本発明は、dsRNA、及びdsRNAがTTR遺伝子を標的とする際の、細胞又は哺乳動物におけるTTR遺伝子の発現を阻害するdsRNAを使用する方法を提供する。また、本発明は、TTR遺伝子の発現によって引き起こされる、哺乳動物における、TTRアミロイドーシスなどの病態及び疾患を治療する組成物及び方法も提供する。dsRNAは、mRNAの配列に特異的な分解を導く。
I.定義
便宜上、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲において用いられる特定の用語及び語句の意味を以下に提供する。本明細書の他の部分の用語の用法と本項に提供されるその定義との間に明らかな矛盾がある場合、本項の定義が優先される。
「G」、「C」、「A」、及び「U」はそれぞれ一般に、塩基としてグアニン、シトシン、アデニン、及びウラシルをそれぞれ含有するヌクレオチドを表す。「T」及び「dT」は、本明細書で交換可能に使用され、核酸塩基がチミン、例えば、デオキシリボチミン(deoxyribothymine)である、デオキシリボヌクレオチドを指す。しかしながら、「リボヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」又は「デオキシリボヌクレオチド」という用語は、以下でさらに詳述するように、修飾ヌクレオチド又は代替の置換部分を指すことができることが理解されるであろう。当業者は、そのような置換部分を担持するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変えることなく、グアニン、シトシン、アデニン、及びウラシルを他の部分によって置き換えうることを十分に承知している。例えば、限定されないが、その塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、又はウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対を形成しうる。したがって、ウラシル、グアニン、又はアデニンを含むヌクレオチドは本発明のヌクレオチド配列において、例えば、イノシンを含むヌクレオチドで置換されうる。そのような置換部分を含む配列は本発明の実施形態である。
本明細書において使用される、「トランスサイレチン」(「TTR」)とは、細胞内の遺伝子を指す。TTRはまた、ATTR、HsT2651、PALB、プレアルブミン、TBPA、及びトランスサイレチン(プレアルブミン、アミロイドーシスI型)としても知られている。ヒトTTRのmRNA転写物の配列は、NM_000371で見いだすことができる。マウスTTRのmRNAの配列は、NM_013697.2で見いだすことができ、ラットTTRのmRNAの配列は、NM_012681.1で見いだすことができる。
本明細書において使用される、「標的配列」は、一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAを含む、TTR遺伝子の転写の間に形成される、mRNA分子のヌクレオチド配列の連続する部分を指す。
本明細書において使用される、「配列を含む鎖」という用語は、標準的なヌクレオチド命名法を使って参照される配列によって記載される、ヌクレオチド鎖を含むオリゴヌクレオチドを指す。
本明細書において使用する場合、特に記載がない限り、「相補的」という用語は、当業者には理解されるであろう通り、第一のヌクレオチド配列を第二のヌクレオチド配列に関連して記載するために用いるとき、第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと、特定の条件下でハイブリダイズして二重鎖構造を形成する能力を指す。そのような条件は、例えば、ストリンジェントな条件でありえ、ここでストリンジェントな条件は、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃又は70℃で12〜16時間、その後の洗浄を含みうる。生物の内部で遭遇しうる、生理学的に関連する条件などの、他の条件を適用することもできる。当業者は、ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終的な適用に応じて、2つの配列の相補性の試験に最も適切な一連の条件を決定することができるであろう。
これには第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドへの、第一及び第二のヌクレオチド配列の全長にわたる塩基対形成が含まれる。そのような配列は、本明細書において、互いに「完全に相補的」と呼ぶことができる。しかしながら、本明細書において、第一の配列が第二の配列に対して「実質的に相補的」と言及される場合、2つの配列は完全に相補的であることもあり、又はそれらの最終的な適用に最も関連している条件下でハイブリダイゼーションする能力を保持する一方で、それらはハイブリダイゼーションの際に1つ以上であるが、一般には4、3、若しくは2つ以下のミスマッチ塩基対を形成することもある。しかしながら、2つのオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションの際に1つ以上の一本鎖のオーバーハングを形成するように設計されている場合、そのようなオーバーハングは、相補性の決定に関してミスマッチとは見なされないものとする。例えば、dsRNAが長さが21ヌクレオチドである1つのオリゴヌクレオチドと、長さが23ヌクレオチドであるもう1つのオリゴヌクレオチドとを含み、ここで長い方のオリゴヌクレオチドは短い方のオリゴヌクレオチドに完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含む場合、このdsRNAは本発明の目的上、やはり「完全に相補的」と言及されうる。
本明細書において使用される「相補的」配列は、それらのハイブリダイズする能力に関する上記の要件が満たされる限り、非ワトソン−クリック塩基対、並びに/又は非天然及び修飾ヌクレオチドから形成される塩基対を含みうるか、又は完全にそれらから形成されうる。そのような非ワトソン‐クリック塩基対には、G:Uゆらぎ又はフーグスティーン塩基対が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書における「相補的」、「完全に相補的」、及び「実質的に相補的」という用語は、それらが使用される文脈から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との間、又はdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列との間の塩基マッチングに対して使用されうる。
本明細書において使用される、メッセンジャーRNA(mRNA)「の少なくとも一部に実質的に相補的」なポリヌクレオチドは、5’UTR、オープンリーディングフレーム(ORF)、又は3’UTRを含む、目的のmRNA(例えば、TTRをコードするmRNA)の連続する部分に実質的に相補的であるポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、その配列がTTRをコードするmRNAの中断されていない部分に実質的に相補的である場合、TTRのmRNAの少なくとも一部に相補的である。
本明細書において使用される「二本鎖RNA」又は「dsRNA」という用語は、2本の逆平行で、上で定義されるように実質的に相補的な核酸鎖を含む二重鎖構造を有するリボ核酸分子の複合体を指す。一般に、各鎖のヌクレオチドの大半はリボヌクレオチドであるが、本明細書において詳細に説明されるように、それぞれ又は両方の鎖は、少なくとも1つの非リボヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドも含みうる。くわえて、本明細書において使用される「dsRNA」は、複数のヌクレオチドでの大幅な修飾を含み、本明細書において開示されるか、又は当該技術分野において公知であるすべての種類の修飾を含む、リボヌクレオチドへの化学修飾を含みうる。siRNA型分子内で使用される、このようないずれの修飾も、本明細書及び特許請求の範囲の目的上、「dsRNA」によって包含される。
二本鎖構造を形成する2本の鎖は、より長い1つのRNA分子の異なる部分でありうるか、又はそれらは別個のRNA分子であるうる。2本の鎖がより長い1つの分子の一部であり、したがって二本鎖構造を形成する1本の鎖の3’末端とそれぞれのもう一方の鎖の5’末端との間の中断されていないヌクレオチド鎖によって連結されている場合、連結するRNA鎖は、「ヘアピンループ」と呼ばれる。2本の鎖が、二本鎖構造を形成している1本の鎖の3’末端とそれぞれのもう一方の鎖の5’末端との間の、中断されていないヌクレオチド鎖以外の手段によって共有結合で連結される場合、その連結構造は、「リンカー」と呼ばれる。RNA鎖は同じ又は異なる数のヌクレオチドを有しうる。塩基対の最大数は、dsRNAの最も短い鎖のヌクレオチドの数から、二重鎖に存在するいかなるオーバーハングを引いたものである。二本鎖構造にくわえて、dsRNAは1つ以上のヌクレオチドオーバーハングを含みうる。また、「siRNA」という用語は、上に記載のように、dsRNAを指すように本明細書において使用される。
本明細書において使用される、「ヌクレオチドオーバーハング」とは、dsRNAの1本の鎖の3’末端がもう一方の鎖の5’末端を越えて延びるか、又はその逆であるときに、dsRNAの二本鎖構造から突出する、対を形成していない1つ又は複数のヌクレオチドを指す。「平滑」又は「平滑末端」とは、dsRNAのその末端に対を形成していないヌクレオチドがない、すなわち、ヌクレオチドオーバーハングがないことを意味する。「平滑末端」dsRNAは、その長さ全体にわたって二本鎖であるdsRNAであり、すなわち、分子のいずれの末端にもヌクレオチドオーバーハングがないdsRNAである。
「アンチセンス鎖」という用語は、標的配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を指す。本明細書において使用される、「相補性の領域」という用語は、本明細書において定義される配列、例えば標的配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖の領域を指す。相補性の領域が標的配列に完全に相補的でない場合、ミスマッチは、末端領域で最も許容され、ミスマッチが存在する場合、一般に、1つ又は複数の末端領域で、例えば、5’及び/又は3’末端の6、5、4、3、若しくは2ヌクレオチド以内にある。
本明細書において使用される、「センス鎖」という用語は、アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を指す。
TTRを標的とする例示的なdsRNAとしては、二本鎖AD‐18328(配列番号:1009及び1010)などが挙げられる。
本明細書において使用される、「核酸脂質粒子」という用語は、「SNALP」という用語を含み、dsRNA、又はdsRNAが転写されるプラスミドなどの核酸を含む、少量の水性内部を被覆する脂質の小胞を指す。核酸脂質粒子、例えば、SNALPは、例えば、米国特許出願公開第20060240093号、同第20070135372号、及び2008年4月15日出願の米国特許出願第61/045,228号に記載されている。これらの出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
dsRNAについて言及する場合、「細胞に導入する」とは、当業者に理解されるように、細胞への取り込み又は吸収を促進することを意味する。dsRNAの吸収又は取り込みは、補助を受けない拡散若しくは能動的な細胞プロセスを通して、又は補助的な薬剤又は装置によって起こることができる。この用語の意味はインビトロでの細胞に限定されるものではなく;dsRNAは細胞が生きている生物の一部である場合にも「細胞に導入」されうる。そのような場合、細胞への導入は生物への送達も含むことになる。例えば、生体内送達のために、dsRNAを組織部位に注射することもでき、又は全身投与することもできる。インビトロでの細胞への導入には、電気穿孔法及びリポフェクションなどの当該技術分野において公知の方法が含まれる。さらなる方法は、本明細書に説明されているか、又は当該技術分野において公知である。
「サイレンシングする」、「発現を阻害する」、「発現を下方制御する」、及び「発現を抑制する」などの用語は、それらがTTR遺伝子について言及する限り、本明細書において、TTR遺伝子が転写され、TTR遺伝子の発現が阻害されるように処理された第1の細胞又は細胞群から単離されうる、及び/又は検出されうるmRNAの量の、第1の細胞又は細胞群と実質的に同一であるが、そのように処理されていない第2の細胞又は細胞群(対照細胞)と比較しての減少によって現れる、TTR遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を指す。阻害の程度は、通常、下式で表される。
あるいは、阻害の程度はTTR遺伝子発現に機能的に関連するパラメーター、例えば、TTR遺伝子によりコードされ、細胞により分泌されるタンパク質の量、又は特定の表現型、例えばアポトーシスを見せる細胞の数の減少という点から示されうる。原則として、TTR遺伝子サイレンシングは、構成的か、又はゲノム操作によってかのいずれか、及び任意の適切なアッセイにより、標的を発現する任意の細胞において決定されうる。しかしながら、所与のdsRNAが特定の程度までTTR遺伝子の発現を阻害し、したがって本発明に包含されるかどうかを決定するために参照が必要とされる場合、以下の実施例で提供されるアッセイはそのような参照の役割を果たすことになる。
例えば、特定の場合において、TTR遺伝子の発現は、本発明で取り上げられる二本鎖オリゴヌクレオチドの投与により、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%抑制される。幾つかの実施形態では、TTR遺伝子は、本発明で取り上げられる二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって、少なくとも約60%、70%、又は80%抑制される。幾つかの実施形態では、TTR遺伝子は、本発明で取り上げられる二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって、少なくとも約85%、90%、又は95%抑制される。
TTR発現の文脈で本明細書において使用される「治療する」、「治療」などの用語は、TTR発現により仲介される病理学的過程の軽減又は緩和を指す。本発明の文脈において、本明細書において以下に列挙されるその他の病態のいずれか(TTR発現により媒介される病理学的過程以外)に関する限り、「治療する」、「治療」などの用語は、そのような病態に関連する少なくとも1つの症状を軽減若しくは緩和する、又はFAPなどのTTRアミロイドーシスの進行を遅延させることなどの、そのような病態の進行を遅延若しくは後退させることを意味する。TTRアミロイドーシスの症状としては、感覚性ニューロパチー(例えば、知覚障害、遠位部の感覚鈍麻)、自律性ニューロパチー(例えば、胃潰瘍又は起立性低血圧症などの胃腸障害)、運動神経障害、発作、認知症、ミエロパシー、多発ニューロパチー、手根管症候群、自律神経不全症、心筋症、硝子体混濁、腎不全、腎障害、実質的に低下したmBMI(改変肥満指数)、脳神経障害、及び角膜格子状ジストロフィーが含まれる。
本明細書において使用される、「有効量」という語句は、TTRの発現により媒介される病理学的過程の治療、予防、若しくは管理、又はTTRの発現により媒介される病理学的過程の明らかな症状において、治療上の利益を提供する量を指す。有効である具体的な量は当業者であれば容易に決定することができ、例えば、TTR発現により媒介される病理学的過程の種類、患者の既往歴及び年齢、TTR発現により媒介される病理学的過程の病期、並びにTTRの発現により媒介される病理学的過程に抗するその他の薬剤の投与などの、当該技術分野において公知の因子に応じて変動しうる。
本明細書において使用される、「医薬組成物」は、dsRNAの薬理学的に有効な量及び薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書において使用される、「薬理学的に有効な量」、「治療上有効な量」又は単に「有効量」とは、意図された薬理学的、治療的、又は予防的結果を生むのに有効なRNAの量を指す。例えば、疾患又は障害に関連する測定可能なパラメーターにおいて少なくとも25%の減少があるときに所与の臨床治療を有効と考える場合、その疾患又は障害を治療するための薬物の治療上有効な量は、そのパラメーターにおける少なくとも25%の減少をもたらすために必要な量である。例えば、TTRを標的とするdsRNAの治療上有効な量は、TTRの血清レベルを少なくとも25%減少させることができる。別の例では、TTRを標的とするdsRNAの治療上有効な量は、肝機能又は腎機能を少なくとも25%向上させることができる。
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、治療薬の投与のための担体を指す。そのような担体としては、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。この用語は特に細胞培養培地を除外する。経口投与される薬物について、薬学的に許容可能な担体としては、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、着香料、着色料、及び保存剤などの薬学的に許容可能な賦形剤が挙げられるが、これらに限定されない。好適な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウム及びカルシウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カルシウム、並びにラクトースが挙げられ、コーンスターチ及びアルギン酸が好適な崩壊剤である。結合剤には、デンプン及びゼラチンが含まれうる一方、滑沢剤は、存在する場合には、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであろう。所望の場合、錠剤をモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの材料で被覆して、胃腸における吸収を遅延させうる。
本明細書において使用される「形質転換細胞」とは、dsRNA分子が発現されうるベクターが導入されている細胞である。
II.二本鎖リボ核酸(dsRNA)
本明細書においてより詳細に記載されるように、本発明は、細胞又は哺乳類、例えばアミロイド沈着を有するヒトなどにおいて、TTR遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供し、dsRNAは、TTR遺伝子の発現において形成されるmRNAの少なくとも一部と相補的である相補性の領域を有するアンチセンス鎖を含み、相補性の領域は、30ヌクレオチド未満の長さであって、一般に、19〜24ヌクレオチドの長さであり、前記dsRNAは、前記TTR遺伝子を発現する細胞と接触した際、例えばPCR若しくは分岐DNA(bDNA)法、又はウェスタンブロットなどタンパク質に基づく方法によりアッセイしたとき、前記TTR遺伝子の発現を少なくとも30%阻害する。TTR遺伝子の発現は、下の実施例で説明されるように、アッセイによって測定したとき少なくとも30%減少させることができる。例えば、Hep3B細胞などの細胞培養中のTTR遺伝子の発現は、bDNA又はTaqManアッセイなどによるTTRのmRNAレベルを測定することにより、又はELISAアッセイなどによるタンパク質レベルを測定することによりアッセイされることができる。本発明のdsRNAは、1本以上の一本鎖のヌクレオチドのオーバーハングをさらに含むことができる。
dsRNAは、以下でさらに説明されるように、当該技術分野において公知の標準的な方法、例えば、バイオサーチ(Biosearch)、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems,Inc.)から市販されるなどの自動DNA合成装置の使用により合成されることができる。dsRNAは、ハイブリダイズして二本鎖構造を形成するのに十分相補的である2本のRNA鎖を含む。dsRNAの1本の鎖(アンチセンス鎖)は、TTR遺伝子の発現の間に形成されたmRNAの配列に由来する標的配列に実質的に相補的であり、一般に完全に相補的である相補性の領域を含み、もう一方の鎖(センス鎖)は、2本の鎖が好適な条件下において合わされると、ハイブリダイズして二本鎖構造を形成するように、アンチセンス鎖に相補的である領域を含む。一般に、二本鎖構造は、長さ15〜30又は25〜30、又は18〜25又は19〜24、又は19〜21、又は19、20若しくは21塩基対である。1つの実施形態では、二本鎖は長さ19塩基対である。別の実施形態では、二本鎖は長さ21塩基対である。2本の異なるsiRNAが組み合わせて使用される場合、二本鎖の長さは同一である又は異なることができる。
本発明のdsRNAの各鎖は、一般に、長さ15〜30、又は18〜25、又は18、19、20、21、22、23、24、若しくは25ヌクレオチドである。その他の実施形態において、各々は長さ25〜30ヌクレオチドである。二本鎖の各鎖は、同じ長さ又は異なる長さであることができる。2本の異なるsiRNAが組み合わせて使用される場合、各siRNAの各鎖の長さは、同一である又は異なることができる。
本発明のdsRNAは、1つ以上のヌクレオチドの1つ以上の一本鎖のオーバーハングを含むことができる。1つの実施形態では、dsRNAの少なくとも1つの末端は、1〜4、一般には1つ又は2つのヌクレオチドの一本鎖のヌクレオチドオーバーハングを有する。別の実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、センス鎖の3’末端及び5’末端のそれぞれに1〜10個のヌクレオチドのオーバーハングを有する。さらなる実施形態では、dsRNAのセンス鎖は、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端のそれぞれに1〜10個のヌクレオチドのオーバーハングを有する。
少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを有するdsRNAは、平滑末端の対応物より予想外に優れた阻害特性を有することができる。幾つかの実施形態では、ただ1つのヌクレオチドオーバーハングの存在は、その全体的な安定性に影響を及ぼすことなくdsRNAの干渉活性を強化する。オーバーハングを1つだけ有するdsRNAは、生体内、並びにさまざまな細胞、細胞培養培地、血液、及び血清中で特に安定で効果的であることが証明されてきた。一般に、一本鎖のオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端、又は、代替的に、センス鎖の3’末端に位置する。dsRNAは、一般にアンチセンス鎖の5’末端に位置する平滑末端も有することができる。そのようなdsRNAは向上した安定性及び阻害活性を有することができ、よって、低投与量、すなわち、1日当たりレシピエントの体重1kgにつき5mg未満の投与を可能にする。一般に、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端は平滑である。別の実施形態では、オーバーハング中の1つ以上のヌクレオチドは、ヌクレオシドチオリン酸で置換される。
1つの実施形態では、TTR遺伝子はヒトTTR遺伝子である。特定の実施形態では、dsRNAのセンス鎖は、表3A、3B、4、6A、6B、又は7からのセンス配列のうちの1つであり、アンチセンス鎖は、表3A、3B、4、6A、6B、又は7からのセンス配列のうちの1つである。表3A、3B、4、6A、6B、又は7に提供される標的配列の他の箇所を標的とする代替的なアンチセンス剤は、標的配列及び隣接するTTR配列を使って容易に決定されることができる。
当業者は、20〜23であって、特に21個の塩基対の二本鎖構造を有するdsRNAが、RNA干渉の誘発に特に効果的であるとして認められていることをよく知っている(Elbashir et al.,EMBO 2001,20:6877‐6888)。しかしながら、他の者は、より短い又はより長いdsRNAが、同様に効果的であることができることを見いだしている。上記の実施形態では、表3A、3B、4、6A、6B、又は7に提供されるオリゴヌクレオチド配列の性質のために、本発明で取り上げられるdsRNAは、本明細書において記載される長さの少なくとも1本の鎖を含むことができる。一端又は両端のわずかな数のヌクレオチドを差し引いた、表3A、3B、4、6A、6B、又は7の配列のうちの1つを有するより短いdsRNAが、上記のdsRNAと比較して同様に効果的でありうることは、妥当に予想されることができる。したがって、表3、4、6、又は7の配列のうちの1つからの、少なくとも15、16、17、18、19、20個、又はそれ以上の連続するヌクレオチドの部分的配列を有し、本明細書において以下に記載されるアッセイにおいて、それらのTTR遺伝子の発現を阻害する能力が5、10、15、20、25、又は30%以下の阻害で、完全な配列を含むdsRNAと異なるdsRNAが、本発明により想定される。さらに、所望のTTR標的配列内で切断するdsRNAは、対応するTTRアンチセンス配列及び相補的なセンス配列を使って容易に作製されることができる。
くわえて、表3A、3B、4、6A、6B、又は7に提供されるdsRNAは、RNAiに基づく切断の影響を受けやすいTTR中の部位を特定する。したがって、本発明は、本発明の薬剤の1つにより標的とされる配列内を標的とするdsRNAをさらに特徴とする。本明細書において使用される、第2のdsRNAは、第2のdsRNAが第1のdsRNAのアンチセンス鎖に相補的であるmRNA内のいずれかの箇所でメッセージを切断する場合、第1のdsRNAの配列内を標的とすると言われる。そのような第2のdsRNAは、一般に、TTR遺伝子の選択された配列に隣接する領域から取られた追加のヌクレオチド配列につなげられた、表3A、3B、4、6A、6B、又は7に提供される配列のうちの1つからの少なくとも15個の連続するヌクレオチドからなるであろう。
RNA標的の切断は、ゲル電気泳動及び、必要ならば、当該技術分野で公知の核酸ハイブリダイゼ―ション技術により日常的に検出することができる。dsRNAの標的mRNA上の切断部位は、例えば、Soutschek et al., Nature; 2004, Vol. 432, pp. 173‐178(すべての目的に関して参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている5’‐RACE法などの一般に当業者に公知の方法を使って検出されることができる。ある実施形態では、Soutschek et al.により記載された5’‐RACE法を使って、ALN‐18328は、配列番号1331(NM_000371.3)の636位のグアニンヌクレオチドと配列番号1331の637位のアデニンヌクレオチドの間でTTRのmRNAを切断することが見つけだされた。ある実施形態では、ALN‐18328は、配列番号1331の637位のアデニンヌクレオチドと配列番号1331の638位のグアニンヌクレオチドの間ではTTRのmRNAを切断しないことが明らかになった。
本発明で取り上げられるdsRNAは、標的配列と1つ以上のミスマッチを含有することができる。1つの実施形態では、本発明で取り上げられるdsRNAは、3つ以下のミスマッチを含有する。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列とのミスマッチを含有する場合、ミスマッチの領域は、相補性の領域の中心に位置しないことが好ましい。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列とのミスマッチを含有する場合、ミスマッチは、いずれかの末端から5ヌクレオチド、例えば、相補性の領域の5’又は3’末端のいずれかから5、4、3、2、又は1ヌクレオチドに限られることが好ましい。例えば、TTR遺伝子の領域に相補的である23ヌクレオチドのdsRNA鎖について、dsRNAは、一般に、中央の13個のヌクレオチド内にはいかなるミスマッチも含有しない。本発明内で記載される方法を使用して、標的配列とのミスマッチを含有するdsRNAがTTR遺伝子の発現の阻害に効果的であるかどうかを決めることができる。TTR遺伝子の発現の阻害においてミスマッチを有するdsRNAの有効性を考慮することは、特にTTR遺伝子中の特定の相補性の領域が、集団内に多型の配列変異を有することが公知である場合に重要である。
修飾
さらに別の実施形態では、dsRNAは安定性を増強するよう化学修飾される。本発明の核酸は、当該技術分野で十分に確立された方法、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、「Current protocols in nucleic acid chemistry」、Beaucage,S.L.et al.(Eds.)、John Wiley & Sons,Inc.,New York、NY、USAに記載されるものなどによって合成及び/又は修飾されうる。本発明に有用なdsRNA構成要素の具体的な例として、修飾骨格又は非天然ヌクレオシド連結を含有するdsRNAが挙げられる。本明細書において定義されるように、修飾骨格を有するdsRNAは、骨格にリン原子をもつもの及び骨格にリン原子をもたないものを含む。本明細書の目的のため、及び当該技術分野で参照されることがあるように、そのヌクレオシド間骨格にリン原子を有さない修飾dsRNAもオリゴヌクレオシドであると考えることができる。
修飾dsRNA骨格として、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル及びその他のアルキルホスホネート、例えば、3’‐アルキレンホスホネート及びキラルホスホネート、ホスフィネート、ホスホルアミダート、例えば、3’‐アミノホスホルアミダート及びアミノアルキルホスホルアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル及び通常の3’‐5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’‐5’連結している類似体及びヌクレオシド単位の隣接する対が、3’‐5’から5’‐3’又は2’‐5’から5’‐2’に連結している逆の極性を有するものが挙げられる。さまざまな塩、混合塩及び遊離酸の形態も含まれる。
上記のリン原子含有連結の調製を教示する代表的な米国特許として、限定されないが、米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,195号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,316号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;及び同第5,625,050号が挙げられ、該特許は各々、参照により本明細書に組み込まれる。
内部ににリン原子を含まない修飾dsRNA骨格は、短鎖アルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間連結、混合ヘテロ原子及びアルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間連結又は1つ又は複数の短鎖ヘテロ原子ヌクレオシド間連結又は複素環式ヌクレオシド間連結によって形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ連結(一部は、ヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファマート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホネート及びスルホンアミド骨格;アミド骨格を有するもの及び混合N、O、S及びCH2成分部分を有するその他のものが挙げられる。
上記のオリゴヌクレオシドの調製を教示する代表的な米国特許として、限定されないが、米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号及び同第5,677,439号が挙げられ、該特許は各々、参照により本明細書に組み込まれる。
