以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1の実施の形態〉
[レーザ装置、面発光レーザアレイの構造]
まず、レーザ装置について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るレーザ装置の概略構成を例示する図である。図1を参照するに、第1の実施の形態に係るレーザ装置1は、主要な構成要素として、面発光レーザアレイ10、マイクロレンズアレイ20、集光レンズ30、ファイバ40等を有し、これらの構成要素が筐体内に封止された装置である。レーザ装置1には駆動用の電極50が配置されており、ケーブル80を介して外部の駆動電源90を電極50に接続し通電を行う。
電流は面発光レーザアレイ10に注入され、面発光レーザアレイ10からレーザ光が図1内の上方向に射出される。面発光レーザアレイ10から射出された光は個々の面発光レーザ素子に対応して配置されたマイクロレンズアレイ20によってコリメートされて平行光となる。平行光となったレーザ光は集光レンズ30によってファイバ40の下端に集光され、ファイバ40に入射する。ファイバ40に入射した光はファイバ40内を伝送し、ファイバ40の上端より取り出される。
次に、面発光レーザアレイの構造について説明する。図2は、第1の実施の形態に係る面発光レーザアレイを例示する平面図であり、図2(a)は面発光レーザアレイの全体図、図2(b)は面発光レーザアレイを構成するサブマウントのみを示した図である。又、図3は、第1の実施の形態に係る面発光レーザアレイを例示する断面図であり、図3(a)は図2(a)に示す面発光レーザアレイのA−A線に沿う断面図、図3(b)は図2(a)に示す面発光レーザアレイのB−B線に沿う断面図である。
図2及び図3を参照するに、第1の実施の形態に係る面発光レーザアレイ10は、素子部100と、サブマウント300とを有する。素子部100は、サブマウント300上に設けられており、平面視で十字型に設けられた充填材料400によって4つの領域101、102、103、及び104に分割されている。そして、領域101〜104の夫々には、4個の面発光レーザ素子200が設けられている。
なお、本実施の形態では、便宜上、面発光レーザアレイ10の上部コンタクト層208側を上側、サブマウント300側を下側とする。又、各部位の上部コンタクト層208側の面を上面、サブマウント300側の面を下面とする。但し、面発光レーザアレイ10は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物をメサ220周辺の底面220aの法線方向(レーザ光の射出方向)から視ることを指し、平面形状とは対象物をメサ220周辺の底面220aの法線方向(レーザ光の射出方向)から視た形状を指すものとする。
サブマウント300は、基体310と、電極321、322、323、324、及び325とを有する。電極321、322、323、324、及び325は、基体310上に互いに所定の間隙を有するようにパターニングされており、互いに電気的に独立している(互いに絶縁されている)。素子部100の領域101〜104は、サブマウント300の別々の電極上に実装されている。サブマウント300の材料としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁材料を用いることができる。電極321〜325の材料としては、例えば、金(Au)等の導電材料を用いることができる。
充填材料400は、素子部100の4つの領域101〜104の間において、サブマウント300の電極321〜325が形成されていない領域(基体310が露出する部分:以降、絶縁部と称する場合がある)と平面視で重複するようにダイボンドされている。言い換えれば、充填材料400は、サブマウント300の各電極間に露出する基体310と平面視で重複する位置に設けられている。
充填材料400は、素子部100側(後述の積層体側)から基体310側に突出した突出部を備え、充填材料400の突出部と基体310との間には間隙が設けられている。充填材料400の突出部の幅は、サブマウント300の各電極間に露出する基体310の幅(絶縁部の幅)よりも狭くなっている。
充填材料400の材料としては、例えば、安価かつ簡単なプロセスで製造可能なポリイミドを用いることができる。充填材料400の材料として、例えば、金めっきや銅めっき等の金属材料を用いてもよい。このような金属材料を用いることで、面発光レーザアレイ10で生じる熱の放熱性を向上させることができる。但し、充填材料400の材料として金属材料等の導電性の材料を用いる場合には、充填材料400が充填される部分には上部電極210を形成しないようにする必要がある。
領域101の各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201は、導電材501を介して、サブマウント300の電極322と接続されている。又、領域101の各面発光レーザ素子200には共通の上部電極210が設けられている。つまり、領域101の各面発光レーザ素子200は並列接続されている。
同様に、領域102の各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201は、導電材502を介して、サブマウント300の電極323と接続されている。又、領域102の各面発光レーザ素子200には共通の上部電極210が設けられている。つまり、領域102の各面発光レーザ素子200は並列接続されている。
