以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は顕微鏡装置1を示している。顕微鏡装置1はレーザ光源2とシャッタ3とダイクロイックミラー4と光走査ユニット5と瞳リレーレンズ6とミラー7と結像レンズ8と対物レンズ9とステージ10と蛍光フィルタ11と集束レンズ12とピンホール13と検出器14とコントローラ15とディスプレイ16とを備えて構成している。ステージ10には蛍光指示薬(蛍光色素)が導入された試料Sが載置されている。
レーザ光源2は励起光となるレーザ光Lを発振出力する光源である。このレーザ光Lの波長としては、試料Sに導入した蛍光色素を励起させる波長を用いる。レーザ光源2から発振出力されるレーザ光Lは図示しないコリメートレンズにより平行光にされて、シャッタ3に導かれる。シャッタ3は所定のタイミングで開放制御することでレーザ光Lを通過させる。シャッタ3を通過したレーザ光Lはダイクロイックミラー4に入射する。
ダイクロイックミラー4はレーザ光源2からのレーザ光Lを反射し、試料Sからの戻り光(蛍光)Rを透過させる特性を持つ光学素子である。よって、レーザ光源2が発振出力するレーザ光Lはダイクロイックミラー4で反射し、光走査ユニット5に導かれる。光走査ユニット5は第1の可変ミラー5aと第2の可変ミラー5bとを有する走査部である。
第1の可変ミラー5aと第2の可変ミラー5bとは1本の軸の周りに回転可能に構成している。これにより、レーザ光Lの反射角を制御して、レーザ光Lの焦点をステージ10に載置した試料SのXY方向(水平面方向)に走査する。
光走査ユニット5から出力されるレーザ光Lは瞳リレーレンズ6に入射され、その後にミラー7で反射される。そして、レーザ光Lは対物レンズ9によりステージ10に載置された試料Sに焦点を結ぶ。対物レンズ9の瞳は瞳リレーレンズ6により光走査ユニット5の位置にリレーされるので、光走査ユニット5により走査されるレーザ光は対物レンズ9の瞳位置で走査されることになり、対物レンズ9による焦点が試料Sを走査する。
試料Sには蛍光色素が導入されており、レーザ光Lを照射することによって試料Sの蛍光色素が励起される。これにより、戻り光(蛍光)Rが発生する。発生した戻り光Rは対物レンズ9に入射して、レーザ光Lとは逆方向に進行する。そして、対物レンズ9、結像レンズ8、ミラー7、瞳リレーレンズ6、光走査ユニット5を経て、ダイクロイックミラー4に入射する。
ダイクロイックミラー4は、試料Sの蛍光の波長を透過させる特性を有している。よって、戻り光Rはダイクロイックミラー4を透過して蛍光フィルタ11に入射する。蛍光フィルタ11は特定の波長成分、つまり蛍光の波長の光を選択的に透過させるフィルタである。
これにより、戻り光Rは、蛍光フィルタ11により蛍光の波長成分の光が選択的に透過されて、集束レンズ12により検出器14に集束される。戻り光Rの光路、特に検出器14の前段にはピンホール13を配置している。戻り光Rがピンホール13を通過することにより、焦点の範囲の光のみを通過させ、それ以外の光を除去する。このピンホール13により生成される画像は光軸方向に分解能が高い共焦点画像となる。
ピンホール13を通過した戻り光Rは検出器14に入力される。検出器14は戻り光Rを検出する検出部である。つまり、受光した戻り光Rの光量を電気信号に光電変換する。この変換した電気信号は戻り光Rの光量のデジタルデータ(光量データ)になる。検出器14が変換した光量データは、コントローラ15に入力される。図2はコントローラ15の構成を示している。このコントローラ15は、システム制御部21と光源制御部22とシャッタ制御部23と光走査ユニット制御部24と入力部25と演算部26と演算結果記憶部27と画像生成部28とで構成されている。
システム制御部21はコントローラ15の全体的な制御を行う。光源制御部22はレーザ光源2の制御を行っている。レーザ光源2は、光源制御部22の制御によりレーザ光Lを発振させる。シャッタ制御部23はシャッタ3の開閉制御を行っている。光走査ユニット制御部24は光走査ユニット5の制御を行っており、この制御を行うことでレーザ光Lの焦点を試料Sにて走査させている。
