以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。また、カードエッジコネクタのハウジングに設けられ、回路基板が挿入・配置される挿入孔の深さ方向を単に深さ方向、回路基板の厚さ方向に対応するハウジングの挿入孔の高さ方向を、単に高さ方向、深さ方向及び高さ方向の両方向に垂直な方向を横方向と示す。
(第1実施形態)
図1に示すように、電子装置10は、要部として、カードエッジコネクタ11と、回路基板12と、及びケース13を備える。
カードエッジコネクタ11は、ハーネス14(ハーネス14を介した電子装置10外の機器)と回路基板12とを電気的に接続する中継部材であり、要部として、電気絶縁材料からなるハウジング20と、ハウジング20に保持された端子30と、ハウジング20の挿入孔21内に、深さ方向に変位可能に設けられたスライダ40と、を有する。
ハウジング20は、例えば樹脂を射出成形してなり、回路基板12が挿入配置される挿入孔21を有する。挿入孔21は、図1〜図3に示すように、ハウジング20の先端面20aに開口しつつ、回路基板12及びスライダ40を配置可能な深さを有して設けられている。
本実施形態では、挿入孔21が、深さ方向においてハウジング20を貫通する貫通孔となっている。そして、ハウジング20を貫通する挿入孔21の、先端面20aと反対側の端部が、例えばゴムからなる防水部材22によって閉塞されている。この防水部材22は、例えば樹脂からなり、挿入孔21の一端を塞ぐようにハウジング20に組み付けられたカバー23とハウジング20との間で挟まれている。このように、挿入孔21のうち、防水部材22よりも深さ方向において先端面20a側の部分が、スライダ40と回路基板12の収納空間24をなす。
収納空間24の高さ方向及び横方向の大きさは、スライダ40の変位領域においてスライダ40が変位可能な大きさを有し、スライダ40が配置されず、回路基板12が配置される領域において回路基板12を配置できる大きさを有すれば良い。例えば、深さ方向全域にわたり、スライダ40に合わせた大きさ(後述する図6参照)としても良いし、図1及び図3に示すように、スライダ40が配置されず、回路基板12が配置される領域の高さを、スライダ40の変位領域の高さより低くしても良い。スライダ40が配置されず、回路基板12が配置される領域の高さを低くすると、回路基板12を挿入孔21に挿入する際の高さ方向の位置ばらつきを低減することができる。
また、ハウジング20は、ハーネス14を収納する収納空間25を有し、この収納空間25にハーネス14が挿入されると、端子30とハーネス14が電気的に接続される。また、ハウジング20の外周面には、例えばシリコンゴムからなるシール部材26が外周面に沿って環状に設けられている。このため、ハウジング20がケース13に嵌め込まれると、シール部材26により、ケース13の内面とハウジング20の外面との隙間から、ケース13の内部空間に水分等が侵入するのを防ぐことができる。また、図示しないが、ハウジング20の外周面には、ケース13との嵌合部が設けられている。
なお、ハウジング20としては、複数のハウジング構成部材を組み合わせることで、1つのハウジング20をなす構成を採用することもできる。
端子30は、ハウジング20に保持され、電極60とハーネス14とを電気的に接続する中継部材であり、導電性が良好な金属材料を用いて形成される。例えばりん青銅をニッケルメッキで被覆し、さらに金メッキで被覆してなるものを採用することができる。
また、端子30は、その一部がハウジング20の図示しない溝に圧入されており、回路基板12の端部に設けられた電極60(ランド)との接点部31を含む一部分が、上記したハウジング保持部分(高さ方向における挿入孔壁面21a)から挿入孔21内に突出している。挿入孔21内に突出する突出部32は、ハウジング保持部分を支点としてばね変形可能となっており、ばね変形状態で接点部31が電極60と接触するように設けられている。また、突出部32は、挿入孔21内を、ハウジング保持部分から先端面20aとは反対の深さ方向奥側に向けて延びている。複数の端子30(複数の突出部32)は、横方向に沿って配列されている。
突出部32のうち、接点部31は、該接点部31を含む端子30が保持された、高さ方向の挿入孔壁面21aに対して、最も遠い部位となっている。本実施形態では、突出部32の、突出先端から接点部31までの部分が、突出先端に近いほど、高さ方向において接点部31が接触する電極60が設けられた回路基板12の電極形成面(以下、単に回路基板12の電極形成面と示す)から離れるようなテーパ形状をなしている。一方、突出部32の、接点部31からハウジング保持部分までの部分が、ハウジング保持部分(対応する挿入孔壁面21a)に近いほど、回路基板12の電極形成面から離れるようなテーパ形状をなしている。
そして、端子30の接点部31は、該接点部31を含む突出部32が弾性変形した状態で電極60と接触する。したがって、回路基板12の電極60との間で安定した接触圧を確保することができる。
特に本実施形態では、高さ方向における相対する挿入孔壁面21aからそれぞれ突出部32が突出しており、回路基板12の両面側に位置する突出部32のばね変形(主として弾性変形)による反力(付勢力)により、回路基板12が固定されている。したがって、両面側に位置する突出部32により、高さ方向における挿入孔21の中心に回路基板12を保持することができる。
また、突出部32は、接点部31よりも深さ方向奥側に、スライダ40に接触して支持される接触部33を有する。この接触部33は、挿入孔21に回路基板12が挿入され、回路基板12に押されたスライダ40が深さ方向奥側に変位し、これにより接触部33がスライダ40から外れるまで、スライダ40により支持される。したがって、回路基板12を挿入する前の状態で、接触部33はスライダ40により支持され、回路基板12の挿入が完了した状態で、接触部33、すなわち端子30は、スライダ40から完全に外れて、スライダ40と非接触状態となる。
この接触部33がスライダ40により支持されると、突出部32は、該突出部32を有する端子30が保持された挿入孔壁面21a側に押し拡げられる。これにより、接点部31が、回路基板12の電極形成面と離れた位置となる。本実施形態では、突出部32のうち、突出先端から所定範囲の部分が、接触部33となっている。すなわち、接触部33のスライダ接触面が、深さ方向において先端面20aに近いほど電極形成面に近づくテーパ形状を有する。