同様に、領域103の各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201は、導電材503を介して、サブマウント300の電極324と接続されている。又、領域103の各面発光レーザ素子200には共通の上部電極210が設けられている。つまり、領域103の各面発光レーザ素子200は並列接続されている。
同様に、領域104の各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201は、導電材504を介して、サブマウント300の電極325と接続されている。又、領域104の各面発光レーザ素子200には共通の上部電極210が設けられている。つまり、領域104の各面発光レーザ素子200は並列接続されている。導電材501〜504の材料としては、例えば、金錫(AuSn)等のはんだ材料を用いることができる。
領域101の上部電極210は、ボンディングワイヤ601を介して、サブマウント300の電極321と接続されている。又、領域102の上部電極210は、ボンディングワイヤ602を介して、サブマウント300の電極322と接続されている。又、領域103の上部電極210は、ボンディングワイヤ603を介して、サブマウント300の電極323と接続されている。又、領域104の上部電極210は、ボンディングワイヤ604を介して、サブマウント300の電極324と接続されている。ボンディングワイヤ601〜604の材料としては、例えば、金(Au)や銅(Cu)等を用いることができる。
このように、領域101〜104の夫々には4個の面発光レーザ素子200が並列接続されている。そして、領域101内で並列接続された面発光レーザ素子200と、領域102内で並列接続された面発光レーザ素子200とは直列接続されている。又、領域102内で並列接続された面発光レーザ素子200と、領域103内で並列接続された面発光レーザ素子200とは直列接続されている。又、領域103内で並列接続された面発光レーザ素子200と、領域104内で並列接続された面発光レーザ素子200とは直列接続されている。
つまり、サブマウント300の電極321と電極325との間において、領域101、領域102、領域103、領域104の順で直列接続されている。例えば、サブマウント300の電極321を外部の駆動電源90(図1参照)の正電極、電極325を負電極に接続することによって、各面発光レーザ素子200が駆動されて発光する。
次に、面発光レーザ素子200について詳説する。各面発光レーザ素子200は、同一基板上でモノリシックに作製された素子であり、各面発光レーザ素子200の膜構成は同一である。各面発光レーザ素子200は、例えば、サブマウント300側がn型、射出側がp型であり、発振波長が808nm帯のレーザダイオードである。
面発光レーザ素子200は、主要な構成要素として、下部コンタクト層201、n型の半導体多層膜反射鏡(以降、下部半導体DBR又は下部反射鏡とする)202、下部スペーサ層203、活性層204、上部スペーサ層205、p型の半導体多層膜反射鏡(以降、上部半導体DBR又は上部反射鏡とする)206、選択酸化層207(207a:酸化領域、207b:非酸化領域)、上部コンタクト層208、絶縁層209、上部電極210等を有する。なお、211は発光領域を示している。
下部コンタクト層201は、例えば、ノンドープGaAsからなる層である。下部コンタクト層201の上面には、下部半導体DBR202が積層されている。下部半導体DBR202は、例えば、n−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層とを有する。下部半導体DBR202は、例えば、低屈折率層と高屈折率層とのペアがn−Al0.9Ga0.1Asから始まり、37.5ペア積層された層である。
下部半導体DBR202の各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた、例えば厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。上記各屈折率層の膜厚は何れも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
下部スペーサ層203は、下部半導体DBR202の上面に積層されている。下部スペーサ層203は、例えば、ノンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる層である。活性層204は、下部スペーサ層203の上面に積層されている。活性層204は、例えば、3層の量子井戸層と4層の障壁層とを有する3重量子井戸構造の活性層である。各量子井戸層は例えばGaAsからなり、各障壁層は例えばAl0.3Ga0.7Asからなる。上部スペーサ層205は、活性層204の上面に積層されている。上部スペーサ層205は、例えば、ノンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる層である。
下部スペーサ層203と活性層204と上部スペーサ層205とを含む部分は、共振器構造体(共振器領域)とも称され、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層204は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
