本発明の積層体は、ゴム層(A)と、ゴム層(A)上に積層されたフッ素樹脂層(B)と、を備えることを特徴とする。
以下、各層について説明する。
(A)ゴム層
ゴム層(A)は、加硫用ゴム組成物から形成される層である。
加硫用ゴム組成物は、必須成分としてエピクロルヒドリンゴム(a1)、化合物(a2)、酸化マグネシウム(a3)、シリカ(a4)、並びにエポキシ樹脂(a5)を含有し、更に、任意成分として酸化亜鉛(a6)、及び加硫剤(a7)の少なくともいずれかを含んでもよい。特に、加硫用ゴム組成物がエピクロルヒドリンゴム(a1)及び化合物(a2)に加えて、加硫剤(a7)を含むものであると、層(A)と層(B)とをより大きな接着強度で接着できる。
エピクロルヒドリンゴム(a1)は、エピクロルヒドリンに基づく重合単位を有する未加硫ゴムであれば特に限定されず、実質的にエピクロルヒドリンに基づく重合単位のみからなる1元重合体であってもよいし、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エピクロルヒドリン以外の他の単量体に基づく重合単位と、からなる2元以上の重合体であってもよい。
エピクロルヒドリン以外の他の単量体としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びアリルグリシジルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。加硫用ゴム組成物は、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エチレンオキサイドに基づく重合単位と、を有する重合体であることが好ましく、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エチレンオキサイドに基づく重合単位と、アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位と、を有する重合体であることがより好ましい。
エピクロルヒドリンゴム(a1)としては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、及び、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。より好ましくは、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。これらを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
化合物(a2)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のp−トルエンスルホン酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール樹脂塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のp−トルエンスルホン酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のフェノール塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のフェノール樹脂塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のオルトフタル酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のギ酸塩、及び、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のオクチル酸塩、からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。化合物(a2)を含むことによって、加硫用ゴム組成物の加硫特性を改善でき、接着性を向上させることができる。
化合物(a2)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のp−トルエンスルホン酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール樹脂塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩、及び、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩、からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
接着性を向上させる観点からは、化合物(a2)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩であることがより好ましい。
また、加硫用ゴム組成物は、更に、ホスホニウム塩を含有することも好ましい形態の一つである。化合物(a2)に加えて、更に、ホスホニウム塩を併用することによって、より接着性を向上させることができる。
具体的には、例えば、化合物(a2)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩、及び、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、加硫用ゴム組成物は、更に、ホスホニウム塩を含有することが好ましい。
また、化合物(a2)としては、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩を必須とすることが好ましい。化合物(a2)としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩単独、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩と1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩との組み合わせも好ましい形態の一つである。また、化合物(a2)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩であり、加硫用ゴム組成物は、更に、ホスホニウム塩を含有することも好ましい形態の一つである。
化合物(a2)は、接着性が良好な観点から、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して0.5質量部以上、3.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは1.0質量部以上、2.0質量部以下である。また、接着性が良好であるとともに、加硫特性が良好な点から、化合物(a2)は、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して、1.0質量部以上、1.5質量部以下であることが好ましい。
加硫用ゴム組成物は、酸化マグネシウム(a3)を含む。酸化マグネシウム(a3)の配合量は、接着性、ゴム物性の点から、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して3〜20質量部が好ましく、特に好ましくは5〜15質量部である。本発明の特定の構造を有する積層体は、酸化マグネシウム(a3)を必須とすることによって優れた接着性を有するものとなる。
