以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1ないし図6に示す本発明の第1実施形態を示している。なお、本実施形態は、本発明に係る車両用制御装置をハイブリッド車両の走行駆動システムに装備したものである。ただし、本発明は、走行駆動用の動力源となる原動機を電動機のみで構成した電気自動車や他の方式のハイブリッド車両(例えば、シリーズタイプのハイブリッド車両)であってもよいことはいうまでもない。
図1に示すように、本実施形態の車両用制御装置を装備するハイブリッド車両1は、要求出力に応じて制御される走行駆動用の原動機として、内燃機関であるエンジン10と、それぞれ発電可能な電動機であるモータジェネレータ(以下、単にモータという)MG1、MG2とを含む、ハイブリッド駆動装置20を備えている。
このハイブリッド駆動装置20は、車両用制御装置30によって制御され、エンジン10およびモータMG1、MG2のうち少なくとも1つから出力される動力に応じて、ハイブリッド車両1を走行駆動する走行駆動力を発生させることができる。
エンジン10は、多気筒の内燃機関、例えば4サイクルのガソリンエンジンである。また、モータMG1、MG2は、それぞれ変速機ケース5(詳細図示せず)の内部に収納されており、変速機ケース5はエンジン10に締結されている。
モータMG1、MG2は、それぞれ永久磁石同期発電電動機として構成され、供給される電力を回転動力に変換して出力する電動機の機能と、入力された回転動力を電力に変換して出力する発電機の機能とを併有している。また、モータMG1は主に発電機として用いられ、モータMG2は主に電動機として用いられるようになっている。
具体的には、モータMG1は、複数の永久磁石をそれぞれ略V字型に配置してリラクタンストルクを利用可能にした内部磁石型のロータ51と、3相コイルが巻回されたステータ53とを有しており、ステータ53がインバータ61から交流電力の供給を受けて回転磁界を形成するとき、その回転磁界によってロータ51が回転するようになっている。同様に、モータMG2は、複数の永久磁石をそれぞれ略V字型に配置してリラクタンストルクを利用可能にした内部磁石型のロータ52と、3相コイルが巻回されたステータ54とを有しており、ステータ54がインバータ62から交流電力の供給を受けて回転磁界を形成するとき、その回転磁界によってロータ52が回転するようになっている。また、モータMG1、MG2には、それぞれロータ51、52の回転角位置を検出する図示しないレゾルバが設けられている。
ハイブリッド駆動装置20は、エンジン10およびモータMG1、MG2のうち少なくとも1つから出力される回転動力を、動力分割統合機構40および減速機構70を介して差動機構80に伝達し、差動機構80から左右のドライブシャフト3を介して左右の走行駆動車輪2に差動可能に動力伝達できる。そして、左右の走行駆動車輪2は、その伝達動力に応じてハイブリッド車両1の走行駆動力を発生させるようになっている。
すなわち、ハイブリッド駆動装置20は、エンジン10およびモータMG1、MG2に加え、原動機出力に応じた走行駆動力を発生させる動力伝達機構として、動力分割統合機構40、減速機構70および差動機構80を含んだ構成となっている。
動力分割統合機構40は、第1および第2の遊星歯車機構40a、40cと、両遊星歯車機構40a、40cに共通の出力要素40bと、によって構成されており、エンジン10からの動力を走行駆動用と発電用の動力に分割したり、エンジン10およびモータMG1、MG2のうちいずれか1つまたは複数からの原動機出力を統合して出力したりする機能を有している。
第1の遊星歯車機構40aは、エンジン10からの回転動力を、発電機モードのモータMG1を駆動する動力と、ハイブリッド車両1の走行駆動のために減速機構70側に出力される動力とに分割することができる動力分割機能を有している。また、モータMG1が電動機モードで動作するときには、その動力を減速して出力する機能を併有している。
この第1の遊星歯車機構40aは、図示しないダンパ要素を介してエンジン10の機関出力軸12に結合された入力要素としての第1プラネタリキャリア44と、モータMG1のロータ51に結合された入出力要素としての第1サンギヤ42と、第1プラネタリキャリア44に自転可能に支持されて第1サンギヤ42の周りを公転することができる複数の第1プラネタリピニオン43と、これら第1プラネタリピニオン43が内接噛合する出力要素としての第1リングギヤ45aと、によって構成されている。
第2の遊星歯車機構40cは、電動機モードのモータMG2が出力した回転動力を減速してその出力トルクを増大させる減速機能を有しており、動力分割用の遊星歯車機構40aと同一の回転中心軸線上に配置されている。また、モータMG2が発電機モードで動作するときには、出力要素40b側からの動力をモータMG2に取り込む機能を併有している。
この第2の遊星歯車機構40cは、モータMG2のロータ52に結合された入出力要素としての第2サンギヤ46と、変速機ケース5に支持された固定要素としての第2プラネタリキャリア47と、第2プラネタリキャリア47に自転可能に支持された複数の第2プラネタリピニオン48と、これら第2プラネタリピニオン48が内接噛合する出力要素としての第2リングギヤ45cと、によって構成されている。そして、この第2リングギヤ45cが第1の遊星歯車機構40aの第1リングギヤ45aと一体に結合されて環状の出力要素40bが構成され、その出力要素40bにカウンタドライブギヤ49が装着されている。
減速機構70は、例えばカウンタドライブギヤ49に噛合するカウンタドリブンギヤ74と、カウンタドリブンギヤ74に一体に結合するファイナルドライブギヤ78とを含んで構成されている。また、差動機構80は、ファイナルドライブギヤ78に噛合するリングギヤ82を有し、リングギヤ82に伝達される動力を左右のドライブシャフト3に差動可能に出力する公知のものである。なお、走行駆動車輪2の近傍には、車速センサ102として機能する車輪速センサ(詳細図示せず)が設けられている。
一方、ハイブリッド駆動装置20の出力を制御する車両用制御装置30は、モータECU60、インバータ61、62、HVECU100、アクセルポジションセンサ101、車速センサ102、EV走行選択スイッチ103、エコスイッチ104、ハイブリッド駆動用の二次電池105、昇圧コンバータ106、電池ECU107および図示しないスキッド制御ECU等を含んで構成されている。
