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JP6591817B2 - 電界紡糸装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電界紡糸装置に関する。
電界紡糸法(エレクトロスピニング法)は、機械力や熱力を使わずにナノサイズの直径のファイバ(以下、ナノファイバという)を比較的簡単に製造できる技術として注目を浴びている。これまで行われてきた電界紡糸法では、ナノファイバの原料となる物質の溶液をシリンジに充填しておき、該シリンジに取り付けられている針状のノズルと、これに対向する捕集用電極との間に直流高電圧を印加した状態下に、該ノズルの先端から溶液を吐出する操作を行う。吐出された溶液はクーロン力で延伸されるとともに溶媒が瞬時に蒸発し、原料は凝固しながらナノファイバが形成される。そしてナノファイバは捕集用電極の表面に堆積する。
このナノファイバ製造の生産性を高めることを目的として、特許文献1においては、金属球と紡出ノズルの開口との間に高電圧を印加し、金属球と紡出ノズルの開口との経路に直交するように高速気流を噴出する高速気流噴射ノズルを設け、高速気流噴射ノズルにより、紡出ノズルから紡出するナノファイバを高速気流噴射ノズルにより飛散させると共に進路を変更させ、飛散するナノファイバをナノファイバ捕集部で捕集するナノファイバの製造方法が開示されている。
特開2011−127234号公報
ナノファイバの生産性は根本的には、単位時間あたりに1本の原料液噴射ノズルから噴射される原料液の量で決まる。その為、噴射される原料液の帯電量を増加させることが必要である。しかし、電界紡糸の張力を安定的に一定にすることができなければ生産性を向上させることは難しい。電界紡糸の張力を安定的に一定にする為には、紡糸電圧を調整することが重要な一要因であり、紡糸電圧を上げた際にも電界紡糸の張力のバランスが崩れることなく、電界紡糸の張力を安定的に一定にできる電界紡糸装置の開発が望まれていた。
一方、原料液の帯電量の増加という観点及び紡糸電圧の調整という観点において、上述の特許文献1に記載の技術は十分とは言えず、満足すべき生産性でナノファイバを得ることは難しい。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る電界紡糸装置を提供することにある。
本発明は、原料液を噴射する導電性のノズルを備えた原料噴射部と、前記ノズルと電気的に絶縁して配置された凹曲面を有する電極と、前記ノズルと前記電極の間に電圧を発生させる電圧発生部と、前記ノズルと前記電極の間に空気流を噴射する空気流噴射部とを備えた電界紡糸装置であって、前記電極は前記ノズルと対向する面の略全面が、表面に誘電体の露出した被覆体で被覆され、該電極と該被覆体とが接しており、前記電極における前記被覆体と接する面と該被覆体における該電極と接する面とが同一形状であり、前記電極における前記ノズルが延びる方向の開口端部の厚みが、該開口端部に位置する前記被覆体の厚みよりも薄い電界紡糸装置を提供するものである。
本発明によれば、原料液の帯電量を従来よりも増加させることができると共に、電界紡糸の張力のバランスが崩れ難く、電界紡糸の張力を安定的に一定にでき、その結果、ナノファイバの生産性を従来よりも高めることが可能となる。
図1は、本発明の電界紡糸装置の好ましい第1実施形態を示す分解斜視図である。 図2は、図1に示す電界紡糸装置の断面構造を示す模式図である。 図3(a)は、本発明の電界紡糸装置の好ましい第2実施形態の断面を示す側面図であり、図3(b)は、図3(a)における上面図である。 図4は、図3(a)に示す電界紡糸装置の別の実施形態の断面を示す側面図である。 図5は、図1に示す電界紡糸装置及び図3に示す電界紡糸装置におけるノズルの構造の一例を示す断面図である。 図6は、本発明の電界紡糸装置の更に別の実施形態における断面構造を示す模式図である。 図7は、参考例1のナノファイバを製造する電界紡糸装置の断面構造を示す模式図である。 図8は、本発明の一実施形態のナノファイバ製造装置で製造されたナノファイバ、及び図7に示す電界紡糸装置で製造されたナノファイバの走査型電子顕微鏡写真である。 図9は、本発明の一実施形態のナノファイバ製造装置で製造されたナノファイバ、及び図7に示す電界紡糸装置で製造されたナノファイバの走査型電子顕微鏡写真より繊維径を計測して集計した繊維径の分布図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の電界紡糸装置の第1実施形態であるナノファイバ製造装置の分解斜視図が示されている。図2は、図1に示すナノファイバ製造装置の断面構造を示す模式図である。これらの図に示すとおり、第1実施形態のナノファイバ製造装置1Aは、基本的にはESD(Electro−Spray Deposition)と高速噴出気流(ジェット)を組み合わせたジェットESD法を採用したものである。製造装置1Aは、例えばナノファイバ製造用の原料液を噴射する導電性のノズル21を備えた原料噴射部2と、ノズル21と電気的に絶縁して配置された凹曲面3fを有する電極3と、ノズル21と電極3の間に電圧を発生させる電圧発生部4と、ノズル21と電極3の間に空気流を噴射する空気流噴射部5とを備えている。また、製造装置1Aでは、電極3はノズル21と対向する面3fの略全面が、表面に誘電体の露出した被覆体6で被覆されている。電極3のノズル21と対向する面3fとは、ノズル21の先端21a(原料液が噴射する開口部)から臨むことのできる電極3の表面のことを意味し、製造装置1Aでは、後述するように、凹曲面3fと同じ面である。
製造装置1Aでは、電極3は、図1に示すように、全体として凹球面形状をしており、特に略椀形をしている。そして電極3は、その略椀形の内面であるノズル21と対向する面3fが凹曲面に形成されている。電極3は、その内面が凹曲面3fとなっている限りにおいて、その外面の形状は略椀形になっていることを要せず、その他の形状となっていてもよい。電極3は、導電性材料から構成されている。電極3は、電気絶縁性材料からなる基台30に固定されている。また、電極3は、図2に示すとおり電圧発生部4である直流高圧電源41に接続され、負電圧が印加されるようになっている。
電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fを、その開口端部31側から見たとき、該開口端部31の周縁は円形をしている。この円形は、真円形でもよく、あるいは楕円形でもよいが、ノズル21の先端に電界を集中させる観点からは、開口端部31の周縁は、真円形であることが好ましい。一方、ノズル21と対向する面(凹曲面)3fは、内面のいずれの位置においても曲面になっている。ここで言う曲面とは、(イ)平面部を全く有していない曲面のことであるか、(ロ)平面部を有する複数のセグメントを繋ぎ合わせて全体として凹曲面とみなせる形状となっていることであるか、又は(ハ)互いに直交する三軸のうち一軸が曲率を有さない帯状部を有する複数の環状セグメントを繋ぎ合わせて全体として凹曲面とみなせる形状となっていることのいずれかを言う。(ロ)の場合は、例えば縦及び横の長さが0.5mm以上5mm以下程度の矩形となっている、同一の又は異なる大きさの平面部を有するセグメントを繋ぎ合わせて凹曲面を形成することが好ましい。(ハ)の場合は、例えば半径が種々異なり、かつ高さが0.001mm以上5mm以下程度である扁平な複数種類の円筒からなる環状セグメントを繋ぎ合わせて凹曲面3fを形成することが好ましい。この環状セグメントにおいては、互いに直交する三軸、すなわちX軸、Y軸及びZ軸のうち、円筒の横断面を含むX軸及びY軸が曲率を有し、かつ円筒の高さ方向であるZ軸が曲率を有していないことが好ましい。
