上述のように、定着ベルトのたるみを効果的に抑制し良好な画像を得るには、分離ローラに、テンションローラとしての機能と、駆動ローラとしての機能を持たせることが好ましい。しかしながら、分離ローラにこれらの機能を持たせると以下の問題が生じる。
図17は、分離ローラ300に、テンションローラとしての機能と、駆動ローラとしての機能を持たせた定着装置の概略図である。具体的には、分離ローラ300に駆動用ギア600を一体的に設け、この駆動用ギア600に動力伝達用ギア500を噛合させている。このように構成することによって、図示しないモータ等からの駆動力を、動力伝達用ギア500によって駆動用ギア600に伝達し、分離ローラ300を回転駆動させるようにしている。さらに、分離ローラ300を定着ローラ100に対して矢印Eの方向に接近離間するように構成し、図示しないバネ等によって分離ローラ300を定着ローラ100に対して離間する方向に付勢して、定着ベルト400に張力を付与するようにしている。なお、図17において、符号100で示すのは定着ローラであり、符号200で示すのは加圧ローラである。
上記構成において、図18に示すように、分離ローラ300が実線の位置から二点鎖線の位置へ直線状に移動すると、動力伝達用ギア500の回転中心O10に対する分離ローラ300の回転中心O20の相対的距離がM1からM2へ変化する。これにより、駆動用ギア600と動力伝達用ギア500との噛み合い度合いにばらつきが生じるため、分離ローラ300に回転力を安定して伝達できなくなり、分離ローラ300に回転ムラが発生することによる画像品質の低下や、ギアの耐久性が損なわれるといった問題が生じる。
本発明は、斯かる事情に鑑み、テンションローラとしての機能と駆動ローラとしての機能を持たせた分離ローラに、安定して駆動力を伝達することができる定着装置、及びその定着装置を備えた画像形成装置を提供しようとするものである。
請求項1の発明は、定着ローラ及び分離ローラに掛け渡された無端状の定着ベルトと、当該定着ベルトを介して前記定着ローラに圧接される加圧ローラとを備え、前記定着ベルトと前記加圧ローラが互いに圧接して形成された定着ニップに記録媒体を通過させて、当該記録媒体上の未定着画像を記録媒体に定着し、前記定着ベルトによって搬送される前記記録媒体を前記分離ローラの位置で分離するように構成した定着装置において、前記分離ローラを前記定着ローラに対して接近離間する方向に移動可能に構成し、一端が前記分離ローラに取り付けられ、他端が定着装置のフレームに取り付けられた付勢手段によって、前記分離ローラを前記定着ローラに対して離間する方向に付勢して前記定着ベルトに張力を付与し、回転体を回転させることにより前記分離ローラに回転力を直接伝達する駆動力伝達手段を備えると共に、前記分離ローラの回転軸を支持する軸受けを、前記回転体の回転中心を中心とする円弧状に形成されたガイド部に沿って移動可能に構成し、前記軸受けが前記ガイド部に沿って移動する円弧状の移動経路の中間部に前記分離ローラの回転中心が配置された状態で、前記付勢手段の付勢力の方向が前記分離ローラの回転中心における前記移動経路の接線方向となるように構成したものである。
本発明の定着装置は、分離ローラを定着ローラに対して離間する方向に付勢して定着ベルトに張力を付与するようにしているので、熱膨張による定着ベルトのたるみの発生を防止することができる。また、本発明の定着装置は、駆動力伝達手段によって分離ローラに回転力を伝達するように構成しているので、定着ニップから分離ローラへ記録媒体が送られる箇所において、定着ベルトにたるみが発生するのを防止することが可能である。さらに、定着ローラに対して接近離間する分離ローラの移動経路を、回転力を伝達するための回転体の回転中心を中心とする円弧状に構成しているので、分離ローラは回転体の回転中心に対する相対的距離を一定に維持したまま移動することができる。これにより、駆動源から移動する分離ローラに対して安定して回転力を伝達することが可能となる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記駆動力伝達手段から前記分離ローラに回転力が伝達される際に、前記分離ローラが前記動力伝達手段から受ける付勢力を、前記分離ローラが前記定着ローラに対して離間する方向に付与するように構成したものである。
回転力を伝達する際に生じる付勢力を、分離ローラが定着ローラに対して離間する方向に付与することによって、定着ベルトに効果的に張力を付与することができる。
請求項3の発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記分離ローラに駆動用ギアを一体的に設け、前記駆動力伝達手段は、前記駆動用ギアと連結した動力伝達用ギアを有し、前記分離ローラの回転軸を支持する軸受けを、前記動力伝達用ギアの回転中心を中心とする円弧状に形成されたガイド部に沿って移動可能に構成したものである。
軸受けがガイド部に沿って移動することにより、分離ローラは動力伝達用ギアの回転中心を中心として円弧状に移動することが可能である。このため、動力伝達用ギアと駆動用ギアとの噛み合い度合いを一定に維持したまま、分離ローラを定着ローラに対して接近離間させることが可能である。これにより、移動する分離ローラに対して駆動源から安定して回転力を伝達することができる。また、分離ローラの回転軸を簡単な構成によって支持しつつ、分離ローラを円弧状に移動させることが可能である。
請求項4の発明は、請求項3に記載の定着装置において、前記動力伝達用のギアを、前記定着ローラの回転中心と前記分離ローラの回転中心を通る直線に対して前記加圧ローラ側へ配設したものである。
上記のように駆動用ギアを配設することにより、回転力を伝達する際に生じる付勢力を、分離ローラが定着ローラに対して離間する方向に付与することができる。これにより、定着ベルトに効果的に張力を付与することが可能である。
請求項5の発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記分離ローラに駆動用ギアを一体的に設け、前記駆動力伝達手段は、複数の動力伝達用ギアを連結して成り一端部側において前記駆動用ギアと連結したギア列と、当該ギア列の前記一端部側と反対側の他端部側に設けた動力伝達用ギアの回転中心を中心として揺動すると共に、前記ギア列と前記駆動用ギアと前記分離ローラを一体的に支持する支持部材を有するものである。
