JP5547825B1 - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【課題】W、Mo、Cu等の高価な金属を添加せずに、高温環境において長期間に渡って優れたクリープ強度を発現し得るオーステナイト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、C:0.01〜0.10質量%、Si:0.10〜1.00質量%、Mn:0.10〜2.50質量%、Ni:15.0〜25.0質量%、Cr:20.0〜30.0質量%、Nb:0.10〜0.60質量%、Ta:0.20〜1.00質量%、B:0.0005〜0.0050質量%、N:0.10〜0.30質量%、S:0.0050質量%以下(0質量%を含まない)およびP:0.050質量%以下(0質量%を含まない)を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、Ta/Nbの比率が0.8〜4.0であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、C:0.01〜0.10質量%、Si:0.10〜1.00質量%、Mn:0.10〜2.50質量%、Ni:15.0〜25.0質量%、Cr:20.0〜30.0質量%、Nb:0.10〜0.60質量%、Ta:0.20〜1.00質量%、B:0.0005〜0.0050質量%、N:0.10〜0.30質量%、S:0.0050質量%以下(0質量%を含まない)およびP:0.050質量%以下(0質量%を含まない)を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、Ta/Nbの比率が0.8〜4.0であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、火力発電用のボイラーチューブ等に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼に関する。
火力発電用のボイラーチューブには耐熱性・耐酸化性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼管が用いられており、化石燃料の燃焼熱によって鋼管は外面から加熱され、鋼管内部を流れる蒸気の温度・圧力を上昇させる。このようなボイラーチューブは、長期間に渡って、例えば650℃で20MPaといった高温・高圧の環境に晒されるため、ボイラーチューブを構成する材料には、優れたクリープ強度が必要となり、例えばJIS規格鋼である火SUS310J1HTBなどが使用される。従来知見では、様々な方法によってクリープ強度の向上が図られている。例えば、特許文献1には、Ti量、Nb量、Zr量、Ta量とC量を適切な比率にする技術が示されている。特許文献2には、微量の酸素とTiを含むことで結晶粒の混粒を抑制する技術が示されている。特許文献3には、Cu、Nb、Nを添加した鋼材においてP量、Al量、V量などを制御する技術が示されている。特許文献4には、Mo量,W量とN量を調節する技術が示されている。
しかしながら、特許文献1、2の方法では十分なクリープ強度が得られず、特許文献3、4ではW、Mo、Cu等の高価な金属を数質量%で添加しておりコスト増加が避けられないという問題がある。また、既存ボイラー材料である火SUS310J1HTBのようなJIS規格鋼においては、Nを高濃度で含むため、特許文献4のようなNと他元素との相乗効果によるクリープ強度向上を適用することができない。
本発明は、このような問題を解決するために創案されたもので、その課題は、W、Mo、Cu等の高価な金属を多量に添加せずに、高温環境において長期間に渡って優れたクリープ強度を発現し得るオーステナイト系ステンレス鋼を提供することにある。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、C:0.01〜0.10質量%、Si:0.10〜1.00質量%、Mn:0.10〜2.50質量%、Ni:15.0〜25.0質量%、Cr:20.0〜30.0質量%、Nb:0.10〜0.60質量%、Ta:0.20〜1.00質量%、B:0.0005〜0.0050質量%、N:0.10〜0.30質量%、S:0.0050質量%以下(0質量%を含まない)およびP:0.050質量%以下(0質量%を含まない)を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、Ta/Nbの比率が0.8〜4.0であることを特徴とする。
