JP5655839B2 - 缶用鋼板の母材に用いる熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
製缶コストの低減策としては、素材の低コスト化が挙げられ、絞り加工を行う2ピース缶はもとより、単純な円筒成形が主体の3ピース缶であっても、使用する鋼板の薄肉化が進められている。
ただし、単に鋼板を薄肉化すると缶体強度が低下するので、DRD缶や溶接缶の缶胴部のような高強度材が用いられている箇所には単に薄肉化したのみの鋼板を用いることができず、高強度で極薄の缶用鋼板が望まれていた。
現在、極薄で硬質な缶用鋼板は、焼鈍後に2次冷延を施すDuble Reduce法(以下、DR法と称す)で製造されている。DR法で製造した鋼板は高強度かつ降伏伸びが小さいという特徴がある。ボトム加工を伴うDRD缶用途では、スレッチャーストレインの発生を防止するためにできるだけ降伏伸びが小さいことが望ましく、その点でDR法は有効である。しかし、DRD缶では耳発生が小さいことが求められるが、DR法では異方性が大きくなる傾向があるため耳が発生し易く、耳発生防止のために異方性(Δr)を小さくするという課題がある。
一方、最近市場に投入されている異形缶のような高い加工度の缶胴加工を伴う缶には、延性に乏しいDR材は加工性に劣るため適用が難しい。加えて、DR材は通常の焼鈍後調圧する鋼板に比べて、製造工程も増えるためコストが高い。
特許文献2でも、特許文献1と同様に、塗装後焼付け処理によって高強度化している。
特許文献3では、Nb炭化物による析出強化やPによる固溶強化を複合的に組み合わせることで高い強度―延性バランスを備えた鋼板を提案している。
特許文献4では、降伏伸びを1.0%以下にすることでストレッチャーストレインの発生を防止し、かつT6相当の強度レベルの鋼を得る製造方法が提案されている。
特許文献5では、ストレッチャ−ストレイン発生がなく、耳発生率の低い極薄鋼板が提案されている。
特許文献6は、変態強化を利用して高強度鋼板を得る発明であり、低炭素鋼をα+γ域で熱間圧延し、高速で冷却し、焼鈍の加熱速度を規定することで、引張強度600MPa、全伸び30%以上を有する鋼板が提案されている。
上記特性を鑑みた場合、前述の従来技術では、強度、延性、異方性の中のいずれかを満たす鋼板を製造することは可能であるが、全てを満足する鋼板は製造できない。
例えば、特許文献1に記載のC、Nを多量に添加して焼付け硬化性により強度を上昇させる方法は、強度上昇には有効な方法ではある。しかしながら、特許文献1で得られた組織は異方性を劣化させる未再結晶組織を有するため、特許文献1では本発明で目標とする異方性は得られない。
特許文献2では、焼付け処理により時効硬化させることを挙げているが、実施例に記載されている鋼の降伏強度は430MPa程度までであり、本発明で目標とする500MPa以上は得られない。
特許文献3では析出強化、固溶強化による複合強化による高強度化することを挙げているが、一般に析出強化を利用した鋼は異方性に劣り、特に特許文献3で提案されている熱延条件では、本発明で目標とする異方性は得られない。
特許文献4では、降伏伸びがほぼ0になるT6レベルの鋼を記載しているものの、10%以上の圧延率で調質圧延を行う必要があり、実質的にDR材と同様な製造方法であり、高コストである。また、T6を超える鋼を製造する記述はみられない。また、明細書中には延性に関して記載されていないが、10%以上の圧下率で圧延を行うと延性には劣ることが予想される。
特許文献5では、成分、熱延条件などの製造条件を制御することで、耳発生を抑制する鋼板の製造方法が示されているが、実施例に記載されている鋼の降伏強度は380MPa程度までであり、本発明が目標とする500MPa以上には到達していない。
特許文献6で提案されている高速冷却による高強度化は、操業上コスト高になる。
固溶強化、析出強化、結晶粒微細化強化、時効硬化の複合的な組み合わせに着目し、固溶強化元素を用いて固溶強化し、Nb、P、Mnによる固溶強化、析出強化および結晶粒微細化強化を図ることで複合強化し、高伸びを維持しつつ高強度化でき、さらに、鋼中の固溶C,固溶Nを利用することで、塗装焼付け後に時効硬化による強度増加を図る。そして、組織を実質的なフェライト単相とし、フェライト平均結晶粒径を規定することで高い強度−延性バランスを保ち、500MPa以上の降伏強度、10%以上の全伸びが得られる。特に、本特許では析出強化を利用する際に課題となる異方性の劣化に着目し、熱延条件を適切に制御することで異方性を改善し、Δrを−0.50〜0とすることが可能となる。