ギア列と駆動用ギアと分離ローラを、支持部材によって一体的に支持しているため、ギア列と駆動用ギアとの噛み合い度合いを一定に維持したまま、分離ローラを定着ローラに対して接近離間させることが可能である。これにより、移動する分離ローラに対して駆動源から安定して回転力を伝達することができる。
請求項6の発明は、請求項5に記載の定着装置において、前記ギア列が奇数個の動力伝達用ギアによって構成されている場合、当該ギア列を、前記定着ローラの回転中心と前記分離ローラの回転中心を通る直線に対して前記加圧ローラ側へ配設し、前記ギア列が偶数個の動力伝達用ギアによって構成されている場合、当該ギア列を、前記定着ローラの回転中心と前記分離ローラの回転中心を通る直線に対して前記加圧ローラ側と反対側へ配設したものである。
上記のようにギア列を配設することにより、回転力を伝達する際に生じる付勢力を、分離ローラが定着ローラに対して離間する方向に付与することができる。これにより、定着ベルトに効果的に張力を付与することが可能である。
請求項7の発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記分離ローラに駆動用プーリを一体的に設け、前記駆動力伝達手段は、動力伝達用プーリと、その動力伝達用プーリ及び前記駆動用プーリによって張架された無端状の動力伝達用ベルトと、前記動力伝達用プーリの回転中心を中心に揺動すると共に前記動力伝達用プーリと前記駆動用プーリと前記分離ローラを一体的に支持する支持部材を有するものである。
動力伝達用プーリと駆動用プーリと分離ローラを、支持部材によって一体的に支持しているため、動力伝達用ベルトの張力を一定に維持したまま、分離ローラを定着ローラに対して接近離間させることが可能である。これにより、駆動源から移動する分離ローラに対して安定して回転力を伝達することができる。
請求項8の発明は、請求項7に記載の定着装置において、前記動力伝達用プーリを、前記定着ローラの回転中心と前記分離ローラの回転中心を通る直線に対して前記加圧ローラ側と反対側へ配設したものである。
上記のように動力伝達用プーリを配設することにより、回転力を伝達する際に生じる付勢力を、分離ローラが定着ローラに対して離間する方向に付与することができる。これにより、定着ベルトに効果的に張力を付与することが可能である。
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の定着装置において、前記定着ベルトに張力を付与するための前記付勢手段を、前記分離ローラの軸方向両端部に設け、前記駆動力伝達手段は前記分離ローラの軸方向一端部側において回転力を伝達するように構成され、前記駆動力伝達手段から前記分離ローラに回転力が伝達される際に、前記分離ローラが前記動力伝達手段から受ける付勢力を、前記分離ローラが前記定着ローラに対して離間する方向に付与するように構成した定着装置であって、前記各付勢手段の付勢力に関して、前記分離ローラの移動経路上の任意点における接線方向の成分を接線方向成分力と呼称する場合、回転力が伝達される端部側に設けた前記付勢手段の接線方向成分力を、それと反対側の端部側に設けた前記付勢手段の接線方向成分力よりも、小さくなるようにしたものである。
これにより、分離ローラの両端に生じる張力のばらつきを抑制することができ、定着ベルトの片寄りを防止して走行の安定化を図ることができる。さらに、この場合、分離ローラの両端部にそれぞれ駆動源を設けなくても張力のばらつきを抑制することができるので、低コスト化及び小型化を実現可能である。
請求項10の発明は、請求項9に記載の定着装置において、前記分離ローラの軸方向両端部に設けた前記付勢手段を、それぞれ同種の弾性付勢手段で構成し、各弾性付勢手段の弾性変形量を互いに異ならせることにより、回転力が伝達される端部側に設けた前記付勢手段の接線方向成分力を、それと反対側の端部側に設けた前記付勢手段の接線方向成分力よりも、小さくなるようにしたものである。
これにより、分離ローラの両端に生じる張力のばらつきを抑制して、定着ベルトの片寄りを防止でき、走行の安定化を図ることができる。しかも、分離ローラの軸方向両端部に設けた付勢手段を、それぞれ同種の弾性付勢手段で構成しているので、経済的である。
請求項11の発明は、請求項9に記載の定着装置において、前記分離ローラの軸方向両端部に設けた前記付勢手段を、それぞれ同種の付勢手段で構成し、各付勢手段の付勢方向を互いに異ならせることにより、回転力が伝達される端部側に設けた前記付勢手段の接線方向成分力を、それと反対側の端部側に設けた前記付勢手段の接線方向成分力よりも、小さくなるようにしたものである。
これにより、分離ローラの両端に生じる張力のばらつきを抑制して、定着ベルトの片寄りを防止しでき、走行の安定化を図ることができる。しかも、分離ローラの軸方向両端部に設けた付勢手段を、それぞれ同種の付勢手段で構成しているので、経済的である。
請求項12の発明は、請求項1から11のいずれか1項に記載の定着装置を備えた画像形成装置である。
本発明に係る定着装置を画像形成装置に適用可能である。
本発明によれば、分離ローラに駆動ローラとしての機能とテンションローラとしての機能を持たせているため、定着ベルトのたるみを抑制することができ、オフセット画像や光沢ムラの発生を防止することができる。また、分離ローラに駆動ローラとしての機能とテンションローラとして機能を持たせることで、別途駆動ローラやテンションローラを設ける必要がなく、装置の小型化や低コスト化を図り得る。
また、本発明は、分離ローラの移動経路を、回転力を伝達するための回転体の回転中心を中心とする円弧状に構成しているので、分離ローラは回転体の回転中心に対する相対的距離を一定に維持したまま移動することができる。これにより、移動する分離ローラに対して駆動源から安定して回転力を伝達することができ、分離ローラに回転ムラが発生するのを抑制して、良好な画像を形成することが可能である。
図1は、本発明に係るカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す本発明の画像形成装置1は、タンデム型のカラープリンタ(以下「プリンタ」と記す)である。なお、本発明に係る画像形成装置としては、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
