以下、MRI装置及びMRI方法の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
<本実施形態の構成>
図1は、本実施形態におけるMRI装置10の全体構成を示すブロック図である。ここでは一例として、MRI装置10の構成要素を寝台ユニット20、ガントリ30、制御装置40の3つに分けて説明する。
第1に、寝台ユニット20は、寝台21と、天板22と、寝台21内に配置される天板移動機構23とを有する。天板22の上面には、被検体Pが載置される。また、天板22内には、被検体PからのMR信号を検出する受信RFコイル24が配置される。さらに、天板22の上面には、装着型のRFコイル装置140が接続される接続ポート25が複数配置される。
寝台21は、天板22を水平方向(装置座標系のZ軸方向)に移動可能に支持する。天板移動機構23は、天板22がガントリ30外に位置する場合に寝台21の高さを調整することで、天板22の鉛直方向の位置を調整する。また、天板移動機構23は、天板22を水平方向に移動させることで天板22をガントリ30内に入れ、撮像後には天板22をガントリ30外に出す。
第2に、ガントリ30は、例えば円筒状に構成され、撮像室に設置される。ガントリ30は、静磁場磁石31と、シムコイルユニット32と、傾斜磁場コイルユニット33と、RFコイルユニット34とを有する。
静磁場磁石31は、例えば超伝導コイルであり、円筒状に構成される。静磁場磁石31は、後述の制御装置40の静磁場電源42から供給される電流により、撮像空間に静磁場を形成する。撮像空間とは例えば、被検体Pが置かれて、静磁場が印加されるガントリ30内の空間を意味する。なお、静磁場電源42を設けずに、静磁場磁石31を永久磁石で構成してもよい。
シムコイルユニット32は、例えば円筒状に構成され、静磁場磁石31の内側において静磁場磁石31と軸を同じにして配置される。シムコイルユニット32は、後述の制御装置40のシムコイル電源44から供給される電流により、静磁場を均一化するオフセット磁場を形成する。
傾斜磁場コイルユニット33は、例えば円筒状に構成され、シムコイルユニット32の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット33は、X軸傾斜磁場コイル33xと、Y軸傾斜磁場コイル33yと、Z軸傾斜磁場コイル33zとを有する。
本明細書では、特に断りのない限り、X軸、Y軸、Z軸は装置座標系であるものとする。ここでは一例として、装置座標系のX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、鉛直方向をY軸方向とし、天板22は、その上面の法線方向がY軸方向となるように配置される。天板22の水平移動方向をZ軸方向とし、ガントリ30は、その軸方向がZ軸方向となるように配置される。X軸方向は、これらY軸方向、Z軸方向に直交する方向であり、図1の例では天板22の幅方向である。
X軸傾斜磁場コイル33xは、後述のX軸傾斜磁場電源46xから供給される電流に応じたX軸方向の傾斜磁場Gxを撮像領域に形成する。同様に、Y軸傾斜磁場コイル33yは、後述のY軸傾斜磁場電源46yから供給される電流に応じたY軸方向の傾斜磁場Gyを撮像領域に形成する。同様に、Z軸傾斜磁場コイル33zは、後述のZ軸傾斜磁場電源46zから供給される電流に応じたZ軸方向の傾斜磁場Gzを撮像領域に形成する。
そして、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groは、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzの合成により、任意の方向に設定可能である。
上記撮像領域は、例えば、1画像又は1セットの画像の生成に用いられるMR信号の収集範囲の少なくとも一部であって、画像となる領域である。撮像領域は例えば、撮像空間の一部として装置座標系で3次元的に規定される。例えば折り返しアーチファクトを防止するために、画像化される領域よりも広範囲でMR信号が収集される場合、撮像領域はMR信号の収集範囲の一部である。一方、MR信号の収集範囲の全てが画像となり、MR信号の収集範囲と撮像領域とが合致する場合もある。
また、上記「1セットの画像」は、例えばマルチスライス撮像などのように、1のパルスシーケンスで複数画像のMR信号が一括的に収集される場合の複数画像である。ここでは一例として、撮像領域は、厚さの薄い領域であればスライスと称し、ある程度の厚みのある領域であればスラブと称する。
RFコイルユニット34は、例えば円筒状に構成され、傾斜磁場コイルユニット33の内側に配置される。RFコイルユニット34は、例えば、RFパルスの送信及びMR信号の受信を兼用する全身用コイルWB(後述の図3参照)や、RFパルスの送信のみを行う送信RFコイル(図示せず)を含む。
第3に、制御装置40は、静磁場電源42と、シムコイル電源44と、傾斜磁場電源46と、RF送信器48と、RF受信器50と、シーケンスコントローラ58と、演算装置60と、入力装置72と、表示装置74と、記憶装置76とを有する。
傾斜磁場電源46は、X軸傾斜磁場電源46xと、Y軸傾斜磁場電源46yと、Z軸傾斜磁場電源46zとを有する。X軸傾斜磁場電源46x、Y軸傾斜磁場電源46y、Z軸傾斜磁場電源46zは、傾斜磁場Gx、Gy、Gzを形成するための各電流をX軸傾斜磁場コイル33x、Y軸傾斜磁場コイル33y、Z軸傾斜磁場コイル33zにそれぞれ供給する。
RF送信器48は、シーケンスコントローラ58から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすラーモア周波数のRF電流パルスを生成し、これをRFコイルユニット34に送信する。このRF電流パルスに応じたRFパルスが、RFコイルユニット34から被検体Pに送信される。
RFコイルユニット34の全身用コイルWB、及び、受信RFコイル24は、被検体P内の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を検出し、検出されたMR信号は、RF受信器50に入力される。
RF受信器50は、受信したMR信号に所定の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化されたMR信号の複素データである生データを生成する。RF受信器50は、MR信号の生データを演算装置60(の画像再構成部62)に入力する。
シーケンスコントローラ58は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50の駆動に必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源46に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。シーケンスコントローラ58は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、傾斜磁場Gx、Gy、Gz及びRFパルスを発生させる。
シーケンスコントローラ58は、後述の演算装置60のシステム制御部61の指令に従って天板移動機構23を制御することで天板22を移動させ、これにより例えば、Moving Table法やStepping-Table法による撮像を実行可能である。
Moving Table法は、撮像時に天板22を連続移動することで移動方向に大きな撮像視野(FOV: field of view)を得る技術である。
Stepping-Table法は、ステーション毎に天板22をステップ移動させて3次元撮像を行う技術である。これらの技術は、全身撮像のように一度に撮像できない広領域の撮像を行う場合に用いられる。演算装置60は、天板22を移動して収集された複数の画像を合成処理によって互いに繋ぎ合わせることもできる。
演算装置60は、システム制御部61と、システムバスSBと、画像再構成部62と、画像データベース63と、画像処理部64と、プラン記憶部65と、較正スキャン設定部66とを有する。
システム制御部61は、本スキャンの撮像条件の設定、撮像動作及び撮像後の画像表示において、システムバスSB等の配線を介してMRI装置10全体のシステム制御を行う。上記撮像条件とは例えば、どの種類のパルスシーケンスにより、どのような条件でRFパルス等を送信し、どのような条件で被検体PからMR信号を収集するかを意味する。
撮像条件の例としては、撮像空間内の位置的情報としての撮像領域、フリップ角、繰り返し時間TR(Repetition Time)、スライス枚数、撮像部位、スピンエコー法やパラレルイメージング等のパルスシーケンスの種類などが挙げられる。
上記撮像部位とは、例えば、頭部、胸部、腹部などの被検体Pのどの部分を撮像領域として画像化するかを意味する。
上記「本スキャン」は、T1強調画像などの、目的とする診断画像の撮像のためのスキャンであって、位置決め画像用のMR信号収集のスキャンや、補正スキャン(correction scan)を含まないものとする。
補正スキャンは、例えば、「本スキャンの撮像条件の内の未確定の条件」や、「本スキャン後に再構成された画像データに対する補正処理の条件やデータ」などを決定するために、本スキャンとは別に行われるチューニング(tuning)用のスキャンを指す。プレスキャンとは、補正スキャンの内、本スキャン前に行われるものを指す。
以下に述べる較正スキャン(calibration scan)は、補正スキャンの下位概念であり、「画質に関わる条件であるが、マニュアルによる入力設定を受け付けない条件」を調整するスキャンを指す。
