以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明における最良な実施の形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
まず、記録材上のトナー量が少ない時に生じる現象について説明する。図21は、記録材上に形成された未定着トナー画像のトナー量と「単色および2次色のトナー層形成状態」についての観察結果を表した模式図である。単色時のトナー401(説明においてはシアン)に加え、2色目のトナー403(説明においてはイエロー)が示されている。図中、トナーの量が少ない時の単色のトナー層形成状態を(a)、2次色のトナー層形成状態を(b)に、さらに、トナー量が多い時(隙間無く並んでいる時)の単色のトナー層形成状態を(c)、2次色のトナー層形成状態を(d)に示した。
トナー量が少ない時は、(a)に示すように下層のシアントナー401に隙間が多く存在していることがわかり、(b)に示すように2色目となる上層のイエロートナー403が、シアントナー401が形成する隙間に載っていることがわかる。トナーのような粒子状のものが層を形成する際に、上に載る粒子が下になる粒子間に落ち込むことは言うまでも無い。このように、隙間が存在する下層のシアントナー401上には、その隙間の上に上層のイエロートナー403が載る。そのため、(b)の(透過状態)に示すように上層のトナーを透過して見ると、上層のイエロートナー403のみが存在する部分404、下層のシアントナー401のみが存在する部分405と、上層のイエロートナー403および下層のシアントナー401が重なってグリーンを形成する重なり部分406が形成されることがわかる。
一方、トナー量が多い時(隙間無く並んでいる時)は、(c)に示すように下層のシアントナー401は隣同士のトナーが接しているため、記録材がほとんど隠蔽されていることがわかる。また、(d)に示すように、2色目となる上層のイエロートナー403が、(b)同様、シアントナー401が形成する隙間に載っており、さらに、イエロートナー403の上に載っているイエロートナー403もイエロートナー自身が形成する隙間に載っていることがわかる。(c)の単色状態で既に記録材がしっかりと隠蔽されている上に、上層に位置するイエロートナー403自身もイエロートナー同士で下層を隠蔽する状態となる。このため、(d)の透過状態を見てわかるように、トナー量が少ない時の(b)の透過状態とは異なり、イエロートナー403が存在する多くの部分が、グリーンを形成する重なり部分406となることがわかる。
このように、トナー量が多い時は、多くの部分が良好に2次色を形成する重なり部分406となるのに対して、トナー量が少ない時は、トナー量が少なくなればなるほど、上層および下層の互いの隙間に単色のみとなる部分(404,405)が増加する。したがって、記録材上のトナー載り量を減らすと、2次色の発色(彩度)が悪化し、同時に単色形成部分においても、記録材の隠蔽が悪くなることにより、色域の再現範囲が極端に低下する。
以上の観察結果から、各単色トナー間に生じる隙間の量が色域の再現範囲に影響していることが分かった。各単色トナー間に生じる隙間はトナー量が少なくなるにつれて増加する。観察から分かったように、単色で多層を形成するのに十分なトナー量があるときは、下層トナーの隙間を上層トナーが埋めている。トナー量が減少していくと、多層形成できなくなっていくので、徐々に隙間が増加する。そこで、トナー単層(トナー粒子一つ分の厚さの層)で記録材の表面を覆っているか否かの境界条件を考察する。
トナーの形状を真球体とした場合、真球体トナーが理想的な最密充填配列で単層を形成するのに必要なトナー量の計算を行った。最密充填配列とは図22(a)に示すように、隣り合う同色のトナー粒子同士が接触している配列である。図22は、トナーが最密充填配列で記録材上に載っている状態(図22(a))と、トナーが隙間tの間隔で記録材上に載っている状態(図22(b))を示している。計算に用いたパラメータは、トナー粒径(重量平均粒径)L[μm]、トナー密度(比重)ρ[g/cm3]である。
トナーの体積はV○[μm3]、平面的なトナーの投影面積はS○[μm2]、トナー1つ分が含まれる単位面積(図22(a)の菱形部分)はS■[μm2]であり、それぞれ以下のようになる。
これらから、トナーが最密に並んだ時(図22(a)の配列)の単層(1色)のトナー載り量H[μm](単位面積あたりのトナーの体積=トナーの平均高さ)が以下のように算出される。
またトナーの載り量A[mg/cm2](単位面積あたりの重さ)は
となる(式中1/10は単位合わせのためのもの)。
つまり、A=ρπL/(30√3)[mg/cm2]が、最密充填配列時のトナー載り量である。このトナー量より記録材上のトナー量が少なくなると、トナー粒子間の隙間が大きくなり過ぎて、複数色のトナーを積層したトナー画像を記録材に定着させても、トナー画像の彩度が低下しやすいことを示している。したがって、各色において、記録材上の未定着トナー画像の最大載り量A[mg/cm2]を、A<ρπL/(30√3)に設定してトナー消費量を抑える画像形成装置では、記録材上のトナー粒子間の隙間が大きく、彩度が低下しやすい。
