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JP6027714B2 - 印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法 - Google Patents

印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法、印刷インキ組成物用顔料分散体及びその製造方法により調製された印刷インキ組成物用顔料分散体を含んでなる印刷インキ組成物に関する。
オフセット印刷は、油性である印刷インキ組成物が水に反発する性質を利用した印刷方式であり、凹凸を備える印刷版を用いる凸版印刷方式とは異なり、凹凸のない印刷版を用いることを特徴とした印刷方式である。この印刷版は、凹凸の代わりに親油性の画像部と親水性の非画像部とを備え、印刷に際して、まず、印刷版に供給された湿し水によって非画像部が湿潤される。すると、油性である印刷インキ組成物が印刷版に供給された際に、当該印刷インキ組成物は、湿し水で湿潤されて水分を帯びた非画像部には反発して付着せず、親油性の画像部のみに付着する。こうして、印刷版の表面に印刷インキ組成物による画像が形成され、その印刷インキ組成物による画像がブランケット及び紙に順次転移することにより印刷が行われる。
また、上記のように湿し水を用いたオフセット印刷の他に、シリコーン樹脂により非画像部が形成された印刷版を用いた水無しオフセット印刷方式も実用化されている。この印刷方式では、湿し水が印刷インキ組成物と反発して非画像部を形成するのではなく、シリコーン樹脂が印刷インキ組成物と反発して非画像部となる。こうした点を除けば、水無しオフセット印刷もまた、上記のように湿し水を用いたオフセット印刷と共通の印刷方式である。そこで、本明細書では、湿し水を用いた印刷方式のみならず、水無し印刷方式をも含めた概念として「オフセット印刷」という用語を用いる。なお、水無しオフセット印刷では、湿し水による印刷インキ組成物の乳化が起こらないので、ドットゲインの小さな高品位印刷を行うことができるとされている。
オフセット印刷のうち、新聞印刷や電話帳印刷等のように高速かつ大量に印刷することが要求される分野では、オフセット輪転機が使用されるのが一般的である。オフセット輪転機では、印刷用紙を巻き取りの状態で用紙供給部に装着し、この巻き取りを巻き解くことで印刷用紙を印刷部へ供給し印刷を行う。印刷された印刷用紙は、裁断部で裁断を受けた後、折り加工等の必要な加工を受けて製品となる。このような印刷方法によれば、数万部から数十万部程度の印刷を一度に行うことができるので効率的である。そして、その印刷速度も1時間あたり、10万部以上という高速に達することもある。
このような高速印刷により多量の印刷物を得る場合、印刷部数の増加に伴って印刷機上で様々な障害を生じることがある。このような障害の一例として、印刷部数の増加に伴って粘つきの強い状態に変質した印刷インキ組成物が印刷機のローラーに溜まる「ねっぱり」現象や、印刷機において回転するローラーとローラーとの間で印刷インキ組成物が付着分裂する際に、印刷インキ組成物が糸を引き、この糸が延びきって切れた際に糸を構成していた印刷インキ組成物が微粒子となって飛び散り周辺を汚してしまう「ミスチング」現象を挙げることができる。印刷インキ組成物の性能としてこれらの障害の発生の少ないことが常に要求されており、少しでもこれらの発生を抑制できる製品が必要とされている。このような背景から、印刷インキ組成物の高速印刷適性を改善するための各種の取り組みが行われている(一例として、特許文献1を参照)。
ところで、オフセット印刷に用いられる印刷インキ組成物は、バインダーとなる樹脂を植物油等の油成分により溶解又は分散させた印刷インキ組成物用ワニスを分散媒として、着色顔料や体質顔料等の顔料成分を分散させて調製される。これらの顔料を分散媒に分散させるに際して、顔料成分と分散媒とを混ぜ合わせた混合物を調製し、この混合物を三本ロールミルやビーズミル等の分散機により混練し、その際のせん断力によって顔料成分を分散媒中に分散させる方法と、水系で合成された顔料成分を加圧濾過により水を絞って得られる湿った状態の顔料プレスケーキを分散媒中に投入し、これらをニーダー等の混練機で混練することにより、顔料成分の周囲に残留する水分を分散媒に含まれる油成分で置換させて顔料成分を分散媒中に分散させる方法(フラッシング法)とが知られている。なお、これらの方法により分散される顔料成分は、印刷インキ組成物に着色力を付与する着色顔料と、印刷インキ組成物に適正な粘弾性や各種特性を付与する炭酸カルシウム等の体質顔料とに大きく分類されるが、いずれの種類の顔料成分であっても、これらの方法により分散させることについては違いがない。
両分散方法にはそれぞれ一長一短がある。前者は、水系等で合成された顔料成分を完全に乾燥させて粒子の状態としたものを原料として用いるので、運搬時に顔料成分が軽量かつ小さな体積となって輸送に要する費用を抑制できる反面、完全に乾燥した顔料粒子同士が強固に凝集しているため微粒子化させて分散させる際に多量のエネルギーと時間を要することになる。また、後者は、水系で合成された顔料成分から水分を絞り、ある程度水分の残ったプレスケーキの状態としたものを原料として用いるので、運搬時に顔料成分が重くかつ大きな体積となって輸送に要する費用がかさむ反面、顔料を完全に乾燥させないので顔料粒子同士の凝集が少なく微粒子化させて分散させる際のエネルギーと時間を少なくできる。
