(第1の実施の形態)
以下、図1〜図3を用いて第1の形態に係る車両用ポップアップフード装置30について説明する。なお、図面において適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印LHは車両左方(車幅方向一方側)を示している。
図3に示されるように、車両用ポップアップフード装置30は、車両(自動車)10のエンジンルーム(パワーユニット室)ERを開閉するフード12に設けられた左側ポップアップ機構部40及び右側ポップアップ機構部70を主要部として構成されている。この左側ポップアップ機構部40は、フード12の後端部における車両左側端部(車幅方向一方側端部)に配設されており、右側ポップアップ機構部70は、フード12の後端部における車両右側端部(車幅方向他方側端部)に配設されている。さらに、車両用ポップアップフード装置30は、左側ポップアップ機構部40及び右側ポップアップ機構部70を作動させるためのECU90(広義には、「制御部」として把握させる要素である)を備えている。以下、初めにフード12について説明し、次いで左側ポップアップ機構部40、右側ポップアップ機構部70、及びECU90について説明する。
図1(A)及び(B)に示されるように、フード12は、車両外側に配置されて意匠面を構成するフードアウタパネル14と、エンジンルームER側に配置されると共にフードアウタパネル14を補強するフードインナパネル16と、を含んで構成されている。そして、この両者の端末部がヘミング加工によって結合されている。また、フード12がエンジンルームERを閉じた状態(図1(A)及び(B)に示される状態)では、フード12の前端部が、図示しないフードロックによって車体に固定されている。
また、フードインナパネル16の後端側(後部側)には、膨出部18が形成されている。膨出部18はフードインナパネル16に対して車両下側(エンジンルームER)側に膨出されると共に、車幅方向に延在されている。そして、膨出部18の底壁18Aが、側断面視でフードアウタパネル14と略平行に配置されている。また、フード12の車幅方向両端部には、底壁18Aの上面において、後述する左側フードヒンジ42及び右側フードヒンジ72を取付けるための一対のウエルドナット20がそれぞれ設けられている。さらに、底壁18Aには、ウエルドナット20に対応して挿通孔18Bが貫通形成されており、挿通孔はウエルドナット20と同軸上に配置されている。
(左側ポップアップ機構部40について)
図1(A)に示されるように、左側ポップアップ機構部40は、フード12を開閉可能に支持する「フードヒンジ」としての左側フードヒンジ42と、歩行者等の衝突体との衝突時に作動する「第1アクチュエータ」としての左側アクチュエータ60と、を含んで構成されている。
(左側フードヒンジ42について)
左側フードヒンジ42は、車体に固定されたヒンジベース44と、ヒンジベース44に回動可能に連結された第1ヒンジアーム46と、フード12に固定された第2ヒンジアーム48と、を含んで構成されている。
ヒンジベース44は、車両正面視で略逆L字形状に形成されると共に、車幅方向内側から見た側面視で車両上斜め前方へ開放された略V字形状に形成されている。また、ヒンジベース44は、車両前後方向に沿って延在する板状の取付部44Aを備えている。取付部44Aは、板厚方向を略車両上下方向にして、車体側構成部材であるカウルトップサイド22の上面部22Aに配置されている。なお、カウルトップサイド22は、フード12の後端側とウインドシールドガラスの下端部との間に車幅方向に沿って延在するカウルの両サイドに設けられている。また、取付部44Aには、一対の図示しない取付孔が貫通形成されており、この取付孔内に取付ボルト24が挿入されて、取付部44Aが取付ボルト24よって上面部22Aに固定されている。さらに、ヒンジベース44は支持部44Bを備えており、支持部44Bは、取付部44Aの車幅方向内側の端部から車両上方側へ屈曲されて、板厚方向を略車幅方向にした板状に形成されている。
第1ヒンジアーム46は、ヒンジベース44の車幅方向内側に配置されると共に、側面視で略逆台形板状に形成されている。そして、第1ヒンジアーム46の後端部が、車幅方向を軸方向としたヒンジピン50によってヒンジベース44の支持部44Bの上端部にヒンジ結合されている。これにより、第1ヒンジアーム46は、ヒンジピン50を回動中心として車両上下方向にヒンジベース44に対して相対回動可能に構成されている。
また、第1ヒンジアーム46における車両前後方向中間部には、後述する左側アクチュエータ60の下端部を連結するための下側連結軸52が一体に設けられている。この下側連結軸52は、略円柱状に形成されて、第1ヒンジアーム46から車幅方向内側へ突出されている。
