まず、一実施の形態のバッテリー制御システムにおけるバイパス放電回路部の構成と動作について説明する。図1は、一実施の形態のバイパス放電回路部の概要を示す図である。ここでは、4個の二次電池(以下、単電池またはセルという)11〜14が直列に接続された組電池(以下、バッテリーともいう)10を例に挙げて説明するが、単電池の直列数は4個に限定されるものではない。
一実施の形態のバイパス放電回路部は、2個の定電流回路21,22、4個のスイッチ31〜34および選択回路40から構成される。定電流回路21,22は、単電池11〜14の内の放電が必要な1個または複数の単電池に一定の電流を流し、それらの単電池に充電されている電荷を放電させる回路である。組電池10の正極側に接続された定電流回路21は、組電池10の正極側からスイッチ31〜34のいずれかを介して単電池11〜14のいずれかへ電流を流す方向に接続される。一方、組電池10の負極側に接続された定電流回路22は、単電池11〜14のいずれかからスイッチ31〜34のいずれかを介して組電池10の負極側へ電流を流す方向に接続される。
スイッチ31〜34は単電池11〜14と定電流回路21,22との間に設けられ、定電流回路21,22の電流を放電が必要な1個または複数の単電池へ流す切り換え回路を構成する。この一実施の形態では、各スイッチ31〜34に2回路1接点構成のスイッチを用いる。スイッチ31は接点31−1,31−2を、スイッチ32は接点32−1,32−2を,スイッチ33は接点33−1,33−2を、スイッチ34は接点34−1,34−2をそれぞれ備えており、各スイッチ31〜34の2個の接点は同時にオン(閉路)またはオフ(開路)する。
なお、ここではスイッチ31〜34に2回路1接点のものを例示するが、1回路1接点のスイッチを2個用いて各スイッチ31〜34を構成しても構わない。また、ここでは有接点のスイッチ31〜34を用いた例を示すが、定電流回路21,22の電流を放電が必要な1個または複数の単電池へ流すための回路切り換え用部材であれば、MOS−FETなどの無接点の回路切り換え部材や他の部材を用いることができる。
選択回路40は、単電池11〜14の内の放電が必要な単電池に対応するスイッチ(31〜34)をオンするための駆動回路であり、詳細を後述するセルコントローラーの制御回路(CPU)からの単電池選択信号にしたがって対応するスイッチ(31〜34)をオンし、そのスイッチを構成する2個の接点を同時に閉路する。
一実施の形態では、詳細を後述するが図1に破線で示すようにスイッチ31〜34と選択回路40を一つのICパッケージに収納する。ICパッケージ内のスイッチ31〜34と外部の単電池11〜14および定電流回路21,22とはICパッケージの端子CCH,C1〜C5,CCLを介して接続される。
次に、図1に示す一実施の形態のバイパス放電回路部の動作を説明する。一実施の形態のバイパス放電回路部では、組電池10を構成する4個の単電池11〜14の中で、放電させる必要がある単電池の個数と位置に応じてスイッチ31〜34を選択駆動する、すなわち回路を切り換えるとともに、2個の定電流回路21,22の電流値を切り換える。
図2は、組電池10を構成する4個の単電池11〜14の内のいずれか1個をバイパス放電する場合の、スイッチ31〜34と定電流回路21,22の電流値の切り換え方法を示す図である。まず、単電池11の充電容量が他の単電池12〜14よりも多く、単電池11のみをバイパス放電させる場合には、図2(a)に示すように、定電流回路21,22の電流値を所定値iに設定し、スイッチ31を選択して所定時間tの間オンする。
これにより、所定時間tの間、単電池11→定電流回路21→スイッチ接点31−2→単電池11の経路で電流iが流れると同時に、単電池11→スイッチ接点31−1→定電流回路22→単電池14→単電池13→単電池12→単電池11の経路で電流iが流れる。この結果、図2(a)に示すように、放電が不要な単電池12〜14には所定時間tの間に電流iが流れ、放電が必要な単電池11には所定時間tの間に2倍の電流2iが流れるから、単電池11,12,13,14の放電割合は2:1:1:1となり、放電電流の差により単電池11の充電容量を減らして他の単電池12〜14と均等にすることができる。
