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JP6146541B2 - めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐食性に優れためっき鋼板及びその製造方法に関する。
本願は、2014年11月10日に、日本に出願された特願2014−228436号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
缶用の鋼板製品では、耐食性、耐錆性、塗料密着性(塗膜密着性)などの特性を確保するため、鋼板表面上に直接、あるいは、鋼板表面上に存在するSn、ZnやNi等のめっき上に、クロメート皮膜が形成されている。このクロメート皮膜は、金属クロムとオキサイドクロムからなり、六価クロムを含む処理液中で鋼板に陰極電解処理(電解クロム酸処理)を行うことにより形成される。一方で、六価クロムは環境上有害であるため、近年六価クロムを使用しない表面処理でクロメート処理を代替する技術の開発が進んでいる。
鋼板の表面処理の一種として、りん酸塩、ジルコニウム化合物を含有する処理液を用いた化成処理が知られている。例えば、特許文献1、2には、ジルコニウムイオン、ふっ化物イオンおよびりん酸イオンを含む処理液中で、帯鋼に陰極電解処理を行い、帯鋼に化成処理皮膜を被覆することが開示されている。
特許文献3、4、5、6には、りん酸塩溶液が入った一方の浴中でりん酸塩皮膜を形成した後、ジルコニウムイオンを含む溶液が入った他方の浴中でジルコニウム皮膜を形成する方法が開示されている。
日本国特開2009−84623号公報 国際公開2011/118588号パンフレット 日本国特開2009−256726号公報 国際公開2008/123632号パンフレット 日本国特開2009−249691号公報 日本国特開2014−95123号公報
しかしながら、上記の特許文献1〜6に開示された化成処理皮膜は、化成処理皮膜上に塗膜(塗装皮膜)が形成された場合に、比較的良好な耐食性を有しているに過ぎない。一方、化成処理皮膜上に塗膜が形成されない場合には、容器内に腐食性の高い内容物を入れ、この容器を過酷な環境下で使用すると、これらの化成処理皮膜は、耐食性等の性能を十分に発揮することができない。本発明者らは、化成処理皮膜上に塗膜がない条件下において特許文献1〜6に開示された化成処理皮膜が鋼板に十分な耐食性を与えないことを認識し、酸化ジルコニウムの量を増やすことにより、化成処理皮膜上に塗膜を形成しない場合でも十分な耐食性が得られる可能性を見出した。しかしながら、化成処理皮膜上に塗膜を形成しない場合には、酸化ジルコニウムの量を増やすだけでは、十分な耐食性が得られなかった。その上、酸化ジルコニウムの量を増やすと、化成処理皮膜の表面に負荷がかかった際に化成処理皮膜中に凝集した酸化ジルコニウムが生じ、この凝集した酸化ジルコニウムを起点として塗膜が加工時に剥離していた。そのため、塗装密着性が低下して加工後の耐食性が低下した。したがって、従来技術(例えば、特許文献4)では、化成処理皮膜上に塗膜を形成すれば、加工後であっても十分な耐食性が得られるように、酸化ジルコニウムの量を低下させていた。このため、化成処理皮膜上に塗膜を形成しない場合でもめっき鋼板に十分な耐食性を付与し、かつ、十分な塗膜密着性を維持できる化成処理皮膜について検討する必要性を本発明者らは初めて認識した。
また、特許文献3、4、5、6に開示された製造方法は、二つの浴を使用して化成処理皮膜を形成しているので、製造時間が長く生産性が低い。一方で、一つの浴を使用して陰極電解により化成処理皮膜をめっき鋼板上に形成する場合、カチオンをある程度制御することは可能であるが、二つの浴を使用して化成処理皮膜をめっき鋼板上に形成する場合に比べ、化成処理皮膜の品質の制御条件が少なくなる。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、塗膜密着性に優れ、かつ、化成処理皮膜上に塗膜がある条件下だけでなく化成処理皮膜上に塗膜がない条件下においても耐食性に優れためっき鋼板、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を鋭意検討し、優れた塗膜密着性と極めて良好な耐食性とが得られる錫めっき鋼板中の化成処理皮膜と、その化成処理皮膜を実現する方法とを構築した。
即ち、本発明の主旨は、以下の通りである。
(1)本発明の第一の態様に係るめっき鋼板は、鋼板と、Snめっき層を含むめっき金属層と、化成処理層とを備え、前記めっき金属層が、前記鋼板の表面上に存在し、前記化成処理層が、前記Snめっき層の表面上に存在し、前記化成処理層では、P量が3〜20mg/mであり、Zr量が5mg/m超かつ30mg/m以下であり、前記P量と前記Zr量の比率P/Zrが0.35〜1.00であり、前記化成処理層が、りん酸錫と酸化ジルコニウム(IV)とを含み、
前記化成処理層では、電界放出型電子線マイクロアナライザーのマッピング分析によって得られたZrの平均強度の50%以下の強度を有する面積率が0.1〜10%である。
(2)上記(1)に記載のめっき鋼板では、前記Snめっき層は、前記鋼板の表面上に存在してもよい。
(3)上記(1)に記載のめっき鋼板では、前記めっき金属層は、合金層をさらに備え、この合金層は、前記鋼板の表面上に存在し、前記Snめっき層は、前記合金層の表面上に存在し、前記合金層は、Sn、Niからなる群から選択される少なくとも1種の化学元素と、Feとを含んでもよい。
(4)上記(3)に記載のめっき鋼板では、前記合金層は、FeSn相、NiSn相、Fe−Ni系におけるα相、Fe−Ni系におけるγ相からなる群から選択される少なくとも1種の合金を含んでもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のめっき鋼板では、前記Zr量が6mg/m以上であってもよい。
(6)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のめっき鋼板では、前記Zr量が8mg/m以上であってもよい。
(7)上記(1)〜(6)に係るめっき鋼板の製造方法は、鋼板にSnをめっきするSnめっき工程と;前記Snめっき工程後、化成処理液中で前記鋼板に対して陽極電解処理を行う陽極電解処理工程と;前記陽極電解処理工程後、前記化成処理液中で前記鋼板に対して陰極電解処理を行う陰極電解処理工程と;からなり、前記化成処理液は、100ppm〜10000ppmのジルコニウムイオンと、100ppm〜10000ppmのふっ化物イオンと、100ppm〜3000ppmのりん酸イオンと、100ppm〜30000ppmの硝酸イオンとを含み、前記化成処理液の温度が20℃〜60℃であり、化成処理層中のP量が3〜20mg/mの範囲内で、前記化成処理層中のZr量が5〜30mg/mの範囲内で、前記P量と前記Zr量の比率P/Zrが0.35〜1.00の範囲内になるように前記陽極電解処理工程の前記陽極電解処理の条件と前記陰極電解処理工程の前記陰極電解処理の条件を制御する。
(8)上記(7)に記載のめっき鋼板の製造方法は、前記Snめっき工程の前に、Ni、Fe−Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属を前記鋼板にめっきするNi含有めっき工程をさらに含んでもよい。
