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JP6617852B2 - 熱間鍛造用棒鋼 - Google Patents

熱間鍛造用棒鋼 Download PDF

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Description

本発明は、棒鋼に関し、さらに詳しくは、熱間鍛造品に用いられる棒鋼(以下、「熱間鍛造用棒鋼」とも称する)に関する。
自動車エンジン等に用いられるコネクティングロッド(以下、「コンロッド」とも称する)は、ピストンとクランクシャフトとを連結するエンジン部品であり、ピストンの往復運動をクランクの回転運動に変換する。
図1は従来のコンロッドの正面図である。図1に示すとおり、従来のコンロッド1は、大端部100と、棹部200と、小端部300とを含む。棹部200の一端に大端部100が配置され、棹部200の他端に小端部300が配置される。大端部100はクランクピンに連結される。小端部300はピストンに連結される。
従来のコンロッド1は2つの部品(キャップ2及びロッド3)を備える。これらの部品は通常、熱間鍛造により製造される。キャップ2及びロッド3の一端部が大端部100に相当する。ロッド3の一端部以外の他の部分が、棹部200及び小端部300に相当する。大端部100及び小端部300は切削して形成される。そのため、コンロッド1には高い被削性が求められる。
コンロッド1は、エンジン動作時に周辺部材からの荷重を受ける。最近ではさらに、省燃費化のために、コンロッド1の小型化及びシリンダ内の筒内圧力向上が求められている。そのため、コンロッド1には、棹部200を細くしても、ピストンから伝わる爆発荷重に対応可能な優れた降伏強度が求められている。さらに、コンロッドには、繰り返しの圧縮荷重及び引張荷重がかかるため、優れた疲労強度も求められる。
また、近年、省エネルギー及び低コスト化の観点から、調質処理(焼入れ及び焼戻し)を省略した非調質コンロッドが採用されはじめている。したがって、熱間鍛造後、調質処理をしなくても、十分な降伏強度、疲労強度及び被削性が得られる非調質鋼が求められている。
ところで、従来のコンロッド1は、上記のとおりキャップ2とロッド3とが別々に製造される。そのため、キャップ2とロッド3との位置決めのために、ノックピン加工工程が実施される。さらに、キャップ2とロッド3との合わせ面に対して切削加工工程が実施される。そこで、これらの工程を省略可能なクラッキングコンロッドが普及し始めている。
クラッキングコンロッドでは、コンロッドを一体成型した後、大端部100の孔に治具を挿入し、応力を負荷して大端部100を破断して、2つの部品(キャップ2及びロッド3に相当)に分割する。そして、クランクシャフトに取り付けるときに、分割された2つの部品を結合する。大端部100の破断面が変形のない脆性破面であれば、キャップ2及びロッド3の破断面を合わせ、ボルトで連結することができる。したがってこの場合、ノックピン加工工程及び切削加工工程が省略される。その結果、製造コストが下がる。
クラッキングコンロッドは通常、コンロッドの一体成型を、熱間鍛造によって実施する。本明細書において、熱間鍛造後の熱間鍛造用棒鋼を「熱間鍛造品」ともいう。ここで、クラッキングコンロッドに用いられる場合、熱間鍛造品の靭性は低いほうが好ましい。靭性が高い鋼では、クラッキングにより大端部を破断した場合、破断面に延性破面が生じやすい。この場合、大端部が塑性変形していることになる。そのため、破断面を合わせてもきれいに整合せず、図1中の大端部100の内径Dが所望の数値からずれる。その結果、クランク連結部(大端部100)で片当たりが生じ、自動車走行時の振動や騒音の原因となる場合がある。
このようなクラッキング性が高い鋼が、特開2004−277817号公報(特許文献1)、特開2011−195862号公報(特許文献2)、国際公開第2009/107282号(特許文献3)、特開2006−336071号公報(特許文献4)、及び、特開2016−27204号公報(特許文献5)に提案されている。
特許文献1に開示されている高強度非調質鋼は、重量%でC:0.2〜0.6%、Si:0.1〜2%、Mn:0.1〜1.5%、S:0.03〜0.2%、P:0.02〜0.15%、Cu:0.03〜1%、Ni:0.03〜1%、Cr:0.05〜1%、V:0.02〜0.4%、Ti:0.01〜0.8%、s−Al:0.005〜0.045%、N:0.008〜0.035%、残部が不可避的不純物及びFeから成る組成であり、フェライトパーライト組織を有する。鋼中のTiN介在物の最大直径は5μm以上且つその量は数密度で5個/mm以上である。この非調質鋼は、高強度で被削性も良く、また破断分離性能にも優れていて、なお且つ破面に良好な凹凸を形成することができる、と特許文献1には記載されている。
特許文献2に開示されている熱間鍛造用非調質鋼は、質量%でC:0.35〜0.55%、Si:0.15〜0.40%、Mn:0.50〜1.00%、P:0.100%以下、S:0.040〜0.100%、Cr:1.00%以下、V:0.20〜0.50%、Ca:0.0005〜0.0100%、N:0.0150%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる。鋼の化学組成は、2Mn+5Mo+Cr≦3.1を満たし、C+Si/5+Mn/10+10P+5V≧1.8を満たし、Ceq=C+Si/7+Mn/5+Cr/9+Vが0.90〜1.10を満たす。鋼の硬さはHV330以上であり、降伏比は0.73以上である。鋼の組織は、ベイナイトが10%以下のフェライト・パーライト組織である。この熱間鍛造用非調質鋼は、高強度を確保しつつ、優れた被削性と破断分離性を確保できる熱間鍛造非調質鋼部品を提供することができる、と特許文献2には記載されている。
特許文献3に開示されている熱間鍛造用非調質鋼は、質量%で、C:0.35%超〜0.60%、Si:0.50〜2.50%、Mn:0.20〜2.00%、P:0.010〜0.150%、S:0.040〜0.150%、V:0.10〜0.50%、Zr:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%、N:0.0020〜0.0200%を含有し、Al:0.010%未満に制限し、残部が実質的にFe及び不可避的不純物よりなる。この熱間鍛造用非調質鋼は、破断分離性及び被削性に優れる、と特許文献3には記載されている。
特許文献4に開示されているコンロッド用鋼は、質量%で、C:0.1〜0.5%、Si:0.1〜2%、Mn:0.5〜2%、P:0.15%以下(0%を含まない)、S:0.06〜0.2%、N:0.02%以下(0%を含まない)、Ca:0.0001〜0.005%、及び、Al:0.001〜0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼である。このコンロッド用鋼は、鋼中に存在する酸化物系介在物の組成を所定の範囲内に制御しているため、破断分割性を高めることができる、と特許文献4には記載されている。