そこで、本実施例の画像形成装置は、各色において、記録材上の未定着トナー画像の最大載り量A[mg/cm2]を、A<ρπL/(30√3)に設定しているにも拘らず、彩度の低下を抑えられるようにしている。
(画像形成部)
図1に示す画像形成装置内には第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdが併設され、各々異なった色のトナー画像が、潜像、現像、転写のプロセスを経て形成される。
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ専用の像担持体、本例では電子写真感光ドラム3a、3b、3c、3dを具備し、各感光ドラム3a、3b、3c、3d上に各色のトナー画像が形成される。各感光ドラム3a、3b、3c、3dに隣接して中間転写体30が設置され、感光ドラム3a、3b、3c、3d上に形成された各色のトナー画像が、中間転写体30上に1次転写され、2次転写部で記録材P上に転写される。さらに記録材上に形成されたトナー画像は、定着部9で加熱及び加圧されて記録材に定着された後、記録画像として装置外に排出される。
感光ドラム3a、3b、3c、3dの外周には、それぞれドラム帯電器2a、2b、2c、2d、現像器1a、1b、1c、1d、1次転写帯電器24a、24b、24c、24d及びクリーナ4a、4b、4c、4dが設けられている。これらの上方部には画像情報に応じて感光ドラムに静電潜像を形成するためのレーザスキャナが設置されている。
現像器1a、1b、1c、1dには、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが収容されている。現像器1a、1b、1c、1dは、それぞれ感光ドラム3a、3b、3c、3d上の潜像を現像して、シアントナー画像、マゼンタトナー画像、イエロートナー画像及びブラックトナー画像として可視化する。
中間転写体30は矢示の方向に感光ドラム3と同じ周速度で回転駆動されている。感光ドラム3a上に形成された第1色であるイエロートナー画像は、感光ドラム3と中間転写体30とのニップ部を通過する過程で、中間転写体30に印加される1次転写バイアスの効果で中間転写体30の外周面に転写される。同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次中間転写体30上に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が中間転写体上に形成される。
11は2次転写ローラで、中間転写体30に接触させて配設してある。2次転写ローラ11には、2次転写バイアス源によって所望の2次転写バイアスが印加されている。中間転写体30上に重畳転写された合成カラートナー画像は、給紙カセット10からレジストローラ12を経て中間転写体30と2次転写ローラ11との当接ニップに搬送される記録材Pに転写される。このようにして、複数色のトナーが重なった未定着トナー画像が記録材上に形成される。この後、記録材は定着部9に搬送される。記録材上に形成された未定着トナー画像は定着部9の定着ニップ部で加熱及び加圧されて記録材に定着される。
一次転写が終了した感光ドラム3a、3b、3c、3dは、それぞれのクリーナ4a、4b、4c、4dによりクリーニングされる。また、中間転写体30もクリーナ19でクリーニングされる。
(定着装置)
本例の定着装置(定着部)9は、定着ニップ部で一枚の記録材を定着処理する期間中、トナー積層方向に対して垂直方向であり且つ一定方向のせん断力をトナー画像に対して付与し続けるものである。
定着装置の実施例を以下に説明する。本実施例では定着ローラを回転させると同時に定着ローラ長手方向にも移動(スライド)させて、未定着トナーを溶かしながらトナーを引き伸ばしている。そして、未定着のトナー量が少ない場合(トナー層が少ない)においても、2次色の発色性(彩度)を向上させることができる。以下詳細に説明する。
図2に本実施例における定着装置の概略断面図を示す。定着ローラ(未定着トナー画像と接触する第1の回転体)100は、外径φ40mmであり、φ36mmのアルミ製芯金104の外側にシリコーンゴムからなる弾性層105が形成されている。弾性層105の上には、トナー離型層としてPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)からなる離型層が30μm形成されている。本実施例では離型層として耐久性の優れるPFAチューブを使用した。離型層の材質としては、PFAの他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂(FEP)等のフッ素樹脂を用いても良い。
