以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るエンジン駆動式空調装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、このエンジン駆動式空調装置1は、ガスエンジン10と、空調ユニット20と、室内機リモコン30と、発電機40と、バッテリ50と、コントローラ60と、スタータモータ70とを備える。
ガスエンジン10はガス配管11からガス燃料の供給を受けて駆動する。このガスエンジン10は出力軸12を備え、出力軸12からガスエンジン10の駆動力が外部に取り出される。出力軸12には、第1プーリ13および第2プーリ14が出力軸12と同軸的に連結している。ガスエンジン10は、スタータモータ70によって始動するように構成される。
空調ユニット20は空調に寄与する構成部品であり、圧縮機21と、冷媒配管22と、室内熱交換器23と、室内ファン231と、室外熱交換器24と、室外ファン241と、膨張弁25と、四方切換弁26と、アキュムレータ27と、クラッチ28と、を備える。室内熱交換器23、室外熱交換器24、膨張弁25、四方切換弁26は冷媒配管22の途中に介装される。圧縮機21、冷媒配管22、室内熱交換器23、室外熱交換器24、膨張弁25、四方切換弁26、アキュムレータ27により冷媒循環回路が構成される。冷媒配管22内を冷媒が流通する。冷媒配管22は、本実施形態では、第1冷媒配管221と、第2冷媒配管222と、第3冷媒配管223と、第4冷媒配管224と、第5冷媒配管225と、第6冷媒配管226とを備える。
圧縮機21は、同軸配置された第1入力軸211と第2入力軸212を備える。第2入力軸212が回転した場合に圧縮機21が駆動される。第1入力軸211には第3プーリ213が同軸的に連結している。第1プーリ13と第3プーリ213との間にベルトが巻かれている。したがって、ガスエンジン10の出力軸12の回転駆動力は、第1プーリ13および第3プーリ213を介して第1入力軸211に伝達される。
第1入力軸211と第2入力軸212の途中にクラッチ28が取付けられる。クラッチ28は、例えば2枚のクラッチ板が対面配置されるように構成され、それぞれのクラッチ板が接触した接触状態と離間した離間状態とを採り得ることが可能に構成されていてもよい。クラッチ28の作動は後述するコントローラ60により制御される。
この場合、クラッチ28が接触状態であるとき、第1入力軸211の回転が第2入力軸212に伝達される。よって、ガスエンジン10の動力が圧縮機21に伝達される。一方、クラッチ28が離間状態であるとき、第1入力軸211の回転が第2入力軸212に伝達されない。よって、ガスエンジン10の動力は圧縮機21に伝達されない。
また、圧縮機21は冷媒吸入口21aおよび冷媒吐出口21bを有する。冷媒吐出口21bが第1冷媒配管221の一端に接続され、冷媒吸入口21aが第6冷媒配管226の一端に接続される。したがって、圧縮機21が駆動した場合、圧縮機21は、冷媒吸入口21aから第6冷媒配管226内の低圧ガス冷媒を吸入し、吸入した低圧ガス冷媒を内部で圧縮するとともに、圧縮にした高圧ガス冷媒を冷媒吐出口21bから第1冷媒配管221に吐出する。
室内熱交換器23は室内に設置される。この室内熱交換器23は熱交換チューブを備え、熱交換チューブの内部に冷媒が流通することができるように構成される。熱交換チューブ内を流通する冷媒が室内空気と熱交換する。室内熱交換器23には、暖房運転時に冷媒を流入する第1流入口23aと、暖房運転時に冷媒を流出する第1流出口23bとを有する。なお、冷房運転時には、第1流出口23bから冷媒が流入され、第1流入口23aから冷媒が流出される。第1流入口23aに第2冷媒配管222の一端が接続される。第1流出口23bに第3冷媒配管223の一端が接続される。
室外熱交換器24は室外に設置される。この室外熱交換器24は熱交換チューブを備え、熱交換チューブの内部に冷媒が流通することができるように構成される。熱交換チューブ内を流通する冷媒が外気と熱交換する。室外熱交換器24には、暖房運転時に冷媒を流入する第2流入口24aと、暖房運転時に冷媒を流出する第2流出口24bとを有する。なお、冷房運転時には、第2流出口24bから冷媒が流入され、第2流入口24aから冷媒が流出される。第2流入口24aには第3冷媒配管223の他端が接続される。したがって、第3冷媒配管223は、室内熱交換器23の第1流出口23bと室外熱交換器24の第2流入口24aとを接続する。また、第2流出口24bには第4冷媒配管224の一端が接続される。
第3冷媒配管223の途中に膨張弁25が介装される。したがって、第3冷媒配管223は、膨張弁25を境界として、それよりも室内熱交換器23側の室内側配管223aと、それよりも室外熱交換器24側の室外側配管223bとにより構成される。膨張弁25はそこを通る冷媒配管22内の冷媒を膨張(低圧化)させる。
アキュムレータ27は、そこに導入された冷媒を気液分離して気相冷媒のみを排出させるように構成される。このアキュムレータ27には、冷媒導入管としての第5冷媒配管225の一端、および、冷媒排出管としての第6冷媒配管226の他端が、接続される。したがって、第6冷媒配管226により、アキュムレータ27と圧縮機21の冷媒吸入口21aが接続される。
四方切換弁26には4つのポート(第1ポート261、第2ポート262、第3ポート263、第4ポート264)を有する中空状の固定部と、固定部内を移動可能な駆動部とを備える。駆動部によって特定の2つのポートとそれ以外の2つのポートが接続されるように、固定部内の空間が仕切られる。また、図1に示すように、四方切換弁26の固定部の第1ポート261には、その一端が圧縮機21の冷媒吐出口21bに接続された第1冷媒配管221の他端が接続される。第2ポート262には、その一端が室内熱交換器23の第1流入口23aに接続された第2冷媒配管222の他端が接続される。第3ポート263には、その一端がアキュムレータ27に接続された第5冷媒配管225の他端が接続される。そして、第4ポート264には、その一端が室外熱交換器24の第2流出口24bに接続された第4冷媒配管224の他端が接続される。