他の好適なdsRNA模倣体では、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間連結の両方、すなわち、骨格は新規の基で置換される。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とハイブリダイズするために維持される。優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されてきたそのようなオリゴマー化合物の1つであるdsRNA模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、dsRNAの糖骨格が、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置換される。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的又は間接的に結合される。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号、及び同第5,719,262号が挙げられるが、これらに限定されず、該特許は各々、参照により本明細書に組み込まれる。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al.,Science,1991,254,1497‐1500に見いだすことができる。
本発明のその他の実施形態は、ホスホロチオエート骨格を有するdsRNA、並びにヘテロ原子骨格、特に、上で参照された米国特許第5,489,677号の‐‐CH2‐‐NH‐‐CH2‐‐、‐‐CH2‐‐N(CH3)‐‐O‐‐CH2‐‐[メチレン(メチルイミノ)又はMMI骨格として知られる]、‐‐CH2‐‐O‐‐N(CH3)‐‐CH2‐‐、‐‐CH2‐‐N(CH3)‐‐N(CH3)‐‐CH2‐‐、及び‐‐N(CH3)‐‐CH2‐‐CH2‐‐[式中、自然のホスホジエステル骨格は、‐‐O‐‐P‐‐O‐‐CH2‐‐として表される]、及び上で参照された米国特許第5,602,240号のアミド骨格を有するオリゴヌクレオシドである。また好ましいのは、上で参照された米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するdsRNAである。
また、修飾dsRNAは、1つ以上の置換糖部分も含有しうる。好ましいdsRNAは、2’位に次の1つを含む:OH;F;O‐、S‐、若しくはN‐アルキル;O‐、S‐、若しくはN‐アルケニル;O‐、S‐、若しくはN‐アルキニル;又はO‐アルキル‐O‐アルキル、ここで、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換若しくは非置換のC1‐C10アルキル又はC2‐C10アルケニル及びアルキニルでありうる。特に好ましいのは、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、及びO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2であり、ここで、n及びmは1〜約10である。他の好ましいdsRNAは、2’位に次の1つを含む:C1‐C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O‐アルカリル、若しくはO‐アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、挿入分子、dsRNAの薬物動態特性を向上するための基、又はdsRNAの薬力学的特性を向上するための基、並びに類似した特性を有する他の置換基。好ましい修飾としては、2’‐メトキシエトキシ(2’‐O‐‐CH2CH2OCH3であって、2’‐O‐(2‐メトキシエチル)又は2’‐MOEとしても知られる)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta,1995,78,486‐504)すなわち、アルコキシ‐アルコキシ基が挙げられる。さらなる好ましい修飾としては、本明細書において以下の例に記載される、2’‐DMAOEとしても知られる、2’‐ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、O(CH2)2ON(CH3)2基、並びに、同様に、本明細書において以下の例に記載される、2’‐ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野で2’‐O‐ジメチルアミノエトキシエチル又は2’‐DMAEOEとしても知られる)、すなわち、2’‐O‐‐CH2‐‐O‐‐CH2‐‐N(CH2)2が挙げられる。
その他の好ましい修飾としては、2’‐メトキシ(2’‐OCH3)、2’‐アミノプロポキシ(2’‐OCH2CH2CH2NH2)、及び2’‐フルオロ(2’‐F)が挙げられる。同様の修飾を、dsRNAの他の位置、特に3’末端ヌクレオチド又は2’‐5’連結dsRNAの糖の3’位、及び5’末端ヌクレオチドの5’位に施しうる。また、dsRNAは、ペントフラノシル糖の代わりに、シクロブチル部分などの糖模倣体を有しうる。そのような修飾糖構造の調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第4,981,957号、同第5,118,800号、同第5,319,080号、同第5,359,044号、同第5,393,878号、同第5,446,137号、同第5,466,786号、同第5,514,785号、同第5,519,134号、同第5,567,811号、同第5,576,427号、同第5,591,722号、同第5,597,909号、同第5,610,300号、同第5,627,053号、同第5,639,873号、同第5,646,265号、同第5,658,873号、同第5,670,633号、及び同第5,700,920号が挙げられるが、これらに限定されず、あるものは本願と共同所有され、該特許は各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
また、dsRNAは、核酸塩基(当該技術分野において、しばしば単に「塩基」と呼ばれる)修飾又は置換も含みうる。本明細書において使用される、「非修飾」又は「天然」の核酸塩基としては、プリン塩基であるアデニン(A)及びグアニン(G)、並びにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基としては、5‐メチルシトシン(5‐me‐C)、5‐ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2‐アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6‐メチル及びその他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2‐プロピル及びその他のアルキル誘導体、2‐チオウラシル、2‐チオチミン及び2‐チオシトシン、5‐ハロウラシル及びシトシン、5‐プロピニルウラシル及びシトシン、6‐アゾ ウラシル、6‐アゾ シトシン及び6‐アゾ チミン、5‐ウラシル(シュードウラシル)、4‐チオウラシル、8‐ハロ、8‐アミノ、8‐チオール、8‐チオアルキル、8‐ヒドロキシル及びその他の8‐置換アデニン及びグアニン、5‐ハロ、特に5‐ブロモ、5‐トリフルオロメチル及びその他の5‐置換ウラシル及びシトシン、7‐メチルグアニン及び7‐メチルアデニン、8‐アザグアニン及び8‐アザアデニン、7‐デアザグアニン及び7‐デアザアデニン、並びに3‐デアザグアニン及び3‐デアザアデニンなどの、その他の合成及び天然の核酸塩基が挙げられる。さらなる核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号で開示されるもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages 858‐859,Kroschwitz,J.L,ed.John Wiley & Sons,1990で開示されるもの、Englisch et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613で開示されるもの、及びSanghvi,Y S.,Chapter 15,DsRNA Research and Applications,pages 289‐302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Ed.,CRC Press,1993で開示されるものが挙げられる。これらの核酸塩基のうちの特定のものは、本発明で取り上げられるオリゴマー化合物の結合親和性を増やすために特に有用である。これらとしては、2‐アミノプロピルアデニン、5‐プロピニルウラシル、及び5‐プロピニルシトシンを含む、5‐置換ピリミジン、6‐アザピリミジン、並びにN‐2、N‐6、及びO‐6置換プリンが挙げられる。5‐メチルシトシン置換は、核酸二本鎖の安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Eds.,DsRNA Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276‐278)、例示的な塩基置換であり、特に2’‐O‐メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合、さらにより例示的である。
上記の修飾核酸塩基の特定のもの、及びその他の修飾核酸塩基の調製を教示する代表的な米国特許としては、上記の米国特許第3,687,808号、並びに米国特許第4,845,205号、同第5,130,30号、同第5,134,066号、同第5,175,273号、同第5,367,066号、同第5,432,272号、同第5,457,187号、同第5,459,255号、同第5,484,908号、同第5,502,177号、同第5,525,711号、同第5,552,540号、同第5,587,469号、同第5,594,121号、同第5,596,091号、同第5,614,617号、及び同第5,681,941号が含まれるが、これらに限定されず、特許は各々、参照により本明細書に組み込まれ、米国特許第5,750,692号も参照により本明細書に組み込まれる。
複合体
本発明のdsRNAの別の修飾は、dsRNAの活性、細胞分布又は細胞取り込みを高める、1つ以上の部分又は複合体をdsRNAに化学的に連結することを伴う。そのような部分としては、コレステロール部分(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acid.Sci.USA,199,86,6553‐6556)、コール酸(Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1994 4 1053‐1060)、チオエーテル、例えば、ベリル‐S‐トリチルチオール(beryl‐S‐tritylthiol)(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660,306‐309、Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1993,3,2765‐2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20,533‐538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール若しくはウンデシル残基(Saison‐Behmoaras et al.,EMBO J,1991,10,1111‐1118、Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259,327‐330、Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75,49‐54)、リン脂質、例えば、ジ‐ヘキサデシル‐rac‐グリセロール若しくはトリエチル‐アンモニウム1,2‐ジ‐O‐ヘキサデシル‐rac‐グリセロ‐3‐Hホスホネート(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36,3651‐3654、Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18,3777‐3783)、ポリアミン若しくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides&Nucleotides,1995,14,969‐973)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36,3651‐3654)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264,229‐237)、又はオクタデシルアミン若しくはヘキシルアミノ‐カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277,923‐937)などの脂質部分が挙げられるが、これらに限定されない。
そのようなdsRNA複合体の調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第4,828,979号、同第4,948,882号、同第5,218,105号、同第5,525,465号、同第5,541,313号、同第5,545,730号、同第5,552,538号、同第5,578,717号、同第5,580,731号、同第5,591,584号、同第5,109,124号、同第5,118,802号、同第5,138,045号、同第5,414,077号、同第5,486,603号、同第5,512,439号、同第5,578,718号、同第5,608,046号、同第4,587,044号、同第4,605,735号、同第4,667,025号、同第4,762,779号、同第4,789,737号、同第4,824,941号、同第4,835,263号、同第4,876,335号、同第4,904,582号、同第4,958,013号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,245,022号、同第5,254,469号、同第5,258,506号、同第5,262,536号、同第5,272,250号、同第5,292,873号、同第5,317,098号、同第5,371,241号、同第5,391,723号、同第5,416,203号、同第5,451,463号、同第5,510,475号、同第5,512,667号、同第5,514,785号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,595,726号、同第5,597,696号、同第5,599,923号、同第5,599,928号、及び同第5,688,941号が挙げられるが、これらに限定されず、該特許は各々、参照により本明細書に組み込まれる。
所与の化合物のすべての位置が均一に修飾されている必要はなく、実際、前述の修飾の1つ以上は、単一化合物に、又はさらにはdsRNAの単一ヌクレオシドに組み込まれうる。また、本発明は、キメラ化合物であるdsRNA化合物も含む。本発明の文脈において、「キメラ(chimeric)」dsRNA化合物又は「キメラ(chimera)」は、dsRNA化合物であり、特に2つ以上の化学的にはっきりと異なる領域を含有し、各々少なくとも1つの単量体単位、すなわち、dsRNA化合物の場合はヌクレオチドからなる、dsRNAである。これらのdsRNAは、典型的には、dsRNAは少なくとも1つの領域を含有し、そのdsRNAは、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加、細胞取り込みの増加、及び/又は標的核酸に対する結合親和性の増加をdsRNAに付与するように、修飾される。dsRNAのさらなる領域は、RNA:DNA又はRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素に対する基質としての役割を果たしうる。例として、リボヌクレアーゼHは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがって、リボヌクレアーゼHの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それにより遺伝子発現のdsRNA阻害の効率を大きく強化する。結果的に、キメラdsRNAが使用される場合、同一標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比較して、より短いdsRNA使って同様の結果が得られることが多い。
場合によっては、dsRNAは、非リガンド基により修飾されうる。多くの非リガンド分子が、dsRNAの活性、細胞分布、又は細胞取り込みを高めるためにdsRNAに接合されており、そのような接合を実施するための手順は、科学文献で入手可能である。そのような非リガンド部分としては、コレステロール(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86:6553)、コール酸(Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1994,4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル‐S‐トリチルチオール(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306、Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20:533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール若しくはウンデシル残基(Saison‐Behmoaras et al.,EMBO J.,1991,10:111、Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259:327、Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49)、リン脂質、例えば、ジ‐ヘキサデシル‐rac‐グリセロール若しくはトリエチルアンモニウム1,2‐ジ‐O‐ヘキサデシル‐rac‐グリセロ‐3‐H‐ホスホネート(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651、Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777)、ポリアミン若しくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides&Nucleotides,1995,14:969)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229)、又はオクタデシルアミン若しくはヘキシルアミノ‐カルボニル‐オキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923)などの脂質部分が挙げられる。そのようなdsRNA複合体の調製を教示する代表的な米国特許は、上に列記されている。典型的な接合プロトコールは、配列の1つ以上の位置にアミノリンカーを有するdsRNAの合成を含む。次に、アミノ基を適切なカップリング又は活性化試薬を使って接合される分子と反応させる。接合反応は、固体支持体に依然として結合されたdsRNAを用いるか、又は溶液相中でのdsRNAの切断後のいずれかに行われうる。典型的に、HPLCによるdsRNA複合体の精製によって、純粋な複合体が得られる。
ベクターがコードするdsRNA
別の態様では、TTRdsRNA分子は、DNA又はRNAに挿入された転写ユニットから発現される(例えば、 Couture, A, et al., TIG. (1996), 12:5‐10; Skillern, A., et al.,国際公開PCT第00/22113号, Conrad, 国際公開PCT第00/22114及び,Conrad,米国特許第6,054,299号を参照のこと.)。これらの導入遺伝子は、宿主ゲノムに組み入れられた導入遺伝子として組み込まれ、受け継がれることができる、直鎖コンストラクト、環状コンストラクト、又はウイルスベクターとして導入されることができる。また、導入遺伝子は、染色体外プラスミドとして受け継がれることができるよう構築されることができる(Gassmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92:1292)。
dsRNAの個々の鎖を、2つの別個の発現ベクター上のプロモーターを用いて転写し、標的細胞に同時にトランスフェクションすることができる。あるいは、dsRNAの個々の鎖それぞれを、いずれも同一発現プラスミド上に位置するプロモーターによって転写することができる。1つの実施形態では、dsRNAは、dsRNAがステムアンドループ構造を有するように、リンカーポリヌクレオチド配列によってつなぎ合わせた逆方向反復として発現される。
組換えdsRNA発現ベクターは、一般に、DNAプラスミド又はウイルスベクターである。dsRNAを発現するウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(総説として、Muzyczka,et al.,Curr.Topics Micro.Immunol.(1992)158:97‐129を参照のこと)、アデノウイルス(例えば、Berkner,et al.,BioTechniques(1998)6:616)、Rosenfeld et al.(1991,Science 252:431‐434)、及びRosenfeld et al.(1992)、Cell 68:143‐155を参照のこと))、又はアルファウイルス、並びに当該技術分野において公知他のものに基づいて構築することができるが、これらに限定されない。レトロウイルスは、さまざまな遺伝子を、上皮細胞を含む多くの異なる細胞型にインビトロ及び/又は生体内で導入するために使用されてきた(例えば、Eglitis,et al.,Science(1985)230:1395‐1398、Danos and Mulligan,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998)85:6460‐6464、Wilson et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3014‐3018、Armentano et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:61416145、Huber et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8039‐8043、Ferry et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8377‐8381、Chowdhury et al.,1991,Science 254:1802‐1805、van Beusechem.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7640‐19、Kay et al.,1992,Human Gene Therapy 3:641‐647、Dai et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10892‐10895、Hwu et al.,1993,J.Immunol.150:4104‐4115、米国特許第4,868,116号、米国特許第4,980,286号、国際公開第89/07136号、国際公開第89/02468号、国際公開第89/05345号、及び国際公開第92/07573号を参照のこと)。細胞のゲノムに挿入された遺伝子を形質導入し発現することができる組換えレトロウイルスベクターは、組換えレトロウイルスゲノムを、PA317及びPsi‐CRIPなどの好適なパッケージング細胞系にトランスフェクションすることにより作製することができる(Comette et al.,1991,Human Gene Therapy 2:5‐10、Cone et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6349)。組換えアデノウイルスベクターは、感受性宿主(例えば、ラット、ハムスター、イヌ、及びチンパンジー)の多種多様の細胞及び組織を感染させるために使用することができ(Hsu et al.,1992,J.Infectious Disease,166:769)、感染に有糸分裂的に活性である細胞を必要としないという利点も有する。
発現されるべきdsRNA分子のコード配列を受け入れることができる任意のウイルスベクターを使用することができ、例えば、アデノウイルス(AV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス)、ヘルペスウイルスなどに由来するベクターがある。ウイルスベクターの向性は、エンベロープタンパク質若しくは他のウイルスからの他の表面抗原を用いてベクターをシュードタイピングするか、又は異なるウイルスのキャプシドタンパク質を必要に応じて置換することにより改変することができる。
例えば、本発明で取り上げられるレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラなどからの表面タンパク質でシュードタイピングすることができる。本発明で取り上げられるAAVベクターは、異なるキャプシドタンパク質の血清型を発現するようにベクターを変更することによって異なる細胞を標的とするようにすることができる。例えば、血清型2のゲノム上に血清型2のキャプシドを発現するAAVベクターは、AAV2/2と呼ばれる。AAV2/2ベクターのこの血清型2のキャプシド遺伝子を、血清型5のキャプシド遺伝子と置換して、AAV2/5ベクターを作製することができる。異なるキャプシドタンパク質血清型を発現するAAVベクターを構築する技法は、当業者の技能の範囲内であり、例えば、Rabinowitz J E et al.(2002),J Virol 76:791‐801を参照されたく、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明における使用に適した組換えウイルスベクターの選択、dsRNAを発現するための核酸配列をベクターに挿入する方法、及びウイルスベクターを目的の細胞に送達する方法は、当該技術分野における技術の範囲内である。例えば、Dornburg R (1995), Gene Therap. 2: 301‐310;Eglitis M A (1988), Biotechniques 6: 608‐614;Miller A D (1990), Hum Gene Therap. 1: 5‐14;Anderson W F (1998), Nature 392: 25‐30;及びRubinson D A et al., Nat. Genet. 33: 401‐406を参照のされたく、それら全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
ウイルスベクターはAV及びAAV由来であることができる。1つの実施形態では、本発明で取り上げられるdsRNAは、例えば、U6若しくはH1 RNAプロモーター、又はサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターのいずれかを有する組換えAAVベクターから2つの別個の相補的な一本鎖鎖RNA分子として発現される。
本発明のdsRNAを発現するために好適なAVベクター、組換えAVベクターを構築する方法、ベクターを標的細胞に送達する方法は、Xia H et al.(2002),Nat.Biotech.20:1006‐1010に記載されている。
発明で取り上げられるdsRNAを発現するために好適なAAVベクター、組換えAVベクターを構築する方法、ベクターを標的細胞に送達する方法は、Samulski R et al.(1987),J.Virol.61:3096‐3101、Fisher K J et al.(1996),J.Virol,70:520‐532、Samulski R et al.(1989),J.Virol.63:3822‐3826、米国特許第5,252,479号、米国特許第5,139,941号、国際公開第94/13788号、及び国際公開第93/24641号に記載され、それらの開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明で取り上げられるDNAプラスミド又はウイルスベクターのいずれかにおいてdsRNAの発現を駆動するプロモーターは、真核生物RNAポリメラーゼI(例えばリボソームRNAプロモーター)、RNAポリメラーゼII(例えばCMV初期プロモーター、若しくはアクチンプロモーター、若しくはU1 snRNAプロモーター)、又は一般にRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えばU6 snRNA若しくは7SK RNAプロモーター)、又は原核生物プロモーター、例えば、発現プラスミドもT7プロモーターからの転写に必要なT7 RNAポリメラーゼをコードするという条件で、T7プロモーターでありうる。プロモーターは、膵臓への導入遺伝子の発現を導くこともできる(例えば、the insulin regulatory sequence for pancreas(Bucchini et al.,1986,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:2511‐2515)を参照のこと)。
くわえて、導入遺伝子の発現は、例えば、特定の生理的調節因子、例えば、循環ブドウ糖レベル、又はホルモンに感受性である調節配列などの誘導可能な調節配列及び発現系を使用することにより精密に調節することができる(Docherty et al.,1994,FASEB J.8:20‐24)。細胞又は哺乳動物において導入遺伝子の発現を制御するために好適である、そのような誘導可能な発現系としては、エクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量化の化学誘導物質、及びイソプロピル‐ベータ‐D1‐チオガラクトピラノシド(EPTG)による調節が挙げられる。当業者は、dsRNA導入遺伝子の意図される用途に基づいて、適切な調節/プロモーター配列を選択することができるであろう。
一般に、dsRNA分子を発現することができる組換えベクターは、以下に記載するように送達され、標的細胞中で存続する。あるいは、dsRNA分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを使用することができる。そのようなベクターは、必要に応じて繰り返し投与することができる。一旦発現すると、dsRNAは標的RNAに結合し、その機能又は発現を調節する。dsRNAを発現するベクターの送達は、静脈内若しくは筋肉内投与等によって全身的、患者から外植された標的細胞に投与した後、患者へ再導入することによって、又は所望の標的細胞への導入を可能にする任意のその他の手段などによってであることができる。
dsRNA発現DNAプラスミドは、典型的に、陽イオン性脂質担体(例えばオリゴフェクタミン(Oligofectamine))、又は非陽イオン性脂質に基づく担体(例えばTransit‐TKO(商標))との複合体として標的細胞にトランスフェクションされる。また、1週間以上の期間にわたる、単一のTTR遺伝子の異なる領域又は複数のTTR遺伝子を標的とする、dsRNAにより媒介されるノックダウンのための複数回の脂質トランスフェクションも、本発明によって想定される。ベクターの宿主細胞への導入の成功は、さまざまな公知の方法を使って監視することができる。例えば、一過性トランスフェクションは、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカーなどのレポーターを用いて示すことができる。ハイグロマイシンB耐性などの特定の環境因子(例えば、抗生物質及び薬物)に対する耐性をトランスフェクションした細胞に提供するマーカーを使って、生体外における細胞の安定したトランスフェクションを確保することができる。
また、TTRに特異的なdsRNA分子をベクターに挿入して、ヒト患者に対する遺伝子治療ベクターとして使用することもできる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)、又は定位固定注射(例えば、Chen et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054‐3057を参照のこと)によって対象に送達することができる。遺伝子療法ベクターの医薬調製品は、許容可能な希釈剤中の遺伝子治療ベクターを含むことができ、又は遺伝子送達媒体が埋め込まれる徐放性基質を含むことができる。あるいは、組換え細胞から完全な遺伝子送達ベクター、例えばレトロウイルスベクターを完全なままに産生することができる場合、医薬調製品は遺伝子送達系を産生する1つ以上の細胞を含むことができる。
