(1)エンジンの全体構成
図1および図2は、本発明の一実施形態にかかるターボ過給機付多気筒エンジンを示している。本図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルの火花点火式多気筒エンジンである。具体的に、当実施形態のエンジンは、列状に並ぶ4つの気筒2A〜2Dを有する直列4気筒型のエンジン本体1と、エンジン本体1に空気を導入するための吸気通路10と、エンジン本体1で生成された排気ガスを排出するための排気通路30とを備えている。
エンジン本体1の各気筒2A〜2Dには、それぞれピストン(図示省略)が往復摺動可能に挿入されており、各ピストンの上方に燃焼室3が区画形成されている。燃焼室3では、後述するインジェクタ9から噴射される燃料と空気との混合気が燃焼し、その燃焼によって生成された排気ガスは、各気筒2A〜2Dの排気行程において、燃焼室3から排気通路30へと排出される。
エンジン本体1の上部(シリンダヘッド)には、吸気通路10から供給される空気を各気筒2A〜2Dの燃焼室に導入するための吸気ポート4と、吸気ポート4を開閉する吸気弁6と、各気筒2A〜2Dの燃焼室で生成された排気ガスを排気通路30に導出するための排気ポート5と、排気ポート5を開閉する排気弁7とが設けられている。
吸気弁6および排気弁7は、それぞれ、カムシャフトやカム等を含む動弁機構(図示省略)により、エンジン本体1のクランク軸の回転に連動して開閉駆動される。吸気弁6および排気弁7用の各動弁機構には、それぞれVVT16が組み込まれている。VVT16は、可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing Mechanism)の略称であり、吸気弁6および排気弁7の開閉タイミングを可変的に設定するためのバルブ可変機構である。
エンジン本体1の上部(シリンダヘッド)には、燃焼室3に向けて燃料(ガソリンを含有する燃料)を噴射するインジェクタ9と、インジェクタ9から噴射された燃料と空気との混合気に火花放電による着火エネルギーを供給する点火プラグ8とが、各気筒2A〜2Dにつきそれぞれ1組ずつ設けられている。
点火プラグ8は、図外の点火回路からの給電に応じて各気筒2A〜2Dの混合気に対し順に着火エネルギーを供給する。当実施形態のような直列4気筒エンジンでは、第1気筒2A→第3気筒2C→第4気筒2D→第2気筒2Bの順に、180°CAずつずれたタイミングで点火が行われて、この順に排気行程等が実施される(後述する図9も参照)。なお、「°CA」とは、エンジンの出力軸であるクランク軸の回転角(クランク角)を表す。
吸気通路10は、各気筒2A〜2Dの吸気ポート4と連通する4つの独立吸気通路11と、各独立吸気通路11の上流側(吸入空気の流れ方向の上流側)に共通に設けられたサージタンク12と、サージタンク12の上流側に設けられた単管状の吸気管13とを有している。吸気管13には、吸入空気量を調節するための開閉可能なスロットル弁14と、後述するターボ過給機20により圧縮された空気を冷却するためのインタークーラ15とが設けられている。
排気通路30は、図1〜図4に示すように、各気筒2A〜2Dの排気ポート5と連通する複数の独立排気通路31,32,33と、各独立排気通路31,32,33の下流端部(排気ガスの流れ方向下流側の端部)が集合した排気集合部34と、排気集合部34の下流側に設けられた単管状の排気管35とを有している。排気管35には、三元触媒等の触媒が内蔵された触媒コンバータ36やサイレンサー(図示省略)等が設けられる。
上記のように、当実施形態では4つの気筒2A,2B,2C,2Dに対し3つの独立排気通路31,32,33が用意されている。これは、中央の独立排気通路32が、2番気筒2Bおよび3番気筒2Cに対し共通に使用可能なようにY字状に分岐した形状とされているからである。すなわち、独立排気通路32は、2番気筒2Bおよび3番気筒2Cの各排気ポート5から延びる2つの分岐通路部32a,32bと、各分岐通路部32a,32bが合流することで形成された単一の共通通路部32cとを有している。一方、1番気筒2Aおよび4番気筒2Dの各排気ポート5に接続される独立排気通路31,33については、分岐のない単管状に形成されている。以下では、単管状の独立排気通路31,33を、それぞれ「第1独立排気通路31」および「第3独立排気通路33」といい、二股状に分岐した独立排気通路32を「第2独立排気通路32」ということがある。
ここで、当実施形態のような4サイクル4気筒エンジンでは、1番気筒2A→3番気筒2C→4番気筒2D→2番気筒2Bの順に点火が行われるので、二股状に形成された第2独立排気通路32の上流端部が接続される2番気筒2Bおよび3番気筒2Cは、排気順序(排気行程が実施される順序)が連続しない関係にある。このため、上記のように2番気筒2Bおよび3番気筒2Cに共通の独立排気通路32を接続した場合でも、これら両気筒2B,2Cからの排気ガスが同時に第2独立排気通路32に流れることはない。