四方切換弁26の駆動部は、暖房接続位置と冷房接続位置とにその位置が選択的に切り換えられるよう、固定部内で移動可能に配設される。駆動部の位置が暖房接続位置であるとき、四方切換弁26は暖房接続状態であり、駆動部の位置が冷房接続位置であるとき、四方切換弁26は冷房接続状態である。図1は、四方切換弁26が暖房接続状態である場合を示している。暖房接続状態であるとき、第1ポート261と第2ポート262が連通され、第3ポート263と第4ポート264が連通される。そのため、暖房接続状態であるとき、圧縮機21の冷媒吐出口21b(高圧側)と室内熱交換器23とが四方切換弁26を介して接続され、圧縮機21の冷媒吸入口21a(低圧側)と室外熱交換器24とが四方切換弁26を介して接続される。
図2は、四方切換弁26が冷房接続状態である場合の空調ユニット20の概略構成図である。図2に示すように、四方切換弁26が冷房接続状態であるとき、第1ポート261と第4ポート264が接続され、第2ポート262と第3ポート263が接続される。そのため、冷房接続状態であるとき、圧縮機21の冷媒吐出口21b(高圧側)と室外熱交換器24とが四方切換弁26を介して連通され、圧縮機21の冷媒吸入口21a(低圧側)と室内熱交換器23とが四方切換弁26を介して連通される。暖房運転時に四方切換弁26は暖房接続状態とされ、冷房運転時に四方切換弁26は冷房接続状態とされる。ちなみに、除霜運転時には、四方切換弁26は冷房接続状態とされる。したがって、暖房運転から除霜運転に運転状態が変化したときに、四方切換弁26は暖房接続状態から冷房接続状態に切り換えられる。また、除霜運転から暖房運転に運転状態が変化したときに、四方切換弁26は冷房接続状態から暖房接続状態に切り換えられる。
ここで、エンジン駆動式空調装置1の空調運転(暖房運転、冷房運転)について簡単に説明する。まず、暖房運転について説明する。圧縮機21がガスエンジン10により駆動されると、第6冷媒配管226内の低圧ガス冷媒が冷媒吸入口21aから圧縮機21に吸入されるとともに吸入された低圧ガス冷媒が圧縮される。そして圧縮された高温高圧ガス冷媒が冷媒吐出口21bから第1冷媒配管221に吐出される。冷媒吐出口21bから吐出された高温高圧ガス冷媒は第1冷媒配管221を流れて四方切換弁26の第1ポート261に入る。暖房接続状態では第1ポート261が第2ポート262に連通している。また、第2ポート262には第2冷媒配管222が接続されている。そのため四方切換弁26に第1ポート261から入った高温高圧ガス冷媒は第2ポート262から四方切換弁26を出るとともに第2冷媒配管222に流れる。第2冷媒配管222に流れた高温高圧ガス冷媒は、第1流入口23aから室内熱交換器23に流入する。室内熱交換器23に流入した高温高圧ガス冷媒は室内熱交換器23内を流通する間に室内空気に熱を吐き出して凝縮する。このとき高温高圧ガス冷媒から吐き出された熱によって室内空気が暖められて、室内暖房される。
室内空気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化し、室内熱交換器23の第1流出口23bから第3冷媒配管223に流出する。そして、第3冷媒配管223の途中に介装された膨張弁25で膨張することにより蒸発しやすいように低圧化される。その後、第2流入口24aから室外熱交換器24に流入する。つまり、室外熱交換器24には、暖房運転時に室内熱交換器23を流出し、その後、膨張弁25で膨張された冷媒が流入する。室外熱交換器24に流入した冷媒は室外熱交換器24内を流通する間に外気の熱を奪って蒸発する。
外気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化し、室外熱交換器24の第2流出口24bから第4冷媒配管224に流出する。そして、四方切換弁26の第4ポート264に入る。暖房接続状態では第4ポート264が第3ポート263に連通している。また、第3ポート263は第5冷媒配管225に接続されている。そのため第4ポート264から四方切換弁26に入った冷媒は第3ポート263から四方切換弁26を出るとともに第5冷媒配管225に流れ、さらにアキュムレータ27に導入される。アキュムレータ27では導入された冷媒が気液分離される。そして、低温低圧のガス冷媒のみが第6冷媒配管226を流れ、圧縮機21の冷媒吸入口21aに帰還する。このような冷媒の循環サイクルが繰り返されることにより、室内暖房が継続される。
次に、冷房運転について説明する。圧縮機21がガスエンジン10により駆動されると、圧縮機21の冷媒吐出口21bから第1冷媒配管221に高温高圧のガス冷媒が吐出される。冷媒吐出口21bから吐出された高温高圧ガス冷媒は第1冷媒配管221を流れて四方切換弁26の第1ポート261に入る。冷房接続状態では図2に示すように第1ポート261が第4ポート264に連通している。また第4ポート264には第4冷媒配管224が接続されている。そのため四方切換弁26に第1ポート261から入った高温高圧ガス冷媒は第4ポート264から四方切換弁26を出るとともに第4冷媒配管224に流れる。第4冷媒配管224に流れた高温高圧ガス冷媒は、第2流出口24bから室外熱交換器24に流入する。室外熱交換器24に流入した高温高圧ガス冷媒は室外熱交換器24内を流通する間に外気に熱を吐き出して凝縮する。
