以下、本発明の実施の形態による電磁式駆動ユニットを電磁弁に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、電磁弁1は、第1の実施の形態による電磁式駆動ユニット2と、被駆動装置である後述の制御弁ユニット24とを備えて構成されている。電磁弁1は、電磁式駆動ユニット2によって切換操作される3ポート2位置の圧力制御弁であり、例えば可変容量型油圧ポンプ/油圧モータの傾転角制御、コントロールバルブのスプール/絞り弁の制御等に好適に用いられるものである。
まず、電磁弁駆動ユニット2について説明する。電磁式駆動ユニット2は、後述するステータ4、ヨーク8、リング9によって構成されたインナハウジング3を有している。これらステータ4、ヨーク8、リング9は、ステータ4の軸心O−Oと同軸上に配置されている。インナハウジング3の外周側には、後述のソレノイドアセンブリ14が設けられ、ソレノイドアセンブリ14を構成する後述のコイル16に対する給電が行われることにより、後述のプランジャ5が、ヨーク8に案内されつつステータ4の軸心O−Oに沿う方向(軸方向)に移動する構成となっている。
ここで、ステータ4の構成について述べる。即ち、ステータ4は、大径な磁性体材料を用いて全体として段付円筒状に形成され、コイル16に対する給電制御に応じて励磁または消磁(解磁)されるものである。ステータ4は、円板状のフランジ部4Aと、フランジ部4Aよりも小径な円柱状をなし、フランジ部4Aからプランジャ5に向けて突出した固定鉄心4Bと、フランジ部4Aを挟んで固定鉄心部4Bとは反対側(制御弁ユニット24側)に突出した円筒状の取付筒部4Cとを含んでいる。取付筒部4Cの外周面には雄ねじ4Dが形成され、この雄ねじ4Dは制御弁ユニット24の後述する弁ケーシング25に螺着されている。フランジ部4Aと固定鉄心部4Bの軸中心位置には、軸方向に貫通するピン挿通孔4Eが形成されている。固定鉄心部4Bのプランジャ5側(反フランジ部4A側)の外周面には、固定鉄心部4Bの外周面よりも一段小径となった小径外周面4Fが形成され、この小径外周面4Fには、後述するリング9の一端9Aが嵌合している。
筒型磁気制御部4Gは、小径外周面4Fのうち、プランジャ5側の端部に設けられている。図2に示すように、筒型磁気制御部4Gは、プランジャ5側が開口端4Hとなった円筒状の有底穴4Jとして形成され、この有底穴4Jは底部4J1を有している。この有底穴4Jには、プランジャ5がステータ4側に移動したときに後述の磁極部5Aが入り込むものである。筒型磁気制御部4Gの底部4J1の軸中心位置には、ピン挿通孔4Eよりも僅かに大径なスペーサ取付穴4Kが、ピン挿通孔4Eと同軸上に穿設されている。ここで、筒型磁気制御部4Gの軸方向の長さL1は、開口端4Hから有底穴4Jの底部4J1までの軸方向寸法として表される。
テーパ部4Lは、筒型磁気制御部4Gの開口端4H側の外周面に設けられている。テーパ部4Lは、開口端4Hから軸方向の長さL1′までの範囲に形成されている。テーパ部4Lの外周面は、プランジャ5に向けて漸次小径となっている。一方、筒型磁気制御部4Gの外周面のうち底部4J1から軸方向の長さL1″までの範囲は、径方向の厚さ(肉厚)が一様で、固定鉄心部4Bの小径外周面4Fと等しい外径寸法を有する円筒部4Mとなっている。
次に、プランジャ5の構成について述べる。プランジャ5は、磁性体材料を用いて全体として円筒状に形成されている。プランジャ5は、ステータ4の軸心O−Oと同軸上に配置されている。プランジャ5は、ステータ4が励磁または消磁されることにより、ステータ4に対して接近または離間するものである。プランジャ5は、後述の磁極部5Aと摺接部5Cとを有し、磁極部5Aの外径寸法は摺接部5Cの外径寸法よりも大きく設定されている。
磁極部5Aは、プランジャ5のステータ4側の筒型磁気制御部4G側に設けられ、励磁されたステータ4からの磁力(吸引力)を受けるものである。磁極部5Aの外径寸法は、ステータ4の筒型磁気制御部4Gの内径寸法よりも僅かに小さく形成され、筒型磁気制御部4Gの有底穴4Jに入り込むことができる。磁極部5Aのステータ4側に位置するステータ側端面5Bは、有底穴4Jの底部4J1と対面し、後述のスペーサ7に当接するものである。
摺接部5Cは、プランジャ5のステータ4とは反対側(ヨーク8側)に設けられている。摺接部5Cは磁極部5Aよりも小さな外径寸法を有した筒体として形成されている。ここで、磁極部5Aと摺接部5Cとの境界部は、磁極部5Aの外周面から摺接部5Cの外周面に向けて漸次小径となるテーパ面5Dとなっている。摺接部5Cは、後述するヨーク8の摺動穴8D内に摺動可能に挿嵌され、この摺動穴8Dに摺接しつつヨーク8との間で磁気の受け渡しを行う。
摺接部5Cのヨーク8側に位置するヨーク側端面5Eは、後述するスクリュ10の軸部側雄ねじ10Eの先端と隙間をもって対面し、後述のサブスプリング13が当接するものである。プランジャ5の外周面は、例えばフッ素系樹脂等の非磁性体材料からなる樹脂層5Fによって均一な厚みで被覆されている。この樹脂層5Fの厚みは、ヨーク8の摺動穴8Dの内周面と摺接部5Cとの間の摺動抵抗や樹脂層5F自体の耐久性を考慮して、例えば0.03mm〜0.2mmの範囲に設定されている。プランジャ5の軸中心位置には、軸方向に貫通する中心孔5Gが形成されている。また、プランジャ5のうち中心孔5Gから径方向にずれた(偏心した)部位には、軸方向に貫通する貫通孔5Hが形成されている。