まず、図1に基づいて、本発明のプリンタの基本構成とその動作について説明する。このプリンタは、その基部となる画像形成装置本体1の下部に、記録媒体としての用紙Pが収納される給紙カセット2が配設され、その上方に画像形成部3を配置した構成となっている。画像形成部3には、像担持体を備えた複数の作像手段として4個の作像ユニット4Y,4C,4M,4BKを備えた作像部4と、複数のローラ5,6,7によって張架された無端状の中間転写ベルト8を有する中間転写ユニット9と、各像担持体に光書込みを行う光書込み部としての光書き込みユニット10と、用紙Pにトナー画像を定着する定着装置11とが設けられている。作像ユニット4Y,4C,4M,4BKと中間転写ユニット9は、装置本体1に対して着脱自在とされている。また、図1において、点線で示す経路は、用紙Pを搬送するために本体1内に形成された搬送経路Rである。
作像部4の各作像ユニット4Y,4C,4M,4BKは、中問転写ベルト8に接する像担持体としての感光体ドラム12をそれぞれ具備している。各感光体ドラム12の周りには、帯電装置13、現像装置14、クリーニング装置15がそれぞれ配置されている。各感光体ドラム12が中間転写ベルト8に接する位置における中間転写ベルト8の内側には、一次転写を行う転写手段としての一次転写ローラ16がそれぞれ設けられている。
作像ユニット4Y,4C,4M,4BKは、基本的には同一構造に構成されており、図1では代表して作像ユニット4BKの構成にのみ符号を付している。各作像ユニット4Y,4C,4M,4BKにおいて異なるのは、各現像装置14に収納されている現像剤としてのトナーの色だけである。作像ユニット4Y,4C,4M,4BKの各現像装置14には、それぞれイエロー,シアン,マゼンタ、ブラックのトナーが収納されている。各現像装置14には、トナーが減ると、装置本体1の上部に配設されたトナー補給ボトルT1,T3,T3,T4から補給用のトナーがそれぞれ供給される。
光書き込みユニット10は、光変調されたレーザ光を各感光体ドラム12の表面に照射して、感光体12の表面に色毎の潜像を形成するものであり、図1では、作像部4の下方に配置されている。また、トナー補給ボトルT1,T2,T3,T4、中間転写ユニット9、作像ユニット4Y,4C,4M,4BK、光書き込みユニット10は、同一方向に傾斜して装置本体1に内に配設されていて、これら要素を装置本体1内に水平に配置する場合に比して、その設置面積が小さくされている。
また、中間転写ベルト8がローラ7によって張架された位置における中間転写ベルト8の外側には、二次転写を行う転写手段としての二次転写ローラ17が配設されている。また、中間転写ベルト8の外周には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするためのベルトクリーニング装置18が配設されている。
画像形成動作が開始されると、各作像ユニット4Y,4C,4M,4BKの感光体ドラム12が図示しない駆動装置によって時計回りに回転駆動され、各感光体ドラム12の表面が帯電装置13によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体ドラム12の表面には、光書き込みユニット10からレーザ光がそれぞれ照射されて、それぞれの感光体ドラム12の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体ドラム12に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように形成された静電潜像は、各感光体ドラム12と現像装置14の間を通るとき、各現像装置14のトナーによってトナー画像として可視像化される。
中間転写ベルト8が巻きかけられた複数のローラ5,6,7のうち、1つのローラが図示していない駆動装置によって反時計回りに回転駆動される。これにより、中間転写ベルト8が矢印で示す反時計周り方向に走行駆動され、他のローラが従動回転する。また、各一次転写ローラ16に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ16と各感光体ドラム12との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各作像ユニット4Y,4C,4M,4BKの感光体ドラム12に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、走行する中間転写ベルト8に、順次重ね合わせて転写される。かくして中問転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。
トナー画像が転写された後の各感光体ドラム12の表面に付着する残留トナーは、各クリーニング装置15によって感光体ドラム12の表面から除去され、次いでその表面が図示していない除電装置によって除電作用を受け、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。
給紙部2から給紙される用紙Pは、搬送経路Rに送り込まれ、二次転写ローラ17よりも給紙側に配設されたレジストローラ対19によって給紙タイミングを計られて、二次転写ローラ17とそれに対向するローラ7との間に給送される。そして、このとき二次転写ローラ17には、中問転写ベルト8上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト8上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。トナー画像を転写された用紙Pは、定着手段11へと搬送され、定着手段11を通過する際に熱と圧が加えられてトナー画像が熔融されて定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、搬送経路Rの終端に配設された排紙ローラ対20によって、装置本体1の上部に構成されたストック部21へと排出される。また、転写後の中間転写ベルト8上に残留するトナーは、ベルトクリーニング装置18によって除去される。
以上の説明は、用紙P上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、作像部4の作像ユニットのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。また、本形態のプリンタを用いてモノクロ印刷をする場合には、ブラックのトナー画像を形成する作像ユニット4BKのみを使用すればよい。