なお、本実施形態では、端子30として、電力伝送用のパワー端子34と、パワー端子34よりも断面積の小さい、信号伝送用のシグナル端子35を有する。また、端子30のうち、ハーネス14との接点部は、ハウジング20における先端面20aと反対の面に開口する収納空間25に露出している。したがって、ハウジング20の収納空間25にハーネス14が挿入された状態で、端子30を介して、回路基板12とハーネス14とが電気的に接続される。なお、ハーネス14と一体化した構造の端子30を採用することもできる。
スライダ40は、回路基板12を挿入孔21内に挿入する際に、端子30の接点部31が電極60に接触する前から、接点部31が回路基板12に接触するのを防ぐための部材である。構成材料としては特に限定されるものではないが、端子30(接触部33)と接触するため、接触部分が樹脂からなることが好ましい。本実施形態では、金型を用いた樹脂成形体として構成されている。
このスライダ40は、挿入孔21内において、各端子30の接点部31に対して深さ方向奥側に配置される。そして、挿入孔21内において、外力を受けて深さ方向に変位可能に設けられる。具体的には、挿入孔21への回路基板12の挿入にともない回路基板12に押されて、回路基板12が挿入される前の初期位置から、接点部31が電極60に接触して回路基板12の挿入が完了する基板挿入完了位置まで、深さ方向奥側に変位するように設けられる。
初期位置において、スライダ40は、端子30の突出部32を押し拡げた状態で接触部33を支持する。これにより、接点部31が、回路基板12の対応する電極形成面から離れた位置(電極形成面に接触しない位置)で保持される。換言すれば、突出部32のばね変形の反力により、スライダ40は初期位置に保持される。
また、基板挿入完了位置において、スライダ40は、端子30の接触部33を支持できない位置まで押し込まれる。このため、スライダ40により支持されない端子30の接点部31が、電極60に接触する接点部31を介してばね変形による反力を回路基板12に与える。
本実施形態では、スライダ40が、横方向に沿って配列された全ての端子30の接触部33を支持すべく、図4に示すように横方向に長い形状を有している。また、先端面20a側の端部から所定の部分が、接触部33を支持する支持部41となっている。そして、支持部41における接触部33の支持面41aが、深さ方向において先端面20aに近いほど電極形成面に近づくテーパ形状を有している。また、支持面41aの先端面20a側端部が、スライダ40に支持されない状態の端子30の突出部先端よりも、対応する電極形成面に近い位置にあり、且つ、支持面41aの深さ方向奥側の端部が、スライダ40に支持されない状態の端子30の突出部先端よりも、対応する電極形成面から離れた位置となっている。換言すれば、スライダ40の支持部41の高さ方向に沿う長さ(厚さ)が、先端面20a側の端部で回路基板12よりも厚く、対をなす端子30の突出部先端間の距離よりも短くなっている。また、深さ方向奥側の端部で、対をなす端子30の突出部先端間の距離よりも長くなっている。
なお、上記したスライダ40は、以下に示す方法で、挿入孔21内に配置することができる。端子30が圧入固定されたハウジング20に対し、先端面20aと反対の端部側から挿入孔21内にスライダ40を挿入する。このとき、スライダ40を深さ方向において先端面20a側に変位させると、接触部33内に支持部41の先端が潜り込む。そして、さらにスライダ40を先端面20a側に変位させることで、支持部41が接触部33に接触して突出部32を押し拡げつつ、スライダ40を初期位置に配置することができる。また、スライダ40は、端子30の突出部32のばね変形による反力で、初期位置に保持される。
このように、挿入孔21を貫通孔とすると、先端面20aとは反対側からスライダ40を挿入孔21に挿入することで、ハウジング保持部分から挿入孔21内に突出しつつ深さ方向奥側に向けて延びる突出部32の接触部33を、スライダ40にて支持する構造を容易に形成することができる。また、端子30の接点部31よりも深さ方向奥側からスライダ40を挿入配置するので、接点部31の損傷を抑制することもできる。なお、スライダ40を挿入配置した後で、挿入孔21における先端面20aと反対側の端部が蓋部材(防水部材22及びカバー23)により閉塞されるので、これにより端子30やスライダ40を保護することができる。
回路基板12は、その両面に電極60を有する。このため、片面電極構造の回路基板12に較べて、カードエッジコネクタ11による電気的な接続経路を効率的に増やすことができる。なお、回路基板12の一面側に位置する端子30と、回路基板12の他方の面側に位置し、ばね変形による反力を付与しない支持部とで回路基板12を固定する構成を採用することもできる。
また、回路基板12の電極60が、深さ方向に複数列をなし、且つ、列ごとに横方向に位置をずらして設けられている。具体的には、図5(a),(b)に示すように深さ方向に2列の電極60a,60bが、横方向に位置をずらして所謂千鳥状の配置となっている。そして、複数の端子30として、複数列の電極60(60a,60b)それぞれに対応して、突出部32の長さが互いに異なる端子30を、電極60(60a,60b)の列数と同じ種類有し、スライダ40の初期位置において、各端子30の接触部33が、深さ方向における同一位置でスライダ40に支持される構成となっている。このように端子30における突出部32の長さで調整すると、スライダ40の形状を簡素化することができる。なお、図5(a),(b)では、便宜上、端子30のうち、突出部32のみを示している。
ケース13は袋状をなし、その内部空間に、回路基板12とともにハウジング20を深さ方向においてスライダ40の変位可能範囲よりも深い位置まで収容する。このケース13は、1つの部材のみからなっても良いし、複数の部材を組み合わせて構成することもできる。
次に、上記したカードエッジコネクタ11に対する回路基板12の挿入動作について説明する。
