しかしながら、上記車両用ポップアップフード装置では、下記のような問題点がある。すなわち、押上位置では、ピストンシリンダユニットが側面視で車両後方側へ向かうに従い車両上方側へ傾斜して配置される。一方、歩行者等がフード上に倒れ込むことで生じる衝突荷重の方向は、車両後斜め下方側となる。このため、ピストンがシリンダ内を後退する方向と、フードに作用する衝突荷重の方向と、が大きく異なる。これにより、衝突荷重によってピストンをシリンダ内に後退させてピストンの環状ビードの歯をせん断させることが困難な構造になっている。したがって、上記車両用ポップアップフード装置では、衝突エネルギーを効果的に吸収する点において改善の余地がある。
本発明は、上記事実を考慮し、フードへの衝突エネルギーを効果的に吸収できる車両用ポップアップフード装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置は、車体に固定されたヒンジベースと、前記ヒンジベースに回動可能に支持されたリンクと、前記リンクに回動可能に支持されると共に、フードの後部側に固定されたヒンジアームと、前記リンクに設けられたアクチュエータ内に収容されると共に、一端部が前記ヒンジアームに連結され、前記アクチュエータの作動時に前記ヒンジアームをフード上方側へ押上げることで前記フードを押上位置に配置させ且つ前記リンクをフード上方側へ回動させるロッドと、前記ヒンジベース及び前記リンクの一方に設けられ、押上位置において前記ヒンジベース及び前記リンクの他方に当接して前記フードを押上位置に保持すると共に、前記フードに衝突荷重が作用した場合に塑性変形することで衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材と、を備えている。
請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置では、車体に固定されたヒンジベースにリンクが回動可能に支持されている。このリンクには、ヒンジアームが回動可能に支持されており、ヒンジアームはフードの後部側に固定されている。また、ヒンジアームには、ロッドの一端部が連結されており、ロッドは、リンクに設けられたアクチュエータ内に収容されている。そして、アクチュエータが作動すると、ロッドがヒンジアームをフード上方側へ押上げて、フードが押上位置に配置されると共に、リンクがフード上方側へ回動される。
ここで、ヒンジベース及びリンクの一方には、エネルギー吸収部材が設けられている。そして、押上位置において、ヒンジベース及びリンクの他方とエネルギー吸収部材とが当接して、フードが押上位置に保持される。これにより、押上位置におけるロッドの移動を規制するロック機構を用いる必要がなくなる。
そして、フードに衝突荷重が作用した場合には、衝突荷重がリンクを介してエネルギー吸収部材に伝達され、エネルギー吸収部材が塑性変形する。これにより、衝突エネルギーが吸収される。このとき、ロッドの移動は規制されていないため、ロッドがアクチュエータ内をフード下方側へ後退すると共に、リンクがフード下方側へ回動する。このように、ロッドとは別のエネルギー吸収部材によって衝突エネルギーを吸収するため、衝突エネルギーを吸収するときにおいて、ロッドの後退方向と衝突荷重の方向とが大きく異なることによる影響を少なくできる。以上により、フードへの衝突エネルギーを効果的に吸収できる。
請求項2に記載の車両用ポップアップフード装置は、請求項1に記載の発明において、前記ヒンジアームが前記ヒンジベースに対して車両幅方向内側にオフセットして配置され、押上位置において前記リンクが車両幅方向外側へ撓み変形することで、前記エネルギー吸収部材と、前記リンク及び前記ヒンジベースの他方と、が当接される。
請求項2に記載の車両用ポップアップフード装置では、ヒンジアームがヒンジベースに対して車両幅方向内側にオフセットして配置されている。このため、ヒンジアームがフードを押上位置に押上げたときに、フードを押上げた反動によってヒンジアームにフード下方側の力が作用すると、リンクに回転モーメントが作用する。そして、リンクが車両幅方向外側へ撓み変形して、リンク及びヒンジベースの他方とエネルギー吸収部材とが当接される。
したがって、ヒンジベースとヒンジアームとが車両幅方向にオフセットして配置された車両に対して、リンクの撓み変形を利用して、ヒンジベース及びリンクの他方と、エネルギー吸収部材と、を当接させることができる。
