以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態は、説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返されない。
図1は、本実施の形態に係る車両1の概略構成を示す図である。車両1は、エンジン200と、トルクコンバータ300と、前後進切替装置400と、無段変速機500と、減速歯車600と、差動歯車装置700とを含む。この車両1は、エンジン200の動力を駆動輪800に伝達することによって走行する。
エンジン200から駆動輪800までの動力伝達経路上には、ロックアップクラッチ308付のトルクコンバータ300、前後進切替装置400、無段変速機500、減速歯車600、差動歯車装置700が設けられる。
エンジン200は、ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン200の出力は、トルクコンバータ300および前後進切替装置400を経由して無段変速機500に入力される。無段変速機500の出力は、減速歯車600および差動歯車装置700に伝達され、左右の駆動輪800へ分配される。
トルクコンバータ300は、エンジン200のクランク軸に連結されたポンプ翼車302と、タービン軸304を経由して前後進切替装置400の入力軸に連結されたタービン翼車306と、ポンプ翼車302およびタービン翼車306の間に設けられたロックアップクラッチ308とを含む。
ロックアップクラッチ308は、図示しない油圧制御回路から供給される油圧に応じて係合または解放されるようになっている。ロックアップクラッチ308が係合されることにより、ポンプ翼車302およびタービン翼車306は一体的に回転する。ポンプ翼車302には、油圧を発生する機械式のオイルポンプ310が設けられている。
ロックアップクラッチ308は、係合側油室と解放側油室とを有する。ロックアップクラッチ308は、係合側油室の油圧が解放側油室の油圧よりも高くなる場合には係合状態になるように作動し、解放側油室の油圧が係合側油室の油圧よりも高くなる場合には解放状態になるように作動する。
前後進切替装置400は、トルクコンバータ300と無段変速機500との間に設けられる。前後進切替装置400は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置と、フォワードクラッチ406と、リバースブレーキ410とを含む。
トルクコンバータ300のタービン軸304はサンギヤ402に連結されている。無段変速機500の入力軸502はキャリア404に連結されている。キャリア404とサンギヤ402とはフォワードクラッチ406を介在して連結されている。リングギヤ408は、リバースブレーキ410を介在してハウジングに固定される。フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410は油圧制御回路から供給される油圧によって係合または解放される。
フォワードクラッチ406が係合され、かつ、リバースブレーキ410が解放されると、前後進切替装置400は、前進方向の駆動力を無段変速機500に伝達する前進動力伝達状態となる。フォワードクラッチ406が解放され、かつ、リバースブレーキ410が係合されると、前後進切替装置400は、後進方向の駆動力を無段変速機500に伝達する後進動力伝達状態となる。フォワードクラッチ406が解放されると、前後進切替装置400は動力伝達を遮断するニュートラル状態になる。
無段変速機500は、入力軸502に設けられたプライマリプーリ504と、出力軸506に設けられたセカンダリプーリ508と、これらのプーリに巻き掛けられた伝動ベルト510とを含む。各プーリと伝動ベルト510との間の摩擦力を利用して、動力伝達が行なわれる。
プライマリプーリ504の油圧シリンダ(第1油圧アクチュエータ)およびセカンダリプーリ508の油圧シリンダ(第2油圧アクチュエータ)の油圧の各々が制御されることにより、各プーリの溝幅が変化する。これにより、伝動ベルト510の掛かり径が変更され、変速比γ(=プライマリプーリ回転数NIN/セカンダリプーリ回転数NOUT)が連続的に変化させられる。
図2に示すように、車両1は、各機器を制御するECU(Electronic Control Unit)8000と、エンジン回転数センサ902と、タービン回転数センサ904と、車速センサ906と、スロットル開度センサ908と、冷却水温センサ910と、油温センサ912と、アクセル開度センサ914と、フットブレーキスイッチ916と、ポジションセンサ918と、プライマリプーリ回転数センサ922と、セカンダリプーリ回転数センサ924と、電子スロットルバルブ1000と、燃料噴射装置1100と、点火装置1200と、油圧制御回路2000とをさらに含む。
エンジン回転数センサ902は、エンジン200の回転速度(以下「エンジン回転数NE」という)を検出する。タービン回転数センサ904は、タービン軸304の回転速度(以下「タービン回転数NT」という)を検出する。車速センサ906は、車速Vを検出する。スロットル開度センサ908は、電子スロットルバルブの開度θ(TH)を検出する。冷却水温センサ910は、エンジン200の冷却水温T(W)を検出する。油温センサ912は、無段変速機500などの油温T(C)を検出する。アクセル開度センサ914は、アクセル開度(ユーザによるアクセルペダルの操作量)Aを検出する。フットブレーキスイッチ916は、フットブレーキの操作の有無を検出する。ポジションセンサ918は、ユーザによって操作されるシフトレバー920のポジションP(SH)を検出する。プライマリプーリ回転数センサ922は、プライマリプーリ504の回転速度(以下「プライマリプーリ回転数NIN」という)を検出する。セカンダリプーリ回転数センサ924は、セカンダリプーリ508の回転速度(以下「セカンダリプーリ回転数NOUT」という)を検出する。前後進切替装置400が前進動力伝達状態である場合、タービン回転数NTはプライマリプーリ回転数NINと一致する。車速Vは、セカンダリプーリ回転数NOUTと対応した値になる。したがって、車両1が停車状態にあり、かつ、フォワードクラッチ406が係合された状態では、タービン回転数NTは0となる。各センサは、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