上部半導体DBR206は、上部スペーサ層205の上面に積層されている。上部半導体DBR206は、例えば、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層と、p−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層とを有する。上部半導体DBR206は、例えば、低屈折率層と高屈折率層とのペアがp−Al0.9Ga0.1Asから始まり、24ペア積層された層である。
上部半導体DBR206の各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた、例えば厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。上記各屈折率層の膜厚は何れも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR206には、例えばp−AlAsからなる選択酸化層207(207a:酸化領域、207b:非酸化領域)が例えば厚さ30nmで挿入されている。選択酸化層207の挿入位置は、例えば、上部スペーサ層205から数えて2つ目の高屈折率層と低屈折率層のペア内とすることができる。なお、選択酸化層207は、上下に組成傾斜層や中間層等の層を含んでいてもよく、ここでは実際に酸化される層を合わせて選択酸化層と称する。
上部コンタクト層208は、上部半導体DBR206の最上部に積層されている。上部コンタクト層208は、例えば、p−GaAsからなる層である。又、上部コンタクト層208、上部半導体DBR206、上部スペーサ層205、及び活性層204の一部をエッチングで除去することにより、メサ220(メサ構造体)が形成されている。この場合、エッチングにより露出した下部スペーサ層203の上面がメサ220周辺の底面220aとなる。
更に、メサ220の上面の一部(発光領域211を除く上部コンタクト層208の上面の外周部)、メサ220の側面、及びメサ220周辺の底面220aを覆うように、絶縁層209及び上部電極210がこの順番で積層形成されている。絶縁層209の材料としては、例えば、SiN、SiON、SiO2等を用いることができる。上部電極210としては、例えば、Ti/Pt/Au等が積層された多層膜を用いることができる。
但し、図3(b)に示すように、B−B線に沿う断面においては、隣接する面発光レーザ素子200を構成する各層は、絶縁層209を除いて完全に分離されており、分離された部分には充填材料400が充填されている。なお、以上のように複数の半導体層が積層された構造体を、以降、便宜上「積層体」と称する場合がある。
[面発光レーザアレイの製造方法]
次に、面発光レーザアレイ10の製造方法について説明する。図4〜図6は、第1の実施の形態に係る面発光レーザアレイの製造工程を例示する図である。なお、図4〜図6において、図5(b)及び図6(b)は図3(a)に対応する断面を示しており、その他の図は図3(b)に対応する断面を示している。
まず、複数の半導体層が積層された「積層体」を有機金属気相成長法(MOCVD法)或いは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作製する。ここでは、MOCVD法を用いた例を示す。又、ここでは、一例として、III族の原料に、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)等を用い、V族の原料に、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いる。又、一例として、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いる。
具体的には、まず、図4(a)に示すように、基板240上に、エッチストップ層250、下部コンタクト層201、下部半導体DBR202、下部スペーサ層203、活性層204、上部スペーサ層205、上部半導体DBR206、及び上部コンタクト層208を順次成長する。基板240としては、例えば、表面が鏡面研磨面であるn−GaAs基板を用いることができる。又、エッチストップ層250としては、例えば厚さ100nm程度のn−Ga0.5In0.5Pを用いることができる。なお、上部半導体DBR206内には、例えばp−AlAsからなる選択酸化層207(図示せず)が設けられている。
次に、図4(b)に示すように、公知の写真製版技術を用いて、積層体の表面に所望のメサ220の平面形状に対応するように、例えば一辺の長さが約30μmの正方形のレジストパターン(図示せず)を形成する。そして、例えばCl2ガスを用いたECRエッチング法等で、積層体のレジストパターンに被覆されていない領域の一部の層をエッチングし、平面形状が約30μm四方の正方形のメサ220(メサ構造体)を形成する。この際、メサ220は、少なくとも選択酸化層207(図示せず)が露出するように形成する。エッチング後、レジストパターンを除去する。なお、エッチング底面(メサ220周辺の底面220a)は、例えば、下部スペーサ層203の上面とすることができる。
