はヘテロアリール基を表す。アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団である。アルキル基は、更に、炭素数2〜20個のアリール基又はヘテロアリール基により置換されていてもよく、アリール基又はヘテロアリール基は、更に、炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基により置換されていてもよい。Rは、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基である。Arは、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた原子団である。ヘテロアリーレン基は、芳香族複素環から水素原子2個を除いた原子団である。Arは、好ましくはアリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。
芳香族炭化水素としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。芳香族複素環としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。
(構造単位B)
構造単位Bは、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合に、分岐部を構成する3価以上の構造単位である。構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、好ましくは6価以下であり、より好ましくは3価又は4価である。構造単位Bは、電荷輸送性を有する単位であることが好ましい。例えば、構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、縮合多環式芳香族炭化水素構造、及び、これらの1種又は2種以上を含有する構造から選択される。
特に限定するものではないが、一実施形態において、構造単位Bは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、ベンゼン構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。より好ましくは、構造単位Bは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造及びカルバゾール構造の少なくとも一方を含む。さらに好ましくは、構造単位Bは、置換又は非置換の芳香族アミン構造を少なくとも含む。ここで、芳香族アミン構造は、好ましくはトリアリールアミン構造であり、より好ましくはトリフェニルアミン構造である。以下、構造単位Bについてより具体的に説明する。
(構造単位B1)
一実施形態において、構造単位Bは、構造単位中に先に示した構造(I)を含む。以下、このような構造単位をB1と称す。例えば、構造単位B1は、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、ベンゼン構造、及びこれらの1種又は2種以上を含む構造から選択され、かつ構造単位中に先に示した構造(I)を含む。
構造単位B1の具体例として、以下が挙げられる。但し、構造単位B1は、以下に限定されない。
Figure 0006657702
Figure 0006657702
Figure 0006657702
Figure 0006657702
式中、Rは、先に構造(I)で説明したR〜Rと同様である。すなわち、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキル基は、直鎖又は分岐であってよい。好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
(構造単位B2)
別の実施形態において、構造単位Bは、他の構造単位との結合によって構造単位(I)を形成可能な構造を有する。以下、このような3価以上の構造単位をB2と称す。例えば、構造単位B2は、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、ベンゼン構造、及びこれらの1種又は2種以上を含む構造から選択され、かつ他の構造単位との結合によって構造(I)を形成可能な構造を有する。ここで、他の構造単位との結合によって構造(I)を形成可能な構造とは、構造単位中のベンゼン環において他の構造単位との結合箇所を起点としてオルト位に炭素数1〜4のアルキル基を少なくとも1つ有することを意図する。
構造単位B2の具体例として、以下が挙げられる。但し、構造単位B2は以下に限定されない。
Figure 0006657702
Figure 0006657702
各式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキル基は、直鎖又は分岐であってよい。好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
電荷輸送性ポリマーは、先に例示した構造単位B2の中でも、トリフェニルアミン構造を有する以下に示す構造単位B2−1を含むことが好ましい。
Figure 0006657702
式中、Rは、構造単位B2で記載したRと同様である。
上記構造単位B2−1のより具体的な構造として、以下が挙げられる。なかでも、特に限定するものではないが、好ましい構造単位の一例として、B2−1A、B2−1B、及びB2−1Cが挙げられる。
Figure 0006657702
式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキル基は、直鎖又は分岐であってよい。好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
(構造単位B3)
別の実施形態において、構造単位Bは、構造単位中のベンゼン環において他の構造単位との結合箇所を起点としてオルト位に置換基を持たない構造を含んでもよい。以下、このような構造単位を構造単位B3と称す。構造単位B3は、例えば、先に説明した構造単位B2のRが全て水素原子となる構造を意図する。構造単位B3は、先に説明した構造単位B2と対比させて、R以外の箇所は、置換基R’でもよい。
構造単位B3の具体例として以下が挙げられる。但し、構造単位B3は以下に限定されない。式中、R’は、先に説明した構造単位L2におけるR’と同様である。以下に例示した構造単位L3の一実施形態において、R’は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖のアルキルである。上記アルキル基は、直鎖であっても分岐であってもよく、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖のアルキル基である。
Figure 0006657702
一実施形態において、構造単位Bは、先に記載した構造単位B1〜B3を含めて、以下に例示する3価以上の構造単位から選択することができる。構造単位Bの具体例として、以下が挙げられる。但し、構造単位Bは、以下に限定されない。
Figure 0006657702
Wは、3価の連結基を表し、例えば、炭素数2〜30個のアレーントリイル基又はヘテロアレーントリイル基を表す。アレーントリイル基は、芳香族炭化水素から水素原子3個を除いた原子団である。ヘテロアレーントリイル基は、芳香族複素環から水素原子3個を除いた原子団である。Arは、それぞれ独立に2価の連結基を表し、例えば、それぞれ独立に、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Arは、好ましくはアリーレン基、より好ましくはフェニレン基である。Yは、2価の連結基を表し、例えば、構造単位LにおけるR(ただし、重合性官能基を含む基を除く。)のうち水素原子を1個以上有する基から、更に1個の水素原子を除いた2価の基が挙げられる。Zは、炭素原子、ケイ素原子、又はリン原子のいずれかを表す。構造単位中、ベンゼン環及びArは、置換基を有していてもよく、置換基の例として、構造単位LにおけるRが挙げられる。
