[go: up one dir, main page]

JP5801727B2 - ペルオキソ錯体 - Google Patents

ペルオキソ錯体 Download PDF

Info

Publication number
JP5801727B2
JP5801727B2 JP2012006498A JP2012006498A JP5801727B2 JP 5801727 B2 JP5801727 B2 JP 5801727B2 JP 2012006498 A JP2012006498 A JP 2012006498A JP 2012006498 A JP2012006498 A JP 2012006498A JP 5801727 B2 JP5801727 B2 JP 5801727B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
peroxo
compound
reaction
peroxo complex
central atom
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012006498A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013144626A (ja
Inventor
水野 哲孝
哲孝 水野
米原 宏司
宏司 米原
住田 康隆
康隆 住田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2012006498A priority Critical patent/JP5801727B2/ja
Publication of JP2013144626A publication Critical patent/JP2013144626A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5801727B2 publication Critical patent/JP5801727B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Landscapes

  • Catalysts (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

本発明は、ペルオキソ錯体に関する。より詳しくは、酸化触媒として、特に、アルケン等の不飽和結合含有化合物のエポキシ化反応触媒として好適に用いることができるペルオキソ錯体に関するものである。
ペルオキソ錯体は、中心原子となる金属元素にペルオキソ基が配位した構造を有する化合物であり、Mo(IV)、W(VI)、V(V)等といった遷移金属元素にペルオキソ基が配位した遷移金属ペルオキソ錯体等が知られている。これらは、過酸化水素と遷移金属元素とを反応して得ることができ、その特異な構造によって酸化触媒としての機能を発現することができる。例えば、タングステン(W)を中心原子とし、2つの中心原子に配位した2つの酸素原子に挟まれてセレン元素(Se)又はテルル元素(Te)を有するタングステンペルオキシド化合物が開示されている(特許文献1等参照)。このようなタングステンペルオキシド化合物は、従来から報告されていたSi、P、As、S等の元素を有するタングステンペルオキソ化合物とは異なり、そのような化合物を酸化触媒として用いる場合の課題、すなわち、該化合物が基質に対して当量必要であったり、高価なリン含有化合物やハロゲン含有溶媒を用いなければならならなかったりする等といった課題を解決し、不飽和結合含有化合物のエポキシ化反応において高い触媒活性を示すものである。
ところで、酸化触媒が適用される反応としては、オレフィン等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のエポキシ化反応によるエポキシ化合物(エポキシド)への変換が工業有機化学における基本的な反応であり重要である。通常では、過酸化水素(H)を酸化剤としてオレフィンをエポキシ化合物に変換することになる。このように環境に優しいHを酸化剤とし、酸化触媒を用いて原料化合物を酸化する反応は、エポキシドを始めとする種々の有用な化合物の工業的な製造を環境に配慮したプロセスによって実施するのに有効である。このようにして製造される化合物は、各種の工業製品の製造において用いる中間体や原料として有用なものであり、例えば、エポキシ樹脂、界面活性化剤、医薬等の有用な化合物合成における重要な中間生成物として活用することができる。
特開2010−76997号公報(1−4頁等)
上述したようなペルオキソ錯体は、構造化学、生化学、触媒、マテリアル等の各技術分野で注目されている。
これまで、 ヘテロ原子を中心としμ−η:η−O部位を有する[PO{WO(O3−等のペルオキソタングステートが種々の酸化反応に活性を示すことが明らかとなっている。また、[PPh][WO(O(CON)]等の有機配位子を有する錯体も酸化反応に高い活性を示すことが近年明らかとなったが、これには酸や塩基の添加が必要である。一方で、ヘテロ原子や有機配位子を有しない[{WO(O(μ−η:η−O)]2−や[W(O(OH)(HO)2−といったペルオキソタングステートの酸化活性はほとんどなく、ヘテロ原子や有機配位子を有さず酸化反応に高い活性を示すペルオキソタングステート触媒はまだ知られていない。
また特許文献1においては、Si、P、As、S等の元素を有するタングステンペルオキソ化合物における課題を解決するものであるが、セレン元素(Se)又はテルル元素(Te)が含まれることから、これらの元素を有しない分子構造とするための工夫の余地があった。
上記のようにヘテロ原子や有機配位子を有さず、かつ、セレン元素(Se)又はテルル元素(Te)といった特殊な元素を有さずに酸化反応に高い活性を示す化合物とすることができれば、酸化触媒等として有用な化合物を容易に調製することができる。また、各種技術分野において用いられることが期待できる新規なペルオキソ錯体を提供することができる。更に、アルケンのエポキシ化反応等の高い選択性が要求されるファインケミカルズ合成においては, 量論量の過酸による酸化反応が行われているが、危険な試薬の使用や副生成物の量を低減する触媒の開発が望まれている。ヘテロ原子や有機配位子、特殊な元素を有さずに触媒活性を示す新たなペルオキソ錯体は、そのような触媒として期待されるものである。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ヘテロ原子や有機配位子、特殊な元素を有さずに酸化反応に高い活性を示し、酸化触媒として、特に、アルケン等の不飽和結合含有化合物のエポキシ化反応触媒として好適に用いることができるペルオキソ錯体を提供することを目的とする。
本発明者は、酸化触媒としての活性を示すペルオキソ錯体について種々検討したところ、1個の中心原子からなり、複数のペルオキソ基が二座配位子として中心原子に配位した構造を有する単核ペルオキソ錯体において、中心原子を選択して特定の遷移金属元素とし、かつ、ハロゲン原子が中心原子に配位した構造を有する形態とするか、複数の中心原子からなり、複数のペルオキソ基が二座配位子として中心原子に配位した構造を有する複核ペルオキソ錯体において、中心原子を選択して特定し、かつ、ペルオキソ基の酸素原子の一つが他の中心原子に配位し、更に、酸素原子のみによって中心原子どうしが結合した構造を有する形態とした場合、酸化反応に高い活性を示すことを見いだした。特に、中心原子をタングステンとしたタングステンペルオキソ錯体は、モリブデンやバナジウムといった金属種を中心原子とするペルオキソ錯体に比べて過酸化水素分解能が低いため、それらを用いた酸化反応系の活性はより高いものとなる。そのため、上記単核ペルオキソ錯体、上記複核ペルオキソ錯体においても、中心原子をタングステンとした形態が重要である。
これら単核及び複核ペルオキソ錯体は、ヘテロ原子や有機配位子、特殊な元素を有さずに酸化反応に高い活性を示す新規なペルオキソ錯体として有用であり、これらによって上記課題を見事に解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明の第1の態様は、中心原子にペルオキソ基が配位してなるペルオキソ錯体であって、該中心原子は、周期律表の第5族及び第6族から選択される少なくとも1種の遷移金属元素であり、該ペルオキソ錯体は、1個の中心原子からなる単核ペルオキソ錯体であり、複数のペルオキソ基が二座配位子として中心原子に配位した構造を有し、更に、ハロゲン原子が中心原子に配位した構造を有するペルオキソ錯体である。
本明細書においては、上記本発明の第1の態様を単に「単核ペルオキソ錯体」ともいう。
