以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、上下とは重力方向における上方向と下方向とにそれぞれ対応する。また、車両のフロント側の方向を前方向といい、車両のリア側の方向を後方向という。
[第1実施形態]
図1は、自動車などの車両の前側に搭載される車両用のシート100の概略側面図である。車両の床面200には、車両の前後方向に延在する固定レールとしてのロアレール3が前後一対のブラケット9を介して固定されている。また、ロアレール3には、前後方向に移動できる可動レールとしてのアッパレール4が、ロアレール3に対し相対的に移動可能に取り付けられている。
ロアレール3及びアッパレール4は、シート100の前後方向に直交する幅方向において、それぞれ対をなして配設されている。そして、一対のアッパレール4にはシートクッション7が固定されている。このシートクッション7は、アッパレール4に固定された状態で、ロアレール3に対して前後方向に移動可能である。なお、ロアレール3に対するアッパレール4の移動は、後述するロックレバー22によって規制される。そのため、シート100には、ロックレバー22による規制を解除するためのロック解除ハンドル6が設けられている。また、シートクッション7の後部には、回動軸5周りに揺動可能に支持されたシートバック8が設けられている。このシートバック8は、不図示の調整レバーを操作することにより、図1に点線で示す前傾位置へと前倒しすることができる。
次に、車両用のシートスライド装置1について、図2及び図3に基づいて説明する。図2は、シートスライド装置1の概略分解斜視図である。また、図3は、シートスライド装置1を前後方向に切った断面を示す概略断面図である。なお、左右のロアレール3は、同様の構造を備えており、左右のアッパレール4も、同様の構造を備えている。そのため、以下の説明においては、必要な場合を除いてシートスライド装置1の前方に向かって右側の構造について説明する。
図2に示すように、シートスライド装置1は、車両に固定されるロアレール3と、車両のシート100を保持すると共に、ロアレール3に対し相対的に移動可能なアッパレール4とを備える。ロアレール3は、前後方向(長手方向)に延在する底壁部32と、底壁部32の幅方向における両端部から上方向に延在する一対の側壁部31とを有している。そして、各側壁部31の先端には、ロアレール3の幅方向における内側に向かって折り返された折返し壁部33が形成されている。また、アッパレール4は、前後方向(長手方向)に延在する蓋壁部42と、蓋壁部42の幅方向における両端部から下方向に延在する一対の側壁部41とを有している。そして、側壁部41の先端には、幅方向における外側に向かって折り返された折返し壁部43が形成されている。
このロアレール3及びアッパレール4は、略U字状の断面形状を有しており、ロアレール3及びアッパレール4の開口側が互いに突き合わされるように組み合わされる。そして、組み合わせた際には、アッパレール4の折返し壁部43が、ロアレール3の折返し壁部33の内側に配置される。これにより、アッパレール4は、ロアレール3の上方向に抜け止めされる。
ロアレール3は、前後方向に並んだ複数の円形の係止孔34を有しており、係止孔34は、所定の間隔をもって底壁部32に形成されている。また、ロアレール3は、前後方向に並んだ複数の四角形のロック孔35を有しており、ロック孔35は、所定の間隔をもって側壁部31の折返し壁部33に形成されている。一方、アッパレール4は、前後方向に並んだ複数の内側挿通孔44と外側挿通孔45とを有している。そして、内側挿通孔44は、所定の間隔をもって側壁部41に形成されており、外側挿通孔45は所定の間隔をもって折返し壁部43に形成されている。なお、内側挿通孔44及び外側挿通孔45は、ロアレール3のロック孔35と位置設定をして形成されており、ロック孔35を介して、後述するロック爪23を内側挿通孔44及び外側挿通孔45に挿入することができる。例えば、図2においては、それぞれ4個の内側挿通孔44及び外側挿通孔45が、前後方向で連続して並んだ任意の4個のロック孔35と対面するようにそれぞれの間隔が設定されている。
側壁部41と蓋壁部42との接続部分には、内側挿通孔44及び外側挿通孔45と対応する位置に貫通孔46が形成されている。そして、一対のブラケット21が、アッパレール4の蓋壁部42にリベットにより締結される。それぞれのブラケット21には、貫通孔46の前端及び後端の位置に合わせて軸受片が形成されている。そして、それぞれの軸受片には、不図示のロックレバーピンが挿入される穴が形成されている。これにより、ブラケット21は、ロアレール3に対するアッパレール4の移動を規制するロック部材としてのロックレバー22を支持している。また、ロックレバー22は、ブラケット21によってロックレバーピンを介して回動可能に支持されている。
ロックレバー22は、前後方向に所定の間隔をもって並んだ複数のロック爪23を有している。このロック爪23は、本体部から下方に延出して外側に折り返されるように形成されている。そして、アッパレール4の移動が規制されている状態(ロック状態)では、ロック爪23が、外側挿通孔45と、内側挿通孔44と、ロック孔35とにこの順で挿入されている。なお、ロック爪23は、解除ハンドル6の操作に伴いロックレバーピンを中心として回動する。これにより、ロック爪23を、外側挿通孔45、内側挿通孔44及びロック孔35に挿入してアッパレール4の移動を規制し、又はこれらからロック爪23を抜き出して該規制を解除することができる。