(構造単位T)
構造単位Tは、電荷輸送性ポリマーの末端部を構成する1価の構造単位である。構造単位Tは、特に限定されず、例えば、置換又は非置換の、芳香族炭化水素構造、芳香族複素環構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。構造単位Tが構造単位L及び/又は構造単位Bと同じ構造を有していてもよい。すなわち、構造単位T中に先に示した構造(I)を含んでも、他の構造単位との結合によって構造(I)を形成可能な構造を有してもよい。
一実施形態において、構造単位Tは、電荷の輸送性を低下させずに耐久性を付与するという観点から、置換又は非置換の芳香族炭化水素構造であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン構造であることがより好ましい。また、他の実施形態において、後述するように、電荷輸送性ポリマーが末端部に重合性官能基を有する場合、構造単位Tは重合可能な構造(例えば、ピロール−イル基等の重合性官能基)であってもよい。
構造単位Tの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Tは、以下に限定されない。
Figure 0006657702
Rは、構造単位LにおけるRと同様である。電荷輸送性ポリマーが末端部に重合性官能基を有する場合、好ましくは、Rのいずれか少なくとも1つが、重合性官能基を含む基である。また、構造単位中のベンゼン環において結合箇所を起点としてオルト位に位置するRの少なくとも1つは、炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。この場合、電荷輸送性ポリマーは、末端部に構造(I)を含む構造を有する。
(重合性官能基)
一実施形態において、重合反応により硬化させ、溶剤への溶解度を変化させる観点から、電荷輸送性ポリマーは、重合性官能基を少なくとも1つ有することが好ましい。「重合性官能基」とは、熱及び/又は光を加えることにより、互いに結合を形成し得る官能基をいう。
重合性官能基としては、炭素−炭素多重結合を有する基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エチニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミノ基、ビニルオキシ基、ビニルアミノ基等)、小員環を有する基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基等の環状アルキル基;エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタン基(オキセタニル基)等の環状エーテル基;ジケテン基;エピスルフィド基;ラクトン基;ラクタム基等)、複素環基(例えば、フラン−イル基、ピロール−イル基、チオフェン−イル基、シロール−イル基)などが挙げられる。重合性官能基としては、特に、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、及びオキセタン基が好ましく、反応性及び有機エレクトロニクス素子の特性の観点から、ビニル基、オキセタン基、又はエポキシ基がより好ましい。
重合性官能基の自由度を上げ、重合反応を生じさせやすくする観点からは、電荷輸送性ポリマーの主骨格と重合性官能基とが、アルキレン鎖で連結されていることが好ましい。また、例えば、電極上に有機層を形成する場合、ITO等の親水性電極との親和性を向上させる観点からは、エチレングリコール鎖、ジエチレングリコール鎖等の親水性の鎖で連結されていることが好ましい。さらに、重合性官能基を導入するために用いられるモノマーの調製が容易になる観点からは、電荷輸送性ポリマーは、アルキレン鎖及び/又は親水性の鎖の末端部、すなわち、これらの鎖と重合性官能基との連結部、及び/又は、これらの鎖と電荷輸送性ポリマーの骨格との連結部に、エーテル結合又はエステル結合を有していてもよい。前述の「重合性官能基を含む基」とは、重合性官能基それ自体、又は、重合性官能基とアルキレン鎖等とを合わせた基を意味する。重合性官能基を含む基として、例えば、国際公開第WO2010/140553号に例示された基を好適に用いることができる。
特に限定するものではないが、一実施形態において、好ましい構造単位Tの具体例として以下が挙げられる。
Figure 0006657702
重合性官能基は、電荷輸送性ポリマーの末端部(すなわち、構造単位T)に導入されていても、末端部以外の部分(すなわち、構造単位L又はB)に導入されていても、末端部と末端以外の部分の両方に導入されていてもよい。硬化性の観点からは、少なくとも末端部に導入されていることが好ましく、硬化性及び電荷輸送性の両立を図る観点からは、末端部のみに導入されていることが好ましい。また、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合、重合性官能基は、電荷輸送性ポリマーの主鎖に導入されていても、側鎖に導入されていてもよく、主鎖と側鎖の両方に導入されていてもよい。
重合性官能基は、溶解度の変化に寄与する観点からは、電荷輸送性ポリマー中に多く含まれる方が好ましい。一方、電荷輸送性を妨げない観点からは、電荷輸送性ポリマー中に含まれる量が少ない方が好ましい。重合性官能基の含有量は、これらを考慮し、適宜設定できる。
例えば、電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基数は、十分な溶解度の変化を得る観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、重合性官能基数は、電荷輸送性を保つ観点から、1,000個以下が好ましく、500個以下がより好ましい。
電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基数は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、重合性官能基の仕込み量(例えば、重合性官能基を有するモノマーの仕込み量)、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を用い、平均値として求めることができる。また、重合性官能基の数は、電荷輸送性ポリマーのH NMR(核磁気共鳴)スペクトルにおける重合性官能基に由来するシグナルの積分値と全スペクトルの積分値との比、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を利用し、平均値として算出できる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
以上、各構成単位について説明したが、本発明において電荷輸送性ポリマーは分子内に構造(I)を含むことを特徴とする。電荷輸送性ポリマーが構造(I)を含むことによって、広いバンドギャップを得ることが容易となる。そのため、分子内に構造(I)を含む電荷輸送性ポリマーを使用することによって、有機EL素子等の発光効率を向上させることが可能となる。