同様に、単電池12の充電容量が他の単電池11,13,14よりも多く、単電池12のみをバイパス放電させる場合には、図2(b)に示すように、定電流回路21,22の電流値を所定値iに設定し、スイッチ32を選択して所定時間tの間オンする。これにより、所定時間tの間、単電池11→定電流回路21→スイッチ接点32−2→単電池12→単電池11の経路で電流iが流れると同時に、単電池12→スイッチ接点32−1→定電流回路22→単電池14→単電池13→単電池12の経路で電流iが流れる。
この結果、図2(b)に示すように、放電が不要な単電池11,13,14には所定時間tの間に電流iが流れ、放電が必要な単電池12には所定時間tの間に2倍の電流2iが流れるから、単電池11,12,13,14の放電割合は1:2:1:1となり、放電電流の差により単電池12の充電容量を減らして他の単電池11,13,14と均等にすることができる。
また、単電池13の充電容量が他の単電池11,12,14よりも多く、単電池13のみをバイパス放電させる場合には、図2(c)に示すように、定電流回路21,22の電流値を所定値iに設定し、スイッチ33を選択して所定時間tの間オンする。さらに、単電池14の充電容量が他の単電池11〜13よりも多く、単電池14のみをバイパス放電させる場合には、図2(d)に示すように、定電流回路21,22の電流値を所定値iに設定し、スイッチ34を選択して所定時間tの間オンする。
これらの単電池13または単電池14のバイパス放電時の電流の流れについては、上述した単電池11,12の場合と同様であり説明を省略するが、いずれも放電電流の差により単電池13または単電池14の充電容量を減らして他の単電池と均等にすることができる。
なお、図2において、定電流回路21,22の電流値(バイパス放電電流値)iと、スイッチ31〜34をオンする時間(バイパス放電時間)tは、バイパス放電容量、バイパス放電回路の許容電流、放熱容量、組電池10の充放電電流との関係などにより,適宜決定する。
次に、組電池10を構成する4個の単電池11〜14の内の2個の単電池をバイパス放電する場合の、スイッチ31〜34と定電流回路21,22の電流値の切り換え方法を説明する。図3は、単電池11と13をバイパス放電する場合のスイッチ31〜34と定電流回路21,22の電流値の切り換え方法を示す図である。単電池11と13の充電容量が他の単電池12,14よりも多く、単電池11と13をバイパス放電する場合には、第1から第3の3段階にわたって順次、スイッチ31〜34を切り換えるとともに、定電流回路21,22の電流値を切り換える。
まず、図3(a)に示す第1段階において、定電流回路21の電流値を所定値iに、定電流回路22の電流値を0にそれぞれ設定し、スイッチ31を選択して所定時間tの間オンする。これにより、所定時間tの間、定電流回路21→スイッチ接点31−2→単電池11→定電流回路21の経路で電流iが流れる。次に、図3(b)に示す第2段階では、定電流回路21の電流値を所定値iに、定電流回路22の電流値を0にそれぞれ設定し、スイッチ33を選択して所定時間tの間オンする。これにより、所定時間tの間、定電流回路21→スイッチ接点33−2→単電池13→単電池12→単電池11→定電流回路21の経路で電流iが流れる。
さらに、図3(c)に示す第3段階において、定電流回路21の電流値を0に、定電流回路22の電流値を所定値iにそれぞれ設定し、スイッチ33を選択して所定時間tの間オンする。これにより、所定時間tの間、定電流回路22→単電池14→単電池13→スイッチ接点33−1→定電流回路22の経路で電流iが流れる。
第1段階から第3段階までの段階的なバイパス放電動作を行った結果、図3に示すように、放電が不要な単電池12と14には所定時間tの間に電流iが流れ、放電が必要な単電池11と13には2倍の時間2tの間に電流iが流れるから、単電池11,12,13,14の放電割合は2:1:2:1となり、放電時間の差により単電池11と13の充電容量を減らして他の単電池12,14と均等にすることができる。
