[go: up one dir, main page]

JP6206613B1 - セラミック構造体及び半導体製造装置用構造部材 - Google Patents

セラミック構造体及び半導体製造装置用構造部材 Download PDF

Info

Publication number
JP6206613B1
JP6206613B1 JP2017050111A JP2017050111A JP6206613B1 JP 6206613 B1 JP6206613 B1 JP 6206613B1 JP 2017050111 A JP2017050111 A JP 2017050111A JP 2017050111 A JP2017050111 A JP 2017050111A JP 6206613 B1 JP6206613 B1 JP 6206613B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
interface
ceramic structure
ratio
area
cross
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017050111A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018008865A (ja
Inventor
光 西村
光 西村
正吾 島田
正吾 島田
真登 太田
真登 太田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toto Ltd
Original Assignee
Toto Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toto Ltd filed Critical Toto Ltd
Application granted granted Critical
Publication of JP6206613B1 publication Critical patent/JP6206613B1/ja
Publication of JP2018008865A publication Critical patent/JP2018008865A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Ceramic Products (AREA)

Abstract

【課題】介在部における強度のばらつきを抑制できるセラミック構造体を提供することを目的とする。【解決手段】シリコンと炭化珪素とを含む第1部材と、シリコンと炭化珪素とを含む第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に介在し、シリコンと炭化珪素とを含む介在部と、を備え、前記介在部の断面の面積に対する、前記介在部の前記断面に含まれるシリコンの面積の比は、Aであり、前記第1部材の断面の面積に対する、前記第1部材の前記断面に含まれるシリコンの面積の比は、B1であり、前記第2部材の断面の面積に対する、前記第2部材の前記断面に含まれるシリコンの面積の比は、B2であり、前記A、前記B1及び前記B2は、1.0<A/B1<1.3、及び、1.0<A/B2<1.3の少なくともいずれかを満たすことを特徴とするセラミック構造体が提供される。【選択図】図1