「画質に関わる条件」とは、例えば、(A)画像再構成後の輝度補正において用いられるRFコイル装置内の各要素コイルの感度分布マップや、(B)RFパルスの中心周波数や、(C) 静磁場補正用のオフセット磁場の強度分布、などである。これら(A), (B), (C)は、入力装置72及び表示装置74において「マニュアルによる入力設定を受け付けない条件」、即ち、ユーザによる直接的な入力設定が実行されない条件でもある。
較正スキャンは、本スキャン前に実行されるか、本スキャン後に実行されるかを問わない。較正スキャンには例えば以下のシーケンスが挙げられる。
第1に、静磁場補正用のオフセット磁場を算出する磁場計測シーケンスであり、これは本スキャン前に行われる。
第2に、本スキャンでのRFパルスの中心周波数を算出する中心周波数シーケンスであり、これは本スキャン前に行われる。
第3に、装着型のRFコイル装置内の各要素コイルの空間的な感度分布マップを生成する感度分布マップシーケンスであり、これは、本スキャン前に行っても、本スキャンの後に行ってもよい。
また、システム制御部61は、撮像条件の設定画面情報を表示装置74に表示させ、入力装置72からの指示情報に基づいて撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ58に入力する。また、システム制御部61は、撮像後には、生成された表示用画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
入力装置72は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。
画像再構成部62は、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数に応じて、RF受信器50から入力されるMR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。k空間とは、周波数空間の意味である。画像再構成部62は、k空間データに2次元又は3次元のフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで、被検体Pの画像データを生成する。画像再構成部62は、生成した画像データを画像データベース63に保存する。
なお、MRIの画像データは、例えば、各々の画素が画素値を有することで構成される。画素値は、例えば、その画素が表示される際の輝度レベル(その画素に対応する被検体領域から検出されたMR信号の強度)を示す。スライスの場合、MRIの画像データは、縦横の画素数が例えば位相エンコードステップ数×周波数エンコードステップ数となる。
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用画像データとして記憶装置76に保存する。
記憶装置76は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像条件や被検体Pの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
プラン記憶部65は、入力装置72を介して入力された撮像条件に基づいて、本スキャンの実行計画を生成し、保存する。
較正スキャン設定部66は、本スキャンの実行計画の途中に挿入される較正スキャンの条件を設定する。較正スキャンの条件の設定方法については、図4等を用いて後述する。
なお、演算装置60、入力装置72、表示装置74、記憶装置76の4つを1つのコンピュータとして構成し、例えば制御室に設置してもよい。
また、上記説明では、MRI装置10の構成要素をガントリ30、寝台ユニット20、制御装置40の3つに分類したが、これは一解釈例にすぎない。例えば、天板移動機構23は、制御装置40の一部として捉えてもよい。
或いは、RF受信器50は、ガントリ30外ではなく、ガントリ30内に配置されてもよい。この場合、例えばRF受信器50に相当する電子回路基盤がガントリ30内に配設される。そして、受信RFコイル24等によって電磁波からアナログの電気信号に変換されたMR信号は、当該電子回路基盤内のプリアンプで増幅され、デジタル信号としてガントリ30外に出力され、画像再構成部62に入力される。ガントリ30外への出力に際しては、例えば光通信ケーブルを用いて光デジタル信号として送信すれば、外部ノイズの影響が軽減されるので望ましい。
また、演算装置60内の各構成要素による「未確定の撮像条件の計算及び設定」や、「画像再構成処理や画像再構成後の処理に用いられる条件及びデータの計算(生成)」は、自動的に実行される。例えば、較正スキャン設定部66による較正スキャンの条件の設定や、システム制御部61による感度分布マップの生成などは、自動実行される。
但し、条件やデータ等の設定について、本実施形態は、演算装置60により完全に自動実行される形態に限定されるものではない。例えば、自動計算された条件を表示装置74上に表示し、入力装置72に対するユーザの確認入力の後、表示された条件に決定してもよい(ユーザの最終確認のみを除いて、自動化するように演算装置60を構成してもよい)。
図2は、図1のRFコイル装置140の構成の一例を示す平面模式図である。ここでは一例として、RFコイル装置140は、MR信号を受信する上半身に装着型のRFコイル装置である。図2に示すように、RFコイル装置140は、ケーブル124と、コネクタ126と、カバー部材142とを有する。
カバー部材142は、可撓性を有する材料によって折り曲げ等の変形が可能に形成されている。このように変形可能な材料としては、例えば特開2007−229004号公報に記載の可撓性を有する回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)などを用いることができる。
カバー部材142における、図2内の横方向の破線で2等分した上側半分の内部には、被検体Pの背面側に対応した例えば20個の要素コイル144が配設される。ここでは一例として、背面側では、被検体Pの背骨を考慮した感度向上の観点から、体軸付近に他の要素コイル144よりも小さい要素コイル144が配置される。カバー部材142の下側半分は、被検体Pの頭部、胸部及び腹部上に被さるように構成され、その内部には、被検体Pの前面側に対応した例えば20個の要素コイル146が配設される。なお、図2において、要素コイル144は太線で示し、要素コイル146は破線で示す。
また、RFコイル装置140は、制御回路(図示せず)と、RFコイル装置140の識別情報を記憶した記憶素子(図示せず)とをカバー部材142内に有する。コネクタ126が図1の接続ポート25に接続された場合、RFコイル装置140の識別情報は、この制御回路からMRI装置10内の配線を介してシステム制御部61に入力される。
図3は、図1のRF受信器50の詳細構成の一例を示すブロック図である。実際には複数のRFコイル装置を被検体Pに装着した状態で撮像可能であるが、ここでは一例としてRFコイル装置140のみが被検体Pに装着されるものとする。
RFコイルユニット34は、前述の全身用コイルWBを有する(図3の太線の四角枠に対応)。要素コイル144、146は、MR信号を受信するフェーズドアレイコイルとして機能する。
RF受信器50は、デュプレクサ(送受信切替器)174と、複数のアンプ176と、切替合成器178と、複数の受信系回路180とを備える。切替合成器178の入力側は、アンプ176を介して各要素コイル144、146に個別に接続されると共に、デュプレクサ174及びアンプ176を介して全身用コイルWBに個別に接続される。また、各受信系回路180は、切替合成器178の出力側に個別に接続される。
デュプレクサ174は、RF送信器48から送信されるRFパルスを全身用コイルWBに与える。また、デュプレクサ174は、全身用コイルWBで受信されたMR信号をアンプ176に入力し、このMR信号は、アンプ176により増幅されて切替合成器178の入力側に与えられる。また、各要素コイル144、146で受信されたMR信号は、それぞれ対応するアンプ176で増幅されて切替合成器178の入力側に与えられる。
切替合成器178は、受信系回路180の数に応じて、各要素コイル144、146及び全身用コイルWBから検出されるMR信号の合成処理及び切換を行い、対応する受信系回路180に出力する。このようにしてMRI装置10は、全身用コイルWB及び所望の数の要素コイル144、146を用いて撮像領域に応じた感度分布を形成する。
なお、ここでは一例として、RFコイル装置140がMRI装置10の一部であるとすするが、RFコイル装置140は、MRI装置10とは別個であってもよい。本実施形態では、RFコイル装置140に加えて、下肢用RFコイル装置などの各種の装着型RFコイル装置をMR信号の受信用に使用可能である。これら装着型RFコイル装置も同様、MRI装置10の一部として捉えてもよいし、MRI装置10とは別個として捉えてもよい。
次に、較正スキャン設定部66による較正スキャンのMR信号の収集領域の設定方法について説明する(以下、MR信号の収集領域を「信号収集領域」という)。以下の説明では、信号収集領域、撮像領域とはそれぞれ別の意味で、「信号収集範囲」、「撮像範囲」という用語を用いる。
信号収集範囲は、磁場計測シーケンスなどの1のシーケンスにおける全ての信号収集領域を包含する最小の直方体状の領域であるものとする(但し、直方体状の領域ではなくてもよい)。スライス選択方向にも位相エンコード傾斜磁場を印加することで3次元撮像のようにMR信号が収集される場合、信号収集範囲は、信号収集領域そのものとして捉えてもよい。