組電池10を構成する4個の単電池11〜14の内の単電池11と13をバイパス放電する場合を例に挙げて説明したが、単電池11と13以外の2個の単電池をバイパス放電する場合にも、放電が必要な2個の単電池の組電池10内の位置に応じた手順で3段階にわたって順次、スイッチ31〜34を切り換えるとともに、定電流回路21,22の電流値を切り換える。単電池11と13以外の2個の単電池のバイパス放電動作については図示と説明を省略する。
なお、図3において、定電流回路21,22の電流値(バイパス放電電流値)iと、スイッチ31〜34をオンする時間(バイパス放電時間)tは、バイパス放電容量、バイパス放電回路の許容電流、放熱容量、組電池10の充放電電流との関係などにより,適宜決定する。
次に、組電池10を構成する4個の単電池11〜14の内の3個の単電池をバイパス放電する場合の、スイッチ31〜34と定電流回路21,22の電流値の切り換え方法を説明する。図4は、3個の単電池11,13,14をバイパス放電する場合のスイッチ31〜34と定電流回路21,22の電流値の切り換え方法を示す図である。単電池11,13,14の充電容量が他の単電池12よりも多く、単電池11,13,14をバイパス放電する場合には、第1と第2の2段階にわたって順次、スイッチ31〜34を切り換えるとともに、定電流回路21,22の電流値を切り換える。
まず、図4(a)に示す第1段階において、定電流回路21の電流値を所定値iに、定電流回路22の電流値を0にそれぞれ設定し、スイッチ31を選択して所定時間tの間オンする。これにより、所定時間tの間、定電流回路21→スイッチ接点31−2→単電池11→定電流回路21の経路で電流iが流れる。次に、図4(b)に示す第2段階では、定電流回路21の電流値を0に、定電流回路22の電流値を所定値iにそれぞれ設定し、スイッチ33を選択して所定時間tの間オンする。これにより、所定時間tの間、定電流回路22→単電池14→単電池13→スイッチ接点33−1→定電流回路22の経路で電流iが流れる。
第1段階から第2段階までの段階的なバイパス放電動作を行った結果、図4に示すように、放電が不要な単電池12はバイパス放電が行われず、放電が必要な単電池11,13,14には所定時間tの間に電流iが流れるから、単電池11,12,13,14の放電割合は1:0:1:1となり、放電電流の差により単電池11,13,14の充電容量を減らして他の単電池12と均等にすることができる。
組電池10を構成する4個の単電池11〜14の内の3個の単電池11,13,14をバイパス放電する場合を例に挙げて説明したが、単電池11,13,14以外の3個の単電池をバイパス放電する場合にも、放電が必要な単電池の組電池10内の位置に応じた手順で第1段階と第2段階にわたって順次、スイッチ31〜34を切り換えるとともに、定電流回路21,22の電流値を切り換える。単電池11,13,14以外の3個の単電池のバイパス放電動作については図示と説明を省略する。
なお、図4において、定電流回路21,22の電流値(バイパス放電電流値)iと、スイッチ31〜34をオンする時間(バイパス放電時間)tは、バイパス放電容量、バイパス放電回路の許容電流、放熱容量、組電池10の充放電電流との関係などにより,適宜決定する。
次に、本願発明に係わるバッテリー制御システムを電気自動車やハイブリッド電気自動車に適用した一実施の形態を説明する。図5は、電気自動車に搭載した一実施の形態のバッテリー制御システムの全体構成を示すブロック図である。図5において、図1に示すバイパス放電回路の機器および回路と同様な機器および回路に対しては同一の符号を付して説明する。また、図5では、本願発明に係わるバッテリー制御システムと直接関係のない車載機器および車載装置の図示と説明を省略する。
車両コントローラー400、モーターコントローラー300、バッテリーコントローラー200およびセルコントローラー100は、車両内に設置される通信回路を介して互いに情報の授受を行う。
車両コントローラー400は、電気自動車の運転者が操作するアクセルペダルやブレーキペダル、あるいは変速レバー等の車両運転操作装置からの操作信号に基づいて車両の走行速度や制駆動力などを制御する。モーターコントローラー300は、車両コントローラー400からの速度指令や制駆動力指令に基づいてバッテリーコントローラー200およびインバーター340を制御し、車両走行駆動用モーター350の回転速度およびトルクを制御する。