電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fは、その任意の位置における法線がノズル21の先端又はその近傍を通るような形状となっていることが好ましい。この観点から、該凹曲面は、真球の球殻の内面と同じ形状をしていることが特に好ましい。
製造装置1Aでは、図1及び図2に示すとおり、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fの最底部は開口しており、その開口部に原料噴射部2を構成するノズルアセンブリ20が取り付けられている。ノズルアセンブリ20は、ノズル21と、ノズル21を支持する支持部22とを有している。
製造装置1Aでは、原料噴射部2のノズル21は、導電性材料から構成されており、一般には金属から構成されている。好適には、ノズル21は、針状の直管から構成されている。ノズル21内には、原料液が流通可能になっている。ノズル21の内径は、その下限値を好ましくは200μm以上、更に好ましくは300μm以上に設定することができる。一方、その上限値を好ましくは3000μm以下、更に好ましくは2000μm以下に設定することができる。ノズル21の内径は、例えば好ましくは200μm以上3000μm以下、更に好ましくは300μm以上2000μm以下に設定することができる。ノズル21の外径は、その下限値を好ましくは300μm以上、更に好ましくは400μm以上に設定することができる。一方、その上限値を好ましくは4000μm以下、更に好ましくは3000μm以下に設定することができる。ノズル21の外径は、例えば好ましくは300μm以上4000μm以下、更に好ましくは400μm以上3000μm以下に設定することができる。ノズル21の内径及び外径をこの範囲内に設定することで、高分子を含有し粘性をもつ原料液を容易に、かつ定量的に送液できるとともに、ノズル周辺の狭い領域に電界が集中し、原料液を効率よく帯電させられるので好ましい。
製造装置1Aでは、ノズル21は、その延びる方向が、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fにおける開口端部31によって画成される円の中心か、又はその中心の近傍と、該対向する面(凹曲面)3fにおける最底部に設けられた開口の中心か、又はその中心の近傍とを通るように配置されることが好ましい。とりわけ、該対向する面(凹曲面)3fの開口端部31によって画成される円を含む平面と、ノズル21の延びる方向とが直交していることが好ましい。このようにノズル21を配置することで、ノズル21の先端21aに電界が更に一層集中するようになる。
ノズル21の先端21aの位置に関しては、該先端21aが、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fにおける開口端部31によって画成される円を含む平面内又は該平面近傍に位置することが好ましい。特に、該平面よりも該対向する面(凹曲面)3fの内側に位置するように該ノズル21を配置することが好ましい。具体的には該平面よりも1〜10mm内側に配置することが好ましい。ノズル21の先端21aの位置をこのようにすることで、ノズル21の先端21aから噴射された原料液が、電極3の前記対向する面(凹曲面)3fに引き寄せられにくくなり、該対向する面(凹曲面)3fが該原料液によって汚染され難くなる。この観点から、電極3の該対向する面(凹曲面)3fは、真球の球殻の略半球面の形状をしていることが特に好ましい。
製造装置1Aでは、原料噴射部2の支持部22は、電気絶縁性材料から構成されている。したがって、先に述べた電極3とノズル21とは、図2に示すように、支持部22によって電気的に絶縁されている。また、ノズル21は接地されている。ノズル21の先端21aは、凹曲面に形成された電極3内に露出している。ノズル21は、支持部22を貫通しており、ノズル21の後端21bは、電極3の背面側(すなわち、ノズル21と対向する面(凹曲面)3fと反対側の面側)において露出している。なおノズル21は必ずしも支持部22を貫通している必要はなく、支持部22に設けた原料液供給用の貫通孔の途中にノズル21の後端21bが位置していてもよい。ノズル21の後端21bあるいは支持部22に設けた原料液供給用の貫通孔は、例えばナノファイバ製造用の原料液の供給源(図示せず)に接続されている。ノズルアセンブリ20は、原料の供給源を構成するとともに原料噴射部2を構成する。
製造装置1Aでは、ノズル21の先端21aと、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fとの間の距離(最短距離)は、20mm以上、特に30mm以上に設定することが好ましい。これよりも狭いと、ノズル21の先端から噴射され、ファイバ状になった原料液が電極3の凹曲面に付着しやすくなる。ノズル21の先端21aと、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fとの間の距離の上限値は、100mm以下、特に50mm以下に設定することが好ましい。これよりも広いとノズル21と電極3との間に形成される電界が弱くなり、高い帯電量が得られ難くなる。このような観点から、例えば両者間の距離(最短距離)は、20mm以上100mm以下に設定することが好ましく、30mm以上50mm以下に設定することが更に好ましい。
製造装置1Aでは、先に述べたように、図2に示すように、ノズル21が接地されており、これに対して電極3には電圧発生部4の直流高圧電源41により負電圧が印加されている。従って、電極3が陰極になり、かつノズル21が陽極になり、電極3とノズル21との間に電圧が発生し、電界が形成される。なお、電極3とノズル21との間に電界を生じさせるためには、図2に示す電圧の印加のしかたに代えて、ノズル21に正電圧を印加するとともに、電極3を接地してもよい。尤も、ノズル21に正電圧を印加するよりも、該ノズル21を接地する方が、絶縁対策を簡便にできるので好ましい。また電圧発生部4によって発生させる電圧は、電極3が陰極に保たれ、かつノズル21が陽極に保たれる限り、すなわちノズル21が陰極よりも高電位に保たれる限り、直流電圧に交流電圧を重畳したような変動電圧でもよい。原料液の帯電量を一定に保ち、均一な太さのナノファイバを製造するという観点からは電圧は直流電圧であることが好ましい。
製造装置1Aでは、電圧発生部4に高圧電源装置などの公知の装置を用いることができる。電極3とノズル21との間に加わる電位差は、1kV以上、特に10kV以上とすることが、原料液を十分に帯電させ得る点から好ましい。一方、この電位差は100kV以下、特に50kV以下とすることが、ノズル21と電極3との間における放電を防止する点から好ましい。例えば1kV以上100kV以下、特に10kV以上50kV以下とすることが好ましい。なお電圧発生部4で印加した電圧が変動電圧である場合は、電極3とノズル21との間に発生する電位差の時間平均が前記範囲内とすることが好ましい。