単管状に形成された第1、第3独立排気通路31,33は、その間に位置する第2独立排気通路32の共通通路部32cに徐々に近接するように、気筒列方向の中央側を指向して延びている。そして、第1、第3独立排気通路31,33の各下流端部と第2独立排気通路32の下流端部(共通通路部32cの下流端部)とが、所定の角度(比較的浅い角度が望ましい)をもって合流することにより、各独立排気通路31〜33の下流側に上記排気集合部34が形成されている。
単管状の第1独立排気通路31および第3独立排気通路33は、2番気筒2Bと3番気筒2Cとの間を通る中心線を挟んで対称の形状を有している。このため、第1独立排気通路31および第3独立排気通路33は、互いに同一の通路長および容積を有している。一方、二股状の第2独立排気通路32は、その分岐通路部32a,32bおよび共通通路部32cの各通路長の合計が、第1、第2独立排気通路31,32のそれぞれの通路長と同一となるように形成されており、第1、第2独立排気通路31,32と同一の容積を有している。
図2および図4に示すように、第1、第3独立排気通路31,33の各下流部と、第2独立排気通路32の下流部(共通通路部32c)とは、排気ガスの流れ方向に沿って延びる隔壁37によってそれぞれ2分されている。すなわち、第1、第3独立排気通路31,33の下流部、および第2独立排気通路32の共通通路部32cは、それぞれ、隔壁37によって区画された2つの流路38,39を有している。
第1〜第3独立排気通路31,32,33内の各隔壁37は、独立排気通路31,32,33の途中部から下流端部(排気集合部34との接続部)までの範囲に亘って設けられている。言い換えると、各独立排気通路31,32,33は、流路38,39に2分された状態のまま(途中でその分割状態が解消されることなく)、排気集合部34に接続されている。
排気通路30には、その第1〜第3独立排気通路31,32,33内を通る排気ガスの流通面積を変更するための排気絞り弁40が設けられている。この排気絞り弁40は、第1〜第3独立排気通路31,32,33の各下流部に備わる上記流路38,39のうちの一方(当実施形態では図4の下側に位置する流路39)を開閉可能に遮断することにより、各独立排気通路31,32,33内の流通面積を変更する。なお、以下では、排気絞り弁40により開閉される流路39を「可変流路39」といい、もう一方の流路38を「常用流路38」という。
排気絞り弁40は、その詳細な図示は省略するが、第1〜第3独立排気通路31,32,33内のそれぞれの可変流路39を遮断するように設けられた3つの弁体と、各弁体どうしを連結するシャフトと、シャフトを回転駆動する駆動源(電気モータ等)を有している。このような構造の排気絞り弁40は、上記駆動源によるシャフトおよび弁体の回転駆動に伴って、各独立排気通路31,32,33内の可変流路39を同時に開閉することが可能である。
当実施形態のエンジンには、エンジン本体1から排出される排気ガスのエネルギーにより駆動されるターボ過給機20が装備されている。
ターボ過給機20は、排気通路30の排気集合部34の直下流(排気集合部34と排気管35との間)に設けられたタービンハウジング21と、タービンハウジング21内に配設されたタービン22と、吸気管13内に配設されたコンプレッサ23と、これらタービン22およびコンプレッサ23を互いに連結する連結軸24とを有している。エンジンの運転中、エンジン本体1の各気筒2A〜2Dから排気ガスが排出されると、その排気ガスが独立排気通路31,32,33等を通じてターボ過給機20のタービンハウジング21内に流入することにより、タービン22が排気ガスのエネルギーを受けて高速で回転する。また、タービン22と連結軸24を介して連結されたコンプレッサ23がタービン22と同じ回転速度で駆動されることにより、吸気管13を通過する吸入空気が加圧されて、エンジン本体1の各気筒2A〜2Dへと圧送される。
排気通路30には、ターボ過給機20のタービン22をバイパスするためのバイパス通路42が、タービンハウジング21とその下流側の排気管35とを互いに連結するように設けられており、このバイパス通路42の途中部には、ウェストゲート弁43が開閉可能に設けられている。ウェストゲート弁43が開弁されると、エンジン本体1から排出された排気ガスの少なくとも一部がバイパス通路42を通過するので、タービン22に流入する排気ガスの量が減り、タービン22の駆動力が抑制される。
排気通路30の排気集合部34と吸気通路10のサージタンク12とは、EGR通路45を介して互いに連結されている。このEGR通路45は、エンジン本体1から排出された排気ガスの一部を吸気系に戻す、いわゆる排気還流(Exhaust Gas Recirculation)を行うための通路である。EGR通路45には、EGRガス(吸気系に戻される排気ガス)を冷却するためのEGRクーラ46と、EGR通路45を通るEGRガスの流量を制御するための開閉可能なEGR弁47とが設けられている。
(2)ターボ過給機の特性
当実施形態では、ターボ過給機20として、比較的大型のタービン22とコンプレッサ23とを組み合わせたものが用いられる。それは、次のような理由による。
従来、特に低速域からの加速時にトルクの応答性を高める観点から、コンプレッサに対してタービンのサイズを小型化し、排気ガスの流量が少ない低速域でも高い圧力比が得られるようにすることが多かった。タービンは、ある程度の量の排気ガスがないと高速で回転できないが、小型のタービンであれば、排気ガスの流量が少なくても高速で回転できるので、低速域でのコンプレッサの圧力比を高める(つまり低速域での過給能力を高める)ことができる。