バッテリーコントローラー200は、電圧センサー210、電流センサー220、温度センサー230により検出されたバッテリー(組電池)10の電圧、電流、温度に基づいてバッテリー10の充放電とSOC(State Of Charge;以下では“充電状態”ともいう)を制御するとともに、セルコントローラー100を制御してバッテリー10を構成する複数の単電池(セル)11〜14の充電容量を管理し、充電容量のばらつき補正(セルバランス)を行う。
なお、車両コントローラー400、モーターコントローラー300、バッテリーコントローラー200およびモーター350については、本願発明に関わる単電池11〜14の充電容量のばらつき補正制御、すなわち上述したバイパス放電制御と直接、関係しないので、これらの詳細な説明を省略する。
セルコントローラー100は、図1に示すスイッチ回路30と選択回路40の他に、電圧検出回路50、マルチプレクサ60、制御回路(CPU)70などを備え、バッテリー10を構成する複数の単電池11〜14の電圧を検出して各単電池の充電容量を調べ、選択回路40によりスイッチ回路30を駆動して充電容量の高い単電池11〜14を定電流回路20に接続し、定電流回路20により充電容量の高い単電池11〜14に一定の電流を流して放電させる。
一実施の形態のセルコントローラー100には、従来のバイパス放電回路の放電用抵抗器のような高温の発熱体がないため、セルコントローラー100は1枚のICパッケージに収納される。
バッテリー10に充電された直流電力は開閉器310,320を介して平滑コンデンサー330およびインバーター340へ供給され、インバーター340により交流電力に変換されて交流モーター350に印加され、交流モーター350の駆動が行われる。一方、車両の制動時には、交流モーター350により発電された交流電力がインバーター340により直流電力に変換され、平滑用コンデンサー330により平滑されて開閉器310,320を介してバッテリー10に印加され、バッテリー10の充電が行われる。
なお、図5に示す一実施の形態のバッテリー制御システムでは、4個の単電池(セル)11〜14が直列に接続されたバッテリー(組電池)10を例に挙げて説明するが、電気自動車に搭載されるバッテリーはさらに多くの単電池が直並列に接続され、両端電圧が数100Vの高圧、高容量のバッテリーが一般的であるが、もちろんこのような高圧、高容量のバッテリーに対しても本願発明を適用することができる。
図6はスイッチ回路30の一実施例を示す回路図である。図6において、図1に示す機器および回路と同様な機器および回路に対しては同一の符号を付して説明する。このスイッチ回路30では、図1に示すスイッチ接点31−1,31−2,32−1,32−2,33−1,33−2,34−1,34−2の代わりに、MOS−FET311,312,321,322,331,332,341,342を用い、これらの各MOS−FETと直列に逆流防止用ダイオードD1〜D8を接続する。なお、MOS−FET312,322,332,342はレベルシフタ(インバータ)INV1〜INV4を介して選択回路40に接続される。
図6に示すスイッチ回路30においても、図1に示すスイッチ31〜34と同様に、選択回路40によりMOS−FET311,312,321,322,331,332,341,342をオンまたはオフし、定電流回路21,22により放電が必要な1個または複数の単電池11〜14へ一定の電流を流す。
図7は定電流回路21の一実施例を示す回路図である。なお、図1に示す機器および回路と同様な機器および回路に対しては同一の符号を付して説明する。オペアンプA11のバイアス端子(+端子)に定電流回路21の電流設定値に相当する電圧信号が印加されると、オペアンプA11により増幅されバイアス抵抗R11を介してトランジスターTr11に入力される。これにより、組電池(バッテリー)10の+端子からトランジスターTr12、トランジスターTr11およびバイパス電流検出用抵抗R12を介して組電池10の−端子へ電流が流れる。このとき、抵抗R12の両端にはバイパス電流に応じた電圧が発生し、この電圧はオペアンプA11の−端子へフィードバックされ、オペアンプA11によりトランジスターTr11に定電流回路21の電流設定値に応じた一定のコレクタ電流が流れる。