図2に示すように、プランジャ5の第1縁辺5Jは、磁極部5Aの外周面のうちステータ4側の外周縁、即ち、磁極部5Aの外周面とステータ側端面5Bとが交わる角部に設けられている。この第1縁辺5Jは、励磁されたステータ4の筒型磁気制御部4Gから、ステータ4に接近する方向への磁力(吸引力)を受けるものである(図3ないし図5参照)。
プランジャ5の第2縁辺5Kは、磁極部5Aの外周面のうち第1縁辺5Jとは反対側に離間した部位、即ち、磁極部5Aの外周面とテーパ面5Dとが交わる角部に設けられている。この第2縁辺5Kは、励磁されたステータ4の有底穴4Jに侵入したときに、筒型磁気制御部4Gの開口端4Hとの間でステータ4から離間する方向への磁力(吸引力)を受けるものである(図5参照)。
次に、ピン6、スペーサ7の構成について述べる。まず、ピン6は、プランジャ5の中心孔5G内に圧入して設けられている。ピン6は、軸方向に延在する丸棒材からなり、その途中部位がプランジャ5の中心孔5G内に圧入される。これにより、ピン6はプランジャ5と一体化されている。ピン6の軸方向の一側(ステータ4側)は、ステータ4のピン挿通孔4E内に挿通され、その端部は後述するスプール29に当接している。ピン6の軸方向の他側(ヨーク8側)は、ヨーク8の後述する貫通孔8G内へと延び、スクリュ10の軸部側雄ねじ10Eの先端に当接している。ピン6は、プランジャ5と一体となって軸方向に移動することにより、スプール29を軸方向に押圧する。
スペーサ7は、ステータ4とプランジャ5との間に設けられている。スペーサ7は、ステータ4に対するプランジャ5の軸方向最小距離を規制するものである。図2に示すように、スペーサ7は、円筒部7Aと円筒部7Aよりも大径な環状のフランジ部7Bとを有し、その内周側にはピン6が挿通されている。スペーサ7の円筒部7Aは、ステータ4のスペーサ取付穴4Kに挿嵌され、フランジ部7Bは、ステータ4の有底穴4Jの底部4J1に当接している。スペーサ7のフランジ部7Bは、有底穴4Jの底部4J1とプランジャ5のステータ側端面5Bとの間に挟まれる。これにより、プランジャ5が有底穴4Jの底部4J1に直接当接することがなく、プランジャ5のステータ側端面5Bが有底穴4Jの底部4J1に最接近したときの両者間の軸方向の最小距離(間隔)は、スペーサ7のフランジ部7Bの軸方向の厚さ寸法によって規制されている。
ここで、図2に示すように、ステータ4の筒型磁気制御部4Gの軸方向の長さ(開口端4Hから有底穴4Jの底部4J1までの軸方向寸法)をL1とし、プランジャ5のステータ側端面5Bから第2縁辺5Kまでの距離(軸方向の長さ)をL2とし、スペーサ7によって規制されたステータ4とプランジャ5との軸方向最小距離(フランジ部7Bの厚さ寸法)をL3とすると、これらL1,L2,L3は下記数1の関係を満たすように設定されている。
また、前記距離L2は、前記長さL1に対して下記数2の関係を満たすように設定されている。
さらに、前記距離L3は、前記長さL1に対して下記数3の関係を満たすように設定されている。
次に、ヨーク8、リング9、スクリュ10、サブスプリング13等の構成について述べる。まず、ヨーク8は、ステータ4に対して同軸上に配置されている。ヨーク8は磁性体材料を用いて段付円筒状に形成されている。ここで、ヨーク8は、磁路となる底部8Aと、底部8Aの外周側からステータ4に向けて軸方向に延びる円筒状の長筒部8Bと、底部8Aを挟んで長筒部8Bとは反対側に突出した取付筒部8Cとを含んでいる。長筒部8Bの内周側は摺動穴8Dとなり、この摺動穴8Dにはプランジャ5の摺接部5Cが摺動可能に挿嵌されている。即ち、摺動穴8Dは、プランジャ5の摺接部5Cを内包して片持ちすると共にプランジャ5を軸方向に摺動可能に案内するものである。
ヨーク8の長筒部8Bの外周面のうちステータ4側の端部には、長筒部8Bの外周面よりも一段小径となった小径外周面8Eが形成されている。この小径外周面8Eにはリング9の他端9Bが嵌合している。一方、ヨーク8の取付筒部8Cの外周面には雄ねじ8Fが形成され、この雄ねじ8Fには後述のナット21が螺着されている。ヨーク8の底部8Aと取付筒部8Cの軸中心位置には、軸方向に貫通する貫通孔8Gが設けられ、貫通孔8Gの内周面には雌ねじ8Hが形成されている。
リング9は、ステータ4の固定鉄心4Bの外周とヨーク8の長筒部8Bとの間に設けられている。リング9は磁性体材料を用いて円筒状に形成されている。リング9の軸方向の一側(ステータ4側)となる一端9Aは、ステータ4の小径外周面4Fに嵌合して固定されている。リング9の軸方向の他側(ヨーク8側)となる他端9Bは、ヨーク8の小径外周面8Eに嵌合して固定されている。これにより、ステータ4と、ヨーク8と、リング9とが一体化されたインナハウジング3が構成されている。
スクリュ10は、ヨーク8の貫通孔8G内に設けられている。スクリュ10は段付円柱状に形成され、このスクリュ10は、頭部10Aと、頭部10Aよりも小径な軸部10Bとを有している。軸部10Bには軸方向に離間して2つの鍔部10C,10Dが設けられている。軸部10Bの外周面には軸部側雄ねじ10Eが形成され、軸部側雄ねじ10Eはヨーク8の雌ねじ8Hに螺着されている。一方、頭部10Aの外周面には頭部側雄ねじ10Fが形成され、この頭部側雄ねじ10Fにロックナット11を螺着することにより、スクリュ10が緩み止めされている。また、鍔部10Cと鍔部10Dとの間には、インナハウジング3内に油を封止するOリング12が設けられている。