また本発明の第2の態様は、中心原子にペルオキソ基が配位してなるペルオキソ錯体であって、該中心原子は、周期律表の第5族及び第6族から選択される少なくとも1種の遷移金属元素であり、該ペルオキソ錯体は、複数の中心原子からなる複核ペルオキソ錯体であり、複数のペルオキソ基が二座配位子として中心原子に配位した構造を有し、かつ、ペルオキソ基の酸素原子の一つが他の中心原子に配位し、更に、酸素原子のみによって中心原子どうしが結合した構造を有するペルオキソ錯体である。
本明細書においては、上記本発明の第2の態様を単に「複核ペルオキソ錯体」ともいう。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
上記単核ペルオキソ錯体の好ましい形態は、1つの中心原子に2つのペルオキソ基がそれぞれ二座配位子として配位した構造を有し、該中心原子に2つの酸素原子及び1つのハロゲン原子が配位した構造となる形態である。この単核ペルオキソ錯体において、中心原子に配位する2つの酸素原子は、HOに由来する酸素原子であることが好ましい。
また上記複核ペルオキソ錯体の好ましい形態は、複数の中心原子のそれぞれに2つのペルオキソ基がそれぞれ二座配位子として配位した構造を有し、該中心原子のそれぞれに2つの酸素原子及び1つのμ−O(中心原子どうしを結合する酸素原子)が配位した構造となる形態である。この複核ペルオキソ錯体において、中心原子のそれぞれに配位する2つの酸素原子のうちの1つは、隣接する中心原子に配位しているペルオキソ基が有する2つの酸素原子のうちの1つである。
上記好ましい形態において、ペルオキソ基及びμ−Oを含めた酸素原子は、硫黄原子であってもよいが、酸素原子が最も好適である。
なお、本発明において、ある原子が中心原子に配位しているという場合、配位結合を形成していることが好ましいが、共有結合、イオン結合、分子間力による結合等であってもよく、ある原子が中心原子と何らかの化学的結合力によって結びつき、中心原子に配位していると認められればよい。
上記単核ペルオキソ錯体の好ましい形態を化学式で表すと、下記一般式(1)又は(2)で表され、また、上記複核ペルオキソ錯体の好ましい形態を化学式で表すと、下記一般式(3)又は(4)で表される。
[XO(O(HO)Y] (1)
[XO(OY]2− (2)
[{XO(O(μ−O)4− (3)
〔{XO(O(μ−O)8− (4)
上記一般式中、Xは、中心原子を表す。複核ペルオキソ錯体の場合、複数あるXは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子を表す。
本発明のペルオキソ錯体は、上記一般式で表されるようにアニオンの形態である化合物であってもよく、カチオンを有する化合物であってもよい。カチオンを有する場合、上記単核ペルオキソ錯体、上記複核ペルオキソ錯体はそれぞれ、下記一般式(1’)〜(4’)のように表すことができる。
A[XO(O(HO)Y] (1’)
[XO(OY] (2’)
[{XO(O(μ−O)] (3’)
〔{XO(O(μ−O)〕 (4’)
上記一般式中、X、Yは、上記と同様である。Aは、カチオンを表す。nは、1〜8の数を表す。Aが複数ある場合、Aは同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明のペルオキソ錯体において、上記中心原子(一般式(1)〜(4)、(1’)〜(4’)のXで表されるもの)は、周期律表の第5族及び第6族から選択される少なくとも1種の遷移金属元素である。
なお、上記族番号は、旧族番号で表すと、第5A族(VA)、第6A族(VIA)となる。
上記第5族及び第6族に属する遷移金属元素としては、例えば、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)が挙げられ、その他にも、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)等が挙げられる。
また、上記各一般式において、一般式(1)、(3)、(1’)、(3’)は、Xが第6族から選択される遷移金属元素(モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)等)の場合であり、一般式(2)、(4)、(2’)、(4’)は、Xが第5族から選択される遷移金属元素(バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等)の場合である。
本発明においては、いずれの元素を選択しても、同族元素は同様の化学特性をもつことから、その効果に差異はあるが同様の触媒作用を発揮するといえる。族番号が違うものであっても、族番号が隣接すること、また、すべて遷移金属元素としての特性を有することから、後述する実施例において触媒としての作用が証明された実施形態以外の形態であっても、その効果に差異はあるが同様の触媒作用を発揮するといえる。
上記中心原子としては、タングステン及び/又はモリブデンであることが好ましい。すなわち、単核ペルオキソ錯体の場合、中心原子がタングステン又はモリブデンであることが好ましく、複核ペルオキソ錯体の場合、複数ある中心原子がすべてタングステンであってもよく、すべてモリブデンであってもよく、また、タングステンとモリブデンとが混在していてもよい。
上記中心原子の最も好ましい形態は、タングステンである。この場合、単核ペルオキソ錯体の場合、1つの中心原子がタングステンである形態となるが、複核ペルオキソ錯体の場合、複数ある中心原子のすべてがタングステンである形態である。これらタングステンを中心原子とする形態は、酸化触媒としての活性をより高くすることができる。
上記複核ペルオキソ錯体において、複数ある中心原子の数としては、2個以上であればよく、4個、6個、8個、10個、12個等が挙げられる。好ましくは、4個以上であり、4個、6個、8個、10個、12個等であり、より好ましくは、4個である。最も好ましい形態は、中心原子が4個であり、すべてがタングステンである形態である。このように中心原子が4個の場合、μ−Oは、2個となる。すなわち、ペルオキソ基により結ばれた2個の中心原子を有する1組の原子団ともう1組の原子団との間に2個のμ−Oが存在し、中心原子どうしを結ぶことになる。
上記中心原子を有する原料としては、上記中心原子を有するものであれば特に限定されないが、以下のようなものが挙げられる。タングステン原料としては、例えば、タングステン酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸セシウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸バリウム、タングステン酸、酸化タングステン等が挙げられ、好ましくはタングステン酸である。また、バナジウム原料としては、例えば、酸化バナジウム、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸カリウム、硫酸バナジウム等が挙げられる。モリブデン原料としては、例えば、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸セシウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸、酸化モリブデン等が挙げられる。更に、ニオブ原料としては、例えば、酸化バナジウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。タンタル原料としては、例えば、酸化タンタル、タンタル酸リチウム、タンタル酸ナトリウム、タンタル酸カリウム等が挙げられる。クロム原料としては、例えば、酸化クロム、クロム酸ナトリウム、硝酸クロム、酢酸クロム等が挙げられる。
上記ハロゲン原子(一般式(1)、(1’)のYで表されるもの)としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
また、ハロゲン原子原料としては、例えば、フッ化水素、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、好ましくは塩酸である。
上記カチオン(一般式(1’)〜(4’)のAで表されるもの)としては、例えば、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、四級有機基含有アンモニウムカチオン、四級有機基含有ホスホニウムカチオン等が挙げられる。液相反応の場合には、溶媒とカチオンの種類により、触媒を均一系や不均一系にすることが可能となる。また、不飽和結合化合物のエポキシ化反応において高い触媒活性を有する点から、プロトン、四級有機基含有アンモニウムカチオン、四級有機基含有ホスホニウムカチオンが好ましい。