図5は、コンプレッサの特性を示す性能曲線のグラフであり、その縦軸はコンプレッサの圧力比、横軸はコンプレッサの吐出流量である。この図5のグラフにおいて、各ラインSL、RL、CLは、それぞれ、サージライン、回転限界ライン、チョークラインを表しており、これらのラインで囲まれた領域がコンプレッサの運転可能領域である。また、この運転可能領域内に図示された等高線のような曲線群は、コンプレッサの効率が等しい運転ポイントを結んだ等効率線であり、領域の中央側に位置する曲線ほど効率が高くなることを表している。
従来から多用されてきたように、タービンとして比較的小型のものを用いた場合には、エンジンの低速域からの加速時に、すぐにタービンの回転速度が上昇し、これに伴いコンプレッサの圧力比も比較的鋭く上昇する。このように、少ない流量でも高い圧力比が得られるので、加速時のコンプレッサの特性としては、図5の曲線L2のような、傾きの大きい曲線が得られる。これにより、エンジンの低速域でも比較的高い過給圧が得られるので、低速域のエンジンのトルクが上昇し、低速域からの加速レスポンスが向上する。なお、曲線L2では、その途中から圧力比が頭打ちになっている(横向きの直線に移行している)が、これは、エンジンや過給機を保護する観点から設けられた上限値に過給圧が達したために過給圧制御(ウェストゲート弁を開く等の制御)が実行されたことを示している。
上記のように、タービンを小型化することは、エンジンの低速域でのトルクを補強する上では有利であるが、その反面、エンジンの高速域では、タービンを通過するときの排気ガスの流通抵抗が高くなり易く、ポンピングロスが増大するという欠点がある。また、コンプレッサのサージラインSLの近傍が多用されることとなるため、コンプレッサ単体でみると、決して効率の良い使い方とはいえない。
これに対し、当実施形態では、タービン22として比較的大型のものを用いている。このため、エンジンの低速域からの加速時には、図5の曲線L1に示すように、コンプレッサ23の効率の高いところ(等高線の尾根の近傍)が多用されるようになり、コンプレッサ単独の使用条件としては好ましいといえる。
ただし、加速初期のような排気ガスの流量が少ない状況では、タービン22の回転速度がなかなか上昇せず、コンプレッサ23の圧力比は緩やかにしか上昇しない。このことは、エンジン低速域でのトルクが充分に増大せず、低速域からの加速レスポンスが悪くなることを意味する。
一方、エンジン回転速度がある程度上昇して以降は、タービン22の回転上昇に応じて大きな圧力比が得られ、充分なトルクを確保することができる。しかも、排気ガスの流量が多いときの流通抵抗(排気ガスがタービン22を通過するときの抵抗)はタービンが小型であるときよりも小さいので、エンジン高速域におけるポンピングロスを低減して燃費を向上させることができる。
以上のとおり、タービン22を大型化した当実施形態の構成は、高速域でのトルクの確保や燃費の面で有利である一方、低速域でのトルクが充分に出せないという問題がある。そこで、このような問題に対処すべく、当実施形態では、排気絞り弁40を閉弁して可変流路39を遮断する独立排気絞り制御を低速域で実行することにより、低速域でのトルク不足を補うようにしている(その詳細は後述する)。
(3)制御系
次に、図6を用いて、エンジンの制御系について説明する。当実施形態のエンジンは、その各部がECU(エンジン制御ユニット)50によって統括的に制御される。ECU50は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサであり、本発明にかかる制御手段に相当するものである。
ECU50には、各種センサからの情報が入力される。例えば、エンジンもしくは車両には、エンジンの回転速度、つまりエンジン本体1のクランク軸の回転速度を検出するためのエンジン速度センサSN1と、エンジンの冷却水の温度を検出するためのエンジン水温センサSN2と、吸気管13を通過する吸入空気の流量を検出するためのエアフローセンサSN3と、ドライバーにより操作される図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するためのアクセル開度センサSN4とが設けられており、これらの各センサで検出された情報が電気信号としてECU50に逐次入力されるようになっている。
ECU50は、上記各センサ(SN1〜SN4等)からの入力信号に基づいて種々の演算等を実行しつつ、エンジンの各部を制御する。すなわち、ECU50は、点火プラグ8、インジェクタ9、吸排気弁用のVVT16,16、スロットル弁14、排気絞り弁40、ウェストゲート弁43、およびEGR弁47と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいて、これらの機器にそれぞれ駆動用の制御信号を出力する。
(4)運転領域に応じた制御
次に、ECU50が行うエンジン制御の具体例について、図7の制御マップを参照しつつ説明する。