特許文献5に開示されている時効硬化型ベイナイト非調質鋼は、質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.10〜3.00%、P:0.001〜0.150%、S:0.001〜0.200%、Cu:0.001〜2.00%、Ni:0.40%以下、Cr:0.10〜3.00%、を含有し、さらにMo:0.02〜2.00%、V:0.02〜2.00%、Ti:0.001〜0.250%、Nb:0.01〜0.10%、のいずれか1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ所定の化学成分の含有質量%が、3×[C]+10×[Mn]+2×[Cu]+2×[Ni]+12×[Cr]+9×[Mo]+2×[V]≧20、32×[C]+3×[Si]+3×[Mn]+2×[Ni]+3×[Cr]+11×[Mo]+32×[V]+65×[Ti]+36×[Nb]≧24、321×[C]−31×[Mo]+213×[V]+545×[Ti]+280×[Nb]≧100、321×[C]−31×[Mo]+213×[V]+545×[Ti]+280×[Nb]≧100を満たす。この時効硬化型ベイナイト非調質鋼は、破断分離加工により製造される部品であっても、破断分離加工時の塑性変形を良好に抑制することができる、と特許文献5には記載されている。
特開2004−277817号公報 特開2011−195862号公報 国際公開2009/107282号 特開2006−336071号公報 特開2016−27204号公報
上述のとおり、熱間鍛造品のクラッキング性を高めるためには、熱間鍛造品の靭性は低い方が好ましい。そのため、従来、熱間鍛造品のミクロ組織は、フェライト及びパーライトを主体とすることを前提としていた。しかしながら、近年、さらに高い疲労強度を得ることを目的に、熱間鍛造品のミクロ組織をベイナイト主体とした、熱間鍛造用棒鋼が求められている。
一方、ベイナイトは靭性が高い。したがって、熱間鍛造品のミクロ組織をベイナイト主体とした場合、クラッキング後の破断面に延性破面が生じやすい。その結果、熱間鍛造後の鋼のクラッキング性が低下してしまう。したがって、熱間鍛造用棒鋼には、熱間鍛造後の鋼のミクロ組織がベイナイト主体であっても、高いクラッキング性が求められる。
特許文献1、3、及び、4では、熱間鍛造品のミクロ組織が主としてフェライト及びパーライトからなることを前提としている。そのため、熱間鍛造品のミクロ組織をベイナイト主体とした場合、破断面に延性破面が生じ、大端部の内径が変形してクラッキング性が低下する場合があり得る。
特許文献2では、熱間鍛造品中でのベイナイトの生成をある程度許容する。しかしながら、ミクロ組織中に占めるベイナイトの面積率が増加した場合、破断面に延性破面が生じ、クラッキング性が低下する場合があり得る。
特許文献5では、ベイナイト主体の組織でもシャルピー衝撃値(2mmU)を30J/cm以下に設定することができる、と記載されている。しかしながら、延性破壊を十分抑制し、クラッキング後のコンロッドの変形量を低減するには至っておらず、大端部の内径が変形してクラッキング性が低下する場合があり得る。
本開示の目的は、優れた熱間加工性を有し、熱間鍛造後において高い降伏強度、高い疲労強度、及び、優れた被削性を有し、熱間鍛造後のミクロ組織がベイナイト主体であっても、優れたクラッキング性を有する熱間鍛造用棒鋼を提供することである。
本開示による熱間鍛造用棒鋼は、質量%で、C:0.05〜0.40%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.51〜3.50%、P:0.010〜0.100%、S:0.30%以下、Cr:0.05〜2.50%、V:0.10〜0.75%、Ti:0.005%〜0.250%、Al:0.005〜0.060%、N:0.002〜0.020%、Cu:0〜0.60%、Ni:0〜0.60%、Mo:0〜0.70%、Nb:0〜0.100%、Pb:0〜0.30%、Te:0〜0.3000%、Ca:0〜0.0100%、及び、Bi:0〜0.4000%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。本開示による熱間鍛造用棒鋼は、鋼中の20μm以上の円相当径を有するTiNの数密度が0.3〜4.0個/mmである。
0.48≦C+0.11Mn+0.08Cr+0.75V+0.20Mo≦1.50 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本開示による熱間鍛造用棒鋼は、優れた熱間加工性を有し、熱間鍛造後において高い降伏強度、高い疲労強度、及び、優れた被削性を有し、熱間鍛造後のミクロ組織がベイナイト主体であっても、優れたクラッキング性を有する。
図1は、従来のコネクティングロッドの正面図である。 図2Aは、実施例におけるクラッキング性評価試験で用いた試験片の平面図である。 図2Bは、図2Aに示した試験片の断面図である。 図2Cは、図2Aの試験片を破断分離した状態を示す試験片の平面図である。 図2Dは、図2Cの試験片をボルトで締結した状態を示す試験片の平面図である。
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明者らは、熱間鍛造用棒鋼の熱間加工性、及び、熱間鍛造後の熱間鍛造用棒鋼(熱間鍛造品)の降伏強度、疲労強度、被削性、及び、クラッキング性について調査及び検討を行った。その結果、本発明者らは次の知見を得た。
(A)降伏強度及び被削性について
降伏強度と被削性とは、相反する機械特性である。しかしながら、鋼の化学組成を適正に調整できれば、これらの機械特性の両立が可能である。
fn1=C+0.11Mn+0.08Cr+0.75V+0.20Moと定義する。fn1は強度の指標であり、降伏強度と正の相関を示す。質量%で、C:0.05〜0.40%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.51〜3.50%、P:0.010〜0.100%、S:0.30%以下、Cr:0.05〜2.50%、V:0.10〜0.75%、Ti:0.005%〜0.250%、Al:0.005〜0.060%、N:0.002〜0.020%、Cu:0〜0.60%、Ni:0〜0.60%、Mo:0〜0.70%、Nb:0〜0.100%、Pb:0〜0.30%、Te:0〜0.3000%、Ca:0〜0.0100%、及び、Bi:0〜0.4000%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する熱間鍛造用棒鋼において、fn1が0.48未満であれば、鋼の強度が低すぎ、十分な降伏強度が得られない。一方、fn1が1.50よりも高ければ、鋼の強度が高くなりすぎ、鋼の被削性が低下する。上記化学組成を有する熱間鍛造用棒鋼において、fn1が0.48〜1.50であれば、熱間鍛造品は、優れた降伏強度及び被削性を有する。
(B)クラッキング性について
本明細書において、「クラッキング性が高い」とは、熱間鍛造品の破断面に延性破面が生じにくいことを意味する。上述のとおり、熱間鍛造品のクラッキング性を高めるためには、熱間鍛造品の靭性は低いほうが好ましい。ここで、クラッキングコンロッドに用いられる熱間鍛造品は、通常、JIS Z 2242(2005)に規定されるシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーE(2mmV)が20J/cm未満程度である。また、ASTM E399−06に規定される破壊靭性値Kが40MPa√m未満程度である。