一方、2次元撮像のように複数のスライスからMR信号をそれぞれ収集する場合、これら全てのスライスを包含する最小の直方体状の領域が、信号収集範囲である。この場合、信号収集範囲におけるスライス間の領域は、厳密には信号収集領域ではなく、MR信号が収集されない。この場合、信号収集領域は各スライスの領域であるから、例えば信号収集範囲が確定後、スライス間隔、スライス厚、スライス枚数を決定することで各信号収集領域を3次元的に厳密に規定できる。
同様に、撮像範囲とは例えば、3次元撮像の場合には撮像領域と同義であり、複数のスライスを撮像する2次元撮像の場合、撮像される全スライスを包含する最小の(直方体状の)領域であるものとする。2次元撮像の場合、撮像範囲におけるスライス間の領域は、厳密には撮像領域ではなく、MR信号が収集されない。
較正スキャンの信号収集範囲が、本スキャンの撮像範囲を包含しない場合、即ち、狭すぎる場合、当該本スキャンから得られる画像の画質が劣化するおそれがある。例えば、感度分布マップが撮像範囲を包含できていないと、画像再構成後の輝度補正処理を適切に実行できない。
或いは、撮像範囲よりも狭い範囲で磁場計測シーケンスが実行され、撮像範囲よりも狭い範囲のオフセット磁場が算出されて静磁場に重畳印加される場合を考える。この場合、静磁場が均一化されるのは撮像範囲の一部のみとなるから、脂肪抑制プレパルスなどのRFパルスの効果が下がる等の影響があり、画質が劣化する。
反対に、較正スキャンの信号収集範囲が本スキャンの撮像範囲よりも広すぎる場合も、画質が劣化する。例えば、撮像範囲よりも広すぎる範囲で磁場計測シーケンスが実行され、その範囲でオフセット磁場が算出されて静磁場に重畳印加される場合を考える。通常、撮像範囲は、撮像空間における磁場中心近辺の一部である。従って、広すぎる範囲でオフセット磁場が算出された場合、その一部である撮像範囲に着目すれば、オフセット磁場の精度が粗くなる。撮像範囲におけるオフセット磁場の精度が落ちれば、撮像範囲の静磁場の均一性が損なわれ、画質が劣化する。
このように、較正スキャンの信号収集範囲は、広すぎても、狭すぎても画質を劣化させる。そこで、較正スキャン設定部66は、本スキャンの撮像範囲に基づいて、較正スキャンの信号収集範囲を適正範囲となるように算出する。
具体的には例えば、磁場計測シーケンス及び感度マップシーケンスの場合、較正スキャン設定部66は、撮像範囲を包含する最小サイズ、又は、当該最小サイズを所定割合で拡大したサイズとなる信号収集範囲を算出及び設定する。例えば、撮像範囲の各外縁が装置座標系の各軸に沿った直方体領域の場合、上記所定割合は、広すぎない範囲であり、信号収集範囲の縦、横、奥行きの各サイズを上記最小サイズに対して例えば5%或いは10%ずつ増加させるものである。
また、2次元撮像のように、複数のスライスからMR信号を収集する場合、較正スキャン設定部66は、本スキャンのFOV及び撮像位置に基づいて、較正スキャンの信号収集領域を適正範囲となるように算出する。なお、上記FOVは、例えばスライス撮像の場合には撮像領域の縦横のサイズであり、撮像位置は、例えばアキシャル断面のスライス撮像の場合にはZ軸方向のスライス位置である。即ち、FOVと、撮像位置との組み合わせにより、本スキャンの各スライスの撮像領域(撮像空間内の3次元座標において、どの範囲を画像化するか)が規定される。
具体的には例えば、較正スキャン設定部66は、位相エンコード方向及び読み出し方向のどちらにおいても、以下の2条件を満たす範囲での最小サイズ、又は、当該最小サイズを上記同様の所定割合で拡大したサイズとなる較正スキャンのFOVを設定する。
第1条件は、較正スキャンのFOVが本スキャンのFOVを包含することである。
第2条件は、較正スキャンのFOVが、位相エンコード方向及び読み出し方向の双方において、初期設定値よりも小さくならないことである。
次に、較正スキャンの各シーケンス毎に、信号収集領域について補足する。
第1に、磁場計測シーケンスの場合、較正スキャン設定部66は、例えば(スライスの法線方向における)撮像範囲の幅に対してスライス枚数が相対的に少なくならないよう、且つ、多すぎないようにスライス枚数を設定する。
例えば、頭部が撮像部位である場合、スライス枚数は初期設定値で20枚とすれば、胸部及び腹部が撮像部位である場合、スライス枚数は初期設定値で50枚とする。較正スキャン設定部66は、上記のように各パラメータの初期設定値を予め記憶し、これに基づいて当該パラメータの条件を設定する。ここでの「予め」とは、例えば、MRI装置10の電源投入前の意味であり、MRI装置10の製品出荷前に記憶させておけばよい。なお、以上の設定方法は一例にすぎず、本実施形態は上記設定方法に限定されるものではない。
図4は、磁場計測シーケンスにおけるFOVのサイズの設定方法の一例を示す模式的説明図である。ここでは一例として、複数のスライスが磁場計測シーケンスの各信号収集領域であるものとする。
図4の上段は、初期設定値のFOVを示す。この例では、位相エンコード方向(Phase Encode Direction)に30cm、読み出し方向(Readout Direction)に30cmが初期設定値として設定されている。
次に、本スキャンの撮像条件のプランニング中に、ユーザが例えば位相エンコード方向に20cm、読み出し方向に60cmのFOVを設定したとする。図4の中段は、この状態を示す。この場合、上記第1条件及び第2条件を満たすFOVの最小サイズは、位相エンコード方向に30cm、読み出し方向に60cmである。従って、較正スキャン設定部66は、そのように磁場計測シーケンスのFOVを設定する。図4の下段は、この状態を示す。
さらに、較正スキャン設定部66は、例えば以下の(1)式に基づいてスライス間隔GAPを算出する。
GAP={SSt−(Snu×Sth)}/(Snu−1) …(1)
(1)式において、SStは、スライスの法線方向における磁場計測シーケンスの信号収集範囲の幅であり、Snuはスライス枚数であり、Sthはスライス厚である。例えば、スライスの法線方向における信号収集範囲の幅が28cmであり、スライス厚Sthが1cmであり、スライス枚数Snuが10枚の場合、スライス間隔GAPは(1)式により2cmと算出される。
第2に、中心周波数シーケンスの場合、較正スキャン設定部66は、ここでは一例として、本スキャンの撮像範囲の中心を含むスライスと同じ領域となるように、信号収集領域を設定する。例えば、本スキャンにおいてZ軸方向に所定間隔ずつずらしてアキシャル断面31枚のスライスが撮像される場合、撮像範囲の中心を含むスライスとは、Z軸方向にマイナス側又はプラス側から16番目のスライスである。
なお、例えば本スキャンにおいてスライス毎にRFパルスの中心周波数が変更される前提の下では、較正スキャン設定部66は、本スキャンの全スライスと同じ複数のスライスを各信号収集領域としてもよい。但し、RFパルスの中心周波数については、上記のように代表スライスで較正しても十分な画質が得られるので、その方がSAR、撮像時間、及び、消費電力の観点からは望ましい。上記SARは、生体組織1kgに吸収されるRFパルスのエネルギー(比吸収率: Specific Absorption Ratio)の意味である。
第3に、感度分布マップシーケンスの場合、較正スキャン設定部66は、原則的には天板22の位置毎に(ステーション毎に)信号収集範囲及び信号収集領域を算出及び設定する。ここでの「ステーション毎」とは、以下の意味である。
例えば、第1ステーションで第1本スキャン、第2本スキャンが順に実行され、次に、第2ステーションで第3本スキャン、第4本スキャンが順に実行される場合を考える。この場合、第1及び第2本スキャンの撮像範囲を包含するように第1ステーションでの感度分布マップシーケンスの信号収集範囲が設定され、第3及び第4本スキャンの撮像範囲を包含するように第2ステーションでの感度分布マップシーケンスの信号収集範囲が設定される。
即ち、第1ステーション、第2ステーションにおいて感度分布マップシーケンスが少なくとも1回ずつ実行される。但し、第1ステーションにおいて感度分布マップシーケンス及び第1本スキャンが実行された後、第2本スキャンの撮像領域が変更された場合、変更によって感度分布マップが不足となる領域に対して、第1ステーションで感度分布マップシーケンスが追加的に実施され得る。第2ステーションについても同様である。
ここでは一例として、較正スキャン設定部66は、感度分布マップシーケンスにおけるマトリクス数を以下のように算出及び設定する。例えば、撮像範囲に配置された装着型のRFコイル装置の要素コイルの数が、撮像範囲の体積に対して相対的に多い場合、較正スキャン設定部66は256×256の画素数として設定する。要素コイルの数が相対的に多いほど、受信されるMR信号の信号レベルの分布をより細かく検出することで、より正確な感度分布マップを生成する方が望ましいからである。
反対に、撮像範囲に配置された要素コイルの数が、撮像範囲の体積に対して相対的に少ない場合、較正スキャン設定部66は、128×128の画素数として設定する。撮像範囲に配置された要素コイルの数が、撮像範囲の体積に対して相対的に多いか少ないかは、RFコイル装置の識別情報に基づくRFコイル装置内の要素コイル数と、撮像部位とに基づいて、較正スキャン設定部66が判定する。
1つのステーションにおける全ての本スキャンの各撮像範囲の合算領域のどの領域に対しても感度分布マップが存在しない場合、較正スキャン設定部66は、当該合算領域と同じ領域を「不足範囲」として算出し、この不足範囲を信号収集範囲として設定する。