製造装置1Aでは、空気流噴射部5は、図1及び図2に示すとおり、ノズルアセンブリ20におけるノズル21の基部の近傍に、貫通孔51を有している。空気流噴射部5は、ノズル21の延びる方向に沿って形成されている。更に空気流噴射部5は、ノズル21の先端21aの方向に向けて高速空気流を噴射させることが可能なように形成されている。電極3の開口端部31側から見たとき、空気流噴射部5の貫通孔51は、ノズル21を取り囲むように2個設けられている。貫通孔51は、ノズル21を挟んで対称な位置に形成されている。貫通孔51を有する空気流噴射部5は、その後端側の開口部が空気流の供給源(図示せず)に接続されている。この供給源から空気が供給されることで、ノズル21の周囲から空気が噴射されるようになっている。噴射した空気は、ノズル21の先端21aから噴射され、かつ電界の作用によって細長く引き伸ばされた原料液を、空気流噴射部5に対向する位置に配置された後述する捕集部(図示せず)に向けて搬送すると共に、ナノファイバを延伸させることに寄与する。なお、製造装置1Aでは、空気流噴射部5の貫通孔51が2個設けられている状態が示されているが、貫通孔51の個数はこれに限られず、1個又は3個以上であってもよい。更に、貫通孔51の形状(断面形状)は円形に限られず、矩形、楕円、二重円環、三角、ハニカム等でもよい。均一な空気流を得る観点からはノズル21を囲む環状の貫通孔51が望ましい。
空気流噴射部5から噴射される空気流としては、例えばドライヤー等によって湿度30%RH以下に乾燥させたものを用いることができる。また空気流は、製造されるナノファイバの状態が一定に維持されるようにするために、温度が一定に保たれていることが好ましい。空気流の風速は、例えば10m/sec以上、特に20m/sec以上とすることが好ましい。これよりも遅いと、ナノファイバの進行方向を、ノズル21と電極3の間の電界に逆らって、捕集部のある方向に搬送するのが難しくなる。空気流の風速の上限は、例えば60m/sec以下、特に50m/sec以下とすることが好ましい。これよりも風速が速いと、空気流でファイバが千切れる心配がある。このような観点から、空気流の風速は、10m/sec以上60m/sec以下にすることが好ましく、特に20m/sec以上50m/sec以下であることが好ましい。
製造装置1Aでは、被覆体6は、図1及び図2に示すように、陰極である電極3の表面のうちの、ノズル21と対向する面(凹曲面)3fの略全面に、表面に誘電体の露出した被覆体6が配置されている。ここで略全面とは、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fの全表面積(100%)の90%以上の面積を占める面積であることを意味する。また、表面に誘電体の露出した被覆体6とは、該表面の略全面(90%以上の面積)が誘電体のみで構成された被覆体6のことである。被覆体6は、表面の全面(100%の面積)が誘電体のみで構成されていることが好ましい。すなわち、被覆体6は、表面に誘電体が露出し、表面に金属などの導電体が非存在とした被覆体であることが好ましい。単一種の誘電体から構成された被覆体がその典型例であるが、被覆体は複数種の誘電体が積層された複合体であってもよいし、表面が誘電体のみで構成されていれば、内部(表面に露出しない部分)に金属の粒子、金属や空気の層等を含んだ複合体であってもよい。
製造装置1Aでは、図2に示すように、電極3と被覆体6とが接している。電極3と被覆体6とは、電極3と被覆体6との接合を強固にする観点からは電極3と被覆体6とは密着している方が好ましい。そして、電極3における被覆体6と接する面(凹曲面)3fと被覆体6における電極3と接する面6fとが同一形状となっている。ここで、電極3における被覆体6と接する面3fとは、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fと同じ面である。製造装置1Aでは、被覆体6は、ノズル21と対向する面(凹曲面)3fを有する電極3と相補形状を有する中空の凸部61を有している。言い換えれば、図1及び図2に示すように、該対向する面(凹曲面)3fを有する電極3の形状と、被覆体6における電極と接している部分の形状とが、相似形状である。ここで、被覆体6における電極と接している部分とは、中空の凸部61のことを意味しており、電極3の形状と凸部61の形状とが、相似形状となっている。
製造装置1Aでは、被覆体6の凸部61の頂部は、図1及び図2に示すように、開口しており、該開口には、ノズルアセンブリ20が嵌め込まれるようになっている。凸部61は、電極3の表面のうちのノズル21と対向する面(凹曲面)3fを被覆する。また被覆体6は、中空の凸部61の底部側の開口周縁から水平方向に延出するフランジ部62を有している。フランジ部62は、電極3におけるノズル21が延びる方向の開口端部31の周縁を被覆している。被覆体6を、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fに嵌め合わせた状態においては、例えば粘着剤を用いて電極3と被覆体6とを固定することが好ましい。このように、電極3と被覆体6とを固定する場合に、被覆体6におけるノズル21が延びる方向から見える箇所に、言い換えれば、中空の凸部61の底部側の開口端部から見たとき、絶縁性を損なわせない観点から、被覆体6を貫通する固定用の穴が配置されていないことが好ましい。被覆体6のフランジ部62は、凸部61の開口周縁から水平方向に、1mm以上15mm以下、特に10mm以上12mm以下延出していることが好ましい。
電極3と被覆体6とを固定する粘着剤としては、例えばエポキシ樹脂系の接着剤や外付けテープなどを用いることができる。特に義歯安定剤のような着脱可能な粘着剤を用いることで、被覆体6を電極3から取り外ししやすくなり、製造装置1Aのメンテナンス性が向上する。
本発明者らは、上記のように、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fを被覆体6で被覆することによって、ノズル21から噴射される原料液の帯電量を顕著に高められることを見出した。そのメカニズムは次のように予想される。製造装置1Aでは、電極3とノズル21の間に形成された電界によって、原料液中の陽イオンは電極3(陰極)側に引き寄せられ、原料液中の陰イオンはノズル21(陽極)の先端21d側に引き寄せられる。噴射される原料液には陽イオンが多く含まれ、原料液は正に帯電する。同時に、電極3とノズル21の間に印加された電圧によって、電極3(陰極)から大気に電子が放出され、電子がノズル21(陽極)に向けて飛来する。この飛来した(負に帯電した)電子は、噴射された(正に帯電した)原料液と衝突し、原料液の帯電を中和し、帯電量を減少させてしまう。一方、陰極である電極3の表面を、表面に誘電体の露出した被覆体6で被覆すれば、電極3からの電子の放出を抑制することができる。その結果、飛来した電子による原料液の中和、すなわち帯電量の減少を抑制でき、原料液の帯電量が高まると考えられる。更に、電極3からノズル21に飛来する電子の数が少なくなるため、電極3とノズル21の間の放電が抑制され、電極3とノズル21の間の印加電圧を増やすことが可能になる。これにより、電極3とノズル21の間の電界を強めて原料液の帯電量を高められる。また、電極3からノズル21に飛来する電子の数が少なくなると、電極3とノズル21の間に流れる電流(漏れ電流)が減り、ナノファイバ製造時の消費電力が低減するという効果も期待できる。前記効果を有効に発現させるためには、ノズル21と対向する面(凹曲面)3fの略全面(90%以上の面積)を被覆体6で被覆することが好ましく、特にノズル21と対向する面の全面(100%の面積)を被覆体6で被覆することが好ましい。