このようなクラッキング性が高い熱間鍛造品を得るために、本発明者らは、ベイナイト主体のミクロ組織を有する熱間鍛造品のクラッキング性の向上について、さらに調査及び検討を行った。その結果、本発明者らは、鋼中における粗大なTiNの数密度を適切な範囲内とすることにより、ベイナイト主体のミクロ組織を有する熱間鍛造品であっても、優れたクラッキング性が得られることを見出した。
具体的には、連続鋳造による溶鋼の凝固過程において、TiはTi窒化物(TiN)、Ti硫化物及びTi炭硫化物を形成する。このうち、TiNは熱間鍛造前の加熱工程においても固溶せずに残存する。したがって、このようなTiNは、熱間鍛造品内にも残存する。残存したTiNは熱間鍛造品のクラッキング時において、複数箇所で破壊の起点となる。つまり、クラッキング時に、TiNと母相(マトリクス)との界面で鋭い初期亀裂が発生する。鋭い初期亀裂の先端は塑性拘束が強い状態となる。そのため、脆性破壊が生じやすくなる。初期亀裂から脆性的に進展した亀裂が、隣り合う他のTiNから生じた亀裂と結合することにより、脆性破面が得られる。したがって、靭性の高いベイナイトが主体のミクロ組織を有する鋼材であっても、適切なサイズ及び個数のTiNを活用し、脆性的な亀裂進展を生じさせることができれば、破断面が脆性破面となり、延性破面が抑制される。その結果、優れたクラッキング性が得られると考えられる。
そこで、本発明者らは、上記効果を得るために適切なTiNのサイズ及び個数(数密度)についてさらに検討を行った。その結果、次の知見を得た。円相当径で20μm以上のTiN(以下、粗大TiNとも称する)の数密度が0.3個/mm未満であれば、十分なクラッキング性が得られない。一方、粗大TiNの数密度が4.0個/mmを超えれば、優れたクラッキング性は得られるものの、熱間加工性が低下する。したがって、上述の化学組成を有し、式(1)を満たす熱間鍛造用棒鋼において、鋼中の粗大TiNの数密度が0.3〜4.0個/mmであれば、ミクロ組織がベイナイト主体であっても、熱間加工性、及び、熱間鍛造後の降伏強度と、疲労強度と、被削性とを維持しつつ、優れたクラッキング性が得られることを見出した。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態による熱間鍛造用棒鋼は、質量%で、C:0.05〜0.40%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.51〜3.50%、P:0.010〜0.100%、S:0.30%以下、Cr:0.05〜2.50%、V:0.10〜0.75%、Ti:0.005%〜0.250%、Al:0.005〜0.060%、N:0.002〜0.020%、Cu:0〜0.60%、Ni:0〜0.60%、Mo:0〜0.70%、Nb:0〜0.100%、Pb:0〜0.30%、Te:0〜0.3000%、Ca:0〜0.0100%、及び、Bi:0〜0.4000%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。鋼中の20μm以上の円相当径を有するTiNの数密度は0.3〜4.0個/mmである。
0.48≦C+0.11Mn+0.08Cr+0.75V+0.20Mo≦1.50 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記熱間鍛造用棒鋼の化学組成は、Cu:0.01〜0.60%、Ni:0.01〜0.60%、Mo:0.01〜0.70%、及び、Nb:0.005〜0.100%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
上記熱間鍛造用棒鋼の化学組成は、Pb:0.01〜0.30%、Te:0.0003〜0.3000%、Ca:0.0003〜0.0100%、及び、Bi:0.0003〜0.4000%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
以下、本実施形態による熱間鍛造用棒鋼について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[化学組成]
本実施形態による熱間鍛造用棒鋼の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.05〜0.40%
炭素(C)は、鋼の降伏強度及び疲労強度を高める。C含有量が低すぎれば、この効果は得られない。一方、C含有量が高すぎれば、被削性が低下する。したがって、C含有量は0.05〜0.40%である。C含有量の好ましい下限は0.10%であり、より好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.21%である。C含有量の好ましい上限は0.39%であり、より好ましくは0.38%であり、さらに好ましくは0.37%である。
Si:0.05〜0.50%
シリコン(Si)は、鋼に固溶して鋼の疲労強度を高める。Si含有量が低すぎれば、この効果は得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、上記効果は飽和する。Si含有量が高すぎればさらに、鋼の熱間加工性が低下し、棒鋼の製造コストも高くなる。したがって、Si含有量は0.05〜0.50%である。Si含有量の好ましい下限は0.06%であり、より好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.08%である。Si含有量の好ましい上限は0.49%であり、より好ましくは0.48%であり、さらに好ましくは0.47%である。
Mn:1.51〜3.50%
マンガン(Mn)は鋼を脱酸する。Mnはさらに、鋼の降伏強度及び疲労強度を高める。Mn含有量が低すぎれば、これらの効果は得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Mn含有量は1.51〜3.50%である。Mn含有量の好ましい下限は1.52%であり、より好ましくは1.53%であり、さらに好ましくは1.55%である。Mn含有量の好ましい上限は3.49%であり、より好ましくは3.48%であり、さらに好ましくは3.45%である。
P:0.010〜0.100%
リン(P)は、粒界に偏析して鋼を脆化する。そのため、破断分割後のクラッキングコンロッドの破面は脆性的になる。その結果、破断分割後のクラッキングコンロッドの大端内径変形量が小さくなる。すなわち、熱間鍛造後の鋼のクラッキング性が高まる。P含有量が低すぎれば、この効果は得られない。一方、P含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、P含有量は0.010〜0.100%である。P含有量の好ましい下限は0.011%であり、より好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.020%である。P含有量の好ましい上限は0.090%であり、より好ましくは0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
S:0.30%以下
硫黄(S)は、不純物である。すなわち、S含有量は0%超である。Sは鋼の熱間加工性を低下させる。したがって、S含有量は0.30%以下である。S含有量の好ましい上限は、0.20%であり、より好ましくは0.15%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、Sを過剰に低減すれば、精錬コストが過剰に高くなる。したがって、工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは、0.0005%である。