なお、本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、さらに、希土類元素:0.15質量%以下、Ca:0.005質量%以下、およびMg:0.005質量%以下からなる群のうちのいずれか一つ以上を含有することが好ましい。
なお、本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、さらに、希土類元素:0.15質量%以下、Ca:0.005質量%以下、およびMg:0.005質量%以下からなる群のうちのいずれか一つ以上を含有することが好ましい。
前記構成によれば、オーステナイト系ステンレス鋼に特定の濃度範囲でNb、Taを含有させ、かつNbとTaの含有量を特定比率で含有させることによって、CrNbNからなるZ相が析出してクリープ強度が向上し、かつZ相へTaが固溶してクリープ強度がさらに向上する。また、前記好ましい構成によれば、オーステナイト系ステンレス鋼に特定の濃度範囲で希土類元素を含有させることによって、ステンレス鋼の耐酸化性を向上させ、酸化スケールの生成を抑制することができる。また、前記好ましい構成によれば、オーステナイト系ステンレス鋼に特定の濃度範囲でCa、Mgを含有させることによって、熱間加工性を向上させることができる。
本発明によれば、Mo、Cu等の高価な金属を多量に添加せずに、高温環境において長期間に渡って優れたクリープ強度を発現するオーステナイト系ステンレス鋼を得ることができる。その結果、本発明のクリープ強度に優れたオーステナイト系ステンレス鋼をボイラーチューブに適用することで、肉厚低減による低コスト化が可能となり、また経年劣化によるボイラーチューブの交換・補修の頻度を低減することができる。
本発明者らは、クリープ強度を向上したオーステナイト系ステンレス鋼を実現すべく、様々な角度から検討した。ボイラー用ステンレス鋼(耐熱オーステナイト系ステンレス鋼)では、ボイラーの使用温度域にてNb(C,N)やM23C6炭化物(Mは炭化物形成元素)の析出による析出強化で耐熱強度(高温強度)を向上させている。このようなNbを析出元素として用いた耐熱オーステナイト鋼では、高濃度で窒素を含むことによって、それらの析出物に加えてZ相(CrNbN)と呼ばれる析出物が形成される。この析出物は転位上に線状に析出するため、転位の有効な障害物となりクリープ強度を向上させることができる。本発明者らは、Nbを析出元素として用いた耐熱ステンレス鋼にTaを特定の比率(Ta/Nb)で添加すると、CrNbNからなるZ相へTaが固溶して、クリープ強度が向上することを見出した。
この効果は、Taを特定の比率(Ta/Nb)で添加することによって、従来から析出強化元素として用いられているNbの一部が同じ原子濃度で置き換えられることによって得られるものであり、単純なTaの追加による析出強化とは考え難い。例えば、特許文献3にはTaを追加で添加しても良い旨の記載があるものの、析出強化の付加としてTaを追加しているだけであり、総添加量(総含有量)を変えずにNbの一部をTaへ置き換えることによって効果が得られるという本発明とは異なっている。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、NiとCrの含有量が25Cr−20Niオーステナイト系ステンレス鋼と同等の化学成分組成を有するものであるが、以下に示すような特定の化学成分組成(C、Si、Mn、Ni、Cr、Nb、Ta、B、N、S、P)を有することに特徴がある。これらの成分による作用および範囲設定理由は下記の通りである。
[C:0.01〜0.10質量%]
Cは、高温の使用環境においてM23C6などの炭化物を形成し、ボイラーチューブとして必要な高温強度を向上させる元素である。このような効果を得るためには、C含有量を0.01質量%以上とする必要がある。しかしながら、C含有量が過剰になって0.10質量%を超えると、高温環境中で時間経過につれて炭化物が粗大化しやすくなり強化の向上は見込めない。C含有量の好ましい下限は0.03質量%以上(より好ましくは0.05質量%以上)であり、好ましい上限は0.08質量%以下(より好ましくは0.07質量%以下)である。
