以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
<エンジンの構成>
図1は、本発明に係るオイル供給装置が適用される多気筒エンジン2(以下、単にエンジン2という)を示している。このエンジン2は、第1番気筒♯1〜第4番気筒♯4が順に図1の紙面に垂直な方向に直列に配置された直列4気筒ガソリンエンジンであって、自動車等の車両に搭載される。
エンジン2は、上下に連結されるカムキャップ3、シリンダヘッド4、シリンダブロック5、クランクケース6及びオイルパン7(図5参照)を含む。シリンダブロック5には4つのシリンダボア8が形成され、各シリンダボア8内にそれぞれピストン9が摺動可能に収容され、これらピストン9、シリンダボア8およびシリンダヘッド4によって燃焼室10が気筒毎に形成されている。なお、各ピストン9は、コンロッド(コネクティングロッド)11を介して、上記シリンダブロック5等に回転自在に支持されたクランク軸12に連結されている。
シリンダヘッド4には、燃焼室10に開口する吸気ポート14及び排気ポート15が設けられ、吸気ポート14及び排気ポート15をそれぞれ開閉する吸気弁16及び排気弁17が、各ポート14,15にそれぞれ装備されている。
吸気弁16及び排気弁17は、それぞれリターンスプリング18,19により各ポート14,15を閉止する方向(図1の上方向)に付勢されており、カムシャフト20,21の外周に設けられたカム部20a,21aによって押下されることで各ポート14,15を開くように構成されている。詳しくは、カムシャフト20,21の回転に伴い、上記カム部20a,21aがスイングアーム22,23の略中央部に設けられたカムフォロア22a,23aを押下することで、スイングアーム22,23がそれらの一端側に設けられた油圧ラッシュアジャスタ(Hydraulic Lash Adjuster/以下、HLAと呼ぶ)24のピボット機構の頂部を支点として揺動し、この揺動に伴い、スイングアーム22,23の他端部が上記リターンスプリング18,19の付勢力に抗して吸気弁16及び排気弁17を押下する。これにより各ポート14、15が開く。
シリンダヘッド4のうち、各4気筒に対応する吸気側及び排気側の部分には、上記HLA24が挿入、装着される装着穴26、27が設けられている。また、シリンダヘッド4には、第1〜第4気筒に亘って気筒配列方向に延びて、吸気側及び排気側のHLA24の装着穴26,27にそれぞれ連通する油路75、76が形成されている。これら油路75、76は、装着穴26、27に装着されたHLA24のピボット機構に対してオイル(作動油)を供給するものであり、HLA24のピボット機構は、その油圧(作動圧)によりバルブクリアランスを自動的にゼロに調整する。
上記シリンダブロック5のうち、その幅方向におけるシリンダボア8の一方側(吸気側)の側壁内には、気筒配列方向に延びるメインギャラリ64(本発明の主給油路に相当する)が設けられており、他方側(排気側)の側壁内には、前記幅方向に所定間隔を隔てて並び各々気筒配列方向に延びる一対のサブギャラリ65、66(本発明の副給油路に相当する)が設けられている。各ギャラリ64〜66は、後に詳述するオイル供給用の油路である。
メインギャラリ64の下方位置であって各ピストン9に対応する位置には、該メインギャラリ64と連通するピストン冷却用のオイルジェット28が設けられている。一方、サブギャラリ65、66のうち、シリンダブロック5の幅方向外側に位置するサブギャラリ66の下側近傍の位置であって各ピストン9に対応する位置には、該サブギャラリ66と連通するピストン潤滑用のオイルジェット29が設けられている(図8及び図9参照)。
これらオイルジェット28、29のうち、ピストン冷却用のオイルジェット28は、クランク室53の天井面のうちシリンダボア8よりも吸気側の位置に固定されたノズル28aを有しており、このノズル28aからピストン9の裏面の主に中央部に向けてオイル(冷却用オイル)をシャワー状に噴射するように構成されている。一方、ピストン潤滑用のオイルジェット29は、クランク室53の天井面のうちシリンダボア8よりも排気側の位置に固定されたノズル29aを有しており、このノズル29aからピストン9の主にスカート部裏面に向けて、ピストン冷却用のオイルジェット28よりも狭角でオイル(潤滑用オイル)を噴射するように構成されている。ピストン9のスカート部には、オイル案内用の通路が形成されており、ノズル29aから噴射されるオイルは、当該通路を通じてピストン摺動面に案内される。