Description

本発明の態様は、一般的に、セラミック構造体及び半導体製造装置用構造部材に関する。
反応焼結炭化珪素部材(シリコン含浸炭化珪素部材)は、比剛性、導電性に優れ、気孔が少ない素材である。このため、反応焼結炭化珪素部材を含むセラミック構造体は、半導体製造装置用部材として使用されている。特に、電子ビームを用いる装置(露光装置や検査装置など)の稼働部や真空環境などにおいては、高精度、低アウトガス、導電性が求められる。このため、反応焼結炭化珪素部材は、これらの装置に適している。
最近では、半導体デバイスの高性能化およびスループットの向上のための装置開発が進んでいる。そのため、装置に使用される部材として、複雑形状品や大型構造体が求められている。複雑形状品や大型構造体を、ひとつの成型体から作成するのは困難である。そこで、例えば、複数の部材(成型体)同士をカーボンを含む接着剤で接着し反応焼結する方法が用いられている。特許文献1には、部材同士を接合する接合部の信頼性を向上させるため、接合部の微構造を制御する方法が記載されている。
特開2005−22905号公報
しかしながら、接合部など、部材同士の間に介在する介在部には、空隙の残留または大きな遊離シリコン相が発生することがある。例えば大型の部材同士を接合する場合には、空隙の残留や遊離シリコン相が発生しやすい。この場合、接合される部材の組織と接合部の組織とが互いに異なるため、安定した物性が得られないことがある。例えば、接合部における接合強度がばらついたり、接合強度が低下したりすることがある。
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、介在部における強度のばらつきを抑制できるセラミック構造体を提供することを目的とする。
第1の発明は、シリコンと炭化珪素とを含む第1部材と、シリコンと炭化珪素とを含む第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に介在し、シリコンと炭化珪素とを含む介在部と、を備え、前記介在部の断面において128μm×128μmの大きさの観察領域を10箇所設定し、前記介在部の前記10箇所の前記観察領域のそれぞれにおいてシリコンが占める面積の割合を算出し、前記介在部の前記10箇所における前記割合の平均をとし、前記第1部材の断面において128μm×128μmの大きさの観察領域を10箇所設定し、前記第1部材の前記10箇所の前記観察領域のそれぞれにおいて、シリコンが占める面積の割合を算出し、前記第1部材の前記10箇所における前記割合の平均をB1とし、前記第2部材の断面において128μm×128μmの大きさの観察領域を10箇所設定し、前記第2部材の前記10箇所の前記観察領域のそれぞれにおいて、Siが占める面積の割合を算出し、前記第2部材の前記10箇所における前記割合の平均をB2とすると、前記A、前記B1及び前記B2は、1.0<A/B1<1.3、及び、1.0<A/B2<1.3の少なくともいずれかを満たし、前記介在部の前記10箇所における前記割合の標準偏差をCとし、前記第1部材の前記10箇所における前記割合の標準偏差をD1とし、前記第2部材の前記10箇所における前記割合の標準偏差をD2とすると、前記C、前記D1及び前記D2は、1.3<C/D1<3.3、及び、1.3<C/D2<3.3の少なくともいずれかを満たすことを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、シリコンの偏析及び介在部の気孔率が低減され、強度のばらつきを抑制することができる。第1、第2部材の線膨張係数と介在部の線膨張係数の差が小さくなることで残留応力が低減すると考えられ、強度のばらつきを抑制することができる。
の発明は、第1の発明において、前記Aは、23%以上30%以下であることを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、シリコンの偏析及び介在部の気孔率が低減され、強度のばらつきを抑制することができる。
の発明は、第1または第2の発明において、前記介在部は、中央層と、前記中央層と前記第1部材との間に位置する第1側面層と、前記中央層と前記第2部材との間に位置する第2側面層と、を含み、前記第1側面層の断面の面積に対する、前記第1側面層の前記断面に含まれるシリコンの面積の比は、E1であり、前記第2側面層の断面の面積に対する、前記第2側面層の前記断面に含まれるシリコンの面積の比は、E2であり、前記中央層の断面の面積に対する、前記中央層の前記断面に含まれるシリコンの面積の比は、Fであり、前記E1及び前記E2の少なくともいずれかは、前記Fよりも低いことを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、第1部材と介在部との界面近傍および第2部材と介在部との界面近傍の少なくともいずれかにおいて、炭化珪素の比率が増加する。これにより、強度の向上を向上させることができ、強度のばらつきを抑制することができる。
の発明は、第の発明において、前記E1、前記E2及び前記Fは、E1/F<0.95、及び、E2/F<0.95の少なくともいずれかを満たすことを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、第1部材と介在部との界面近傍および第2部材と介在部との界面近傍の少なくともいずれかにおいて、炭化珪素の比率が増加する。これにより、強度を向上させることができる。また、強度のばらつきを抑制することができる。
の発明は、第または第の発明において、前記中央層の前記断面は、前記第1部材と前記介在部との界面に対して垂直な第1方向と、前記界面に対して平行な第2方向と、を含む平面における断面であり、前記中央層の前記断面において、前記中央層に含まれるシリコンの前記第1方向の弦長さは、前記中央層に含まれるシリコンの前記第2方向の弦長さよりも短いことを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、セラミック構造体の強度を向上させることができる。また、強度のばらつきを抑制することができる。
の発明は、第の発明において、前記中央層に含まれるシリコンの前記第2方向の前記弦長さに対する、前記中央層に含まれるシリコンの前記第1方向の前記弦長さの比は、0.9未満であることを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、セラミック構造体の強度を向上させることができる。また、強度のばらつきを抑制することができる。
の発明は、第1〜第のいずれか1つの発明において、前記介在部の平均厚さは、100マイクロメートル以上400マイクロメートル以下であることを特徴とするセラミック構造体である。
介在部の強度は、第1部材又は第2部材の強度に比べて低いことがある。このセラミック構造体によれば、介在部が薄いことにより、強度のばらつきを抑制することができる。
の発明は、第の発明において、前記介在部の厚さの最大値と、前記介在部の厚さの最小値と、の差は、100マイクロメートル以下であることを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、強度のばらつきを抑制することができる。
の発明は、第1〜第のいずれか1つの発明において、前記第1部材と前記介在部との界面は、第1界面と、前記第1界面に対して傾斜した第2界面と、を有し、前記第2部材と前記介在部との界面は、前記介在部を介して前記第1界面と対向する第3界面と、前記第3界面に対して傾斜し、前記介在部を介して前記第2界面と対向する第4界面と、を有し、前記第1界面及び前記第2界面は、前記第3界面と前記第4界面との間に位置することを特徴とするセラミック構造体である。
介在部の強度は、第1部材の強度や第2部材の強度に比べて低いことがある。
これに対し、このセラミック構造体によれば、第1部材から第2部材へ向かう方向に対して垂直な断面において、当該断面に占める介在部の割合が小さく、強度の低下を抑制できる。
第1の発明は、第の発明において、前記第1部材と前記介在部との界面は、前記第1界面と前記第2界面とを接続する第1曲面を有し、前記第2部材と前記介在部との界面は、前記第3界面と前記第4界面とを接続する第2曲面を有することを特徴とするセラミック構造体である。
セラミック構造体を形成する際には、二つ以上の焼結前の仮焼体を、炭化珪素粉末と樹脂とを含む接着剤で接合する。接合された仮焼体に溶融Siを含侵させ、熱処理を行うことで、セラミック構造体が形成される。このときの接合部が介在部となる。接合部の界面の先端が尖っている場合、尖っている部分では、接着の際に接着剤の流動性が低下する。このため、尖っている部分では接着剤が充填されにくい。
これに対して、このセラミック構造体によれば、界面の先端を曲面とすることで、接着剤を充填しやすくなる。また、先端を曲面とすることで、仮焼体のチッピングの発生、空隙の発生、シリコンの偏析の発生を抑制することができる。
第1の発明は、第1の発明において、前記第1界面に対して垂直な方向と、前記第3界面に対して垂直な方向と、を含む平面における断面において、前記第1曲面の曲率半径は、前記第2曲面の曲率半径よりも小さいことを特徴とするセラミック構造体である。
介在部の強度は、第1部材の強度や第2部材の強度に比べて低い場合があるため、介在部が厚いと部分的に強度が低下することがある。
これに対して、このセラミック構造体によれば、第1曲面の曲率半径が第2曲面の曲率半径よりも小さいことにより、第1曲面と第2曲面との間の距離が小さくなる。これにより、強度の低下を抑制することができる。
第1の発明は、第1または第1の発明において、前記第1曲面と前記第2曲面との間の距離は、前記第1界面と前記第3界面との間の距離よりも短く、前記第2界面と前記第4界面との間の距離よりも短いことを特徴とするセラミック構造体である。
セラミック構造体を形成する際には、二つ以上の焼結前の仮焼体を、炭化珪素粉末と樹脂とを含む接着剤で接合する。接合された仮焼体に溶融Siを含侵させ、熱処理を行うことで、セラミック構造体が形成される。このときの接合部が介在部となる。
このセラミック構造体によれば、第1曲面と第2曲面との間の距離が短いことにより、第1曲面と第2曲面との間に接着剤が充填されないことを抑制できる。したがって、強度を高めることができる。
第1の発明は、第1〜第1のいずれか1つの発明において、前記セラミック構造体の曲げ強度から算出されたワイブル係数は、10以上であることを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、信頼性に優れ大型かつ複雑な形状を有する一体セラミック構造体を製作することができる。
第1の発明は、第1〜第1のいずれか1つの発明において、前記介在部における開気孔率は、0.1%以下であることを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、耐久性に優れ、アウトガスの発生が少なく、大型かつ複雑な形状を有する一体セラミック構造体を製作することができる。例えば、このセラミック構造体を、半導体製造装置等の真空チャンバ内の部材(構造体)に用いることで、目標真空度への到達時間を短縮することができる。
第1の発明は、第1〜第1のいずれか1つの発明において、前記セラミック構造体の体積抵抗率は、2.0×10−2オーム・センチメートル以下であることを特徴とするセラミック構造体である。
例えば、このセラミック構造体を電子ビームを用いる半導体製造装置に用いれば、体積抵抗率が低いため、渦電流起因の磁界の影響を抑制することができる。
第1の発明は、第1〜第1のいずれか1つの発明において、少なくとも1つの辺の長さが1メートルよりも長く、少なくとも3つの面によって囲まれた空間を複数有することを特徴とするセラミック構造体である。
このセラミック構造体によれば、大型で複雑な形状を有するセラミック構造体において、強度のばらつきを抑制できる。
第1の発明は、第1〜第1のいずれか1つの発明のセラミック構造体を含むことを特徴とする半導体製造装置用構造部材である。
この半導体製造装置用構造部材によれば、強度のばらつきを抑制することができる。
本発明の態様によれば、介在部における強度のばらつきを抑制できるセラミック構造体が提供される。
図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係るセラミック構造体を例示する図である。 実施形態に係るセラミック構造体を例示する断面図である。 セラミック構造体の評価結果を示す表である。 接合部の厚さを説明する断面図である。 接合部の平均厚さと曲げ強度との関係を示すグラフ図である。 接合部の平均厚さとワイブル係数との関係を示すグラフ図である。 セラミック構造体の評価結果を示す表である。 セラミック構造体の断面におけるレーザ顕微鏡像である。 Si面積比と曲げ強度との関係を示すグラフ図である。 Si面積比とワイブル係数との関係を示すグラフ図である。 Si面積標準偏差比と曲げ強度との関係を示すグラフ図である。 Si面積標準偏差比とワイブル係数との関係を示すグラフ図である。 実施形態に係るセラミック構造体のレーザ顕微鏡像である。 セラミック構造体の評価結果を示す表である。 図15(a)及び図15(b)は、弦長さを説明する模式図である。 実施形態に係る別のセラミック構造体を例示する断面図である。 セラミック構造体を例示する断面図である。 実施形態に係る別のセラミック構造体を例示する断面図である。 セラミック構造体の製造方法を例示するフローチャートである。 電子露光装置を例示する模式図である。 図21(a)〜図21(c)は、実施形態に係るセラミック構造体を例示する斜視図である。 図22(a)及び図22(b)は、実施形態に係るセラミック構造体を例示する斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係るセラミック構造体を例示する図である。 図1(a)は、実施形態に係るセラミック構造体100を表す斜視図である。図1(b)は、図1(a)に示すA1−A2線における、セラミック構造体100の断面の一部を表す断面図である。
図1(a)及び図1(b)に表したように、セラミック構造体100は、第1部材10と、第2部材20と、接合部(介在部)30と、を含む。第1部材10及び第2部材20は、それぞれ、シリコン(Si)と炭化珪素(SiC)を含む。接合部30は、第1部材10と第2部材20との間に設けられた中間層である。接合部30は、第1部材10と第2部材20とを接合する層であり、シリコンと炭化珪素とを含む。例えば、第1部材10、第2部材20及び接合部30のそれぞれは、反応焼結炭化珪素(反応焼結SiC)を材料とする。
第1部材10は、接合面11を有し、第2部材20は、接合面12を有し、接合部30は、接合面11と接合面12とを接合する。
以下の説明において、接合面11から接合面12へ向かう方向をX方向(第1方向)とする。X方向に対して垂直な方向をY方向とし、X方向及びY方向に対して垂直な方向をZ方向(第2方向)とする。
接合面11は、YZ平面に沿って延在する面である。X方向は接合面11に対して実質的に垂直な方向、換言すれば、第1部材10と接合部30との界面(第1界面)に対して垂直な方向である。Y方向及びZ方向は、接合面11に対して実質的に平行な方向、換言すれば、第1部材10と接合部30との界面に対して平行な方向である。接合面12は、接合面11に対して略平行な面である。
この例では、セラミック構造体100は、直方体の形状を有している。但し、実施形態に係るセラミック構造体の形状は、直方体に限らない。
図2は、実施形態に係るセラミック構造体を例示する断面図である。
図2は、図1(b)に示した領域R(接合部30の近傍)を拡大して表している。
以下の説明において、接合部(例えば接合部30)の断面におけるSi面積平均比率の値をAと表す。接合部の断面におけるSi面積平均比率とは、接合部の断面の面積に対する、当該断面に含まれるSiの面積の平均比率である。
また、第1部材10の断面におけるSi面積平均比率の値をB1と表す。第1部材10の断面におけるSi面積平均比率とは、第1部材10の断面の面積に対する、当該断面に含まれるSiの面積の平均比率である。同様に、第2部材20の断面におけるSi面積平均比率の値をB2と表す。
ここで、Si面積平均比率(パーセント:%)の算出について説明する。本願明細書において、Si面積平均比率とは下記の如くである。
まず、ある部材の断面において、複数の観察領域を設定する。例えば、図2に示すように、接合部30の場合には複数の観察領域R3を設定し、第1部材10の場合には複数の観察領域R1を設定し、第2部材20の場合には複数の観察領域R2を設定する。次に、1つの観察領域に対してSi面積比率(%)を算出する。このSi面積比率とは、1つの観察領域の面積に対する、当該観察領域に含まれるシリコン(Si)の面積の比である。言い換えれば、Si面積比率とは、1つの観察領域においてSiが占める面積の割合である。なお、観察領域に含まれるSiの面積の測定方法については、後述する。
そして、Si面積平均比率は、Si面積比率の複数の観察領域における平均値である。すなわち、Si面積平均比率は、式(1)により算出される。
nは、サンプル数(対象の部材における観察領域の数)である。Xは、i番目のサンプルにおけるSi面積比率である。
従って、図2に示す例では、接合部30の断面におけるSi面積平均比率(A)とは、複数の観察領域R3におけるSi面積比率の平均値である。同様に、第1部材10の断面におけるSi面積平均比率(B1)とは、複数の観察領域R1におけるSi面積比率の平均値である。第2部材20の断面におけるSi面積平均比率(B2)とは、複数の観察領域R2におけるSi面積比率の平均値である。
また、以下の例では、第1部材10の材料(セラミックス被接合体の材料)と、第2部材20の材料(セラミックス被接合体の材料)とは、実質的に同じである。従って、B1は、B2と実質的に等しい。以下では、母材(セラミックス被接合体のいずれか)の断面におけるSi面積平均比率の値をBと表す。セラミック構造体100においては、Bは、B1及びB2のいずれかを意味する。ただし、B1とB2とは互いに異なる値であってもよい。
実施形態に係るセラミック構造体100において、A及びBは、
1.0<A/B<1.3 ・・・(2)
を満たす。(すなわち、1.0<A/B1<1.3、及び、1.0<A/B2<1.3、の一方又は両方を満たす。)
また、以下の説明において、接合部(例えば接合部30)の断面におけるSi面積標準偏差の値をCと表す。接合部の断面におけるSi面積標準偏差とは、接合部の断面の面積に対する、当該断面に含まれるSiの面積の比の標準偏差である。
また、第1部材10の断面におけるSi面積標準偏差の値をD1と表す。第1部材10の断面におけるSi面積標準偏差とは、第1部材10の断面の面積に対する、当該断面に含まれるSiの面積の比の標準偏差である。同様に、第2部材20の断面におけるSi面積標準偏差の値をD2と表す。
ここで、Si面積標準偏差の算出について説明する。本願明細書において、Si面積標準偏差とは下記の如くである。
Si面積標準偏差は、Si面積比率の複数の観察領域における標準偏差である。すなわち、Si面積標準偏差は、式(3)により算出される。