次に、図4(c)に示すように、メサ220が形成された積層体を酸化対象物として、水蒸気中で熱処理(酸化処理)を行う。ここでは、メサ220の外周部から選択酸化層207中のAl(アルミニウム)が選択的に酸化される。そして、メサ220の中央部に、Alの酸化領域207aによって囲まれた酸化されていない非酸化領域207bを残留させる。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサ220の中央部だけに制限する、酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域207bが電流通過領域(電流注入領域)である。領域207bの平面形状は、例えば、一辺の長さが約10μmの正方形とすることができる。
次に、図5(a)に示すように、図2(a)における充填材料400に対応する領域の積層体を除去して、充填材料400に対応するように溝100xを形成する。例えば、充填材料400が平面視で十字型であれば、平面視で十字型の溝100xを形成する。溝100xは、素子部100の隣接する領域間に、隣接する領域に設けられた積層体を厚さ方向に完全に分離するように設けられ、素子部を複数の領域に分割する。
具体的には、公知の写真製版技術を用いて、溝100xを形成したい部分のみを露出するレジストパターン(図示せず)を形成する。そして、例えばCl2ガスを用いたECRエッチング法等で、積層体のレジストパターンに被覆されていない領域の各層をエッチングし、更にエッチストップ層250及び基板240の一部をエッチングし、基板240に達する溝100xを形成する。
なお、基板240をエッチングする深さは、サブマウント300の電極321〜325の厚さよりも浅くなるよう制御する必要がある。例えば、サブマウント300の電極321〜325の厚さが夫々2μmであれば、基板240をエッチングする深さは2μm以下にする必要がある。
次に、図5(b)及び図5(c)に示すように、例えばプラズマCVD法を用いて、メサ220の上面及び側面、メサ220周辺の底面220a、並びに溝100xの内壁面(底面及び側面)を連続的に覆うように、光学的に透明な絶縁層209を形成する。絶縁層209の材料としては、例えば、SiN、SiON、SiO2等を用いることができる。そして、写真製版技術を用い、メサ220の上面の一部(上部コンタクト層208の上面の外周部を除く部分)に形成された絶縁層209を除去して窓開けを行い、コンタクト領域(上部コンタクト層208と上部電極210とが接続される領域)を形成する。
次に、蒸着法等により、例えば、チタン(Ti)、白金(Pt)、及び金(Au)を絶縁層209上に順次積層し、上部電極210を形成する。この際、上部コンタクト層208の上面の外周部を除く部分を露出するように上部電極210を形成し、発光領域211を設ける。発光領域211の平面形状は、例えば一辺の長さが約15μmの正方形とすることができる。なお、溝100x内には、上部電極210を形成しない。
次に、図6(a)に示すように、溝100x内、及び溝100x上のメサ220とメサ220との間に充填材料400を充填する。充填材料400としては、例えば、ポリイミド等を用いることができる。
次に、図6(b)及び図6(c)に示すように、積層体の上側にガラス基板等からなる搬送用基板900を貼り付け、基板240の裏面を所定の厚さまで研磨し、基板240及びエッチストップ層250をウェットエッチング法等により除去する。基板240のエッチャントとしては、例えば、H2O2、H2SO4、及びH2Oの混合液を用いることができる。エッチストップ層250のエッチャントとしては、例えば、HClとH2Oの混合液を用いることができる。基板240及びエッチストップ層250が除去されることで、表面が絶縁層209で覆われた充填材料400の一部が下部コンタクト層201から下側に突出して突出部となる。以上の工程により、充填材料400によって4つの領域101、102、103、及び104に分割された素子部100が作製される(但し、素子部100は搬送用基板900に貼り付けられている)。
次に、素子部100をサブマウント300上にダイボンドする(図示せず)。具体的には、サブマウント300の電極322〜325上の所定領域にはんだ材料等からなる導電材501〜504を形成する。そして、搬送用基板900に貼り付けられた素子部100を、サブマウント300の絶縁部と素子部100の充填材料400の突出部とが合うように、導電材501〜504を介して、サブマウント300上に配置する。
次に、熱を加えることにより、はんだ材料等からなる導電材501〜504を溶融させ、素子部100の領域101〜104の各下部コンタクト層201を、サブマウント300の電極322〜325に接合する。その後、搬送用基板900を剥離する。
なお、充填材料400の突出部がサブマウント300の絶縁部から外れた場合、下部コンタクト層201底面がサブマウント300の各電極に均一に貼り付けられない問題や、サブマウント300の各電極が短絡するという問題が生じるおそれがある。従って、充填材料400の突出部をサブマウント300の絶縁部に納めるように実装する必要がある。そこで、サブマウント300の絶縁部の幅は、充填材料400の突出部の幅に比べて十分に大きく作製しておくことが望ましい。
次に、領域101の上部電極210とサブマウント300の電極321とをボンディングワイヤ601を介して接続する(ワイヤーボンドを行う)。又、領域102の上部電極210とサブマウント300の電極322とをボンディングワイヤ602を介して接続する。又、領域103の上部電極210とサブマウント300の電極323とをボンディングワイヤ603を介して接続する。又、領域104の上部電極210とサブマウント300の電極324とをボンディングワイヤ604を介して接続する。ボンディングワイヤ601〜604の材料としては、例えば、金(Au)や銅(Cu)等を用いることができる。以上の工程により、面発光レーザアレイ10(図2及び図3参照)が作製される。
