[go: up one dir, main page]

JP5970942B2 - 車体制振制御装置 - Google Patents

車体制振制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5970942B2
JP5970942B2 JP2012104543A JP2012104543A JP5970942B2 JP 5970942 B2 JP5970942 B2 JP 5970942B2 JP 2012104543 A JP2012104543 A JP 2012104543A JP 2012104543 A JP2012104543 A JP 2012104543A JP 5970942 B2 JP5970942 B2 JP 5970942B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vehicle
turning resistance
resistance force
speed
torque
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012104543A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013231403A (ja
Inventor
祥司 川口
祥司 川口
裕樹 塩澤
裕樹 塩澤
雄基 太田
雄基 太田
小林 洋介
洋介 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP2012104543A priority Critical patent/JP5970942B2/ja
Publication of JP2013231403A publication Critical patent/JP2013231403A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5970942B2 publication Critical patent/JP5970942B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/60Other road transportation technologies with climate change mitigation effect
    • Y02T10/62Hybrid vehicles

Landscapes

  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)

Description

本発明は、走行中、推定した車体のばね上挙動を駆動トルクの補正制御により抑制する車体制振制御装置に関する。
従来、ドライバ入力に、車輪速変動から推定した外乱トルクを入力に加え、車両モデルから車体振動を推定し、車輪トルクを制御して車体振動を抑制するようにした車両の制振制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−127456号公報
しかしながら、特許文献1に記載された従来装置にあっては、操舵による挙動を制御対象に含まないため、旋回シーンにおいて、操舵応答性の向上を期待できない、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、走行条件が変化する旋回シーンにおいて、走行条件の変化にかかわらず旋回抵抗力の算出精度を確保することができる車体制振制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の車体制振制御装置は、走行中に取得される車両からのセンシング情報を、車体のばね上挙動を推定するときに用いる車両モデルへの入力形式である車輪に加わるトルクまたは力の次元に変換する入力変換部と、前記車輪に加わるトルクまたは力前記車両モデルを用いて車体のばね上挙動を推定する車体振動推定部と、前記ばね上挙動の推定結果に基づき駆動トルクの補正を行うトルク指令値算出部と、を備えたことを前提とする。
この車体制振制御装置において、
前記入力変換部は、
操舵角信号と車体速信号と線形2輪モデルを用いて第1旋回抵抗力の演算を行う第1旋回抵抗力算出部と、
操舵角信号と車体速信号と車速/操舵角/旋回抵抗力の3次元マップを用いて第2旋回抵抗力の演算を行う第2旋回抵抗力算出部と、
前記2つの旋回抵抗力算出部からの算出結果と走行条件に基づき、前記車体振動推定部へ出力する旋回抵抗力を切り替える切り替え処理部と、
を備える。
例えば、操舵角と車速と線形2輪モデルを用いて旋回抵抗力を演算する1つの制御ロジックを用いる場合、モデル近似性が高い中速以上の車速域では、旋回抵抗力の算出精度が確保される。しかし、モデル近似性が低下する低速域においては、旋回抵抗力の算出精度が低くなる。
これに対し、第1旋回抵抗力算出部において、操舵角信号と車体速信号と線形2輪モデルを用いて第1旋回抵抗力が演算され、第2旋回抵抗力算出部において、操舵角信号と車体速信号と車速/操舵角/旋回抵抗力の3次元マップを用いて第2旋回抵抗力が演算される。そして、2つの算出結果と走行条件に基づき、切り替え処理部において、車体振動推定部へ出力する旋回抵抗力が切り替えられる。すなわち、第1旋回抵抗力算出部による演算手法では旋回抵抗力の算出精度が低くなる走行条件に対し、旋回抵抗力の算出精度を確保する演算手法を第2旋回抵抗力算出部に割り当てることができる。
この結果、走行条件が変化する旋回シーンにおいて、一方の旋回抵抗力算出部による算出精度が低くなる走行条件のとき、算出精度の確保を他方の旋回抵抗力算出部により分担することで、走行条件の変化にかかわらず旋回抵抗力の算出精度を確保することができる。
実施例1の車体制振制御装置が適用されたエンジン車を示す全体システム構成図である。 実施例1のエンジン車システムにおけるエンジンコントロールモジュール内の制御プログラム構成を示す制御ブロック図である。 実施例1のエンジンコントロールモジュール内の車体制振制御装置を示す制御ブロック図である。 実施例1のサスストローク算出部での説明においてサスペンションがストロークする際にタイヤが前後方向に変位することを示す模式図である。 実施例1の入力変換部に有するサスストローク算出部でのサスペンションのストロークと前輪タイヤの前後方向変位関係特性の一例を示す前輪タイヤ特性図である。 実施例1の入力変換部に有するサスストローク算出部でのサスペンションのストロークと後輪タイヤの前後方向変位関係特性の一例を示す後輪タイヤ特性図である。 実施例1の入力変換部に有する第2旋回抵抗力算出部での前輪旋回抵抗力を算出する3次元マップの一例を示す前輪旋回抵抗力マップ図である。 実施例1の入力変換部に有する第2旋回抵抗力算出部での後輪旋回抵抗力を算出する3次元マップの一例を示す後輪旋回抵抗力マップ図である。 実施例1の入力変換部に有する切り替え処理部で低速→中速に変化するときの車速に対する重み係数の変化率の遷移特性を示す第1重み係数マップ図である。 実施例1の入力変換部に有する切り替え処理部で中速→低速に変化するときの車速に対する重み係数の変化率の遷移特性を示す第2重み係数マップ図である。 実施例1の入力変換部に有する切り替え処理部で低速→中速に変化する際にトルク指令値が大きくなったときに重み係数保持を加えた変化特性を示す重み係数の変化特性図である。 実施例1の車体振動推定部に有する車両モデルを図式化したものを示す車両モデル図である。 実施例1のトルク指令値算出部に有する第1〜第3レギュレータ部と第1〜第3チューニングゲイン設定部と加算器の構成を示すブロック図である。 実施例1のトルク指令値算出部に有する第1〜第3レギュレータ部に設定された各レギュレータゲインが発揮する機能を示すゲイン機能説明図である。 車体制振制御の基本作用の説明図であり、走行状況(a)、車軸トルク特性のタイムチャート(b)、ピッチ角速度特性のタイムチャート(c)を示す。 実施例1のエンジンコントロールモジュールにおいて実行される車体制振制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1の車体制振制御で狙っている効果である「操舵応答の向上」と「荷重変動の抑制」と「ロール速度の抑制」の基本原理を示す原理説明図である。 実施例1の車体制振制御のロジック詳細を示すロジック構成図である。 実施例1の車体制振制御装置を搭載したエンジン車で操舵時に実現される効果をあらわすピッチレイト(制御なし)・操舵入力・制御指令値(=駆動トルク指令値)・ピッチレイト(制御後)・ヨーレイト(制御後)・ロールレイト(制御後)の対比特性を示すタイムチャートである。
以下、本発明の車体制振制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
実施例1における構成を、「全体システム構成」、「エンジンコントロールモジュールの内部構成」、「車体制振制御装置の入力変換部構成」、「車体制振制御装置の車体振動推定部構成」、「車体制振制御装置のトルク指令値算出部構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は、実施例1の車体制振制御装置が適用されたエンジン車を示す全体システム構成図である。以下、図1に基づき、全体システム構成を説明する。
ここで、「車体制振制御」とは、車両のアクチュエータ(実施例1では「エンジン106」)による駆動トルクを車体の振動に合わせて適切に制御することにより、車体振動を抑制する機能を持つ制御をいう。実施例1の車体制振制御においては、操舵時のヨー応答向上効果、操舵時のリニアリティ向上効果、ロール挙動の抑制効果も併せて得られる。
実施例1の車体制振制御装置が適用されたエンジン車は、図1に示すように、マニュアル変速による後輪駆動車であり、エンジンコントロールモジュール(ECM)101と、エンジン106と、を備えている。