電荷輸送性ポリマー1分子中に含まれる構造(I)の割合は、特に限定されない。構造(I)の割合は、例えば、構造(I)を含む構造単位L1又はB1を誘導可能なモノマーの仕込み量によって調整することができる。あるいは、構造(I)を形成可能な構造を有する構造単位L2又はB2を誘導可能なモノマーの仕込み量によって調整することもできる。一実施形態において、バンドギャップを広げる観点から、全構造単位を基準として、構造単位L1、L2、B1、及びB2を合計した割合は、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましい。一方、電荷の輸送性の観点から、全構造単位を基準として、構造単位L1、L2、B1、及びB2を合計した割合は、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。なお、構造単位Tが構造(I)を含むか、又は構造(I)を形成可能な構造を有する場合、上記割合は、構造単位Tも含めた割合となる。
電荷輸送性ポリマーは、3価以上の構造単位Bを含み、この構造単位を分岐部として3方向以上に分岐した構造を有することが好ましい。電荷輸送性ポリマーが分岐した構造を有する場合、分子量の変化に対してポリマー溶液の粘度が変化し難いため分子量の調整が容易である点で好ましい。また有機エレクトロニクス素子の耐久性を向上することが容易である点でも好ましい。
第1の実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、2価の構造単位Lと、3価以上の構造単位Bと、1価の構造単位Tとを含み、構造単位L、B及びTの少なくとも1つが構造単位中に構造(I)を有する。電荷輸送性ポリマーは、好ましくは、構造単位L及びBの少なくとも一方の構造単位中に(I)を有する。すなわち、電荷輸送性ポリマーは、構造単位L1及び構造単位B1の少なくとも一方を含むことが好ましい。
第2の実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、構造単位L、B及びTの結合によって形成される部分構造中に構造(I)を有する。電荷輸送性ポリマーは、より好ましくは、2価の構造単位Lと3価以上の構造単位Bとの結合によって形成される部分構造中に構造(I)を有する。このような実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、ベンゼン構造、及びこれらの1種又は2種以上を含む構造からそれぞれ選択される構造を含む、2価の構造単位Lと3価以上の構造単位Bとの組合せを有し、上記組合せにおいて構造単位L2及び構造単位B2の少なくとも一方を含むことが好ましい。
このような第2の実施形態の具体例は、上記2価の構造単位Lと3価以上の構造単位Bとの組合せにおいて、置換又は非置換の芳香族アミン構造を有する2価の構造単位L2と、置換又は非置換の芳香族アミン構造を有する3価以上の構造単位B2との組合せを有する。より具体的には、上記2価の構造単位L2及び上記3価以上の構造単位B2は、それぞれトリフェニルアミン構造を有するものであってよい。この場合、電荷輸送性ポリマーは、上記構造単位L2と構造単位B2との結合によって形成される下記部分構造(I−2)を含み、部分構造中に構造(I)を有する。
Figure 0006657702
式中、Rは、構造(I)で説明したR〜Rと同様である。すなわち、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキル基は、直鎖又は分岐であってよい。一実施形態において、Rの少なくとも1つは、好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
R’は、先に説明した構造単位L2のR’と同様である。一実施形態において、R’は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖のアルキルである。上記アルキル基は、好ましくは炭素数1〜4の直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
上記第2の実施形態の別の具体例は、上記2価の構造単位Lと3価以上の構造単位Bとの組合せにおいて、置換又は非置換の芳香族アミン構造を有する2価の構造単位L2及び3価以上の構造単位B2のいずれか一方のみを含む。
組合せの一例として、上記2価の構造単位L3と上記3価以上の構造単位B2との組合せが挙げられる。この場合、電荷輸送性ポリマーは、上記構造単位L3と構造単位B2との結合によって形成される、例えば以下に示す部分構造(I−3)を含み、部分構造中に構造(I)を有する。
Figure 0006657702
式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基であり、上記アルキル基は、直鎖又は分岐であってよい。好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
R’は、構造単位L2におけるR’と同様である。一実施形態において、R’は、先に説明した構造単位L2のR‘と同様である。一実施形態において、R’は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖のアルキルである。上記アルキル基は、好ましくは炭素数1〜4の直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
上記組合せの別の例として、上記2価の構造単位L2と上記3価以上の構造単位B3との組合せが挙げられる。この場合、電荷輸送性ポリマーは、上記構造単位L2と構造単位B3との結合によって形成される、例えば以下に示す部分構造(I−4)を有し、部分構造中に構造(I)を有する。
Figure 0006657702
式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基であり、上記アルキル基は、直鎖又は分岐であってよい。好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
R’は、構造単位L2におけるR’と同様である。先に説明した構造単位L2のR‘と同様である。一実施形態において、R’は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖のアルキルである。上記アルキル基は、好ましくは炭素数1〜4の直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
(数平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの数平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。数平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましい。一実施形態において、数平均分子量は3000以上が好ましい。また、数平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましい。
(重量平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。重量平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が更に好ましい。一実施形態において、重量平均分子量は20,000以上が好ましい。また、重量平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、700,000以下がより好ましく、400,000以下が更に好ましい。
数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
(構造単位の割合)