外気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化し、室外熱交換器24の第2流入口24aから第3冷媒配管223に流出する。そして、第3冷媒配管の途中に介装された膨張弁25で膨張することにより蒸発しやすいように低圧化される。その後、第1流出口23bから室内熱交換器23に流入する。室内熱交換器23に流入した冷媒は室内熱交換器23内を流通する間に室内空気の熱を奪って蒸発する。このとき冷媒が室内空気の熱を奪うことによって室内空気が冷やされて、室内冷房される。
室内空気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化し、室内熱交換器23の第1流入口23aから第2冷媒配管222に流出する。そして、四方切換弁26の第2ポート262に入る。冷房接続状態では第2ポート262が第3ポート263に連通している。また、第3ポート263は第5冷媒配管225に接続されている。そのため第2ポート262から四方切換弁26に入った冷媒は第3ポート263から四方切換弁26を出るとともに第5冷媒配管225に流れ、さらにアキュムレータ27に導入される。アキュムレータ27では導入された冷媒が気液分離される。そして、低温低圧のガス冷媒のみが第6冷媒配管226を流れ、圧縮機21の冷媒吸入口21aに帰還する。このような冷媒の循環サイクルが繰り返されることにより、室内冷房が継続される。
図1に示すように、室内ファン231は室内熱交換器23に対面配置され、室内熱交換器23に送風することによって室内熱交換器23内を流れる冷媒と室内空気との間の熱交換を促進させる。また、室外ファン241は室外熱交換器24に対面配置され、室外熱交換器24に送風することによって室外熱交換器24内を流れる冷媒と外気との間の熱交換を促進させる。室内ファン231および室外ファン241は、エンジン駆動式空調装置1を構成する部品であって電力により駆動される部品、すなわち電気駆動部品である。
発電機40は入力軸41を有する。入力軸41には第4プーリ42が同軸的に連結している。第2プーリ14と第4プーリ42との間にベルトが巻き付けられる。したがって、ガスエンジン10の出力軸12の回転は、第2プーリ14および第4プーリ42を介して発電機40の入力軸41に伝達される。入力軸41が回転駆動することにより、発電機40で発電される。
発電機40は、エンジン駆動式空調装置1の構成部品であって電力により駆動する部品(電気駆動部品)に電気的に接続され、これらの電気駆動部品に電力を供給することができるように構成される。例えば、室内ファン231、室外ファン241、コントローラ60に電気的に接続される。その他、図示はしないが、ガスエンジン10を冷却するための冷却ユニットに備えられた冷却ポンプ等にも、発電機40が電気的に接続される。また、発電機40はバッテリ50にも電気的に接続される。さらに、発電機40は外部負荷にも電気的に接続され、発電機40で発電した電力で外部負荷が駆動できるようにされる。図1においては、発電機40は、外部負荷101、102、103に電気的に接続される。
バッテリ50は発電機40で発電された電力を蓄える。このバッテリ50は、コントローラ60およびスタータモータ70に電気的に接続され、これらに電力を供給することができるように構成される。
室内機リモコン30は商用電源から電力供給されることにより作動する。この室内機リモコン30は、商用電源が利用可能であるときにおけるエンジン駆動式空調装置1の運転の開始および停止の指示や、空調条件等の設定を行うことができるように構成される。そして、設定された条件がコントローラ60に受信できるように、室内機リモコン30がコントローラ60と通信可能に構成される。
スタータモータ70は上述したようにバッテリ50に電気的に接続されるとともに、商用電源にも電気的に接続される。したがってスタータモータ70は、商用電源あるいはバッテリ50から電力供給されて駆動して、ガスエンジン10を始動させる。なお、商用電源とバッテリ50の双方から電力供給が可能であるときは、スタータモータ70は商用電源から電力供給されて駆動する。
コントローラ60は、発電機40、バッテリ50、および商用電源に電気的に接続される。コントローラ60は、室内機リモコン30で設定された条件や、エンジン駆動式空調装置1に備えられている各種センサからの情報に基づいてエンジン駆動式空調装置1を制御する。特に、コントローラ60は、クラッチ28の作動、四方切換弁26の切換作動、ガスエンジン10の回転数を制御する。さらにコントローラ60は、エンジン駆動式空調装置1が発電機40で発電した電力で運転している自立運転中に、発電機40からエンジン駆動式空調装置1内の電気駆動部品や外部負荷への供給電力の大きさを制御する。
また、図1に示すように、第2冷媒配管222のうち室内熱交換器23に近い部分に第1温度センサ281が取付けられ、第3冷媒配管223(室内側配管223a)のうち室内熱交換器23に近い部分に第2温度センサ282が取付けられている。さらに、第3冷媒配管223(室外側配管223b)のうち室外熱交換器24に近い部分に第3温度センサ283が取付けられ、第4冷媒配管224のうち室外熱交換器24に近い部分に第4温度センサ284が取り付けられる。これらの温度センサが検出した温度情報はコントローラ60に受け渡される。その他、図示はしないが、例えば圧縮機21の冷媒吸入口21aおよび冷媒吐出口21bの近傍に温度センサや圧力センサが設けられていても良い。さらに、冷媒配管の各所に圧力センサが設けられていても良い。これらのセンサで検出された情報はコントローラ60に受け渡される。