また、製造装置1Aでは、図2に示すように、電極3が凹曲面を有する凹球面形状をしているため、原料液の帯電量の増加が一層顕著となる。即ち、製造装置1Aにおいては、ノズル21の先端21aからほぼ等距離の位置に、ノズル21の面積よりもはるかに広い電極面がある。陰極である電極3と陽極であるノズル21に蓄積する電荷の総量は等しいから、ノズル21の表面には電極3に比べてはるかに高密度に電荷が分布することになり、その結果、ノズル21近傍の電界が強くなる。この強力な電界が原料液の帯電量を一層増加させるのである。この観点からはノズル21の面積は小さいことが好ましく、特にノズル21の長さ(ノズル21の先端21aと後端21bの間の距離)は短いことが好ましい。具体的にはノズル21の長さは50mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが更に好ましく、5mm以下であることが一層好ましい。また本実施形態のように電極3を凹球面形状にすることによって、平面状の電極を用いた場合よりも電極の嵩を減らすことができるので、製造装置1Aを小型化することができる。
更に、製造装置1Aでは、電極3におけるノズル21が延びる方向の開口端部31の厚み(T3)が、図1及び図2に示すように、開口端部31に位置する被覆体6の厚み(T6)よりも薄く形成されている。ここで、開口端部31に位置する被覆体6の厚みとは、電極3の凹曲面の略全面を被覆する被覆体6における電極3の開口端部31の位置での厚みを意味しており、具体的には、中空の凸部61の開口端部での厚みを意味するものであり、フランジ部62の厚みを意味するものではない。製造装置1Aでは、このように電極3の開口端部31の厚みが開口端部31に位置する被覆体6の厚みよりも薄く形成されているので、紡糸電圧を調整する際に紡糸電圧を上げたとしても、電極3の開口端部31に発生する電界の及ぶ範囲が狭くなり易く、帯電量が高められた原料液に影響を与え難く、電界紡糸の張力のバランスが崩れることなく、電界紡糸の張力を安定的に一定にでき、その結果、ナノファイバの生産性を従来よりも高めることが可能となる。
電極3の開口端部31に発生する電界の及ぶ範囲を狭くする観点から、電極3の開口端部31の厚み(T3)に対する被覆体6の厚み(T6)の比(T6/T3)は、1よりも大きいことが好ましく、5よりも大きいことが更に好ましく、そして、40000よりも小さいことが好ましく、5000よりも小さいことが更に好ましく、具体的には、1よりも大きく40000よりも小さいことが好ましく、5よりも大きく5000よりも小さいことが更に好ましい。詳述すると、同様の観点から、電極3の開口端部31の厚み(T3)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上あることが更に好ましく、そして、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることが更に好ましく、具体的には、0.5μm以上2mm以下であることが好ましく、1μm以上1mm以下であることが更に好ましい。同様の観点から、被覆体6の厚み(T6)は、1mm以上であることが好ましく、2mm以上あることが更に好ましく、そして、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが更に好ましく、具体的には、1mm以上20mm以下であることが好ましく、2mm以上10mm以下であることが更に好ましい。
電界紡糸の張力を安定的に一定に保つ観点から、電極3は、導電性のシートによって形成されていることが好ましい。導電性のシートとしては、銀、金、パラジウム、白金、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属製のシート、或いは、カーボンブラック、グラファイト粉等の炭素系のフィラー等の導電性粉末を含有したシート等が挙げられる。金属製のシートとしては、コストの観点、軽さと厚みの均一性の観点から、アルミテープ、家庭用のアルミホイル等が好ましく用いられる。
また、電界紡糸の張力を安定的に一定に保つ観点から、電極3は、被覆体6にめっき処理又は蒸着処理した導電性薄膜によって形成されていることが好ましい。導電性被膜を形成する金属としては、銀、金、パラジウム、白金、銅、亜鉛等が挙げられ、成膜のしやすさ、或いは、コストの観点から、銅が好ましく用いられる。
また、電界紡糸の張力を安定的に一定に保つ観点から、電極3は、厚みが略均等な板金で形成されていることが好ましい。板金の材料としては、銀、金、パラジウム、白金、銅、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。
また、電界紡糸の張力を安定的に一定に保つ観点から、電極3は、被覆体6に導電性材料を塗布して形成されていることが好ましい。塗布する導電性材料としては、銀粉、金粉、パラジウム粉、白金粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、真鍮粉等の金属粉末を含有した材料、或いは、カーボンブラック、グラファイト粉等の炭素系のフィラー等の導電性粉末を含有した材料等が挙げられる。
また、電界紡糸の張力を安定的に一定に保つ観点から、電極3に印加する電圧の絶対値(v(kV))に対する、ノズル21の先端21aと被覆体6との距離(最短距離)(d(mm))の比(d/v)は、20以下であることが好ましく、5以下であることが更に好ましく、そして、0.7以上であることが好ましく、1以上であることが更に好ましく、具体的には、0.7以上20以下であることが好ましく、1以上5以下であることが更に好ましい。詳述すると、同様の観点から、電極3に印加する電圧は、5kV以上100kV以下であることが好ましく、10kV以上50kV以下であることが更に好ましい。また、同様の観点から、ノズル21の先端21aと被覆体6との距離(最短距離)(d(mm))は、10mm以上100mm以下であることが好ましく、20mm以上50mm以下であることが更に好ましい。