上記四級有機基含有アンモニウムカチオンにおける4個の有機基は、全て同じでも各々異なっていてもよく、全て同じアルキル基であることが好ましい。当該有機基としては、好ましくは炭素数1〜12であり、より好ましくは炭素数1〜10であり、更に好ましくは直鎖状の炭素数1〜8である。すなわち、四級有機基含有アンモニウムカチオンとしては、炭素数4〜48のものが好ましく、より好ましくは炭素数4〜40のものである。
上記四級有機基含有アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、トリラウリルメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオン、セチルピリジニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラ−n−プロピルアンモニウムカチオン、テトラ−n−ブチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオンが好ましい。より好ましくは、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラ−n−ブチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオンである。
上記のカチオン原料としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物塩、酢酸塩、リン酸塩、水酸化物塩等が挙げられ、好ましくは、硝酸塩、ハロゲン化物塩、酢酸塩、水酸化物塩である。硝酸塩を使用すると、不純物の混入やタングステンへの配位を防ぎ、前記タングステンペルオキシド構造を保持しやすい。
本発明のペルオキソ錯体の好ましい形態としてはまた、リン原子、砒素等のヘテロ原子を有しない形態、有機配位子を有しない形態、セレン元素(Se)及びテルル元素(Te)といった特殊な元素を有しない形態が挙げられる。最も好ましくは、これらの形態がすべてあてはまる形態である。本発明においては、これらの元素、原子団を有しないで高い触媒活性等の有利な特性を発揮させることができるという点において、重要な技術的意義を有する。このような好ましい形態においては、酸化触媒等として有用なペルオキソ錯体を容易に調製することができるという点において、また、各種技術分野において用いられることが期待できる新規なペルオキソ錯体を提供することができるという点において有利となる。例えば、タングステンを高分散させるための前駆体として使用することが可能であると考えられる。また、危険な試薬の使用や副生成物の量を低減することができる触媒となるという点において有利となる。
なお、有機配位子を用いない単核ジペルオキソタングステートの報告例はこれまでに無い。したがって、単核ジペルオキソタングステートであって、有機配位子を有しないとだけで特定される化合物も、新規化合物であるといえる。
本発明のペルオキソ錯体の好ましい形態を例示すれば、単核ペルオキソ錯体としては、[WO(O(HO)Cl]、[WO(O(HO)F]、[WO(O(HO)Br]、[WO(O(HO)I]等を、複核ペルオキソ錯体としては、[{WO(O(μ−O)4−等を挙げることができる。
またカチオンを有する場合の好ましい形態としては、単核ペルオキソ錯体としては、(TPA)[WO(O(HO)Cl](TPA=[(n−CN])、(TBA)[WO(O(HO)Cl](TBA=[(n−CN])、(THA)[WO(O(HO)Cl](THA=[(n−C13N])、(CP)[WO(O(HO)Cl](CP=セチルピリジニウム)等を、複核ペルオキソ錯体としては、(TPA)H[{WO(O(μ−O)]、(TBA)H[{WO(O(μ−O)]、(THA)H[{WO(O(μ−O)]、(CP)H[{WO(O(μ−O)]等を挙げることができる。
本発明のペルオキソ錯体の好ましい形態の立体構造(アニオン構造)を示せば、単核ペルオキソ錯体としては、図1のようになり、複核ペルオキソ錯体としては、図2のようになる。これらの図中、X、Yは、上記と同様である。
また中心原子をタングステンとした形態の立体構造(アニオン構造)は、それぞれ図3、図4のようになる。これらは、後述する実施例において合成されたペルオキソ錯体である。
本発明のペルオキソ錯体の製造方法を以下に記載する。
本発明の単核ペルオキソ錯体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記中心原子を有する原料、ハロゲン原子原料及びカチオン原料を用いて、単核ペルオキソ錯体を製造することができる。単離することなく系中で調製することも可能である。
上記ハロゲン原子原料の使用量は、製造・収率・精製・経済の点から、上記中心原子を有する原料100質量部に対して、好ましくは0.001〜100000質量部であり、より好ましくは0.01〜50000質量部である。
上記カチオン原料の使用量は、製造・収率・精製・経済の点から、上記中心原子を有する原料100質量部に対して、好ましくは0.001〜100000質量部であり、より好ましくは0.01〜50000質量部である。
また、本発明の複核ペルオキソ錯体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記中心原子を有する原料及びカチオン原料を用いて、複核ペルオキソ錯体を製造することができる。
上記カチオン原料の使用量は、製造・収率・精製・経済の点から、上記中心原子を有する原料100質量部に対して、好ましくは0.001〜100000質量部であり、より好ましくは0.01〜50000質量部である。
本発明のペルオキソ錯体の実施形態の一つであるタングステンペルオキソ錯体の製造方法を以下に記載する。しかしながら、本発明は下記の実施形態に制限されるものではない。
まず、タングステンペルオキソ錯体の中でも、単核タングステンペルオキソ錯体の1つである(n−CN[WO(O(HO)Cl](I)の製造方法の1例について記載する。
タングステン酸と塩酸を過酸化水素水溶液に加え、撹拌する。次に、得られた溶液を濾別して不溶物を除き、テトラ−n−プロピルアンモニウムクロライドを加えて撹拌する。生成した沈殿物を濾別し、水とジエチルエーテルで洗浄する。得られた白色沈殿物を乾燥後、アセトニトリルに溶解させ、そのアセトニトリル溶液へエーテルを蒸気拡散させて、上記化合物(I)を得る。
次に、タングステンペルオキソ錯体の中でも、複核タングステンペルオキソ錯体の1つである(n−CH[{WO(O(μ−O)](II)の製造方法の1例について記載する。
アセトニトリルと過酸化水素水溶液を混合し、撹拌する。この溶液中で、上記のようにして得られた化合物(I)と硝酸銀を反応させる。エーテルを混合後、エーテルを蒸気拡散させ、無色四角板状結晶の化合物(II)を得る。
上記製造方法で使用する過酸化水素の濃度としては、特に限定されず、100質量%の過酸化水素も使用可能である。しかし、入手し易さと安全に取り扱うことを考慮すると0.1〜70質量%の水溶液が好適であり、より好ましくは3〜65質量%である。
上記製造方法においては、溶媒を使用することができる。当該溶媒としては、特に限定されないが、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類;メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の含窒素化合物;ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物;リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。好ましくはアセトニトリル、ベンゾニトリル、ジエチルエーテル、水、ヘキサン、トルエンである。
上記溶媒の使用量としては、製造・収率・精製・経済・安全の点から、上記中心原子を有する原料100質量部に対して、好ましくは0.0001〜1000000質量部であり、より好ましくは0.001〜500000質量部である。
反応温度としては、製造・収率・精製・経済・安全の点から、好ましくは−20〜200℃であり、より好ましくは−10〜190℃である。
反応時間としては、収率・経済・安全の点から、好ましくは0.1〜72時間であり、より好ましくは0.5〜60時間である。
本発明のペルオキソ錯体は、種々の酸化反応や酸塩基反応等の有機反応用の触媒として用いることができ、中でも酸化反応や酸塩基反応を液相で行う際に好適に用いられる。該触媒は、ペルオキソ錯体を含んでいればどのような形態でもよく、具体的には、α−アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機担体に坦持したもの、結晶状、又は、反応溶媒に溶解させる等のいずれの形態でも使用でき、他の触媒と混合することも可能である。