第2ヒンジアーム48は、第1ヒンジアーム46の車幅方向内側に配置されると共に、略車両前後方向に沿って延在されている。具体的には、第2ヒンジアーム48は、第1ヒンジアーム46に対して略平行に配置された側壁部48Aを備えている。この側壁部48Aの前端部は、車幅方向を軸方向にしたヒンジピン54によって第1ヒンジアーム46の前端部にヒンジ結合されている。これにより、第2ヒンジアーム48は、ヒンジピン54を回動中心として車両上下方向に第1ヒンジアーム46に対して相対回動可能に構成されている。なお、第2ヒンジアーム48は、シェアピン58によって第1ヒンジアーム46と結合されており、後述する左側アクチュエータ60の非作動状態では、第2ヒンジアーム48の第1ヒンジアーム46に対する相対回動が制限されている。
また、第2ヒンジアーム48は頂壁部48Bを備えている。頂壁部48Bは、側壁部48Aの上端部から車幅方向内側へ折り曲げられて形成されると共に、フード12の膨出部18の下面に沿って略車両前後方向に延在されている。この頂壁部48Bには、前述したウエルドナット20と対向した位置において、図示しない取付孔が貫通形成されている。そして、ヒンジボルト26が車両下側から当該取付孔及び膨出部18の挿通孔18B内へ挿入されてウエルドナット20に螺合されることで、頂壁部48Bが膨出部18に締結(固定)されている。これにより、ヒンジベース44とフード12(の膨出部18)とが、第2ヒンジアーム48及び第1ヒンジアーム46によって連結されている。
さらに、第2ヒンジアーム48における側壁部48Aの後端部には、後述する左側アクチュエータ60の上端部を連結するための上側連結軸56が一体に設けられている。この上側連結軸56は、略円柱状に形成されて、側壁部48Aから車幅方向内側へ突出されている。
(左側アクチュエータ60について)
左側アクチュエータ60は、略円柱状に形成されると共に、第1ヒンジアーム46の車幅方向内側に配置されている。そして、左側アクチュエータ60は、アクチュエータ本体62と、シリンダ64と、を含んで構成されている。
アクチュエータ本体62は車両上側へ開放された略有底円筒状に形成されている。このアクチュエータ本体62の下端部には、下端側連結部62Aが一体に形成されており、下端側連結部62Aは、車幅方向を軸方向とした略円筒形状に形成されている。そして、下端側連結部62A内に下側連結軸52が挿入されて、アクチュエータ本体62の下端部が第1ヒンジアーム46に回動可能に連結されている。
アクチュエータ本体62の内部には、図示しないガス発生装置が収容されている。このガス発生装置は、後述するECU90と電気的に接続されており、ECU90の制御によってガス発生装置が作動するようになっている。そして、ガス発生装置が作動すると、ガス発生装置によって発生したガスがアクチュエータ本体62内に供給されるようになっている。
シリンダ64は、車両下側へ開放された略有底円筒形状に形成されて、アクチュエータ本体62と同軸上に配置されている。そして、アクチュエータ本体62の上部がシリンダ64内に挿入されている。なお、アクチュエータ本体62の上端部とシリンダ64との間には、図示しないOリング等のシール材が設けられており、アクチュエータ本体62とシリンダ64との間がシール材によってシールされている。そして、ガス発生装置によって発生したガスがアクチュエータ本体62内に供給されると、アクチュエータ本体62内のガス圧によってシリンダ64がアクチュエータ本体62の軸方向に沿って上昇(移動)するようになっている。さらに、このときのシリンダ64における移動距離が、左側アクチュエータ60の作動ストロークS1とされている(図2(A)参照)。
また、シリンダ64の上端部には、上端側連結部64Aが一体に設けられており、上端側連結部64Aは、車幅方向を軸方向にした略円筒形状に形成されている。そして、上端側連結部64A内に、第2ヒンジアーム48の上側連結軸56が挿入されて、シリンダ64の上端部が第2ヒンジアーム48に対して相対回動可能に連結されている。これにより、左側アクチュエータ60が、第2ヒンジアーム48と第1ヒンジアーム46との間に架け渡されると共に、車両側面視で車両上側へ向かうに従い車両後側へ傾斜されている。そして、車両側面視において、車両前後方向に沿って延びる基準線Lと左側アクチュエータ60の軸線との成す角度が、左側アクチュエータ60の配置角度A1とされている。換言すると、シリンダ64の作動方向(本実施の形態では、左側アクチュエータ60の軸方向)と基準線Lとの成す角度が、配置角度A1とされている。
(右側ポップアップ機構部70について)