(9)上記(7)または(8)に記載のめっき鋼板の製造方法は、前記陽極電解処理工程を行う前に、前記化成処理液中で前記鋼板に対して陰極電解処理を行う前処理電解工程をさらに含んでもよい。
(10)上記(9)に記載のめっき鋼板の製造方法における前記前処理電解工程では、前記陰極電解処理中の電流密度が0.1〜10A/dmであり、前記陰極電解処理による通電量が1〜10C/dmであってもよい。
(11)上記(7)〜(10)のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法における前記陽極電解処理工程では、前記陽極電解処理中の電流密度が0.1A/dm〜2A/dmであり、前記陽極電解処理による通電量が0.1C/dm〜2C/dmであってもよい。
(12)上記(7)〜(11)のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法における前記陰極電解処理工程では、前記陰極電解処理中の電流密度が1〜20A/dmであり、前記陰極電解処理による通電量が5〜50C/dmであってもよい。
(13)上記(7)〜(12)のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法では、前記Zr量が6mg/m以上であってもよい。
(14)上記(7)〜(13)のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法では、前記Zr量が8mg/m以上であってもよい。
(15)上記(7)〜(14)のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法では、前記化成処理液のpHが3〜4であってもよい。
本発明により、塗膜密着性と極めて良好な耐食性を具備しためっき鋼板及びその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るめっき鋼板の層構造の概略図である。 本発明の別の実施形態に係るめっき鋼板の層構造の概略図である。 本発明の別の実施形態に係るめっき鋼板の層構造の概略図である。 本発明の別の実施形態に係るめっき鋼板の層構造の概略図である。 P/Zr比率と耐食性との間の関係の一例を示す図である。 製造工程の順序の概略を示す図である。 化成処理工程の順序の概略を示す図である。
以下に、本発明の実施形態に係るめっき鋼板を詳細に説明する。
(めっき鋼板1)
図1〜4に示すように、本実施形態に係るめっき鋼板1は、鋼板2と、鋼板2の表面上のめっき金属層3と、めっき金属層3の表面上の化成処理層4とを備える。めっき金属層3は、Snめっき層3aを含み、場合によっては、合金層3bを含む。すなわち、めっき金属層3は、Snめっき層3aからなる場合と、Snめっき層3aと合金層3bとからなる場合とがある。したがって、めっき金属層3は、Snを含む。また、図2及び図4に示すように、化成処理層4は、めっき金属層3の表面上の第1の化成処理層4aと、第1の化成処理層4aの表面上の第2の化成処理層4bとを備えてもよい。
例えば、図1に示す本発明の一実施形態に係るめっき鋼板1のように、めっき鋼板1は、鋼板2と、Snめっき層3aと、化成処理層4とをこの順番で備える。また、例えば、図2に示す本発明の別の実施形態に係るめっき鋼板1のように、めっき鋼板1は、鋼板2と、Snめっき層3aと、第1の化成処理層4aと、第2の化成処理層4bとをこの順番で備える。また、図3に示す本発明の別の実施形態に係るめっき鋼板1のように、めっき鋼板1は、鋼板2とSnめっき層3aとの間に合金層(合金化層)3bをさらに備えてもよい。Snめっき層3aは、鋼板2と化成処理層4との間に存在する。図1に示すように、めっき鋼板1が合金層3bを備えない場合には、Snめっき層3aは、鋼板2の表面上に存在する。図3に示すように、めっき鋼板1が合金層3bを備える場合には、合金層3bは、鋼板2の表面に存在し、Snめっき層3aは、合金層3bの表面上に存在する。この合金層3bは、Sn、Niからなる群から選択される少なくとも1種の化学元素と、Feを含む。
また、化成処理層4が第1の化成処理層4aと第2の化成処理層4bとを備える場合、第1の化成処理層4aは、Snめっき層3aの表面上に存在し、第2の化成処理層4bは、第1の化成処理層4aの表面上に存在する。化成処理層4は、りん酸錫と、酸化ジルコニウム(IV)とを含む。また、化成処理層4中においては、P量が3〜20mg/mであり、Zr量が5mg/m超かつ30mg/m以下である。さらに、化成処理層4中のZr量に対するP量の比率(P/Zr)が0.35〜1.00である。
本実施形態に係るめっき鋼板1は、飲料缶、食缶等の容器に使用されることが好ましい。しかし、本実施形態に係るめっき鋼板1は、容器としての用途に限定されない。
(鋼板2)
本実施形態では、鋼板2として、種々の鋼板を制限なく使用することができる。例えば、めっき鋼板1を容器に使用する場合には、従来から使用されているアルミキルド鋼や低炭素鋼等の鋼板を鋼板2として問題なく使用できる。また、使用目的に応じて鋼板の厚みや調質度等のグレードを選択すればよい。
(めっき金属層3)
合金層3bの量やSnめっき層3aの量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいので、限定されない。一般に、合金層3bは、Snめっき層と鋼板との間の電位差を小さくし、腐食電流を減らすため、SnとFeとを含む相で構成されることが多い。このように、合金層3bがSnを含む場合、合金層3b中のSn量は、0.1〜1.6g/mであるのが一般的である。Snめっき後にSnを溶融させる加熱工程(リフロー処理)を経ると、少なくとも0.1g/mの量のSnが合金層3b中に不可避的に含まれる。合金層3b中のSn量が1.6g/m以下であると、曲げ、カーリング等の加工時に合金層3b中に微小なクラックが生じ難くなり、腐食の起点(クラック)を減らすことができる。リフロー処理の最高到達温度は、Snの融点が232℃であるため、232℃〜300℃以下である。このリフロー処理では、主にFeSn相が形成される。
Snめっき層3aにおける、金属錫(実質的に単金属の錫、すなわち金属間化合物及び他金属に固溶した錫を除く)の量は、0.2〜12g/mであるのが一般的である。金属錫の量が0.2g/m以上であると、缶胴を製造するためのワイヤーシーム溶接によって局所的に過熱される頻度が減少し、チリと呼ばれる溶融金属の飛散を抑制できるので、十分な溶接適正電流範囲を得やすくなる。金属錫の量が12g/m以下であると、金属錫の単位重量当たりの溶接性が高まり、材料コストや希少資源を節約することができる。