また、各カムシャフト20,21の上方には、オイル供給部30、31が設けられている。これらオイル供給部30,31は、ノズル30a、31aを有しており、これらノズル30a、31aからその下方に位置するカムシャフト20,21のカム部20a,21aや、スイングアーム22,23とカムフォロア22a、23aとの接触部にオイル(潤滑用オイル)が滴下されるように構成されている。カムシャフト20,21やスイングアーム22,23は本発明の動弁装置に相当する。なお、このエンジン2には、図示を省略しているが、油圧作動式の可変バルブタイミング機構(VVT)が組み込まれており、エンジン2の運転状態に応じて、吸排気弁16、17の開閉時期が変更される。
図2は、上記クランク軸12の軸受部分の詳細構造を縦断面図で示している。
上記クランク軸12は、同図の左から右に向かって、その前側端部12Aに隣接する第1番ジャーナル(クランクジャーナル)41A、第1番気筒♯1と第2番気筒♯2との間に位置する第2番ジャーナル41B、第2番気筒♯2と第3番気筒♯3との間に位置する第3番ジャーナル41C、第3番気筒♯3と第4番気筒♯4との間に位置する第4番ジャーナル41D、及びクランク軸12の後側端部12Bに隣接する第5番ジャーナル41Eを有する。
第1番ジャーナル41Aと第2番ジャーナル41Bとの間に一対の第1番クランクウェブ42A及び第1番クランクピン43Aが備えられ、第2番ジャーナル41Bと第3番ジャーナル41Cとの間に一対の第2番クランクウェブ42B及び第2番クランクピン43Bが備えられ、第3番ジャーナル41Cと第4番ジャーナル41Dとの間に一対の第3番クランクウェブ42C及び第3番クランクピン43Cが備えられ、第4番ジャーナル41Dと第5番ジャーナル41Eとの間に一対の第4番クランクウェブ42D及び第4番クランクピン43Dが備えられている。
また、第1番クランクピン43Aに、第1番気筒♯1のピストン9に連結された第1番コンロッド11Aが軸受され、第2番クランクピン43Bに、第2番気筒♯2のピストン9に連結された第2番コンロッド11Bが軸受され、第3番クランクピン43Cに、第3番気筒♯3のピストン9に連結された第3番コンロッド11Cが軸受され、第4番クランクピン43Dに、第4番気筒♯4のピストン9に連結された第4番コンロッド11Dが軸受されている。
シリンダブロック5には、5つのジャーナル41A〜41Eを支持する軸受部が設けられている。すなわち、第1番ジャーナル41Aを支持する第1番軸受部50A、第2番ジャーナル41Bを軸受する第2番軸受部50B、第3番ジャーナル41Cを軸受する第3番軸受部50C、第4番ジャーナル41Dを軸受する第4番軸受部50D、及び第5番ジャーナル41Eを軸受する第5番軸受部50Eである。当例では、これら軸受部50A〜50Eが本発明のクランク軸受部に相当する。
各軸受部50A〜50Eは、ジャーナル41A〜41Eの外周面と対向する内周面を有する円筒状の軸受メタル44A〜44E(第1番軸受メタル44A〜第5番軸受メタル44E)を含み、この軸受メタル44A〜44Eでジャーナル41A〜41Eを面軸受する。
第1番軸受部50Aに備えられる第1番軸受メタル44Aは、シリンダブロック5の第1番ブロック側支持部51Aと、これに結合される第1番軸受キャップ52Aとの間に固定されている。第2番軸受部50Bに備えられる第2番軸受メタル44Bは、シリンダブロック5の第2番ブロック側支持部51Bと、これに結合される第2番軸受キャップ52Bとの間に固定されている。第3番軸受部50Cに備えられる第3番軸受メタル44Cは、シリンダブロック5の第3番ブロック側支持部51Cと、これに結合される第3番軸受キャップ52Cとの間に固定されている。第4番軸受部50Dに備えられる第4番軸受メタル44Dは、シリンダブロック5の第4番ブロック側支持部51Dと、これに結合される第4番軸受キャップ52Dとの間に固定されている。第5番軸受部50Eに備えられる第5番軸受メタル44Eは、シリンダブロック5の第5番ブロック側支持部51Eと、これに結合される第5番軸受キャップ52Eとの間に固定されている。
上記ブロック側支持部51A〜51Eは、図8に示すように、シリンダブロック5に形成される第1番気筒♯1〜第4番気筒♯4に各々対応するクランク室53A〜53Dを形成する隔壁であり、気筒列方向に上記ジャーナル41A〜41Eに対応する間隔で並んでいる。当例では、これらブロック側支持部51A〜51Eが本発明のジャーナル支持壁部に相当する。
各軸受メタル44A〜44Eは、円弧状の上側メタルと円弧状の下側メタルとからなり、これら上側メタルと下側メタルとが合体されて円筒状に形成されている(図3、図4参照)。そして、各ブロック側支持部51A〜51Eに形成される円弧状面と各軸受キャップ52A〜52Eに形成される円弧状面との間に、軸受メタル44A〜44Eがそれぞれ配置され、該ブロック側支持部51A〜51Eと該軸受キャップ52A〜52Eとにより上下両側から挟み込まれている。