図7において、WOTは、エンジンの全負荷ライン(アクセル全開のときのエンジントルク)を表している。当実施形態では、エンジンにターボ過給機20が備わっているので、エンジンの全負荷ラインWOTは、自然吸気のとき(過給なしのとき)のエンジントルクの上限である自然吸気ラインNAよりも高く設定されている。
全負荷ラインWOT上に存在するポイントICは、いわゆるインターセプトポイントである。このインターセプトポイントICでは、ターボ過給機20のコンプレッサ23による過給圧が予め定められた上限値に達するので、過給圧がそれ以上に上昇するのを防止するための過給圧制御が実行される。なお、以下では、インターセプトポイントICに対応するエンジン回転速度Niを、「インターセプト回転速度Ni」と称する。
インターセプトポイントICよりも高速側の全負荷ラインWOT上に存在するポイントXは、エンジンの出力が最大になる最高出力点である。なお、以下では、最高出力点Xに対応するエンジン回転速度Nxを、「定格回転速度Nx」という。定格回転速度Nxは、比較的高速側の値をとるが、エンジンの最高許容回転速度(いわゆるレッドゾーンに入る速度)とは必ずしも一致しない。
上述したように、当実施形態では、比較的大型のタービン22が用いられているので、エンジン回転速度がある程度上昇しないと、コンプレッサ23による過給圧は上限値に達しない。このため、インターセプトポイントICに対応するエンジン回転速度、つまりインターセプト回転速度Niは、エンジンの定格回転速度Nxの1/3以上の値となる。言い換えると、当実施形態のターボ過給機20の緒元は、インターセプト回転速度Niがエンジンの定格回転速度Nxの1/3以上になるように設定されている。
図7のマップによると、インターセプト回転速度Niよりも高回転側の速度域における高負荷側(トルクの高い側)に、第1領域R1が設定されているとともに、この第1領域R1よりもさらに高負荷側に、第2領域R2が設定されている。一方、インターセプト回転速度Niよりも低回転側の速度域における高負荷側には、第3領域R3が設定されている。また、これら第1、第2、第3領域R1,R2,R3を除いた残余の領域、つまりインターセプトポイントICを頂点とした下拡がり状の領域および自然吸気ラインNAよりも低負荷側の領域には、第4領域R4が設定されている。
エンジンの運転中、ECU50は、エンジン速度センサSN1、エアフローセンサSN3、およびアクセル開度センサSN4等から得られる情報に基づいて、エンジンが図7の制御マップにおけるどの領域で運転されているかを逐次判断し、その判断結果に応じてそれぞれ次のような制御を実行する。
(i)第4領域R4
まず、第4領域R4でエンジンが運転されているときの制御について説明する。第4領域R4での運転時、ECU50は次のような制御を実行する。
・排気絞り弁40を開く(独立排気絞り制御の非実行)。
・ウェストゲート弁43を閉じる。
すなわち、第4領域R4では、排気絞り弁40が開かれて、第1〜第3独立排気通路31,32,33内のそれぞれの可変流路39が開放される。これにより、各独立排気通路31,32,33内では、常用流路38および可変流路39の双方を排気ガスが流通し得るようになり、排気ガスの流通抵抗が低減される。このため、特に第4領域R4内の高速域のように、各気筒2A〜2Dから単位時間あたりに排出される排気ガスの量が多くなる運転条件であっても、排気ガスがスムーズに排出され、ポンピングロスが低減される。
また、第4領域R4では、各独立排気通路31,32,33を通じて排出された排気ガスが全てターボ過給機20のタービン22に流入するように、ウェストゲート弁43が閉じられる。これにより、排気ガスのエネルギーを受けてタービン22が回転するとともに、このタービン22によってコンプレッサ23が駆動され、コンプレッサ23による過給が行われる。
なお、EGR弁47については、少なくとも第4領域R4内の低負荷側で開かれる。これにより、EGR通路45を通じた排気ガスの還流操作が行われ、低負荷域でのポンピングロスの低減が図られる。
(ii)第3領域R3
第3領域R3での運転時、ECU50は次のような制御を実行する。
・排気絞り弁40を閉じる(独立排気絞り制御の実行)。
・吸排気弁6,7のバルブオーバーラップ期間を拡大する。
・ウェストゲート弁43およびEGR弁47の双方を閉じる。
すなわち、第3領域R3では、排気絞り弁40を閉じる独立排気絞り制御が実行されることにより、第1〜第3独立排気通路31,32,33内のそれぞれの可変流路39が遮断される。このことは、各独立排気通路31,32,33内の流通面積が実質的に減少したことを意味する。すると、エンジン本体1の各気筒2A〜2Dから排出された排気ガスは、各独立排気通路31,32,33内の常用流路38のみを通って、高い流速を保ったまま排気集合部34およびタービン22へと流入する。
また、第3領域R3では、ウェストゲート弁43およびEGR弁47の双方が閉じられる。これにより、各気筒2A〜2Dから排出された排気ガスは、全てターボ過給機20のタービン22に流入し、コンプレッサ23による過給が最大限行われる。