図6(a)に示すように、スライダ40が回路基板12に押されて深さ方向奥側に変位する前の初期位置の状態では、スライダ40により各端子30の接触部33が支持されて突出部32は押し拡げられ、接点部31が回路基板12の対応する電極形成面から離れた位置となる。これにより、少なくとも回路基板12が接点部31を通過してスライダ40に接触するまでは、接点部31が回路基板12に接触するのを抑制することができる。また、回路基板12が接触するまでは、突出部32のばね変形の反力により、スライダ40が初期位置に保持される。
図6(a)に示す状態から、回路基板12を深さ方向奥側に挿入すると、スライダ40の支持部41側端部に回路基板12が到達する。そして、回路基板12をさらに挿入すると、回路基板12によりスライダ40が押されて、回路基板12とともにスライダ40が変位する。このとき、接触部33は、テーパ状の支持面41aに沿い、スライダ40に変位にともなって支持部41における先端面20a側の端部方向にずれる。すなわち、接触部33が少しずつ支持部41から外れる。このため、端子30の接点部31は、高さ方向において回路基板12の対応する電極形成面に徐々に近づく。
本実施形態では、図6(b)に示すように、回路基板12の電極60における挿入先端側の端部が端子30の接点部31に到達した状態で、端子30の接点部31が回路基板12の対応する電極形成面(すなわち、電極60)に接触する。
さらに、回路基板12を挿入し、回路基板12によりスライダ40を押してやると、図6(c)に示すように、スライダ40から端子30の接触部33が完全に外れる。すなわち、非接触状態となる。そして、回路基板12の電極60のほぼ中心に、端子30の接点部31が位置する状態で、基板挿入完了となる。この時点で、スライダ40は、上記した基板挿入完了位置となる。
このように、本実施形態では、期位置の状態でスライダ40により各端子30の接触部33が支持されて突出部32が押し拡げられ、接点部31が回路基板12の対応する電極形成面から離れた位置に保持される。このため、少なくとも回路基板12が接点部31を通過してスライダ40に接触するまでは、接点部31が回路基板12に接触するのを抑制することができる。そして、端子表面のメッキ剥がれや端子の変形、剥がれたメッキ屑などによる短絡を抑制して、電気的な接続信頼性が向上することができる。
また、スライダ40が基板挿入完了位置まで変位した状態で、スライダ40から端子30の接触部33が完全に外れる。このようにスライダ40から端子30が外れた状態では、ばね変形による荷重がスライダ40に掛からないため、端子30のばね変形による反力で、接点部31を電極60に安定的に接触させることができる。すなわち、電気的な接続信頼性を向上することができる。
また、接点部31を電極60に安定的に接触させた状態、すなわちスライダ40が基板挿入完了位置の状態で、スライダ40から端子30が完全に外れている。したがって、スライダ40を支点とする突出部32の振動や、スライダ40のクリープ現象による高さ方向での突出部32の変位の影響がないので、ばね力を抑制しつつ接点部31と電極60との接触圧の変動を抑制することもできる。これにより、端子表面のメッキ剥がれや端子の変形、剥がれたメッキ屑などによる短絡をより抑制することができる。
次に、スライダ40の変位量と、端子30のばね変形による反力(ばね荷重)との関係について説明する。図7(a)〜(c)では、スライダ40に掛かる荷重を実線、回路基板12に掛かる荷重を一点鎖線で示している。また、A0は、スライダ40の変位がゼロ、すなわち初期位置の状態を示し、A3,A5,A7は、それぞれ基板挿入完了位置の状態を示す。
本実施形態では、スライダ40の接触部33を支持する支持面41a、及び、接触部33のスライダ接触面が、相対するテーパ形状を有している。このため、端子30の接点部31が、スライダ40が初期位置のときに高さ方向において回路基板12の電極形成面から最も離れた位置とされ、初期位置の状態から電極60に接触するまで、深さ方向奥側へのスライダ40の変位にともなって回路基板12の電極形成面に近づくこととなる。
このため、図7(a)に示すように、変位量がゼロのA0点から、端子30の接点部31が回路基板12の電極形成面(電極60)に接触するA1点までの間に、スライダ40に掛かる荷重(ばね荷重)が徐々に小さくなる。さらには、接触部33がスライダ40から完全に外れるA2点までの間に、スライダ40に掛かる荷重(ばね荷重)が徐々に小さくなる。
これに対し、接触部33及び支持面41aが深さ方向に沿って延びる比較例では、図7(b)に示すように、変位量がゼロのA0点から、端子30の接点部31が回路基板12の電極形成面(電極60)に接触するとともに、接触部33がスライダ40から完全に外れるA4点までの間に、スライダ40に掛かる荷重(ばね荷重)が殆ど変化しない。したがって、本実施形態によれば、スライダ40から端子30が外れたときに、回路基板12に急激(瞬間的)に掛かる荷重(衝撃)を低減することができる。
また、本実施形態では、図7(a)に示すように、スライダ40から端子30の接触部33が完全に外れるA2点の前のA1点で、深さ方向において所定幅を有する電極60の一部位に接点部31が載り、基板挿入完了位置となるまでの間、電極60の表面と端子30の接点部31がワイピングされるようになっている。
上記構成では、端子30の接点部31が電極60に載った時点A1から、ばね変形の反力(ばね荷重)は、スライダ40だけでなく回路基板12にも分散される。また、回路基板12に掛かる荷重は、スライダ40に掛かる荷重が徐々に減少するのにともなって徐々に増加する。このため、スライダ40の変位量に対するスライダ40に掛かる荷重の減少度合いが大きく、スライダ40から端子30が完全に外れた時点で、スライダ40に掛かる荷重は大幅に低減される。
これに対し、上記図7(b)の構成や、スライダ40の接触部33を支持する支持面41a、及び、接触部33のスライダ接触面が、相対するテーパ形状を有するものの、A6点で、端子30の接点部31が回路基板12の電極形成面(電極60)に接触するとともに、接触部33がスライダ40から完全に外れる構成(図7(c)参照)では、図7(a)の構成に較べて、スライダ40の変位量に対するスライダ40に掛かる荷重の減少度合いが小さい。したがって、本実施形態によれば、回路基板12に急激(瞬間的)に掛かる荷重(衝撃)をより効果的に低減することができる。