サブスプリング13は、スクリュ10の軸部側雄ねじ10Eの先端とプランジャ5のヨーク側端面5Eとの間に圧縮した状態で配置されている。サブスプリング13は、プランジャ5のヨーク側端面5Eをステータ4側に押圧している。従って、スクリュ10を正逆方向に回転させてヨーク8に対する螺入量を調整することにより、サブスプリング13によるプランジャ5の押圧力を調整することができる。即ち、スクリュ10は、電磁式駆動ユニット2によるプランジャ5に対する駆動力を微調整するものである。
次に、ソレノイドアセンブリ14の構成について説明する。ソレノイドアセンブリ14は、ステータ4、ヨーク8、リング9からなるインナハウジング3を外側から囲むように設けられている。ソレノイドアセンブリ14は、後述するボビン15、コイル16、ターミナル17、外装モールド18、ソレノイドケーシング20を含んで構成されている。
ボビン15は、インナハウジング3の外周側に設けられている。ボビン15は、インナハウジング3の外周面に嵌合する円筒状のボビン本体15Aと、ボビン本体15Aの軸方向の両端から径方向外側に張出す一対の鍔部材15B,15Cとを有している。一方の鍔部材15Bには、他方の鍔部材15Cから離れる方向に突出する突起部15Dが設けられ、鍔部材15Cには、鍔部材15Bから離れる方向に突出する突起部15Eが設けられている。
コイル16は、ボビン15のボビン本体15Aに巻装されることにより、ステータ4、プランジャ5、ヨーク8を外側から囲むように配置されている。コイル16はターミナル17に電気的に接続され、ターミナル17を介してコイル16に対する給電が行われる。コイル16は、外部からの給電を制御することによりステータ4を励磁または消磁(解磁)し、プランジャ5をステータ4に対して接近または離間させるものである。
外装モールド18は、ボビン15に巻装されたコイル16とボビン15の各鍔部材15B,15Cとを外周側から覆って設けられている。この場合、外装モールド18は、一方の鍔部材15Bの突起部15Dおよび他方の鍔部材15Cの突起部15Eに覆い被さっている。これにより、外装モールド18は、ボビン15全体を外側から包み込み、外装モールド18の軸方向の一側(ステータ4側)は、鍔部材15Bの突起部15Dに隙間なく凹凸嵌合し、外装モールド18の軸方向の他側(ヨーク8側)は、鍔部材15Cの突起部15Eに隙間なく凹凸嵌合している。
外装モールド18の軸方向の一側には、L字状に屈曲したソケット19が一体形成されている。ソケット19の先端側には、プラグ(図示せず)を差込むための差込口19Aが形成され、差込口19A内には、コイル16に電気的に接続されたターミナル17の先端が配置されている。従って、ソケット19の差込口19Aにプラグ(図示せず)を差込むことにより、ターミナル17を介して外部からコイル16に対する給電が行われる構成となっている。
ソレノイドケーシング20は、外装モールド18を外周側から覆っている。ソレノイドケーシング20は、軸方向に延びる円筒状のケーシング本体20Aと、ケーシング本体20Aの軸方向の他側(ヨーク8側)から径方向内側に張出した蓋部20Bとを有している。ケーシング本体20Aの軸方向の一側(ステータ4側)は開口端20Cとなり、この開口端20Cは、ステータ4のフランジ部4Aの外周面に嵌合している。
一方、蓋部20Bの中心部には軸方向に貫通するヨーク嵌合孔20Dが形成され、このヨーク嵌合孔20Dにはヨーク8の底部8Aの外周面が嵌合している。この状態で、ヨーク8の取付筒部8Cは、ヨーク嵌合孔20Dを通じて蓋部20Bの外部に突出している。この取付筒部8Cに形成された雄ねじ8Fにナット21を螺着することにより、ソレノイドケーシング20は、インナハウジング3に対して固定されている。
Oリング22は、ステータ4の固定鉄心部4Bと、ボビン15の鍔部材15Bと、外装モールド18との間に設けられている。Oリング23は、ヨーク8の底部8Aと、ボビン15の鍔部材15Cと、外装モールド18との間に設けられている。これらOリング22,23は、インナハウジング3とソレノイドアセンブリ14との間の隙間をシールすると共に、ボビン15の鍔部材15B,15Cと外装モールド18との境界面をシールし、この境界面からコイル16側に水分が浸入するのを抑えるものである。
次に、電磁式駆動ユニット2に取付けられた被駆動装置である制御弁ユニット24について説明する。制御弁ユニット24は、電磁式駆動ユニット2に同軸に取付けられるもので、後述する弁ケーシング25、スプール29を含んで構成されている。
弁ケーシング25は、段付円筒状(スリーブ状)に形成され、軸方向に延在している。弁ケーシング25は、軸方向の一側に位置する小径筒部25Aと、軸方向の他側に位置する大径筒部25Bと、小径筒部25Aと大径筒部25Bとの間に位置する中間筒部25Cとを有している。小径筒部25Aには、油圧ポンプ(図示せず)に接続される供給ポート25Dと、油圧アクチュエータ(図示せず)に接続される出力ポート25Eと、タンク(図示せず)に接続されるドレンポート25Fとが設けられている。小径筒部25Aの内周面には、供給ポート25Dと出力ポート25Eとの間に位置するシール面25Gと、出力ポート25Eとドレンポート25Fとの間に位置するシール面25Hとが設けられている。また、中間筒部25Cの外周面には雄ねじ25Jが形成され、大径筒部25Bの内周面には雌ねじ25Kが形成されている。そして、弁ケーシング25の雌ねじ25Kにステータ4(取付筒部4C)の雄ねじ4Dを螺着することにより、電磁式駆動ユニット2に制御弁ユニット24が取付けられている。