モータECU60は、インバータ61、62を介してモータMG1、MG2を制御するための制御プログラムを有しており、HVECU100からのトルク指令値に応じて作動する。このモータECU60は、モータMG1、MG2の電動機としての出力トルクや回転速度あるいは発電機出力を、指令値に応じて制御するようになっている。また、モータECU60は、例えばモータMG1、MG2の内部磁石型のロータ51、52内の永久磁石の回転位置と両ロータ51、52の回転速度とを、前記レゾルバの検出信号を基に把握して、モータMG1、MG2を高効率に制御できるようになっている。さらに、モータECU60は、モータMG1、MG2のいずれかによってエンジン10を始動させる場合に、その始動に必要な電力量を算出できるようになっている。
インバータ61、62は、モータMG1、MG2に対応して設けられ、ハイブリッド駆動用の二次電池105の電圧を高電圧に昇圧させる昇圧コンバータ106と協働して、高電圧の電流とモータMG1、MG2の3相交流の間の変換を行う機能を有している。これら複数のインバータ61、62では、モータECU60からの指令値に応じて所定範囲内の任意の電圧と周波数でモータMG1、MG2に駆動電流を供給できる。また、各インバータ61、62では、対応するモータMG1またはMG2で発電された交流電流を二次電池105に充電するための直流電流に変換することができるようになっている。なお、モータMG1、MG2に対するこのようなインバータ61、62を介した電力供給や電力回収は、モータECU60およびHVECU100により制御される。
アクセルポジションセンサ101は、ハイブリッド車両1に装備された図示しないアクセルペダルの操作量に対応する信号を、運転者からの要求アクセル開度Accとして出力するものである。車速センサ102は、例えば公知の車輪速センサで構成される。
また、EV走行選択スイッチ103は、ハイブリッド駆動装置20のモータMG1、MG2のうちいずれか一方の電動機出力のみでハイブリッド車両1を走行させる電気自動車モードを選択したり、その選択状態を解除したりすることができるスイッチであり、運転者によってその選択状態(ON状態)と選択解除状態(OFF状態)とに操作される。
ハイブリッド駆動用の二次電池105は、ハイブリッド車両1の発進時や加速時、登坂時等に電動機モードで作動するモータMG1、MG2のいずれかに電力を供給する一方、発電機モードで作動するモータMG1、MG2のいずれかからの発電電力(例えば、減速時の回生発電電流)によって充電され、蓄電することができるようになっている。
電池ECU107は、電源監視プログラムを有しており、二次電池105の電圧、電流および温度を表す電源監視情報をHVECU100に出力できるようになっている。
HVECU100は、ハイブリッド駆動システム制御用の電子制御ユニットである。このHVECU100は、原動機であるエンジン10およびモータMG1、MG2を要求出力に応じて作動するように統合制御する統合制御プログラムを内蔵している。なお、ここにいう要求出力(要求パワー)とは、運転者のアクセルペダル操作量等に応じた要求出力、もしくはクルーズコントロール等の他の走行制御機能から要求される要求出力、またはそのような複数の要求出力に基づいて算出される要求出力である。
HVECU100は、その詳細なハードウェア構成を図示しないが、例えばCPU、ROM、RAMおよび書換え可能な不揮発性メモリを備えるとともに、A/D変換器を有する入力インターフェース回路、ドライバやリレースイッチを有する出力インターフェース回路、他の車載ECUとの間でデータ通信を行う通信ポート等を含んで構成されている。ROMおよび書換え可能な不揮発性メモリ(以下、ROM等という)には、例えば各種制御を実行するための制御プログラムが格納されるとともに、各種のマップや設定値データ等が格納されている。
このHVECU100は、例えば運転者のアクセルペダル操作量に対応するアクセルポジションセンサ101からの要求アクセル開度Accと、車速センサ102からの車速信号、エンジン10内の図示しないクランク角センサからのエンジン回転数信号等を検出するとともに、エコスイッチ104からの燃費優先走行モードの選択信号(ON信号)またはその選択後の解除信号(OFF信号)を入力するようになっている。また、HVECU100は、例えば図示しないスキッド制御ECUからの駆動力分割比(エンジン10からの走行駆動のための配分動力と発電機作動時のモータMG1またはMG2への配分動力との比率)の要求値とを入力する。
そして、これらの入力情報を基に、HVECU100は、ハイブリッド駆動装置20のトータル出力値と、エンジン10に要求されるパワー指令値およびエンジン回転数と、モータMG1、MG2へのトルク指令値等を算出して、パワー指令値およびエンジン回転数指令値を内蔵するエンジンECUに出力するとともに、トルク指令値をモータECU60に出力するようになっている。
また、HVECU100は、電池ECU107からの電源監視情報に基づき、ハイブリッド駆動用の二次電池105の放電量および回生量を常時把握して、二次電池105の全電池容量に対する充電量比率に相当するSOC(State Of Charge)[%]を算出し、そのSOCの変動範囲を二次電池105の信頼性および寿命の面等から設定された所定の利用変動範囲内に制限するようになっている。
加えて、HVECU100は、前記スキッド制御ECUと協働して、左右の走行駆動車輪2の回転速度を検出する車輪速センサ等の検出情報を基に、低μ路でのタイヤスリップ等により駆動力が急変し始めるときには、モータMG1、MG2のトルク指令値を変化させ、アクセルペダル操作等による要求出力に応じた駆動力を路面に伝えるトラクション制御を実行するようになっている。
HVECU100に内蔵されるエンジンECUは、前記パワー指令値および各種センサ情報を基にエンジン10の出力を制御するための制御プログラムやマップを有している。このエンジンECUは、パワー指令値を入力すると、そのパワー指令値に対応するエンジン出力が得られるスロットル開度と、燃料噴射時間(燃料噴射量および噴射期間)および点火時期とを、マップおよび各種センサ情報を基に算出するようになっている。そして、エンジンECUは、入力されたパワー指令値に応じて、図示しない電子制御スロットル弁、インジェクタおよびイグニッションコイルに対して制御信号を出力するようになっている。また、このエンジンECUは、ハイブリッド駆動装置20がエンジン10のみの動力で走行駆動力を発生させるときには、ROM等に格納されたエンジン10の機関回転速度および機関負荷に対して燃料消費率や機関出力の値を特定可能な機関性能マップ等に基づいて、エンジン10を最適燃費に近い動作点に制御するようになっている。