入力部25は検出器14から光量データを入力する。演算部26は入力した光量データに基づいて所定の演算を行う。ここでは、1回目のレーザ光Lの照射により蛍光した戻り光Rと2回目のレーザ光Lの照射により蛍光した戻り光Rとの光量データの差分(差分値)を演算結果として算出する。
演算部26が演算した演算結果は演算結果記憶部27に記憶される。演算結果記憶部27はレーザ光Lを照射したときの焦点位置に関連付けて演算結果を記憶する。レーザ光Lの焦点位置は光走査ユニット5により制御されており、このためシステム制御部21が焦点位置を把握している。よって、システム制御部21の制御により、演算結果記憶部27はレーザ光Lの焦点位置に関連付けて演算結果を記憶する。
画像生成部28は演算結果記憶部27が焦点位置と関連付けて記憶している演算結果(差分値)に基づき試料Sの画像を生成する。なお、生成した画像データは図示しない内部メモリに記憶してもよい。ディスプレイ16はコントローラ15に接続される画像表示手段である。ディスプレイ16は画像生成部28が生成した画像を表示する。これにより、ディスプレイ16には試料Sの画像が表示されるようになる。
次に、本実施形態の動作について説明する。本実施形態では、試料Sにおける同じ焦点位置に同一の励起光強度を持つレーザ光Lを2回照射する。このため、試料Sの焦点を固定して2回のレーザ光Lの照射を行う。つまり、試料Sの同一箇所に1回目の照射と2回目の照射とを行う。まず、1回目の照射について説明する。
レーザ光Lを試料Sに照射する時間は、予め定められた所定時間(単位照射時間)とする。よって、この単位照射時間の間に試料Sに焦点を結んだレーザ光Lにより蛍光色素が励起される。この励起により蛍光が発生する。発生した蛍光は戻り光Rとして検出器14にまで導かれる。
このとき、光源制御部22はレーザ光源2がレーザ光Lを発振するときの発振強度(励起光強度)を調整する。図3は試料SにおけるXY方向(水平面方向)におけるレーザ光Lの強度分布(曲線31)を示しており、図4はZ方向(垂直方向)におけるレーザ光Lの強度分布(曲線41)を示している。図3および図4に示すように、レーザ光Lの強度分布は光軸中心の強度が高く、周辺の強度が低くなるガウシアン分布になっている。
ここで、試料Sに照射するレーザ光Lの強度が所定値よりも高くなると、試料Sの蛍光色素に退色を生じる。このときの閾値が図3の閾値32、図4の閾値42になる。つまり、XY方向においては閾値32よりも高い強度になると退色を生じ、退色領域33が発生する。Z方向においては閾値42よりも高い強度になると退色を生じ、退色領域43が発生する。
そこで、レーザ光源2が発振するレーザ光Lの強度は試料Sの一部に退色を生じさせる強度、つまり閾値32、42よりも高い強度となるように強度調整を行う。この強度調整は光源制御部22が行う。この1回目のレーザ光Lを試料Sに照射すると、試料Sの一部に退色を生じる。
次に、レーザ光Lの焦点を固定した状態で単位照射時間の間だけ2回目のレーザ光Lを照射する。2回目のレーザ光Lの強度は1回目のレーザ光Lの強度と同じである。1回目の照射では図3および図4の強度分布で示す全ての光量を検出する。ただし、このときには試料Sの一部領域に退色を生じる。一方、2回目の照射では、図3および図4の強度分布で示す光量のうち退色領域33、43を除いた領域の光量を検出する。
つまり、1回目の照射により得られる光量データが示す光量よりも2回目の照射により得られる光量データが示す光量は退色した分だけ減少している。演算部26は1回目の照射の光量データと2回目の照射の光量データとの差分を演算している。この演算結果を差分値としている。また、このときの退色量は元の蛍光分子の量に比例するため、演算した差分値は試料Sの退色した領域の蛍光分子の量、すなわち蛍光強度を示している。
図3および図4に示すように、レーザ光Lを試料Sに1回だけ照射したときには、強度分布の全ての領域の光量が検出される。つまり、図3に示すXY方向においては幅34で示す領域の光量が検出され、図4に示すZ方向においては幅44で示す領域の光量が検出される。
一方、焦点を固定してレーザ光Lを試料Sに2回照射して差分を検出すると、差分値は退色した領域の光量として検出される。つまり、図3に示すXY方向においては幅35で示す領域の光量が検出され、図4に示すZ方向においては幅45で示す領域の光量が検出される。