本発明では、上記知見に基づき成分、製造方法をトータルで管理することで、高強度高延性缶用鋼板およびその製造方法を完成するに至った。
[1]質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.005〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.005〜0.2%、Al:0.10%以下、N: 0.012%以下、Nb:0.005〜0.10%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成と、実質的にフェライト単相組織を有し、フェライト平均結晶粒径が7μm以下であり、塗装焼付け処理後の、降伏強度が500MPa以上、降伏比0.9以上、全伸びが10%以上、Δrが−0.50〜0である缶用鋼板。
[2]前記[1]に記載の缶用鋼板を製造するに際し、質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.005〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.005〜0.2%、Al:0.10%以下、N:0.012%以下、Nb:0.005〜0.10%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、巻取りまで40℃/s以下の平均冷却速度で冷却し、620℃以上の巻取り温度で巻取り、酸洗し、次いで、80%以上の圧下率で冷間圧延を行った後に、650〜750℃の均熱温度、40s以下の均熱時間の条件で連続焼鈍を行い、1.5%以下の調圧率で調質圧延を行うことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
[3]質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.005〜0.5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.005〜0.2%、Al:0.10%以下、N: 0.012%以下、Nb:0.005〜0.10%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成と、実質的にフェライト単相組織を有し、フェライト平均結晶粒径が6μm以上である、缶用鋼板母材に用いる熱延鋼板。
[4]前記[3]に記載の熱延鋼板を製造するに際し、質量%でC:0.01〜0.12%、Si:0.005〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.005〜0.2%、Al:0.10%以下、N:0.012%以下、Nb:0.005〜0.10%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、巻取りまで40℃/s以下の平均冷却速度で冷却し、620℃以上の巻取り温度で巻取ることを特徴とする、缶用鋼板母材に用いる熱延鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。また、本発明において、塗装焼付け処理とは、塗装焼付け相当の210℃、20分の熱処理を施す処理のことである。
詳細には、本発明は、固溶強化元素を用いて固溶強化し、さらに、Nb、P、Mnによる固溶強化、析出強化および細粒化強化を行うことにより、複合強化し高伸びを維持しつつ強度を上昇させたので、焼鈍工程後の調質圧延は圧下率1.5%以下で、確実に降伏強度が500MPa以上の鋼板が製造できる。
その結果、原板(鋼板)の高強度化により、溶接缶を薄ゲージ化しても高い缶体強度を確保することが可能となる。また、ボトム部の耐圧強度を必要とする陽圧缶用途に関しても、現行ゲージのまま高い耐圧強度を得ることが可能となる。さらに、延性を高くすることにより、拡缶加工のような高い缶胴加工を行うことも可能となる。
