実施の形態1:
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る交通信号制御装置を含む交通信号制御システムの概要を示す模式図である。本実施形態の交通信号制御システムは、交通信号制御装置1、信号灯器2、路上装置3、交通情報処理装置4などを含む。交通情報処理装置4は、旅行時間の算出などを行う装置であり、交通管制センター内に設置されている。なお、交通情報処理装置4は、交通管制センター内に設置されず、道路上に設置されていても良い。交通情報処理装置4は、複数の交差点Iのそれぞれに設置された交通信号制御装置1と電話回線などの通信回線(不図示)を介して接続されている。また、交通情報処理装置4は、道路上に設置された複数の路上装置3と電話回線などの通信回線(不図示)を介して接続されている。
図1において、それぞれの交差点Iの識別コードとして、左から順にIS1、IS2、IS3が設定されており、また、これらの交差点I(IS1)、交差点I(IS2)、交差点I(IS3)のそれぞれに設置された交通信号制御装置1の識別コードとして、それぞれSG1、SG2、SG3が設定されている。また、図1において、交通信号制御の対象となる道路区間であって、上り方向と下り方向で区別した道路区間である交通管理区間が道路上に設定されており、例えば図1では、交差点I(IS1)付近の路上装置3の設置地点から交差点I(IS3)付近の路上装置3の設置地点へ向かう方向に交通管理区間SEC1(SEC1は交通管理区間の識別コード)が、交差点I(IS3)付近の路上装置3の設置地点から交差点I(IS1)付近の路上装置3の設置地点へ向かう方向に交通管理区間SEC2(SEC2は交通管理区間の識別コード)が設定されている。
車両10には車載装置5が搭載されており、車載装置5は所定の周期毎(例えば、1秒毎)に時刻、車両10の位置を軌跡情報として蓄積する。車載装置5を搭載した車両10が路上装置3の通信領域を通過する際に、車載装置5は路上装置3との間で無線通信を行い、それまでに蓄積した軌跡情報を車載装置5の識別コードとともにアップリンク情報として路上装置3に送信し、また、交通情報を含むダウンリンク情報を路上装置3から受信する。
図2は車両10に搭載されている車載装置5の構成を示すブロック図である。GPS処理部501は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、GPS信号に含まれる時刻情報、GPS衛星の軌道、測位補正情報に基づいて、車両10の位置(緯度、経度及び高度)を計測する。方位センサ502は、光ファイバジャイロなどで構成されており、車両10の方位及び角速度を計測する。車速取得部503は、車速センサ(不図示)が車輪の角速度を検出することにより計測した車両10の速度のデータを取得する。
通信部504は、通信回線と接続された通信インターフェースであり、路上装置3からダウンリンク情報を受信する。
記憶部505は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、通信部504が受信したダウンリンク情報を記憶する。また、記憶部505は、車載装置5の識別コードと道路地図データを記憶している。道路地図データには、交差点の識別コードと交差点Iの位置とを対応付けた交差点データ、リンク(上り方向と下り方向で区別した交差点間の道路区間)の識別コード(リンクID)と、リンクの始点・終点・補間点(道路が折れ曲がる地点に対応)それぞれの位置と、リンクコストと、リンクの長さと、リンクの始点に接続するリンクのリンクIDと、リンクの終点に接続するリンクのリンクIDとを対応付けたリンクデータなどが含まれている。
リンクコストは、例えば、リンクと次に接続するリンクの組合せの数だけ設定されており、リンクの始点に進入してから当該リンクの終点を退出し、次に接続するリンクの始点に進入するまでに要する時間が設定されている。この場合、リンクコストには、リンクの始点から終点までを走行するのに要するコストと、リンクの終点から次のリンクの始点までを走行するのに要するコスト、すなわち、交差点を通過するのに要するコストが含まれている。
また、記憶部505は、所定の周期毎(例えば、1秒毎)に、時刻、位置(緯度、経度及び高度)の情報を軌跡情報として蓄積する。
通信部504は、車両10が路上装置3の通信領域を通過する際に、それまでに記憶部505に蓄積した軌跡情報を車載装置5の識別コードとともにアップリンク情報として路上装置3に送信する。
操作部506は、タッチパネルやボタン等から構成されており、ドライバを含む車両10の搭乗者が目的地の設定等を行えるようになっている。表示部507は、制御部509が後述する経路探索処理において作成した画像データを車両10のダッシュボード部分に取り付けられたモニタ装置(不図示)に表示する。音声出力部508は、制御部509が後述する経路探索処理において作成した音声データをスピーカー(不図示)から出力する。
制御部509は、1又は複数のマイクロコンピュータ等から構成されており、GPS処理部501、方位センサ502、車速取得部503、通信部504、記憶部505、操作部506、表示部507、音声出力部508の各処理を制御する。
また、制御部509は、GPS処理部501が計測した車両10の位置、方位センサ502が計測した方位及び角速度、車速取得部503が取得した速度の各データ、記憶部505に記憶している道路地図データに基づいてマップマッチング処理を行い、道路地図データのリンク上における車両10の現在位置を求める。
また、制御部509は、以下に説明する経路探索処理を実行する。制御部509は、搭乗者による操作部506への操作によって目的地の設定が行われると、記憶部505に記憶したダウンリンク情報に含まれる交通情報を考慮して、車両10の現在位置から目的地までの誘導経路を探索し、当該誘導経路を道路地図に重畳した画像データをモニタに作成するとともに、経路誘導の探索を終了した旨の音声データを作成する。制御部509は、作成した画像データをモニタ装置に表示するとともに、作成した音声データをスピーカーから出力する。
路上装置3は、光ビーコン、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication:専用狭域通信)などの局所通信装置であり、車両10に搭載された車載装置5との間で各種情報を無線通信する。路上装置3は、車載装置5と各種情報の通信を行う通信部3aと、通信部3aを制御する通信制御装置3bとを含んでいる。路上装置3は、交通情報処理装置4からダウンリンク情報を受信し、この情報を車載装置5に送信する。また、路上装置3は車載装置5からアップリンク情報を受信し、この情報を交通情報処理装置4に送信する。