なお、各軸受キャップ52A〜52Eは、図3及び図4に示すように、各ジャーナル41A〜41Eの両側の位置で、それぞれボルト47により各ブロック側支持部51A〜51Eに結合されている。詳しくは、各ブロック側支持部51A〜51Eの下面であって円弧状面(各軸受メタル44A〜44Eの受面)の両側には一対のねじ孔55が形成されており、各軸受キャップ52A〜52Eに形成される貫通穴に下側からボルト47が挿通されて、上記ねじ孔55に螺合挿入されることにより、各軸受キャップ52A〜52Eが各々ブロック側支持部51A〜51Eに結合されている。
後に詳述するが、シリンダブロック5には、各ブロック側支持部51A〜51Eの位置で各々軸受部50A〜50Eにオイルを供給する第1番供給油路68A〜第5番供給油路68Eが形成されている(図5、図6参照)。
図2〜図4に示すように、各軸受メタル44A〜44Eの上側メタルには、その内周面に、各供給油路68A〜68Eを通じて供給されたオイルが溜められる油溝45が周方向に設けられるとともに、上記オイルをこの油溝45に受け入れるためのオイル供給孔45aが形成されている。
また、クランク軸12の内部には、第1番クランクピン43A、第1番クランクウェブ42A、第2番ジャーナル41B、第2番クランクウェブ42B、及び第2番クランクピン43Bに亘って、第1内部油路46A、第2内部油路46B及び第3内部油路46Cが一体に連通して形成されている。同様に、第4番クランクピン43D、第4番クランクウェブ42D、第4番ジャーナル41D、第3番クランクウェブ42C、及び第3番クランクピン43Cに亘って、クランク軸12の内部に、第1内部油路47A、第2内部油路47B、及び第3内部油路47Cが一体に連通して形成されている。
第1内部油路46A,47Aは、第2番ジャーナル41B及び第4番ジャーナル41Dを直径方向に貫通し、油溝45に連通している。また、第1内部油路46A,47Aから分岐した第2内部油路46B,47Bは第1番クランクピン43A及び第4番クランクピン43Dの外周面に開口している。同様に、第1内部油路46A,47Aから分岐した第3内部油路46C,47Cは第2番クランクピン43B及び第3番クランクピン43Cの外周面に開口している(図2参照)。
すなわち、クランク軸12の前側に位置する上記内部油路46A〜46Cは、第2番軸受メタル44Bが備えられた第2番軸受部50Bに第2番供給油路68Bを通じて供給されるオイルを、第1番コンロッド11Aを軸受する第1番クランクピン43Aと第2番コンロッド11Bを軸受する第2番クランクピン43Bに供給する。他方、クランク軸12の後側の内部油路47A〜47Cは、第4番軸受メタル44Dが備えられた第4番軸受部50Dに第4番供給油路68Dを通じて供給されるオイルを、第4番コンロッド11Dを軸受する第4番クランクピン43Dと第3番コンロッド11Cを軸受する第3番クランクピン43Cとに供給する。
<オイル供給装置の説明>
次に、図5を参照しながら、エンジン2の各油圧作動部にオイル(作動油)を供給するためのオイル供給装置1について詳細に説明する。「油圧作動部」とは、オイルの油圧を受けて駆動する装置(上記HLA24やVVT等)、又はオイルをその油圧により潤滑用又は冷却用として対象物に供給するオイル供給部(オイルジェット28、29やオイル供給部30、31等)を指す。
図示するように、オイル供給装置1は、クランク軸12の回転によって駆動されるオイルポンプ56と、このオイルポンプ56に接続され、当該オイルポンプ56により昇圧されたオイルをエンジン2の各油圧作動部に導く給油路60とを備えている。なお、オイルポンプ56は、エンジン2により駆動される補機である。
本実施形態のオイルポンプ56は、公知の可変容量型のオイルポンプであって、一端側が開口するように形成され、内部に円柱状の空間からなるポンプ収容室を有する断面コ字形状のポンプボディと該ポンプボディの一旦開口を閉塞するカバー部材とからなるハウジング561と、該ハウジング561に回転自在に支持され、ポンプ収容室のほぼ中心部を貫通してクランク軸12によって回転駆動される駆動軸562と、ポンプ収容室内に回転自在に収容されて中心部が駆動軸に結合されたロータ563及び該ロータ563の外周部に放射状に切欠形成された複数のスリット内にそれぞれ出没自在に収容されたベーン564からなるポンプ要素と、該ポンプ要素の外周側にロータ563の回転中心に対して偏心可能に配置され、ロータ563及び隣接するベーン564と共に複数の作動油室であるポンプ室565を画成するカムリング566と、ポンプボディ内に収容され、ロータ563の回転中心に対するカムリング566の偏心量が増大する方向へカムリング566を常時付勢する付勢部材であるスプリング567と、ロータ563の内周側の両側部に摺動自在に配置されたロータ563よりも小径な一対のリング部材568とを備えている。