本実施形態に係るエンジン駆動式空調装置1は、商用電源から電力供給されて始動し、且つ商用電源から電力供給されて運転を継続することができるが、停電時等の商用電源を利用できないときには、自発的に始動するとともに、商用電源からの電力供給を受けることなく自立して運転を継続することもできる。図3は、商用電源からの電力を利用することができない場合にエンジン駆動式空調装置1が空調運転を開始する場合の流れを示すフローチャートである。商用電源を利用できないときにエンジン駆動式空調装置1の運転を開始させる場合、まず、図3のステップ(以下、Sと略記する)1に示すように、ユーザが室内機リモコン30とは別の図示しない外部装置(この外部装置はバッテリ50から電力供給されている)の起動スイッチを押圧操作(オン操作)して、空調起動信号をコントローラ60に送信する。すると、コントローラ60(コントローラ60もバッテリ50から電力供給されている)は、スタータモータ70に空調起動信号を出力する。スタータモータ70が空調起動信号を受けた場合、バッテリ50からスタータモータ70に電力供給される(S2)。スタータモータ70はバッテリ50から電力供給されることにより駆動する。スタータモータ70の駆動によってガスエンジン10が始動する(S3)。ガスエンジン10が一旦始動すれば、後はガス燃料の供給により駆動が継続されるため、スタータモータ70を駆動させる必要はない。よって、バッテリ50からスタータモータ70への電力供給を停止させる(S4)。
また、S3にてガスエンジン10が始動されると、ガスエンジン10に動力伝達可能に連結された発電機40も駆動して発電する(S5)。また、S3にてガスエンジン10が始動された後にコントローラ60は、ガスエンジン10と圧縮機21との接続状態が伝達状態となるようにクラッチ28を作動させる(S7)。これによりガスエンジン10に動力伝達可能に連結された圧縮機21が駆動される(S8)。圧縮機21が駆動することによって、冷媒配管22中を冷媒が流れて空調運転が開始される。
本実施形態においては、エンジン駆動式空調装置1を構成する各電気駆動部品は発電機40に電気的に接続される。したがって、商用電源が利用できないときには、S6のように発電機40が各電気駆動部品に電力供給する。この場合において、ガスエンジン10と圧縮機21の接続状態が伝達状態であるときは、エンジン駆動式空調装置1は、空調および各電気駆動部品および外部負荷への電力供給を同時に行う。このような運転を本明細書では自立空調運転(自立暖房運転、自立冷房運転)と呼ぶ。一方、ガスエンジン10と圧縮機21の接続状態が遮断状態であるときは、エンジン駆動式空調装置1は、現状の運転を継続するために電力供給が必要な電気駆動部品および外部負荷への電力供給のみを行う。このような運転を本明細書では自立発電運転と呼ぶ。いずれの自立運転においてもガスエンジン10は駆動している。
エンジン駆動式空調装置1が自立運転しているときには、上述したように発電機40で発電された電力は外部負荷101、102、103にも供給される。したがって、例えば停電時においてはエンジン駆動式空調装置1(発電機40)が商用電源に代わって外部負荷に電源供給する。また、エンジン駆動式空調装置1が自立運転しているときにガスエンジン10はほぼ定格回転数で回転駆動している。本実施形態において定格回転数は2400rpmである。ガスエンジン10が定格回転数(2400rpm)で駆動している場合に、発電機40は約4.5kWの大きさの電力を発生する。このうち、外部負荷に供給する最低電力として予め定められた電力(外部供給電力)以上の電力が外部負荷に提供され、残りの電力がエンジン駆動式空調装置1の電気駆動部品に提供される。本実施形態において外部供給電力は2kWに設定されている。また、エンジン駆動式空調装置1に提供される電力のほとんどは、室内ファン231および室外ファン241に消費される。例えば室内ファン231の最大消費電力は約0.7kWであり、室外ファン241の最大消費電力は約0.7kWである。
エンジン駆動式空調装置1が自立暖房運転している場合において、外気温度が極端に低くて室外熱交換器24内の冷媒が外気から十分に熱を奪うことができず、冷媒蒸発温度が0℃未満にまで低下した場合、室外熱交換器24に着霜するおそれがある。室外熱交換器24に着霜した場合に室外熱交換器24の熱交換性能が悪化する。したがって、この場合は自立暖房運転を一旦停止して、自立除霜運転を開始する。自立暖房運転から自立除霜運転に運転状態を切り換える際には、四方切換弁26の切換状態が暖房接続状態から冷房接続状態に切り換えられる。また、自立除霜運転から自立暖房運転に運転状態を切り換える際には、四方切換弁26の切換状態が冷房接続状態から暖房接続状態に切り換えられる。本実施形態においては、自立暖房運転から自立除霜運転に運転状態が切り換えられる際に、コントローラ60が自立除霜前制御を実行し、自立除霜運転から自立暖房運転に運転状態が切り換えられる際に、コントローラ60が自立除霜後制御を実行する。
図4はコントローラ60が実行する自立除霜前制御ルーチンを示すフローチャートである。この自立除霜前制御ルーチンは、エンジン駆動式空調装置1が自立暖房運転しているときに所定の微小間隔ごとに行われる。自立除霜前制御ルーチンが起動すると、コントローラ60は、まず図4のS11にて、室外熱交換器24が着霜しているか否かを判断する。この着霜判定は、室外熱交換器24内の冷媒の蒸発温度(第4温度センサ284の検出温度)が例えば0℃以上であるか否かにより行うことができる。
着霜していない場合(S11:No)、コントローラ60は自立除霜運転は必要ないと判断してこのルーチンを一旦終了する。一方、着霜している場合(S11:Yes)、コントローラ60は運転状態を自立暖房運転から自立除霜運転に変化させるために四方切換弁26の切換作動要求が入力されたと認識する。この場合、コントローラ60はS12に処理を進め、発電機40から室外ファン241への電力供給を停止する。これにより室外ファン241の駆動が停止する。次いで、コントローラ60は、ガスエンジン10の回転数Rを、徐々に、あるいは段階的に、低下させる(S13)。続いてコントローラ60は、エンジン回転数Rが予め定められた第2設定回転数R2にまで低下したか否かを判断する(S14)。第2設定回転数R2については後述する。