図1(B)に示されるように、右側ポップアップ機構部70は、車体とフード12とを連結する「フードヒンジ」としての右側フードヒンジ72と、歩行者等の衝突体との衝突時に作動する「第2アクチュエータ」としての右側アクチュエータ80と、を含んで構成されている。
(右側フードヒンジ72について)
右側フードヒンジ72は、下側連結軸52の配置位置を除いて、左側フードヒンジ42と左右対称に構成されている。すなわち、右側フードヒンジ72は、車体に固定されたヒンジベース74と、ヒンジベース74にヒンジピン50によって回動可能に連結された第1ヒンジアーム76と、第1ヒンジアーム76にヒンジピン54によって回動可能に連結された第2ヒンジアーム78と、を含んで構成されている。また、第2ヒンジアーム78は、ヒンジボルト26によってフード12の膨出部18に締結固定されると共に、シェアピン58によって第1ヒンジアーム76に結合されている。そして、第1ヒンジアーム76に設けられた下側連結軸52が、左側フードヒンジ42に設けられた下側連結軸52に対して車両上側且つ車両前側に配置されている。
また、右側アクチュエータ80は、左側アクチュエータ60と同一のアクチュエータとして構成されている。なお、便宜上以下の説明では、右側アクチュエータ80を構成する部材には、左側アクチュエータ60を構成する部材と異なる符合を付している。すなわち、右側アクチュエータ80は、アクチュエータ本体82とシリンダ84とを含んで構成されており、アクチュエータ本体82内にガス発生装置が設けられている。また、右側アクチュエータ80の作動ストロークS2(右側アクチュエータ80におけるシリンダ84の移動距離)が、左側アクチュエータ60の作動ストロークS1と同じ長さに設定されている(図2(B)参照)。さらに、右側アクチュエータ80の持上力F(図1(B)参照)と、左側アクチュエータ60の持上力F(図1(A)参照)とが同じ荷重に設定されている。
そして、右側アクチュエータ80の上端側連結部84Aが、右側フードヒンジ72の上側連結軸56に回動可能に連結されており、右側アクチュエータ80の下端側連結部82Aが右側フードヒンジ72の下側連結軸52に回動可能に連結されている。これにより、車両用ポップアップフード装置30では、右側アクチュエータ80の配置角度A2が左側アクチュエータ60の配置角度A1に比べて小さくなるように設定されている。つまり、右側アクチュエータ80が左側アクチュエータ60に比べて水平方向に傾いている。
さらに、車両用ポップアップフード装置30では、上述したように、右側アクチュエータ80の下端部が、左側アクチュエータ60の下端部よりも車両上側に配置されているため、右側アクチュエータ80によるフード12の持上位置H2が、左側アクチュエータ60によるフード12の持上位置H1よりも車両上側になるように設定されている(図2(A)及び(B)参照)。
なお、左側フードヒンジ42及び右側フードヒンジ72は、本来的にはフード12を車体に開閉可能に支持するためのヒンジ部品とされている。つまり、左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80の非作動状態では、第2ヒンジアーム48(78)の第1ヒンジアーム46(76)に対する相対回動がシェアピン58によって制限されており、フード12がエンジンルームERを開閉する場合には、第1ヒンジアーム46,76がヒンジピン50を回動中心にして回動するようになっている。
(ECU90について)
図3に示されるように、ECU90は、左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80の作動制御を行うためのものである。このECU90には、前述した左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80が電気的に接続されると共に、衝突検知センサ92及び衝突予知センサ(図示省略)が電気的に接続されている。
この衝突検知センサ92は、車両10の前端部に配置されたフロントバンパ28のバンパリインフォースメント(図示省略)の前面に沿って配設されている。この衝突検知センサ92は、車両幅方向を長手方向とした略長尺状の圧力チューブ92Aと、圧力チューブ92A内の圧力変化に応じた信号をECU90へ出力する圧力センサ92Bと、を含んで構成されている。そして、歩行者等の衝突体がフロントバンパ28に衝突したときには、圧力チューブ92Aが押し潰されることで圧力チューブ92A内の圧力が変化して、圧力チューブ92A内の圧力変化に応じた信号がECU90に出力されるようになっている。なお、衝突検知センサ92を、圧力チャンバや光ファイバを用いた構成としてもよい。