このような背景から、本願の出願人により、完全に乾燥させて粒子の状態とした炭酸カルシウム等の体質顔料に水等の湿潤剤を加えてこれを湿潤させ、その上で分散媒と混練することで顔料分散体を調製することが提案されている(特許文献2〜5を参照)。このような手法を用いることにより、原料となる顔料成分の運搬時には、水分を含まない状態として輸送に要する費用を抑制しつつ、顔料成分を分散媒に分散させる際には、凝集した顔料粒子を湿潤により解した状態として分散に要するエネルギーや時間を節約し、印刷インキ組成物の生産性を高めることが可能になる。
特開2000−281954号公報 特許第5031730号公報 特許第5031739号公報 特許第5031735号公報 特許第5031734号公報
特許文献2〜5に記載された手法を用いて印刷インキ組成物用顔料分散体を調製することにより、印刷適性の優れた印刷インキ組成物を良好な生産性で製造することが可能となる。しかしながら、オフセット輪転機を用いた高速印刷は現在も発展を続ける分野であり、上記のような「ねっぱり」現象や「ミスチング」現象を少しでも抑制することのできる製品が常に求められているのもまた現状である。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、良好な生産性を維持しながら、生産された印刷インキ組成物における「ねっぱり」現象や、「ミスチング」現象等といった障害の発生を抑制することのできる印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法、並びにそのような製造方法で得られた印刷インキ組成物用顔料分散体及びそれを用いた印刷インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウムと有機顔料のプレスケーキとを印刷インキ組成物用ワニス中に加え、これらを混練して体質顔料である炭酸カルシウムと着色顔料である有機顔料とを一緒に印刷インキ組成物用ワニス中に分散させて印刷インキ組成物用顔料分散体を調製することにより、意外にも、良好な生産性を維持したまま、得られた印刷インキ組成物用顔料分散体を用いて調製された印刷インキ組成物が、上記のような「ねっぱり」現象や「ミスチング」現象の発生の少ないものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
本発明は、脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウム、水を含んだ有機顔料のプレスケーキ、及び印刷インキ組成物用ワニスを含む混合物を混練し、上記炭酸カルシウム及び有機顔料を上記印刷インキ組成物用ワニス中に分散させる混練工程と、上記水を除去する水除去工程と、を含む印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法である。
上記製造方法において、上記炭酸カルシウム、及び上記有機顔料の固形分の合計に対して、上記炭酸カルシウムの量を66質量%以下にすることが好ましい。
本発明によれば、良好な生産性を維持しながら、生産された印刷インキ組成物における「ねっぱり」現象や、「ミスチング」現象等といった障害の発生を抑制することのできる印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法、並びにそのような製造方法で得られた印刷インキ組成物用顔料分散体及びそれを用いた印刷インキ組成物が提供される。
図1は、本発明の印刷インキ組成物用顔料分散体を用いたときの印刷インキ組成物の製造手順を示すフロー図である。 図2は、従来の方法で製造された印刷インキ組成物用顔料分散体を用いたときの印刷インキ組成物の製造手順を示すフロー図である。
以下、本発明の印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法の一実施態様、並びに印刷インキ組成物用顔料分散体及び印刷インキ組成物の一実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施態様及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
<印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法>
本発明の印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法は、脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウム、水を含んだ有機顔料のプレスケーキ、及び印刷インキ組成物用ワニスを含む混合物を混練し、上記炭酸カルシウム及び有機顔料を上記印刷インキ組成物用ワニス中に分散させる混練工程と、上記水を除去する水除去工程と、を含む。この製造方法により調製された印刷インキ組成物用顔料分散体は、印刷インキ組成物の調製における中間原料として好ましく用いられる。以下、各工程について説明する。
[混練工程]
まず、混練工程について説明する。この工程では、脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウム、水を含んだ有機顔料のプレスケーキ、及び印刷インキ組成物用ワニスを含む混合物を混練し、上記炭酸カルシウム及び有機顔料を上記印刷インキ組成物用ワニス中に分散させる。まずは、各原料について説明する。
脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウムは、親水性である未処理の炭酸カルシウム粒子の表面に脂肪酸を結合させることにより、その表面が改質された炭酸カルシウムの粉末である。このような炭酸カルシウムは、例えば、水系に分散された炭酸カルシウムのスラリーに脂肪酸を添加して表面処理させる手段や、アルコール等といった適切な溶剤に脂肪酸を溶解させて溶液とし、当該溶液を未処理の炭酸カルシウムの粉末に加え、次いで溶媒を減圧留去させる手段等により得られる。表面処理される未処理の炭酸カルシウムの粉末は、天然の石灰石を破砕して得られる重質炭酸カルシウムであってもよいし、水系で化学合成されたコロイド炭酸カルシウムであってもよい。表面処理に用いる脂肪酸としては、ステアリン酸等を挙げることができるが、特に限定されない。炭酸カルシウムの一次粒子の粒径としては、20nm〜200nm程度を例示することができるが、特に限定されない。脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウムは、印刷インキ組成物における体質顔料として用いられる成分であり、分散媒である印刷インキ組成物用ワニス中に分散されることにより印刷インキ組成物に対して良好な粘弾性特性を付与する。
脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウムは、市販品であってもよい。このような市販品としては、白艶華CC、白艶華U、白艶華CCR、Vigot10、Vigot15(いずれも白石カルシウム株式会社製の商品名である。)等を例示できる。
印刷インキ組成物用顔料分散体における炭酸カルシウムの含有量としては、2.5〜30質量%が好ましく例示され、5〜25質量%がより好ましく例示され、7.5〜20質量%がさらに好ましく例示される。印刷インキ組成物用顔料分散体における炭酸カルシウムの含有量が上記の範囲であることにより、印刷インキ組成物用顔料分散体の適用された印刷インキ組成物の粘弾性が適切な範囲となり、ミスチングの発生を抑制できるので好ましい。また、印刷インキ組成物用顔料分散体において、炭酸カルシウム及び後述する有機顔料の固形分の合計に対して、炭酸カルシウムの含有量が66質量%以下であることが好ましい。印刷インキ組成物用顔料分散体において、炭酸カルシウム及び後述する有機顔料の固形分の合計に対して、炭酸カルシウムの含有量が66質量%以下であることにより、後述する有機顔料及び炭酸カルシウムの良好な分散性が得られるので好ましい。そこで、混練工程では、印刷インキ組成物用顔料分散体における炭酸カルシウムの含有量が上記のような条件を満たすように、脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウムの配合量を決定することが好ましい。
水を含んだ有機顔料のプレスケーキは、水系で析出物として合成された有機顔料から加圧濾過で水分を絞り、ある程度水分の残った状態で固形物とされたものである。このような有機顔料では、有機顔料粒子の周囲に水分が付着した状態となっていて有機顔料粒子同士の凝集が抑制されるので、プレスケーキを完全に乾燥させて得られる粉末状の有機顔料よりも凝集が少ない状態となっている。そのため、水を含んだ有機顔料のプレスケーキは、後述する印刷インキ組成物用ワニスとともに混練されると、有機顔料の周囲に存在する水相が印刷インキ組成物用ワニスに含まれる油成分により油相に転換され、高い分散性を有する顔料分散体となる。なお、有機顔料の周囲に存在する水相を油相に転換させて有機顔料の分散体を得る操作はフラッシングと呼ばれ、当業者に周知の手法である。有機顔料のプレスケーキに含まれる有機顔料の固形分量としては、20〜80質量%程度を例示できるが、特に限定されない。
プレスケーキの状態で用いられる有機顔料は、印刷インキ組成物に着色力を与えるための成分(すなわち着色顔料)である。このような有機顔料としては、従来から印刷インキ組成物に用いられているものを特に制限無く挙げることができる。
このような有機顔料としては、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料等を挙げることができる。
印刷インキ組成物用顔料分散体における有機顔料の含有量としては、有機顔料の固形分として、5〜30質量%が好ましく例示され、10〜25質量%がより好ましく例示される。印刷インキ組成物用顔料分散体における有機顔料の含有量が上記の範囲であることにより、印刷インキ組成物用顔料分散体を用いて調製された印刷インキ組成物の濃度を適切な範囲にできる他、炭酸カルシウムや有機顔料の良好な分散性を得ることができるので好ましい。なお、上記「有機顔料の固形分として」との表現は、混練工程で用いた有機顔料のプレスケーキの質量に基づいて含有量を計算するのではなく、当該有機顔料のプレスケーキに含まれる有機顔料の固形分(すなわち有機顔料の純分)の質量に基づいて含有量を計算するとの意図で用いるものである。
なお、上記の粉末状の炭酸カルシウムと有機顔料とを含めて、顔料成分とも呼ぶ。
印刷インキ組成物用ワニスは、樹脂成分と油成分とを含み、樹脂成分を油成分中に溶解又は分散させることにより調製される。