ECU8000は、電子スロットルバルブ1000、燃料噴射装置1100、点火装置1200などを制御することによって、エンジン200の出力を制御する。また、ECU8000は、油圧制御回路2000を制御することによってロックアップクラッチ308および前後進切替装置400の制御、無段変速機500の変速制御などを実行する。
図3を参照して、油圧制御回路2000の要部について説明する。なお、以下に説明する油圧制御回路2000は一例であって、これに限らない。
この油圧制御回路2000は、ライン圧調整バルブ2010と、SLPソレノイドバルブ(以下、単にSLPと記載する)2020と、SLSソレノイドバルブ(以下、単にSLSと記載する)2030と、第1調圧バルブ2040と、第2調圧バルブ2050と、フェールセーフバルブ2070と、第1油圧アクチュエータ2080と、第2油圧アクチュエータ2090と、第1オンオフソレノイドバルブ(以下、単にオンオフバルブと記載する)2100と、第2オンオフバルブ2110と、セカンダリレギュレータバルブ2120と、ロックアップコントロールバルブ2130と、ロックアップリレーバルブ2140と、リニアソレノイドバルブ2150とを含む。
ライン圧調整バルブ2010は、元圧であるライン圧を一定圧に調圧して出力する。ライン圧調整バルブ2010が出力する一定圧の値は、第2オンオフバルブ2110からの油圧の入力の有無に応じて変更される。
本実施の形態においては、第2オンオフバルブ2110がオン状態である場合には、ライン圧調整バルブ2010が出力する一定圧は第2オンオフバルブ2110がオフ状態である場合と比較して高い油圧となる。
一方、第2オンオフバルブ2110がオフ状態である場合には、ライン圧調整バルブ2010が出力する一定圧は、第2オンオフバルブ2110がオン状態である場合と比較して低い油圧となる。
第1オンオフバルブ2100は、ECU8000からの制御信号に応じてフェールセーフバルブ2070の上側の入力ポート2075に油圧を出力するオン状態と油圧を出力しないオフ状態のうちのいずれか一方の状態に制御される。
第2オンオフバルブ2110は、ECU8000からの制御信号に応じてフェールセーフバルブ2070の下側の入力ポート2076に油圧を出力するオン状態と油圧を出力しないオフ状態のうちのいずれか一方の状態に制御される。
SLP2020およびSLS2030は、内蔵されたリニアソレノイドバルブの通電力がECU8000によって制御されることによって制御圧Pslpおよび制御圧Pslsをそれぞれ生成する。SLP2020およびSLS2030は、たとえば、ノーマリオープンのソレノイドバルブである。
SLP2020は、生成した制御圧Pslpを第1調圧バルブ2040に供給する。第1調圧バルブ2040は、制御圧Pslpに応じてライン圧調整バルブ2010から供給されるライン圧PLを減圧する。第1調圧バルブ2040において生成された油圧は、フェールセーフバルブ2070を経由して第1油圧アクチュエータ2080に供給される。
SLS2030は、生成した制御圧Pslsを第2調圧バルブ2050に供給する。第2調圧バルブ2050は、制御圧Pslsに応じてライン圧調整バルブ2010から供給されるライン圧PLを減圧する。第2調圧バルブ2050において生成された油圧は、第2油圧アクチュエータ2090に供給される。
ECU8000は、上述したように、SLP2020の制御圧PslpおよびSLS2030の制御圧Pslsを制御して第1調圧バルブ2040および第2調圧バルブ2050から第1油圧アクチュエータ2080および第2油圧アクチュエータ2090にそれぞれ供給される油圧を変化させる。第1油圧アクチュエータ2080および第2油圧アクチュエータ2090の各々に供給される油圧が変化されることによって、プライマリプーリ504およびセカンダリプーリ508の各々における伝動ベルト510の掛かり径(変速比)が変化される。
ECU8000は、たとえば、車速Vとアクセル開度Aとに基づいて目標変速比を決定する。ECU8000は、実変速比が目標変速比に到達するようにSLP2020およびSLS2030を制御する。このようにして、ECU8000は、無段変速機500の変速制御を行なう。
フェールセーフバルブ2070は、第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110から入力される油圧の組み合わせに応じて、ロックアップクラッチ(LUC)308およびフォワードクラッチ(FC)406に供給する油圧を切り替えるとともに、第1油圧アクチュエータ2080に供給する油圧を切り替える。
フェールセーフバルブ2070は、スプール弁2072と、スプリング2074と、入力ポート2075,2076とを含む。
スプール弁2072は、フェールセーフバルブ2070のバルブボディ内を摺動可能に設けられる。スプール弁2072は、円筒形状の複数個の弁体を含む。
スプリング2074は、スプール弁2072の下側(図3の矢印Aの方向側)に設けられ、スプール弁2072に対して上方向(図3の矢印Aの逆方向)の付勢力を付与する。
入力ポート2075は、スプール弁2072の上側に設けられ、第1オンオフバルブ2100と連通する。入力ポート2075は、第1オンオフバルブ2100がオン状態である場合に、第1オンオフバルブ2100からの油圧の供給を受ける。入力ポート2075に第1オンオフバルブ2100からの油圧が供給されることによりスプール弁2072には、下方向(図3の矢印Aの方向)の力が作用する。