また、衝突予知センサとしては、ウインドシールドガラスの上部における車幅方向中央付近に設けられたステレオカメラや、車両のフロントグリルの車両後側に設けられたミリ波レーダ等によって構成されて、衝突体までの距離や車両10と衝突体との相対速度等を測定するようになっている。
そして、ECU90が、前述した圧力センサ92Bの出力信号に基づいて衝突荷重を算出すると共に、衝突予知センサの出力信号に基づいて衝突速度を算出するようになっている。さらに、ECU90は、算出された衝突荷重及び衝突速度から衝突体の有効質量を求めると共に、有効質量が閾値を超えるか否かを判断して、車両10への衝突体が歩行者であるのか歩行者以外(例えば、ロードサイドマーカーやポストコーン等の路上障害物)であるのかを判定するようになっている。そして、車両10への衝突体が歩行者であるとECU90が判定したときには、ECU90によって左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80を同時に作動させるように構成されている。
次に第1の実施の形態の作用及び効果について説明する。
車両用ポップアップフード装置30が非作動状態のときには、フード12が閉止位置に配置されて、フード12によってエンジンルームERが閉じられている(図1(A)及び(B)に示されるフード12参照)。この状態から、歩行者等の衝突体と車両10が前面衝突すると、衝突体と前面衝突したことが衝突検知センサ92によって検知され、衝突検知センサ92からECU90に信号が出力される。このとき、ECU90は、衝突検知センサ92及び衝突予知センサから、車両10への衝突体が歩行者であるのか歩行者以外(例えば、ロードサイドマーカーやポストコーン等の路上障害物)であるのかを判定する。そして、車両10への衝突体が歩行者であるとECU90が判定すると、ECU90によって車両用ポップアップフード装置30が作動する。
車両用ポップアップフード装置30の作動では、ECU90の制御によって左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80のガス発生装置が作動して、左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80のアクチュエータ本体62,82内にガスが供給される。アクチュエータ本体62,82内にガスが供給されると、アクチュエータ本体62,82内のガス圧によってシリンダ64,84が押圧されて、シリンダ64,84がアクチュエータ本体62,82の軸方向に沿って車両上側へ軸方向移動(上昇)する。シリンダ64(84)が車両上側へ向けて軸方向移動すると、シリンダ64(84)が第2ヒンジアーム48(78)の後端部を車両上側へ持上げて、フード12の後端部が持上げられる(図2(A)及び(B)参照)。このときには、シェアピン58が破断して、第2ヒンジアーム48(78)が第1ヒンジアーム46(76)に対して車両上側へ相対回動されると共に、第1ヒンジアーム46(76)がヒンジベース44(74)に対して車両上側へ相対回動される。
ここで、車両側面視での左側アクチュエータ60の配置角度A1と右側アクチュエータ80の配置角度A2とが、異なる角度に設定されている。具体的には、左側アクチュエータ60の配置角度A1が右側アクチュエータ80の配置角度A2に比べて大きく設定されている。このため、左側アクチュエータ60の持上力Fにおける車両上側への分力が、右側アクチュエータ80の持上力Fにおける車両上側への分力に比べて大きくなる。
これにより、車両用ポップアップフード装置30が作動したときには、右側アクチュエータ80によるフード12の持上完了時が、左側アクチュエータ60によるフード12の持上完了時よりも遅れる。したがって、左側アクチュエータ60がフード12を持上げることでフード12に生じる第1の振動の位相と、右側アクチュエータ80がフード12を持上げることでフード12に生じる第2の振動の位相と、がずれるため、第1の振動と第2の振動とが互いに相殺するように作用する。その結果、車両用ポップアップフード装置30によってフード12を持上げたときのフード12に生じる振動を抑制できる。
また、車両用ポップアップフード装置30では、左側アクチュエータ60と右側アクチュエータ80とが同一のアクチュエータとして構成されている。このため、左側ポップアップ機構部40及び右側ポップアップ機構部70に用いられるアクチュエータを共通化することができる。これにより、アクチュエータを組付けるときの誤組付を回避することができる。したがって、アクチュエータを組付けるときの作業性の低下を抑制することができる。