トランジスターTr12とTr13はカレントミラー回路になっており、トランジスターTr12に定電流回路21の電流設定値に応じた一定の電流が流れると、組電池10の+端子からトランジスターTr13を介してスイッチ回路30の端子CCHへ定電流回路21の電流設定値に応じた一定の電流が流れる。つまり、この定電流回路21は、バイアス端子(オペアンプA11の+端子)に定電流回路21の電流設定値に応じた電圧信号が印加されると、組電池10の+端子からスイッチ回路30の端子CCHへ定電流回路21の電流設定値に等しい一定電流を流す。
図8は定電流回路22の一実施例を示す回路図である。なお、図1に示す機器および回路と同様な機器および回路に対しては同一の符号を付して説明する。バイアス端子(オペアンプA21の+端子)に定電流回路22の電流設定値に相当する電圧信号が印加されると、オペアンプA21により増幅されバイアス抵抗R21を介してトランジスターTr21に入力される。これにより、スイッチ回路30の端子CCLからトランジスターTr21およびバイパス電流検出用抵抗R22を介して組電池10の−端子へ電流が流れる。このとき、抵抗R22の両端にはバイパス電流に応じた電圧が発生し、この電圧はオペアンプA21の−端子へフィードバックされ、オペアンプA21によりトランジスターTr21に定電流回路22の電流設定値に応じた一定のコレクタ電流が流れる。
つまり、この定電流回路22は、オペアンプA21のバイアス端子(+端子)に定電流回路22の電流設定値に応じた電圧信号が印加されると、スイッチ回路30の端子CCLから組電池10の−端子へ定電流回路22の電流設定値に等しい一定電流を流す。
なお、定電流回路21と22の構成については図7および図8に示す実施例に限定されない。
ここで、一実施の形態のバイパス放電回路部における発熱と、従来のバイパス放電回路部における発熱とを比較する。上述したように、従来のバイパス放電回路部では、バイパス抵抗器とスイッチング素子の直列体を各単電池に並列に接続し、バイパス放電を行うすべての単電池のスイッチング素子をオンしてバイパス抵抗器に放電電流を流すので、バイパス放電を行うすべての単電池に並列に接続されたバイパス抵抗器が発熱する。そのため、放熱対策が難しく、バイパス放電回路部が大型になってバッテリー装置への組み込みに難点がある。
この一実施の形態のバイパス放電回路部では、バイパス抵抗器を用いていないのでバイパス抵抗器による発熱はないが、定電流回路21、22の損失による発熱がある。図7に示す定電流回路21では、カレントミラー回路を構成するトランジスターTr12,Tr13の発熱は比較的少ないが、トランジスターTr11の発熱がある。また、図8に示す定電流回路22では、トランジスターTr21の発熱がある。これらトランジスターTr11とTr21の発熱容量は、放電対象の1または複数の単電池の放電容量に相当し、従来のバイパス放電抵抗器による放熱容量と同じである。
しかし、発熱が大きなトランジスターTr11,Tr21は、ヒートシンクなどの放熱部材を用いることによって、従来の不特定多数のバイパス放電抵抗器による発熱と比べ、比較的容易に放熱処理することができる。また、図5で説明したように、定電流回路20(21,22)をセルコントローラー100と別置きにすることによって、セルコントローラー100から放熱体を除外することが可能になり、セルコントローラー100を1枚のICパッケージに収納することが可能になり、機器を小型化することができ、バッテリー制御システムの製造と車載バッテリー装置への組み込みが容易になる。
図9は、電圧検出回路50の一実施例とマルチプレクサ60および制御回路70を示す回路図である。組電池(バッテリー)10の各単電池11〜14の両端は差動増幅器A51〜A54の+端子と−端子に接続され、各差動増幅器A51〜A54は各単電池11〜14の両端電圧(セル電圧)に応じた電圧信号を出力する。
マルチプレクサ60は、制御回路(CPU)70のポートから出力されるマルチプレクサ入力切替信号にしたがって差動増幅器A51〜A54の出力電圧信号を順次切り替え、制御回路70のAD入力端子へ接続する。制御回路70は、マルチプレクサ60からAD入力端子へ入力される差動増幅器A51〜A54の出力電圧信号をAD変換し、各単電池11〜14の両端電圧(セル電圧)を検出する。