XY方向の幅35は幅34よりも狭い限定された領域となる。また、Z方向の幅45は幅44よりも狭い限定された領域となっている。つまり、1回のみのレーザ光Lの照射により検出される領域よりも狭い限定された領域の光量が検出される。光量を検出する領域を狭い領域とすることができるため、レーザ光Lの焦点位置の試料Sの光量データは高い分解能とすることができる。つまり、レーザ光Lの焦点を固定した状態で、試料Sの一部を退色させるような励起光強度を持つレーザ光Lを2回照射して、戻り光Rの光量データの差分を検出することで、当該焦点位置について高い分解能の情報を得ることができるようになる。なお、レーザ光Lの照射は3回以上であってもよい。
そして、光走査ユニット制御部24の制御により光走査ユニット5を制御させて、レーザ光Lの焦点位置を変化させる。これにより、ステージ10に載置されている試料Sにおけるレーザ光Lの焦点をXY方向に走査させている。演算結果記憶部27はレーザ光Lの焦点位置に関連付けて差分値を記憶していることは既に述べたとおりである。
よって、画像生成部28は、焦点位置に対応する差分値に基づいて、試料Sの画像を生成している。このときの差分値は高分解能になるため、生成される試料Sの画像も高分解能になる。このため、高い分解能の詳細な試料Sの画像を得ることができる。
しかも、焦点を固定して2回のレーザ光Lの照射を行っているだけであるため、レーザ光源2の必要台数は1台になる。よって、複数台のレーザ光源2を用いる必要がなく、顕微鏡装置1の全体の構成をコンパクトにすることができる。且つ、励起光と抑制光といった2つの光を使用することがないため、光軸の調整といった煩雑な処理を行う必要がなくなる。また、1つのレーザ光Lを使用するため、試料Sによって2つの波長のレーザ光Lを組み合わせることの困難性がなくなる。
以上において、レーザ光源2は複数の波長のレーザ光Lを発振出力できるように構成してもよい。試料Sの蛍光色素(の色)によっては励起させるレーザ光Lの波長が異なる。よって、レーザ光源2は試料Sの蛍光色素に応じて、当該蛍光色素を励起するようなレーザ光Lを発振するように複数種類の波長のレーザ光Lを発振可能にすることができる。
また、ステージ10をZ方向に移動させて、試料SのZ方向における他の面の画像化を行うようにしてもよい。そして、図1の例では、ピンホール13を検出器14の前段に配置している。これにより、戻り光Rの焦点面以外からの光を除去している。このため、高い分解能の共焦点画像を得ることができる。ただし、前述したように退色した領域は狭い領域に限定されるため、ピンホール13を配置しないようにしてもよい。または、ピンホール13の開口径を大きくしてもよい。
また、レーザ光源2からは試料の一部に退色を生じさせる励起光強度を持つレーザ光Lを発振させれば、その励起光強度は任意に設定してもよい。レーザ光Lの励起光強度によって退色領域33、43が変化するため、レーザ光Lの励起光強度を変化させて、図3の幅35、図4の幅45をコントロールして、画像生成を行ってもよい。
また、レーザ光源2から発振するレーザ光Lとして、近赤外光のパルスレーザを用いるようにしてもよい。レーザ光Lとして近赤外光を用いる場合は、ダイクロイックミラー4等の光学系もそれに対応したものを用いる。これにより、顕微鏡装置1を2光子励起顕微鏡として用いることができる。2光子励起顕微鏡としているため、焦点近傍でのみ2光子励起が生じる。このため、深部観察等において光路の途中で発生する蛍光やそれによって生じる退色の影響を極めて少ないものとすることができ、より高い分解能の画像を得ることができる。
次に、変形例1について説明する。変形例1では、レーザ光LのXY方向における走査について説明する。図5は試料Sにおけるレーザ光Lの焦点F(Fa、Fb、・・・)の領域を示している。この焦点Fは、図3で示した幅34のXY方向における領域となる。光走査ユニット5は以下に示す焦点Fの走査を行う。
まず、焦点Faにおいて、レーザ光Lの1回目の照射を行う。これにより、焦点Faよりも狭い中心の領域(退色領域Ga)が退色する。前述した実施形態では、レーザ光Lの焦点を固定して2回目の照射を行うが、本変形例では、1回目の照射でXY方向のうち1方向(X方向)に焦点Faと重複しないように且つ近接するような焦点Fdを走査する。