nは、サンプル数(対象の部材における観察領域の数)である。Xは、i番目のサンプルにおけるSi面積比率である。
従って、図2に示す例では、接合部30の断面におけるSi面積標準偏差(C)とは、複数の観察領域R3におけるSi面積比率の標準偏差である。同様に、第1部材10の断面におけるSi面積標準偏差(D1)とは、複数の観察領域R1におけるSi面積比率の標準偏差である。第2部材20の断面におけるSi面積標準偏差(D2)とは、複数の観察領域R2におけるSi面積比率の標準偏差である。
以下の例では、D1は、D2と実質的に等しい。以下では、母材の断面におけるSi面積平均比率の値をDと表す。セラミック構造体100においては、Dは、D1及びD2のいずれかを意味する。ただし、D1とD2とは互いに異なる値であってもよい。
実施形態に係るセラミック構造体100において、C及びDは、
1.3<C/D<3.3 ・・・(4)
を満たす。(すなわち、1.3<C/D1<3.3、及び、1.3<C/D2<3.3、の一方又は両方を満たす。)
なお、図示した断面や観察領域は一例である。Si面積比率を算出する際の断面は、例えばZX平面であるが、Si面積比率を算出する際の断面、および、断面中の観察領域の位置や数は、上記に限られない。
第1部材10や第2部材20などの複数の部材を接合部によって接合することにより、複雑な形状を有する部材や、大型の部材を形成することができる。
ここで、複数の部材を接合する方法として、複数の部材(被接合体)を接着剤で接着し、反応焼結によって接合する方法がある。しかしながら、接着剤で被接合体(被接着体)を接着した後、接着剤は、硬化収縮を起こす。このとき接着剤の収縮力に対し、反力が作用する場合がある。例えば、被接合体が接触している面から摩擦力を受けたり、被接合体が固定されているステージ等の移動機構部に摩擦力が発生したりすることがある。このような反力が生じると、接着剤の硬化収縮が阻害される。これにより、接着剤層もしくは被接合体と接着剤層との界面に空隙や亀裂が発生することがある。このため、最終的に得られる焼結接合体には、空隙・亀裂の残留あるいは大きな遊離シリコン相が発生することがある。被接合体の組織と、接合部(焼結後の接着剤層)の組織と、が異なると、接合部付近には、熱膨張差による残留応力が発生することがある。また残留応力によって、接合強度のばらつきが発生することがある。
これに対して、本願発明者らは、上述の式(2)、(4)に示した構成により、セラミック構造体100における接合強度のばらつきを抑制できることを見出した。さらに、接合部30の平均厚さを100マイクロメートル(μm)以上400μm以下とすると接合強度のばらつきをより抑制できる。
以下、本願発明者らの検討について説明する。
(実施例)
本願発明者らは、図1、2に関して説明した本実施形態に係るセラミック構造体(実施例1〜8)、および、比較例に係るセラミック構造体(比較例1〜3)の物性を評価した。
各実施例及び各比較例は、図1(a)及び図1(b)に関して説明したセラミック構造体100と同様に、反応焼結炭化珪素を含む2つのセラミックス被接合体(例えば第1部材10及び第2部材20)を有する。2つのセラミックス被接合体は、略平行に配置された対向する接合面(例えば接合面11及び接合面12)を有する。各実施例及び各比較例は、反応焼結炭化珪素を含み、上記の接合面同士を接合する接合部(例えば接合部30)を有する。
図3は、セラミック構造体の評価結果を示す表である。
図3は、実施例1〜5、比較例1及び比較例2についての、接合部の平均厚さ(μm)、曲げ強度(メガパスカル:MPa)及びワイブル係数を表している。
ここで、接合部の平均厚さについて説明する。
図4は、接合部の厚さを説明する断面図である。これは、図1(b)に表した断面図の接合部30の近傍を模式的に表す拡大図である。既に述べたとおり、接合面11は、YZ平面に沿って延在する面である。また、接合面11と接合面12とは略平行に配置されている。但し、図4に示すように拡大して見たときに、接合面は、僅かに凹凸を有していることがある。また、接合面11と接合面12とは、互いに対して僅かに傾いている場合がある。
接合部の厚さT(μm)とは、接合部のX方向に沿った長さをいう。例えば、接合部30の厚さTは、第1部材10の接合面11と、第2部材20の接合面12と、の間のX方向に沿った距離である。接合部の平均厚さTave(μm)とは、この厚さTのYZ平面内における平均値をいう。接合部の厚さの最大値とは、厚さT(μm)の最大値であり、例えば図4に示す厚さTmaxに相当する。また、接合部の厚さの最小値とは、厚さT(μm)の最小値であり、例えば図4に示す厚さTminに相当する。
図3に示す曲げ強度は、JIS R 1601に従って測定した3点曲げ強度の測定結果である。3点曲げ強度の測定においては、接合部が中心となるようにして加重を加えて、試料の3点曲げ強度を測定する。
図3に示すワイブル係数は、測定した3点曲げ強度のデータからJIS R 1625に従って算出したワイブル係数である。ワイブル係数は、ワイブル係数が大きいほど、曲げ強度のばらつきが小さいことを意味する。
図5は、接合部の平均厚さと曲げ強度との関係を示すグラフ図である。
図6は、接合部の平均厚さとワイブル係数との関係を示すグラフ図である。
これらは、図3に示した値をグラフに表したものである。
図5に表したように、接合部の平均厚さが700μmを超えると、曲げ強度は急激に低下する。また、図6に表したように、接合部の平均厚さが200μmを超えるとワイブル係数は低下し、さらに、接合部の平均厚さが500μmを超えるとワイブル係数は急激に低下する。一般にワイブル係数は、10以上の値であることが求められる。しかし、接合部の平均厚さが500μmを超えた場合には、ワイブル係数は、10未満となる。
以上より、接合部の平均厚さは、500μm以下が望ましい。これにより、曲げ強度が高く信頼性の高いセラミック構造体を得ることができる。
一方、焼結体でない部材を接合する場合には、接合面の加工において十分な加工精度が得られないことがある。また、幅が500mmを超えるような比較的大きな部材を接合する場合、接合部を介して対向する接合面同士を平行に配置する精度が低下することがある。ただし、接合面同士を突き合わせる時の段取りの調整、および、セラミックス被接合体に適した高精度加工を実施することで、接合面同士の間の距離(接合部の厚さT)がばらつく範囲(厚さTmaxと厚さTminとの差)を100μm以下とすることができる。
そこで、実施形態においては、接合部30の平均厚さを、例えば100μm以上400μm以下とする。また、接合部30の厚さの最大値と、接合部30の厚さの最小値と、の差は、100μm以下である。このとき、ワイブル係数は、10以上である。接合部30の強度は、第1部材10の強度や第2部材20の強度に比べて低いことがあるが、接合部30の平均厚さを上記のように薄くすることにより、安定した強度が得られる。接合部30における接合強度のばらつきを抑制することができる。これにより、信頼性に優れ大型かつ複雑な形状を有する一体セラミック構造体を製作することができる。
図7は、セラミック構造体の評価結果を示す表である。
図7には、実施例6〜8及び比較例3についての、Si面積比率(%)、Si面積平均比率(%)、Si面積標準偏差、Si面積比、Si面積標準偏差比、曲げ強度(MPa)、ワイブル係数、開気孔率(%)及び体積抵抗率(オーム・センチメートル:Ω・cm)を表している。
Si面積比率の分析には、レーザ顕微鏡を用いた。レーザ顕微鏡には、オリンパス製のOLS4100を使用した。対物レンズの倍率を100倍、ズーム倍率を1倍、1視野(1つの観察領域)の大きさを128μm×128μmとし、該範囲における輝度像を撮影した。撮影した画像の例を図8に示す。
図8は、セラミック構造体の断面におけるレーザ顕微鏡像である。
図8に示すように、反応焼結炭化珪素には、複数のSiC粒子71と、Si部75(遊離シリコン相)と、が存在する。SiC粒子71には、粗粒子原料のSiC粒子と、微粒子原料のSiC粒子とが存在する。Si部75は、複数のSiC粒子の粒子間に位置し、ネットワーク状(網目状)に連続している。
撮影された画像は、例えばモノクロ画像である。撮影された画像において、Si部75の輝度は、その他の部分の輝度と比較して高い。画像解析によって高輝度部を分離することができる。画像解析には三谷商事製のWinROOF ver6.5を使用した。レーザ顕微鏡によって得られた像を、2値化(バレー法)によって、Si部75とその他の部分とに分離する。そして、視野面積に対するSi部75の面積の比率(Si面積比率)を算出した。
実施例及び比較例のそれぞれにおいて、接合部の10箇所(10視野)のSi面積比率と、母材の10箇所(10視野)のSi面積比率と、を算出した。図7には、実施例及び比較例のそれぞれにおいて、算出された接合部のSi面積比率の範囲、及び、算出された母材のSi面積比率の範囲を示す。そして、図2に関して説明した式(1)(3)によって、実施例及び比較例のそれぞれにおいて、各部(接合部及び母材)の断面についてのSi面積平均比率(A及びB)と、Si面積標準偏差(C及びD)を算出した。
図7に示すSi面積比は、実施例及び比較例のそれぞれにおいて、AをBで割った値(A/B)である。また、Si面積標準偏差比は、実施例及び比較例のそれぞれにおいて、CをDで割った値(C/D)である。
曲げ強度及びワイブル係数の算出方法は、図3に関する説明と同様である。
図8に示す開気孔率は、JIS R 1634に従い測定した、接合部の開気孔率の測定結果である。
図8に示す体積抵抗率は、JIS R 1650-2に従い測定した、接合部を含む部材の体積抵抗率の測定結果である。体積抵抗率の測定においては、互いに接合された2つのセラミック被接合体のそれぞれに電極を取り付け、接合部を介した抵抗を測定する。
図9は、Si面積比と曲げ強度との関係を示すグラフ図である。
図10は、Si面積比とワイブル係数との関係を示すグラフ図である。
図9の横軸及び図10の横軸のそれぞれは、図7に示したSi面積比(A/B)を表す。図9の縦軸、図10の縦軸は、それぞれ、図7に示した曲げ強度、図7に示したワイブル係数を表す。なお、実施例6〜8及び比較例3のそれぞれにおいては、接合部の平均厚さは200μmに設定されている。
図9に示したように、1.0<A/B<1.3の範囲において、高い曲げ強度が得られている。また、ワイブル係数は10以上の値であることが求められるが、図10に示すように、1.0<A/B<1.3の範囲において、10以上の高いワイブル係数が得られる。そして、A/Bが1.3以上になると、ワイブル係数が急激に低下することが分かる。図7に示すように、実施例6において接合部のSi面積積平均比率(A)は、23.22%であり、実施例8においては接合部のSi面積平均比率(A)は、30.36%である。実施形態においては、接合部のSi面積平均比率(A)は、23%以上30%以下であることが望ましい。