ところで、エコスイッチ104は、HVECU100に対して、ハイブリッド駆動装置20の単位走行距離当りのエネルギ消費量を低減させることを通常より優先する走行駆動制御を要求する燃費優先走行モードの選択用および選択解除用のスイッチとして設けられている。
このエコスイッチ104は、運転者により押下操作されるボタンスイッチとして、その押下操作が可能な場所に設けられている。そして、エコスイッチ104は、その押下操作により、燃費優先走行モードの選択状態であるON状態と、燃費優先走行モードの非選択状態であるOFF状態とに切り替えられるようになっている。エコスイッチ104のON状態とOFF状態は、燃費優先走行モードの選択信号またはその選択後の解除信号(非選択信号)として、HVECU100に取り込まれる。そして、HVECU100は、エコスイッチ104のON状態である燃費優先走行モードの選択信号を検出した場合、運転者が燃費優先の走行モードを要求しているものと判断するようになっている。
すなわち、エコスイッチ104は、要求出力に応じて制御されるときのハイブリッド駆動装置20のエネルギ消費量が相対的に相違する通常走行モード(第1の走行制御モード)および燃費優先走行モード(第2の走行制御モード)のうち、任意の走行制御モードを選択可能なモード選択部となっている。ここで、燃費優先走行モードは、要求出力に応じて制御されるときのハイブリッド駆動装置20のエネルギ消費量が通常走行モードより少なくて済むような制御が実行される走行モードである。
ここで、要求出力に応じて制御されるときのハイブリッド駆動装置20のエネルギ消費量が小さくて済む条件は、ハイブリッド駆動装置20における原動機のエネルギ効率が高く損失が少ない運転条件下で、動力分割統合機構40、減速機構70および差動機構80等の動力伝達機構を含む走行駆動系全体(パワートレーン)が高効率に走行駆動力を出力可能な高効率出力点を設定できる条件である。この高効率出力点の設定条件は、ハイブリッド車両1についての予めの走行駆動試験の結果に応じて決定され、例えばハイブリッド駆動装置20の適合調整時にROM等に記憶・格納される。
一方、HVECU100は、要求アクセル開度Acc等に基づいて算出される要求出力が予め設定された判定時間内において一定の変動幅内に保持されるとき、ハイブリッド駆動装置20の燃料消費量を抑える(燃料消費率(km/L)や電力消費率(Km/kWh)を向上させる)ために、ハイブリッド駆動装置20を断続運転させながらハイブリッド車両1を走行させることができるようになっている。
ここでの断続運転とは、ハイブリッド駆動装置20からの走行駆動力の出力によってハイブリッド車両1を加速する加速走行と、その加速後のハイブリッド車両1を惰性で走行させる惰性走行とを、交互に実行させるように走行駆動力を制御する運転である。
また、ここにいう要求出力の一定の変動幅とは、運転者の要求出力が略一定レベルに保持されていると判断できる程度にその要求出力の変動量が少なく、一定時間当りの要求出力の変化量の絶対値(変化率)が予め設定された閾値変化率(例えば、数秒以上の一定時間内に車速が時速で数km/hだけ増加または減少する程度の要求出力の変化率)以下にとなる範囲を意味する。
より具体的には、HVECU100は、アクセルポジションセンサ101からの要求アクセル開度Acc(運転者の要求出力)やその時点での車速その他の車両の走行状態に関する各種センサ情報を基に、ハイブリッド駆動制御の周期毎に目標車速を設定する。
そして、ハイブリッド駆動装置20を断続運転させながらハイブリッド車両1を低燃費走行させる断続運転制御を実行するに際して、HVECU100は、まず、目標車速が、ハイブリッド駆動装置20の出力を断続させながらハイブリッド車両1を低燃費で走行させ得る車速域として予め設定された断続運転可能車速域、例えば中低速で市街地を走行する場合のような車速域内に入るか否かを判定する。
目標車速がその断続運転可能車速域内に入り、かつ、要求出力が予め設定された判定時間内において前記一定の変動幅内に保持されると判定されることを条件に、ハイブリッド駆動装置20を断続運転させるようになっている。
ハイブリッド駆動装置20の断続運転は、例えばエンジン10およびモータMG1、MG2のうち少なくともいずれか1つの原動機、例えば電動機モードのモータMG2を断続的に作動させることによって実行される。
すなわち、モータMG2を電動機モードで断続運転させることで、ハイブリッド駆動装置20の出力を断続させる場合、HVECU100は、ハイブリッド駆動装置20のモータMG2を原動機として走行駆動力を発生させてハイブリッド車両1を加速(惰性走行後の速度回復時を含む)させる駆動出力状態と、モータMG2の出力を停止させてハイブリッド車両1を惰性(慣性)で走行させる出力停止状態とを交互に実行させる。したがって、ハイブリッド車両1は、ハイブリッド駆動装置20の駆動出力状態下で加速する加速走行と、ハイブリッド駆動装置20の出力停止状態(モータMG1、MG2のいずれか一方または双方の空転状態を含む)の下で惰性により走行する惰性走行とを繰り返しつつ、目標車速を含む許容変動幅内で走行することになる。
また、HVECU100は、例えばハイブリッド駆動用の二次電池105の蓄電量(SOC)が不足している場合や要求出力が所定値を超える大きな要求出力値である場合は、断続運転可能車速域内において、モータMG2を原動機モードで断続運転させるとともに、その断続運転の開始時にモータMG1、MG2を共に電動機モードで同方向に作動させてエンジン10を始動させ、モータMG2だけでなくエンジン10をも断続運転させることができるようになっている。
すなわち、HVECU100は、ハイブリッド駆動装置20に、エンジン10およびモータMG2からの動力により走行駆動力を発生させてハイブリッド車両1を加速させる駆動出力状態と、エンジン10およびモータMG2の出力を停止させてハイブリッド車両1を惰性(慣性)で走行させる出力停止状態とを交互に実行させることができる。
したがって、この場合にも、ハイブリッド車両1は、ハイブリッド駆動装置20の駆動出力状態下で加速する加速走行と、ハイブリッド駆動装置20の出力停止状態下で惰性により走行する惰性走行とを繰り返しつつ、目標車速を含む許容変動幅内で走行することができる。
より具体的には、図4(a)に示すように、HVECU100は、例えば現在の検出車速に近い目標車速V1Sが断続運転可能車速域内に入っており、かつ、要求アクセル開度Acc等に基づく運転者の要求パワー[kW]が略一定に保持されていると判定した時点(以下、断続開始時点という)T0から、ハイブリッド駆動装置20の断続運転(同図中の基準制御)を開始させる。そして、その断続運転の開始に際し、目標車速V1Sに対して車速変化がさほど感じられない通常許容レベルの速度変動幅に相当する制御速度範囲VR1を設定するようになっている。