加硫用ゴム組成物は、シリカ(a4)を含む。シリカ(a4)としては、塩基性シリカ、酸性シリカを用いることができ、接着性の観点から、塩基性シリカを用いることが好ましい。塩基性シリカとしては、カープレックス1120(DSLジャパン(株)製)が挙げられる。また、接着性、ゴム物性の観点から、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して5〜40質量部が好ましく、特に好ましくは10〜25質量部である。本発明の特定の構造を有する積層体は、シリカ(a4)を必須とすることによって優れた接着性を有するものとなる。
加硫用ゴム組成物は、エポキシ樹脂(a5)を含む。エポキシ樹脂(a5)としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び多官能エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。これらのうちビスフェノールA型エポキシ樹脂が耐薬品性、接着性が良好な点から好ましく、さらに式(1):
で表わされるエポキシ樹脂が特に好ましい。ここで、式(1)において、nは平均値であり、0.1〜3が好ましく、0.1〜0.5がより好ましく、0.1〜0.3が更に好ましい。nが0.1未満であると、フッ素ポリマー(b1)との接着力が低下する傾向がある。一方、nが3を超えると、エポキシ樹脂自体の粘度が高くなり、加硫用ゴム組成物中での均一な分散が困難になる傾向がある。
エポキシ樹脂(a5)は、フッ素ポリマー(b1)との接着力をより向上させる点から、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.3〜3質量部がより好ましい。また、加硫用ゴム組成物に添加される、化合物(a2)、酸化マグネシウム(a3)、シリカ(a4)等の添加量にもよるが、接着力を向上させる観点からは、エポキシ樹脂(a5)は、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して、0.5質量部を超えることが好ましい。1.0質量部を超えることも好ましい形態の一つである。
また、加硫用ゴム組成物は、化合物(a2)とエポキシ樹脂(a5)との合計が、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して、2.0質量部を超えることも好ましい形態の一つである。
加硫用ゴム組成物は、更に、酸化亜鉛(a6)を含むことが好ましい。酸化亜鉛(a6)の配合量は、接着性、ゴム物性の点から、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して3〜20質量部が好ましく、特に好ましくは5〜15質量部である。本発明の特定の構造を有する積層体は、酸化亜鉛(a6)を含むことによって、より優れた接着性を有するものとなる。
加硫用ゴム組成物は、加硫剤を含むことが好ましい。加硫剤は、加硫用ゴム組成物の加硫系に合わせて、従来公知のものが使用できる。エピクロルヒドリンゴム(a1)を加硫することにより、得られる加硫ゴム層の引張強度などの機械的強度が向上し、良好な弾性も獲得できる。
加硫剤としては、塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤、例えば、ポリアミン系加硫剤、チオウレア系加硫剤、チアジアゾール系加硫剤、メルカプトトリアジン系加硫剤、ピラジン系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、ビスフェノール系加硫剤等を挙げることができる。
塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤を例示すれば、ポリアミン系加硫剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等があげられる。
チオウレア系加硫剤としては、エチレンチオウレア、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等があげられる。
チアジアゾール系加硫剤としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−チオベンゾエート等があげられる。
メルカプトトリアジン系加硫剤としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、1−メトキシ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジエチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−シクロヘキサンアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジブチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、1−フェニルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン等があげられる。
ピラジン系加硫剤としては、2,3−ジメルカプトピラジン誘導体等があげられ、2,3−ジメルカプトピラジン誘導体を例示すると、ピラジン−2,3−ジチオカーボネート、5−メチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5−エチルピラジン−2,3−ジチオカーボネート、5,6−ジメチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5,6−ジメチルピラジン−2,3−ジチオカーボネート等があげられる。
キノキサリン系加硫剤としては、2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体等があげられ、2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体を例示すると、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−エチル−2,3−ジメルカプトキノキサリン、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート等があげられる。
ビスフェノール系加硫剤としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、1,1−シクロヘキシリデン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)、2−クロロ−1,4−シクロヘキシレン−ビス (4−ヒドロキシベンゼン)、2,2−イソプロピリデン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールA)、ヘキサフルオロイソプロピリデン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールAF)および2−フルオロ−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)等があげられる。
加硫用ゴム組成物は、加硫剤と共に公知の加硫促進剤、遅延剤を本発明においてそのまま用いることができる。塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤に併用される加硫促進剤としては、1級、2級、3級アミン、該アミンの有機酸塩もしくはその付加物、グアニジン系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸系促進剤等を挙げることができる。また、遅延剤としてはN−シクロヘキサンチオフタルイミド、ジチオカルバミン酸類の亜鉛塩等を挙げることができる。