また、合金層3bは、Niを含んでもよい。NiSnの量が増加するとFeSnの量が低下する。そのため、合金層3bがNiを含有する場合には、合金層3b中のFe−Sn合金の過剰生成が抑制され、曲げ、カーリング等の加工時に合金層3b中に微小なクラックが生じ難い。合金層中のNi量が2mg/m以上であると、上記の加工時のクラック生成をより確実に抑制することができる。一方、Ni量が100mg/m以下であると、合金層3b中のNi−Sn合金(NiSn相)の過剰生成が抑制されているため、加工時において合金層3b中に微小なクラックが生成するのを抑制することができる。したがって、合金層3bは、Sn、Niからなる群から選択される少なくとも1種の化学元素と、Feを含む。例えば、合金層3bがFe−Sn合金(Fe−Sn系におけるFeSn相)の層、Fe−Ni合金(Fe−Ni系におけるα相、γ相)の層、Fe−Ni−Sn合金(Fe−Ni−Sn系におけるFeSn相、NiSn相の混相)の層からなる群から選択される少なくとも1種の層からなってもよい。
(化成処理層4)
Snめっき層3aの上に位置する化成処理層4は、りん酸錫と酸化ジルコニウム(IV)とを含む。また、この化成処理層4は、りん酸錫を含む下層(第1の化成処理層4a)と、酸化ジルコニウム(IV)を含む上層(第2の化成処理層4b)とから構成されてもよい。りん酸錫は、酸化ジルコニウム(IV)をSnめっき層3aに接着するためのバインダーとしての役割を有する。化成処理層4がりん酸錫と酸化ジルコニウム(IV)とを含むと、表面構造の制御によってSnめっき層3aの表面を化成処理層4によって適正に覆うことができるので、化成処理層4のバリア性が向上する。
化成処理層4中のP量は、3〜20mg/mであることが必要である。P量が3mg/m未満であると、化成処理層4がめっき金属層3を適正に覆うことができず、めっき鋼板1の耐食性が低下する。一方、P量が20mg/mを超えると、化成処理層4がりん酸化合物の凝集によって破壊され、めっき鋼板1の耐食性が低下する。めっき鋼板1の耐食性をさらに高めるために、化成処理層4中のP量が4mg/m以上であることが好ましく、5mg/m以上であることがより好ましい。化成処理層4中のりん酸化合物の凝集をさらに抑制してめっき鋼板1の耐食性をさらに高めるために、化成処理層4中のP量が15mg/m以下であることが好ましく、10mg/m以下であることがより好ましい。例えば、P量が5〜10mg/mであるとより好ましい。
場合によって、めっき鋼板1に形成される塗膜を除けば、めっき鋼板1の表面には、酸化ジルコニウム(IV)が存在する。酸化ジルコニウム(IV)は、比較的広いpH範囲で不動態として安定に存在し、缶内面に接する様々な内容物に対し高い耐食性を示す。酸化ジルコニウム(IV)を含む化成処理層4がめっき金属層3を適正に被覆するためには、化成処理層4中のZr量が所定範囲内であることが必要である。すなわち、化成処理層4中のZr量(金属Zr換算)は、5mg/m超かつ30mg/m以下であることが必要である。Zr量が5mg/m以下であると、化成処理層4によってめっき金属層3の表面が適正に被覆されないため、十分な耐食性が確保されない。一方、Zr量が30mg/mを超えると、化成処理層4が酸化ジルコニウム(IV)の凝集によって破壊され、めっき鋼板1の耐食性が低下してしまう。化成処理層4のバリア性を高めてめっき鋼板1の耐食性をさらに高めるために、Zr量が6mg/m以上もしくは8mg/m以上であることが好ましく、9mg/m以上もしくは10mg/m以上であることがより好ましい。化成処理層4中の酸化ジルコニウム(IV)の凝集をさらに抑制してめっき鋼板1の耐食性をさらに高めるために、Zr量が25mg/m以下であることが好ましく、20mg/m以下であることがより好ましい。例えば、Zr量が8〜20mg/mであるとより好ましい。また、化成処理層4は、Fを含んでもよい。
P/Zr比率が0.35未満のとき、りん酸錫の量が酸化ジルコニウム(IV)の量に対して不足している。そのため、酸化ジルコニウム(IV)をSnめっき層3aに接着するりん酸錫のバインダーとしての役割が十分でなく、化成処理層4が脆い。したがって、めっき鋼板1が十分な耐食性を有しておらず、めっき鋼板1の外観が悪化する場合もある。P/Zr比率が1.00を超えると、りん酸錫が酸化ジルコニウム(IV)に対して過剰である。そのため、酸化ジルコニウム(IV)の耐食性を高める効果がりん酸錫によって低下する。したがって、めっき鋼板1が十分な耐食性を有しておらず、めっき鋼板1の外観が悪化する場合もある。
図5に、P/Zr比率と耐食性との間の関係の一例を示す。この図5では、十分な耐食性を有するめっき鋼板は、3以上の耐食性を有している。図5に示されているように、P/Zr比率が0.35〜1.00であると、塗装がない場合でも塗装がある場合でもめっき鋼板の耐食性が十分に高い。一方、P/Zr比率が0.35未満もしくは1.00超であると、塗装がある場合に十分な耐食性が得られる場合があるが、図5の矢印から理解できるように塗装がない場合には十分な耐食性が得られない。このように、P/Zr比率を適正に制御することにより、従来では認識されなかった異質的な優れた効果を得ることができる。より高い耐食性をより安定的に得るためには、P/Zr比率が、0.95以下であることが好ましく、0.90以下もしくは0.85以下であることがより好ましい。同様に、P/Zr比率が、0.38以上であることが好ましく、0.40以上もしくは0.50以上であることがより好ましい。
また、化成処理層4上に塗装被膜を形成することなくめっき鋼板1の耐食性を安定的かつ十分に得るためには、酸化ジルコニウム(IV)及びりん酸錫を含む化成処理層4の表面構造(例えば、厚さ)が適正に制御されると好ましい。
この化成処理層4の構造に関する条件は、電界放出型電子線マイクロアナライザー(FE−EPMA)を用いて評価することができる。このFE−EPMAのマッピング分析によってめっき鋼板1の表面を分析して得られた、Zrの平均強度レベルの50%以下の強度レベルを有する領域の面積率(低Zr領域の面積率)が0.1〜10%である表面構造を化成処理層4が有していることが好ましい。この場合に、P/Zr比率の範囲が上述の条件を満たしていると化成処理層4がめっき金属層3上を適正に覆っていると判断でき、めっき鋼板1に対して安定的に十分な耐食性を付与することができる。例えば、低Zr領域の面積率が10%以下であれば、腐食領域を確実に半径35μm以下に制限することができる。この場合、腐食によるめっき鋼板1の変化を目視で確認できないため、実用上十分な耐食性を有しているとみなすことができる。また、例えば、低Zr領域の面積率が0.1%以上であれば、化成処理皮膜4が酸化ジルコニウム(IV)とりん酸錫とによって適正な表面構造を形成するので、実用上十分な耐食性を安定的に有しているとみなすことができる。加えて、そのような表面構造は、応力に対して強いため、めっき鋼板1が塗膜を備える場合に塗膜に応力が作用しても化成処理皮膜4の凝集破壊を安定的に防ぐことができる。このように、化成処理層4の均一性や厚さが大きければ大きいほどめっき鋼板1の耐食性が安定的に向上するわけではない。そのため、P量やZr量だけでなくP/Zrの範囲及び化成処理層4の表面構造も制御すれば、耐食性をさらに向上させたり、高い耐食性を安定的に得たりすることができる。より高い耐食性をより安定的に得るためには、低Zr領域の面積率が0.2%以上であることがより好ましい。同様に、低Zr領域の面積率が9%以下であることがより好ましく、8%もしくは6%以下であることが最も好ましい。
(測定方法)