また、HVECU100は、断続開始時点T0で、例えばモータMG2(あるいはモータMG2およびエンジン10)からの出力を停止させ、走行中のハイブリッド車両1を惰性(慣性)で走行させ、その車速を制御速度範囲VR1の下限車速である停止終了車速V1Lまで低下させる。なお、図4(a)では、断続開始時点T0での車速を一例として目標車速V1Sよりわずかに大きい車速で例示しているが、これに限られないことはいうまでもない。
車速センサ102の検出車速が停止終了車速V1Lに達すると、出力停止状態を解除し、モータMG2(あるいはモータMG2およびエンジン10)から出力値Pm1の動力を出力させて、所定の加速走行の持続時間tm1の間、ハイブリッド駆動装置20により走行駆動力を発生させてハイブリッド車両1を加速させる(駆動出力状態)。さらに、その加速によって車速センサ102の検出車速が制御速度範囲VR1の上限車速である加速終了車速V1Hに達すると、モータMG2(あるいはモータMG2およびエンジン10)からの出力を停止させて所定の惰性走行の持続時間t1だけハイブリッド車両1を惰性(慣性)で走行させる(出力停止状態)。
HVECU100は、目標車速が断続運転可能車速域内に入っており、かつ、要求アクセル開度Acc等に基づく運転者の要求パワーが略一定に保持されている期間中、ハイブリッド駆動装置20を上述のような駆動出力状態と出力停止状態とを交互に繰り返す断続運転状態にする。
この断続運転状態では、加速終了車速V1Hにおいてハイブリッド駆動装置20からの出力を停止させ、ハイブリッド車両1の車速が制御速度範囲VR1の加速終了車速V1Hから停止終了車速V1Lに低下するまで、モータMG2やエンジン10からの出力は停止されるから、その停止期間中におけるハイブリッド駆動装置20の電力消費量や燃料消費量はゼロとなる。一方、停止終了車速V1Lにおいてハイブリッド駆動装置20からの出力(同図中のモータ出力)を再開させ、ハイブリッド車両1の車速を制御速度範囲VR1の停止終了車速V1Lから加速終了車速V1Hに上昇させるときのハイブリッド駆動装置20の出力値Pm1は、目標車速V1Sに対応するモータ出力よりわずかに高い出力値となり、モータMG2の電力消費量はさほど増加することがなく、エンジン10の燃費もさほど変化しないか、むしろ向上する。
したがって、上述のようなハイブリッド駆動装置20の断続運転を実行する場合、ハイブリッド駆動装置20を用いて目標車速V1Sで定速走行させる場合に比べて、ハイブリッド駆動装置20の電力消費量や燃料消費量は少なくて済み、ハイブリッド車両1の低燃費走行が可能となる。
図2は、モータMG2(あるいはモータMG1)が電動機モードで作動するときのモータ性能の一例を示している。
この図2に示すように、モータMG2は、出力回転数であるロータ52の回転数[rpm]が低い段階ではトルク(軸トルク)が大きく、回転数の上昇に応じて出力(軸出力)を増加させる特性となっている。また、その出力回転数が或る回転数n1を超えると、軸トルクの低下によって軸出力が増加できなくなり、回転数n2を超える回転数になると、軸出力が急に低下するといったような特性を有している。モータMG1についても略同様である。したがって、モータMG1、MG2は、それらの動作点が前記中低速程度の比較的低回転数側にあるとき、回転数が多少大きくなる程度であれば、エネルギ消費効率が比較的良好で、損失が少ない動作点で使用できる。
HVECU100のROM等には、モータMG1、MG2の上述のようなモータ性能に基づいて作成されたそれぞれの基準損失マップとして、図3(a)および図3(b)に示すマップが記憶・格納されている。両図において、縦軸はトルク(軸トルク)、横軸は回転数である。また、図3(a)においては、モータMG1の動作領域が、トルクと回転数で特定されるとともにそのモータ効率に応じて段階的に区分された複数の動作領域R11、R12、R13、R14に分かれている。図3(b)においては、モータMG2の動作領域が、トルクと回転数で特定されるとともにそのモータ効率に応じて段階的に区分された複数の動作領域R21、R22、R23、R24に分かれている。
これら図3(a)および図3(b)に示すように、モータMG1、MG2は、回転数が小さい低速の動作領域では、トルクが小さい動作領域ほど低損失となり、回転数が大きい高速の動作領域では、回転数が低い動作領域ほど低損失となる傾向がある。
一方、HVECU100は、ROM等に予め格納された制御プログラムに従って、図3(a)および図3(b)に示すような基準損失マップ、さらには上述したエンジン10の機関性能マップ等に基づき、断続運転条件変更部としての機能を発揮するようになっている。
すなわち、HVECU100は、エコスイッチ104により燃費優先走行モードが選択されたとき、ハイブリッド駆動装置20の断続運転によるハイブリッド車両1の低燃費走行の条件(断続運転の条件)を、通常走行モード選択中に設定される第1の断続運転条件下よりもハイブリッド駆動装置20のエネルギ消費量を低下させることができる第2の断続運転条件に変更するようになっている。
具体的には、HVECU100は、断続運転条件変更部として機能するとき、エコスイッチ104により第2の走行制御モードが選択されたことを条件として、加速走行中におけるモータMG2(あるいはモータMG2およびエンジン10)からの出力値と断続運転の実行期間中における加速走行の持続時間とのうち少なくとも一方を、エネルギ消費量が低下する側に変更するようになっている。
ここにいうエネルギ消費量が低下する側とは、断続運転の実行期間中におけるハイブリッド駆動装置20の出力値または加速走行の持続時間の変化の方向であって、ハイブリッド駆動装置20が断続運転中の駆動出力状態にあるときのエネルギ消費量を低下させ得る方向である。具体的には、例えば同一要求出力に対してハイブリッド車両1を通常走行モードで走行させるときよりもハイブリッド駆動装置20の出力値を増加させる方がより高効率に出力可能であれば、エネルギ消費量が低下する側とは、ハイブリッド駆動装置20の出力値を通常走行モードの選択下におけるよりも大きい出力値に増加させる側である。あるいは、同一要求出力に対してハイブリッド車両1を通常走行モードで走行させるときよりも断続運転中における加速走行の持続時間を短くする方がより高効率に出力可能であれば、エネルギ消費量が低下する側とは、断続運転中における加速走行の持続時間を短い時間に減少させる側である。