前記エンジンコントロールモジュール101(以下、「ECM101」という。)は、エンジン106の駆動トルク制御を行う。このECM101には、左右前輪102FR,102FL(従動輪)と左右後輪102RR,102RL(駆動輪)に接続された車輪速センサ103FR,103FL,103RR,103RLからの信号と、ステアリングホイール110に接続された操舵角センサ111からの信号と、が入力される。さらに、ブレーキペダルへのドライバ操作量を検出するブレーキストロークセンサ104からの信号と、アクセルペダルへのドライバ操作量を検出するアクセル開度センサ105からの信号と、が入力される。これらの入力信号に応じてエンジン106を駆動するトルク指令値を算出し、トルク指令値をエンジン106へ送る。
前記エンジン106は、ECM101からのトルク指令値に応じた駆動トルクを発生し、発生した駆動トルクは、MT変速機107でドライバのシフト操作に応じて増減速される。MT変速機107で変速された駆動トルクは、シャフト108及びディファレンシャルギア109でさらに変速され、左右後輪102RR,102RLへと伝達され、車両を駆動する。
[エンジンコントロールモジュールの内部構成]
車体制振制御装置は、ECM101内に制御プログラムの形で構成されていて、ECM101内部の制御プログラムをあらわすブロック構成を図2に示す。以下、図2に基づき、ECM101の内部構成を説明する。
前記ECM1101は、図2に示すように、ドライバ要求トルク演算部201と、トルク指令値演算部202と、車体制振制御装置203と、を備えている。
前記ドライバ要求トルク演算部201は、ブレーキストロークセンサ104からのドライバによるブレーキ操作量情報と、アクセル開度センサ105からのドライバによるアクセル操作量情報を入力し、ドライバ要求トルクを演算する。
前記トルク指令値演算部202は、ドライバ要求トルク演算部201からのドライバ要求トルクに車体制振制御装置203からの補正トルク値を加算したトルク指令値と、車載の他システム(例えば、VDCやTCS等)からのトルク要求を入力する。そして、これらの入力情報に基づき、エンジン106への駆動トルク指令値を算出する。
前記車体制振制御装置203は、入力変換部204と、車体振動推定部205と、トルク指令値算出部206と、の3部構成となっている。前記入力変換部204は、走行中に取得される車両からのセンシング情報を車輪入力に変換する。前記車体振動推定部205は、入力変換部204からの各車輪入力と車両モデルを用いて車体のばね上挙動を推定する。前記トルク指令値算出部206は、車体振動推定部205により推定された車体のばね上挙動状態量(バウンス速度、バウンス量、ピッチ速度、ピッチ角度)に基づき、車体のばね上挙動を抑制するように補正トルク値を算出する。
[車体制振制御装置の入力変換部構成]
図3は、車体制振制御装置203の内部を詳細にあらわしたブロック構成を示す。以下、図3〜図11に基づき、3部構成の車体制振制御装置203のうち、入力変換部204の構成を説明する。
前記入力変換部204は、車両からのセンシング情報を、後段の車体振動推定部205で用いる車両モデル307への入力形式(具体的には、車輪に加わるトルクまたは力の次元)に変換する。この入力変換部204は、図3に示すように、駆動トルク変換部301と、ハイパスフィルタ316と、サスストローク算出部302と、上下力変換部303と、車体速度推定部304と、第1旋回抵抗力算出部305と、第2旋回抵抗力算出部306と、切り替え処理部321と、を有する。そして、入力変換部204では、車体振動推定部205への入力として、駆動軸端トルクTwと、前輪上下力Ff及び後輪上下力Frと、前輪旋回抵抗力Fcf及び後輪旋回抵抗力Fcrと、を算出する。
〈駆動軸端トルクTwの算出構成〉
前記駆動トルク変換部301では、ドライバ要求トルク演算部201からのドライバ要求トルクにギア比を積算してエンジン端トルクから駆動軸端トルクTwに変換する。ここで、ギア比は、車輪速(駆動輪の左右平均回転数)とエンジン回転数の比より算出する。このギア比は、MT変速機107とディファレンシャルギア109を合わせた総ギア比となる。
〈前後輪上下力Ff,Frの算出構成〉
前記ハイパスフィルタ316では、車輪速センサ103FR,103FL,103RR,103RLからの車輪速信号のうち、低次の定常成分を除去する。このハイパスフィルタ316としては、安定性が高く、かつ、演算負荷が低い低次フィルタが使用される。
前記サスストローク算出部302では、ハイパスフィルタ処理後の車輪速情報に基づいてサスペンションストローク速度及びサスペンションストローク量を算出する。サスペンションがストロークする際には、図4に示すように、タイヤは前後方向にも変位をもち、この関係性は車両のサスペンションのジオメトリによって決まる。これを図示したものが図5及び図6である。この関係性を線形近似し、前後変位に対する上下変位の係数を前輪と後輪でそれぞれKgeoF,KgeoRとすると、前後輪の上下変位Zf,Zrはタイヤの前後位置xtf,xtrに対して次式の関係となる。
Zf=KgeoF・xtf
Zr=KgeoR・xtr
上式を微分すると、タイヤの前後速度と上下速度の式となるため、この関係を用いてサスペンションストローク速度とサスペンションストローク量を算出する。
前記上下力変換部303では、サスストローク算出部302で算出したサスペンションストローク速度とサスペンションストローク量に対し、ばね係数と減衰係数をそれぞれ積算し、その和をとることで、前輪上下力Ffと後輪上下力Frに変換する。
〈前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrの算出構成〉
前記車体速度推定部304では、車輪速情報のうち、従動輪102FR,102FLの車輪速度平均値を車体速度V(=車速V)として出力する。
前記第1旋回抵抗力算出部305では、車体速度推定部304からの車体速度Vと、操舵角センサ111からの操舵角θを入力し、操舵角θによりタイヤ転舵角δを算出し、車体速度Vと操舵角θと周知の線形2輪モデルの式を用いて、ヨーレイトγと車体スリップ角βvを算出する。そして、ヨーレイトγ、車体スリップ角βv及びタイヤ転舵角δに基づき、ドライバ操舵による第1前輪旋回抵抗力Fcf1と第1後輪旋回抵抗力Fcr1を演算する。すなわち、ヨーレイトγ、車体スリップ角βv及びタイヤ転舵角δに基づき、下記の式を用いて、タイヤ横滑り角である前後輪のタイヤスリップ角βf,βrを算出する。
前輪タイヤスリップ角βfと後輪タイヤスリップ角βrは、
βf=βv+lf・γ/V−δ
βr=βv−lr・γ/V
の式により計算される。但し、lf及びlrは、車体重心から前後車軸までの距離である。
そして、前後輪のタイヤスリップ角βf,βrと前後輪のコーナリングパワーCpf,Cprの積により、前後輪のタイヤ横力Fyf,Fyrを算出する。さらに、前後輪のタイヤスリップ角βf,βrと前後輪のタイヤ横力Fyf,Fyrの積により、第1前輪旋回抵抗力Fcf1と第1後輪旋回抵抗力Fcr1を算出する。
前記第2旋回抵抗力算出部306では、車体速度推定部304からの車体速度Vと、操舵角センサ111からの操舵角θを入力し、図7及び図8に示す車速/操舵角/旋回抵抗力の3次元マップを使用し、第2前輪旋回抵抗力Fcf2と第2後輪旋回抵抗力Fcr2を算出する。
ここで、図7及び図8に示す車速/操舵角/旋回抵抗力の3次元マップは、同じ操舵角であれば車速が高いほど旋回抵抗力が大きく、また、同じ車速であれば操舵角が大きいほど旋回抵抗力が大きくなるというように、横G(=横加速度)の比例関係に近似する特性に基づいて、前輪(図7)と後輪(図8)のそれぞれで設定している。
前記切り替え処理部321では、第1旋回抵抗力算出部305と第2旋回抵抗力算出部306からの算出結果と走行条件(車速条件)に基づき、車体振動推定部205へ出力する前輪旋回抵抗力Fcfと後輪旋回抵抗力Fcrを切り替え処理する。すなわち、走行条件を車速条件とし、車速が中速以上のときの前輪旋回抵抗力Fcfと後輪旋回抵抗力Fcrの決定に第1旋回抵抗力(第1前輪旋回抵抗力Fcf1と第1後輪旋回抵抗力Fcr1)を使用し、車速が低速域のときの旋回抵抗力の決定に第2旋回抵抗力(第2前輪旋回抵抗力Fcf2と第2後輪旋回抵抗力Fcr2)を使用する。
切り替え車速に関しては、図9及び図10に示すように、第2旋回抵抗力から第1旋回抵抗力へ遷移する低速→中速切り替え車速V1と、第1旋回抵抗力から第2旋回抵抗力へ遷移する中速→低速切り替え車速V2(<V1)との間にヒステリシス幅ΔVH(=V1−V2)を持たせている。
そして、切り替え処理部321は、旋回抵抗力の切り替え遷移中の値を、第1旋回抵抗力と第2旋回抵抗力に対して重み付け係数を用いた合成値Fとし、車速Vの変化に応じて滑らかに旋回抵抗力が変化する重み付け切り替え構成とする。
すなわち、旋回抵抗力(合成値F)は、
F=k*Fb+(1−k)*Fa
なお、Fa:第1旋回抵抗力、Fb:第2旋回抵抗力、k:重み付け係数
の式を用い、前輪側と後輪側でそれぞれ算出する。
さらに、切り替え処理部321は、図9及び図10に示すように、重み係数kの車速変化勾配の値を、操舵角速度が小さいほど急な車速変化勾配の値にし、操舵角速度が大きいほど緩やかな車速変化勾配の値にする。
加えて、切り替え処理部321は、図11に示すように、トルク指令値算出部206にて算出されるトルク指令値の絶対値が閾値より小さい時(時刻t1〜t3、時刻t4〜)に旋回抵抗力の切り替えを実行し、トルク指令値の絶対値が閾値以上の時(時刻t3〜t4)に旋回抵抗力の切り替えを実行しない構成としている。
[車体制振制御装置の車体振動推定部構成]
図3は、車体制振制御装置203の内部を詳細にあらわしたブロック構成を示す。以下、図3及び図12に基づき、3部構成の車体制振制御装置203のうち、車体振動推定部205の構成を説明する。
前記車体振動推定部205は、図12に示すように、車両モデル307(「振動モデル」ともいう。)を有する。この車両モデル307は、本システムが搭載される実車(車体、前輪サスペンション、後輪サスペンション等)をモデル化して得られる上下運動方程式とピッチング運動方程式によりあらわしている。そして、入力変換部204で算出した「駆動軸端トルクTw」、「前後輪上下力Ff,Fr」、「前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcr」を車両モデル307に入力する。これにより、車体のばね上挙動状態量(バウンス速度・バウンス量・ピッチ速度・ピッチ角度)の車両モデル307による推定値を算出する。