また、絞り缶用途では缶のトリム代を小さくして歩留まりを上げるために耳発生を防止する必要がある。本発明では、仕上げ温度を870℃以上、巻取りまでの冷却速度を40℃/s以下、巻取り温度を620℃以上にすることでΔrを−0.50〜0の範囲に抑え、耳発生を防止することができる。
本発明の缶用鋼板は、降伏強度500MPa以上、降伏比0.9以上、全伸び10%以上、Δr−0.50〜0の高強度高延性缶用鋼板である。通常、DR法を用いて高強度化した鋼板では、数%しか伸びを示さない。これに対して、本発明は、Nb、P、Mnにより固溶強化、析出強化、微細化強化した鋼板を連続焼鈍により製造することで、高伸びを維持しつつ高強度化することを特徴とする。また、固溶C、N量を鋼中に残存することで、塗装焼付け処理などの製缶工程で必須の熱処理により30MPa以上の時効硬化を生じさせ、YPを増加させることで、絞り缶での底部の耐圧強度および溶接缶のデント強度を上昇することを可能にした。なお、時効硬化させる熱処理として、塗装焼付け処理でなく、ラミネート処理を行ってもよい。さらには、熱延時の仕上げ温度を870℃以上、その後の冷却速度を40℃/s以下に、巻取り温度を620℃以上にすることでΔrを−0.50〜0の範囲の値を得る。これらは、本発明の特徴であり、最も重要な要件である。このように、固溶強化元素、析出強化元素、微細化強化元素を中心とする成分、組織、そして、製造条件を適正化することで、降伏強度が500MPa以上、降伏比が0.9以上で、全伸びが10%以上、かつ、Δrが−0.50〜0を有する缶用鋼板が得られることになる。
C:0.01〜0.12%
本発明の缶用鋼板においては、連続焼鈍、調質圧延後に所定以上の強度(降伏強度500MPa以上)を達成すると同時に10%以上の全伸びを有することが必須であり、そのためにはフェライト平均結晶粒径が7μm以下になることが必要である。これらの特性を満たす鋼板を製造するに際しては、C添加量が重要である。特に鋼板の強度とフェライト平均結晶粒径には、炭化物の量や密度が大きく関わってくるので、析出に利用される炭素量を確保する必要がある。さらに、粒界に炭化物を析出させることで、Pの粒界偏析が比較的抑制され、Pの固溶強化を最大限に利用できる効果もある。以上より、C添加量の下限は0.01%に限定する。一方、C添加量が0.12%を超えると、鋼の溶製中冷却過程の中で亜包晶割れを起こすため、上限は0.12%に限定する。望ましくは0.04%以上0.10%以下である。
Siは固溶強化により鋼を高強度化させる元素であるが、多量に添加すると耐食性が著しく損なわれる。よって、Si添加量の上限は0.5%に限定する。一方、高い耐食性が要求される用途ではSiを極力低くする必要があるため、下限は0.005%に限定する。
Mnは固溶強化により鋼の強度を増加させ、結晶粒径も小さくする。結晶粒径を小さくする効果が顕著に生じてくるのはMn添加量が0.3%以上であり、目標強度を確保するには少なくとも0.3%のMn添加量が必要とされる。よって、Mn添加量の下限は0.3%に限定する。一方、Mnを多量に含有すると耐食性が劣る。よって、上限は1.5%に限定する。
Pは固溶強化能が大きい元素であるが、多量に添加すると耐食性が著しく損なわれる。よって、上限は0.2%に限定する。一方、高い耐食性が要求される用途では極力P添加量を低くする必要があるため、下限は0.005%に限定する。
Al含有量が増加すると、再結晶温度の上昇がもたらされるので、焼鈍温度を高くする必要がある。本発明においては、強度を増加させるために添加した他の元素で再結晶温度の上昇がもたらされ焼鈍温度が高くなるので、Alによる再結晶温度の上昇は極力回避することが得策である。よって、Al含有量の上限は0.10%に限定する。
Nは時効硬化を増加させるために必要な元素である。時効硬化の効果を発揮させるためには、0.005%以上添加するのが望ましい。一方、多量に添加すると、熱間延性が劣化し、連続鋳造時に矯正帯でスラブ割れが生じやすくなる。よって、N含有量の上限は0.012%に限定する。
