以下に添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る画像形成装置、画像倍率補正方法およびプログラムについて詳しく説明する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明を適用した画像形成装置の一例として、電子写真方式でフルカラーの画像形成を行うタンデム型の画像形成装置を例示するが、適用可能な画像形成装置はこの例に限らない。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の画像形成装置1の機械的な構成例を示す図である。この画像形成装置1は、図1に示すように、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびBk(ブラック)の各色に対応する4つの作像ユニット2を備える。4つの作像ユニット2は、形成するトナー画像の色が異なるだけで内部構成は共通である。これら4つの作像ユニット2は、中間転写体である中間転写ベルト3に沿って配置されている。
中間転写ベルト3は、駆動ローラ4により駆動されて図中矢印A方向に周回移動するエンドレスベルトとして構成されている。4つの作像ユニット2は、中間転写ベルト3の移動方向の上流側から下流側に向かって、例えばY,M,C,Bkの順に並ぶように配置されている。また、4つの作像ユニット2の中間転写ベルト3側とは逆側に、露光ユニット5が配置されている。
作像ユニット2は、一定の周速で矢印B方向に回転する感光体ドラム6を備える。感光体ドラム6の周囲には、帯電器や現像器、除電器、クリーナなどが配置されている。また、中間転写ベルト3を挟んで感光体ドラム6と対向する位置には、一次転写ローラ7が配置されている。
画像形成に際し、感光体ドラム6の外周面は、暗中にて帯電器により一様に帯電された後、画像データに応じて変調された露光ユニット5からの書込光によって露光される。これにより、感光体ドラム6に画像データに応じた静電潜像が形成される。この静電潜像が現像器によって現像されることで、感光体ドラム6上にトナー画像が形成される。このトナー画像は、感光体ドラム6と中間転写ベルト3とが接する一次転写位置で、一次転写ローラ7の働きにより中間転写ベルト3上に転写される。トナー画像の転写が終了した感光体ドラム6は、外周面に残留した不要なトナーがクリーナにより払拭された後、除電器により除電される。
本実施形態の画像形成装置1では、中間転写ベルト3の周回移動に合わせて、Y,M,C,Bkの各作像ユニット2において以上の動作が順次行われることで、中間転写ベルト3上に4色を重ね合わせたフルカラーのトナー画像が形成される。
また、この画像形成装置1は、印刷媒体を給紙するための給紙テーブル8と、印刷媒体を搬送するための搬送路9(図1中破線で示す経路)と、印刷媒体にトナー画像を定着させるための定着装置10とが設けられている。
給紙テーブル8は、給紙ローラ11を選択的に回転操作することにより、印刷媒体を格納している複数のトレイのうちの1つから印刷媒体を1枚ずつ繰り出す。この印刷媒体は搬送ローラ12により搬送路9に沿って図中矢印C方向に搬送され、二次転写ローラ13が配置された二次転写位置の手前で、レジストローラ14に当接して待機状態となる。そして、待機状態の印刷媒体は、中間転写ベルト3上に形成されたフルカラーのトナー画像が二次転写位置に到達するタイミングと合わせて、レジストローラ14の回転により二次転写位置に搬送される。そして、中間転写ベルト3上のフルカラーのトナー画像が二次転写ローラ13の働きにより印刷媒体に転写される。
トナー画像が転写された印刷媒体は、搬送路9中に配置された搬送ベルト15により定着装置10へと搬送される。そして、定着装置10に搬送された印刷媒体は、定着装置10により熱および圧力が加えられることによってトナー画像が定着する。
片面印刷の場合は、定着装置10によって第1面にトナー画像が定着された印刷媒体が、排出ローラ16によって排出トレイ17上に排紙される。また、反転排紙や両面印刷を行う場合には、定着装置10によって第1面にトナー画像が定着された印刷媒体が搬送路9の反転パスを通って反転ローラ18により一旦引き込まれ、反転ローラ18が逆転することによって、反転した状態で送り出される。そして、反転排紙の場合は、反転した印刷媒体が排出ローラ16によって排出トレイ17上に排紙される。また、両面印刷の場合には、反転した印刷媒体が搬送路9の巡回パスを通ってレジストローラ14に当接する位置まで搬送される。その後、同様の手順で印刷媒体の第2面にトナー画像の転写、定着が行われた後、排出ローラ16によって排出トレイ17上に排紙される。
印刷媒体に両面印刷を行う場合、第1面にトナー画像を定着させるために定着装置10により加えられる熱などの影響によって印刷媒体に伸縮が生じ、第1面印刷時と第2面印刷時とで印刷媒体のサイズが変化する。そこで、本実施形態の画像形成装置1は、第1面の印刷前と第2面の印刷前とでそれぞれ印刷媒体のサイズを検知して伸縮率を算出し、その伸縮率に応じて第2面に印刷される画像の倍率補正を行う機能を持つ。
図2は、印刷媒体のサイズを検知するための機構を説明する図である。本実施形態の画像形成装置1では、図2に示すように、搬送路9のレジストローラ14よりも下流側でレジストローラ14に近い位置に、印刷媒体の搬送方向に対応する副走査方向(長さ方向)における端部を検知する媒体センサ21が設置されている。また、レジストローラ14には、当該レジストローラ14の回転量を計測するエンコーダ22が接続されている。また、搬送路9のレジストローラ14よりも上流側には、印刷媒体の搬送方向と直交する方向に対応する主走査方向(幅方向)のサイズを検知するためのCIS(Contact Image Sensor)23が設置されている。
印刷媒体の副走査方向のサイズは、例えば、レジストローラ14の回転により二次転写位置へと搬送される印刷媒体の先端が媒体センサ21によって検知されてから後端が検知されるまでの間に、エンコーダ22によって計測されるレジストローラ14の回転量から求めることができる。なお、印刷媒体の副走査方向のサイズを検知する方法は、例えば特開2013−107774号公報などに詳細が記載されており、本実施形態の画像形成装置1においてもこの方法を利用することができる。