入力ポート2076は、スプール弁2072の下側に設けられ、第2オンオフバルブ2110と連通する。入力ポート2076は、第2オンオフバルブ2110がオン状態である場合には、第2オンオフバルブ2110からの油圧の供給を受ける。入力ポート2076に第2オンオフバルブ2110からの油圧が供給されることによりスプール弁2072には、上方向の力が作用する。
セカンダリレギュレータバルブ2120は、ロックアップクラッチ308に供給するための油圧(SEC油圧)を生成する。
ロックアップコントロールバルブ2130は、リニアソレノイドバルブ2150とロックアップリレーバルブ2140とを連通したり、遮断したりする。ロックアップコントロールバルブ2130は、スプール弁2132と、スプリング2134と、入力ポート2135,2136とを含む。
スプール弁2132は、ロックアップコントロールバルブ2130のバルブボディ内を摺動可能に設けられる。スプール弁2132は、円筒形状の複数個の弁体を含む。
スプリング2134は、スプール弁2132の上側(図3の矢印Bの方向側)に設けられ、スプール弁2132に対して下方向(図3の矢印Bの逆方向)の付勢力を付与する。
入力ポート2135は、ロックアップコントロールバルブ2130の中央に設けられ、リニアソレノイドバルブ2150と連通する。入力ポート2135には、リニアソレノイドバルブ2150からの油圧が供給される。
入力ポート2136は、スプール弁2132の下側に設けられ、ロックアップリレーバルブ2140からロックアップクラッチ308の係合側油室との間を接続する油路と連通する。入力ポート2136には、ロックアップリレーバルブ2140からロックアップクラッチ308の係合側油室に供給される油圧(以下、オン圧と記載する)が供給される。
入力ポート2136に油圧が供給されることによりスプール弁2132の上方向(図3の矢印Bの方向)に作用する力がスプリング2134の付勢力を超えるとスプール弁2132が上方向に移動する。
ロックアップリレーバルブ2140は、第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110から入力される油圧の組み合わせに応じて、セカンダリレギュレータバルブ2120から出力されたSEC油圧をオフ圧としてロックアップクラッチ308の解放側油室に供給したり、オン圧としてロックアップクラッチ308の係合側油室に供給したりする。
ロックアップリレーバルブ2140は、スプール弁2142と、スプリング2144と、入力ポート2145,2146とを含む。
スプール弁2142は、ロックアップリレーバルブ2140のバルブボディ内を摺動可能に設けられる。スプール弁2142は、円筒形状の複数個の弁体を含む。
スプリング2144は、スプール弁2142の上側(図3の矢印Cの方向側)に設けられ、スプール弁2132に対して下方向(図3の矢印Cの逆方向)の付勢力を付与する。
入力ポート2145は、スプール弁2142の上側に設けられ、第1オンオフバルブ2100と連通する。入力ポート2145は、第1オンオフバルブ2100がオン状態である場合に、第1オンオフバルブ2100から油圧の供給を受ける。入力ポート2145に第1オンオフバルブ2100からの油圧が供給されることによりスプール弁2142には、下方向の力が作用する。
入力ポート2146は、スプール弁2142の下側に設けられ、第2オンオフバルブ2110と連通する。入力ポート2146は、第2オンオフバルブ2110がオン状態である場合に、第2オンオフバルブ2110から油圧の供給を受ける。入力ポート2146に第2オンオフバルブ2110からの油圧が供給されることによりスプール弁2142には、上方向の力が作用する。
図4に示すように、本実施の形態において、ECU8000は、第1モード、第2モード、第3モードおよび第4モードのうちのいずれかの制御モードを選択して、選択された制御モードにしたがって第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110を制御する。
第1モードは、第1オンオフバルブ2100をオフ状態とし、かつ、第2オンオフバルブ2110をオフ状態とするモードである。第2モードは、第1オンオフバルブ2100をオン状態とし、かつ、第2オンオフバルブ2110をオフ状態とするモードである。第3モードは、第1オンオフバルブ2100をオフ状態とし、かつ、第2オンオフバルブ2110をオン状態とするモードである。第4モードは、第1オンオフバルブ2100をオン状態とし、かつ、第2オンオフバルブ2110をオン状態とするモードである。以下に各モードにおける油圧制御回路2000の動作について説明する。
<第1モードについて>
図5に示すように、第1モードにしたがって第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110が制御される場合には、第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110はいずれもオフ状態になる。
そのため、第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110のいずれからもフェールセーフバルブ2070に油圧が供給されない。その結果、スプリング2074の付勢力によりスプール弁2072の位置は、図5に示される位置になる。
このとき、フェールセーフバルブ2070は、第1調圧バルブ2040と第1油圧アクチュエータ2080とを連通する油路を形成する。そのため、第1調圧バルブ2040から出力される油圧は第1油圧アクチュエータ2080に供給される。
さらに、フェールセーフバルブ2070は、ライン圧調整バルブ2010とフォワードクラッチ406とを連通する油路を形成する。そのため、ライン圧調整バルブ2010から出力される油圧はフォワードクラッチ406に供給される。その結果、フォワードクラッチ406は係合状態になる。