請求項3に記載の車両用ポップアップフード装置は、請求項2に記載の発明において、前記エネルギー吸収部材が前記ヒンジベースに設けられ、押上位置において前記リンクの下端が前記エネルギー吸収部材に当接される。
請求項3に記載の車両用ポップアップフード装置では、エネルギー吸収部材がヒンジベースに設けられており、押上位置では、リンクの下端がエネルギー吸収部材に当接される。このため、リンクが撓み変形する際の変位量が大きい部位を利用して、リンクとエネルギー吸収部材とを当接させることができる。これにより、リンクをエネルギー吸収部材に良好に当接させることができる。
請求項4に記載の車両用ポップアップフード装置は、請求項3に記載の発明において、前記エネルギー吸収部材には、押上位置において前記リンクの下端と対向して配置される当接片が設けられ、前記当接片の車両幅方向内側の端部には、上側へ突出された突出部が形成されている。
請求項4に記載の車両用ポップアップフード装置では、エネルギー吸収部材に当接片が設けられており、押上位置において、リンクの下端が当接片と対向して配置される。また、当接片の車両幅方向内側の端部には、上側へ突出された突出部が形成されている。これにより、押上位置において、リンクが車両幅方向内側へ移動すると、リンクの下端が突出部に当接(係止)されて、リンクの車両幅方向内側への移動が抑制される。
そして、フードに衝突荷重が作用した場合には、当接片がフード下方側へ曲げ変形することで、衝突エネルギーが吸収される。このため、例えば、突出部の突出高さ等を適宜変更することで、当接片の曲げ変形の開始から当接片とリンクの下端との当接状態が解除されるまでの期間を容易に調整できる。したがって、当接片による衝突エネルギーを吸収する期間を容易に設定できる。
請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置によれば、フードへの衝突エネルギーを効果的に吸収できる。
請求項2に記載の車両用ポップアップフード装置によれば、簡易な構成でフードを押上位置に保持できる。
請求項3に記載の車両用ポップアップフード装置によれば、リンクをエネルギー吸収部材に良好に当接させることができる。
請求項4に記載の車両用ポップアップフード装置によれば、当接片による衝突エネルギーを吸収する期間を容易に設定できる。
以下、図面を用いて本実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置10について説明する。なお、図面において適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印RHは車両右方を示している。
図2に示されるように、車両用ポップアップフード装置10は、エンジンルームを開閉するフード12の後端側両サイドにそれぞれ配設された左右一対のポップアップ機構部20を主要部として構成されている。左右のポップアップ機構部20はいずれも同一の構成であるので、以下の説明では車両右側に配置されたポップアップ機構部20の構成について説明し、車両左側に配置されたポップアップ機構部20の構成の説明は省略する。
図3に示されるように、ポップアップ機構部20は、フード12を開閉可能に支持するフードヒンジ22と、歩行者等の衝突体との衝突時に作動するアクチュエータ50と、アクチュエータ50に設けられたロッド56と、フードヒンジ22に設けられたエネルギー吸収部材としてのエネルギー吸収ブラケット(以下、「EAブラケット」という)60と、を含んで構成されている。以下、初めにフード12の構成について説明し、次いで上記各構成について説明する。
フード12は、車両外側に配置されて意匠面を構成するフードアウタパネル14と、エンジンルーム側に配置されると共にフードアウタパネル14を補強するフードインナパネル16と、を含んで構成されており、その両者の端末部がヘミング加工によって結合されている。また、フードインナパネル16の後端側(後部側)はフード下方側へ膨らんでおり、これによりフード12の後端側に後端膨らみ部16Aが形成されている。
<フードヒンジ22の構成>