印刷媒体の主走査方向のサイズは、CIS23によって印刷媒体の主走査方向における両端部の位置をそれぞれ検知し、その両端部の位置の差を距離に置き換えることで求めることができる。図3は、CIS23により印刷媒体の主走査方向のサイズを検知する様子を示す図であり、印刷媒体の紙面に対して垂直な方向で見た図である。CIS23は、例えば図3に示すように、印刷媒体の搬送方向(図中C方向)と直交する方向に所定距離離れて2つ配置される。そして、一方のCIS23によって印刷媒体の主走査方向における一端部の位置を検知し、他方のCIS23によって印刷媒体の主走査方向における他端部の位置を検知する構成となっている。これら2つのCIS23は、画像形成装置1がサポートするすべてのサイズの印刷媒体に対応可能なように、設置される位置やサイズが定められている。これら2つのCIS23が検知した位置の差を距離に置き換えることで、印刷媒体の主走査方向のサイズを求めることができる。なお、図3の例では、2つのCIS23によって印刷媒体の主走査方向における両端部の位置を検知する構成としているが、勿論、印刷媒体の搬送方向と直交する方向に沿って配置された長尺状の1つのCIS23により印刷媒体の主走査方向における両端部の位置を検知する構成としてもよい。
図4は、本実施形態の画像形成装置1の制御系のハードウェア構成例を示すブロック図である。本実施形態の画像形成装置1は、図4に示すように、CPU101、RAM102、ROM103、NVRAM104、エンジン制御部105、外部I/F106、およびセンサI/F107を備え、これらがシステムバス108により接続されている。センサI/F107は、媒体センサ21、エンコーダ22、およびCIS23に接続されている。
CPU101は、RAM102を主メモリ、ワークエリアなどとして利用し、例えばROM103などに格納されたプログラムを読み出して実行することで、画像形成装置1における各種の動作を統括的に制御する。例えばCPU101は、外部I/F106を介して、ホストコンピュータなどの外部装置(図示せず)から画像データを受信したり、エンジン制御部105に対して画像データを渡して画像形成の指示を行ったりといった制御を行う。また、CPU101は、センサI/F107を介して、媒体センサ21、エンコーダ22、およびCIS23からそれぞれ必要な情報を取り込むことが可能となっている。
NVRAM104は、不揮発性の記憶部であり、プログラムが利用する各種の情報を記憶する。特に本実施形態では、このNVRAM104は、後述の伸縮率の値を更新しながら保持する機能を持つ。
エンジン制御部105は、CPU101の指示に従って画像形成に関わる上述した各部(図1参照)の動作を制御して、印刷媒体上に画像データに応じた画像を形成する。
本実施形態の画像形成装置1では、上述した両面印刷の際に第2面に印刷される画像の倍率補正を行うためのプログラムが、例えばROM103などに格納されている。そして、CPU101がこのプログラムを読み出して実行することにより、画像形成装置1に図5に示すような機能的な構成が実現される。
図5は、CPU101が上記プログラムを実行することによって画像形成装置1に実現される機能的な構成の一例を示すブロック図である。画像形成装置1には、図5に示すように、倍率補正に関わる機能的な構成要素として、伸縮率算出部110と、記憶制御部120と、倍率補正部130とが実現される。
伸縮率算出部110は、媒体センサ21、エンコーダ22、およびCIS23のそれぞれから取り込んだ情報をもとに、第1面印刷時に対する第2面印刷時の印刷媒体の伸縮率の値を算出する処理を行う。
印刷媒体の伸縮率は、印刷媒体の種類やその時点での画像形成装置1の温度などに応じて、印刷媒体の第2面印刷時に第1面印刷時と比べてどれだけ印刷媒体が伸縮するかを表す指標である。この伸縮率は、例えば、第1面に対してトナー画像の転写および定着を行う前に検知された印刷媒体のサイズと、第2面に対してトナー画像の転写および定着を行う前に検知された印刷媒体のサイズとの差分を、第1面に対してトナー画像の転写および定着を行う前に検知された印刷媒体のサイズで除算することで求められる。
本実施形態の伸縮率算出部110は、1枚の印刷媒体のみの伸縮率でなく、連続して搬送される所定枚数(例えば4枚)分の印刷媒体の伸縮率の平均値(移動平均)を、その時点での伸縮率の値として算出する。すなわち、伸縮率算出部110は、ある印刷媒体の単体の伸縮率(以下、個別伸縮率という。)が求められたときに、その印刷媒体の個別伸縮率と、その印刷媒体に先行する例えば3枚の印刷物それぞれに対して求められた個別伸縮率との平均値を、その時点での伸縮率の値として算出する。伸縮率算出部110は、以上のような伸縮率の値を、印刷媒体の搬送方向である副走査方向と、印刷媒体の搬送方向と直交する方向である主走査方向とのそれぞれについて算出する。
記憶制御部120は、伸縮率算出部110によって算出された伸縮率の値を、新たな値が算出されるたびに更新しながらNVRAM104に保持させる処理を行う。なお、本実施形態では、伸縮率算出部110によって算出された伸縮率の値を保持する記憶部としてNVRAM104を用いているが、他のメモリデバイスを用いてもよい。ただし、電源供給が遮断されても伸縮率の値を保持できるように、不揮発性のメモリデバイスを用いることが望ましい。
倍率補正部130は、伸縮率算出部110により新たに算出された伸縮率の値と、その値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値との差分が所定範囲内であるか否かに応じて、その時点で印刷媒体の第2面に印刷する画像の倍率補正を行う。すなわち、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって新たに伸縮率の値が算出されると、その時点でNVRAM104が保持している値を読み出す。そして、倍率補正部130は、新たに算出された伸縮率の値とNVRAM104から読み出した伸縮率の値との差分を求め、その差分が所定範囲内であるか否かを判定する。その結果、差分が所定範囲内である場合は、倍率補正部130は、伸縮率算出部110により新たに算出された伸縮率の値を用いて、その時点で印刷媒体の第2面に印刷する画像の倍率補正を行う。一方、差分が所定範囲を越えている場合には、倍率補正部130は、伸縮率算出部110により新たに算出された伸縮率の値よりも0に近い(絶対値が小さい)値、例えば新たに算出された伸縮率の値の1/2の値を用いて、その時点で印刷媒体の第2面に印刷する画像の倍率補正を行う。