図3は交通情報処理装置4の構成を示すブロック図である。図3に示すように、交通情報処理装置4は、制御部401、表示部402、通信部403、記憶部404及び操作部405を含んでいる。制御部401は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなり、路上装置3からアップリンク情報を受信して、旅行時間の算出等を行う。制御部401は、内部バスを介して上記ハードウェア各部と繋がっており、これら各部の動作も制御する。
通信部403は、通信回線と接続された通信インターフェースであり、路上装置3からアップリンク情報を受信する。また、通信部403は、制御部401が後述する旅行時間算出処理において算出した旅行時間情報を交通信号制御装置1に送信する。また、通信部403は、制御部401が後述する交通情報作成処理において作成したダウンリンク情報を路上装置3に送信する。
記憶部404は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、後述する旅行時間算出処理、交通情報作成処理を行うプログラム、道路地図データ等を記憶している。
道路地図データには、交差点の識別コード(交差点ID)と交差点Iの位置とを対応付けた交差点データ、リンクの識別コード(リンクID)と、リンクの始点・終点・補間点(道路が折れ曲がる地点に対応)それぞれの位置と、リンクコストと、リンクの長さと、リンクの始点に接続するリンクのリンクIDと、リンクの終点に接続するリンクのリンクIDとを対応付けたリンクデータなどが含まれている。
道路地図データには、さらに、交通管理区間の識別コードと、交通管理区間の始点・終点・補間点それぞれの位置と、交通管理区間の旅行時間と、交通管理区間の長さとを対応付けた交通管理区間データが含まれている。
また、記憶部404は、交通信号制御装置1の識別コードと交通管理区間の識別コードを対応付けた交通信号制御装置−交通管理区間対応テーブルを記憶している。図4は交通信号制御装置−交通管理区間対応テーブルの例を示す説明図である。交通信号制御装置−交通管理区間対応テーブルは、交通信号制御装置1の識別コード、当該信号制御装置1に対応付けられた交通管理区間の識別コードの各欄から構成されている。例えば、識別コードがSG1である交通信号制御装置1は、識別コードがSEC1の交通管理区間と、識別コードがSEC2である交通管理区間の2つに対応付けられていることを示している。逆に、識別コードがSEC1である交通管理区間は、識別コードがSG1である交通信号制御装置1と、識別コードがSG2である交通信号制御装置1と、識別コードがSG3である交通信号制御装置1の3つに対応付けられていることを示している。
また、記憶部404は、制御部401が後述する旅行時間算出処理において算出した旅行時間情報、制御部401が後述する交通情報作成処理において作成したダウンリンク情報を一時的に記憶する。また、記憶部404は、通信部403が受信したアップリンク情報に含まれる軌跡情報を、車載装置5の識別コード毎に記憶する。
表示部402は、自身が管轄するエリアの道路地図と、この道路地図上のすべての交通信号制御装置1、路上装置3、車両感知器(不図示)等の位置が表示された表示画面により構成され、中央オペレータに渋滞や事故等の交通状況を報知するものである。
操作部405は、キーボードやマウス等の入力インターフェースよりなり、この操作部405によって中央オペレータが上記表示部402に対する表示切り替え操作等を行えるようになっている。
ここで、交通情報処理装置4の制御部401が実行する旅行時間算出処理の手順について説明する。制御部401は、記憶部404に車載装置5の識別コード毎の軌跡情報を記憶する度に、識別コード毎の軌跡情報と記憶部404に記憶している道路地図データの交通管理区間データに基づいてマップマッチング処理を行い、それぞれの車載装置5が移動(走行)した交通管理区間を求める。次いで、制御部401は、識別コード毎の軌跡情報から、上記で求めた交通管理区間の始端、終端に最も接近している位置及びその時刻を抽出し、終端に最も接近している位置における時刻から始端に最も接近している位置における時刻を差し引いて、当該交通管理区間の旅行時間を算出する。次いで、制御部401は、交通情報処理装置4の記憶部404に記憶している交通信号制御装置−交通管理区間対応テーブルを参照し、算出した交通管理区間の旅行時間を当該交通管理区間に対応付けられた交通信号制御装置1に送信する。
交通情報処理装置4は、図1における交通管理区間SEC1、SEC2の旅行時間を算出した場合には、当該旅行時間情報を交通信号制御装置1(SG1)、交通信号制御装置1(SG2)、交通信号制御装置1(SG3)のそれぞれに送信する。
次に、交通情報処理装置4の制御部401が実行する交通情報作成処理の手順について説明する。制御部401は、上記の交通管理区間の旅行時間の算出と同様にして、記憶部404に記憶した識別コード毎の軌跡情報と道路地図データのリンクデータに基づいて、各リンクの旅行時間を算出する。次いで、制御部401は、各リンクの旅行時間とリンクの長さに基づいて、各リンクにおける車両の走行速度を算出し、各リンクの渋滞状況を判定する。すなわち、リンクにおける走行速度が0km/h以上10km/h未満の場合は渋滞と判定し、10km/h以上20km/h未満の場合は混雑と判定し、20km/h以上の場合は渋滞なしと判定する。次いで、制御部401は、算出した各リンクの旅行時間と渋滞状況に基づいてダウンリンク情報を作成する。次いで、制御部401は、作成したダウンリンク情報を複数の路上装置3に送信する。
図5は本発明に係る交通信号制御装置の構成を示すブロック図である。交通信号制御装置1の制御部101は、1又は複数のマイクロコンピュータ等から構成されている。制御部101には、内部バスを介して灯器駆動部102、通信部103、記憶部104が接続されており、制御部101は、これらのハードウェア各部の動作を制御する。
また、制御部101は、後述する信号制御パラメータ決定処理を実行して、信号制御パラメータを決定する。この信号制御パラメータは、サイクル長、スプリット、オフセットから構成されている。
ここで、サイクル長、スプリット、オフセットの各用語の定義は下記の通りである。
サイクル長:信号灯色の表示が一巡することを1サイクルといい、1サイクルの所要時間をサイクル長という。