さらに、第3領域R3では、吸気弁6および排気弁7用の各VVT16が駆動されることにより、吸気弁6および排気弁7の双方が開くバルブオーバーラップ期間が、第4領域R4のときよりも長くなるように設定される。すなわち、図8および図9に示すように、各気筒2A〜2Dの排気行程の後半から吸気行程の前半にかけた比較的長い期間OLに亘って、吸気弁6および排気弁7の双方が開かれるように、吸排気弁6,7の開閉タイミングが設定される。
なお、上記のような制御は、第3領域R3での定常運転時はもちろんのこと、エンジンの運転ポイントが低負荷域から第3領域R3に移行しようとする過渡期にも実行される。すなわち、エンジンの低速域での運転中に負荷(アクセル開度に基づく要求トルク)が増大し、これに伴ってエンジンの運転ポイントが第3領域R3に向かって図7の上方に移動しているときには、第3領域R3への実際の移行に先立って、排気絞り弁40を閉じるとともにバルブオーバーラップ期間を拡大させる制御が実行される。
(iii)第1領域R1
第1領域R1での運転時、ECU50は次のような制御を実行する。
・排気絞り弁40を開く(独立排気絞り制御の非実行)。
・EGR弁47を開き、ウェストゲート弁43を閉じる(第1の過給圧制御)。
第1領域R1は、インターセプト回転速度Niよりも高速側の全負荷ラインWOTを含む領域であり、ターボ過給機20のタービン22に流入する排気ガスの量を抑制しないと、コンプレッサ23による過給圧が過大になる領域である。そこで、第1領域R1では、エンジン本体1およびターボ過給機20を保護するために、EGR弁47を開く第1の過給圧制御が実行される。
第1の過給圧制御に伴いEGR弁47が開かれることで、排気集合部34に接続されたEGR通路45を通って排気ガスが吸気通路10に戻されるので、排気集合部34よりも下流側に配設されたタービン22に流入する排気ガスの量が減らされ、それによって過給圧が上限値を超えないように(上限値で一定になるように)制御される。
一方、第1の過給圧制御では、ウェストゲート弁43は閉じた状態(全閉状態)に維持される。第1領域R1は、後述する第2領域R2に比べれば排気ガスの流量が少ないので、排気還流だけで過給圧を上限値に維持できるからである。
また、第1領域R1では、エンジン回転速度が比較的高く排気ガスの流量が多いため、これに対応すべく排気絞り弁40が開かれて、第1〜第3独立排気通路31,32,33内のそれぞれの可変流路39が開放される。これにより、各気筒2A〜2Dからの排気ガスは、各独立排気通路31,32,33内の常用流路38および可変流路39の双方を通ってスムーズに下流側へと排出される。
(iv)第2領域R2
第2領域R2での運転時、ECU50は次のような制御を実行する。
・排気絞り弁40を開く(独立排気絞り制御の非実行)。
・EGR弁47およびウェストゲート弁43の双方を開く(第2の過給圧制御)
第2領域R2は、最も高回転かつ高負荷の領域であり、排気ガスの流量が最も多くなる条件であるから、コンプレッサ23による過給圧が最も上昇し易い。このため、上述した第1領域R1のようにEGR弁47を開くだけ(排気還流を行うだけ)では、過給圧を上限値に維持することが困難になる。もちろん、第1領域R1のときよりもEGR弁47をさらに大きく開くことで過給圧の上昇を抑えることも考えられるが、このようにすると、気筒2A〜2D内に供給される新気の量が不足し、燃焼が不安定になったり失火を起こしたりするおそれがある。
そこで、第2領域R2では、EGR弁47を所定値以下の開度で開きつつウェストゲート弁43を追加で開く、第2の過給圧制御が実行される。これにより、最も排気ガスの流量の多い条件であるにもかかわらず過給圧が上限値に維持され、しかも燃焼の安定性が確保される。
なお、上記のようにウェストゲート弁43の開弁が加わる点を除けば、第2領域R2での制御は、上述した第1領域R1での制御と基本的に同じである。
(5)作用等
以上説明したように、当実施形態のエンジンは、ターボ過給機20のタービン22よりも上流側の排気通路30(具体的には排気集合部34)とコンプレッサ23よりも下流側の吸気通路10とを互いに連結するEGR通路45と、EGR通路45に設けられた開閉可能なEGR弁47と、タービン22をバイパスするように排気通路30に設けられたバイパス通路42と、バイパス通路42に設けられた開閉可能なウェストゲート弁43と、EGR弁47およびウェストゲート弁43を含むエンジンの各部を制御するECU50(制御手段)とを備える。ECU50は、インターセプト回転速度Niよりも高速側に設定された第1領域R1での運転時に、EGR弁47を開いてウェストゲート弁43を閉じる第1の過給圧制御を実行し、第1領域R1よりも回転速度または負荷が高い(よって排気ガスの流量が相対的に多い)第2領域R2での運転時に、EGR弁47およびウェストゲート弁43の双方を開く第2の過給圧制御を実行する。このような構成によれば、過給圧を抑制する過給圧制御をエンジンの高速域で適正に実行しつつ、エンジンの燃費性能を改善できるという利点がある。