ここで、弁ケーシング25は、3つのポート25D,25E,25Fに別々に接続される複数の流路を有するハウジング(図示せず)内に配置され、このハウジングは、中間筒部25Cの雄ねじ25Jに螺着される構成となっている。このハウジングに設けられた各流路間は、出力ポート25Eを挟んで小径筒部25Aに外嵌されたOリング26,27によって隔離されている。また、大径筒部25Bと中間筒部25Cとの境界部には、ハウジング内に油を封止するOリング28が設けられている。
スプール29は、弁ケーシング25の内周側に軸方向に移動可能に設けられている。スプール29は、長尺な棒状体が用いられ、弁ケーシング25の内周側を軸方向に延びている。このスプール29の軸中心位置には、軸方向に延びる有底の軸方向流路29Aが形成されている。スプール29の外周面であって弁ケーシング25の中間筒部25Cと大径筒部25Bとの境界位置には、環状のばね受板30が取付けられている。このばね受板30は、弁ケーシング25の中間筒部25Cの内周側に形成されたばね受部25Lと軸方向で対面している。スプール29のばね受板30と弁ケーシング25のばね受部25Lとの間には、リターンスプリング31が設けられている。従って、スプール29は、リターンスプリング31の付勢力によって常にステータ4側に押付けられ、スプール29のステータ4側の端面はピン6に当接している。
スプール29の外周面には、軸方向に離間して4つのランド29B,29C,29D,29Eが設けられている。ランド29B,29Cは同径であり、ランド29D,29Eは同径であり、ランド29Cはランド29Dよりも大径に設定されている。ランド29Cが弁ケーシング25のシール面25Gに接触した状態では、供給ポート25Dと出力ポート25Eとは遮断される。スプール29が軸方向に移動してランド29Cがシール面25Gから離間した状態では、供給ポート25Dと出力ポート25Eが連通する。これにより、油圧ポンプ(図示せず)から供給ポート25Dに供給された圧油は、出力ポート25Eを通じて油圧アクチュエータ(図示せず)へと導かれる。
一方、ランド29Dが弁ケーシング25のシール面25Hと接触した状態では、出力ポート25Eとドレンポート25Fとは遮断される。スプール29が軸方向に移動してランド29Dがシール面25Hから離間した状態では、出力ポート25Eとドレンポート25Fとが連通する。これにより、油圧アクチュエータに供給された圧油は、出力ポート25Eからドレンポート25Fを通じてタンク(図示せず)へと戻る。
弁ケーシング25の小径筒部25Aの軸方向端面にはプレート32が配置されている。プレート32は、弁ケーシング25が取付けられるハウジングの壁面(図示せず)との間に設けられたウェーブワッシャ33により、小径筒部25Aの軸方向端面に常に押圧されている。これにより、スプール29の軸方向の一側の端面とプレート32との間には、ダンピング室34が形成されている。スプール29の軸方向の一側の端部にはオリフィス35が設けられ、スプール29の軸方向流路29Aは、オリフィス35を介してダンピング室34に連通している。
スプール29には、径方向に貫通する径方向流路29F,29Gが、軸方向に離間して設けられている。これら各径方向流路29F,29Gは、軸方向流路29Aに連通している。これにより、タンク(図示せず)内の作動油は、ドレンポート25Fから径方向流路29F、軸方向流路29A、径方向流路29Gを介して弁ケーシング25の内周側に導かれる。弁ケーシング25内に導かれた作動油は、ステータ4のピン挿通孔4Eを介して筒型磁気制御部4G内に導入され、さらに作動油は、プランジャ5の貫通孔5Hを通じてヨーク8の摺動穴8D内に導入される。このように、タンク内の作動油は、制御弁ユニット24を構成するスプール29の内部を通って電磁式駆動ユニット2のインナハウジング3の内部に充填される構成となっている。弁ケーシング25の大径筒部25Bとステータ4の取付筒部4Cとの接続部位には、弁ケーシング25内に作動油を封止するOリング36が設けられている。
次に、電磁式駆動ユニット2を構成するインナハウジング3の製造方法について説明する。
まず、インナハウジング3を組立てる第1工程では、ステータ4のスペーサ取付穴4K内にスペーサ7の円筒部7Aを圧入し、スペーサ7のフランジ部7Bを有底穴4Jの底部4J1に当接させる。次に、ステータ4の小径外周面4Fにリング9の一端9Aを圧入する。この状態で、プランジャ5の中心孔5Gに圧入されたピン6をステータ4のピン挿通孔4Eに差し込む。次に、ヨーク8の摺動穴8D内にプランジャ5の摺接部5Cを挿嵌しながら、ヨーク8の小径外周面8Eをリング9の他端9Bに圧入する。これにより、プランジャ5をヨーク8の内部に収容した状態で、ステータ4、ヨーク8、リング9が一体化され、インナハウジング3を組立てることができる。
次に、第2工程において、ヨーク8の小径外周面8Eとリング9の他端9Bとを突合わせ溶接によって接合する。この第2工程では、ヨーク8に対するリング9の傾きを矯正した状態で、ヨーク8の小径外周面8Eの軸方向端面(段差部)とリング9の他端9Bの軸方向端面との突合わせ部に対し、全周に亘ってレーザ溶接を施すことにより、両者間を強固に接合する。