[車体制振制御装置のトルク指令値算出部構成]
図3は、車体制振制御装置203の内部を詳細にあらわしたブロック構成を示す。以下、図3、図13及び図14に基づき、3部構成の車体制振制御装置203のうち、トルク指令値算出部206の構成を説明する。
前記トルク指令値算出部206は、図3に示すように、補正トルク値の生成処理構成として、第1レギュレータ部308と、第2レギュレータ部309と、第3レギュレータ部310と、第1チューニングゲイン設定部317と、第2チューニングゲイン設定部318と、第3チューニングゲイン設定部319と、加算器320と、を備えている。そして、補正トルク値のアクチュエータ適合処理構成として、リミット処理部311と、バンドパスフィルタ312と、非線形ゲイン増幅部313と、リミット処理部314と、エンジントルク変換部315と、を備えている。
〈補正トルク値の生成処理構成〉
前記第1レギュレータ部308は、制御対象である「トルク入力によるばね上挙動」に対し、ばね上挙動を最小に抑えるレギュレータゲインF1,F2を与える。この第1レギュレータ部308は、「トルク入力によるばね上挙動」に対して、図13に示すように、Trq-dZvゲインF1(バウンス速度ゲイン)と、Trq-dSpゲインF2(ピッチ速度ゲイン)と、を与える。これらのレギュレータゲインF1,F2は、図14に示すように、荷重の安定化に寄与するもので、Trq-dZvゲインF1はバウンス速度を抑制し、Trq-dSpゲインF2はピッチ速度を抑制する。
前記第2レギュレータ部309は、制御対象である「外乱によるばね上挙動」に対し、ばね上挙動を最小に抑えるレギュレータゲインF3〜F6を与える。この第2レギュレータ部309は、「外乱によるばね上挙動」に対して、図13に示すように、Ws-SFゲインF3(前後バランスゲイン)と、Ws-dSFゲインF4(前後バランス変化速度ゲイン)と、Ws-dZvゲインF5(バウンス速度ゲイン)と、Ws-dSpゲインF6(ピッチ速度ゲイン)と、を与える。これらのレギュレータゲインF3〜F6は、図14に示すように、荷重の安定化に寄与するもので、Ws-SFゲインF3は前後荷重変化を抑制し、Ws-dSFゲインF4は前後荷重変化速度を抑制し、Ws-dZvゲインF5はバウンス速度を抑制し、Ws-dSpゲインF6はピッチ速度を抑制する。
前記第3レギュレータ部310は、制御対象である「操舵によるばね上挙動」に対し、操舵による挙動応答性を向上させるレギュレータゲインF7,F8を与える。この第3レギュレータ部310は、「操舵によるばね上挙動」に対して、図13に示すように、Str-dWfゲインF7(前輪荷重変化速度ゲイン)と、Str-dWrゲインF8(後輪荷重変化速度ゲイン)と、を与える。これらのレギュレータゲインF7,F8は、図14に示すように、荷重の付加に寄与するもので、Str-dWfゲインF7は前輪荷重を上乗せし、Str-dWrゲインF8は後輪荷重変動を抑制する。
前記第1チューニングゲイン設定部317は、第1レギュレータ部308からの出力に対し重み付け調整を行うため、図13に示すように、Trq-dZvゲインF1に対しチューニングゲインK1を設定し、Trq-dSpゲインF2に対しチューニングゲインK2を設定する。このチューニングゲインK1,K2は、振動を抑制する正方向の値で、かつ、違和感を与えない前後G変動範囲に含まれる値である。そして、チューニングゲインK1,K2は、予め設定した初期値に対し、車両状態や走行状態やドライバ選択等に応じて重み係数が決定された場合、重み係数との積算によりゲイン補正を可能としている。
前記第2チューニングゲイン設定部318は、第2レギュレータ部309からの出力に対し重み付け調整を行うため、図13に示すように、Ws-SFゲインF3に対しチューニングゲインK3を設定し、Ws-dSFゲインF4に対しチューニングゲインK4を設定し、Ws-dZvゲインF5に対しチューニングゲインK5を設定し、Ws-dSpゲインF6に対しチューニングゲインK6を設定する。このチューニングゲインK3〜K6は、チューニングゲインK1,K2と同様、振動を抑制する正方向の値で、かつ、違和感を与えない前後G変動範囲に含まれる値である。そして、チューニングゲインK3〜K6は、予め設定した初期値に対し、車両状態や走行状態やドライバ選択等に応じて重み係数が決定された場合、重み係数との積算によりゲイン補正を可能としている。
前記第3チューニングゲイン設定部319は、第3レギュレータ部310からの出力に対し重み付け調整を行うため、図13に示すように、Str-dWfゲインF7に対しチューニングゲインK7を設定し、Str-dWrゲインF8に対しチューニングゲインK8を設定する。このチューニングゲインK7,K8は、チューニングゲインK1〜K6と異なり、振動を助長する負方向の値で、かつ、違和感を与えない前後G変動範囲に含まれる値に設定される。そして、チューニングゲインK7,K8は、予め設定した初期値に対し、車両状態や走行状態やドライバ選択等に応じて重み係数が決定された場合、重み係数との積算によりゲイン補正を可能としている。
前記加算器320は、車体振動推定部205で算出された車体のばね上挙動状態量(バウンス速度、バウンス量、ピッチ速度、ピッチ角度)について、制御対象とする挙動毎にレギュレータ処理を行い、これらにチューニングゲインK1〜K8を積算し、その総和をとり、制御に必要な補正トルク値を算出する。この補正トルク値は、チューニングゲインK1,K2による補正トルク値Aと、チューニングゲインK3〜K6による補正トルク値Bと、K7,K8による補正トルク値Cと、を加算した値になる。
〈補正トルク値のアクチュエータ適合処理構成〉
前記リミット処理部311は、加算器320からの補正トルク値に対して、駆動系共振対策として、補正トルク値の絶対値の最大値制限処理を行い、ドライバが前後G変動として感じない範囲のトルクに制限する。
前記バンドパスフィルタ312は、リミット処理部311と同様に駆動系共振対策として、車体のばね上振動成分を抽出すると共に、ばね上共振を抑制するように駆動系共振周波数成分の除去を行う。その理由は、実際の車両、特に、エンジン車などにおいては、駆動トルクに不用意に振動成分を付加すると、駆動系共振と干渉して違和感となる振動が発生することがあることによる。加えて、エンジン車などは、駆動トルク指令に対する応答性の悪さや不感帯があるため、期待した制御効果を十分に得ることができないおそれがあるために必要となる。
前記非線形ゲイン増幅部313は、バンドパスフィルタ312から出力される補正トルク値に対し、アクチュエータ(エンジン106)の応答性対策として、補正トルク値の正負切り替わり領域付近(=アクチュエータの不感帯領域)での補正トルク値の増幅を行う。
前記リミット処理部314は、非線形ゲイン増幅部313から出力される増幅処理後の補正トルク値に対し、最終的なリミット処理を行う。
前記エンジントルク変換部315は、リミット処理部314からのリミット処理後の補正トルク値を、ギア比に応じたエンジン端トルク値に変換し、これを最終の補正トルク値として出力する。
次に、作用を説明する。
実施例1の車体制振制御装置における作用を、「車体制振制御の基本作用」、「車体制振制御処理作用」、「車体制振制御で性能向上を狙うシーンと効果」、「車体制振制御ロジックと車体制振制御効果」、「車速に応じた切り替えによる旋回抵抗力算出作用」、「重み付け切り替え遷移による旋回抵抗力算出作用」に分けて説明する。
[車体制振制御の基本作用]
駆動トルクによる車体制振制御において、具体的にどのようなメカニズムにより車体のばね上挙動がコントロールされるかを理解しておくことが必要である。以下、図15に基づき、これを反映する車体制振制御の基本作用を説明する。
まず、本車体制振制御は、トルク変動や外乱による車体挙動の変化速度を、エンジントルクの補正で抑制し、荷重の安定化と旋回性能の向上を狙う制御である。
そこで、具体的な走行状況として、図15(a)に示すように、停車から発進加速した後、定速状態に入り、その後、減速して停車する場合を例にとる。
停車から発進加速すると、駆動トルクが急増することで、後輪の輪荷重が増加し、前輪の輪荷重が減少するという荷重移動が生じ、車体挙動としては、車体前方側が持ち上がるノーズアップとなる。このとき、図15(a),(b)に示すように、駆動輪である後輪への駆動トルクをダウンさせると、減速時のように車体前方側が沈み込むノーズダウンの挙動を発生させ、荷重移動によるノーズアップと、トルクダウンによるノーズダウンが相殺し、車体挙動が安定する。
発進後、定速状態に入る定常状態では、車体挙動が安定しているため、駆動トルクを補正する制御は行わない。その後、ブレーキ操作等を行って減速停車する場合には、駆動トルクが急減することで、後輪の輪荷重が減少し、前輪の輪荷重が増加するという荷重移動が生じ、車体挙動としては、車体前方側が沈み込むノーズダウンとなる。このとき、図15(a),(b)に示すように、駆動輪である後輪への駆動トルクをアップさせると、加速時のように車体前方側が持ち上がるノーズアップの挙動を発生させ、荷重移動によるノーズダウンと、トルクアップによるノーズアップが相殺し、車体挙動が安定する。
したがって、車体のピッチ角速度の変化をみると、図15(c)に示すように、“制振なし”の点線特性に比べ、“制振あり”の実線特性が車体のピッチ角速度の変化が小さく抑えられることになる。
[車体制振制御処理作用]
実施例1のエンジンコントロールモジュール101にて実行される車体制振制御処理の流れを示すのが図16のフローチャートであり、以下、図16に基づき、車体制振制御処理作用を説明する。