樹脂成分は、印刷用紙の表面で顔料成分を固定するバインダーとして機能する成分であり、また、顔料成分を印刷インキ組成物中に分散させるために用いられる成分でもある。このような樹脂としては、印刷インキ組成物の分野で通常使用されるものを特に制限なく挙げることができ、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、アルキド樹脂、植物油変性アルキド樹脂、石油樹脂等が例示される。これらの樹脂の重量平均分子量としては、1000〜30万程度を好ましく例示することができる。
油成分は、上記樹脂成分を溶解させて印刷インキ組成物用ワニスとしたり、印刷インキ組成物の粘度を調節したりするために使用される。油成分としては、植物油及び/又は鉱物油を挙げることができ、これまで印刷インキ組成物の調製に用いられてきたものを使用できる。
本発明において、植物油には、植物油の他に植物油由来の脂肪酸エステル化合物が含まれる。植物油としては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油等の乾性油や半乾性油等が例示される。また、植物油由来の脂肪酸エステル化合物としては、上記植物油に由来する脂肪酸のモノアルキルエステル化合物等が例示される。この脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく例示され、このような飽和又は不飽和脂肪酸としては、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が好ましく例示される。脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成するアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく例示され、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましく例示される。
これらの植物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。植物油としては、大豆油、大豆油脂肪酸エステル等が好ましく挙げられる。印刷インキ組成物における植物油の含有量としては、印刷インキ組成物全体に対して20〜60質量%程度を例示することができる。印刷インキ組成物用顔料分散体を用いて調製した印刷インキ組成物中の植物油の含有量が上記のような範囲となるように、印刷インキ組成物用ワニスに含まれる植物油の量を調節するのが好ましい。
本発明において、鉱物油には、溶剤成分と呼ばれる軽質の鉱物油や、潤滑油状である重質の鉱物油等が含まれる。
軽質の鉱物油としては、沸点160℃以上、好ましくは沸点200℃以上の非芳香族系石油溶剤が例示される。このような非芳香族系石油溶剤としては、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の0号ソルベント、同AFソルベント5号、同AFソルベント6号、同AFソルベント7号等が例示される。
重質の鉱物油としては、スピンドル油、マシン油、ダイナモ油、シリンダー油等として分類されてきた各種の潤滑油を挙げることができる。これらの中でも、米国におけるOSHA基準やEU基準に適応させるとの観点からは、縮合多環芳香族成分の含有量が抑制されたものであることが好ましい。このような鉱物油としては、JX日鉱日石エネルギー株式会社製のインクオイルH8、同インクオイルH35、三共油化工業株式会社製のSNH8、同SNH46、同SNH220、同SNH540等が例示される。
これらの鉱物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。印刷インキ組成物における鉱物油の含有量としては、印刷インキ組成物全体に対して0〜50質量%程度を例示することができる。
上記の樹脂成分と油成分とを混合し、これらを加熱しながら撹拌することで、樹脂成分が溶解又は分散され印刷インキ組成物用ワニスが調製される。樹脂成分と油成分とを混合する際の割合としては、樹脂成分:油成分(質量比)が15:85から50:50程度の範囲を挙げることができる。
樹脂成分と油成分との混合物は、反応容器に仕込まれ、この反応容器中で撹拌されながら加熱される。この加熱によって樹脂成分が油成分中に溶解又は分散される。このときの加熱温度としては、120〜250℃の範囲を挙げることができる。好ましい加熱温度は、120〜230℃の範囲である。また、樹脂の溶解時間(すなわち、加熱を継続させる時間)は、20〜60分間程度を挙げることができる。
また、印刷インキ組成物用ワニスは、印刷インキ組成物用顔料分散体を用いて調製された印刷インキ組成物における粘弾性を調節するために、必要に応じて、上記のようにして樹脂成分が溶解又は分散状態とされた後でこれらに金属キレート化合物を添加し、さらに加熱及び撹拌を継続することでゲル化ワニスとされてもよい。
このような目的で用いられる金属キレート化合物としては、アルミニウムエチルアセテートジイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレート、ステアリン酸アルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド等、及びそれらの混合物等が挙げられ、より好ましくはエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(ALCH)が挙げられる。金属キレート化合物の添加量としては、上記の反応容器に仕込んだ樹脂成分と油成分との合計を100質量部としたとき、0.5〜3.0質量部程度が例示される。