Cr:0.05〜2.50%
クロム(Cr)は鋼の降伏強度及び疲労強度を高める。Cr含有量が低すぎれば、この効果は得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、鋼が硬くなりすぎ、鋼の被削性が低下する。Cr含有量が高すぎればさらに、製造コストが高くなる。したがって、Cr含有量は0.05〜2.50%である。Cr含有量の好ましい下限は0.10%であり、より好ましくは0.12%であり、さらに好ましくは0.15%である。Cr含有量の好ましい上限は2.00%であり、より好ましくは1.80%であり、さらに好ましくは1.60%である。
V:0.10〜0.75%
バナジウム(V)は、熱間鍛造後の冷却過程でフェライト中に炭化物として析出し、熱間鍛造後の鋼の降伏強度及び疲労強度を高める。V含有量が低すぎれば、この効果は得られない。一方、V含有量が高すぎれば、鋼の製造コストが極めて高くなる。V含有量が高すぎればさらに、被削性が低下する。したがって、V含有量は0.10〜0.75%である。V含有量の好ましい下限は0.11%であり、より好ましくは0.12%であり、さらに好ましくは0.15%である。V含有量の好ましい上限は0.70%であり、より好ましくは0.68%であり、さらに好ましくは0.66%である。
Ti:0.005%〜0.250%
チタン(Ti)は、連続鋳造の凝固過程でTiNを形成し、熱間鍛造後の鋼のクラッキング性を高める。より具体的には、連続鋳造による溶鋼の凝固過程において、TiはTiN、Ti硫化物及びTi炭硫化物を生成する。このとき生成したTiNは、その後の熱間鍛造前の加熱工程においても固溶しにくく、後述のサイズ及び数密度を満たすことにより、クラッキング性を高める。
Tiはさらに、熱間鍛造後の冷却及び加熱過程でVと共に炭化物として析出し、鋼の疲労強度を高める。より具体的には、熱間鍛造前に熱間鍛造用棒鋼を加熱したとき、鋼中のTi硫化物及びTi炭硫化物中のTiの一部が固溶する。熱間鍛造後、常温まで放冷し、再加熱すると、固溶TiはVと共に炭化物として析出し、鋼の疲労強度を高める。
Ti含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、粗大なTiNが過剰に生成して、熱間加工性が低下する。したがって、Ti含有量は0.005%〜0.250%である。Ti含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましくは0.011%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Ti含有量の好ましい上限は0.240%であり、より好ましくは0.220%である。
Al:0.005〜0.060%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。そのため、AlはTi酸化物の晶出を抑制し、TiNを晶出しやすくする。その結果、鋼のクラッキング性が高まる。Al含有量が低すぎれば、この効果は得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、上記効果は飽和する。Al含有量が高すぎればさらに、鋼の熱間加工性が低下し、鋼の製造コストも高くなる。したがって、Al含有量は0.005〜0.060%である。Al含有量の好ましい下限は0.020%である。Al含有量の好ましい上限は0.040%である。本実施形態の熱間鍛造用棒鋼において、Al含有量とは酸可溶Al(いわゆる「sol.Al」)を意味する。
N:0.002〜0.020%
窒素(N)はTiと結合してTiNを形成し、クラッキング性を高める。N含有量が低すぎれば、この効果は得られない。一方、N含有量が高すぎれば、熱間加工性が低下する。したがって、N含有量は0.002〜0.020%である。N含有量の好ましい下限は0.003%であり、より好ましくは0.004%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.0051%である。N含有量の好ましい上限は0.019%であり、より好ましくは0.018%であり、さらに好ましくは0.017%である。
本実施の形態による熱間鍛造用棒鋼の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、熱間鍛造用棒鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の熱間鍛造用棒鋼に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素について]
本実施形態による熱間鍛造用棒鋼はさらに、Feの一部に代えて、Cu、Ni、Mo、及び、Nbからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも、鋼の強度を高める。
Cu:0〜0.60%
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Cu含有量は0%であってもよい。Cuが含有される場合、Cuは鋼に固溶して鋼の疲労強度を高める。Cuが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、鋼の製造コストが高くなるだけでなく、被削性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜0.60%である。Cu含有量の好ましい下限は0.01%であり、より好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Cu含有量の好ましい上限は0.59%であり、より好ましくは0.55%であり、さらに好ましくは0.50%である。
Ni:0〜0.60%
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ni含有量は0%であってもよい。Niが含有される場合、Niは鋼に固溶して鋼の疲労強度を高める。Niが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、製造コストが高くなる。Ni含有量が高すぎればさらに、鋼の靭性が高くなりすぎる。その結果、破断分離後の破面に延性破面が生成し、クラッキング性が低下する。したがって、Ni含有量は0〜0.60%である。Ni含有量の好ましい下限は0.01%であり、より好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.05%である。Ni含有量の好ましい上限は0.59%であり、より好ましくは0.58%であり、さらに好ましくは0.55%である。
Mo:0〜0.70%
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Mo含有量は0%であってもよい。Moが含有される場合、Moは鋼中で炭化物を形成して鋼の降伏強度及び疲労強度を高める。Moが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Mo含有量が高すぎれば、鋼の硬さが高くなりすぎ、被削性が低下する。Mo含有量が高すぎればさらに、製造コストが高くなる。したがって、Mo含有量は0〜0.70%である。Mo含有量の好ましい下限は0.01%であり、より好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.05%である。Mo含有量の好ましい上限は0.69%であり、より好ましくは0.68%であり、さらに好ましくは0.65%である。