上記酸化反応の具体例としては、特に限定されず、例えば、不飽和結合の酸化(アルケンやアルキンの不飽和二重結合や不飽和三重結合の酸化);水酸基の酸化;ヘテロ原子の酸化(硫黄原子や窒素原子等の酸化);飽和炭化水素部位の酸化;芳香環の酸化;これら以外の酸化カップリング反応等の酸化反応等が挙げられる。このような酸化反応により被酸化性官能基が酸化され、酸化された有機化合物が製造されることになる。
上記酸塩基反応の具体例としては、特に限定されず、例えば、エステル化反応;炭素骨格異性化反応;重合反応;付加反応;開環反応;脱離反応;アセタール化反応;ケタール化反応;芳香族求電子置換反応;芳香族求核置換反応;アルドール反応;ピナコール転移反応;ベックマン転移反応;カニッツァロ反応;クライゼン縮合反応;ダルゼンズ縮合反応;ディールズアルダー反応;フリーデルクラフツ反応;フリース転移反応;ガッターマン・コッホ反応;マンニッヒ反応;マイケル反応;プリンス反応;グリコシル化反応;加溶媒分解反応;1,3−双極性環状付加反応;これら以外の酸塩基反応等が挙げられる。
上記反応は、気相反応又は液相反応のいずれの反応方法においても、本発明の触媒を使用することが可能であるが、例えば、過酸化水素を酸化剤として用いたアルケンのエポキシ化反応を行う場合には、反応活性を考慮すると液相中で反応を行うことがより好ましい。アルケンの酸化剤によるエポキシ化反応について以下に例示する。
エポキシ化反応において使用するアルケンとしては、非環式であっても環式であってもよく、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、イソプレン、ジイソブチレン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、プロピレンのトリマー及びテトラマー類、1,3−ブタジエン、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の末端オレフィン;2−ブテン、2−オクテン、2−メチルー1−ヘキセン、2,3−ジメチルー2−ブテン等の分子内オレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−メチル−1−シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロデカトリエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンシクロプロパン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の環式オレフィン等が挙げられる。アルケンの種類としては、一種又は二種以上を用いることができる。一分子中に存在する二重結合部位は、一個であってもよいし、二個以上であってもよい。
上記エポキシ化反応に用いられるアルケンは、例えば、−CHO、−COOH、−CN、−COOR、−OR(Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアリールアルキル置換基を表す)、芳香族基、ハロゲン基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボニル基、水酸基等の官能基を有していても良い。一分子中に存在する二重結合部位は、一個であってもよいし、二個以上であってもよい。これらの中でも水酸基を有するアルケンが特に好ましい。水酸基を有するアルケンとしては、アリルアルコール類、ホモアリルアルコール類等が挙げられる。ホモアリルアルコール類としては、例えば、イソプロペニルアルコール、3−ブテノール、3−メチル−3−ブテノール、3−ペンテノール、4−メチル−3−ペンテノール、3−ヘキセノール、1−メチル−3−ヘキセノール、3−ヘプテノール、3−オクテノール、3−ノネノール、3−デセノール、3−ウンデセノール、3−ドデセノール、3−シクロヘキセノール、3−シクロオクテノール等が挙げられる。
前記エポキシ化反応の酸化剤としては、過酸化水素が好ましく、実用的には0.1〜70質量%の水溶液、アルコール類の溶液が好適であるが、100質量%の過酸化水素も使用可能である。使用量としては、反応基質と過酸化水素のモル比(反応基質のモル数/過酸化水素のモル数)が100/1以下となるようにすることが好ましく、より好ましくは10/1以下である。また、1/100以上となるようにすることが好ましく、より好ましくは、1/50以上である。
本発明のペルオキソ錯体の使用量としては、反応基質100質量部に対して、0.0001質量部以上、10000質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.001質量部以上、5000質量部以下である。また、2種以上のペルオキソ錯体を触媒として用いる場合には、その合計質量を前記範囲内になるように調整するのが好ましい。
上記エポキシ化反応を液相中で行う場合、溶媒としては、例えば、水及び/又は有機溶媒等を用いることができる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類;ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の窒素化合物;リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。有機溶媒としては、一種又は二種以上用いることができる。
上記溶媒の中でも、水、炭素数1〜4のアルコール類、ジクロロメタン、ヘプタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等や、これらの混合物を用いることが好ましい。オレフィン化合物が反応条件において液体である場合には、前記溶媒を使用することなくニートで反応を行うことも可能である。本発明においては、前記ペルオキソ錯体のカウンターカチオン種と溶媒の選択により触媒を不均一化することも可能である。この場合、例えば、四級アルキルアンモニウム、プロトンの少なくとも一つをカウンターカチオンに選び、ニトロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートから選ばれる少なくとも一つの溶媒を使用することがより好ましい。
上記エポキシ化反応は、中性〜酸性溶液中で実施することが好ましく、pH調整のために反応系中に酸性物質を加えても良い。酸性物質としては、例えば、ブレンステッド酸、ルイス酸等が挙げられ、一種又は二種以上を用いることができる。ブレンステッド酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸や、酢酸、安息香酸、蟻酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類;ゼオライト類、混合酸化物類等の無機酸類が好適である。ルイス酸としては、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化ホウ素化合物、塩化第二錫、フッ化アンチモン、塩化亜鉛、チタン化合物、ゼオライト類、複合酸化物等が好適である。また、無機及び/又は有機の酸性塩を用いることもできる。
上記エポキシ化反応において、相間移動触媒や界面活性剤を共存させることができる。また光照射下での反応を行うことも可能である。
液相反応におけるエポキシ化反応の反応温度は、0℃以上が好ましく、より好ましくは15℃以上である。また100℃以下が好ましく、より好ましくは、80℃以下である。反応時間は、1分間以上、150時間以内が好ましい。より好ましくは、3分間以上、48時間以内である。反応圧力は、特に限定されないが、2.03MPa以下が好ましい。より好ましくは、1.02MPa以下であり、減圧下で反応を行うこともできる。
本発明のペルオキソ錯体の用途としては、上述したように酸化触媒として用いられることが好ましい。一般的に、ペルオキソ錯体を適用することができる酸化反応であれば上記単核ペルオキソ錯体、上記複核ペルオキソ錯体ともに酸化触媒として適用することができる。
種々の酸化触媒の中でも、本発明のペルオキソ錯体は、上述したようにアルケンのエポキシ化反応触媒として用いられることが好ましい。エポキシ化反応は、工業有機化学における基本的な反応の一つであり、該エポキシ化反応によって得られるエポキシ化合物は、種々の工業化学用途において有用な化合物である。