「不足範囲」とは、同一の被検体に関して、本スキャンの撮像範囲と対比して感度分布マップが不足する領域、の意味である。
「同一の被検体に関して」とは、当該被検体の前の撮像において感度分布マップが存在しても、当該感度分布マップは、別の被検体の撮像時において感度分布マップとして用いることはできない点からの制約を意味する。
図5は、本スキャンの撮像範囲の一部に対して感度分布マップが存在する場合における、感度分布マップシーケンスの信号収集領域の算出方法の一例を示す説明図である。
図5の上段は、患者座標系のサジタル断面Sa1において設定された本スキャンの撮像範囲Im1(点線枠)及び感度分布マップが存在する範囲200(一点鎖線の枠)を上側に示し、そのサジタル断面Sa1のA1−A1方向の横断面であるアキシャル断面Ax1における撮像範囲Im1を点線枠で下側に示す。この例では、サジタル断面Sa1における撮像範囲Im1のおよそ右半分は、感度分布マップが存在する範囲200である。
図5の下段は、上記サジタル断面Sa1において較正スキャン設定部66が設定する感度分布マップシーケンスの信号収集範囲Ra1(斜線部分)及び感度分布マップが存在する範囲200(一点鎖線の枠)を上側に示し、上記アキシャル断面Ax1における信号収集範囲Ra1を点線枠で下側に示す。
ここでは一例として、上記患者座標系のX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。被検体Pの左右方向をX軸方向とし、腹側を前、背中側を後ろとした被検体Pの前後方向をY軸方向とする。また、およそ背骨延在方向に頭を上、足を下とした被検体Pの上下方向をZ軸方向とする。また、患者座標系のX−Y平面をアキシャル面、患者座標系のX−Z平面をコロナル面、患者座標系のY−Z平面をサジタル面とする。
また、ここでは一例として、ガントリ30内の磁場中心、患者座標系の原点、装置座標系の原点が互いに合致するものとし、被検体Pは、その体軸方向が装置座標系のZ軸方向に合致するように天板22上に載置されるものとする。即ち、X−Y平面(アキシャル面)、X−Z平面(コロナル面)、Y−Z平面(サジタル面)の面方向は、患者座標系と装置座標系とでそれぞれ合致するものとする。但し、以上は説明の簡単化のための一例にすぎず、患者座標系の装置座標系とで基準3軸の方向や原点を合致させる必要はない。
図5の場合、較正スキャン設定部66は、撮像範囲Im1から、感度分布マップが存在する範囲200を除外した領域を不足範囲として算出し、この不足範囲を感度分布マップシーケンスの信号収集範囲Ra1として設定する。図5の例では、サジタル断面Sa1における不足範囲(信号収集範囲Ra1)は、撮像範囲Im1のおよそ左半分である。
また、上記の例では「不足範囲」を信号収集範囲Ra1として設定するが、「不足範囲を若干拡張した領域」を信号収集範囲として設定してもよい。ここでの「若干拡張した」とは、感度分布マップシーケンスで用いられる要素コイル144、146の受信感度が及ぶ範囲内であって、不足範囲を包含する範囲であり、被検体外の領域が感度分布マップの外縁に含まれる程度に広いことが好ましい。
被検体外の領域が含まれることが好ましい理由は以下である。即ち、被検体外は空気であってMR信号の強度が低く、そのような被検体外の領域を感度分布マップに含めることで被検体Pの外縁の情報が得られ、どういった境界線から外側のMR信号を本スキャンにおいて無視してよいのかの情報が得られる。
また、上記の「受信感度が及ぶ範囲」とは例えば、当該範囲内から発せられたMR信号であれば、診断上問題のない画質となる程度の感度でMR信号を検出できる範囲、という意味である。
図6は、天板移動を伴う場合における、感度分布マップシーケンスの信号収集範囲の算出方法の一例をサジタル断面で示す説明図である。一般に、磁場中心付近において撮像すれば、画像が最も綺麗になる。そこで、毎回の本スキャンの撮像範囲が磁場中心を含むように、天板22の移動の都度、本スキャンの撮像範囲を設定することが望ましい。
図6の上段では、天板22の移動前において設定された本スキャンの撮像範囲Im2を実線枠で示す。また、図6の上段では、図5で述べた手法により、撮像範囲Im2に対して設定された感度分布マップシーケンスの信号収集範囲Ra2を点線枠で示す。図6の例では、撮像範囲Im2及び信号収集範囲Ra2は同一である。
ここでは一例として、本スキャンの撮像範囲、及び、感度分布マップシーケンスの信号収集領域は、直方体状の領域であり、その全8頂点の装置座標系での各座標によって範囲(位置情報)が定められているものと仮定する。
上記仮定の下、信号収集範囲Ra2に対する感度分布マップシーケンス、及び、撮像範囲Im2に対する始めの本スキャンが終了後、装置座標系のZ軸方向にΔZだけ、天板22が移動した場合を考える。この場合、較正スキャン設定部66は、記憶している感度分布マップシーケンスの信号収集範囲Ra2の位置情報を、天板22の移動に連動して修正する。
ここでは一例として、較正スキャン設定部66は、信号収集範囲Ra2の全頂点の装置座標系での各Z座標値を、ΔZだけずらす。
図6の下段では、上記のように天板22の移動後に修正された信号収集範囲Ra2を点線枠で示す。図6の下段では、天板22の移動後において新たに設定された別の本スキャンの撮像範囲Im3を一点鎖線の枠で示す。この場合、較正スキャン設定部66は、図5で述べた手法と同様にして、撮像範囲Im3に対する感度分布マップシーケンスの信号収集範囲Ra3を算出及び設定する。図6の例では、撮像範囲Im3のおよそ3/4が信号収集範囲Ra3となっている。
即ち、較正スキャン設定部66は、本スキャンの撮像範囲Im3と、感度分布マップシーケンスを実行済の信号収集範囲Ra2(感度分布マップが存在する領域)との重複領域を算出する。次に、較正スキャン設定部66は、撮像範囲Im3から当該重複領域を差し引いた領域を不足範囲として算出し、この不足範囲を感度分布マップシーケンスの信号収集範囲Ra3として設定する。このように本実施形態では、天板22が移動した場合、感度分布マップが重複しないようにする。
但し、上記のように、生成済みの感度分布マップの位置情報を天板22の移動に連動して修正し、重複を避けて感度分布マップシーケンスの信号収集範囲を算出する方法は、一例にすぎない。
天板22が移動後の本スキャンで収集されたMR信号に対して用いる感度分布マップとして、天板22の移動前に生成された感度分布マップを用いない構成としてもよい。
即ち、天板22の移動毎に当該天板位置で必要な全領域の感度分布マップを生成してもよい(この場合、天板22の移動に連動した感度分布マップの位置情報の修正は行われない)。
天板22の移動距離が大きいほど、フェーズドアレイコイル(この例では要素コイル144、146)と、磁場中心との相対的位置関係が変わり、各要素コイルの感度分布マップも変化する。従って、天板22の移動距離が大きい場合は特に、天板22の移動毎に当該天板位置で必要な全領域の感度分布マップを生成する方が望ましい。
以上が較正スキャンの信号収集領域の設定方法の主な説明であるが、較正スキャンの信号収集領域の設定のオプション機能について説明する。較正スキャンの信号収集領域については、どのパラメータから先に条件変更してもよいかの優先度と、どのパラメータは条件を変更しないかとを例えばプランニング段階で設定可能である。なお、較正スキャンの信号収集領域に関するパラメータとしては、FOVや撮像位置以外に、スライス間隔、スライス枚数、スライス厚、マトリクス数(位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数)などがある。
例えば、第1及び第2本スキャンに適合するように較正スキャンの信号収集領域が設定され、較正スキャン、第1本スキャンの実行後に、第2本スキャンのFOVが変更された場合を考える。この場合、較正スキャン設定部66は、第1本スキャンの前に実行された較正スキャンの信号収集領域を以下のように変更する。
第1の例として、最優先で変更される条件として「スライス枚数」が選択されていると仮定する。この仮定の下で、第2本スキャンの撮像領域が縮小され、磁場計測シーケンス及び感度分布マップシーケンスの信号収集範囲が縮小される場合、例えば31スライスで設定されていた信号収集範囲の内、両端の2スライスが削除される。これにより、撮像時間は短縮される。従って、撮像時間の短縮を優先したい場合、ユーザは、例えば、最優先で変更される条件としてスライス枚数を選択可能である。
第2の例として、最優先で変更される条件として「マトリクス数」が選択され、空間分解能を変更しないことが選択されていると仮定する。この仮定の下で、第2本スキャンの撮像領域が拡張されたことで較正スキャンのFOVが狭すぎとなり、その信号収集範囲が拡張される場合、空間分解能が変更されないようにマトリクス数が増加される。画質優先の場合、ユーザは、空間分解能を変更しないことを選択すればよい。
第3の例として、最優先で変更される条件として「スライス間隔」が選択されていると仮定する。この仮定の下で、第2本スキャンの撮像領域が拡張されたことにより、較正スキャンの信号収集範囲の奥行きを広げる場合、他の条件が変更されないようにスライス間隔が大きくされる。
第4の例として、最優先で変更される条件として「スライス厚」が選択されていると仮定する。この仮定の下で、第2本スキャンの撮像領域が拡張されたことにより、較正スキャンの信号収集範囲の奥行きを広げる場合、他の条件が変更されないように、スライス厚が大きくされる。
なお、較正スキャンの信号収集領域について最優先で変更される条件としては、例えば、上記のスライス間隔、スライス枚数、スライス厚、マトリクス数の4つの内の2つ以上の組み合わせでもよい。