また、加速走行の持続時間を、加速走行中のハイブリッド駆動装置20の出力値の増加率に応じて通常走行モードの選択下におけるよりも短い持続時間に変更すれば、加速走行中の駆動出力状態におけるハイブリッド駆動装置20の総出力を変化させることなく、ハイブリッド駆動装置20をより低損失の動作点で動作させることができる。
より具体的には、図4(a)および図4(b)に示すように、HVECU100は、エコスイッチ104により第2の走行制御モードが選択されたことを条件として、ハイブリッド駆動装置20をより高効率・低損失となる動作点で操作させるべく、モータMG2(あるいはモータMG2およびエンジン10)の出力値を、通常走行モード時の断続運転条件の一部である出力値Pm1から、この出力値Pm1に対し所定の増加率(>1)をかけて増加させた出力値Pm2に変更する。また、HVECU100は、断続運転の実行期間中における加速走行の持続時間を、通常走行モード時の断続運転条件の一部である加速走行の持続時間tm1から、この持続時間tm1に対し所定の減少率(<1)をかけて減少させた加速走行の持続時間tm2に変更するようになっている。なお、この場合、通常走行モード時の制御速度範囲VR1と燃費優先走行モード時の制御速度範囲VR2とは、同一の速度範囲として設定される。
また、HVECU100は、出力値Pm2を設定するに際して基準損失マップや機関性能マップを参照し、出力値Pm2を前記増加率に対応する所定の出力差ΔPmの範囲(ΔPm>|Pm1−Pm2|となる範囲)内で探索し、設定するようになっている。これにより、例えば図3(b)中に黒丸で示す出力値Pm1の動作点から同図中に白丸で示す出力値Pm2の動作点への移行(点線の矢印で示す)のように、燃費優先走行モード下で使用される出力値Pm2の動作点が、通常走行モード下で使用される出力値Pm1の動作点よりもモータMG2の効率が高く低損失となる動作領域内に設定され得ることになる。
なお、ここでの原動機の出力値の増加率(Pm2/Pm1)は、ハイブリッド車両1の車速値(目標車速)に応じて、車速が高速になるほどその増加率が増加するよう段階的にまたは無段階に変化する増加率として設定されている。また、ここでの原動機出力の増加率や加速走行の持続時間の短縮率等の変化率は、予めの実験結果等を基に、車速や騒音環境等の変化に対して運転者や他の乗員が違和感や不快感を持ち難い範囲内で設定される。
さらに、HVECU100は、ハイブリッド車両1の減速時に、走行駆動車輪2からハイブリッド駆動装置20に伝達される動力を、モータMG2により電力に変換させて、二次電池105に充電させる、いわゆる回生制動の制御を実行できるようになっている。
また、HVECU100は、エンジン10およびモータMG1、MG2のうちいずれを原動機として動作させるかを、要求出力値、二次電池105の蓄電状態、EV走行選択スイッチ103やエコスイッチ104、さらには図示しないスポーツ走行モード選択スイッチのON/OFF状態等に応じて、決定するようになっている。したがって、ハイブリッド車両1は、エンジン10からの動力のみで走行するエンジン走行、エンジン10およびモータMG1、MG2を併用して走行するHV走行(ハイブリッド走行)、モータMG1、MG2のいずれかからの動力のみによって走行するEV走行(電気自動車走行)等のいずれかで走行できる。
次に、作用について説明する。
上述のように構成された本実施形態の車両制御装置においては、HVECU100によるハイブリッド駆動制御の制御周期毎に、図5および図6に概略の流れを示すような処理がそれぞれに実行される。また、これらの処理に先立って、ハイブリッド駆動制御の制御周期毎に、アクセルポジションセンサ101からの要求アクセル開度Accやその時点での車速その他の車両走行状態に関するセンサ情報を基に、目標車速が算出される。
図5に示すのは、車両走行中にエコスイッチ104によって燃費優先走行モードが選択されているか否かを繰り返し判定して、燃費優先走行モードが選択されると即座に運転条件を燃費優先走行モードに対応する条件に変更する条件変更処理であり、ハイブリッド駆動装置20の断続運転の条件を第1の断続運転条件から第2の断続運転条件に変更する処理を含んでいる。
この図5に示す条件変更処理においては、まず、車速がゼロでない状態、すなわち、ハイブリッド車両1が走行中であるか否かが判別される(ステップS11)。そして、走行中でなければ(ステップS11でNOの場合)、今回の処理は終了する。
ハイブリッド車両1が走行中であれば(ステップS11でYESの場合)、ハイブリッド駆動装置20の出力を制御するためのパルス駆動制御ルーチンが開始されるとともに、アクセルポジションセンサ101等のセンサ情報を基に運転者の要求パワー(要求出力)が取得される(ステップS12、S13)。
次いで、エコスイッチ104によって燃費優先走行モードが選択されている状態(ON状態)か否かが判別される(ステップS14)。
このとき、燃費優先走行モードが選択されていない状態(OFF状態)であれば(ステップS14でNOの場合)、次いで、通常走行モードでの走行駆動制御(図5中の通常走行制御)を実行するための各種制御値や条件が設定され、その一部として、通常走行モード下で図4(a)に示すような断続運転を実行するための第1の断続運転条件が設定される(ステップS15)。
一方、このとき、燃費優先走行モードが選択されていれば(ステップS14でYESの場合)、次いで、通常走行モードに比べて電力消費率や燃料消費率を低下させることができる燃費優先走行モードでの走行駆動制御(図5中の燃費優先走行制御)を実行するための各種制御値や条件が設定され(ステップS16)、その一環として、ハイブリッド駆動装置20の断続運転の制御方法も燃費優先走行モードに対応する第2の断続運転条件に切り替えられる。
次いで、モータMG2についての基準損失マップや機関性能マップ等を参照し、燃費優先走行モードに対応する出力値Pm2が、車速に応じた所定の出力差ΔPmの範囲(ΔPm>|Pm1−Pm2|となる範囲)内で探索され、通常走行モードでの出力値Pm1に対し所定の増加率をかけて増加させた出力値Pm2となる高効率出力点の新たな動作点が設定される(ステップS17)。さらには、断続運転の実行期間中における加速走行の持続時間が、通常走行モード時の加速走行の持続時間tm1に対し所定の減少率をかけて減少させた加速走行の持続時間tm2に変更される。
一方、このような車両走行モードに応じた条件変更処理と並行して、HVECU100では、図6に示すようなハイブリッド駆動装置20の断続運転制御が実行される。