加硫促進剤を例示すれば、1級、2級、3級アミンとしては、特に炭素数5〜20の脂肪族又は環式脂肪酸の第1、第2もしくは第3アミンが好ましく、このようなアミンの代表例は、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキサメチレンジアミン等である。
アミンと塩を形成する有機酸としては、カルボン酸、カルバミン酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジチオリン酸等が例示される。また上記アミンと付加物を形成する物質としては、アルコール類、オキシム類等が例示される。アミンの有機酸塩もしくは付加物の具体例としては、n−ブチルアミン・酢酸塩、ヘキサメチレンジアミン・カルバミン酸塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのジシクロヘキシルアミン塩等が挙げられる。
グアニジン系促進剤の例としては、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン等が挙げられる。
チウラム系加硫促進剤の具体例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸系促進剤の例としては、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩等が挙げられる。
塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤に併用される加硫促進剤又は遅延剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して0〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
また、エピクロルヒドリンゴム(a1)がエピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体などの二重結合を有する重合体である場合には、ニトリル系ゴムの加硫に通常用いられている公知の加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫促進助剤、架橋助剤等を用いることができる。加硫剤としては、硫黄、モルホリンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタンメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等の硫黄系加硫剤、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキサイド系加硫剤、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂等の樹脂系加硫剤、p−キノンジオキシム、p−p’−ジベンゾイルキノンジオキシム等のキノンジオキシム系加硫剤等を挙げることができる。これらの加硫剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫促進助剤、架橋助剤としては、例えば、アルデヒドアンモニア系促進剤、アルデヒドアミン系促進剤、チオウレア系促進剤、グアニジン系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤、キサントゲンサン塩系促進剤等の各種加硫促進剤、N−ニトロソジフェニルアミン、無水フタル酸、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等の加硫遅延剤、亜鉛華、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛等の加硫促進助剤、キノンジオキシム系架橋助剤、メタクリレート系架橋助剤、アリル系架橋助剤、マレイミド系架橋助剤等の各種架橋助剤等を挙げることができる。
エピクロルヒドリンゴム(a1)の耐熱性や、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)との接着性の観点から、加硫剤としては、チオウレア系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、硫黄系加硫剤、パーオキサイド系加硫剤、及びビスフェノール系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種の加硫剤(a7)が好ましく、チオウレア系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、及びビスフェノール系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種の加硫剤がより好ましく、特に好ましくはキノキサリン系加硫剤である。これらの加硫剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
加硫用ゴム組成物は、エピクロルヒドリンゴム(a1)100重量部に対して、0.1〜10重量部の加硫剤(a7)を含むことが好ましい。より好ましくは、0.5〜5重量部である。加硫剤が0.1重量部未満であると、架橋効果が不十分となるおそれがあり、10重量部を越えると、本発明の積層体を成形して得られる成形体が剛直になりすぎて、実用的なゴム物性が得られないおそれがある。
加硫用ゴム組成物は、チオウレア系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、及びビスフェノール系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種の加硫剤に加えて、更に、パーオキサイド系加硫剤を含有することも好ましい形態の一つである。パーオキサイド系加硫剤としては、ジクミルパーオキサイドが好ましい。パーオキサイド系加硫剤は、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して1.0質量部以上であることが好ましく、2.0質量部以上であることがより好ましい。また、5.0質量部以下であることが好ましい。例えば、加硫用ゴム組成物において、化合物(a2)やエポキシ樹脂(a5)の含有量が少ない場合、良好な接着性が得られないおそれがあるが、パーオキサイド系加硫剤を含有することによって、化合物(a2)やエポキシ樹脂(a5)の含有量が少ない場合であっても、フッ素樹脂層(B)との接着性を良好なものとすることができる。
加硫用ゴム組成物は、更に受酸剤を含んでもよい。受酸剤の例としては、周期表第(II)族金属の酸化物(但し、酸化マグネシウムを除く)、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第(IV)族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩等、及び下記一般式(2):
MgxZnyAlz(OH)2(x+y)+3z-2CO3・wH2O (2)
(xとyは0〜10の実数、ただしx+y=1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数を表す。)で示される合成ハイドロタルサイト類、及び一般式(3):
〔Al2Li(OH)6〕nX・mH2O (3)
(式中Xは、無機又は有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは3以下の数である。)で示されるLi−Al系包接化合物が挙げられる。