<本実施形態の動作説明>
図7は、本実施形態におけるMRI装置10の動作の流れの一例を示すフローチャートの前半であり、図8はその後半である。以下、前述した各図を適宜参照しながら、図7及び図8に示すステップ番号に従って、MRI装置10の動作を説明する。
[ステップS1]プラン記憶部65(図1参照)は、入力装置72を介してMRI装置10に対して入力された撮像条件に基づいて、本スキャンの実行計画を生成し、これを保存する。本実施形態では一例として、実行計画は、第1及び第2ステーションにおいて本スキャンを以下の動作順で2回ずつ実行するものである。
即ち、第1ステーションでの較正スキャン、第1ステーションでの胸部のT1強調画像の第1本スキャン、第1ステーションでの胸部のT2強調画像の第2本スキャン、天板22の移動、第2ステーションでの較正スキャン、第2ステーションでの腹部のT1強調画像の第3本スキャン、第2ステーションでの腹部のT2強調画像の第4本スキャンの順に実行される。
従って、実行計画は、ステップS1の時点では、第1本スキャンの後、第2本スキャンの前に(第1ステーションでの2度目の)較正スキャンを実行することを含まない。但し、第2本スキャンのFOV及び撮像位置に応じて、第1本スキャンの後、第2本スキャンの前に上記2度目の較正スキャンが挿入され得る。第2ステーションについても同様である。
ここでは簡単化のため、各ステーションでの本スキャンが2つの例で説明するが、各ステーションで本スキャンが3回以上実行される場合、例えば以下のように実行計画が構成される。初めの本スキャン(この例では第1本スキャン)の開始前には、原則として較正スキャンが実行される。しかし、2回目以降の本スキャン(この例では第2本スキャン)の開始前には、較正スキャンの実行の要否がその都度判定され、判定結果に応じて較正スキャンの実行が挿入される場合と、挿入されない場合とがある。従って、実行計画の生成時点では、各ステーションで2回目以降の本スキャンの開始前における較正スキャンの実行は、実行計画には原則的には含まれない。
また、ユーザは、較正スキャンの信号収集領域に関してどのパラメータから先に条件変更してもよいかの優先度と、どのパラメータは条件を変更しないかとを、入力装置72を介して設定できる。但し、これは、MRI装置10側で条件が自動変更される場合にどれから変更してもよいかの優先度にすぎず、ユーザが較正スキャンの条件を直接的に入力設定することはできない。較正スキャンは、前述のように、画質に関わる条件であるが、マニュアルによる直接的な入力設定を受け付けない条件を調整するスキャンだからである。
この後、天板22に被検体Pが載置され、RFコイル装置140が被検体Pにセットされる。システム制御部61の制御の下、ガントリ30内の撮像空間の磁場中心近辺に第1ステーションの撮像部位(胸部)が位置するように、天板移動機構23が天板22を移動させる。
また、例えば特開2010−259777号公報などに記載のコイル位置計測シーケンスの実行後、要素コイルが選択される。具体的には例えば、全身用コイルWBからRFパルスを送信後、被検体Pに装着されたRFコイル装置140内の各要素コイル144、146からMR信号を収集し、収集されたMR信号に基づいてコイル位置決め用のプロファイルデータを生成する。
次に、プロファイルデータに基づいてRFコイル装置140内の要素コイル144、146毎の位置が算出される。この後、各要素コイル144、146の位置に基づいて、MR信号の受信に用いる要素コイル144、146をシステム制御部61が自動選択するか、又は、各要素コイル144、146の位置を表示装置74上に表示後に、MR信号の受信に用いる要素コイル144、146をユーザが選択する。
この後、ステップS2に進む。
[ステップS2]パイロットスキャンにより、第1ステーションにおいて胸部のロケータ画像が撮像される。パイロットスキャンとは、本スキャンとは別にロケータ画像用のMR信号を収集するスキャンである。ロケータ画像は診断用画像ではないので、パイロットスキャンのマトリクス数(位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数)は、粗めでよい。
ロケータ画像は、本スキャンの位置決め用の基準画像(参照画像)であり、例えば以下の2種類がロケータ画像として用いられる。第1に、例えばアキシャル断面、コロナル断面、サジタル断面等においてパイロットスキャンで収集されたMR信号から再構成される画像である。第2に、同一被検体の本スキャンのパルスシーケンスが実行済の場合、当該先のパルスシーケンスから得られる本スキャンの画像である。
この例では、T1強調画像の第1本スキャン前にはパイロットスキャンで得られる画像のみがロケータ画像として用いられる。一方、その後に実行されるT2強調画像の第2本スキャン前には、パイロットスキャンで得られた画像と、T1強調画像の第1本スキャンで得られた画像とがロケータ画像として用いられる。
ロケータ画像の撮像動作は以下のようになる。
まず、静磁場電源42により励磁された静磁場磁石31によって撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源44からシムコイルユニット32に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
次に、シーケンスコントローラ58は、システム制御部61から入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、被検体Pの撮像部位が含まれる撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイルユニット34からRFパルスを発生させる。
このため、被検体P内の核磁気共鳴により生じたMR信号がRFコイルユニット34及び受信RFコイル24により検出されて、RF受信器50に入力される。RF受信器50は、MR信号に前述の処理を施すことでMR信号の生データを生成し、これら生データを画像再構成部62に入力する。画像再構成部62は、MR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。画像再構成部62は、k空間データにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース63に保存する。
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置76に保存する。この後、システム制御部61は、表示用画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
この後、ステップS3に進む。
[ステップS3]ユーザは、表示されるロケータ画像に基づいて、第1及び第2本スキャンのFOV及び撮像位置を入力装置72を介して選択する。但し、ステップS3におけるFOV及び撮像位置の選択は、次の本スキャン(未実行で最先の本スキャン)に対してのみ行えば十分であり、第2本スキャンのFOV及び撮像位置を選択しなくてもよい。
この例では第1本スキャンはT1強調画像、第2本スキャンはT2強調画像であるから、両者のFOV及び撮像位置を揃える方が診断上、比較しやすい場合がある。従って、ユーザが選択した第1本スキャンのFOV及び撮像位置に合致するように、システム制御部61が第2本スキャンのFOV及び撮像位置を自動設定してもよい。
この後、ステップS4に進む。
[ステップS4]較正スキャン設定部66は、磁場計測シーケンス、中心周波数シーケンス、感度分布マップシーケンスの中から、どれを較正スキャンとして行うかを例えば以下のように選択する。
例えば、本スキャンのパルスシーケンスがパラレルイメージングの場合、較正スキャン設定部66は、感度分布マップシーケンスを較正スキャンとして行うように設定する。なお、パラレルイメージングは、複数の要素コイルを備えたフェーズドアレイコイルを用いてRFコイルを構成し、各要素コイルを用いてMR信号を収集する高速撮影技術である。パラレルイメージングでは、位相エンコード方向のデータ取得回数が間引かれ、感度分布マップに基づいて、間引かれた位相エンコードステップ数で生じる折り返しアーチファクトが補償される。
また、例えば肩用RFコイル装置などの局所RFコイル装置のように、パラレルイメージングを実行できないRFコイル装置をMR信号の受信に使用する場合、較正スキャン設定部66は、上記感度分布マップシーケンスを実行しないように設定する。
また、例えば静磁場の均一性が大きく乱れる場合や、静磁場均一性の精度が特に望まれる場合、較正スキャン設定部66は、磁場計測シーケンスを、較正スキャンとして行うように設定する。例えばマルチステーション撮像のように天板22が移動する場合、静磁場の均一性が乱れる。静磁場均一性の精度が特に望まれる場合とは、例えば、脂肪抑制を行う場合や心臓撮像において局所シミング(特開2007−209749号公報参照)が望まれるような場合である。
また、例えば、天板22のステップ移動がなく、被検体Pの同じ部位に何回も本スキャンが実行される場合、最初の本スキャンの前に行われた較正スキャンで得られたオフセット磁場を使うことで、2回目以降の本スキャンでは、磁場計測シーケンスを行わずに静磁場を補正できる。このような場合、較正スキャン設定部66は、磁場計測シーケンスが再実行されないように設定する。