例えば、エポキシ化合物を中間化合物とする工業製品の製造例としては、エチレンオキシドをエチレングリコールやポリエチレングリコールに変換することが行われており、また、プロピレンオキシドによりアルコールをアルコキシレート化してポリプロピレンポリエーテル等のポリエーテルポリオール類が形成されている。このように製造された工業製品は、ポリウレタン及び合成エラストマー類の製造において多量に消費されている。またエポキシ化合物は、溶剤や界面活性剤の原料として重要な工業製品の一つであるプロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール類やアルカノールアミン類の製造における重要な中間体でもある。更に、分子内にエポキシ基以外の官能基を有する化合物は、それら官能基の反応性を活かして種々の誘導体を合成できる中間体として利用でき、例えばアリルアルコールの二重結合がエポキシ化されたグリシドールは、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリセリンエーテル、グリセリンエステル、ジヒドロキシプロピルアミン等、医薬品及びその中間体、塗料、接着剤、半導体用UV硬化剤等の原料として有用な化合物である。
本発明では、新規な単核ペルオキソ錯体及び複核ペルオキソ錯体を得た。当該ペルオキソ錯体は、ヘテロ原子や有機配位子、特殊な元素を有さずに酸化反応に高い活性を示し、酸化触媒として、特に、アルケン等の不飽和結合含有化合物のエポキシ化反応触媒として好適に用いることができる。
本発明の単核ペルオキソ錯体の好ましい形態の立体構造(アニオン構造)を示す図である。 本発明の複核ペルオキソ錯体の好ましい形態の立体構造(アニオン構造)を示す図である。 中心原子をタングステンとした単核ペルオキソ錯体の好ましい形態の立体構造(アニオン構造)を示す図である。 中心原子をタングステンとした複核ペルオキソ錯体の好ましい形態の立体構造(アニオン構造)を示す図である。 化合物(I)及び化合物(II)のIRスペクトル(それぞれ(a)、(b))を示す図である。 化合物(I)及び化合物(II)のラマンスペクトル(それぞれ(a)、(b))を示す図である。 化合物(II)の反応速度を示すグラフである。 シクロオクテンのエポキシ化反応のTOFを示すグラフである。 TOFと183W−NMRの化学シフトとの相関を示すグラフである。 化合物(I)及び化合物(II)の183W−NMRスペクトル(それぞれ(a)、(b))を示す図である。 化合物(I)のポジティブイオンCSI−MSスペクトル(上部)及び計算されたパターン(下部)を示す図である。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、「TPA」は「テトラ−n−プロピルアンモニウム」を意味する。
(実施例1)(TPA)[WO(O(HO)Cl](I)の合成
タングステン酸(HWO、1.7mmol)と12M塩酸(20mmol)を15%過酸化水素水(42mmol)に加え、この過酸化水素溶液に、テトラ−n−プロピルアンモニウムクロライド(TPA・Cl、30mmol)を加えて粗生成物を得た。そのアセトニトリル溶液へ0℃でエーテルを蒸気拡散させることで、化合物(I)を合成した。
化合物(I)と過酸化水素を含むアセトニトリル溶液へエーテルを加え、更にエーテル蒸気を拡散させることにより、X線構造解析に適した無色四角板状結晶を得た。化合物(I)のアニオン構造を図3に示した。アニオンは7配位のpentagonal bipyramidal構造を有しており、2つのペルオキソ配位子とCl配位子がエクアトリアル位に位置している。アキシアル位に位置するO1、O6のBVS値はそれぞれ0.28、1.90であり、それぞれアコ、オキソと推定した。
元素分析から、化合物(I)にはClが存在し、TPA:W:Cl=1:1:1であった。ペルオキソ配位子に帰属されるバンドが、IRスペクトル(851、837、643、554cm−1)及びラマンスペクトル(860、648、563cm−1)に確認できた(図5及び図6の(a))。アコ配位子のν(O−H)に由来するIR吸収バンドが3636cm−1に確認された。ν(W−Cl)に帰属されるバンドがIRスペクトル、ラマンスペクトルでそれぞれ336cm−1、319cm−1に確認された。これらの結果は結晶構造と一致した。
化合物(I)によるトリフェニルホスフィンの量論酸化反応では、2当量のトリフェニルホスフィンオキシドが生成し、化合物(I)に2当量のペルオキソが存在することと一致した。
化合物(I)の183W−NMRスペクトルでは−407.3ppm(Δν1/2=4.4Hz)に単一シグナルが確認できた(図10の(a))。また、ポジティブイオンCSI−MSスペクトルでは、[(TPA)WO(OCl]が確認でき、溶存状態で安定であった(図11)。
化合物(I)の結晶データを表1に示す。その他、分析結果を以下に示す。UV/Vis(CHCN) λmax(ε)269.0nm(1270(mol of W)−1dmcm−1); IR(KCl):3636、1174,1039,975,875,851,837,755,643,554,336,323cm−1; ラマン:v=1146,1133,1046,985,944,930,881,860,783,762,648,621,563,378,319cm−1; MS(+)(CSI,CHCN):m/z:672 [(TPA)WO(OCl]; 元素分析 calcd(%)for C1230Cl((TPA)[WO(O(HO)Cl]): C28.62,H6.00,N2.78,Cl7.04,W36.50; found:C28.54,H6.10,N2.79,Cl7.17,W36.74。
(実施例2)(TPA)H[{WO(O(μ−O)](II)の合成
アセトニトリル(5mL)に30%過酸化水素水(0.5mL)を加え、この過酸化水素水溶液の混合液中で、上記実施例1で得られた化合物(I)(1.0mmol)と硝酸銀(1.0mmol)を反応させた。当該反応液に、エーテルを混合後、更にエーテルを蒸気拡散させることにより、X線構造解析に適した無色四角板状結晶の化合物(II)を得た。
化合物(II)のアニオン(図4)は2つの[{WO(O(μ−O)]2−ユニットから構成されている。二核ペルオキソタングステート[{WO(O(μ−O)]2−及び[{WO(O(μ−O)]2−ではユニット内でペルオキソがタングステンを架橋している。それとは異なり、化合物(II)では、ペルオキソがユニット間でタングステンを架橋している。結晶構造中にTPAは3つ確認でき、元素分析もTPA:W=3:4であったことから、分子式は(TPA)H[{WO(O(μ−O)]と推定した。O21、O22のBVS値はそれぞれ1.77、1.55となったことから、O21とO22の間にHが存在し、水素結合していると考えられた。また、化合物(II)のアニオン構造(O21とO22の間にHが存在する構造[{WO(O(μ−O)H]3−(A)とO21とO22の間にHが存在しない構造[{WO(O(μ−O)4−(B))の量子計算を行ったところ、Aの計算構造は実験値とよく一致し、結合長の誤差は0.072Å以内であったが、Bの場合の結合長の誤差は0.121Å以内であった。W1−O21−W3、W2−O22−W4の結合角の誤差は、Aの場合は1.90°以内であったが、Bの場合の誤差は16.48°以内であった。これらの結果は、O21とO22の間に水素が存在していることを支持した。(表4〜6)
ペルオキソ配位子に帰属されるバンドが、IRスペクトル(844、573、511cm−1)及びラマンスペクトル(859、580、526cm−1)に確認された(図5と図6の(b))。化合物(II)によりトリフェニルホスフィンを量論酸化すると、トリフェニルホスフィンオキシドが8当量生成した。これは分子内に8当量のペルオキソが存在することと一致した。また、化合物(II)の183W−NMRでは1本のシグナルが−565.6ppm(Δν1/2=1.6Hz)に現れ、溶存状態でタングステン4核構造が保持されていることが示唆された。
化合物(II)の結晶データを表1に示す。その他、分析結果を以下に示す。UV/Vis(CHCN)λmax(ε)269.0nm(1270(mol of W)−1dmcm−1); IR(KCl):1038,981,967,844,755,707,670,642,585,573,511,377cm−1; ラマン:v=1136,1105,1036,973,859,580,526,309cm−1; 元素分析 calcd(%)for C368522((TPA)H[{WO(O(μ−O)]): C26.25,H5.20,N2.55,W44.64; found:C26.01,H5.31,N2.53,Cl7.17,W44.45。
本化合物はまた、下記の工程で合成することも可能である。
WO(4mmol)を30%過酸化水素水(4mL)に加え、90分間室温で攪拌した。1MのTPAOH溶液(4mL)を加えて攪拌し、得られた固体を濾過した。濾液を2mL程度にまで、減圧下室温で濃縮し、この溶液をジエチルエーテル/イソプロパノール=80/20(mL/mL)に一滴ずつ加えて、得られた固体を濾過してジエチルエーテルで洗浄した。この固体(50mg)をアセトニトリル(0.8mL)に溶かし、293Kで更にエーテル蒸気を拡散させることにより(TPA)[{WO(O(μ−O)]を得た。(TPA)[{WO(O(μ−O)](58μmol)と70%硝酸(100μmol)を、アセトニトリル(0.5mL)に30%過酸化水素水(0.05mL)を溶かした溶液に溶かした。ジエチルエーテル(0.5mL)を加え、277Kで更にエーテル蒸気を拡散させることにより無色四角板状結晶の化合物(II)を得た。