ハウジング561は、内部のポンプ室565にオイルを供給する吸入口561aと、ポンプ室565からオイルを吐出する吐出口561bを備えている。ハウジング561の内部には、該ハウジング561の内周面とカムリング566の外周面により画成された圧力室569が形成されており、該圧力室569に開口する導入孔569aが設けられている。つまり、オイルポンプ56は、導入孔569aから圧力室569にオイルが導入されることで、カムリング566が支点561cに対して揺動して、ロータ563がカムリング566に対して相対的に偏心し、吐出容量が変化するように構成されている。
オイルポンプ56の吸入口561aには、オイルパン7に臨むオイルストレーナ57が連結されている。オイルポンプ56の吐出口561bに連通する油路61には、上流側から順にオイルフィルタ58、オイルクーラ59が配置されており、オイルパン7内に貯留されたオイルは、オイルストレーナ57を通じてオイルポンプ56によってくみ上げられ、オイルフィルタ58で濾過され、オイルクーラ59で冷却されてからシリンダブロック5内の後記メインギャラリ64に導入される。なお、同図では、便宜上、オイルポンプ56及びオイルパン7をエンジン2とは別に図示している。
オイルポンプ56には、メインギャラリ64から当該オイルポンプ56の圧力室569にオイルを導入する油路62が接続されている。この油路62と上記メインギャラリ64との間には、リニアソレノイドバルブからなる後記第2オイル制御弁93が介設されており、上記圧力室569に導入されるオイル流量(油圧)がこの第2オイル制御弁93により制御されることで、オイルポンプ56の容量が変更される。
上記給油路60は、パイプや、シリンダヘッド4、シリンダブロック5及びクランクケース6等に形成された通路からなる。なお、以下の説明では、シリンダヘッド4、シリンダブロック5及びクランクケース6を、必要に応じて適宜エンジン本体と称す。
図5及び図6に示すように、上記給油路60は、主に要求圧力が高い油圧作動部にオイルを導くための上流側の上記メインギャラリ64(主給油路)と、要求圧力が比較的低い油圧作動部(メインギャラリから直接オイル供給を受ける油圧作動部よりも要求圧力が低い油圧作動部)に対してオイルを導くための下流側の一対の上記サブギャラリ65、66(副給油路)と、オイルポンプ56から吐出されたオイルを、上記オイルフィルタ58及びオイルクーラ59を経由してメインギャラリ64に導くオイル導入用の上記油路61と、メインギャラリ64のオイルを抜き出して上記オイルポンプ56の圧力室569にポンプ制御用のオイルを導く上記油路62と、上記メインギャラリ64等から分岐する種々の油路とを含む。
上記油路61は、オイルポンプ56の吐出口561bとクランクケース6のポート部分とを繋ぐパイプ61aと、該ポート部分からクランクケース6の側部(吸気側の側面)に固定される上記オイルフィルタ58を経由し、シリンダブロック5の側面(吸気側の側面)に固定される上記オイルクーラ59に至るように、上記エンジン本体に形成される通路61bと、該オイルクーラ59とメインギャラリ64とを繋ぐ通路61cとを含む。
メインギャラリ64は、図1及び図5に示すように、シリンダブロック5のうち、その幅方向におけるシリンダボア8よりも外側(吸気側)の位置であって該シリンダボア8の下端部近傍の位置に設けられており、該メインギャラリ64は、気筒列方向列に延びている。一方、サブギャラリ65,66(第1サブギャラリ65、第2サブギャラリ66と称す/本発明の第1副給油路、第2副給油路に相当する)は、シリンダブロック5のうち、シリンダボア8を中心として上記メインギャラリ64とは反対側の位置に、それぞれ、第1サブギャラリ65よりも第2サブギャラリ66が幅方向外側(反シリンダボア8側)に位置するように設けられている。サブギャラリ65、66は、シリンダブロック5の幅方向に所定間隔を隔てて並んでいる。メインギャラリ64を含め、各ギャラリ64〜66は、各々気筒列方向に水平にかつ互いに平行に真っ直ぐに延びている。
上記シリンダブロック5には、メインギャラリ64および第1サブギャラリ65から各々分岐して上記軸受部50A〜50Eにオイルを供給するオイル供給油路が形成されている。
詳しくは、図5及び図6に示すように、シリンダブロック5には、第1サブギャラリ65から各々分岐して第1番軸受部50A、第3番軸受部50C及び第5番軸受部50Dに至る第1番供給油路68A、第3番供給油路68C及び第5番供給油路68Eと、メインギャラリ64から各々分岐して、第2番軸受部50B及び第4番軸受部50Dに至る第2番供給油路68B及び第4番供給油路68Dとが形成されている。