また、例えばブレスト撮像では、脂肪組織が多く含まれるため、脂肪抑制プレパルスが本スキャンのパルスシーケンスに含まれることがある。脂肪抑制プレパルスが本スキャンに含まれる場合、較正スキャン設定部66は、中心周波数シーケンスを較正スキャンとして行うように設定する。
なお、上記判断基準は一例にすぎない。例えば、本スキャンの撮像条件に拘らず、磁場計測シーケンス、中心周波数シーケンスが実行されてもよい。ここでは一例として、同一被検体Pの最初の本スキャンであって感度分布マップが存在せず、感度分布マップシーケンス、磁場計測シーケンス、中心周波数シーケンスが較正スキャンとして実行されるものとする。
次に、較正スキャン設定部66は、第1本スキャンのFOV及び撮像位置に基づいて、各較正スキャンの信号収集領域を算出し、当該信号収集領域を算出した領域に設定する。信号収集領域の算出方法については、図4〜図6等を用いて説明済である。
この後、ステップS5に進む。
[ステップS5]ステップS4で信号収集領域が設定された各較正スキャンが第1ステーションで実行される。なお、較正スキャンの各シーケンスは時間的に別々に行われるが、磁場計測シーケンスと、中心周波数シーケンスは、1の較正スキャンとして実行してもよい。
ここで、磁場計測シーケンスは、中心周波数シーケンスよりも先に行うことが望ましい。これは、オフセット磁場に基づいて静磁場をより均一に補正した状態で中心周波数シーケンスを実行した方が、より正確な磁気共鳴スペクトラムデータが得られるからである。同様に、磁場計測シーケンスは、感度分布マップシーケンスよりも先に行うことが望ましい。被検体の大きさや撮像部位などによって静磁場の均一性が大きく乱れる場合、静磁場をより均一に補正した状態で感度分布マップシーケンスを行った方が、より正確な感度分布マップが得られるからである。
そこで、ここでは一例として、磁場計測シーケンス、中心周波数シーケンス、感度分布マップシーケンスの順に行うものとして、以下、順に説明する。
第1に、磁場計測シーケンスの一例について説明する。この技術は、例えば特許文献1に説明されているので、ここでは簡単に説明する。
シーケンスコントローラ58の制御に従って、静磁場電源42から静磁場磁石31に電流が供給され、撮像空間内に静磁場が印加される。ここでの静磁場磁石31への供給電流値は、仮に撮像空間内に何も存在しなければ均一な静磁場が発生するように制御されたものであり、これにより発生する静磁場を「基準静磁場」とする。撮像空間内に被検体Pが存在することで透磁率が周囲とは異なる領域が存在するので、撮像空間内の実際の静磁場の強度分布は不均一となる。
次に、シーケンスコントローラ58は、システム制御部61からの制御信号に基づいて、撮像空間の磁場強度分布が得られるように傾斜磁場Gx、Gy、Gz等を印加してスライスを選択し、RFパルスを送信する。この後、RF受信器50によりMR信号が検出され、検出されたMR信号はシーケンスコントローラ58を介してシステム制御部61に入力される。
これらMR信号はk空間の生データであるため、システム制御部61は、入力されたMR信号を実空間のデータに変換し、変換後のデータに基づいて撮像空間の磁場強度分布を計算し、これを計測値の磁場強度分布Bm(x、y、z)とする。(x、y、z)は、装置座標系での座標位置(x、y、z)の関数という意味である。この後、システム制御部61は、例えば次式により、静磁場を均一化するオフセット磁場の強度分布Bo(x、y、z)を算出する。
Bo(x、y、z)=Bi(x、y、z)−Bm(x、y、z) ・・・(2)
(2)式において、Bi(x、y、z)は、静磁場の磁場強度の目標分布であって、撮像空間に亘って均一的な分布である。即ち、オフセット磁場を印加しなければ計測値の磁場強度分布をBm(x、y、z)が静磁場として発生するところ、本スキャンでは、基準静磁場にオフセット磁場が重畳されることで、ほぼ目標分布の静磁場が得られる。
第2に、中心周波数シーケンスの一例について説明する。この較正スキャンの条件は、FOVの中心を含むスライスに対して磁気共鳴スペクトロスコピーを施すことが加わる以外、例えば、磁場計測シーケンスと同じ条件が用いられる。システム制御部61は、MRI装置10の各部を制御して、FOVの中心を含むスライスに対して磁気共鳴スペクトロスコピーを施すことで周波数スペクトラムデータを収集及び解析し、ピーク周波数等に基づいて水素原子核スピンの磁気共鳴周波数を検出する。
システム制御部61は、上記シーケンスの実行結果に基づいて、第1本スキャンで用いられるRFパルスの中心周波数を算出及び設定する。具体的には例えば、検出した水素原子核スピンの磁気共鳴周波数を、RFパルスの中心周波数とする。なお、中心周波数を検出するシーケンスについては、例えば特許文献3に記載の技術などの従来手法を用いればよい。
第3に、感度分布マップシーケンスの一例について説明する。この技術は、例えば特許文献2に説明されているので、ここでは簡単に説明する。
まず、被検体Pに装着されたRFコイル装置140、及び、全身用コイルWBを受信用コイルとして、ステップS4で設定された信号収集領域からMR信号が収集される。
そして、全身用コイルWBで検出されたMR信号から得られた画像データ(以下、WB画像データという)、及び、RFコイル装置140で検出されたMR信号から得られた画像データ(以下、主コイル画像データという)が、RFコイル装置140内の各要素コイル144、146の感度分布推定用の画像データとして取得され、画像データベース63に保存される。同様な画像データの取得が信号収集範囲全体に亘って実施され、ボリュームデータとして画像データベース63に保存される。
システム制御部61は、以上の実行結果に基づいて、信号収集範囲における各要素コイル144、146の感度分布を3次元感度分布マップデータとして生成し、記憶装置76に保存する。
具体的には例えば、主コイル画像データの信号強度分布をWB画像データの信号強度分布で除算し、両者の信号強度比をRFコイル装置140内の全要素コイル144、146の感度分布の推定値として算出する。同様な処理を各断面の画像データに対して実行すれば、3次元感度分布マップデータを生成できる。3次元感度分布マップデータは例えば、画像再構成部62による画像データの再構成後、輝度補正処理に用いられる。
なお、全身用コイルWBから得られたWB画像データは、基準として用いるものであるため、全身用コイルWBを受信用コイルとせずに、RFコイル装置140のみを受信用コイルとしても感度分布マップを生成可能である。
この後、ステップS6に進む。
[ステップS6]ステップS3までに設定された撮像条件と、ステップS5で算出及び設定されたRFパルスの中心周波数及びオフセット磁場とに基づいて、第1ステーションで第1本スキャンが実行される。即ち、ステップS2のパイロットスキャンの場合と同様に、MRI装置10の各部が動作して、第1本スキャンで収集されたMR信号がk空間データとして画像再構成部に保存される。
第1本スキャンの実行と並行して、画像再構成及び輝度補正が実行される。即ち、画像再構成部62は、k空間データに画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース63に保存する。
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、感度分布マップに基づく輝度補正処理等の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置76に保存する。
[ステップS7]システム制御部61は、ステップS6で生成された第1本スキャン(T1強調画像)の表示用画像データが示す画像と、ステップS2で生成されたロケータ画像とを表示装置74に表示させる。ユーザは、ロケータ画像と、T1強調画像とに基づいて、次に実行される第2本スキャンのFOV及び撮像位置を再設定(変更)できる。再設定されない場合、例えば、ステップS3で設定された条件で、第2本スキャンのFOV及び撮像位置が確定する。
第2本スキャンのFOV及び撮像位置が確定後、ステップS8に進む。
[ステップS8]較正スキャン設定部66は、第2本スキャンの前に磁場計測シーケンス、中心周波数シーケンス、感度分布マップシーケンスを実行すべきか否かをそれぞれ判定する。以下、判定方法について説明する。
第1に、中心周波数シーケンスについては、較正スキャン設定部66は、例えば撮像領域と、経過時間とを基準として実行の要否を判定する。例えば、第2の本スキャンの撮像領域がステップS7において変更された場合、第2の本スキャンの前に中心周波数シーケンスを実行することが望ましい。被検体Pにおける撮像領域が変われば、脂肪が少ない領域から脂肪が多い領域になる等の理由で、磁気共鳴の中心周波数が大きく変わる可能性があるからである。
また、傾斜磁場コイルユニット33の温度が上昇し易いシーケンスの場合、前回の中心周波数シーケンスの実行時からの経過時間が所定値を超えていれば、中心周波数シーケンスを再実行することが望ましい。温度が上昇し易いシーケンスは、例えばエコープラナーイメージングやダイナミック撮像のように、消費電力が大きいシーケンスである。
傾斜磁場コイルユニット33の温度が上昇すると、その近傍の鉄シム(図示せず)の温度が上昇して、鉄シムの透磁率が変化し、撮像空間の磁場が変化するため、被検体内の水素原子の磁気共鳴の中心周波数が変化するからである。なお、鉄シムは、撮像空間における静磁場の磁場強度分布を均一化するために、ガントリ30内に複数配置されるものである(図示せず)。
第2に、磁場計測シーケンスについては、較正スキャン設定部66は、例えば撮像領域と、経過時間とを基準として実行の要否を判定する。例えば、撮像領域が変更されておらず、前回の磁場計測シーケンスの実行時からの経過時間が所定値未満の場合を考える。