図3〜図5に示されるように、フードヒンジ22は、ヒンジベース24と、リンクとしての回動リンク30と、ヒンジアーム40とを含んで構成されている。ヒンジベース24は、車両正面視で略逆L字形状に形成されると共に、車両幅方向内側から見た側面視で車両上斜め前方へ開放された略V字形状(詳しくは、図6参照)に形成されている。また、ヒンジベース24は、車両前後方向に沿って延在する板状の取付部24Aを備えている。取付部24Aは、板厚方向を略車両上下方向にして、車体側構成部材であるカウルトップサイド18の上面部18A(図3参照)に配置されている。なお、カウルトップサイド18は、フード12の後端側とウインドシールドガラスの下端部との間に車両幅方向に沿って延在するカウルの両サイドに設けられている。また、取付部24Aには、一対の取付孔26(図5参照)が貫通形成されており、取付孔26内に取付ボルト(図示省略)が挿入されて、取付部24Aが取付ボルトよって上面部18Aに固定されている。さらに、ヒンジベース24は支持部24Bを備えており、支持部24Bは、取付部24Aの車両幅方向内側の端部から車両上方側へ屈曲されて、板厚方向を略車両幅方向にした板状に形成されている。
回動リンク30は、ヒンジベース24の車両幅方向内側(車両幅方向一方側)に配置されると共に、側面視で略逆三角形板状に形成されている。具体的には、回動リンク30は、側面視で、下端部30Aと、下端部30Aの車両前方側且つ車両上方側に配置された前端部30Bと、下端部30Aの車両後方側且つ車両上方側に配置された後端部30Cと、を頂点とした略逆三角形板状に形成されている(図3参照)。また、回動リンク30における車両前後方向中間部には、湾曲部32(図4及び図5参照)が形成されており、湾曲部32は、平面視で車両前方側へ向かうに従い車両幅方向内側へ傾斜されている。これにより、回動リンク30の前部(湾曲部32に対して車両前方側の部分)が、回動リンク30の後部(湾曲部32に対して車両後方側の部分)よりも車両幅方向内側に配置されており、回動リンク30の前部に回動リンク30の下端部30Aが形成されている。
また、回動リンク30の後端部30Cは、ヒンジベース24の支持部24Bの上端部にヒンジピン34によってヒンジ結合されている。これにより、回動リンク30は、ヒンジピン34を回動中心として車両上下方向(図3の矢印A方向及び矢印B方向)へ回動可能に構成されている。さらに、回動リンク30の下端部30Aには、後述するアクチュエータ50の下端部を回動可能に支持する連結軸36が設けられている。連結軸36は、略円柱状に形成されて、軸方向を車両幅方向にして回動リンク30から車両幅方向内側へ突出されている。また、回動リンク30の外周部には、上辺(前端部30Bと後端部30Cとを繋ぐ辺)を除く部分において、フランジ38が一体に形成されており、フランジ38は車両幅方向内側へ屈曲されている。
ヒンジアーム40は、回動リンク30における前部の車両幅方向内側に配置されると共に、略車両前後方向に沿って延在されている。具体的には、ヒンジアーム40は、回動リンク30の前部に対して平行に配置された側壁部40Aを備えており、側壁部40Aの前端部が回動リンク30の前端部30Bにヒンジピン42によってヒンジ結合されている。これにより、ヒンジアーム40は、ヒンジピン42を回動中心として車両上下方向(図3の矢印C方向及び矢印D方向)に回動リンク30に対して相対回動可能に構成されている。
また、ヒンジアーム40は頂壁部40Bを備えている。頂壁部40Bは、側壁部40Aの上端部から車両幅方向内側へ折り曲げられて形成されると共に、フード12の後端膨らみ部16Aの下面に沿って略車両前後方向に延在されている(図3参照)。この頂壁部40Bの前部には、取付孔44(図4及び図5参照)が貫通形成されており、フード12の後端膨らみ部16Aには、取付孔44に対応する位置において、ウエルドナット(図示省略)が固定されている。そして、図示しないヒンジボルトが車両下方側から取付孔44内へ挿入されてウエルドナットに螺合されることで、頂壁部40Bが後端膨らみ部16Aに締結(固定)されている。これにより、ヒンジベース24とフード12(の後端膨らみ部16A)とが、ヒンジアーム40及び回動リンク30によって連結されている。
また、上述したように、ヒンジベース24、回動リンク30、及びヒンジアーム40が、この順で車両幅方向内側へ向かって並んでいる。このため、フードヒンジ22では、ヒンジアーム40の頂壁部40B(フード12との固定部位)が、ヒンジベース24の取付部24A(車体との固定部位)に対して車両幅方向内側にオフセットして配置されている。