Cは、高温の使用環境においてM23C6などの炭化物を形成し、ボイラーチューブとして必要な高温強度を向上させる元素である。このような効果を得るためには、C含有量を0.01質量%以上とする必要がある。しかしながら、C含有量が過剰になって0.10質量%を超えると、高温環境中で時間経過につれて炭化物が粗大化しやすくなり強化の向上は見込めない。C含有量の好ましい下限は0.03質量%以上(より好ましくは0.05質量%以上)であり、好ましい上限は0.08質量%以下(より好ましくは0.07質量%以下)である。
[Si:0.10〜1.00質量%]
Siは、溶鋼中で脱酸作用をもたらす元素であり、耐酸化性を向上させる元素でもある。これらの効果を得るためには、Si含有量を0.10質量%以上とする必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になって1.00質量%を超えると、σ相の形成を招き、靭性の低下をもたらすことになる。Si含有量の好ましい下限は0.20質量%以上(より好ましくは0.30質量%以上)であり、好ましい上限は0.70質量%以下(より好ましくは0.50質量%以下)である。
Siは、溶鋼中で脱酸作用をもたらす元素であり、耐酸化性を向上させる元素でもある。これらの効果を得るためには、Si含有量を0.10質量%以上とする必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になって1.00質量%を超えると、σ相の形成を招き、靭性の低下をもたらすことになる。Si含有量の好ましい下限は0.20質量%以上(より好ましくは0.30質量%以上)であり、好ましい上限は0.70質量%以下(より好ましくは0.50質量%以下)である。
[Mn:0.10〜2.50質量%]
Mnは、溶鋼中で脱酸作用を有する元素であり、またオーステナイト相を安定化させる作用がある。これらの効果を得るためには、Mn含有量を0.10質量%以上とする必要がある。しかしながら、Mn含有量が過剰になって2.50質量%を超えると、熱間加工性を阻害することになる。Mn含有量の好ましい下限は0.50質量%以上(より好ましくは1.00質量%以上)であり、好ましい上限は2.00質量%以下(より好ましくは1.50質量%以下)である。
Mnは、溶鋼中で脱酸作用を有する元素であり、またオーステナイト相を安定化させる作用がある。これらの効果を得るためには、Mn含有量を0.10質量%以上とする必要がある。しかしながら、Mn含有量が過剰になって2.50質量%を超えると、熱間加工性を阻害することになる。Mn含有量の好ましい下限は0.50質量%以上(より好ましくは1.00質量%以上)であり、好ましい上限は2.00質量%以下(より好ましくは1.50質量%以下)である。
[Ni:15.0〜25.0質量%]
Niは、オーステナイト相を安定化させる作用がある元素である。オーステナイト相を維持するためには、Ni含有量を15.0質量%以上とする必要がある。しかしながら、Ni含有量が過剰になって25.0質量%を超えると、コストの増加をもたらすことになる。Ni含有量の好ましい下限は17.0質量%以上(より好ましくは19.0質量%以上)であり、好ましい上限は23.0質量%以下(より好ましくは21.0質量%以下)である。
Niは、オーステナイト相を安定化させる作用がある元素である。オーステナイト相を維持するためには、Ni含有量を15.0質量%以上とする必要がある。しかしながら、Ni含有量が過剰になって25.0質量%を超えると、コストの増加をもたらすことになる。Ni含有量の好ましい下限は17.0質量%以上(より好ましくは19.0質量%以上)であり、好ましい上限は23.0質量%以下(より好ましくは21.0質量%以下)である。
[Cr:20.0〜30.0質量%]
Crは、優れた耐食性を発現するために必須の元素である。このような効果を得るためには、Cr含有量を20.0質量%以上とする必要がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になって30.0質量%を超えると、オーステナイト相が不安定化して高温強度の低下を招く。Cr含有量の好ましい下限は22.0質量%以上(より好ましくは24.0質量%以上)であり、好ましい上限は28.0質量%以下(より好ましくは26.0質量%以下)である。