金属キレート化合物を上記反応容器に投入した後、撹拌しながらこれらを加熱する。加熱温度としては120〜200℃程度を挙げることができ、この温度にて15〜60分程度反応させる。これにより、印刷インキ組成物用ワニス中に存在している樹脂成分が架橋され、ゲル化ワニスとなる。
印刷インキ組成物用顔料分散体における樹脂成分の含有量としては、10〜50質量%が好ましく例示され、14〜40質量%がより好ましく例示されるので、樹脂成分がこのような含有量となるように印刷インキ組成物用ワニスの添加量を決定することが好ましい。印刷インキ組成物用顔料分散体における樹脂成分の含有量が上記の範囲であることにより、印刷インキ組成物用顔料分散体における顔料成分の分散性が良好になるとともに、印刷インキ組成物用顔料分散体のハンドリングが良好となる。なお、混練工程では、混練される混合物の粘度が低すぎる(すなわち、混合物が柔らかすぎる)と混合物に十分なせん断力が加わらずに、分散不良の原因になる。そのため、混練工程では、上記の基準で決定された量の印刷インキ組成物用ワニスの全量を一度に添加するのではなく、混合物が固練り状態となるように、上記の基準で決定された量の印刷インキ組成物用ワニスを二回以上に分割して添加することが好ましい。
上記で説明した、脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウム、水を含んだ有機顔料のプレスケーキ、及び印刷インキ組成物用ワニスの三成分を混合し、混練を行う。ここで用いる混練装置としては、フラッシャー(ニーダー)を例示することができる。なお、この工程で用いる混練装置には、後述の水除去工程における便宜のために、装置を傾斜させることにより、混練物から遊離されて装置内に溜まった水を排水する機構や、装置内を減圧しながら加熱することにより内容物に含まれる水分を除去することのできる機構を備えることが好ましい。
この一工程を経ることにより、有機顔料及び粉末の炭酸カルシウムの両方が印刷インキ組成物用ワニス中に分散される。通常、粉末の炭酸カルシウムを印刷インキ組成物用ワニス中に分散させるには、まず炭酸カルシウムと印刷インキ組成物用ワニスとの混合物を調製し、次いで三本ロールミル等の分散機によりこの混合物に強力なせん断力を与えて炭酸カルシウムの粒子を粉砕させる必要があり、多くのエネルギーと時間とを必要とする。しかしながら、本発明の製造方法によれば、ニーダーで与えられる程度のせん断力で短時間に粉末の炭酸カルシウムが印刷インキ組成物用ワニス中に分散する。このため、本発明の製造方法によれば、これまでの印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法を用いた場合に比べて、格段に生産性が向上する。
本発明の製造方法を用いた場合に、このように炭酸カルシウムを効率良く分散することのできる理由は必ずしも明らかでない。しかしながら、その理由となる可能性の一つとして、上記三成分の混練を進めるうちに、プレスケーキ状態の有機顔料粒子の周囲が水相から油相に転換されて混合物中に遊離状態の水分を生じ、この水分が粉末である炭酸カルシウムに浸透して、凝集状態である炭酸カルシウム粒子同士の結合を緩めることを挙げることができる。こうして炭酸カルシウム粒子同士の結合が緩んだ結果、比較的小さなせん断力により分散が可能になったものと考えられる。
[水除去工程]
上記混練工程を経た混合物は、水除去工程に付される。水除去工程は、上記混練工程の進行に伴って、混練を受けている混合物から遊離してきた水分を除去する工程である。すなわち、上記混練工程の進行とともに、プレスケーキに含まれる有機顔料分子の周りの水相が油相に転換され、余剰となった水分が混合物の系外に排出されて混練装置内に溜まったり、混合物中に水滴の状態や乳化した状態で残留したりするので、この水分を除去する。
混練装置内に溜まった水分は、例えば、混練装置を傾斜させて排水を行うことで取り除かれる。また、混合物中に水滴の状態や乳化した状態で残留する水分は、上記混練工程を経た混合物を減圧可能な容器に収容し、減圧及び加熱を行いながら容器内の混合物をニーダー等により混合することで取り除かれる。これらの操作により、上記混練工程を経た混合物は、それに含まれる水分が除去され、印刷インキ組成物用顔料分散体となる。なお、上記混練工程を経た混合物は、水除去工程において、含水率が2質量%以下となるまで水を除去されることが好ましい。ここで、混合物中の含水率は、カールフィッシャー水分計等によって測定することができる。
水除去工程を経た印刷インキ組成物用顔料分散体は、必要に応じて、さらに三本ロールミル等の分散装置により練肉されてもよい。
本発明の印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法によれば、特に脂肪酸で表面処理された粉末状の炭酸カルシウムを用いて上記の手順で印刷インキ組成物用顔料分散体を製造することにより、意外なことに、得られた印刷インキ組成物用顔料分散体から調製された印刷インキ組成物における「ねっぱり」現象の発生が大きく抑制される。なお、「ねっぱり」現象とは、上述のように、印刷部数の増大に伴って印刷機のローラー上に粘つきの強い状態に変質した印刷インキ組成物が溜まる現象である。この現象による弊害の一例として、印刷機の停止→再始動時における版面のクリーンアップに時間が掛かり、損紙の増大を招くことを挙げることができる。