車体制振制御処理を開始すると、ステップS1401では、ドライバ要求トルク演算部201にてドライバ要求トルクが演算される。次のステップS1402では、駆動トルク変換部301にてドライバ要求トルクにギア比を積算してエンジン端トルクから駆動軸端トルクTwに単位変換される。次のステップS1403では、ハイパスフィルタ316にて車輪速センサ103FR,103FL,103RR,103RLの車輪速信号から低次の定常成分を除去するフィルタ処理が行われる。次のステップS1404では、サスストローク算出部302にてハイパスフィルタ処理後の車輪速情報に基づいてサスペンションストローク速度とサスペンションストローク量が算出される。次のステップS1405では、上下力変換部303にてサスペンションストローク速度とサスペンションストローク量が前後輪上下力Ff,Frに変換される。次のステップS1406では、操舵角センサ111により操舵角が検出される。次のステップS1407では、車体速度推定部304にて車体速度Vが算出される。次のステップS1408では、第1旋回抵抗力算出部305にてヨーレイトγと車体スリップ角βv(=車体横滑り角)が算出される。次のステップS1409では、第1旋回抵抗力算出部305にて前後輪のタイヤスリップ角βf,βr(タイヤ横滑り角)が算出される。次のステップS1410では、第1旋回抵抗力算出部305にて前後輪のタイヤ横力Fyf,Fyrが算出される。次のステップS1411では、第1旋回抵抗力算出部305にて第1前後輪旋回抵抗力Fcf1,Fcr1が算出される。次のステップS1423では、第2旋回抵抗力算出部306にて第2前後輪旋回抵抗力Fcf2,Fcr2が算出される。次のステップS1424では、切り替え処理321にて車速変化に対する重み付け切り替え処理により前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrが算出される。以上の処理は、入力変換部204においてなされる。
次のステップS1412では、車体振動推定部205にて、駆動軸端トルクTw,前後輪上下力Ff,Fr,前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrを車両モデル307に入力することで、車体のばね上挙動状態量(バウンス速度、バウンス量、ピッチ速度、ピッチ角度)が算出される。次のステップS1413では、車速等によりチューニングゲインK1〜K8が補正される。次のステップS1414では、第1チューニングゲイン設定部317にてドライバ要求トルクによる振動を抑制する補正トルク値Aが算出される。次のステップS1415では、第2チューニングゲイン設定部318にて外乱による振動を抑制する補正トルク値Bが算出される。次のステップS1416では、第3チューニングゲイン設定部319にて操舵による前後荷重変動を増幅する補正トルク値Cが算出される。次のステップS1417では、補正トルク値Aと補正トルク値Bと補正トルク値Cの和による補正トルク値が出力される。
次のステップS1418では、リミット処理部311にて補正トルク値に対し駆動系共振対策のリミット処理が施される。次のステップS1419では、バンドパスフィルタ312にて補正トルク値に対し駆動系共振成分を除去するフィルタ処理が施される。次のステップS1420では、非線形ゲイン増幅部313にて正負切り替わり領域付近で補正トルク値を増幅する非線形ゲイン処理が行われる。次のステップS1421では、リミット処理部314にて増幅処理後の補正トルク値に対して最終的なリミット処理が行われる。次のステップS1422では、エンジントルク変換部315にて駆動軸端の補正トルク値がエンジン端補正トルク値に単位変換され、これが最終の補正トルク値として出力される。
上記ステップS1401からステップS1422へと進む車体制振制御処理は、所定の制御周期毎に繰り返される。
[車体制振制御で性能向上を狙うシーンと効果]
上記の車体制振制御処理により、実施例1の車体制振制御により性能向上を狙うシーンと効果について、図17に基づき説明する。
実施例1の車体制振制御で性能向上を狙うシーンとその効果は、
(a)車線変更時やS字路等のシーンで、穏やかなロールとリニアリティの良さにより、安定感のあるリニアな旋回性能を得ること。
(b)高速巡航時等のシーンで、修正操舵の少なさやピッチダンピングの良さにより、車両の安定した巡航性能を得ること。
にある。
上記(a)の効果を達成するには、「操舵応答の向上」と「ロール速度の抑制」が必要であり、上記(b)の効果を達成するには、「荷重変動の抑制」が必要である。以下、図17に基づき、車体制振制御により、これらの効果を実現できる理由を説明する。
「操舵応答の向上」は、図17に示すように、操舵時、減速=トルクダウンを行うと、前輪荷重が増加し、前輪タイヤのコーナリングパワーCpが増大し、タイヤ横力が増大することで、操舵応答が向上する。すなわち、コーナリングパワーCpは、輪荷重が大きいほど大きくなるという荷重依存特性を用い、操舵時に輪荷重を増加させることで、「操舵応答の向上」が実現される。
「荷重変動の抑制」は、図17に示すように、例えば、ノーズアップ挙動が発生した場合には、減速=トルクダウンを行うと、車体振動と逆位相の運動(ノーズダウン)が発生し、荷重変動の相殺により、荷重変動が抑制される。一方、ノーズダウン挙動が発生した場合には、加速=トルクアップを行うと、車体振動と逆位相の運動(ノーズアップ)が発生し、荷重変動の相殺により、荷重変動が抑制される。そして、ドライバ入力により振動(荷重変動)が発生した場合も、路面外乱により振動(荷重変動)が発生した場合も、荷重変動が抑制される。すなわち、トルク変動と路面外乱によるピッチ挙動を推定すると、推定したピッチ挙動とは逆位相の駆動トルクで、「荷重変動の抑制」が実現される。
「ロール速度の抑制」は、図17に示すように、上記した「操舵応答の向上」と「荷重変動の抑制」によりヨーレイトのリニアリティが向上する。したがって、ヨーレイトに比例して穏やかな横G変化となり、ロールレイトのピーク値が小さくなって、ロール速度が抑制される。すなわち、「操舵応答の向上」と「荷重変動の抑制」が組み合わされる結果として「ロール速度の抑制」が実現される。
したがって、操舵時には、前輪荷重が増加するよう積極的にノーズダウン挙動を助長することでヨー応答を向上させ、同時に余計な振動成分は抑制することでリニアリティを確保する。そして、これらの制御を同時に行うことで横Gの急変が抑えられるため、ロールレイトを抑制できるという本制御が狙いとする効果(a)を実現できる。
一方、操舵を伴わない直線路の巡航時には、トルク変動と路面外乱によるピッチ挙動を推定し、推定したピッチ挙動とは逆位相の駆動トルクを与えることで、荷重変動が抑制され、車両の安定した巡航性能を得るという本制御が狙いとする効果(b)を実現できる。
[車体制振制御ロジックと車体制振制御効果]
上記車体制振制御で性能向上を狙うシーンと効果を達成する実施例1の車体制振制御ロジックと車体制振制御効果を、図18及び図19に基づき説明する。
まず、実施例1の車体制振制御ロジックは、図18に示すように、ドライバ要求トルク(=駆動軸端トルクTw)、前輪上下力Ff、後輪上下力Fr、前輪旋回抵抗力Fcf、後輪旋回抵抗力Fcrを、車両モデル307に入力する。これにより、車体のばね上挙動状態量であるバウンス速度・バウンス量・ピッチ速度・ピッチ角度を算出する。
そして、車体のばね上挙動状態量のそれぞれに、図18に示すように、バウンス速度・バウンス量・ピッチ速度・ピッチ角度を適正化するレギュレータゲインF1〜F8を掛け合わせ、さらに、調整代となるチューニングゲインK1〜K8を掛け合わせる。
上記処理により制御対象である「トルク入力によるばね上挙動」と「外乱によるばね上挙動」と「操舵によるばね上挙動」のそれぞれについて補正トルク値A,B,Cを得る。そして、各補正トルク値A,B,Cを合算することで、最終の補正トルク値(=図18の制御トルク)とし、ドライバ要求トルクに制御トルクを加算した駆動トルクを得る駆動トルク指令値を、実車のエンジン106に出力する。
ここで、各補正トルク値A,B,Cのうち、補正トルク値Cは、操舵時において、前輪荷重を上乗せするように駆動トルクを補正し、左右前輪102FR,102FLに積極的に輪荷重を乗らせるための補正トルク値である。
したがって、操舵時には、補正トルク値Cにより、前輪荷重が増加するよう積極的にノーズダウン挙動を助長することでヨー応答を向上させ、同時に補正トルク値A,Bにより余計な振動成分は抑制することでリニアリティが確保される。すなわち、ロールレイトを抑制するという本制御が狙いとする効果(a)が、補正トルク値A,Bに補正トルク値Cが加わることで実現される。
一方、上記各補正トルク値A,B,Cのうち、補正トルク値A,Bは、直進路走行中において、駆動トルクの変動や路面外乱にかかわらず、前後荷重変動を安定化し、車体振動を抑制するために補正トルク値である。
したがって、操舵を伴わない直線路の巡航時には、トルク変動と路面外乱によるピッチ挙動やバウンス挙動や前後荷重変化を推定し、補正トルク値A,Bにより、推定したピッチ挙動やバウンス挙動や前後荷重変化とは逆位相の駆動トルクが与えられることで、ピッチ挙動やバウンス挙動(上下挙動)や前後荷重変化が抑制される。すなわち、車両の安定した巡航性能を得るという本制御が狙いとする効果(b)が、補正トルク値A,Bにより実現される。
次に、上記実施例1の車体制振制御ロジックにより狙いとする効果(a),(b)が実現されることの確認を、図19に基づき説明する。なお、図19は、直進走行から操舵したときの対比特性(制御有りが実線特性、制御無しが点線特性)を時系列であらわしている。
車体制振制御では、図19の矢印Jに示すように、(車体振動を抑制する指令トルク)+(操舵応答をコントロールする指令トルク)による制御指令値(=駆動トルク指令値)が出力される。
このため、時刻t1までの直進走行域では、図19の矢印Eに示すように、制御無しに比べ、ピッチレイトが抑制され、車両の安定した走行性能により、乗心地の向上が実現されていることが分かる。
そして、時刻t1以降の操舵過渡領域においては、図19の矢印Fに示すように、ピッチレイトの変化が抑制されていて、適切な荷重移動が実現されていることが分かる。操舵過渡領域のうち、旋回初期においては、図19の矢印Gに示すように、制御無しに比べてヨーレイトが早期に立ち上がり、初期応答性が向上していることが分かる。さらに、操舵過渡領域のうち、旋回後期においては、図19の矢印Hに示すように、制御無しに比べてヨーレイトが緩やかに変化し、旋回巻き込みが抑制されていることが分かる。
そして、操舵過渡領域(旋回初期〜旋回後期)においては、ピッチレイトの変化を抑制する制御と、ヨーレイトの変化を抑制する制御と、を同時に行うことで、横Gの急変が抑えられるため、図19の矢印Iに示すように、制御無しに比べてロールレイトが抑制されていることが分かる。
[車速に応じた切り替えによる旋回抵抗力算出作用]