Snめっき層3a中の金属Snの量は、ASTM A630に準拠する電解剥離法によって測定される。この電解剥離法では、アノードに測定すべきめっき鋼板1を使用し、カソードに白金板を使用する。これらアノード及びカソードに1N塩酸中で定電流を流し、電位−時間曲線を作成した後、ファラデーの法則にしたがって金属Snの量を計算する。また、合金層3b中のFe、Ni、Snの量は、上記のASTM A630に準拠する電解剥離法によってめっき鋼板1から金属Snを剥離して得られた鋼板の表面(剥離面)を蛍光X線元素分析法(XRF)によって分析し測定される。さらに、合金層3b中のFeSn相、NiSn相、α相、γ相は、薄膜X線回折法によって同定される。
化成処理層4中のP量及びZr量は、蛍光X線元素分析法(XRF)によって測定される。測定領域は、めっき鋼板1の表面(化成処理層4の表面)における直径20mm以上の領域である。P量及びZr量の定量には、予め作成した検量線、すなわち、P量とPに対応する波長の蛍光X線強度(CPS)との間の関係式及びZr量とZrに対応する波長の蛍光X線強度(CPS)との間の関係式を使用する。この検量線は、予めICP発光分析装置でP量及びZr量を測定した既知のサンプルの蛍光X線強度(CPS)をXRFにより測定して得られる。なお、蛍光X線装置がP、Zrを測定できれば、蛍光X線装置として機種を限定することなく一般的な市販品を使用することができる。
さらに、X線光電子分光分析(XPS)によりX線光電子スペクトルを測定し、この測定を化成処理層4の厚さ方向(深さ方向)に向けて繰り返す。得られたX線光電子スペクトルから化学元素の存在状態を分析することにより、化成処理層4の層構造を同定し、化成処理層4中に存在する化合物を検出する。Snのスペクトルのケミカルシフトの量から化成処理層4中のSnイオンを同定し、PもしくはOのスペクトルのケミカルシフトの量から化成処理層4中のりん酸イオンを同定する。化成処理層4中にSnイオンとりん酸イオンとを両方同定した場合、化成処理層4中にりん酸錫が存在するとみなす。また、Zrのスペクトルのケミカルシフトの量から化成処理層4中の酸化ジルコニウム(IV)を同定する。Pのスペクトルは、130〜140eVの結合エネルギーの領域から得られ、Zrのスペクトルは、176〜188eVの結合エネルギーの領域から得られ、Snのスペクトルは、482〜490eVの結合エネルギーの領域から得られる。なお、金属Snとして存在するSnのスペクトルの大きさ(高さ)が深さ方向に略一定になった場合に化成処理層4の分析を終了する。各元素の量(P量、Zr量、Sn量)は、スペクトルの面積から算出することができる。スペクトルの面積が0の場合を量が0であるとみなし、スペクトルの面積が深さ方向において最大である場合を量が100であるとみなして化成処理層4の厚さ方向におけるP量、Zr量、Sn量を決定する。ここで、めっき金属層3の表面の粗度に比べて化成処理層4の厚さが非常に小さいので、化成処理層4の表面は、見かけ上ある程度の粗度を有している。したがって、化成処理層4の表面から内部に向かってある深さまで、P量が増加し、Zr量が低下し、Sn量が増加する場合に、化成処理層4が、第1の化成処理層4aとこの第1の化成処理層4aの表面上に存在する第2の化成処理層4bとを備えているとみなす。
めっき鋼板1の表面近傍における酸化ジルコニウム(IV)の分布は、上述のように、めっき鋼板1の表面を電界放出型電子線マイクロアナライザー(FE−EPMA)で分析して得られる。めっき鋼板1の表面の一辺200μmの正方形の領域内におけるZrの強度レベルを1μmピッチで(200×200の40,000点)マッピングする。Zrの強度レベルのマッピングデータからZrの平均強度レベルを算出し、Zrの平均強度レベルの50%以下の強度レベルを有する点をカウントする。得られた点の数を全データ数である40,000点で除することにより、Zrの平均強度レベルの50%以下の強度レベルを有する領域の面積率を算出する。めっき鋼板1の表面の任意の3つの位置について、マッピング分析を1回ずつ行い、得られた3つの面積率を平均してZrの平均強度レベルの50%以下の強度レベルを有する領域の面積率を決定する。すなわち、全データ数が120,000点であるので、Zrの平均強度レベルの50%以下の強度レベルを有する点が12,000点以下であれば、Zrの平均強度レベルの50%以下の強度レベルを有する領域の面積率が10%以下であるとみなす。例えば、Zr量が5mg/mのとき、Zrの平均強度レベルを5mg/mとみなすことができるので、Zr量の平均強度レベルの50%に対応するZr量を2.5mg/mとみなすことができる。上記の測定条件では、Zr量が2.5mg/m以下である領域が10%以下であり、その領域を円形であるとみなすと、その領域の半径は約35μm以下である。腐食領域が35μm以下であると、腐食によるめっき鋼板1の変化を目視で確認できないため、上記の測定条件を採用する必要がある。
(製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るめっき鋼板の製造方法について詳述する。
鋼板にめっきを施す前の工程は、特に限定されない。前処理として、例えば、鋼板に電解アルカリによる脱脂及び希硫酸による酸洗を施してもよい。
鋼板にSnがめっきされる前に、鋼板にNi、または、Fe−Ni合金をめっきしてもよい。この場合、Niめっき浴として、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ほう酸を主成分とするワット浴、塩化ニッケルを主成分とするストライク浴、又は硫酸ニッケルを主成分とする全硫酸浴を用いることができる。Fe−Ni合金めっき浴として、例えば、上記のワット浴に硫酸鉄あるいは塩化鉄を添加した浴、上記のストライク浴に塩化鉄を添加した浴、又は上記の全硫酸浴に硫酸鉄を添加した浴を用いることができる。また、鋼板にNiをめっきした後、Niめっき鋼板を加熱してNiを鋼板表面層内に拡散させ、鋼板表面にFe−Ni合金層を形成させてもよい。
Snめっきの方法は、特に限定されない。例えば、光沢添加剤を含むフェノールスルホン酸浴、硫酸浴等の酸性Snめっき浴を用いることができる。このような酸性Snめっき浴中で電気Snめっきを鋼板に施すと、良好なSnめっきが得られる。
Snめっき後の鋼板は、水又はSnめっき液の希釈液の入った槽に浸漬され、乾燥されてもよい。その後、Snめっき鋼板に対してリフロー処理を施してもよい。リフロー処理は、Snめっき鋼板の表面に光沢を付与するために、Snめっき鋼板をSnの融点である232℃以上に加熱する工程である。この加熱温度が300℃以下であると、過剰な合金層の生成を抑制することができる。加熱手段は特に限定されない。例えば、加熱手段として、電気抵抗加熱や誘導加熱、又は、それらの組み合わせを用いることができる。また、リフロー処理の直後にSnめっき鋼板をクエンチすることで、合金層中のFeSn相及びNiSn相や、Snめっき層の表面上の酸化錫が過剰に生成するのを防ぐことができる。錫を溶融したSnめっき鋼板を水に浸漬してSnめっき鋼板をクエンチすることができる。
Snめっき鋼板に対して以下に述べる方法で化成処理を施す。