次に、第3工程において、ステータ4の小径外周面4Fとリング9の一端9A側とを重ね溶接によって接合する。この第3工程では、ステータ4に圧入されたリング9の傾き等を調整し、ヨーク8に対するステータ4の傾きを矯正する。この状態で、ステータ4の小径外周面4Fとリング9の一端9A側との重なり合った部分に、全周に亘ってレーザ溶接を施すことにより、両者間を強固に接合する。この場合、ステータ4の小径外周面4Fとリング9の一端9Aとの接合部に形成される溶接線(図示せず)は、ステータ4の有底穴4Jの底部4J1よりもフランジ部4A側に離間した位置に形成される。
そして、インナハウジング3が組立てられた後には、例えばコイル16が巻装されたボビン15をインナハウジング3の外周側に組付ける。ボビン15に巻装されたコイル16とボビン15の各鍔部材15B,15Cとを、外装モールド18によって外周側から覆う。次に、ソレノイドケーシング20によって外装モールド18を外周側から覆う。さらに、ソレノイドケーシング20(ケーシング本体20A)の開口端20Cをステータ4のフランジ部4Aの外周面に嵌合すると共に、蓋部20Bのヨーク嵌合孔20Dをヨーク8の底部8Aの外周面に嵌合する。
この状態で、蓋部20Bの外部に突出したヨーク8(取付筒部8C)の雄ねじ8Fにナット21を螺着することにより、ソレノイドケーシング20をインナハウジング3に固定する。次に、ヨーク8の貫通孔8G内に突出したピン6の端部にサブスプリング13の内周側を挿通し、スクリュ10の鍔部10C,10D間にOリング12を取付ける。この状態で、ヨーク8(貫通孔8G)の雌ねじ8Hにスクリュ10の軸部側雄ねじ10Eを螺着する。そして、軸部側雄ねじ10Eの端部がピン6の端部に当接した状態で、スクリュ10の頭部側雄ねじ10Fにロックナット11を螺合することにより、ヨーク8に対してスクリュ10を固定する。このようにして、電磁式駆動ユニット2を組立てることができる。
第1の実施の形態による電磁式駆動ユニット2は上述の如き構成を有するもので、以下、電磁式駆動ユニット2および制御弁ユニット24の動作について説明する。
まず、電磁式駆動ユニット2のソケット19に電源装置のプラグ(いずれも図示せず)を接続する。この場合、電源は直流電源および交流電源のいずれであっても良く、電源装置からターミナル17を介してコイル16に対する給電が行われる。
コイル16に対する給電が行われていない状態では、スプール29は、リターンスプリング31によってステータ4側に付勢され、スプール29のステータ4側の端面はピン6に当接している。このため、弁ケーシング25の出力ポート25Eとドレンポート25Fとが連通し、出力ポート25Eと供給ポート25Dとが遮断された状態(初期状態)に保持される。
電源装置からターミナル17を介してコイル16に対する給電が行われると、コイル16によって磁界(励磁力)が発生し、プランジャ5は、コイル16に給電された電流値に応じた吸引力をもってステータ4の固定鉄心部4Bに吸引される。このとき、プランジャ5の摺接部5Cは、ヨーク8の長筒部8Bの摺動穴8Dの内周面に摺接しながらステータ4側に移動する。そして、プランジャ5は、スプール29に作用する油圧力、リターンスプリング31およびサブスプリング13のばね力、固定鉄心部4Bから作用する吸引力が釣り合った位置で停止する。
このプランジャ5の変位が、ピン6を介してスプール29に伝わることにより、スプール29が弁ケーシング25内を移動する。これにより、弁ケーシング25の供給ポート25Dと出力ポート25Eとの間が連通または遮断され、出力ポート25Eとドレンポート25Fとの間が連通または遮断され、油圧ポンプから油圧アクチュエータに対する圧油の給排が制御される。コイル16に対する給電が停止されると、コイル16による磁界が消滅し、スプール29は、リターンスプリング31のばね力により初期状態に戻る。これにより、弁ケーシング25の出力ポート25Eとドレンポート25Fとが連通し、出力ポート25Eと供給ポート25Dとが遮断される。
ここで、コイル16に対する給電によってステータ4が吸引力を発生する動作について説明する。
まず、電源装置からターミナル17を介してコイル16に対する給電が行われると、コイル16によって磁界が発生する。このとき、磁路を構成するステータ4、プランジャ5、ヨーク8、ソレノイドケーシング20の内部には磁束が発生する。この場合、磁路を構成するステータ4の筒型磁気制御部4Gは、他の磁路構成部材(プランジャ5、ヨーク8、ソレノイドケーシング20)と比較して体積が少ない。このため、筒型磁気制御部4Gには磁束が集中して高磁束密度となり、他の部分の磁路と比較して磁化が促進される。この結果、磁気に関するクーロンの法則により、筒型磁気制御部4Gを含むステータ4の固定鉄心部4Bとプランジャ5との間で吸引力(磁力)が発生する。この吸引力は軸方向成分を有し、この軸方向成分はプランジャ5をステータ4に向けて軸方向に吸引する軸方向の吸引力として作用する。
ここで、ステータ4に対するプランジャ5の位置と、プランジャ5に作用する吸引力との関係について、図3ないし図5を参照して説明する。なお、図3ないし図5に図示されるステータ4、プランジャ5、スペーサ7は、磁束線を明瞭に示すためにハッチングを省略している。