次に、本発明の特徴部分である上記定着装置の構成について説明する。
図2に本発明の実施例1に係る定着装置の概略構成を示す。図2に示すように、定着装置11は、内部に加熱源25を有する定着ローラ21と、分離ローラ22と、定着ローラ21と分離ローラ22に掛け渡された無端状の定着ベルト23と、定着ベルト23を介して定着ローラ21に圧接される加圧ローラ24とを備える。
定着ローラ21は、例えば外径が20mm〜35mmのアルミニウム又は鉄等の金属製のパイプで構成されている。この金属製のパイプ内に、上記加熱源25としてのハロゲンヒータ等を配設して、定着ローラ21を加熱するようにしている。また、定着ローラ21を、上記金属製のパイプの外周にシリコンゴム等から成る厚さ1mm以下の弾性層を被覆して構成してもよい。
分離ローラ22は、定着ローラ21より小径のローラ、例えば外径が6mm〜15mmのアルミニウム又は鉄等の金属製のローラで構成されている。また、分離ローラ22は、定着ローラ21に対して接近離間する方向に移動可能に構成されている。具体的には、定着ローラ21の両端部側に、一対の支持版27がそれぞれ配設され、それら一対の支持板27に形成された長孔状のガイド部28内に、分離ローラ22の両端を支持する軸受け26がそれぞれ挿入されている。各ガイド部28に沿って各軸受け26が移動することにより、分離ローラ22は定着ローラ21に対して接近離間するように構成されている。
また、図示しないバネ等の付勢手段によって、分離ローラ22の両端は、定着ローラ21に対して離間する方向(図2の矢印Gの方向)に付勢されている。付勢手段による付勢力は、2kgf〜20kgfの間に設定されている。このように分離ローラ22を定着ローラ21に対して離間する方向に付勢することにより、定着ベルト23に所定の張力を付与している。すなわち、分離ローラ22はテンションローラとしての機能を有する。
なお、分離ローラ22を外径が6mm程度の小さいローラで構成すると、分離ローラ22の両端に作用する付勢力によって、分離ローラ22にベンディング(曲がり)が生じ、定着ベルト23に走行ムラ・寄り・シワが発生する虞がある。そのため、分離ローラ22を外径の小さいローラで構成する場合は、そのローラに中実の金属製ローラを用いることが望ましい。反対に、分離ローラ22を外径が15mm程度の大きいローラで構成する場合は、そのローラとして中空の金属製ローラを適用し、分離ローラ22の熱容量をできる限り小さくして熱効率を良くすることが望ましい。また、分離ローラ22の軸方向の中央部分の外径を両端部の外径よりも若干大きく形成することによって、分離ローラ22にベンディングが生じた場合であっても、定着ベルト23の寄りやシワ等の発生を抑制することが可能である。
加圧ローラ24は、芯金の外周に弾性層を被覆し、さらにその弾性層の外周に離型層を被覆して構成されている。芯金は、アルミニウム又は鉄等の金属製のローラによって形成される。弾性層は、液状シリコン又は発泡シリコンによって形成される。弾性層の厚みとしては、2mm〜6mmの間に設定することが好ましい。離型層は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフフルオロエチレン)等によって形成される。
加圧ローラ24は定着ローラ21に対して接近離間する方向に移動可能に構成されており、図示しないバネ等の付勢手段によって、加圧ローラ24は定着ローラに接近する方向に付勢されている。この付勢手段による付勢力は、40kgf〜80kgfの間に設定されている。このように加圧ローラ24が付勢手段によって付勢されることにより、加圧ローラ24は定着ベルト23を介して定着ローラ21に所定の圧力で圧接される。そして、加圧ローラ24と定着ベルト23が互いに圧接した箇所に定着ニップNが形成されている。
定着ベルト23は、基材と、基材の上に配設した弾性層と、弾性層の上に配設した離型層によって構成されている。基材は、ポリイミド等の樹脂によって形成される。基材の厚みとしては、50μm〜150μmの間に設定することが好ましい。弾性層は、シリコンゴム等によって形成される。弾性層の厚みとしては、100μm〜200μmの間に設定することが好ましい。また、離型層は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合樹脂)、PTFE(ポリテトラフフルオロエチレン)等によって形成される。離型層の厚みは、20μm〜50μmの間に設定することが好ましい。また、定着ベルト23の熱容量を小さくするために、定着ベルト23を上記樹脂製の基材又はステンレス等の金属製の基材のみで構成してもよい。
本発明の実施例1に係る定着装置11は、図示しない駆動源から分離ローラ22に回転力を直接伝達する駆動力伝達手段を備える。その駆動力伝達手段としては、動力伝達用ギア30を有する。一方、分離ローラ22には、駆動用ギア31が一体的に設けてある。この駆動用ギア31と、前記動力伝達用ギア30は、互いに噛合して連結されている。そして、駆動源からの駆動力は、動力伝達用ギア30を介して駆動用ギア31に伝達され、駆動用ギア31及び分離ローラ22を一体的に回転するように構成されている。また、定着ベルト23、定着ローラ21、加圧ローラ24は、回転する分離ローラ22に従動して走行又は回転するように構成されている。つまり、分離ローラ22は、駆動ローラとしての機能も有する。
また、上記ガイド部28は、動力伝達用ギア30の回転中心O1を中心とする円弧状に形成されている。従って、ガイド部28に沿って移動する分離ローラ22の移動経路Xも、動力伝達用ギア30の回転中心O1を中心とする円弧状となる。
図2において、動力伝達用ギア30は、定着ローラ21の回転中心O3と分離ローラ22の回転中心O2を通る直線Lに対して、加圧ローラ24側(図の右側)に配設されている。この場合、動力伝達用ギア30を図の矢印の方向に回転させると、動力伝達用ギア30と駆動用ギア31との連結部において、駆動用ギア31に対して図の上方向の付勢力H1が作用する。すなわち、回転力を伝達する際に生じる前記付勢力H1は、分離ローラ22を定着ローラ21に対して離間させる方向に作用するようになっている。