S14にて、エンジン回転数Rが第2設定回転数R2以上と判断した場合(S14:No)、コントローラ60はS13に処理を戻してエンジン回転数Rの低下を継続する。一方、エンジン回転数Rが第2設定回転数R2にまで低下したと判断した場合(S14:Yes)、コントローラ60はS15に処理を進め、発電機40から室内ファン231への電力供給を停止する。これにより発電機40から電気駆動部品への供給電力の大きさが低下するとともに、室内ファン231の駆動が停止する。
続いて、コントローラ60は、エンジン回転数Rが第1設定回転数R1にまで低下したか否かを判断する(S16)。第1設定回転数R1は、第2設定回転数R2よりも小さい回転数(逆に言えば、第2設定回転数R2は、第1設定回転数R1よりも大きい回転数)として予め定められる。
ここで、第1設定回転数R1の定め方について説明する。自立型のエンジン駆動式空調装置の自立空調運転中にエンジン回転数が低下すると、圧縮機の回転数も低下するため、圧縮機の冷媒吐出口における冷媒圧力と冷媒吸入口における冷媒圧力との差圧ΔPが小さくなる。第1設定回転数R1は、四方切換弁26の切換状態を変化させた場合に差圧ΔPが大きいことによって生じる上記した不具合(熱交換フィンの歪み、大きな冷媒流動音)の発生が適度に抑えられるような差圧ΔPを発生するためのエンジン回転数として予め定義された回転数である。第1設定回転数R1は、例えば自立暖房運転時における最低回転数、例えば1200rpmに設定することができる。
S16にて、エンジン回転数Rが第1設定回転数R1以上であると判断した場合(S16:No)は、コントローラ60はエンジン回転数Rが第1設定回転数R1にまで低下するまで待つ。そして、エンジン回転数Rが第1設定回転数R1にまで低下した場合(S16:Yes)、コントローラ60はS17に処理を進め、エンジン回転数Rの低下を停止する。その後、コントローラ60はこのルーチンを終了する。
コントローラ60は、S11の判定結果がYesであって自立除霜前制御の実行を終了した後に、四方切換弁26を切換作動させる。これにより、圧縮機21の冷媒吐出口21bが室内熱交換器23に接続されるとともに圧縮機21の冷媒吸入口21aが室外熱交換器24に接続される暖房接続状態から、圧縮機21の冷媒吐出口21bが室外熱交換器24に接続されるとともに圧縮機21の冷媒吸入口21aが室内熱交換器23に接続される冷房接続状態に、四方切換弁26の切換状態が変化する。この四方切換弁26の切換作動が完了した時点で自立除霜運転が開始される。このように、本実施形態によれば、自立暖房運転から自立除霜運転に運転状態を変化させるために四方切換弁26の切換作動要求が入力された場合に、四方切換弁26が切換作動する前に、ガスエンジン10の回転数Rを第1設定回転数R1に低下させるとともに発電機40から電気駆動部品への供給電力の大きさが低下するように、ガスエンジン10の回転数Rと発電機40から電気駆動部品への供給電力の大きさを制御する自立除霜前制御が実行される。
自立除霜前制御が終了して自立除霜運転が開始されると、高温高圧のガス冷媒が四方切換弁26を介して室外熱交換器24に流入する。そして、室外熱交換器24にて高温高圧のガス冷媒が凝縮して外気に熱を吐き出す。このため室外熱交換器24に付着していた霜が溶け出す。これにより除霜される。そして、除霜運転を所定時間だけ継続した後に、コントローラ60は、自立除霜運転から自立暖房運転に運転状態を変化させるために四方切換弁26を切換作動させる。これにより、圧縮機21の冷媒吐出口21bが室外熱交換器24に接続されるとともに圧縮機21の冷媒吸入口21aが室内熱交換器23に接続される冷房接続状態から、圧縮機21の冷媒吐出口21bが室内熱交換器23に接続されるとともに圧縮機21の冷媒吸入口21aが室外熱交換器24に接続される暖房接続状態に四方切換弁26の切換状態が変化する。この四方切換弁26の切換作動が完了した時点で自立除霜運転が終了する。
その後、コントローラ60は、自立除霜後制御を実行する。図5は、コントローラ60が実行する自立除霜後制御ルーチンを示すフローチャートである。自立除霜後制御ルーチンが起動すると、コントローラ60は、図5のS21にて、ガスエンジン10の回転数Rを増加させる。
続いてコントローラ60は、エンジン回転数Rが第3設定回転数R3よりも大きいか否かを判断する(S22)。第3設定回転数R3については後述するが、例えばガスエンジン10の定格回転数(2400rpm)に設定してもよい。S22にてエンジン回転数Rが第3設定回転数R3以下であると判断された場合(S22:No)、コントローラ60はS21に処理を戻してエンジン回転数Rの増加を継続する。一方、エンジン回転数Rが第3設定回転数R3にまで増加したと判断された場合(S22:Yes)、コントローラ60はS23に処理を進め、発電機40から室外ファン241への電力供給の停止を解除し、次いで、発電機40から室内ファン231への電力供給の停止を解除する(S24)。続いてコントローラ60はS25に処理を進め、エンジン回転数Rの制御を自立暖房運転時における制御(通常制御)に戻す。その後、コントローラ60はこのルーチンを終了する。このように、本実施形態によれば、自立除霜運転から自立暖房運転に運転状態を変化させるために四方切換弁26が切換作動した後に、ガスエンジン10の回転数Rを増加させるとともに、ガスエンジン10の回転数Rが第3設定回転数R3に達したときに、室外ファン241および室内ファン231への電力供給の停止を解除するように、ガスエンジン10の回転数Rと発電機40から室外ファン241および室内ファン231への電力供給を制御する自立除霜後制御が実行される。コントローラ60が自立除霜後制御を実行した後は、エンジン駆動式空調装置1の運転状態が自立暖房運転に切り換わる。
図6は、自立暖房運転から自立除霜運転に、さらに自立除霜運転から自立暖房運転に、運転状態が変化した場合における、エンジン回転数Rおよび、圧縮機21の冷媒吸入口21aにおける冷媒圧力と冷媒吐出口21bにおける冷媒圧力との差圧ΔPの変化を示すグラフである。図6において、線Aがエンジン回転数Rの変化を表し、線Bが差圧ΔPの変化を表す。