まず、プランジャ5が図3に示す初期位置、即ち、磁極部5Aの第1縁辺5Jが、軸方向においてステータ4の筒型磁気制御部4Gの開口端4Hと同じ位置にあるときには、プランジャ5とステータ4に対し、図3中に複数の磁束線37で示される磁束が発生する。初期位置における磁束線37は、磁極部5Aの外周面、第1縁辺5Jおよびステータ側端面5Bから、筒型磁気制御部4Gの外周面に形成されたテーパ部4Lの先端に向けて斜め方向に延びる。このため、プランジャ5に作用する吸引力F1は、磁束線37の向きに沿うことにより軸方向に対して傾斜した方向に延びる。プランジャ5は、吸引力F1の軸方向成分である軸方向の吸引力Fx1により、ステータ4に接近する方向に変位し、このプランジャ5の軸方向への変位が、スプール29の駆動力となる。
プランジャ5がステータ4に吸引されると、プランジャ5は、図4に示す中間位置、即ち、磁極部5Aの第1縁辺5Jが筒型磁気制御部4G内(有底穴4J内)に入り込んだ位置に変位する。図4の中間位置では、筒型磁気制御部4Gの磁化する領域が、テーパ部4Lの外周面が拡径するのに応じて半径方向に増加する。これにより、図4に示す磁束線37の向きは、図3に示す初期位置に比較して半径方向に傾き、プランジャ5に作用する吸引力F2の軸方向に対する傾きは、初期位置での吸引力F1の傾きよりも大きくなる。一方、筒型磁気制御部4Gの磁化する領域が増加することにより、吸引力F2は、初期位置での吸引力F1よりも大きくなる。この結果、吸引力F2の軸方向成分である軸方向の吸引力Fx2は、初期位置での軸方向の吸引力Fx1と同等の値もしくは同等の値に近い値となる(Fx2≒Fx1)。
プランジャ5がさらにステータ4に吸引されると、プランジャ5は、図5に示す規制位置、即ち、プランジャ5のステータ側端面5Bがスペーサ7のフランジ部7Bに当接する位置に変位する。これにより、ステータ4とプランジャ5との間のギャップが、スペーサ7によって規制される最小距離となる。このとき、磁極部5Aの第1縁辺5Jは、筒型磁気制御部4Gのテーパ部4Lから円筒部4Mの内周側へと変位しているため、筒型磁気制御部4Gの磁化する領域が半径方向にさらに増加する。これにより、図5に示す磁束線37の向きは、図4に示す中間位置に比較してさらに半径方向に傾き、プランジャ5に作用する吸引力F3の軸方向に対する傾きは、中間位置での吸引力F2の傾きよりもさらに大きくなる。一方、プランジャ5がステータ4に対し最接近するため、プランジャ5に作用する吸引力F3は、中間位置での吸引力F2よりも大きくなる。
ここで、本実施の形態では、ステータ4の筒型磁気制御部4Gの軸方向の長さL1と、プランジャ5のステータ側端面5Bから第2縁辺5Kまでの距離L2と、スペーサ7のフランジ部7Bの厚さ寸法L3とは、L1>L2+L3の関係を満たすように構成されている。従って、プランジャ5が規制位置に向けて変位する間に、磁極部5Aの第2縁辺5Kは、ステータ4の筒型磁気制御部4G内(有底穴4J内)に侵入する。
この状態で、磁極部5Aの第2縁辺5Kと筒型磁気制御部4Gの開口端4Hとの間には、第2縁辺5Kから開口端4Hに向けて斜め方向に磁束が発生する。このため、第2縁辺5Kに対し、軸方向に対して傾斜しつつ開口端4Hに向かう吸引力F4が作用する。この吸引力F4の軸方向成分である軸方向の吸引力Fx4は、プランジャ5をスペーサ7から離間させる方向に作用するので、吸引力F3の軸方向成分である軸方向の吸引力Fx3とは逆向きとなる。従って、プランジャ5をステータ4に接近させる方向に作用する軸方向の吸引力Fx3の一部が、プランジャ5をステータ4から離間させる方向に作用する軸方向の吸引力Fx4によって打消される。この結果、プランジャ5が規制位置に近づく領域において、プランジャ5に作用する軸方向の吸引力(Fx3−Fx4)を、初期位置における軸方向の吸引力Fx1および中間位置における軸方向の吸引力Fx2と同等の値もしくは同等の値に近い値とすることができる(Fx3−Fx4≒Fx2)。
従って、コイル16に給電される給電電流を一定値とした場合には、図6中の特性線38で示すように、プランジャ5が図3に示す初期位置P1、図4に示す中間位置P2、図5に示す規制位置P3へと変位する間に、プランジャ5に作用する軸方向の吸引力Fxを、ほぼ一定値に保つことができる。この結果、プランジャ5とステータ4との間のギャップが、スペーサ7によって規制される最小距離に接近したときに、プランジャ5に作用する軸方向の吸引力Fxが急激に増大するのを抑えることができる。従って、プランジャ5に作用する軸方向の吸引力Fxが一定もしくは一定に近い状態のままプランジャ5が変位できる領域、即ち、図6中のP1からP3までの領域Aを大きく確保することができる。
ここで、プランジャ5のステータ側端面5Bから第2縁辺5Kまでの距離L2は、ステータ4の筒型磁気制御部4G(有底穴4J)の軸方向の長さL1に対し、0.5L1≦L2≦0.7L1の範囲に設定されている。従って、この範囲で前記距離L2を調整することにより、プランジャ5に作用する軸方向の吸引力Fxが一定もしくは一定に近い状態のままプランジャ5が変位できる領域(図6中の領域A)の大きさを適宜に調整することができる。この場合、前記距離L2が0.5L1よりも小さい(L2<0.5L1)場合には、プランジャ5のステータ側端面5Bがステータ4に接近する前段階で、磁極部5Aの第2縁辺5Kが有底穴4J内に侵入するようになる。従って、プランジャ5をステータ4に接近させるための軸方向の吸引力Fxが増加する前段階で、プランジャ5をステータ4から離間させるための軸方向の吸引力Fxがプランジャ5に作用してしまう。この結果、プランジャ5に作用する軸方向の吸引力Fxが一定もしくは一定に近い状態のままプランジャ5が変位できる領域が狭くなる。