また、ロックレバー22には、ロックスプリング24が係止されている。そして、ロックレバー22は、ロック爪23に向かって回転するように、該ロックスプリング24によって常時付勢されている。また、ロックレバー22へは、解除ハンドル6に連結された連結棒25を介して力が伝達される。これにより、解除ハンドル6を操作した力がロックレバー22に伝達されると、ロックレバー22は、ロックスプリング24の付勢力に抗してロアレール3の外方に向かって回転する。その結果、ロック爪23がロック孔35と、内側挿通孔44と、外側挿通孔45とからこの順で抜き出され、ロック状態が解除される。
続いて、図3に示すように、ロアレール3の底壁部32には、メモリ部材としてのメモリピース10が載置される。このメモリピース10は、スライダ11と、付勢手段としてのコイルスプリング12(図4A)と、メモリピン13とを備えている。また、メモリピース10は、前方移動において、ブラケット9に固着された前側ストッパピン91によって移動範囲が制限されている。また、後方移動において、メモリピース10は、ロアレール3の底壁部32に締結された後側ストッパピン30によって移動範囲が制限されている。
メモリピン13は、ロックレバー22による規制の解除に連動してロアレール3の係止孔34に挿入されると共に、係止孔34に挿入された状態でアッパレール4の移動を制限する。また、スライダ11は、アッパレール4の両側壁部41間の距離よりも小さい幅を有しており、略ブロック状に成形されている。そして、スライダ11は、ロアレール3とアッパレール4との間の内部空間内に配置され、ロアレール3の底壁部32に対して前後方向に摺動することができる。さらに、スライダ11の前側端部には、前側当接部111(図3)が設けられており、スライダ11の後側端部には、後側当接部112が設けられている。この後側当接部112の上側には、後方に向かうにつれて高さが低くなるように傾斜面が形成されている。
後述する図4A及び図4Bに示すように、スライダ11には、コイルスプリング12が収容されており、メモリピン13は、コイルスプリング12に挿入されている。このメモリピン13は、スライダ11の内側形状に合わせた略四角柱状の形状を有する頭部131と、頭部131から下方に突出して略四角柱状の形状を有する係止部132とを有する。この頭部131は、コイルスプリング12上に載置され、係止部132は、コイルスプリング12内に挿入される。
図3に示すように、メモリピース10上に配置されたアッパレール4には、係止壁部471を有するストッパブラケット47が固定されている。また、ストッパブラケット47は、爪状の保持部472を有し、保持部472は、後方に向かうにつれて下方に向かうように傾斜している傾斜面を有する。さらに、アッパレール4には、ストッパブラケット47の後方に隣接して、メモリ保持ブラケット48が固定されている。そして、メモリピン13がロアレール3に固定されていない場合、保持部472と係止壁部471は、メモリピン13の頭部131を挟持する。これにより、アッパレール4が前方に移動するとき、メモリピース10も、保持部472と係止壁部471に挟持されたメモリピン13と共に前方に移動する。
メモリピース10が前側ストッパピン91に当接して前方移動が規制されると、アッパレール4の更なる前方への移動により、メモリピン13の後側面が保持部472の傾斜面に押圧される。これにより、メモリピン13は、保持部472によってコイルスプリング12の付勢力に抗して下方に移動する。ここで、メモリピース10が前側ストッパピン91に当接する位置では、ロアレール3の係止孔34の上方にメモリピン13が位置する。そのため、メモリピン13が下方に移動すると、メモリピン13の先端にある係止部132が係止孔34を貫通する。その後、アッパレール4が更に前方に移動すると、メモリピン13の頭部131の上面がメモリ保持ブラケット48の下面に押圧される。これにより、メモリピース10は、ロアレール3の底壁部32に固定され、前方への移動が規制される。すなわち、アッパレール4は、メモリピース10をロアレール3に残した状態で、前方へ移動することができる。
その後、アッパレール4が後方に移動するとき、係止壁部471がロアレール3に固定されたメモリピース10の前側当接部111に当接すると、ロアレール3に対するアッパレール4の後方への移動が一時的に規制される。このとき、メモリピン13の頭部131は、係止壁部471と保持部472との間に位置するため、コイルスプリング12に付勢されてメモリピン13が上方に移動する。これにより、係止部132が係止孔34から抜け出し、メモリピース10の固定が解除される。そして、アッパレール4が更に後方に移動する際には、保持部472と係止壁部471に挟持されたメモリピン13と共に、メモリピース10が後方に移動する。