加圧ローラ(第1の回転体と共に定着ニップ部を形成する第2の回転体)101は、本実施例では、定着ローラ100と同様の構成のものを用いた。つまり外径φ40mmであり、φ36mmアルミ製芯金104の外側にシリコーンゴムからなる弾性層105が形成され、最表層にはPFAからなる離型層が設けられている。加圧ローラ101は加圧バネ103によって図中矢印A1方向に400〔N〕の力で加圧されて定着ローラに接触し、記録材搬送方向の幅が9mmの定着ニップNを形成している。さらに加圧ローラ101は、駆動モータ1109(図3参照)により図中矢印R1方向に、表面速度117mm/secで回転する。加圧ローラ101の回転に従動して、定着ローラ100も表面速度117mm/secで回転する(図中矢印R2)。定着ローラ100と加圧ローラ101が定着ニップ部を形成する一対の回転体となっている。
定着ローラ100と加圧ローラ101の内部にはそれぞれハロゲンヒータ102が具備されている。ハロゲンヒータ102に電力供給することにより、ハロゲンヒータ102が発熱し、その熱が輻射伝熱や空気を介した伝熱により芯金104に伝わり、その後弾性層105と離型層が温まる。不図示の温度検知素子が定着ローラ100の表面に接触して配置されており、この温度検知素子の信号に応じてハロゲンヒータに供給する電力を制御することで、定着ローラ100の表面温度を調整している。
未定着トナー画像Tが転写された記録材Pが不図示の搬送手段により、定着ニップ部Nに搬送されると、記録材を定着ニップ部で挟持搬送しつつ定着ローラ100の熱が未定着トナー画像Tと記録材Pに伝わり、記録材Pの表面にトナー画像Tが定着される。
次いで、未定着トナー画像Tを溶かしながらトナーを引き伸ばす機構(せん断力を付与する機構)について以下に説明する。図3は本実施例における定着ローラを長手方向にスライドさせる方式の定着装置の正面断面図である。加圧ローラ101が駆動モータ1109によって矢印R1方向に回転し、定着ローラ100は矢印R2方向に従動回転する。定着ローラ100も加圧ローラ101も両端部のベアリング111によって滑らかに回転する。加圧ローラ101は長手方向に固定されているが、定着ローラ100は長手方向に移動(スライド)可能である。
定着ローラ100を長手方向にスライドさせる機構について説明する。定着ローラ100の両端部には側板金106が設けられており、側板金106はさらに移動支持板金107に固定されている。移動支持板金107にシャフト108が貫通しており、シャフト108の片端部はシャフト108を回転させるためのモータ109が配置されている。モータ109が矢印R3方向に回転すると、シャフト108も矢印R3方向に回転し、シャフト108の回転に伴い、移動支持板金107が矢印A2方向にスライドレール110に沿って滑らかに移動する。したがって移動支持板金107に固定されている定着ローラ100も矢印A2方向にスライドする。またモータ109が逆回転(矢印R4方向)すると、上記と同様の仕組みで定着ローラ100が矢印A3方向にスライドする。
このように定着ローラ100を回転させつつ長手方向にスライドさせながら記録材Pを定着ニップ部Nに通過させ、記録材P上の未定着トナーを定着させる。この時、記録材Pが定着ニップ部通過中に、定着ローラ100をスライドさせたことによって、記録材P上に定着ローラ100の表層が接触しなくなる領域がないようにしなければならない。そのためスライドさせる量に応じて、定着ローラ100の長手方向の長さを加圧ローラ101よりも長くしておく必要がある。図3に示したように、本実施例では定着ローラ100の長さを加圧ローラ101よりも2D(=D+D)だけ長くしている。ここで長さDは、定着ローラ100と加圧ローラ101の長手方向の中央を揃えた時に、加圧ローラ101端部から定着ローラ100端部までの長さを表している。長さDの設定については後述する。
上記のように定着ローラ100が矢印A2方向あるいは矢印A3方向にスライドする時、加圧ローラ101は長手方向に固定されスライドしないため、定着ニップ部Nにおいて記録材P上のトナーに定着ローラ100の移動方向と平行な剪断力が作用する。定着ローラ100を長手方向にスライドさせない構成では、記録材上のトナーには記録材に垂直な加圧力のみがトナーに作用するため、前述のメカニズムにより、トナー量が少ない時は2次色の発色性が著しく低下する。一方、本実施例のように加圧ローラ101を長手方向に固定して、定着ローラ100を長手方向にスライドさせた場合、記録材に垂直な加圧力以外に記録材に平行な剪断力(トナーを引き伸ばす力)がトナーに作用する。したがって、トナーを溶かしながら長手方向に引き伸ばすことができるため、前述のメカニズムにより、トナー量が少ない場合においても2次色の発色性を上げることが可能となる。
記録材Pがコート紙でも普通紙でも、定着ローラのスライド量が増加すると発色性も増加する。ただしスライド量を増加していくと、ある値以上で彩度は飽和傾向になるため、彩度が飽和傾向を示し始めるスライド量を作用させれば十分な効果が得られる。本例の装置では、定着ニップ部Nの幅が6.5mmであるが、定着ニップ部幅の約3%のスライド量(約200μm)で彩度が飽和することがわかった。つまり、記録材Pが定着ニップ部を通過中に、定着ローラ100を長手方向に200μm(定着ニップ幅の約3%の量)スライドさせれば、十分な彩度アップ効果が得られる。