図6に示すように、自立暖房運転時にはエンジン回転数Rは定格回転数の2400rpmである。このとき差圧ΔPは約2.5MPaである。なお、差圧ΔPが2.5MPaであるときに四方切換弁26を切換作動させた場合には、差圧ΔPが大きいために、上記した不具合(熱交換フィンの歪み、大きな流動音)が発生する。本実施形態において、四方切換弁26を切換作動させるときに上記した不具合の発生が十分に抑えられるための差圧ΔPの範囲は、1.5MPa以下である。また差圧ΔPが小さすぎると、四方切換弁26が作動しない。これらのことから、差圧ΔPは、四方切換弁26の最低作動差圧(例えば0.5MPa)〜1.5MPaであるのがよい。すなわち、四方切換弁26を切換作動させるときには、差圧ΔPを四方切換弁26の最低作動差圧〜1.5MPaの範囲内に収めておく必要がある。
図6において、T1の時点にて着霜と判断される。つまり、T1の時点で、コントローラ60に四方切換弁26の切換作動要求が入力される。すると、その後に自立除霜前制御が実行されて、エンジン回転数Rが低下される。エンジン回転数Rが低下すると圧縮機21の回転数も低下するために、圧縮機21の能力が低下する。そのため差圧ΔPも低下する。そして、エンジン回転数Rが1200rpmまで低下すると、差圧ΔPが1.5MPaを下回る。本実施形態では、第1設定回転数R1が1200rpmである。したがって、エンジン回転数Rが1200rpmとなるT2の時点でエンジン回転数Rの低下が停止されて自立除霜前制御が終了する。その後、四方切換弁26が切換作動されて自立除霜運転が開始される。
自立除霜運転が所定時間継続され、T3の時点で四方切換弁26が切換作動されて自立除霜運転が終了される。その後、自立除霜後制御が実行されて、エンジン回転数Rが増加される。エンジン回転数Rが増加すると圧縮機21の回転数も増加するために、圧縮機21の能力が向上する。そのため差圧ΔPも上昇する。そして、エンジン回転数Rが2400rpmまで増加した時点で自立除霜後制御が終了するとともに自立暖房運転が開始される。
図7は、自立暖房運転から自立除霜運転に、さらに自立除霜運転から自立暖房運転に、運転状態が変化した場合における、エンジン回転数R、発電機40で発電される電力(実発電電力)および、外部供給電力とエンジン駆動式空調装置1を運転するために各電気駆動部品に供給すべき電力の総和である要求電力の変化を示すグラフである。図7において、上側のグラフがエンジン回転数Rの変化を表し、下側のグラフが電力の変化を表す。また、下側のグラフにおいて、線Aが実発電電力の変化を表し、線Bが要求電力の変化を表す。
図7に示すように、自立暖房運転時にはエンジン回転数Rは約2400rpmであり、発電機40の実発電電力は約4.5kWである。また、このときにおける要求電力は約3.7kWである。T1の時点で自立除霜前制御が実行されてエンジン回転数Rが低下すると、それに伴い発電機40の回転数も低下するため実発電電力も低下する。また、T1の時点で自立除霜前制御が実行された直後に発電機40から室外ファン241への電力供給が停止されることにより、発電機40から電気駆動部品に供給すべき電力の大きさが低下される。このため、要求電力がT1より後のT5の時点で3.0kWまで低下する。
自立除霜前制御の実行時において、T5の時点より後のT6の時点までは、要求電力は3.0kWで推移する。この間、上記したように発電機40から室外ファン241への電力供給は停止されているが、発電機40から室内ファン231には電力が供給され続けている。このため室内ファン231は駆動を継続している。
一方、T5の時点以降も実発電電力は徐々に低下するため、実発電電力と要求電力との差が小さくなる。そして、T5よりも後のT6の時点で要求電力の大きさと実発電電力の大きさが等しくなる。つまり、T6の時点で要求電力も実発電電力も3.0kWである。T6の時点で、発電機40から室内ファン231への電力供給が停止される。このときのエンジン回転数、すなわち実発電電力と要求電力が等しくなるときにおけるエンジン回転数が、本実施形態の第2設定回転数R2である。第2設定回転数R2は、実発電電力Aと要求電力Bとの差(A−B)が所定の微小電力ΔVとなったときにおけるエンジン回転数として設定してもよい。つまり、第2設定回転数R2は、自立除霜前制御において、要求電力(室外ファン以外の電気駆動部品へ供給すべき電力+外部供給電力)を賄える電力のうちできるだけ小さい電力に相当するエンジン回転数として予め定められる。
エンジン回転数Rが第2設定回転数R2まで低下したとき、すなわち実発電電力と要求電力とが等しくなったときに発電機40から室内ファン231への電力供給が停止されるため、要求電力が3.0kWから2.3kWに低下する。そして、T2の時点で自立除霜前制御が終了する。T2の時点におけるエンジン回転数は1200rpmであり、このとき実発電電力は2.7kWである。図7からわかるように、T1〜T2の間、すなわち自立除霜前制御の実行中は、実発電電力が要求電力を下回ることはない。したがって、電力供給不足が発生することもない。
自立除霜前制御にて低下されるガスエンジン10の回転数の目標値、すなわち第1設定回転数R1(本実施形態では1200rpm)は、図6からわかるように差圧ΔPが1.5MPa以下となって差圧ΔPが大きいことにより引き起こされる不具合(四方切換弁26の切換作動時における熱交換フィンの歪みや大きな流動音)の発生を抑えることができ、且つ、図7からわかるように実発電電力が要求電力を下回らない程度の回転数である。すなわち、差圧ΔPが大きいことにより引き起こされる不具合(四方切換弁26の切換作動時における熱交換フィンの歪みや大きな流動音)の発生を抑えることができ、且つ、実発電電力が要求電力を下回らない程度の回転数として、第1設定回転数R1が予め定められる。