従来技術では、上述したように、新たに算出された伸縮率の値と記憶部が保持する値との差分が所定範囲を越えた場合、新たに算出された伸縮率の値は破棄され、記憶部が保持する値を用いて倍率補正が行われる。このため、従来技術では、印刷媒体の種類に応じて想定される伸縮率の代表値を、予め記憶部に初期値として設定しておく必要がある。つまり、従来技術では、記憶部に初期値が設定されていない状態(記憶部が保持する値が0の状態)で処理を開始すると、算出される伸縮率の値と記憶部が保持する値との差分が所定範囲を越えるために、算出される伸縮率の値が破棄され続けることになり、印刷媒体の第2面に印刷する画像の倍率補正を行えなくなる。
これに対し本実施形態では、差分が所定範囲を越える場合であっても、新たに算出された伸縮率の値をNVRAM104に保持し、印刷媒体の第2面に印刷する画像の倍率補正は、新たに算出された伸縮率の値よりも0に近い値(例えば1/2の値)を用いて行う。したがって、本実施形態によれば、予めNVRAM104に初期値を設定していなくても、印刷媒体の第2面に印刷する画像の倍率補正を適切に行うことができる。しかも、差分が所定範囲を越える場合は、新たに算出された伸縮率の値よりも0に近い値(例えば1/2の値)を用いて倍率補正を行うため、倍率補正された画像のサイズが段階的に目的とするサイズに近づくことになり、連続して印刷された印刷媒体の間の画像サイズの変動が目立ってしまう不都合も有効に抑制することができる。
伸縮率の値を用いた画像の倍率補正は、図1に示した露光ユニット5が書込光を照射することで形成される感光体ドラム6上の静電潜像のサイズ(書込光の照射範囲)を、伸縮率の値に応じて調整する処理となる。すなわち、伸縮率の値が正の値であれば、印刷媒体が伸長した分だけ静電潜像のサイズが大きくなるように、画像データに応じた書込光の照射範囲に対して補間ドットを離散的に追加する処理を行う。また、伸縮率の値が負の値であれば、印刷媒体が収縮した分だけ静電潜像のサイズが小さくなるように、画像データに応じた書込光の照射範囲から、離散的にドットを間引く処理を行う。両面印刷の第2面印刷時は通常、印刷媒体が収縮した状態となるため、離散的にドットを間引く処理が主に実施される。このような処理は、倍率補正部130の指令に応じてエンジン制御部105(図4参照)が露光ユニット5の動作を制御することで実現される。なお、伸縮率の値を用いた画像の倍率補正は、その伸縮率の値を算出する際にサイズが検知された印刷媒体の第2面に印刷する画像に対して行われるのではなく、その伸縮率の値が算出された後に露光を行う画像(例えば5〜8枚後の印刷媒体の第2面に印刷する画像)に対して実施される。このように、伸縮率の値を用いた画像の倍率補正は、画像データ自体を加工する画像処理(画像変倍処理)とは異なるものである。
ここで、図6および図7を用いて具体的な数値を例示しながら、本実施形態の倍率補正に関わる処理の具体例を説明する。なお、印刷媒体の副走査方向における伸縮率の値の算出および倍率補正と、印刷媒体の主走査方向における伸縮率の値の算出および倍率補正は同時に行われるが、以下では便宜上、副走査方向の処理と主走査方向の処理とを分けて説明する。また、以下の説明では、副走査方向および主走査方向ともに、差分の判定に用いる所定範囲を±0.05の範囲とする。この値は、本実施形態の目的に合わせて経験的に求めた値であるが、これに限られるものではない。また、以下の説明では、伸縮率算出部110が算出する印刷媒体の伸縮率の値を4枚分の個別伸縮率の移動平均としているが、これに限られるものではない。
まず、図6を用いて印刷媒体の副走査方向の処理について説明する。図6は、印刷媒体の副走査方向の伸縮率と倍率補正との関係を説明するための図である。
図6に示すように、1〜7枚目の印刷媒体に対して算出された副走査方向の個別伸縮率が、それぞれ−0.0962、−0.1634、−0.1250、−0.1009、−0.1297、−0.1009、−0.1250であったとする。伸縮率算出部110は4枚分の個別伸縮率の移動平均を算出するため、4枚目の印刷媒体の個別伸縮率が得られるまでは画像の倍率補正は行われず、また、NVRAM104が保持する値は0となっている。
4枚目の印刷媒体の副走査方向の個別伸縮率が得られると、伸縮率算出部110は、1〜4枚目の個別伸縮率の平均値を、この時点での印刷媒体の副走査方向における伸縮率の値として算出する。ここでは、−0.1214という値が算出される。この値が、記憶制御部120によってNVRAM104に格納され、次の値が算出されるまでNVRAM104に保持される。また、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1214と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値0との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が−0.1214となり、所定範囲である±0.05の範囲を越えているため、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1214の1/2の値である−0.0607を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の副走査方向の倍率補正を行う。
次に、5枚目の印刷媒体の副走査方向の個別伸縮率が得られると、伸縮率算出部110は、2〜5枚目の個別伸縮率の平均値を、この時点での印刷媒体の副走査方向における伸縮率の値として算出する。ここでは、−0.1298という値が算出される。この値が、記憶制御部120によってNVRAM104に格納され、次の値が算出されるまでNVRAM104に保持される。また、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1298と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1214との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が−0.0084となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1298を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の副走査方向の倍率補正を行う。