また、電極60の表面に対し、接点部31を微摺動させることで、電極60の表面の絶縁皮膜を破ったり、表面の異物を除去するためのワイピングの距離を稼ぐこともできる。
特に本実施形態では、スライダ40の接触部33を支持する支持面41a、及び、接触部33のスライダ接触面が、相対するテーパ形状を有しているため、スライダ40(支持面41a)と端子30(接触面)が接触した状態でスライダ40上を端子が移動しやすい。これにより、例えば回路基板12を挿入する際に要する力を低減することができる。なお、スライダ40の接触部33を支持する支持面41a、及び、接触部33のスライダ接触面の少なくとも一方が、深さ方向において先端面20aに近いほど電極形成面に近づくテーパ形状を有すれば、上記効果を奏することができる。
(変形例)
スライダ40の支持面41a、及び、接触部33のスライダ接触面の少なくとも一方が、上記したテーパ形状を有していなくとも良い。また、スライダ40の支持面41aから端子30の接触部33が完全に外れた直後に、基板挿入完了となるようにしても良い。
回路基板12の電極60が、深さ方向に複数列をなし、且つ、列ごとに横方向に位置をずらして設けられる構成において、図8(a),(b)に示すように、複数の端子30は、突出部32の長さが全て等しく、スライダ40の接触部33を支持する位置が深さ方向において電極60(60a,60b)の列ごとに異なる構成としても良い。図8(a),(b)は図5(a),(b)に対応している。このように、スライダ40側で長さを調整すると、列が異なっても同一の端子30を用いることができる。なお、図8に示す構成の場合、電極60(60a,60b)の位置に応じて、スライダ40を突き出し、突き出したスライダ40の部分(電極60bに対応する端子30の接触部33を支持する支持部41)に、回路基板12を収容する溝(図8(b)の破線参照)を設けている。
また、図9に示すように、ハウジング20が、横方向において接点部31の隣に設けられた保護壁部27を有し、該保護壁部27が、高さ方向においてスライダ40の初期位置における接点部31を覆うように、回路基板12の電極形成面とは離れつつも接点部31よりも電極形成面に近い位置まで延設された構成としても良い。これによれば、回路基板12の挿入時において回路基板12が端子30の接点部31を通過する際に、回路基板12に反りが生じていたり、高さ方向で回路基板12の位置がばらついても、保護壁部27により、接点部31に回路基板12が接触するのを防ぐことができる。すなわち、電気的な接続信頼性を向上することができる。また、保護壁部27により、回路基板12の反りを矯正することもできる。
特に図9では、保護壁部27が、深さ方向において接点部31よりも先端面20aに近い位置から設けられるとともに、回路基板12の電極形成面との対向面27aが深さ方向奥側ほど電極形成面に近づくテーパ形状を有している。このような構成とすると、回路基板12を挿入孔21に挿入する際に、保護壁部27によって回路基板12を高さ方向において所望の位置に導く(ガイドする)ことができる。すなわち、高さ方向の位置決めをすることができる。
また、図10(a),(b)に示すように、スライダ40が、各接触部33に対応してスライダ40の支持部41に設けられた複数の溝部42の底面を、接触部33の支持面41aとすると良い。これによれば、例えば端子30の接触部33がスライダ40上に載るように、スライダ40をハウジング20に組み付ける際(カードエッジコネクタ11を形成する際)に、横方向において隣り合う端子30の接触部33が互いに接触し、メッキ層の剥がれや端子30の変形などが生じるのを抑制することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に示した構成に加え、少なくともスライダ40の初期位置を決定する位置決め手段として、スライダ40及び端子30を含むハウジング20の一方に弾性変形可能に設けられた凸部、他方に凸部と嵌合する凹部を設け、少なくともスライダ40が初期位置の状態で、凸部が凹部に嵌まるように構成されている点を主たる特徴部分とする。
図11(a)〜(c)に、本実施形態に係るカードエッジコネクタ11(電子装置10)の概略構成を示す。なお、便宜上、ケース13を省略して図示している。また、図11(b)では、ハウジング20を、位置決め手段を構成する2段の貫通孔28(28a,28b)を通る面でカットした断面図とし、ハウジング20の挿入孔21内に位置するスライダ40を平面図としている。図11(a)〜(c)に示すように、凹部としての貫通孔28が、ハウジング20の横方向の挿入孔壁面21bに開口しつつハウジング20を貫通して設けられている。この貫通孔28は、図11(b)及び図11(c)に示すように、深さ方向に沿って2段設けられており、先端面20aに近い1段目の貫通孔28aが、スライダ40の初期位置、2段目の貫通孔28bが基板挿入完了位置に対応している。
一方、凸部としての第1アーム部43が、スライダ本体部40aから突出している。スライダ本体部40aは、第1実施形態に示したスライダ40、及び、特許請求の範囲に記載のスライダに相当する。第1アーム部43は、スライダ本体部40aから深さ方向において先端面20a側に延び、横方向に弾性変形可能に設けられたばね部43aと、ばね部43aから横方向外側に延び、貫通孔28に嵌まるロック部43bを有している。それ以外の構成は、第1実施形態に示したものと同じである。
次に、上記したカードエッジコネクタ11に対する回路基板12の挿入動作について説明する。
図12(a)は、回路基板12がスライダ本体部40a(スライダ40)に接触する前の初期位置の状態を示す。この状態では、第1アーム部43のロック部43bが、1段目の貫通孔28aに嵌まっており、これにより、スライダ本体部40aが、初期位置で確実に保持される。なお、この初期位置の状態では、図示しないが、第1実施形態同様、スライダ本体部40aにより各端子30の接触部33が支持されて突出部32は押し拡げられ、接点部31が回路基板12の対応する電極形成面から離れた位置となる。