Crは、優れた耐食性を発現するために必須の元素である。このような効果を得るためには、Cr含有量を20.0質量%以上とする必要がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になって30.0質量%を超えると、オーステナイト相が不安定化して高温強度の低下を招く。Cr含有量の好ましい下限は22.0質量%以上(より好ましくは24.0質量%以上)であり、好ましい上限は28.0質量%以下(より好ましくは26.0質量%以下)である。
[Nb:0.10〜0.60質量%]
Nbは、鋼中にNb(C,N)やZ相(CrNbN)を析出し、析出強化によってクリープ強度を向上させる元素である。このような効果を得るためには、Nb含有量を0.10質量%以上とする必要がある。しかしながら、Nb含有量が過剰になって0.60質量%を超えると、析出物が過剰になり延性が低下し、また経済性が損なわれる。Nb含有量の好ましい下限は0.20質量%以上(より好ましくは0.25質量%以上)であり、好ましい上限は0.40質量%以下(より好ましくは0.30質量%以下)である。
Nbは、鋼中にNb(C,N)やZ相(CrNbN)を析出し、析出強化によってクリープ強度を向上させる元素である。このような効果を得るためには、Nb含有量を0.10質量%以上とする必要がある。しかしながら、Nb含有量が過剰になって0.60質量%を超えると、析出物が過剰になり延性が低下し、また経済性が損なわれる。Nb含有量の好ましい下限は0.20質量%以上(より好ましくは0.25質量%以上)であり、好ましい上限は0.40質量%以下(より好ましくは0.30質量%以下)である。
[Ta:0.20〜1.00質量%]
Taは、鋼中に炭化物、炭窒化物を析出し、析出強化によってクリープ強度を向上させると共に、鋼中に析出したZ相(CrNbN)へ固溶してクリープ強度をさらに向上させる元素である。これらの効果を得るためには、Ta含有量を0.20質量%以上とする必要がある。しかしながら、Ta含有量が過剰になって1.00質量%を超えると、析出物が過剰になり延性が低下し、また経済性が損なわれる。Ta含有量の好ましい下限は0.30質量%以上(より好ましくは0.40質量%以上)であり、好ましい上限は0.80質量%以下(より好ましくは0.60質量%以下)である。
Taは、鋼中に炭化物、炭窒化物を析出し、析出強化によってクリープ強度を向上させると共に、鋼中に析出したZ相(CrNbN)へ固溶してクリープ強度をさらに向上させる元素である。これらの効果を得るためには、Ta含有量を0.20質量%以上とする必要がある。しかしながら、Ta含有量が過剰になって1.00質量%を超えると、析出物が過剰になり延性が低下し、また経済性が損なわれる。Ta含有量の好ましい下限は0.30質量%以上(より好ましくは0.40質量%以上)であり、好ましい上限は0.80質量%以下(より好ましくは0.60質量%以下)である。
[Ta/Nb:0.8〜4.0]
Ta/Nbの比率を所定範囲に制御することによって、Z相へのTa固溶量が最適となり、クリープ強度を向上させることができる。Ta/Nbの比率が0.8未満であると、Ta固溶量が少なく、クリープ強度の向上が期待できなくなる。また、Ta/Nbの比率が4.0を超えると、Ta固溶量が多く、延性が低下し、また経済性が損なわれる。したがって、Ta/Nbの比率は0.8〜4.0とする。
Ta/Nbの比率を所定範囲に制御することによって、Z相へのTa固溶量が最適となり、クリープ強度を向上させることができる。Ta/Nbの比率が0.8未満であると、Ta固溶量が少なく、クリープ強度の向上が期待できなくなる。また、Ta/Nbの比率が4.0を超えると、Ta固溶量が多く、延性が低下し、また経済性が損なわれる。したがって、Ta/Nbの比率は0.8〜4.0とする。
[B:0.0005〜0.0050質量%]