本方法の特徴は、りん酸錫と酸化ジルコニウム(IV)とを含む化成処理層を一つの浴を用いて形成することである。同時に生成することが困難な二つの化合物を含む化成処理層を二つの浴を用いて形成させると、二つの浴を用意しなければならないので、一つの浴よりもコストがかかる。加えて、最初の浴中の成分が次の浴中に混入することによって生じる悪い影響を避けるため、操業条件を制約する必要が生じる。例えば、製造条件の一つとして製造ラインの速度を遅くしなければならない。また、成分の混入を回避するために、最初の浴から次の浴にめっき鋼板を移す際にめっき鋼板を水洗すると、水酸化物のような化合物が生じる場合がある。一つの浴だけで化成処理層を形成させると、コストの低減、操業条件の緩和といった製法上のメリットだけでなく、めっき鋼板の表面構造に悪影響を与える中間副生成物の形成の回避といった製品上のメリットもある。
化成処理液中の各イオンの濃度について説明する。
化成処理液中のジルコニウムイオン濃度は、100ppm〜10000ppmである。ジルコニウムイオン濃度が100ppm未満の場合には、核生成、核成長に必要な化成処理液中のジルコニウムイオンが不足し、十分な量の酸化ジルコニウム(IV)を含む化成処理層を得ることができない。一方、ジルコニウムイオン濃度が10000ppmを超える場合には、化成処理層が極度に成長し、化成処理層に過剰なむらを誘発する。
より高いバリア性を得るために、化成処理液中のジルコニウムイオン濃度が、500ppm以上であることが好ましく、1500ppm以上であることが好ましい。また、ジルコニウムイオン濃度が低下するとともに、化成処理層のむらの大きさが低下し、化成処理層が破壊する際の変形量が大きくなる。そのため、化成処理液中のジルコニウムイオン濃度は、9500ppm以下であることが好ましく、9000ppm以下であることがより好ましい。
また、化成処理液中のふっ化物イオン濃度は、100ppm〜10000ppmである。ふっ化物イオンは、ジルコニウムイオン(IV)と安定な錯体を形成して化成処理液中のジルコニウムイオン(IV)を安定にする。加えて、ふっ化物イオンは、めっき鋼板の濡れ性および親液性を向上させ、めっき鋼板の表面が適度に活性化される。ふっ化物イオン濃度が100ppm未満の場合には、ふっ化物イオンとジルコニウムイオン(IV)との錯体が化成処理液中に十分に形成されず、十分な量の安定なジルコニウムイオン(IV)を得ることができない。
一方、ふっ化物イオンが10000ppmを超える場合には、ふっ化物イオンとジルコニウムイオン(IV)とが錯体を形成することによってジルコニウムイオン(IV)が過度に安定化する。通常、陰極電解によってめっき鋼板表面近傍のpHが増加し、このpHの増加によって錯体の加水分解が進行する。しかしながら、錯体が過度に安定化していると、加水分解の速度が低下する。そのため、陰極電解処理時の陰極電流密度及び電解時間に対するZr量の応答性が著しく低下し、陰極電解に要する時間が著しく長くなる。さらに、陰極電解を長時間行うと、化成処理層に過剰なむらを誘発する場合がある。
より高い量の酸化ジルコニウムを含む化成処理層を安定的に得るために、化成処理液中のふっ化物イオンの濃度が、500ppm以上であることが好ましく、1500ppm以上であることが好ましい。また、めっき鋼板の外観によりよくするために、ふっ化物イオンの濃度が、9500ppm以下であることが好ましく、9000ppm以下であることがより好ましい。
また、化成処理液中のりん酸イオン濃度は、100ppm〜3000ppmである。りん酸イオン濃度が100ppm〜3000ppmであると、十分な量のりん酸基を含有する化成処理層を得ることができる。りん酸イオン濃度が100ppm未満では、十分な量のりん酸基を含有する化成処理層を得ることができない。すなわち、陽極電解処理の際にSnめっき層から溶出したSnイオンとりん酸イオンとを反応させ、めっき鋼板の表面にりん酸錫を付与するためには、りん酸イオン濃度が100ppm以上必要である。りん酸イオン濃度が3000ppmを超える場合、化成処理液中にジルコニウムイオンとりん酸イオンとからなると考えられる不溶物が生成しやすくなる場合がある。そのため、不溶物が化成処理液を汚染すると同時に有効なジルコニウムイオン、りん酸イオンが減少する場合がある。
より高い量のりん酸錫を含む化成処理層を安定的に得るために、化成処理液中のりん酸イオンの濃度が、300ppm以上であることが好ましく、1000ppm以上であることがより好ましい。また、化成処理層中のP量をより最適に制御したり、化成処理液をより効率よく利用したりするために、りん酸イオンの濃度が、2800ppm以下であることが好ましく、2500ppm以下であることがより好ましい。
また、化成処理液中の硝酸イオン濃度は、100ppm〜30000ppmである。硝酸イオン濃度が100ppm〜30000ppmであると、陽極電解処理及び陰極電解処理に必要な導電率を維持することができ、めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を形成することができる。硝酸イオン濃度が100ppm未満では、電解処理に必要な導電率が得られず化成処理皮膜が形成されない。また、硝酸イオン濃度が30000ppmを超える場合は、微小な電流でも化成処理皮膜が形成される。そのため、局部成長等を抑制できるように化成処理皮膜の生成速度を制御するのが困難である。
より効率よく電流を使用するために、化成処理液中の硝酸イオン濃度は、500ppm以上であることが好ましく、2000ppm以上であることがより好ましい。また、化成処理皮膜のむらの大きさをより低下させるために、化成処理液中の硝酸イオン濃度は、25000ppm以下であることが好ましく、22000ppm以下であることがより好ましい。
さらに、化成処理液のpHは、3以上であることが好ましい。化成処理液のpHが3以上であると、陰極電解時にめっき鋼板の表面近傍のpHが増加する際にふっ化物イオンとジルコニウムイオン(IV)とによって形成された錯体の加水分解が促進されやすい。また、化成処理液のpHは、4以下であることが好ましい。化成処理液のpHが4以下であると、ふっ化物イオンとジルコニウムイオン(IV)とによって形成された錯体を安定的に得ることができる。また、化成処理液のpHが4以下であると、化成処理液中に酸化ジルコニウム(IV)が生じてジルコニウムイオン(IV)の量が低下することを防ぐことができる。そのため、化成処理液のpHは、3〜4であることが好ましい。なお、pHを下げる場合には、硝酸を用いるとよく、pHを上げる場合には、アンモニア水を用いるとよい。
また、電解処理時の化成処理液の温度は20℃〜60℃である。この温度域では、ふっ化物イオンとジルコニウムイオン(IV)とによって形成された錯体が化成処理液中で安定する。なお、20℃未満の温度では、ジルコニウムイオンとりん酸イオンから成ると考えられる不溶物が化成処理液中に生成されやすい。60℃超の温度では、ふっ化物イオンとジルコニウムイオン(IV)とによって形成された錯体が化成処理液中で不安定となる。また、化成処理液が蒸発しやすいため、化成処理液を長期使用することができない。
本方法の最も大きな特徴は、一つの浴(一種類の化成処理液)中で、陽極電解処理と陰極電解処理をこの順に行って、めっき鋼板の表面にりん酸錫と酸化ジルコニウム(IV)とを含む化成処理層とを形成することである。