これにより、焦点Fdの中心の退色領域Gdが退色する。そして、X方向に前回の焦点Fと重複しないように且つ近接するように焦点Fを順次走査する。この走査を光走査ユニット5が行う。X方向に1列の走査が終了した後に再びレーザ光Lを焦点Faに戻す。そして、再び焦点Faから焦点Fが重複しないように且つ近接するように順次走査させる。
つまり、同じ焦点Fにおいて2回のレーザ光Lの照射を行っている。これにより、各焦点Fにおける1回目の照射と2回目の照射との差分値を生成している。次に、光走査ユニット5はレーザ光Lの焦点をFbの位置に設定する。焦点Fbは、この焦点Fbにレーザ光Lを照射したときに退色する退色領域Gbと既に照射が終了した焦点Faにおける退色領域Gaとが重複しないように且つ近接するような位置に設定する。
そして、X方向に焦点Fが重複しないように且つ近接するように焦点Fを順次走査していく。X方向の1列の走査が終了した後には、再び焦点Fbから2回目のレーザ光Lの照射を行って、差分値を検出する。同様に、図5の焦点Fcから開始してX方向に走査を行って、1回目のレーザ光Lの照射と2回目のレーザ光Lの照射との差分値を検出する。
これにより、離散的な走査が行われ、図5に示すような退色した退色領域G(Ga、Gb、・・・)が形成される。各退色領域Gは焦点Fの領域よりも狭小な領域になっており、各退色領域Gが重複しないように且つ近接して配列される。この狭小な退色領域Gが差分値として検出され、画像化に供される。よって、X方向における分解能を高いものとすることができる。
X方向の走査が終了した後に、Y方向に走査する列をシフトさせて、再び同様の走査を行う。これにより、Y方向にも退色領域Gを近接して配列することができ、Y方向における分解能も高くできる。つまり、焦点Fよりも狭小な退色領域Gを狭い間隔で配列して、当該退色領域Gの光量を差分値として検出しているが、この退色量を示す差分値は元の蛍光分子の量に比例するため、XY方向における蛍光分子の量、すなわち蛍光強度を示す。これにより、XY方向に高い分解能を得ることができる。
勿論、Z方向においては、XY方向の走査とは無関係に、退色した領域を差分値として検出しているため、高分解能を得ることができる。従って、XY方向およびZ方向の3次元に高い分解能の試料Sの画像を得ることができる。
次に、図6を用いて変形例2について説明する。変形例1において焦点Faの次に走査する部位は、この焦点Faと重複しないように且つ近接するような焦点Fdであったが、本変形例では焦点Faの次は焦点Fbにレーザ光Lを走査させる。つまり、焦点Faの退色領域Gaと焦点Fbの退色領域Gbとが重複しないように且つ近接するような焦点Fでレーザ光Lを走査させる。
X方向におけるレーザ光Lの走査は、退色領域Gが重複しないように且つ近接するように行うものであり、X方向に順次連続的にシフトさせて行う。X方向に1列の走査が終了した後に、Y方向に1列シフトさせて再びX方向に走査を行う。これにより、XY方向にレーザ光Lの1回目の照射を行う。
次に、再びレーザ光Lを焦点Faに設定して、2回目のレーザ光Lの照射を行う。そして、X方向に1列に走査を行い、Y方向に走査する列を順次シフトさせることで、XY方向に2回目の走査を行う。従って、1回目の照射と2回目の照射との差分値を検出することができ、変形例1と同様にXY方向およびZ方向に高い分解能の画像を得ることができる。
変形例1では、焦点Fを重複しないように且つ近接するように走査していたため、X方向において焦点Fの位置を繰り返し往復させる必要がある。この点、この変形例2では、X方向に順次シフトさせていくだけであり、往復させる必要がなくなる。よって、レーザ光Lの往復回数を低減できるため、本変形例では走査時間を高速化できる。これにより、画像生成の速度も高速化する。ただし、生成される画像の正確性は変形例1の方が高くなる。
図6に示すように、2回目の照射のときには、焦点Faの領域には他の焦点Fb、Fg、Fhの退色領域Gb、Gg、Gh(の一部)が含まれる。よって、焦点Faの1回目の照射のときの光量データと2回目の照射のときの光量データとの差分を検出するときには、前記の退色領域Gb、Gg、Ghの分も光量が減少する。
よって、焦点Faの退色領域Gaの正確な光量が検出されない。これにより、画像の正確性が僅かに低下する。変形例1では、ある焦点Fには他の焦点Fの退色領域Gが含まれることがないため、変形例1よりは画像の正確性が低下する。