アッパレール4は、蓋壁部42の上面に固定されたサポートブラケット49を有する。そして、サポートブラケット49には、解除レバー81が回動可能に連結されている。この解除レバー81は、シートバック8の前倒しに連動して、前方に(図3における反時計回り方向)に回動する。そして、解除レバー81の回動に伴い、解除レバー81の前端部は、ロックレバー26(図2)に当接する。これにより、解除レバー81の前端部がロックレバー26を押して回転させ、ロックレバー26によるロック状態を解除することができる。なお、シートバック8が起立した状態では、解除レバー81が、付勢手段(不図示)によりロックレバー26から離れる方向に常時付勢されている。
サポートブラケット49の長手方向における中間部には、メモリピース10の作動レバー82が回動可能に連結されている。この作動レバー82は、リンク部材83を介して解除レバー81に連結されている。そして、作動レバー82は、解除レバー81の回動に連動して、前方に(図3における反時計回り方向)に回動する。そのため、作動レバー82は、シートバック8の前倒しに連動して前方に回動する。そして、作動レバー82の回動に伴い、作動レバー82の前端部は、メモリピン13の頭部131に当接する。これにより、作動レバー82の前端部がメモリピン13を下方に移動させると、メモリピン13の係止部132がロアレール3の係止孔34を貫通する。その後、アッパレール4が前方に移動すると、メモリピン13の頭部131の上面がメモリ保持ブラケット48の下面に押圧される。これにより、メモリピース10は、ロアレール3の底壁部32に固定され前方への移動が規制される。
すなわち、シートバック8の前倒しに連動してメモリピース10がロアレール3に固定される。同時に、解除レバー81の回転に伴い、ロックレバー26によるロック状態も解除される。これにより、アッパレール4は、メモリピース10をロアレール3に残した状態、すなわちメモリピン13及びメモリピース10がメモリ位置にある状態で前方へ移動することができる。このメモリ位置では、係止孔34に挿入されたメモリピン13によって、メモリピース10の移動が規制されている。そのため、アッパレール4の後方移動は、メモリピン13によって制限される。
その後、アッパレール4が後方に移動すると、アッパレール4の係止壁部471の後端がメモリピース10の前側当接部111に当接し、アッパレール4の後方移動が一時的に規制される。これにより、アッパレール4は、前方に移動する前の元位置(メモリ位置)に復帰する。この元位置でシートバック8を引き起こすと、解除レバー81によるロックレバー26の押圧が解除される。そのため、ロックレバー26のロック爪23が、ロアレールのロック孔35に挿入され、アッパレール4の移動が元位置で規制される。このようにして、シート100(アッパレール4)を元位置に戻すことができる。
さらに、図4A、図4B、図5及び図6を参照して、第1実施形態に係るメモリピース10について説明する。なお、図4Aは、メモリピン13の係止部132がロアレール3の係止孔34上に位置する状態を示している。また、図4Bは、メモリ時の係止部132が、係止孔34に挿入された状態を示している。
メモリピース10は、メモリピン13に移動可能に支持されると共に、メモリピン13の挿入時に該メモリピン13と共に係止孔34に挿入できるように構成されている少なくとも一つの係止補助部材14,15を有する。さらに、係止補助部材14,15は、係止孔34への挿入により、該係止孔34の上側内縁に当接する。また、メモリピン13は、係止孔34に挿入される係止部132を有している。そして、係止補助部材14,15は、テーパ形状を有すると共に、係止部132の延在方向(上下方向)に移動可能となるように係止部132に支持されている。第1実施形態に係るメモリピース10は、この係止補助部材(楔部材)として、アッパレール4の移動方向においてメモリピン13の前側に配置されている前側係止補助部材14と、アッパレール4の移動方向においてメモリピン13の後側に配置されている後側係止補助部材15とを有している。
前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15は、ロアレール3の係止孔34に挿入可能な位置に配置されている。また、前側係止補助部材14の前面には、テーパ形状として、連続して傾斜した傾斜面が形成されている。同様に、後側係止補助部材15の後面には、テーパ形状として、連続して傾斜した傾斜面が形成されている。これにより、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15は、下方に向かうにつれて先細るテーパ形状を有している。
さらに、メモリピース10は、係止孔34に向かって前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15を付勢する弾性部材16を有している。そして、弾性部材16は、頭部131から係止孔34に向かう方向に、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15を常時押し下げている。また、メモリピン13の先端部には、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15の先端に当接して、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15の抜け落ちを防止する脱落規制部として、フランジ17が設けられている。このフランジ17は、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15の抜け落ちを防止するために、メモリピン13の先端部(下端部)に配置されている。これらの構成により、係止部132が係止孔34に挿入されたときに、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15は、係止部132と係止孔34との間の隙間を埋めるように挿入される。