被覆体6に使用する誘電体としては、絶縁材料であるマイカ、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム等のセラミック材料や、ベークライト(フェノール樹脂)、ナイロン(ポリアミド)、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂系材料が挙げられる。これらのうち、アルミナ、ベークライト、ナイロン、塩化ビニル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種以上の絶縁材料を用いることが好ましく、特にナイロンを用いることが好ましい。ナイロンとしては、6ナイロンや66ナイロンなどの各種のポリアミドを用いることができる。またナイロンとして市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、例えばMCナイロン(登録商標)が挙げられる。被覆体6に用いる誘電体には帯電防止剤を含有させることができる。帯電防止剤を含有させることによって、帯電した原料液やナノファイバ等が被覆体6に付着したとき、被覆体6の帯電を低減することができる。帯電防止剤としては公知の市販品を使用することができ、例えばペレクトロン(三洋化成工業(株))、エレクトロストリッパー(花王(株))、エレクトロマスター(花王(株))、リケマール(理研ビタミン(株))、リケマスター(理研ビタミン(株))などを用いることができる。
製造装置1Aでは、被覆体6は、均一な厚みで電極3を被覆していることが好ましい。被覆体6を構成する、表面に露出した誘電体の厚みは、0.8mm以上、特に2mm以上、とりわけ8mm以上であることが好ましい。こうすることで、電極からの電子の放出を十分に抑制でき、原料液の帯電量を高めることができる。これよりも薄いと、電極3からの電子の放出を十分に抑制できず、原料液の帯電量を高められない場合がある。なお当該厚みは、被覆体6が単一種又は複数種の誘電体から構成されている場合、被覆体6の厚みを指す(被覆体6の厚みに等しい)ものとする。また被覆体6が内部(表面に露出しない部分)に金属や空気の粒子又は層等を含んだ複合体である場合は、表面から金属又は空気までの間に存在する誘電体の厚みを指すものとする。被覆体6の厚みの上限値は、25mm以下、特に20mm以下、とりわけ15mm以下であることが好ましい。こうすることで、ノズル21の先端21aから噴射され、ファイバ状になった原料液が誘電体に引き寄せられて付着することを防止できる。また、原料液が電極に付着しにくくなるので、より高い電圧を印加することができ、それによって原料液の帯電量を高められる。これよりも厚いと、ノズル21の先端から噴射され、ファイバ状になった原料液が被覆体6に付着しやすくなる。被覆体6が単種又は複数種の誘電体から構成されている場合、例えば被覆体6の厚みは0.8mm以上25mm以下、特に2mm以上20mm以下、とりわけ8mm以上15mm以下とすることが好ましい。
製造装置1Aでは、捕集部(図示せず)は、ナノファイバを捕集するものであり、空気流噴射部5に対向する位置に配置されている。特に捕集部の一部として捕集用電極(図示せず)を配置することができる。捕集用電極は、金属等の導電性材料から構成されている平板状のものとすることができる。捕集用電極の板面と、空気流噴射部5による空気流の噴射方向とは略直交している。また後述するように、捕集用電極はその略全面を表面に誘電体の露出した被覆体で被覆することができ、更に好ましくは全面を被覆することができる。ここで略全面とは当該面の全表面積の90%以上の面積を占める面を意味する。全面とは、当該面の全表面積の100%を占める面を意味する。正に帯電したナノファイバを捕集用電極に誘引するために、捕集用電極には陽極であるノズル21よりも低い(負の)電位を与える。誘引を更に効率的にするため、陰極である電極3よりも低い(負の)電位を与えることが好ましい。捕集用電極(電極表面)とノズル21の先端21aとの距離(最短距離)は、その下限値を好ましくは100mm以上、更に好ましくは500mm以上とすることができる。これよりも狭いと、捕集用電極に到達するまでにナノファイバが十分に固化できないことがある。上限値は好ましくは3000mm以下、更に好ましくは1000mm以下とすることができる。これよりも広いと、捕集用電極による電気的誘引の力が弱くなり、ナノファイバの捕集率が低下する。例えば好ましくは100mm以上3000mm以下、更に好ましくは500mm以上1000mm以下とすることができる。
製造装置1Aでは、更に、前記の捕集用電極に隣接するように、該捕集用電極とノズル21との間に、ナノファイバが捕集される捕集体(図示せず)を捕集部として配置することもできる。捕集体としては、例えばフィルム、メッシュ、不織布、紙などの絶縁体を用いることができる。
製造装置1Aでは、更に、空気流噴射部5に対向するように、噴射された空気流の排気を行う空気排気部(図示せず)を配置することもできる。空気排気部は、上述した捕集用電極よりもノズル21から遠い側に配置されることが好ましい。空気排気部としては、例えばサクションボックス等の公知の装置を用いることができる。
以上説明した第1実施形態の製造装置1Aを用いたナノファイバの製造方法においては、電極3とノズル21との間に電界を生じさせた状態下に、ノズル21の先端21aから原料液を噴射する。電界によって、原料液中の陽イオンは電極3(陰極)側に引き寄せられるため、ノズル21から噴射される原料液には陽イオンが多く含まれ、原料液は正に帯電する。そして前述のように、電極3を被覆体6で被覆していることに起因して、原料液の単位質量当たりの帯電量は極めて高くなる。そして、噴射した原料液に向けて空気流噴射部5から空気流を噴射させることで、原料液を捕集体(図示せず)の方向に向かわせる。この間、原料液のもつ電荷の自己反発の連鎖によってファイバはナノサイズにまで細くなり、同時に、溶媒の揮発や高分子の凝固等が進行し、ナノファイバが生成する。生成したナノファイバは、空気流噴射部5から噴射された空気流にのり、かつ捕集用電極(図示せず)の作る電界に誘引されて、空気流噴射部5と対向する位置に配置された捕集体の表面に堆積する。正に帯電したナノファイバを捕集体に誘引するため、捕集用電極には陽極であるノズル21よりも低い(負の)電位を与える。あるいは誘引を更に効率的にするため、陰極である電極3よりも低い(負の)電位を与える。
また、第1実施形態の製造装置1Aを用いたナノファイバの製造方法においては、電極3の開口端部31の厚みが開口端部31に位置する被覆体6の厚みよりも薄く形成されているので、紡糸電圧を調整する際に紡糸電圧を上げたとしても、電極3の開口端部31に発生する電界の及ぶ範囲が狭くなり易い。従って、ノズル21の先端から噴射される原料液の帯電量が極めて高くなっていても、開口端部31に発生する電界に影響を受け難く、電界紡糸の張力のバランスが崩れることなく、電界紡糸の張力を安定的に一定にできる。また、ノズル21の先端から噴射される原料液の帯電量が極めて高くなっているので、電極3の方向に原料液を引き付ける力が大きなものとなる。したがって、従来よりも(単位時間当たり)多量の原料液をノズル21から噴射しても、従来と同程度に細いナノファイバを製造することが可能になる。しかも得られるナノファイバに欠陥等が生じ難く、ナノファイバの生産性を従来よりも高めることが可能となる。尚、ここで言う欠陥とは、例えば原料液の液滴がそのまま固化したものや、原料液の液滴が十分に引き伸ばされないまま固化して生じたビーズ状のもののことである。