図6に示す断続運転制御においては、まず、目標車速が断続運転可能車速域内か否かが判別される(ステップS21)。このとき、目標車速が断続運転可能車速域から外れていれば(ステップS21でNOの場合)、今回の処理は終了する。
一方、目標車速が断続運転可能車速域内に入っていれば(ステップS21でYESの場合)、次いで、要求出力の一定時間内における変化量が予め設定された一定の変動幅内に入る状態、すなわち、運転者が略一定の駆動出力を要求する状態、または、要求出力が一定の変動幅内で漸増もしくは漸減する状態に該当するか否かが判別される(ステップS22)。
このとき、要求出力の一定時間内における変化量が一定の変動幅から外れる程度に大きければ(ステップS22でNOの場合)、次いで、非断続運転、すなわち通常の連続運転が開始される(ステップS23)。したがって、それまでに断続運転が実行されていれば、その断続運転が中断される。
次いで、要求出力の一定時間内における変化量が一定の変動幅から増加側に外れる加速要求状態であるか否かが判別される(ステップS24)。そして、このとき、判別結果がYESであれば、ハイブリッド駆動装置20のモータMG2が駆動され、あるいはエンジン10およびモータMG2が駆動されて、ハイブリッド駆動装置20によりハイブリッド車両1を加速可能な駆動出力がなされる(ステップS25)。一方、要求出力の一定時間内における変化量が一定の変動幅から減少側(アクセルOFF側)に外れる状態となっていれば、ハイブリッド駆動装置20のモータMG2が停止され、あるいはエンジン10およびモータMG2が停止されて、ハイブリッド駆動装置20による駆動出力が停止される(ステップS26)。
このようなハイブリッド駆動装置20の通常出力または出力停止の処理とならなかった場合、すなわち、要求出力の一定時間内における変化量が前記一定の変動幅内に入り、運転者が略一定の駆動出力を要求する状態、または、要求出力が一定の変動幅内で漸増もしくは漸減する状態となった場合(ステップS22でYESの場合)、ハイブリッド駆動装置20の断続運転が開始される(ステップS27)。
この断続運転の開始に際しては、まず、図4(a)または図4(b)に示す断続開始時点T0で、ハイブリッド駆動装置20の出力を停止させ、走行中のハイブリッド車両1を惰性走行に移行させて、その車速を制御速度範囲VR1の停止終了車速V1Lまで低下させた後に、ハイブリッド駆動装置20の出力(例えば、モータMG2の駆動)を開始させる。なお、このように最初に車速を低下させることなく、断続開始時点T0から即座にハイブリッド駆動装置20の出力を開始させることもできる。
次いで、加速終了条件が成立したか否か、例えばハイブリッド駆動装置20からの走行駆動出力によってハイブリッド車両1が加速され、車速センサ102の検出車速が制御速度範囲VR1の加速終了車速V1Hに達したか否かが判別される(ステップS28)。この判別処理は、図4(a)、図4(b)に示す所定の加速走行の持続時間tm1、tm2が経過したか否かの判別であってもよいし、両判別のうちいずれかの判別結果に応じて次ステップに進んでもよい。
この判別結果、加速終了条件が成立していれば、次いで、ハイブリッド駆動装置20のモータMG2が停止され、あるいはエンジン10およびモータMG2が停止されて、ハイブリッド駆動装置20による駆動出力が停止される(ステップS30)。このとき、ハイブリッド車両1は惰性走行に移行することになる。
一方、加速終了条件が成立していなければ、次いで、停止終了条件が成立したか否か、例えばハイブリッド駆動装置20からの走行駆動出力の停止によってハイブリッド車両1の車速が低下し、車速センサ102の検出車速が制御速度範囲VR1の停止終了車速V1Lに達したか否かが判別される(ステップS29)。この判別処理は、図4(a)、図4(b)に示す所定の惰性走行の持続時間t1またはt2が経過したか否かの判別であってもよいし、両判別のうちいずれかの判別結果に応じて次ステップに進んでもよい。
この判別結果、停止終了条件が成立していれば、次いで、ハイブリッド駆動装置20のモータMG2が駆動され、あるいはエンジン10およびモータMG2が駆動されて、ハイブリッド駆動装置20による駆動出力が再開される(ステップS31)。このとき、ハイブリッド車両1は加速走行に移行することになる。
一方、停止終了条件が成立していなければ、次いで、ハイブリッド駆動装置20の現在の状態(駆動出力状態または出力停止状態)が保持される(ステップS32)。
このように、本実施形態においては、車両走行中に燃費優先走行モードが選択されると即座に燃費優先走行モードに対応する運転条件に変更する条件変更処理(図5参照)が、ハイブリッド駆動制御の制御周期に対応して繰り返し実行されることに加え、目標車速が断続運転可能車速域内に入り、かつ、運転者が略一定の駆動出力を要求する状態で、ハイブリッド駆動装置20の断続運転を実行させる制御(図6)が、並行して実行される。
したがって、エコスイッチ104の操作によって燃費優先走行モードが選択されると、第1の断続運転条件が設定される通常走行モード時のハイブリッド駆動装置20の断続運転(モータMG2の断続運転、あるいはエンジン10およびモータMG2)によるエネルギ消費量の低減効果よりも、その断続運転によるエネルギ消費量の低減効果がさらに高まるように第2の断続運転条件が設定され、ハイブリッド駆動装置20が最も高効率の出力点での断続運転される状態に即座に移行できる。
また、通常走行モードで使用される第1の断続運転条件と燃費優先走行モードで使用される第2の断続運転条件は、要求出力に対してハイブリッド駆動装置20の断続運転時等におけるエネルギ消費量が相違するだけであり、要求出力の変化や車速その他の走行条件に応じて互いに相違させる条件設定ができ、特定の走行条件に限定されない。
したがって、ハイブリッド車両1の走行状態に応じてエネルギ消費量の少ない運転を自動的にサポートする断続運転制御が可能となり、モータMG1、MG2を搭載したハイブリッド車両1における電力消費量や燃料消費量を十分に低下させることができる。
さらに、本実施形態では、断続運転条件変更部としてのHVECU100が、エコスイッチ104により燃費優先走行モードが選択されたことを条件として、ハイブリッド駆動装置20の出力値と断続運転の実行期間中における加速走行の持続時間とのうち少なくとも一方を、エネルギ消費量が低下する側の出力値Pm2または加速走行の持続時間tm2に変更するので、既存の制御手段を用いて、非常に低燃費な車両走行を実現できる。