図3に示すように、反対に、動力伝達用ギア30を上記直線Lに対して加圧ローラ24側と反対側(図の左側)に配設した場合は、回転力を伝達する際に生じる付勢力H2は、分離ローラ22を定着ローラ21に対して接近させる方向に作用する。この場合、回転力を伝達する際に生じた付勢力H2によって、定着ベルト23に張力を付与するために分離ローラ22に付与されるバネ等の付勢力(図3の矢印G方向の力)が阻害される。従って、定着ベルト23に張力を効果的に付与するためには、動力伝達用ギア30を図2に示すように配設して、回転力を伝達する際に生じる付勢力H1を、分離ローラ22を定着ローラ21に対して離間させる方向に作用させることが好ましい。
また、図4に示すように、定着ベルト23に張力を付与するためのバネ等の付勢力は、動力伝達用ギア30の回転中心O1と分離ローラ22(又は駆動用ギア31)の回転中心O2とを通る直線Kに対して、直交する方向(図の矢印G方向)に作用するように構成することが好ましい。このように構成することによって、上記の回転力を伝達する際に生じる付勢力H1と、定着ベルト23に張力を付与するためのバネ等の付勢力が、同じ方向に作用することとなり、定着ベルト23に効果的に張力を発生させることが可能となる。
図5に本発明の実施例2に係る定着装置の概略構成を示す。この定着装置11は、上記本発明の実施例1と同様に、内部に加熱源25を有する定着ローラ21と、分離ローラ22と、定着ローラ21と分離ローラ22に掛け渡された無端状の定着ベルト23と、定着ベルト23を介して定着ローラ21に圧接される加圧ローラ24とを備える。
また、図5に示す定着装置11は、分離ローラ22に回転力を直接伝達する駆動力伝達手段を備える。駆動力伝達手段は、複数の動力伝達用ギアから成るギア列32と、支持部材33を有している。この場合、ギア列32は、互いに噛合して連結された第1ギア34及び第2ギア35から成る。また、分離ローラ22には、駆動用ギア31が一体的に設けられている。駆動用ギア31は、ギア列32の一端部側に配設された第2ギア35と互いに噛合して連結されている。そして、図示しない駆動源からの駆動力は、第1ギア34及び第2ギア35を介して駆動用ギア31に伝達され、駆動用ギア31及び分離ローラ22を一体的に回転するように構成されている。また、定着ベルト23、定着ローラ21、加圧ローラ24は、回転する分離ローラ22に従動して走行又は回転するように構成されている。
支持部材33は、ギア列32(第1ギア34・第2ギア35)、駆動用ギア31、分離ローラ22を一体的に支持する。また、支持部材33は、ギア列32の他端部側に配設された第1ギア34の回転中心O4を中心として揺動可能に構成されている。従って、支持部材33の揺動に伴って移動する分離ローラ22の移動経路Xも、第1ギア34の回転中心O4を中心とする円弧状となる。
また、ギア列32は、定着ローラ21の回転中心O3と分離ローラ22の回転中心O2を通る直線Lに対して、加圧ローラ24側と反対側(図の左側)に配設されている。この場合、第1ギア34を図の矢印の方向に回転させると、第1ギア34と第2ギア35との連結部において、第2ギア35に対して図の上方向の付勢力(図示省略)が作用する。この付勢力によって、支持部材33及びそれに支持された分離ローラ22が図の上方向に付勢される。すなわち、回転力を伝達する際に生じる付勢力を、分離ローラ22が定着ローラ21に対して離間する方向に作用させて、定着ベルト23に張力を効果的に付与するようにしている。
また、図6に示すように、上記定着ベルト23に張力を付与するためのバネ等の付勢力は、第1ギア34の回転中心O4と分離ローラ22(又は駆動用ギア31)の回転中心O2とを通る直線Kに対して、直交する方向(図の矢印G方向)に作用するように構成することが好ましい。このように構成することによって、上記の回転力を伝達する際に分離ローラ22が受ける付勢力(図示省略)と、定着ベルト23に張力を付与するためのバネ等の付勢力が、同じ方向に作用することとなり、定着ベルト23に効果的に張力を発生させることが可能となる。
なお、上記ギア列32を構成するギアの個数は、3個以上であってもよい。ただし、ギア列32を構成するギアの個数が、奇数の場合と偶数の場合では、上記直線Lに対するギア列32の配設位置が異なる。図5に示すように、ギア列32を偶数個のギアで構成している場合は、定着ベルト23に張力を効果的に付与するには、そのギア列32を、直線Lに対して加圧ローラ24側と反対側(図の左側)に配設することが好ましい。これに対し、図7に示すように、ギア列32を奇数個のギア(ここでは、ギア36,37,38)で構成している場合は、定着ベルト23に張力を効果的に付与するには、そのギア列32を、直線Lに対して加圧ローラ24側(図の右側)に配設することが好ましい。
図8に本発明の実施例3に係る定着装置の概略構成を示す。この定着装置11は、上記本発明の実施例1又は2と同様に、内部に加熱源25を有する定着ローラ21と、分離ローラ22と、定着ローラ21と分離ローラ22に掛け渡された無端状の定着ベルト23と、定着ベルト23を介して定着ローラ21に圧接される加圧ローラ24とを備える。
また、図8に示す定着装置11は、分離ローラ22に回転力を直接伝達する駆動力伝達手段を備える。駆動力伝達手段は、動力伝達用プーリ40と、無端状の動力伝達用ベルト41と、支持部材42を有している。また、分離ローラ22には、駆動用プーリ43が一体的に設けられている。動力伝達用ベルト41は、動力伝達用プーリ40と駆動用プーリ43によって張架されている。そして、図示しない駆動源からの駆動力は、動力伝達用プーリ40及び動力伝達用ベルト41を介して駆動用プーリ43に伝達され、駆動用プーリ43及び分離ローラ22を一体的に回転するように構成されている。また、定着ベルト23、定着ローラ21、加圧ローラ24は、回転する分離ローラ22に従動して走行又は回転するように構成されている。
支持部材42は、動力伝達用プーリ40、駆動用プーリ43、分離ローラ22を一体的に支持する。また、支持部材42は、動力伝達用プーリ40の回転中心O5を中心として揺動可能に構成されている。従って、支持部材42の揺動に伴って移動する分離ローラ22の移動経路Xも、動力伝達用プーリ40の回転中心O5を中心とする円弧状となる。