Nbは、本発明においては重要な添加元素である。Nbは炭化物生成能の高い元素であり、微細な炭化物を析出させて強度を上昇させる。また、細粒化することで強度を上昇させる。粒径は強度だけでなく、絞り加工時の表面性状にも影響する。最終製品のフェライト平均結晶粒径が7μmを超えると、絞り加工後、一部で肌荒れ現象が発生し、表面外観の美麗さが失われる。Nb添加量によって強度や表面性状を調整することができ、0.005%を超えるときにこの効果が生じる。よって、下限は0.005%に限定する。一方、Nbは再結晶温度の上昇をもたらすので、0.10%超えで含有させると、本発明で記載している650〜750℃の均熱温度、40s以下の均熱時間で行う連続焼鈍では未再結晶が一部残存するなど、焼鈍し難くなる。焼鈍温度を高くすることで、再結晶組織は得られるが、鋼中の元素が表層濃化するため、表面性状が劣る。よって、Nb添加量の上限は0.10%に限定する。
フェライト単相組織、フェライト平均結晶粒径:7μm以下
まず、本発明では実質的にフェライト単相組織とする。セメンタイト等を1%程度含む場合でも、本発明の作用効果を奏する限り、実質的にフェライト単相組織であると判断する。
また、フェライト平均結晶粒径が7μmを超えると、製缶後の表面外観の美麗さが失われる。これは肌荒れ現象のような表面の粗度の極端な変化に対応するものと考えられる。特にこの現象は、2ピース缶の缶胴部、拡缶加工を行う3ピース缶の缶胴部において確認される。以上より、フェライト平均結晶粒径は7μm以下とする。
なお、フェライト結晶粒径は、JIS G0551で規定されている切断法を用いて測定する。
また、フェライト平均結晶粒径は、成分、冷間圧延率、焼鈍温度により目標値に制御する。
具体的には、C:0.01〜0.12%、Si:0.005〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.005〜0.2%、Al:0.10%以下、N:0.012%以下、Nb:0.005〜0.10%を添加して、870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、巻取りまで40℃/s以下の速度で冷却して、620℃以上の温度範囲でコイルに巻き取ったのち、酸洗を経て80%以上の冷間圧延を行った後に、均熱温度が650〜750℃、均熱時間が40s以下の条件で連続焼鈍を行うことで、7μm以下の結晶粒径が得られる。
降伏強度は溶接缶のデント強度を確保する上での重要な因子となる。一般に、デント強度は板厚と降伏強度の関係式で表される。従来DR材が用いられていた用途に本発明を適用する場合、DR材の板厚0.15〜0.17mmでデント強度を確保するため、降伏強度を500MPa以上とする。
引張強度を高くすると、熱延や冷延時の変形抵抗が高くなり圧延の操業性が低下する。一方、缶体強度の観点から降伏強度を500MPa以上に確保する必要がある。つまり、降伏強度を高く引張強度を小さくする必要があり、操業に支障なく上記特性を得るための条件として降伏比を0.9以上とした。
なお、YP、TSは成分、冷間圧延率、焼鈍温度により目標値に制御する。
具体的には、C:0.01〜0.12%、Si:0.005〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.005〜0.2%、Al:0.10%以下、N:0.012%以下、Nb:0.005〜0.10%を添加して、870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、巻取りまで40℃/s以下の速度で冷却して、620℃以上の温度範囲でコイルに巻き取ったのち、酸洗を経て80%以上の冷間圧延を行った後に、均熱温度が650〜750℃、均熱時間が40s以下の条件で連続焼鈍を行うことで、目標値に制御する。
全伸びが10%を下回ると、例えば、拡缶加工のような高い缶胴加工を伴う缶への適用が困難になる。よって、全伸びは10%以上とする。
本発明では、異方性の指標として、下記式にて表されるΔrを用いることとする。
Δr=(r0+r90−2×r45)/4
r0は圧延方向に引張試験を行った時、r45は圧延方向と45°方向に引張試験を行った時、r90は圧延方向と90°方向に引張試験を行った時のr値を示す。