Bは、鋼中に固溶することで、高温強度の強化機構の一つであるM23C6型炭化物(Mは炭化物形成元素)の形成を促進させる元素である。このような効果を得るためには、B含有量を0.0005質量%以上とする必要がある。しかしながら、B含有量が過剰になって0.0050質量%を超えると、熱間加工性や溶接性の低下を招く。B含有量の好ましい下限は0.0010質量%以上(より好ましくは0.0015質量%以上)であり、好ましい上限は0.0030質量%以下(より好ましくは0.0025質量%以下)である。
Bは、鋼中に固溶することで、高温強度の強化機構の一つであるM23C6型炭化物(Mは炭化物形成元素)の形成を促進させる元素である。このような効果を得るためには、B含有量を0.0005質量%以上とする必要がある。しかしながら、B含有量が過剰になって0.0050質量%を超えると、熱間加工性や溶接性の低下を招く。B含有量の好ましい下限は0.0010質量%以上(より好ましくは0.0015質量%以上)であり、好ましい上限は0.0030質量%以下(より好ましくは0.0025質量%以下)である。
[N:0.10〜0.30質量%]
Nは、鋼中に固溶することで高温強度を向上させる効果があり、かつ、NbやTaなどと析出物(炭窒化物)を形成して析出強化に寄与する重要な元素の一つである。これらの効果を得るためには、N含有量を0.10質量%以上とする必要がある。しかしながら、N含有量が過剰になって0.30質量%を超えると、熱間加工性を阻害してしまう。N含有量の好ましい下限は0.20質量%以上(より好ましくは0.23質量%以上)であり、好ましい上限は0.30質量%以下(より好ましくは0.27質量%以下)である。
Nは、鋼中に固溶することで高温強度を向上させる効果があり、かつ、NbやTaなどと析出物(炭窒化物)を形成して析出強化に寄与する重要な元素の一つである。これらの効果を得るためには、N含有量を0.10質量%以上とする必要がある。しかしながら、N含有量が過剰になって0.30質量%を超えると、熱間加工性を阻害してしまう。N含有量の好ましい下限は0.20質量%以上(より好ましくは0.23質量%以上)であり、好ましい上限は0.30質量%以下(より好ましくは0.27質量%以下)である。
[S:0.0050質量%以下(0質量%を含まない)]
Sは、不可避的不純物であるが、その含有量が増加すると熱間加工性を劣化させるため、0.0050質量%以下とする必要がある。好ましくは0.0020質量%以下(より好ましくは0.0010質量%以下)に抑制するのがよい。
Sは、不可避的不純物であるが、その含有量が増加すると熱間加工性を劣化させるため、0.0050質量%以下とする必要がある。好ましくは0.0020質量%以下(より好ましくは0.0010質量%以下)に抑制するのがよい。
[P:0.050質量%以下(0質量%を含まない)]
Pは、不可避的不純物であるが、その含有量が増加すると溶接性を損なうため、0.050質量%以下とする必要がある。好ましくは0.040質量%以下(より好ましくは0.030質量%以下)に抑制するのがよい。
Pは、不可避的不純物であるが、その含有量が増加すると溶接性を損なうため、0.050質量%以下とする必要がある。好ましくは0.040質量%以下(より好ましくは0.030質量%以下)に抑制するのがよい。
[不可避的不純物]
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避的不純物であるが、不可避的不純物としてスクラップ原料に由来するSn、Pb、Sb、As、Znや、Al、Ti、Zrなどが含まれていても本発明の効果が損なわれるわけではない。ただし、Sn、Pb、Sb、As、Znといった低融点金属は含有量が多くなるに従って熱間加工性や粒界強度の低下を招くため低濃度に抑えることが望ましい。また、Al、Ti、Zrも粗大な窒化物を形成し熱間加工性が低下し易いため低濃度に抑えることが望ましい。また、従来知見(特許文献3、4)にあるCu、Mo、Wは、添加すると高温強度を改善できるが、代わりに原料コストが高くなってしまうという問題があるため、本発明の趣旨にはそぐわないものの、不可避的不純物として含まれていても本発明の効果を損なうものではない。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避的不純物であるが、不可避的不純物としてスクラップ原料に由来するSn、Pb、Sb、As、Znや、Al、Ti、Zrなどが含まれていても本発明の効果が損なわれるわけではない。