一方、前記距離L2が0.7L1よりも大きい(L2>0.7L1)場合には、プランジャ5のステータ側端面5Bがスペーサ7に当接する直前まで、磁極部5Aの第2縁辺5Kが有底穴4J内に侵入することがない。従って、プランジャ5をスペーサ7から離間させるための軸方向の吸引力Fxが発生するタイミングが遅れてしまう。この結果、プランジャ5に作用する軸方向の吸引力Fxが一定もしくは一定に近い状態のままプランジャ5が変位できる領域が狭くなる。このため、前記距離L2は、前記長さL1に対して0.5L1≦L2≦0.7L1の範囲に設定することが望ましい。
ここで、本実施の形態によるプランジャ5と、比較例によるプランジャとの相違について説明する。
図7に示すように、比較例1によるプランジャ101は、磁極部101Aと摺接部101Bとの境界部にテーパ面101Cが形成され、磁極部101Aの外周面とステータ側端面101Dとが交わる角部が第1縁辺101Eとなり、磁極部101Aの外周面とテーパ面101Cとが交わる角部が第2縁辺101Fとなっている。この場合、プランジャ101のステータ側端面101Dが、ステータ4の有底穴4J内でスペーサ7のフランジ部7Bに当接した規制位置において、第2縁辺101Fは有底穴4Jの外部に位置するようになっている。このため、比較例1によるプランジャ101は、ステータ側端面101Dが規制位置に接近した状態においても、第2縁辺101Fと筒型磁気制御部4Gの開口端4Hとの間に、プランジャ101をステータ4から離間させる方向への吸引力が作用することがない。
図8に示すように、比較例2によるプランジャ102は、磁極部102Aと摺接部102Bとが等しい外形寸法を有する円柱状に形成されている。従って、比較例2によるプランジャ102は、磁極部102Aの外周面とステータ側端面102Cとが交わる角部が第1縁辺102Dとなるものの、第1の実施の形態による第2縁辺5Kに対応する部位が設けられていない。このため、比較例2によるプランジャ102は、ステータ側端面102Cがスペーサ7のフランジ部7Bに当接する規制位置に接近した状態においても、プランジャ102に対し、ステータ4から離間させる方向への吸引力が作用することがない。
従って、比較例1によるプランジャ101を用いた電磁式駆動ユニットにおいては、図6中の特性線39で示すように、プランジャ101が初期位置P1から中間位置P2に変位する間は、プランジャ101をステータ4に接近させる方向に作用する軸方向の吸引力Fxが一定もしくは一定に近い状態となる。しかし、プランジャ101が中間位置P2から規制位置P3に変位する間に、プランジャ101をスペーサ7に接近させる方向に作用する軸方向の吸引力Fxが急激に増加してしまう。この結果、プランジャ101に作用する軸方向の吸引力Fxが一定もしくは一定に近い状態のままプランジャ101が変位できる領域が、図6中のP1からP2までの狭い領域aとなってしまう。一方、比較例2によるプランジャ102を用いた電磁式駆動ユニットにおいても、比較例1と同様に、プランジャ102の変位とプランジャ102に作用する軸方向の吸引力Fxとの関係は、図6中の特性線39で示されるようになる。
このように、第1の実施の形態による電磁式駆動ユニット2は、プランジャ5に作用する軸方向の吸引力Fxが一定もしくは一定に近い状態のままプランジャ5が変位できる領域が拡大されるので、プランジャ5の変位による吸引力の変化が低減される。このため、電磁式駆動ユニット2を備えた電磁弁1では、スプール29に作用する油圧力、リターンスプリング31およびサブスプリング13のばね力との釣り合いに必要なプランジャ5に対する吸引力を、コイル16に対する給電制御によって高精度に制御することができる。従って、電磁式駆動ユニット2を備えた電磁弁1が、例えば可変容量型油圧ポンプ/油圧モータの傾転角制御、コントロールバルブのスプール/絞り弁の制御等を行う油圧システムに用いられた場合には、油圧システムの制御精度を向上させることができる。
しかも、電磁式駆動ユニット2を備えた電磁弁1では、プランジャ5に作用する軸方向の吸引力Fxが一定もしくは一定に近い状態のままプランジャ5が変位できる領域を拡大することにより、制御弁ユニット24の弁ケーシング25内におけるスプール29のストロークを大きくすることができる。これにより、例えば供給ポート25Dと出力ポート25Eとの間の最大開口量、および出力ポート25Eとドレンポート25Fとの間の最大開口量を大きく設定することができ、これら供給ポート25D、出力ポート25E、ドレンポート25Fを流れる圧油の流量を増大させることができる。この結果、電磁弁1による油圧力の応答を高速化することができ、この電磁弁1を含む油圧システムの応答の高速化を図ることができる。