次に、電解処理の条件について説明する。化成処理層中のP量及びZr量は、電解処理条件だけでなく、電解処理前のめっき鋼板の表面性状等によっても変動するため、以下の条件に限定されない。但し、めっき鋼板の表面性状等の影響を避けつつ安定的に所定のP量とZr量とが得られるように、以下の条件を選択すると好ましい。
めっき金属層の表面近くの酸化物(例えば、リフロー処理によってSnめっきの表面近くに生じた錫酸化物)を還元するために、場合により、陽極電解処理の前に陰極電解処理を前処理として追加しても良い。この前処理(陰極電解処理)では、陰極電流密度が0.1〜10A/dmであり、通電量が1〜10C/dmであると好ましい。陰極電流密度が0.1A/dm以上であると、リフロー処理で生じた酸化錫を十分に還元することができる。
一方、この前処理における陰極電流密度が10A/dm以下であると、りん酸錫の生成を阻害する物質がめっき鋼板の表面に付着するのをより確実に防ぐことができる。このような物質の量を減らすために、陰極電流密度が1A/dmであることが好ましい。通電量が1C/dm以上であると、リフロー処理で生じた酸化錫を十分に還元することができる。一方、通電量が10C/dm以下であると、リフロー処理で生じた酸化錫を効率良く還元することができるだけでなく、酸化ジルコニウム(IV)も生成しにくい。陽極電解処理の前に陰極電解処理による前処理を行っても、Snめっき中のSnを溶出させることができないので、りん酸錫は形成されない。
陽極電解処理は、錫めっきをゆっくりと化成処理液中に溶解させて生じたSnイオンを化成処理液中のりん酸イオンと結合させることにより、りん酸錫をめっき鋼板表面に付与する工程である。陽極電解処理では、陽極電流密度が0.1A/dm〜2A/dmであり、通電量が0.1C/dm〜2C/dmであると好ましい。陽極電流密度が0.1A/dm以上であると、十分に速い速度でSnを溶解させることができ、めっき鋼板に十分な耐食性を付与するのに十分な量のりん酸錫を適切な時間内に得ることができる。
一方、陽極電流密度が2A/dm以下であると、錫を十分に安定した速度で溶解させることができるので、密でタフなりん酸錫が生成する。そのため、化成処理層がりん酸錫の凝集によって破壊されにくく、めっき鋼板に十分な耐食性を安定的に付与することができる。通電量が0.1C/dm以上であると、十分な量のりん酸錫をめっき鋼板の表面に付着させることができる。一方、通電量が2C/dm以下であると、Snめっき層から大量のSnが溶出するのを防止することができ、バリア型防食に有効なSnめっき層を十分に維持することができる。
陽極電解処理の後に陰極電解処理を行い、酸化ジルコニウム(IV)をりん酸錫が生成しためっき鋼板の表面上に形成する。この陰極電解処理では、陰極電流密度が1〜20A/dmであり、通電量が5〜50C/dmであると好ましい。陰極電流密度が1A/dm以上であると、陰極の表面近傍のpHが十分に上昇し、十分な速度で酸化ジルコニウム(IV)を生成させることができるので、生産性が高い。
一方、陰極電流密度が20A/dm以下であると、局所的に電流密度が高くなる領域が発生したり、水素ガスが発生したりするのを防止することができるので、酸化ジルコニウム(IV)が不均一となる要因をより確実に排除することができる。通電量が5C/dm以上であると、十分な耐食性を得るのに十分な酸化ジルコニウム(IV)の量を安定的に確保することができる。一方、通電量が50C/dm以下であると、化成処理液中で化成処理層が剥離してしまうことを防止することができる。また、短時間で効率よく酸化ジルコニウム(IV)を生成できるので、より経済的に高い生産性で酸化ジルコニウム(IV)の量を制御できる。
化成処理層中のP量、Zr量および比率P/Zrは、化成処理液の組成及び温度と陽極電解の条件と、陰極電解の条件とにより制御できる。本実施形態では、化成処理層中のPは、主にりん酸錫に由来する。一方、本実施形態では、化成処理層中のZrは、主に酸化ジルコニウム(IV)に由来する。P量(主にりん酸錫)とZr量(主に酸化ジルコニウム(IV))とを制御すれば比率P/Zrを制御できる。具体的には、化成処理層中のP量が3〜20mg/mの範囲内、化成処理層中のZr量が5〜30mg/mの範囲内、P量とZr量の比率P/Zrが0.35〜1.00の範囲内になるように、陽極電解処理工程の陽極電解処理の条件と陰極電解処理工程の陰極電解処理の条件を制御する。
化成処理層中のP量を増加させるためには、例えば、化成処理液中のりん酸イオン濃度や硝酸イオン濃度、陽極電解の電流密度や通電量を上記の範囲内で増やす。
化成処理層中のZr量を増加させるためには、例えば、化成処理液中のジルコニウムイオン濃度や硝酸イオン濃度、陰極電解の電流密度や通電量を上記の範囲内で増やす。
本実施形態における製造工程を一貫で説明する。必要に応じて、原板である鋼板の表面に付着した油分及びスケールを除去する(洗浄工程)。次いで、必要に応じて、鋼板の表面にNi系めっきを施す(プレめっき工程)。次いで、鋼板の表面にSnをめっきする(電気Snめっき工程)。次いで、必要に応じて、Snめっき層中のSnを溶融させ、水冷により凝固させる(リフロー工程)。次いで、電解処理(陽極電解処理後、陰極電解処理)によってSnめっき層上に化成処理層を形成する(化成処理工程)。最後に、必要に応じて、化成処理層の表面に防錆油を塗布する。図6に製造工程の順序の概略を、図7に化成処理工程の順序の概略を示す。これら図6及び図7において、破線で囲まれた工程は必要に応じて実施される工程(必要に応じてスキップできる工程)を示し、実線で囲まれた工程は必須の工程であることを示す。
以下、本発明に係る実施例を説明する。
板厚が0.18mmであり、調質度がT−4CAである鋼帯を鋼板(原板)として使用した。この鋼帯は、低炭素冷延鋼帯を連続焼鈍し、次いで、調質圧延して得られている。めっき前に、鋼帯を10mass%水酸化ナトリウム溶液中で電解脱脂した後、5mass%希硫酸で鋼帯を酸洗した。
一部の鋼帯には、Fe−Ni合金めっき、又は、Niめっきを施した。Niめっきを施した鋼帯の一部には、焼鈍によりNiを鋼帯中に拡散させて、Fe−Ni合金層を形成させた。
次いで、フェロスタン浴を用いて鋼帯に対し電気錫めっきを施した。錫イオンを20g/L、フェノールスルホン酸イオンを75g/L、界面活性剤を5g/L含む50℃の錫めっき液中で、陰極電流密度20A/dmで鋼帯の表面を陰極電解した。陽極には、白金めっきしたチタンを用いた。電解時間を調節して錫めっきの量を2.8g/mに調節した。錫めっき後、上記の錫めっき液を10倍に希釈した溶液中に錫めっき鋼板を浸漬し、ゴムロールで錫めっき鋼板の表面に付着した液体を除去した。その後、錫めっき鋼板を冷風で乾燥した。さらに、通電加熱によって10秒間で室温から250℃まで錫めっき鋼板を加熱して錫をリフローさせた。錫がリフローした後直ちに錫めっき鋼板を80℃の水でクエンチした。
引き続き、前述のSnめっき鋼板上に化成処理皮膜を表1〜5に示す条件で形成した。表1〜5中の「プレめっき」及び「電解パターン」の項目について、「−」は、対応する処理を行わなかったことを示す。また、「電解パターン」の項目では、左から右に向けて電解処理を順に行った。得られた化成処理皮膜付きのめっき鋼板を以下のように評価した。また、化成処理液のpHは、3.8に調整した。