図12(a)に示す状態から、回路基板12を深さ方向奥側に挿入すると、スライダ本体部40aに回路基板12が到達する。そして、回路基板12をさらに挿入すると、回路基板12によりスライダ本体部40aが押されて、回路基板12とともにスライダ本体部40aが変位する。このスライダ本体部40aの変位を受け、第1アーム部43のばね部43aが撓み(弾性変形し)、図12(b)に示すように、貫通孔28aからロック部43bが外れる。
さらに、回路基板12を挿入し、回路基板12によりスライダ40を押してやると、図12(c)に示すように、第1アーム部43のロック部43bが、2段目の貫通孔28bに嵌まる。これにより、スライダ本体部40aが、基板挿入完了位置で確実に保持される。なお、この基板挿入完了位置の状態では、図示しないが、第1実施形態同様、スライダ本体部40aから端子30の接触部33が完全に外れる。すなわち、非接触状態となる。そして、回路基板12の電極60のほぼ中心に、端子30の接点部31が位置することとなる。
このように、本実施形態では、スライダ本体部40aが初期位置の状態で、貫通孔28aにロック部43bが嵌まるようにしている。このように、凸部と凹部の嵌合によって、スライダ本体部40aの初期位置が決定される。したがって、突出部32のばね変形の反力のみにより、スライダ40が初期位置に保持される構成に較べて、スライダ本体部40aの位置ばらつき(初期位置のばらつき)を抑制し、接点部31と電極60との電気的な接続信頼性を向上することができる。
特に本実施形態では、スライダ本体部40aが初期位置の状態で、1段目の貫通孔28aにロック部43bが嵌まり、スライダ本体部40aが基板挿入完了位置の状態で、2段目の貫通孔28bにロック部43bが嵌まる。このように、凸部と凹部の嵌合によって、スライダ本体部40aの基板挿入完了位置も決定される。したがって、スライダ本体部40aの基板挿入完了位置のばらつきも抑制し、ひいては接点部31と電極60との電気的な接続信頼性をより向上することができる。
なお、本実施形態では、ハウジング20を貫通する貫通孔28を凹部とするため、金型を用いた樹脂成形によりハウジング20を一括で形成する際に、凹部も形成することができる。
また、本実施形態では、挿入孔21内に配置された防水部材22(及びカバー23)が、スライダ本体部40aが基板挿入完了位置よりも深さ方向奥側に変位するのを防ぐストッパとしての機能を果たす。したがって、回路基板12を深さ方向奥側に強く押しすぎて、凸部及び凹部の嵌合のみではスライダ40を基板挿入完了位置に保持できないような場合であっても、防水部材22にスライダ本体部40aが当て止まるため、スライダ40を基板挿入完了位置に保持することができる。また、防水部材22(及びカバー23)がストッパを兼ねるので部品点数を削減することもできる。
(変形例)
上記例では、スライダ40に凸部、ハウジング20に凹部を設ける例を示したが、スライダ40に凹部、ハウジング20に凸部を設けても良い。
図13に示すように、凹部としての貫通孔28が、ハウジング20において高さ方向の挿入孔壁面21aに設けられた構成としても良い。この場合、第1アーム部43のばね部43aは高さ方向に弾性変形可能に設けられる。
上記例では、スライダ40(スライダ本体部40a)の初期位置と基板挿入完了位置がともに決定される例を示した。これに対し、図14(a),(b)に示すように、端子30が接触部33の一部として凸部36を有し、スライダ40が接触部33の支持面41aに凹部44を有しても良い。これによれば、端子30の凸部36がスライダ40に設けた凹部44に嵌まることで、スライダ40の初期位置を決定することができる。なお、図14(a),(b)に示す構成は、第1実施形態に示した図10(a),(b)に対応している。
上記例では、防水部材22が、スライダ本体部40aが基板挿入完了位置よりも深さ方向奥側に変位するのを防ぐストッパとしての機能を果たす例を示した。すなわち、ハウジング20とは別部材のストッパを用いる例を示した。しかしながら、図15に示すように、ハウジング20の挿入孔壁面(21a又は21b)の一部として、スライダ本体部40aが基板挿入完了位置よりも深さ方向奥側に変位するのを防ぐストッパ29が構成されても良い。これによれば、部品点数を削減することもできる。
一方、図16に示すように、ハウジング20の挿入孔21に、スライダ本体部40aが初期位置よりも深さ方向において先端面20a側に変位するのを防ぐストッパ70が、回路基板12の変位を妨げないように設けられても良い。例えば先端面20aとは反対側からスライダ40を挿入孔21に挿入する際に、スライダ40を強く押し込みすぎて、凸部及び凹部の嵌合のみでは初期位置に保持できないような場合でも、ストッパ70にスライダ本体部40aが当て止まるため、スライダ40を初期位置に保持することができる。なお、図16に示す例では、ハウジング20の内壁の一部が周囲よりも突起してなるストッパ70となっている。
(第3実施形態)
本実施形態に係る電子装置10は、以下に示す構成を有する点を主たる特徴部分とする。
上記実施形態同様、本実施形態においても、端子30の突出部32は、その先端から接触部33における接点部31側の端部までの部位が、先端に近いほど対応する電極形成面から離れるテーパ形状を有する。
また、図示しないが、突出部32は、スライダ40から完全に外れた状態で、突出部32の先端がスライダ40の支持面41aにおける先端面20a側端部よりも対応する電極形成面から離れた位置となる。
その上で、本実施形態では、回路基板12を挿入孔21から引き抜く際に、回路基板12の変位にともなってスライダ40を初期位置まで戻す復帰手段を備える。なお、それ以外の構成については、第1実施形態に示した構成、又は、第2実施形態に示した構成と同じである。
図17〜図19に、本実施形態に係る電子装置10の概略構成を示す。図17は、電子装置10において、位置決め手段及び復帰手段の位置関係を示すための部分断面図である。上記したように位置関係を示すため、ハウジング20を、位置決め手段を構成する2段の貫通孔28(28a,28b)を通る面でカットした断面図とし、ハウジング20の挿入孔21内に位置するスライダ40及び回路基板12を平面図としている。また、便宜上、ケース13を省略して図示している。図17〜図19に、本実施形態に係る電子装置10は、第2実施形態に示した電子装置10(図11参照)に対し、本実施形態に係る主たる特徴部分構成を付加したものとなっている。