次に、6枚目の印刷媒体の副走査方向の個別伸縮率が得られると、伸縮率算出部110は、3〜6枚目の個別伸縮率の平均値を、この時点での印刷媒体の副走査方向における伸縮率の値として算出する。ここでは、−0.1141という値が算出される。この値が、記憶制御部120によってNVRAM104に格納され、次の値が算出されるまでNVRAM104に保持される。また、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1141と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1298との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が+0.0157となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1141を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の副走査方向の倍率補正を行う。
次に、7枚目の印刷媒体の副走査方向の個別伸縮率が得られると、伸縮率算出部110は、4〜7枚目の個別伸縮率の平均値を、この時点での印刷媒体の副走査方向における伸縮率の値として算出する。ここでは、−0.1141という値が算出される。この値が、記憶制御部120によってNVRAM104に格納され、次の値が算出されるまでNVRAM104に保持される。また、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1141と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1141との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が0となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1141を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の副走査方向の倍率補正を行う。
その後、後続の印刷媒体について副走査方向の個別伸縮率が得られるたびに、上記と同様の処理が繰り返される。
次に、図7を用いて印刷媒体の主走査方向の処理について説明する。図7は、印刷媒体の主走査方向の伸縮率と倍率補正との関係を説明するための図である。
図7に示すように、1〜7枚目の印刷媒体に対して算出された主走査方向の個別伸縮率が、それぞれ−0.1518、−0.1519、−0.1140、−0.1519、−0.1234、−0.1423、−0.1234であったとする。伸縮率算出部110は4枚分の個別伸縮率の移動平均を算出するため、4枚目の印刷媒体の個別伸縮率が得られるまでは画像の倍率補正は行われず、また、NVRAM104が保持する値は0となっている。
4枚目の印刷媒体の主走査方向の個別伸縮率が得られると、伸縮率算出部110は、1〜4枚目の個別伸縮率の平均値を、この時点での印刷媒体の主走査方向における伸縮率の値として算出する。ここでは、−0.1424という値が算出される。この値が、記憶制御部120によってNVRAM104に格納され、次の値が算出されるまでNVRAM104に保持される。また、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1424と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値0との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が−0.1424となり、所定範囲である±0.05の範囲を越えているため、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1424の1/2の値である−0.0712を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の主走査方向の倍率補正を行う。
次に、5枚目の印刷媒体の主走査方向の個別伸縮率が得られると、伸縮率算出部110は、2〜5枚目の個別伸縮率の平均値を、この時点での印刷媒体の主走査方向における伸縮率の値として算出する。ここでは、−0.1353という値が算出される。この値が、記憶制御部120によってNVRAM104に格納され、次の値が算出されるまでNVRAM104に保持される。また、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1353と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1424との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が+0.0071となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1353を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の主走査方向の倍率補正を行う。
次に、6枚目の印刷媒体の主走査方向の個別伸縮率が得られると、伸縮率算出部110は、3〜6枚目の個別伸縮率の平均値を、この時点での印刷媒体の主走査方向における伸縮率の値として算出する。ここでは、−0.1329という値が算出される。この値が、記憶制御部120によってNVRAM104に格納され、次の値が算出されるまでNVRAM104に保持される。また、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1329と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1353との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が+0.0024となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1329を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の主走査方向の倍率補正を行う。