さらに、左側ポップアップ機構部40及び右側ポップアップ機構部70に用いられるアクチュエータを共通化することで、車両用ポップアップフード装置30においてアクチュエータの種類が増加すること抑制することができる。その結果、車両用ポップアップフード装置30のコストアップを抑制することができる。
また、車両用ポップアップフード装置30では、右側アクチュエータ80によるフード12の持上位置H2が、左側アクチュエータ60によるフード12の持上位置H1よりも車両上側に設定されている。このため、左側アクチュエータ60によるフード12の持上完了時と、右側アクチュエータ80によるフード12の持上完了時と、の差を一層大きくすることができる。これにより、フード12の持上時にフード12に生じる振動を効果的に抑制できる。
さらに、車両用ポップアップフード装置30では、左側フードヒンジ42の下側連結軸52の位置と、右側フードヒンジ72の下側連結軸52の位置と、を異なる位置に設定することで、左側アクチュエータ60の配置角度A1と右側アクチュエータ80の配置角度A2とを異なる角度に設定できる。このため、左側フードヒンジ42のヒンジベース44、第1ヒンジアーム46、第2ヒンジアーム48の外形形状と、右側フードヒンジ72のヒンジベース74、第1ヒンジアーム76、第2ヒンジアーム78の外形形状と、を左右対称に構成できる。これにより、左側フードヒンジ42及び右側フードヒンジ72の車両10に対する設置スペースを左右で共通化することができ、設計効率を高くすることができる。
なお、第1の実施の形態において、左側ポップアップ機構部40と右側ポップアップ機構部70とが、左右逆になるように構成してもよい。すなわち、右側アクチュエータ80の配置角度A2を左側アクチュエータ60の配置角度A1に比べて大きく設定して、左側アクチュエータ60によるフード12の持上位置H1を右側アクチュエータ80によるフード12の持上位置H2よりも車両上側に設定してもよい。
(第2の実施の形態)
以下、図4及び図5を用いて第2の実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置100について説明する。この第2の実施の形態における車両用ポップアップフード装置100は、以下に示す点を除いて第1の実施の形態と同様に構成されている。
すなわち、図4(A)及び(B)に示されるように、第2の実施の形態では、左側アクチュエータ60の配置角度A1と右側アクチュエータ80の配置角度A2とが、同じ角度に設定されている。また、左側アクチュエータ60の長手方向の長さが、右側アクチュエータ80の長手方向の長さに比して短く設定されると共に、左側アクチュエータ60の作動ストロークS1(図5(A)参照)が右側アクチュエータ80の作動ストロークS2(図5(B)参照)に比して短く設定されている。
具体的には、左側フードヒンジ42の上側連結軸56と、右側フードヒンジ72の上側連結軸56とが、第1の実施の形態と同様に左右対称の位置に配置されている。一方、左側フードヒンジ42の下側連結軸52が、車両側面視で右側フードヒンジ72の下側連結軸52に対して車両上側かつ車両後側に配置されている。
また、図5(A)及び(B)に示されるように、第1の実施の形態と同様に、右側アクチュエータ80によるフード12の持上位置H2が、左側アクチュエータ60によるフード12の持上位置H1よりも車両上側に設定されている。さらに、左側アクチュエータ60の持上力Fと右側アクチュエータ80の持上力Fとは、第1の実施の形態と同様に同じ荷重に設定されている。
そして、車両用ポップアップフード装置30が作動したときには、右側アクチュエータ80の作動ストロークS2が左側アクチュエータ60の作動ストロークS1に比して長く設定されているため、右側アクチュエータ80によるフード12の持上完了時が、左側アクチュエータ60によるフード12の持上完了時よりも遅くなる。これにより、左側アクチュエータ60がフード12を持上げることでフード12に生じる第1の振動の位相と、右側アクチュエータ80がフード12を持上げることでフード12に生じる第2の振動の位相と、がずれるため、第1の振動と第2の振動とが互いに相殺するように作用する。したがって、第2の実施の形態においても、車両用ポップアップフード装置100によってフード12を持上げたときのフード12に生じる振動を抑制できる。