次に、本発明の電界紡糸装置の第2実施形態であるナノファイバ製造装置1Bについて説明する。図3には、第2実施形態の製造装置1Bが示されている。図3(b)には、製造装置1Bの上面図が示されている。図3(a)は、図3(b)におけるA−A’断面を図の下方から眺めたときの側面図である。なお、第2実施形態の製造装置1Bに関し、特に説明しない点については、第1実施形態の製造装置1Aに関する説明が適宜適用される。また、図3において、図1ないし図2と同じ部材には同じ符号を付してある。
製造装置1Bは、ナノファイバ製造用の原料液を噴射する原料噴射部2を備えている。原料噴射部2は送液部23及びノズル21を有している。ノズル21の開口の直上の位置に、凹曲面3fを有する凹球面形状の電極3がその内面を下に向けて配置されている。ノズル21は金属等から構成されており導電性を有している。ノズル21と電極3との間には、アース42と金属導線43を介して、電圧発生部である直流高圧電源41によって直流電圧が印加されるようになっている。ノズル21は図3(a)に示すとおり接地され、陽極となる。これに対して電極3には負電圧が印加され、陰極となる。
製造装置1Bでは、電極3は、図3(a)に示すように、全体として凹球面形状をしており、特に略椀形をしている。そしてその内面に凹曲面3fを備えている。更に電極3は、図3(b)に示すように、対向する二つの側面の位置に、空気流噴射部5を配置するための開口32と、空気流噴射部5から噴射された空気流及びノズル21から噴射されファイバ状になった原料液を通すための開口33を有している。なお電極3は、その内面が凹曲面3fとなっている限りにおいて、その外面の形状は略椀形になっていることを要せず、その他の形状となっていてもよい。
製造装置1Bでは、空気流噴射部5は、図3(a)及び図3(b)に示すように、電極3に設けられた開口32を通して、ノズル21と電極3の間に空気流を噴射することが可能な位置に配置されている。生成されたファイバは正に帯電しており、陽極であるノズル21から陰極である電極3に向かって伸びていくが、空気流噴射部5から噴射された空気流は、このファイバの進行方向を転換させ、開口33を通して捕集部(不図示)のある方向(図3(b)の図の下方向)に搬送するとともに、ナノファイバを延伸させることに寄与する。
第2実施形態の製造装置1Bにおいては、陰極である電極3の表面のうちのノズル21と対向する面(凹曲面)3fの全面に、表面に誘電体の露出した被覆体6が被覆されている。ノズル21の先端は凹曲面3fの外側に位置しているため、当該凹曲面3fは、ノズル21と対向している。被覆体6の厚みは略一定であり、電極3と被覆体6とは直接に接触している。電極3における被覆体6と接する面(凹曲面)3fと被覆体6における電極3と接する面6fとが同一形状となっている。製造装置1Bでは、電極3におけるノズル21が延びる方向の開口端部31の厚み(T3)が、図3(a)に示すように、開口端部31に位置する被覆体6の厚み(T6)よりも薄く形成されている。そして、電極3と被覆体6とは、接着剤により固定されている。
製造装置1Bに用いる被覆体6を構成する誘電体としては、第1実施形態の製造装置1Aの被覆体6を構成する誘電体と同様のものを用いることができる。そして各種の熱可塑性樹脂を溶融成形して得られた成形体を用いると簡便でよい。該誘電体には製造装置1Aの被覆体6で使用したのと同様の帯電防止剤を含有させることができる。また電極3を被覆する被覆体6の厚みは、製造装置1Aにおける電極3を被覆する被覆体6の厚みと同様とすることができる。
第2実施形態の製造装置1Bを用いた場合にも、第1実施形態の製造装置1Aと同様に、被覆体6の作用によって原料液の帯電量を増加させることができる。しかも製造装置1Bは、製造装置1Aと同様に、電極3が凹球面形状をしているため、原料液の帯電量の増加が一層顕著となり、しかも製造装置を小型化することができる。そして、電極3の開口端部31の厚みが開口端部31に位置する被覆体6の厚みよりも薄く形成されているので、紡糸電圧を調整する際に紡糸電圧を上げたとしても、電極3の開口端部31に発生する電界の及ぶ範囲が狭くなり易く、帯電量が高まられた原料液に影響を与え難く、電界紡糸の張力のバランスが崩れることなく、電界紡糸の張力を安定的に一定にできる。尚、ノズル21の長さは50mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが更に好ましく、5mm以下であることが一層好ましい。
製造装置1Bでは、ノズル21の先端21aと、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3fとの間の距離(最短距離)は、製造装置1Aにおけるノズル21の先端21aと電極3の凹曲面3fと間の距離(最短距離)と同様にすることができる。ノズル21の先端21aの位置は、電極3の凹曲面3fの中心か、又はその中心の近傍に位置することが好ましい。具体的には凹曲面3fの中心から10mm以内の位置に配置することが好ましい。これによってノズル21の先端21aの電界が一層強くなり、原料液の帯電量が増加する。この観点から、電極3の凹曲面3fは、真球の球殻の略半球面の形状をしていることが特に好ましい。第2実施形態の製造装置1Bでは、図3(a)に示すように、電極3を、凹曲面3fの開口端部31によって画成される円を含む平面がノズル21の延びる方向と略直交するように配置したが、図4に示すように、該平面とノズル21の延びる方向とが90度以外の角度で交わるように傾けて電極3を配置してもよい。
製造装置1Bでは、電極3はノズル21と対向しない面の一部又はすべてをも、表面に誘電体の露出した被覆体で被覆してもよい。具体的には、図3(a)において、電極3の外面(凹曲面3fとは反対側の面)をも被覆体6で被覆してもよい。また、捕集部(不図示)の一部である捕集用電極の略全面を表面に誘電体の露出した被覆体で被覆してもよい。
以上の各実施形態の製造装置1A〜1Bにおいて用いられる原料液としては、ファイバ形成の可能な高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液あるいは高分子化合物を加熱、溶融した融液を用いることができる。原料液に高分子溶液を用いるエレクトロスピニング法は溶液法、高分子融液を用いる方法は溶融法と呼ばれることがある。該溶液又は融液には適宜、無機物粒子、有機物粒子、植物エキス、界面活性剤、油剤、イオン濃度を調整するための電解質等を配合することができる。
ナノファイバ製造用の高分子化合物としては一般に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が例示できる。用いられる高分子化合物は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した高分子化合物から任意の複数種類を組み合わせて用いることができる。
原料液に、高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液を用いる場合、該溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン等を例示することができる。用いる溶媒は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した溶媒から任意の複数種類を選定し、混合して用いても構わない。