Nb:0〜0.100%
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Nb含有量は0%であってもよい。Nbが含有される場合、Nbは鋼中で炭化物を形成して鋼の疲労強度を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、鋼の硬さが高くなりすぎ、被削性が低下する。Nb含有量が高すぎればさらに、結晶粒が微細化し、鋼の靭性が高くなりすぎる。その結果、破断分離後の破面に延性破面が生成し、クラッキング性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.100%である。Nb含有量の好ましい下限は0.005%であり、より好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.015%である。Nb含有量の好ましい上限は0.095%であり、より好ましくは0.090%であり、さらに好ましくは0.085%である。
本実施形態による熱間鍛造用棒鋼はさらに、Feの一部に代えて、Pb、Te、Ca、及び、Biからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも、鋼の被削性を高める。
Pb:0〜0.30%
鉛(Pb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Pb含有量は0%であってもよい。Pbが含有される場合、Pbは鋼の被削性を高める。Pbが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Pb含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Pb含有量は0〜0.30%である。Pb含有量の好ましい下限は0.01%であり、より好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Pb含有量の好ましい上限は0.29%であり、より好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.20%である。
Te:0〜0.3000%
テルル(Te)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Te含有量は0%であってもよい。Teが含有される場合、Teは鋼の被削性を高める。Teが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Te含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Te含有量は0〜0.3000%である。Te含有量の好ましい下限は0.0003%であり、より好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Te含有量の好ましい上限は0.2900%であり、より好ましくは0.2500%であり、さらに好ましくは0.2000%である。
Ca:0〜0.0100%
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ca含有量は0%であってもよい。Caが含有される場合、Caは鋼の被削性を高める。Caが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.0100%である。Ca含有量の好ましい下限は0.0003%であり、より好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0090%であり、より好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
Bi:0〜0.4000%
ビスマス(Bi)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Bi含有量は0%であってもよい。Biが含有される場合、Biは鋼の被削性を高める。Biが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Bi含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Bi含有量は0〜0.4000%である。Bi含有量の好ましい下限は0.0003%であり、より好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Bi含有量の好ましい上限は0.3900%であり、より好ましくは0.3000%であり、さらに好ましくは0.2000%である。
[式(1)について]
本実施形態による熱間鍛造用棒鋼の化学組成はさらに、式(1)を満たす。
0.48≦C+0.11Mn+0.08Cr+0.75V+0.20Mo≦1.50 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
fn1(=C+0.11Mn+0.08Cr+0.75V+0.20Mo)は、強度の指標であり、降伏強度と正の相関を示す。fn1が0.48未満であれば、熱間鍛造後の鋼(熱間鍛造品)の強度が低すぎ、十分な降伏強度が得られない。一方、fn1が1.50よりも高ければ、熱間鍛造後の鋼(熱間鍛造品)の強度が高くなりすぎ、熱間鍛造後の鋼の被削性が低下する。したがって、fn1は0.48〜1.50である。fn1の好ましい下限は0.49であり、より好ましくは0.50であり、さらに好ましくは0.51である。fn1の好ましい上限は1.49であり、より好ましくは1.48であり、さらに好ましくは1.47である。
[粗大TiNの数密度]
本実施形態による熱間鍛造用棒鋼において、20μm以上の円相当径を有するTiN(粗大TiN)の数密度は0.3〜4.0個/mmである。なお、本明細書において、TiNとは、介在物中のTi及びNの総含有量が質量%で80%以上の介在物を意味する。
本実施形態による熱間鍛造用棒鋼は、熱間鍛造により、熱間鍛造品に製造される。熱間鍛造品はたとえば、クラッキングコンロッドである。本実施形態による熱間鍛造品(クラッキングコンロッド)のミクロ組織は、主としてベイナイトからなる。より具体的には、ミクロ組織は体積率で80%以上がベイナイトからなる。ベイナイトは、フェライト及びパーライトと比較して靭性が高い。そのため、クラッキングコンロッドの大端部を破断して2つの部品(キャップ及びロッド)を製造する場合、破断部分が塑性変形し、破断面に延性破面が発生する。つまり、クラッキング性が低下する。
本実施形態による熱間鍛造用棒鋼は、熱間鍛造後のミクロ組織が主としてベイナイトからなる場合であっても、上記粗大TiNの数密度を適切な範囲内とすることにより、優れたクラッキング性を維持する。粗大TiNの数密度が0.3個/mm未満であれば、上述の化学組成を有し、式(1)を満たす化学組成の熱間鍛造品において、十分なクラッキング性が得られない。一方、粗大TiNの数密度が4.0個/mmを超えれば、上述の化学組成を有し、式(1)を満たす化学組成の熱間鍛造品において、優れたクラッキング性は得られるものの、上記熱間鍛造品の素材となる熱間鍛造用棒鋼の熱間加工性が低下する。したがって、粗大TiNの数密度は0.3〜4.0個/mmである。