図11は、Si面積標準偏差比と曲げ強度との関係を示すグラフ図である。
図12は、Si面積標準偏差比とワイブル係数との関係を示すグラフ図である。
図11の横軸及び図12の横軸のそれぞれは、図7に示したSi面積標準偏差比(C/D)を表す。図11の縦軸、図12の縦軸は、それぞれ、図7に示した曲げ強度、図7に示したワイブル係数を表す。
図11に示したように、1.3<C/D<3.3の範囲において、高い曲げ強度が得られている。また、図12に示すように、1.3<C/D<3.3の範囲において、10以上の高いワイブル係数が得られる。
さらに、図7に示すように1.0<A/B<1.3及び、1.3<C/D<3.3を満たす実施例においては、開気孔率が小さく、0.01%以下である。一方、A/B及びC/Dが上記の範囲から外れた比較例においては、開気孔率は、急激に上昇し、0.91%となる。これに伴い、比較例においては、曲げ強度が低い。また、比較例においては、ワイブル係数が小さく、接合強度のばらつきが大きいことが分かる。
被接合体の組織と、接合部の組織と、が異なると、接合部付近には、熱膨張差による残留応力が発生することがある。残留応力によって、接合強度のばらつきが発生することがある。これに対して、実施形態においては、A及びBが、1.0<A/B<1.3を満たす。また、C及びDが1.3<C/D<3.3を満たす。これにより、例えば、第1部材10の線膨張係数と接合部30の線膨張係数との差が小さく、残留応力が小さいと考えられる。実施形態においては、シリコンの偏析や接合部の開気孔率が低減され、接合強度のばらつきを抑制することができる。
また、実施形態に係るセラミック構造体においては、曲げ強度から算出されたワイブル係数が10以上となる。このため、信頼性(耐久性)に優れ、アウトガスの発生が少なく、大型かつ複雑な形状を有する一体セラミック構造体を製作することができる。
例えば、実施形態に係るセラミック構造体を半導体製造装置等の真空チャンバ内の部材に用いることで、目標真空度への到達時間を短縮することができる。
さらに、図7に示すように、接合部30を含む部材の体積抵抗率は低く、1.8×10−2Ωcm以下である。特に、実施例6においては、接合部30を含む部材の体積抵抗率は、7.8×10−3Ωcmである。実施形態においては、接合部30を含む部材の体積抵抗率は、2.0×10−2Ωcm以下であることが好ましい。これにより、例えば、実施形態に係るセラミック構造体を電子ビームを用いる半導体製造装置(図20を参照)に用いた場合、渦電流に起因する磁界の影響を抑制することができる。
図13は、実施形態に係るセラミック構造体のレーザ顕微鏡像である。
図13では、接合部30近傍のZX平面における断面を示す。断面の観察には、オリンパス製のOLS4100を使用し、対物レンズの倍率を20倍、ズーム倍率を1倍、視野の大きさを640μm×640μmとした。
図13に示すように、接合部30は、中央層(中央領域)31と、側面層(側面領域)32と、を有する。側面層32(第1側面層32a及び第2側面層32b)は、接合部30の両側に位置する。すなわち、第1側面層32aは、中央層31と第1部材10との間に位置する。第2側面層32bは、中央層31と第2部材20との間に位置する。
以下の説明において、中央層(例えば中央層31)の断面におけるSi面積比率の値をFと表す。すなわち、Fは、中央層の断面の面積に対する、当該断面に含まれるSiの面積の比である。
また、第1側面層(例えば第1側面層32a)の断面におけるSi面積比率の値をE1と表す。すなわち、E1は、第1側面層の断面の面積に対する、当該断面に含まれるSiの面積の比である。同様に、第2側面層(例えば第2側面層32b)の断面におけるSi面積比率の値をE2と表す。すなわち、E2は、第2側面層の断面の面積に対する、当該断面に含まれるSiの面積の比である。
本願明細書において、E1、E2及びFは以下のようにして算出される。
まず、図13に関する説明と同様にして、接合部の断面のレーザ顕微鏡像を取得する。得られた像において、三谷商事製のWinROOF ver6.5を使用し、2値化(バレー法)によってSi部とその他の部分とを分離する。すなわち、輝度が高い部分をSi部とする。中央層のうち65μm×252μmの領域において、当該領域の面積に対する、当該領域に含まれるSi部の面積の比率をFとする。第1側面層のうち65μm×252μmの領域において、当該領域の面積に対する、当該領域に含まれるSi部の面積の比率をE1とする。第2側面層のうち65μm×252μmの領域において、当該領域の面積に対する、当該領域に含まれるSi部の面積の比率をE2とする。
以下の例では、E1は、E2と実質的に等しい。以下では、側面層の断面におけるSi面積比率の値をEと表す。Eは、E1及びE2のいずれかを意味する。ただし、E1とE2とは互いに異なる値であってもよい。
なお、接合部30が中央層31と側面層32とを有する場合、接合部30の断面におけるSi面積平均比率(A)を算出する際には、中央層31及び側面層32のいずれかに偏らないように複数の観察領域R3の位置、大きさ及び数などを設定する。例えば、接合部30の断面におけるSi面積平均比率(A)を算出する際には、観察した断面に含まれる接合部30の全体におけるSi面積比率の平均が算出されるように観察領域が設定される。
図14は、セラミック構造体の評価結果を示す表である。
図14は、実施例6〜8及び比較例3のそれぞれについて、側面層の断面におけるSi面積比率(E)、中央層の断面におけるSi面積比率(F)、及び、Fに対するEの比率(E/F)を示す。また、図14に示す曲げ強度及びワイブル係数は、図7に示したものと同じである。
図14に示すように、実施例においては、比率(E/F)は、1未満である。すなわち、側面層32の断面におけるSi面積比率(E)は、中央層31の断面におけるSi面積比率(F)よりも低い。換言すれば、実施形態においては、E1及びE2の少なくともいずれかは、Fよりも低い(E1/F<1.0、及び、E2/F<1.0の少なくともいずれかが成り立つ)。
比率(E/F)が1未満の場合には、側面層32におけるSiC粒子の割合は、中央層31におけるSiC粒子の割合よりも高いと考えられる。すなわち、比率(E/F)を1未満とすることにより、母材(第1部材10又は第2部材20)と接合部30との界面近傍の炭化珪素(SiC)の割合が増加する。これにより、強度(曲げ強度)を向上させることができる。また、強度のばらつきを抑制することができる。実施形態において、比率(E/F)は、好ましくは1.0未満、より好ましく0.95未満である(E1/F<0.95、及び、E2/F<0.95の少なくともいずれかが成り立つ)。
また、図14には、中央層に含まれるシリコンのX方向の弦長さ(Lx)、中央層に含まれるシリコンのZ方向の弦長さ(Lz)、及び、Lzに対するLxの比(Lx/Lz)を示す。
図15(a)及び図15(b)は、弦長さを説明する模式図である。
図15(a)は、図13と同様のレーザ顕微鏡像である。図15(a)に示すように、接合部の中央層31の断面において、Si部75は、複数のSiスポット75sを含む。この断面において、複数のSiスポット75sのそれぞれは、SiC粒子71によって囲まれており、複数のSiスポット75sは、互いに離間している。
図15(b)は、1つのSiスポット75sを例示する模式図である。
Siスポット75sのX方向の弦長さLxsは、Siスポット75sをX方向に切断したときの長さである。換言すれば、Siスポット75sのX方向の弦長さLxsは、Siスポット75sの外周のうちX方向に互いに離間する2点間の距離である。
同様に、Siスポット75sのZ方向の弦長さLzsは、Siスポット75sをZ方向に切断したときの長さである。換言すれば、Siスポット75sのZ方向の弦長さLzsは、Siスポット75sの外周のうちZ方向に互いに離間する2点間の距離である。
本願明細書において、Lx及びLzは以下のようにして算出される。
まず、図13に関する説明と同様にして、接合部の断面のレーザ顕微鏡像を取得する。得られた像において、三谷商事製のWinROOF ver6.5を使用し、中央層のうち65μm×640μmの領域を、2値化(バレー法)によってSi部とその他の部分とに分離する。すなわち、輝度が高い部分をSi部とする。分離されたSi部に対して、WinROOF ver6.5を用いて弦長さを算出する。すなわち、Si部中の各Siスポットにおいて、水平方向(X方向)の弦長さの平均値を求める。複数のSiスポットの水平方向の弦長さの平均値のうち、最大値を「中央層に含まれるシリコンのX方向の弦長さ(Lx)」とする。また、Si部中の各Siスポットにおいて、垂直方向(Z方向)の弦長さの平均値を求める。複数のSiスポットの垂直方向の弦長さのうち、最大値を「中央層に含まれるシリコンのZ方向の弦長さ(Lz)」とする。
図14に示したように、実施例6〜8において、比率(Lx/Lz)は1未満である。すなわち、実施形態において中央層31のZX断面において、中央層31に含まれるシリコンのX方向(第1方向)の弦長さは、中央層31に含まれるシリコンのZ方向(第2方向)の弦長さよりも短い。実施形態において、比率(Lx/Lz)は、好ましくは0.9未満、より好ましくは0.7未満である。これにより、例えば、中央層31中の空隙の残留などを抑制することができる。強度(曲げ強度)を向上させ、強度のばらつきを抑制することができる。
図16は、実施形態に係る別のセラミック構造体を例示する断面図である。
図16に示すように、実施形態に係るセラミック構造体101の第1部材10は、接合面14をさらに有する。第2部材20は、接合面15をさらに有する。また、接合部30は、接合面11と接合面12とを接合する第1部分30pと、接合面14と接合面15とを接合する第2部分30qと、を有する。
言い換えれば、第1部材10と接合部30との界面40aは、第1界面41と、第2界面42と、を有する。第1界面41は、接合面11と第1部分30pとの界面である。第2界面42は、接合面14と第2部分30qとの界面である。第2界面42は、第1界面41に対して傾斜している。
また、第2部材20と接合部30との界面40bは、第3界面43と、第4界面44と、を有する。第3界面43は、接合面12と第1部分30pとの界面であり、第1部分30pを介して第1界面41と対向する。第4界面44は、接合面15と第2部分30qとの界面である。第4界面44は、第3界面43に対して傾斜しており、第2部分30qを介して第2界面42と対向する。