なお、第2オンオフバルブ2110がオフ状態である場合には、第2オンオフバルブ2110がオン状態である場合よりも高い油圧がライン圧調整バルブ2010から第1調圧バルブ2040と、第2調圧バルブ2050と、フォワードクラッチ406とに供給される。
一方、第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110のいずれからもロックアップリレーバルブ2140に油圧が供給されない。その結果、スプリング2144の付勢力によりスプール弁2142の位置は、図5に示される位置になる。
このとき、ロックアップリレーバルブ2140は、セカンダリレギュレータバルブ2120とロックアップクラッチ308の解放側油室とを連通する油路を形成する。そのため、セカンダリレギュレータバルブ2120から出力されるSEC油圧はオフ圧としてロックアップクラッチ308の解放側油室に供給される。
さらに、ロックアップリレーバルブ2140は、ロックアップクラッチ308の係合側油室と作動油を油圧制御回路の外部に排出する出力ポート2147とを連通する油路を形成する。そのため、ロックアップクラッチ308の係合側油室内の作動油が出力ポート2147を経由して排出されるためロックアップクラッチ308は解放状態になる。
<第2モードについて>
図6に示すように、第2モードにしたがって第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110が制御される場合には、第1オンオフバルブ2100はオン状態になり、第2オンオフバルブ2110はオフ状態になる。
そのため、第1オンオフバルブ2100からの油圧が入力ポート2075に供給される。また、第2オンオフバルブ2110からの油圧は入力ポート2076に供給されない。
スプール弁2072に作用する下方向の力がスプリング2074の上方向の付勢力を超える場合に、スプール弁2072は下方向に移動する。そのため、スプール弁2072の位置は、図6に示される位置になる。
このとき、フェールセーフバルブ2070は、第2調圧バルブ2050と第1油圧アクチュエータ2080とを連通する油路を形成する。そのため、第2調圧バルブ2050から出力される油圧は第1油圧アクチュエータ2080および第2油圧アクチュエータ2090の各々に供給される。好ましくは、第2調圧バルブ2050から出力される油圧はチェックバルブ等を用いて減圧して第1油圧アクチュエータ2080に供給されることが望ましい。このようにすると、SLP2020の異常により第2モードが選択された場合に無段変速機500の変速比を上限値(γmax)まで変化させることができる。
さらに、フェールセーフバルブ2070は、リニアソレノイドバルブ2150とフォワードクラッチ406とを連通する油路を形成する。そのため、リニアソレノイドバルブ2150から出力される油圧がフェールセーフバルブ2070を経由してフォワードクラッチ406に供給される。これにより、フォワードクラッチ406に供給される油圧がリニアソレノイドバルブ2150によって制御される。
なお、第2オンオフバルブ2110がオフ状態である場合には、第2オンオフバルブ2110がオン状態である場合よりも高い油圧がライン圧調整バルブ2010から第1調圧バルブ2040と、第2調圧バルブ2050と、フォワードクラッチ406とに供給される。
一方、ロックアップリレーバルブ2140の入力ポート2145に第1オンオフバルブ2100からの油圧が供給される。また、第2オンオフバルブ2110から入力ポート2146に油圧は供給されない。そのため、スプール弁2142の位置は、図6に示される位置になる。
このとき、ロックアップリレーバルブ2140は、セカンダリレギュレータバルブ2120とロックアップクラッチ308の解放側油室とを連通する油路を形成する。そのため、セカンダリレギュレータバルブ2120から出力されるSEC油圧はオフ圧としてロックアップクラッチ308の解放側油室に供給される。
さらに、ロックアップリレーバルブ2140は、ロックアップクラッチ308の係合側油室と出力ポート2147とを連通する油路を形成する。そのため、ロックアップクラッチ308の係合側油室内の作動油が排出されるためロックアップクラッチ308は解放状態になる。
<第3モードについて>
図7に示すように、第3モードにしたがって第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110が制御される場合には、第1オンオフバルブ2100はオフ状態になり、第2オンオフバルブ2110はオン状態になる。
そのため、スプール弁2072の下側に第2オンオフバルブ2110からの油圧が供給される。また、第1オンオフバルブ2100からフェールセーフバルブ2070に油圧は供給されない。そのため、スプール弁2072の位置は、図7に示される位置になる。
このとき、フェールセーフバルブ2070は、第1調圧バルブ2040と第1油圧アクチュエータ2080とを連通する油路を形成する。そのため、第1調圧バルブ2040から出力される油圧は第1油圧アクチュエータ2080に供給される。
さらに、フェールセーフバルブ2070は、ライン圧調整バルブ2010とフォワードクラッチ406とを連通する油路を形成する。そのため、ライン圧調整バルブ2010から出力される油圧はフォワードクラッチ406に供給される。その結果、フォワードクラッチ406は係合状態になる。
なお、第2オンオフバルブ2110がオン状態である場合には、第2オンオフバルブ2110がオフ状態である場合よりも低い油圧がライン圧調整バルブ2010から第1調圧バルブ2040と、第2調圧バルブ2050と、フォワードクラッチ406とに供給される。
一方、ロックアップリレーバルブ2140の入力ポート2146に第2オンオフバルブ2110からの油圧が供給される。また、第1オンオフバルブ2100から入力ポート2145に油圧は供給されない。そのため、スプール弁2142の位置は、図7に示される位置になる。