図10は、一実施の形態のセルバランス(充電容量のばらつき補正)制御を示すフローチャートである。セルコントローラー100の制御回路(CPU)70は、バッテリーコントローラー200からのセルバランス開始指令にしたがってセルバランス制御を開始する。なお、ここでは図5〜図9に示す一実施の形態のバッテリー(組電池)10、定電流回路21,22、セルコントローラー100およびバッテリーコントローラー200のセルバランス制御を例に挙げて説明する。
ステップ1において、各単電池11〜14のOCV(Open Circuit Voltage;開回路電圧または開放電圧)を測定する。具体的には、図9に示す電圧検出回路50、マルチプレクサ60および制御回路70により検出された各単電池11〜14の電圧、電流センサー220により検出された電流に基づいて、制御回路70のメモリ(不図示)に予め記憶されている単電池11〜14の充放電電流と電圧との関数から、電流が0Aのときの電圧をOCVとして算出する。
ステップ2では、各単電池11〜14のOCVが予め設定された規定範囲内に分布しているかを調べる。図11は複数の単電池の開放電圧OCVの分布度数の一例を示す。すべての単電池11〜14のOCVが規定範囲内に分布している場合は、このセルバランス制御を終了する。OCVが規定範囲よりも高い単電池がある場合にはステップ3へ進み、OCVが平均値を示す単電池とOCVが規定範囲より高い単電池のSOCを算出する。なお、SOCの検出方法はこの一実施の形態の算出方法に限定されない。
続くステップ4では、OCVが平均値を示す単電池のSOCとOCVが規定範囲より高い単電池のSOCとの差、単電池の公称容量および周囲温度に基づいて、放電時間すなわちスイッチ回路30のオン時間と、バイパス放電電流すなわち定電流回路21,22の電流設定値を決定する。例えば、SOCの差がA%、単電池11〜14の公称容量がK(Ah)の場合には、OCVが規定範囲より高い単電池の放電容量Z(Ah)は、
Z=K・(A/100) (Ah) ・・・(1)
となる。
ここで、バイパス放電電流(定電流回路21,22の電流設定値)は、バッテリー10の周囲温度に応じて決定する。例えば、バッテリー10の周囲温度が所定値のときのバイパス放電電流をiAとし、周囲温度が所定値より高い場合は周囲温度が高くなるほどバイパス放電電流を小さくする。一方、周囲温度が所定値より低い場合は周囲温度が低くなるほどバイパス放電電流を大きくする。周囲温度に応じてバイパス放電電流を決定した後、(1)式で求めた放電容量Z(Ah)から放電時間を決定する。
バッテリー10の周囲温度が高い場合は、定電流回路21,22の電流設定値を低くするため、放電時間は長くなるが、定電流回路21,22のトランジスターTr11,Tr21(図7、図8参照)の単位時間当たりの発熱が抑制される。逆に、バッテリー10の周囲温度が低い場合には、定電流回路21,22の電流設定値を高くするため、放電時間が短くなり、短時間でセルバランスをとることができる。
ステップ5において、OCVが規定範囲より高くバイパス放電をしなければならない単電池に対応するスイッチ回路30のMOS−FET(図6参照)をオンして定電流放電を開始する。ステップ6で、上記ステップ4で決定したバイパス放電時間が経過したか否かを確認し、放電時間が経過したらステップ7へ進み、放電対象の単電池に対応するスイッチ回路30のMOS−FETをオフして定電流放電を終了する。
なお、放電対象の単電池の個数と位置に応じて適宜、上述したようにスイッチ回路30の切り換え、定電流回路21,22の電流設定値の切り換え、あるいは段階的なスイッチ回路30の切り換えと定電流回路21,22の電流設定値の切り換えを行う。
上述した一実施の形態では4個の単電池11〜14を直列に接続したバッテリー(組電池)10を例に挙げて説明したが、一般に電気自動車には端子電圧が高く、かつ充電容量の大きなバッテリーが必要になるため、さらに多くの単電池を直並列に接続したバッテリーが用いられる。そのような高圧、大容量のバッテリーに対しても本願発明のバッテリー制御システムを適用することができる。