さらに、ヒンジアーム40における側壁部40Aの後端部には、後述するロッド56を連結するための連結軸46が一体に設けられている。この連結軸46は、略円柱状に形成されて、側壁部40Aから車両幅方向内側へ突出されている。
なお、フードヒンジ22は、本来的にはフード12をボディ(車体)に開閉可能に支持するためのヒンジ部品であるが、本実施形態では、車両用ポップアップフード装置10の構成要素でもある。すなわち、通常時にフード12を開閉する場合には、後述するアクチュエータ50及びロッド56によってヒンジアーム40の回動リンク30に対する相対回動が規制された状態(図3〜図5に示される状態)で、回動リンク30がヒンジピン34を回動中心にして回動されるようになっている。
<アクチュエータ50の構成>
図3及び図6に示されるように、アクチュエータ50は、略円柱状に形成されると共に、回動リンク30の車両幅方向内側に配置されている。また、アクチュエータ50の下部には、アクチュエータ用ブラケット52が一体的に設けられており、アクチュエータ用ブラケット52の下端部が、回動リンク30の連結軸36に回動可能に支持されている。これにより、アクチュエータ50の下端部が回動リンク30に対して相対回動可能に構成されている。
また、アクチュエータ50のハウジング54の内部には、図示しないガス発生装置が収容されている。このガス発生装置は、図示しないECU(制御手段)と電気的に接続されており、ECUは、フロントバンパ等に配設されて歩行者等の衝突体との衝突を検知又は予知する衝突検知センサ(衝突検知手段)と電気的に接続されている。
<ロッド56の構成>
ロッド56は、アクチュエータ50のハウジング54内に収容されている。ロッド56は真直棒状の部材とされて、ハウジング54と同軸上に配置されている。また、ロッド56の下端部には、ピストン(図示省略)が設けられており、ピストンはハウジング54内に緊密に収容されている。そして、アクチュエータ50のガス発生装置によって発生したガスがハウジング54内に供給されて、ハウジング54内のガス圧によってピストンがハウジング54の軸方向に沿って上昇するようになっている。
また、ロッド56の上端部(一端部)には、ロッド連結部58が一体に設けられており、ロッド連結部58は、軸方向を車両幅方向にした略円筒形状に形成されている。そして、ロッド連結部58内に、ヒンジアーム40の連結軸46が挿入されて、ロッド56の上端部がヒンジアーム40に対して相対回動可能に連結されている。これにより、アクチュエータ50が、ヒンジアーム40の後端部と回動リンク30の下端部30Aとを連結すると共に、側面視で車両上方側へ向かうに従い車両後方側へ傾斜して配置されている。
そして、アクチュエータ50の非作動状態(図3〜図5に示される状態)からアクチュエータ50が作動すると、ピストンの上昇に伴ってロッド56が上方側へ移動する。これにより、ロッド56のロッド連結部58によってヒンジアーム40の後端部がフード上方側へ押上げられて、フード12が押上位置(図6に示される位置)に配置されるようになっている。なお、このときには、ヒンジアーム40がヒンジピン42を回動中心として回動リンク30に対してフード上方側(図3の矢印C方向側)へ相対回動される。また、ヒンジアーム40の回動に連動して、回動リンク30がヒンジピン34を回動中心としてヒンジベース24に対してフード上方側(図3の矢印A方向側)へ相対回動されるように構成されている。さらに、押上位置では、ピストン及びロッド56はハウジング54にロックされておらず、所定値以上のフード下方側への荷重がロッド56に作用することで、ロッド56がハウジング54内をフード下方側へ後退するように構成されている。
<EAブラケット60の構成>
図3〜図5に示されるように、アクチュエータ50の非作動状態において、EAブラケット60は、回動リンク30の前部とヒンジベース24の前端部との間に配置されて、正面視で略逆L字形板状に形成されている。具体的には、EAブラケット60はブラケット取付部62を有しており、ブラケット取付部62は板厚方向を車両幅方向にしてヒンジベース24の支持部24Bに溶接等によって固定されている。また、EAブラケット60は当接片64を有しており、当接片64は、板厚方向を車両上下方向にして、ブラケット取付部62の上端から車両幅方向内側へ延びている。この当接片64は、押上位置における回動リンク30の下端30AAに対応する位置に配置されており、押上位置に配置された回動リンク30の下端30AAが当接片64の上面に当接される(乗り上がる)ようになっている(図1、図6、及び図7参照)。これにより、回動リンク30のフード下方側(図6の矢印B方向側)への回動がEAブラケット60によって規制されて、フード12が押上位置に保持されるように構成されている。