また、動力伝達用プーリ40は、定着ローラ21の回転中心O3と分離ローラ22の回転中心O2を通る直線Lに対して、加圧ローラ24側と反対側(図の左側)に配設されている。この場合、動力伝達用プーリ40を図の矢印の方向に回転させると、分離ローラ22に対して図の上方向の付勢力が作用する。このように、回転力を伝達する際に分離ローラ22が受ける付勢力を、分離ローラ22が定着ローラ21に対して離間する方向に作用させて、定着ベルト23に張力を効果的に付与するようにしている。
また、図9に示すように、上記定着ベルト23に張力を付与するためのバネ等の付勢力は、動力伝達用プーリ40の回転中心O5と分離ローラ22(又は駆動用プーリ43)の回転中心O2とを通る直線Kに対して、直交する方向(図の矢印G方向)に作用するように構成することが好ましい。このように構成することによって、上記の回転力を伝達する際に分離ローラ22が受ける付勢力(図示省略)と、定着ベルト23に張力を付与するためのバネ等の付勢力が、同じ方向に作用することとなり、定着ベルト23に効果的に張力を発生させることが可能となる。
以上、本発明の各実施例の構成について説明したが、本発明の各実施例において、分離ローラ22と加圧ローラ24を、ワンウェイクラッチを介して連結してもよい。通常、加圧ローラ24は、分離ローラ22の駆動によって従動回転するようになっているが、定着ベルト23と加圧ローラ24との間で滑りが生じた場合は、加圧ローラ24に回転力が伝達されない虞もある。このように、定着ベルト23を介して加圧ローラ24に回転力が伝達されなかった場合、上記ワンウェイクラッチによって、分離ローラ22から加圧ローラ24へ回転力を伝達することが可能となる。なお、ワンウェイクラッチは、駆動源と加圧ローラ24を連結するものであれば、分離ローラ22を介さなくてもよい。
また、図10は、本発明の各実施例における定着ニップの拡大図である。図10に示すように、加圧ローラ24の定着ローラ21への押圧によって、加圧ローラ24が定着ベルト23に圧接した部分において定着ニップN1が形成されている。また、この場合、図示しない分離ローラ22の位置を調整することによって、定着ベルト23を加圧ローラ24に対して接近するように配設している。これにより、定着ベルト23が加圧ローラ24と定着ローラ21との押圧部(定着ニップN1)から解放された箇所において、定着ベルト23を加圧ローラ24に対して接触させ、定着ニップN2を形成するようにしている。このように、定着ベルト23を加圧ローラ24側へ接近するように配設することによって、定着ニップ全体N3を大きくすることができ、十分な定着性を確保することが可能である。なお、定着ニップ全体N3の記録媒体搬送方向のニップ幅は、4mm〜8mmの間で設定することが好ましい。
以下、本発明の各実施例に係る定着装置の作用・効果について説明する。
まず、図2に示す本発明の実施例1の作用・効果を説明する。この定着装置11によって、画像の定着を行う場合は、図示しない駆動源によって分離ローラ22を回転駆動させる。詳しくは、駆動源を駆動させることによって、動力伝達用ギア30を図の時計回りに回転させ、この動力伝達用ギア30の回転力を駆動用ギア31に伝達することにより、駆動用ギア31と分離ローラ22を図の反時計回りに一体的に回転駆動させる。そして、分離ローラ22の回転に伴って、定着ベルト23が図の矢印の方向に走行し、この定着ベルト23の走行に伴って、定着ローラ21と加圧ローラ24がそれぞれ図の矢印の方向に従動回転する。
上記のように定着装置11を駆動させた状態で、トナー画像Tが転写された用紙Pを定着ニップNに侵入させる。用紙Pは定着ニップNにおいて加熱及び加圧され、用紙P上のトナー画像Tが用紙Pに定着される。その後、用紙Pは走行する定着ベルト23上に密着した状態で分離ローラ22側へ搬送される。用紙Pが定着ベルト23によって搬送される間に、用紙P上のトナーが冷却されトナー画像Tが完全に定着される。そして、定着ベルト23上の用紙Pは、分離ローラ22の位置において分離される。このように、本発明に係る定着装置は、定着ベルト23上でトナーを冷却して画像を定着させてから、小径の分離ローラ22によって湾曲させた定着ベルト23の湾曲部において用紙Pを曲率分離することによって、画像定着後の用紙Pを定着ベルト23から分離しやすくしている。
また、分離ローラ22は駆動ローラとして機能するため、定着ニップNから分離ローラ23へ用紙Pが搬送される箇所(図2の符号Fで示す箇所)において、定着ベルト23は引っ張られるようにして走行させられる。これにより、図2の符号Fの箇所において、定着ベルト23にたるみが生じるのを抑制することができ、オフセット画像や光沢ムラの発生を防止することが可能である。
また、分離ローラ22はテンションローラとしても機能している。定着ベルト23が熱によって伸縮しても、分離ローラ22の軸受け26がガイド部28に沿って移動することによって、分離ローラ22を定着ローラ21に対して接近離間させ、定着ベルト23に付与される張力を所定の張力に維持することが可能である。これにより、定着ベルト23が熱膨張することによるたるみの発生を抑制することができ、オフセット画像や光沢ムラの発生を防止することが可能である。
また、熱等による定着ベルト23の伸縮に伴って分離ローラ22が定着ローラ21に対して接近離間する際、そのとき分離ローラ22の移動経路Xを動力伝達用ギア30の回転中心O1を中心として円弧状に構成している。すなわち、分離ローラ22は、動力伝達用ギア30の回転中心O1に対する相対的距離を一定に維持したまま移動する。これにより、分離ローラ22が定着ローラ21に対して接近離間しても、動力伝達用ギア30と駆動用ギア31との噛み合い度合いを一定に維持することができ、駆動源から移動する分離ローラ22に対して安定して回転力を伝達することが可能である。これにより、分離ローラ22の移動に伴って分離ローラ22に回転ムラが発生するのを抑制することができると共に、動力伝達用ギア30及び駆動用ギア31の寿命を延ばすことも可能である。
次に、図5に示す本発明の実施例2の作用・効果を説明する。図5に示す定着装置11によって、画像の定着を行う場合も、図示しない駆動源によって分離ローラ22を回転駆動させる。詳しくは、駆動源を駆動させることによって、第1ギア34を図の反時計回りに回転させる。この第1ギア34の回転力を第2ギア35を介して駆動用ギア31に伝達することによって、駆動用ギア31と分離ローラ22を図の反時計回りに一体的に回転駆動させる。そして、分離ローラ22の回転に伴って、定着ベルト23が図の矢印の方向に走行し、この定着ベルト23の走行に伴って、定着ローラ21と加圧ローラ24がそれぞれ図の矢印の方向に従動回転する。