ここで注意しなければならないことは、記録材Pが定着ニップNを通過する間に、定着ローラ100のスライド方向を変えてしまうと、スライド方向の向きを変える短い時間、定着ローラは長手方向に移動しないことである。その結果、定着された画像において、スライドの向きを変えた部分の発色性が低下してしまう。したがって、1枚の記録材Pが定着ニップNを通過する間は、定着ローラ100のスライド方向を一方向(A2方向あるいはA3方向)に固定する必要がある。すなわち、定着ニップ部で一枚の記録材を定着処理する期間中、トナー積層方向に対して垂直方向であり且つ一定方向のせん断力をトナー画像に対して付与し続けるのが好ましい。
ここで具体例として、A4サイズの記録材Pを横方向に定着ニップに通紙する場合について説明する。前述の理由から必要なスライド量を定着ニップ幅の3%とすると、A4サイズ記録材1枚が横方向に定着ニップを通過するまでに、図3の状態から定着ローラ100を矢印A2方向(矢印A3方向でもよい)に6.3mm(=210mm×3%)スライドさせることになる。このとき、定着ローラ100をスライドさせる速度はプロセススピードの3%となるため、本実施例では3.5mm/sec(=117mm/sec×3%)となる。図4に1枚定着し終わった後の定着装置の状態を示した。連続して2枚目を定着する場合は、逆にA3方向(1枚目にA3方向に移動した場合はA2方向)に6.3mmスライドさせれば図3の状態に戻る。さらに3枚目を連続して定着する場合は、1枚目と同様にA2方向にスライドさせてもよい。しかし、定着ローラ100の長手方向の同じ部分のみが記録材と接触すると、その部分の劣化が早まってしまう問題がある。したがって、3枚目を通紙する時は定着ローラ100を矢印A3方向にスライドさせるのが好ましい。図5に上記の定着ローラ100の一連の動作を示した。ただし記録材Pが定着ニップ部Nを通過する様子は図示していない。
図4に示したように、通紙前に定着ローラ100の端部と加圧ローラ101の端部を揃えておけば、A2方向に最大2Dのスライド量が確保できる。長さDの設定は製品の仕様に応じて決めればよい。本実施例の場合、画像形成装置で使用可能な記録材で最大の幅の記録材が19インチであるため、14.5mm(19×25.4mm×3%)が2Dの値となり、Dは約7.2mmとなる。2Dの値だけ加圧ローラ101よりも定着ローラ100を長くすれば良い。定着ローラ100と加圧ローラ101の長手中央部を揃えた状態、つまり図5の一連の動作で定着可能な記録材サイズは、A4、B5、レター、リーガル等になる。そしてそれ以外の19インチまでの大きな記録材サイズの場合は、1枚目を通紙する時に図4の状態から矢印A3方向にスライドさせることになる。連続して2枚目以降を通紙するときの一連の動作を図6で示した。ただしここでも記録材Pが定着ニップ部Nを通過する様子は図示していない。上記のような手順で定着する場合は、定着する記録材サイズに応じて、1枚目を通紙する前に定着ローラ100と加圧ローラ101の位置関係を図5の(1)か、あるいは図6の(2)に制御しておかなければならない。
上記の動作以外に、例えば長さDを14.5mmにすると、19インチまでのどの記録材サイズにおいても、図5で示した動作で連続して定着が可能となる。この時は、定着後に定着ローラ100と加圧ローラ101を長手中央で合わせるようにしておけば良い。ただし定着ローラ100の長手方向の長さは、定着装置を配置するスペースなどによって制約され、かつあまり長くすると定着ローラ端部からの放熱により省エネ性が損なわれてしまう。したがって定着装置を搭載する製品の仕様に合わせてスライド手段を決めていく必要がある。本実施例ではスライド量を定着ニップ幅の3%としたが、製品の仕様によって3%以下にしても良いし、効果の振れを考慮して3%以上にしても良い。
前述までは定着ローラ100を長手方向にスライドさせる例を説明したが、定着ローラ100を長手方向に固定し、加圧ローラ101を長手方向にスライドさせる構成を用いてもよい。その場合、定着ローラ100を周方向に駆動(回転)させ、加圧ローラ101を定着ローラ100に従動させる。また、加圧ローラ101をスライドさせるため、定着ローラ100よりも加圧ローラ101の長さを長くしなければならない。構成は図3の上下を逆にしたものになり、効果に関しても同様であるため、詳細説明は省略する。
ここまでは、定着ローラ100あるいは加圧ローラ101のどちらかを長手方向に固定し、固定されていない方を長手方向にスライドさせる構成について説明した。剪断力を作用させるために、定着ローラ100と加圧ローラ101の両方をスライドさせても良い。即ち、一対の回転体を回転させながら一対の回転体の少なくとも一方を記録材搬送方向と直交する方向にスライドさせることによりトナー画像を引き伸ばす構成でもよい。ただし定着ローラ100と加圧ローラ101が同じ方向かつ同期させてスライドした場合、当然剪断力は発生しないので効果は得られない。定着ローラ100と加圧ローラ101を逆方向、あるいは同方向でも非同期にスライドさせれば剪断力は発生し同様の効果が得られる。定着ローラ100あるいは加圧ローラ101のどちらかをスライドさせる場合には、定着ニップNを通過する際に記録材が多少蛇行するが、定着ローラ100と加圧ローラ101を逆方向に同じ量だけスライドさせる場合には記録材の蛇行が抑制される利点がある。