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Lの割合は、十分な電荷輸送性を得る観点から、全構造単位を基準として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Lの割合は、構造単位T及び必要に応じて導入される構造単位Bを考慮すると、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が更に好ましい。ここで、上記構造単位Lの割合は、構造単位L1、L2、及びL3を含む構造単位Lの合計を意味する。
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Tの割合は、有機エレクトロニクス素子の特性向上の観点、又は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点から、全構造単位を基準として、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Tの割合は、十分な電荷輸送性を得る観点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位Bの割合は、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、全構造単位を基準として、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Bの割合は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点、又は、十分な電荷輸送性を得る観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましい。ここで、上記構造単位Bの割合は、構造単位B1、B2、及びB3を含む構造単位Bの合計を意味する。
電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合、重合性官能基の割合は、電荷輸送性ポリマーを効率よく硬化させるという観点から、全構造単位を基準として、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、3モル%以上が更に好ましい。また、重合性官能基の割合は、良好な電荷輸送性を得るという観点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。なお、ここでの「重合性官能基の割合」とは、重合性官能基を有する構造単位の割合をいう。
電荷輸送性、耐久性、生産性等のバランスを考慮すると、構造単位L及び構造単位Tの割合(モル比)は、L:T=100:1〜70が好ましく、100:3〜50がより好ましく、100:5〜30が更に好ましい。また、電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位L、構造単位T、及び構造単位Bの割合(モル比)は、L:T:B=100:10〜200:10〜100が好ましく、100:20〜180:20〜90がより好ましく、100:40〜160:30〜80が更に好ましい。ここで、上記構造単位Lの割合は、構造単位L1、L2、及びL3を含む構造単位Lの合計を意味する。また、上記構造単位Bの割合は、構造単位B1、B2、及びB3を含む構造単位Bの合計を意味する。
構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量を用いて求めることができる。また、構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーのH NMRスペクトルにおける各構造単位に由来するスペクトルの積分値を利用し、平均値として算出することができる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
(製造方法)
電荷輸送性ポリマーは、種々の合成方法により製造でき、特に限定されない。例えば、鈴木カップリング、根岸カップリング、園頭カップリング、スティルカップリング、ブッフバルト・ハートウィッグカップリング等の公知のカップリング反応を用いることができる。鈴木カップリングは、芳香族ボロン酸誘導体と芳香族ハロゲン化物の間で、Pd触媒を用いたクロスカップリング反応を起こさせるものである。鈴木カップリングによれば、所望とする芳香環同士を結合させることにより、電荷輸送性ポリマーを簡便に製造できる。
カップリング反応では、触媒として、例えば、Pd(0)化合物、Pd(II)化合物、Ni化合物等が用いられる。また、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等を前駆体とし、ホスフィン配位子と混合することにより発生させた触媒種を用いることもできる。電荷輸送性ポリマーの合成方法については、例えば、国際公開第WO2010/140553号の記載を参照できる。
鈴木カップリング反応において使用できるモノマーの組合せの一例として、以下が挙げられる。
Figure 0006657702
各モノマーL、B、Tは、それぞれ先に説明した構造単位L、B及びTを誘導可能なモノマーである。モノマーLにおいて、R’は、構造単位Lで記載したRと同様であってよい。一実施形態において、R’は、水素原子、又は炭素数1〜8のアルキル基である。上記アルキル基は、直鎖又は分岐のアルキル基であってよく、より好ましくは直鎖のアルキル基である。モノマーBにおいて、Rは、それぞれ独立して、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基は、好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
上記モノマーの組合せによれば、モノマーにおけるボロン酸基とブロモ基との反応によって、各モノマーから誘導される構造単位L、B、及びTがそれぞれ結合したポリマーが得られる。例示したモノマーの組合せによれば、構造単位Lと構造単位Bとが結合してなる部分構造において、構造(I)が形成される。各モノマーは、互いに反応によって結合を形成することが可能な反応性官能基の組合せを有すればよく、ボロン酸基とブロモ基とを互いに入れ替えた構造であってもよい、反応性官能基は、ボロン酸エステル、又はブロモ基以外のハロゲン基であってもよい。
[ドーパント]
有機エレクトロニクス材料は、ドーパントを更に含有してもよい。ドーパントは、有機エレクトロニクス材料に添加することでドーピング効果を発現させ、電荷の輸送性を向上させ得る化合物であればよく、特に制限はない。ドーピングには、p型ドーピングとn型ドーピングがあり、p型ドーピングではドーパントとして電子受容体として働く物質が用いられ、n型ドーピングではドーパントとして電子供与体として働く物質が用いられる。正孔輸送性の向上にはp型ドーピング、電子輸送性の向上にはn型ドーピングを行うことが好ましい。有機エレクトロニクス材料に用いられるドーパントは、p型ドーピング又はn型ドーピングのいずれの効果を発現させるドーパントであってもよい。また、1種のドーパントを単独で添加しても、複数種のドーパントを混合して添加してもよい。