図12は、8個の単電池11〜18を直列に接続したバッテリー(組電池)10Aに一実施の形態のセルコントローラー100を適用した変形例の構成を示す。図12において、単電池11〜14に対してセルコントローラー101が、単電池15〜18に対してセルコントローラー102がそれぞれ用いられる。これらのセルコントローラー101,102は、図5〜図9に示すセルコントローラー100と同じものであり、それぞれICパッケージに収納されている。
セルコントローラー101の端子CCH−1は定電流回路21を介して単電池11の+端子に接続され、セルコントローラー102の端子CCL−2は定電流回路23を介して単電池18の−端子に接続されている。また、セルコントローラー101の端子CCL−1は定電流回路22を介してセルコントローラー102の端子CCH−2に接続されている。
セルコントローラー101のスイッチ31〜34は選択回路41により駆動され、セルコントローラー102のスイッチ35〜38は選択回路42により駆動される。これらの選択回路41,42は図5および図6に示す選択回路40と同じものである。スイッチ31〜34の代わりに、図6に示すようなMOS−FETを用いた切り換え回路を用いてもよい。なお、セルコントローラー101とセルコントローラー102の電圧検出回路50、マルチプレクサ60および制御回路70の図示を省略する。
図13は、8個の単電池11〜18を直列に接続したバッテリー(組電池)10Aに一実施の形態のセルコントローラー100を適用した他の変形例の構成を示す。図13において、単電池11〜14に対してセルコントローラー103が、単電池15〜18に対してセルコントローラー104がそれぞれ用いられる。これらのセルコントローラー103,104には、それぞれ端子CCLとCCHが2個ずつ設けられているが、それ以外は図5〜図9に示すセルコントローラー100と同じものであり、それぞれICパッケージに収納されている。
セルコントローラー103の端子CCH−1は定電流回路21を介して単電池11の+端子に接続され、セルコントローラー103の端子CCL−1はセルコントローラー104の端子CCL−2へ、セルコントローラー103の端子CCH−1はセルコントローラー104の端子CCH−2へそれぞれ接続されている。また、セルコントローラー104の端子CCL−2は定電流回路22を介して単電池18の−端子に接続されている。図13に示す例では、セルコントローラー103と104の間の定電流回路(図12に示す定電流回路22に相当)を省略することができる。
単電池の個数に応じてセルコントローラーを図12または図13に示すように縦続接続することによって、さらに多くの単電池を直並列に接続したバッテリーに対しても本願発明のバッテリー制御システムを適用することができる。
上述した一実施の形態とその変形例では、一つのセルコントローラーが直列に接続された4個の単電池をセルバランス制御する例を示したが、一つのセルコントローラーが直列接続された2個〜3個あるいは5個以上の単電池のセルバランス制御を行う場合についても同様である。なお、直列接続された単電池の個数が多くなるほど、スイッチ回路の切り換えと定電流回路の電流設定値の切り換えの段階数が多くなるので、バッテリー全体のセルバランス制御における所要時間と放熱との関係から、一つのセルコントローラー当たりの最適な単電池個数を決定するのが望ましい。
上述した一実施の形態とその変形例において、バッテリー(組電池)を構成する二次電池(単電池またはセル)にはリチウムイオン電池、ニッケル水素電池などあらゆる種類の二次電池を適用することができる。
特に、エネルギー密度が高く過充電に注意を要するリチウムイオン電池では、安全性を確保するために単電池の電圧検出が不可欠である。また、リチウムイオン電池は、ニッケル水素電池のように過充電により充電容量のばらつきを補正することができないため、二次電池間の充電容量にばらつきが生じると、バッテリーとしての充放電可能な容量が少なくなる上に、二次電池の劣化状態が異なるためにバッテリーとしての寿命が短くなり、二次電池間の充電容量のばらつきを補正することが重要になる。
したがって、本願発明に係わるバッテリー制御システムを複数のリチウムイオン電池が直列に接続されたバッテリー装置に適用することによって、バイパス放電回路部の放熱処理が容易になり、バッテリー装置への組み込みが容易になる顕著な効果が得られる。