T2の時点で自立除霜前制御が終了し、四方切換弁26が切換作動されて自立除霜運転が開始される。自立除霜運転中における発電機40の実発電電力は2.7kWであり、要求電力Bは2.3kWである。つまり、自立除霜運転中には、外部負荷に外部供給電力(2kW)を提供し、残りの電力でエンジン駆動式空調装置1の運転(除霜運転)を継続する。この自立除霜運転中にも、実発電電力が要求電力を下回ることはない。したがって、電力供給不足が発生することもない。
T3の時点で四方切換弁26が切換作動されて除霜運転が終了するとともに、自立除霜後制御が実行される。このためエンジン回転数Rが増加される。これに伴い実発電電力も増加する。しかしながら、発電機40から室内ファン231および室外ファン241への電力供給は停止されているので、要求電力は増加しない。したがって、実発電電力が要求電力を下回ることはなく、電力供給不足が発生することもない。
T4の時点でエンジン回転数が第3設定回転数R3である2400rpmまで上昇すると、発電機40から室内ファン231および室外ファン241への電力供給の停止が解除されるとともに、自立除霜後制御が終了し、自立暖房運転が開始される。このとき既に実発電電力は4.5kWであるので、それ以降、室内ファン231および室外ファン241に電力を供給することによって要求電力が増加しても、要求電力が実発電電力を上回って電力供給不足に陥ることはない。つまり、電力供給不足に陥ることなく自立暖房運転を開始することができるエンジン回転数が上記の第3設定回転数R3である。換言すれば、第3設定回転数R3は、室内ファン231および室外ファン241への電力供給の停止を解除して自立暖房運転を開始する場合に、実発電電力が要求電力を下回らない程度の回転数として予め定められる。
以上の説明、および図7からわかるように、本実施形態において、自立暖房運転から自立除霜運転に運転状態が変化する場合、および自立除霜運転から自立暖房運転に運転状態が変化する場合において、エンジン回転数の低下により発電機40での実発電電力が低下しても、実発電電力が要求電力を下回ることはない。このため外部負荷に少なくとも外部供給電力(2kW)を安定供給でき、且つ、運転の継続に必要な電気駆動部品にも電力を安定的に供給して自立的にエンジン駆動式空調装置1の運転を継続することができる。
図8は、従来の自立型のエンジン駆動式空調装置において、自立暖房運転から自立除霜運転に、さらに自立除霜運転から自立暖房運転に、運転状態が変化した場合における、エンジン回転数R、実発電電力および要求電力の変化を示すグラフである。図8において、上側のグラフがエンジン回転数Rの変化を表し、下側のグラフが電力の変化を表す。また、下側のグラフにおいて、線Aが実発電電力の変化を表し、線Bが要求電力の変化を表す。
図8に示すように、T1の時点で着霜されたと判定された場合には、その後エンジン回転数が低下される。エンジン回転数の低下に伴い発電機40での実発電電力も低下する。ところが、室内ファンおよび室外ファンへの電力供給は停止されていない。そのためT7の時点で実発電電力が要求電力を下回る。
T2の時点でエンジン回転数の低下が終了し、四方切換弁が切換作動して自立除霜運転が開始される。このとき発電機から室内ファンおよび室外ファンへの電力供給が停止されるため、T7の時点で実発電電力が要求電力を上回る。しかし、T7〜T8の間の区間Cでは実発電電力が要求電力を下回っているので、電力供給不足が発生する。
また、自立除霜運転はT3の時点で終了する。すると、その後エンジン回転数が増加される。これに伴い実発電電力も増加する。また、自立除霜運転が終了すると、ただちに発電機から室内ファンおよび室内ファンに電力供給される。このため要求電力も増加する。そして、T9の時点で要求電力が実発電電力を上回る。その後要求電力は3.9kW程度で一定となるが、実発電電力はエンジン回転数の増加とともに増加していき、T10の時点で実発電電力が要求電力を上回る。しかし、T9〜T10の間の区間Dは実発電電力が要求電力を下回っているので、電力供給不足が発生する
このように、従来の自立型のエンジン駆動式空調装置においては、自立暖房運転から自立除霜運転への切換時、および、自立除霜運転から自立暖房運転への切換時に、電力不足が発生する。これに対し、本実施形態に係る自立型のエンジン駆動式空調装置1においては、自立暖房運転から自立除霜運転への切換時、および、自立除霜運転から自立暖房運転への切換時の双方にて、電力供給不足に陥ることはない。このため、電力供給不足によって外部負荷やエンジン駆動式空調装置の駆動が停止することを防止することができる。
以上のように、本実施形態のエンジン駆動式空調装置1は、ガスエンジン10と、圧縮機21と、室内熱交換器23と、室外熱交換器24と、四方切換弁26と、発電機40と、コントローラ60(制御部)とを備える。圧縮機21は、冷媒吸入口21aおよび冷媒吐出口21bとを有し、ガスエンジン10の動力によって駆動して低圧のガス冷媒を冷媒吸入口21aから吸入し高圧のガス冷媒を冷媒吐出口21bから吐出する。室内熱交換器23は、室内に設置され、暖房運転時に圧縮機21の冷媒吐出口21bから吐出された冷媒と室内空気とを熱交換させる。室外熱交換器24は室外に設置され、暖房運転時に室内熱交換器23から流出し、膨張弁25により膨張された冷媒と外気とを熱交換させる。四方切換弁26は、暖房運転時には、圧縮機21の冷媒吐出口21bが室内熱交換器23に接続されるとともに圧縮機21の冷媒吸入口21aが室外熱交換器24に接続される暖房接続状態とされ、冷房運転時および除霜運転時には、圧縮機21の冷媒吐出口21bが室外熱交換器24に接続されるとともに圧縮機21の冷媒吸入口21aが室内熱交換器23に接続される冷房接続状態とされるように、圧縮機21の冷媒吐出口21bおよび冷媒吸入口21aと、室内熱交換器23および室外熱交換器24との接続状態を切換可能に構成される。