クラッキング性をさらに高めるための粗大TiNの数密度の好ましい下限は0.4個/mmであり、より好ましくは0.5個/mmである。熱間加工性をさらに高めるための粗大TiNの数密度の好ましい上限は3.9個/mmであり、より好ましくは3.8個/mmである。
粗大TiNの数密度は次の方法で測定できる。棒鋼のうち、R/2部からサンプルを採取する。サンプルの表面のうち、棒鋼の軸方向を含む断面(縦断面)に相当する表面を観察面とする。観察面を腐食させず、そのまま200倍の光学顕微鏡で観察し、任意の100視野で写真画像を生成する。100視野の総面積は11.9mmである。各視野の介在物及び析出物の各々のTi及びNの総含有量を、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて分析し、各視野中のTiNを特定する。各視野の写真画像を用いて、特定された各TiNの面積を求め、得られた面積から円相当径を算定する。円相当径が20μm以上のTiNを粗大TiNと特定し、粗大TiNの総個数を求める。得られた粗大TiNの総個数を100視野の総面積で除した値を、粗大TiNの数密度(個/mm)と定義する。
[製造方法]
上述の熱間鍛造用棒鋼の製造方法の一例を説明する。本実施形態による製造方法は、鋳造工程と、熱間加工工程とを含む。
[鋳造工程]
上述の化学組成及び式(1)を満たす溶鋼を周知の方法で製造する。たとえば、溶鋼を用いて、連続鋳造法により鋳片(スラブ又はブルーム)を製造する。
粗大TiNの数密度を上記範囲にするには、たとえば、鋳造工程では、次の条件を満たすように、連続鋳造を実施すればよい。
過熱度ΔT:30〜50℃
連続鋳造機上に配置されたタンディッシュ中での溶鋼温度とTLL(液相線温度)との差を過熱度ΔT(℃)と定義する。ΔTが低すぎれば、TiNの晶出量が不十分となる場合がある。一方、ΔTが高すぎれば、粗大なTiNが過剰に析出する場合がある。したがって、本実施形態による過熱度ΔTは30〜50℃である。過熱度ΔTの好ましい下限は31℃である。
鋳片の横断面:一辺長さが300mm以上
鋳込み速度Vc:0.2〜0.8m/分
鋳片の凝固過程での冷却速度が高すぎれば、TiNの晶出及び凝集が不十分となる場合がある。この場合、TiNの円相当径が小さくなる。一方、冷却速度が低すぎれば、TiNが過剰に凝集し、粗大TiNの数密度が高くなりすぎる場合がある。したがって、鋳片の横断面(矩形)の一辺が300mm以上であり、かつ、鋳込み速度Vcが0.2〜0.8m/分であれば、TiNが十分に晶出し、かつ、晶出したTiNが凝集しやすい。その結果、粗大TiNの数密度が0.3個/mm以上となる。鋳込み速度Vcの好ましい上限は0.6m/分である。
なお、比水量は特に限定されず、周知の比水量でよい。好ましくは、比水量は鋳片がバルジングしない程度で低い方が好ましい。好ましい比水量はたとえば5L/kg以下である。以上の鋳造工程によれば、本実施形態による熱間鍛造用棒鋼のうち、上述の化学組成、式(1)、及び、粗大TiNの数密度を満たす鋳片が得られる。
[熱間加工工程]
熱間加工工程では、上記鋳造工程で製造された鋳片に対して、熱間加工を実施して、熱間鍛造用棒鋼を製造する。熱間加工工程はたとえば、粗圧延工程と、仕上げ圧延工程とを含む。
[粗圧延工程]
鋳片又はインゴットを熱間圧延してビレットを製造する。熱間圧延はたとえば、分塊圧延機、及び、連続圧延機を利用して実施される。連続圧延機はたとえば、複数のスタンドが一列に並び、各スタンドが複数のロールを有する。
[仕上げ圧延工程]
ビレットを用いて熱間鍛造用棒鋼を製造する。仕上げ圧延工程でははじめに、ビレットを加熱炉で加熱する(加熱工程)。加熱後、連続圧延機を用いてビレットを熱間圧延(仕上げ圧延)し、熱間鍛造用棒鋼を製造する(熱間圧延工程)。以下、各工程について説明する。
[加熱工程]
加熱工程では、周知の加熱温度でビレット加熱する。好ましくは、1000〜1300℃の加熱温度でビレットを30分以上加熱する。加熱温度が低すぎれば、ビレット中のTiNが凝集しにくい。そのため、ビレットに存在していた微細なTiNが凝集せずに熱間圧延後も引き継がれ、棒鋼中には微細なTi窒化物が多く存在する。この場合、鋼中の粗大TiNが少なくなる。一方、加熱温度が高過ぎれば、加熱中にTi窒化物が過度に凝集する。上述の鋳造条件を満たした場合、仕上げ圧延時の加熱温度が1000〜1300℃であれば、粗大TiNの数密度が安定して適切な範囲(0.3〜4.0個/mm)となる。
[熱間圧延工程]
仕上げ圧延機を用いて、加熱後のビレットを周知の方法で仕上げ圧延(熱間圧延)し、熱間鍛造用棒鋼を製造する。仕上げ圧延機は、一列に並んだ複数のスタンドを有し、各スタンドはパスライン周りに配置された複数のロール(ロール群)を有する。各スタンドのロール群が孔型を形成し、ビレットが孔型を通過するときに圧下され、棒鋼が製造される。
連続圧延機での減面率は70%以上であるのが好ましい。ここで、減面率は次の式で定義される。
減面率=(仕上げ圧延前のビレットの横断面積−仕上げ圧延後の熱間鍛造用棒鋼の横断面積)/仕上げ圧延前のビレットの横断面積
以上の製造工程により、上述の熱間鍛造用棒鋼が製造される。
[熱間鍛造品の製造方法]
上述の熱間鍛造用棒鋼を用いた熱間鍛造品の製造方法の一例として、クラッキングコンロッドの製造方法を説明する。
初めに、熱間鍛造用棒鋼を高周波誘導加熱炉で加熱する。この場合、好ましい加熱温度は1000〜1300℃であり、好ましい加熱時間は10〜15分である。加熱時間が短いため、棒鋼中のTi窒化物の形態は特に変化しない。加熱された棒鋼に対して、熱間鍛造を実施してクラッキングコンロッドを製造する。好ましくは、熱間鍛造時の加工度は0.22以上である。ここで、加工度は、鍛造工程において、バリを除く部分に生じる対数ひずみの最大値とする。
熱間鍛造後のクラッキングコンロッドを、常温になるまで冷却する。具体的に、熱間鍛造後のクラッキングコンロッドを、常温になるまで放冷する。クラッキングコンロッドの大端部は断面積が小さい。そのため、クラッキングコンロッドを常温になるまで放冷すれば、放冷後のクラッキングコンロッドのミクロ組織を、ベイナイト主体とすることができる。
熱間鍛造品の疲労強度をさらに高めるため、クラッキングコンロッドのミクロ組織における、ベイナイトの面積率をさらに高めることもできる。一例として、熱間鍛造後のクラッキングコンロッドを、常温になるまで1〜5℃/秒として冷却すれば、クラッキングコンロッドのミクロ組織におけるベイナイトの面積率がさらに高まる。その結果、熱間鍛造品の疲労強度がさらに高まる。
なお、熱間鍛造後に常温になるまで冷却する場合、冷却時においてTiNの形態は特に変化しない。したがって、熱間鍛造用棒鋼中に粗大TiNが0.3〜4.0個/mm含まれていれば、熱間鍛造品にも粗大TiNが含まれる。そのため、熱間鍛造品のクラッキング性を高めることができる。
冷却後のクラッキングコンロッドに対して、必要に応じて機械加工を実施した後、再加熱する。この場合、好ましい加熱温度は550〜650℃であり、好ましい加熱時間は5〜60分である。加熱温度が低いため、棒鋼中のTi窒化物の形態は特に変化しない。以上の工程により、クラッキングコンロッドが製造される。