<化成処理皮膜の分析用試料>
化成処理皮膜の分析用試料を、めっき鋼板の板幅方向におけるエッジの各々から板幅の1/4の距離だけ離れた位置(2ヶ所)と、めっき鋼板の板幅の中心(1ヶ所)とから採取した。また、この採取位置は、めっき鋼板の圧延方向のエッジから1m以上離れていた。
<化成処理皮膜の分析方法>
Zr及びPの量を蛍光X線元素分析法にて測定した。検量線の作成には、予めICP発光分析装置でZr量及びP量を測定しておいた既知のサンプルを使用した。測定面積は、20mmΦであった。また、XPSにて深さ方向に元素の存在状態を分析した。XPSでは、ULVAC−PHI社製Quantum2000を使用した。測定条件は、以下の通りである。
X線源 :AlKα
X線出力:15kV、25W
測定面積:100μmΦ
真空度 :2.1×10−7Pa
スパッタ速度:17.6nm/分(SiO換算のスパッタ速度)
更に、FE−EPMAでめっき鋼板の表面の一辺200μmの正方形の領域におけるZrの強度レベルを1μmピッチで測定し、この強度レベルをマッピングした(200×200の40,000点)。このマッピングデータから、Zrの平均強度レベル及びZrの平均強度レベルの50%以下のZrの強度レベルを有する領域の面積率を求めた。表1及び表2における「低Zr領域の面積率」は、Zrの平均強度レベルの50%以下のZrの強度レベルを有する領域の面積率を示す。
<耐食性の試験方法>
<塗装なしの耐食性>
耐食性試験液には、0.1%チオ硫酸ナトリウム水溶液と0.1N硫酸を体積比1:2に混合した水溶液を用いた。めっき鋼板から直径35mmの円形試験片を切り出し、耐食性試験液を入れた耐熱瓶の口にその試験片を乗せ固定した。この耐熱瓶に対して121℃で60分の熱処理を行った後、試験片の腐食面積を測定した。耐熱瓶の口の面積に対する試験片の腐食面積の割合から耐食性を評価した。耐熱瓶の口の面積は、試験片が耐食性試験液に触れる面積を意味する。
この腐食面積の割合に応じて耐食性を1〜5点の評点で評価した。この評点が大きくなるほど、腐食面積が小さくなる。評点が3点以上である鋼帯を良好な耐食性を有するめっき鋼板とみなした。
<塗装ありの耐食性>
缶内面に相当する面における評価材(めっき鋼板)の耐食性を評価するために、UCC(アンダーカッティング・コロージョン)試験を行った。めっき鋼板の表面にエポキシフェノール系塗料を、50mg/dm塗布し、205℃で10分間焼き付けた。さらに、180℃で10分間の追い焼きを行った。この塗装板から50mm×50mmの大きさの試料を切出した。カッターの刃が地鉄に達するようなクロスカット(グリッド状の切れ込み)を試料表面の塗膜に入れ、試料の端面及び裏面を塗料でシールした。その後、この試料を、1.5%くえん酸と1.5%塩化ナトリウムとからなる55℃の試験液中に、大気開放下で96時間浸漬した。試料に対し水洗と乾燥とを行った後速やかに、カット部近傍及び平面部を含むように試料にテープを貼り、試料からテープを剥がした。その後、耐食性を評価するために、カット部近傍及び平面部を観察し、カット部近傍にピッティング腐食があるかどうかと、平面部の塗膜が剥がれているかどうかを確認した。
テープによる塗膜の剥離も腐食も認められなかった試料には、評点として4点(非常に良好)を与えた。テープによって塗膜が剥離した領域がカット部から0mm以上かつ0.2mm未満である試料と目視で確認できない僅かな腐食のみが認められた試料には、評点として3点(良好)を与えた。テープによって塗膜が剥離した領域がカット部から0.2mm以上かつ0.5mm以下である試料と目視で腐食が認められた試料には、評点として2点(やや不良)を与えた。テープによって塗膜が剥離した領域がカット部から0.5mm超である試料には、評点として1点(不良)を与えた。評点が3点以上である鋼帯を良好な耐食性を有するめっき鋼板とみなした。
<塗膜密着性(Tピール試験)>
めっき鋼板に、エポキシフェノール系塗料を5g/m塗布し、最高到達温度が180℃となるように焼付けた。このめっき鋼板から、5mm×100mmの大きさの試験片を2枚切出した。この2枚の試験片の間に5mm×90mm×0.05mmの大きさのナイロン接着フィルムを挟み、加熱と圧力とにより試験片の塗装面とナイロン接着フィルムを接着した。結果として、2つの試験片の長手方向の端部にナイロン接着フィルムがない領域が残った。これら領域の各々が試験片の長手方向(ナイロン接着フィルムの長手方向)と直角になるように、かつ、試験片の幅方向(ナイロン接着フィルムの幅方向)に垂直な断面において試験片がT字形状を形成するように、それら領域を曲げた。その領域を引張試験機のチャックでつかみ、200mm/minで引張って剥離強度(Tピール強度)を測定した。このTピール強度は、試験片の幅5mm当たりの強度である。Tピール強度が4kgf(4kg/5mm)を超える場合には、めっき鋼板の塗膜密着性が高いと決定した。一方で、Tピール強度が4kgf(4kg/5mm)以下である場合には、めっき鋼板の塗膜密着性が低いと決定した。
結果として、一部のめっき鋼板では、Tピール強度が2〜4kgfであり、残りのめっき鋼板では、Tピール強度が6kgf以上であった。2〜4kgfのTピール強度を有するめっき鋼板では、一方の試験片の剥離面がくすんだ金属光沢を有し、他方の試験片の剥離面が塗膜で覆われていた。これら試験片の剥離面を電子線マイクロアナライザー(EPMA)により分析したところ、両試験片においてZrが検出された。すなわち、2〜4kgfのTピール強度を有するめっき鋼板は、化成処理皮膜の凝集破壊により塗膜密着性が低下していた。一方、6kgf以上のTピール強度を有するめっき鋼板では、両方の試験片の剥離面がともに塗膜で覆われていた。これら試験片の剥離面を電子線マイクロアナライザー(EPMA)により分析したところ、両試験片においてZrが検出されなかった。このことは、化成処理皮膜に凝集破壊が生じていないことを意味している。
表1に、化成処理液の組成がめっき鋼板の耐食性へ与える影響を示す。表2に、化成処理液の温度がめっき鋼板の耐食性へ与える影響を示す。表3〜5に、電解処理条件がめっき鋼板の耐食性へ与える影響を示す。なお、表1及び2の「低Zr領域の面積率」、「耐食性」の項目について、「−」は、化成処理層を形成できなかった(化成処理液中に沈殿物が生じて化成処理液が安定でなかった)ため対応する項目を評価しなかったことを示す。また、表4の「Zr量」、「P/Zr」の項目について、「ND」は、Zrが検出できなかったことを示し、「−」は、P/Zrの値が計算できないことを示す。
Figure 0006146541
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Figure 0006146541
表1〜5から、発明例では、めっき鋼板が優れた耐食性を有することが明らかである。また、XPSによる測定結果から、発明例の条件全てにおいて、化成処理層がりん酸Sn(りん酸錫)と酸化ジルコニウム(IV)とを含んでいた。また、発明例の一部では、化成処理層に2つの層が明確に認められた。一方、比較例では、めっき鋼板の耐食性が不十分であった。これら比較例のうち、条件71では、陽極電解処理を行わなかったので、化成処理層中にりん酸Snが認められなかった。条件72では、陰極電解処理を行わなかったので、化成処理層中に酸化ジルコニウム(IV)のようなジルコニウム化合物が認められなかった。これら条件71及び条件72ともに、化成処理層に2つの層が認められなかった。