ただし、Sn、Pb、Sb、As、Znといった低融点金属は含有量が多くなるに従って熱間加工性や粒界強度の低下を招くため低濃度に抑えることが望ましい。また、Al、Ti、Zrも粗大な窒化物を形成し熱間加工性が低下し易いため低濃度に抑えることが望ましい。また、従来知見(特許文献3、4)にあるCu、Mo、Wは、添加すると高温強度を改善できるが、代わりに原料コストが高くなってしまうという問題があるため、本発明の趣旨にはそぐわないものの、不可避的不純物として含まれていても本発明の効果を損なうものではない。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、前記した元素に加えて、Ca、Mg、希土類元素を含有していてもよく、含有される元素の種類に応じて鋼材の高温強度や熱間加工性を調整することができる。
[Ca:0.0050質量%以下(0質量%を含まない)および/またはMg:0.0050質量%以下(0質量%を含まない)]
CaおよびMgは、脱硫・脱酸元素として働き、Sの固定化による熱間加工性の向上を可能にする元素である。こうした効果を得るためには、Ca含有量およびMg含有量を0.0050質量%以下とする必要がある。Ca含有量およびMg含有量の好ましい下限はいずれも0.0002質量%以上であり、より好ましくは0.0005質量%以上である。しかしながら、Ca含有量およびMg含有量が過剰になると、溶解作業中に溶鋼の突沸が生じるなどの作業上の制約を受けるため、Ca含有量およびMg含有量の上限はいずれも0.0050質量%以下とした。好ましい上限はいずれも0.0020質量%以下である。
CaおよびMgは、脱硫・脱酸元素として働き、Sの固定化による熱間加工性の向上を可能にする元素である。こうした効果を得るためには、Ca含有量およびMg含有量を0.0050質量%以下とする必要がある。Ca含有量およびMg含有量の好ましい下限はいずれも0.0002質量%以上であり、より好ましくは0.0005質量%以上である。しかしながら、Ca含有量およびMg含有量が過剰になると、溶解作業中に溶鋼の突沸が生じるなどの作業上の制約を受けるため、Ca含有量およびMg含有量の上限はいずれも0.0050質量%以下とした。好ましい上限はいずれも0.0020質量%以下である。
[希土類元素:0.150質量%以下(0質量%を含まない)]
希土類元素は、ステンレス鋼の耐酸化性を向上させる元素であるため、酸化スケールの生成を抑制することができる。こうした効果を得るためには、希土類元素の含有量を0.150質量%以下とする必要がある。希土類元素の含有量の好ましい下限は0.010質量%以上であり、より好ましくは0.015質量%以上、最適には0.020質量%以上である。しかしながら、希土類元素の含有量が過剰になると、高温環境で粒界の一部が溶融して熱間加工性を阻害するため、希土類元素の含有量の上限は0.150質量%以下とした。好ましい上限は0.100質量%以下であり、より好ましくは0.050質量%以下である。ここで、希土類元素は、Sc、Yと、La、Ce、Ndに代表されるランタノイド元素15種との合計17種の元素から選択された1種以上の元素である。また、希土類元素の含有量は、17種の元素から選択された1種以上の元素の合計含有量である。
希土類元素は、ステンレス鋼の耐酸化性を向上させる元素であるため、酸化スケールの生成を抑制することができる。こうした効果を得るためには、希土類元素の含有量を0.150質量%以下とする必要がある。希土類元素の含有量の好ましい下限は0.010質量%以上であり、より好ましくは0.015質量%以上、最適には0.020質量%以上である。しかしながら、希土類元素の含有量が過剰になると、高温環境で粒界の一部が溶融して熱間加工性を阻害するため、希土類元素の含有量の上限は0.150質量%以下とした。好ましい上限は0.100質量%以下であり、より好ましくは0.050質量%以下である。ここで、希土類元素は、Sc、Yと、La、Ce、Ndに代表されるランタノイド元素15種との合計17種の元素から選択された1種以上の元素である。また、希土類元素の含有量は、17種の元素から選択された1種以上の元素の合計含有量である。
次に、本発明の所望の効果を奏する実施例を示して本発明について具体的に説明する。