上記本制御が狙いとする効果(a)を実現するには、走行中のセンシング情報に基づき前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrが精度良く算出されることが前提となる。したがって、走行状態にかかわらず前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrの算出精度を確保する工夫が必要である。以下、これを反映する車速に応じた切り替えによる旋回抵抗力算出作用を説明する。
例えば、線形2輪モデルを用いて操舵角から旋回抵抗力を演算する1つの制御ロジックを用いて旋回抵抗力の算出するものを比較例とする。
この比較例の場合、線形2輪モデルとの近似性が高い中速以上の車速領域では、旋回抵抗力の算出精度が確保される。しかし、線形2輪モデルとの近似性が低下する低速域において、旋回抵抗力の算出精度が低くなる。この結果、低速旋回シーンにおいて、穏やかなロールとリニアリティの良さにより、安定感のあるリニアな旋回性能を実現できないことがある。
これに対し、実施例1では、操舵角信号と車体速信号に基づいて、異なる演算手法により旋回抵抗力を演算する第1旋回抵抗力算出部305及び第2旋回抵抗力算出部306と、両算出部305,306からの算出結果と走行条件(車速条件)に基づき、車体振動推定部205へ出力する前輪旋回抵抗力Fcfと後輪旋回抵抗力Fcrを切り替え処理する切り替え処理部321と、備える構成を採用した。
すなわち、第1旋回抵抗力算出部305においては、車体速度推定部304からの車体速度Vと操舵角センサ111からの操舵角θを入力し、操舵角によりタイヤ転舵角δが算出され、操舵角と線形2輪モデルの式を用いヨーレイトγと車体スリップ角βvが算出される。そして、ヨーレイトγと車体スリップ角βv及びタイヤ転舵角δに基づき、ドライバ操舵による第1前輪旋回抵抗力Fcf1と第1後輪旋回抵抗力Fcr1が演算される。
一方、第2旋回抵抗力算出部306においては、車体速度推定部304からの車体速度Vと操舵角センサ111からの操舵角θを入力し、図7に示す車速/操舵角/旋回抵抗力の3次元マップを使用し、第2前輪旋回抵抗力Fcf2が算出され、図8に示す車速/操舵角/旋回抵抗力の3次元マップを使用し、第2後輪旋回抵抗力Fcr2が算出される。
ここで、「線形2輪モデル」は、左右前輪と左右後輪をそれぞれ1輪とみなし、定常旋回状態における線形特性を模擬した旋回挙動モデルである。しかし、実際の車両の旋回挙動をみると、非線形な特性を含む複雑な挙動であり、特に、操舵角や車速の変化が大きな低速域での旋回時に線形2輪モデルを用いてヨーレイトγと車体スリップ角βvを算出すると、算出値が実際値から乖離する場合がある。これに対し、「車速/操舵角/旋回抵抗力の3次元マップ」は、横Gの比例関係に近似する特性に基づくマップである。このため、低速域旋回時に操舵角や車速の変化に追従でき、線形2輪モデルを用いる場合に比べ、旋回抵抗力の算出精度が高まる。
そして、切り替え処理部321において、第1旋回抵抗力算出部305と第2旋回抵抗力算出部306からの算出結果と車速条件に基づき、車体振動推定部205へ出力する前輪旋回抵抗力Fcfと後輪旋回抵抗力Fcrを切り替え処理される。この切り替え処理は、車速が中速以上のときの前輪旋回抵抗力Fcfと後輪旋回抵抗力Fcrの決定に第1旋回抵抗力(第1前輪旋回抵抗力Fcf1と第1後輪旋回抵抗力Fcr1)が使用される。一方、車速が低速域のときの旋回抵抗力の決定に第2旋回抵抗力(第2前輪旋回抵抗力Fcf2と第2後輪旋回抵抗力Fcr2)が使用される。
すなわち、第1旋回抵抗力算出部305による演算手法では旋回抵抗力の算出精度が低くなる走行条件である低速域旋回に対し、旋回抵抗力の算出精度を確保する演算手法を第2旋回抵抗力算出部306に割り当てることができる。
この結果、車速条件が変化するシーンにおいて、一方の第1旋回抵抗力算出部305による算出精度が低くなる低速域条件のとき、算出精度の確保を他方の第2旋回抵抗力算出部306により分担することで、車速条件の変化にかかわらず旋回抵抗力の算出精度が確保される。そして、この旋回抵抗力(前輪旋回抵抗力Fcfと後輪旋回抵抗力Fcr)を車体振動推定部205へ出力することで、車速条件にかかわらず、本制御が狙いとする安定感のあるリニアな旋回性能(上記効果(a))を実現することができる。
実施例1では、切り替え車速に関して、図9及び図10に示すように、第2旋回抵抗力から第1旋回抵抗力へ遷移する低速→中速切り替え車速V1と、第1旋回抵抗力から第2旋回抵抗力へ遷移する中速→低速切り替え車速V2(<V1)との間にヒステリシス幅ΔVH(=V1−V2)を持たせた構成を採用している。
この構成により、低速から中速へ車速変化するとき、図9に示すように、車速Vが低速→中速切り替え車速V1に達するまでは、第2旋回抵抗力算出部306で算出された第2旋回抵抗力(第2前輪旋回抵抗力Fcf2と第2後輪旋回抵抗力Fcr2)が維持される。その後、中速から低速へ車速変化するときは、図10に示すように、車速Vが中速→低速切り替え車速V2(<V1)に達するまでは、第1旋回抵抗力算出部305で算出された第1旋回抵抗力(第1前輪旋回抵抗力Fcf1と第2後輪旋回抵抗力Fcr1)が維持される。
すなわち、切り替え車速にヒステリシス幅ΔVHを持たせていないとすると、切り替え車速域で車速変化するような旋回シーンの時、第1旋回抵抗力と第2旋回抵抗力が頻繁に切り替え選択されるハンチングを生じ、トルク指令値の変動原因になる。
これに対し、切り替え車速にヒステリシス幅ΔVHを持たせたことで、切り替え車速域で車速変化するような旋回シーンの時、第1旋回抵抗力と第2旋回抵抗力の切り替えハンチングが防止され、トルク指令値の変動が抑制される。
[重み付け切り替え遷移による旋回抵抗力算出作用]
上記のように、実施例1では、第1旋回抵抗力を選択するか第2旋回抵抗力を選択するかを車速により切り替える構成としている。この2つの旋回抵抗力を切り替えるとき、切り替え車速の前後でON/OFF的に切り替えると、車両モデルに入力する旋回抵抗力の値が急変するおそれがあるため、旋回抵抗力の急変を防止する対策が必要である。以下、これを反映する重み付け切り替え遷移による旋回抵抗力算出作用を説明する。
実施例1では、切り替え処理部321として、旋回抵抗力の切り替え遷移中の値を、第1旋回抵抗力Faと第2旋回抵抗力Fbに対して重み付け係数kを用いた合成値Fとし、車速Vの変化に応じて滑らかに旋回抵抗力が変化する重み付け切り替え構成としている。
この構成により、低速から中速へ車速変化するとき、図9に示すように、車速Vが低速→中速切り替え車速V1に達すると、重み付け係数kが、車速Vの上昇にしたがってk=1から徐々に低下してk=0に到達する。つまり、重み付け配分が、第2旋回抵抗力Fbの配分大から徐々に配分が変化して第1旋回抵抗力Faの配分大へと遷移する。
同様に、中速から低速へ車速変化するときは、図10に示すように、車速Vが中速→低速切り替え車速V2(<V1)に達すると、重み付け係数kが、車速Vの低下にしたがってk=0から徐々に上昇してk=1に到達する。つまり、重み付け配分が、第1旋回抵抗力Faの配分大から徐々に配分が変化して第2旋回抵抗力Fbの配分大へと遷移する。
すなわち、第1旋回抵抗力Faと第2旋回抵抗力FbをON/OFF切り替え構成にすると、車速が切り替え車速に達すると、第1旋回抵抗力Faと第2旋回抵抗力Fbとの間で、値が急に切り替えられ、トルク指令値の変動原因になる。
これに対し、第1旋回抵抗力Faと第2旋回抵抗力Fbを重み付け切り替え構成にしたことで、車速変化により切り替え車速V1又はV2に達する旋回シーンの時、前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrの急変が防止され、トルク指令値の変動が抑制される。
実施例1では、切り替え処理部321として、図9及び図10に示すように、重み係数kの車速変化勾配の値を、操舵角速度が小さいほど急な車速変化勾配の値にし、操舵角速度が大きいほど緩やかな車速変化勾配の値にする構成としている。
この構成により、低速から中速へ車速変化するとき、図9に示すように、車速Vが低速→中速切り替え車速V1に達し、操舵角速度が小さいと、重み付け係数kが、車速Vの上昇にしたがってk=1から急な勾配にて低下してk=0に到達する。一方、車速Vが低速→中速切り替え車速V1に達し、操舵角速度が大きいと、重み付け係数kが、車速Vの上昇にしたがってk=1から緩やかな勾配にて低下してk=0に到達する。つまり、第2旋回抵抗力Fbから第1旋回抵抗力Faへの重み付け配分遷移速度が、操舵角速度の大きさにより変化する。
同様に、中速から低速へ車速変化するときは、図10に示すように、車速Vが中速→低速切り替え車速V2(<V1)に達し、操舵角速度が小さいと、重み付け係数kが、車速Vの低下にしたがってk=0から急な勾配にて上昇してk=1に到達する。一方、車速Vが低速→中速切り替え車速V1に達し、操舵角速度が大きいと、重み付け係数kが、車速Vの低下にしたがってk=0から緩やかな勾配にて上昇してk=1に到達する。つまり、第1旋回抵抗力Faから第2旋回抵抗力Fbへの重み付け配分遷移速度が、操舵角速度の大きさにより変化する。
すなわち、第1旋回抵抗力Faと第2旋回抵抗力Fbとの間での重み付け配分遷移速度を操舵角速度にかかわらず一定速度(例えば、操舵角速度大小の中間速度)に設定すると、トルク指令値の変動幅が小さな操舵角速度小のとき、重み付け配分遷移速度が遅過ぎになり、切り替え応答性が低下する。一方、トルク指令値の変動幅が大きな操舵角速度大のとき、重み付け配分遷移速度が早過ぎになり、トルク指令値の変動が残る。
これに対し、第1旋回抵抗力Faと第2旋回抵抗力Fbとの間での重み付け配分遷移速度(車速変化勾配)を操舵角速度に応じて変化させる構成にしたことで、トルク指令値の変動幅が小さな操舵角速度小のとき、切り替え応答性が向上する。一方、トルク指令値の変動幅が大きな操舵角速度大のとき、確実にトルク指令値の変動が抑制される。
実施例1では、切り替え処理部321として、図11に示すように、トルク指令値算出部206にて算出されるトルク指令値の絶対値が閾値より小さい時(時刻t1〜t3、時刻t4〜)に旋回抵抗力の切り替えを実行する。言い換えると、トルク指令値の絶対値が閾値以上の時(時刻t3〜t4)には、旋回抵抗力の切り替えを実行しない構成としている。