スプリット:交差点の各流入路に対して与えられる通行権を現示といい、1サイクルに占める各現示の時間比率をスプリットという。
オフセット:幹線道路に沿って設置された幾つかの交通信号機を信号制御の単位として扱い、互いに一定の時間関係をもたせて制御する方式を系統制御といい、この系統制御において、各交通信号機の1サイクルの開始時点にもたせるずれをオフセットという。
制御部101は、決定した信号制御パラメータに基づいて、複数の信号灯器2の信号灯色を切り替えるための信号灯器出力指令を灯器駆動部102に入力する。
なお、制御部101は、専用のハードウェア回路で構成していても良く、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成あっても良い。
灯器駆動部102は、半導体リレー(不図示)を備え、制御部101から入力された信号灯器出力指令に基づいて、複数の信号灯器2の青色灯、黄色灯、赤色灯それぞれに対応して各色の信号灯に供給される交流電圧(AC100V)又は直流電圧をオン/オフする。
通信部103は、交通情報処理装置4との間の通信を行うための通信機能を備えている。通信部103は、交通情報処理装置4から旅行時間情報を受信する。
記憶部104は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、受信した旅行時間情報を記憶する。また、記憶部104は、複数の信号制御パラメータを含む信号制御パラメータテーブルを記憶している。
図6は、図1における交通信号制御装置1(SG1)に記憶されている信号制御パラメータテーブルの例を示す説明図である。この信号制御パラメータテーブルは、交通管理区間SEC1の旅行時間を120秒未満、120秒以上240秒未満、240秒以上360秒未満、360秒以上の4区分に分けたものと、交通管理区間SEC2の旅行時間を120秒未満、120秒以上240秒未満、240秒以上360秒未満、360秒以上の4区分に分けたものの、組み合わせ16通りに対応する16個の信号制御パラメータ1−1〜1−16から構成されている。また、上述したように、それぞれの信号制御パラメータ1−1〜1−16は、サイクル長、スプリット、オフセットから構成されている。
例えば、交通管理区間SEC1の旅行時間が120秒以上240秒未満であり、交通管理区間SEC2の旅行時間が120秒未満である場合には、対応する信号制御パラメータは信号制御パラメータ1−2であり、サイクル長60秒、スプリット0.6:0.4、オフセット−6秒であることを示している。なお、スプリット0.6:0.4とは、交差点I(IS1)の交通管理区間SEC1、SEC2の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間と、交差点I(IS1)のこれらの交通管理区間と交差する方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率が、0.6対0.4であることを示している。また、オフセット−6秒とは、交通信号制御装置1(SG1)のサイクル開始時刻が基準となる時刻よりも6秒早いことを示している。
これらの信号制御パラメータ1−1〜1−16のサイクル長、スプリット、オフセットは、例えば、シミュレーション等を用いて、交通管理区間SEC1、SEC2の旅行時間を考慮して、交通の円滑化が最も効果的に行われるように設定されている。サイクル長は、交通管理区間SEC1の旅行時間が大きくなるに従い、あるいは、交通管理区間SEC2の旅行時間が大きくなるに従い、大きくなるように設定されている。交通管理区間SEC1、SEC2の旅行時間が大きくなるということは、すなわち、これらの方向に走行する車両の赤信号待ちの時間が増えている(交通状況が混雑・渋滞に向かいつつある)ことを示しているので、サイクル長を上記のように設定することで、サイクル長を大きくして、当該車両に対する青信号の時間を長くし、赤信号で停止する確率を小さくすることにより、これらの方向の交通状況がこれ以上混雑・渋滞に向かうことを抑制することができる。
また、スプリットは、いずれも0.6:0.4に設定されている。この実施形態においては、交差点I(IS1)において交通管理区間SEC1、SEC2と交差する道路の旅行時間を取得できないため、スプリットは固定されている。もちろん、この交差道路の旅行時間を取得できる場合は、後述する実施の形態2のように、交通管理区間SEC1、SEC2の旅行時間、当該交差道路の旅行時間を考慮して、スプリットを変動させても良い。
また、オフセットは、交通管理区間SEC1の旅行時間と交通管理区間SEC2の旅行時間が同じ区分に該当する場合には、0秒が設定されており、交通管理区間SEC1の旅行時間が交通管理区間SEC2の旅行時間よりも大きな区分に該当するに従い、負(マイナス)でかつ絶対値が大きくなるように設定されており、交通管理区間SEC2の旅行時間が交通管理区間SEC1の旅行時間よりも大きな区分に該当するに従い、正(プラス)でかつ絶対値が大きくなるように設定されている。このように設定されている理由については後述する。
また、図7は、図1における交通信号制御装置1(SG2)に記憶されている信号制御パラメータテーブルの例を示す説明図である。この信号制御パラメータテーブルは、図6と同様、交通管理区間SEC1の旅行時間の4区分と交通管理区間SEC2の旅行時間の4区分の組み合わせ16通りに対応する16個の信号制御パラメータ2−1〜2−16から構成されており、それぞれの信号制御パラメータ2−1〜2−16は、サイクル長、スプリット、オフセットから構成されている。
例えば、交通管理区間SEC1の旅行時間が120秒以上240秒未満であり、交通管理区間SEC2の旅行時間が120秒未満である場合には、対応する信号制御パラメータは信号制御パラメータ2−2であり、サイクル長60秒、スプリット0.6:0.4、オフセット0秒であることを示している。なお、スプリット0.6:0.4とは、交差点I(IS2)の交通管理区間SEC1、SEC2の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間と、交差点I(IS2)のこれらの交通管理区間と交差する方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率が、0.6対0.4であることを示している。また、オフセット0秒とは、交通信号制御装置1(SG2)のサイクル開始時刻が基準となる時刻と同じであることを示している。