この場合、前回の磁場計測シーケンスの実行時からの被検体Pがあまり動いてないと推定できれば、較正スキャン設定部66は、磁場計測シーケンスを実行不要と判定する。本実施形態では天板22の移動がないが、前回の磁場計測シーケンスの実行時から天板22が移動した場合には、較正スキャン設定部66は、磁場計測シーケンスを実行すべきと判定する。
また、ユーザがステップS7においてFOVを再設定した場合、被検体Pがずれたことがその理由の候補として考えられるから、較正スキャン設定部66は、磁場計測シーケンスを実行すべきと判定する。
第3に、感度分布マップシーケンスについては、較正スキャン設定部66は、既に存在する感度分布マップと、第2本スキャンの撮像領域との対比により、実行の要否を判定する。既に存在する感度分布マップが第2本スキャンの撮像領域を包含する場合、実行不要と判定され、そうではない場合、実行すべきと判定される。
実行すべきと判定された較正スキャンがある場合、ステップS9に進む。
実行すべきと判定された較正スキャンがない場合、システム制御部61は、ステップS7までに設定された条件で第2本スキャンの条件を確定後、ステップS11に進む。
[ステップS9]較正スキャン設定部61は、ステップS8で実行すべきと判定された各較正スキャンの信号収集領域を、第2本スキャンのFOVと撮像位置とに基づいて、ステップS4と同様に算出及び設定する。
ここで、ステップS1において、較正スキャンの信号収集領域に関して優先的に変更される条件や、変更しない条件が選択されている場合、較正スキャン設定部61は、その選択内容に従って、ステップS5で実行された較正スキャンの信号収集領域を変更する。
例えば、最優先で変更される条件としてスライス枚数が選択されており、第2本スキャンの撮像領域が縮小され、感度分布マップシーケンスの信号収集範囲が縮小される場合を考える。この場合、例えば31スライスで設定されていた感度分布マップの信号収集範囲の内、両端の2スライスが削除される(前述の第1の例〜第4の例を参照)。
この後、ステップS10に進む。
[ステップS10]ステップS8で実行すべきと判定された各較正スキャンが、第1ステーションにおいて、ステップS9で設定された信号収集領域に対して実行される。
この後、システム制御部61は、ステップS10での較正スキャンの実行結果に基づいて、第2本スキャンで用いられるRFパルスの中心周波数の再設定、オフセット磁場の再設定、感度分布マップの追加的な生成、の少なくとも1つを実行する。また、システム制御部61は、上記較正スキャンとは関係のない第2本スキャンの撮像条件については、ステップS7までに設定された条件で確定させる。
この後、ステップS11に進む。
[ステップS11]ステップS10までに設定された撮像条件に従って、第1ステーションで第2本スキャンが実行され、第2本スキャンで収集されたMR信号がk空間データとして画像再構成部62に保存される。そして、ステップS6、S7と同様にして、画像再構成及び輝度補正が実行され、表示用画像データを記憶装置76に保存され、第2本スキャンの(T2強調画像)の表示用画像データが示す画像が表示装置74に表示される。
この後、図8のステップS12に進む。
[ステップS12]システム制御部61の制御の下、磁場中心近辺に第2ステーションの撮像部位(被検体Pの腹部)が位置するように、天板移動機構23が天板22を移動させる。システム制御部61は、天板22の移動に伴って、ステップS10までに生成済の感度分布マップの存在領域の座標位置を修正する。この修正方法については、図6で説明済である。
この後、パイロットスキャンにより、第2ステーションにおいて腹部のロケータ画像がステップS2と同様にして撮像され、表示される。
この後、ステップS13に進む。
[ステップS13]ユーザは、表示されるロケータ画像に基づいて、第3及び第4本スキャンのFOV及び撮像位置を入力装置72を介して選択する。但し、第4本スキャンのFOV及び撮像位置については、ユーザの選択によらずに、第3本スキャンのFOV及び撮像位置に合致するように自動設定されてもよい。
この後、ステップS14に進む。
[ステップS14]較正スキャン設定部66は、磁場計測シーケンス、中心周波数シーケンス、感度分布マップシーケンスの中から、どれを較正スキャンとして行うかをステップS4と同様にして選択する。このステップS14のように天板22の移動後では、撮像領域が変わるので、磁場計測シーケンス及び中心周波数シーケンスが選択される。また、胸部が磁場中心の第1ステーションにおいて、第2ステーションの撮像部位である腹部の感度分布マップが生成されていることは、通常、考え難い。従って、感度分布マップシーケンスも選択される。
次に、較正スキャン設定部66は、第3本スキャンのFOV及び撮像位置に基づいて、実行することが選択された各較正スキャンの信号収集領域を算出及び設定する。
この後、ステップS15に進む。
[ステップS15]ステップS5と同様にして、ステップS14で信号収集領域が設定された各較正スキャンが第2ステーションで実行される。これにより、第3本スキャンのRFパルスの中心周波数及びオフセット磁場が設定される。また、確定している第3本スキャンの撮像領域、及び、未確定であるが設定された第4本スキャンの撮像領域をカバーする感度分布マップが(第1ステーションの感度分布マップに対して追加的に)生成される。
この後、ステップS16に進む。
[ステップS16]ステップS13までに設定された撮像条件と、ステップS15で算出及び設定されたRFパルスの中心周波数及びオフセット磁場とに基づいて、第2ステーションで第3本スキャンが実行される。これにより、上記同様に第3本スキャンの表示用画像データが記憶装置76に保存される。
[ステップS17]システム制御部61は、ステップS16で生成された第3本スキャン(T1強調画像)の表示用画像データが示す画像と、ステップS12で生成されたロケータ画像とを表示装置74に表示させる。ユーザは、これらに基づいて、第4本スキャンのFOV及び撮像位置を再設定できる。再設定されない場合、例えば、ステップS13で設定された条件で、第4本スキャンのFOV及び撮像位置が確定する。
第4本スキャンのFOV及び撮像位置が確定後、ステップS18に進む。
[ステップS18]較正スキャン設定部66は、第4本スキャンの前に磁場計測シーケンス、中心周波数シーケンス、感度分布マップシーケンスを実行すべきか否かをステップS8と同様にそれぞれ判定する。
実行すべきと判定された較正スキャンがある場合、ステップS19に進む。
実行すべきと判定された較正スキャンがない場合、システム制御部61は、ステップS17までに設定された条件で第4本スキャンの条件を確定後、ステップS21に進む。
[ステップS19]較正スキャン設定部61は、ステップS18で実行すべきと判定された各較正スキャンの信号収集領域を上記同様に算出及び設定する。なお、ステップS1において、較正スキャンの信号収集領域に関して優先的に変更される条件や、変更しない条件が選択されている場合、較正スキャン設定部61は、ステップS9と同様に、その選択内容に従って、ステップS15で実行された較正スキャンの信号収集領域を変更する。
この後、ステップS20に進む。
[ステップS20]ステップS18で実行すべきと判定された各較正スキャンが、ステップS19で設定された信号収集領域に対して実行される。この後、ステップS10と同様に第4本スキャンの撮像条件が確定後、ステップS21に進む。
[ステップS21]ステップS20までに設定された撮像条件に従って、第2ステーションで第4本スキャン、画像再構成等が実行され、上記同様に第4本スキャンの画像が表示装置74に表示される。
なお、この例では、ステーション数は2つのみであるが、ステーション数が3つ以上の場合、ステーション毎にロケータ画像の撮像、較正スキャンが実行される。
以上が本実施形態のMRI装置10の動作説明である。
<本実施形態の効果>
従来技術では、例えば四肢関節などの整形領域の場合、コロナル、アキシャル、サジタルの3断面のいずれか1つのパイロットスキャンの信号収集領域を較正スキャンの信号収集領域として使用している。このため、感度分布マップシーケンス、中心周波数シーケンス、磁場計測シーケンスの信号収集領域が、その後に実行される撮像する本スキャンの撮像領域に対して狭すぎ、画質が劣化することがあった。
また、従来技術では、例えば乳房の撮像におけるパイロットスキャンの撮像領域は、関心領域に比べて大きめに設定されている場合が多かった。この場合、感度分布マップシーケンス、中心周波数シーケンス、磁場計測シーケンスの信号収集領域が、その後に実行される撮像する本スキャンの撮像領域に対して広すぎ、画質が劣化することがあった。
このため、従来技術において較正スキャンの信号収集領域を適正に設定するには、ユーザは、本スキャンの撮像領域を自ら考慮して、マニュアル操作によりパイロットスキャンのFOV、撮像位置、スライス枚数等を調整する手間をかけていた。較正スキャンは、前述の定義のように、画質に関わる条件であるが、マニュアルによる直接的な入力設定を受け付けない条件を調整するスキャンだからである。
そこで本実施形態では、各ステーションでの最初の本スキャンの直前の較正スキャンの信号収集領域は、図4〜図6で述べたように、実行計画に含まれるが未実行の本スキャンのFOVや撮像位置に基づいて適正に自動設定される(ステップS4、S14)。例えば、感度分布マップシーケンスについては、感度分布マップが存在する部分と重複しないように信号収集領域が設定される。