この構成により、例えば、低速から中速へ車速変化するとき、図11に示すように、車速Vが低速→中速切り替え車速V1に達する時刻t2から時刻t3まではトルク指令値の絶対値が閾値より小さい。しかし、時刻t3でトルク指令値の絶対値が閾値以上になると、トルク指令値の絶対値が閾値以上である時刻t3〜t4の間は、重み係数kがそのまま保持され、車体振動推定部205へ出力する前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrの値が、固定値による重み係数kにて算出される。なお、トルク指令値の絶対値が閾値以上である間は重み係数kを保持するのは、中速から低速へ車速変化するときも同様に行われる。
すなわち、トルク指令値の絶対値が閾値以上のときにも旋回抵抗力の切り替えを行う構成にすると、旋回抵抗力の切り替えが、トルク指令値の変動をさらに助長してしまう場合がある。
これに対し、トルク指令値の絶対値が閾値以上の時には、旋回抵抗力の切り替えを実行しない構成としたことで、旋回抵抗力の切り替えによりトルク指令値の変動を助長することが抑制される。
次に、効果を説明する。
実施例1の車体制振制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 走行中に取得される車両からのセンシング情報を車輪入力に変換する入力変換部204と、前記車輪入力と車両モデル307を用いて車体のばね上挙動を推定する車体振動推定部205と、前記ばね上挙動の推定結果に基づき駆動トルクの補正を行うトルク指令値算出部206と、を備えた車体制振制御装置において、
前記入力変換部204は、
操舵角信号と車体速信号と線形2輪モデルを用いて第1旋回抵抗力(第1前後輪旋回抵抗力Fcf1,Fcr1)の演算を行う第1旋回抵抗力算出部305と、
操舵角信号と車体速信号と車速/操舵角/旋回抵抗力の3次元マップを用いて第2旋回抵抗力(第2前後輪旋回抵抗力Fcf2,Fcr2)の演算を行う第2旋回抵抗力算出部306と、
前記2つの旋回抵抗力算出部305,306からの算出結果と走行条件に基づき、前記車体振動推定部205へ出力する旋回抵抗力(前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcr)を切り替える切り替え処理部321と、
を備える(図3)。
このため、走行条件が変化する旋回シーンにおいて、走行条件の変化にかかわらず旋回抵抗力(前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcr)の算出精度を確保することができる。
(2) 前記切り替え処理部321は、走行条件を車速条件とし、車速が中速以上のときの旋回抵抗力(前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcr)の決定に前記第1旋回抵抗力(第1前後輪旋回抵抗力Fcf1,Fcr1)を使用し、車速が低速域のときの旋回抵抗力(前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcr)の決定に前記第2旋回抵抗力(第2前後輪旋回抵抗力Fcf2,Fcr2)を使用する(図9,図10)。
このため、(1)の効果に加え、車速条件が変化する走行シーンにおいて、車速条件の変化にかかわらず旋回抵抗力(前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcr)の算出精度を確保することができる。
(3) 前記切り替え処理部321は、前記第2旋回抵抗力(第2前後輪旋回抵抗力Fcf2,Fcr2)から前記第1旋回抵抗力(第1前後輪旋回抵抗力Fcf1,Fcr1)へ遷移する低速→中速切り替え車速V1と、前記第1旋回抵抗力(第1前後輪旋回抵抗力Fcf1,Fcr1)から前記第2旋回抵抗力(第2前後輪旋回抵抗力Fcf2,Fcr2)へ遷移する中速→低速切り替え車速V2との間にヒステリシス幅ΔVHを持たせた(図9,図10)。
このため、(2)の効果に加え、切り替え車速域で車速変化するような旋回シーンの時、トルク指令値の変動原因となる第1旋回抵抗力(第1前後輪旋回抵抗力Fcf1,Fcr1)と第2旋回抵抗力(第2前後輪旋回抵抗力Fcf2,Fcr2)の切り替えハンチングを防止することができる。
(4) 前記切り替え処理部321は、旋回抵抗力の切り替え遷移中の値を、前記第1旋回抵抗力Faと前記第2旋回抵抗力Fbに対して重み付け係数kを用いた合成値Fとし、車速Vの変化に応じて滑らかに旋回抵抗力(前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcr)が変化する重み付け切り替え構成とする(図9,図10)。
このため、(2)又は(3)の効果に加え、車速変化により切り替え車速V1又はV2に達する旋回シーンの時、トルク指令値の変動原因になる旋回抵抗力(前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcr)の急変を防止することができる。
(5) 前記切り替え処理部321は、前記重み係数kの車速変化勾配の値を、操舵角速度が大きいほど緩やかな車速変化勾配の値にする(図9,図10)。
このため、(4)の効果に加え、操舵角速度小による旋回シーンのとき、切り替え応答性を向上しながら、操舵角速度大による旋回シーンのとき、トルク指令値の変動を抑制することができる。
(6) 前記切り替え処理部321は、前記トルク指令値算出部206にて算出されるトルク指令値の絶対値が閾値より小さい時に旋回抵抗力の切り替えを実行し、トルク指令値の絶対値が閾値以上の時に旋回抵抗力の切り替えを実行しない構成とする(図11)。
このため、(1)〜(5)の効果に加え、旋回抵抗力の切り替えにより、トルク指令値算出部206にて算出されるトルク指令値の変動を助長することを抑制することができる。
以上、本発明の車体制振制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、切り替え処理部321として、旋回抵抗力の切り替え遷移中の値を、第1旋回抵抗力Faと第2旋回抵抗力Fbに対して重み付け係数kを用いた合成値Fとし、車速Vの変化に応じて滑らかに前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrが変化する重み付け切り替え構成とする例を示した。しかし、切り替え処理部としては、切り替え車速に達すると、旋回抵抗力を切り替える例としても良い。但し、この場合、例えば、時間経過に応じて前後輪旋回抵抗力を切り替え後の目標旋回抵抗力に向かって徐々に変化させるのが好ましい。
実施例1では、トルク指令値算出部206として、トルク入力による挙動に対する第1チューニングゲイン設定部317と、外乱による挙動に対する第2チューニングゲイン設定部318と、操舵による挙動応答を向上に対する第3チューニングゲイン設定部319と、を備えた例を示した。しかし、トルク指令値算出部としては、少なくとも操舵による挙動応答を向上に対する第3チューニングゲイン設定部を備えたものであれば、1つのチューニングゲイン設定部を備えた例であっても、2つのチューニングゲイン設定部を備えた例であっても、3つ以上のチューニングゲイン設定部を備えた例であっても良い。
実施例1では、車体振動推定部205で推定される車体のばね上挙動として、バウンス速度、バウンス量、ピッチ速度、ピッチ角度であらわされる状態量を用いる例を示した。しかし、車体振動推定部で推定される車体のばね上挙動としては、ピッチ挙動、バウンス挙動、輪荷重変動のいずれか、または、これらの複合による挙動を状態量としても用いる例としても良い。
実施例1では、制御指令値を出力するアクチュエータとして、エンジン106を用いる例を示した。しかし、アクチュエータとしては、動力源としてのモータ、無段変速機、摩擦クラッチ、等のように、駆動系に設けられ、駆動輪へ伝達される駆動トルクを外部からの指令により制御できるものであれば良い。
実施例1では、車体振動推定部205として、車両モデル307を用いて車体のばね上挙動を推定する例を示した。しかし、車体振動推定部としては、車両モデルに相当する1つ又は複数の運動方程式を用いて推定するような例としても良い。
実施例1では、変速機として、手動により変速ギア段を変更するMT変速機107の例を示した。しかし、変速機としては、自動で変速ギア段や変速比を変更する自動変速機の例としても良い。
実施例1では、本発明の車体制振制御装置を、エンジン車に適用する例を示した。しかし、本発明の車体制振制御装置は、ハイブリッド車や電気自動車などに対しても勿論適用することができる。さらに、ハイブリッド車の場合、アクチュエータ(動力源)が異なるエンジン走行モードとモータ走行モードで、車体制振制御装置のトルク指令値算出部における応答性能を切り替えるようにしても良い。
101 エンジンコントロールモジュール(ECM)
102FR,102FL 左右前輪(従動輪)
102RR,102RL 左右後輪(駆動輪)
103FR,103FL,103RR,103RL 車輪速センサ
104 ブレーキストロークセンサ
105 アクセル開度センサ
106 エンジン
107 MT変速機
108 シャフト
109 ディファレンシャルギア
110 ステアリングホイール
111 操舵角センサ
201 ドライバ要求トルク演算部
202 トルク指令値演算部
203 車体制振制御装置
204 入力変換部
205 車体振動推定部
206 トルク指令値算出部
301 駆動トルク変換部
302 サスストローク算出部
303 上下力変換部
304 車体速度推定部
305 第1旋回抵抗力算出部
306 第2旋回抵抗力算出部
307 車両モデル
308 第1レギュレータ部
309 第2レギュレータ部
310 第3レギュレータ部
311 リミット処理部
312 バンドパスフィルタ
313 非線形ゲイン増幅部
314 リミット処理部
315 エンジントルク変換部
316 ハイパスフィルタ
317 第1チューニングゲイン設定部
318 第2チューニングゲイン設定部
319 第3チューニングゲイン設定部
320 加算器
321 切り替え処理部