受酸剤の具体的な例としては、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、酸化錫、塩基性亜リン酸錫をあげることができる。
さらに、一般式(2)で示される合成ハイドロタルサイト類については、例えば、Mg3ZnAl2 (OH)12CO3・wH2O等を挙げることができる。また、一般式(2)に含まれる下記一般式(4):
MgxAly(OH)2x+3y-2CO3・wH2O (4)
(但しxは1〜10、yは1〜10、wは正の整数を表す)で表される化合物であってもよい。更に具体的に例示すれば、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.5Al2(OH)13CO3、Mg4Al2(OH)12CO3・3.5H2O、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg3Al2(OH)10CO3・1.7H2O等を挙げることができる。
さらに、一般式(3)で示されるLi−Al系包接化合物については、〔Al2Li(OH)6〕2CO3・H2O等が挙げられる。
また、Li−Al系包接化合物のアニオン種としては、炭酸、硫酸、過塩素酸、リン酸のオキシ酸、酢酸、プロピオン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、p−オキシ安息香酸、サリチル酸、ピクリン酸等が挙げられる。また、これらの受酸剤は単独又は2種以上を混合して用いることができる。
受酸剤のうちエピハロヒドリン系ゴムの耐熱性の観点から、好ましく用いられる受酸剤は金属酸化物、金属水酸化物、無機マイクロポーラスクリスタルである。これらの受酸剤は、本発明の目的であるフッ素樹脂層(B)との接着力を損なわない範囲の量で配合する。
加硫用ゴム組成物は、加硫特性を阻害したりゴムの物性を損なったりするおそれがあるため、アミン化合物を、含有しないことが好ましい。
加硫用ゴム組成物は、ゴム層(A)にエピクロルヒドリンゴム(a1)とは別の特性を付与するために、更に、エポキシ樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。樹脂としては、たとえばポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリウレタン(PUR)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、エチレン−酢酸ビニル(EVA)樹脂、スチレン−アクリロニトリル(AS)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、塩素化ポリスチレン、クロロスルホン化ポリスチレンエチレ等が挙げられる。この場合、樹脂の配合量は、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対し1〜50質量部が好ましい。
また本発明においては、目的または必要に応じて、一般の加硫用ゴム組成物に配合する通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、粘着付与剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、滑剤などの各種添加剤を配合することができる。また、前記のものとは異なる常用の加硫剤や加硫促進剤を1種または2種以上配合してもよい。ただし、これらの添加剤は、本発明の目的であるフッ素樹脂層(B)との接着力を損なわない範囲の量で配合する。
充填剤としては、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;合成ハイドロタルサイト、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅などの金属硫化物;ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、カーボンブラック、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、亜鉛華、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤などがあげられる。
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチルなどの高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの高級脂肪族アミン;カルナバワックス、セレシンワックスなどの石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどのポリグリコール;ワセリン、パラフィンなどの脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ロジン、(ハロゲン化)ジアルキルアミン、(ハロゲン化)ジアルキルスルフォン、界面活性剤などがあげられる。
可塑剤としては、たとえばフタル酸誘導体やセバシン酸誘導体、軟化剤としては、たとえば潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油、ステアリン酸カルシウム、老化防止剤としては、たとえばフェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩などがあげられる。
加硫用ゴム組成物は、エピクロルヒドリンゴム(a1)、化合物(a2)、酸化マグネシウム(a3)、シリカ(a4)、並びにエポキシ樹脂(a5)、さらに要すれば酸化亜鉛(a6)、加硫剤(a7)並びにその他の添加剤を混練することにより調製される。
混練は、たとえば100℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。
つぎに、本発明の積層体におけるフッ素樹脂層(B)について説明する。
(B)フッ素樹脂層
フッ素樹脂層(B)は、フッ素ポリマー組成物から形成される層である。
フッ素ポリマー組成物は、少なくともクロロトリフルオロエチレンに由来する共重合単位を有するフッ素ポリマー(b1)を含有する。
フッ素ポリマー(b1)としては、燃料バリア性の観点から、フッ素樹脂であることが好ましく、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)及びCTFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
CTFE共重合体としては、CTFEに由来する共重合単位(CTFE単位)と、テトラフルオロエチレン(TFE)、へキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニル、へキサフルオロイソブテン、式:
CH2=CX1(CF2)nX2
(式中、X1はHまたはF、X2はH、FまたはCl、nは1〜10の整数である)
で示される単量体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、及び、塩化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する共重合単位と、を含むことが好ましい。また、CTFE共重合体としては、パーハロ重合体であることがより好ましい。