ここで、比較例を参照しながら、本実施に形態に係る面発光レーザアレイ10の奏する効果について説明する。図7は、比較例に係る面発光レーザアレイを例示する図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)に示す面発光レーザアレイのC−C線に沿う断面図である。
図7を参照するに、比較例に係る面発光レーザアレイ10Xでは、サブマウント300において基体310上には2つの電極331及び332が設けられている。サブマウント300上に設けられた素子部100Xは領域分割されていなく、1つの領域に複数(図7の例では16個)の面発光レーザ素子200が設けられている。
各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201は、導電材503を介して、サブマウント300の電極331と接続されている。又、各面発光レーザ素子200に共通の上部電極210は、ボンディングワイヤ610を介して、サブマウント300の電極332と接続されている。つまり、面発光レーザアレイ10Xでは、全ての面発光レーザ素子200が並列接続されている。又、面発光レーザアレイ10Xでは、サブマウント300上には基板700(半導体基板)を介して各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201が設けられている。
このように、比較例に係る面発光レーザアレイ10Xでは、全ての面発光レーザ素子200が並列接続されているため、前述のように、大型で電力の利用効率が低い大電流電源を用いて駆動する必要があり、装置の巨大化や装置全体の消費電力の増大等が問題となる。
一方、第1の実施の形態に係る面発光レーザアレイ10では、素子部100を4個の領域に分割し、各領域に配置された面発光レーザ素子200が直列接続されている。つまり、面発光レーザアレイ10では面発光レーザ素子200が並列接続された並列接続アレイが直列接続されているため、面発光レーザアレイ10Xのように全ての面発光レーザ素子200が並列接続されたアレイに比べ、駆動電流を約1/4に低減できる。これにより、低電流の電源を用いて面発光レーザアレイ10を駆動できるため、高出力化及び高効率化を実現可能となり、上記の消費電力の増大等の問題を回避できる。
又、比較例に係る面発光レーザアレイ10Xでは、サブマウント300上に基板700を介して各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201が設けられている。一方、第1の実施の形態に係る面発光レーザアレイ10では、サブマウント300上に基板を介さずに直接各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201が設けられている。
半導体基板は一般的にデバイス部分に比べ非常に膜厚が厚く、活性層204で発生する熱をサブマウント300へ排出することを阻害する。面発光レーザアレイ10では基板を完全に除去しているため、熱抵抗を大幅に低減することができ、サブマウント300への非常に高い放熱効果が得られる。そのため、より出力が高く信頼性の高い面発光レーザアレイを提供できる。
なお、基板を除去することにより面発光レーザアレイ10の機械的強度の低下が懸念されるが、充填材料400が充填されていることにより、面発光レーザアレイ10の機械的強度を確保できる。つまり、一般的に基板を除去すると面発光レーザアレイの機械的強度が低下するため基板の除去は困難であるが、面発光レーザアレイ10では充填材料400の存在により機械的強度を高めることができるため基板の除去が可能となる。
又、面発光レーザアレイ10では全ての面発光レーザ素子200がモノリシックに形成されているため、面発光レーザ素子200の位置関係を非常に高い精度で制御できる。これにより、図1に示すようなレーザ装置1を考えたとき、1枚のマイクロレンズアレイ20で分割された並列接続アレイを含めた全ての面発光レーザ素子200と結合できる。そのため、面発光レーザアレイ10とマイクロレンズアレイ20とのアライメントを一度で実施することができ、高効率なレーザ装置を実現することができる。
又、第1の実施の形態に係る面発光レーザアレイ10では、ダブルイントラキャビティ構造を採用していないため、電気抵抗を低くするために活性層近くの層のドーピング量を増加させる必要がない。そのため、光吸収が増加して効率を低下させる問題を回避でき、面発光レーザアレイ10全体の電力変換効率の低下を抑制可能となる。
又、第1の実施の形態に係る面発光レーザアレイ10では、n側の半導体多層膜反射鏡内のコンタクト層を露出させる構造を採用していないため、コンタクト層を必要以上に厚くしなくてもよい。そのため、高ドープの領域であるコンタクト層を厚くすることで光吸収が増加して効率を低下させる問題を回避でき、面発光レーザアレイ10全体の電力変換効率の低下を抑制可能となる。
〈第1の実施の形態の変形例〉