ただし、図3および図4にも示したように、レーザ光Lの強度分布はガウシアン分布になっており、光軸中心以外の領域の光量は僅かなものになっている。よって、この領域において他の退色領域Gが含まれても、その影響は非常に低いものとなる。この点、画像の正確性に僅かな影響はあるものの、画像生成の高速性を重視する変形例2を採用してもよい。
また、焦点Fにおいて他の退色領域Gの影響を排除するような補正をしてもよい。焦点Fに含まれる他の退色領域Gは予め認識することができるため、認識した他の退色領域Gの光量に所定の係数(ガウシアン分布の光量に応じた係数)を乗じて、これを減じることで、他の退色領域Gの影響を排除する補正を行うことができる。これにより、画像の正確性を向上しつつ、画像生成の高速性を図ることができる。
次に、変形例3について説明する。図7および図8は本変形例の顕微鏡装置1を示している。この顕微鏡装置1はニポウディスク方式の共焦点顕微鏡装置であり、レーザ光源2とスキャニングユニット50と顕微鏡60とカメラ70とで構成されている。
レーザ光源2は既に説明したレーザ光源であり、レーザ光Lを発振出力する。レーザ光源2が発振したレーザ光Lは光ファイバ2Fによってスキャニングユニット50にまで伝達される。スキャニングユニット50は、マイクロレンズディスク51とピンホールディスク52と回転ドラム53とモータ54とコリメートレンズ55とダイクロイックミラー56とリレーレンズ57とで構成されている。
マイクロレンズディスク51は、図8に示すように4条の螺旋状パターンの複数のマイクロレンズ51Mを配列した回転ディスクである。なお、螺旋状パターンは4条でなくても、さらに多条の螺旋状パターンであってもよい。ピンホールディスク52は、マイクロレンズディスク51のマイクロレンズ51Mのパターンと同じパターンで複数のピンホール52Pを配列した回転ディスクである。
マイクロレンズディスク51とピンホールディスク52との間は所定の間隔が設けられている。回転ドラム53はマイクロレンズディスク51とピンホールディスク52とを一体的に回転させる。モータ54は回転ドラム53に回転力を付与する回転手段である。回転ドラム53とモータ54とで回転部を構成する。コリメートレンズ55は光ファイバ2Fによって導かれたレーザ光Lを平行光に変換する。このレーザ光Lは複数のマイクロレンズ51Mによって複数のピンホール52Pで焦点を結ぶようになっている。
マイクロレンズ51Mとピンホール52Pとの間にはダイクロイックミラー56が配置されている。ダイクロイックミラー56はレーザ光源2が発振するレーザ光Lの波長の光を透過させ、試料Sの蛍光(戻り光R)の波長の光を反射させる特性を持つ光学素子である。よって、マイクロレンズ51Mからピンホール52Pにレーザ光Lは透過する。
各マイクロレンズ51Mからピンホール52Pに向けてレーザ光Lが入射する。ピンホール52Pを通過したレーザ光Lは顕微鏡60に入射する。顕微鏡60は結像レンズ61と対物レンズ62とを有して構成している。ピンホール52Pを通過したレーザ光Lは結像レンズ61によって所定傾きの平行光に変換される。この平行光が対物レンズ62に入射する。
対物レンズ62に入射したレーザ光Lはステージ10の試料Sで焦点を結ぶ。試料Sはレーザ光Lにより蛍光色素が励起されて蛍光が発生する。この蛍光は戻り光Rとなって顕微鏡60、そしてピンホール52Pを通過してダイクロイックミラー56で反射する。この反射した戻り光Rはリレーレンズ57によってカメラ70の撮像素子で結像をする。カメラ70の前段には図示しない蛍光フィルタが設けられており、試料Sの蛍光だけが選択的にカメラ70に結像される。
なお、図7において、レーザ光Lの光路を実線と破線で2つ示しているが、このうち実線で示す光路と破線で示す光路とは異なるマイクロレンズ51Mを通過する光であることを示している。つまり、レーザ光Lの光軸中心のレーザ光Lと光軸中心からずれたレーザ光Lを示している。また、図8において、顕微鏡60は1枚のレンズとして模式的に表している。
本変形例の動作を説明する。本動作では、画像取得動作を2回行う。まず、1回目の画像取得動作について説明する。モータ54が回転ドラム53を回転させることで、マイクロレンズディスク51とピンホールディスク52とが一体的に回転する。