Claims (6)

  1. 走行中に取得される車両からのセンシング情報を、車体のばね上挙動を推定するときに用いる車両モデルへの入力形式である車輪に加わるトルクまたは力の次元に変換する入力変換部と、前記車輪に加わるトルクまたは力前記車両モデルを用いて車体のばね上挙動を推定する車体振動推定部と、前記ばね上挙動の推定結果に基づき駆動トルクの補正を行うトルク指令値算出部と、を備えた車体制振制御装置において、
    前記入力変換部は、
    操舵角信号と車体速信号と線形2輪モデルを用いて第1旋回抵抗力の演算を行う第1旋回抵抗力算出部と、
    操舵角信号と車体速信号と車速/操舵角/旋回抵抗力の3次元マップを用いて第2旋回抵抗力の演算を行う第2旋回抵抗力算出部と、
    前記2つの旋回抵抗力算出部からの算出結果と走行条件に基づき、前記車体振動推定部へ出力する旋回抵抗力を切り替える切り替え処理部と、
    を備えることを特徴とする車体制振制御装置。
  2. 請求項1に記載された車体制振制御装置において、
    前記切り替え処理部は、走行条件を車速条件とし、車速が中速以上のときの旋回抵抗力の決定に前記第1旋回抵抗力を使用し、車速が低速域のときの旋回抵抗力の決定に前記第2旋回抵抗力を使用する
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
  3. 請求項2に記載された車体制振制御装置において、
    前記切り替え処理部は、前記第2旋回抵抗力から前記第1旋回抵抗力へ遷移する低速→中速切り替え車速と、前記第1旋回抵抗力から前記第2旋回抵抗力へ遷移する中速→低速切り替え車速との間にヒステリシス幅を持たせた
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
  4. 請求項2又は3に記載された車体制振制御装置において、
    前記切り替え処理部は、旋回抵抗力の切り替え遷移中の値を、前記第1旋回抵抗力と前記第2旋回抵抗力に対して重み付け係数を用いた合成値とし、車速の変化に応じて滑らかに旋回抵抗力が変化する重み付け切り替え構成とする
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
  5. 請求項4に記載された車体制振制御装置において、
    前記切り替え処理部は、前記重み係数の車速変化勾配の値を、操舵角速度が大きいほど緩やかな車速変化勾配の値にする
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
  6. 請求項1から5までの何れか1項に記載された車体制振制御装置において、
    前記切り替え処理部は、前記トルク指令値算出部にて算出されるトルク指令値の絶対値が閾値より小さい時に旋回抵抗力の切り替えを実行し、トルク指令値の絶対値が閾値以上の時に旋回抵抗力の切り替えを実行しない構成とする
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
JP2012104543A 2012-05-01 2012-05-01 車体制振制御装置 Active JP5970942B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012104543A JP5970942B2 (ja) 2012-05-01 2012-05-01 車体制振制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012104543A JP5970942B2 (ja) 2012-05-01 2012-05-01 車体制振制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013231403A JP2013231403A (ja) 2013-11-14
JP5970942B2 true JP5970942B2 (ja) 2016-08-17