図7の信号制御パラメータテーブルが、図6の信号制御パラメータテーブルと異なっている点は、図7の信号制御パラメータテーブルでは、それぞれの信号制御パラメータ2−1〜2−16のオフセットがすべて0秒となっている点である。このように設定されている理由については後述する。
また、図8は、図1における交通信号制御装置1(SG3)に記憶されている信号制御パラメータテーブルの例を示す説明図である。この信号制御パラメータテーブルも、図6、図7と同様、交通管理区間SEC1の旅行時間の4区分と交通管理区間SEC2の旅行時間の4区分の組み合わせ16通りに対応する16個の信号制御パラメータ3−1〜3−16から構成されており、それぞれの信号制御パラメータ3−1〜3−16は、サイクル長、スプリット、オフセットから構成されている。
例えば、交通管理区間SEC1の旅行時間が120秒以上240秒未満であり、交通管理区間SEC2の旅行時間が120秒未満である場合には、対応する信号制御パラメータは信号制御パラメータ3−2であり、サイクル長60秒、スプリット0.6:0.4、オフセット+6秒であることを示している。なお、スプリット0.6:0.4とは、交差点I(IS3)の交通管理区間SEC1、SEC2の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間と、交差点I(IS3)のこれらの交通管理区間と交差する方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率が、0.6対0.4であることを示している。また、オフセット+6秒とは、交通信号制御装置1(SG3)のサイクル開始時刻が基準となる時刻よりも6秒遅いことを示している。
図8の信号制御パラメータテーブルが、図6の信号制御パラメータテーブルと異なっている点は、図8の信号制御パラメータテーブルにおけるそれぞれの信号制御パラメータ3−1〜3−16のオフセットの正負の符号が、図6の信号制御パラメータテーブルにおけるそれぞれの信号制御パラメータ1−1〜1−16のオフセットの正負の符号と、逆になっている点である。すなわち、オフセットは、交通管理区間SEC1の旅行時間と交通管理区間SEC2の旅行時間が同じ区分に該当する場合には、0秒が設定されており、交通管理区間SEC1の旅行時間が交通管理区間SEC2の旅行時間よりも大きな区分に該当するに従い、正(プラス)でかつ絶対値が大きくなるように設定されており、交通管理区間SEC2の旅行時間が交通管理区間SEC1の旅行時間よりも大きな区分に該当するに従い、負(マイナス)でかつ絶対値が大きくなるように設定されている。
ここで、図6、図7、図8のそれぞれの信号制御パラメータテーブルにおいて、上記のようにオフセットが設定されている理由について説明する。交通管理区間SEC1の旅行時間が交通管理区間SEC2の旅行時間よりも大きな区分に該当するに従い、図6の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは負(マイナス)でかつ絶対値が大きくなるように設定され、図7の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは常に0秒に設定され、図8の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは正(プラス)でかつ絶対値が大きくなるように設定されることで、交通管理区間SEC1、SEC2の方向に走行する車両に対する交差点I(IS1)のサイクルの開始時点は交差点I(IS2)のサイクルの開始時点に比べて、より早くなり、交差点I(IS3)のサイクルの開始時点は交差点IS2)のサイクル開始時点に比べて、より遅くなる。そうすると、交差点I(IS1)、交差点I(IS2)、交差点I(IS3)の順に青信号が開始し、この順に青信号が終了するとともに、それぞれの交差点Iの青信号の開始時点のずれ、青信号の終了時点のずれが大きくなるので、交通管理区間SEC1の方向に走行する車両はこれらの交差点Iをすべて青信号で通過できる可能性が高くなり、一方、交通管理区間SEC2の方向に走行する車両はその可能性が低くなる。つまり、交通管理区間SEC1の方向の通行が優先されることになる。これにより、交通管理区間SEC1の方向の交通状況がこれ以上混雑・渋滞に向かうことを抑止することができる。
逆に、交通管理区間SEC2の旅行時間が交通管理区間SEC1の旅行時間よりも大きな区分に該当するに従い、図6の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは正(プラス)でかつ絶対値が大きくなるように設定され、図7の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは常に0秒に設定され、図8の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは負(マイナス)でかつ絶対値が大きくなるように設定されることで、交通管理区間SEC1、SEC2の方向に走行する車両に対する交差点I(IS1)のサイクルの開始時点は交差点I(IS2)のサイクルの開始時点に比べて、より遅くなり、交差点I(IS3)のサイクルの開始時点は交差点I(IS2)のサイクル開始時点に比べて、より早くなる。そうすると、交差点I(IS3)、交差点I(IS2)、交差点I(IS1)の順に青信号が開始し、この順に青信号が終了するとともに、それぞれの交差点の青信号の開始時点のずれ、青信号の終了時点のずれが大きくなるので、交通管理区間SEC2の方向に走行する車両はこれらの交差点Iをすべて青信号で通過できる可能性が高くなり、一方、交通管理区間SEC1の方向に走行する車両はその可能性が低くなる。つまり、交通管理区間SEC2の方向の通行が優先されることになる。これにより、交通管理区間SEC2の方向の交通状況がこれ以上混雑・渋滞に向かうことを抑止することができる。
また、交通管理区間SEC1の旅行時間と交通管理区間SEC2の旅行時間の区分が同じ場合には、図6、図7、図8の信号制御パラメータにおけるオフセットはいずれも0秒に設定されている。交通管理区間SEC1の方向の交通状況と、交通管理区間SEC2の方向の交通状況が同じ程度の混み具合であれば、交通管理区間SEC1の方向の通行、交通管理区間SEC2の方向の通行のいずれか一方を優先させる必要がないためである。
次に、交通信号制御装置1の制御部101が実行する信号制御パラメータ決定処理の手順について説明する。制御部101は、通信部103が交通情報処理装置4から旅行時間情報を受信すると、その旅行時間情報に基づいて記憶部104に記憶している信号制御パラメータテーブルから1つの信号制御パラメータを決定する。