p型ドーピングに用いられるドーパントは、電子受容性の化合物であり、例えば、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属化合物、イオン化合物、ハロゲン化合物、π共役系化合物等が挙げられる。具体的には、ルイス酸としては、FeCl、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr等;プロトン酸としては、HF、HCl、HBr、HNO、HSO、HClO等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、1−ブタンスルホン酸、ビニルフェニルスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機酸;遷移金属化合物としては、FeOCl、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、AlCl、NbCl、TaCl、MoF;イオン化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、AsF (ヘキサフルオロ砒酸イオン)、BF (テトラフルオロホウ酸イオン)、PF (ヘキサフルオロリン酸イオン)等のパーフルオロアニオンを有する塩、アニオンとして上記プロトン酸の共役塩基を有する塩など;ハロゲン化合物としては、Cl、Br、I、ICl、ICl、IBr、IF等;π共役系化合物としては、TCNE(テトラシアノエチレン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)等が挙げられる。また、特開2000−36390号公報、特開2005−75948号公報、特開2003−213002号公報等に記載の電子受容性化合物を用いることも可能である。好ましくは、ルイス酸、イオン化合物、π共役系化合物等である。
n型ドーピングに用いられるドーパントは、電子供与性の化合物であり、例えば、Li、Cs等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属;LiF、CsCO等のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩;金属錯体;電子供与性有機化合物などが挙げられる。
電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合は、有機層の溶解度の変化を容易にするために、ドーパントとして、重合性官能基に対する重合開始剤として作用し得る化合物を用いることが好ましい。
[他の任意成分]
有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性低分子化合物、他のポリマー等を更に含有してもよい。
[含有量]
電荷輸送性ポリマーの含有量は、良好な電荷輸送性を得る観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。100質量%とすることも可能である。
ドーパントを含有する場合、その含有量は、有機エレクトロニクス材料の電荷輸送性を向上させる観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、成膜性を良好に保つ観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
<インク組成物>
本発明の実施形態であるインク組成物は、上記実施形態の有機エレクトロニクス材料と該材料を溶解又は分散し得る溶媒とを含有する。インク組成物を用いることによって、塗布法といった簡便な方法によって有機層を容易に形成できる。
[溶媒]
溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を使用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等である。
[重合開始剤]
電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合、インク組成物は、好ましくは、重合開始剤を含有する。重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等を使用できる。インク組成物を簡便に調製できる観点から、ドーパントとしての機能と重合開始剤としての機能とを兼ねる物質を用いることが好ましい。そのような物質として、例えば、上記イオン化合物が挙げられる。
[添加剤]
インク組成物は、更に、任意成分として添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
[含有量]
インク組成物における溶媒の含有量は、種々の塗布方法へ適用することを考慮して定めることができる。例えば、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、0.1質量%以上となる量が好ましく、0.2質量%以上となる量がより好ましく、0.5質量%以上となる量が更に好ましい。また、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、20質量%以下となる量が好ましく、15質量%以下となる量がより好ましく、10質量%以下となる量が更に好ましい。
<有機層>
本発明の実施形態である有機層は、上記実施形態の有機エレクトロニクス材料又はインク組成物を用いて形成された層である。インク組成物を用いることによって、塗布法により有機層を良好に形成できる。塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法;キャスト法;浸漬法;凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の有版印刷法;インクジェット法等の無版印刷法などの公知の方法が挙げられる。塗布法によって有機層を形成する場合、塗布後に得られた有機層(塗布層)を、ホットプレート又はオーブンを用いて乾燥させ、溶媒を除去してもよい。
電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合、光照射、加熱処理等により電荷輸送性ポリマーの重合反応を進行させ、有機層の溶解度を変化させることができる。溶解度を変化させた有機層を積層することで、有機エレクトロニクス素子の多層化を容易に図ることが可能となる。有機層の形成方法については、例えば、国際公開第WO2010/140553号の記載を参照できる。
乾燥後又は硬化後の有機層の厚さは、電荷輸送の効率を向上させる観点から、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは1nm以上であり、更に好ましくは3nm以上である。また、有機層の厚さは、電気抵抗を小さくする観点から、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。
<有機エレクトロニクス素子>
本発明の実施形態である有機エレクトロニクス素子は、少なくとも上記実施形態の有機層を有する。有機エレクトロニクス素子として、例えば、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等が挙げられる。有機エレクトロニクス素子は、好ましくは、陽極及び陰極からなる少なくとも一対の電極の間に有機層が配置された構造を有する。
[有機EL素子]
本発明の実施形態である有機EL素子は、少なくとも上記実施形態の有機層を有する。一実施形態において、有機EL素子は、基板と、上記実施形態の有機層とを有する。有機EL素子は、通常、発光層、陽極、陰極、及び基板を備えており、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等の他の機能層を備えている。各層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。有機EL素子は、好ましくは、有機層を発光層又は他の機能層として有し、より好ましくは機能層として有し、更に好ましくは正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として有する。
図1は、有機EL素子の一実施形態を示す断面模式図である。図1の有機EL素子は、多層構造の素子であり、基板8、陽極2、上記実施形態の有機層からなる正孔注入層3及び正孔輸送層6、発光層1、電子輸送層7、電子注入層5、並びに陰極4をこの順に有している。以下、各層について説明する。
[発光層]