特に溶媒として水を用いる場合は、水への溶解度の高い下記のような天然高分子及び合成高分子を用いるのが好適である。天然高分子としては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。合成高分子としては、例えば部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの高分子化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの高分子化合物のうち、ナノファイバの調製が容易である観点から、プルラン等の天然高分子、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。
また、水への溶解度は高くないが、ナノファイバ形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することでナノファイバ形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテフタレート樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの高分子化合物も用いることができる。これらの高分子化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
以上の各実施形態の製造装置1A〜1Bによって製造されるナノファイバは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10nm以上3000nm以下、特に10nm以上1000nm以下のものである。ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって測定することができる。
本発明のナノファイバ製造装置を使用して製造したナノファイバは、それを集積させたナノファイバ成型体として各種の目的に使用することができる。成型体の形状としては、シート、綿(わた)状体、糸状体などが例示される。ナノファイバ成型体は他のシートと積層したり、各種の液体、微粒子、ファイバなどを含有させたりして使用してもよい。ナノファイバシートは、例えば医療目的や、美容目的等の非医療目的でヒトの肌、歯、歯茎等に付着されるシートとして好適に用いられる。また、高集塵性でかつ低圧損の高性能フィルタ、高電流密度での使用が可能な電池用セパレータ、高空孔構造を有する細胞培養用基材等としても好適に用いられる。ナノファイバの綿状体は防音材や断熱材等として好適に用いられる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態の製造装置1A〜1Bに制限されない。
例えば、製造装置1A〜1Bにおいては、電極3の表面のうちの、ノズル21と対向する面(凹曲面)3fの略全面に被覆体6を配置しているが、それに加えて、ノズル21の外面の略全面を表面に誘電体の露出した被覆体によって被覆してもよい。好適には、図5に示すように、ノズル21は、その外面が被覆体7によって被覆されていてもよい。そして被覆体7は、ノズル21の先端21aを越えて延出している。被覆体7のうち延出部分7aは、ノズル21を取り囲む筒状の形態をしており、中空部を有している。この中空部がノズル21の内部と連通している。被覆体7は単一種の誘電体で構成されている。ノズル21の外面の略全面を被覆体7で被覆することによって、電極3から飛来しノズル21に流入する電子の数を抑制することができる。その結果、電極3とノズル21の間の放電が起きにくくなり、電極3とノズル21の間の印加電圧を増やすことや、距離を狭めることが可能になる。これによって電極3とノズル21の間の電界を強めて原料液の帯電量を高められる。上記効果を有効に発現させるためには、ノズル21の外面の略全面(90%以上の面積)を被覆体7で被覆することが好ましく、特にノズル21の外面の全面(100%の面積)を被覆体7で被覆することが好ましい。また被覆体7をノズル21の先端21aを越えて延出させることによって、ノズル21の先端21aに電子が飛来するのを抑制でき、原料液の帯電量を更に高めることができる。
被覆体7の延出部分7aの長さは、1mm以上であることが好ましく、10mm以上であることが更に好ましい。これよりも短いと被覆体7を延出した効果が小さくなる。上限値は、15mm以下であることが好ましく、12mm以下であることが更に好ましい。これよりも長いと、被覆体7の先端から噴射され、ファイバ状になった原料液が電極3又は被覆体6に付着しやすくなる。例えば延出部分7aの長さは、1mm以上15mm以下、特に10mm以上12mm以下であることが好ましい。この長さの延出部分7aを形成することで、電極3とノズル21の間の放電を抑制して原料液の帯電量を効果的に高めることができる。
ノズル21を被覆する被覆体7を構成する誘電体としては、電極3を被覆する被覆体6を構成する誘電体と同様のものを用いることができる。該誘電体には被覆体6で使用したのと同様の帯電防止剤を含有させることができる。またノズル21を被覆する被覆体7の厚みも、電極3を被覆する被覆体6の厚みと同様とすることができる。
以上のように、製造装置1A〜1Bにおいては、被覆体6による電極3の被覆に加えて、被覆体による捕集用電極の被覆及び/又は被覆体7によるノズル21の被覆を組み合わせることもできる。
また、製造装置1A〜1Bにおいては、図2、図4及び図5に示すように、電極3は、全体として凹球面形状をしているが、凹球面形状の内面であるノズル21と対向する面3fが凹曲面3fに形成されている限りにおいて、その背面側の外面の形状は略椀形になっていることを要せず、その他の形状となっていてもよい。具体的には、図6に示すような形状となっていてもよい。図6に示す凹曲面3fを有する電極3は、被覆体6と接する面(凹曲面)3fと被覆体6における電極3と接する面6fとが同一形状となっており、且つ、電極3の開口端部31の厚みが開口端部31に位置する被覆体6の厚みよりも薄く形成されているが、対向する面(凹曲面)3fを有する電極3の形状と、被覆体6における電極と接している部分の形状とが、相似形状とはなっていない。即ち、電極3の開口端部31の厚みが開口端部31に位置する被覆体6の厚みよりも薄く形成されているが、電極3の開口端部31を除いて、電極3の厚みが被覆体6の厚みよりも厚く形成されている。
また、製造装置1A〜1Bにおいて、ノズル21は曲率を有する曲管であってもよい。また、製造装置1A〜1Bにおいて、電極3の凹曲面3fは、半球の球殻の内面の形状であることが好ましいが、これに代えて例えば、球冠の球殻の内面の形状としてもよい。また、製造装置1Aにおいては、ノズル21を凹曲面3fの最底部に配置したが、それ以外の位置にノズル21を配置してもよい。
更に、本発明によって奏される有利な効果が損なわれない範囲において、一の実施形態の技術要素を他の実施形態の技術要素と置換してもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
〔実施例1〕