例えば、交通信号制御装置1(SG1)、交通信号制御装置1(SG2)、交通信号制御装置1(SG3)がそれぞれ受信した旅行時間情報に含まれる交通管理区間SEC1、SEC2の旅行時間がそれぞれ250秒、180秒であった場合、交通管理区間SEC1の旅行時間は240秒以上360秒未満の区分に該当し、交通管理区間SEC2の旅行時間は120秒以上240秒未満の区分に該当するため、交通信号制御装置1(SG1)の制御部101は、交通信号制御装置1(SG1)の記憶部104に記憶している信号制御パラメータテーブルから信号制御パラメータ1−7を決定し、交通信号制御装置1(SG2)の制御部101は、交通信号制御装置1(SG2)の記憶部104に記憶している信号制御パラメータテーブルから信号制御パラメータ2−7を決定し、交通信号制御装置1(SG3)の制御部101は、交通信号制御装置1(SG3)の記憶部104に記憶している信号制御パラメータテーブルから信号制御パラメータ3−7を決定する。
このように、交通信号制御装置1(SG1)、交通信号制御装置1(SG2)、交通信号制御装置1(SG3)は、交通情報処理装置4の記憶部404に記憶している交通信号制御装置−交通管理区間対応テーブルで対応付けられた交通管理区間の旅行時間を取得して、この旅行時間に応じて適切な信号制御パラメータを決定することができる。決定した信号制御パラメータのサイクル長、スプリット、オフセットは、上述したように交通の円滑化が最も効果的に行われるように設定されているため、交通信号制御装置1(SG1)、交通信号制御装置1(SG2)、交通信号制御装置1(SG3)が、この決定した信号制御パラメータのサイクル長、スプリット、オフセットに基づいて信号灯器2の信号灯色を切り替えることにより、交通状況に応じた適切な交通信号制御を行うことができる。
以上のように、本発明の交通信号制御装置によれば、交通状況に応じて適切な信号制御パラメータを決定し、当該信号制御パラメータに基づいて信号灯器の信号灯色を切り替えるため、交通状況に応じた適切な交通信号制御が行うことができ、交通の円滑化を図ることができる。
上述の実施の形態においては、軌跡情報に含まれる位置情報は緯度、経度及び高度から構成されていたが、これに限定されるものではなく、緯度及び経度から構成されていても良い。また、軌跡情報に含まれる位置情報は緯度、経度のような絶対的な位置情報に限られず、所定地点(例えば、交差点I付近の停止線)からの距離などのように相対的な位置情報であっても良い。
また、路上装置3は光ビーコン、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication:専用狭域通信)などの局所通信装置に限られない。路上装置3は無線LANやWiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)、携帯電話と通信可能な装置などの中・広域通信装置であっても良い。この場合、車載装置5は、車両10が路上装置3の通信領域内を走行している間に、所定の周期毎(例えば、1秒毎)又は所定の距離毎(例えば、10m毎)に位置情報を路上装置3に送信する構成をとることができる。
また、路上装置3は交通管理区間SEC1、SEC2上に設置されることに限定されない。すなわち、交通信号制御装置3の制御対象となる道路区間上を走行する車両10の車載装置5から当該車両10の軌跡情報を取得できるのであれば、路上装置3は当該道路区間以外の地点に設置されていても良い。例えば、路上装置3が交通管理区間SEC1よりもはるかに下流の地点(例えば、交通管理区間SEC1の終点から1km下流の地点)に設置されていたとしても、路上装置3が交通管理区間SEC1を含む当該下流の地点までの道路区間を走行する車両10の軌跡情報を取得できるのであれば、交通信号制御装置3は交通管理区間SEC1に対して交通状況に応じた適切な交通信号制御を行うことができる。従って、車載装置5が既存の路上装置3との間で通信を行うまで軌跡情報を蓄積し、路上装置3がその軌跡情報を車載装置5から取得し、交通信号制御装置3が当該軌跡情報から算出された制御対象の道路区間の旅行時間に基づいて信号制御パラメータを決定すれば、新たに路上装置3を設置せずとも、もちろん新たに超音波式車両感知器などの車両感知器を設置せずとも、低コストでかつ交通状況に応じた適切な交通信号制御を行うことができる。
また、交通信号制御装置1は、交通管理区間SEC1、SEC2の旅行時間を取得する構成であったが、これに限定されるものではない。交通信号制御装置1は、交通管理区間SEC1、SEC2の単位距離当たり(例えば、1m当たり)の旅行時間を取得する構成であっても良いし、交通管理区間SEC1、SEC2における車両の走行速度を取得する構成であっても良い。交通管理区間における車両の走行速度は、当該交通管理区間の旅行時間と当該交通管理区間の長さとから求めることができる。
また、信号制御パラメータテーブルは、交通管理区間SEC1の旅行時間を4区分に分けたものと、交通管理区間SEC1の旅行時間を4区分に分けたものの、組み合わせ16通りに対応する16個の信号制御パラメータから構成されるものに限られない。信号制御パラメータテーブルは、交通管理区間SEC1の旅行時間をm区分(mは任意の自然数)に分けたものと、交通管理区間SEC2の旅行時間をn区分(nは任意の自然数)に分けたものの、組み合わせm×n通りに対応するm×n個の信号制御パラメータから構成されていても良い。
また、信号制御パラメータテーブルは、交通管理区間SEC1の旅行時間と交通管理区間SEC2の旅行時間の組み合わせに対応する複数の信号制御パラメータから構成されるものに限られない。信号制御パラメータテーブルは、交通管理区間SEC1の単位距離当たり(例えば、1m当たり)の旅行時間と交通管理区間SEC2の単位距離当たりの旅行時間の組み合わせに対応する複数の信号制御パラメータから構成されていても良い。