このとき、ロックアップリレーバルブ2140は、セカンダリレギュレータバルブ2120と、ロックアップクラッチ308の係合側油室とを連通する油路を形成する。そのため、セカンダリレギュレータバルブ2120から出力されるSEC油圧はオン圧としてロックアップクラッチ308の係合側油室に供給される。
さらに、ロックアップリレーバルブ2140は、ロックアップコントロールバルブ2130の出力ポート2137とロックアップクラッチ308の解放側油室とを連通する経路を形成する。
ロックアップコントロールバルブ2130の入力ポート2136には、SEC油圧がオン圧として入力される。スプール弁2132に作用する上方向の力がスプリング2134の付勢力を超えるとスプール弁2132は上方向に移動する。その結果、スプール弁2132の位置は、図7に示される位置になる。
そのため、ロックアップコントロールバルブ2130は、リニアソレノイドバルブ2150と出力ポート2137とを連通する経路を形成する。
したがって、ロックアップコントロールバルブ2130とロックアップリレーバルブ2140とは、リニアソレノイドバルブ2150とロックアップクラッチ308の解放側油室とを連通する経路を形成する。
そのため、リニアソレノイドバルブ2150から出力される油圧はロックアップクラッチ308の解放側油室に供給される。これにより、ロックアップクラッチ308の解放側油室内の油圧がリニアソレノイドバルブ2150によって制御される。すなわち、リニアソレノイドバルブ2150によりロックアップクラッチ308の係合量(スリップ量)が制御される。
<第4モードについて>
図8に示すように、第4モードにしたがって第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110が制御される場合には、第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110はいずれもオン状態になる。
そのため、第1オンオフバルブ2100からの油圧がフェールセーフバルブ2070の入力ポート2075に供給される。また、第2オンオフバルブ2110からの油圧が入力ポート2076に供給される。
スプール弁2072に作用する上方向の力は、第2オンオフバルブ2110から供給される油圧により生じる力に加えて、スプリング2074の付勢力を含むため、下方向の力よりも大きくなる。そのため、スプール弁2072の位置は、図8に示される位置になる。
このとき、フェールセーフバルブ2070は、第1調圧バルブ2040と第1油圧アクチュエータ2080とを連通する油路を形成する。そのため、第1調圧バルブ2040から出力される油圧は第1油圧アクチュエータ2080に供給される。
さらに、フェールセーフバルブ2070は、ライン圧調整バルブ2010とフォワードクラッチ406とを連通する油路を形成する。そのため、ライン圧調整バルブ2010から出力される油圧はフォワードクラッチ406に供給される。その結果、フォワードクラッチ406は係合状態になる。
なお、第2オンオフバルブ2110がオン状態である場合には、第2オンオフバルブ2110がオフ状態である場合よりも低い油圧がライン圧調整バルブ2010から第1調圧バルブ2040と、第2調圧バルブ2050と、フォワードクラッチ406とに供給される。
一方、第1オンオフバルブ2100からの油圧がロックアップリレーバルブ2140の入力ポート2145に供給される。また、第2オンオフバルブ2110からの油圧が入力ポート2146に供給される。
スプール弁2142に作用する下方向の力は、第1オンオフバルブ2100から供給される油圧により生じる力に加えて、スプリング2144の付勢力を含むため、上方向の力よりも大きくなる。そのため、スプール弁2142の位置は、図8に示される位置になる。
このとき、ロックアップリレーバルブ2140は、セカンダリレギュレータバルブ2120とロックアップクラッチ308の解放側油室とを連通する油路を形成する。そのため、セカンダリレギュレータバルブ2120から出力されるSEC油圧はオフ圧としてロックアップクラッチ308の解放側油室に供給される。
さらに、ロックアップリレーバルブ2140は、ロックアップクラッチ308の係合側油室と出力ポート2147とを連通する油路を形成する。そのため、ロックアップクラッチ308の係合側油室内の作動油が排出されるためロックアップクラッチ308は解放状態になる。
ECU8000は、予め定められた条件にしたがって、第1モード、第2モード、第3モードおよび第4モードのうちのいずれか一つを制御モードとして選択し、選択された制御モードにしたがって第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110を制御する。ECU8000は、たとえば、選択された制御モードに対応するフラグをオン状態にする。
ECU8000は、たとえば、通常は、第1モードおよび第4モードのうちのいずれか一方を制御モードとして選択する。ECU8000は、たとえば、ニュートラルポジションが選択される場合等に第2モードを選択してもよい。このようにすると、ECU8000は、リニアソレノイドバルブ2150を用いてフォワードクラッチ406を解放させることができる。また、ECU8000は、後述するようにSLP2000が異常状態であると判定された場合に第2モードを選択してもよい。
ECU8000は、たとえば、車両の走行状態が所定の状態に変化する等のロックアップ制御開始条件が成立する場合に、第3モードを選択して、ロックアップ制御を実行してもよい。ECU8000は、ロックアップ制御の実行時において、リニアソレノイドバルブ2150を用いてロックアップクラッチ308の状態を、係合状態、解放状態および半係合状態のうちのいずれかの状態にする。