Δrが−0.50未満の鋼板では、例えば、DRD缶に加工した際、耳発生が大きいためトリム代が大きくなり歩留まりが低下する。歩留まりの観点から耳発生量を抑制するために、Δrは−0.50〜0の範囲にする必要がある。また、|Δr|が大きいとDRD缶、溶接缶のフランジ部で周方向の板厚分布に起因してフランジしわが発生するため、Δr(−0.45〜0)の鋼を用いることが望ましい。さらに、缶の真円度を必要とする場合、周方向の板厚分布を極力抑制する必要があるため、Δrは−0.30〜0とすることが望ましい。
なお、Δrは熱間圧延時の仕上げ温度、仕上げ後の冷却速度、巻取り温度により目標値に制御する。具体的には、Δrは870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、巻取りまで40℃/s以下の速度で冷却して、620℃以上の温度範囲でコイルに巻き取ることで目標値に制御する。
本発明では熱延鋼板での組織は、実質的にフェライト単相組織とする。セメンタイト等を1%程度含む場合でも、本発明の作用効果を奏する限り、実質的にフェライト単相組織であると判断する。
連続焼鈍、調圧後の異方性は、熱延鋼板段階でのフェライト粒径の影響を大きく受ける。例えば、図1は、実施例に示す鋼1にて冷間圧延圧下率:90%、均熱温度:710℃、均熱時間:30sの連続焼鈍を行って得られた冷延鋼板の異方性と熱延鋼板段階(熱延材)でのフェライト平均結晶粒径の関係を示している。図1によると、熱延材のフェライト平均結晶粒径が6μm未満では、Δrは−0.50未満となり、所望の異方性の値を得ることができない。従って、熱延材でのフェライト平均結晶粒径は6μm以上にするのが好ましい。Δrが−0.45〜0の鋼を用いようとする場合は、熱延材でのフェライト平均結晶粒径は7μm以上にすることがより好ましい。
なお、結晶粒径は成分、熱延時のFT、CTまでの冷却速度、CTにより目標値に制御する。
なお、板厚、時効指数は請求項で特に限定していないが、本特許を実施する上で望ましい条件は以下に示す範囲である。
缶用鋼板の好適板厚:0.2mm以下、熱延鋼板の好適板厚:2mm以下
本発明は主には絞り缶、溶接缶のゲージダウンへの適用を目的としているため、板厚は主に0.2mm以下で利用される。冷間圧延の操業性を損なわずに、本発明で提案されている強度レベルの鋼を0.2mm以下の板厚にするには、90%以下の圧延率で圧延することが望ましいため、熱延材の板厚は2mm以下にすることが好ましい。
塗装焼付け後やラミネート処理後に降伏強度500MPaを確実に得るため、時効指数を30MPa以上とするのが望ましい。なお、本発明において、時効指数とは、8%予歪み付与後、100℃−60分の加熱処理をしたときの時効硬化量を示す。
上述した化学成分に調整された溶鋼を、転炉等を用いた通常公知の溶製方法により溶製し、次に連続鋳造法等の通常用いられる鋳造方法で圧延素材とする。
次に、上記により得られた圧延素材を用いて熱間圧延により、熱延板とする。圧延開始時には、圧延素材が、1250℃以上になるのが好ましい。仕上げ温度は870℃以上とする。また、巻取りまで40℃/s以下の速度で冷却し、620℃以上の巻取り温度で巻取る。なお、異方性の観点から、ここで得られた熱延材のフェライト平均結晶粒径は6μm以上にする。次いで、酸洗し、80%以上の圧下率で冷間圧延を行った後に、650〜750℃の均熱温度、40s以下の均熱時間の条件で連続焼鈍を行い、1.5%以下の調圧率で調質圧延を行う。
熱間圧延における仕上げ圧延温度は、異方性を制御する上で重要な項目になる。Nb添加鋼でΔrを−0.50以上に確保するためには、熱延材のフェライト平均結晶粒径を6μm以上にすることと集合組織を制御する必要がある。これを得るため、熱延仕上げ温度は870℃以上とする。
異方性は熱延材のフェライト平均結晶粒径の影響を大きく受ける。前述したように、Δrを−0.50〜0の範囲内にするには、熱延材のフェライト平均結晶粒径は6μm以上にする必要がある。熱延材のフェライト平均結晶粒径を6μm以上にするためには、熱延後の冷却速度を小さくする必要があり、その条件として、仕上げ後の平均冷却速度を40℃/s以下とする。
Δrが−0.45〜0の鋼を幅方向全体で確実に得るためには、熱延材のフェライト平均結晶粒径を7μm以上にすることが好ましく、そのためには平均冷却速度を30℃/s以下にする必要がある。