次に、7枚目の印刷媒体の主走査方向の個別伸縮率が得られると、伸縮率算出部110は、4〜7枚目の個別伸縮率の平均値を、この時点での印刷媒体の主走査方向における伸縮率の値として算出する。ここでは、−0.1353という値が算出される。この値が、記憶制御部120によってNVRAM104に格納され、次の値が算出されるまでNVRAM104に保持される。また、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1353と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1329との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が−0.0024となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、伸縮率算出部110によって算出された値−0.1353を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の主走査方向の倍率補正を行う。
その後、後続の印刷媒体について主走査方向の個別伸縮率が得られるたびに、上記と同様の処理が繰り返される。
なお、以上の説明では、所定枚数(例えば4枚)分の個別伸縮率の移動平均が算出されるまでは倍率補正を行わないようにしているが、所定枚数分の個別伸縮率の移動平均が算出されるまでは、個別伸縮率の値を用いて倍率補正を行うようにしてもよい。
例えば図6に示した例では、1枚目の印刷媒体の副走査方向の個別伸縮率として−0.0962が算出されると、倍率補正部130は、この個別伸縮率の値−0.0962と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値0との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が−0.0962となり、所定範囲である±0.05の範囲を越えているため、倍率補正部130は、個別伸縮率の値−0.0962の1/2の値である−0.0481を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の副走査方向の倍率補正を行う。また、このときの個別伸縮率の値−0.0962が記憶制御部120によってNVRAM104に格納される。
次に、2枚目の印刷媒体の副走査方向の個別伸縮率として−0.1634が算出されると、倍率補正部130は、この個別伸縮率の値−0.1634と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.0962との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が−0.0672となり、所定範囲である±0.05の範囲を越えているため、倍率補正部130は、個別伸縮率の値−0.1634の1/2の値である−0.0817を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の副走査方向の倍率補正を行う。また、このときの個別伸縮率の値−0.1634が記憶制御部120によってNVRAM104に格納される。
次に、3枚目の印刷媒体の副走査方向の個別伸縮率として−0.1250が算出されると、倍率補正部130は、この個別伸縮率の値−0.1250と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1634との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が+0.0384となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、個別伸縮率の値−0.1250を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の副走査方向の倍率補正を行う。また、このときの個別伸縮率の値−0.1250が記憶制御部120によってNVRAM104に格納される。
次に、4枚目の印刷媒体の副走査方向の個別伸縮率が得られると、上述した例と同様に1〜4枚目の個別伸縮率の平均値−0.1214が算出される。そして、倍率補正部130は、この値−0.1214と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1250との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が+0.0036となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、平均値−0.1214を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の副走査方向の倍率補正を行う。また、このとき算出された値−0.1214が記憶制御部120によってNVRAM104に格納される。その後は上述した例と同様の処理となる。
また、図7に示した例では、1枚目の印刷媒体の主走査方向の個別伸縮率として−0.1518が算出されると、倍率補正部130は、この個別伸縮率の値−0.1518と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値0との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が−0.1518となり、所定範囲である±0.05の範囲を越えているため、倍率補正部130は、個別伸縮率の値−0.1518の1/2の値である−0.0759を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の主走査方向の倍率補正を行う。また、このときの個別伸縮率の値−0.1518が記憶制御部120によってNVRAM104に格納される。