第1〜第4界面41〜44のそれぞれは、平面状である。第1界面41と第3界面43とは、略平行に配置されている。第2界面42と第4界面44とは、略平行に配置されている。なお、図16は、第1界面41に垂直な方向D1と、第2界面42に垂直な方向D2と、を含む平面におけるセラミック構造体101の断面を表す。
また、第1界面41及び第2界面42は、第3界面43と第4界面44との間に位置する。すなわち、第1界面41と第2界面42との間において、第1部材10は、第2部材20に向かう凸形状である。また、第2部材20は、第1部材の凸形状に対応した凹形状である。
これにより、セラミック構造体101の断面に占める接合部30の割合が小さくなり、強度の低下を抑制することができる。例えば、図17(a)は、図16と同様のセラミック構造体の断面を示し、図17(b)は、図17(a)に示す平面PLにおけるセラミック構造体の断面を示す。また、図17(c)は、接合部30が平面PLに対して平行である場合のセラミック構造体の断面を示し、図17(d)は、図17(c)に示す平面PLにおけるセラミック構造体の断面を示す。平面PLは、第1部材10から第2部材20へ向かう方向に対して垂直な平面である。図17(b)の例では、図17(d)の例に比べて、セラミック構造体の断面に占める接合部30の割合が小さい。
また、図16に示すように、第1部材10と接合部30との界面40aは、第1界面41と第2界面42とを接続する第1曲面51を有する。すなわち、界面40aの先端部は、R形状である。また、第2部材20と接合部30との界面40bは、第3界面43と第4界面44とを接続する第2曲面52を有する。すなわち、界面40bの先端部は、R形状である。
セラミック構造体を形成する際には、二つ以上の焼結前の仮焼体を、炭化珪素粉末と樹脂とを含む接着剤で接合する。接合された仮焼体に溶融Siを含侵させ、熱処理を行うことで、セラミック構造体が形成される。接合部の界面の先端が尖っている場合、尖っている部分では、接着の際に接着剤の流動性が低下する。このため、尖っている部分では、凹形状を有する仮焼体側に、接着剤が充填されにくい。これに対して、界面の先端部を曲面とすることで、接着剤を充填しやすくなる。また、先端部を曲面とすることで、仮焼体のチッピングの発生、空隙の発生、シリコンの偏析の発生を抑制することができる。
図18は、実施形態に係る別のセラミック構造体を例示する断面図である。
図18は、図16に示す領域RAを拡大した図である。
図18に示したように、この断面において、第1曲面51の曲率は、第2曲面52の曲率よりも高い。すなわち、第1曲面51の曲率半径Raは、第2曲面52の曲率半径Rbよりも小さい。また、第1曲面51と第2曲面との間の距離Daが、第1界面41と第3界面43との間の距離Dbよりも短く、第2界面42と第4界面44との間の距離Dcよりも短い。
なお、距離Daは、第1曲面51の法線方向に沿った第1曲面51と第2曲面52との間の距離の最小値である。距離Dbは、方向D1に沿った第1界面41と第3界面43との間の距離である。距離Dcは、方向D2に沿った第2界面42と第4界面44との間の距離である。
接合部30の強度は、第1部材10の強度や第2部材20の強度に比べて低いことがある。曲率半径Raが曲率半径Rbよりも大きい場合、距離Daが距離Db、Dcよりも長くなり、部分的に強度の低下が発生する場合がある。これに対して、曲率半径Raを曲率半径Rbよりも小さくすることにより、距離Daが距離Db、Dcよりも短くなり、強度の低下を抑制することができる。また、距離Daが短いことにより、セラミック構造体の形成において仮焼体を接着するときに、第1曲面51及び第2曲面52の間に接着剤が充填されないことを抑制できる。したがって、強度を高めることができる。
次に実施例1〜8及び比較例1〜3に関して、試料の作成方法について説明する。
図19は、セラミック構造体の製造方法を例示するフローチャートである。
ステップS110においては、セラミックス被接合体となる成形体の成形及び乾燥を行う。まず、粗粒SiC原料および微粒SiC原料の2種類の原料を用意した。粗粒SiC原料における平均粒径は、約20〜100μmであり、微粒SiC原料における平均粒径は、約0.1〜1μmである。これらの2種類の原料が高密度充填となる範囲で配合する。この配合においては、粗粒の重量と微粒の重量との比が7:3である配合量を、基本の配合量とし、出発原料の粒子径の選定条件に基づいて配合量を調整した。SiC原料の総量に対して5〜15重量%の炭素粉末を用意した。分散剤と、用意したSiC粉末と、炭素粉末と、を水に添加し、ボールミルで混合した後、アクリルバインダーを1〜10重量%添加して、鋳込み用原料を作成した。鋳込み用原料に脱泡処理を行った後、鋳込み成形により成形体を得た。得られた成形体を、脱型後、乾燥させた。なお、鋳込み成形においては、鋳込み用原料の粘度が、鋳込み用原料を鋳込み型に流し込めるような粘度となるように、添加する水の量を調整した。また、必要に応じて消泡剤を添加して、脱泡工程をアシストした。
ステップS120においては、鋳込み成形により得られた成形体の仮焼成を行う。得られた成形体に対して、1600〜2000℃の温度範囲で仮焼を行う。これにより、成形体をセラミックス被接合体とした。
ステップS130においては、セラミックス被接合体(仮焼体)を加工する。必要に応じて、セラミックス被接合体を機械的に加工し、接合面を形成した。接合のために必要な複数のセラミックス被接合体を準備し、それぞれにおいて接合面を加工等により形成した。接合面においては、加工屑や切り粉などの除去作業を実施した。
ステップS140においては、セラミックス被接合体を接合する。まず、上述のSiC粉末及び炭素粉末と同じ原料を、上述の配合量と同じ配合量で配合し、接着剤を準備した。これに溶媒と分散剤とを加え混合し、スラリーとした。必要に応じて消泡剤を添加した。また界面での濡れ性の向上を促すため、界面活性剤を数%添加してもよい。混合工程には、プロペラ撹拌、ボールミル又は遠心混合など、様々な混合方法が利用できる。混合後、スラリーにエポキシ樹脂を5〜30重量%添加した。溶媒が水である場合は、水なじみのよいエマルジョンタイプの樹脂を選定した。樹脂を添加した接合剤をよく撹拌した後、脱泡処理を行った。接合作業に適する粘性を接着剤が有するように、水分量を調整した。得られた接着剤をあらかじめ用意したセラミックス被接合体の接合面(接合箇所表面)に塗布し、セラミックス被接合体の接合箇所を押し当て、接着した。
実施例1〜5、比較例1及び2では、接合部の平均厚さと曲げ強度との関係、および、接合部の平均厚さと曲げ強度のワイブル係数との関係を調べるために、接合部の平均厚さが100〜1000μmとなるように接着を行った。その後、接着剤の収縮にセラミックス被接合体が抵抗無く追従するように、セラミックス被接合体の移動量・移動速度を制御した。
また、実施例6〜8及び比較例3では、セラミックス被接合体の組織と接合部の組織との差と、曲げ強度のワイブル係数と、の関係を調べるために、接合部の平均厚さが200μmになるように接着剤の収縮後の厚さを調整した。また、接着剤の収縮速度に対しセラミックス被接合体の移動速度を適宜調整することで、接着剤中に発生する空隙を制御した。これにより、上述のSi面積比率を制御できる。
形成した接着剤層の乾燥および樹脂の硬化処理を行った。
ステップS150においては、接着されたセラミックス被接合体(及び接着剤層)の本焼(含浸)を実施する。まず、十分に硬化した接着剤層は、不活性雰囲気における300℃以上の温度の加熱によって、炭化される。その後、真空下1700℃で仮焼を行った。その後、1400℃から1800℃の範囲の温度においてSi含浸処理を行い、反応焼結炭化珪素を形成し、接合部を形成した。
ステップS160及びステップS170においては、本焼(含浸)されたセラミックス接合体のサンドブラスト及び仕上げ加工を実施する。これにより、表面に付着した余剰なSiを除去した。
以上により、実施例1〜8及び比較1〜3に係るセラミック構造体(焼結体)を作成した。そして、出来上がった焼結体の評価を行った。評価結果は、図3〜図14に関して前述した通りである。
(用途)
実施形態に係るセラミック構造体は、例えば、半導体製造装置用構造部材、液晶製造装置用構造部材、半導体関連部品(ヒートシンクやダミーウエハ等)、高温構造部材、メカニカルシール部材、ブレーキ用部材、摺動部品、ミラー部品、ポンプ部品または熱交換器部品等の、装置部品や装置部材に用いられる。特に、実施形態に係るセラミック構造体は、高真空下における低発塵、低アウトガス、導電性が求められる装置部品や装置部材に好適に用いられる。
半導体製造装置の一例としては、電子線露光装置などが挙げられる。
図20は、電子線露光装置を例示する模式図である。
図20に示すように電子露光装置200は、電子ビーム源210(電子銃)と、処理対象物W(基板等)が載置されるステージ220と、電磁レンズ230と、電子ビームを偏向させる偏向器240とを有する。これらは、真空チャンバ250内に設けられている。
例えば、実施形態に係るセラミック構造体を、このような電子ビームの偏向器240の部材として用いることができる。偏向器240は、電極板を有し、発生する電界によって電子ビームを処理対象物Wの所定の領域において走査させる。電磁レンズ230の磁場によって、偏向器240には渦電流が発生する場合がある。発生した渦電流によって発生する磁界によって、電子ビームの精度が低下する場合がある。これに対して、実施形態に係るセラミック構造体の体積抵抗率は低いため、過電流に起因する磁界の影響を抑制することができる。
実施形態に係るセラミック構造体を、その他の半導体製造装置の半導体製造装置用構造部材として用いてもよい。半導体製造装置とは、例えば、リソグラフィ、CVD(chemical vapor deposition)、アニール、エッチングなどの半導体の処理に用いられる装置だけでなく、検査装置などの半導体製品を製造する際に用いられる装置も含む。半導体製造装置は、例えば、露光装置、検査装置(顕微鏡装置)などである。半導体製造装置用構造部材とは、例えば、上述の偏向器240の部材や、露光装置、検査装置(顕微鏡装置)などのステージや定盤、光学系を保持するフレーム、ミラー部材の部材などである。
(製造方法)
実施形態に係るセラミック構造体の製造方法について説明する。
実施形態に係るセラミック構造体の製造では、第1部材10及び第2部材20となるセラミックス被接合体が、成形体、仮焼体及び反応焼結体のいずれかで段階であるときに接合を行う。セラミックス被接合体の少なくとも一方は、炭化珪素粉末と炭素粉末とを含む。