III.dsRNAを含有する医薬組成物
1つの態様では、本発明は、本明細書において記載のdsRNA、及び薬学的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を提供する。dsRNAを含有する医薬組成物は、TTR発現により仲介される病的過程などのTTR遺伝子の発現又は活性に関連する疾患又は障害を治療するために有用である。そのような医薬組成物を送達の様式に基づいて製剤化する。一例としては、例えば静脈内(IV)送達などの非経口送達を介する全身投与のために製剤化される組成物である。別の例は、例えば連続ポンプ注入などの脳への注入によるなど、脳実質への直接送達のために製剤化される組成物である。
本発明の医薬組成物は、TTR遺伝子の発現を阻害するのに十分な投与量で投与される。
一般に、dsRNAの好適な投与量は1日にレシピエントの体重1キログラムあたり0.01マイクログラム〜200.0ミリグラムの範囲、一般には1日に体重1キログラムあたり1〜50mgの範囲であろう。例えば、dsRNAは、単回投与当たり、0.0059mg/kg、0.01mg/kg、0.0295mg/kg、0.05mg/kg、0.0590mg/kg、0.163mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.543mg/kg、0.5900mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.628mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、5.0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、又は50mg/kgにて投与されることができる。
1つの実施形態では、投与量は0.01〜0.2mg/kgの間である。例えば、dsRNAは、0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg0.08mg/kg0.09mg/kg、0.10mg/kg、0.11mg/kg、0.12mg/kg、0.13mg/kg、0.14mg/kg、0.15mg/kg、0.16mg/kg、0.17mg/kg、0.18mg/kg、0.19mg/kg、又は0.20mg/kgの投与量にて投与されることができる。
1つの実施形態では、投与量は0.005mg/kg〜1.628mg/kgの間である。例えば、dsRNAは、0.0059mg/kg、0.0295mg/kg、0.0590mg/kg、0.163mg/kg、0.543mg/kg、0.5900mg/kg、又は1.628mg/kgの投与量にて投与されることができる。
1つの実施形態では、投与量は0.2mg/kg〜1.5mg/kgの間である。例えば、dsRNAは、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、又は1.5mg/kgの投与量にて投与されることができる。
dsRNAは、0.03mg/kg、若しくは0.03、0.1、0.2、又は0.4mg/kgの投与量にて投与されることができる。
医薬組成物は1日1回投与されうるか、若しくはdsRNAは1日を通して適切な間隔で2、3、又はそれ以上の部分投与として、若しくは持続注入若しくは制御放出製剤による送達を用いて投与されうる。その場合、各部分投与に含有されるdsRNAは、1日合計投与量に達するために、対応して少ない量でなければならない。また、投与単位を、例えば数日間にわたってdsRNAの持続放出を提供する従来の持続放出製剤を用いるなどの、数日にわたる送達のために、製剤化することもできる。持続放出製剤は当該技術分野において周知であり、本発明の薬剤で用いられることができるような、薬剤を特定の部位に送達するために特に有用である。本実施形態では、投与単位は1日投与量の対応する倍数を含有する。
単回投与のTTRレベルへの効果は、次の投与が3以下、4、又は5日間隔若しくは、1以下、2、3、又は4週間隔、若しくは5以下、6、7、8、9、又は10週間隔にて投与されるように、長く続く。
当業者は、疾患又は障害の重症度、過去の治療、対象の全身の健康及び/又は年齢、並びに存在するその他の疾患を含むが、それらに限定されるわけではない、特定の因子が、対象を効果的に治療するために必要とされる投与量及びタイミングに影響しうることを理解するであろう。そのうえ、治療上有効な量の組成物での対象の治療は、1回の治療及び一連の治療を含むことができる。本発明により包含される個々のdsRNAについての有効な投与量及び生体内での半減期の推定は、従来の方法を用いて、又は本明細書における他所に記載のように、適切な動物モデルを用いる生体内試験に基づいて行なわれることができる。
マウス遺伝学の進歩によって、TTRの発現により媒介される病理学的過程などのさまざまなヒト疾患の研究のために多くのマウスモデルが生成されている。そのようなモデルは、dsRNAの生体内試験、及び治療上有効な投与量を決定するために使用される。好適なマウスモデルは、例えば、ヒトTTRを発現するプラスミドを含有するマウスである。別の好適なマウスモデルは、ヒトTTRを発現する導入遺伝子を保有するトランスジェニックマウスである。
細胞培養アッセイ及び動物試験から得たデータは、ヒトにおいて用いるための一連の投与量を製剤化するために用いられることができる。本発明で取り上げられる組成物の投与量は、一般に、毒性がほとんど又は全くなく、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動しうる。本発明で取り上げられる方法において使用されるいずれの化合物についても、治療上有効な投与量を最初に細胞培養アッセイから推定することができる。細胞培養でもとめられたIC50(すなわち、症状の最大阻害の1/2を達成する試験化合物の濃度)を含む、化合物、又は適当な場合は、標的配列のポリペプチド生成物の循環血漿濃度範囲を達成する(例えば、ポリペプチドの濃度の低下を達成する)ように、投与量を動物モデルにおいて処方しうる。そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば高性能液体クロマトグラフィーによって測定しうる。
本発明で取り上げられるdsRNAは、標的遺伝子の発現により媒介される病理学的過程の治療に効果的な他の公知の薬剤と組み合わせて投与することができる。いずれにせよ、投与を施す医師は、当該技術分野において公知又は本明細書において記載の有効性の標準的尺度を用いて観察された結果に基づいて、dsRNA投与の量及びタイミングを調整することができる。
投与
本発明はまた、本発明で取り上げられるdsRNA化合物を含む医薬組成物及び製剤も含む。本発明の医薬組成物は、局所的又は全身的な治療が望まれるどうか、及び処置される範囲に依存して、多くの方法で投与されうる。投与は、局所的、噴霧器によってを含む、例えば、粉末若しくは噴霧剤の吸入若しくは吹送による経肺、気管内、経鼻、表皮及び経皮、経口若しくは非経口でありうる。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腔内、若しくは筋肉内注射若しくは注入、又は頭蓋内、例えば、実質内、くも膜下腔内、若しくは脳室内投与が挙げられる。
dsRNAは、肝臓(例えば、肝臓の肝細胞)などの特定の組織を標的とする方法で送達することができる。
本発明は、脳への直接注射によって送達されることができる医薬組成物を含む。注射は、脳の特定領域(例えば、黒質、皮質、海馬、線条体、又は淡蒼球)への定位固定注射によるものであることができ、dsRNAは、中枢神経系への複数領域(例えば、脳、及び/又は脊髄の複数領域)へ送達されることができる。また、dsRNAは、脳の拡散領域に送達(例えば、脳の皮質への拡散送達)されることができる。
1つの実施形態において、TTRを標的とするdsRNAは、カニューレ、又は例えば、脳などの組織、例えば、脳の黒質、皮質、海馬、線条体、若しくは淡蒼球などに埋め込まれた一端を有するその他の送達装置を経由して送達されることができる。カニューレは、dsRNA組成物の貯蔵容器に接続することができる。流入又は送達は、ポンプ、例えば、Alzetポンプ(Durect,Cupertino,CA)などの浸透圧ポンプ又はミニポンプによって媒介されることができる。1つの実施形態において、ポンプ及び貯蔵容器は、組織から離れた場所、例えば腹部内に埋め込まれ、送達は、ポンプ又は貯蔵所から放出部位につながる導管によって達成される。dsRNA組成物の脳への注入は、数時間にわたって、又は数日間、例えば、1、2、3、5、若しくは7日間、若しくはそれ以上であることができる。脳への送達用の装置は、例えば、米国特許第6,093,180号、及び同第5,814,014号に記載されている。
局所投与用の医薬組成物及び製剤には、経皮パッチ、軟膏、ローション、グリーム、ゲル、ドロップ剤、坐薬、スプレー、液体、及び粉末が含まれうる。従来の医薬用担体、水性、粉末、若しくは油性基剤、増粘剤などが必要であるか又は望ましくありうる。被覆したコンドーム、手袋なども有用でありうる。好適な局所製剤としては、本発明で取り上げられるdsRNAが、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤、及び界面活性剤などの局所送達剤と混合されるものが挙げられる。好適な脂質及びリポソームとしては、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジル(DOPE)エタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG))、並びに陽イオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピル(DOTAP)、及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOTMA))が挙げられる。本発明で取り上げられるdsRNAは、リポソーム内にカプセル化されるか、又はそこに、特に陽イオン性リポソームに複合体を形成してもよい。あるいは、dsRNAは、脂質、特に陽イオン性脂質に複合されうる。好適な脂肪酸及びエステルとしては、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1‐モノカプリン酸、1‐ドデシルアザシクロヘプタン‐2‐オン、アシルカルニチン、アシルコリン、又はC1‐10アルキルエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル(IPM))、モノグリセリド、ジグリセリド、あるいはその薬学的に許容可能な塩が含まれるが、これらに限定されない。局所製剤は、米国特許第6,747,014号に詳細に記載され、当該特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
リポソーム製剤
薬物の製剤化のために研究及び使用されているマイクロエマルジョンの他に、組織立った多くの界面活性剤の構造がある。これらとしては、単層、ミセル、二重層、及び小胞が挙げられる。リポソーム等の小胞は、薬物送達の観点から、それらが提示する特異性及び作用の持続時間のため大きな関心を集めてきた。本発明において使用される、「リポソーム」という用語は、球状の1つ又は複数の二重層に配置された両親媒性脂質でできている小胞を意味する。
リポソームは、親油性の材料及び水性の内部から形成される膜を有する、単層状又は多層状の小胞である。水性の部分が、送達される組成物を含有する。陽イオン性リポソームは、細胞壁に融合することができる利点をもつ。非陽イオン性のリポソームは、細胞壁に同じように効率的に融合することはできないが、生体内でマクロファージによって取り込まれる。
哺乳動物の傷がない皮膚を横断するために、脂質小胞は、好適な経皮勾配の影響下、各々50nm未満の直径を有する一連の微細孔を通過しなければならない。したがって、高度に変形可能で、そのような微細孔を通過することができるリポソームを使用することが望ましい。
リポソームのさらなる利点としては、天然のリン脂質から得られたリポソームは、生体適合性及び生分解性であること、リポソームは、広範な水溶性及び脂溶性の薬物を組み込むことができること、リポソームは、それらの内部区画でカプセル化された薬物を代謝及び分解から保護できること、が挙げられる(Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245)。リポソーム製剤の調製において考慮すべき重要なことは、脂質の表面電荷、小胞の大きさ、及びリポソームの水性容積である。
リポソームは、活性成分の作用部位への移送及び送達に有用である。リポソーム膜は構造的に生体膜と同類であるため、リポソームが組織に適用されると、リポソームは細胞膜との融合を開始し、リポソームと細胞との融合が進行するにつれて、リポソームの内容物が活性薬剤が作用しうる細胞へ流れ出る。
リポソーム製剤は、多くの薬物のための送達様式として広範な研究の焦点となってきた。局所投与に関して、リポソームが他の製剤に勝る幾つかの利点を提示するという証拠が増えつつある。そのような利点としては、投与された薬物の高度な体内吸収に関連する副作用の減少、投与された薬物の所望の標的での蓄積の増加、並びに親水性及び疎水性の両方の多種多様な薬物を皮膚へ投与する能力が挙げられる。
幾つかの報告は、高分子量のDNAを含む薬剤を皮膚へ送達するリポソームの能力について詳述している。鎮痛剤、抗体、ホルモン、及び高分子量のDNAを含む化合物が、皮膚に投与されている。大部分の適用が、表皮上層の標的化をもたらした。
リポソームは、2つの広義のクラスに分類される。陽イオン性リポソームは、負に荷電したDNA分子と相互に作用して安定な複合体を形成する正に荷電したリポソームである。正に荷電したDNA/リポソーム複合体は、負に荷電した細胞表面に結合し、エンドソーム内に取り入れられる。エンドソーム内の酸性pHにより、リポソームが破裂し、それらの内容物を細胞の細胞質に放出する(Wang et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1987,147,980‐985)。
pH感受性であるか、又は負に荷電したリポソームは、DNAと複合するのではなく、それを封入する。DNA及び脂質双方は同様に荷電されているため、複合体形成ではなく反発が起こる。それでもなお、幾らかのDNAはこれらのリポソームの水性内部内に封入される。チミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを培養下の細胞単層へ送達するために、pH感受性リポソームが使用されてきた。外因性遺伝子の発現が、標的細胞中で検出された(Zhou et al.,Journal of Controlled Release,1992,19,269‐274)。
リポソーム組成物の1つの主要な種類には、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質が含まれる。例えば、中性のリポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、又はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成することができる。陰イオン性のリポソーム組成物は、一般にジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成され、一方陰イオン性の膜融合性リポソームは、主にジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。リポソーム組成物の別の種類は、例えば、大豆ホスファチジルコリン、及び卵ホスファチジルコリン等のホスファチジルコリン(PC)から形成される。別の種類は、リン脂質、及び/又はホスファチジルコリン、及び/又はコレステロールの混合物から形成される。
幾つかの研究が、リポソーム製剤の皮膚への局所送達を評価してきた。インターフェロンを含有するリポソームのモルモットの皮膚への適用は、皮膚のヘルペスによる傷の軽減をもたらし、一方で他の手段(例えば、溶液又はエマルジョンとして)を介したインターフェロンの送達には効果がなかった(Weiner et al.,Journal of Drug Targeting,1992,2,405‐410)。さらに、さらなる研究は、水性系を使用するインターフェロンの投与に対する、リポソーム製剤の一部として投与されたインターフェロンの有効性を検証し、リポソーム製剤は水性投与より優れていると結論付けた(du Plessis et al.,Antiviral Research,1992,18,259‐265)。
また、非イオン性のリポソーム系は、特に非イオン性界面活性剤及びコレステロールを含む系における薬物の皮膚への送達の実用性を決定するために調べられてきた。Novasome(商標)I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン‐10‐ステアリルエーテル)及びNovasome(商標)II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン‐10‐ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤が、シクロスポリンAをマウス皮膚の真皮に送達するために使用された。結果は、そのような非イオン性リポソーム系が、皮膚の異なる層へのシクロスポリンAの沈着の促進に効果的であることを示した(Hu et al.S.T.P.Pharma.Sci.,1994,4,6,466)。
また、リポソームには、「立体的に安定化された」リポソームが含まれ、この用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上の特定化された脂質を含むリポソームを指し、リポソームに組み込まれた際、そのような特定化された脂質を欠くリポソームと比較して、循環寿命の向上をもたらす。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞を形成する脂質部分の一部が、(A)モノシアロガングリオシドGM1などの1つ以上の糖脂質を含む、又は(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つ以上の親水性ポリマーで誘導体化されるものである。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリン、又はPEG誘導体化脂質を含有する立体的に安定化されたリポソームについて、これらの立体的に安定化されたリポソームの循環半減期の増加は、細網内皮系(RES)の細胞内への取り込みの減少から来ていると当該技術分野では考えられている(Allen et al.,FEBS Letters,1987,223,42、Wu et al.,Cancer Research,1993,53,3765)。
1つ以上の糖脂質を含むさまざまなリポソームが当該技術分野において公知である。Papahadjopoulos et al.(Ann.N.Y.Acad.Sci.,1987,507,64)は、モノシアロガングリオシドGM1、ガラクトセレブロシド硫酸、及びホスファチジルイノシトールの、リポソームの血中半減期を改善する能力について報告した。これらの結果は、Gabizon et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1988,85,6949)によって詳しく説明されている。米国特許第4,837,028号及び国際公開第88/04924号は、共にAllen et al.により、(1)スフィンゴミエリン、及び(2)ガングリオシドGM1又はガラクトセレブロシド硫酸エステルを含むリポソームを開示している。米国特許第5,543,152号(Webb et al.)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示している。1,2‐sn‐ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、国際公開第97/13499号(Lim et al.)に開示されている。
1つ以上の親水性ポリマーによって誘導体化された脂質を含む多くのリポソーム、及びその調製方法は、当該技術分野において公知である。Sunamoto et al.(Bull.Chem.Soc.Jpn.,1980,53,2778)は、PEG部分を含有する非イオン性界面活性剤、2C1215Gを含むリポソームについて記載している。Illum et al.(FEBS Lett.,1984,167,79)は、ポリスチレン粒子のポリマーグリコールによる親水性コーティングが、血中半減期の著しい増加をもたらすことを指摘している。ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)のカルボン酸基の結合によって修飾された合成リン脂質が、Sears(米国特許第4,426,330号及び同第4,534,899号)によって記載されている。Klibanov et al.(FEBS Lett.,1990,268,235)は、PEG又はステアリン酸PEGによって誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームが、血中循環半減期の著しい増加を有することを示す実験について記載している。Blume et al.(Biochimica et Biophysica Acta,1990,1029,91)は、このような観察を、他のPEG誘導体化リン脂質、例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)とPEGとの組み合わせから形成されるDSPE‐PEGに広げた。外部表面に共有結合されたPEG部分を有するリポソームが、欧州特許第0445131(B1)号及び国際公開第90/04384号(Fisher)に記載されている。PEGによって誘導体化された1〜20モルパーセントのPEを含有するリポソーム組成物、及びその使用方法が、Woodle et al(米国特許第5,013,556号及び同第5,356,633号)、並びにMartin et al((米国特許第5,213,804号及び欧州特許第0496813(B1)号)によって記載されている。その他の多くの脂質‐ポリマー複合体を含むリポソームが、国際公開第91/05545号及び米国特許第5,225,212号(共にMartin et al.による)、並びに国際公開第94/20073号(Zalipsky et al)に開示されている。PEG修飾セラミド脂質を含むリポソームが、国際公開第96/10391号(Choi et al.)に記載されている。米国特許第5,540,935号(Miyazaki et al.)及び米国特許第5,556,948号(Tagawa et al.)は、表面に官能基部分をさらに誘導体化することができるPEG含有リポソームについて記載している。
核酸を含む多くのリポソームが当該技術分野において公知である。Thierry et al.による国際公開第96/40062号は、高分子量の核酸をリポソーム中にカプセル化するための方法を開示している。Tagawaらによる米国特許第5,264,221号は、タンパク質結合リポソームを開示し、そのようなリポソームの内容物にはdsRNAが含まれうると主張している。Rahman et al.による米国特許第5,665,710号は、オリゴデオキシヌクレオチドをリポソーム中にカプセル化する特定の方法について記載している。Loveらによる国際公開第97/04787号は、raf遺伝子を標的とするdsRNAを含むリポソームを開示している。
トランスファーソームはさらに別の種類のリポソームであり、薬物送達媒体の興味を引く候補である、高度に変形可能な脂質凝集物である。トランスファーソームは、高度に変形可能であるので、この小滴より小さな孔に容易に浸透することができる、脂質小滴として記載されうる。トランスファーソームは、それらが使用される環境に適合可能であり、例えば、自己最適性(皮膚の孔の形状に適合する)であり、自己修復性であり、断片化されることなく標的に高い頻度で到達し、しばしば自動装填(self‐loading)である。トランスファーソームを作製するために、標準的なリポソーム組成物に対して、表面エッジ活性化剤(surface edg‐activator)、通常は界面活性剤を添加することができる。トランスファーソームは、血清アルブミンを皮膚へ送達するために使用されてきている。血清アルブミンのトランスファーソームにより媒介される送達は、血清アルブミンを含有する溶液の皮下注射と同程度効果的であることが示されている。
界面活性剤は、エマルジョン(マイクロエマルジョンを含む)及びリポソームなどの製剤に幅広い用途を見いだす。天然及び合成の両方の、多くの異なる種類の界面活性剤の性質を分類及び順位付ける最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)の使用によるものである。親水性基(「頭部基」としても知られる)の性質が、製剤に使用される異なる界面活性剤を分類するための最も有用な手段を提供する(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
界面活性剤分子がイオン化されていない場合、それは、非イオン性界面活性剤として分類される。非イオン性界面活性剤は、医薬品及び化粧品に幅広い用途を見いだし、広範なpH値にわたって使用可能である。一般に、それらのHLB値は、その構造に依存して、2〜約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、及びエトキシ化エステルなどの非イオン性エステルが挙げられる。脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、及びエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーなどの非イオン性アルカノールアミド及びエーテルも、このクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤のクラスのうちの最も一般的な構成物質である。
界面活性剤分子が水中に溶解又は分散された時に負の電荷を保有する場合、その界面活性剤は、陰イオン性として分類される。陰イオン性界面活性剤としては、石鹸等のカルボン酸塩、アシルラクチレート(lactylate)、アミノ酸のアシルアミド、アルキル硫酸塩及びエトキシル化アルキル硫酸塩などの硫酸のエステル、アルキルベンゼンスルホネート、アシルイセチオネート(acyl isethionate)、アシルタウレート、及びスルホコハク酸塩などのスルホネート、並びにリン酸塩が挙げられる。陰イオン性界面活性剤のクラスのうちの最も重要な構成物質は、アルキル硫酸塩及び石鹸である。
界面活性剤分子が水中に溶解又は分散された時に正の電荷を保有する場合、その界面活性剤は、陽イオン性として分類される。陽イオン性界面活性剤としては、第四アンモニウム塩及びエトキシ化アミンが挙げられる。第四アンモニウム塩は、このクラスのうちの最も使用される構成物質である。
界面活性剤分子が正又は負の電荷のいずれをも保有する能力を有する場合、その界面活性剤は、両性として分類される。両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N‐アルキルベタイン、及びフォスファチドが挙げられる。
薬物製品、製剤、及びエマルジョンにおける界面活性剤の使用が概説されている(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
核酸脂質粒子
1つの実施形態では、本発明で取り上げられるTTRのdsRNAは、脂質製剤中に完全にカプセル化されて、SPLP、pSPLP、SNALP、又は他の核酸脂質粒子を形成する。本明細書において使用される、「SNALP」という用語は、SPLPを含む安定な核酸脂質粒子を指す。本明細書において使用される、「SPLP」という用語は、脂質小胞内にカプセル化されたプラスミドDNAを含む核酸脂質粒子を指す。SNALP及びSPLPは、典型的に、陽イオン性脂質、非陽イオン性脂質、及び粒子の凝集を阻止する脂質(例えば、PEG脂質複合体)を含有する。SNALP及びSPLPは、静脈内(i.v.)注射後に長時間の循環寿命を呈し、遠位の部位(例えば、投与部位から物理的に離れた部位)に蓄積するため、全身適用に非常に有用である。SPLPには、国際公開00/03683号に記載されるカプセル化された縮合剤と核酸との複合体を含む「pSPLP」が含まれる。本発明の粒子は、典型的には約50nm〜約150nm、より典型的には約60nm〜約130nm、より典型的には約70nm〜約110nm、最も典型的には約70〜約90nmの平均直径を有し、実質的に無毒である。くわえて、本発明の核酸脂質粒子中に存在する場合、核酸は水溶液中でヌクレアーゼによる分解に抵抗性である。核酸脂質粒子及びその調製方法は、例えば、米国特許第5,976,567号、同第5,981,501号、同第6,534,484号、同第6,586,410号、同第6,815,432号、及び国際公開96/40964号に開示されている。
1つの実施形態では、脂質の薬物に対する比率(質量/質量比)(例えば、脂質のdsRNAに対する比率)は、約1:1〜約50:1、約1:1〜約25:1、約3:1〜約15:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、又は約6:1〜約9:1の範囲内であろう。幾つかの実施形態では、脂質のdsRNAに対する比率は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、又は11:1であることができる。
一般に、脂質‐核酸粒子は、投与のために緩衝液、例えばPBSに懸濁される。1つの実施形態では、脂質で製剤化されたsiRNAのpHは、6.8〜7.8、例えば、7.3又は7.4である。オスモル濃度は、例えば、250〜350mOsm/kg、例えば、約300、例えば、298、299、300、301、302、303、304、又は305であることができる。
陽イオン性脂質は、例えば、N,N‐ジオレイル‐N,N‐ジメチルクロライド(DODAC)、N,N‐ジステアリル‐N,N‐ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N‐(I‐(2,3‐ジオレオイルオキシ)プロピル)‐N,N,N‐トリメチルクロライド(DOTAP)、N‐(I‐(2,3‐ジオレイルオキシ)プロピル)‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、N,N‐ジメチル‐2,3‐ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2‐ジリノレイルオキシ(DiLinoleyloxy)‐N,N‐ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2‐ジリノレニルオキシ(Dilinolenyloxy)‐N,N‐ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2‐ジリノレイルカルバモイルオキシ(Dilinoleylcarbamoyloxy)‐3‐ジメチルアミノプロパン(DLin‐C‐DAP)、1,2‐ジリノレイオキシ(Dilinoleyoxy)‐3‐(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin‐DAC)、1,2‐ジリノレイオキシ‐3‐モルホリノプロパン(DLin‐MA)、1,2‐ジリノレオイル‐3‐ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2‐ジリノレイルチオ(Dilinoleylthio)‐3‐ジメチルアミノプロパン(DLin‐S‐DMA)、1‐リノレオイル‐2‐リノレイルオキシ(linoleyloxy)‐3‐ジメチルアミノプロパン(DLin‐2‐DMAP)、1,2‐ジリノレイルオキシ‐3‐トリメチルアミノプロパンクロライド塩(DLin‐TMA.Cl)、1,2‐ジリノレオイル‐3‐トリメチルアミノプロパンクロライド塩(DLin‐TAP.Cl)、1,2‐ジリノレイルオキシ‐3‐(N‐メチルピペラジノ)プロパン(DLin‐MPZ)、又は3‐(N,N‐ジリノレイルアミノ(Dioleylamino)‐1,2‐プロパンジオール(DLinAP)、3‐(N,N‐ジオレイルアミノ)‐1,2‐プロパンジオ(propanedio)(DOAP)、1,2‐ジリノレイルオキソ(Dilinoleyloxo)‐3‐(2‐N,N‐ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin‐EG‐DMA)、1,2‐ジリノレニルオキシ‐N,N‐ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2‐ジリノレイル(Dilinoleyl)‐4‐ジメチルアミノメチル‐[1,3]‐ジオキソラン(DLin‐K‐DMA)、又はそれらの類似体、(3aR,5s,6aS)‐N,N‐ジメチル‐2,2‐ジ((9Z,12Z)‐オクタデカ‐9,12‐ジエニル)テトラヒドロ‐3aH‐シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール‐5‐アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)‐ヘプタトリアコンタ‐6,9,28,31‐テトラエン‐19‐イル4‐(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1’‐(2‐(4‐(2‐((2‐(ビス(2‐ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2‐ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン‐1‐イル)エチルアザネジイル)ジドデカン‐2‐オール(Tech G1)、又はそれらの混合物でありうる。陽イオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約20モル%〜約50モル%、又は約40モル%からなりうる。
非陽イオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル‐ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル‐ホスファチジルエタノールアミン 4‐(N‐マレイミドメチル)‐シクロヘキサン‐1‐カルボキシレート(DOPE‐mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル‐ホスファチジル‐エタノールアミン(DSPE)、16‐O‐モノメチルPE、16‐O‐ジメチルPE、18‐1‐トランスPE、1‐ステアロイル‐2‐オレオイル‐ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、又はそれらの混合物を含むが、これらに限定されない、陰イオン性脂質又は中性脂質でありうる。非陽イオン性脂質は、コレステロールが含まれる場合、粒子中に存在する総脂質の約5モル%〜約90モル%、約10モル%、又は約58モル%でありうる。
粒子の凝集を阻害する接合された脂質は、例えば、制限されないが、PEG‐ジアシルグリセロール(DAG)、PEG‐ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG‐リン脂質、PEG‐セラミド(Cer)、又はそれらの混合物を含む、ポリエチレングリコール(PEG)‐脂質でありうる。PEG‐DAA複合体は、例えば、PEG‐ジラウリルオキシプロピル(Ci2)、PEG‐ジミリスチルオキシプロピル(Ci4)、PEG‐ジパルミチルオキシプロピル(Ci6)、又はPEG‐ジステアリルオキシプロピル(C]8)でありうる。PEG複合体のその他の例としては、PEG‐cDMA(N‐[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]‐1,2‐ジミリスチルオキシプロピル‐3‐アミン)、mPEG2000‐DMG(mPEG‐ジミリスチルグリセロール(dimyrystylglycerol)(平均分子量2,000をもつ)及びPEG‐C‐DOMG(R‐3‐[(ω‐メトキシ‐ポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル)]‐1,2‐ジミリスチルオキシプロピル‐3‐アミン)が挙げられる。粒子の凝集を阻止する接合された脂質は、粒子中に存在する総脂質の0モル%〜約20モル%、又は約1.0、1.1.、1.2、.13、1.4、1.5、1.6,1.7、1.8、1.9、又は2モル%でありうる。
幾つかの実施形態では、核酸‐脂質粒子は、例えば、粒子中に存在する総脂質の約10モル%〜約60モル%、又は約48モル%のコレステロールをさらに含む。
1つの実施形態では、脂質‐siRNAナノ粒子を調製するために、化合物、2,2‐ジリノレイル‐4‐ジメチルアミノエチル‐[1,3]‐ジオキソランを使用することができる。2,2‐ジリノレイル‐4‐ジメチルアミノエチル‐[1,3]‐ジオキソランの合成は、2008年10月23日出願の米国特許仮出願第61/107,998号に記載され、この出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
例えば、脂質‐siRNA粒子は、40%の2,2‐ジリノレイル‐4‐ジメチルアミノエチル‐[1,3]‐ジオキソラン、10%のDSPC、40%のコレステロール、10%(モルパーセント)のPEG‐C‐DOMGを含み、粒径63.0±20nm及び0.027のsiRNA/脂質比であることができる。
さらに別の実施形態では、脂質‐siRNA粒子を調製するために、化合物、1,1’‐(2‐(4‐(2‐((2‐(ビス(2‐ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2‐ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン‐1‐イル)エチルアザネジイル)ジドデカン‐2‐オール(Tech G1)を使用することができる。例えば、dsRNAを、50:10:38.5:1.5の比でTach‐1、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール及びmPEG2000‐DMGを含む脂質製剤に、7:1の総脂質のsiRNAに対する比(重量:重量)で製剤化することができる。
LNP01
1つの実施形態では、リピオイドND98‐4HCl(MW1487)(化学式1)、コレステロール(シグマ‐アルドリッチ(Sigma‐Aldrich))、及びPEG‐Ceramide C16(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))を使用して、脂質siRNAナノ粒子(すなわち、LNP01粒子)を調製することができる。各々のエタノール中の原液を、次のように調製することができる:ND98、133mg/mL;コレステロール、25mg/mL;PEG‐Ceramide C16、100mg/mL。次に、ND98、コレステロール、及びPEG‐Ceramide C16の原液を、例えば、42:48:10のモル比に混合することができる。混合した脂質溶液を、最終エタノール濃度が約35〜45%、及び最終酢酸ナトリウム濃度が約100〜300mMになるように、(例えば、pH5の酢酸ナトリウム中の)siRNA水溶液と混合することができる。脂質‐siRNAナノ粒子は、典型的には、混合時に自然発生的に形成される。所望の粒径分布に依存して、得られたナノ粒子混合物は、例えば、Lipex Extruder(Northern Lipids,Inc)などのサーモバレル押出機(thermobarrel extruder)を使って、ポリカーボネート膜(例えば、100nmカットオフ)を通して押し出すことができる。場合によっては、押出工程を割愛することができる。エタノール除去及び同時の緩衝液交換は、例えば、透析又は接線流濾過によって達成することができる。緩衝液は、例えば、約pH7、例えば、約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、又は約pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)と交換することができる。
LNP01化学式は、例えば、国際公開第2008/042973号に記載されており、出願は、参照により本明細書に組み込まれる。追加の例示的な化学式を表Aに記載する。
SNALP(1,2‐ジリノレニルオキシ‐N,N‐ジメチルアミノプロパン(DLinDMA))を含む製剤は、2009年4月15日出願の国際公開第2009/127060号に記載されており、それは、参照により本明細書に組み込まれる。
XTCを含む製剤は、例えば、2009年9月3日出願の米国特許仮出願第61/239,686号及び2010年1月29日出願の国際特許出願PCT/US10/22614に記載されており、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
MC3を含む製剤は、例えば、2009年9月22日出願の米国特許仮出願(U.S. Provisional Serial)第61/244,834号及び2009年6月10日出願の米国特許仮出願(U.S. Provisional Serial)第61/185,800号に記載されており、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
ALN100、すなわちALNY‐100を含む製剤は、例えば、2009年11月10日出願の国際特許出願PCT/US09/63933に記載されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。
C12‐200、すなわちTech G1を含む製剤は、例えば、2009年5月5日出願の米国特許仮出願第61/175,770号に記載されており、この出願は参照により本明細書に組み込まれる。
標準的な方法又は押出を伴わない方法のいずれかによって調製された製剤を同様の様態で特徴付けることができる。例えば製剤は、典型的には、目視検査によって特徴付けられる。それらは、凝集物又は沈降物のない白っぽい半透明の溶液であるべきである。脂質ナノ粒子の粒径及び粒径分布は、例えば、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern,USA)を使用して、光散乱によって測定することができる。粒子は、40〜100nmなどの約20〜300nmの粒径であるべきである。粒径分布は、単峰型であるべきである。製剤中及び封入された画分中の総siRNA濃度は、色素排除アッセイを使って推定される。製剤化されたsiRNAの試料を、製剤を分裂する界面活性剤、例えば、0.5%のTriton‐X100の存在又は非存在下においてRibogreen(Molecular Probes)などのRNAに結合する色素を用いてインキュベーションすることができる。製剤中の総siRNAは、標準曲線に対する、界面活性剤を含有する試料からのシグナルによって決定することができる。封入された画分を、総siRNA含有量からsiRNAを「含まない」含有量(界面活性剤の非存在下のシグナルによって測定される)を引くことによって決定する。封入されたsiRNAの割合は、典型的には85%超である。SNALP製剤については、粒径は、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも110nm、及び少なくとも120nmである。好適な範囲は、典型的には少なくとも約50nm〜少なくとも約110nm、少なくとも約60nm〜少なくとも約100nm、又は少なくとも約80nm〜少なくとも約90nmである。
経口投与用の組成物及び製剤としては、粉末若しくは顆粒、微粒子、ナノ粒子、水若しくは非水性媒質中の懸濁液若しくは溶液、カプセル、ゲルカプセル、サシェット、錠剤、又はミニタブレットが挙げられる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、又は結合剤が望ましくありうる。幾つかの実施形態では、経口製剤とは、本発明で取り上げられるdsRNAが、1つ以上の浸透促進剤、界面活性剤、及びキレート化剤と共に投与されるものである。好適な界面活性剤としては、脂肪酸及び/又はそのエステル若しくは塩、胆汁酸及び/又はその塩が挙げられる。好適な胆汁酸/塩にとしては、ケノデオキシコール酸(CDCA)及びウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸(glucholic acid)、グリコール酸(glycholic acid)、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ‐24,25‐ジヒドロ‐フシジン酸ナトリウム、並びにグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。好適な脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1‐モノカプリン酸、1‐ドデシルアザシクロヘプタン‐2‐オン、アシルカルニチン、アシルコリン、又はモノグリセリド、ジグリセリド、若しくはその薬学的に許容可能な塩(例えば、ナトリウム)が挙げられる。幾つかの実施形態では、浸透促進剤の組み合わせが使用され、例えば、胆汁酸/塩と組み合わせた脂肪酸/塩がある。例示的な1つの組み合わせは、ラウリン酸、カプリン酸、及びUDCAのナトリウム塩である。さらなる浸透促進剤としては、ポリオキシエチレン‐9‐ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン‐20‐セチルエーテルが挙げられる。本発明で取り上げられるdsRNAは、噴霧乾燥粒子を含む、又は微小若しくはナノ粒子を形成するように複合された顆粒形態で経口的に送達されうる。dsRNA複合剤としては、ポリ‐アミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;ポリアルキルアクリレート、ポリオキセタン、ポリアルキルシアノアクリレート;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)、及びデンプン;ポリアルキルシアノアクリレート;DEAE誘導体化ポリイミン、プルラン(pollulan)、セルロース、及びデンプンが挙げられる。好適な複合剤としては、キトサン、N‐トリメチルキトサン、ポリ‐L‐リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p‐アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、DEAE‐メタクリレート、DEAE‐ヘキシルアクリレート、DEAE‐アクリルアミド、DEAE‐アルブミン及びDEAE‐デキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L‐乳酸)、ポリ(DL‐乳酸‐co‐グリコール酸(PLGA)、アルギン酸塩、並びにポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNA用の経口製剤及びそれらの調製は、米国特許第6,887,906号、米国特許出願公開第20030027780号、及び米国特許第6,747,014号に詳細に記載され、それらは各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
非経口、実質内(脳内への)、くも膜下腔内、脳室内、又は肝内投与用の組成物及び製剤には、滅菌水溶液が含み、限定されないが、浸透促進剤、担体化合物、及び他の薬剤として許容される担体若しくは賦形剤等の緩衝液、希釈剤、及び他の好適な添加剤も含有しうる。
本発明の医薬組成物としては、溶液、エマルジョン、及びリポソームを含有する製剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの組成物は、限定されないが、予め形成された液体、自己乳化固体及び、自己乳化半固体を含むさまざまな成分から生成されうる。特に好ましいのは、肝癌などの肝障害を処置する場合、肝臓を標的とする製剤である。
本発明の医薬製剤は、簡便に単位剤形で提示することができ、製薬産業において周知の従来の技法によって調製することができる。そのような技法には、活性成分を1つ若しくは複数の医薬担体又は1つ若しくは複数の賦形剤と合わせる工程を含まれる。一般に、製剤は、活性成分を液体担体若しくは微粉化した固体担体又はその両方と均一に及び密接につながりをもたせ、次に必要であれば生成物を成形することによって調製される。
本発明の組成物は、限定されないが、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟質ゲル、坐薬、及び浣腸剤などの考えられる多くの剤形のうちのいずれかに製剤化されうる。また、本発明の組成物は、水性、非水性、又は混合媒質中の懸濁液として製剤化されうる。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランを含む懸濁液の粘性を増加する物質をさらに含有しうる。また、懸濁液は安定化剤も含有しうる。
エマルジョン
本発明の組成物は、エマルジョンとして調製し、製剤化されうる。エマルジョンは典型的には、1つの液体がもう1つの液体中に、通常は直径0.1μmを超える液滴の形態で分散した不均質系である(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N. Y., volume 1, p. 199;Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N. Y., Volume 1, p. 245;Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p. 335;Higuchi et al., in Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 301)。エマルジョンは、密接に混合し、互いに分散した、2つの不混和性液相を含む二相系であることが多い。一般に、エマルジョンは油中水(w/o)又は水中油(o/w)のいずれかの種でありうる。水相が大量の油相中に微粒化し、微小液滴として分散している場合、得られる組成物は油中水(w/o)エマルジョンと呼ばれる。あるいは、油相が大量の水相中に微粒化し、微小液滴として分散している場合、得られる組成物は水中油(o/w)エマルジョンと呼ばれる。エマルジョンは、分散相、及び水相中又は油相中いずれかの溶液として、若しくはそれ自体が別の相として存在しうる活性薬物にくわえて、追加の成分を含有しうる。乳化剤、安定化剤、色素、及び抗酸化剤などの薬学的賦形剤も、必要に応じてエマルジョン中に存在しうる。また、薬学的エマルジョンは、例えば油中水中油(o/w/o)及び水中油中水(w/o/w)エマルジョンの場合などの3相以上からなる多相エマルジョンでもありうる。そのような複合製剤はしばしば、単純な二相エマルジョンでは得られない特定の利点を提供する。o/wエマルジョンの個々の油滴が小さい水滴を封入する多相エマルジョンは、w/o/wエマルジョンを構成する。同様に、油性連続相中に安定化された水の小滴中に封入された油滴の系はo/w/oエマルジョンを提供する。
エマルジョンは、熱力学的安定性がほとんど、又は全くないことによって特徴付けられる。しばしば、エマルジョンの分散又は不連続相は外部又は連続相中によく分散し、乳化剤又は製剤の粘性の手段によってこの形態に維持される。エマルジョン型軟膏基剤及びクリームの場合と同様に、エマルジョンの相のいずれかは半固体又は固体でありうる。エマルジョンを安定化するその他の手段は、エマルジョンのいずれかの相に組み込まれうる乳化剤の使用を伴う。乳化剤は次の4つの範疇に大きく分類されうる:合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、及び微細分散固体(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
表面活性剤としても公知の合成界面活性剤は、エマルジョンの製剤において広い適用性が見いだされてきており、文献に概説されている(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, volume 1, p. 199)。界面活性剤は、典型的に両親媒性で、親水性及び疎水性部分を含む。界面活性剤の疎水性に対する親水性の比は親水親油バランス(HLB)と命名され、製剤の調製において界面活性剤を分類し、選択する際に価値あるツールである。界面活性剤は、親水性基の性質に基づいて次の異なるクラスに分類されうる:非イオン性、陰イオン性、陽イオン性及び両性(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285)。
エマルジョン製剤において用いられる天然乳化剤には、ラノリン、蜜蝋、ホスファチド、レシチン、及びアカシアを含む。無水ラノリン及び親水性ワセリンなどの吸収基剤は、それらが水を吸収してw/oエマルジョンを形成し、なおそれらの半固体の堅さを保持しうるような親水特性を有する。また、微粒子固体も、特に界面活性剤との組み合わせ、及び粘性製剤で、良好な乳化剤として使われてきた。これらには、重金属の水酸化物などの極性無機固体;ベントナイト、アタパルガイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイド状ケイ酸アルミニウム及びコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどの非膨潤クレー、色素並びに炭素又はトリステアリン酸グリセリンなどの非極性固体が含まれる。
また、非常に多様な非乳化材料もエマルジョン製剤に含まれ、エマルジョンの性質に貢献している。これらには、脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、湿潤薬、親水性コロイド、保存剤及び抗酸化剤が含まれる(Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
親水性コロイド又はハイドロコロイドとしは、多糖(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、ガーゴム、カラヤゴム、及びトラガカント)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシプロピルセルロース)、並びに合成ポリマー(例えば、カルボマー、セルロースエーテル、及びカルボキシビニルポリマー)などの天然ゴム及び合成ポリマーが挙げられる。これらは水に分散又は膨潤して、分散相液滴の周囲に強い界面フィルムを形成すること、及び外部相の粘性を増加することにより、エマルジョンを安定化するコロイド状溶液を形成する。
エマルジョンは、微生物の成長を容易に助けうる、炭水化物、タンパク質、ステロール及びホスファチドなどの多くの成分を含有することが多いため、これらの製剤は保存剤を組み込むことが多い。エマルジョン製剤に含まれる普通に用いられる保存剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p‐ヒドロキシ安息香酸のエステル、及びホウ酸が挙げられる。また、抗酸化剤も、普通、エマルジョン製剤に加えられ、製剤の劣化を防止する。用いられる抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカル捕捉剤、又はアスコルビン酸及びメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤、並びにクエン酸、酒石酸、及びレシチンなどの抗酸化剤相乗剤でありうる。
エマルジョン製剤の皮膚、経口及び非経口経路による適用、並びにそれらの製造方法は、文献に概説されている(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。経口送達用のエマルジョン製剤は、製剤が容易で、かつ吸収及びバイオアベイラビリティの見地から有効であるため、非常に広く用いられている(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。鉱油系の緩下剤、脂溶性ビタミン及び高脂肪栄養製剤は、普通、o/wエマルジョンとして経口投与されている材料に含まれる。
本発明の1つの実施形態では、dsRNA及び核酸の組成物はマイクロエマルジョンとして製剤化される。マイクロエマルジョンは、単一の光学的に等方性で熱力学的に安定な液体溶液である、水、油及び両親媒性の系と定義されうる(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245)。典型的に、マイクロエマルジョンは、まず油を水性界面活性剤溶液に分散し、次に十分な量の第4の成分、一般には中鎖アルコールを加えて、透明な系を形成することにより調製される系である。したがって、マイクロエマルジョンは、表面活性分子の界面フィルムにより安定化されている2つの不混和性液体の熱力学的に安定で等方的に澄明な分散液とも記載されている(Leung and Shah, in: Controlled Release of Drugs: Polymers and Aggregate Systems, Rosoff, M., Ed., 1989, VCH Publishers, New York, pages 185‐215)。マイクロエマルジョンは、普通、油、水、界面活性剤、コサーファクタント及び電解質を含む3から5つの成分の組み合わせを介して調製される。マイクロエマルジョンが油中水(w/o)又は水中油(o/w)型のいずれであるかは、使われる油及び界面活性剤の性質、並びに界面活性剤分子の極性頭部及び炭化水素尾部の構造及び幾何学的充填に依存する(Schott, in Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 271)。
相ダイアグラムを利用する現象学的アプローチが広く研究されてきており、当業者にはマイクロエマルジョンをどのようにして製剤化するかの包括的知識が得られている(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245;Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335)。従来のエマルジョンと比較して、マイクロエマルジョンは水不溶性薬物を自然発生的に形成される熱力学的に安定な液滴の製剤中に可溶化するという利点を提供する。
マイクロエマルジョンの調製に用いられる界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ブリッジ96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセスキオレエート(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DAO750)が単独又はコサーファクタントとの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。コサーファクタントは、通常はエタノール、1‐プロパノール、及び1‐ブタノールなどの短鎖アルコールで、界面活性剤フィルムに浸透し、その結果、界面活性剤分子の間に生じる空間のために無秩序なフィルムを生成することにより、界面の流動性を増加する役割を果たす。しかしながら、マイクロエマルジョンはコサーファクタントを用いることなく調製されうり、アルコールを含まない自己乳化マイクロエマルジョン系が当該技術分野において公知である。水相は、典型的に、水、薬物の水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、及びエチレングリコールの誘導体でありうるが、それらに限定されるわけではない。油相としては、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8‐C12)モノ、ジ、及びトリグリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8‐C10グリセリド、植物油並びにシリコーン油などの材料が挙げられうるが、それらに限定されるわけではない。
マイクロエマルジョンは特に薬物可溶化及び薬物の吸収増強の見地から興味深い。脂質性マイクロエマルジョン(o/w及びw/oの両方)はペプチドを含む薬物の経口バイオアベイラビリティを増強すると提唱されてきている(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385‐1390;Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol., 1993, 13, 205)。マイクロエマルジョンは薬物の可溶化改善、酵素加水分解からの薬物の保護、界面活性剤により誘起される膜の流動性及び透過性の変化による薬物吸収の増強の可能性、調製が容易であること、固体剤形よりも経口投与が容易であること、臨床効力の向上、及び毒性の低減という利点を提供する(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385;Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85, 138‐143)。しばしば、マイクロエマルジョンは、その成分が周囲温度で一緒になったときに自然発生的に形成することがある。これは、熱に不安定な薬物、ペプチド又はdsRNAを製剤化する際に特に有利でありうる。また、マイクロエマルジョンは、美容及び薬学的適用の両方で、活性成分の経皮送達においても効果的であった。発明のマイクロエマルジョン組成物及び製剤は、dsRNA及び核酸の胃腸管からの全身吸収増大を促進し、同様に、dsRNA及び核酸の局所細胞取り込みを向上することが期待されている。
本発明のマイクロエマルジョンは、製剤の性質を向上するため、並びに本発明のdsRNA及び核酸の吸収を増強するために、ソルビタンモノステアレート(Grill 3)、ラブラソール(Labrasol)、及び浸透増強剤などの追加の成分及び添加物を含みうる。本発明のマイクロエマルジョンにおいて用いられる浸透増強剤は5つの大きい範疇‐界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、及び非キレート化非界面活性剤の1つに属するとして分類されうる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)。これらのクラスの各々は上で論じられている。
浸透促進剤
1つの実施形態では、本発明は、核酸、特にdsRNAの、動物の皮膚への効率的な送達を達成させるために、さまざまな浸透促進剤を用いる。大部分の薬物は、イオン化及び非イオン化の両方の形態で溶液中に存在する。しかしながら、通常、脂溶性又は親油性の薬物のみが、容易に細胞膜を横断する。横断される膜が浸透促進剤で処理されている場合、非親油性薬物でさえも細胞膜を横断しうることが発見されている。非親油性薬物の細胞膜を横断する拡散を補助することにくわえて、浸透促進剤は、親油性薬物の透過性も高める。
浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁塩、キレート剤、及び非キレート非界面活性剤の5つの大きな範疇のうちの1つに属するものとして分類することができる(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)。浸透促進剤の前述のクラスの各々について、以下に、より詳細に記載する。
界面活性剤:本発明に関連して、界面活性剤(又は「表面活性剤」)とは、水溶液中に溶解された際、溶液の表面張力又は水溶液と別の液体との間の界面張力を減少させ、粘膜を通るdsRNAの吸収が高められるという結果をもたらす化学物質である。胆汁塩及び脂肪酸にくわえて、これらの浸透促進剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン‐9‐ラウリルエーテル、及びポリオキシエチレン‐20‐セチルエーテル)(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)、並びにFC‐43などのペルフルオロ化合物エマルジョンが挙げられる(Takahashi et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1988,40,252)。
脂肪酸:浸透促進剤として作用する種々の脂肪酸及びそれらの誘導体としては、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n‐デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン(1‐モノオレオイル‐rac‐グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール 1‐モノカプリン酸、1‐ドデシルアザシクロヘプタン‐2‐オン、アシルカルニチン、アシルコリン、それらのC.sub.1‐10アルキルエステル(例えば、メチル、イソプロピル、及びt‐ブチル)、並びにそれらのモノ及びジ‐グリセリド(すなわち、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、リノール酸塩等)が挙げられる(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carryier Systems,1991,p.92、Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1‐33、El Hariri et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1992,44,651‐654)。
胆汁塩:胆汁の生理学的役割には、脂質及び脂溶性ビタミンの分散及び吸収の促進が含まれる(Brunton,Chapter 38 in: Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th Ed.,Hardman et al. Eds.,McGraw‐Hill,New York,1996,pp.934‐935)。さまざまな天然胆汁塩、及びそれらの合成誘導体は、浸透促進剤として作用する。よって、「胆汁塩」という用語は、胆汁の天然に存在する構成成分のいずれも、及びそれらの合成誘導体のいずれもを含む。好適な胆汁塩には、例えば、コール酸(又はその薬学的に許容可能なナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム(sodium glucholate))、グリコール酸(グリココール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ‐24,25‐ジヒドロ‐フシジン酸ナトリウム(STDHF)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレン‐9‐ラウリルエーテル(POE)が含まれる(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92;Swinyard,Chapter 39 In: Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990,pages 782‐783、Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1‐33、Yamamoto et al.,J.Pharm.Exp.Ther.,1992,263,25、Yamashita et al.,J.Pharm.Sci.,1990,79,579‐583)。
キレート剤:本発明に関連して使用されるキレート剤は、金属イオンとの複合体を形成することによって溶液から金属イオンを除去し、粘膜を通るdsRNAの吸収を高めるという結果をもたらす化合物として定義することができる。本発明における浸透促進剤としての使用に関して、大部分の特徴付けられたDNAヌクレアーゼは、触媒作用に二価金属イオンを必要とし、よってキレート剤により阻害されるため、キレート剤は、DNase阻害剤としても機能するさらなる利点を有する(Jarrett,J.Chromatogr.,1993,618,315‐339)。好適なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5‐メトキシサリチル酸塩、及びホモバニレート(homovanilate))、コラーゲンのN‐アシル誘導体、ラウレス‐9、及びベータ‐ジケトンのN‐アミノアシル誘導体(エナミン)が挙げられるが、これらに限定されない(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92、Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1‐33、Buur et al.,J.Control Rel.,1990,14,43‐51)。
非キレート非界面活性剤:本明細書において使用される、非キレート非界面活性剤の浸透促進化合物は、キレート剤又は界面活性剤としてわずかな活性しか示さないが、それにもかかわらず消化器粘膜を通じてのdsRNAの吸収を高める化合物として定義することができる(Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1‐33)。このクラスの浸透促進剤としては、例えば、不飽和環状尿素、1‐アルキル‐及び1‐アルケニルアザシクロ‐アルカノン誘導体(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92)、並びにジクロフェナクナトリウム、インドメタシン、及びフェニルブタゾンなどの非ステロイド性抗炎症薬(Yamashita et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1987,39,621‐626)が挙げられる。
担体
また、本発明の特定の組成物は、製剤中に担体化合物を組み込む。本明細書において使用される、「担体化合物」又は「担体」は、不活性である(すなわち、それ自体生理活性を有さない)が、例えば、生理活性のある核酸の分解、又は循環からのその除去の促進によって、生理活性を有する核酸の生物学的な利用可能性を減少させる生体内プロセスによって、核酸として認識される、核酸又はその類似体を指すことができる。核酸と担体化合物との同時投与は、典型的には後者の物質を過剰に伴い、おそらく共通の受容体に対する担体化合物と核酸との間の競合により、肝臓、腎臓、又はその他の循環外の貯蔵所で回収される核酸の量の著しい減少をもたらしうる。例えば、肝組織中の部分的ホスホロチオエートdsRNAの回収は、それがポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジル酸(polycytidic acid)、又は4‐アセトアミド‐4’イソチオシアノ‐スチルベン‐2,2’‐ジスルホン酸と同時投与される場合、減少されうる(Miyao et al.,DsRNA Res.Dev.,1995,5,115‐121、Takakura et al.,DsRNA & Nucl.Acid Drug Dev.,1996,6,177‐183)。
賦形剤
担体化合物とは対照的に、「医薬用担体」又は「賦形剤」は、1つ以上の核酸を動物に送達するための、薬学的に許容可能な溶媒、懸濁剤、又は任意の他の薬理学的に不活性な媒体である。賦形剤は液体又は固体でありえ、核酸及び所与の医薬組成物の他の構成成分と組み合わされた際、所望の容量、稠度などを提供するように、計画された投与の様態を念頭において選択される。典型的な医薬用担体としては、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えば、ラクトース及びその他の糖、微結晶性セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、又はリン酸水素カルシウムなど)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、硬化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、並びに湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
また、核酸と有害に反応しない、経口投与に好適な薬学的に許容可能な有機又は無機賦形剤を、本発明の組成物の製剤化に使用することができる。好適な薬学的に許容可能な担体としては、水、塩類溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
核酸の局所投与用の製剤には、滅菌及び非滅菌水溶液、アルコールなどの一般的な溶媒中の非水溶液、又は液体若しくは固形の油基剤中の核酸の溶液が含まれうる。溶液は、緩衝液、希釈剤、及びその他の好適な添加剤も含有しうる。核酸と有害に反応しない、経口投与に好適な薬学的に許容可能な有機又は無機賦形剤を使用することができる。
好適な薬学的に許容可能な賦形剤としては、水、塩類溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
その他の成分
本発明の組成物は、医薬組成物中に従来見いだされるその他の補助成分を、それらの当該技術分野において確立されている用法レベルでさらに含有しうる。よって、例えば、組成物は、例えば、止痒剤、収斂剤、局所麻酔薬若しくは抗炎症剤などの追加の適合性薬学的活性材料を含有し、又は色素、着香剤、保存剤、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤及び安定化剤などの、本発明の組成物をさまざまな剤形に物理的に製剤化するにあたって有用な追加の材料を含有しうる。しかしながら、そのような材料は、添加したときに、本発明の組成物の成分の生理活性を過度に妨害すべきではない。製剤は滅菌されることができ、望まれる場合には、製剤の核酸と有害な相互作用をしない補助物質、例えば、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響をおよぼすための塩、緩衝剤、着色剤、着香剤及び/又は芳香物質などと混合することもできる。
水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランを含む懸濁液の粘性を増加する物質を含有しうる。懸濁液は安定化剤も含有しうる。
幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、(a)1つ以上のdsRNA組成物及び(b)非RNA干渉メカニズムにより機能する、1つ以上の抗サイトカイン生物薬剤を含む。そのような生物薬剤の例としては、IL1βを標的とする生物薬剤(例えばアナキンラ)、IL6を標的とする生物薬剤(トシリズマブ)、又はTNFを標的とする生物薬剤(エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ (adlimumab)、若しくはセルトリズマブ)が挙げられる。
そのような化合物の毒性及び治療上の有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的である投与量)及びED50(集団の50%に治療上有効な投与量)を決定するためなどの、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的方法によって決められることができる。毒性と治療上の効果との間の投与量比が治療指数であり、LD50/ED50の比として表されることができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
細胞培養アッセイ及び動物試験から得たデータは、ヒトにおいて用いるための一連の投与量を製剤化するために用いられることができる。本発明の組成物の投与量は、一般に、毒性がほとんど又は全くなく、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動しうる。本発明の方法において用いる任意の化合物に関して、治療上有効な投与量はまず細胞培養アッセイから推定されることができる。細胞培養で決定されたIC50(すなわち、症状の最大阻害の1/2を達成する試験化合物の濃度)を含む、化合物、又は適当な場合には標的配列のポリペプチド生成物の循環血漿濃度範囲を達成する(例えば、ポリペプチドの濃度低下を達成する)ために、投与量は動物モデルにおいて製剤化されうる。ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために、そのような情報は用いられることができる。血漿中のレベルは、例えば高性能液体クロマトグラフィーによって測定されうる。
前述のように、それらの投与にくわえて、本発明のdsRNAはTTR発現により仲介される病的過程の治療において有効なその他の公知の薬剤と組み合わせて投与されることができる。いずれにせよ、投与を施す医師は、当該技術分野において公知又は本明細書において記載の有効性の標準的尺度を用いて観察された結果に基づいて、dsRNA投与の量及びタイミングを調整することができる。
TTR遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を治療する方法
本発明は、特に、TTRを標的とするdsRNA、及びTTRにより媒介される障害又は疾患の治療のための、そのようなdsRNAの少なくとも1つを含有する組成物の使用に関する。例えば、TTR遺伝子を標的とするdsRNAは、家族性アミロイド神経障害(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、髄膜/CNSアミロイドーシス、アミロイドーシスVII型(髄膜若しくは脳血管性アミロイドーシスとしても知られている)、高サイロキシン血症、及び心アミロイドーシス(老人性全身性アミロイドーシス(SSA)及び老人性心アミロイドーシス(SCA)とも呼ばれる)などのTTRアミロイドーシスの治療に有用でありことができる。治療は、疾患を治す及び/又は予防するものであることができる。
図15は、家族性アミロイド神経障害、家族性アミロイド心筋症、及びCNSアミロイドーシスと関連するTTRにおける、症状及び変異を図示する。本発明は、これらの疾患及び症状の治療のための組成物及び方法を含み、TTRのこれらの変異型を対象とする。
また、TTR遺伝子を標的とするdsRNAは、TTRアミロイドーシスなどの症状及び障害の治療にも使用される。そのようなアミロイドーシスと関連する症状としては、例えば、発作、認知症、ミエロパシー、多発性神経障害、手根管症候群、自律神経不全症、心筋症、胃腸障害(例えば、胃潰瘍、下痢、便秘、又は吸収不良)、体重の減少、肝腫大、リンパ節腫脹症、甲状腺腫、硝子体混濁、腎不全(タンパク尿及び腎機能障害を含む)、腎障害、脳神経障害、角膜格子状ジストロフィー、及び全身衰弱を伴ううっ血性心不全、並びに体液貯留による呼吸困難が挙げられる。
幾つかの実施形態では、TTR siRNAは、末梢神経系でのTTRアミロイド班の沈着などの、TTRアミロイド班をもたらすTTRに関連する障害の治療に使用される。例として、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)及び家族性アミロイド神経障害(FAP)が挙げられる。治療は沈着の予防をもたらす治療など、予防的であることができる。あるいは、又はくわえて、治療は、すでに存在する班の退縮をもたらす治療など、疾患を治すものであることができる。治療は、例えば、限定はされないが、食道、胃、腸(十二指腸及び結腸)、座骨神経、及び/又は後根神経節などのどれだけの数の組織においても、TTR沈着を減少させるか予防することができる。
例えば、本発明は、FAP患者などの、そのような治療を必要とするヒト対象におけるTTR沈着の治療法を含む。該方法は、例えばALN‐TTR01などのTTR siRNAを投与することを含み、その治療は、治療後TTRアミロイド沈着の量における減少及び/又はすでに存在しているTTRアミロイド沈着における減少をもたらす。
TTR発現に対する阻害効果のため、本発明による組成物又はそれから調製した医薬組成物は生活の質を高めることができる。
本発明はさらに、dsRNA又はその医薬組成物、他の薬剤及び/又は他の治療法、例えばTTRアミロイド症を治療するための 例えばこれら障害を治療するために現在用いられているものなどの、公知の医薬及び/又は公知の治療法などの、その他医薬及び/又はその他治療法の組み合わせての使用に関する。一例では、TTRを標的とするdsRNAを、肝臓移植と組み合わせて投与することができる。他の例では、TTRを標的とするdsRNAを、例えば腎機能の管理のための、利尿薬、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断剤(ARB)、又は透析療法などの、TTR疾患の症状を治療するための薬学的又は治療的方法と組み合わせて投与することができる。
dsRNA及び追加の治療薬は、同じの組み合わせで、例えば非経口で投与することができるか、又は追加の治療薬は、別個の組成物の一部として、又は本明細書において記載の別の方法によって投与されることができる。
本発明は、TTRを標的とするdsRNAを、TTRアミロイドーシス、例えばFAPなどのTTRの発現により媒介される疾患又は障害を有する患者に投与する方法を取り上げる。dsRNAの投与は、例えばFAPの患者において、末梢神経の機能を安定させ、向上させることができる。患者は、dsRNAの治療量、例えば0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、又は2.5mg/kgのdsRNAを投与されることができる。dsRNAは、例えば5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、60分間、120分間、又は180分間などの期間にわたって静脈内注入により投与することができる。例えば、投与は、隔週(すなわち2週間ごとに)など定期的に、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、又はそれより長い期間、繰り返される。初期治療レジメンの後、治療は、より低い頻度で投与することができる。例えば、隔週で3ヶ月間投与した後、6ヶ月間又は1年又はそれより長い期間、1ヶ月に1回、投与を繰り返すことができる。dsRNAの投与は、患者における血中又は尿中のTTRレベルを、少なくとも20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%又はそれ以上減少させることができる。
総投与量のdsRNAを投与する前に、患者は、総投与量の5%である投与量などの少量の投与量を投与され、アレルギー反応又は肝機能の変化などの副作用を監視されることができる。例えば、肝機能の変化について監視される患者において、LFT(肝機能検査)の変化の低い発生率(例えば、LFTの10〜20%発生率)は許容される(例えば、可逆的な、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及び/又はAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)レベルの3倍の増加)。
多くのTTR関連の疾病及び障害は、遺伝性である。したがって、TTRのdsRNAを必要とする患者を、家族歴をとることにより特定することができる。医者、看護師、又は家族などのヘルスケア提供者は、TTRのdsRNAを処方又は投与する前に家族歴をとることができる。DNA検査を、TTRのdsRNAを患者に投与する前に、TTR遺伝子の変異を特定するために患者に実施しうる。
TTR dsRNAを受ける前に、患者に生検を実施しうる。生検は、例えば、胃粘膜、末梢神経、皮膚、腹部脂肪、肝臓、又は腎臓などの組織でありえ、生検は、TTRにより媒介される障害を示すアミロイド斑を明らかにしうる。アミロイド斑が確認されると、患者にTTR dsRNAを投与する。
TTR遺伝子の発現を阻害する方法
さらに別の態様では、本発明は哺乳動物においてTTR遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。その方法は、標的TTR遺伝子の発現がサイレンシングされるように、本発明の組成物を哺乳動物に投与することを含む。
治療を受ける生物がヒトなどの哺乳動物である場合、組成物は、経口、又は頭蓋内(例えば脳室内、実質内及びくも膜下腔内)、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(噴霧剤)、経鼻、直腸内、並びに局所(口腔内及び舌下を含む)投与を含む非経口経路を含むが、それらに限定されるわけではない、当該技術分野において公知の任意の手段によって投与されうる。ある実施形態では、組成物は静脈内注入又は注射により投与される。
特に記載がない限り、本明細書において用いられるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に普通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと類似又は等価の方法及び材料を本発明のdsRNA及び方法の実施又は試験に用いることができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が支配することになるであろう。くわえて、材料、方法、及び例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
実施例1.dsRNA合成
試薬の供給元
試薬の供給元が本明細書において具体的に示されていない場合、かかる試薬は任意の分子生物学試薬の供給元から、分子生物学の適用に標準的な品質/純度で入手しうる。
siRNA合成
一本鎖RNAを、Expedite 8909合成装置(アプライド・バイオシステムズ,Applera Deutschland GmbH,Darmstadt,Germany)及び固体支持体としてガラス多孔体(CPG,500A,Proligo Biochemie GmbH,Hamburg,Germany)を使って、1μモルのスケールで固相合成により作製した。RNA及び2’‐O‐メチルヌクレオチド含有RNAを、対応するホスホラミダイト及び2’‐O‐メチルホスホラミダイトをそれぞれ用いて(Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)固相合成により生成した。これらの構築ブロックを、Current protocols in nucleic acid chemistry,Beaucage,S.L.et al.(Edrs.),John Wiley & Sons,Inc.,New York.,NY,USAに記載のような標準的なヌクレオシドホスホラミダイト化学を使ってオリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択された部位に組み込んだ。ホスホロチオエート結合を、アセトニトリル中のビューケージ(Beaucage)試薬 (Chruachem Ltd,Glasgow,UK)の溶液(1%)でヨウ素酸化剤溶液を置換することにより導入した。さらなる補助試薬はマリンクロット・ベーカー(Mallinckrodt Baker),Griesheim,Germany)から入手した。
粗製オリゴリボヌクレオチドの陰イオン交換HPLCによる脱保護及び精製を、確立された手順に従って実施した。収量及び濃度を、分光光度計(DU 640B,ベックマンコルター(Beckman Coulter),GmbH,Unterschleisheim,Germany)を使って、対応するRNAの溶液の波長260nmでの紫外線吸収により決定した。二本鎖RNAを、アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH 6.8;100mM塩化ナトリウム)中の相補鎖の等モル溶液と混合することによって生成し、85〜90℃で3分間水浴槽中で加熱し、3〜4時間かけて室温まで冷却した。アニーリングしたRNA溶液を使用まで−20℃で保存した。
3’‐コレステロール接合siRNAs(本明細書において−Chol‐3’と呼ぶ)の合成のために、適切に改変した固体支持体を使用した。改変固体支持体を以下のように調製した。
2‐アザブタン‐1,4‐ジカルボン酸ジエチル AA
50mLのエチルグリシネート塩酸塩(32.19g、0.23モル)の水溶液を、撹拌、氷冷した4.7Mの水酸化ナトリウム水溶液(50mL)に加えた。次に、アクリル酸エチル(23.1g、0.23モル)を加え、混合物をTLCにより反応完了が確認されるまで室温で撹拌した。19時間後、溶液をジクロロメタン(3×100mL)で分画した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して蒸発させた。残渣を蒸留して、AA(28.8g、61%)を得た。
3‐{エトキシカルボニルメチル‐[6‐(9H‐フルオレン‐9‐イルメトキシカルボニル‐アミノ)‐ヘキサノイル]‐アミノ}‐プロピオン酸エチルエステル AB
Fmoc‐6‐アミノ‐ヘキサン酸(9.12g、25.83mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解し、氷で冷却した。ジイソプロピルカルボジイミド(3.25g、3.99mL、25.83mmol)を溶液に0℃で加えた。次に、アザブタン‐1,4‐ジカルボン酸ジエチル(5g、24.6mmol)及びジメチルアミノピリジン(0.305g、2.5mmol)を加えた。溶液を室温に戻し、さらに6時間撹拌した。反応の完了をTLCで確認した。反応混合物を減圧下で濃縮し、酢酸エチルを加えてジイソプロピル尿素を沈澱させた。懸濁液をろ過した。ろ液を5%塩酸水溶液、5%炭酸水素ナトリウム及び水で洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、粗生成物を得て、これをカラムクロマトグラフィ(50%EtOAC/ヘキサン)で精製して、11.87g(88%)のABを得た。
3‐[(6‐アミノ‐ヘキサノイル)‐エトキシカルボニルメチル‐アミノ]‐プロピオン酸エチルエステル AC
3‐{エトキシカルボニルメチル‐[6‐(9H‐フルオレン‐9‐イルメトキシカルボニルアミノ)‐ヘキサノイル]‐アミノ}‐プロピオン酸エチルエステルAB(11.5g、21.3mmol)をジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンに0℃で溶解した。溶液を1時間撹拌し続けた。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣に水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した。粗生成物をその塩酸塩に変換することにより精製した。
3‐({6‐[17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イルオキシカルボニルアミノ]‐ヘキサノイル}エトキシカルボニルメチル‐アミノ)‐プロピオン酸エチルエステル AD
3‐[(6‐アミノ‐ヘキサノイル)‐エトキシカルボニルメチル‐アミノ]‐プロピオン酸エチルエステルAC(4.7g、14.8mmol)の塩酸塩をジクロロメタンに溶解した。懸濁液を氷上で0℃に冷却した。懸濁液にジイソプロピルエチルアミン(3.87g、5.2mL、30mmol)を加えた。得られた溶液にクロロギ酸コレステリル(6.675g、14.8mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、10%塩酸で洗浄した。生成物をフラッシュクロマトグラフィで精製した(10.3g、92%)。
1‐{6‐[17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イルオキシカルボニルアミノ]‐ヘキサノイル}‐4‐オキソ‐ピロリジン‐3‐カルボン酸エチルエステル AE
カリウムt‐ブトキシド(1.1g、9.8mmol)を無水トルエン30mL中でスラリー化した。混合物を氷上で0℃に冷却し、ジエステルAD 5g(6.6mmol)を撹拌しながら20分以内にゆっくり加えた。温度を添加中は5℃未満に維持した。撹拌を0℃で30分間続け、氷酢酸1mLを加え、その直後に水40mL中のNaH2PO4・H2O 4gを加えた。得られた混合物をジクロロメタン各100mLで2回抽出し、合わせた有機抽出物をリン酸緩衝液各10mLで2回洗浄し、乾燥し、蒸発乾固させた。残渣をトルエン60mLに溶解し、0℃に冷却し、冷却したpH9.5の炭酸緩衝液50mLで3回抽出した。水性抽出物をリン酸でpH3に調節し、クロロホルム40mLで5回抽出し、これを合わせて乾燥し、蒸発乾固させた。残渣をカラムクロマトグラフィで25%酢酸エチル/ヘキサンを用いて精製し、1.9gのb‐ケトエステル(39%)を得た。
[6‐(3‐ヒドロキシ‐4‐ヒドロキシメチル‐ピロリジン‐1‐イル)‐6‐オキソ‐ヘキシル]‐カルバミン酸17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イルエステル AF
テトラヒドロフラン(10mL)中のb‐ケトエステルAE(1.5g、2.2mmol)及び水素化ホウ素ナトリウム(0.226g、6mmol)の還流混合物に、これにメタノール(2mL)を1時間かけて滴下した。撹拌を還流温度で1時間続けた。室温まで冷却した後、1N HCl(12.5mL)を加え、混合物を酢酸エチル(3×40mL)で抽出した。合わせた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して生成物を得て、これをカラムクロマトグラフィ(10%MeOH/CHCl3)で精製した(89%)。
(6‐{3‐[ビス‐(4‐メトキシ‐フェニル)‐フェニル‐メトキシメチル]‐4‐ヒドロキシ‐ピロリジン‐1‐イル}‐6‐オキソ‐ヘキシル)‐カルバミン酸17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イルエステル AG
ジオールAF(1.25g、1.994mmol)をピリジン(2×5mL)と共に減圧下で蒸発させて乾燥した。無水ピリジン(10mL)及び塩化4,4’‐ジメトキシトリチル(0.724g、2.13mmol)を撹拌しながら加えた。反応を室温で一晩実施した。メタノールを加えることにより反応を停止した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣にジクロロメタン(50mL)を加えた。有機層を1M炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残留ピリジンをトルエンと共に蒸発させることにより除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(2%MeOH/クロロホルム、5%MeOH/CHCl3中のRf=0.5)で精製した(1.75g、95%)。
コハク酸モノ‐(4‐[ビス‐(4‐メトキシ‐フェニル)‐フェニル‐メトキシメチル]‐1‐{6‐[17‐(1,5‐ジメチル‐ヘキシル)‐10,13‐ジメチル2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17‐テトラデカヒドロ‐1Hシクロペンタ[a]フェナントレン‐3‐イルオキシカルボニルアミノ]‐ヘキサノイル}‐ピロリジン‐3‐イル)エステル AH
化合物AG(1.0g、1.05mmol)を無水コハク酸(0.150g、1.5mmol)及びDMAP(0.073g、0.6mmol)と混合し、減圧下で40℃で一晩乾燥した。混合物を無水ジクロロメタン(3mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.318g、0.440mL、3.15mmol)を加え、溶液をアルゴン雰囲気下、室温で16時間撹拌した。次に、ジクロロメタン(40mL)で希釈し、氷冷クエン酸水溶液(5重量%、30mL)及び水(2×20mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮乾固した。残渣は、次の工程でそのまま用いた。
コレステロール誘導体化CPG AI
コハク酸エステルAH(0.254g、0.242mmol)をジクロロメタン/アセトニトリル(3:2、3mL)の混合物に溶解した。その溶液にアセトニトリル(1.25mL)中のDMAP(0.0296g、0.242mmol)、アセトニトリル/ジクロロエタン(3:1、1.25mL)中の2,2’‐ジチオ‐ビス(5‐ニトロピリジン)(0.075g、0.242mmol)を逐次加えた。得られた溶液にアセトニトリル(0.6mL)中のトリフェニルホスフィン(0.064g、0.242mmol)を加えた。反応混合物は明橙色に変わった。溶液をリストアクション撹拌機を用いて短時間(5分間)撹拌した。長鎖アルキルアミン‐CPG(LCAA‐CPG)(1.5g、61mM)を加えた。懸濁液を2時間撹拌した。CPGをガラスフィルターを通してろ過し、アセトニトリル、ジクロロメタン及びエーテルで逐次洗浄した。未反応のアミノ基を無水酢酸/ピリジンを用いてマスクした。達成したCPGのローディングをUV測定により調べた(37mM/g)。
5’‐12‐ドデカン酸ビスデシルアミド基(本明細書において「5’‐C32‐」と呼ぶ)又は5’‐コレステリル誘導体基(本明細書において「5’‐Chol‐」と呼ぶ)を有するsiRNAの合成を、コレステリル誘導体に関して、酸化工程を核酸オリゴマーの5’‐末端にホスホロチオエート連結を導入するためにビューケージ(Beaucage)試薬を用いて実施した以外は、国際公開第2004/065601号に記載のとおりに実施した。
核酸配列を、標準の命名法、及び具体的には表1の略称を使って以下に示す。
実施例2A.