本実施形態では、上記復帰手段が、回路基板12の横方向端部に設けられた切り欠き部61と、スライダ本体部40a(第1実施形形態のスライダ40に相当)から突出する第2アーム部45と、ハウジング20における横方向の挿入孔壁面21bに設けられたガイド部71aとにより構成される。切り欠き部61は、回路基板12の横方向両端にそれぞれ設けられている。
第2アーム部45は、スライダ本体部40aとともに、ハウジング20の挿入孔21内に配置される。そして、スライダ40から、回路基板12と接触しない位置で先端面20a側に延び、弾性変形可能に設けられたばね部45aと、該ばね部45aから回路基板12側に延び、スライダ40が基板挿入完了位置の状態で切り欠き部61内に嵌まるロック部45bを有する。
本実施形態では、第2アーム部45が、1つの金属板を所定形状に打ち抜き、曲げ加工してなる。そして、樹脂成形体であるスライダ本体部40aの横方向端面に開口する溝部内に、保持部45cが挿入され、この挿入状態でスライダ本体部40aに固定されている。なお、固定方法としては、圧入、接着、インサート成形等を採用することができる。
ばね部45aは、上記保持部45cから、深さ方向において先端面20a側に延びている。そして、ロック部45bは、ばね部45aにおける先端面20a側の端部付近から、横方向において回路基板12側に延びている。本実施形態では、回路基板12の挿抜時において、電極60の表面に接することのないように、ロック部45bが、回路基板12における電極60の形成領域より横方向外側(横方向の対応する挿入孔壁面21bの近く)に位置している。
また、ロック部45bは、回路基板12を挿入する際に回路基板12の端面12aに対向する対向面47を備えた第1辺部46aと(後述の図20(b)参照)、該第1辺部46aにおける深さ方向奥側の端部から、回路基板12の引き抜き時に該ロック部45bが高さ方向において変位する側に延びる第2辺部46bを有する。本実施形態では、第1辺部46aと第2辺部46bが略垂直な位置関係をなす略L字状となっている。また、第1辺部46aと第2辺部46bとの間の角部46cは、図19に示すように、丸みを帯びた形状となっている。
ガイド部71aは、ハウジング20における横方向の挿入孔壁面21bに、深さ方向においてばね部45aと対向するように、基板挿入完了状態で、ばね部45aよりも先端面20a側に設けられる。そして、ばね部45aとの対向面が、深さ方向において先端面20aに近いほど、回路基板12の一面12bと対向する高さ方向の挿入孔壁面21aに近づくようなテーパ形状をなしている。なお、回路基板12の一面12bとは、回路基板12の両面のうちのいずれでも良く、第2アーム部45が回路基板12の挿抜時に載り上がる側の面を指す。
本実施形態では、ハウジング20において横方向の挿入孔壁面21bに設けられた溝部71のうち、深さ方向における先端面20a側の溝部壁面がガイド部71aにおけるばね部45aとの対向面となっている。そして、横方向において、第2アーム部45(主としてばね部45a)の一部が、溝内71に配置されている。
また、本実施形態では、スライダ40の復帰手段とともに、スライダ40の位置決め手段を有する。すなわち、スライダ40が、第2アーム部45とともに第1アーム部43を有する。また、第1アーム部43と第2アーム部45とが、同一材料を用いて一体的に形成されている。具体的には、図18に示すように、スライダ本体部40aから露出する第2アーム部45のばね部45aの途中分から、第1アーム部43のばね部43aが延びている。そして、ばね部43aの一部に凸条が設けられ、この凸条部分がロック部43bとなっている。
また、第2アーム部45のばね部45aは、金属板の板厚方向が高さ方向に沿っており、第1アーム部43のばね部43aは、金属板の板厚方向が、横方向となっている。これにより、第2アーム部45のばね部45aは、高さ方向に弾性変形可能となり、第1アーム部43のばね部43aは、横方向に弾性変形可能となっている。
次に、カードエッジコネクタ11に対する回路基板12の挿入動作及び引き抜き動作について、図20〜図28を用いて説明する。図20〜図24までが、挿入動作を説明する図であり、図25〜図28までが、引き抜き動作を説明する図である。また、図20において、(a)は、図17に対応する部分断面図であって、スライダ40の位置決め手段及び復帰手段のうち、復帰手段に関するものを示す図、(b)は(a)のXXb−XXb線に沿う断面図であって、復帰手段に関するものを示す図、(c)は、図17に対応する部分断面図であって、スライダ40の位置決め手段及び復帰手段のうち、位置決め手段に関するものを示す図、(d)は、(a)のXXd−XXd線に沿う断面図である。(a)〜(d)は同一タイミングを示している。また、他の図21〜28についても、図20同様である。
図20(a)〜(d)は、回路基板12を挿入孔21に挿入する際に、回路基板12が第2アーム部45のロック部45bに接触するまでの状態を示す。
この状態では、図20(d)に示すように、スライダ本体部40aの支持面41a上に各端子30の接触部33が支持されて突出部32は押し拡げられ、接点部31が回路基板12の対応する電極形成面から離れた位置となっている。一方、スライダ本体部40aは、突出部32のばね変形の反力を受けている。また、図20(c)に示すように、第1アーム部43のロック部43bが、ハウジング20に設けられた1段目の貫通孔28aに嵌まっている。本実施形態では、これら突出部32のばね変形の反力とロック部43bの貫通孔28aの嵌合により、スライダ本体部40aが初期位置に保持される。
第2アーム部45は、スライダ本体部40aが初期位置に保持された状態で、ばね部45aの先端がハウジング20のガイド部71aに接触して位置決めされている。この位置決め状態で、ばね部45aは、スライダ本体部40aから遠ざかるほど(先端面20aに近づくほど)、高さ方向において挿入孔21の中心を通る仮想線CLから離れる配置となっている。また、ロック部45bの第1辺部46aは、該第1辺部46aから第2辺部46bが延びる方向と反対の面47が、スライダ本体部40aから遠ざかるほど、高さ方向において挿入孔21の中心を通る仮想線CLから離れる配置となっている。そして、先端面20aから挿入される回路基板12の端面12aと対向するように深さ方向に対して傾いている。このように、回路基板12の端面12aと対向する対向面47は、深さ方向において先端面20aに近づくほど、高さ方向において挿入孔壁面21aに近づく配置となっている。また、第1辺部46aの対向面47は、ハウジング20の先端面20a側の端部を回路基板12の一面12b上として、該一面12bを跨いでいる。