CTFE共重合体としては、CTFE単位と、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する共重合単位と、を含むことがより好ましく、実質的にこれらの共重合単位のみからなることが更に好ましい。また、燃料低透過の観点から、エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等のCH結合を有するモノマーを含まないことが好ましい。パーハロポリマーはゴムとの接着が通常困難であるが、本発明の構成によれば、フッ素樹脂層がパーハロポリマーからなる層であっても、フッ素樹脂層とゴム層との層間の接着は強固である。
CTFE共重合体は、全単量体単位の10〜90モル%のCTFE単位を有することが好ましい。
CTFE共重合体としては、CTFE単位、TFE単位およびこれらと共重合可能な単量体(α)に由来する単量体(α)単位を含むものが特に好ましい。
「CTFE単位」および「TFE単位」は、CTFE共重合体の分子構造上、それぞれ、CTFEに由来する部分(−CFCl−CF2−)、TFEに由来する部分(−CF2−CF2−)であり、前記「単量体(α)単位」は、同様に、CTFE系共重合体の分子構造上、単量体(α)が付加してなる部分である。
単量体(α)としては、CTFEおよびTFEと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、エチレン(Et)、ビニリデンフルオライド(VdF)、CF2=CF−ORf1(式中、Rf1は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、CX3X4=CX5(CF2)nX6(式中、X3、X4およびX5は同一もしくは異なって、水素原子またはフッ素原子;X6は、水素原子、フッ素原子または塩素原子;nは、1〜10の整数)で表されるビニル単量体、CF2=CF−OCH2−Rf2(式中、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体などがあげられ、なかでも、PAVE、上記ビニル単量体、及び、アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、PAVE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf2が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF2=CF−OCH2−CF2CF3がより好ましい。
CTFE共重合体における、CTFE単位とTFE単位との比率は、CTFE単位が15〜90モル%に対し、TFE単位が85〜10モル%であり、より好ましくは、CTFE単位が20〜90モル%であり、TFE単位が80〜10モル%である。また、CTFE単位15〜25モル%と、TFE単位85〜75モル%とから構成されるものがより好ましい。
CTFE共重合体は、CTFE単位とTFE単位との合計が90〜99.9モル%であり、単量体(α)単位が0.1〜10モル%であるものが好ましい。単量体(α)単位が0.1モル%未満であると、成形性、耐環境応力割れ性および耐燃料クラック性に劣りやすく、10モル%を超えると、燃料低透過性、耐熱性、機械特性に劣る傾向にある。
フッ素ポリマー(b1)は、PCTFE又はCTFE−TFE−PAVE共重合体であることが最も好ましい。上記CTFE−TFE−PAVE共重合体とは、実質的にCTFE、TFE及びPAVEのみからなる共重合体である。PCTFE及びCTFE−TFE−PAVE共重合体は、主鎖を構成する炭素原子に直接結合した水素原子が存在せず、脱フッ化水素化反応が進行しない。従って、脱弗化水素化反応によってフッ素ポリマー中に形成される不飽和結合を利用した従来の接着性改善方法は適用できない。
PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)などがあげられ、なかでもPMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
PAVE単位は、全単量体単位の0.5モル%以上であることが好ましく、5モル%以下であることが好ましい。
CTFE単位などの構成単位は、19F−NMR分析を行うことにより得られる値である。
フッ素ポリマー(b1)は、ポリマーの主鎖末端および/または側鎖に、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヘテロ環基、およびアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を導入したものであってもよい。
本明細書において、「カルボニル基」は、炭素−酸素二重結合から構成される炭素2価の基であり、−C(=O)−で表されるものに代表される。前記カルボニル基を含む反応性官能基としては特に限定されず、たとえばカーボネート基、カルボン酸ハライド基(ハロゲノホルミル基)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル結合(−C(=O)O−)、酸無水物結合(−C(=O)O−C(=O)−)、イソシアネート基、アミド基、イミド基(−C(=O)−NH−C(=O)−)、ウレタン結合(−NH−C(=O)O−)、カルバモイル基(NH2−C(=O)−)、カルバモイルオキシ基(NH2−C(=O)O−)、ウレイド基(NH2−C(=O)−NH−)、オキサモイル基(NH2−C(=O)−C(=O)−)など、化学構造上の一部としてカルボニル基を含むものがあげられる。
アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ウレイド基、オキサモイル基などにおいては、その窒素原子に結合する水素原子は、たとえばアルキル基などの炭化水素基で置換されていてもよい。
反応性官能基は、導入が容易である点、フッ素ポリマー(b1)が適度な耐熱性と比較的低温での良好な接着性とを有する点から、アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましく、さらにはアミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましい。
フッ素ポリマー(b1)は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合等、従来公知の重合方法により得ることができる。前記重合において、温度、圧力などの各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、フッ素ポリマー(b1)の組成や量に応じて適宜設定することができる。
フッ素ポリマー(b1)の融点は特に限定されないが、160〜270℃であることが好ましい。
フッ素ポリマー(b1)の融点は、DSC装置(セイコー社製)を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。MFRは、メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)製)を用い、297℃、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定する。
またフッ素ポリマー(b1)の分子量は、得られる成形体が良好な機械特性や燃料低透過性などを発現できるような範囲であることが好ましい。たとえば、メルトフローレート(MFR)を分子量の指標とする場合、フッ素ポリマー一般の成形温度範囲である約230〜350℃の範囲の任意の温度におけるMFRは、0.5〜100g/10分であることが好ましい。より好ましくは、2〜50g/10分であり、更に好ましくは、5〜35g/10分である。