また、信号制御パラメータテーブルは、交通管理区間SEC1における車両の走行速度と交通管理区間SEC2における車両の走行速度の組み合わせに対応する複数の信号制御パラメータから構成されていても良い。この場合、信号制御パラメータに含まれるサイクル長は、交通管理区間SEC1における車両の走行速度が小さくなるに従い、あるいは、交通管理区間SEC2における車両の走行速度が小さくなるに従い、大きくなるように設定される。また、信号制御パラメータに含まれるオフセットは、交通管理区間SEC1における車両の走行速度が交通管理区間SEC2における車両の走行速度よりも小さな区分に該当するに従い、交通信号制御装置1(SG1)の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは負(マイナス)でかつ絶対値が大きくなるように設定され、交通信号制御装置1(SG3)の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは正(プラス)でかつ絶対値が大きくなるように設定される。一方、交通管理区間SEC2における車両の走行速度が交通管理区間SEC1における車両の走行速度よりも小さな区分に該当するに従い、交通信号制御装置1(SG3)の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは負(マイナス)でかつ絶対値が大きくなるように設定され、交通信号制御装置1(SG1)の信号制御パラメータテーブルにおけるオフセットは正(プラス)でかつ絶対値が大きくなるように設定される。
また、信号制御パラメータテーブルは、交通管理区間SEC1、SEC2の、両方の交通管理区間の旅行時間の組み合わせに対応する複数の信号制御パラメータから構成されるものに限られない。例えば、交通管理区間SEC2が常に空いている又は常に混雑・渋滞しているなどにより、交通管理区間SEC2の旅行時間を一定とみなせる場合は、信号制御パラメータテーブルは交通管理区間SEC1の旅行時間のみに対応する複数の信号制御パラメータから構成されていても良い。例えば、交通管理区間SEC2が常に空いていて、交通管理区間SEC2の旅行時間が120秒未満であるとみなせる場合には、交通信号制御装置1(SG1)に記憶されている信号制御パラメータテーブルは、図6における信号制御パラメータ1−1、1−2、1−3、1−4のみから構成されていれば良く、同様に、交通信号制御装置1(SG2)、交通信号制御装置1(SG3)に記憶されている信号制御パラメータテーブルは、それぞれ、図7における信号制御パラメータ2−1、2−2、2−3、2−4のみから、図8における信号制御パラメータ3−1、3−2、3−3、3−4のみから構成されていれば良い。この場合、交通信号制御装置1(SG1)、交通信号制御装置1(SG2)、交通信号制御装置1(SG3)は、交通管理区間SEC1の旅行時間を取得し、この旅行時間が120秒未満か、120秒以上240秒未満か、240秒以上360秒未満か、360秒以上かに応じて、対応する信号制御パラメータを選択する。
実施の形態2:
上述の実施の形態においては、交通信号制御装置は、交差点Iの交差する道路のうちの一方(交通管理区間SEC1とSEC2)について旅行時間情報を取得し、その旅行時間情報に基づいて信号制御パラメータを決定する構成であったが、これに限定されるものではなく、交差点Iの交差する道路の両方について旅行時間を取得し、その旅行時間情報に基づいて信号制御パラメータを決定する構成であっても良い。
以下、本発明の実施の形態について、実施の形態1との相違点を中心に説明していく。図9は、実施の形態2における本発明に係る交通信号制御装置を含む交通信号制御システムの概要を示す模式図である。本実施形態の交通信号制御システムは、交通信号制御装置1、信号灯器2、路上装置3、交通情報処理装置4などを含む。図9では、4つの交通管理区間SEC11、SEC12、SEC13、SEC14が設定されており、交差点Iの識別コードとしてIS11が、当該交差点I(IS11)に設置された交通信号制御装置1の識別コードとしてSG11が設定されている。
図10は、交通情報処理装置4の記憶部404に記憶されている交通信号制御装置−交通管理区間対応テーブルの例を示す説明図である。例えば、識別コードがSG11である交通信号制御装置1は、識別コードがSEC11、SEC12、SEC13、SEC14の交通管理区間の4つに対応付けられていることを示している。
交通情報処理装置4は、図9における交通管理区間SEC11、SEC12、SEC13、SEC14の旅行時間を算出した場合には、当該旅行時間情報を交通信号制御装置1(SG11)に送信する。
図11は、交通信号制御装置1(SG11)に記憶されている信号制御パラメータテーブルの例を示す説明図である。図11の信号制御パラメータテーブルは、図6〜8の信号制御パラメータテーブルとは異なり、交通信号制御装置−交通管理区間対応テーブルにおいて交通信号制御装置1に対応付けられたすべての交通管理区間の旅行時間の組み合わせに対応する信号制御パラメータから構成されているのではなく、交通信号制御装置1に対応付けられた交通管理区間のうち、同時に青信号の現示を与えられる交通管理区間の旅行時間のうち、大きい方の旅行時間の組み合わせに対応する信号制御パラメータから構成されている。図9では、交通管理区間SEC11と交通管理区間SEC13が同時に青信号の現示を与えられ、交通管理区間SEC12と交通管理区間SEC14が同時に青信号の現示を与えられるため、図11の信号制御パラメータテーブルは、交通管理区間SEC11の旅行時間と交通管理区間SEC13の旅行時間のうちの大きい方と、交通管理区間SEC12の旅行時間と交通管理区間SEC14の旅行時間のうちの大きい方の、それぞれ4区分同士の組み合わせ16通りに対応する16個の信号制御パラメータ11−1〜11−16から構成されている。
例えば、交通管理区間SEC11の旅行時間と交通管理区間SEC13の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間が120秒以上240秒未満であり、交通管理区間SEC12の旅行時間と交通管理区間SEC14の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間が120秒未満である場合には、対応する信号制御パラメータは信号制御パラメータ11−2であり、サイクル長60秒、スプリット0.6:0.4、オフセット0秒であることを示している。なお、スプリット0.6:0.4とは、交通管理区間SEC11、SEC13の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間と、交通管理区間SEC12、SEC14の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率が、0.6対0.4であることを示している。