すなわち、上記実施形態では、エンジン回転速度がインターセプト回転速度Niよりも上昇したときに、過給圧を抑制する過給圧制御として、まず、EGR弁47を開いてウェストゲート弁43を閉じる第1の過給圧制御が実行される。EGR弁47が開かれると、排気ガスの一部がタービン22の上流側からEGR通路45に分流して吸気通路10に戻されるため、タービン22に流入する排気ガスの量が減り、過給圧の上昇が抑制される(上限値に維持される)。しかも、EGR通路45に分流した排気ガスは、コンプレッサ23よりも下流側の吸気通路10に戻されるので、排気圧力と吸気圧力との差を小さくする役割を果たす。これにより、ポンピングロスが効果的に低減されて、燃費性能がより向上する。
もちろん、上記とは逆に、EGR弁47を閉じてウェストゲート弁43を開くことによって過給圧を制御することも考えられる。ウェストゲート弁43を開けば、排気ガスの一部がタービン22をバイパスして排気通路30の下流側に捨てられ、タービン22の駆動力が抑制されるからである。しかしながら、このようにすると、吸気圧力(過給圧に同じ)に対する排気圧力の増分が拡大し、ポンピングロスの増大を招いてしまう。例えば、インターセプト回転速度Niを超えてエンジン回転速度がさらに上昇した場合には、図10の「排気圧力(W/G)」に示すように、ウェストゲート弁43の開弁によって過給圧は所定の上限値(図中にZで示す)に維持される一方で、タービン22の上流側の排気圧力は徐々に増大していく。これは、タービン22に流入する排気ガスの量が減らされたときに、その減少分がタービン22の駆動力に及ぼす影響の方が、排気圧力に及ぼす影響よりも大きい(つまり、排気ガスの量を少し減らしただけでもタービン22の駆動力は大きく低下する)からである。したがって、上記のようにウェストゲート弁43の開弁によって過給圧を制御した場合には、高速側ほど排気圧力と吸気圧力との差ΔH2が大きくなり、ポンピングロスが増大してしまう。
これに対し、上記実施形態では、第1の過給圧制御として、EGR弁47を開いてウェストゲート弁43を閉じるため、図10の「排気圧力(EGR)」に示すように、上記のような排気圧力の上昇を抑制して、ポンピングロスを効果的に低減することができる。すなわち、EGR弁47が開かれることで、EGR通路45を通じて吸気通路10(具体的にはコンプレッサ23よりも下流側のサージタンク12)に排気ガスが戻され、その戻された排気ガス(EGRガス)が吸入空気に追加されるので、過給圧(≒吸気圧力)が一定とすると、コンプレッサ23が圧縮すべき吸入空気の量は、上記追加されるEGRガスの分だけ減少する。このことは、タービン22に付与すべき駆動力が小さい値で済むことを意味するので、タービン22に流入する排気ガスの量を多く減らすことができ、タービン22上流の排気圧力をより低く抑えることができる。このように、EGRによって過給圧を制御する第1の過給圧制御によれば、ウェストゲート弁43の開弁によって過給圧を制御する場合(いわば排気ガスをタービン22の下流側に捨てる場合)と比べて、排気圧力を下げても所要の過給圧を得ることができるので、排気圧力と吸気圧力との差ΔH1を小さくでき、ポンピングロスを低減させて燃費性能をより向上させることができる。
なお、吸入空気にEGRガスを混入させるとエンジントルクが低下する懸念があるが、インターセプト回転速度Niよりも高速側においてEGRガスを導入しても、このことが直ちにトルクの低下に結びつくわけではない。すなわち、過給エンジンのトルクは、過給圧、点火タイミング、排気ガス温度制限という3つの主要因によっておおよそ決まってくるが、インターセプト回転速度Niよりも高速側(且つ高負荷側)の領域でEGRガスを適度に導入すると、ノッキングが抑制されるとともに排気ガス温度が低下するので、点火タイミングを進角させることが可能になり、エンジンに導入する空気量(およびこれに比例して決まる燃料の噴射量)に対する比出力が増大する。加えて、上述したポンピングロスの低減効果によっても出力が向上する。このように、適度な量のEGRガスであれば、これを導入することでエンジントルクを低下させることなく燃費性能を向上させることができる。
一方、上記のような第1の過給圧制御(EGRを利用した過給圧制御)を、排気ガスの流量が最大限多くなるような条件でも継続して実行した場合には、吸気通路10に戻される排気ガスの還流量(EGRガス量)が過大になり、燃焼安定性の低下(もしくは失火)等の問題を起こすことが懸念される。そこで、上記実施形態では、上述した第1の過給圧制御の実行領域(第1領域R1)よりも排気ガスの流量が多くなる第2領域R2で、EGR弁47に加えてウェストゲート弁43を開く第2の過給圧制御が実行される。これにより、排気ガスの一部がEGR通路45を通じて吸気通路10に戻されるとともに、別の排気ガスの一部がバイパス通路42に流れる(つまりタービン22をバイパスする)ので、吸気通路10への排気ガスの還流量を過度に増やすことなく、タービン22に流入する排気ガスの量を充分に減らすことができる。この結果、排気ガスの還流量が過大になって燃焼安定性が悪化するのを確実に防止しつつ、上限値を超えない範囲で過給圧を適正に制御することができる。