下記表1に示す化学成分組成からなる各種鋼を真空溶解炉(VIF)にて溶解してインゴットを作製した。溶製した20kgインゴットを幅130mm×厚さ20mmの寸法に熱間鍛造加工し、1250℃で熱処理を施した後、冷間圧延によって厚さ13mmまで加工した。その後、1220℃で5分の熱処理を再度実施して、これを母材(試験No.1〜17)とした。
下記表1に示す化学成分組成からなる各種鋼を真空溶解炉(VIF)にて溶解してインゴットを作製した。溶製した20kgインゴットを幅130mm×厚さ20mmの寸法に熱間鍛造加工し、1250℃で熱処理を施した後、冷間圧延によって厚さ13mmまで加工した。その後、1220℃で5分の熱処理を再度実施して、これを母材(試験No.1〜17)とした。
尚、下記表1の試験No.1〜17に示す母材のうち、試験No.2、3、5、6、7、10、11、13、15、17は本発明で規定する化学成分組成を満足する母材(実施例)である。また、試験No.1、4、8、9、12、14、16は本発明で規定する化学成分組成を外れる母材(比較例)である。そして、このうち試験No.8は既存鋼である「火SUS310J1HTB」相当鋼からなる母材である。
また、オーステナイト系ステンレス鋼ではNb化合物(CrNbN)の析出強化が働いており、Nb添加量(含有量)が多いほど析出強化が向上して、クリープ破断時間が長くなる傾向にある。Taも同様に析出強化に寄与するため、実施例においては、NbとTaの総量の効果とNbの一部をTaに置換した効果を区別して示すためにNo.1〜3、4〜8、9〜11、12〜13、14〜15、16〜17のTaとNbの原子濃度(at%)の和はおよそ一定としている。
これらの母材から機械加工によってφ6mmのクリープ試験片を作製し、マルチ型クリープ試験機を用いて700℃、189MPaの条件でクリープ破断試験を実施した。得られたクリープ破断時間を下記表1に示す。
表1に示すように、本発明で規定する化学成分組成を満足するステンレス鋼からなる母材(実施例)は、既存鋼(試験No.8)や、本発明で規定する化学成分組成から外れたステンレス鋼からなる母材(比較例)に比べてクリープ破断時間が長く、クリープ強度が優れていることが確認された。
なお、クリープ強度の評価は、TaとNbの原子濃度の和がほぼ同じステンレス鋼同士を比較することによって行った。例えば、試験No.8(比較例)はボイラーチューブの従来材料であるが、試験No.5〜7(実施例)と比較してわかるように、Nbの一部をTaへ置き替えることで従来材料よりも優れたクリープ強度が得られることがわかる。
なお、クリープ強度の評価は、TaとNbの原子濃度の和がほぼ同じステンレス鋼同士を比較することによって行った。例えば、試験No.8(比較例)はボイラーチューブの従来材料であるが、試験No.5〜7(実施例)と比較してわかるように、Nbの一部をTaへ置き替えることで従来材料よりも優れたクリープ強度が得られることがわかる。
以上、本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼について、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明に含まれることはいうまでもない。
Claims (2)
- C:0.01〜0.10質量%、Si:0.10〜1.00質量%、Mn:0.10〜2.50質量%、Ni:15.0〜25.0質量%、Cr:20.0〜30.0質量%、Nb:0.10〜0.60質量%、Ta:0.20〜1.00質量%、B:0.0005〜0.0050質量%、N:0.10〜0.30質量%、S:0.0050質量%以下(0質量%を含まない)およびP:0.050質量%以下(0質量%を含まない)を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、Ta/Nbの比率が0.8〜4.0であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
- さらに、希土類元素:0.15質量%以下、Ca:0.005質量%以下、およびMg:0.005質量%以下からなる群のうちのいずれか一つ以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
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