上述した一実施の形態とその変形例では、本願発明に係わるバッテリー制御システムを電気自動車またはハイブリッド電気自動車のバッテリー装置に適用した例を示したが、本願発明のバッテリー制御システムは、電気自動車以外のあらゆる用途のバッテリー装置に適用することができる。
なお、上述した実施の形態とそれらの変形例において、実施の形態どうし、または実施の形態と変形例とのあらゆる組み合わせが可能である。
上述した一実施の形態とその変形例によれば以下のような作用効果を奏することができる。まず、複数の二次電池11〜14が直列に接続された組電池10における二次電池間の充電状態SOCのばらつきを補正するバッテリー制御システムにおいて、電圧検出回路50,マルチプレクサ60および制御回路70により各二次電池11〜14の充電状態を検出するとともに、制御回路70により各二次電池11〜14の充電状態に基づいて各二次電池11〜14の放電の要否を判定し、スイッチ回路30、選択回路40および制御回路70により放電を要する二次電池に定電流回路21,22の一定電流が流れるように回路を切り換えるようにしたので、従来のバイパス放電抵抗器による発熱がなくなり、定電流回路21,22のトランジスターによる発熱に置き換わることになり、この定電流回路21,22のトランジスターの発熱は、ヒートシンクなどの放熱部材を用いることによって容易に放熱処理することができる。
その上さらに、発熱源となる定電流回路21,22を、スイッチ回路30、選択回路40、電圧検出回路50、マルチプレクサ60および制御回路70から構成されるセルコントローラー100と別置きにすることによって、セルコントローラー100から放熱体を除外することが可能になり、セルコントローラー100を1枚のICパッケージに収納することが可能になって、機器を小型化することができ、バッテリー制御システムの製造とバッテリー装置への組み込みが容易になる。
また、一実施の形態とその変形例によれば、放電要と判定された二次電池の組電池10内での位置に応じて、スイッチ回路30、選択回路40および制御回路70によって放電を要する二次電池に定電流回路21,22の一定電流が流れるように回路を切り換えるようにしたので、放電を要する二次電池が組電池10内のどの位置にあっても、当該二次電池に一定電流を流して放電させることができる。
一実施の形態とその変形例によれば、制御回路70によって、放電要と判定された二次電池の個数に応じて、スイッチ回路30、選択回路40および制御回路70によって放電を要する二次電池に定電流回路21,22の一定電流が流れるように回路を切り換えるようにしたので、組電池10内の放電を要する二次電池の個数に関わらず、それらの二次電池に一定電流を流して放電させることができる。
一実施の形態とその変形例によれば、放電要と判定された組電池における二次電池の位置と個数に応じた所定の手順で、スイッチ回路30による回路の切り換えと定電流回路21,22の電流値の切り換えとを段階的に行うようにしたので、組電池10内の放電を要する二次電池の個数と位置に関わらず、それらの二次電池に一定電流を流して放電させることができる。
一実施の形態とその変形例によれば、制御回路70によって、温度センサー230により検出された組電池10の周囲温度に応じて定電流回路21,22の電流値、すなわちバイパス放電電流値を変更するようにしたので、定電流回路21,22の発熱量を周囲温度に応じて調節することができ、定電流回路21,22の温度を適正に保つことができる。
一実施の形態とその変形例によれば、スイッチ回路30、選択回路40、電圧検出回路50、マルチプレクサ60、制御回路70をICパッケージ内に収納するようにしたので、機器を小型化することができ、バッテリー制御システムの製造と車載バッテリー装置への組み込みが容易になる。
一実施の形態とその変形例によれば、組電池を構成する複数の二次電池を所定個数ごとにグループ化し、それぞれのグループに属する所定個数の二次電池に対応するスイッチ回路30、選択回路40、電圧検出回路50、マルチプレクサ60、制御回路70をそれぞれ別個のICパッケージに収納するようにしたので、多数の二次電池が直列に接続された組電池に対しても、機器を小型化することができ、バッテリー制御システムの製造と車載バッテリー装置への組み込みが容易になる。