本発明の実施例2も、上記本発明の実施例1と同様に、トナー画像Tが転写された用紙Pを定着ニップNに通過させて、用紙Pを加熱及び加圧し、トナー画像Tが用紙Pに定着される。その後、上記と同様に、用紙Pを定着ベルト23に密着させた状態で搬送し、定着ベルト23上でトナーを冷却して画像を定着させてから、分離ローラ22の位置において用紙Pを曲率分離する。
また、実施例2における分離ローラ22も、上記実施例1と同様に、駆動ローラとして機能するため、定着ニップNから分離ローラ23へ用紙Pが搬送される箇所(図5の符号Fで示す箇所)において、定着ベルト23にたるみが生じるのを抑制することができ、オフセット画像や光沢ムラの発生を防止することが可能である。
また、実施例2における分離ローラ22も、テンションローラとして機能している。定着ベルト23が熱によって伸縮しても、支持部材33が揺動することによって、分離ローラ22を定着ローラ21に対して接近離間させ、定着ベルト23に付与される張力を所定の張力に維持することが可能である。これにより、定着ベルト23が熱膨張することによるたるみの発生を抑制することができ、オフセット画像や光沢ムラの発生を防止することが可能である。
また、ギア列32と駆動用ギア31と分離ローラ22を、支持部材33によって一体的に支持しているため、ギア列33と駆動用ギア31との噛み合い度合いを一定に維持したまま、分離ローラ22を定着ローラ21に対して接近離間させることが可能である。これにより、移動する分離ローラ22に対して駆動源から安定して回転力を伝達することができ、分離ローラ22に回転ムラが発生するのを抑制することが可能である。
以下、図8に示す本発明の実施例3の作用・効果を説明する。図8に示す定着装置11によって、画像の定着を行う場合も、図示しない駆動源によって分離ローラ22を回転駆動させる。詳しくは、駆動源を駆動させることによって、動力伝達用プーリ40を図の反時計回りに回転させる。この動力伝達用プーリ40の回転に伴って、動力伝達用ベルト41が図の矢印の方向に走行し、さらに、この動力伝達用ベルト41の走行に伴って、駆動用プーリ43及び分離ローラ22が図の反時計回りに一体的に回転駆動する。そして、分離ローラ22の回転に伴って、定着ベルト23が図の矢印の方向に走行し、この定着ベルト23の走行に伴って、定着ローラ21と加圧ローラ24がそれぞれ図の矢印の方向に従動回転する。
本発明の実施例3も、上記本発明の各実施例と同様に、トナー画像Tが転写された用紙Pを定着ニップNに通過させて、用紙Pを加熱及び加圧し、トナー画像Tが用紙Pに定着される。その後、上記と同様に、用紙Pを定着ベルト23に密着させた状態で搬送し、定着ベルト23上でトナーを冷却して画像を定着させてから、分離ローラ22の位置において用紙Pを曲率分離する。
また、実施例3における分離ローラ22も、上記各実施例と同様に、駆動ローラとして機能するため、定着ニップNから分離ローラ23へ用紙Pが搬送される箇所(図8の符号Fで示す箇所)において、定着ベルト23にたるみが生じるのを抑制することができ、オフセット画像や光沢ムラの発生を防止することが可能である。
また、実施例3における分離ローラ22も、テンションローラとして機能している。定着ベルト23が熱によって伸縮しても、支持部材42が揺動することによって、分離ローラ22を定着ローラ21に対して接近離間させ、定着ベルト23に付与される張力を所定の張力に維持することが可能である。これにより、定着ベルト23が熱膨張することによるたるみの発生を抑制することができ、オフセット画像や光沢ムラの発生を防止することが可能である。
また、動力伝達用プーリ40と駆動用プーリ43と分離ローラ22を、支持部材42によって一体的に支持しているため、動力伝達用ベルト41の張力を一定に維持したまま、分離ローラ22を定着ローラ21に対して接近離間させることが可能である。これにより、駆動源から移動する分離ローラ22に対して安定して回転力を伝達することができ、分離ローラ22に回転ムラが発生するのを抑制することが可能である。
以上のように、本発明の構成によれば、分離ローラ22に駆動ローラとしての機能とテンションローラとしての機能を持たせているため、定着ベルト23のたるみを抑制することができ、オフセット画像や光沢ムラの発生を防止することができる。また、分離ローラ22に駆動ローラとしての機能とテンションローラとして機能を持たせることで、別途駆動ローラやテンションローラを設ける必要がなく、装置の小型化や低コスト化を図り得る。
また、本発明の構成は、分離ローラ22の移動経路Xを、回転力を伝達するためのギアやプーリ等の回転体の回転中心を中心として円弧状に構成している。言い換えれば、分離ローラ22は、前記回転体の回転中心に対する相対的距離を一定に維持したまま移動するので、ギア同士の噛み合い度合いや、動力伝達用プーリの張力を一定に維持することができる。これにより、駆動源から移動する分離ローラ22に対して安定して回転力を伝達することができ、分離ローラ22に回転ムラが発生するのを抑制して、良好な画像を形成することが可能である。
以下、本発明における定着ベルトの張力調整機構について、上記図2に示す実施例を例に挙げて詳しく説明する。
図11において、(A)は図2に示す定着装置の概略構成図、(B)はその定着装置が有する分離ローラを軸方向と直交する方向から見た図である。また、図11(A)(B)において、図2と同一の符号については上記説明した通りである。
図11(B)に示すように、分離ローラ22はその両端部において図示しないバネ(コイルスプリング)による引っ張り方向の付勢力G1,G2を受けており、この付勢力G1,G2によって定着ベルト23に張力が付与されている。また、図11(A)に示すように、これらのバネによる付勢力G1,G2の方向は、分離ローラ22の軸方向から見て、互いに同じ方向に設定されている。さらに、この場合、各付勢力G1,G2は、動力伝達用ギア30の回転中心O1と分離ローラ22(又は駆動用ギア31)の回転中心O2とを通る直線Kに対して、直交する方向に作用している。ただし、各付勢力G1,G2の方向は、前記直線Kに対して、常に直交する方向となるわけではない。