(実施例3)エポキシ化
以下のようにして化合物(I)及び化合物(II)の触媒活性を調べた。過酸化水素を酸化剤として化合物(I)を用いてシクロオクテンをエポキシ化したところ、反応はかなりゆっくり進行した。化合物(II)を触媒とした場合にはシクロオクテンは効率的に酸化され、30分で対応するエポキシドが収率98%で得られた(図7)。過酸化水素を酸化剤としたシクロオクテンのエポキシ化反応を行った。量論条件(基質:過酸化水素=1:1)で化合物(II)を用いてシクロオクテンを酸化しても、高収率で対応するエポキシドが得られた(収率86%、反応時間4時間)。
また、検討した種々の溶媒の中ではアセトニトリルが最良であった。
(実施例4)
化合物(II)を触媒として用い、以下のようにして、過酸化水素による酸化反応の基質適用性を調べた(表3)。反応は室温で効率的に進行し、環状及び内部アルケンが、対応するエポキシドへ高収率・高選択的に酸化された(表3、エントリー1−8)。分子内に2つのC=C結合をもつジシクロペンタジエンも効率的に酸化され、対応するジエポキシドが高収率・高選択的に得られた。化合物(II)は過剰量のエーテルの添加により回収が可能であった。回収した化合物(II)は大きな活性の低下なく再利用が可能であった。(化合物(II)(20μmol)、シクロオクテン(4mmol)、30%過酸化水素(4mmol)、アセトニトリル(24mL)、6時間の条件で、生成物:収率92%、再利用(1回目):収率88%であった。)
スルフィドも対応するスルホキシドへ選択的に酸化された(エントリー10、11)。2級アミンを2当量の過酸化水素を用いて酸化すると対応するニトロンが高収率・高選択的に得られた(エントリー12)。アニリンを2当量の過酸化水素を用いて酸化すると対応するニトロソベンゼンが高収率・高選択的に得られた(エントリー13)。過剰酸化生成物であるニトロベンゼンはほとんど生成しなかった。トリエチルシランも効率的に対応するシラノールへ酸化された(エントリー14)。
20mmolのシクロオクテンも化合物(II)により効率的に酸化され、対応するエポキシドを収率86%で与えた。このときのTON(ターンオーバー数)は1720に達した。この値は、[(n−C13N][{WO(O(μ−O)](600)、NaWO/NHCHPO/[CH(n−C17N]HSO(490)、PW1240/C(CHSiO/SiO(648)等の触媒システムの値よりもかなり大きい。NaWO/HWO/CH(n−C17NCl/ClCHCOOH(1800)及び[WO(O)(CPHA)]/NaHCO(7200;CPHA=N−cinnamyl−N−phenylhydroxamate)の値には及ばないが、これらは有毒な酸や多量の塩基の添加が必要である。
(実施例5)
上記実施例2で得られた触媒系の反応速度を調べた。反応速度は化合物(II)、シクロオクテンの濃度に一次に依存し、過酸化水素の濃度には依存しなかった(図7)。これらの結果から、化合物(II)が活性種であり、化合物(II)と基質との反応が律速であることが明らかとなった。
化合物(II)によるシクロオクテンのエポキシ化反応は効率的に進行し、初期TOF(ターンオーバー頻度)は314(時間)−1に達した。この値は[ZO{WO(On−(Z=P、As)、[RR’ZO{WO(On−(Z=P,Se,As等)、[{WO(O(μ−O)]触媒の中で最大である(図8)。これらの触媒の活性は183W−NMRの化学シフトと相関があることが明らかとなっている。化合物(II)についても同様の傾向が確認された(図9)。量子計算で電子密度を比較した。O4のNOBチャージは化合物(II)が最も大きい。これは化合物(II)が強い求電子性を持っていることを示した。
なお、図7〜図11の具体的な説明を以下に示す。
図7:(a)化合物(II)、(b)シクロオクテン、(c)過酸化水素の濃度に対する反応速度の依存を示す。(a)の反応条件:化合物(II)(0.23−1.44mM)、シクロオクテン(0.14M)、過酸化水素(0.14M)、水(0.56M)、アセトニトリル(7mL)、305K、スロープ=1.02(R=0.99)。(b)の反応条件:化合物(II)(0.36mM)、シクロオクテン(0.04−0.43M)、過酸化水素(0.14M)、水(0.56M)、アセトニトリル(7mL)、305K、スロープ=1.11(R=0.99)。(c)の反応条件:化合物(II)(0.36mM)、シクロオクテン(0.14M)、過酸化水素(0.04−0.43M)、水(0.56M)、アセトニトリル(7mL)、305K。
図8:過酸化水素を用いた、シクロオクテンのエポキシ化反応における様々な触媒のTOFを示す。反応条件:触媒(W:1mol%)、シクロオクテン(5mmol)、30%過酸化水素(1mmol)、アセトニトリル(6mL)、305K。過酸化水素の低濃度(≦10%)での反応からTOFを測定した。ペルオキソタングステートの略号は以下のとおり。SeW2:(TBA)[SeO{WO(O]、AsW4:(THA)[AsO{WO(O]、SW2:(TBA)[SO{WO(O]、PW4:(THA)[PO{WO(O]、AsW2:(TBA)[HAsO{WO(O}]、PW2:(TBA)[HPO{WO(O]、W2:(TBA)[{WO(O(μ−O)]、SiW2:(TBA)[PhSiO{WO(O]。
図9:TOFと183W−NMRの化学シフトとの相関を示す。反応条件は、図8と同じ。
図10:(a)化合物(I)(0.57M、CHCN中、298K)及び(b)化合物(II)(0.061M、CDCN中、253K)の183W−NMRスペクトルを示す。
図11:化合物(I)のポジティブイオンCSI−MSスペクトル(CHCN;m/z=500−1500)を示す。化合物(I)(上部)及び[(TPA)WO(O)Cl]の計算されたパターン(下部)のポジティブイオンCSI−MSスペクトル(m/z=660−690)。
また、各表は以下のものを示す。
表1:化合物(I)と(II)の結晶データ
表2:化合物(I)と(II)における各結合長さ(オングストローム)と角度(°)
表3:化合物(II)を触媒とし、過酸化水素を用いた、様々なアルケンとアミンの酸化
表4:化合物(II)における計算構造と結晶構造の結合長さ(オングストローム)
表5:計算構造のデカルト座標、[{WO(O(μ−O)H]3−
表6:計算構造のデカルト座標、[{WO(O(μ−O)4−
Figure 0005801727
Figure 0005801727
Figure 0005801727
表3における各注釈等は以下のとおり。
反応条件:化合物(II)(2.5μmol)、基質(1mmol)、30%過酸化水素(1mmol)、アセトニトリル(6mL)、大気中
[b]:化合物(II)(10μmol)、30%過酸化水素(1.5mmol)
[c]:化合物(II)(5μmol)、30%過酸化水素(1.5mmol)
[d]:化合物(II)(10μmol)
[e]:化合物(II)(20μmol)、30%過酸化水素(1.5mmol)
[f]:化合物(II)(10μmol)、基質(0.5mmol)、30%過酸化水素(1.5mmol)
[g]:化合物(II)(5μmol)、30%過酸化水素(2mmol)
[h]:化合物(II)(20μmol)、基質(5mmol)
[i]:化合物(II)(5μmol)
[j]:化合物(II)(0.6μmol)
Figure 0005801727
Figure 0005801727
Figure 0005801727
上記実施例において、新規な単核ペルオキソ錯体及び複核ペルオキソ錯体を得た。また、当該単核ペルオキソ錯体及び複核ペルオキソ錯体ともに、アルケンのエポキシ化反応等において高い触媒活性を有することが示され、特に複核ペルオキソ錯体がより優れた触媒活性を有することが示された。
なお、上記実施例においては、中心原子がタングステンの形態において実証されているが、第5族及び第6族に属する遷移金属元素から選ばれる場合であれば、これら同族又は近似・隣接した族に属する元素であれば、同様の触媒作用を発揮しうる。すなわち、第5族及び第6族に属する遷移金属元素を中心原子とするペルオキソ錯体とすることにより、該錯体がアルケンのエポキシ化反応に高い触媒活性を示すことになる作用機序は、本発明のペルオキソ錯体を用いた場合にはすべて同様である。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