図8及び図9に示すように、第1番供給油路68Aは、シリンダブロック5の第1番ブロック側支持部51Aに形成されている。第1番供給油路68Aは、気筒列方向にける第1番ブロック側支持部51Aの位置で第2サブギャラリ66から分岐し、該第2サブギャラリ66から第1番軸受部50Aに向かって斜め下向きに延び、図3に示すように、第1番軸受メタル44Aの外周面に対向する位置で、該第1番軸受メタル44Aが支持される、第1番ブロック側支持部51Aの上記円弧状面に開口している。これにより、第1サブギャラリ65から第1番供給油路68Aを通じて第1番軸受メタル44Aの上記油溝45にオイルが供給される。なお、第1番軸受メタル44Aのオイル供給孔45aは、第1番供給油路68Aに対向する位置に形成されている。
図示を省略するが、第3番供給油路68C及び第5番供給油路68Eも、第1番供給油路68Aと同様にして、第3番ブロック側支持部51C及び第5番ブロック側支持部51Eに形成されている。なお、図9中の符号54は、ブロック側支持部51A〜51Eに形成された開口部であり、隣接するクランク室53A〜53D同士は、該開口部54を通じて連通している。
一方、第2番供給油路68Bは、図8及び図10に示すように、シリンダブロック5の第2番供給油路68Bに形成されている。第2番供給油路68Bは、気筒列方向にける第2番供給油路68Bの位置でメインギャラリ64から分岐し、該メインギャラリ64から第2番軸受部50Bに向かって斜め下向きに延び、図4に示すように、第2番軸受メタル44Bの外周面に対向する位置で、該第2番軸受メタル44Bが支持される、第2番ブロック側支持部51Bの上記円弧状面に開口している。これにより、メインギャラリ64から第2番供給油路68Bを通じて第2番軸受メタル44Bの上記油溝45にオイルが供給される。なお、第2番軸受メタル44Bのオイル供給孔45aは、第2番供給油路68Bに対向する位置に形成されている。
図示を省略するが、第4番供給油路68Dも、第2番供給油路68Bと同様にして、第4番ブロック側支持部51Dに形成されている。
第2番ブロック側支持部51Bには、さらに、図4及び図10に示すように、メインギャラリ64とサブギャラリ65、66とを、シリンダブロック5の幅方向に連絡するための中継油路70が形成されている。この中継油路70は、同図に示すように、第2番軸受メタル44Bの外周面に沿って周方向に延びて一端部が上記第2番供給油路68Bに連通する溝状の油路69aと、この油路69aの他端部で該油路69aに連通し、油路69aの該他端部から上記第1サブギャラリ65の位置に向かって斜め上方に延び、第1サブギャラリ65のやや下方位置で屈曲して第2サブギャラリ66の下方位置を通ってシリンダブロック5の排気側の側面に開口する油路69bとからなる。
シリンダブロック5の該排気側の側面であってかつ上記第2番ブロック側支持部51Bから第1番ブロック側支持部51Aに亘る領域には、OCV(オイル制御弁)ユニット90が固定されている(図5、図7及び図8参照)。
OCVユニット90には、図10及び図11に示すように、第1及び第2の2つのオイル制御弁92、93が収容されている。概略的に示しているが、第1オイル制御弁92は、シリンダブロック5に各々形成された中継油路65a、66aを介して上記第1サブギャラリ65及び第2サブギャラリ66に接続されるとともに、上記中継油路70及び第2番供給油路68Bを介してメインギャラリ64に接続されている。一方、第2オイル制御弁93は、上記中継油路70を介してメインギャラリ64に接続されるとともに、シリンダブロック5に形成された上記油路62(オイルポンプ56の吐出量を制御するためのオイル供給用の油路)に接続されている。これにより、メインギャラリ64が、中継油路70、第1オイル制御弁92及び中継油路65a、66aを介して第1サブギャラリ65及び第2サブギャラリ66に各々連通するとともに、中継油路70及び第2オイル制御弁93を介して上記油路62に連通している。すなわち、当実施形態では、上記第2番供給油路68B及び中継油路65a、66a、70が本発明の連絡油路に相当し、第2番供給油路68B及び中継油路70が本発明の第1油路及び第2油路に相当する。
図1及び図8に示すように、シリンダブロック5の互いに隣接する各ブロック側支持部51A〜51Eの間には、各気筒♯1〜♯4に対応する第1番クランク室53A〜第4番クランク室53Dが形成されている。上述した通り、各クランク室53A〜53Dの天井部であって上記メインギャラリ64の下方位置には、図1及び図5に示すように、ピストン冷却用の上記オイルジェット28のノズル28aが固定されており、各ノズル28aがメインギャラリ64に各々接続されている。また、各クランク室53A〜53Dの天井部であって上記第2サブギャラリ66の下方位置には、ピストン潤滑用の上記オイルジェット29のノズル29aが固定されており、各ノズル29aが第2サブギャラリ66に各々接続されている。