また、本発明の製造方法により得られた印刷インキ組成物用顔料分散体を用いて調製された印刷インキ組成物で印刷を行うと、従来の三本ロールミルを用いた製造方法により得られた印刷インキ組成物用顔料分散体を用いて調製された印刷インキ組成物で印刷を行ったときよりも、印刷時におけるミスチングの発生が著しく低減される。このような効果が得られる理由は、必ずしも明らかでないが、一般に三本ロールミルを用いて炭酸カルシウム粒子の分散を行う場合には、顔料と分散媒(印刷インキ組成物用ワニス)との混合物が三本のロール間を効率良く転移できるようにこの混合物に含まれる樹脂成分の量を多くする必要があるとされ、こうした措置により多めに添加された樹脂成分が印刷の際のローラー間での糸引きを引き起こすと考えられるのに対して、本発明の製造方法により炭酸カルシウム粒子の分散を行う場合には、三本ロールミルを用いて分散を行うときのように樹脂成分を多めに添加する必要がなく、印刷の際のローラー間での糸引きが少なくなるためと推察される。
以上のように、本発明は、脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウム、水を含んだ有機顔料のプレスケーキ、及び印刷インキ組成物用ワニスを含む混合物を混練して印刷インキ組成物用顔料分散体を調製することにより、印刷インキ組成物用顔料分散体の生産性が向上するだけでなく、これを用いて調製された印刷インキ組成物が上記のような優れた特性を備えるようになることを本発明者らが知見したことにより完成されたものである。
<印刷インキ組成物用顔料分散体>
上記の製造方法により得られた印刷インキ組成物用顔料分散体も本発明の一つである。既に述べたように、本発明の印刷インキ組成物顔料分散体は、これを用いて調製された印刷インキ組成物で印刷を行った際に、「ねっぱり」現象やミスチングの発生を抑制できる点で従来のものよりも優れるものである。
ここで、本発明の印刷インキ組成物用顔料分散体を用いたときの印刷インキ組成物の調製方法と、従来の方法で製造された印刷インキ組成物用顔料分散体を用いたときの印刷インキ組成物の調製方法とを、図1及び2を参照しながら対比説明する。図1は、本発明の印刷インキ組成物用顔料分散体を用いたときの印刷インキ組成物の製造手順を示すフロー図であり、図2は、従来の方法で製造された印刷インキ組成物用顔料分散体を用いたときの印刷インキ組成物の製造手順を示すフロー図である。
既に述べたように、本発明の印刷インキ組成物用顔料分散体は、着色顔料である有機顔料と体質顔料である炭酸カルシウム粉末とを一度に分散媒(印刷インキ組成物用ワニス)に分散させてなり、着色顔料と体質顔料との両方を含んだ複合型の顔料分散体である。したがって、図1に示すように、この顔料分散体を用いて印刷インキ組成物を調製するに際しては、フラッシング(混練工程)により得た顔料分散体を必要に応じて三本ロールミルにより練肉した後で、この顔料分散体に印刷インキ用ワニス、油成分、各種添加剤等を加えて混合及び調整を行う工程を経ることになる。
これに対して、従来の方法で製造された印刷インキ組成物用顔料分散体では、着色顔料(有機顔料)を含んだ着色顔料分散体と、体質顔料を含んだ体質顔料分散体とが別体になっている。これらの顔料分散体は、それぞれ別々に、着色又は体質顔料と分散媒とを混合し、次いでフラッシング、又は三本ロールミルを用いた練肉といった手法により調製されたものである。そして、図2に示すように、これらの顔料分散体を用いて印刷インキ組成物を調製するに際しては、必要に応じて顔料分散体を三本ロールミルにより練肉した後で、これらの顔料分散体を混合し、さらに印刷インキ用ワニス、油成分、各種添加剤等を加えて混合及び調整を行う工程を経ることになる。
<印刷インキ組成物>
上記の印刷インキ組成物用顔料分散体を含んでなる印刷インキ組成物も本発明の一つである。既に述べたように、本発明の印刷インキ組成物は、印刷時における「ねっぱり」現象やミスチングの発生を抑制できる点で従来のものよりも優れる。本発明の印刷インキ組成物は、上記印刷インキ組成物用顔料分散体に、既に述べた印刷インキ組成物用ワニス及び油成分を添加し、さらに必要に応じて他の印刷インキ組成物用顔料分散体や添加剤(酸化防止剤、アルコール類、ワックス類等)等を加え、所望の粘度に調整することで得られる。印刷インキ組成物における粘度としては、ラレー粘度計による25℃での値が2.0〜20Pa・sであることを例示できるが、特に限定されない。
印刷インキ組成物における上記印刷インキ組成物用顔料分散体の含有量は、印刷インキ組成物において必要とされる有機顔料濃度を考慮して適宜決定すればよい。印刷インキ組成物における有機顔料濃度としては、印刷インキ組成物全体に対して8〜30%程度が例示されるが特に限定されない。なお、イエロー顔料を使用してイエロー印刷インキ組成物を、マゼンタ顔料を使用してマゼンタ印刷インキ組成物を、シアン顔料を使用してシアン印刷インキ組成物をそれぞれ調製する場合には、補色として、他の色の印刷インキ組成物用顔料分散体を併用したり、他の色の印刷インキ組成物を添加したりすることも可能である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載では、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は質量部を意味する。