ここで、上記実施形態では、ターボ過給機20のタービン22として比較的大型のものが用いられており、インターセプト回転速度Niがエンジンの定格回転速度Nxの1/3以上に設定されている。このため、過給圧を抑制する過給圧制御が必要な速度域は、これまで多用されてきた過給機付エンジン、特に、低速域からの加速レスポンスを重視してタービンを小型化したエンジンと比べれば、狭い範囲で済むことになる。このことは、過給圧を抑制するための最終手段としてウェストゲート弁43が開かれる運転領域(つまり上述した第2の過給圧制御が実行される第2領域R2)がごく狭い範囲に限られることを意味する。このように、狭い運転領域でしかウェストゲート弁43を開く必要がなくなるので、上記実施形態によれば、高速域でのポンピングロスの増大を最小限に抑えることができる。
また、上記実施形態では、エンジンの排気通路30が、1つの気筒(2Aまたは2D)の排気ポート5に上流端部が接続された第1、第3独立排気通路31,33と、排気順序が連続しない複数の気筒(2Bおよび2C)の各排気ポート5に上流端部が接続された第2独立排気通路32と、これら各独立排気通路31,32,33の下流端部どうしが1つに集合した排気集合部34と、独立排気通路31,32,33内を通る排気ガスの流通面積を可変的に設定する排気絞り弁40とを備えており、排気集合部34の下流側にはターボ過給機20のタービン22が配設されている。ECU50は、インターセプト回転速度Niよりも低速側に設定された第3領域R3での運転時に、排気絞り弁40を閉じる独立排気絞り制御を実行する。このような構成によれば、排気ガスのブローダウンを利用したいわゆる動圧過給効果により、低速域でのターボ過給機20の過給能力をより高めることができる。
図8は、ある特定の気筒のクランク角を横軸にとり、各気筒2A〜2Dから排出された排気ガスの圧力(排気集合部34での測定値)を縦軸にとったグラフである。このグラフにおいて、横軸のBDC,TDCは、それぞれ上記特定気筒の下死点および上死点を示しており、BDCからTDCまでの間隔はクランク角にして180°CAである。また、図示の特性線Aは、上記独立排気絞り制御を実行した場合の排気ガスの圧力を示しており、特性線Bは、上記独立排気絞り制御を実行しなかった場合の排気ガスの圧力を示している。
当実施形態のエンジンは4気筒エンジンであり、気筒2A〜2D間の点火間隔が180°CAであるため、これに合わせて、排気弁7を開いた直後に発生する排気ガスのブローダウン(高圧・高速の排気流れ)も180°CAごとに発生する。図8のグラフによれば、ブローダウンによる排気圧力のピーク値は、独立排気絞り制御を伴う特性線Aの方が、独立排気絞り制御を伴わない特性線Bよりも高くなっている。これは、独立排気絞り制御を実行することで、各独立排気通通路31,32,33内の可変流路39が遮断されて排気ガスの流通面積が縮小し、排気ガスが短期間に集中的に流れるようになったからである。
ここで、1回の排気行程当たりの有効な排気時間(ブローダウン期間)は、排気弁7の開弁直後に現れる排気圧力のピーク値(ブローダウンピーク)が高いほど、短くなる。一方で、動圧過給による効果は、ブローダウンピークに対して二次曲線的な特性を有することが知られている。そのため、特性線Aに示したように、独立排気絞り制御によってブローダウンピークを高めた場合には、ブローダウンピークが低い特性線Bの場合(独立排気絞り制御を実行しなかった場合)と比べて、ブローダウン期間の短縮による目減り分を差引いても、タービン22が排気ガスから受け取る平均的な駆動力(駆動力の時間平均値)が増大することになる。
また、独立排気絞り制御を伴う特性線Aのように、ブローダウン期間が短縮されると、ブローダウンピーク後に発生する排気圧力のボトム値がより低い値(過給圧を大きく下回る値)まで低下する。したがって、独立排気絞り制御を実行した場合には、排気圧力のピーク値からボトム値までの落差(図8にΔHpとして示す)がより大きくなる。このことは、排気ガスがよりスムーズに排出されて気筒2A〜2D内の残留ガスが減少すること(掃気の促進)につながり、ひいてはエンジントルクの向上につながる。
加えて、上記実施形態では、独立排気絞り制御を実行する第3領域R3での運転時に、図8にOLで示すバルブオーバーラップ期間が拡大され、排気上死点(排気行程と吸気行程との間の上死点;図8のTDC)の前後にかけた比較的長い期間に亘って吸気弁6および排気弁7の双方が開かれるので、いわゆるエゼクタ効果を効果的に発揮させて掃気をより促進することができる。エゼクタ効果とは、高速の噴流の周囲に発生する負圧を利用して被駆動流体を吸引する作用のことである。
すなわち、ある気筒が排気上死点(TDC)の近傍にあるとき(以下、この気筒のことを先行気筒という)、当該先行気筒の次に排気行程を迎える後続気筒からは、ブローダウンによって高速の排気ガスが噴出される(図2の矢印We0参照)。このブローダウンガスは、排気集合部34に流入したときにその周囲に強い負圧を発生させるが、この強い負圧は、独立排気通路(31,32,33のいずれか)を遡って上記先行気筒の排気ポート5に作用し、当該先行気筒から排気ガスを吸い出そうとする(エゼクタ効果)。しかもこのとき、先行気筒では、図9に示すように、バルブオーバーラップ期間(OL)が形成されており、吸気弁6および排気弁7の双方が開いているので、吸気ポート4から気筒内に吸入された空気がそのまま排気ポート5へと吹き抜けるような流れが生じ(図2の矢印Wi,We参照)、この吸入空気の吹き抜けによってより一層掃気が促進される。