Family

ID=49678059

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012104543A Active JP5970942B2 (ja) 2012-05-01 2012-05-01 車体制振制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5970942B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6024185B2 (ja) * 2012-05-01 2016-11-09 日産自動車株式会社 車体制振制御装置
JP6028383B2 (ja) * 2012-05-01 2016-11-16 日産自動車株式会社 車体制振制御装置
JP6264047B2 (ja) * 2014-01-10 2018-01-24 日産自動車株式会社 車体制振制御装置
JP6274139B2 (ja) 2015-03-21 2018-02-07 トヨタ自動車株式会社 車両の制振制御装置

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2518448B2 (ja) * 1990-05-18 1996-07-24 三菱自動車工業株式会社 車両の出力制御装置
JP2002147278A (ja) * 2000-11-15 2002-05-22 Honda Motor Co Ltd 車両における駆動トルク推定方法
JP4356305B2 (ja) * 2002-11-19 2009-11-04 株式会社デンソー 車両制御装置
JP5056367B2 (ja) * 2007-11-20 2012-10-24 トヨタ自動車株式会社 車両の制振制御装置
JP5488203B2 (ja) * 2010-05-31 2014-05-14 日産自動車株式会社 車両の制振制御装置
JP5540894B2 (ja) * 2010-05-31 2014-07-02 日産自動車株式会社 車両の制振制御装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013231403A (ja) 2013-11-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5716846B2 (ja) 車体制振制御装置
JP5929584B2 (ja) 車体制振制御装置
JP6010985B2 (ja) 車体制振制御装置
JP5935550B2 (ja) 車体制振制御装置
JP5858055B2 (ja) 車体制振制御装置
JP5724523B2 (ja) 車体振動制御装置、および車体振動制御方法
JP5970942B2 (ja) 車体制振制御装置
JP6024185B2 (ja) 車体制振制御装置
JP2014144681A (ja) 車両用駆動力制御装置
JP5983000B2 (ja) 車体制振制御装置
JP3788266B2 (ja) 車両用走行制御装置
JP2013179728A (ja) 車体制振制御装置
JP6028383B2 (ja) 車体制振制御装置
JP2013203097A (ja) 車体制振制御装置
JP5929579B2 (ja) 車体制振制御装置
JP6019829B2 (ja) 車体制振制御装置
JP6201306B2 (ja) 車両の制駆動力制御装置
JP7145993B2 (ja) 車両制御装置
JP6010984B2 (ja) 車体制振制御装置
JP5942643B2 (ja) 車体制振制御装置
JP6186709B2 (ja) 車両の制駆動力制御装置
CN102729992A (zh) 车体振动控制装置以及车体振动控制方法
JP6028423B2 (ja) 車体制振制御装置
JP7260360B2 (ja) 走行制御装置
Feng et al. Torque vectoring control for distributed drive electric vehicle based on state variable feedback

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150325

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160115

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160126

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160322

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20160322

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160614

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160627

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5970942

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151