Claims (8)

  1. 中心原子にペルオキソ基が配位してなるペルオキソ錯体であって、
    該中心原子は、周期律表の第5族及び第6族から選択される少なくとも1種の遷移金属元素であり、
    該ペルオキソ錯体は、1個の中心原子からなる単核ペルオキソ錯体であり、複数のペルオキソ基が二座配位子として中心原子に配位した構造を有し、更に、ハロゲン原子が中心原子に配位した構造を有する
    ことを特徴とするペルオキソ錯体。
  2. 中心原子にペルオキソ基が配位してなるペルオキソ錯体であって、
    該中心原子は、周期律表の第5族及び第6族から選択される少なくとも1種の遷移金属元素であり、
    該ペルオキソ錯体は、複数の中心原子からなる複核ペルオキソ錯体であり、複数のペルオキソ基が二座配位子として中心原子に配位した構造を有し、かつ、ペルオキソ基の酸素原子の一つが他の中心原子に配位し、更に、酸素原子のみによって中心原子どうしが結合した構造を有する
    ことを特徴とするペルオキソ錯体。
  3. 前記中心原子は、タングステン及び/又はモリブデンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のペルオキソ錯体。
  4. 前記中心原子は、タングステンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のペルオキソ錯体。
  5. 前記ペルオキソ錯体は、酸化触媒として用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のペルオキソ錯体。
  6. 前記ペルオキソ錯体は、アルケンのエポキシ化反応触媒として用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のペルオキソ錯体。
  7. 2つのペルオキソ基が二座配位子として中心原子に配位した構造を有し、更に、2つの酸素原子及び1つのハロゲン原子が中心原子に配位した構造を有することを特徴とする請求項1に記載のペルオキソ錯体。
  8. 下記一般式(1)、一般式(2)、一般式(1’)、又は、一般式(2’):
    [XO(O (H O)Y] (1)
    [XO(O Y] 2− (2)
    A[XO(O (H O)Y] (1’)
    [XO(O Y] (2’)
    (上記一般式中、Xは、中心原子を表す。Yは、ハロゲン原子を表す。Aは、カチオンを表す。Aが複数ある場合、Aは同一であってもよく、異なっていてもよい。)で表されることを特徴とする請求項1に記載のペルオキソ錯体。
JP2012006498A 2012-01-16 2012-01-16 ペルオキソ錯体 Active JP5801727B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012006498A JP5801727B2 (ja) 2012-01-16 2012-01-16 ペルオキソ錯体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012006498A JP5801727B2 (ja) 2012-01-16 2012-01-16 ペルオキソ錯体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013144626A JP2013144626A (ja) 2013-07-25
JP5801727B2 true JP5801727B2 (ja) 2015-10-28