セラミックス被接合体を2個以上用意する。これらのセラミックス被接合体としては、鋳込み成形により形成した成形体、または、この成形体を不活性雰囲気または真空中で仮焼した仮焼体が用いられる。なお、鋳込み成型においては、炭化珪素と炭素とを分散剤を用いて水などの溶媒に分散させたスラリーであって、バインダーが結合材として添加されたスラリーを石膏に流し込む。
但し、セラミックス被接合物として用いられる成形体は、鋳込み成形物に限らない。上記のスラリー組成物を顆粒状にし、メカプレス又はCIP成形によって形成される成形体を用いてもよい。また、これら成形体の仮焼体を用いてもよい。押し出し成形、射出成形、ゲルキャスト成形などを用いてもよく、成形方法は限定されない。
セラミックス被接合体の接着面は、未加工面であってもよい。ただし、接合の信頼性を高めるため、接着面に加工を施し、平坦な面を形成しておくことが好ましい。接着面どうしの密着力を向上させるために、接着面の表面粗さは、大きいことが好ましい。表面粗さの増加は、溶融Siの含浸により形成される接合部とセラミックス被接合体との密着性、さらにはこれらの接合強度を高めることができる。
次に、セラミックス被接合体を炭化珪素粉末と樹脂とを含有する接着剤(接合剤)で接着する。セラミックス被接合体の接合箇所の表面に接着剤を塗布し、セラミックス被接合体同士を押し当てて、接合を行う。必要な厚みが形成されるまでセラミックス被接合体を加圧する。その後、接着剤を乾燥させる。その際に接着剤は、硬化収縮する。硬化収縮において、接着剤は、セラミックス被接合体と接触している面から反力を受ける。この反力によって、接着剤の収縮が阻害され、接着剤中または接着剤とセラミックス被接合体との界面に亀裂または空隙が発生することがある。そのため、接着剤の収縮にセラミックス被接合体が、例えば抵抗無く追従するように、セラミックス被接合体の移動量・移動速度を1軸のステージ等を用いて制御する。
接着剤は炭素粉末を含有していてもよい。炭化珪素粉末の粒径、炭素粉末の粒径および配合比率に関しては、セラミックス被接合体の作製における調合条件と同一の調合条件を用いることが好ましい。これにより、界面において、接着剤の組織構造とセラミックス被接合体の組織構造とが近似し、密着力が向上することが想定される。製造工程上、接着の工程には接着剤を塗り広げる工程を選定することが好ましい。この場合、接着剤を溶媒などで希釈して、粘度を任意に調整できる。粘度を調整する溶媒に制限はなく、水、アルコールなど任意に選択できる。接着剤は接着剤層(接合剤層)としてセラミックス被接合体の間に存在する。接着剤の粘着成分となる樹脂は、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂であることが好ましい。
接着剤に含まれる炭化珪素粉末の平均粒径は、0.1マイクロメートル(μm)以上100μm以下が好ましい。炭化珪素粉末の平均粒径が0.1μm未満であると分散状態が不均一になりやすく、SiC粒子や遊離Si相の分布状態が不均一になる。炭化珪素粉末の平均粒径が100μmを超えると遊離Si相のサイズが大きくなり、接合部の強度を十分に高めることができないおそれがある。
炭素粉末の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下が好ましい。炭素粉末の平均粒径が0.01μm未満であると、炭素粉末の粒子が凝集しやすく、接着剤の調合が不安定になる。さらに接合部におけるSiC粒子や遊離Si相の分布状態が不均一になる。実施形態においては、0.01〜0.08μmの微細な炭素粉末を高分散させることで信頼性の高い接着を達成している。炭素粉末の平均粒径が20μmを超えると、チョーキング現象が発生しやすくなり、接合部の強度が低下するおそれがある。さらに、遊離Si相の平均径が大きくなって、接合強度の低下やバラツキを招く恐れがある。
接着剤は、炭化珪素粉末と、炭素粉末と、樹脂に由来する炭素成分と、の合計量に対して、炭化珪素粉末を50〜95質量%の範囲で含有することが好ましい。炭化珪素粉末に対する、炭素粉末および樹脂に由来する炭素成分の重量比(C/SiC)を20重量%以下の範囲とすることが好ましい。炭素粉末を原料として必ずしも添加する必要はないが、炭素成分は存在したほうが好ましい。炭素粉末を添加しない場合においても、樹脂より炭化する炭素成分があるため、若干量の炭素は存在する。炭素成分が20重量%を超えると、炭素がSiと反応しSiCが生じる。この際に生じる体積膨張の影響により、強度を十分に発現させることができないことが想定される。
次いで、接着したセラミックス被接合体と接着剤層とに熱処理を施す。これにより、接着剤層を炭化して多孔質部とする。多孔質部はSiの浸透部として機能するものである。接着剤層を多孔質化するための熱処理は、真空中または不活性ガス雰囲気中にて300℃〜2000℃の範囲の温度で実施することが好ましい。多孔質部の気孔率は、一般的な反応焼結体で利用される気孔率の範囲において選定できる。溶融Siの供給経路を確保するため、多孔質部の気孔率は、20%を超えることが好ましい。Siの供給経路が確保されない場合、接合部において残留炭素量が増大する。多孔質部の気孔率が80%を超えると、遊離Si相の量が増大する。これらはいずれも接合部の強度の低下要因となる。
次に、セラミックス被接合体と多孔質部とを、Siの融点以上の温度に加熱し、この加熱状態の多孔質部に溶融Siを含浸させる。多孔質部を1400℃以上の温度に加熱し、真空中または不活性雰囲気中で多孔質部に溶融Siを含浸させる。このような溶融Siの含浸により多孔質部を反応焼結させて、接合部30を形成する。このような接合によってセラミック構造体(接合体)を形成する。
多孔質部を形成する加熱工程と、含浸工程と、を同時に実施することも可能である。すなわち、1400℃までの昇温過程で樹脂を炭化させ、多孔質部を得る。さらに加熱昇温を続けることで、多孔質部を反応焼結させて、セラミックス接合体を得ることもできる。
多孔質部に存在する樹脂に由来する炭素成分や炭素粉末は、高温下で溶融Siと接触して反応し、炭化珪素(SiC)を生成する。出発原料の炭化珪素粉末は、ほとんど変化しないが、一部の炭化珪素粉末においては、上記反応焼結で生成されるSiCが、出発原料の炭化珪素粉末を被覆する。炭素自身がSiCとなれば、粒径の小さいSiC粒子が形成される。さらに、これらSiC粒子の隙間には、Siが遊離Siとしてネットワーク状に連続して存在する。
上述したような接合工程を適用することによって、反応焼結炭化珪素を含む接合部を有する、複数のセラミックス被接合体の接合体が得られる。
図21(a)〜図21(c)は、実施形態に係る別のセラミック構造体を例示する斜視図である。
図21(a)は、実施形態に係るセラミック構造体100aの接合前のセラミックス被接合体10a〜10dを例示する。図21(b)は、セラミックス被接合体10a〜10dが接合部30aにより接合されたセラミック構造体100aの斜視図である。図21(c)は、図21(b)に示すA3−A4線におけるセラミック構造体100aの断面を示す斜視図である。
セラミックス被接合体10a〜10dのそれぞれは、上面又は下面に開口を有する箱状であり、内部に仕切りを有している。これ以外については、セラミックス被接合体10a〜10dには、前述の第1部材10及び第2部材20と同様の説明を適用できる。また接合部30aには、前述の接合部30と同様の説明を適用できる。
セラミック構造体100aの1つの辺の長さは、1メートル(m)よりも長い。図21(b)に表したように、セラミック構造体100aが有する最も長い辺E1の長さL1は、例えば、1m以上である。また、例えば、長さL1は、セラミック構造体100aが有する最も短い辺の長さL2の1倍以上25倍以下である。
また、セラミック構造体100aは、少なくとも3つの面によって囲まれた複数の空間60を内部に有する。各空間60は、例えば閉鎖されている。図21(c)に示す空間60の1つは、面f1〜f3によって囲まれている。
実施形態によれば、高い接合強度を得ることができ、接合強度のばらつきを抑制することができる。これにより、図21(a)〜図21(c)に表したような、大型で、高いアスペクト比を有し、複雑な形状を有するセラミック構造体を作製することができる。
図22(a)及び図22(b)は、実施形態に係る別のセラミック構造体を例示する斜視図である。
図22(a)は、実施形態に係るセラミック構造体100bの接合前のセラミックス被接合体10e〜10hを例示する。図22(b)は、セラミックス被接合体10e〜10fが接合部30bにより接合されたセラミック構造体100bの斜視図である。
セラミックス被接合体10e〜10hのそれぞれは、上面又は下面に開口を有する箱状であり、内部に仕切りを有している。これ以外については、セラミックス被接合体10e〜10hには、前述の第1部材10及び第2部材20と同様の説明を適用できる。また接合部30bには、前述の接合部30と同様の説明を適用できる。
図22(b)に表したように、セラミック構造体100bの一辺(辺E2)の長さL3は、例えば、1m以上である。また、例えば、長さL3は、セラミック構造体100bの他の辺の長さL4の1倍以上25倍以下である。また、セラミック構造体100bは、少なくとも3つの面によって囲まれた複数の空間61を有する。例えば、図22(b)に示す空間61の1つは、面f4〜f6によって囲まれている。実施形態によれば、このように大型で、高いアスペクト比を有し、複雑な形状を有するセラミック構造体を作製することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、第1部材10、第2部材20及び接合部30などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
10 第1部材、 10a〜10h セラミックス被接合体、 11、12、14、15 接合面、 20 第2部材、 30、30a、30b 接合部(介在部)、 30p 第1部分、 30q 第2部分、 31 中央層、 32 側面層、 32a 第1側面層、 32b 第2側面層、 40a、40b 界面、 41〜44 第1〜第4界面、 51 第1曲面、 52 第2曲面、 60、61 空間、 71 SiC粒子、 75 Si部、 100、100a、100b、101 セラミック構造体、 200 電子露光装置、 210 電子ビーム源、 220 ステージ、 230 電磁レンズ、 240 偏向器、 250 真空チャンバ、 Da〜Dc 距離、 L1〜L4 長さ、 Lxs、Lzs 弦長さ、 R、RA 領域、 R1〜R3 観察領域、 S110〜S170 ステップ、 T、Tmax、Tmin 厚さ、 Tave 平均厚さ、 W 処理対象物、 f1〜f6 面