また、表6に、特許文献2の鋼板8と同一の製造条件で製造しためっき鋼板(条件82)の耐食性を示す。この条件82では、めっき鋼板に塗装がある場合には、十分な耐食性が得られた。しかしながら、めっき鋼板に塗装がない場合に条件82のめっき鋼板は十分な耐食性を有していなかった。また、この条件82では、化成処理層中にりん酸Snが認められなかった。
Figure 0006146541
さらに、表7及び表8に、特許文献4の実施例9や実施例27、比較例9と類似の製造条件で製造しためっき鋼板(条件83及び84)の耐食性と塗膜密着性とを示す。すなわち、りん酸塩水溶液が入ったある浴中で陰極電解処理及び陽極電解処理を行い、次いでジルコニウムイオンを含む水溶液が入った別の浴中で極電解処理を行って、化成処理層を形成した。また、特許文献4の実施例9及び実施例27における条件を適宜変更して、化成処理層中のP量、Zr量を変更した。これら条件83及び84では、めっき鋼板に塗装がある場合、めっき鋼板に塗装がない場合のどちらでも十分な耐食性が得られなかった。また、Tピール試験によって評価された塗膜密着性も十分でなかった。一方、表1〜4の発明例の条件全てにおいて、十分な塗膜密着性が得られた。表9に、発明例のめっき鋼板から得られた塗膜密着性の結果の一部を示す。
Figure 0006146541
Figure 0006146541
Figure 0006146541
本発明は、極めて良好な耐食性を具備しためっき鋼板及びその製造方法が提供するので、本発明の産業上の利用可能性は明らかである。
1 めっき鋼板
2 鋼板
3 めっき金属層
3a Snめっき層
3b 合金層(合金化層)
4 化成処理層(化成処理皮膜)
4a 第1の化成処理層(第1の化成処理皮膜)
4b 第2の化成処理層(第2の化成処理皮膜)

Claims (15)

  1. 鋼板と、
    Snめっき層を含むめっき金属層と、
    化成処理層と
    を備え、
    前記めっき金属層は、前記鋼板の表面上に存在し、
    前記化成処理層は、前記Snめっき層の表面上に存在し、
    前記化成処理層では、P量が3〜20mg/mであり、Zr量が5mg/m超かつ30mg/m以下であり、
    前記P量と前記Zr量の比率P/Zrが0.35〜1.00であり、
    前記化成処理層は、りん酸錫と酸化ジルコニウム(IV)とを含み、
    前記化成処理層では、電界放出型電子線マイクロアナライザーのマッピング分析によって得られたZrの平均強度の50%以下の強度を有する面積率が0.1〜10%である
    ことを特徴とするめっき鋼板。
  2. 前記Snめっき層は、前記鋼板の表面上に存在する
    ことを特徴とする請求項1記載のめっき鋼板。
  3. 前記めっき金属層は、合金層をさらに備え、
    この合金層は、前記鋼板の表面上に存在し、
    前記Snめっき層は、前記合金層の表面上に存在し、
    前記合金層は、Sn、Niからなる群から選択される少なくとも1種の化学元素と、Feとを含む
    ことを特徴とする請求項1記載のめっき鋼板。
  4. 前記合金層は、FeSn相、NiSn相、Fe−Ni系におけるα相、Fe−Ni系におけるγ相からなる群から選択される少なくとも1種の合金を含む
    ことを特徴とする請求項に記載のめっき鋼板。
  5. 前記Zr量が6mg/m以上である
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のめっき鋼板。
  6. 前記Zr量が8mg/m以上である
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のめっき鋼板。
  7. 鋼板にSnをめっきするSnめっき工程と;
    前記Snめっき工程後、化成処理液中で前記鋼板に対して陽極電解処理を行う陽極電解処理工程と;
    前記陽極電解処理工程後、前記化成処理液中で前記鋼板に対して陰極電解処理を行う陰極電解処理工程と;
    からなり
    前記化成処理液は、100ppm〜10000ppmのジルコニウムイオンと、100ppm〜10000ppmのふっ化物イオンと、100ppm〜3000ppmのりん酸イオンと、100ppm〜30000ppmの硝酸イオンとを含み、前記化成処理液の温度が20℃〜60℃であり、
    化成処理層中のP量が3〜20mg/mの範囲内、前記化成処理層中のZr量が5〜30mg/mの範囲内、前記P量と前記Zr量の比率P/Zrが0.35〜1.00の範囲内になるように前記陽極電解処理工程の前記陽極電解処理の条件と前記陰極電解処理工程の前記陰極電解処理の条件を制御する
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法。
  8. 前記Snめっき工程の前に、Ni、Fe−Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属を前記鋼板にめっきするNi含有めっき工程をさらに含む
    ことを特徴とする請求項に記載のめっき鋼板の製造方法。
  9. 前記陽極電解処理工程を行う前に、前記化成処理液中で前記鋼板に対して陰極電解処理を行う前処理電解工程をさらに含む
    ことを特徴とする請求項又はに記載のめっき鋼板の製造方法。
  10. 前記前処理電解工程では、前記陰極電解処理中の電流密度が0.1〜10A/dmであり、前記陰極電解処理による通電量が1〜10C/dmである
    ことを特徴とする請求項に記載のめっき鋼板の製造方法。
  11. 前記陽極電解処理工程では、前記陽極電解処理中の電流密度が0.1A/dm〜2A/dmであり、前記陽極電解処理による通電量が0.1C/dm〜2C/dmである
    ことを特徴とする請求項10のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法。
  12. 前記陰極電解処理工程では、前記陰極電解処理中の電流密度が1〜20A/dmであり、前記陰極電解処理による通電量が5〜50C/dmである
    ことを特徴とする請求項11のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法。
  13. 前記Zr量が6mg/m以上である
    ことを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法
  14. 前記Zr量が8mg/m以上である
    ことを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法
  15. 前記化成処理液のpHが3〜4である
    ことを特徴とする請求項14のいずれか一項に記載のめっき鋼板の製造方法
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