換言すると、メモリピース10がロアレール3に固定されたときに、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15は、係止部132と係止孔34との間の隙間に挿入される。すなわち、メモリ位置にメモリピン13が固定される場合には、図4Aに示す状態でシートバック8を前倒しする操作が行われる。これにより、作動レバー82(図3)の前端部は、メモリピン13の頭部131に当接する。そして、矢印Iで示す力によって作動レバー82の前端部がメモリピン13を下方に移動させると、図4Bに示すように、メモリピン13の係止部132がロアレール3の係止孔34を貫通する。このとき、係止部132と係止孔34との間には、両者のクリアランスに起因する隙間が発生する。そして、係止孔34の前側内縁と係止部132との間の隙間d1には、弾性部材16に付勢されて前側係止補助部材14が挿入される。また、係止孔34の後側内縁と係止部132との間の隙間d2には、弾性部材16に付勢されて後側係止補助部材15が挿入される。
そして、メモリ時において、メモリピン13と係止孔34との間の隙間を埋めることができる。その結果、復帰時において、メモリ部材10にアッパレール4から後方に向かう力が加わったとしても、隙間に起因するメモリピース10の移動を防止することができる。これにより、メモリ時と復帰時との間において、メモリピン13と係止孔34との相対位置のずれの発生を防止することができる。そのため、ロック爪23とロック孔35との相対位置のずれを防止することができるので、シート100を正確な元位置に復帰させることができる。
なお、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15は、同じ長さを有する。ただし、前側係止補助部材14が係止孔34に挿入される長さと、後側係止補助部材15が係止孔34に挿入される長さとは、隙間の距離に応じて異なることがある。仮に前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15の一方が係止孔34に挿入されない場合であっても、他方が係止孔34に挿入されれば隙間を埋めることができる。そのため、係止部132の形状をテーパ状に形付ける場合と比較して、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15のテーパ角度は急角度に設定することができる。これにより、復帰時において、メモリピース10に後方に向かう大きな力が加わったとしても、メモリピン13が係止孔34に乗り上げてしまうことを防止できる。
また、前側係止補助部材14は突部141を有しており、後側係止補助部材15は突部151を有している。そして、メモリピース10は、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15を案内する案内部18を有しており、案内部18には、突部141及び突部151が挿入される。すなわち、図4AのV−V断面を示す図5に示すように、係止部132の前部と後部には、断面略T字状の溝からなる案内部18が形成されている。そして、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15は、メモリピン13に形成された案内部18に挿入される。さらに、図6に示すように、案内部18は上下方向に延在して係止部132の下端において開口している。そして、前側係止補助部材14は、上下方向に直交する幅方向における両端部に突部141を有しており、突部141は、上下方向に延在している。同様に、後側係止補助部材15も、幅方向における両端部に突部151を有しており、突部151は、上下方向に延在している。そして、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15が係止部132に対して上下方向に摺動可能なように、突部141及び突部151が案内部18に挿入されている。
前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15を係止部132に取り付けた後には、係止部132の下端にフランジ17が取り付けられる。フランジ17は、少なくとも案内部18の下端側(先端側)の開口に重なるように、係止部132の下端部の外径よりも大きなサイズを有する。これにより、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15が係止部132から抜け落ちることを防止できる。
なお、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15は、例えば鉄などによって形成することができる。また、弾性部材16は、例えば円筒状のゴムなどである。また、フランジ17は、例えば鉄製の板部材などであり、係止部132の下端に接着又は溶接されている。このフランジ17は、板部材には限定されず、案内部18の下端開口に重なる限りにおいて、棒部材などであってもよい。また、前側の案内部18と、後側の案内部18とに、それぞれ別体のフランジ17を取り付けることもできる。