発光層に用いる材料として、低分子化合物、ポリマー、デンドリマー等の発光材料を使用できる。ポリマーは、溶媒への溶解性が高く、塗布法に適しているため好ましい。発光材料としては、蛍光材料、燐光材料、熱活性化遅延蛍光材料(TADF)等が挙げられる。
蛍光材料として、ペリレン、クマリン、ルブレン、キナクドリン、スチルベン、色素レーザー用色素、アルミニウム錯体、これらの誘導体等の低分子化合物;ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、フルオレンーベンゾチアジアゾール共重合体、フルオレン−トリフェニルアミン共重合体、これらの誘導体等のポリマー;これらの混合物等が挙げられる。
燐光材料として、Ir、Pt等の金属を含む金属錯体などを使用できる。Ir錯体としては、例えば、青色発光を行うFIr(pic)(イリジウム(III)ビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジネート−N,C]ピコリネート)、緑色発光を行うIr(ppy)(ファク トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム)、赤色発光を行う(btp)Ir(acac)(ビス〔2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナート−N,C〕イリジウム(アセチル−アセトネート))、Ir(piq)(トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム)等が挙げられる。Pt錯体としては、例えば、赤色発光を行うPtOEP(2、3、7、8、12、13、17、18−オクタエチル−21H、23H−フォルフィンプラチナ)等が挙げられる。
発光層が燐光材料を含む場合、燐光材料の他に、更にホスト材料を含むことが好ましい。ホスト材料としては、低分子化合物、ポリマー、又はデンドリマーを使用できる。低分子化合物としては、例えば、CBP(4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル)、mCP(1,3−ビス(9−カルバゾリル)ベンゼン)、CDBP(4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチルビフェニル)、これらの誘導体等が、ポリマーとしては、上記実施形態の有機エレクトロニクス材料、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン、ポリフルオレン、これらの誘導体等が挙げられる。
熱活性化遅延蛍光材料としては、例えば、Adv. Mater., 21, 4802-4906 (2009);Appl. Phys. Lett., 98, 083302 (2011);Chem. Comm., 48, 9580 (2012);Appl. Phys. Lett., 101, 093306 (2012);J. Am. Chem. Soc., 134, 14706 (2012);Chem. Comm., 48, 11392 (2012);Nature, 492, 234 (2012);Adv. Mater., 25, 3319 (2013);J. Phys. Chem. A, 117, 5607 (2013);Phys. Chem. Chem. Phys., 15, 15850 (2013);Chem. Comm., 49, 10385 (2013);Chem. Lett., 43, 319 (2014)等に記載の化合物が挙げられる。
[電子輸送層、電子注入層]
電子輸送層及び電子注入層に用いる材料としては、例えば、フェナントロリン誘導体、ビピリジン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレン、ペリレンなどの縮合環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、アルミニウム錯体等が挙げられる。また、上記実施形態の有機エレクトロニクス材料も使用できる。
[陰極]
陰極材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba、Mg/Ag、LiF、CsF等の金属又は金属合金が用いられる。
[陽極]
陽極材料としては、例えば、金属(例えば、Au)又は導電性を有する他の材料が用いられる。他の材料として、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)、導電性高分子(例えば、ポリチオフェン−ポリスチレンスルホン酸混合物(PEDOT:PSS))が挙げられる。
[基板]
基板として、ガラス、プラスチック等を使用できる。基板は、透明であることが好ましく、また、フレキシブル性を有することが好ましい。石英ガラス、光透過性樹脂フィルム等が好ましく用いられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルムが挙げられる。
樹脂フィルムを用いる場合、水蒸気、酸素等の透過を抑制するために、樹脂フィルムへ酸化珪素、窒化珪素等の無機物をコーティングして用いてもよい。
[発光色]
有機EL素子の発光色は特に限定されない。白色の有機EL素子は、家庭用照明、車内照明、時計又は液晶のバックライト等の各種照明器具に用いることができるため好ましい。
白色の有機EL素子を形成する方法としては、複数の発光材料を用いて複数の発光色を同時に発光させて混色させる方法を用いることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、特に限定されないが、青色、緑色及び赤色の3つの発光極大波長を含有する組み合わせ、青色と黄色、黄緑色と橙色等の2つの発光極大波長を含有する組み合わせなどが挙げられる。発光色の制御は、発光材料の種類と量の調整により行うことができる。
<表示素子、照明装置、表示装置>
本発明の実施形態である表示素子は、上記実施形態の有機EL素子を備えている。例えば、赤、緑及び青(RGB)の各画素に対応する素子として、有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。画像の形成方法には、マトリックス状に配置した電極でパネルに配列された個々の有機EL素子を直接駆動する単純マトリックス型と、各素子に薄膜トランジスタを配置して駆動するアクティブマトリックス型とがある。
また、本発明の実施形態である照明装置は、本発明の実施形態の有機EL素子を備えている。さらに、本発明の実施形態である表示装置は、照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えている。例えば、表示装置は、バックライトとして本発明の実施形態である照明装置を用い、表示手段として公知の液晶素子を用いた表示装置、すなわち液晶表示装置とできる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
I.電荷輸送性ポリマーの調製
(Pd触媒の調製)
電荷輸送性ポリマーの調製時に使用する触媒を以下のようにして調製した。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(73.2mg、80μmol)を秤取り、アニソール(15ml)を加え、30分間攪拌した。同様に、サンプル管にトリス(t−ブチル)ホスフィン(129.6mg、640μmol)を秤取り、アニソール(5ml)を加え、5分間攪拌した。これらの溶液を混合し室温で30分間攪拌し、得られた生成物を触媒として使用した。
(調製例1)電荷輸送性ポリマー1