以上のような定着装置を用いた場合、トナーを大きく変形する(引き伸ばす)ので、記録材に載せるトナー量が少なくても発色性(彩度)が向上する。図9(a)、(b)は本例の定着装置において、定着処理を行う前と行った後でのドット画像の状態の一例を示す模式図である。黒丸で示したのは定着処理前のトナーを用いて形成されたドット画像、灰色部は定着処理後であり、定着により溶け広がった状態を示している。図9(a)および(b)に示すように、本例の定着装置を用いると、トナー積層方向に対して垂直な記録材の面と平行な方向のせん断力がトナーに付与され、記録材の面と平行に働くせん断力の向きにドット画像が伸びている。
しかしながら、トナーを引き伸ばすので、図20の下図に示すように、トナー画像がトナーを引き伸ばす方向に伸びてしまう。図20の上図の従来定着の場合とは、記録材の面に対して垂直に圧力を掛ける構造の定着器で定着処理した場合のことであり、この定着器で定着処理した後のトナー画像を示している。図8は本例の定着装置を用いて定着した時のトナーの変形を模式的に示した図である。図8のように、画像内のすべてのトナーがほぼ同程度かつ同方向に変形する。しかし、画像内部(画像端部でない)のトナーが変形しても、変形した先にトナーがあるためにトナーの変形が目立たないが、画像端部のトナーが変形すると変形先はトナーがない紙上であるために、画像端部のみが伸びているように見える。
このような画像端部のトナーの伸びはわずかであるため、写真などのベタ部が多い画像においては見た目にはあまりわからないレベルである。しかし画像内に文字や、表などのような縦と横のラインが組み合わさった画像がある場合、トナーが変形する方向に文字やラインが伸びて、線幅が大きくなったことが見た目に認識されやすくなる。またバーコードのような線幅が重要になる画像では、上記のトナーの伸びによる線幅の増加は無視し難い。
(画像端部の伸び)
上述した定着器を用いると、定着ニップNにおいて長手方向(ローラの軸方向)に剪断力が発生し、2次色の発色性や記録材の隠蔽率が向上する。本実施例では、剪断力が作用する定着ローラ長手方向は、レーザ光を感光体に照射する時の主走査方向(所定方向)になる。したがって、主走査方向の画像端部が剪断力によって伸びてしまう。なお、本例の所定方向、即ち主走査方向は、記録材搬送方向と直交する方向でもある。
図7は、剪断方向(スライド方向)に対して垂直な3dotラインのトナー画像を、本例の定着器を用いて(即ち、ローラをスライドさせながら)定着した時のライン幅の伸び量(増加量)を示したものである。定着ローラをスライドさせずにトナー画像を定着した時の定着後のトナー画像のライン幅と、本例の定着器で定着した後のトナー画像のライン幅と、の差をライン幅(ライン端部)の伸び量として縦軸に示した。この図から、スライド量が大きいほどライン幅も増加することがわかる。これは前述したように、トナーを変形させる量が増加すると、トナーが変形する方向の画像端部の伸び量も増えるからである。なお、図8にしたように実際はトナー画像内の全てのトナーが変形している。ここではラインの端部について述べたが、言うまでもなくどのような画像であっても、剪断力が作用する方向の端部は伸びてしまう。例えば、Greenの彩度が80になるようにするには、スライド量を約390μmにしなければならないが、このときのライン端部(画像)の伸び量は約15μmになる。
(画像形成の詳細)
次に図10を用いて本実施例の画像形成装置を詳細に説明する。本例の画像形成部は、回転する感光体と、画像情報に応じた光を出射する光源を有し、光源から出射する光で感光体を走査し感光体に静電潜像を形成する走査部と、静電潜像にトナーを供給し現像する現像部と、感光体に形成したトナー画像を記録材に転写する転写部と、を有する。また、感光体に形成する静電潜像を所定方向に短くすることで、記録材上でトナー画像の一画素当りの最大幅を一画素の幅より短くするものである。図10は、図1に示した4つの画像形成ステーションPa〜Pdのうちの一つの画像形成ステーションを示している。他の3つの画像形成ステーションも同様の構成である。
図10において、複写されるべきカラー原稿の画像はレンズによってCCD等の撮像素子90に投影される。この撮像素子90はカラー原稿の各色毎の画像を600dpiの画素に分解し、各画素の濃度に対応した光電変換信号を各色毎に発生する。撮像素子90から出力される各色毎の光電変換信号(アナログ画像信号)は画像信号処理回路91に送られ、ここで各画素毎にその画素の濃度に対応した出力レベルを有する画素信号(デジタル信号)に変換し、パルス幅変調(PWM)回路92に送られる。