続いて、図7A及び図7Bを参照して、第2実施形態に係るメモリピース200について説明する。なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態で説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
第1実施形態においては、前側係止補助部材14及び後側係止補助部材15が、テーパ形状として、連続して傾斜した傾斜面を有している。一方、第2実施形態では、前側係止補助部材214及び後側係止補助部材215が、テーパ形状として、前側係止補助部材214及び後側係止補助部材215のそれぞれの先端に向かって段階的に先細る階段形状を有している。
すなわち、前側係止補助部材214の前面及び後側係止補助部材215の後面に、段階的に先細る階段形状が形成されている。例えば、図7Aに示すように、前側係止補助部材214及び後側係止補助部材215は、前後方向における厚みが4段階に異なる階段形状を有している。これにより、前側係止補助部材214及び後側係止補助部材215は、いずれも下方に向かうにつれて先細る形状を有している。また、前側係止補助部材214における階段形状の各段の前側には、上下方向に延在する略垂直な平面が形成されている。同様に、後側係止補助部材215における階段形状の各段の後側には、上下方向に延在する略垂直な平面が形成されている。
このような第2実施形態に係る前側係止補助部材214及び後側係止補助部材215も、メモリピース200がロアレール3に固定されたときに、係止部132と係止孔34との間の隙間に挿入される。すなわち、メモリ位置にメモリピン13を固定する場合、図7Aに示す状態でシートバック8を前倒しする操作が行われる。これにより、作動レバー82(図3)の前端部は、メモリピン13の頭部131に当接する。そして、矢印Iで示す力によって作動レバー82の前端部がメモリピン13を下方に移動させると、図7Bに示すように、係止部132がロアレール3の係止孔34を貫通する。このとき、係止部132と係止孔34との間には、両者のクリアランスに起因する隙間が発生する。そして、係止孔34の前側内縁と係止部132との間の隙間には、弾性部材16に付勢されて前側係止補助部材214が挿入される。また、係止孔34の後側内縁と係止部132との間の隙間には、弾性部材16に付勢されて後側係止補助部材215が挿入される。
そして、メモリ時において、メモリピン13と係止孔34との間の隙間を埋めることができる。その結果、復帰時において、メモリ部材200にアッパレール4から後方に向かう力が加わったとしても、隙間に起因するメモリピース10の移動を防止することができる。これにより、メモリ時と復帰時との間において、メモリピン13と係止孔34との相対位置のずれの発生を防止することができる。そのため、ロック爪23とロック孔35との相対位置のずれを防止することができるので、シート100を正確な元位置に復帰させることができる。
さらに、第2実施形態に係る前側係止補助部材214の前面及び後側係止補助部材215の後面には、係止孔34の内縁と当接する部分に、略垂直な平面を形成することができる。これにより、復帰時において、メモリピース200に後方に向かう大きな力が加わったとしても、メモリピン13が係止孔34に乗り上げてしまうことをより確実に防止できる。
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態及び各変形例は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
例えば、前側係止補助部材及び後側係止補助部材に加えて、係止部の幅方向(前後方向に直交する方向)における両側面にも係止補助部材を取り付けることもできる。この場合、当該両側面にそれぞれ案内部を形成すると共に、両側面の案内部に係止補助部材を取り付ける。これにより、メモリピンを係止孔の略中央に挿入することができる。また、幅方向において、メモリピンが係止孔からずれてしまうことを防止できる。そのため、幅方向における、ロック爪とロック孔との相対位置のずれを防止することができる。
さらに、係止部に案内部としての突部を形成し、係止補助部材には突部に代えて溝を形成することもできる。例えば、係止部を断面略I字状に形成し、係止部の前側端部と後側端部にそれぞれ突部を形成する。一方、前側係止補助部材及び後側係止補助部材には、係止部の突部を案内する溝を形成する。すなわち、係止部に、前側係止補助部材及び後側係止補助部材の溝に対して相補的な形状を有する突部を形成する。そして、前側係止補助部材及び後側係止補助部材の溝に、係止部の突部が挿入される。この場合であっても、前側係止補助部材及び後側係止補助部材が係止部に対して上下方向に摺動可能となる。
また、弾性部材は、ゴムに代えてスプリングによって構成することもできる。また、弾性部材を設ける代わりに、前側係止補助部材及び後側係止補助部材が、自重によって係止孔に挿入されるように構成することもできる。さらに、メモリピースは、少なくとも前側係止補助部材及び後側係止補助部材の一方を有していればよい。より好ましくは、メモリピースは、少なくとも後側係止補助部材を有していればよい。