次に、2枚目の印刷媒体の主走査方向の個別伸縮率として−0.1519が算出されると、倍率補正部130は、この個別伸縮率の値−0.1519と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1518との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が−0.0001となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、個別伸縮率の値−0.1519を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の主走査方向の倍率補正を行う。また、このときの個別伸縮率の値−0.1519が記憶制御部120によってNVRAM104に格納される。
次に、3枚目の印刷媒体の主走査方向の個別伸縮率として−0.1140が算出されると、倍率補正部130は、この個別伸縮率の値−0.1140と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1519との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が+0.0379となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、個別伸縮率の値−0.1140を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の主走査方向の倍率補正を行う。また、このときの個別伸縮率の値−0.1140が記憶制御部120によってNVRAM104に格納される。
次に、4枚目の印刷媒体の主走査方向の個別伸縮率が得られると、上述した例と同様に1〜4枚目の個別伸縮率の平均値−0.1424が算出される。そして、倍率補正部130は、この値−0.1424と、この値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値−0.1140との差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。ここでは、差分が−0.0284となり、所定範囲である±0.05の範囲内であるため、倍率補正部130は、平均値−0.1424を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の主走査方向の倍率補正を行う。また、このとき算出された値−0.1424が記憶制御部120によってNVRAM104に格納される。その後は上述した例と同様の処理となる。
印刷媒体の伸縮率の値として所定枚数分の個別伸縮率の平均値(移動平均)を算出する構成とすることで、印刷媒体のサイズが一時的に正しく検知されないことによる影響を抑制できる効果がある。しかし、移動平均が算出されるまで倍率補正を行わない構成では、倍率補正を行えない時間が長くなる不都合がある。これに対し、移動平均が算出されるまでは個別伸縮率を用いて倍率補正を行う構成とすることで、このような不都合を有効に回避することができる。
次に、図8を参照しながら、本実施形態の倍率補正に関わる処理の流れを説明する。図8は、倍率補正に関わる処理手順の一例を示すフローチャートである。この図8のフローチャートは、搬送路9に沿って搬送される印刷媒体ごとに実行される処理手順を示しており、複数の印刷媒体が連続して搬送されている場合、複数の印刷媒体のそれぞれに対応する処理が並行して実行される。なお、以下では、印刷媒体の副走査方向に対する処理と主走査方向に対する処理とを区別せずに説明する。
まず、媒体センサ21、エンコーダ22、およびCIS23のそれぞれから取り込んだ情報をもとに、印刷媒体の第1面印刷時に第1面のサイズが検知され(ステップS101)、その後、印刷媒体の第2面印刷時に第2面のサイズが検知される(ステップS102)。
次に、伸縮率算出部110が、ステップS101で検知された第1面のサイズと、ステップS102で検知された第2面のサイズとをもとに、印刷媒体の個別伸縮率を算出する(ステップS103)。
次に、伸縮率算出部110は、所定枚数(例えば4枚)分の印刷媒体の個別伸縮率を算出したか否かを判定する(ステップS104)。ここで、所定枚数分の個別伸縮率を算出していなければ(ステップS104:No)、所定枚数分の移動平均を算出できないためそのまま処理を終了する。一方、所定枚数分の個別伸縮率を算出している場合は(ステップS104:Yes)、伸縮率算出部110は、現時点の伸縮率の値として所定枚数分の個別伸縮率の平均値(移動平均)を算出する(ステップS105)。
次に、倍率補正部130が、NVRAM104が保持する伸縮率の値を読み出す(ステップS106)。そして、倍率補正部130は、ステップS105で算出された伸縮率の値と、ステップS106でNVRAM104から読み出した伸縮率の値との差分を算出する(ステップS107)。
次に、倍率補正部130は、ステップS107で算出した差分が所定範囲(例えば±0.05)内であるか否かを判定する(ステップS108)。そして、差分が所定範囲内であれば(ステップS108:Yes)、倍率補正部130は、ステップS105で算出された伸縮率の値を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の倍率補正を行う(ステップS109)。一方、差分が所定範囲を越えている場合には(ステップS108:No)、倍率補正部130は、ステップS105で算出された伸縮率の値の1/2の値を用いて、印刷媒体の第2面に印刷する画像の倍率補正を行う(ステップS110)。
その後、記憶制御部120が、ステップS105で算出された伸縮率の値をNVRAM104に格納し(ステップS111)、一連の処理が終了する。
以上具体的な例を挙げながら説明したように、本実施形態では、新たに算出された伸縮率の値と、その値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値との差分が所定範囲を越える場合であっても、新たに算出された伸縮率の値をNVRAM104に保持させる。また、その差分が所定範囲内である場合は、新たに算出された伸縮率の値を用いて第2面に印刷する画像の倍率補正を行い、差分が所定範囲を越えている場合は、新たに算出された伸縮率の値よりも0に近い値(例えば1/2の値)を用いて第2面に印刷する画像の倍率補正を行う。したがって、本実施形態によれば、予めNVRAM104に初期値を設定していなくても、印刷媒体の第2面に印刷する画像の倍率補正を適切に行うことができる。しかも、差分が所定範囲を越える場合は、新たに算出された伸縮率の値よりも0に近い値(例えば1/2の値)を用いて倍率補正を行うため、倍率補正された画像のサイズが段階的に目的とするサイズに近づくことになり、連続して印刷された印刷媒体の間の画像サイズの変動が目立ってしまう不都合も有効に抑制することができる。