パルス幅変調回路92は入力される画素画像信号毎に、そのレベルに対応した幅(時間長)のレーザ駆動パルスを形成して出力する。パルス幅変調回路92から出力されたレーザ駆動パルスは、半導体レーザ80に供給され、半導体レーザ80をそのパルス幅に対応する時間だけ発光させる。したがって、半導体レーザ80は、高濃度の画素に対しては一画素当り、より長い時間駆動され、低濃度の画素に対してはより短い時間駆動されることになる。それ故、感光体ドラム3は、次述の光学系によって、高濃度画素に対しては主走査方向により長い範囲が露光され、低濃度画素に対しては主走査方向により短い範囲が露光される。
半導体レーザ80から出射されたレーザ光は回転多面鏡81によって偏向され、f/θレンズ等のレンズ82を通過し、感光体ドラム方向に指向させる固定ミラー83を介して感光体ドラム3上にスポット結像される。
感光体ドラム3はアモルファスシリコン、セレン、OPC等を表面に有し、矢印方向に回転する電子写真感光体ドラムであり、露光器34で均一に除電を受けた後、一次帯電装置2により均一に帯電される。その後、上述した画像情報に対応して変調されたレーザ光で露光走査され、これによって画像情報に対応した静電潜像が形成される。この静電潜像はトナー粒子とキャリア粒子が混合された二成分現像剤を使用する現像器1によって反転現像され、可視画像(トナー画像)となる。
ここで、反転現像とは、感光体の光で露光された領域に、潜像と同極性に帯電したトナーを付着させてこれを可視化する現像方法である。感光体上に現像されたトナー画像は中間転写材30に1次転写装置24の作用により1次転写される。
その後トナー画像が1次転写された後の感光体ドラム3はこの表面に付着した未転写の残トナーなどをクリーニング装置4によって除去される。回収された残トナーなどは搬送スクリューによって排出され、廃トナーボックスに収容される。
(画像処理)
次に、定着前のトナー画像を、定着工程でトナーが変形する方向に予め短く形成する画像処理について説明する。
画像処理の対象例として、単色の4画素からなるライン(4dotライン)について説明する。図11(a)に画像処理する前の画像信号を示した。図中の最小正方形は一画素(ここでは600dpiの一画素)であり、その大きさは42μm×42μmである。この一画素中においては、半導体レーザ80はPWM0%〜100%の時間で発光することが可能であるが、on/offを2回以上繰り返せない。例えば、PWM30%の時間だけonした後、PWM50%の時間offし、さらにその画素中で再度のこりのPWM20%をonにすることは出来ない。一画素とは、1回だけレーザをon可能な最小面積(ここでは600dpiの一画素)のことである。
図11(a)の斜線部がレーザを点灯させる領域(レーザ点灯時間に相当)であり、ライン画像を構成する1画素をPWM100%でレーザを点灯させている。この斜線部の潜像部をトナーで現像することで4dotのラインが形成される。
図11(a)から得られるトナー画像を、スライド量390μmで定着させた場合、ライン画像が変形し、ラインの端部が剪断(スライド)方向に約15μm伸びてしまい、4dotラインの線幅が15μmも大きくなってしまう(図11(b)参照)。
このような画像端部の伸びによる画像品位の低下を防止するため、画像信号処理回路91内の不図示の画像処理回路により、4dotラインの1画素についてそれぞれ主走査方向に20μm短くなるように1画素におけるレーザ点灯時間を設定する(図12(a))。つまり最大の発光時間をPWM100%からPWM52%に変更している。その結果、1画素内の主走査方向の最大画像幅(レーザ点灯幅)が42μmから22μmに短くなる。ここで画像の短縮量を15μmではなく、20μmと少し大きくした理由は後述する。このように、感光体に形成する静電潜像を所定方向に短くすることで、記録材上でトナー画像の一画素当りの最大幅を一画素の幅より短くする。
この図12(a)から得られるトナー画像を、前記と同じように、スライド量390μmで定着させた場合、図12(b)に示すように、定着後に所望の(最大でも一画素の幅の)4dotライン幅を得ることができる。つまり、ライン端部の伸びによる画像幅の増加を防止することができる。ここで用いたレーザスポット径(主走査ガウス分布スポット1/e2)は20μmである。
図12(a)では剪断力が作用する方向(スライド方向)と逆方向に、レーザ点灯時間を短くしたが、剪断力が作用する方向と同じ方向にレーザ点灯時間を短くしてもよい。また、図13のように、一画素内でレーザ点灯をさせてもよい。なぜなら、いずれの手段においても、定着後に所望のライン幅が得られるからである。
ここで本例のもう一つの特徴について説明する。図11(a)に示した元画像信号を、上記の画像処理をせずにそのまま現像した場合(記録材上に形成する未定着トナー画像の高さは略トナー粒子一個分の高さ)、一画素内の画像領域(トナーが載っている領域)における単位面積当りのトナー量(載り量)をTとする。本例では、一画素当りのトナー量をTのままにして、トナーが変形する方向に一画素内の画像幅を短くしている。したがって、一画素内の画像領域の載り量(トナー層の高さ)が増加する。
図14(a)、(b)は、一画素に現像された状態の断面を模式的に表したものである。図14(a)は元画像信号の場合で、図14(b)は上記の画像処理を行なった場合である。前述のように、一画素内のトナー量をTのままにして画像幅を短くしているので、図14(b)に示したように、一画素のトナー層が高くなる。