また、ロック部45bの第2辺部46bは、深さ方向奥側の面であって、回路基板12の切り欠き部61に嵌まった状態で、切り欠き部61の深さ方向奥側の壁面に対向する対向面48が、スライダ本体部40aから遠ざかるほど、高さ方向において挿入孔21の中心を通る仮想線CLに近づく配置となっている。そして、深さ方向に対して傾いている。このように、第2辺部46bの対向面48は、深さ方向において第1辺部46aと反対の端部に近いほど、深さ方向奥側に位置するとともに、第1辺部46aと反対の端部を回路基板12の一面12b上として該第一面12bを跨いでいる。
図21(a)〜(d)は、回路基板12を挿入する際、回路基板12が第2アーム部45のロック部45bに接触し、ロック部45bが回路基板12の一面に載り上げた状態を示す。
この状態では、スライダ本体部40aが回路基板12によって押されていないため、端子30、スライダ本体部40a、第1アーム部43に変化はない。
一方、第2アーム部45のロック部45bは、上記したように深さ方向(換言すれば回路基板12の一面12b)に対して第1辺部46aの対向面47が傾いて配置されている。このため、ロック部45bの対向面47に回路基板12の端面12aの角部が接触し、ロック部45bが深さ方向奥側の力を受けると、ばね部45aが高さ方向に押し拡げられてロック部45bが回路基板12の一面12b上に載り上げる。すなわち、ばね部45aの先端及びロック部45bが、回路基板12の一面12bと対向する挿入孔壁面21aに近づく。なお、ばね部45aはロック部45bの変位にともない、スライダ本体部40aに保持された保持部45cを中心として回動し、その先端はガイド部71aから離れた状態となる。
図22(a)〜(d)は、回路基板12を挿入する際、回路基板12がスライダ本体部40aに接触した直後(接触した瞬間)の状態、すなわちロック部45bが切り欠き部61に嵌まる前の状態を示す。
第2アーム部45のロック部45bは、切り欠き部61に嵌まるまで、回路基板12の一面12bに接触しつつ変位する。そして、回路基板12(端面12a)がスライダ本体部40aに接触した時点で、切り欠き部61に嵌まろうとする。しかしながら、ばね部45aの先端がガイド部71aに接触するため、この時点でロック部45bの全てが切り欠き部61内に配置はされない。
図23(a)〜(d)は、回路基板12を挿入する際、回路基板12がスライダ本体部40aを深さ方向奥側に押し込みつつ変位し、第2アーム部45のロック部45bが切り欠き部61に嵌まった状態を示す。
スライダ本体部40aを初期位置に保持する力(本実施形態では、突出部32のばね変形の反力とロック部43bの貫通孔28aの嵌合力)を超えて、回路基板12からスライダ本体部40aが力を受けると、回路基板12とともにスライダ本体部40aも深さ方向奥側に変位する。
このとき、第1アーム部43及び第2アーム部45も、スライダ本体部40aとともに変位する。したがって、図23(c)に示すように、ばね部43aが横方向に弾性変形しつつ第1アーム部43のロック部43bが貫通孔28aから外れる。また、スライダ本体部40aの変位にともなってガイド部71aの傾斜に沿いつつばね部45aの先端が仮想線CLに近づく方向に変位し、これによりロック部45bが切り欠き部61に嵌まる。
また、第1実施形態に示したように、スライダ40の支持面41aに対する接触部33のかかりが徐々に減少して、端子30の接点部31は回路基板12の電極形成面に徐々に近づく。本実施形態では、第2アーム部45のロック部45bが切り欠き部61に嵌まった時点で、接点部31が回路基板12の電極形成面、詳しくは電極60の端部に接触するようになっている。
図24(a)〜(d)は、回路基板12の挿入が完了した状態を示す。
図23の状態から回路基板12をさらに押し込むと、スライダ本体部40aとともに第1アーム部43及び第2アーム部45も変位する。そして、図24(c)に示すように、第1アーム部43のロック部43bが2段目の貫通孔28bに嵌まり、スライダ本体部40aが基板挿入完了位置にロックされる。一方、図24(b)に示すように、スライダ本体部40aの変位にともなってばね部45aの先端がガイド部71aから遠ざかる。
また、スライダ本体部40aが深さ方向奥側に変位するのにともなって、図24(d)に示すように、スライダ40から端子30の接触部33が完全に外れる。そして、端子30の接点部31は電極60の表面をワイピングし、電極60のほぼ中心に、端子30の接点部31が位置する状態で、基板挿入完了となる。
図25(a)〜(d)は、回路基板12を引き抜く際、第2アーム部45のばね部45a先端が、ガイド部71aに接触した直後(接触した瞬間)の状態を示す。
基板挿入完了状態から回路基板12を引き抜くと、第2アーム部45のロック部45bの奥側端部(第2辺部46bの対向面48)が、回路基板12における切り欠き部61の奥側壁面に押され、第2アーム部45に引っ張られる形で、回路基板12とともにスライダ本体部40aが変位する。第2アーム部45は、ガイド部71aにばね部45aが接触するまでは、回路基板12のみから外力を受ける。したがって、図25(b)に示すように、ガイド部71aにばね部45aが接触する瞬間まで、ばね部45aは深さ方向に延びている。
一方、第1アーム部43は、スライダ本体部40aとともに変位する。したがって、図25(c)に示すように、ばね部43aが横方向に弾性変形しつつ第1アーム部43のロック部43bが貫通孔28bから外れる。
また、端子30の突出部32は、上記したテーパ形状を有し、その先端がスライダ本体部40aの先端面側端部より開いている。したがって、図25(d)に示すように、スライダ本体部40aが変位すると、スライダ本体部40aの先端面側端部が、突出部32の先端にもぐりこむ。この時点では、図23(d)同様、端子30の接点部31が、電極60の端部に接触、換言すれば回路基板12の対応する電極形成面からはなれる寸前となっている。