なお、車両1の走行状態が所定の状態に変化するとは、たとえば、車両1の走行状態がロックアップクラッチ308の係合領域、解放領域およびスリップ制御領域のうちのいずれか一つの領域から他の領域に移行することをいう。係合領域、解放領域およびスリップ制御領域は、たとえば、車速V(あるいはセカンダリプーリ回転数NOUT)とアクセル開度A(あるいは電子スロットルバルブの開度θ)とに基づいて設定される。なお、スリップ制御領域において、ECU8000は、ロックアップクラッチ308のスリップ量が所定量になるようにロックアップクラッチ308を半係合状態にする領域である。
以上のような構成を有する車両1において、SLP2020が断線や短絡等の故障が発生した異常状態になる場合がある。SLP2020は、ノーマリオープンのソレノイドバルブであるため、異常状態になることによりオープン状態が維持される。その結果、第1調圧バルブ2040から出力される油圧が下限値になるため、プライマリプーリ504におけるベルト510の掛かり径が小さくなる。その結果、実変速比が目標変速比よりも大きい状態となる。このようにSLP2020が異常状態になる場合には、実変速比と目標変速比とが乖離する変速比異常が発生する場合がある。
しかしながら、変速比異常が発生する要因は、SLP2020の故障に限定されないため、変速比異常が発生した場合に故障部品を正確に特定することができない場合がある。
そこで、本実施の形態においては、ECU8000が、変速比異常が発生した場合には、第2オンオフソレノイドバルブ2110がオン状態である場合にSLP2020および第1オンオフソレノイドバルブ2100のうちのいずれが異常状態であるかの故障判定を行ない、第2オンオフソレノイドバルブ2110がオフ状態である場合に故障判定を行なわない点を特徴とする。
図9に、本実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECU8000の機能ブロック図を示す。ECU8000は、実行判定部8002と、異常仮判定部8004と、ベルト挟圧制御部8006と、モード判定部8008と、異常特定部8010と、異常時処理部8012とを含む。
実行判定部8002は、後述するベルト挟圧アップ制御が実行中であるか否かを判定する。実行判定部8002は、たとえば、ベルト挟圧アップ制御が実行中であることを示すフラグがオン状態である場合にベルト挟圧アップ制御が実行中であると判定してもよい。なお、実行判定部8002は、たとえば、ベルト挟圧アップ制御が実行中であると判定された場合には実行判定フラグをオン状態にしてもよい。
異常仮判定部8004は、変速比異常が発生しているか否かを判定する。異常仮判定部8004は、たとえば、実変速比と目標変速比との差の大きさがしきい値以上の状態が予め定められた時間以上継続する場合に変速比異常が発生していると判定する。
しきい値は、たとえば、実変速比が目標変速比に到達していないと判定するための値である。予め定められた時間は、たとえば、無段変速機500に異常が発生していない場合に実変速比が目標変速比に到達するまでの時間の上限値よりも大きい値である。
なお、異常仮判定部8004は、たとえば、変速比異常が発生していると判定する場合に異常判定フラグをオン状態にしてもよい。また、異常仮判定部8004は、たとえば実変速比と目標変速比との差の大きさがしきい値以上の状態であって、かつ、実変速比の変化率の大きさがしきい値よりも小さい状態である場合に変速比異常が発生していると判定してもよい。
ベルト挟圧制御部8006は、ベルト挟圧アップ制御が実行中でない場合であって、かつ、変速比異常が発生している場合にベルト挟圧アップ制御を実行する。挟圧アップ制御を実行する場合には、ベルト挟圧制御部8006は、第2油圧アクチュエータ2090に供給される油圧の下限ガード値を所定量だけ上昇させる。本実施の形態において、ベルト挟圧制御部8006は、変速比異常が発生していない場合の下限ガード値A(0)に所定量を加算した値A(1)を下限ガード値として設定する。ベルト挟圧制御部8006は、第2油圧アクチュエータ2090に供給された油圧が下限ガード値A(1)を下回らないようにSLS2030を制御する。
なお、ベルト挟圧制御部8006は、たとえば、実行判定フラグがオフ状態であって、かつ、異常判定フラグがオン状態である場合にベルト挟圧アップ制御を実行してもよい。
モード判定部8008は、ベルト挟圧アップ制御が実行中であって、かつ、変速比異常が発生している場合に、第2オンオフバルブ2110がオン状態となるモードが選択されているか否かを判定する。
具体的には、モード判定部8008は、第3モードおよび第4モードのうちのいずれかのモードが選択されているか否かを判定する。モード判定部8008は、たとえば、第3モードが選択されていることを示す第3モードフラグと、第4モードが選択されていることを示す第4モードフラグとのうちのいずれかがオン状態である場合に、第3モードおよび第4モードのうちのいずれかのモードが選択されていると判定してもよい。
あるいは、モード判定部8008は、たとえば、第1モードが選択されていることを示す第1モードフラグおよび第2モードが選択されていることを示す第2モードフラグがいずれもオフ状態である場合に、第3モードおよび第4モードのうちのいずれかのモードが選択されていると判定してもよい。
あるいは、モード判定部8008は、たとえば、第2オンオフバルブ2110がオン状態となるように第2オンオフバルブ2110が制御されている場合に、第3モードおよび第4モードのうちのいずれかのモードが選択されていると判定してもよい。
なお、モード判定部8008は、たとえば、実行判定フラグがオン状態であって、かつ、異常判定フラグがオン状態である場合に、第3モードおよび第4モードのうちのいずれかのモードが選択されているか否かを判定し、第3モードおよび第4モードのうちのいずれかのモードが選択されていると判定された場合に、モード判定フラグをオン状態にしてもよい。