本発明においてフッ素樹脂層(B)は、これらのフッ素ポリマー(b1)を1種含有するものであってもよいし、2種以上含有するものであってもよい。
本発明の積層体におけるフッ素樹脂層(B)は、積層体を燃料周りの材料として使用する場合、燃料透過係数が1.0g・mm/m2/day以下であることが好ましく、0.6g・mm/m2/day以下であることがより好ましく、0.4g・mm/m2/day以下であることが更に好ましい。
燃料透過係数は、イソオクタン、トルエンおよびエタノールを45:45:10の容積比で混合したイソオクタン/トルエン/エタノール混合溶媒を投入した燃料透過係数測定用カップに測定対象樹脂から得たシートを組み入れ、60℃において測定した質量変化から算出される値である。
本発明において、フッ素ポリマー(b1)が特定の反応性官能基を末端に有するものであると、ゴム層(A)との接着性が向上する。したがって、耐衝撃性や強度に優れた成形品(たとえば燃料用タンクなど)を提供できる。
なお、フッ素ポリマー(b1)がパーハロポリマーである場合、耐薬品性および燃料低透過性がより優れたものとなる。パーハロポリマーとは、重合体の主鎖を構成する炭素原子の全部にハロゲン原子が結合している重合体である。
フッ素樹脂層(B)は、さらに、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素粉末、炭素繊維、金属酸化物などの種々の充填剤を配合したものであってもよい。
たとえば、燃料透過性をさらに低減させるために、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
また、導電性を付与するために、導電性フィラーを添加してもよい。導電性フィラーとしては特に限定されず、たとえば金属、炭素などの導電性単体粉末または導電性単体繊維;酸化亜鉛などの導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末などがあげられる。導電性フィラーを配合する場合、溶融混練して予めペレットを作製することが好ましい。
前記導電性単体粉末または導電性単体繊維としては特に限定されず、たとえば銅、ニッケルなどの金属粉末;鉄、ステンレススチールなどの金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリルなどがあげられる。
前記表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタンなどの非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
表面導電化処理の方法としては特に限定されず、たとえば金属スパッタリング、無電解メッキなどがあげられる。
導電性フィラーのなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。
導電性フィラーを配合してなるフッ素ポリマー組成物の体積抵抗率は、1×100〜1×109Ω・cmであることが好ましい。より好ましい下限は、1×102Ω・cmであり、より好ましい上限は、1×108Ω・cmである。
また、充填剤以外に、熱安定化剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料、その他任意の添加剤を配合してもよい。
本発明の積層体は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を積層することにより製造できる。本発明の積層体は、フッ素樹脂層(B)の両側にゴム層(A)が積層されていてもよいし、ゴム層(A)の両側にフッ素樹脂層(B)が積層されていてもよい。また、フッ素樹脂層(B)の片側にゴム層(A)が積層されていてもよい。
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)の積層は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を別々に成形した後に圧着などの手段で積層する方法、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を同時に成形して積層する方法、ゴム層(A)にフッ素樹脂層(B)を塗布する方法のいずれでもよい。
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を別々に成形した後に圧着などの手段で積層する方法では、フッ素ポリマーの成形方法と加硫用ゴム組成物のそれぞれ単独での成形方法が採用できる。
ゴム層(A)の成形は、加硫用ゴム組成物を加熱圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、塗装法などにより、シート状、チューブ状などの各種形状の成形体とすることができる。
フッ素樹脂層(B)は、加熱圧縮成形、溶融押出成形、射出成形、塗装(粉体塗装を含む)などの方法により成形できる。成形には通常用いられるフッ素ポリマーの成形機、たとえば射出成形機、ブロー成形機、押出成形機、各種塗装装置などが使用でき、シート状、チューブ状など、各種形状の積層体を製造することが可能である。これらのうち、生産性が優れている点から、溶融押出成形法が好ましい。
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を同時に成形して積層する方法としては、ゴム層(A)を形成する加硫用ゴム組成物およびフッ素樹脂層(B)を形成するフッ素ポリマー(b1)を用いて、多層圧縮成形法、多層トランスファー成形法、多層押出成形法、多層射出成形法、ダブリング法などの方法により成形と同時に積層する方法があげられる。この方法では、未加硫成形体であるゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを同時に積層できるため、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを密着させる工程が特に必要ではなく、また、後の加硫工程において強固な接着を得るのに好適である。
本発明の積層体は、未加硫のゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)との積層体であってもよいが、さらにこの未加硫積層体を加硫することにより、強固な層間接着力が得られる。
すなわち本発明は、本発明の未加硫積層体を加硫処理して得られ、ゴム層(A)が加硫したゴム層(A1)とフッ素樹脂層(B)が加硫接着されている積層体(以下「加硫積層体」ともいう。)にも関する。
加硫処理は、従来公知の加硫用ゴム組成物の加硫方法と条件が採用できる。たとえば、未加硫積層体を長時間加硫する方法、未加硫積層体を比較的単時間で前処理としての熱処理を行い(加硫も生じている)、ついで長時間かけて加硫を行う方法がある。これらのうち、未加硫積層体を比較的単時間で前処理としての熱処理を行い、ついで長時間かけて加硫を行う方法が、前処理でゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)との密着性が容易に得られ、また、前処理で既にゴム層(A)が加硫しており形状が安定化しているので、その後の加硫における積層体の保持方法をさまざまに選択することができるので好適である。
加硫処理の条件は特に制限されるものではなく、通常の条件で行うことができるが、160〜170℃で、10分〜80分、スチーム、プレス、オーブン、エアーバス、赤外線、マイクロウェーブ、被鉛加硫などを用いて処理を行うことが好ましい。より好ましくは、160℃で、20〜45分かけて行う。