さらに、当接片64の先端部(車両幅方向内側端部)には、突出部としての屈曲部66が形成されており、屈曲部66は、正面視で車両上方側且つ車両幅方向内側へ屈曲されている。そして、当接片64の上面に当接された回動リンク30(のフランジ38)が屈曲部66に当接(係止)することで、回動リンク30の車両幅方向内側への移動が抑制されるようになっている。
また、当接片64によって回動リンク30の回動が規制された状態では、回動リンク30の下端30AAが当接片64の前部に当接されるように構成されている。換言すると、回動リンク30の下端30AAは、当接片64の車両前後方向中央部よりも車両前方側の部位に当接されるように設定されている。
さらに、フード12がEAブラケット60によって押上位置に保持された状態で、フード下方側への所定値以上の衝突荷重がフード12に作用した場合には、当接片64がフード下方側へ曲げ変形するように構成されている。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
図3〜図5に示される状態が車両用ポップアップフード装置10の非作動状態である。この状態のときには、アクチュエータ50が非作動状態にあるため、ロッド56はアクチュエータ50のハウジング54内に収容されている。また、ロッド56の先端部のロッド連結部58は、ヒンジアーム40の後端部における連結軸46に回動可能に連結されている。
この状態から、歩行者等の衝突体と車両が前面衝突すると、衝突検知手段によって衝突体と前面衝突したことが検知され、ECUに衝突信号が出力される。ECUでは、入力された衝突信号に基づいて車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきか否かを判断し、車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきと判断すると、アクチュエータ50に作動信号が出力される。これにより、アクチュエータ50のガス発生装置が作動して、ハウジング54内にガスが供給される。
ハウジング54内にガスが供給されると、ハウジング54内のガス圧によってピストンがハウジング54の軸方向先端側(即ち、フード上方側)へ移動される。ピストンには、ロッド56の下端部が連結されているので、ピストンがハウジング54内を上昇すると、ロッド56がフード上方側へ向けて軸方向移動する。
そして、ロッド56がフード上方側へ向けて軸方向移動すると、ロッド56のロッド連結部58によってヒンジアーム40の後端部がフード上方側へ押上げられて、フード12が押上位置に配置される(図1、図6、及び図7参照)。このときには、ヒンジアーム40がヒンジピン42を回動中心として回動リンク30に対してフード上方側へ相対回動されると共に、回動リンク30がヒンジピン34を回動中心としてヒンジベース24に対してフード上方側へ相対回動される。
また、フード12が押上位置に配置されたときには、フード12を押上げた反動によってヒンジアーム40にフード下方側の力が作用する。一方、フードヒンジ22では、ヒンジアーム40の頂壁部40B(フード12との固定部位)が、ヒンジベース24の取付部24A(車体との固定部位)に対して車両幅方向内側にオフセットして配置されている。このため、ヒンジアーム40にフード下方側の力が作用すると、正面視で時計回りの回動モーメント(図7の矢印M参照)が回動リンク30に作用する。これにより、回動リンク30が車両幅方向外側へ撓み変形して、回動リンク30の下端30AAが車両幅方向外側(車両幅方向他方側)へ移動する(図7の2点鎖線で示される位置から実線で示される位置へ移動する)。
ここで、ヒンジベース24にはEAブラケット60が設けられている。そして、押上位置において、車両幅方向外側へ移動した回動リンク30の下端30AAがEAブラケット60の当接片64の上面に当接して(乗り上げて)、回動リンク30のフード下方側への回動が規制される。これにより、EAブラケット60によってフード12が押上位置に保持されるため、押上位置におけるロッド56の移動を規制するロック機構を用いる必要がなくなる。なお、回動リンク30の下端30AAがEAブラケット60の当接片64の上面に当接した後では、フード12の自重によってヒンジアーム40にフード下方側の力が作用するため、回動リンク30とEAブラケット60との当接状態は維持されている。