第1の実施の形態の変形例では、素子部の分割数等が第1の実施の形態とは異なる面発光レーザアレイの例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図8は、第1の実施の形態の変形例に係る面発光レーザアレイを例示する平面図である。なお、図8に示す面発光レーザアレイのD−D線に沿う断面図は図3(a)に相当し、E−E線に沿う断面図は図3(b)に相当するため、各断面図の図示は省略する。
図8を参照するに、第1の実施の形態の変形例に係る面発光レーザアレイ10Aでは、サブマウント300が3つの電極321、322、及び323を有し、素子部100が2つの領域101及び102に分割されている。そして、領域101及び102の夫々には、8個の面発光レーザ素子200が配置されている。
領域101の各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201(図示せず)は、導電材を介して、サブマウント300の電極322と接続されている。又、領域101の各面発光レーザ素子200には共通の上部電極210が設けられている。つまり、領域101の各面発光レーザ素子200は並列接続されている。
同様に、領域102の各面発光レーザ素子200の下部コンタクト層201(図示せず)は、導電材を介して、サブマウント300の電極323と接続されている。又、領域102の各面発光レーザ素子200には共通の上部電極210が設けられている。つまり、領域102の各面発光レーザ素子200は並列接続されている。
領域101の上部電極210は、ボンディングワイヤ601を介して、サブマウント300の電極321と接続されている。又、領域102の上部電極210は、ボンディングワイヤ602を介して、サブマウント300の電極322と接続されている。
このように、領域101、102の夫々には8個の面発光レーザ素子200が並列接続されている。そして、領域101内で並列接続された面発光レーザ素子200と、領域102内で並列接続された面発光レーザ素子200とは直列接続されている。
つまり、サブマウント300の電極321と電極323との間において、領域101、領域102の順で直列接続されている。例えば、サブマウント300の電極321を外部の駆動電源90(図1参照)の正電極、電極323を負電極に接続することによって、各面発光レーザ素子200が駆動されて発光する。
図8に示す面発光レーザアレイ10Aの場合も、図2及び図3に示す面発光レーザアレイ10と同様の効果を奏する。
このように、素子部100は充填材料400によって少なくとも2つの領域に分割されていればよい。すなわち、素子部100は充填材料400によって複数の領域に分割されていれば、分割数は第1の実施の形態のように4つでもよいし、第1の実施の形態の変形例のように2つでもよいし、3つや5つ以上であってもよい。これにより、各領域の面発光レーザ素子200が直列接続されるため、低電流での駆動でも高出力化が可能となる。そのため、大型で電力の利用効率が低い大電流電源を用いて駆動する必要がなくなり、装置の巨大化や装置全体の消費電力の増大等の問題を回避できる。
又、素子部100の各領域には少なくとも1つの面発光レーザ素子200が配置されていればよい。これにより、各領域の面発光レーザ素子200が直列接続されるため、上記の効果を奏する。但し、並列接続された複数の面発光レーザ素子200を各領域に配置すると(直列接続と並列接続を合わせて使うことにより)、更に以下の効果を奏する。
すなわち、各領域に配置される面発光レーザ素子200が1つずつの場合には、何れか1つでも面発光レーザ素子200がパターン不良等により電気的にオープンになった場合、面発光レーザアレイ10全体を駆動することが不可能になる。並列接続された複数の面発光レーザ素子200を各領域に配置することで、各領域の面発光レーザ素子200の一部が電気的にオープンになっても、全てが電気的にオープンにならなければ、面発光レーザアレイ10全体の駆動を継続できる。
この場合、各領域において並列接続される面発光レーザ素子200の数は第1の実施の形態のように4つでもよいし、第1の実施の形態の変形例のように8つでもよいし、これ以外の個数であってもよい。
なお、複数の面発光レーザ素子200が並列接続された並列接続アレイを複数個設け、各並列接続アレイを直列接続する形態に代えて、複数の面発光レーザ素子200が直列接続された直列接続アレイを複数個設け、各直列接続アレイを並列接続する形態としてもよい。この場合にも同様の効果を奏する。すなわち、一部の面発光レーザ素子200が電気的にオープンになっても、面発光レーザアレイ10全体の駆動を継続できる。
以上、好ましい実施の形態及びその変形例について詳説したが、上述した実施の形態及びその変形例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及びその変形例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上記の実施形態では発光部の材料としてAlGaAsを用いる例を示したが、発光部の材料はこれに限定されず、AlGaInAsやGaInPAs等の他の材料を用いてもよく、この場合にも同様の効果を奏する。又、各元素の組成も問わない。
又、上記の実施形態では、発光部の発振波長が808nm帯の場合を例示したが、これに限定されるものではない。材料を適切に選択することにより、発光部の発振波長を、例えば、650nm帯、780nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯とすることができる。