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JP5696273B2 - 糖鎖バイオマーカーによる特発性正常圧水頭症の診断 - Google Patents

糖鎖バイオマーカーによる特発性正常圧水頭症の診断 Download PDF

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JP5696273B2 JP2008293940A JP2008293940A JP5696273B2 JP 5696273 B2 JP5696273 B2 JP 5696273B2 JP 2008293940 A JP2008293940 A JP 2008293940A JP 2008293940 A JP2008293940 A JP 2008293940A JP 5696273 B2 JP5696273 B2 JP 5696273B2
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Description

本発明は、特発性正常圧水頭症(idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus)の診断に使用可能な糖タンパク質マーカーに関し、より具体的には、この糖タンパク質を利用するiNPHの診断方法、診断キット等に関する。
特発性正常圧水頭症(iNPH)は認知症と脳室拡大を主徴とする老人性の髄液代謝異常症である。iNPHは簡単な手術を受ければ完治することから、“治る認知症”と考えられている。しかし、その主症状(認知症と脳室拡大)はアルツハイマー病と類似していることから、本疾患の殆どはアルツハイマー病と誤って診断されてきた。
従来iNPHの確定診断は、大量(30mL)の髄液を腰椎穿刺により除去し、過剰の髄液による圧迫症状を軽減させ、症状が緩和されるか否かを指標としていた(タップテスト)。しかし、この方法では患者に対する負担が大きく、結果判定も定性的なものである。このため、偽陰性(iNPHであるにも拘わらずタップテストが陽性にならない症例)も多い。また、iNPHは老人の病気なので腰椎変形のために数ミリリットルの髄液しかとれないこともある。この場合は判定不能となり手術はおこなわれない。また、この際に得られた少量の髄液は、適当な診断マーカーがないために破棄されている。
特許文献1には、血清中の糖タンパク質糖鎖をバイオマーカーとして用いてアルツハイマー病を診断する方法が記載されている。
しかし、特発性正常圧水頭症の診断に利用可能なバイオマーカーとして利用し得る糖タンパク質は、これまで知られていない。
特開2006−317210号公報
本発明の目的は、アルツハイマー病と誤って診断されることが多かった特発性正常圧水頭症を正確に診断することが可能なバイオマーカーを見出し、従来の診断方法と比較して患者への負担が少ない新たな診断方法を提供することにある。
iNPHでは髄液の代謝異常が疑われているので、本発明者らは、iNPH患者の髄液には健常者のものと異なる構造の糖鎖を持つ糖タンパク質が存在するか、髄液に特徴的な糖鎖構造を持つ糖タンパク質量が変化する可能性があると考えた。この発想に基づき、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、健常者由来の髄液サンプルと比較して、iNPH患者由来の髄液サンプル中で顕著に減少している糖タンパク質が存在することを初めて見出した。本発明者らは、この糖タンパク質がN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を末端糖として持つトランスフェリンであることを発見し、このトランスフェリンアイソフォームをトランスフェリン−1と名づけた。通常血清中に存在するトランスフェリンは非還元末端にシアル酸(Sia)-ガラクトース(Gal)-N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の糖鎖構造を持つことが既に報告されている(N-Linked sugar chains of glycoproteins in human plasma in Comprehensive Glycoscience, Vol. 1 (Chapter 1.02.2.2), pp44-47, Ed. Kamerling, J.P.)。従って、髄液中には、血清トランスフェリンと比較して糖鎖の短いグライコフォームを有するトランスフェリンが豊富に存在することが、本発明者らにより初めて示された。本発明者らは、この髄液特徴的なトランスフェリン−1をiNPHの診断マーカーとして利用する診断方法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1]被験者から採取した体液中のトランスフェリン−1の量を測定することを含む、該被験者における特発性正常圧水頭症の診断のための検査方法。
[2]前記体液中のトランスフェリン−2の量を測定すること、及び
トランスフェリン−2/トランスフェリン−1の値を算出すること、
をさらに含む、上記[1]記載の方法;
[3]トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、及び
トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質、
からなる群より選択される1以上の物質を用いる、上記[1]記載の方法;
[4]トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質をさらに用いる、上記[3]記載の方法;
[5]トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、
トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質、及び
トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質、
を用いる、上記[3]記載の方法;
[6]トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質が抗ヒトトランスフェリン抗体である、上記[3]〜[5]のいずれか1項に記載の方法;
[7]トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質がレクチンである、上記[3]〜[5]のいずれか1項に記載の方法;
[8]トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質がレクチンである、上記[4]又は[5]に記載の方法;
[9]トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質がPVLレクチンである、上記[7]記載の方法;
[10]トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質がSSAレクチンである、上記[8]記載の方法;
[11]前記体液が髄液である、上記[1]又は[2]記載の方法;
[12]サンドイッチELISAを用いて測定を行なう、上記[1]又は[2]に記載の方法;
[13]トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、及び
トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質、
からなる群より選択される1以上の物質を含む、特発性正常圧水頭症の診断用キット;
[14]トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質をさらに含む、上記[13]記載のキット;
[15]トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、
トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質、及び
トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質、
を含む、上記[13]記載のキット;
[16]トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質が抗ヒトトランスフェリン抗体である、上記[13]〜[15]のいずれか1項に記載のキット;
[17]トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質がレクチンである、上記[13]〜[15]のいずれか1項に記載のキット;
[18]トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質がレクチンである、上記[13]〜[15]のいずれか1項に記載のキット;
[19]トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質がPVLレクチンである、上記[17]記載のキット;
[20]トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質がSSAレクチンである、上記[18]記載のキット;
[21]トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質が支持体上に固相化されている、上記[13]記載のキット、
等を提供する。
本発明の新規iNPHの診断マーカーを利用することにより、少量の体液(例えば髄液)サンプルからでもiNPHを正確に診断することができるようになる。また、検査時の被験者への負担も、従来法より少なくて済む。
本発明は、体液(好ましくは髄液)サンプル中のトランスフェリン-1の量、又はサンプル中のトランスフェリン-1とトランスフェリン-2の比率を診断マーカーとして利用する、iNPHの診断方法を提供する。
ヒトトランスフェリンのアミノ酸配列は、Accesion No.:NM_001063(配列番号2)で表され、その核酸配列は配列番号1で表される。トランスフェリンは2原子の鉄と結合してそれを運搬する糖タンパク質である。血清トランスフェリンは分子量約80KDaであり(698アミノ酸残基)、432番目と630番目のアスパラギンにバイアンテナのN-グリカンが付加していることが報告されている(N-Linked sugar chains of glycoproteins in human plasma in Comprehensive Glycoscience, Vol. 1 (Chapter 1.02.2.2), pp44-47, Ed. Kamerling, J.P.)。血清トランスフェリンは、通常の血清タンパクと同様に糖鎖末端にはSia-Gal-GlcNAcの構造を持つ。
本発明者らは、髄液中に、これまで知られていた血清トランスフェリンと同じ糖鎖構造を有するトランスフェリン(トランスフェリン-2)に加えて、それとは異なる糖鎖構造を有するトランスフェリンアイソフォーム(トランスフェリン-1)が存在することを新たに見出した。髄液中のトランスフェリンのタンパク質部分(コア・タンパク質)は血清トランスフェリンと同じである。
本明細書中で、血清トランスフェリンとは異なる糖鎖構造を有すると考えられる髄液中のトランスフェリンアイソフォームを、トランスフェリン-1と呼ぶ。トランスフェリン-1は、レクチンアレイの分析により殆どシアル酸修飾を受けておらず、GlcNAcに特異的なPVLレクチンにて染色されたことから、その糖鎖は、ア・シアロ、ア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つと考えられる。
本明細書中で、髄液中に存在する、血清トランスフェリンと同じ糖鎖構造を有すると考えられるトランスフェリンアイソフォームを、トランスフェリン-2と呼ぶ。トランスフェリン-2の糖鎖はSia-Gal-GlcNAc末端を持つと考えられる。
本明細書において、血清トランスフェリン、トランスフェリン-1及びトランスフェリン-2を集合的にトランスフェリンと呼ぶ場合がある。
糖タンパク質は、その糖タンパク質に特異的に結合する物質を利用して検出/測定/定量(本明細書中で使用する場合、これらの語は相互に交換可能である)することができる。このような物質としては、糖タンパク質のタンパク質部分又はその一部に結合する物質(例、抗体)、糖タンパク質の糖鎖部分又はその一部に結合する物質(例、レクチン、糖鎖抗体)などが挙げられる。本明細書中で、これらの物質をそれぞれ、「タンパク質結合物質」及び「糖鎖結合物質」とも呼ぶ。また本明細書中で、糖タンパク質のタンパク質部分又はその一部(ペプチド)を単にタンパク質部分といい、糖鎖部分又はその一部を単に糖鎖部分という場合がある。
本発明は、被験者由来の体液中のトランスフェリン−1の量を測定することを含む、iNPH診断のための検査方法を提供する。健常者由来の体液サンプルと比較してトランスフェリン−1の量が有意に低下していた場合、該被験者をiNPH患者と診断することができる。
体液中に存在するトランスフェリン−1の量には個人差があるものの、治療を受けたiNPH患者についてトランスフェリン-1の量の変化をモニタリングすることにより、その治療の効果を評価することが可能である。
トランスフェリン−1の測定には、トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質とトランスフェリン−1の糖鎖部分に特異的に結合する物質とを、単独又は組み合わせて使用する。トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質又はトランスフェリン−1の糖鎖部分に特異的に結合する物質を単独で用いる場合、これらの物質を検出に用いるウエスタンブロットなどによってトランスフェリン-1の量を測定する。トランスフェリン-1及び-2のバンド位置がわかっていれば、トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質単独でも、トランスフェリン-1の量を測定することは可能である。これらの結合物質を組み合わせて使用する場合には、サンドイッチ法等を使用することができる。
本発明はまた、体液中のトランスフェリン-1の量を測定することに加えて、トランスフェリン-2の量を測定し、トランスフェリン-2とトランスフェリン-1との比率(トランスフェリン-2/トランスフェリン-1の値、即ち糖鎖インデックス)を算出することを含む、iNPH診断のための検査方法を提供する。トランスフェリン-2の測定方法としては、トランスフェリン-1の測定について上記したものと同様の方法が挙げられる。健常者由来の体液サンプルと比較してこの糖鎖インデックスが有意に低下していた場合、該被験者をiNPH患者と診断することができる。糖鎖インデックスは、iNPHの確定診断に特に有用である。
ウエスタンブロットでトランスフェリン-1と2の両方を測定する場合において、電気泳動上のそれぞれのバンド位置がわかっていれば、トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質単独で、両方の量を同時に測定することが可能である。例えば、精製されたトランスフェリン-1及びトランスフェリン-2を被験者由来のサンプルと同時に電気泳動することにより、サンプル中の両アイソフォームの識別が容易となる。この場合、それぞれのバンドをデンシトメータなどで解析し、トランスフェリン-1とトランスフェリン-2との比率を算出すればよい。
トランスフェリン-1及び2を共にサンドイッチ法などで測定する場合などには、トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質、及びトランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質を用いる。
トランスフェリン−1に特異的に結合する糖鎖結合物質とは、トランスフェリン−1の糖鎖部分には結合するがトランスフェリン-2の糖鎖部分には実質的に結合しないもの、即ち、トランスフェリン-1の糖鎖構造とトランスフェリン−2の糖鎖構造とに共通する構造には実質的に結合しないものをいう。トランスフェリン−2に特異的に結合する糖鎖結合物質についても同様である。本明細書中で「実質的に結合しない」とは、その物質に対して全く結合しないか、又は顕著に低い結合しか示さないものをいう。全く結合しないことが好ましい。このような条件を満たす限り、任意の組み合わせの糖鎖結合物質を使用することができる。
特に、被験者由来の体液サンプル中に、トランスフェリン-1又は2に特異的な糖鎖結合物質が結合しうる糖鎖を有する無関係の糖タンパク質等が多く存在する場合などには、タンパク質結合物質と糖鎖結合物質とを組み合わせて各アイソフォームの量を測定することが好ましい。
糖鎖結合物質とタンパク質結合物質とを組み合わせて使用する場合には、トランスフェリン-1にも2にも存在しない糖鎖構造に対する糖鎖結合物質の結合特異性については、特に考慮しなくてもよい。
トランスフェリン−1又は2の測定にサンドイッチ法を使用する場合、そのような測定には、ELISA、イムノクロマトグラフィー、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA法)、化学発光イムノアッセイ、エバネッセント波分析法などを利用することができる。これらの方法は当業者に公知であり、いずれの方法を選択してもよい。また、これらの方法は通常の手順に従って実施すればよく、実際の反応条件の設定等は、当業者の通常の技術範囲内である。
これらのうち、タンパク質結合物質及び糖鎖結合物質としてそれぞれ抗体及びレクチンを用いたレクチン・抗体サンドイッチELISAを使用することが特に好ましい。
サンドイッチ法では、タンパク質結合物質又は糖鎖結合物質のいずれかを固相に結合させる。以下、固相化した結合物質を「捕捉剤」と呼び、他方を「検出剤」と呼ぶ。トランスフェリン-1と2とはタンパク質部分が共通しているので、タンパク質結合物質(好ましくは抗体)を捕捉剤として用いることが、操作の簡潔さの観点から好ましい。
捕捉剤を固相化する支持体(固相)としては、プレート(例、マイクロウェルプレート)、チューブ、ビーズ(例、プラスチックビーズ、磁気ビーズ)、クロマトグラフィー用担体(例、Sepharose(商標))、メンブレン(例、ニトロセルロースメンブレン、PVDF膜)、ゲル(例、ポリアクリルアミドゲル)などが例示される。その中でもプレート、ビーズおよびメンブレンが好ましく用いられ、取り扱いの簡便性からプレートが最も好ましく用いられる。
捕捉剤は、十分な結合強度が得られる限りいずれの方法で固相化してもよく、例えば、共有結合、イオン結合、物理的吸着などによって固相化する。或いは、予め捕捉剤を固相化した支持体を用いてもよい。
検出剤は、間接的または直接的に標識物質により標識されていてもよい。標識物質の例としては、蛍光物質(例、FITC、ローダミン)、放射性物質(例、13C、H)、酵素(例、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼなど)、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ)、などが挙げられる。また、検出剤をビオチン標識し、(ストレプト)アビジンを上記標識物質で標識して、ビオチンと(ストレプト)アビジンとの結合を利用してもよい。
標識物質として酵素を用いる場合、使用する酵素に応じた適切な基質を用いて検出を行なう。例えば、酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合、基質としてはo−フェニレンジアミン(OPD)、テトラメチルベンジジン(TMB)などが使用され、アルカリホスファターゼを使用する場合には、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)などが使用される。酵素反応停止液、基質溶解液についても、選択した酵素に応じて、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
捕捉剤は、体液サンプル中のトランスフェリン−1又は2と複合体を形成する。この複合体に検出剤を適用して生じたシグナルを測定することにより、体液中のトランスフェリン−1及び2を検出・定量する。シグナルの測定は、使用した標識物質に応じて適切な測定装置を用いて行なえばよい。
糖鎖とレクチンとの結合は抗体との結合と比較して弱いため(一般に、抗原抗体反応の結合定数は106〜109 M-1とされているが、レクチンと糖鎖間の結合常数は104〜107 M-1とされている)、糖鎖結合物質としてレクチンを用いる場合、エバネッセント波励起型蛍光検出法を用いてシグナルの検出を行なうことが好ましい。エバネッセント波励起型蛍光検出法とは、スライドガラスの端面(側面)に全反射が起こるような条件で光を入射させると、ガラス(固相)と水(液相)などの屈折率の異なる2相間の場合、界面から数百nm程度の近接場にだけエバネッセント波と呼ばれるきわめて射程距離の短い光(近接場光と呼ばれる)が滲み出ることを利用する方法である。この方法により、蛍光物質の励起光を端面から入射して近接場に存在する蛍光物質のみを励起し、蛍光観察を行なう。エバネッセント波励起型蛍光検出法は、Kuno et al.,Mol Cell Proteomics, 2008 Aug 11などに記載されている。この検出には、GlycoStationTMReader 1200(モリテックス)等を使用することができる。
糖鎖結合物質としてはレクチンを用いることが好ましい。「レクチン」とは、特定の糖鎖構造を認識して結合するタンパク質の総称である。糖鎖は一般に、複数種の糖で構成されており、各糖の結合様式も様々であるため、多様で複雑な構造を有している。レクチンとしては多数の動植物に由来するものが知られており、例えば、ガラクトースに対する親和性を持つ動物レクチンファミリーであるガレクチン;カルシウムイオン依存性の動物レクチンファミリーであるC-型レクチン;グリコサミノグリカンに対し一定の親和性を示すアネキシン;豆科レクチン;リシン等が挙げられる。
トランスフェリン-1と2との差異は、トランスフェリン−1はGlcNAcを非還元末端に持ち、トランスフェリン−2はSiaα2,6Galを非還元末端に持っている点である。従って、それぞれの糖鎖部分に対して特異的に結合する物質として、GlcNAc末端を特異的に認識するレクチンとSiaα2,6Gal末端を特異的に認識するレクチンを使用することが好ましい。
トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合するレクチンとしては、GlcNAcを非還元末端に持つ糖鎖を特異的に認識できるレクチンであれば、いずれのレクチンを用いてもよい。そのようなレクチンのうち、PVL(Psathyrella Velutina:ムジナタケ)レクチンが最も好ましい。PVLレクチンは、真菌類の一種である担子菌類に属するムジナタケ由来のレクチンであり、GlcNAcが非還元末端に存在する糖鎖構造を認識することが知られている。
トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合するレクチンとしては、Siaα2,6Galを非還元末端に持つ糖鎖を特異的に認識できるレクチンであれば、何れのレクチンを用いてもよい。例えば、SSA(Sambucus sieboldian agglutinin)レクチン、SNA(Sambucus nigraagglutinin)レクチン、TJA-I(Trichosanthes japonica agglutinin-I)レクチンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくはSSAレクチンである。
レクチンは、検出すべき糖タンパク質が持つ糖鎖構造に応じて適宜選択することができる。糖タンパク質の糖鎖構造を解析するための技術としては、フロンタルアフィニティークロマトグラフィー(FAC)、レクチンマイクロアレイ、糖鎖プロファイリング、MS又はMSn(質量分析やタンデム質量分析法)などが挙げられる。糖タンパク質の糖鎖構造が決定されれば、その情報に基づいて適切なレクチンを選択することができる。レクチンについての情報は、レクチンフロンティアデータベース(LfDB)、或いは産業技術総合研究所・糖鎖医工学研究センターのホームページ等から入手可能である。
糖鎖結合物質として糖鎖抗体を用いることもできる。糖鎖抗体を用いる場合、GlcNAcを非還元末端に持つ糖鎖に特異的に結合する抗体と、Siaα2,6Galを非還元末端に持つ糖鎖に特異的に結合する抗体を使用することが好ましい。
トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質としては、抗体を用いることが好ましい。このような抗体として市販の抗体を用いてもよいが、トランスフェリンの配列情報に基づいて、自体公知の方法によりトランスフェリンのタンパク質部分に特異的な抗体を作成してもよい。
市販の抗体を使用する場合、例えば、Bethyl Laboratories, Inc.の抗ヒトトランスフェリン抗体(例、A200-107A、A80-128、A80-128A、A80-128Pなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
上記ヒトトランスフェリンの配列情報に基づき、その部分ペプチドを調製し、以下に記載するような自体公知の方法に従って、抗ヒトトランスフェリン抗体を作製することができる。これらのペプチドとしては、調製された抗トランスフェリン抗体がサンプル中に含まれ得る無関係の抗原に対して交差反応しない限り、いずれのペプチドを用いてもよく、1〜数個のアミノ酸の置換、付加、欠失等を含んでいてもよい。例えば、このペプチドは、トランスフェリンの糖鎖結合アミノ酸残基に近いペプチドであっても遠いペプチドであってもよい。或いは、トランスフェリン−1又は2の検出において、タンパク質部分と糖鎖部分を一体として認識する抗体を用いることも考えられる。
本発明で用いる抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗体の製造には、トランスフェリンのタンパク質部分、或いはトランスフェリン-1又は2の糖鎖部分を抗原として用いる(本発明の抗原)。
<モノクローナル抗体の作製>
モノクローナル抗体産生細胞
本発明の抗原を、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与する。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された哺乳動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、標識した本発明の抗原と抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、本発明の抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した本発明の抗原を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
ファージディスプレイ抗体ライブラリー
モノクローナル抗体を作製するもう1つのアプローチはファージディスプレイを用いる方法である。この方法はPCRによる変異がCDR以外に導入される場合があり、そのため臨床段階で少数のHAHA産生の報告例があるが、その一方で宿主動物に由来する異種間ウイルス感染の危険性がない点や抗体の特異性が無限である(禁止クローンや糖鎖などに対する抗体も容易に作製可能)等の利点を有している。
ファージディスプレイ抗体ライブラリーの作製方法としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これに限定されない。
用いられるファージは特に限定されないが、通常繊維状ファージ(Ffバクテリオファージ)が好ましく用いられる。ファージ表面に外来タンパク質を提示する方法としては、g3p、g6p〜g9pのコートタンパク質のいずれかとの融合タンパク質として該コートタンパク質上で発現・提示させる方法が挙げられるが、よく用いられるのはg3pもしくはg8pのN末端側に融合させる方法である。ファージディスプレイベクターとしては、1)ファージゲノムのコートタンパク質遺伝子に外来遺伝子を融合した形で導入して、ファージ表面上に提示されるコートタンパク質をすべて外来タンパク質との融合タンパク質として提示させるものの他、2)融合タンパク質をコードする遺伝子を野生型コートタンパク質遺伝子とは別に挿入して、融合タンパク質と野生型コートタンパク質とを同時に発現させるものや、3)融合タンパク質をコードする遺伝子を有するファージミドベクターを持つ大腸菌に野生型コートタンパク質遺伝子を有するヘルパーファージを感染させて融合タンパク質と野生型コートタンパク質とを同時に発現するファージ粒子を産生させるものなどが挙げられるが、1)の場合は大きな外来タンパク質を融合させると感染能力が失われるため、抗体ライブラリーの作製のためには2)または3)のタイプが用いられる。
具体的なベクターとしては、Holtら(Curr. Opin. Biotechnol., 11: 445-449, 2000)に記載されるものが例示される。例えば、pCES1(J. Biol. Chem., 274: 18218-18230, 1999参照)は、1つのラクトースプロモーターの制御下にg3pのシグナルペプチドの下流にκL鎖定常領域をコードするDNAとg3pシグナルペプチドの下流にCH3をコードするDNA、His-tag、c-myc tag、アンバー終止コドン(TAG)を介してg3pコード配列とが配置されたFab発現型ファージミドベクターである。アンバー変異を有する大腸菌に導入するとg3pコートタンパク質上にFabを提示するが、アンバー変異を持たないHB2151株などで発現させると可溶性Fab抗体を産生する。また、scFv発現型ファージミドベクターとしては、例えばpHEN1(J. Mol. Biol., 222:581-597, 1991)等が用いられる。
一方、ヘルパーファージとしては、例えばM13-KO7、VCSM13等が挙げられる。
また、別のファージディスプレイベクターとして、抗体遺伝子の3’末端とコートタンパク質遺伝子の5’末端にそれぞれシステインをコードするコドンを含む配列を連結し、両遺伝子を同時に別個に(融合タンパク質としてではなく)発現させて、導入されたシステイン残基同士によるS-S結合を介してファージ表面のコートタンパク質上に抗体を提示し得るようにデザインされたもの(Morphosys社のCysDisplayTM技術)等も挙げられる。
抗体ライブラリーの種類としては、ナイーブ/非免疫ライブラリー、合成ライブラリー、免疫ライブラリー等が挙げられる。
ナイーブ/非免疫(non-immunized)ライブラリーは、正常な動物(ヒトなど)が保有するVHおよびVL遺伝子をRT-PCRにより取得し、それらをランダムに上記のファージディスプレイベクターにクローニングして得られるライブラリーである。通常、正常個体の末梢血、骨髄、扁桃腺などのリンパ球由来のmRNA等が鋳型として用いられる。疾病履歴などのV遺伝子のバイアスをなくすため、抗原感作によるクラススイッチが起こっていないIgM由来のmRNAのみを増幅したものを特にナイーブライブラリーと呼んでいる。代表的なものとしては、CAT社のライブラリー(J. Mol. Biol., 222: 581-597, 1991; Nat. Biotechnol., 14: 309-314, 1996参照)、MRC社のライブラリー(Annu. Rev. Immunol., 12: 433-455, 1994参照)、Dyax社のライブラリー(J. Biol. Chem., 1999 (上述); Proc. Natl. Acad. Sci. USA,14: 7969-7974, 2000参照)等が挙げられる。
合成ライブラリーは、B細胞内の機能的な特定の抗体遺伝子を選び、V遺伝子断片の、例えばCDR3等の抗原結合領域の部分を適当な長さのランダムなアミノ酸配列をコードするDNAで置換し、ライブラリー化したものである。最初から機能的なscFvやFabを産生するVHおよびVL遺伝子の組み合わせでライブライリーを構築できるので、抗体の発現効率や安定性に優れているとされる。代表的なものとしては、Morphosys社のHuCALライブラリー(J.Mol. Biol., 296: 57-86, 2000参照)、BioInvent社のライブラリー(Nat. Biotechnol., 18: 852, 2000参照)、Crucell社のライブラリー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 3938, 1995; J. Immunol. Methods, 272: 219-233, 2003参照)等が挙げられる。
免疫(immunized)ライブラリーは、標的抗原に対する血中抗体価が上昇した個体から採取したリンパ球、あるいは上記体外免疫法により標的抗原を人為的に免疫したヒトリンパ球等から、上記ナイーブ/非免疫ライブラリーの場合と同様にしてmRNAを調製し、RT-PCR法によってVHおよびVL遺伝子を増幅し、ライブラリー化したものである。最初から目的の抗体遺伝子がライブラリー中に含まれるので、比較的小さなサイズのライブラリーからでも目的の抗体を得ることができる。
ライブラリーの多様性は大きいほどよいが、現実的には、以下のパンニング操作で取り扱えるファージ数(1011〜1013ファージ)と通常のパンニングでクローンの単離および増幅に必要なファージ数(100〜1,000ファージ/クローン)を考慮すれば、108〜1011クローン程度が適当であり、約108クローンのライブラリーで通常10-9オーダーのKd値を有する抗体をスクリーニングすることができる。
標的抗原に対する抗体をファージディスプレイ法で選別する工程をパンニングという。具体的には、例えば、抗原を固定化した担体とファージライブラリーとを接触させ、非結合ファージを洗浄除去した後、結合したファージを担体から溶出させ、大腸菌に感染させて該ファージを増殖させる、という一連の操作を3〜5回程度繰り返すことにより抗原特異的な抗体を提示するファージを濃縮する。抗原を固定化する担体としては、通常の抗原抗体反応やアフィニティークロマトグラフィーで用いられる各種担体、例えばアガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス、金属などからなるマイクロプレート、チューブ、メンブレン、カラム、ビーズなど、さらには表面プラズモン共鳴(SPR)のセンサーチップなどが挙げられる。抗原の固定化には物理的吸着を用いてもよく、また、通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。例えばビオチン−(ストレプト)アビジン系等が好ましく用いられる。標的抗原である内因性リガンドがペプチドなどの小分子である場合には、抗原決定基として用いた部分が担体との結合により被覆されないように特に注意する必要がある。非結合ファージの洗浄には、BSA溶液などのブロッキング液(1-2回)、Tween等の界面活性剤を含むPBS(3-5回)などを順次用いることができる。クエン酸緩衝液(pH5)などの使用が好ましいとの報告もある。特異的ファージの溶出には、通常酸(例:0.1M塩酸など)が用いられるが、特異的プロテアーゼによる切断(例えば、抗体遺伝子とコートタンパク質遺伝子との連結部にトリプシン切断部位をコードする遺伝子配列を導入することができる。この場合、溶出するファージ表面には野生型コートタンパク質が提示されるので、コートタンパク質のすべてが融合タンパク質として発現しても大腸菌への感染・増殖が可能となる)や可溶性抗原による競合的溶出、あるいはS-S結合の還元(例えば、前記したCysDisplayTMでは、パンニングの後、適当な還元剤を用いて抗体とコートタンパク質とを解離させることにより抗原特異的ファージを回収することができる)による溶出も可能である。酸で溶出した場合は、トリスなどで中和した後で溶出ファージを大腸菌に感染させ、培養後、常法によりファージを回収する。
パンニングにより抗原特異的抗体を提示するファージが濃縮されると、これらを大腸菌に感染させた後プレート上に播種してクローニングを行う。再度ファージを回収し、上述の抗体価測定法(例:ELISA、RIA、FIA等)やFACSあるいはSPRを利用した測定により抗原結合活性を確認する。
選択された抗原特異的抗体を提示するファージクローンからの抗体の単離・精製は、例えば、ファージディスプレイベクターとして抗体遺伝子とコートタンパク質遺伝子の連結部にアンバー終止コドンが導入されたベクターを用いる場合には、該ファージをアンバー変異を持たない大腸菌(例:HB2151株)に感染させると、可溶性抗体分子が産生されペリプラズムもしくは培地中に分泌されるので、細胞壁をリゾチームなどで溶解して細胞外画分を回収し、上記と同様の精製技術を用いて行うことができる。His-tagやc-myc tagを導入しておけば、IMACや抗c-myc抗体カラムなどを用いて容易に精製することができる。また、パンニングの際に特異的プロテアーゼによる切断を利用する場合には、該プロテアーゼを作用させると抗体分子がファージ表面から分離されるので、同様の精製操作を実施することにより目的の抗体を精製することができる。
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
<ポリクローナル抗体の作製>
ポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(本発明の抗原)とキャリアー蛋白質との複合体を作り、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明の抗原に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、哺乳動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
本発明の抗体は、標的抗原を特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等の蛋白質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
本発明の方法では、健常者由来の体液(例、髄液)サンプル中の量と比較して、被験者由来の体液サンプル中でトランスフェリン−1の量が顕著に低下していた場合、その被験者はiNPH患者であると判定される。髄液中のトランスフェリン-1の量は個体差が大きいので、iNPHの確定診断には、トランスフェリン-1の絶対量ではなくトランスフェリン-1とトランスフェリン-2との比率を診断マーカーとして利用することが、より好ましい。本発明の方法では、トランスフェリン−2/トランスフェリン−1の値(本明細書中で「糖鎖インデックス」と呼ぶ)を診断指標として用いる。トランスフェリン-1の相対的低下は糖鎖インデックスの上昇として表される。
例えば、実施例2の場合、健常者の髄液サンプル中の糖鎖インデックス値は0.96 ± 0.24 (mean ± S.D.)であったのに対し、iNPH患者では2.96 ± 1.65と約3倍に上昇する。この結果から、被験者由来の糖鎖インデックス値が1.44以上(正常値の平均値+2×S.D.)の場合、当該被験者をiNPH患者と判定することができる。
判定基準として用いる、糖鎖インデックスの具体的な数値、或いは体液サンプル中のトランスフェリン-1及び/又はトランスフェリン-2の量に基づき設定され得る任意の他のパラメータの具体的な数値は、擬陰性及び擬陽性の結果を最小化するように設定することが望ましい。このような数値は、当業者により適宜設定され得る。擬陰性/擬陽性の結果を極力減らすため、必要に応じて、本発明の方法を他の検査方法と組み合わせてもよい。このような検査方法の例としては、臨床症状(痴呆、歩行障害、尿失禁など)の検討、頭部CT、頭部MRI、RI脳槽造影、MRI脳槽造影、頭蓋内圧測定、脳血流測定等が挙げられる。例えば、以上の検査方法によりiNPHが強く疑われる患者において本発明による検査を行うことなどが想定される。
糖鎖インデックスの算出には、トランスフェリン-1及び2の糖鎖部分に特異的に結合する物質としてそれぞれPVLレクチンとSSAレクチンを用いた定量の結果を使用することが好ましいが、上記で列挙した他のレクチンを用いて定量を行なってもよい。
トランスフェリン-1及び2の量の測定方法には、実施例2に記載したようなレクチンを用いる方法、抗トランスフェリン抗体を用いたウェスタンブロッティングを実施する方法などが挙げられるがこれらに限定されない。iNPHの診断基準となる糖鎖インデックスの値は、トランスフェリン-1及び2の測定に使用する結合物質の種類、測定方法等に応じて適宜設定することができる。
本発明の方法で用いる体液としては、例えば、髄液、血液、唾液、涙、鼻汁などが挙げられるがこれらに限定されず、好ましくは髄液である。髄液以外の体液を用いた場合も、上述した髄液の場合と同様の方法によってトランスフェリンの検出・定量を行なうことができる。これらの体液サンプルは、通常用いられる方法で採取すればよい。また、唾液、涙、鼻汁などは、非侵襲性の方法で採取できるため、患者への負担を軽減するためにはこれらを用いることが好ましい。
体液として髄液を用いる場合、髄液は通常の腰椎穿刺などの方法で被験者から採取することができる。採取する髄液サンプルの量は、被験者への負担が大きくならない範囲で選択することが好ましく、好ましくは2 ml以下、より好ましくは1 ml以下である。また、少なくとも200μl、好ましくは少なくとも60μlの量があれば、本発明の診断での使用に十分である。
髄液又は他のサンプルは、被験者から採取したものをそのまま用いてもよいし、必要に応じて希釈等の操作をしてもよい。希釈を行なう場合、例えば、緩衝液等により20倍に希釈して用いる。
本発明はまた、トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質及びトランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質からなる群より選択される1以上の物質を含む、特発性正常圧水頭症の診断用キットを提供する。このキットは、トランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質をさらに含み得る。また、このキットは、トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、トランスフェリン-1の糖鎖部分に特異的に結合する物質、及びトランスフェリン-2の糖鎖部分に特異的に結合する物質を含むものであり得る。各結合物質は上述の通りである。
また、このキットは、容器(上述の支持体等)、各反応に必要な各種試薬や緩衝液等、検査プロトコールを記載した指示書等をさらに含んでいてもよい。
このキットにおいて、トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質が、支持体上に予め固相化されていてもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1
教科書的には髄液中の糖タンパク質は、血清タンパク質が漏れ込んだものである、と記載されている。しかし、本発明者らは、中枢神経系に固有の糖鎖を持つ糖タンパク質が存在するとの仮定に基づいて、髄液中と血清中とでその糖鎖部分が異なる(と推測される)糖タンパク質のスクリーニングを行った。血清中の糖タンパク質に対する特異抗体は、数十種類以上市販されている。これらの抗体の大部分は糖タンパク質のタンパク質部分に対する抗体である。糖鎖構造が異なるとSDS-PAGE上の移動度が異なることが多いので、これらの抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った。血清中の対応する糖タンパク質とは異なる移動度のバンドを示す髄液中の糖タンパク質を、髄液マーカーの候補とした。ウェスタンブロッティングの条件はごく一般的な方法である。
血清と髄液とで候補分子の移動度が異なる場合でも、この移動度の差が必ずしも糖鎖構造の差に基づくとは限らない。そこで、糖タンパク質からN-グリカナーゼによってN結合型糖鎖を外し、消化前後でRf値を調べることにより、N-グリカン消化によるRf値の変化を検討した。
各種糖タンパク質に対する抗体のうち、抗トランスフェリン抗体(Cat.No.A80-128A;BETHYL Laboratories,Inc.)を用いてウェスタンブロッティングを行なったところ、図1Aに示すように、髄液サンプルと血清サンプルとの間で異なるバンドパターンが得られた。髄液サンプルで観察された2つのバンドのうち、血清中のトランスフェリンと同じRf値を示したものをトランスフェリン-2とし、より低いRf値を示したものをトランスフェリン-1とした。このことから、トランスフェリン-1は、血清トランスフェリンやトランスフェリン-2とは異なる、特徴的な糖鎖構造を有する可能性が示唆された。トランスフェリン-1、トランスフェリン-2およびコントロールとしての血清トランスフェリンをN-グリカナーゼで処理したところ、全てのバンドの移動度が増大し、同一の移動度を示すようになった(図示せず)。このことから、トランスフェリン-1とトランスフェリン-2及び血清トランスフェリンとの移動度の違いは、それらのN-グリカンの構造の差に基づいていることが示された。
各トランスフェリンの糖鎖構造を決定し、それらを識別し得るレクチンを探索するため、髄液よりトランスフェリン−1およびトランスフェリン-2を完全精製し(図1B)、血清トランスフェリンとともにレクチンマイクロアレイにて分析した(図2)。
トランスフェリン-1及び2の精製
髄液試料は透析にて脱塩を行う。その後HiTrap Blueにてアルブミンを除去する。次に陰イオン交換クロマトグラフィー(Q Sepharose)で精製を行う。吸着のためには、20mMのトリス-塩酸(pH8.0)bufferを用いる。カラムを同様のバッファーで洗浄した後、同バッファーに1Mの塩化ナトリウムを加えたバッファーを最終バッファーとする、塩化ナトリウムの直線濃度勾配溶出を行う。後に述べるように、トランスフェリン-1はシアル酸(陰性荷電)を持たないため、塩化ナトリウム濃度勾配の初期に溶出される。トランスフェリン-2はその直後に主要ピークとして溶出される。場合によってはそれぞれのピークをQ Sepharoseの再クロマトグラフィーによって精製する。
レクチンマイクロアレイ
トランスフェリン-1と-2はSDS-PAGE上ほぼ均一になるまで精製された(図1B)。両サンプルと同時に市販の精製トランスフェリン(血清由来;apo-Transferrin human (Sigma:T4382))をコントロールとして用いた。43種類のレクチンがスライドガラス上にスポットされたレクチンマイクロアレイ上に精製トランスフェリンを加える。その後抗ヒトトランスフェリン抗体を加え、検出のためにビオチン化された2次抗体を添加する。蛍光ラベル化されたストレプトアビジンを加えてシグナルを検出する。この実験系ではエバネッセント波を検出するので、過剰な試薬を洗浄除去することなしにシグナルをリアルタイムで検出することができる。
その結果、図2に示されるように血清トランスフェリンとトランスフェリン-2とは非常に似通ったシグナルパターンを生じたが、トランスフェリン−1のシグナルパターンはそれらとは全く異なるものであった。例えば、血清トランスフェリン及びトランスフェリン-2は、SSA、SNA、TJA-IレクチンなどのSiaα2,6Galに親和性を示すものに対して極めて強いシグナルを与えた。一方、トランスフェリン−1はこれらのレクチンと殆ど反応しなかった。この結果から、トランスフェリン−1が、血清トランスフェリンやトランスフェリン-2とは異なる、極めてユニークな糖鎖構造を持つことが示唆された。なお、詳細なレクチンシグナルの分析から、トランスフェリン-1は末端糖としてGlcNAcを持つことが示唆された。
実施例2
iNPHでは髄液の代謝異常が疑われているので、髄液に特有な糖タンパク質トランスフェリン−1がiNPHの診断マーカーとして利用可能か否かを検討するため、トランスフェリン−1の変化を、iNPH患者と健常者の髄液サンプルの比較によって検討した。レクチンマイクロアレイの結果に基づき、トランスフェリン−1の糖鎖を特異的に検出するプローブとしてPVLレクチンを選択した。
ビオチン化PVLは市販されていないので、非標識PVLレクチン(和光純薬、Cat.No.165-17591)を購入し、10mM GlcNAc存在下でビオチン化を行った。10mM GlcNAcは、PVLレクチンの糖鎖結合部位がビオチン化されて不活化を受けないように用いる。PVLレクチンは、ビオチン化剤であるEz-Link NHS-Biotin(ピアス社、Cat.No.21336)と10mM sodium phosphate buffer, pH7.0, 130mM NaCl, 10%グリセロールの条件下で、室温で4時間反応させた。100mMのトリスで反応を停止したのち、10%グリセロールに対して透析し、凍結保存する。
髄液試料にSDS-PAGE用のサンプルバッファーを加え、5〜20%の濃度勾配をもったポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動する。定法に従って糖タンパク質をニトロセルロース膜に転写する。ウシ血清アルブミン/PBS(phosphate buffered saline)を用いてブロッキングの後、ビオチン化されたPVL(3.3μg/ml)を室温で一時間反応させた。メンブレンの洗浄はPBS,0.1%tween,5min×3回とした。HRP(Horseradish Peroxidase)を結合したストレプトアビジン(Thermo SCIENTIFIC,#21126,1mg/mlを1%BSA/PBS中1:2000希釈する)にて検出を行う。化学発光基質としてピアス社のスーパーシグナルを用いる。検出機はアトー社のクールセーバーAE-6955を用いる。トランスフェリンのウェスタンブロッティングには、抗ヒトトランスフェリン抗体として、例えばBETHYL Laboratories,Inc.のCat.No.A80-128AのLot No.A80-128A-5を用いる。
健常者及びiNPH患者由来の髄液サンプルを用いて、髄液中のトランスフェリン-1の量を測定した(図3B)。その結果、iNPH患者の髄液サンプル中のトランスフェリン-1の量は健常者と比較して減少する傾向にあることが示されたが、一方でヒト髄液の総タンパク量やトランスフェリン・タンパク質量には個体差が多く、トランスフェリン-1の絶対量を診断の指標に用いることは最適とは言えないことが示された。そこで、トランスフェリン-1と2の比率が診断指標として利用可能か否かを検討した。トランスフェリン-1について上記したのと同様の方法で、トランスフェリン-2のシグナルをビオチン化SSAレクチン(生化学バイオビジネス株式会社,#300442)を用いて検出した(図3A)。検出機への露光時間以外はトランスフェリン-1の検出と同一条件である。SSAシグナル/PVLシグナル(トランスフェリン-2/トランスフェリン-1)の割り算を行い、これを糖鎖インデックスと定義した。PVLシグナルが分母となっているので、PVLシグナルの値が低下すると糖鎖インデックスの値は上昇することになる。レクチンブロットによりトランスフェリン−1及び2の定量を行い糖鎖インデックスを求めたところ、疾患コントロールでは0.96 ± 0.24 (mean ±S.D.)であったのに対し、iNPH患者では2.96 ± 1.65と約3倍に上昇することが明らかとなった(図4)。
以上より、トランスフェリン-1と2の比率がiNPHの診断指標になり得ることが示された。
実施例3
図4はレクチンブロットの結果を示したが、多数検体のスクリーニングにはレクチン・抗体サンドイッチELISA法が最適である。サンドイッチELISA法は、Human Transferrin ELISA Quantitation Kit(BETHYL社)などを用いて実施することができる。0.05M carbonate buffer (pH 9.6)存在下に抗ヒトトランスフェリン抗体(BETHYL Laboratories,Inc.のCat.No.A80-128A)をプレートに吸着させる。TBS (50mM Tris,(pH 8.0) 140 mM NaCl)で洗浄後ブロッキングbuffer(TBS+10% Block Ace(No.UK-B80, 雪印乳業))にてオーバーナイトのブロッキングを行う。髄液サンプルは6M尿素で処理した後0.05% NP40/TBS 中でプレートに添加する。TBST(TBS+0.05% Tween 20)でよく洗浄した後ビオチン化したPVLを加える。TBSTで洗浄後発色基質としてTMB(カタログNo.50-7600, KPL社)を用いプレートリーダーにて定量する。
この方法を用いて、各トランスフェリンについて検量線を作成した。検量線作製に用いたGlcNAc末端糖鎖を持つトランスフェリン(トランスフェリン-1に相当)は、血清より精製されたSia α2,6ガラクトースを含むトランスフェリンをシアリダーゼ(カタログNo.24229−74,ナカライテスク社)およびガラクトシダーゼ(カタログNo.100570, 生化学工業)処理により作製した。
本実施例で使用した方法の原理を図5上に示す。左側の図は、捕捉物質として抗体(BETHYL Laboratories,Inc.のCat.No.A80-128A)(捕捉抗体)を用い、検出物質としてPVLレクチンを用いて糖鎖を検出する方法を示し、右側の図は、捕捉物質及び検出物質の両方に抗体を用いてトランスフェリン−1のコア・タンパク質を検出する方法を示している。検出物質として使用した抗体(検出抗体)は、Human Transferrin ELISA Quantitation Kit(BETHYL社)に含まれているものを用いた。図5の下のグラフは、このようにして調製したGlcNAc末端糖鎖を持つトランスフェリンを用いて作製した検量線の結果を示している。SSAレクチンを用いてトランスフェリン-2の検出も同様の方法にて行う。
これらの結果から、検出物質としてレクチン及び抗体を用いることにより、トランスフェリンが定量的に測定可能であることが示された。
トランスフェリン−1は数十μlの髄液でも測定可能な診断マーカーであることから、本発明の診断方法を用いると、潜在的には治癒可能であるにもかかわらず、従来は手術治療の恩恵にあずかれずに放置されたままとなっていた偽陰性患者や判定不能例をiNPHと診断することが可能になる。従って、本発明は、高齢化社会の進行が著しい中、患者本人の治癒のみならず介助者の負担軽減の観点からも、社会的に重要である。
図1Aは、血清とは異なり、髄液中には2種のアイソフォーム(トランスフェリン-1及び2)が存在していることを示す。図1Bは髄液中の各アイソフォームの精製結果を示す。 図2は、髄液中のトランスフェリン−1及び-2並びに血清トランスフェリンのレクチンマイクロアレイの結果を示す。 図3Aは、抗体及びレクチンを用いたトランスフェリンの検出結果を示す図である。図3Bは、健常者由来の髄液サンプル(Control)及びiNPH患者由来の髄液サンプル中のトランスフェリン-1をPVLレクチンで染色した結果を示す。 図4は、健常者由来の髄液サンプル(Control)及びiNPH患者由来の髄液サンプルにおける糖鎖インデックスを示す図である。 図5は、トランスフェリン−1の検出方法の模式図(上)と各方法によって得られた検量線(下)を示す。

Claims (21)

  1. 被験者から採取した体液中の糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つトランスフェリンの量を測定することを含み、該体液が髄液、血液、唾液、涙および鼻汁からなる群から選択されるものである、該被験者における特発性正常圧水頭症の診断のための検査方法。
  2. 前記体液中のトランスフェリン−2の量を測定すること、及び
    トランスフェリン−2/糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末
    端を持つトランスフェリンの値を算出すること、
    をさらに含む、請求項1記載の方法。
  3. トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、及び
    糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つトランスフェリンの糖鎖部分に特異的に結合する物質、
    からなる群より選択される1以上の物質を用いる、請求項1記載の方法。
  4. トランスフェリン−2の糖鎖部分に特異的に結合する物質をさらに用いる、請求項3記載の方法。
  5. トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、
    糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つトランスフェリンの糖鎖部分に特異的に結合する物質、及び
    トランスフェリン−2の糖鎖部分に特異的に結合する物質、
    を用いる、請求項3記載の方法。
  6. トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質が抗ヒトトランスフェリン抗体である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つトランスフェリンの糖鎖部分に特異的に結合する物質がレクチンである、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
  8. トランスフェリン−2の糖鎖部分に特異的に結合する物質がレクチンである、請求項4又は5に記載の方法。
  9. 糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つトランスフェリンの糖鎖部分に特異的に結合する物質がPVLレクチンである、請求項7記載の方法。
  10. トランスフェリン−2の糖鎖部分に特異的に結合する物質がSSAレクチンである、請求項8記載の方法。
  11. 前記体液が髄液である、請求項1又は2記載の方法。
  12. サンドイッチELISAを用いて測定を行なう、請求項1又は2に記載の方法。
  13. トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、及び
    糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つトランスフェリンの糖鎖部分に特異的に結合する物質、
    からなる群より選択される1以上の物質を含む、請求項3に記載の方法に使用するためのキット。
  14. トランスフェリン−2の糖鎖部分に特異的に結合する物質をさらに含む、請求項13記載のキット。
  15. トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質、
    糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つトランスフェリンの糖鎖部分に特異的に結合する物質、及び
    トランスフェリン−2の糖鎖部分に特異的に結合する物質、
    を含む、請求項13記載のキット。
  16. トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質が抗ヒトトランスフェリン抗体である、請求項13〜15のいずれか1項に記載のキット。
  17. 糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つトランスフェリンの糖鎖部分に特異的に結合する物質がレクチンである、請求項13〜15のいずれか1項に記載のキット。
  18. トランスフェリン−2の糖鎖部分に特異的に結合する物質がレクチンである、請求項13〜15のいずれか1項に記載のキット。
  19. 糖鎖としてア・シアロ又はア・ガラクト構造を持ち、GlcNAc末端を持つトランスフェリンの糖鎖部分に特異的に結合する物質がPVLレクチンである、請求項17記載のキット。
  20. トランスフェリン−2の糖鎖部分に特異的に結合する物質がSSAレクチンである、請求項18記載のキット。
  21. トランスフェリンのタンパク質部分に特異的に結合する物質が支持体上に固相化されている、請求項13記載のキット。
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