そして、フード12に所定値以上の衝突荷重が作用した場合には、衝突荷重が回動リンク30を介してEAブラケット60の当接片64に伝達されて、当接片64がフード下方側へ曲げ変形する。これにより、衝突エネルギーが吸収される。このとき、ロッド56の移動は規制されていないため、ロッド56がアクチュエータ50内をフード下方側へ後退すると共に、回動リンク30がフード下方側(図6の矢印B方向側)へ回動する。このように、ロッド56とは別のEAブラケット60によって衝突エネルギーを吸収するため、衝突エネルギーを吸収するときにおいて、ロッド56の後退方向と衝突荷重の方向とが大きく異なることによる影響を少なくできる。以上により、衝突エネルギーを効果的に吸収できる。
また、上述したように、フードヒンジ22では、ヒンジアーム40の頂壁部40B(フード12との固定部位)が、ヒンジベース24の取付部24A(車体との固定部位)に対して車両幅方向内側にオフセットして配置されている。このため、押上位置では、ヒンジアーム40に作用するフード下方側の力によって回動リンク30が車両幅方向外側へ撓み変形する。そして、回動リンク30が車両幅方向外側へ移動することで、回動リンク30の下端30AAがEAブラケット60の上面と当接する。これにより、ヒンジベース24とヒンジアーム40とが車両幅方向にオフセットして配置された車両に対して、回動リンク30の撓み変形を利用して、EAブラケット60と回動リンク30とを当接させることができる。したがって、簡易な構成でフード12を押上位置に保持できる。
さらに、上述したように、EAブラケット60の当接片64に回動リンク30の下端30AAが当接される。このため、回動リンク30が撓み変形する際の変位量の大きい部位を利用して、回動リンク30とEAブラケット60とを当接させることができる。これにより、回動リンク30の下端30AAをEAブラケット60の当接片64に良好に当接させることができる。
また、当接片64の先端部(車両幅方向内側端部)には、屈曲部66が形成されており、屈曲部66によって回動リンク30の下端30AAにおける車両幅方向内側への移動が抑制されている。このため、例えば、屈曲部66の曲げ高さや曲げ角度を適宜調整することで、当接片64の曲げ変形の開始から当接片64と回動リンク30の下端30AAとの当接状態が解除されるまでの期間を容易に調整できる。すなわち、当接片64による衝突エネルギーを吸収する期間を容易に設定できる。
なお、本実施の形態では、EAブラケット60がヒンジベース24に設けられているが、EAブラケット60を回動リンク30に設けてもよい。例えば、回動リンク30の下端部30Aにブラケット取付部62を固定して、当接片64をブラケット取付部62から車両幅方向外側へ延びるように構成してもよい。この場合には、当接片64をヒンジベース24の支持部24Bの外周縁部に当接するように構成してもよい。
さらに、本実施の形態では、EAブラケット60の当接片64が板厚方向を車両上下方向にして配置されている。換言すると、当接片64が側面視で水平に配置されている。これに代えて、当接片64を側面視で車両後方側へ向かうに従い車両上方側へ若干傾斜させてもよい。これにより、回動リンク30の回動方向に対して直交する方向に沿って当接片64を配置できる。したがって、衝突荷重を当接片64に効率よく伝達できる。
また、図9に示されるように、当接片64を正面視で車両幅内側へ向かうに従い車両下方側へ傾斜させてもよいし、図示は省略するが、当接片64と屈曲部66との境界の稜線部分に車両上方側へ開放された溝を形成してもよい。これにより、回動リンク30の下端30AAが、当接片64と屈曲部66との境界の稜線部分に配置されるようになるため、回動リンク30の下端30AAにおける車両幅方向外側への移動を抑制できる。その結果、回動リンク30の下端30AAが当接片64の上面に当接したときの回動リンク30の姿勢を安定化できる。
さらに、本実施の形態では、当接片64の先端部(車両幅方向内側端部)に屈曲部66が形成されているが、屈曲部66を省略してもよい。また、屈曲部66の代わりに、当接片64の先端部に車両上方側へ突出されたボス等を形成してもよい。