これらの信号制御パラメータ11−1〜11−16のサイクル長、スプリット、オフセットは、実施の形態1と同様に、シミュレーション等を用いて、交通管理区間SEC11、SEC12、SEC13、SEC14の旅行時間を考慮して、交通の円滑化が最も効果的に行われるように設定されている。サイクル長は、交通管理区間SEC11の旅行時間と交通管理区間SEC13の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間と、交通管理区間SEC12の旅行時間と交通管理区間SEC14の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間の、いずれか一方が大きくなるに従い、大きくなるように設定されている。交通管理区間SEC11と交通管理区間SEC13のいずれか一方の旅行時間、交通管理区間SEC12と交通管理区間SEC14のいずれか一方の旅行時間が大きくなるということは、すなわち、これらの方向に走行する車両の赤信号待ちの時間が増えている(交通状況が混雑・渋滞に向かいつつある)ことを示しているので、サイクル長を上記のように設定することで、サイクル長を大きくして、当該車両に対する青信号の時間を長くし、赤信号で停止する確率を小さくすることにより、これらの方向の交通状況がこれ以上混雑・渋滞に向かうことを抑制することができる。
また、スプリットは、交通管理区間SEC11の旅行時間と交通管理区間SEC13の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間が、交通管理区間SEC12の旅行時間と交通管理区間SEC14の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間よりも、大きな区分に該当するに従い、交通管理区間SEC11、SEC13の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率が、交通管理区間SEC12、SEC14の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率よりも大きくなるように設定されている。交通管理区間SEC11、SEC13の方向の交通状況が、交通管理区間SEC12、SEC14の方向の交通状況に比べて、混み具合が大きくなった場合には、交通管理区間SEC11、SEC13の方向に走行する車両に対する青信号の時間を長くすることにより、交通管理区間SEC11、SEC13の交通状況がこれ以上混雑・渋滞に向かうことを抑止するためである。
逆に、交通管理区間SEC12の旅行時間と交通管理区間SEC14の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間が、交通管理区間SEC11の旅行時間と交通管理区間SEC13の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間よりも、大きな区分に該当するに従い、スプリットは、交通管理区間SEC12、SEC14の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率が、交通管理区間SEC11、SEC13の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率よりも大きくなるように設定されている。交通管理区間SEC11、SEC13の方向の交通状況が、交通管理区間SEC12、SEC14の方向の交通状況に比べて、混み具合が大きくなった場合には、交通管理区間SEC12、SEC14の方向に走行する車両に対する青信号の時間を長くすることにより、交通管理区間SEC12、SEC14の交通状況がこれ以上混雑・渋滞に向かうことを抑止するためである。
また、交通管理区間SEC11の旅行時間と交通管理区間SEC13の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間が、交通管理区間SEC12の旅行時間と交通管理区間SEC14の旅行時間のうちの大きい方の旅行時間と、同じ区分に該当する場合には、スプリットはいずれも0.5:0.5に設定されている。交通管理区間SEC11、SEC13の方向の交通状況と、交通管理区間SEC12、SEC14の方向の交通状況が同じ程度の混み具合であれば、交通管理区間SEC11、SEC13の方向に走行する車両に対する青信号の時間と、交通管理区間SEC12、SEC14の方向に走行する車両に対する青信号の時間の、いずれか一方を長くする必要がないからである。
また、オフセットは、すべて0秒が設定されている。実施の形態1では、交通信号制御装置1(SG1)、交通信号制御装置1(SG2)、交通信号制御装置1(SG3)は系統制御を行うことから、オフセットは旅行時間に応じて変動するように設定されていたが、本実施形態では、交通信号制御装置1(SG11)は系統制御を行わないことから、オフセットは固定されている。もちろん、交通信号制御装置1(SG11)が他の交通信号制御装置1と系統制御を行う場合には、実施の形態1のように、オフセットが旅行時間に応じて変動するように設定されていても良い。
また、交通信号制御装置1の記憶部104は、交通管理区間組み合わせテーブルを記憶している。この交通管理区間組み合わせテーブルは、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間の組み合わせを示すものである。図12は、図9における交通信号制御装置1(SG11)の記憶部104が記憶している交通管理区間組み合わせテーブルの例を示す説明図である。交通管理区間組み合わせテーブルは、交通信号制御装置の識別コードと、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間の識別コードの各欄から構成されている。図12では、識別コードがSG11である交通信号制御装置1に対して、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間の組み合わせは、識別コードがSEC11とSEC13の交通管理区間の組み合わせと、識別コードがSEC12とSEC14の交通管理区間の組み合わせの2つが存在することを示している。
ここで、交通信号制御装置1の制御部101が実行する信号制御パラメータ決定処理の手順について説明する。制御部101は、通信部103が交通情報処理装置4から旅行時間情報を受信すると、記憶部104に記憶している交通管理区間組み合わせテーブルを参照して、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間の組み合わせを確認し、その組み合わせの交通管理区間の旅行時間のうちのいずれが大きいかを判定する。次いで、制御部101は、大きい方の旅行時間に基づいて記憶部104に記憶している信号制御パラメータテーブルから1つの信号制御パラメータを設定する。