レーザ光源2からレーザ光Lを発振させることにより、レーザ光Lはマイクロレンズ51Mからピンホール52Pを通過する。マイクロレンズディスク51とピンホールディスク52とは一体的に回転している。これにより、レーザ光Lがステージ10の試料Sにて高速に走査される。試料Sにレーザ光Lの焦点が結ばれることにより、試料Sの蛍光色素が発光する。
この蛍光が戻り光Rとなって、カメラ70に結像する。戻り光Rのうち焦点面以外の光はピンホール52Pを殆ど通過できないため、カメラ70に到達しない。これによって、カメラ70は焦点の範囲のみの共焦点画像を撮影することになる。レーザ光Lが試料Sにて走査されるため、カメラ70の受光面に戻り光Rが走査される。
カメラ70には各画素がXY(縦横)方向に配列して形成されており、戻り光Rが各画素に走査される。これにより、各画素の光量データが得られ、試料Sの1枚の画像が取得される。本変形例では、図2で示した入力部25には検出器14ではなく、カメラ70が取得した画像のデータ(画像データ)が入力され、演算部26はこの画像データを保持する。
図9は、本ニポウディスク方式の共焦点顕微鏡装置を用いてレーザ光Lを試料Sに照射した際の焦点近傍におけるXY方向の強度分布(曲線71)を示している。図9に示すように幅72の範囲で広がりを示す。
図10は、カメラ70を構成するXY方向に配列された各画素Pを模式的に示したものである。戻り光Rはカメラ70の各画素Pの上を走査される。焦点の頂点73において、微小な蛍光分子があった場合、戻り光は所定の広がりを有するために、カメラ上でHaの範囲に広がって投影される。ここで、範囲Haはその点像分布関数に従って中心部ほど強度が強くなるように投影される。また、これらの範囲はピンホールディスクの走査に伴って、複数の図示しない焦点がX方向に走査されている。
前述した実施形態で説明したように、レーザ光源2から1回目のレーザ光Lの走査を行う。レーザ光Lを試料Sに走査することにより、試料Sが蛍光して戻り光Rが発生する。このときの1回目のレーザ光Lの励起光強度は試料Sの一部が退色する強度としている。これにより1回目の試料Sの画像データを取得する。
次にレーザ光源2からのレーザ光Lの2回目の発振を行う。そして、試料2の走査を行うことにより、2回目の試料Sの画像データを取得する。1回目のレーザ光によって焦点の頂点73に存在する蛍光分子が退色して、蛍光を発しなくなる。これにより、2回目の画像データにはこの蛍光分子からの蛍光は記録されない。演算部26は1回目と2回目の画像データの差分を演算して、演算結果記憶部27に記憶させる。これにより、図10の退色した領域Haの強度分布が記憶される。
さらに、ここで演算部26は前記の領域Haの強度分布を2次元ガウス関数とフィットさせることにより、その中心位置Gaを算出するとともに、この中心位置を蛍光分子の位置として演算結果記憶部27に記憶させる。
また、これら蛍光色素の退色は確立的に発生するため、1回の走査で退色する色素は極わずかである。そこで上記の画像取得を繰り返し、画像間の差分の演算を繰り返し行うことにより、個々の蛍光分子の位置を算出し、これを元に画像生成部28が高分解能な蛍光画像を構築して、ディスプレイ16に表示する。また、励起光強度を少しずつ強くしながら上記の画像取得を繰り返すことによって、高分解能な蛍光画像を構築してもよい。
また、本構成はニポウディスク方式の共焦点顕微鏡であるため、Z分解能に優れているうえに極めて高速に画像生成を行うことができる。
レーザ光Lの照射によって生じる退色量は元の蛍光分子の量に比例するため、演算部26が演算した差分値は試料Sの退色した領域の蛍光分子の量を示している。これにより、画像生成部28が生成する画像は高分解能の画像になる。且つ、ニポウディスク方式の共焦点顕微鏡に適用していることにより、極めて高速に画像生成を行うことができる。
次に、変形例4を説明する。この変形例4では、図1で示した構成の顕微鏡装置を使用する。レーザ光源2からレーザ光Lが発振出力されるが、実施形態と同様に、レーザ光Lの焦点を固定した状態で、異なる強度で少なくとも2回のレーザ光Lの発振を行う。図11はその例を示している。