[熱間鍛造品のミクロ組織]
製造された熱間鍛造品(クラッキングコンロッド)は、ベイナイトを主体とするミクロ組織を有する。具体的には、クラッキングコンロッドのミクロ組織において、ベイナイトの面積率は80%以上である。ベイナイトの面積率が100%でない場合、マトリクス組織の残部はフェライト、又は、フェライト及びパーライトである。ベイナイトの面積率の好ましい下限は85%であり、より好ましくは90%であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは100%である。ベイナイト面積率の一例は95〜100%である。
ベイナイト主体の熱間鍛造品、特にベイナイトが80%以上含まれる熱間鍛造品は、大端部を破断して2つの部品(キャップ及びロッド)に分割するとき、破断部が塑性変形して破断面が延性破面となりやすく、クラッキング性が低下しやすい。しかしながら、本実施形態による熱間鍛造用棒鋼では、上述の化学組成を有し、式(1)を満たし、さらに、鋼中の粗大TiNの数密度が0.3〜4.0個/mmである。そのため、熱間鍛造品の破断面が脆性破面となりやすく、優れたクラッキング性を維持できる。TiNのサイズは大きい方が好ましく、具体的には、円相当径で20μm以上である。
なお、ミクロ組織中のベイナイトの面積率は、次の方法で測定できる。熱間鍛造品の任意のR/2部(棒鋼の中心軸と外周面とを結ぶ線分(半径)の中心部)からサンプルを10個採取する。採取された各サンプルのうち、熱間鍛造品の中心軸と垂直な表面を観察面とする。観察面を研磨した後、3%硝酸アルコール(ナイタル腐食液)にてエッチングする。エッチングされた観察面を200倍の光学顕微鏡にて観察して、任意の5視野の写真画像を生成する。
各視野において、フェライト、パーライト、ベイナイト等の各相は、相ごとにコントラストが異なる。したがって、コントラストに基づいて、各相を特定する。特定された相のうち、各視野でのベイナイトの面積(μm)を求める。全ての視野でのベイナイトの面積の、全ての視野(5視野×10個)の総面積に対する比を、ベイナイト面積率(%)と定義する。
上述の説明では、熱間鍛造品の製造方法としてクラッキングコンロッドを例に説明した。しかしながら、本実施形態による熱間鍛造用棒鋼はクラッキングコンロッド用途に限定されない。本実施形態による熱間鍛造用棒鋼は鍛造品用途に広く適用できる。
また、本実施形態による熱間鍛造用棒鋼の製造方法は、粗大TiNの数密度を上記範囲内とすることができれば、上記製造方法に限定されない。すなわち、他の製造方法によって本実施形態の構成を有する熱間鍛造用棒鋼が製造されてもよい。
表1及び表2に示す化学組成を有する溶鋼を製造した。
Figure 0006617852
Figure 0006617852
表1及び表2を参照して、試験番号1〜48の化学組成は適切であり、式(1)を満たした。一方、試験番号49〜57は化学組成が不適切であるか、又は、式(1)を満たさなかった。
各試験番号の溶鋼を70ton転炉で製造した。連続鋳造機を用いて、連続鋳造法により溶鋼から鋳片(ブルーム)を製造した。ブルームの横断面は300mm×400mmであった。各試験番号において、タンディッシュ中の溶鋼温度(℃)を測定し、溶鋼温度とTLL(液相線温度)との差である過熱度ΔT(℃)を求めた。さらに、各試験番号において、表3及び表4に示す鋳込み速度Vc(m/min)で鋳造した。なお、いずれの試験番号においても、比水量は5L/kg以下であった。
Figure 0006617852
Figure 0006617852
製造された鋳片を熱間圧延してビレットを製造した。ビレットを1150℃で35分加熱し、その後、仕上げ圧延機を用いて仕上げ圧延を実施して直径40mmの棒鋼(熱間鍛造用棒鋼)を製造した。
[熱鍛模擬品の製造]
棒鋼を長手方向と垂直な方向に切断し、直径40mm、長さ100mmの供試材を採取した。供試材を加熱して、1250℃で5分間保持した。加熱後速やかに、軸方向に90%の熱間圧縮を実施して、円盤形状に成形し熱間鍛造模擬品(熱鍛模擬品という)を製造した。成形後の熱鍛模擬品を大気中で放冷した。放冷後、試験片を再加熱して、600℃に30分保持した。なお、上述の方法で製造した各試験番号の熱鍛模擬品はいずれも、JIS Z 2242(2005)に規定されるシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーE(2mmV)が20J/cm未満であり、ASTM E399−06に規定される破壊靭性値Kが40MPa√m未満であった。
[評価試験]
供試材及び熱鍛模擬品を用いて、次の評価試験を実施した。
[粗大TiNの数密度測定]
各試験番号の供試材のR/2部からサンプルを採取した。サンプルの表面のうち、各試験番号の供試材の軸方向を含む断面(縦断面)に相当する表面を観察面とした。観察面を腐食させず、そのまま200倍の光学顕微鏡で観察し、任意の100視野で写真画像を生成した。100視野の総面積は11.9mmであった。上述の方法によりTiNを特定し、粗大TiNの数密度(個/mm)を求めた。求めた粗大TiNの数密度(個/mm)を表3及び表4に示す。
[熱間加工性評価]
各試験番号において、熱鍛模擬品を試験番号ごとに50個製造した。製造後の各試験番号の熱鍛模擬品の表面の割れの有無を目視で確認した。割れの発生が50個中0個であった場合を評価「A」とし、1個であった場合を評価「B」、2〜3個であった場合を評価「C」とし、4個以上であった場合を評価「NA」とした。評価「A」〜「C」の場合、優れた熱間加工性が得られたと判断し、評価「NA」の場合、優れた熱間加工性が得られなかったと判断した。評価結果を表3及び表4に示す。
[ミクロ組織観察]
各試験番号の熱鍛模擬品を用いて、ミクロ組織観察試験を実施した。具体的には、各試験番号の熱鍛模擬品の縦断面のうち、R/2部を含むサンプルを採取した。熱間鍛造用棒鋼の中心軸と垂直な表面を観察面とした。観察面を研磨した後、3%硝酸アルコール(ナイタル腐食液)にてエッチングした。エッチングされた観察面を200倍の光学顕微鏡にて観察して、上述の方法により、ベイナイト面積率(%)を求めた。求めたベイナイト面積率(%)を表3及び表4に示す。
[降伏強度評価]
各試験番号の熱鍛模擬品のR/2部から、JIS Z 2241(2011)に規定されるJIS 14A号試験片を2本採取した。採取された試験片を用いて、大気中の室温(25℃)で引張試験を実施して、2本平均の降伏強度(MPa)を求めた。
降伏強度(MPa)が1200〜1001MPaの場合を評価「A」とし、1000〜801MPaの場合を評価「B」とし、800〜601MPaの場合を評価「C」とした。降伏強度が600MPa以下の場合を評価「NA」とした。
評価「A」〜「C」の場合、高い降伏強度が得られたと判断した。評価「NA」の場合、降伏強度が低いと判断した。評価結果を表3及び表4に示す。
[疲労強度評価]
各試験番号の熱鍛模擬品のR/2部から、JIS Z 2241(2011)に規定されるJIS 14A号試験片を採取した。採取された試験片を用いて、大気中の室温(25℃)において、正弦波で位相0(MPa)の両振り疲労試験を実施した。繰り返し数10回で破断しない最大の応力を疲労強度(MPa)とした。周波数は15Hzとした。
疲労強度が600〜551MPaの場合を評価「S」、550〜501MPaの場合を評価「A」、500〜451MPaの場合を評価「B」、450〜401MPaの場合を評価「C」とした。疲労強度が400MPa以下の場合を評価「NA」とした。