異常特定部8010は、モード判定部8008によって第3モードおよび第4モードのうちのいずれかのモードが選択されていると判定された場合に、変速比異常の発生要因がSLP2020の異常によるものであるか、第1オンオフバルブ2100の異常によるものであるかを特定する。
異常特定部8010は、たとえば、第2オンオフバルブ2110がオン状態となった後の予め定められた期間に変速比異常が解消する場合には、第1オンオフバルブ2100が異常状態であると特定する。
また、異常特定部8010は、たとえば、予め定められた期間が経過した後においても変速比異常が解消しない場合には、SLP2020が異常状態であると特定する。
予め定められた期間の始期は、第2オンオフバルブ2110がオン状態となった時点であってもよいし、変速比異常が発生したと判定された時点であってもよい。また、予め定められた期間は、少なくとも第1オンオフバルブ2100がオン故障した状態で第2オンオフバルブ2110がオフ状態からオン状態に移行してからフェールセーフバルブ2070のスプール弁2072の位置が図7に示される位置になるまでに必要な時間の上限値よりも長い期間であることが望ましい。
異常時処理部8012は、異常特定部8010によって第1オンオフバルブ2100およびSLP2020のうちのいずれかが異常状態であると特定された場合に、異常時に対応した処理(以下、異常時処理と記載する)を実行する。
異常時処理部8012は、たとえば、運転席の警告等を点灯させるようにしてもよい。あるいは、異常時処理部8012は、車両1に異常診断装置(図示せず)が接続された場合に異常診断装置が作業者に異常の発生個所を通知するために異常診断装置が参照するECU8000の所定の記憶領域に異常に関連する情報を記憶させてもよい。
あるいは、異常時処理部8012は、異常の発生箇所に応じた処理を実行してもよい。たとえば、異常時処理部8012は、SLP2020が異常状態であることを特定した場合には、第2モードを選択してもよい。すなわち、異常時処理部8012は、たとえば、第1オンオフバルブ2100をオン状態とし、第2オンオフバルブ2110をオフ状態としてもよい。このようにすると、第1油圧アクチュエータ2080に対してSLS2030によって制御された油圧を供給することができる。これにより、車両1の退避走行を行なうことができる。
また、特に、IGオフによって第1油圧アクチュエータ2080に供給される油圧が下限値となる場合には、その後のIGオンされると、SLP2020の故障により第1油圧アクチュエータ2080の油圧を増加させることができない場合がある。また、IGオフによって第2油圧アクチュエータ2090の油圧が低下し、第1油圧アクチュエータ2080の油圧が十分に低下しない場合には、変速比が増速側に変化する(アップシフトする)場合がある。そのため、車両1の発進時にベルト510の滑りが発生する場合がある。
そこで、本実施の形態においては、異常時処理部8012は、SLP2020が異常状態であることを特定した場合には、イグニッションオフ状態(以下、IGオフと記載する)からイグニッションオン状態(以下、IGオンと記載する)に移行した後に第2モードを選択するものとする。
このようにすると、第2調圧バルブ2050から出力される油圧を第1油圧アクチュエータ2080にも供給することができるため、第1油圧アクチュエータ2080の油圧を増加させることができる。そのため、車両1の発進時にベルト510の滑りの発生を抑制することができる。
本実施の形態において、実行判定部8002と、異常仮判定部8004と、ベルト挟圧制御部8006と、モード判定部8008と、異常特定部8010と、異常時処理部8012とは、いずれもECU8000のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
図10を参照して、本実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECU8000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU8000は、ベルト挟圧アップ制御が実行中であるか否かを判定する。ベルト挟圧アップ制御が実行中である場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、処理はS110に移される。なお、ベルト挟圧アップ制御については上述したとおりである。
S102にて、ECU8000は、変速比異常が発生しているか否かを判定する。なお、変速比異常が発生しているか否かの判定方法については上述したとおりである。変速比異常が発生している場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合(S102にてNO)、この処理は終了する。
S104にて、ECU8000は、第3モードおよび第4モードのうちのいずれかが選択されているか否かを判定する。第3モードおよび第4モードのうちのいずれかが選択されている場合(S104にてYES)、処理はS106に移される。もしそうでない場合(S104にてNO)、この処理は終了する。
S106にて、ECU8000は、変速比異常の発生要因を特定する。発生要因の特定方法については上述したとおりである。S108にて、ECU8000は、異常時処理を実行する。S110にて、ECU8000は、変速比異常が発生しているか否かを判定する。変速比異常が発生している場合(S110にてYES)、処理はS112に移される。もしそうでない場合(S110にてNO)、この処理は終了する。S112にて、ECU8000は、ベルト挟圧アップ制御を実行する。
次に、図11を参照して、本実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECU8000で実行される異常時処理の一例のプログラムの制御構造について説明する。