図14(a)の状態ではトナー層は1層(トナー粒子一個分の厚みの層)以下であり、トナー間の隙間が大きい。一方、図14(b)の状態では、トナー層は2層構造になり、トナー間の隙間はほぼなくなる。
以上のように、本例の画像形成部(画像形成ステーション)は、記録材上でトナー画像の一画素当りの最大幅が所定方向で一画素の幅より短くなるように記録材に画像形成する。また、定着部は、ニップ部で記録材上のトナー画像をトナー画像の短縮方向と同じ所定方向に引き伸ばすように圧力を掛ける構造となっている。このため、使用するトナー量が少なくても彩度の低下を抑えられると同時に、定着後の画像品位の低下を抑えられる画像形成装置を提供できる。
また、一画素当りのトナー量をTのままにして、一画素の画像領域をトナーが伸びる方向に短くすると、一画素内の画像領域の載り量が多くなり、トナー層が増加する。トナー層が増加すると、トナーを溶融しながら伸ばす際に、トナー同士がくっつき合った状態で伸ばせるため、単色隠蔽率が向上する。また、スライド量が同じ場合でも、トナー層が高い方が、若干、画像の延びが大きくなる。したがって画像を短くする量を15μmではなく20μmとした。
一画素内のトナー量をTのままにする(一画素内の画像領域のトナー載り量M/S(mass per square)を増やす)ために、本実施例では現像コントラスト(Vcon)を大きくした(図15)。ここに示す点線は、デジタル潜像で形成した高静電潜像電位を模式的に表したものである。また、実線は現像バイアスの電位を表す。図中のVlは画像部の潜像電位、Vdcは現像バイアスの直流成分、Vdは非画像部の電位、Vcon=Vdc−Vlである。本実施例では、画像処理をしない場合の潜像電位設定はVl=−140[V]、Vdc=−350[V]、Vd=−500[V]とし、画像縮小をする場合はVl=−140[V]、Vdc=−390[V]、Vd=−540[V]としてVconを増加させた。
上記の現像コントラストの変更は、不図示の本画像処理回路から、画像を短くする量に応じた出力信号が、現像器1に設けられた不図示の現像バイアス制御回路に入力されることで行なわれる。
以上のような画像処理を行なえば、定着ローラをスライドさせた場合において、ライン幅の太りを防止し、定着後に所望の4dotラインにすることができる(図12(b))。さらに、一画素内のトナー量をTのままにしているため、一画素内の画像領域におけるトナー間の隙間が減少する。その結果、定着する際にトナー同士がよりくっつきやすくなり記録材表面の隠蔽率も向上する利点がある。
なおRGBなどの2次色の場合も上記の処理でライン幅の太りを防止できると同時に、一画素内の画像領域におけるトナーの重なり部分が増えるため、発色性も向上させる利点がある。
以上画像縮小の例としてラインを用いたが、文字やベタ画像なども同様の動作で画像処理を行なうことができる。
(実施例2)
実施例2を以下に説明する。本例の画像形成部も、感光体に形成する静電潜像を所定方向に短くすることで、記録材上でトナー画像の一画素当りの最大幅を一画素の幅より短くするものである。本実施例において、未定着トナー画像を形成する画像形成装置については、前記実施例1とほぼ同じであるが、図16に示したように、スポット径変更手段84が設けられている。それ以外の要素は実施例1と同じであるため、説明を省略する。次に図17を用いて本実施例の画像形成装置を詳細に説明する。本実施例では、定着ローラ回転方向に剪断力が作用する場合における画像処理について説明する。
(定着器)
定着ローラ回転方向に剪断力が作用する定着器の例として、斜め加圧方式と周速差方式等があるが、本実施例では斜め加圧方式について説明する。図17に本実施例で用いる斜め加圧方式の定着器の概略断面図を示した。電磁誘導加熱を用いたベルト加熱方式の加熱定着装置である。図中330は加熱手段を含む加熱回転体としての加熱ユニットである。331は電磁誘導発熱層(導電体層、磁性体層、抵抗体層)を有する電磁誘導発熱性の回転体としての円筒状の定着フィルムである。332はフィルムガイド部材であり、円筒状の定着フィルム331はこのフィルムガイド部材332の外側にルーズに外嵌させてある。磁場発生手段はフィルムガイド部材332の内側に配設した励磁コイル333とE型の磁性コア(芯材)334とからなる。320は弾性加圧ローラであり、定着フィルム331を挟ませてフィルムガイド部材332の下面に配設された摺動部材336と所定の圧接力をもって所定幅の定着ニップ部Nを形成させて相互圧接させてある。335は加圧用剛性ステーである。磁場発生手段の磁性コア334は、定着ニップ部Nに対応位置させて配設してある。