次に、図9および図10は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、プランジャの磁極部と摺接部の外径が同径であり、プランジャの外周面には磁極部と摺接部とを軸方向に隔てるくびれ部が設けられていることにある。なお、第2の実施の形態では第1の実施の形態と同一の構成表素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、電磁式駆動ユニット41は、制御弁ユニット24と共に電磁弁を構成するものである。この電磁式駆動ユニット41は、第1の実施の形態による電磁式駆動ユニット2と同様に、ステータ4、後述するプランジャ42、ピン6、スペーサ7、ヨーク8、リング9、ボビン15、コイル16、ソレノイドケーシング20等を含んで構成されている。しかし、第2の実施の形態では、プランジャ42の構成が第1の実施の形態によるプランジャ5とは異なるものである。
プランジャ42は、磁性体材料を用いて全体として円筒状に形成され、ステータ4と同軸上に配置されている。プランジャ42は、後述する磁極部42Aの外径寸法と摺接部42Cの外径寸法が同一(同径)となり、プランジャ42の外周面には後述のくびれ部42Gが設けられている。
磁極部42Aは、プランジャ42のステータ4側の端部に設けられている。磁極部42Aは、その外径寸法がステータ4の筒型磁気制御部4G(有底穴4J)の内径寸法よりも僅かに小さく形成され、有底穴4Jの内側に入り込むものである。磁極部42Aのステータ側端面42Bは、有底穴4Jの底部4J1と対面しスペーサ7のフランジ部7Bに当接するものである。
摺接部42Cは、プランジャ42のステータ4とは反対側(ヨーク8側)の端部に設けられている。摺接部42Cは、ヨーク8の摺動穴8D内に摺動可能に挿嵌され、この摺動穴8Dに摺接しつつヨーク8との間で磁気の受け渡しを行うものである。摺接部42Cのヨーク側端面42Dは、スクリュ10の軸部側雄ねじ10Eの先端と対面し、サブスプリング13が当接している。プランジャ42の軸中心位置には軸方向に貫通する中心孔42Eが形成され、この中心孔42E内にはピン6が圧入されている。また、プランジャ42のうち中心孔42Eから径方向に偏心した部位には、軸方向に貫通する貫通孔42Fが形成されている。
くびれ部42Gは、プランジャ42の外周面に全周に亘って凹溝状に形成され、磁極部42Aと摺接部42Cとを軸方向に隔てている。プランジャ42は、くびれ部42Gを挟んでステータ4側が磁極部42Aとなり、ヨーク8側が摺接部42Cとなっている。図10に示すように、プランジャ42の第1縁辺42Hは、磁極部42Aの外周面とステータ側端面42Bとが交わる角部に設けられている。この第1縁辺42Hは、励磁されたステータ4の筒型磁気制御部4Gから、ステータ4に接近する方向への磁力(吸引力)を受けるものである。
プランジャ42の第2縁辺42Jは、磁極部42Aの外周面のうち第1縁辺42Hとは反対側に離間した部位、即ち、磁極部42Aの外周面とくびれ部42Gとが交わる角部に設けられている。この第2縁辺42Jは、励磁されたステータ4の有底穴4J内に侵入したときに、筒型磁気制御部4Gからステータ4から離間する方向への磁力(吸引力)を受けるものである。
ここで、ステータ4の筒型磁気制御部4G(有底穴4J)の軸方向の長さをL1とし、プランジャ42のステータ側端面42Bから第2縁辺42Jまでの距離をL2とし、スペーサ7のフランジ部7Bの厚さ寸法をL3とすると、これらL1,L2,L3は、上述した数1(L1>L2+L3)、数2(0.5L1≦L2≦0.7L1)、数3(L3=0.2L1)の関係を満たすように設定されている。
第2の実施の形態による電磁式駆動ユニット41は、上述の如きプランジャ42を備えたもので、コイル16に対する給電制御を行うことにより、ステータ4からプランジャ42に吸引力が作用する。
ここで、プランジャ42の第1縁辺42Hがステータ4の有底穴4J内に入り込んだ後、プランジャ42の第2縁辺42Jが有底穴4J内に侵入するまでの間は、第1の実施の形態と同様に、プランジャ42に対してステータ4に接近する方向への軸方向の吸引力が作用する。そして、プランジャ42の第2縁辺42Jが有底穴4J内に侵入すると、第2縁辺42Jと筒型磁気制御部4Gの開口端4Hとの間で磁力(吸引力)が発生し、プランジャ42をステータ4から離間させる方向への軸方向の吸引力が作用する。これにより、プランジャ42をステータ4に接近させる軸方向の吸引力の一部を打消すことができる。この結果、プランジャ42とステータ4との間のギャップが、スペーサ7によって規制される最小距離に接近したときに、プランジャ42に作用する軸方向の吸引力が急激に増大するのを抑えることができる。従って、第1の実施の形態と同様に、プランジャ42に作用する軸方向の吸引力が一定もしくは一定に近い状態のままプランジャ42が変位できる領域を拡大することができる。
なお、第2の実施の形態では、磁性体材料からなるプランジャ42の外周面にくびれ部42Gを形成し、くびれ部42Gによって磁極部42Aと摺接部42Cとを軸方向に隔てる構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11に示す第1の変形例のように、くびれ部42Gに非磁性材料からなる環状部材43を埋設することにより、一様な外径寸法を有するプランジャ42′として形成してもよい。
また、実施の形態では、ステータ4の筒型磁気制御部4Gの外周面に、開口端4Hに向けて縮径しつつ直線的に延びるテーパ部4Lを設けた場合を励磁している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図12に示す第2の変形例のように、開口端4Hに向けて縮径しつつ曲線的に延びるテーパ部4L′を設ける構成としてもよい。