さらに、各ステーションにおいて、2回目以降の本スキャンの実行前には、較正スキャンの再実行の要否が適正に自動判定される(ステップS8、S18)。再実行される場合、その信号収集領域は、実行計画に含まれるが未実行の本スキャンのFOVや撮像位置に基づいて、上記同様に適正に自動設定される(ステップS9、S19)。
従って、本実施形態のMRI装置10では、ユーザに操作負担をかけることなく、較正スキャンの実行の要否、及び、較正スキャンの信号収集領域を自動的且つ適正に設定できる。これにより、較正スキャンが適正に実行され、適正に算出されたオフセット磁場で均一化された静磁場の下、適正に補正された中心周波数のRFパルスが送信され、MR信号が収集される。このように良好な条件の下で収集されたMR信号から再構成された画像データに対して、不足なく生成される感度分布マップにより輝度補正が実行される。この結果、ユーザの技量に拘らず、良好な画質が得られる。
また、天板22が移動した場合、撮像領域が変わるので中心周波数シーケンス及び磁場計測シーケンスの実行が選択され(ステップS14)、感度分布マップの存在領域の座標が修正される。従って、本実施形態のMRI装置10によれば、天板22の移動に拘らず、較正スキャンの実行の要否、及び、較正スキャンの信号収集領域を自動的且つ適正に判定できる。
さらに、較正スキャンの信号収集領域に関して優先的に変更される条件や、変更しない条件を選択可能であり、較正スキャン設定部61は、その選択内容に従って各ステーションでの2回目の較正スキャンの信号収集領域を1回目の信号収集領域から変更する。撮像時間の短縮を優先したい場合、ユーザは、例えば最優先で変更される条件としてスライス枚数を選択することができ、画質優先の場合、ユーザは、空間分解能を変更しないことを選択することができる。
即ち、画質優先、撮像時間短縮優先等のユーザの要望に応じて、較正スキャンの信号取集領域を自動設定できる。以上のMRI装置10の構成を総合すれば、スライス枚数、スライス厚、スライス間隔、マトリクス数などのパラメータに応じて、較正スキャンの信号取集領域を最適化しうる。
<本実施形態の補足事項>
[1]上記の図7及び図8で説明した実行計画は、一例にすぎず、さらに複雑化した実行計画であっても、較正スキャンの信号収集領域を上記同様に適正に設定可能である。
図9は、第1〜第6グループから構成される実行計画の一例を示すフローチャートである。図9の実行計画では、第1ステーションとして被検体Pの胸部が磁場中心近辺となるように天板22が移動後(ステップS41)、アキシャル断面、サジタル断面、コロナル断面の3断面に分けて、第1〜第3グループとしてT1強調画像及びT2強調画像が第1〜第6本スキャンとして撮像される(ステップS42〜S44)。
ここで、初回の撮像は、第1グループでのパイロットスキャンによる胸部のアキシャル断面、サジタル断面、コロナル断面のロケータ画像である。
ロケータ画像の撮像後、第1〜第6本スキャンのFOV及び撮像位置がユーザにより設定されるが、この設定によりFOV及び撮像位置が確定するのは、第1本スキャンのみである。
即ち、第1本スキャンの実行後、上記図7及び図8の実施形態と同様に第2本スキャンのFOV又は撮像位置が変更され、第2本スキャンの前に較正スキャンが挿入される可能性があるが、実行計画の生成時にはその較正スキャンは実行計画には含まれない。実行計画には含まれない較正スキャンが挿入されうる点は、第3本スキャンの直前、第4本スキャンの直前、第5本スキャンの直前、第6本スキャンの直前についても同様である。
第6本スキャンの後、第2ステーションとして被検体Pの腹部が磁場中心近辺となるように天板22が移動し(ステップS45)、同様に3断面に分けて第4〜第6グループとしてT1強調画像及びT2強調画像が第7〜第12本スキャンとして撮像される(ステップS46〜S48)。
第2ステーションでは、まず、第4グループで腹部の3断面のロケータ画像が撮像された後、第7〜第12本スキャンのFOV及び撮像位置が設定されるが、この設定によりFOV及び撮像位置が確定するのは、第7本スキャンのみである。即ち、上記同様に、第8〜第12本スキャンのそれぞれの直前において、実行計画には含まれない較正スキャンが挿入されうる。
上記のような実行計画における較正スキャンが挿入の要否の判定について、例えば以下の判定アルゴリズムを用いることができる。
図10は、較正スキャン設定部66による較正スキャンの挿入の要否の判定アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。以下、図10に示すフローチャートのステップ番号に従って、判定アルゴリズムの処理の流れを説明する。
[ステップS51]較正スキャン設定部66は、未実行、且つ、未確認の撮像シーケンスが実行計画内に残っているか否かを判定する。但し、通常の実行計画は、最初の本スキャン(図9の例では、第1本スキャン)の直前に較正スキャンが挿入されるように生成されるから、実行計画の最初の本スキャンは判定の対象外とされる。較正スキャンの挿入の要否を判定の上、挿入される較正スキャンの信号収集領域を設定するためのアルゴリズムだからである。
また、ここでの撮像シーケンスとは、画像生成用のパルスシーケンスであり、例えば本スキャンやパイロットスキャンである。また、上記「未確認」とは、当該撮像シーケンスの直前に較正スキャンを挿入すべきかの判定がされていないという意味である。
判定結果が肯定的な場合、未実行且つ未確認の撮像シーケンスの内、最先に実行されるものを判定対象に選択してから、ステップS52に進み、判定結果が否定的な場合、判定アルゴリズムは終了する。
[ステップS52]ステップS51で判定対象にされた撮像シーケンスが、パイロットスキャンである場合(ロケータ画像用である場合)、ステップS51に戻り、それ以外の場合、ステップS53に進む。
[ステップS53]較正スキャン設定部66は、ステップS51で判定対象にされた撮像シーケンスの撮像領域を取得する。この後、ステップS54に進む。
[ステップS54]現在の天板22の位置において、ステップS53で取得した撮像領域が磁場中心近辺にあるか否かを、較正スキャン設定部66は判定する。判定結果が肯定的な場合、ステップS55に進む。判定結果が否定的な場合、較正スキャンを挿入しても、現在の天板22の位置では良好な実行結果を望まないので、ステップS51に戻る。
[ステップS55]直前に実行された較正スキャンの信号収集領域を変更することで、ステップS51で判定対象にされた撮像シーケンスの前に較正スキャンを再実行するべきか否かを、較正スキャン設定部66は判定する。この判定基準は、図7のステップS8と同様である。較正スキャンを再実行するべきと判定された場合、ステップS56に進む。それ以外の場合、ステップS51に戻る。
[ステップS56]較正スキャン設定部66は、図7のステップS9と同様に、較正スキャンの信号収集領域を算出する。このとき、優先的に変更される条件、或いは、変更されない条件が選択されていれば、前述同様、較正スキャン設定部66は、その選択内容に従って、前回の較正スキャンの信号収集領域を変更することで、挿入される較正スキャンの信号収集領域を算出する。この後、ステップS57に進む。
[ステップS57]現在判定対象となっている撮像シーケンスが、実行計画における最後の撮像シーケンスである場合、ステップS58に進み、そうではない場合、ステップS51に戻る。なお、ここでは一例として、実行計画における最後の撮像シーケンスか否かを判定するが、図9のように複数グループからなる実行計画の場合、1グループ内の最後の撮像シーケンスか否かを判定するようにしてもよい。
[ステップS58]較正スキャン設定部66は、ステップS56で算出した領域で、新たに挿入される較正スキャンの信号収集領域を確定させる。この後、ステップS59に進む。
[ステップS59]ステップS58で確定された信号収集領域に対して、較正スキャンが実行される。この後、ステップS51に戻る。
図10の判定アルゴリズムは、図9の実行計画を含めて所望の実行計画に適用可能である。従って、図10の判定アルゴリズムは、あくまで一例にすぎないが、例えば実行計画が確定した時点や、実行計画の実行途中において、較正スキャン設定部66により実行される。
[2]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
ガントリ30内の各構成要素、及び、制御装置40の全体(図1参照)の全体が、本スキャンの撮像条件に従って、静磁場、傾斜磁場及びRFパルスの印加を伴って被検体Pの撮像部位を含む撮像領域からMR信号を収集する構成は、請求項記載の本スキャン実行部の一例である。
ガントリ30内の各構成要素、及び、制御装置40の全体が、傾斜磁場及びRFパルスの印加を伴ってMR信号を収集し、較正スキャンを実行する構成は、請求項記載の較正スキャン実行部の一例である。
較正スキャンの1つである中心周波数シーケンスの実行結果によって算出されるRFパルスの中心周波数の設定値は、本スキャンの撮像条件の一例である。
較正スキャンの1つである磁場計測シーケンスの実行結果によって算出され、静磁場を均一化するオフセット磁場は、本スキャンの撮像条件の一例である。
輝度補正において用いられる感度分布マップは、請求項記載の補正処理の条件の一例である。
較正スキャンの実行結果に基づいて、本スキャンの一部の撮像条件(未確定のもの)、及び、再構成された画像データに対する補正処理の条件を決定するシステム制御部61の機能は、請求項記載の条件決定部の一例である。
[3]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。