なお、図5に示した画像形成装置1の機能的な構成要素は、上述したように、例えばCPU101(プロセッサ)が所定のプログラムを実行することによって実現することができる。この場合、上記プログラムは、例えば、ROM103などに予め組み込んで提供することができる。また、上記プログラムを、画像形成装置1にインストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
また、上記プログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由で画像形成装置1にダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。さらに、上記プログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
上記プログラムは、伸縮率算出部110、記憶制御部120、および倍率補正部130を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしては、例えばCPU101(プロセッサ)が、RAM102を主メモリ、ワークエリアなどとして利用して、ROM103などからプログラムを読み出して実行することにより、上記各部がRAM102上にロードされ、RAM102上に生成されるようになっている。
なお、これらの各部(伸縮率算出部110、記憶制御部120、および倍率補正部130)は、その一部または全部を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアを用いて実現することもできる。
本実施形態は、次に示される捉え方が可能である。すなわち、本実施形態の画像形成装置1は、両面印刷を行う画像形成装置であって、第1面印刷時に対する第2面印刷時の印刷媒体の伸縮率の値を算出する伸縮率算出部110と、算出された前記伸縮率の値を、新たな値が算出されるたびに更新しながらNVRAM104に保持させる記憶制御部120と、新たに算出された前記伸縮率の値と、該値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値との差分が所定範囲内である場合は、新たに算出された前記伸縮率の値を用いて第2面に印刷する画像の倍率補正を行い、前記差分が前記所定範囲を越えている場合は、新たに算出された前記伸縮率の値よりも0に近い値を用いて第2面に印刷する画像の倍率補正を行う倍率補正部130と、を備える。
また、本実施形態の画像形成装置1では、倍率補正部130が、前記差分が前記所定範囲を越えている場合に、新たに算出された前記伸縮率の値の1/2の値を用いて第2面に印刷する画像の倍率補正を行う。
また、本実施形態の画像形成装置1では、伸縮率算出部110が、連続して搬送される複数の印刷媒体の伸縮率を平均した値を、前記伸縮率の値として算出する。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、倍率補正部130(以下、第1実施形態と区別して「倍率補正部130’」と表記する。)が、新たに算出された伸縮率の値と、その値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値との差分が所定範囲を越える場合に、その差分の大きさに応じて補正回数を設定し、設定した補正回数の倍率補正を行うごとに差分値に等分に近づく値を用いた倍率補正を、設定した補正回数分繰り返して行う。なお、画像形成装置1の基本的な構成は上述した第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分のみを説明する。
図9は、倍率補正に関わる処理手順の一例を示すフローチャートである。この図9のフローチャートにおいて、ステップS201〜S209およびステップS213の処理は、図8に示したステップS101〜S109およびステップS111の処理と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態の倍率補正部130’は、ステップS208での判定の結果、差分が所定範囲を越えている場合に(ステップS208:No)、その差分の大きさに応じて補正回数を設定する(ステップS210)。この補正回数は、例えば、差分に相当する値を所定値で除算することにより求める。具体的には、例えば差分の値が−0.1であり、所定値が−0.03であったとすると、補正回数は3となる。ここで、所定値は、上述した所定範囲を定める値(上述した例では−0.05)よりも0に近い値が予め設定される。
次に、倍率補正部130’は、ステップS210で設定した補正回数分の倍率補正を行うが、このとき各回の倍率補正を、上記の所定値×回数によって求められる値を用いて行う(ステップS211)。例えば、差分の値が−0.1、所定値が−0.03であり、補正回数が3に設定された場合、倍率補正部130’は、1回目の補正時は所定値×1で求められる値−0.03を用いて倍率補正を行い、2回目の補正時は所定値×2である−0.06の値を用いて倍率補正を行い、3回目の補正時は所定値×1である−0.09の値を用いて倍率補正を行う。このように倍率補正部130’は、各回の倍率補正を行うごとに差分値に等分に近づく値を用いた倍率補正を、ステップS210で設定した補正回数分繰り返して行う。
以上の処理を行う間、倍率補正部130’は、倍率補正を行った回数がステップS210で設定した補正回数に達したか否かを判定し(ステップS212)、補正回数に達していなければ(ステップS212:No)、補正回数に達するまでステップS211に戻って倍率補正を行う。そして、補正回数に達すると(ステップS212:Yes)、記憶制御部120が、ステップS205で算出された伸縮率の値をNVRAM104に格納し(ステップS213)、一連の処理が終了する。なお、ステップS205で算出された伸縮率の値をNVRAM104に格納するタイミングは、倍率補正部130’が補正回数分の倍率補正を行う前であってもよい。