Family

ID=49040664

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012006498A Active JP5801727B2 (ja) 2012-01-16 2012-01-16 ペルオキソ錯体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5801727B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR3100809B1 (fr) * 2019-09-16 2023-06-02 Demeta Procédé de coupure oxydante d'oléfines utilisant comme catalyseur un halooxodiperoxométallate

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2528852A1 (fr) * 1982-06-21 1983-12-23 Inst Francais Du Petrole Nouveaux complexes peroxydiques du vanadium, du niobium et du tantale, leur procede de fabrication et leur utilisation comme reactifs et comme catalyseurs d'epoxydation des olefines et d'hydroxylation des hydrocarbures
IT1187738B (it) * 1985-09-09 1987-12-23 Interox Sa Procedimento per la produzione di composti aldeidici o chetonici e aldeidi e chetoni ottenuti mediante questo procedimento
DE19533331A1 (de) * 1995-09-11 1997-03-13 Basf Ag Peroxogruppenhaltige Metallkomplexe mit Aminoxid- oder Phosphanoxid-Liganden als Epoxidierungskatalysatoren
DE19608004A1 (de) * 1996-03-04 1997-11-13 Basf Ag Verfahren zur Herstellung von Epoxiden aus Olefinen mit Bis(trisorganosilyl)peroxiden in Gegenwart von Aktivatoren auf Basis von Metallsäurederivaten
DE10046865A1 (de) * 2000-09-20 2002-03-28 Basf Ag Verfahren zur Isomerisierung von Allylalkoholen
JP4747355B2 (ja) * 2001-07-26 2011-08-17 東京化成工業株式会社 新規タングステン触媒,およびそれを用いるアリル型アルコールのエポキシ化法
US7147832B2 (en) * 2003-12-30 2006-12-12 Vladimir Belov Process for the isolation and purification of zirconium peroxosulfate and uses thereof
EP2035364A2 (en) * 2006-06-30 2009-03-18 Schering Corporation Synthesis of 3-(5-nitrocyclohex-1-enyl) acrylic acid and esters thereof
JP2010076997A (ja) * 2008-09-29 2010-04-08 Nippon Shokubai Co Ltd 新規タングステンペルオキシド化合物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013144626A (ja) 2013-07-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4259873B2 (ja) エポキシ化合物を製造するための触媒及びそれを使用するエポキシ化合物の製造方法
US5274140A (en) Process for catalytically epoxidizing olefin with hydrogen peroxide
US4864041A (en) Transition metal-substituted polyoxometalates as catalysts for homogenous liquid-phase organic oxidation processes
JP5619158B2 (ja) 多核金属化合物
CN1219740C (zh) 顺式双键的环氧化方法
Duarte et al. Homogeneous catalytic oxidation of olefins with hydrogen peroxide in the presence of a manganese-substituted polyoxomolybdate
JPS62234550A (ja) 触媒およびその使用法
US4626596A (en) Synthesis of molybdenum/alkylene glycol complexes useful as epoxidation catalysts
CN103012077B (zh) 一种催化环氧丙烷醇解制备丙二醇单甲醚的方法
JP5801727B2 (ja) ペルオキソ錯体
JP3920020B2 (ja) 含酸素有機化合物製造用触媒および含酸素有機化合物の製造方法
US7425519B2 (en) Liquid phase oxygenation reaction using tungsten species
JP2013158740A (ja) 酸塩基触媒を用いる製造方法並びに酸塩基触媒
JP4439233B2 (ja) 液相反応用触媒
JP4030317B2 (ja) エポキシ化合物を製造するための触媒及びそれを使用するエポキシ化合物の製造方法
JPH0133471B2 (ja)
JP2009023897A (ja) ヘテロポリオキソメタレート化合物およびその製造方法
JP5841460B2 (ja) タングステンぺルオキシド化合物の製造方法及びエポキシ化合物の製造方法
JP2002316055A (ja) エポキシ化合物の製造方法および製造用触媒
JP2005002027A (ja) 異種元素置換ヘテロポリオキソメタレート化合物
JP4386675B2 (ja) タングステン種を用いる液相酸化反応
JP2003238545A (ja) エポキシ化合物の製造方法
CN103012127B (zh) 一种苯酚和二甲酯进行酯交换的方法
US5107067A (en) Catalytic reaction of propyelne with tertiary butyl hydroperoxide
JP2010046560A (ja) ヘテロポリオキソメタレート化合物の調製方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140905

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150514

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150526

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150708

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150804

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150827

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5801727

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150