Claims (17)

  1. シリコンと炭化珪素とを含む第1部材と、
    シリコンと炭化珪素とを含む第2部材と、
    前記第1部材と前記第2部材との間に介在し、シリコンと炭化珪素とを含む介在部と、
    を備え、
    前記介在部の断面において128μm×128μmの大きさの観察領域を10箇所設定し、前記介在部の前記10箇所の前記観察領域のそれぞれにおいてシリコンが占める面積の割合を算出し、前記介在部の前記10箇所における前記割合の平均とし
    前記第1部材の断面において128μm×128μmの大きさの観察領域を10箇所設定し、前記第1部材の前記10箇所の前記観察領域のそれぞれにおいて、シリコンが占める面積の割合を算出し、前記第1部材の前記10箇所における前記割合の平均B1とし
    前記第2部材の断面において128μm×128μmの大きさの観察領域を10箇所設定し、前記第2部材の前記10箇所の前記観察領域のそれぞれにおいて、Siが占める面積の割合を算出し、前記第2部材の前記10箇所における前記割合の平均B2とすると
    前記A、前記B1及び前記B2は、1.0<A/B1<1.3、及び、1.0<A/B2<1.3の少なくともいずれかを満たし、
    前記介在部の前記10箇所における前記割合の標準偏差をCとし、
    前記第1部材の前記10箇所における前記割合の標準偏差をD1とし、
    前記第2部材の前記10箇所における前記割合の標準偏差をD2とすると、
    前記C、前記D1及び前記D2は、1.3<C/D1<3.3、及び、1.3<C/D2<3.3の少なくともいずれかを満たすことを特徴とするセラミック構造体。
  2. 前記Aは、23%以上30%以下であることを特徴とする請求項1記載のセラミック構造体。
  3. 前記介在部は、
    中央層と、
    前記中央層と前記第1部材との間に位置する第1側面層と、
    前記中央層と前記第2部材との間に位置する第2側面層と、
    を含み、
    前記第1側面層の断面のうち、65μm×252μmの大きさの領域の面積に対する、前記第1側面層の前記領域に含まれるシリコンの面積の比、E1とし
    前記第2側面層の断面のうち、65μm×252μmの大きさの領域の面積に対する、前記第2側面層の前記領域に含まれるシリコンの面積の比、E2とし
    前記中央層の断面のうち、65μm×252μmの大きさの領域の面積に対する、前記中央層の前記領域に含まれるシリコンの面積の比、Fとすると
    前記E1及び前記E2の少なくともいずれかは、前記Fよりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック構造体。
  4. 前記E1、前記E2及び前記Fは、E1/F<0.95、及び、E2/F<0.95の少なくともいずれかを満たすことを特徴とする請求項に記載のセラミック構造体。
  5. 前記中央層の前記断面は、前記第1部材と前記介在部との界面に対して垂直な第1方向と、前記界面に対して平行な第2方向と、を含む平面における断面であり、
    前記中央層の前記断面において、前記中央層は、複数のシリコンスポットを含み、
    前記複数のシリコンスポットのそれぞれにおいて、前記第1方向の弦長さの平均値を算出し、前記第1方向の弦長さの前記平均値の、前記複数のシリコンスポットにおける最大値をLxとし、
    前記複数のシリコンスポットのそれぞれにおいて、前記第2方向の弦長さの平均値を算出し、前記第2方向の弦長さの前記平均値の、前記複数のシリコンスポットにおける最大値をLzとすると、
    前記Lxは、前記Lzよりも小さいことを特徴とする請求項またはに記載のセラミック構造体。
  6. 前記Lzに対する、前記Lxの比は、0.9未満であることを特徴とする請求項に記載のセラミック構造体。
  7. 前記介在部の平均厚さは、100マイクロメートル以上400マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載のセラミック構造体。
  8. 前記介在部の厚さの最大値と、前記介在部の厚さの最小値と、の差は、100マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項に記載のセラミック構造体。
  9. 前記第1部材と前記介在部との界面は、
    第1界面と、
    前記第1界面に対して傾斜した第2界面と、
    を有し、
    前記第2部材と前記介在部との界面は、
    前記介在部を介して前記第1界面と対向する第3界面と、
    前記第3界面に対して傾斜し、前記介在部を介して前記第2界面と対向する第4界面と、
    を有し、
    前記第1界面及び前記第2界面は、前記第3界面と前記第4界面との間に位置することを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載のセラミック構造体。
  10. 前記第1部材と前記介在部との界面は、前記第1界面と前記第2界面とを接続する第1曲面を有し、
    前記第2部材と前記介在部との界面は、前記第3界面と前記第4界面とを接続する第2曲面を有することを特徴とする請求項に記載のセラミック構造体。
  11. 前記第1界面に対して垂直な方向と、前記第3界面に対して垂直な方向と、を含む平面における断面において、前記第1曲面の曲率半径は、前記第2曲面の曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のセラミック構造体。
  12. 前記第1曲面と前記第2曲面との間の距離は、前記第1界面と前記第3界面との間の距離よりも短く、前記第2界面と前記第4界面との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項1または1に記載のセラミック構造体。
  13. 前記セラミック構造体の曲げ強度から算出されたワイブル係数は、10以上であることを特徴とする請求項1〜1のいずれか1つに記載のセラミック構造体。
  14. 前記介在部における開気孔率は、0.1%以下であることを特徴とする請求項1〜1のいずれか1つに記載のセラミック構造体。
  15. 前記セラミック構造体の体積抵抗率は、2.0×10−2オーム・センチメートル以下であることを特徴とする請求項1〜1のいずれか1つに記載のセラミック構造体。
  16. 少なくとも1つの辺の長さが1メートルよりも長く、
    少なくとも3つの面によって囲まれた空間を複数有することを特徴とする請求項1〜1のいずれか1つに記載のセラミック構造体。
  17. 請求項1〜1のいずれか1つに記載のセラミック構造体を含むことを特徴とする半導体製造装置用構造部材。
JP2017050111A 2016-06-29 2017-03-15 セラミック構造体及び半導体製造装置用構造部材 Active JP6206613B1 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016128949 2016-06-29
JP2016128949 2016-06-29