S200にて、SLP2020の異常が検出されたか否かを判定する。SLP2020の異常が検出された場合(S200にてYES)、処理はS202に移される。もしそうでない場合(S200にてNO)、この処理は終了する。
S202にて、ECU8000は、IGオフからIGオンに移行したか否かを判定する。IGオフからIGオンに移行した場合(S202にてYES)、処理はS204に移される。もしそうでない場合(S202にてNO)、この処理は終了する。
S204にて、ECU8000は、第2モードを選択する。ECU8000は、選択された第2モードにしたがって第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110を制御する。すなわち、ECU8000は、第1オンオフバルブ2100をオン状態にし、第2オンオフバルブ2110をオフ状態にする。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る無段変速機の制御装置であるECU8000の動作について図12および図13を参照しつつ説明する。
<変速比異常の発生要因の特定について>
たとえば、SLP2020および第1オンオフバルブ2100のうちの少なくともいずれかの故障によって目標変速比(図12の一点鎖線)がγ(0)であるのに対して実変速比(図12の実線)がγmaxである場合を想定する。また、ベルト挟圧アップ制御は実行されていないものとする(S100にてNO)。そのため、第2油圧アクチュエータ2090に供給される油圧の下限ガード値がA(0)とされる。
実変速比と目標変速比との差の大きさがしきい値以上の状態が予め定められた時間が経過するまで継続する場合に、時間T(0)にて、変速比異常が発生していると判定される(S110にてYES)。そのため、ベルト挟圧アップ制御が実行される(S112)。
ベルト挟圧アップ制御が実行されることによって、下限ガード値がA(0)からA(1)に引き上げられる。その結果、第2油圧アクチュエータに供給される油圧が下限ガード値A(1)を下回らないようにSLS2030が制御される。
そのため、時間T(1)にて、運転者がアクセルペダルの踏み込みを解除した場合、図12の破線に示されるように下限ガード値を引き上げない場合には実変速比と目標変速比との乖離幅が縮小するのに対して、下限ガード値を引き上げる場合には実変速比と目標変速比とが乖離した状態が維持される。これにより、変速比異常の誤判定が抑制される。
ベルト挟圧アップ制御の実行中であって(S100にてYES)、変速比異常が発生している場合であって(S102にてYES)、かつ、第3モードまたは第4モードが選択されている場合には(S104にてYES)、変速比異常の発生要因が特定される(S106)。
図12に示すように、たとえば、変速比異常が発生していると判定された時間T(0)から予め定められた期間が経過するまで実変速比と目標変速比との乖離が解消しない場合には、SLP2020が異常状態であることが特定される。そして、異常時処理が実行される(S108)。
<異常時処理について>
たとえば、SLP2020が異常状態であることが特定された後にIGオフされた場合を想定する(S200にてYES)。このとき、車両1は停車中であり、実変速比は、γmaxとγminとの間のγ(1)であるものとする。
第1オンオフバルブ2100および第2オンオフバルブ2110は、いずれもオフ状態であり、第1油圧アクチュエータ2080および第2油圧アクチュエータ2090に供給される油圧も低下しているものとする。
時間T(2)にて、IGオンされた場合に、第2モードが選択される。そのため、図13の実線に示すように、第2調圧バルブ2050から第2油圧アクチュエータ2090に供給される油圧が増加するとともに第2調圧バルブ2050から第1油圧アクチュエータ2080に供給される油圧も増加する。
第1油圧アクチュエータ2080に供給される油圧の増加により、実変速比がγmaxに戻っていない場合においても、ベルト滑りの発生が抑制される。そのため、時間T(3)にてアクセルペダルが踏み込まれた場合に速やかに車両を発進させることができる。
一方、図13の太破線に示すように、第2モードが選択されない場合、すなわち、第1オンオフバルブ2100がオフ状態のままである場合には、SLP2020が異常状態であることにより第1油圧アクチュエータ2080に供給される油圧が上昇しない。
また、第1油圧アクチュエータ2080に供給される油圧が上昇せず、実変速比がγmaxに戻っていないため、ベルト滑りが発生して実変速比がγmaxを超えて大きく上昇する。
以上のようにして、本実施の形態に係る無段変速機の制御装置によると、第2オンオフバルブ2110からフェールセーフバルブ2070に油圧が供給される場合には、第1オンオフバルブ2100の異常の有無にかかわらず第1調圧バルブ2040と第1油圧アクチュエータ2080とを連通する油路が形成される。第1調圧バルブ2040と第1油圧アクチュエータ2080とを連通する油路が形成されるときに変速比異常が継続する場合には、SLP2020が異常状態であると判定することができる。また、第1調圧バルブ2040と第1油圧アクチュエータ2080とを連通する油路が形成されるときに変速比異常が解消する場合には、第1オンオフバルブ2100が異常状態であると判定することができる。さらに、第2オンオフバルブ2110からフェールセーフバルブ2070に油圧が供給されない場合には、故障判定を行なわないことにより誤判定を抑制することができる。したがって、変速比に異常が発生する要因を正確に特定する無段変速機の制御装置を提供することができる。
さらに、IGオフからIGオンに移行する場合に第1オンオフバルブ2100を用いて第2調圧バルブ2050と第1油圧アクチュエータ2080とを連通する油路が形成されることにより、ベルト滑りの発生を抑制して、無段変速機を構成する部品の耐久性の悪化を抑制することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。