図1、図7及び図8に示すように、各オイルジェット28、29のノズル28a、29aは、シリンダボア8の外側の位置から各クランク室53A〜53Dの天井部にほぼ沿った状態でシリンダボア8の下方位置まで延び、ノズル先端がピストン9に指向するように設けられている。
図5及び図6に示すように、エンジン本体には、さらに、シリンダブロック5のメインギャラリ64の第1番気筒♯1側の端部から分岐してシリンダヘッド4に延びる分岐油路72が設けられている。この分岐油路72は、上記VVTに作動用オイルを供給するためのものである。
また、エンジン本体には、第1サブギャラリ65の第1番気筒♯1側の端部から分岐してシリンダヘッド4に延びる分岐油路73が設けられている。この分岐油路73には、シリンダヘッド4内でその幅方向に延びる油路74が繋がっている。この油路74からは、シリンダヘッド4内における吸気側の所定位置を気筒配列方向に水平に延びる油路75と、シリンダヘッド4内における排気側の所定位置を気筒配列方向に水平に延びる油路76とが分岐している。これらの油路75,76のうち、吸気側の油路75には、吸気側の上記HLA24が連通するとともに、吸気側のカムシャフト20のカムジャーナル潤滑のための図外のオイル供給部のノズルが分岐油路75aを介して連通している。同様に、排気側の油路76には、排気側のHLA24が連通するとともに、排気側のカムシャフト21のカムジャーナル潤滑のための図外のオイル供給部のノズルが分岐油路76aを介して連通している。
第2サブギャラリ66の上記分岐油路73の上端は、カムキャップ3まで延びており、吸気側のスイングアーム22に潤滑用オイルを供給する上記オイル供給部30のノズル30a、及び排気側のスイングアーム23に潤滑用オイルを供給する上記オイル供給部31のノズル31aが、図外の油路を介してそれぞれ上記分岐油路73に連通している。
また、上記メインギャラリ64のうち、第1番気筒♯1側の端部近傍には、メインギャラリ64の油圧を検出する油圧センサ80が接続されており、エンジン2の駆動中は、該油圧センサ80によりメインギャラリ64の油圧に応じた信号が後記コントローラ100に出力される。
なお、図示を省略しているが、カムシャフト20,21を回転自在に支持するカムジャーナル及びクランク軸12を回転自在に支持する軸受メタル44A〜44Eや、ピストン9、カムシャフト20,21等に供給される潤滑用および冷却用のオイルは、冷却や潤滑を終えた後、図外のドレイン油路を通ってオイルパン7内に滴下し、オイルポンプ56により再び環流される。
上記のようなエンジン2の作動は、コントローラ100(本発明の制御装置に相当する)によって制御される。このコントローラ100は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であって、上記給油路60内の油圧を統括的に制御する。このコントローラ100には、エンジン2の運転状態を検出する各種センサからの検出情報が入力されている。例えばエンジン2には、上記油圧センサ80に加え、クランク軸12の回転角度を検出するクランク角センサ81と、エンジン2が吸入する空気量を検出するエアフローセンサ82と、給油路60内の油温を検出する油温センサ83と、カムシャフト20,21の回転位相を検出するカム角センサ84と、エンジン2の冷却水温度を検出する水温センサ85とが設けられており、これらセンサ80〜85からの検出情報がコントローラ100に入力されている。コントローラ100は、上記クランク角センサ81の検出情報に基づきエンジン回転速度を検出し、上記エアフローセンサ82の検出情報に基づきエンジン負荷を検出し、上記カム角センサ84の検出情報に基づきVVTの作動角を検出する。
コントローラ100は、各センサ80〜85からの検出情報に基づき、エンジン2の運転状態を判定し、予め記憶されている制御マップに基づきオイルポンプ56の目標油圧を設定し、当該目標油圧に基づき上記給油路60内の油圧を制御する。
詳述すると、このオイル供給装置1では、一つのオイルポンプ56によって複数の油圧作動部(VVT、HLA24、オイルジェット28,29、オイル供給部30,31等)にオイルを供給しており、各油圧作動部が必要とする要求油圧は、エンジン2の運転状態に応じて変化する。そのため、エンジン2の全ての運転状態において全ての油圧作動部が必要な油圧を得るためには、エンジン2の運転状態ごとに各油圧作動部の要求油圧のうちで最も高い要求油圧以上の油圧を当該エンジン2の運転状態に応じた目標油圧に設定するのが合理的である。そのためには、全ての油圧作動部のうちで要求油圧が比較的高い油圧作動部、当実施形態ではVVT、オイルジェット28、29、及び第2番、第4番の軸受メタル44B、44D(第2番、第4番の軸受部50B、50D)に対するオイル供給部(すなわち、第2番供給油路68B及び第4番供給油路68D)等の要求油圧を満たすように目標油圧を設定し、この目標油圧に基づきオイルポンプ56のオイル吐出量を制御すればよい。このように目標油圧を設定すれば、要求油圧が比較的低い他の油圧作動部の要求油圧は当然に満たされることとなる。