例えば、交通信号制御装置1(SG1)の通信部103が受信した旅行時間情報に含まれる交通管理区間SEC11、SEC12、SEC13、SEC14の旅行時間がそれぞれ290秒、110秒、410秒、180秒であった場合、交通信号制御装置1(SG1)の制御部101は、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間SEC11とSEC13では、交通管理区間SEC13の旅行時間の方が大きいと判定し、また、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間SEC12とSEC14では、交通管理区間SEC14の旅行時間の方が大きいと判定する。交通管理区間SEC13の旅行時間410秒は360秒以上の区分に該当し、交通管理区間SEC14の旅行時間180秒は120秒以上240秒未満の区分に該当するため、交通信号制御装置1(SG11)の制御部101は、記憶部104に記憶している信号制御パラメータテーブルから信号制御パラメータ11−8を決定する。
交通信号制御装置1(SG11)は、交通情報処理装置4に記憶されている交通信号制御装置−交通管理区間対応テーブルで対応付けられた交通管理区間の旅行時間を取得し、当該交通信号制御装置1が記憶している交通管理区間組み合わせテーブルで設定された、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間の組み合わせを参照して、この組み合わせの交通管理区間の旅行時間のうちのいずれが大きいかを判定し、この大きい方の旅行時間に応じて適切な信号制御パラメータを決定することができる。決定した信号制御パラメータのサイクル長、スプリット、オフセットは、上述したように交通の円滑化が最も効果的に行われるように設定されているため、交通信号制御装置1(SG11)が、この決定した信号制御パラメータのサイクル長、スプリット、オフセットに基づいて信号灯器2の信号灯色を切り替えることにより、交通状況に応じた適切な交通信号制御を行うことができる。
このように、本発明の交通信号制御装置によれば、交通状況に応じて適切な信号制御パラメータを決定し、当該信号制御パラメータに基づいて信号灯器の信号灯色を切り替えるため、交通状況に応じた適切な交通信号制御が行うことができ、交通の円滑化を図ることができる。
上述の実施の形態においては、信号制御パラメータテーブルは、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間の旅行時間のうち、大きい方の旅行時間の組み合わせに対応する複数の信号制御パラメータから構成されるものであったが、これに限定されるものではなく、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間の単位距離当たり(例えば、1m当たり)の旅行時間のうち、大きい方の単位距離当たりの旅行時間の組み合わせに対応する複数の信号制御パラメータから構成されていても良い。
また、信号制御パラメータテーブルは、同時に青信号の現示が与えられる交通管理区間における車両の走行速度のうち、小さい方の車両の走行速度の組み合わせに対応する複数の信号制御パラメータから構成されていても良い。この場合、信号制御パラメータに含まれるサイクル長は、交通管理区間SEC11における車両の走行速度と交通管理区間SEC13における車両の走行速度のうちの小さい方の走行速度と、交通管理区間SEC12における車両の走行速度と交通管理区間SEC14における車両の走行速度のうち小さい方の走行速度の、いずれか一方が小さくなるに従い、大きくなるように設定される。また、信号制御パラメータに含まれるスプリットは、交通管理区間SEC11における車両の走行速度と交通管理区間SEC13における車両の走行速度のうちの小さい方の走行速度が、交通管理区間SEC12における車両の走行速度と交通管理区間SEC14における車両の走行速度のうちの小さい方の走行速度よりも、小さな区分に該当するに従い、交通管理区間SEC11、SEC13の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率が、交通管理区間SEC12、SEC14の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率よりも大きくなるように設定される。一方、交通管理区間SEC12における車両の走行速度と交通管理区間SEC14における車両の走行速度のうちの小さい方の走行速度が、交通管理区間SEC11における車両の走行速度と交通管理区間SEC13における車両の走行速度のうちの小さい方の走行速度よりも、小さな区分に該当するに従い、交通管理区間SEC12、SEC14の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率が、交通管理区間SEC11、SEC13の方向に走行する車両に対する信号灯色が青となる現示の時間の比率よりも大きくなるように設定される。
また、信号制御パラメータテーブルは、交通管理区間SEC11の旅行時間と交通管理区間12の旅行時間のうちの大きい方と、交通管理区間SEC13の旅行時間と交通管理区間14の旅行時間のうちの大きい方の組み合わせに対応する複数の信号制御パラメータから構成されるものに限られない。例えば、交通管理区間SEC11以外の交通管理区間SEC12、SEC13、SEC14が常に空いている又は常に混雑・渋滞しているなどにより、交通管理区間SEC12、SEC13、SEC14の旅行時間をそれぞれ一定とみなせる場合は、信号制御パラメータテーブルは交通管理区間SEC11の旅行時間のみに対応する複数の信号制御パラメータから構成されていても良い。例えば、交通管理区間SEC12、SEC13、SEC14が常に空いていて、それぞれの旅行時間が120秒未満であるとみなせる場合には、交通信号制御装置1(SG11)に記憶されている信号制御パラメータテーブルは、図11における信号制御パラメータ11−1、11−2、11−3、11−4のみから構成されていれば良い。この場合、交通信号制御装置1(SG11)は、交通管理区間SEC11の旅行時間を取得し、この旅行時間が120秒未満か、120秒以上240秒未満か、240秒以上360秒未満か、360秒以上かに応じて、対応する信号制御パラメータを選択する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。