三口丸底フラスコに、以下に示すモノマー1(5.0mmol)、モノマー2(2.0mmol)、及びモノマー3(4.0mmol)と、アニソール(20ml)を入れ、さらに、先に調製したPd触媒溶液(7.5ml)を加えた。これらの原料を30分撹拌した後、10%テトラエチルアンモニウム水酸化物水溶液(20ml)を加えた。なお、反応に使用する全ての溶媒は、窒素バブルによって30分以上にわたり脱気した後に使用した。上記反応混合物を2時間にわたって加熱及び還流した。ここまでの全ての操作は、窒素気流下で行った。
Figure 0006657702
反応終了後、有機層を水洗し、有機層をメタノール−水(9:1)に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過し、メタノール−水(9:1)で洗浄した。得られた沈殿をトルエンに溶解し、メタノールから再沈殿した。得られた沈殿を吸引ろ過し、トルエンに溶解し、triphenylphosphine,polymer−bound on styrene−divinylbenzene copolymer(strem chemicals社 、ポリマー100mgに対して200mg)を加えて、一晩撹拌した。撹拌終了後、triphenylphosphine,polymer−bound on styrene−divinylbenzene copolymerと不溶物をろ過して取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。残さをトルエンに溶解した後、メタノール−アセトン(8:3)から再沈殿した。生じた沈殿を吸引ろ過し、メタノール−アセトン(8:3)で洗浄した。得られた沈殿を真空乾燥し、1.3gの電荷輸送性ポリマー1を得た。
得られた電荷輸送性ポリマー1の数平均分子量は5800であり、質量平均分子量は39700であった。電荷輸送性ポリマー1は、構造単位L(モノマー1に由来)、構造単位B2(モノマー2に由来)、及び構造単位T(モノマー3に由来)を有し、それぞれの割合は、順に、45.5%、18.2%、及び36.4%であった。
数平均分子量及び重量平均分子量は、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPC(ポリエチレン換算)によって測定した。測定条件は以下のとおりである。
送液ポンプ:L−6050 (株)日立ハイテクノロジーズ
UV−Vis検出器:L−3000 (株)日立ハイテクノロジーズ
カラム:Gelpack(登録商標) GL−A160S/GL−A150S 日立化成(株)
溶離液:THF(HPLC用、安定剤を含まない) 和光純薬工業(株)
流速:1mL/min
カラム温度:室温
分子量標準物質:標準ポリスチレン
(調製例2)電荷輸送性ポリマー2
調製例1のモノマー2を下記に示すモノマー4に変更した以外は、調製例1と同様にして電荷輸送性ポリマー2を調製した。得られた電荷輸送性ポリマー2の数平均分子量は3500であり、質量平均分子量は27300であった。電荷輸送性ポリマー2は、構造単位L(モノマー1に由来)、構造単位B2(モノマー4に由来)、及び構造単位T(モノマー3に由来)を有し、それぞれの割合は、順に、45.5%、18.2%、及び36.4%であった。
Figure 0006657702
(調製例3)電荷輸送性ポリマー3
調製例1のモノマー2を以下に示すモノマー5に変更した以外は、調製例1と同様にして電荷輸送性ポリマー3を調製した。
得られた電荷輸送性ポリマー3の数平均分子量は7800であり、質量平均分子量は31000であった。電荷輸送性ポリマー3は、構造単位L(モノマー1に由来)、構造単位B(モノマー5に由来)、及び構造単位T(モノマー3に由来)を有し、それぞれの割合は、順に、45.5%、18.2%、及び36.4%であった。
Figure 0006657702
II.有機エレクトロニクス材料の評価
先に調製した電荷輸送性ポリマー1〜3を、それぞれ有機エレクトロニクス材料として使用し、各種特性について検討した。
<有機EL素子>
以下の実施例1、2及び比較例1では、先に調製した電荷輸送性ポリマー1〜3を用いて構成される正孔輸送層を有する有機EL素子について検討した。
(実施例1)
電荷輸送性ポリマー3(10.0mg)と、重合開始剤として下式で示す化合物1(0.5mg)と、トルエン(2.3mL)とからなる、正孔注入層用のインク組成物を調製した。窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、先に調製したインク組成物を3000min−1でスピンコートし、次いでホットプレート上で220℃において10分間加熱し、塗膜を硬化させることによって、正孔注入層(30nm)を形成した。
Figure 0006657702
次に、電荷輸送性ポリマー1(20mg)と、トルエン(2.3mL)とからなる正孔輸送層用のインク組成物を調製した。得られたインク組成物を、先に形成した正孔注入層の上に3000min−1でスピンコートし、次いでホットプレート上で180℃において10分間加熱し、塗膜を乾燥させることによって、正孔輸送層(40nm)を形成した。これにより、ガラス基板/正孔注入層/正孔輸送層の積層体を得た。
次に、上記のようにして得た積層体を真空蒸着中に移し、上記正孔輸送層の上に、CBP:Ir(ppy)(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.8nm)、Al(100nm)の順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子の発光効率を、輝度計(トップコン製、BM7)及び電流電圧計(YOKOGAWA・HEWLETT・PACKARD製 4140B)を用いて評価した。具体的には、発光輝度を3000cd/mに設定した時の発光効率を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
正孔輸送層の形成工程において、インク組成物中の電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー2に変更した以外は、全て実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子の発光効率を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
正孔輸送層の形成工程において、インク組成物中の電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー3に変更した以外は、全て実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子の発光効率を、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006657702
実施例1及び2と比較例1との比較から、分子内に特定の構造を有する電荷輸送性ポリマーを使用して有機EL素子を構成することによって、発光効率の向上が達成できることが分かる。より詳細には、実施例1及び2で使用した電荷輸送性ポリマー1及び2は、ポリマー分子中のベンゼン環の特定の位置に置換基を有する。これに対し、比較例1で使用した電荷輸送性ポリマー3は、ポリマー分子中のベンゼン環の特定の位置に置換基を持たない。
電荷輸送性ポリマー1〜3について、それぞれUVスペクトルを測定した結果を表2に示す。表2から分かるように、ポリマー分子中のベンゼン環の特定の位置に置換基を持たない電荷輸送性ポリマー3の吸収端を基準として、電荷輸送性ポリマー1及び2では置換基が導入されることで吸収端がシフトしている。このことから、共役構造にねじれが生じることが分かる。また、そのようなねじれた構造によって、バンドギャップが広がることも分かる。
Figure 0006657702
<耐溶剤性の評価>