図示を省略するが、当実施形態では、エンジン2の運転状態毎に、VVT、オイルジェット28、29、及び第2番、第4番の軸受メタル44B、44Dに対するオイル供給部等の要求油圧のうちで最も高い要求油圧に基づいて当該運転状態の目標油圧が予め設定された油圧制御マップがコントローラ100の記憶部に記憶されており、コントローラ100は、上記油圧センサ80により検出されるメインギャラリ64の油圧(実油圧)が該目標油圧になるように、上記第2オイル制御弁93の操作によりオイルポンプ56の吐出量を制御する油圧フィードバック制御を実行する。
なお、上記第1オイル制御弁92は、それ単体で第1サブギャラリ65および第2サブギャラリ66に対するオイル流量を連動して制御する構成であり、コントローラ100は、エンジン2の運転状態に応じて、この第1オイル制御弁92を制御することにより、第1サブギャラリ65から第1番供給油路68A、第3番供給油路68C及び第5番供給油路68Eを通じて第1番軸受メタル44A、第3番軸受メタル44C及び第5番軸受メタル44Eに供給される油圧を制御するとともに、第2サブギャラリ66に対するオイル流量を制御することによりピストン潤滑用のオイルジェット29によるオイル噴射をオンオフする。
第1オイル制御弁92は、例えばリニアソレノイドバルブからなり、コントローラ100は、デューティ比の制御信号を第1オイル制御弁92に送信することにより、図12に示すように、各軸受メタル44A〜44Eの給油量やオイルジェット28のオンオフを制御する。また、第2オイル制御弁93も同様に、例えばリニアソレノイドバルブからなり、コントローラ100は、デューティ比の制御信号を第2オイル制御弁93に送信することにより、オイルポンプ56によるオイル吐出量を制御する。
<オイル供給装置1の作用効果等>
上記のオイル供給装置1では、オイルポンプ56から吐出されたオイルは、オイルフィルタ58で濾過され、オイルクーラ59で冷却されながら油路61を通じてシリンダブロック5のメインギャラリ64に導入される。そして、一部は、ピストン9の冷却用としてオイルジェット28のノズル28aから噴射され、一部は、第2番供給油路68B及び第4番供給油路68Dを通じてクランク軸12の第2番軸受部50B及び第4番軸受部50Dに供給される。また、メインギャラリ64のオイルは、上記第2番供給油路68Bから中継油路70、第1オイル制御弁92及び中継油路65a、66aを通じて第1サブギャラリ65及び第2サブギャラリ66に導入されるとともに、メインギャラリ64から分岐する上記油路72を通じてVVTに供給される。
第1サブギャラリ65に導入されたオイルは、上記第1番供給油路68A、第3番供給油路68C及び第5番供給油路68Eを通じてクランク軸12の第1番軸受部50A、第3番軸受部50C及び第5番軸受部50Eに供給される。
第2サブギャラリ66に導入されたオイルは、ピストン9の潤滑用としてオイルジェット29のノズル29aから噴射される。また、第2サブギャラリ66に導入されたオイルの一部は、該第2サブギャラリ66から分岐する分岐油路73を通じてシリンダヘッド4に導入され、さらに油路75、76を通じて上記HLA24に供給されるとともに、該油路75、76から各々分岐する分岐油路75a、76aを通じて、カムシャフト20、21のカムジャーナル部分に供給される。さらに、上記分岐油路73を通じて上記オイル供給部30、31の各ノズル30a、31aからスイングアーム22、23に供給される。
このようなオイル供給装置1の構成によれば、シリンダブロック5の両端のブロック側支持部51A、51Eよりも気筒列方向の内側の位置で、メインギャラリ64とサブギャラリ65,55とが、中継油路70、第1オイル制御弁92及び中継油路65a、66aを介してシリンダブロック5の幅方向に連絡されており、しかも、シリンダブロック5の幅方向一方側(排気側)の位置に第1オイル制御弁92が配置されている。そのため、シリンダブロックの気筒列方向の端部にメインギャラリとサブギャラリとの連絡油路を設けた上で、さらに同端部にオイル制御弁を設ける構成に比べると、シリンダブロックの気筒列方向への大型化、ひいては同方向へのエンジンの大型化を伴うこと無く、メインギャラリ64とサブギャラリ65、66とを第1オイル制御弁92を介して連通させることができる。