得られる加硫積層体では加硫ゴム層(A1)とフッ素樹脂層(B)が加硫接着しており、強固な層間接着力が生じている。
本発明の積層体(未加硫積層体および加硫積層体)は、ゴム層(A、A1。以下、ゴム層(A)を代表とする)とフッ素樹脂層(B)の2層構造でもよいし、(A)−(B)−(A)または(B)−(A)−(B)といった3層構造でもよい。さらに、ゴム層(A)およびフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が接着された3層以上の多層構造であってもよく、(A)−(B)−(C)の3層構造であることも好ましい形態の一つである。本発明の積層体は、フッ素樹脂層(B)の片側にゴム層(A)が積層され、かつ他方にゴム層(A)およびフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が積層されていてもよいし、フッ素樹脂層(B)の両側にゴム層(A)が積層され、さらにその両側もしくは片側にフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が積層されていてもよい。
ポリマー層(C)としては、ゴム層(A)以外のゴム層(C1)でもよい。また、(A)−(B)−(A)の(A)層の外側の片側もしくは両側に(C)層を有してもよい。
ゴム層(C1)の材料としては、エピクロルヒドリンゴム以外のゴムがあげられ、フッ素ゴムでも非フッ素ゴムでもよい。耐燃料性や燃料バリア性の観点からはフッ素ゴムが好ましく、耐寒性が良好な点や、コスト面で優れていることからは、非フッ素ゴムが好ましい。
非フッ素ゴムの具体例としては、たとえばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)またはその水素化物(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレン−ターモノマー共重合体ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、アクリル系ゴムなどがあげられる。
非フッ素ゴムとしては、耐熱性、耐油性、耐候性、押出成形性が良好な点から、ジエン系のゴムであることが好ましい。より好ましくは、NBRまたはHNBRである。ポリマー層(C)は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素化物からなることが好ましい。
なお、ゴム層(C1)を形成する未加硫ゴム組成物中にも、加硫剤や、その他の配合剤を配合してもよい。
つぎに本発明の積層体の層構造について説明する。
(1)ゴム層(A)−フッ素樹脂層(B)の2層構造
基本構造であり、上述したとおり、従来、フッ素樹脂層(B)とゴム層(A)を積層させるには、層間(フッ素樹脂層−ゴム層)の接着が不充分なため、樹脂側において表面処理を施したり、別途接着剤を層間に塗布したり、テープ状のフィルムを巻き付けて固定したりなどと工程が複雑になりがちであったが、そのような複雑な工程を組まずに、加硫することにより加硫接着が起こり化学的に強固な接着が得られる。
(2)ゴム層−フッ素樹脂層(B)−ゴム層の3層構造
(A)−(B)−(A)および(A)−(B)−(C1)がある。シール性が要求される場合、たとえば燃料配管などの接合部は、シール性保持のためにゴム層を両側に配置することが望ましい。内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
(A)−(B)−(C1)の3層構造としては、ゴム層(C1)として、NBRまたはHNBRからなる層であることが好ましい。
また、燃料配管を(A)−(B)−(C1)型構造とし、ゴム層(C1)としてフッ素ゴム層を設け、ゴム層(C1)を配管の内層にすることにより、耐薬品性、燃料低透過性が向上する。
(3)樹脂層−ゴム層(A)−樹脂層の3層構造
(B)−(A)−(B)の3層構造で、内外層の樹脂層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
(4)フッ素樹脂層(B)−ゴム層(A)−ゴム層(C1)の3層構造
(5)4層構造以上
(2)〜(4)の3層構造に加えて、さらに任意のゴム層(A)または(C1)、樹脂層(B)を目的に応じて積層してもよい。また、金属箔などの層を設けてもよいし、ゴム層(C)とフッ素樹脂層(B)との層間以外には接着剤層を介在させてもよい。
またさらに、ポリマー層(C)と積層してライニング体とすることもできる。
なお、各層の厚さ、形状などは、使用目的、使用形態などによって適宜選定すればよい。
また、耐圧向上の目的で、補強糸などの補強層を適宜設けてもよい。
本発明の積層体、特に加硫積層体は、燃料低透過性に優れるほか、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性、耐侯性、耐オゾン性に優れており、また、苛酷な条件下での使用に充分耐えうるものであり、各種の用途に使用可能である。
たとえば、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系など、駆動系のトランスミッション系など、シャーシのステアリング系、ブレーキ系など、電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品などの、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型および接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシールなど)などのシール、ベローズ、ダイヤフラム、ホース、チューブ、電線などとして好適な特性を備えている。
具体的には、以下に列記する用途に使用可能である。
エンジン本体の、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、O−リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール、コントロールホースなどのホース、エンジンマウントの防振ゴム、水素貯蔵システム内の高圧弁用シール材など。
主運動系の、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなど。
動弁系の、エンジンバルブのバルブステムシールなど。
潤滑・冷却系の、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットなどや、ラジエータ周辺のウォーターホース、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホースなど。
燃料系の、燃料ポンプのオイルシール、ダイヤフラム、バルブなど、フィラー(ネック)ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホースなどの燃料ホース、燃料タンクのインタンクホース、フィラーシール、タンクパッキン、インタンクフューエルポンプマウントなど、燃料配管チューブのチューブ本体やコネクターO−リングなど、燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターO−リング、プレッシャーレギュレーターダイヤフラム、チェックバルブ類など、キャブレターのニードルバルブ花弁、加速ポンプピストン、フランジガスケット、コントロールホースなど、複合空気制御装置(CAC)のバルブシート、ダイヤフラムなど。中でも、燃料ホース及び燃料タンクのインタンクホースとして好適である。