先ず、正孔注入層/正孔輸送層の積層構造をモデルとして、先に調製した電荷輸送性ポリマー1〜3を使用して上記正孔輸送層を形成する実施形態について検討した。より具体的には、以下の実施例3〜6では、正孔注入層に対して、上記電荷輸送性ポリマー1〜3を含むインク組成物を塗布法に従い成膜して得られる積層体の耐溶剤性について評価した。
(実施例3)
電荷輸送性ポリマー3(10.0mg)と、重合開始剤として下式で示す化合物1(0.5mg)と、トルエン(2.3mL)とからなる、インク組成物1を調製した。このインク組成物1を3000rpmで石英板上にスピンコートした。次いで、ホットプレート上で、180℃において10分間加熱することによって、塗膜を乾燥させ、石英板上に第1の薄膜を形成した。
Figure 0006657702
次に、電荷輸送性ポリマー1(10.0mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物2を調製した。このインク組成物2を3000rpmで上記第1の薄膜上にスピンコートした。次いで、ホットプレート上で、180℃において10分間加熱することによって、第2の薄膜を形成し、石英板/第1の薄膜/第2の薄膜の積層体を得た。得られた上記積層体をトルエン中に1分間浸漬し、洗浄をおこなった。洗浄前及び洗浄後の上記積層体のUV−visスペクトルにおける吸収極大(λmax)の吸光度(Abs)の比から、残膜率を測定した。結果を表3に示す。
(実施例4)
実施例3のインク組成物2について、電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー2に変更したインク組成物を用いて第2の薄膜を形成したこと以外は、全て実施例3と同様にして、積層体を得た。得られた積層体について、実施例3と同様にして、残膜率を測定した。結果を表3に示す。
(実施例5)
実施例3のインク組成物2を、電荷輸送性ポリマー1(10.0mg)と、重合開始剤として上記化合物1(0.5mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物に変更して第2の薄膜を形成したこと以外は、全て実施例3と同様にして、積層体を得た。得られた積層体について、実施例3と同様にして、残膜率を測定した。結果を表3に示す。
(実施例6)
実施例3のインク組成物2を、電荷輸送性ポリマー2(10.0mg)と、重合開始剤として上記化合物1(0.5mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物に変更して第2の薄膜を形成した以外は、全て実施例3と同様にして、積層体を得た。また、得られた積層体について、実施例3と同様にして、残膜率を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0006657702
実施例3〜6から明らかなように、電荷輸送性ポリマーが分子内に重合性官能基を有することで正孔輸送層が不溶化し、高い残膜率が達成できる。このことから、分子内に重合性官能基を有する電荷輸送性ポリマーを使用した場合、湿式プロセスによる有機層の成膜がより容易となり、さらにその上層に塗布法による積層も可能となることが分かる。
1 発光層
2 陽極
3 正孔注入層
4 陰極
5 電子注入層
6 正孔輸送層
7 電子輸送層

Claims (16)

  1. 電荷輸送性を有する2価の構造単位と、電荷輸送性を有する3価以上の構造単位とを含み、前記2価の構造単位及び前記3価以上の構造単位の少なくとも一方が、下式で表される構造(I)を有する電荷輸送性ポリマーを含む、有機エレクトロニクス材料。
    Figure 0006657702
    [式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。]
  2. 電荷輸送性を有する2価の構造単位と、電荷輸送性を有する3価以上の構造単位とを含み、前記2価の構造単位と前記3価以上の構造単位とが結合してなる部分構造が、下式で表される構造(I)を有する電荷輸送性ポリマーを含む、有機エレクトロニクス材料
    Figure 0006657702
    [式中、R 〜R は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R 〜R の少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。]
  3. 前記構造(I)が、下式で表される置換ビフェニレン構造(I−1)を含む、請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクス材料。
    Figure 0006657702
    [式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。]
  4. 前記2価の構造単位及び前記3価以上の構造単位の少なくとも一方が、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、及びベンゼン構造、及びこれらの1種又は2種以上を含む構造から選択される構造を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクス材料。
  5. 前記2価の構造単位及び前記3価以上の構造単位が、それぞれ、置換又は非置換の芳香族アミン構造を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクス材料。
  6. 少なくとも前記3価以上の構造単位が、前記構造(I)を有する電荷輸送性ポリマーを含む、請求項1、3〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクス材料。
  7. 前記電荷輸送性ポリマーが、下式で表される部分構造(I−2)を含む、請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクス材料
    Figure 0006657702
    [式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基であり、R’は、水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖のアルキルである。]
  8. 前記電荷輸送性ポリマーが、分子内に1以上の重合性官能基をさらに有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクス材料。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクス材料と、溶媒とを含む、インク組成物。
  10. さらに、重合開始剤を含む、請求項9に記載のインク組成物。
  11. 基板と、請求項9又は10に記載のインク組成物を用いて形成された有機層とを含む有機エレクトロニクス素子。
  12. 前記基板が、樹脂フィルムである、請求項11に記載の有機エレクトロニクス素子。
  13. 請求項9又は10に記載のインク組成物を用いて形成された有機層を有する有機エレクトロルミネセンス素子。
  14. 前記有機層が、正孔注入層である、請求項13に記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
  15. 前記有機層が、正孔輸送層である、請求項13に記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
  16. 陽極及び陰極からなる一対の電極をさらに有し、前記有機層が前記一対の電極間に配置される、請求項13〜15のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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