[印刷インキ組成物用ワニスAの調製]
コンデンサー、温度計及び撹拌機を装着した4つ口フラスコに、重量平均分子量10万のロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業株式会社製、KG−2212)を35部、大豆油を20部及びAFソルベント6号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)を44.5部仕込んだ後200℃に昇温し、同温度を1時間維持することにより樹脂を溶解させて、印刷インキ組成物用ワニスAを得た。
[印刷インキ組成物用ワニスBの調製]
コンデンサー、温度計及び撹拌機を装着した4つ口フラスコに、上記ロジン変性フェノール樹脂を35部、大豆油を20部及びAFソルベント6号を44.5部仕込んだ後200℃に昇温し、同温度を1時間維持することにより樹脂を溶解させた後、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH)を0.5部仕込み、その後170℃で60分間加熱保持して、印刷インキ組成物用ワニスBを得た。
[実施例1]
卓上フラッシャー(井上機械株式会社製)内に、25℃にて、印刷インキ組成物用ワニスAを30質量部、炭酸カルシウムVigot10(商品名、白石カルシウム株式会社製、脂肪酸により表面処理された炭酸カルシウム粉末)を15質量部、及びカーミン6B顔料(住化カラー株式会社製、カーミン6B顔料のプレスケーキ、固形分量約30質量%)を固形分として20質量部投入し、50℃にて60分間フラッシングを行った。その後、卓上フラッシャーの容器を傾斜させることで遊離してきた水を除去するとともに、減圧加熱することで混練物中の水分量を2質量%以下とした。こうして得た混練物に印刷インキ組成物用ワニスAを10質量部及び印刷インキ組成物用ワニスBを14.5質量部加え、卓上フラッシャーのニーダーを用いて混合することで実施例1の印刷インキ組成物用顔料分散体を得た。グラインドメーターを用いて実施例1の印刷インキ組成物用顔料分散体に含まれる顔料の粒子径測定を行った結果、顔料の粒子径は7.5μm以下だった。
[比較例1]
卓上フラッシャー(井上機械株式会社製)内に、25℃にて、印刷インキ組成物用ワニスAを30質量部、炭酸カルシウム白艶華T−DD(商品名、白石カルシウム株式会社製、ロジン酸により表面処理された炭酸カルシウム粉末)を15質量部、及び実施例1で用いたのと同じカーミン6B顔料を固形分として20質量部投入し、50℃にて60分間フラッシングを行った。その後、卓上フラッシャーの容器を傾斜させることで遊離してきた水を除去するとともに、減圧加熱することで混練物中の水分量を2質量%以下とした。こうして得た混練物に印刷インキ組成物用ワニスAを10質量部及び印刷インキ組成物用ワニスBを14.5質量部加え、卓上フラッシャーのニーダーを用いて混合することで比較例1の印刷インキ組成物用顔料分散体を得た。グラインドメーターを用いて比較例1の印刷インキ組成物用顔料分散体に含まれる顔料の粒子径測定を行った結果、顔料の粒子径は7.5μm以下だった。
[比較例2]
卓上フラッシャー(井上機械株式会社製)内に、25℃にて、炭酸カルシウム白艶華T−DD(商品名、白石カルシウム株式会社製、ロジン酸により表面処理された炭酸カルシウム粉末)を100質量部投入した。次にそこにイオン交換水を50質量部投入して撹拌混合して、スラリー状態にした。ここに印刷インキ組成物用ワニスAを25質量部添加し、50℃にて60分間フラッシングを行った。その後、遊離してきた水を除去するとともに、減圧加熱することで混練物中の水分量を2質量%以下とした。こうして得た混練物に印刷インキ組成物用ワニスAを17質量部及び印刷インキ組成物用ワニスBを25質量部加え、卓上フラッシャーのニーダーを用いて混合することで分散体1を調製した。グラインドメーターを用いて分散体1に含まれる炭酸カルシウムの粒子径測定を行った結果、炭酸カルシウムの粒子径は7.5μm以下だった。一方、卓上フラッシャー(井上機械株式会社製)内に、25℃にて、印刷インキ組成物用ワニスAを30質量部、及び実施例1で用いたのと同じカーミン6B顔料を固形分として30質量部投入し、50℃にて60分間フラッシングを行った。その後、卓上フラッシャーの容器を傾斜させることで遊離してきた水を除去するとともに、減圧加熱することで混練物中の水分量を2質量%以下とした。こうして得た混練物に印刷インキ組成物用ワニスAを7質量部及び印刷インキ組成物用ワニスBを13質量部加え、卓上フラッシャーのニーダーを用いて混合することで分散体2を得た。グラインドメーターを用いて分散体2に含まれる顔料の粒子径測定を行った結果、顔料の粒子径は7.5μm以下だった。その後、分散体1を28質量部と分散体2を60質量部と印刷インキ用ワニスAを13質量部とを均一に混ぜ合わせて、比較例2の印刷インキ組成物用顔料分散体を得た。なお、比較例2の印刷インキ組成物用顔料分散体における炭酸カルシウム及びカーミン6Bの含有量は、実施例1及び比較例1におけるそれとほぼ同じである。
[比較例3]