加えて、HVECU100が、エコスイッチ104により燃費優先走行モードが選択されたことを条件として、加速走行中のハイブリッド駆動装置20のモータMG2等の出力値を、通常走行モードの選択下におけるよりも所定の増加率だけわずかに大きい出力値Pm2に増加させることから、乗り心地や騒音環境等をほとんど悪化させることなくハイブリッド駆動装置20のモータMG2等のエネルギ効率を高めたり駆動時間を短縮したりでき、電力消費率や燃料消費率をより向上させることができる。
また、加速や速度回復の速度が高まることから、加速走行から惰性走行への切替えを行う加速終了時の車速がさほど変化しない場合には、加速走行の持続時間を短縮できる。したがって、走行駆動力を変化させることなく、あるいは、運転者に違和感を生じさせるほど大きく変化させることなく、要求出力や走行状態に応じて、より高効率出力点となる断続運転に移行できる。
なお、車速や騒音環境の変化に対する運転者や他の乗員の許容範囲は、高速側になるほど広くなる傾向があるから、所定の出力差ΔPmを車速に応じ増加させる等して、その許容範囲内でより高効率出力点となる断続運転を実行できることになる。また、通常走行モードと燃費優先走行モードとの間における出力差ΔPmや加速走行の持続時間の差は、車速に応じて異なる値に設定できるだけでなく、他の走行条件、例えば路面の傾斜度(例えば、登坂路、下り坂)や、路面の状況(例えばウェット路面、雪道、氷結路、アスファルト、砂利道等)に応じて異なる値に設定することも考えられる。
このように、本実施形態においては、車両の走行状態に応じてハイブリッド駆動装置20のエネルギ消費量の少ない運転を自動的にサポートすることができ、モータMG1、MG2を搭載したハイブリッド車両1における電力消費量や燃料消費量を十分に低下させることができる車両用制御装置を提供することができる。
(第2実施形態)
図7(a)および図7(b)は、本発明の第2実施形態に係る車両用制御装置における異なる2つの走行モードでの原動機の断続運転の条件を対比して示すタイミングチャートである。
なお、以下に説明する各実施形態の車両用制御装置は、上述の第1実施形態と略同様な構成を有しており、そのハイブリッド駆動装置20の断続運転の条件のみが上述の第1実施形態とは異なるものである。したがって、以下の説明においては、第1実施形態の車両用制御装置と同一または類似する構成については、図1〜図3に示した第1実施形態中の対応する構成要素の符号を用いて説明する。
図7(a)は、第2実施形態に係る車両用制御装置における通常走行モード(第1の走行制御モード)で適用される第1の断続運転条件を示しており、図7(b)は、燃費優先走行モード(第2の走行制御モード)で適用される第2の断続運転条件を示している。
図7(a)に示すように、HVECU100は、断続開始時点T0から、第1実施形態の通常走行モード選択時と同様に、ハイブリッド駆動装置20の断続運転を開始させるとともに、目標車速V1Sに対して車速変化がさほど感じられない制御速度範囲VR1を設定する。また、HVECU100は、断続開始時点T0で、例えばモータMG2(あるいはモータMG2およびエンジン10)からの出力を停止させてハイブリッド車両1を惰性走行させ、その車速を制御速度範囲VR1の停止終了車速V1Lまで低下させる。そして、車速センサ102の検出車速が停止終了車速V1Lに達すると、出力停止状態を解除して、モータMG2から出力値Pm1の動力を出力させ、所定の加速走行の持続時間tm1の間、ハイブリッド車両1を加速させる(駆動出力状態)。さらに、その加速によって車速が加速終了車速V1Hに達すると、モータMG2からの出力を停止させて所定の惰性走行の持続時間t1だけハイブリッド車両1を惰性走行させる(出力停止状態)。
HVECU100は、また、目標車速が断続運転可能車速域内に入っており、かつ、要求出力が略一定に保持されている期間中は、ハイブリッド駆動装置20を上述のような断続運転状態にする。したがって、ハイブリッド駆動装置20の電力消費量や燃料消費量は少なくて済み、ハイブリッド車両1の低燃費走行が可能となる。
一方、図7(b)に示すように、エコスイッチ104により第2の走行制御モードが選択されたことを条件として、ハイブリッド駆動装置20をより高効率・低損失となる動作点で操作させるべく、HVECU100は、モータMG2(あるいはモータMG2およびエンジン10)の出力値を、通常走行モード時の出力値Pm1から、この出力値Pm1に対し所定の増加率(>1)をかけて増加させた出力値Pm2に変更する。また、加速終了車速V1Hと停止終了車速V1Lとのうち少なくとも一方をエネルギ消費量が低下する側に、例えば加速終了車速V1Hを通常走行モードの選択下におけるよりも大きい加速終了車速V1H´に増加させる。したがって、この場合、通常走行モード時の制御速度範囲VR1と燃費優先走行モード時の制御速度範囲VR2とは、互いに異なる速度範囲として設定される。
なお、通常走行モード時の加速終了車速V1Hと燃費優先走行モード時の加速終了車速V1H´の差ΔV1Hは、目標車速に応じて段階的にまたは無段階に可変設定してもよい。また、HVECU100は、通常走行モード時の加速終了車速V1Hを燃費優先走行モード時の加速終了車速V1H´に増加させるのでなく、断続運転の実行期間中における加速走行の持続時間を、通常走行モード時の断続運転条件の一部である加速走行の持続時間tm1から、この持続時間tm1に対し所定の減少率(<1)をかけて減少させた加速走行の持続時間tm2に変更するものであってもよい。
HVECU100は、また、出力値Pm2を設定するに際して基準損失マップや機関性能マップを参照し、出力値Pm2を前記増加率に対応する所定の出力差ΔPmの範囲内で探索し、設定するようになっている。
本実施形態では、このように、エコスイッチ104により燃費優先走行モードが選択されたことを条件として、通常走行モード時の出力値Pm1から燃費優先走行モード時の出力値Pm2に増加させるとともに、加速終了車速V1Hを通常走行モードの選択下におけるよりも大きい車速値V1H´に増加させる。
したがって、燃費優先走行モードが選択されると、そのときの要求出力や走行状態に応じて、より高効率出力点となる断続運転に円滑に移行できる。しかも、加速走行中におけるハイブリッド駆動装置20のモータMG2等の出力が増加されてハイブリッド駆動装置20のモータMG2等のエネルギ効率が高まり、加速や速度回復の速度が高まるので、加速終了車速を通常走行モードの選択下におけるよりも大きい車速値に増加させても、違和感が生じ難い。さらに、加速終了車速V1Hの増加率に応じて断続運転の実行期間中における加速走行の持続時間を適宜調整することによって、車両の乗り心地の低下も防止できる。