図1及び図2に示す製造装置1Aを用いてナノファイバの製造を行った。具体的には、中空の凸部61と、該凸部61の開口周縁から延出するフランジ部62とを有する被覆体6を用意し、中空の凸部61の外曲面に厚み100μmのアルミテープ(3M社製の品番 #433 HD)を貼り付け、凹曲面3fが半径45mmの半球となる電極3を形成した。尚、被覆体6は、厚み10mmの誘電体(モノマーキャストナイロン(白銅製MC901切板(青))で形成されていた。即ち、電極3の開口端部31の厚み(T3)は100μmであり、開口端部31に位置する被覆体6の厚み(T6)は10mmである。このようにして、電極3における被覆体6と接する面(凹曲面)3fと被覆体6における電極3と接する面6fとを同一形状とした。そして、ノズル21の先端21aを半球の中心に設置した。このとき先端21aは凹曲面3fにおける開口端部31によって画成される円を含む平面内に位置する。ノズルの延びる方向は半球の回転対称軸と一致させた。
次に、原料液としてDermacryl79(アクゾノーベル株式会社製)20.1%、1−ブタノール(和光純薬工業株式会社製)71.3%、サンソフトA−181E−C(太陽化学株式会社製)8.6%の割合で配合した溶液を用いた。ノズル21に原料液をシリンジポンプにて定量を送液した。ノズル21から噴射する原料液の吐出量は30mL/hに設定した。ノズル21の内径は0.3mm、長さは20mmであった。また、空気流噴射部5Aから噴射する空気流の流量は100L/minに設定した。ノズル21の先端21aと電極3との距離(最短距離)は45mmとし、ノズル21の先端21aと被覆体6との距離(最短距離)(d(mm))は35mmとし、ノズル21の先端21aと捕集用電極(電極表面)との距離(最短距離)は850mmとした。そして、ノズル21と電極3の間に−25kV、及び−35kVの電圧を印加し、2条件で紡糸をおこなった。得られたナノファイバを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を図8に、またSEM画像より繊維径を計測して集計した繊維径の分布図を図9に示す。図9に示す繊維径の分布図は、横軸が繊維径〔μm〕であり、縦軸が本数〔本〕である。尚、製造環境は、室温23℃で、湿度20%RHであった。
〔参考例1〕
図7に示す製造装置100を用いてナノファイバの製造を行った。図7に示す製造装置100は、図1及び図2に示す製造装置1Aに比べて、電極の形状のみが異なっていた。図7に示す製造装置100の電極103は、内面が凹曲面103fに形成された凹球面形状部分と、該凹球面形状部分の開口端部131の周縁から延出する平面状のフランジ部132を有していた。そして、製造装置100は、電極103の凹曲面103fの全面及びフランジ部132の一部を被覆体6で被覆して形成されたものである。電極103の開口端部131の厚み(T103)は10mmであり、開口端部31に位置する被覆体6の厚み(T6)も10mmであった。それ以外の製造装置100の構成は、実施例1の製造装置1Aの構成と同様であり、同様の条件にて紡糸を行った。得られたナノファイバを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を図8に、またSEM画像より繊維径を計測して集計した繊維径の分布図を図9に示す。図9に示す繊維径の分布図は、横軸が繊維径〔μm〕であり、縦軸が本数〔本〕である。尚、製造環境は、室温23℃で、湿度20%RHであった。
図8及び図9に示す結果から、実施例1のナノファイバを製造した製造装置1A、及び参考例1のナノファイバを製造した製造装置100の何れの装置を用いることによっても、印加電圧−25kVの条件においては安定して紡糸が出来た。また、ナノサイズの直径を持ったファイバが得られた。一方、−35kVを印加した実験においては、実施例1に示す様にナノファイバ製造装置1Aでのみ紡糸が可能であった。更に繊維径においては、−25kV印加時の紡糸結果より、小径のナノファイバを得られることが確認できた。これは、実施例1のナノファイバを製造した製造装置1Aは、参考例1のナノファイバを製造した製造装置100に比べて、電極3の開口端部31の厚みが開口端部31に位置する被覆体6の厚みよりも薄く形成されているので、電極3の開口端部31に発生する電界の及ぶ範囲が狭くなり、帯電量が高められた原料液に影響を与えずに、電界紡糸の張力のバランスが崩れることなく、電界紡糸の張力を安定的に一定にできたためと考えられる。
1A,1B ナノファイバ製造装置(電界紡糸装置)
2 原料噴射部
20 ノズルアセンブリ
21 ノズル
21a 先端
22 支持部
23 送液部
3 電極
3f 凹曲面
31 開口端部
32,33 開口
30 基台
4 電圧発生部
41 直流高圧電源
42 アース
43 金属導線
5 空気流噴射部
51 貫通孔
6 被覆体
6f 電極3と接する面
61 凸部
62 フランジ部

Claims (9)

  1. 原料液を噴射する導電性のノズルを備えた原料噴射部と、
    前記ノズルと電気的に絶縁して配置された凹曲面を有する電極と、
    前記ノズルと前記電極の間に電圧を発生させる電圧発生部と、
    前記ノズルと前記電極の間に空気流を噴射する空気流噴射部とを備えた電界紡糸装置であって、
    前記電極は前記ノズルと対向する面の全表面積の90%以上の面積を占める面が、表面に誘電体の露出した被覆体で被覆され、該電極と該被覆体とが接しており、
    前記電極における前記被覆体と接する面と該被覆体における該電極と接する面とが同一形状であり、
    前記電極における前記ノズルが延びる方向の開口端部の厚みが、該開口端部に位置する前記被覆体の厚みよりも薄い電界紡糸装置。
  2. 前記電極における前記開口端部の厚みは、0.5μm以上2mm以下である請求項1に記載の電界紡糸装置。
  3. 前記電極の形状と、前記被覆体における該電極と接している部分の形状とが、相似形状である請求項1又は2に記載の電界紡糸装置。
  4. 前記電極は、導電性のシートによって形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の電界紡糸装置。
  5. 前記電極は、前記被覆体にめっき処理又は蒸着処理した導電性薄膜によって形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の電界紡糸装置。
  6. 前記電極は、厚みが均等な板金で形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の電界紡糸装置。
  7. 前記電極は、前記被覆体に導電性材料を塗布して形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の電界紡糸装置。
  8. 前記電極と前記被覆体とを固定する場合に、該被覆体における前記ノズルが延びる方向から見える箇所に、該被覆体を貫通する固定用の穴が配置されていない請求項1〜7の何れか1項に記載の電界紡糸装置。
  9. 前記電極に印加する電圧の絶対値(v)に対する、前記ノズルの先端と前記被覆体との距離(d)の比(d/v)は、20以下である請求項1〜8の何れか1項に記載の電界紡糸装置。
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