さらに、左側アクチュエータ60の長手方向の長さが右側アクチュエータ80の長手方向の長さに比して短く設定されると共に、左側アクチュエータ60の作動ストロークS1が右側アクチュエータ80の作動ストロークS2に比して短く設定されている。これにより、左側アクチュエータ60と右側アクチュエータ80とでは、長手方向の長さが異なるため、左側アクチュエータ60と右側アクチュエータ80とを容易に区別することができる。さらに、左側フードヒンジ42における上側連結軸56と下側連結軸52との間のピッチ間距離と、右側フードヒンジ72における上側連結軸56と下側連結軸52との間のピッチ間距離とが異なるため、左側アクチュエータ60(右側アクチュエータ80)を右側フードヒンジ72(左側フードヒンジ42)に組付けることができない。これにより、左側アクチュエータ60(右側アクチュエータ80)を左側フードヒンジ42(右側フードヒンジ72)に組付けるときの誤組付を防止できる。以上により、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
なお、第2の実施の形態において、左側ポップアップ機構部40と右側ポップアップ機構部70とが、左右逆になるように構成してもよい。すなわち、右側アクチュエータ80の作動ストロークS2を左側アクチュエータ60の作動ストロークS1に比して短く設定して、左側アクチュエータ60によるフード12の持上位置H1を右側アクチュエータ80によるフード12の持上位置H2よりも車両上側に設定してもよい。
(第3の実施の形態)
以下、図6及び図7を用いて第3の実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置110について説明する。この第3の実施の形態における車両用ポップアップフード装置110は、以下に示す点を除いて第1の実施の形態と同様に構成されている。
すなわち、図6(A)及び(B)に示されるように、第3の実施の形態では、右側アクチュエータ80の長手方向の長さが、左側アクチュエータ60の長手方向の長さに比して短く設定されると共に、右側アクチュエータ80の作動ストロークS2(図7(B)参照)が左側アクチュエータ60の作動ストロークS1(図7(A)参照)に比して短く設定されている。
具体的には、左側フードヒンジ42の上側連結軸56と、右側フードヒンジ72の上側連結軸56とは、第1の実施の形態と同様に左右対称の位置に配置されている。一方、右側フードヒンジ72の下側連結軸52が、左側フードヒンジ42の下側連結軸52に対して車両上側に配置されている。さらに、図7(A)及び(B)に示されるように、第3の実施の形態では、右側アクチュエータ80によるフード12の後端部の持上位置H2と、左側アクチュエータ60によるフード12の後端部の持上位置H1とが、車両上下方向において同じ位置になるように設定されている。
なお、左側アクチュエータ60の配置角度A1は、第1の実施の形態と同様に、右側アクチュエータ80の配置角度A2と比べて大きく設定されている(図6(A)及び(B)参照)。また、第1の実施の形態と同様に、左側アクチュエータ60の持上力Fと右側アクチュエータ80の持上力Fとは同じ荷重に設定されている。
そして、第3の実施の形態においても、車両用ポップアップフード装置110の作動時では、左側アクチュエータ60の持上力Fにおける車両上側への分力が、右側アクチュエータ80の持上力Fにおける車両上側への分力に比べて大きくなる。このため、車両用ポップアップフード装置110が作動したときに、右側アクチュエータ80によるフード12の持上完了時が、左側アクチュエータ60によるフード12の持上完了時よりも遅くなるようにすることができる。これにより、左側アクチュエータ60がフード12を持上げることでフード12に生じる第1の振動の位相と、右側アクチュエータ80がフード12を持上げることでフード12に生じる第2の振動の位相と、がずれるため、第1の振動と第2の振動とが互いに相殺するように作用する。したがって、第3の実施の形態においても、車両用ポップアップフード装置110によってフード12を持上げたときのフード12に生じる振動を抑制できる。
また、第3の実施の形態では、右側アクチュエータ80の長手方向の長さが、左側アクチュエータ60の長手方向の長さに比して短く設定されると共に、右側アクチュエータ80の作動ストロークS2が左側アクチュエータ60の作動ストロークS1に比して短く設定されている。このため、第2の実施の形態と同様に、左側アクチュエータ60と右側アクチュエータ80とを容易に区別することができ、左側アクチュエータ60(右側アクチュエータ80)を左側フードヒンジ42(右側フードヒンジ72)に組付けるときの誤組付を防止できる。
さらに、第3の実施の形態では、左側アクチュエータ60によるフード12の持上位置H1と、右側アクチュエータ80によるフード12の持上位置H2とが車両上下方向において同じ位置になるように設定されている。このため、例えば、フード12上に倒れ込んだ歩行者の頭部に対するフード12の上下方向位置を車幅方向において揃えることができる。また、例えば、フード12の後端部の車両下側に歩行者保護エアバッグを搭載する車両に対して、当該歩行者保護エアバッグの展開スペースを有効に確保することができる。