ここでは、試料Sの同一の焦点位置に対して励起光強度がA、B、C、Dの4回のレーザ光Lの発振を行っている。励起光強度A、B、C、DはA<B<C<Dの関係にあり、最初に励起光強度Aのレーザ光Lを発振する。このレーザ光Lは試料Sに照射されることにより励起して、蛍光強度aの戻り光Rを発生する。この戻り光Rは検出器14で検出される。これが、図11で示す点90になる。
そして、焦点を固定したまま、2回目の励起光強度Bのレーザ光Lを発振する。これにより、蛍光強度bの戻り光Rを検出する。これが図11で示す点91になる。同様に、3回目の励起光強度Cのレーザ光Lを発振する。これにより、蛍光強度cの戻り光Rを検出する。これが図11で示す点92になる。最後に、4回目の励起光強度Dのレーザ光Lを発振する。これにより、蛍光強度dの戻り光Rを検出する。これが図11で示す点93になる。
光源制御部22は、同一の焦点位置について、レーザ光源2から発振されるレーザ光Lの励起光強度をAからDまで段階的に強くしている。図11に示すように、励起光強度と蛍光強度は励起光強度Eまでは比例関係(つまり、線形関係)になっているが、励起光強度Eを境界として、励起光強度と蛍光強度との関係は非線形関係に変化する。この励起光強度Eは試料Sの蛍光分子を飽和させる励起光強度(飽和強度E)となる。
試料Sの蛍光分子が飽和すると、試料Sに照射されたレーザ光Lの中心で飽和励起が発生する。これは、焦点にある蛍光分子の数が有限であることと、分子が励起されて蛍光を発生するまでに蛍光寿命と呼ばれる遅延があることによって蛍光量が抑制されることに起因する。
従って、試料Sの蛍光分子が飽和する飽和強度Eでレーザ光Lを試料Sに照射することにより、試料Sに照射されたレーザ光Lの中心の極めて狭小な領域が飽和する。この飽和する領域は、例えば図3で示したXY方向の幅35の領域、図4で示した幅45の領域に相当する。これら幅35および幅45の領域は焦点の範囲内の狭小な領域であって、飽和した蛍光分子の量を反映している。
コントローラ15の演算部26には、励起光強度A〜Dのレーザ光Lを照射したときの戻り光Rの強度(蛍光強度)a〜dが得られている。これら励起光強度A〜Dおよび蛍光強度a〜dに基づいて、蛍光分子が飽和する励起光強度E(飽和強度E)を演算部26は演算する。つまり、励起光強度と蛍光強度とが線形関係から非線形関係になっている点94を推定する演算を行う。
演算部26は励起光強度A〜Dおよび蛍光強度a〜dに基づいて、線形関係(比例関係)にある直線L1と非線形関係にある曲線C1とを演算する。そして、演算部26は飽和強度Eよりも高い強度(励起光強度F)に対応する蛍光強度fを曲線C1に基づいて算出する。図11では、この励起光強度Fと蛍光強度fとが点95になる。
図11にも示すように、励起光強度Fでは飽和が発生しているため、直線L1と曲線C1との間に差分を生じている。この差分が非線形成分NLとなる。この非線形成分NLは飽和した蛍光分子の量(飽和量)を示しており、図3で示したXY方向の幅35および図4で示した幅45と対応している。
従って、演算部26が演算した結果(非線形成分NL:飽和量)を演算結果記憶部27に記憶させる。このときの飽和量は1つの焦点位置についての値であって、光走査ユニット制御部24が光走査ユニット5を制御することで、試料SのXY方向の走査を行う。このとき、光走査ユニット制御部24は飽和した領域(図3の幅35)が重ならないように走査を行う。
従って、走査した焦点位置と飽和量(非線形成分NL)とを対応付けて演算結果記憶部27に記憶させることで、画像生成部28は試料Sの画像生成を行う。このとき、飽和量(図3の幅35および図4の幅45)に基づいて画像生成を行う。飽和量は試料Sの焦点の領域の中心の狭小な領域となるため、試料Sの高分解能の画像を生成できる。
ここでは、飽和強度Eよりも高い励起光強度Fを試料Sに照射したときの蛍光強度fを所得している。これにより、所定領域の飽和量(非線形成分NL)が発生する。この飽和量に基づいて画像生成を行うことで、高分解能の画像生成を行うことができる。