印刷インキ組成物用ワニスAを44質量部及び印刷インキ組成物用ワニスBを16質量部と、炭酸カルシウムVigot10(商品名、白石カルシウム株式会社製、脂肪酸により表面処理された炭酸カルシウム粉末)を40質量部とをよく混ぜ合わせ、三本ロールミルを用いて練肉し、分散体3を調製した。グラインドメーターを用いて分散体3に含まれる炭酸カルシウムの粒子径測定を行った結果、炭酸カルシウムの粒子径は7.5μm以下だった。その後、分散体3を42質量部と比較例2における分散体2を58質量部とを均一に混ぜ合わせて、比較例3の印刷インキ組成物用顔料分散体を得た。なお、比較例3の印刷インキ組成物用顔料分散体における炭酸カルシウム及びカーミン6Bの含有量は、実施例1及び比較例1におけるそれとほぼ同じである。
実施例1、及び比較例1〜3のそれぞれの印刷インキ組成物用顔料分散体を用いて、印刷インキ組成物用顔料分散体を54質量部、印刷インキ組成物用ワニスAを20質量部、印刷インキ組成物用ワニスBを20質量部及び大豆油を6質量部混合し、さらに、ラレー粘度計における粘度が6Pa・s、スロープ(JIS K5101に従い25℃で測定)が5±1になるように印刷インキ組成物用ワニスA、印刷インキ組成物用ワニスB及び大豆油を用いて調節し、それぞれ実施例1、及び比較例1〜3の印刷インキ組成物とした。
[印刷評価]
実施例1、及び比較例1〜3の印刷インキ組成物のそれぞれについて、N−750型印刷実験機(東浜精機株式会社製)を使用して、印刷速度12万部/時で用紙を新聞用更紙として下記のベタ紙面濃度にて印刷試験を行った。各印刷インキ組成物について2万部の印刷を行い、それぞれの印刷の終了後における水着けローラー(印刷版に湿し水を供給するローラー)上の印刷インキ組成物の「ねっぱり」状態を指触で評価した。その評価結果を表1の印刷評価結果欄に示す。印刷試験における湿し水としては水道水にSAH−7(サカタインクス株式会社製、アルカリH液)を0.7%加えたものを使用し、湿し水の供給にはスプレーダンプナーSSD−12(サカタインクス株式会社製)を使用した。印刷に際しては、水幅の下限付近での印刷状態の比較を行うために、水幅の下限値よりもSSD−12のダイヤルを2ポイント上げた状態とした。なお、印刷試験におけるベタ紙面濃度は、0.95±0.02とした。また、ベタ紙面濃度は、印刷物におけるベタ部の濃度をSpectroeye濃度計(Gretagmacbeth社製)により測定した数値である。
表1の印刷評価結果欄における評価基準は、下記の通りである。なお、下記において、ローラー上の印刷インキ組成物が指に付着することは、ローラー上でインキの固着(ねっぱり)が生じていないことを意味しており、ローラー上のインキ組成物が指に付着しないことは、ローラー上でインキの固着(ねっぱり)が生じていることを意味している。
◎:ローラー上のインキ組成物が指に付着し、その粘度も元のインキ組成物と同様だった
○:ローラー上のインキ組成物が指に付着したが、その粘度は元のインキ組成物よりもわずかに増加していた
×:ローラー上のインキ組成物が指に付着しない
[ミスチング評価]
実施例1、及び比較例1〜3の印刷インキ組成物のそれぞれについて、印刷インキ組成物を2.6cc採取し、これをインコメーター(東洋精機株式会社製)の回転ローラーに付着させた。次に、回転ローラーを400rpmにて30秒間回転させることにより、回転ローラー上で印刷インキ組成物の均一な膜を形成させ、その後、回転ローラーを1200rpmにて2分間回転させ、その際のミスチング(印刷インキ組成物のごく微少な滴が霧状に飛散することを意味する。)した印刷インキ組成物をバイブレーションローラー下部に敷いた10cm×10cmの用紙上に付着させ、この用紙上に付着した印刷インキ組成物の量を目視により評価した。試験は、温度25℃、湿度50%に維持された恒温恒湿室内にて実施した。結果を表1のミスチング評価結果欄に示す。
表1のミスチング評価欄における評価基準は、下記の通りである。なお、下記評価基準において「標準的」とは、試験対象である印刷インキ組成物と同等の粘度グレードである、市販のロジン変性フェノール樹脂タイプの印刷インキ組成物と同等程度であることを意味する。
◎:用紙上の汚れが殆ど無い(ミスチングが極めて少ない)
○:用紙上の汚れが標準的なものよりも若干少ない
△:用紙上の汚れが標準的なもの
×:用紙の汚れが標準的なものよりも多いもの
Figure 0006027714
表1に示すように、本発明の製造方法で得られた印刷インキ組成物用顔料分散体を用いて印刷インキ組成物を調製すると、「ねっぱり」現象や「ミスチング」現象が抑制されて良好な結果となることがわかる。

Claims (2)

  1. 脂肪酸により表面処理された粉末状の炭酸カルシウム、水を含んだ有機顔料のプレスケーキ、及び印刷インキ組成物用ワニスを含む混合物を混練し、前記炭酸カルシウム及び有機顔料を前記印刷インキ組成物用ワニス中に分散させる混練工程と、
    前記水を除去する水除去工程と、を含む印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法。
  2. 前記炭酸カルシウム、及び前記有機顔料の固形分の合計に対して、前記炭酸カルシウムの量を66質量%以下にすることを特徴とする請求項1記載の印刷インキ組成物用顔料分散体の製造方法。
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