発電機40は、ガスエンジン10の動力によって発電するとともに、発電した電力を、外部負荷および、エンジン駆動式空調装置1を構成する部品であって電力により駆動する電気駆動部品に供給可能に構成される。そして、コントローラ60は、発電機40が電気駆動部品に電力を供給しているときに暖房運転から除霜運転に運転状態を変化させるために四方切換弁26の切換作動要求が入力された場合、つまり自立暖房運転時に運転状態を自立除霜運転に切り換えるための四方切換弁26の切換作動要求が入力された場合に、四方切換弁26が切換作動する前に、自立除霜前制御を実行する。自立除霜前制御では、コントローラ60は、ガスエンジン10の回転数を予め定められた所定の低い回転数である第1設定回転数R1に低下させるとともに発電機40から電気駆動部品への供給電力の大きさが低下するように、ガスエンジン10の回転数と発電機40から電気駆動部品への供給電力の大きさを制御する。
また、コントローラ60は、自立除霜前制御にて、ガスエンジン10の回転数Rを第1設定回転数R1に低下させるとともに、発電機40の実発電電力が、外部負荷に供給する最低電力として予め定められた外部供給電力(2.0kW)と電気駆動部品に供給すべき電力との総和である要求電力を下回らないように、ガスエンジン10の回転数Rと発電機40から電気駆動部品への供給電力の大きさを制御する。
本実施形態によれば、自立暖房運転から自立除霜運転への切換時に、四方切換弁26が切換作動する前に、コントローラ60が自立除霜前制御を実行する。自立除霜前制御の実行によってエンジン回転数Rが第1設定回転数R1に低下されるが、これとともに発電機40から電気駆動部品への供給電力の大きさも低下されるため、外部負荷に対する電力供給不足の発生を防止でき、外部負荷への電力の安定供給を実現できる。加えて、自立除霜前制御にて発電機40の実発電電力が要求電力を下回らないように、発電機40から電気駆動部品に供給すべき電力の大きさを制御するため、運転の継続に必要な電気駆動部品への電力を確保することができる。よって、電気駆動部品への電力供給不足によってエンジン駆動式空調装置1の運転が停止すること、およびエンジン駆動式空調装置1が停止することによって外部負荷への電力供給が遮断されることを防止できる。
また、コントローラ60は、自立除霜前制御にて、ガスエンジン10の回転数Rを第1設定回転数R1に低下させるとともに発電機40から室外ファン241への電力の供給が停止するように、ガスエンジン10の回転数Rと発電機40から室外ファン241への電力供給を制御する。このように自立除霜運転で電力供給の必要ない室外ファン241への電力供給を停止することにより、無駄な電力消費を抑えつつ、自立除霜運転で発電機40から電力供給の必要な電気駆動部品(例えばコントローラ60)に供給される電力を確保することができる。
また、コントローラ60は、自立除霜前制御にて、ガスエンジン10の回転数Rが、第1設定回転数R1よりも高い回転数であって、室外ファン241以外の必要な電気駆動部品に供給すべき電力および外部供給電力を賄うことができる電力のうちできるだけ小さい電力を発電機40で発電させるために必要な回転数として予め定められた第2設定回転数R2に低下するまでは、発電機40から室内ファン231への電力供給が継続され、ガスエンジン10の回転数Rが第2設定回転数R2まで低下したときに発電機40から室内ファン231への電力供給が停止するように、ガスエンジン10の回転数Rと発電機40から室内ファン231への電力供給を制御する。このため、室内ファン231の駆動が停止するときにできるだけエンジン回転数Rを下げることができる。よって、室内ファン231の停止時に圧縮機21の冷媒吐出口21bの圧力(すなわち室内熱交換器23に流入する冷媒の圧力)を低下させることができる。
除霜運転では室内ファンの駆動は必要ない。しかしながら、暖房運転中に室内ファンの駆動を急停止した場合、室内熱交換器内での冷媒の凝縮が急停止する。室内熱交換器での冷媒の凝縮が急停止すると、室内熱交換器から流出する冷媒の圧力が急上昇し、圧力異常によってエンジン駆動式空調装置が停止するおそれがある。この点に関し、本実施形態においては上述したように室内ファン231の停止時に圧縮機21の冷媒吐出口21bにおける冷媒圧力(すなわち室内熱交換器23に流入する冷媒圧力)を低下させることができる。よって、室内ファン231の停止時に室内熱交換器23から流出する冷媒圧力の急上昇による異常停止を回避することができる。
また、コントローラ60は、発電機40が電気駆動部品に電力を供給しているときに除霜運転から暖房運転に運転状態を変化させるために四方切換弁26が切換作動した後に、自立除霜後制御を実行する。自立除霜後制御では、コントローラ60は、ガスエンジン10の回転数を増加させるとともに、ガスエンジン10の回転数Rが予め定められた所定の高い回転数である第3設定回転数R3に達したときに、室外ファン241および室内ファン231への電力供給の停止を解除するように、ガスエンジン10の回転数と発電機40から室外ファン241および室内ファン231への電力供給を制御する。この自立除霜後制御によって、エンジン回転数Rが十分に上昇して発電機40の実発電電力が十分に上昇した後に、室外ファン241および室内ファン231への電力供給が開始される。そのため、エンジン回転数Rが上昇する過程で実発電電力が要求電力を下回って電力供給不足に陥ることが防止される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態においては、エンジンとしてガスエンジンを用いた例を説明したが、ガソリン等の液体燃料を用いるエンジンでも良い。また、本実施形態で示した第1設定回転数R1や第3設定回転数R3の値は例示であり、適宜変更することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変更可能である。