例えば、図12において、符号J1を分離ローラ22に取り付けたバネの一端の位置、符号J2を定着装置のフレーム等に取り付けた前記バネの他端の位置とし、J1での付勢力Gの方向が、動力伝達用ギア30の回転中心O1と分離ローラ22の回転中心O2とを通る直線Kに対して直交していたとする。しかし、分離ローラ22が円弧状の移動経路Xに沿って図の上方に移動し、この移動に伴ってバネの一端もJ1からJ1´へ移動した場合、図に示すように移動後のJ1´での付勢力G´の方向は前記直線Kと直交しなくなる。このように、バネの付勢力の方向は、前記直線Kに対して、常に直交する方向となるわけではない。言い換えれば、バネの付勢力の方向は、そのときの分離ローラ22の回転中心O2における移動経路Xの接線方向と、常に同じ方向となるわけではない。
また、分離ローラ22が移動経路X上の任意の位置にあるとき、バネの付勢力Gが張力として作用するのは、移動経路Xの任意点における接線方向の成分Gtである(図13参照)。以下、バネの付勢力Gに関して、分離ローラ22の移動経路X上の任意点における接線方向の成分を「接線方向成分力」と呼称することにする。
ところで、図11に示すように動力伝達用ギア30を回転させ、駆動用ギア31へ回転力が伝達される際、動力伝達用ギア30と駆動用ギア31との連結部に付勢力H1が生じることは上記実施例の説明で述べた通りである。また、この回転力伝達時に生じる付勢力H1は、そのときの分離ローラ22の回転中心O2における移動経路Xの接線方向と同方向であって、かつ、分離ローラ22を定着ローラ21に対して離間させる方向に作用するため、張力として機能する。
しかし、図11(B)において、上記付勢力H1は、駆動用ギア31を介して分離ローラ22の図の右端部側に作用する。バネによる付勢力G1,G2の接線方向成分力をそれぞれG1t、G2tとすると、右端部側での張力は、バネの接線方向成分力G1tと回転伝達時に生じる付勢力H1との合計値(G1t+H1)となるが、左端部側での張力は、バネの接線方向成分力G2tのみとなる。このため、分離ローラ22の両端部における張力の間にばらつきが生じる。
分離ローラ22の両端部における張力にばらつきが生じた結果、分離ローラ22を定着ローラ21等に対して平行に維持できなくなると、定着ベルト23が分離ローラ22の片側へ寄って、走行性に問題が生じる虞がある。一般的に、定着装置には、定着ベルトの片寄りを防止する機構が設けてあり、ある程度の定着ベルトの片寄りは防ぐことは可能である。しかしながら、分離ローラの両端部での付勢力のばらつきが一定値を越えると、片寄り防止機構では定着ベルトの片寄りを防止することができなくなり、最悪の場合、定着ベルトの破損等が発生する。
このような定着ベルトの片寄りを防止する対策の1つとして、分離ローラの両端部にそれぞれ回転力を伝達する駆動源を設けることが考えられる。これにより、回転駆動時に生じる付勢力が、分離ローラの両端部に作用するため、両端部における張力のばらつきをなくすことが可能である。しかしながら、分離ローラの両端部に駆動源を設けるのは、部品点数の増加となり、低コスト化及び小型化に反し好ましくない。
そこで、上記定着ベルトの片寄りを防止する別の対策として、分離ローラの両端部に作用するバネの付勢力を調整する方法が考えられる。
具体的には、図14に示すように、分離ローラ22の回転力が伝達される図の右端部側に設けたバネの付勢力G1を、図の左端部側に設けたバネの付勢力G2よりも小さくする。詳しくは、バネの付勢力G1,G2のうち、張力として作用する接線方向成分力をG1t,G2tと表すと(図示省略)、これら接線方向成分力G1t,G2tを、分離ローラの移動経路の全体に渡って、G1t<G2tの関係となるように調整する。これにより、分離ローラの両端部における張力のばらつきを抑制することができる。しかも、この場合は、分離ローラの両端部に駆動源を設けなくてもよいので、低コスト化及び小型化を実現可能である。
さらに、回転力伝達側のバネの接線方向成分力G1tを、回転力伝達によって付加される付勢力H1の分だけ小さくすれば、分離ローラの両端部における張力を均等にすることができ(G1t+H1=G2tとすることができ)、一層安定した走行性を得ることが可能となる。
上記のように、回転力伝達側のバネの付勢力G1を、それと反対側のバネの付勢力G2よりも小さくするには、両端部のバネに互いに異なる種類のバネを使用すれば実現できる。しかし、異なる種類のバネを用意するのは経済的ではない。そこで、同じ種類のバネを分離ローラの両端部にそれぞれ設け、各バネの弾性変形量(引張量や圧縮量等)を互いに異ならせることによって、各バネの付勢力に差を持たせることが可能である。例えば、各バネが引張バネである場合は、回転力伝達側のバネの引張量を、それと反対側のバネの引張量よりも小さくすればよい。また、各バネが圧縮バネである場合は、回転力伝達側のバネの圧縮量を、それと反対側のバネの圧縮量よりも小さくすればよい。
また、両端部のバネに同じ種類のバネを使用した場合、各バネの付勢方向を互いに異ならせることによっても、張力として作用する接線方向成分力に差を持たせることができる。例えば、図15において、回転力伝達側のバネの付勢力G1と、それと反対側のバネの付勢力G2が同じ大きさであっても、張力として作用するのは各付勢力G1,G2の接線方向成分力G1t、G2tである。従って、図15に示すように、分離ローラ22の回転中心O2における移動経路Xの接線Uに対して、回転力伝達側の付勢力G1を、それと反対側の付勢力G2よりも傾斜させる(傾斜角を大きくする)ことにより、回転力伝達側の接線方向成分力G1tをそれと反対側の接線方向成分力Gt2よりも小さくすることができる。そして、このようにG1t<G2tとなる関係を移動経路Xの全体に渡って維持できるように、各付勢力G1,G2の方向を設定すればよい。
さらに、この場合においても、各付勢力G1,G2の方向を調整することによって、回転力伝達側のバネの接線方向成分力G1tを、回転力伝達時に生じる付勢力H1の分だけ小さくすれば、分離ローラの両端部における張力を均等にすることができ、一層安定した走行性を得ることが可能となる。
以上、図2に示す実施例を例に挙げて定着ベルトの張力調整機構を説明したが、図5〜図9に示すその他の実施例においても、上記張力調整機構を適用可能である。また、上記張力調整機構の説明では、付勢手段としてバネ(弾性付勢手段)を適用した例を挙げたが、バネ以外の付勢手段を適用することも可能である。
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。