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6206613B1 true JP6206613B1 (ja) 2017-10-04
JP2018008865A JP2018008865A (ja) 2018-01-18

Family

ID=59997723

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017050111A Active JP6206613B1 (ja) 2016-06-29 2017-03-15 セラミック構造体及び半導体製造装置用構造部材
JP2017127689A Pending JP2018008873A (ja) 2016-06-29 2017-06-29 セラミック構造体及び半導体製造装置用構造部材

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017127689A Pending JP2018008873A (ja) 2016-06-29 2017-06-29 セラミック構造体及び半導体製造装置用構造部材

Country Status (1)

Country Link
JP (2) JP6206613B1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2019235566A1 (ja) * 2018-06-08 2021-05-13 京セラ株式会社 固定器具、光学装置、および光学装置の製造方法
JP7531316B2 (ja) * 2019-06-11 2024-08-09 日本特殊陶業株式会社 SiC焼結部材の製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06172051A (ja) * 1992-09-01 1994-06-21 Ibiden Co Ltd 金属板接合セラミック基板とその製造方法
JP2015193518A (ja) * 2014-03-28 2015-11-05 Toto株式会社 反応焼結炭化珪素部材

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06172051A (ja) * 1992-09-01 1994-06-21 Ibiden Co Ltd 金属板接合セラミック基板とその製造方法
JP2015193518A (ja) * 2014-03-28 2015-11-05 Toto株式会社 反応焼結炭化珪素部材

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018008865A (ja) 2018-01-18
JP2018008873A (ja) 2018-01-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5729517B1 (ja) 反応焼結炭化珪素部材
US20120267339A1 (en) Ceramics composite member and method of producing the same
KR101960264B1 (ko) 잔류응력이 없는 탄화규소 접합체 및 그 제조방법
JP6206613B1 (ja) セラミック構造体及び半導体製造装置用構造部材
KR20220036334A (ko) 복합 소결체, 반도체 제조 장치 부재 및 복합 소결체의 제조 방법
KR102525393B1 (ko) 소성용 세터
KR101723675B1 (ko) 전기전도성 탄화규소-질화붕소 복합 소재 제조용 조성물 및 이를 이용한 전기전도성 탄화규소-질화붕소 복합 소재의 제조방법
KR20210097643A (ko) 치밀질 복합 재료, 그 제법, 접합체 및 반도체 제조 장치용 부재
KR102655140B1 (ko) 복합 소결체, 반도체 제조 장치 부재 및 복합 소결체의 제조 방법
KR102737267B1 (ko) 복합 소결체 및 복합 소결체의 제조 방법
JP2006062898A (ja) 金属−セラミックス複合構造体およびその製造方法
KR101838730B1 (ko) 반응소결 탄화규소 접합체 및 이의 제조 방법
JP7373651B2 (ja) セラミックス、プローブ案内部品、プローブカードおよびパッケージ検査用ソケット
JP7216611B2 (ja) SiC焼結部材の製造方法
JP6401012B2 (ja) セラミック基体
JP2019509243A (ja) 熱積層多層ジルコン系高温同時焼成セラミック(htcc)テープ及びその製造方法
JP6643483B2 (ja) セラミック接合体
JP2009051705A (ja) シリコン/炭化珪素複合材、その製造方法およびその評価方法
JP4854354B2 (ja) 窒化珪素接合体とその製造方法およびこれを用いた半導体製造装置用部材
JP4599591B2 (ja) セラミックス構造体の製造方法
JP5219784B2 (ja) セラミック接合体
JP6179026B2 (ja) 低熱膨張セラミックスおよびその製造方法
JP3001450B2 (ja) セラミック焼結体の製造方法
JP2022012992A (ja) AlN焼結部材の製造方法、電極埋設部材の製造方法および電極埋設部材
You et al. Self-constrained sintering of Al 2 O 3/glass/Al 2 O 3 ceramics by glass infiltration

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170808

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170821

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6206613

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150