吸気・排気系の、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキンなど、EGR(排気際循環)のダイヤフラム、コントロールホース、エミッションコントロールホースなど、BPTのダイヤフラムなど、ABバルブのアフターバーン防止バルブシートなど、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、タービンシャフトシールなど。
トランスミッション系の、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O−リング、パッキン、トルコンホースなど、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O−リング、パッキン類など。
ステアリング系の、パワーステアリングオイルホースなど。
ブレーキ系の、オイルシール、O−リング、パッキン、ブレーキオイルホースなど、マスターバックの大気弁、真空弁、ダイヤフラムなど、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)など、キャリパーシール、ブーツ類など。
基本電装品の、電線(ハーネス)の絶縁体やシースなど、ハーネス外装部品のチューブなど。
制御系電装品の、各種センサー線の被覆材料など。
装備電装品の、カーエアコンのO−リング、パッキン、クーラーホース、外装品のワイパーブレードなど。
また自動車用以外では、たとえば、船舶、航空機などの輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチーム、あるいは耐候用のパッキン、O−リング、ホース、その他のシール材、ダイヤフラム、バルブに、また化学プラントにおける同様のパッキン、O−リング、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ホース、ロール、チューブ、耐薬品用コーティング、ライニングに、食品プラント機器および食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ベルト、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブに、原子力プラント機器における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、チューブに、OA機器、一般工業部品における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウエザーストリップ、PPC複写機のロールブレードなどへの用途に好適である。たとえば、PTFEダイヤフラムのバックアップゴム材は滑り性が悪いため、使用している間にすり減ったり、破れたりする問題があったが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。
また、食品ゴムシール材用途においては、従来ゴムシール材において着香性やゴムの欠片などが食品中に混入するトラブルがあるが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。医薬・ケミカル用途のゴムシール材溶剤を使用する配管のシール材としてゴム材料は溶剤に膨潤する問題があるが、本発明の積層体を用いることにより、樹脂を被覆する事で改善される。一般工業分野では、ゴム材料の強度、すべり性、耐薬品性、透過性を改善する目的において、たとえば、ゴムロール、O−リング、パッキン、シール材等に好適に用いることができる。特に、リチウムイオン電池のパッキン用途には耐薬品性とシールの両方を同時に維持できることから好適に使用できる。その他、低摩擦による摺動性が要求される用途においては、好適に使用できる。
これらの中でも、特に上記積層体は、チューブ又はホースとして好適に用いられる。すなわち、上記積層体は、チューブ又はホースでもあることが好ましい。チューブの中でも、耐熱性、燃料低透過性の点で自動車用の燃料配管チューブ又はホースとして好適に利用できる。
本発明における前記積層体からなる燃料配管は通常の方法によって製造することができ、特に制限されることはない。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例および比較例において使用するフッ素樹脂およびその測定方法について記載する。
(1)融点
セイコー型DSC装置を用い、10℃/minの速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度を融点とした。
(2)MFR(Melt Flow Rate)
メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)製)を用い、297℃、5kg加重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定した。
(3)単層の燃料透過係数の測定
樹脂ペレットを、それぞれ、直径120mmの金型に入れ、300℃に加熱したプレス機にセットし、約2.9MPaの圧力で溶融プレスして、厚さ0.15mmのシートを得た。CE10(イソオクタンとトルエンとの容量比50:50の混合物にエタノール10容量%を混合した燃料)を18mL投入した内径40mmφ、高さ20mmのSUS316製の透過係数測定用カップに得られたシートを入れ、60℃における質量変化を1000時間まで測定した。時間あたりの質量変化、接液部のシートの表面積およびシートの厚さから燃料透過係数(g・mm/m2/day)を算出した。
以下、実施例および比較例中のフッ素樹脂は、下記表1に示すものである。
(加硫用ゴム組成物1〜33及びA〜G)
下記表2に示す材料を、40℃に温調した8インチオープンロールを用いて混練することにより、約3mm厚みのシート状の加硫用ゴム組成物1〜33及びA〜Gを得た。なお、表2の各数値は質量部を表す。
また、加硫用ゴム組成物1〜33及びA〜Gに対して、キュラストメーターII型(型番:JSRキュラストメーター、JSR社製)を用いて、160℃にて最大トルク値(MH)と最小トルク値(ML)を測定し、最適加硫時間(T90)を求めた。測定結果を表3に示す。なお、T90は、{(MH)−(ML)}×0.9+ML、T10は、{(MH)−(ML)}×0.1+MLとなる時間であり、MH及びMLは、JIS K 6300−2に準じて測定した値である。
(実施例1〜33、比較例1〜7)
厚さ約3mmの表2に示す加硫用ゴム組成物のシートと、表1に示す厚みのフッ素樹脂シートを重ね合わせ、片方の端部に幅約10〜15mmの樹脂フィルム(厚さ10μmの離形フィルム)を両シートの間に挟んだ後、得られるシートが厚み2mmになるよう金属製スペーサーを入れた金型に挿入し、170℃で15分間プレスすることにより、シート状の積層体を得た。得られた積層体を幅10mm×長さ40mm×3セットの短冊状に切断し、離形フィルムを剥がして掴みしろとした試験片を作製した。この試験片について、オートグラフ((株)島津製作所製 AGS−J 5kN)を使用して、JIS−K−6256(架橋ゴムの接着試験方法)に記載の方法に準拠し、25℃において50mm/minの引張速度で剥離試験を行い、接着強度を測定し、得られたN=3のデータを算出し、接着強度とした。また、剥離モードを観測し、以下の基準で評価した。得られた結果を表2に示す。
(接着評価)
○…積層体の界面で加硫用ゴム組成物あるいはフッ素樹脂が材料破壊し、界面で剥離するのが不可能であった。
×…積層体の界面で比較的容易に剥離した。
なお、表2〜5の接着評価及び接着強度を記載する欄において、斜線にしている欄は評価を行っていないことを意味する。