また、上記のようにシリンダブロック5の幅方向一方側(排気側)の側面に第1オイル制御弁92が配置されていることで、該第1オイル制御弁92がトランスミッション(図示省略)からの熱の影響を受けることが抑制される。すなわち、気筒列方向におけるエンジン2の末端(第4番気筒♯4側の端部)には、トランスミッションが組付けられるため、シリンダブロックの第4番気筒♯4側の端面やその近傍位置にオイル制御弁が配置さると、エンジン2の熱に加えてトランスミッションの熱の影響を受けることで、オイル制御弁が作動不良を起こすことが考えられる。しかし、上記実施形態の構成によれば、シリンダブロック5の幅方向一方側(排気側)の側面であって第1番ブロック側支持部51Aから第2番ブロック側支持部51Bに亘る領域に第1オイル制御弁92が固定されており、これにより第1オイル制御弁92がトランスミッションから比較的離れた位置に配置されている。従って、第1オイル制御弁92が熱の影響、特に、トランスミッションの熱の影響を受けて作動不良を起こすと言ったトラブルを未然に回避することが可能となる。
しかも、このオイル供給装置1によれば、メインギャラリ64から第2番ジャーナル41B(第2番軸受部50B)にオイルを供給するための第2番供給油路68Bに連通する中継油路70が設けられ、この中継油路70が第1オイル制御弁92及び中継油路65a、66aを介してサブギャラリ65,66に接続されることで、メインギャラリ64とサブギャラリ65,66とが連絡されている。換言すれば、メインギャラリ64から第2番ジャーナル41B(第2番軸受部50B)にオイルを供給するための油路(つまり、第2番供給油路68B)がメインギャラリ64とサブギャラリ65,66との連絡油路の一部となっている。そのため、メインギャラリ64から第2番ジャーナル41B(第2番軸受部50B)にオイルを供給するための第2番供給油路68Bを上記連絡油路の一部として利用した合理的な構成が達成されるという利点もある。
また、このオイル供給装置1によれば、上記連絡油路を構成する第2番供給油路68Bや中継油路70が形成される第2番ブロック側支持部51Bに対応する位置で第1オイル制御弁92がシリンダブロック5の側面に固定されているので、メインギャラリ64とサブギャラリ65,66とを可及的に短い距離で連絡することができる。そのため、メインギャラリ64からサブギャラリ65,66に導入されるオイルの圧力損失を抑制することができ、これにより、サブギャラリ65,66に繋がるオイルジェット29等の油圧作動部をより適切に作動させることができるという利点もある。
さらに、このオイル供給装置1によれば、エンジン2の運転状態毎に、VVT、HLA24、オイルジェット28,29及びオイル供給部30,31等の油圧作動部の要求油圧のうちで最も高い要求油圧が目標油圧とされ、メインギャラリ64に設けられた油圧センサ80により検出される油圧(実油圧)が該目標油圧になるように、オイルポンプ56の吐出量が制御される。そのため、各油圧作動部の作動油圧(要求油圧)を適切に確保しながら、オイルポンプ56の駆動負荷を必要最小限に保ち、これにより燃費の向上を図ることができるという利点もある。
<その他の構成等>
ところで、以上説明したオイル供給装置1は、本発明にかかるエンジンのオイル供給装置の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記給油路60に接続されたVVT、HLA24、オイルジェット28,29、オイル供給部30,31等は、本発明の油圧作動部の一例であり、油圧作動部の具体的な種類やこれら油圧作動部の上記給油路60における具体的な接続位置等は上記実施形態に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、オイルポンプ56としてエンジン2により駆動されるポンプが適用されているが、オイルポンプ56は、回転速度を調整することにより吐出量を制御可能な電気モータにより駆動されるものであってもよい。
また、上記実施形態では、シリンダブロック5の側面で、メインギャラリ64とサブギャラリ65、66とを連結する中継油路に、OCV(オイル制御弁)ユニット90を配設するようにしているが、これに替えて又は併設して、各種(油温、油圧)センサ、熱交換器など配設し、エンジン端部側のレイアウトの自由度を高め、気筒列方向へのエンジンの大型化を抑制するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、本発明を直列4気筒ガソリンエンジンに適用した例について説明したが、本発明は、これ以外のエンジン、例えばディーゼルエンジンなどについても適用可能である。