図26(a)〜(d)は、回路基板12を引き抜く際、第1アーム部43のロック部43bが1段目の貫通孔28aに嵌まった直後、すなわちスライダ本体部40aが初期位置となった直後の状態を示す。
第2アーム部45のばね部45a先端がガイド部71aに接触した状態から、さらに回路基板12を引き抜くと、図26(b)に示すように、ガイド部71aの傾斜に沿いつつばね部45aの先端が傾斜上方、すなわち回路基板12の一面12bと対向する挿入孔壁面21a側に変位する。これにより、ロック部45bが切り欠き部61から外れる方向に変位する。図26(b)に示す初期位置の状態では、図20(b)同様、第1辺部46aの対向面47が、回路基板12の端面12aと対向するように深さ方向に対して傾くとともに、回路基板12の一面12bを跨いでいる。
また、端子30の突出部32は、接触部33が支持面41aに支持された状態で、スライダ本体部40aの変位にともない突出部32が押し拡げられていく。そして、この時点では、図26(d)に示すように、接触部33全体がスライダ本体部40aの支持面41aにより支持され、端子30の接点部31が回路基板12の対応する電極形成面から離れている。
図27(a)〜(d)は、回路基板12を引き抜く際、第2アーム部45のロック部45bが回路基板12の一面12bに載り上げた状態を示す。
図26に示す状態で、ロック部45bの第2辺部46bは、その対向面48が、スライダ本体部40aから遠ざかるほど(先端面20aに近づくほど)、高さ方向において挿入孔21の中心を通る仮想線CLに近づく配置となっている。すなわち、第2辺部46bの対向面48は、深さ方向に対して傾いている。また、第2辺部46bの対向面48は、回路基板12の一面12bを跨いでいる。したがって、回路基板12をさらに引き抜くと、図27(b)に示すように、ばね部45aが回路基板12により押し拡げられて(高さ方向に弾性変形して)、ロック部45bが回路基板12の一面12bに載り上がる。
なお、スライダ本体部40aは、図26の状態で初期位置となっており、第1アーム部43とともに変化はない。また、端子30にも変化はない。
図28(a)〜(d)は、回路基板12が第2アーム部45を通過し、引き抜かれた状態を示す。
第2アーム部45のロック部45bは、回路基板12が通過するまでは、回路基板12の一面12bに接触する。図28(b)に示すように、回路基板12が第2アーム部45のロック部45bを通過し、ロック部45bを支持する回路基板12がなくなると、ばね部45aが弾性変形エネルギーを開放し、ばね部45aの先端がガイド部71aに接触する位置まで変位する。すなわち、回路基板12が引き抜かれた状態で、上記した図20の状態となる。
このように、本実施形態では、上記した復帰手段により、回路基板12を挿入孔21から引き抜く際に、回路基板12の変位にともなってスライダ40(スライダ本体部40a)を初期位置まで戻すことができる。また、回路基板12の引き抜きにともなってスライダ本体部40aが変位すると、スライダ本体部40aにより突出部32を押し拡げた状態で接触部33が支持され、接点部31が回路基板12の対応する電極形成面から離れた位置となる。このように、回路基板12をカードエッジコネクタ11に対して繰り返し挿抜することができる。
また、回路基板12を引き抜く際に、スライダ本体部40aその支持面41aに、端子30の接触部33が支持されるので、端子30の接点部31が回路基板12と接触するのを抑制することができる。そして、端子表面のメッキ剥がれや端子30の変形、剥がれたメッキ屑などによる短絡を抑制して、電気的な接続信頼性がより向上することができる。
(変形例)
本実施形態では、復帰手段とともに位置決め手段を備える例を示した。しかしながら、位置決め手段を有さず、復帰手段のみを有した構成としても良い。
本実施形態では、第1辺部46aと第2辺部46bを有しなるL字形状のロック部45bの例を示した。しかしながら、例えば図29に示すように、ロック部45bが、第2辺部46bにおける第1辺部46aと反対の端部から延び、第1辺部46aに対向する第3辺部46dを有しても良い。
L字形状のロック部45bの場合、回路基板12を引き抜く際に、第2辺部46bにおける第1辺部46aと反対側の端部が、図30(b)に示すように回路基板12の切り欠き部61の深さ方向奥側の壁面に引っかかることも考えられる。この場合、切り欠き部61からロック部45bを外すのに、通常よりも大きい力を必要とする。これに対し、図29に示すように、第3辺部46dを備えた折返し構造のロック部45bを採用すると、図30(a)に示すように、回路基板12の引き抜きにともなってロック部45bを切り欠き部61からスムースに外すことができる。なお、図30(a)に示す例では、第2辺部46bと第3辺部46dの間の角部46eが丸みを帯びた形状となっており、切り欠き部61からさらに外しやすくなっている。
本実施形態では、ハウジング20における横方向の挿入孔壁面21bに設けた溝部71の壁面の一部を、ガイド部71aとする例を示した。しかしながら、例えば図31(a),(b)に示すように、ハウジング20の挿入孔壁面21bに設けた突起部72をガイド部としても良い。
また、第1実施形態(図10参照)に示したように、スライダ本体部40aに各接触部33に対応して設けられた複数の溝部42の底面をそれぞれ支持面41aとすると、回路基板12を引き抜く際に、スライダ本体部40a上に載り上げた端子30の接触部33が、横方向において隣り合う端子30同士で互いに接触し、メッキ層の剥がれや端子30の変形などが生じるのを抑制することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
本実施形態では、1)回路基板12が両面に電極60を有する、2)その上で、スライダ40(スライダ本体部40a)が、高さ方向両面側にテーパ状の支持面41aを有する例を示した。しかしながら、回路基板12の一面のみに電極60が設けられ、電極形成面側のみ、スライダ40(スライダ本体部40a)が、テーパ状の支持面41aを有する構成とすることもできる。この場合、回路基板12を固定するために、回路基板12の他方の面側を、ハウジング20に一体的に設けた支持部にて支持すれば良い。スライダ40の位置決めについても同様である。