本実施形態では、倍率補正部130’が補正回数分の倍率補正を行っている間に、後続の印刷媒体のサイズ検知結果をもとに新たな伸縮率の値が算出されても、その新たな伸縮率の値を用いた倍率補正は行われない。また、倍率補正部130’が補正回数分の倍率補正を行っている間は、伸縮率算出部110が、新たな伸縮率の値を算出する処理を行わないようにしてもよい。
以上説明したように、本実施形態では、新たに算出された伸縮率の値と、その値が算出されるまでNVRAM104が保持していた値との差分が所定範囲を越える場合に、その差分に応じた補正回数分の倍率補正を、補正を行うごとに差分値に等分に近づく値を用いて行う。したがって、本実施形態によれば、倍率補正された画像のサイズをよりきめ細かく目的とするサイズに近づけることができ、連続して印刷された印刷媒体の間の画像サイズの変動が目立ってしまう不都合をさらに有効に抑制することができる。
本実施形態は、次に示される捉え方が可能である。すなわち、本実施形態の画像形成装置1では、倍率補正部130’が、前記差分が前記所定範囲を越えている場合に、前記差分の大きさに応じて補正回数を設定し、設定した補正回数の倍率補正を行うごとに前記差分の値に等分に近づく値を用いた倍率補正を、設定した補正回数分繰り返して行う。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、記憶制御部120(以下、第1実施形態と区別して「記憶制御部120’」と表記する。)が、伸縮率算出部110によって算出された伸縮率の値を、給紙テーブル8(図1参照)の複数のトレイごとにNVRAM104に保持させ、倍率補正部130(以下、第1実施形態および第2実施形態と区別して「倍率補正部130”」と表記する。)が、搬送中の印刷媒体を格納しているトレイに対応する伸縮率の値をNVRAM104から読み出して差分を算出する。また、本実施形態では、記憶制御部120’が、複数のトレイのいずれかが開放された場合に、NVRAM104が保持する値のうち、開放されたトレイに対応する値を消去(リセット)する。なお、画像形成装置1の基本的な構成は上述した第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分のみを説明する。
図10は、本実施形態の記憶制御部120’および倍率補正部130”の処理を説明するための図である。画像形成装置1が印刷媒体を格納するN個のトレイを備えている場合、NVRAM104には、図10に示すように、N個のトレイそれぞれに対応する記憶領域が確保される。
本実施形態の記憶制御部120’は、これらN個のトレイのうち、搬送中の印刷媒体が格納されているトレイを、例えば、印刷ジョブに応じて指定された使用トレイの情報などに基づき判定する。そして、記憶制御部120’は、伸縮率算出部110によって新たな伸縮率の値が算出されると、この新たに算出された伸縮率の値を、搬送中の印刷媒体が格納されているトレイに対応するNVRAM104の記憶領域に書き込んで、当該記憶領域の値を更新する。
同様に、本実施形態の倍率補正部130”は、例えば、印刷ジョブに応じて指定された使用トレイの情報などに基づいて、搬送中の印刷媒体が格納されているトレイを判定する。そして、倍率補正部130”は、伸縮率算出部110によって新たな伸縮率の値が算出されると、搬送中の印刷媒体が格納されているトレイに対応するNVRAM104の記憶領域から、新たに算出された伸縮率の値によって更新される前の値を読み出して、これらの差分を算出する。これにより、複数のトレイに異なる種類の印刷媒体が格納されている場合であっても、搬送中の印刷媒体に対応した適切な倍率補正の処理を行うことができ、使用トレイが切り替わっても適切な倍率補正の処理を継続的に行うことができる。
また、本実施形態の記憶制御部120’は、例えば図示しないトレイの開閉検知機構などの情報をもとに、いずれかのトレイが開放されたことを検知すると、NVRAM104が保持している値のうち、開放されたトレイに対応する記憶領域に保持されている値を消去する。つまり、記憶制御部120’は、NVRAM104が保持する値のうち、開放されたトレイに対応する値を0にリセットする。これは、開放されたトレイに新たにセットされる印刷媒体が、開放される前にセットされていた印刷媒体とは異なる種類のものとなる可能性があるためである。このように、NVRAM104が保持する値のうち、開放されたトレイに対応する値を消去(0にリセット)することで、開放されたトレイに異なる種類の印刷媒体がセットされても、その印刷媒体に対応した適切な倍率補正の処理を行うことができる。
本実施形態は、次に示される捉え方が可能である。すなわち、本実施形態の画像形成装置1は、印刷媒体を格納する複数のトレイを備え、記憶制御部120’は、算出された前記伸縮率の値を複数のトレイごとにNVRAM104に保持させ、倍率補正部130”は、搬送中の印刷媒体を格納しているトレイに対応する値をNVRAM104から読み出して前記差分を算出する。
また、本実施形態の画像形成装置1では、記憶制御部120’が、複数のトレイのいずれかが開放された場合に、NVRAM104が保持する値のうち、開放されたトレイに対応する値を消去する。
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明の一適用例を示したものである。本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。
例えば、上述した実施形態では、本発明を適用した画像形成装置の一例として、電子写真方式で印刷を行う画像形成装置1を例示したが、本発明は、例えばインクジェット方式で印刷を行う画像形成装置など、他の方式の画像形成装置に対しても有効に適用できる。インクジェット方式の画像形成装置の場合、印刷媒体の第1面に付着するインクの作用によって印刷媒体に伸縮が生じることがあり、このような印刷媒体の伸縮に応じた倍率補正を行う上で本発明は有効である。
また、上述した実施形態では、単体の装置として構成された画像形成装置1を例示したが、例えば、給紙ユニット、本体ユニット、後処理ユニットなどの複数のユニットを接続して構成される画像形成装置(画像形成システム)に対しても、本発明は有効に適用可能である。