本実施形態においても、車両の走行状態に応じてハイブリッド駆動装置20のエネルギ消費量の少ない運転を自動的にサポートすることができ、モータMG1、MG2を搭載したハイブリッド車両1における電力消費量や燃料消費量を十分に低下させることができる車両用制御装置を提供することができる。
(第3実施形態)
図8(a)および図8(b)は、本発明の第3実施形態に係る車両用制御装置における異なる2つの走行モードでの原動機の断続運転の条件を対比して示すタイミングチャートであり、図8(a)は通常走行モードで適用される第1の断続運転条件を、図8(b)は燃費優先走行モードで適用される第2の断続運転条件を、それぞれ示している。
図8(a)に示すように、HVECU100は、断続開始時点T0から、第1、第2実施形態の通常走行モード選択時と同様に、ハイブリッド駆動装置20の断続運転を開始させるとともに、目標車速V1Sに対して車速変化がさほど感じられない制御速度範囲VR1を設定する。また、HVECU100は、断続開始時点T0で、例えばモータMG2(あるいはモータMG2およびエンジン10)からの出力を停止させてハイブリッド車両1を惰性走行させ、その車速を停止終了車速V1Lまで低下させる。そして、車速センサ102の検出車速が停止終了車速V1Lに達すると、出力停止状態を解除して、モータMG2から出力値Pm1の動力を出力させ、所定の加速走行の持続時間tm1の間、ハイブリッド車両1を加速させる(駆動出力状態)。さらに、その加速によって車速が加速終了車速V1Hに達すると、モータMG2からの出力を停止させて所定の惰性走行の持続時間t1だけハイブリッド車両1を惰性走行させる(出力停止状態)。
HVECU100は、また、目標車速が断続運転可能車速域内に入っており、かつ、要求出力が略一定に保持されている期間中は、ハイブリッド駆動装置20を上述のような断続運転状態にする。したがって、ハイブリッド駆動装置20の電力消費量や燃料消費量は少なくて済み、ハイブリッド車両1の低燃費走行が可能となる。
一方、図8(b)に示すように、HVECU100は、エコスイッチ104により第2の走行制御モードが選択されたことを条件として、ハイブリッド駆動装置20をより高効率・低損失となる動作点で操作させるべく、モータMG2の出力値を、通常走行モード時の出力値Pm1から、この出力値Pm1に対し所定の増加率(>1)をかけて増加させた出力値Pm2に変更する。
また、加速終了車速V1Hと停止終了車速V1Lとのうち双方をエネルギ消費量が低下する側に変更する。例えば、加速終了車速を通常走行モードの選択下における車速値V1Hよりも大きい加速終了車速V1H´に増加させるとともに、停止終了車速を通常走行モードの選択下における車速値V1Lよりも小さい停止終了車速V1L´に減少させる。この場合、通常走行モード時の制御速度範囲VR1と燃費優先走行モード時の制御速度範囲VR3とは、互いに異なる速度範囲として設定される。
HVECU100は、さらに、通常走行モードの選択下における停止終了車速V1Lよりも燃費優先走行モードの選択下における停止終了車速V1L´を低下させることを条件として、停止終了車速V1Lの低下率(<1)に応じて断続運転の実行期間中における惰性走行の持続時間t2を調整(例えば長い時間に変更)できるようになっている。
HVECU100は、また、出力値Pm2を設定するに際して基準損失マップや機関性能マップを参照し、出力値Pm2を前記増加率に対応する所定の出力差ΔPmの範囲内で探索し、設定するようになっている。
本実施形態では、このように、エコスイッチ104により燃費優先走行モードが選択されたことを条件として、通常走行モード時の出力値Pm1から燃費優先走行モード時の出力値Pm2に増加させるとともに、加速終了車速V1Hと停止終了車速V1Lとのうち双方をエネルギ消費量が低下する側に変更する。
したがって、燃費優先走行モードが選択されると、そのときの要求出力や走行状態に応じて、より高効率出力点となる断続運転に円滑に移行できる。しかも、加速走行中におけるハイブリッド駆動装置20のモータMG2等の出力が増加されてモータMG2等のエネルギ効率が高まり、加速や速度回復の速度が高まるので、加速終了車速を通常走行モードの選択下におけるよりも大きい車速値に増加させても、違和感が生じ難い。さらに、停止終了車速V1Lの増加率に応じて断続運転の実行期間中における惰性走行の持続時間を適宜長くすることによって、車両の乗り心地を低下させることなくエネルギ消費量をより低下させることができる。
本実施形態においても、車両の走行状態に応じてハイブリッド駆動装置20のエネルギ消費量の少ない運転を自動的にサポートすることができ、モータMG1、MG2を搭載したハイブリッド車両1における電力消費量や燃料消費量を十分に低下させることができる車両用制御装置を提供することができる。
なお、上述の各実施形態においては、モータMG1、MG2およびエンジン10のうち少なくとも1つからの動力を基に走行駆動力を発生させるハイブリッド駆動装置20を備えていたが、少なくとも1つの電動機(電動モータ)を走行駆動用の原動機として備えた車両であれば、電気自動車であってもハイブリッド車両であっても、本発明を適用することができる。
また、上述の各実施形態においては、加速走行中におけるハイブリッド駆動装置20の出力値を増加させた方が高効率となる場合に、加速走行中における原動機の出力が増加され、断続運転の実行期間中における加速走行の持続時間を短くした方が高効率となる場合に、その加速走行の持続時間が短縮されるものとしたが、出力変化の方向が逆の場合もあり得ることはいうまでもない。
さらに、出力差ΔPmの値は、車速に応じて段階的にまたは無段階に変化し得るものとしたが、制御系で把握される他の原動機の運転効率の推移等に基づいて、その値を補正することも考えられる。また、動力伝達機構の一部を構成する減速機構70は、図1に示すものに限らず、他のギヤ構成を採ることができることは勿論であるし、変速機を含んで構成されてもよい。
以上説明したように、本発明に係る車両用制御装置は、車両の走行状態に応じて駆動出力用の原動機のエネルギ消費量の少ない運転を自動的にサポートすることができ、電動機を搭載した車両における電力消費量や燃料消費量を十分に低下させることができる車両用制御装置を提供することができるという効果を奏する。このような本発明は、走行駆動用の原動機として少なくとも電動機を備えた車両に装備される車両用制御装置、特にその原動機のエネルギ消費量を抑える制御を実行する車両用制御装置全般に有用である。