また、ここで、飽和強度Eにおいては焦点および蛍光分子の蛍光がちょうど飽和に達したことを意味する。これは、図3の幅35および幅45の限界まで小さくした場合と同等で、図3および図4の曲線の頂点が飽和に達したことを意味する。すなわち、この飽和点94の情報は、焦点の中心における蛍光分子の蛍光がちょうど飽和していることを意味する。従って、飽和点94の飽和強度Eや飽和強度Eにおける蛍光強度e等の情報は、焦点の中心における蛍光分子の量と相関があるため、これらの飽和点の情報を用いても、高分解能の画像生成を行うことができる。このように飽和量だけではなく、飽和点の情報を用いて画像化を行ってもよい。
以上において、本変形例では、励起光強度を4段階に変化(A〜D)させたが、4段階以外であってもよい。また、レーザ光源2から発振されるレーザ光Lの励起光強度を段階的に大きくしていったが、段階的に小さくするものであってもよい。また、試料Sにレーザ光Lを照射することにより発生したときに発生する飽和量をコントロールするために、戻り光Rの光路に減光フィルタを挿入してもよい。この場合には、演算部26はその効果も考慮に入れて演算を行って、飽和量を演算するようにしてもよい。
また、図11の例では、レーザ光Lを試料Sに複数回照射するときに、均等に励起光強度を上昇させていたが、1回目の励起光強度Aは同じであるが、2回目以降の励起光強度を変化させてもよい。つまり、励起光強度Aの点90に応じて2回目以降の励起光強度B〜Dを変化させてもよい。例えば励起光強度Aにおける点90の蛍光強度aが大きい場合、直線L1の傾きが大きくなる。直線L1の傾きが大きい場合は蛍光分子の密度が高く、蛍光分子が飽和する蛍光強度Eが大きいことが類推されるので、2回目以降のレーザ光Lの照射の励起光強度B〜Dを変化させるようにしてもよい。また、1回目の励起光強度Aにおける点90の蛍光強度aが所定の値より小さい場合には、この領域に蛍光分子がないことが推察されるので演算値を0として記憶させてもよい。
また、本変形例では、焦点を固定して励起光強度A〜Dの4回のレーザ光Lの照射を行って、戻り光Rを検出した後に走査を行っていたが、まず励起光強度Aで試料Sを走査した後に、励起光強度Bで試料Sを走査し、次に励起光強度Cで試料Sを走査し、最後に励起光強度Dで試料Sを走査するようにしてもよい。
従って、試料Sの同じ焦点に対してレーザ光Lの励起光強度を異なる複数の強度で発振させることにより、焦点の中心に蛍光の飽和を生じさせる。画像生成を行うときは、このときの飽和量に基づいて画像生成を行うため、高分解能の画像生成を行うことができる。
次に、変形例5について説明する。変形例4では図1の構成の顕微鏡装置で試料Sの蛍光分子に飽和を生じさせて高分解能の画像生成を行っていたが、変形例3で示したようなニポウディスク方式の共焦点顕微鏡においても、試料Sの蛍光分子に飽和を生じさせて、高分解能の画像生成を行う。
本変形例では、レーザ光源2からは励起光強度をAのレーザ光Lを発振させて、マイクロレンズディスク51及びピンホールディスク52を回転させることにより、試料Sの走査を高速に行う。これにより、励起光強度Aにおける各焦点の戻り光Rに基づく1回目の画像データを生成する。
次にレーザ光Lの励起光強度をFにして発振させて、マイクロレンズディスク51およびピンホールディスク52を回転させることにより、試料Sの走査を高速に行って、2回目の画像データを生成する。
このときに、2枚の画像データの各画素における蛍光の飽和量(非線形成分NL)を演算部26が算出する。ここで、焦点に存在する一つの蛍光分子が飽和すると、この蛍光分子の飽和量の分布は図10の範囲Haの領域に反映される。ここで、範囲Haはその点像分布関数に従って中心部ほど飽和量が強くなるように投影される。
さらに、ここで演算部26は前記の領域Haの強度分布を2次元ガウス関数とフィットさせることにより、その中心位置Gaを算出するとともに、この中心位置を蛍光分子の位置として演算結果記憶部27に記憶させる。
また、これら蛍光色素の飽和はレーザ光強度によって発生するため、レーザ光強度を徐々に変化させながら上記の画像取得を繰り返し、画像間の飽和量の演算を繰り返し行うことにより、個々の蛍光分子の位置を算出し、これを元に画像生成部28が高分解能な蛍光画像を構築して、ディスプレイ16に表示する。これにより、XY方向に高分解能な試料Sの画像を生成することができる。
且つ、図7及び図8で示したニポウディスク方式の共焦点顕微鏡を用いているため、走査速度を高速にすることができ、高速に画像生成を行うことができる。