評価「S」、「A」〜「C」の場合、高い疲労強度が得られたと判断した。評価「NA」の場合、疲労強度が低いと判断した。評価結果を表3及び表4に示す。
[被削性評価]
試験番号ごとに5つの熱鍛模擬品を準備した。準備した5つの熱鍛模擬品に対して任意の位置にドリル穴あけ加工を行い、計50穴のドリル穴あけ加工した際の工具摩耗量を測定した。ドリル径を10mm、主軸の回転速度を1000回/minとした。
工具摩耗量が0〜20μmの場合を評価「S」、21〜40μmの場合を評価「A」、41〜60μmの場合を評価「B」、61μm〜80μmの場合を評価「C」とした。工具摩耗量が81μm以上の場合を評価「NA」とした。評価「S」、「A」〜「C」の場合、優れた被削性が得られたと判断した。評価「NA」の場合、優れた被削性が得られなかったと判断した。評価結果を表3及び表4に示す。
[クラッキング性評価]
各試験番号の熱鍛模擬品から、図2Aに示すコンロッドの大端部を模擬した試験片10を、機械加工により製造した。試験片10の一辺の長さは80mmであり、厚さは10mmであった。試験片10の中央には孔(貫通孔)11を形成した。孔11の直径は60mmであり、その中心は、試験片10の中心と同軸であった。図2Aに示すとおり、孔11の周縁のうち、直径の各端点に相当する2箇所に、V字形状の切欠きMを加工した。切欠きMの深さは1mm、先端Rは0.1mm、開き角は60°であった。
治具12を孔11に嵌め込んだ。治具12は半円板状の一対の部材からなり、2つ合わせると、直径が孔11の内径に相当する円板となった。治具12の中心には、くさび13を打ち込むための孔14が形成された(図2B参照)。
治具12を孔11に嵌め込んだ後、くさび13を打ち込んで、試験片10を室温(25℃)で2つの部材10A、10Bに破断分離した(図2C参照)。
部材10A及び10Bの両側面近傍にボルト穴加工を施し、図2Dに示すボルトで部材10A及び10Bを締結した。破断分離前の試験片10の孔11の直径D0(図2A参照)と、破断分離後であってボルトを締結した後の試験片10の孔11の直径D1(図2D参照)とを測定し、その差を内径変形量ΔD(=D1−D0、単位はμm)と定義した。
内径変形量ΔDが0〜30μmの場合を評価「A」とし、31〜50μmを評価「B」とし、51〜80を評価「C」とした。そして、内径変形量ΔDが81μm以上の場合、評価「NA」とした。評価「A」〜「C」の場合、優れたクラッキング性が得られたと判断した。評価「NA」の場合、優れたクラッキング性が得られなかったと判断した。評価結果を表3及び表4に示す。
[評価結果]
表3及び表4を参照して、試験番号1〜44の化学組成は適切であり、fn1も式(1)を満たした。さらに、過熱度ΔT及び鋳込み速度Vcも適切であった。そのため、粗大TiNの数密度は0.3〜4.0個/mmの範囲内であった。さらに、熱間鍛造品は、ミクロ組織中のベイナイトの面積率が80〜100%であった。その結果、供試材は優れた熱間加工性を示した。さらに、熱間鍛造品は高い降伏強度、高い疲労強度、優れた被削性、及び、優れたクラッキング性を示した。
一方、試験番号45は過熱度ΔTが高すぎた。そのため、粗大TiNの数密度が高すぎた。その結果、供試材は優れた熱間加工性を示さなかった。
試験番号46は過熱度ΔTが低すぎた。そのため、粗大TiNの数密度が低すぎた。その結果、熱間鍛造品は優れたクラッキング性を示さなかった。
試験番号47は鋳込み速度Vcが遅すぎた。そのため、粗大TiNの数密度が高すぎた。その結果、供試材は優れた熱間加工性を示さなかった。
試験番号48は鋳込み速度Vcが高すぎた。そのため、粗大TiNの数密度が低すぎた。その結果、熱間鍛造品は優れたクラッキング性を示さなかった。
試験番号49はV含有量が高すぎた。その結果、熱間鍛造品は優れた被削性を示さなかった。
試験番号50はV含有量が低すぎた。その結果、熱間鍛造品は高い疲労強度を示さなかった。
試験番号51はTi含有量が高すぎた。その結果、供試材は優れた熱間加工性を示さなかった。
試験番号52はTi含有量が低すぎた。そのため、粗大TiNの数密度が低すぎた。その結果、熱間鍛造品は高い疲労強度を示さなかった。さらに、熱間鍛造品は優れたクラッキング性を示さなかった。
試験番号53はN含有量が高すぎた。その結果、供試材は優れた熱間加工性を示さなかった。
試験番号54はN含有量が低すぎた。そのため、粗大TiNの数密度が低すぎた。その結果、熱間鍛造品は優れたクラッキング性を示さなかった。
試験番号55はfn1が高すぎた。その結果、熱間鍛造品は優れた被削性を示さなかった。
試験番号56はfn1が低すぎた。その結果、熱間鍛造品は高い降伏強度を示さなかった。
試験番号57はMn含有量及びN含有量が低すぎた。試験番号57はさらに、過熱度ΔTも低すぎた。そのため、粗大TiNの数密度が低すぎた。その結果、熱間鍛造品は高い疲労強度を示さなかった。さらに、熱間鍛造品は優れたクラッキング性を示さなかった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.05〜0.40%、
    Si:0.05〜0.50%、
    Mn:1.51〜3.50%、
    P:0.010〜0.100%、
    S:0.30%以下、
    Cr:0.05〜2.50%、
    V:0.10〜0.75%、
    Ti:0.005%〜0.250%、
    Al:0.005〜0.060%、
    N:0.002〜0.020%、
    Cu:0〜0.60%、
    Ni:0〜0.60%、
    Mo:0〜0.70%、
    Nb:0〜0.100%、
    Pb:0〜0.30%、
    Te:0〜0.3000%、
    Ca:0〜0.0100%、及び、
    Bi:0〜0.4000%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有し、
    鋼中の20μm以上の円相当径を有するTiNの数密度は0.3〜4.0個/mmである、熱間鍛造用棒鋼。
    0.48≦C+0.11Mn+0.08Cr+0.75V+0.20Mo≦1.50 (1)
    ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載の熱間鍛造用棒鋼であって、
    前記化学組成は、
    Cu:0.01〜0.60%、
    Ni:0.01〜0.60%、
    Mo:0.01〜0.70%、及び、
    Nb:0.005〜0.100%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、熱間鍛造用棒鋼。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の熱間鍛造用棒鋼であって、
    前記化学組成は、
    Pb:0.01〜0.30%、
    Te:0.0003〜0.3000%、
    Ca:0.0003〜0.0100%、及び、
    Bi:0.0003〜0.4000%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、熱間鍛造用棒鋼。
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