TTR siRNAの設計
転写物
siRNA設計をヒト(記号TTR)及びラット(記号Ttr)のトランスサイレチン遺伝子を標的とするsiRNAを特定するために実施した。設計には、NCBI Refseq collectionからTTR転写物であるNM_000371.2(配列番号:1329)(ヒト)及びNM_012681.1(配列番号:1330)(ラット)を使用した。それらの対応するTTR遺伝子に対して100%の同一性をもつsiRNA二本鎖を設計した。siRNAの設計及び特異性の予測
すべての候補19ヌクレオチドの予測される特異性を各々の配列について決定した。TTR siRNAを、FASTAアルゴリズムを使ってヒト及びラットトランスクリプトーム(NCBI Refseqセット内のNM_及びXM_レコードのセットとして定義される)に対する包括的検索に使用した。次に、パイソンスクリプト(Python script)「offtargetFasta.py」を使用して、アライメントを解析し、siRNAとあらゆる可能性のある「オフターゲット」転写物の間のミスマッチの位置及び数に基づいてスコアを出した。オフターゲットスコアを重み付けし、分子の5’末端部から2〜9位にある、siRNAの「シード(seed)」領域における違いに重点をおく。オフターゲットスコアを以下のように算出する:オリゴと転写物の間のミスマッチにペナルティを与える。オリゴの2〜9位にあるシード領域におけるミスマッチには2.8のペナルティを与え;推定切断部位10及び11におけるミスマッチには1.2のペナルティ、並びに12〜19位におけるミスマッチには1のペナルティを与える。1位におけるミスマッチは考慮しない。次に、ミスマッチペナルティを合計することにより各オリゴ‐転写物対についてのオフターゲットスコアを算出する。次いで、すべてのオリゴ‐転写物対から最も低いオフターゲットスコアを決定し、オリゴのその後の分類に使用する。両方のsiRNA鎖を算出したスコアに従って特異性の範疇に割り当てた:3を超えるスコアは高度に特異的として適格とし、3に等しいスコアは特異的として、及び2.2〜2.8のスコアは、中程度に特異的とした。合成すべきオリゴを選択するにあたり、アンチセンス鎖のオフターゲットスコアを高いものから低いものへ分類し、ヒトから最良(最も低いオフターゲットスコア)の144のオリゴ対を、ラットから最良の26対を選択した。
siRNA配列の選択
siRNAオリゴに由来する、合計140のセンス鎖及び140のアンチセンス鎖のヒトTTRを合成し、二本鎖に形成した。siRNAオリゴに由来する、合計26のセンス鎖及び26のアンチセンス鎖のヒトTTRを合成し、二本鎖に形成した。オリゴを含む二本鎖を表2〜4(ヒトTTR)及び表5〜7(ラットTTR)に示す。
TTR配列の合成
TTR配列をMerMade192合成装置で1μmolスケールにて合成した。表にあるすべての配列について、以下に詳しく述べるように「エンドライト(endolight)」化学を適用した。
● センス鎖にあるすべてのピリミジン(シトシン及びウリジン)を対応する2’‐O‐メチル塩基(2’‐O‐メチルC及び2’‐O‐メチルU)に置き換えた。
● アンチセンス鎖において、リボAヌクレオシドに(5’位方向に)隣接したピリミジンをそれらの対応する2‐O‐メチルヌクレオシドに置き換えた。
● センス及びアンチセンスの配列双方の3’末端に2塩基dTdT伸長を導入した。
● 配列ファイルをテキストファイルに変換し、MerMade192合成ソフトウエアへの搭載に適合させた。
TTR配列の合成は、ホスホラミダイト化学を用いた固相担持オリゴヌクレオチド合成を使用した。上記の配列の合成を、96ウェルプレートで1umスケールで実施した。アミダイト溶液を0.1M濃度に調製し、エチルチオテトラゾール(アセトニトリル中0.6M)を活性剤として使用した。
合成した配列を、第1工程ではメチルアミンを、第2工程ではトリエチルアミン三フッ化水素を使って、96ウェルプレートで切断及び脱保護した。こうして得られた粗配列を、アセトン:エタノール混合物を使って沈殿させ、沈殿物を0.5M酢酸ナトリウム緩衝液に再懸濁した。各配列からのサンプルは、LC‐MSにて分析し、得られた質量分析データにより配列の同一性を確認した。また、試料の選ばれたセットをIEXクロマトグラフィーにて分析した。
プロセスの次の工程は精製であった。すべての配列を、Source15Qカラムを使ってAKTA explorer精製システムで精製した。全長配列に対応する単一ピークを溶出液に集め、続いてイオン交換クロマトグラフィーにて純度を分析した。
精製した配列を、AKTA精製器を使ってSephadex G25カラムで脱塩した。脱塩したTTR配列を、濃度及び純度について分析した。次に、一本鎖をアニーリングしてTTR‐dsRNAを形成した。
実施例2B:mRNA抑制に関するTTR siRNAのインビトロスクリーニング
ヒトTTRdsRNA(表2)を、HepG2及びHep3B細胞における内在性TTR発現の阻害について、TTRのmRNAの定量のためにqPCR(リアルタイムPCR)及びbDNA(分枝鎖DNA)分析を使ってアッセイした。げっ歯類TTRを標的とするdsRNA(表5)を合成し、bDNA分析を使って内在性TTR発現の阻害について、H.4.II.E細胞でアッセイした。単回投与分析の結果を使用して、投与量応答実験のためのTTR dsRNA二本鎖のサブセットを選択し、IC50sを計算した。IC50の結果を使用して、さらなる試験用のTTR dsRNAを選択した。
細胞培養及びトランスフェクション:
肝細胞系のHepG2、Hep3B及びH.4.II.E細胞(ATCC,Manassas,VA)を、10%FBS、ストレプトマイシン、及びグルタミン(ATCC)を補完したダルベッコ改変イーグル培地(ATCC)中で37℃にて5%CO2雰囲気下においてコンフルエント近くまで育て、トリプシン処理によってプレートから剥がした。また、H.4.II.E細胞をイーグル最小必須培地で育てた。96ウェルプレートの1ウェル当たり5μLのOpti‐MEMを5μLのsiRNA二本鎖に、1ウェル当たり10μLのOpti‐MEMと、0.2μLのLipofectamine RNAiMax(インビトロジェン(Invitrogen),Carlsbad,CA,カタログ番号13778‐150)と共に加えることによってリバーストランスフェクションを実施し、室温で15分間インキュベーションした。次に、4×104(HepG2)、2×104(Hep3B)又は2×104(H.4.II.E)細胞を含んだ、80μLの抗生物質を含まない完全成長培地を加えた。細胞を24時間培養して、RNAを精製した。単回投与実験を10nMの最終二本鎖濃度で実施し、投与量応答実験を10、1、0.5、0.1,0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005、0.00001nMで行った。
MagMAX‐96全RNA単離キット(アプライド・バイオシステムズ,Foster City,CA,部品番号:AM1830)を使った全RNA単離:
細胞を採集し、140μLの溶解/結合溶液で溶解し、次に、エッペンドルフ(Eppendorf)サーモミキサーを使って1分間850rpmで混合した(混合速度をプロセス全体を通して同一とした)。20マイクロリットルの磁気ビーズを細胞溶解物に加え、5分間混合した。磁気ビーズを磁気スタンドを使って捕獲し、ビーズを乱すことなく上清を取り除いた。上清を取り除いた後、磁気ビーズを(イソプロパノールを加えた)洗浄溶液1で洗浄し、1分間混合した。ビーズを再度捕獲し、上清を取り除いた。次に、磁気ビーズを150μLの(エタノールを加えた)洗浄溶液2で洗浄、捕獲し、上清を取り除いた。次いで、50μLのデオキシリボヌクレアーゼ混合物(MagMax turboデオキシリボヌクレアーゼバッファー及びTurboデオキシリボヌクレアーゼ)をビーズに加えて、それらを10〜15分間混合した。混合後、100μLのRNA再結合溶液を加え、3分間混合した。上清を取り除き、磁気ビーズを150μLの洗浄溶液2で再度洗浄して、1分間混合し、上清を完全に取り除いた。磁気ビーズを2分間混合して乾燥し、RNAを50μLの水で溶出した。
ABI高性能cDNA逆転写キット(アプライド・バイオシステムズ,Foster City,CA,カタログ番号4368813)を使ったcDNA合成:
1反応当たり2μLの10×バッファー、0.8μLの25×dNTP、2μLのランダムプライマー、1μLの逆転写酵素、1μLのRNase阻害剤、及び3.2μLのH2Oのマスターミックスを10μLの全RNAに加えた。cDNAをバイオ・ラッド(Bio‐Rad)C‐1000又はS‐1000サーマルサイクラー(Hercules,CA)を使い、次のステップを通じて生成した:25℃で10分、37℃で120分、85℃で5秒、4℃で保持。
リアルタイムPCR:
MicroAmp Optical 96ウェルプレート(アプライド・バイオシステムズ カタログ番号4326659)で、1ウェル当たり2μLのcDNAを1μLの18S TaqManプローブ(アプライド・バイオシステムズ カタログ番号4319413E)、1μLのTTR TaqManプローブ(アプライド・バイオシステムズ カタログ番号HS00174914 M1)及び10μLのTaqMan Universal PCRマスターミックス(アプライドバイオシステムズ カタログ番号4324018)のマスターミックスに加えた。ABI 7000 Prism又はABI 7900HTリアルタイムPCRシステム(アプライド・バイオシステムズ)でΔΔCt(RQ)アッセイを使ってリアルタイムPCRを行った。反応はすべて3連で行った。
リアルタイムデータを、ΔΔCt法を使って分析し、10nM BlockIT蛍光オリゴ(インビトロジェン カタログ番号2013)又は10nM AD‐1955(非哺乳類ルシフェラーゼ遺伝子を標的とする対照二本鎖)でトランスフェクションした細胞で行ったアッセイに対して正規化し、何倍変化したかを計算した。
分岐DNAアッセイ‐QuantiGene 1.0(Panomics,Fremont,CA カタログ番号:QG0004)‐げっ歯類特異的二本鎖のスクリーニングに使用
H.4.II.E細胞(ATCC)を、10nMsiRNAでトランスフェクションした。培地を取り除いた後、H.4.II.E を100uLの希釈した溶解混合物(1容積の溶解混合物、2容積のヌクレアーゼを含まない水及び最終濃度の20mg/mL1mLにための当たり10uLのプロテイナーゼ‐Kの混合物)に溶解し、次に65℃にて35分間インキュベーションした。次いて、80μLのワーキングプローブセット(TTR又はGAPDHプローブの混合物)及び20uLの細胞溶解物をキャプチャープレート(Capture Plate)に加えた。キャプチャープレートを53℃±1℃で一晩(約16〜20時間)インキュベーションした。キャプチャープレートを、1×洗浄バッファー(ヌクレアーゼを含まない水、バッファーコンポーネント(Buffer Componet)1及び洗浄バッファーコンポーネント(Wash Buffer Component)2の混合物)で3回洗浄し、次に1分間1000rpmでの遠心分離により乾燥した。100μLのAmplifierワーキング試薬(Working Reagent)をキャプチャープレートに加え、次いで、密閉して46℃±1℃で1時間インキュベーションした。1時間のインキュベーション後、洗浄及び乾燥工程を繰り返し、100μLのラベル溶液試薬(Label Solution Reagent)を加えた。次に、プレートを洗浄、乾燥し、100μLの基質(ラウリル硫酸リチウム及び基質溶液の混合物)を加えた。キャプチャープレートを46℃±1℃でインキュベーターに置いた。次に、キャプチャープレートをインキュベーターから取り出し、室温で30分間インキュベーションした。最後に、Victorルミノメーター(パーキンエルマー(Perkin Elmer),Waltham,MA)を使って、キャプチャープレートを読み取った。
分岐DNAアッセイ‐QuantiGene2.0(Panomics カタログ番号:QS0011):その他すべての二本鎖のスクリーニングに使用
提示された1又は複数の投与量で24時間インキュベーションした後、培地を取り除き、細胞を100uLの溶解混合物(1容積の溶解混合物、2容積のヌクレアーゼを含まない水及び最終濃度の20mg/mLのための1mL当たり10uLのプロテイナーゼ‐Kの混合物)に溶解し、次に65℃にて35分間インキュベーションした。次に、20μLのワーキングプローブセット(Working Probe Set)(遺伝子標的用にTTR及び内在対照用にGAPDHプローブ)及び80uLの細胞溶解物をキャプチャープレートに加えた。キャプチャープレートを55℃±1℃でインキュベーションした(約16〜20時間)。翌日、キャプチャープレートを、1×洗浄緩衝液(ヌクレアーゼを含まない水、バッファーコンポーネント1及び洗浄バッファーコンポーネント2)で3回洗浄し、次に1分間240gでの遠心分離により乾燥した。100μLのpre‐Amplifierワーキング試薬をキャプチャープレートに加え、次いで、アルミホイルで密閉して55℃±1℃で1時間インキュベーションした。1時間のインキュベーションに続いて、洗浄工程を繰り返し、次に100μLのAmplifierワーキング試薬を加えた。1時間後、洗浄及び乾燥工程を繰り返し、100μLのラベルプローブ(Label Probe)を加えた。キャプチャープレートを50℃±1℃で1時間インキュベーションした。次にプレートを1×洗浄バッファーで洗浄、乾燥し、次いで100μLの基質をキャプチャープレートに加えた。5〜15分のインキュベーションに続いて、キャプチャープレートをSpectraMaxルミノメーター(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使って読んだ。
bDNAデータ分析:
bDNAデータを、(i)各3連サンプルから平均バックグラウンドを引くこと、(ii)得られた3連GAPDH(対照プローブ)及びTTR(実験プローブ)値を平均すること、及び次に(iii)比:(実験プローブ−バックグラウンド)/(対照プローブ−バックグラウンド)をとることにより分析した。
結果
TTR‐dsRNA(TTR siRNA)の単回投与及びIC50結果のまとめを下記の表8に示す。単回投与の結果は、HepG2細胞でアッセイした対照に対するTTRのmRNAの割合(%)として表わす。示されているように、HepG2及び/又はHep3B細胞で、IC50をもとめた。
5つのTTR−dsRNA(AD−18258、AD−18274、AD−18324、AD−18328、及びAD−18339)のIC50を特定するために使用した投与量応答データを下の表9に詳細に示す。5つのsiRNAすべてはpMのIC50を有することがもとめられた。表8のdsRNAのIC50データは下の表9に提示されたデータのまとめである。
げっ歯類特異的TTR‐dsRNA(TTR siRNA)の単回投与の結果のまとめを下の表10に示す。単回投与の結果は、げっ歯類特異的TTRsiRNAを10nMでトランスフェクションした後、ラットH.4.II.E細胞でアッセイした対照に対しするTTRのmRNAの割合(%)として表す。これらの結果は、幾つかのげっ歯類特異的TTRは内在性ラットTTRのmRNAのインビトロでの抑制に効果的であることを示す。
実施例3.TTR siRNAのTNF‐α及びIFN‐α分泌の誘導に関するインビトロアッセイ
免疫刺激の効力を評価するために、TTR siRNAをTNF‐α及びIFN‐α分泌の誘導についてインビトロでアッセイした。
標準的なFicoll‐Hypaque密度遠心分離により、ヒトPBMCを、健康なドナーから入手した、採取したばかりの軟膜から単離した(Research Blood Components,Inc.,Boston,MA)。単離したばかりの細胞(1×105/ウェル/100μL)を96ウェルプレートに播種し、10%加熱不活性化ウシ胎児血清及び1%抗生物質/抗真菌剤(インビトロジェン)で補完したRPMI 1640 GlutaMax培地(インビトロジェン)中で培養した。siRNAをDOTAPトランスフェクション試薬(ロシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Science))を使ってPBMCにトランスフェクションした。最初にDOTAPをOpti‐MEM(インビトロジェン)で希釈し、5分間後、siRNAのを含む等量のOpti‐MEMと混合した。
siRNA/DOTAP複合体を、製造業者の取り扱い説明書に明記の通りインキュベーションし、続いてPBMC(50μL/ウェル)に加え、次いで24時間培養した。陽性及び陰性対照siRNAをすべてのアッセイに含めた。AD‐5048を陽性対照siRNAとして使用した。AD‐5048はヒトアポリポタンパク質Bを標的とする配列に対応し(Soutschek et al.,2004)、このアッセイで、IFN‐α及びTNF‐α両方の分泌を誘導する。このアッセイでIFN‐α及びTNF‐α分泌を引き起こさないAD‐1955を陰性対照siRNAとして使用した。siRNAはすべて、133nMの最終濃度にて使用した。RNAのトランスフェクション試薬に対する割合は、1μgのDOTAP当たり16.5pmolであった。
共にBender MedSystems(Vienna, Austria)からのIFN‐α(BMS216INST)及びTNF‐α(BMS223INST)用市販ELISAキットを使って、サイトカインを培養上清中で検出及び定量した。TTR siRNAサイトカイン誘導は、陽性対照siRNA AD‐5048に対する産生IFN‐α又はTNF‐αの割合(%)として表わす。
多くのTTR siRNAのIFN‐α及びTNF‐α刺激結果を図1(四連のウェルの平均値±SD)及び下の表11(AD‐5048に対するパーセント)に示す。評価したどのTTR siRNAも、培養ヒトPBMCによる顕著なTNF‐α分泌、IFN‐α分泌を誘導しなかった。
その5つから、TTRを標的とするdsRNA(TTR siRNA)をヒト肝細胞系であるHepG2及びHep3BでpMの範囲のIC50、及び免疫刺激活性の欠如に基づいて選択することになった。オリゴとmRNAとの間にミスマッチが全くない二本鎖のほうが、ミスマッチのある二本鎖より顕著な標的転写物のノックダウンを達成する傾向が強い。異種間の毒物学的データをよりよく解釈するため、及びヒト患者に最大限広い範囲で適用可能にするために、ラット、カニクイザル及びヒトからのオーソロガス遺伝子で100%同一性を有し、公知の遺伝子多型のある領域を標的としない二本鎖が、一般に好ましい。その5つから、化合物を、肝細胞系でpMの範囲のIC50、免疫刺激活性の欠如、ヒトTTR転写物に対する特異性、及び二本鎖によって標的とされるmRNAの領域での公知の遺伝子多型(突然変異)の欠如に基づいて選択することになった。TTRの場合、19塩基オリゴで、ヒト、ラット及びカニクイザルで完全な同一性をもつものは見いだされなかった。これらのデータのまとめを表12に示し、その表は、二本鎖によって標的とされる領域中の公知のTTR突然変異及び異種間の反応性に関する情報をも含む。
実施例4.トランスジェニックマウスにおけるLNP01‐18324、LNP01‐18328及びLNP01‐18246による肝臓TTRのmRNA及び血漿TTRタンパク質の生体内減少
2つのTTR siRNA、AD‐18324及びAD‐18328を生体内評価のために選択した。これらの二本鎖は、肝細胞系(例えばHepG2)でインビトロにおける投与量依存的な強いサイレンシングを示した。図2A及び図2Bは、HepG2細胞におけるAD‐18324(図2A)又はAD‐18328(図2B)でのトランスフェクション後の投与量応答を示し、x軸は投与量をnMで表わし、y軸は応答を対照に対する残存TTRのmRNAの割合として表わす。HepG2細胞で、AD‐18324及びAD‐18328のIC50をもとめ、それぞれ2pM及び3pMであった。両方のTTR標的部位から、dsRNA候補はTTRのmRNAの3’非翻訳領域にあることになり、その領域には文献で報告されている突然変異は存在しない。
2つの各鎖の配列から、候補を下の表から再作製することになった。鎖:s=センス鎖;as=アンチセンス鎖;位置:転写物(NM_000371.2)上の5’塩基の位置
くわえて、げっ歯類交差反応性のTTR dsRNAであるAD‐18246をさらなる生体内評価のために選択した。AD‐18246は、オープンリーディングフレームの88位にて始まる配列で、文献で報告されている3つの突然変異が存在する配列を標的とする。HepG2細胞におけるAD‐18246の投与量応答曲線を図3に示す。AD‐18246は、実質的にAD‐18324及びAD‐18328より弱く;AD‐18246のIC50をもとめ、265pMであった。
AD‐18324、AD‐18328、及びAD‐18246を、LNP01に製剤化後、トランスジェニックマウスに投与した。3〜5月齢のH129‐mTTR‐KO/iNOS‐KO/hTTRトランスジェニックマウス(マウストランスサイレチンのノックアウト/誘導可能な一酸化窒素合成酵素のノックアウト/ヒトトランスサイレチントランスジェニック)に、200μLのLNP01に製剤化したトランスサイレチン特異的siRNA(AD‐18324、AD‐18328、又はAD‐18246)、LNP01に製剤化した非哺乳類のルシフェラーゼ遺伝子を標的とする(AD‐1955)並びにリン酸緩衝食塩水を、siRNAsAD‐18324及びAD‐18328については1.0mg/kg、3.0mg/kg、又は6.0mg/kgの濃度で、siRNAAD‐18246については3.0mg/kg、並びにsiRNAAD‐1955については6.0mg/kgの濃度で、尾部静脈を経て静脈内(IV)投与した。LNP01はND98、コレステロール、及びPEG‐セラミドC16を含むリピオイド製剤である。
約40時間後、マウスに200μLのケタミンで麻酔をかけ、次に右尾動脈を切って血液を抜いた。全血液を分離して、血漿を分離し、アッセイまで−80℃で保存した。肝組織を採集し、急速冷凍して、処理するまで−80℃で保存した。
治療の有効性は、(i)投与後48時間での肝臓におけるTTRのmRNAの測定、並びに(ii)採血前及び投与後48時間での血漿におけるTTRタンパク質の測定により評価した。TTR肝臓mRNAレベルを分岐DNAアッセイ‐QuantiGene 2.0(Panomics カタログ番号:QS0011)を利用してアッセイした。簡潔に言うと、マウス肝臓試料を破砕し、組織溶解物を調製した。肝臓溶解混合物(1容積の溶解混合物、2容積のヌクレアーゼを含まない水及び最終濃度の20mg/mLのための1mL当たり10uLのプロテイナーゼ‐Kの混合物)を65℃にて35分間インキュベーションした。次に、20μLのワーキングプローブセット(遺伝子標的用にTTR及び内在対照用にGAPDHプローブ)及び80uLの細胞溶解物をキャプチャープレートに加えた。キャプチャープレートを55℃±1℃で約16〜20時間インキュベーションした。翌日、キャプチャープレートを、1×洗浄緩衝液(ヌクレアーゼを含まない水、バッファーコンポーネント1及び洗浄バッファーコンポーネント2)で3回洗浄し、次に1分間240gでの遠心分離により乾燥した。100μLのpre‐Amplifierワーキング試薬をキャプチャープレートに加え、次いで、アルミホイルで密閉して55℃±1℃で1時間インキュベーションした。1時間のインキュベーションに続いて、洗浄工程を繰り返し、次に100μLのAmplifierワーキング試薬を加えた。1時間後、洗浄及び乾燥工程を繰り返し、100μLのラベルプローブを加えた。キャプチャープレートを50℃±1℃で1時間インキュベーションした。次にプレートを1×洗浄バッファーで洗浄、乾燥し、次いで100μLの基質をキャプチャープレートに加えた。5〜15分のインキュベーションに続いて、キャプチャープレートをSpectraMaxルミノメーターを使って読んだ。bDNAデータを、(i)各3連サンプルから平均バックグラウンドを引くこと、(ii)得られた3連GAPDH(対照プローブ)及びTTR(実験プローブ)値を平均すること、及び次に(iii)比:(実験プローブ−バックグラウンド)/(対照プローブ−バックグラウンド)を計算することにより分析した。
TTR血漿レベルを市販のキットである「AssayMaxヒトプレアルブミンELISAキット」(AssayPro,St.Charles,MO,カタログ番号EP3010‐1)を利用して、製造業者のガイドラインに従ってアッセイした。簡潔に言うと、マウス血漿を1×ミックス(mix)希釈剤で1:10,000に希釈し、キットの標準試料とともに予め被覆されたプレートに加え、室温で2時間インキュベーションした後、キットの洗浄バッファーで5回洗浄した。50マイクロリットルのビオチン化プレアルブミン抗体を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベーションし、洗浄バッファーで5回洗浄した。50マイクロリットルのストレプトアビジン‐ペルオキシダーゼ複合体を各ウェルに加え、プレートを室温で30分間インキュベーションし、続いて上記のように洗浄した。反応を50μL/ウェルの色原体基質を加えることで顕色させ、室温で10分間インキュベーションし、50μL/ウェルの停止溶液を加えることで反応を停止した。450nmでの吸光度をVersamaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で読み、データをSoftmax4.6ソフトウエアパッケージ(Molecular Devices)を利用して分析した。