加圧ローラ320は、駆動手段Mにより矢示の時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ320の回転駆動による該加圧ローラ320と定着フィルム330の外面との摩擦力で定着フィルム331に回転力が作用する。定着フィルム331は、その内面が定着ニップ部Nにおいてフィルムガイド部材332の下面に配設された摺動部材336と密着して摺動しながら、矢示の反時計方向に加圧ローラ320の回転周速度に略対応した周速度をもってフィルムガイド部材332の外回りを回転状態になる(加圧ローラ駆動方式)。この状態では、定着フィルム331は内面に密着した摺動部材336の摩擦により、ある程度の抵抗をもって回転する。回転力を受ける側の定着フィルム331が抵抗を持って回転することで、駆動側の加圧ローラ320との間で記録材P上のトナー画像にせん断力を効果的に付与するのに適している。
フィルムガイド部材332は、定着ニップ部Nへの加圧、磁場発生手段としての励磁コイル333と磁性コア334の支持、定着フィルム331の支持、該定着フィルム331の回転時の搬送安定性を図る役目をする。このフィルムガイド部材332は、磁束の通過を妨げない絶縁性の部材であり、高い荷重に耐えられる材料が用いられる。
励磁コイル333は、不図示の励磁回路から供給される交番電流によって交番磁束を発生する。交番磁束は、定着ニップ部Nの位置に対応しているE型の磁性コア334により定着ニップ部Nに集中的に分布し、その交番磁束は、定着ニップ部Nにおいて定着フィルム331の電磁誘導発熱層に渦電流を発生させる。この渦電流は、電磁誘導発熱層の固有抵抗によって電磁誘導発熱層にジュール熱を発生させる。この定着フィルム331の電磁誘導発熱は、交番磁束を集中的に分布させた定着ニップ部Nにおいて集中的に生じて定着ニップ部Nが高効率に加熱される。定着ニップ部Nの温度は、不図示の温度検知手段を含む温調系により励磁コイル333に対する電流供給が制御されることで所定の温度が維持されるように温調される。
摺動部材336の摺動面の法線方向(略トナーの重なり方向)L1に対して、加圧方向が角度θを持った方向L2になるように設定している。加圧方法は特に限定するものではなく、バネ等を用いることができる。例えば、摺動部材336の定着フィルム331密着面の法線方向がL1になるように加熱ユニット330の角度をθに設定した上で、加熱ユニット330に対してバネ(不図示)をL2方向に付設し、ガイド部材(不図示)によって、加熱ユニット330がL2方向に押し付けられるようにすることで、加圧方向をL2にすることができる。以上の構成で加圧力は600Nに設定してある。
図17中の定着ニップ部N付近の矢印は、定着ニップNにおいて作用する力の向きであり、L2方向の力とその分力を示している。トナーの重なり方向に対して斜め方向に加圧することで、トナーに与える面内方向の分力(せん断力)を増やしている。これによってトナーは面内方向に広がり、特に2次色において異なる色のトナーが重なり合う領域が増加し、彩度、色域が増加する。角度θを増すほどトナーに与えるせん断力が増えるので、効果が大きくなる。しかしながら、角度θを大きくし過ぎるとトナーの重なり方向に押し潰す力が不足するので、定着性の低下が起こる。また、装置構成としても高角度の加圧方向を安定して維持するのは困難になる。以上のことを鑑みて、本実施例での定着動作条件の一例としては、軸間方向L1と加圧方向L2の成す角度θ=60°に設定したとき、θ=0°に比べて2次色グリーンの彩度は約8増加した(記録材として光沢紙を用いた場合)。
(画像処理)
このときライン幅は定着ローラ回転方向に10μm程度増加する。したがって本実施例では、一画素内の画像を副走査方向に行なわなければならない。以下に副走査方向の画像を短くする手段について説明する。
実施例1と同様に、画像処理する例として、主走査方向と副走査方向の解像度が600dpiの4dotラインを用いる(図18(a))。実施例1と異なり、剪断力が副走査方向に作用するため、画像処理をしない場合、本実施例の斜め加圧定着方式を用いて定着すると副走査方向に10μmライン幅が増加する(図18(b))。
剪断力による副走査方向のラインの延びを防止するため、図19(a)に示すように、4dotラインの一画素についてそれぞれ、副走査方向に15μm短くする。短くする量を5μm増加させている理由は実施例1と同様である。こうした画像処理を行なった状態で本実施例の定着をすれば、図19(b)に示したように定着後の画像として所望の4dotライン幅を得ることができる。
本実施例において副走査方向に画像を短くする手段は、副走査方向のレーザのスポット径を小さくした。本実施例では副走査方向のレーザスポット径を42μmから27μmに切り替えた。レーザスポット径の切り替えは、画像信号処理回路91内の画像を短く処理する回路(不図示)からスポット径変更手段84にスポット径切り替え信号が入力されることにより、ミラー83の手前に設けたスリット85の径を切り替えることによって行なうことができる。
実施例1と同様に、上記画像処理を行なうと同時に、一画素内の画像領域のトナー量をTのままとするので、一画素内の画像領域のトナー載り量M/Sが0.30[mg/cm2]から0.46[mg/cm2]になる。したがって、トナー間の隙間がある状態から、ほぼトナーが最密に並ぶ状態になる。それ故に、定着時にトナー同士がくっつきあった状態で伸ばされるため、単色の隠蔽率も向上する。トナー層の高さを高くする方法は、実施例と同様であり、現像コントラストを変えることで実現した。