また、エゼクタ効果によって上記のような吹き抜け流(吸気ポート4から排気ポート5へと吹き抜ける吸入空気の流れ)が生じると、その吹き抜け流が既燃ガス(混合気の燃焼により生成されたガス)に付加されることにより、各気筒2A〜2Dからの排気ガスの流量が増大する。タービン22の駆動力は、排気ガスの流量に比例するので、エゼクタ効果によって排気ガスの流量が増大すると、これに比例してタービン22の駆動力が増大し、ターボ過給機20の過給能力が向上する。
特に、上記実施形態では、ターボ過給機20のタービン22として比較的大型のものを用いているので、上記のような独立排気絞り制御による恩恵は大きいものとなる。すなわち、排気ガス流量の少ない低速側の領域R3で、仮に、上記のような独立排気絞り制御(排気絞り弁40を閉じて流路39を遮断する制御)を実行しなかった場合には、タービン22を高速で回転させるための駆動力が充分に得られず、第3領域R3と第4領域R4との境界である図7のラインPのようなトルクしか得ることができない。これに対し、上記実施形態のように、独立排気絞り制御を実行しつつバルブオーバーラップ期間を拡大することにより、動圧過給効果およびエゼクタ効果を発揮させるようにした場合には、タービン22に作用する平均的な駆動力が増大するので、大型のタービン22であってもこれを充分に高速で回転させることができる。これにより、ターボ過給機20による低速域での過給能力を充分に高めることができるので、上記ラインPよりもトルクの高い上記領域R3を実現させることが可能となる。
一方、インターセプト回転速度Niよりも高速側では、排気ガスの流量が多くなるので、上記のような独立排気絞り制御等を実行しなくても、タービン22には大きな駆動力を作用させることができ、ターボ過給機20の過給能力を充分に高めることができる。しかも、上記実施形態では、インターセプト回転速度Niがエンジンの定格回転速度Nxの1/3以上に設定されている(つまりタービン22が大型である)ので、エンジンの高速域での過給能力が本来的に高く、過給圧のピーク値を充分に高い値に設定することができる。このことは、高速域での頭打ち感(加速の伸びが鈍ること)のない商品性に優れたエンジンが実現されることを意味する。
さらに、タービン22が大型であれば、排気ガス流量の多いエンジンの高速域において、排気ガスの流通抵抗がそもそも増大しにくい。その上で、上記実施形態では、インターセプト回転速度Niよりも高速側の領域で、上記独立排気絞り制御の停止によって独立排気通路31,32,33内の流通面積が拡大されるので、ポンピングロスを大幅に低減させることができ、エンジン高速域での燃費性能をさらに向上させることができる。
また、上記実施形態では、各独立排気通路31,32,33の下流部が、排気ガスの流れ方向に沿って延びる隔壁37によって常用流路38と可変流路39とに区分されており、排気絞り弁40は、上記2つの流路38,39のうちの一方(可変流路39)を開閉可能に遮断するように設けられている。このような構成によれば、隔壁37で区画された2つの流路38,39のうちの一方を排気絞り弁40によって遮断または開放するという簡単な構成で、独立排気通路31,32,33内の流通面積を変化させることができ、上記独立排気絞り制御の実行と停止とを迅速かつ確実に切り替えることができる。
なお、上記実施形態では、第1〜第3独立排気通路31,32,33とタービンハウジング21との間に別体の排気集合部34を設けたが、別体の排気集合部34を省略して、各独立排気通路31,32,33の下流端部をタービンハウジング21に直接接続するようにしてもよい。この場合は、タービンハウジング21の上流部(タービン22よりも上流側に位置する部分)が、排気集合部として機能することになる。
また、上記実施形態では、2番気筒2Bおよび3番気筒2Cに二股状に分岐した第2独立排気通路32を接続するとともに、1番気筒2Aまたは4番気筒2Dに単管状の第1、第3独立排気通路31,33を接続することにより、4つの気筒2A〜2Dに対し3つの独立排気通路31,32,33を設けるようにしたが、第1、第3独立排気通路31,33と同様の単管状の排気通路を全ての気筒2A〜2Dに接続することにより、気筒2A〜2Dと同数の4つの独立排気通路を設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、吸気弁6および排気弁7用の各動弁機構に、バルブ開閉タイミングを変更するためのVVT16(バルブ可変機構)をそれぞれ設けたが、バルブオーバーラップ期間を運転条件に応じて変更できればよく、吸気弁6および排気弁7のいずれか一方の動弁機構にのみVVT16を設けてもよい。
また、上記実施形態では、インターセプト回転速度Niよりも低速側の第3領域R3での運転時、排気絞り弁40を閉じる独立排気絞り制御を実行することにより、ターボ過給機20の過給能力を改善してエンジントルクを高めるようにしたが、エンジンの回転速度が極端に低いエンジンの極低速域では、充分なトルクが出ないことも想定される。そこで、極低速域でのトルクを補強すべく、電気モータにより駆動される電動過給機を用いて補助的な過給を行うようにしてもよい。