LNP01‐18324及びLNP01‐18328は、肝臓TTRmRNA(図4A)及び血漿TTRタンパク質(図4B)レベルをIVボーラス投与で投与量依存的に減少させることが見いだされた。LNP01‐18328のmRNA ED50をもとめ、〜1mg/kgであった一方、LNP01‐18324のmRNA ED50をもとめ、〜2mg/kgであった。対照であるLNP01‐1955は6mg/kgでも、リン酸緩衝食塩水群と比較して、肝臓TTRのmRNAレベルに著しく影響を及ぼさなかったため、LNP01‐18324及びLNP01‐18328の効果は特異的であった。LNP01‐18324及びLNP01‐18328は、リン酸緩衝食塩水群と比較して、血漿TTRタンパク質レベルを、TTRのmRNAレベルへの効力に類似した効力で減少させた。3mg/kgで、LNP01‐18246は、肝臓TTRのmRNAレベルを、3mg/kgのLNP01‐18324又はLNP01‐18328より少ない程度まで減少させた。
これらの結果は、LNP01‐18324及びLNP01‐18328は、IVボーラス投与により投与した場合、トランスジェニックマウスの肝臓に発現するヒトTTRのmRNAを実質的に減少させ、結果として循環血液中においてヒトTTRタンパク質の減少をもたらすことを示す。
実施例5.非ヒト霊長類の肝臓におけるSNALP‐18324及びSNALP‐18328による野生型TTRのmRNAの生体内減少
TTR siRNA AD‐18324及びAD‐18328の非ヒト霊長類における肝臓TTRのmRNAレベルへの有効性を評価するために、siRNAsをSNALPに製剤化し、15分間静脈内注入により投与した。カニクイザル(Macaca fascicularis)(2〜5kg、1群当たり3匹の動物)に、SNALP‐18324(0.3、1.0又は3.0mg/kg)、SNALP‐18328(0.3、1又は3mg/kg)、若しくはSNALP‐1955(3mg/kg、非哺乳類の遺伝子ルシフェラーゼを標的とする陰性対照siRNAであるAD‐1955を含む)を15分間静脈内注入投与した。投与後48時間に、サルをペントバルビタールナトリウムで麻酔をかけ、血液を抜いた。TTRのmRNA測定のための肝組織を採集し、急速冷凍して、処理するまで−80℃で保存した。
肝臓におけるTTRのmRNAレベルを、特注設計の分岐DNAアッセイ、QuantiGene1.0 technologyを利用してアッセイした。簡潔に言うと、サル肝臓試料を破砕し、組織溶解物を調製した。肝臓溶解混合物(1容積の溶解混合物、2容積のヌクレアーゼを含まない水及び最終濃度の20mg/mLのための1mL当たり10μLのプロテイナーゼ‐K)を65℃にて35分間インキュベーションした。次に、20μLのワーキングプローブセット(遺伝子標的用にTTR及び内在対照用にGAPDHプローブ)及び80μLの細胞溶解物をキャプチャープレートに加えた。キャプチャープレートを55℃±1℃でインキュベーションした(約16〜20時間)。翌日、キャプチャープレートを、1×洗浄緩衝液(ヌクレアーゼを含まない水、バッファーコンポーネント1及び洗浄バッファーコンポーネント2)で3回洗浄し、次に1分間240gでの遠心分離により乾燥した。100μLのpre‐Amplifierワーキング試薬をキャプチャープレートに加え、次いで、アルミホイルで密閉して55℃±1℃で1時間インキュベーションした。1時間のインキュベーションに続いて、洗浄工程を繰り返し、次に100μLのAmplifierワーキング試薬を加えた。1時間後、洗浄及び乾燥工程を繰り返し、100μLのラベルプローブを加えた。キャプチャープレートを50℃±1℃で1時間インキュベーションした。次にプレートを1×洗浄バッファーで洗浄、乾燥し、次いで100μLの基質をキャプチャープレートに加えた。5〜15分のインキュベーションに続いて、キャプチャープレートをSpectraMaxルミノメーターを使って読んだ。bDNAデータを、(i)各3連サンプルから平均バックグラウンドを引くこと、(ii)得られたGAPDH(対照プローブ)及びTTR(実験プローブ)値を平均すること、及び次に(iii)比:(実験プローブ−バックグラウンド)/(対照プローブ−バックグラウンド)をとることにより分析した。
結果を図5に示す。SNALP‐18324及びSNALP‐18328は、陰性対照SNALP‐1955と比較して肝臓におけるTTRmRNAレベルを投与量依存的に減少させた。SNALP‐18328及びSNALP‐18324のmRNA ED50をもとめ、それぞれ〜0.3及び〜1mg/kgであった。
これらの結果は、SNALP‐18324及びSNALP‐18328は、IV注入により投与した場合、非ヒト霊長類の肝臓において野生型TTRのmRNAを抑制するのに効果的であることを示す。
実施例6
トランスジェニックマウスにおけるSNALP‐18328による変異(V30M)TTRのmRNA及びタンパク質の生体内減少
TTRのsiRNA AD‐18328の、肝臓中の変異(V30M)TTRのmRNA及び血清中の変異(V30M)TTRタンパク質への有効性を評価するために、AD‐18328を、SNALPに製剤化し、V30M hTTRトランスジェニックマウスに、IVボーラスにより投与した。8〜12週齢のV30M hTTRトランスジェニックマウス(5匹の動物/群)に、200μLのSNALP‐18328(0.03、0.3、若しくは3mg/kg)、SNALP‐1955(3mg/kg、非哺乳類動物のルシフェラーゼ遺伝子を標的とする陰性対照siRNA AD‐1955を含む)、又はPBSを静脈内(IV)投与した。使用したマウスは、Institute of Molecular and Cellular Biology,Porto,PortugalからのMus musculus株H129‐hTTR KOであった。簡潔に言うと、hTTR H129トランスジェニックマウスを、H129内在性TTR KOマウス(ヌルマウスTTRのバックグラウンドにおいて、H129‐hTTRトランスジェニックマウスを生成するためのヌルマウス(Maeda,S.,(2003),Use of genetically altered mice to study the role of serum amyloid P component in amyloid deposition.Amyloid Suppl.1,17‐20.)と交配した。
注射してから48時間後、すべての5つの治療群の動物に、致死量のケタミン/キシラジンを与えた。血清試料を採集し、分析まで−80℃で保存した。肝組織を採集し、急速冷凍して、処理するまで−80℃で保存した。
TTRのmRNA定量のために、冷凍肝組織を粉末に破砕し、溶解物を調製した。分岐DNAアッセイ(QuantiGene Reagent System,Panomics,Fremont,CA)を使用することにより、GAPDHのmRNAレベルと比較したTTRのmRNAレベルを溶解物中で決定した。簡潔に言うと、製造業者の取扱説明書に従って、組織試料の溶解物中のmRNAレベルを定量化するためにQuantiGeneアッセイ(Genospectra)を使用した。TTRのmRNAの平均レベルを、それぞれの試料についてGAPDHのmRNAの平均レベルに対して正規化した。次に、正規化した値の群平均を、PBS処理群に対する平均値に対してさらに正規化し、TTRのmRNA発現の相対レベルを得た。
TTRタンパク質の定量化に関しては、製造業者のプロトコールに従って、AssayPro(St.Charles,MO)のAssaymax PreAlbumin ELISAキットを使って血清をアッセイした。
肝臓mRNA及び血清タンパク質についての結果を、それぞれ、図6A及び図6Bに示す。SNALP‐18328で処置したV30M hTTRトランスジェニックマウスは、PBS対照群と比較して、肝臓TTRのmRNAレベルにおいて、投与量依存的、かつ有意な減少があり、SNALP‐18328の3mg/kgで、97%(p<0.001)の最大減少、及びSNALP‐18328の〜0.15mg/kgで、50%減少(ED50)に達した。血清TTRタンパク質はまた、SNALP‐18328の3mg/kgで、(投与前のレベルと比較して)血清TTRタンパク質の99%(p<0.01)の最大減少を有する、投与量依存的な様式で抑制され、これは、TTRのmRNAレベルの減少と一致した。3mg/kgでのSNALP‐1955は、PBSと比較して、TTRのmRNAにもタンパク質レベルにも統計的に有意な効果はなかった。
これらの結果は、IV投与した場合、SNALP‐18328はトランスジェニックマウス肝臓中の変異V30M TTRのmRNAを抑制する活性があり、血液循環中の変異V30M TTRタンパク質の減少をもたらすこと示す。
実施例7.トランスジェニックマウスにおけるSNALP‐18328によるTTRのmRN及びタンパク質抑制の持続性
SNALP‐18328によるTTRのmRNA及びタンパク質抑制の持続性を評価するために、AD‐18328をSNALPに製剤化し、V30M hTTRトランスジェニックマウスにIVボーラス投与した。投与後のさまざまな時点で、肝臓TTRのmRNAレベル及び血清TTRのタンパク質レベルを定量した。8〜12週齢のV30M hTTRトランスジェニックマウス(4匹の動物/群)に、200μLのSNALP‐18328(1mg/kg)又はSNALP‐1955(1mg/kg、非哺乳類動物のルシフェラーゼ遺伝子を標的とする陰性対照siRNA AD‐1955を含む)を静脈内(IV)投与した。使用したマウスは、Institute of Molecular and Cellular Biology,Porto,PortugalからのMus musculus株H129‐hTTR KOであった。簡潔に言うと、hTTR H129トランスジェニックマウスを、H129内在性TTR KOマウス(ヌルマウスTTRのバックグラウンドにおいて、H129‐hTTRトランスジェニックマウスを生成するためのヌルマウス(Maeda,S.,(2003),Use of genetically altered mice to study the role of serum amyloid P component in amyloid deposition.Amyloid Suppl.1,17‐20.)と交配した。投与から3日目、8日目、15日目、又は22日目に、両方の処置群の動物に、致死量のケタミン/キシラジンを与えた。血清試料を採集し、分析まで−80℃で保存した。肝組織を採集し、急速冷凍して、処理するまで−80℃で保存した。
TTRのmRNA定量のために、冷凍肝組織を粉末に破砕し、溶解物を調製した。分岐DNAアッセイ(QuantiGene Reagent System,Panomics,Fremont,CA)を使用することにより、GAPDHのmRNAレベルと比較したTTRのmRNAレベルを溶解物中で決定した。簡潔に言うと、製造業者の取扱説明書に従って、組織試料の溶解物中のmRNAレベルを定量化するためにQuantiGeneアッセイ(Genospectra)を使用した。TTRのmRNAの平均レベルを、それぞれの試料についてGAPDHのmRNAの平均レベルに対して正規化した。次に、正規化した値の群平均を、PBS処理群に対する平均値に対してさらに正規化し、TTRのmRNA発現の相対レベルを得た。
TTRタンパク質の定量化に関しては、製造業者のプロトコールに従って、AssayPro(St.Charles,MO)のAssaymax PreAlbumin ELISAキットを使って血清をアッセイした。
肝臓mRNA及び血清タンパク質についての結果を、それぞれ、図7A及び図7Bに示す。hTTR V30Mトランスジェニックマウスにおいて、SNALP‐18328の単回IVボーラス投与は、肝臓中のTTRのmRNAレベル及び血清中のTTRタンパク質レベルの持続的な阻害をもたらした。対照群(1mg/mL SNALP‐1955)と比較して、1mg/kgでのSNALP‐18328の単回IV投与は、投与から3日目、8日目、15日目、及び22日目の相対的TTRのmRNAレベルを、それぞれ、96%(p<0.001)、90%(p<0.001)、82%(p<0.001)、及び73%(p<0.001)で有意に減少させ、研究の終了時(投与から22日目)に、基線レベルに戻らなかった。また、タンパク質レベルは、投与から3日目で、(SNALP‐1955と比較して)97%(p<0.001)の血清TTRの最大の減少を伴って減少した。投与から8日目、15日目、及び22日目で、TTRタンパク質レベルは、SNALP‐1955と比較して、それぞれ、72%(p<0.05)、32%(p<0.05)、及び40%(p<0.001)で抑制された。
これらの結果は、SNALP‐18328の単回IV投与は、V30M hTTRトランスジェニックマウスにおいて、投与から22日目で肝臓TTRのmRNA及び血清TTRタンパク質の有意な減少を伴った、標的肝臓mRNA及び血清タンパク質レベルの持続的な抑制を生むことを示す。
実施例8.非ヒト霊長類におけるSNALP‐18328による血清TTRタンパク質及び肝臓mRNA抑制の持続性
SNALP‐18328による血清TTRタンパク質抑制の持続性を評価するために、AD‐18328をSNALPに製剤化し、非ヒト霊長類にIV注入により投与した。投与後のさまざまな時点で、血清TTRのタンパク質レベルを定量した。
カニクイザル(Macaca fascicularis)(SNALP‐18328群についてn=5匹の動物/群及びSNALP‐1955群及びPBS群についてのn=3匹の動物/群)に、SNALP‐18328(0.3、1、又は3mg/kg)、SNALP‐1955(3mg/kg、非哺乳動物のルシフェラーゼ遺伝子を標的とする、陰性対照siRNA AD‐1955を含む)、若しくはPBSを15分間のIV注入で投与した。投与段階の0日目、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、7日目、10日目、及び14日目に、血清試料を採集し、分析まで−80℃で保存した。
ウェスタンブロット分析を使用して、血清試料におけるTTRタンパク質レベルを評価した。各群からの血清試料をプールし、(1:20希釈でβ‐メルカプトエタノールを添加した)Laemmliサンプルバッファーで1:1に希釈した。試料を95℃で10分間加熱した。12.5μLの各試料を10〜20%Criterion(バイオ・ラッド,Hercules,CA)プレップゲル(prep gel)の各レーンにのせ、120V、1.5時間のSDS‐PAGEにより分離した、次に、セミドライシステムを使って15Vで1時間ニトロセルロース膜へ移した。膜を、1Xリン酸緩衝食塩水で1:1希釈したLiCOR(Lincoln,NE)ブロッキングバッファー中で、4℃にて一晩ブロッキングした。ブロットを、最初に1:1000の希釈でLiCORブロッキングバッファーに希釈した一次抗体(サンタ・クルーズ(Santa Cruz),CAからのヤギ抗‐TTR)を使って、揺動装置(rocker)上で室温にて1時間プローブした。ブロットをリン酸緩衝食塩水+0.2%Tween 20で4回(洗浄1回当たり10分)洗浄した。蛍光標識二次抗体(抗ヤギ、680nm、インビトロジェン(Carlsbad,CA)を、LiCORブロッキングバッファー/リン酸緩衝食塩水に1:10,000の希釈で加え、ブロットを室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、ブロットをリン酸緩衝食塩水+0.2%Tween20で4回洗浄し、続いて、1×リン酸緩衝食塩水で1回洗浄した。Li‐COR’s Odyssey赤外線イメージングシステムを使用して、タンパク質バンドを検出した。TTR単量体は15kDaに移動した。
結果を図8に示す。血清TTRタンパク質レベルは、投与前(Day 0)レベルと比較して、1又は3mg/kgのSNALP‐18328で投与量依存的な減少を示した。単回SNALP‐18328のIV投与から続いた抑制の期間は、1又は3mg/kgのSNALP‐18328での治療後、少なくとも14日である。
これらの結果は、非ヒト霊長類(Macaca fascicularis)において、単回のSNALP‐18328のIV投与は、投与後14日でTTRタンパク質の顕著な減少を伴った、循環血液中における持続性のあるTTRタンパク質の抑制を生じることを示す。
SNALP‐18328による肝臓TTRのmRNA抑制の持続性を評価するために、AD‐18328をSNALP(ALN‐TTR01)に製剤化し、単回のIV注入にて非ヒト霊長類に投与した。肝臓mRNAレベルを、投与してから3日又は30日後に本明細書において記載のように測定した。
結果を図20に示し、野生型TTRのmRNAのALN‐TTR01抑制は、非ヒト霊長類において、1.0及び 3.0mg/kgの投与量で3日、10mg/kgの投与量で30日にわたって持続性があることを示す。
実施例9:トランスジェニックマウスにおけるSNALP‐18328による末梢組織中の変異(V30M)TTRの生体内減少
予防有効性
末梢組織中のTTRを減少させる際のSNALP‐18328(ALN‐TTR01)の有効性を評価するために、hTTR V30MΔHSF‐1ノックアウトマウスをTTRに対する免疫組織化学染色で評価した。2月齢のhTTR V30MΔHSF‐1ノックアウトマウス(Maeda,S.,(2003),アミロイド沈着における血清アミロイドP成分の役割研究のための遺伝子改変マウスの利用(Use of genetically altered mice to study the role of serum amyloid P component in amyloid deposition.)Amyloid Suppl.1,17‐20)に、3mg/kgのSNALP‐18328(12匹の動物),3mg/kgのSNALP‐1955(非哺乳類のルシフェラーゼ遺伝子を標的とする陰性対照siRNA AD‐1955を含む、4匹の動物)、又はリン酸緩衝食塩水(4匹の動物)のIVボーラス投与し、投与は、2週間に1回、0日、14日、28日、及び 42日目に計4回施した。複数の末梢組織中のTTR肝臓mRNAレベル及びTTR免疫活性を、最初の投与から8週間、56日目に評価した。
マウスに、1mg/kgのメデトミジンで麻酔をかけ、致死量のケタミンを与えた。目的の組織及び臓器を採集した。免疫組織化学のために、食道(E)、胃(S)、腸(十二指腸(I1)及び結腸(I4))、神経(N)、並びに後根神経節(D)を、中性緩衝ホルマリン中で固定し、パラフィンで包埋した。TTR検出のために、ウサギ抗ヒトTTR1次抗体(1:1000、DAKO,Denmark)、及び抗ウサギビオチン接合2次抗体(1:20 シグマ(Sigma),USA)を、TTRタンパク質を染色するために、extravidin標識(1:20,シグマ,USA)を続けた。反応は、3‐アミノ‐9‐エチルカルバゾール、AEC(シグマ,USA)を用いて顕色させた。基質の反応色によって占められる領域を測定し、総画像領域に対してのこの値を正規化する、Scion image quantプログラムを使って免疫組織化学スライドの半定量分析を行った。占領領域の割合(%)の平均値を、対応する標準偏差と共に表示する。各動物組織を、4つの異なる領域について評価した。胃及び腸の副交感神経節中のヒトTTRの存在は、一次抗体としてウサギ抗ヒトTTR(1:1000,DAKO,Denmark)及びマウス抗PGP9.5(1:40,Serotec,USA)で染色する二重免疫蛍光によって調べ、二次抗体は、それぞれ、抗ウサギAlexa Fluor 488(Molecular probes,UK)及びヤギ抗マウスAlexa Fluor 568(Molecular probes,UK)であった。スライドを、vectashield(Vector)と取り付け、FITC及びローダミン用のフィルターを装備するツァイス(Zeiss) Cell Observer System顕微鏡(カールツァイス(Carl Zeiss),Germany)で可視化した。
結果を図9にグラフに描いた。PBS及びSNALP‐1955で処置した動物と比較して、SNALP‐18328で処置した動物は、調べたすべての組織(食道(E)、胃(S)、腸(十二指腸(I1)及び結腸(I4))、神経(N)、並びに後根神経節(D))において、TTRの免疫活性が有意に減少した。
これらの結果は、hTTR V30M/HSF‐1ノックアウトマウスへのSNALP‐18328投与は、食道、胃、腸(十二指腸及び結腸)、神経、及び後根神経節を含む末梢組織及び臓器において、TTRタンパク質の有意な減少を引き起こすことを示す。
治療有効性
ALN‐TTR01を、変異ヒトTTR沈着の退縮へのTTR siRNA治療の効果を決めるために、成熟hTTR V30MΔHSF‐1ノックアウトマウスに投与した。
21月齢の動物(hTTR V30MΔHSF‐1ノックアウトマウス)の群に、0日目、14日目、28日目、14日目、56日目、及び70日目に、3mg/kgの投与量にて ALN‐TTR01又は対照siRNAのIVボーラス投与を静脈内投与した。77日目に、マウスを安楽死させ、組織を採集し、TTR沈着を、本明細書において記載されているように、免疫組織化学的染色スライドの半定量分析を介し、Scion image quantプログラムを使ってアッセイした。食道、結腸;胃、坐骨神経;及び後根神経節組織を調べ、結果を、この年齢で組織中に存在するTTR沈着及びTTR原線維を示す動物モデルにおける病歴データと比較した。
結果を図21のグラフに示す。結果は、90%を超える既存のV30M hTTR組織沈着の退縮をもたらすことを示す。
実施例10.非ヒト霊長類の肝臓におけるXTC‐SNALP‐18328による野生型TTRのmRNAの生体内減少
非ヒト霊長類におけるsiRNAの送達のために、新規の脂質ナノ粒子製剤のXTC‐SNALPの有効性を評価するために、TTR siRNA AD‐18328を、XTC‐SNALP(XTC‐SNALP‐18328)に製剤化し、15分間のIV注入により投与し、肝臓TTRのmRNAを定量した。カニクイザル(Macaca fascicularis)に、XTC‐SNALP‐18328(0.03、0.1、0.3若しくは1mg/kg)又は非哺乳類のルシフェラーゼ遺伝子を標的とする陰性対照siRNA AD‐1955を含むXTC‐SNALP‐1955(1mg/kg)、を、15分間のIV注入により投与した。投与後48時間に、サルをペントバルビタールナトリウムで麻酔をかけ、血液を抜いた。TTRのmRNA測定のための肝組織を採集し、急速冷凍して、処理するまで−80℃で保存した。肝組織におけるTTRのmRNAの定量に使用した方法は、上記実施例5に記載のものと同様であった。
結果を図10に示す。XTC‐SNALP‐18328は、陰性対照XTC‐SNALP‐1955と比較して肝臓におけるTTRのmRNAレベルを投与量依存的に減少させた。mRNA ED50をもとめ、〜0.1mg/kgのXTC‐SNALP‐18328であった。これらの結果は、XTC‐SNALP‐18328は、静脈内注入により投与した場合、非ヒト霊長類の肝臓において野生型TTRのmRNAを抑制するのに効果的であることを示す。
実施例11.非ヒト霊長類の肝臓におけるLNP09‐18328及びLNP11‐18328による野生型TTRのmRNAの生体内減少
非ヒト霊長類におけるsiRNAの送達についての、2つの新規の脂質ナノ粒子製剤のLNP09及びLNP11の有効性を評価するために、TTRのsiRNA AD‐18328を、LNP09(LNP09‐18328)又はLNP11(LNP11‐18328)に製剤化し、15分間のIV注入により投与し、肝臓TTRのmRNA及び血清TTRのタンパク質レベルをアッセイした。カニクイザル(Macaca fascicularis)に、LNP09‐18328(0.03、0.1、若しくは0.3mg/kg)、LNP11‐18328(0.03、0.1、若しくは0.3mg/kg)、又はPBSを、15分間のIV注入により投与した。肝生検試料を、投薬から48時間後に採集、急速冷凍し、処理するまで−80℃で保存した。血清を、投与する前(採血前)、及び投与から1日目、2日目、4日目、7日目、14日目、21日目、及び28日目に採集し、処理するまで−80℃で保存した。肝組織及び血清TTRタンパク質の評価におけるTTRのmRNAの定量に使用された方法は、上記の実施例5及び8に記載のものと同様であった。
結果を、mRNAについては図11A、及びタンパク質については図11B及び図11Cに示す。LNP09‐18328及びLNP11‐18328で処置した動物は、肝臓中のTTRのmRNAレベルの投与量依存的な減少を示し、PBS対照と比較して、0.3mg/kgで、〜85%(LNP09‐18328)及び〜90%(LNP11‐18328)のmRNAの最大減少に達した。mRNA ED50をもとめ、LNP09‐18328及びLNP11‐18328の両方について〜0.02mg/kgであった。投与から7日目で、血清試料も、PBS対照レベルと比較して、0.1及び0.3mg/kgのLNP09‐18328及びLNP11‐18328に対して、TTRタンパク質の投与量依存的な減少を示した。図11Cは、LNP09‐18328の0.3mg/kgの用量を有するTTRタンパク質レベルの減少が、PBS対照群と比較して、及び採血前の試料と比較して、投与から少なくとも28日間にわたって存続することを示す。
これらの結果は、LNP09‐18328及びLNP11‐18328は、IV注入によって投与した場合、非ヒト霊長類肝臓中の野生型TTRのmRNA及び循環血液中の野生型TTRタンパク質を抑制するのに効果的であることを示す。さらにそのうえ、LN09‐18328による抑制は、持続性があり、IV注入から少なくとも28日間存続する。
実施例12.非ヒト霊長類の肝臓におけるLNP12‐18328による野生型TTRのmRNAの生体内減少
LNP12製剤化されたAD‐18328を、この製剤の有効性を評価するために非ヒト霊長類に投与した。