また、Δrが−0.30〜0の鋼を幅方向全体で確実に得るためには、熱延材のフェライト平均結晶粒径を8μm以上にすることが好ましく、そのためには平均冷却速度は20℃/s以下にする必要がある。
熱延材のフェライト平均結晶粒径を6μm以上にするためには、巻取り温度を高くする必要があり、その条件として巻取り温度を620℃以上とする。また、Δrが−0.30〜0の鋼を得るためには、巻取り温度は700℃以上にする必要がある。
冷間圧延における圧下率は、本発明において重要な条件の一つである。冷間圧延での圧下率が80%未満では、降伏強度が500MPa以上の鋼板を製造することは困難である。さらに、DR材並みの板厚(0.17mm程度)を得るためには、80%未満の圧下率では、少なくとも熱延板の板厚を1mm以下にする必要があり、操業上困難である。よって、圧下率は80%以上とする。
焼鈍は連続焼鈍を用いる。均熱温度は、良好な加工性を確保するため、鋼板の再結晶温度以上とする必要があり、かつ、組織をより均一にするためには、650℃以上の温度で均熱する必要がある。一方で、750℃超えで連続焼鈍するためには、鋼板の破断を防止するために極力速度を落とす必要があり、生産性が低下する。生産性を低下させない条件として750℃以下とする。均熱時間についても40s以上になるような速度では生産性を確保できないため、均熱時間は40s以下とする。
調圧率が高くなるとDR材と同様に、加工時に導入される歪が多くなるため延性が低下する。本発明では極薄材で全伸び10%以上を確保する必要があるため、調圧率は1.5%以下とする。
Δr=(r0+r90−2r45)/4
なお、r0は圧延方向に引張試験を行った時、r45は圧延方向と45°方向に引張試験を行った時、r90は圧延方向と90°方向に引張試験を行った時のr値を示す。
結晶組織は、サンプルを研磨して、ナイタルで結晶粒界を腐食させて、光学顕微鏡で観察した。平均結晶粒径は、上記のようにして観察した結晶組織について、JIS G0551の切断法を用いて測定した。
得られた結果を表2に示す。
一方、比較例(No7)は異方性が、比較例(No8)は強度が不足している。
なお、各試験及び調査方法は実施例1と同様の方法である。
得られた結果を表5に示す。
一方、比較例(No13〜15)では、強度、延性については目標値に到達するものの、仕上げ圧延温度が低い、巻取り温度が低い、もしくは仕上げ圧延後の冷却速度が大きいため、異方性の大きい鋼板となっている。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.02〜0.12%、Si:0.005〜0.5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.005〜0.2%、Al:0.10%以下、N: 0.012%以下、Nb:0.005〜0.10%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成と、実質的にフェライト単相組織を有し、フェライト平均結晶粒径が6μm以上である、塗装焼付け処理後の、降伏強度が500MPa以上、降伏比0.9以上、全伸びが10%以上、Δrが−0.50〜0である缶用鋼板母材に用いる熱延鋼板。
- 請求項1に記載の熱延鋼板を製造するに際し、
質量%でC:0.02〜0.12%、Si:0.005〜0. 5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.005〜0.2%、Al:0.10%以下、N:0.012%以下、Nb:0.005〜0.10%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、
870℃以上の仕上げ温度で熱間圧延し、
巻取りまで40℃/s以下の平均冷却速度で冷却し、
620℃以上の巻取り温度で巻取ることを特徴とする、塗装焼付け処理後の、降伏強度が500MPa以上、降伏比0.9以上、全伸びが10%以上、Δrが−0.50〜0である缶用鋼板母材に用いる熱延鋼板の製造方法。
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