なお、第3の実施の形態において、左側ポップアップ機構部40と右側ポップアップ機構部70とが、左右逆になるように構成してもよい。すなわち、左側アクチュエータ60の作動ストロークS1を右側アクチュエータ80の作動ストロークS2に比して短く設定すると共に、右側アクチュエータ80の配置角度A2を左側アクチュエータ60の配置角度A1と比べて大きく設定してもよい。
また、第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、左側アクチュエータ60と右側アクチュエータ80とが、ECU90によって同時に作動するように設定されている。これに代えて、左側アクチュエータ60の作動開始時と右側アクチュエータ80の作動開始時とを、ずらすように設定してもよい。例えば、第1の実施の形態を用いて説明すると、左側アクチュエータ60の作動開始後に、右側アクチュエータ80を作動させるように設定してもよい。これにより、左側アクチュエータ60によるフード12の持上完了時と、右側アクチュエータ80によるフード12の持上完了時と、の差をより一層大きくすることができる。また、左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80の作動タイミングを適宜調整することで、左側アクチュエータ60の作動によってフード12に生じる第1の振動の位相と、右側アクチュエータ80の作動によってフード12に生じる第2の振動の位相と、のずれを適宜調整することができる。これにより、フード12に生じる振動に対する抑制効果を一層高くすることができる。
また、第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、左側フードヒンジ42(右側フードヒンジ72)が、ヒンジベース44(74)、第1ヒンジアーム46(76)、及び第2ヒンジアーム48(78)によって構成されているが、左側フードヒンジ42及び右側フードヒンジ72の構成はこれに限らない。例えば、左側フードヒンジ42(右側フードヒンジ72)の第1ヒンジアーム46(76)を省略して、第2ヒンジアーム48(78)をヒンジベース44(74)に回動可能に連結してもよい。この場合には、左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80を車体に固定して、左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80によってフード12又は第2ヒンジアーム48,78を持上げるように構成してもよい。
また、第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、左側フードヒンジ42及び右側フードヒンジ72を構成するヒンジベース、第1ヒンジアーム、第2ヒンジアームの外形形状が左右対称に構成されているが、これらヒンジベース、第1ヒンジアーム、第2ヒンジアームの外形形状を左右非対称に構成してもよい。例えば、第2ヒンジアームのアーム比が左右で異なるように、第2ヒンジアームを左右非対称に構成してもよい。これにより、第2ヒンジアームにおけるヒンジピン54と上側連結軸56とのピッチ間距離が左右で異なるため、左側アクチュエータ60によるフード12の持上位置H1と、右側アクチュエータ80によるフード12の持上位置H2と、の差を左右の第2ヒンジアームによっても調整できる。
また、第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80が、アクチュエータ本体と、シリンダと、を含んで構成されている。これに代えて、左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80を、アクチュエータ本体と、アクチュエータ本体内に収容されたピストンロッドと、によって構成してもよい。
また、第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80がフード12の後端部を持上げる車両用ポップアップフード装置に適用されている。これに代えて、フード12の前端部を持上げる車両用ポップアップフード装置に左側アクチュエータ60及び右側アクチュエータ80を適用してもよい。例えば、フード12の前端部における車両左側端部の車両下側に左側アクチュエータ60を配置すると共に、フード12の前端部における車両右側端部の車両下側に右側アクチュエータ80を配置してもよい。この場合には、車両用ポップアップフード装置が作動することで、フード12の前端部が車両上側へ持上可能な状態にされる。