LNP12‐AD‐18328製剤を、Jeffs et al.(Jeffs LB, et al.(2004)A Scalable, Extrusion‐Free Method for Efficient Liposomal Encapsulation of Plasmid DNA.Pharm Res 22:362‐372)から適応した方法を使って調製した。簡潔に言うと、Tech‐G1(上記)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール及びmPEG2000‐DMGを、50:10:38.5:1.5のモル比で90%エタノールに溶かした。siRNAを、0.4mg/mLの濃度でpH3の10mMクエン酸緩衝液に溶かした。エタノール脂質溶液及びsiRNA水溶液を、デュアルポンプヘッドを装着した蠕動ポンプを用いて等体積流量で送り込み、「T」‐接合部で混合した。脂質を、7:1(重量:重量)の総脂質のsiRNAに対する比率で、siRNAと混合した。自然発生的に形成したLNP12‐AD18328製剤を、PBS(155mM NaCl、3mM Na2HPO4、1mM KH2PO4、pH7.5)に対して透析し、エタノールを除去し、バッファーを交換した。この製剤は、約90%のsiRNA封入効率で80nmの平均粒径を生みだした。
カニクイザル(Macaca fascicularis)に、PBS又は0.03、0.1、若しくは0.3mg/kgのLNP12‐AD‐18328を、15分間のIV注入(5mL/kg)として橈側皮静脈を経て与えた。投与してから48時間後、肝生検を動物から採集した。GAPDHのmRNAに対するTTRのmRNAレベルを、本明細書において記載されているように、肝試料中で測定した。
図19に示されているように、投与量0.03mg/kgでも高いレベルの野生型トランスサイレチン(TTR)遺伝子の特異的なノックダウンが観察された。これは、LNP12製剤は、前述のsiRNA肝臓送達系のいずれよりも桁が違う低さで遺伝子サイレンシングを促進することを示す。
実施例13.TTRが並べられた配列の合成
AD‐18328の標的領域付近でTTR遺伝子を標的とされる、TTR二本鎖(「並べられた二本鎖」)のセットを設計し、それは、NM_000371.3のヌクレオチド628で始まるヒトTTR遺伝子を標的とする。
下の実施例では、転写物上のsiRNAの5’位の塩基を示す番号付けは、NM_000371.3(図12、配列番号1331)に基づいている。上記の実施例では、ヒトsiRNAを標的とするsiRNAの番号付けは、NM_000371.2(図13A)に基づいていた。NM_000371.3は、図14に示すように、NM_000371.2と比較して、110塩基まで5’UTRの配列を伸長する。よって、一例として、AD‐18328の開始位置は、NM_000371.3上の628及びNM_000371.2上の518である(図14)。
TTRが並べられた配列をMerMade192合成装置で1μmolスケールにて合成した。表にあるすべての配列に関して、以下に詳しく述べるように「エンドライト(endolight)」化学を適用した。
● センス鎖内のすべてのピリミジン(シトシン及びウリジン)は、2’‐O‐メチル塩基(2’O‐メチルC及び2’‐O‐メチルU)を含有した。
● アンチセンス鎖において、リボAヌクレオシドに(5’位方向に)隣接したピリミジンをそれらの対応する2‐O‐メチルヌクレオシドに置き換えた。
● センス及びアンチセンスの配列双方の3’末端に2塩基dTdT伸長を導入した。
● 配列ファイルをテキストファイルに変換し、MerMade192合成ソフトウエアへの搭載に適合させた。
合成、切断、及び脱保護:
TTR配列の合成は、ホスホラミダイト化学を用いた固相担持オリゴヌクレオチド合成を使用した。配列の合成を、96ウェルプレートで1umスケールにて実施した。アミダイト溶液を0.1M濃度に調製し、エチルチオテトラゾール(アセトニトリル中0.6M)を活性剤として使用した。合成した配列を切断し、第1工程ではメチルアミンを、第2工程ではフッ化物試薬を使って、96ウェルプレート中で脱保護した。粗配列を、アセトン:エタノール(80:20)混合物を使って沈殿させ、沈殿物を0.2M酢酸ナトリウム緩衝液に再懸濁した。それぞれの配列からの試料を、LC‐MSにより分析して同一性を確認し、紫外線により定量し、選択された試料のセットをIEXクロマトグラフィーにより分析して純度を決定した。
精製及び脱塩:
TTRが並べられた配列を、Source15Qカラムを使ってAKTA explorer精製システムで精製した。65℃のカラム温度を精製中維持した。試料の注射及び採集を、96ウェル(1.8mLの深いウェル)プレート中で行った。完全長配列に対応する単一ピークを、溶離液中に採集した。精製した配列を、AKTA purifierを使ってSephadex G25カラムで脱塩した。脱塩したTTR配列を、濃度(A260での紫外線測定によって)及び純度(イオン交換HPLCによって)について分析した。次に、一本鎖をアニーリングに提供した。
TTRの一本鎖及び二本鎖:
TTRが並べられた二本鎖及び対応する一本鎖(センス及びアンチセンス)の詳細な表を、下の表(表13)に示す。
実施例14.TTRが並べられたsiRNAのインビトロスクリーニング
TTRが並べられた二本鎖を、リアルタイムPCRアッセイを用いて、内在性TTRの発現の阻害についてHep3B細胞内でアッセイした。
細胞培養及びトランスフェクション:
Hep3B細胞(ATCC、Manassas、VA)を、10%FBS、ストレプトマイシン、及びグルタミン(ATCC)を補完したEagle’sイーグル最小必須培地(ATCC)中で37℃にて5%CO2雰囲気下においてコンフルエント近くまで育て、トリプシン処理によってプレートから剥がした。96ウェルプレートの個々のウェルに、5μLのOpti‐MEMを5μLの各siRNAに添加することによって、リバーストランスフェクションを実施した。これに、1ウェル当たり、10μLのOpti‐MEMと0.2μLのLipofectamine RNAiMax(インビトロジェン,Carlsbad CA.カタログ番号13778‐150)を加えて、混合物を室温で15分間インキュベーションした。次に、上記に記載の完全成長培地で、2.0×104のHep3B細胞を含み、抗生物質を含まないものを80μL加えた。細胞を24時間培養して、RNAを精製した。0.1又は10nMの最終二本鎖濃度にて実験を行った。
MagMAX‐96全RNA単離キット(アプライド・バイオシステムズ,Foster City,CA,部品番号:AM1830)を使った全RNA単離:細胞を採集し、140μLの溶解/結合溶液で溶解し、次に、エッペンドルフ サーモミキサーを使って1分間850rpmで混合した(混合速度をプロセス全体を通して同一とした)。20マイクロリットルの磁気ビーズ及び溶解/結合エンハンサーの混合物を細胞溶解物に加え、5分間混合した。磁気ビーズを磁気スタンドを使って捕獲し、ビーズを乱すことなく上清を取り除いた。上清を取り除いた後、磁気ビーズを(イソプロパノールを加えた)洗浄溶液1で洗浄し、1分間混合した。ビーズを再度捕獲し、上清を取り除いた。次に、磁気ビーズを150μLの(エタノールを加えた)洗浄溶液2で洗浄、捕獲し、上清を取り除いた。次いで、50μLのデオキシリボヌクレアーゼ混合物(MagMax turboデオキシリボヌクレアーゼバッファー及び Turboデオキシリボヌクレアーゼ)をビーズに加えて、それらを10〜15分間混合した。混合後、100μLのRNA再結合溶液を加え、3分間混合した。上清を取り除き、磁気ビーズを150μLの洗浄溶液2で再度洗浄して、1分間混合し、上清を完全に取り除いた。磁気ビーズを2分間混合して乾燥し、RNAを50μLの水で溶出した。
ABI高性能cDNA逆転写キット(アプライド・バイオシステムズ,Foster City,CA,カタログ番号4368813)を使ったcDNA合成:2μLの10×バッファー、0.8μLの25×dNTP、2μLのランダムプライマー、1μLの逆転写酵素、1μLのRNase阻害剤、及び1反応当たり3.2μLのH2Oのマスターミックスを、10μLの全RNAに加えた。cDNAをバイオ・ラッドC‐1000又はS‐1000サーマルサイクラー(Hercules,CA)を使い、次のステップを通じて生成した:25℃で10分、37℃で120分、85℃で5秒、4℃で保持。
リアルタイムPCR:2μLのcDNAを、LightCycler 480 384ウェルプレート(ロッシュ(Roche) カタログ番号0472974001)中の1ウェル当たり、0.5μLのGAPDH TaqManプローブ(アプライド・バイオシステムズ カタログ番号4326317E)、0.5μLのTTR TaqManプローブ(アプライド・バイオシステムズ カタログ番号HS00174914 M1)、及び10μLのロッシュProbes Master Mix(ロッシュ カタログ番号04887301001)を含有するマスターミックスに加えた。LightCycler 480リアルタイムPCR装置(ロッシュ)において、リアルタイムPCRを行った。各二本鎖を、2つの独立したトランスフェクションで検証し、各トランスフェクションを二連でアッセイした。
ΔΔCt法を使って、リアルタイムデータを分析した。各試料を、GAPDHの発現に対して正規化し、ノックダウンを非標的二本鎖AD‐1955でトランスフェクションした細胞と比較して評価した。表14は、siRNAを用いたTTRのノックダウンを示す。データは、AD‐1955で標的とされた細胞に対する残存するメッセージの割合(%)として表される。
AD‐18328の標的近くのTTRを標的とする、多数ではあるが、すべてではない並べられたTTR‐dsRNAは、0.1nMでHep3B細胞にトランスフェクションした場合、TTRのmRNA少なくとも70%減少した。
実施例15.Sprague‐DawleyラットにおけるSNALP‐18534の単回静脈内投与の有効性における注入持続時間の評価
目的
Sprague‐Dawleyラットにおいて、肝臓TTRのmRNAレベルにおけるSNALP‐18534の単回IV注入の有効性における注入持続時間の効果を決定すること。
上の表からのAD‐18534のセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列を以下に再現する。
研究材料
被験物質
SNALP‐18534は、標的組織に送達するために安定した核酸脂質粒子(SNALP)に製剤化された、齧歯類TTRのmRNA(AD‐18534)を標的とするsiRNAからなる。SNALP製剤(脂質粒子)は、新規のアミノ脂質(DLinDMA)、PEG化脂質(mPEG2000‐C‐DMA)、中性脂質(DPPC)、及びコレステロールからなる。SNALP製剤中の脂質の核酸に対する比は、約5.8:1(重量:重量)である。SNALP‐1955は、非哺乳動物のルシフェラーゼmRNAを標的とするsiRNAを含有し、SNALP‐18534と同一の脂質粒子で製剤化される、非薬理学的に活性な対照としての役割を果たす。投与レベルは、siRNA含有量の重量に基づいて、mg/kgとして表す。
研究設計及び手順
動物及び被験物質の投与:
研究は、Sprague‐Dawleyラットの9つの群(4匹の雄/群)からなった。動物は、研究前の少なくとも2日間の順応期間が与えられ、すべての動物は、投与開始時、7週齢であった。投与された量は、1日目の投与前に収集された体重データに基づいて算出された。試験及び対照物質は、Baxter AS40A注射器ポンプに27Gテルモ翼状針を介して接続されたBaxter注射部位の隔膜で密閉された24G 3/4インチのカニューレを用いて、尾静脈を経て、単回15分間、1時間、2時間、又は3時間のIV注入として投与された。投与容量は3mL/kgであり、注入速度は12mL/kg/時であり、動物は、投与中、ケージ中で自由に動いていた。ラットは、9つの処置群に分割され、表16に示されるように、SNALP‐18534、SNALP‐1955、又はPBSの単回IV注入で投与した。
組織採集及びRNA単離:
0日目に、イソフルレン吸入で動物に麻酔をかけ、投与前の血液試料を、後眼窩採血により血清分離管に採集した。4℃で遠心分離を行う前に、室温で約30分間、血液試料を凝固させた。次に、血清試料を、分析を行うまで−80℃で保存した。3日目に、すべての9つの処置群の動物に、致死量のケタミン/キシラジンを与えた。後大静脈を経て血清分離管に血液を採集し、次に、4℃で遠心分離を行う前に、室温で約30分間凝固させた。血清試料を、分析を行うまで−80℃で保存した。肝組織を採集し、ドライアイス上で瞬間凍結した。凍結した肝組織を破砕し、組織溶解物を肝臓mRNAの定量のために調製した。
TTRのmRNAの定量:
分岐DNAアッセイ(QuantiGene Reagent System,Panomics,Fremont,CA)を使用することにより、GAPDHのmRNAレベルと比較したTTRのmRNAレベルを溶解物中で決定した。簡潔に言うと、製造業者の取扱説明書に従って、組織試料の溶解物中のmRNAレベルを定量化するためにQuantiGeneアッセイ(Genospectra)を使用した。TTRのmRNAの平均レベルを、それぞれの試料についてGAPDHのmRNAの平均レベルに対して正規化した。
TTRのmRNAの発現の相対レベルを得るために、次に、15分間、1時間、及び2時間の注入持続時間でのSNALP‐1955及びSNALP‐18534処置群についての群平均値を、15分間の注入時間でのPBS処置群についての平均値に対して正規化し、一方、次に、3時間の注入時間でのSNALP‐1955及びSNALP‐18534処置群についての群平均値は、3時間の注入持続時間でのPBS処置群についての平均値に対して正規化した。
結果
図16に示されるように、15分間〜3時間の異なる注入持続時間での1mg/kgのSNALP‐18534の単回IV注入は、投与から2日後に測定した肝臓TTRのmRNAレベルに匹敵する阻害をもたらす。また、1mg/kgのSNALP‐18534の単回IV注入は、SNALP‐1955対照と比較した場合、15分間の単回IV注入から29日間にわたって持続性のあるTTRの下方調節を示した(データは示さず)。PBS処置群と比較して、SNALP‐18534の単回15分間、1時間、2時間、又は3時間のIV注入は、1mg/kgにて、相対TTRのmRNA発現レベルを、それぞれ、94%(p<0.001)、94%(p<0.001)、92%(p<0.001)、及び93%(p<0.001)有意に減少させた。SNALP‐18534活性の特異性は、同一の投与量レベルにての1時間、2時間、又は3時間のIV注入でのSNALP‐1955投与による有意な標的阻害の欠如により示される。
結論
本研究は、15分間から最長3時間の異なる注入持続時間は、肝臓中のTTRのmRNAレベルの減少により評価したとき、ラットにおける1mg/kgのSNALP‐18534の単回IV投与の有効性に影響を及ぼさないことを示す。
実施例16.LNP07‐18534及びLNP08‐18534によるラット肝臓における野生型TTRのmRNAの生体内減少
siRNAの送達についての2つの新規の脂質ナノ粒子製剤であるLNP07及びLNP08の有効性をラットにおいて評価するために、齧歯類特異的なTTRのsiRNA、AD‐18534を、LNP07(LNP07‐18534)又はLNP08(LNP08‐18534)に製剤化し、15分間のIV注入により投与し、肝臓TTRのmRNAを定量した。Sprague‐Dawleyラット(1群当たり4匹の動物)に、LNP07‐18534(0.03、0.1、0.3、若しくは1mg/kg)、LNP08‐18534(0.01、0.03、若しくは0.1mg/kg)、又は非哺乳動物のルシフェラーゼ遺伝子を標的とする陰性対照siRNA AD‐1955を含有するLNP07‐1955(1mg/kg)若しくはLNP08‐1955(0.1mg/kg)の15分間のIV注入により投与した。48時間後、動物に麻酔をかけ、肝組織を採集し、急速冷凍し、処理するまで−80℃で保存した。
TTRのmRNA定量のために、冷凍肝組織を粉末に破砕し、溶解物を調製した。分岐DNAアッセイ(QuantiGene Reagent System,Panomics,Fremont,CA)を使用することにより、GAPDHのmRNAレベルと比較したTTRのmRNAレベルを溶解物中で決定した。簡潔に言うと、製造業者の取扱説明書に従って、組織試料の溶解物中のmRNAレベルを定量化するためにQuantiGeneアッセイ(Genospectra)を使用した。TTRのmRNAの平均レベルを、それぞれの試料についてGAPDHのmRNAの平均レベルに対して正規化した。次に、正規化した値の群平均を、PBS処理群に対する平均値に対してさらに正規化し、TTRのmRNA発現の相対レベルを得た。
結果を図17に示す。LNP07‐18534は、投与量依存的な様式で、肝臓におけるTTRのmRNAレベルを減少させ、1mg/kgでTTRのmRNAの94%抑制を得た。PBS対照と比較して、1mg/kgで陰性対照LNP07‐1955はTTRのmRNAレベルに大きな影響を及ぼさなかったので、効果は特異的であった。mRNA ED50をもとめ、〜0.05mg/kgのLNP07‐18534であった。LNP08‐18534は、投与量依存的な様式で、肝臓中のTTRのmRNAレベルを減少させ、0.1mg/kgでTTRのmRNAの86%抑制を得た。PBS対照と比較して、0.1mg/kgで陰性対照LNP08‐1955はTTRのmRNAレベルに大きな影響を及ぼさなかったので、効果は特異的であった。mRNA ED50をもとめ、〜0.02mg/kgのLNP08‐18534であった。
これらの結果は、LNP07‐18534及びLNP08‐18534は、IV注入により投与した場合、ラット肝臓中の野生型TTRのmRNAを抑制するのに効果的であり、LNP07及びLNP08は、肝臓にsiRNAを送達するための効果的な製剤であることを示す。
実施例17:Sprague‐DawleyラットにおけるLNP09‐18534又はLNP11‐18534の単回静脈内投与によるTTR肝臓mRNAの減少
目的:
内在性(野生型)肝臓TTRのmRNAレベルを減少させることに対する、Sprague‐Dawleyラットにおける、齧歯類TTR特異的なsiRNAのAD‐18534の送達についての2つの新規の脂質ナノ粒子(LNP)製剤の有効性を評価すること。ラットに、0.01、0.03、0.1、若しくは0.3mg/kgのLNP09‐18534、LNP11‐18534、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)のいずれかで15分間の注入を介して静脈内に投与し、TTR肝臓のmRNAレベルを、処置から48時間後にアッセイした。
材料及び方法:
LNP09製剤:(XTC/DSPC/Chol/PEG2000‐C14)=50/10/38.5/1.5モル%;脂質:siRNA 〜11:1。LNP11製剤:(MC3/DSPC/Chol/PEG2000‐C14)=50/10/38.5/1.5モル%;脂質:siRNA 〜11.1:1。
組織採集及びRNA単離:3日目に、すべての処置群の動物に、致死量のケタミン/キシラジンを与えた。後大静脈を経て血清分離管に血液を採集し、次に、4℃で遠心分離を行う前に、室温で約30分間凝固させた。血清試料をその後の分析まで−80℃で保存した。肝組織を採集し、ドライアイス上で瞬間凍結した。凍結した肝組織を破砕し、組織溶解物を肝臓mRNAの定量のために調製した。
TTRのmRNAの定量:分岐DNAアッセイ(QuantiGene Reagent System,Panomics,Fremont,CA)を使用することにより、GAPDHのmRNAレベルと比較したTTRのmRNAレベルを溶解物中で決定した。簡潔に言うと、製造業者の取扱説明書に従って、組織試料の溶解物中のmRNAレベルを定量するためにQuantiGeneアッセイ(Genospectra)を使用した。TTRのmRNAの平均レベルを、それぞれの試料についてGAPDHのmRNAの平均レベルに対して正規化した。次に、群平均値を、PBS処置群についての平均値に対して正規化し、TTRのmRNA発現の相対レベルを得た。
結果:
図18に示されるように、PBS処置動物と比較して、LNP09‐18534及びLNP11‐18534で処置した動物は、肝臓中のTTRのmRNAレベルが投与量依存的に有意に減少し、PBC対照群と比較して、0.3mg/kgで、LNP09及びLNP11製剤化群の両方に対して、約90%のmRNAの最大減少に達し、投与量は、LNP11‐18534の0.03mg/kg未満及びLNP09‐18534の0.1mg/kg未満で50%減少(ED50)に達した。
結論
本研究は、Sprague‐Dawleyラットにおいて、LNP09‐18534又はLNP11‐18534の単回15分間のIV注入は、肝臓TTRのmRNAの投与量依存的な減少をもたらすことを示す。これらのデータは、LNP11‐18534及びLNP09‐18534、それぞれ、0.03mg/kg未満及び0.1mg/kg未満のED50レベルで内在的に発現する(野生型)TTRのmRNAを減少させることにおけるLNP09‐18328及びLNP11‐18328の有効性を示す。
実施例18:動物における毒性アッセイ
ALN‐TTR01を非GLP及びGLP条件下における安全性及び毒物学(toxiclogoy)についてアッセイした。ALN‐TTR01は、SNALP製剤(DLinDMA/DPPC/コレステロール/PEG2000‐cDMA(57.1/7.1/34.4/1.4)脂質:siRNA〜7)中のsiRNA AD‐18328である。アッセイは、カニクイザル(1、3、6、10、30、100mg/kg)及びSprague‐Dawleyラット(0.3、1、3、6、10mg/kg)で行った。ラットでは1mg/kg未満、非ヒト霊長類では10mg/kg未満で毒性は見られなかった(データは示さず)。
実施例19:製剤ALN‐TTR01
製剤であるALN TTR01 Injectionは、等張のリン酸緩衝食塩水中に、脂質賦形剤(安定核酸脂質粒子[SNALP]と呼ばれる)を含む、siRNA ALN 18328の白色からオフホワイト色の均質の滅菌液体懸濁液である。ALN TTR01の組成物を下の表に示す。
脂質賦形剤は、下の表に示した分子量及び構造を有する。
a 別名:mPEG2000‐C‐DMA
ALN TTR01製剤は、5.5mLの充填容積(1バイアル当たり11mgのALN‐18328)で10mLのガラスバイアルに包装されている。容器密閉システムは、USP/EPI型ホウケイ酸ガラス、テフロン(登録商標)表面のブチルゴム栓、アルミニウムのフリップオフキャップから構成される。製剤は5±3℃で保存されるであろう。
製剤の安定性を最長24カ月間アッセイし、以下の基準を決定した:
外観:白色からオフホワイト色、均一な乳白色液体、異物無し
pH:6.8〜7.8
浸透圧:250〜350mOsm/kg
脂質:siRNA比:5.6〜8.4mg/mg
粒径(Z平均):60〜120nm≦0.15
実施例20:ヒトにおけるTTRの阻害
ヒト対象をTTR遺伝子の発現を阻害するTTR遺伝子を標的とするdsRNAで処置し、病態を治療する。
治療を必要とする対象を選択又は特定する。対象は、肝臓疾患、トランスサイレチンアミロイドーシス、及び/又は移植肝臓を有することができる。例えば、生検に基づいてATTR(FAP又はFAC)との確定診断を受けた、いかなる変異TTR遺伝子型の患者で、肝移植を受けたことがない患者を選ぶことができる。幾つかの実施形態では、患者は、十分な活動状態、十分な肝機能及び腎機能を有し、活動性感染症も炎症障害もなく、安定した心臓状態を有する。
対象の特定は、臨床的な環境、又はその他の場所、例えば対象自身が自己検査キットを使用することを通して対象の自宅などにおいて行うことができる。
時間0で、好適な第1の用量の抗TTR siRNAを対象に投与する。本明細書において記載のように、dsRNAを製剤化する。第1の投与をしてからの期間、例えば、7日、14日、及び21日後、例えば、肝機能を測定することにより対象の病態を評価する。この測定は、前記対象におけるTTRの発現、及び/又はTTRのmRNAの成功したsiRNA標的の成果の測定を伴うことができる。また、その他の関連する基準も測定することができる。投与の回数及び強さを対象の必要性に従って調整する。
例えば、ALN‐TTR01又は通常の生理食塩水プラセボの単回投与を、15分間のIV注入により投与することができる。開始投与レベルは、0.03mg/kgで、4投与レベル:0.03、0.1、0.2及び0.4mg/kgにわたって投与量を上げることができる。ATTR患者における薬力学効果は、0.1〜0.3mg/kgの投与量から見られうる。最大投与量は、例えば0.4mg/kg又はED70投与量(コホート内の少なくとも2人の患者で全TTRの基線70%を超える抑制をもたらすALN‐TTR01の投与量)より低いものであろう。
患者に、注入反応の恐れを減らすために、投与前に、1)投与前日の夕方に経口で8mgのデキサメタゾン、2)投与30分前に、静注で20mgのデキサメタゾン、静注で50mgのジフェンヒドラミン、静注で50mgのラニチジン又は20mgのファモチジン、及び経口で650mgのアセトアミノフェンを前投与することができる。注入は、より遅い速度で行いうる(最大注入時間3時間)。
ALN‐TTR01を投与した後、ビタミンA及びRBPレベル並びに甲状腺機能検査を、毎週続けることができる(TTRは、レチノール結合タンパク質(RBP)とともにビタミンA輸送において役割を担い、循環サイロキシンの結合において、サイログロブリンと比べて小さい役割を担う)。男性では、テストステロン、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)レベルの連続的な測定を通して、精巣機能が注意深く監視されるであろう。
血清TTRレベルの連続的な測定によって、投与後の最下点並びに投与後最下点の時期及びTTR抑制の持続期間を決めることができるであろう。
治療後、対象の腫瘍増殖率は、治療前に存在した比率、又は同様に罹患したが治療を受けなかった対象で測定された比率と比較して低下している。