図1は、本発明の第1の実施例によるアダプタ装置を示す基本構成図である。
本発明の第1の実施例によるアダプタ装置1は、伝送路の伝送特性を評価する評価装置(図示せず)に対して接続され、その出力P2Sは、評価装置へ入力される。評価対象である伝送路2は、アダプタ装置1のポートP1およびP2の間に接続される。評価信号を生成するパルスパターンジェネレータ101は、ポートP1から評価信号を入力することになる。
アダプタ装置1は、反射成分抽出手段11と反射成分強調手段12とを備える。
反射成分抽出手段11は、伝送路2が接続されたポートP1に生じる評価信号の反射成分を抽出する。
反射成分強調手段12は、反射成分抽出手段11によって抽出された反射成分の評価信号に対する割合よりも加算後の反射成分の出力信号に対する割合のほうが大きくなるよう、抽出された反射成分を増幅しかつ時間遅延させて出力信号に加算し、これを評価装置への入力とする。このため、反射成分強調手段12は、反射成分増幅手段21と反射成分遅延手段22と加算手段23とを備える。
反射成分増幅手段21は、反射成分抽出手段11によって抽出された反射成分を、この抽出された反射成分の評価信号に対する割合よりも、加算手段23による加算後の反射成分の出力信号に対する割合のほうが大きくなるよう、反転増幅もしくは非反転増幅する。反射成分抽出手段11によって抽出された反射成分の評価信号に対する割合よりも、加算手段23による加算後の反射成分の出力信号に対する割合のほうが大きくなると、評価装置において観測されるアイダイアグラムの振幅がより小さくなる。すなわち、反射成分増幅手段21は、反射成分抽出手段11によって抽出された反射成分を、評価装置において観測されるアイダイアグラム(アイパターン)の振幅(アイ:eye)が小さくなるよう反転増幅もしくは非反転増幅するものであるとも言える。反射成分増幅手段21による増幅が、反転増幅であるか非反転増幅であるかは、伝送路2が接続されるポートP1およびP2における反射係数の符号によって異なる。したがって、反射成分増幅手段21は、入力信号を反転増幅する反転増幅手段と、入力信号を非反転増幅する非反転増幅手段と、反射成分増幅手段21の出力を、反転増幅手段もしくは非反転増幅手段のいずれかの出力に切り替える切替手段と、を有する。反転増幅手段、非反転増幅手段および切替手段の具体例については、後述する図2および12〜14に示す回路図を参照して説明する。
本発明の第1の実施例では、反射成分増幅手段21によって増幅された反射成分を、加算手段23において、伝送路2からの出力信号と加算する。この加算のために、反射成分増幅手段21によって増幅された反射成分は、伝送路2からの出力信号とタイミングを同期させておく必要がある。反射成分遅延手段22は、このタイミングの同期のための機能を有するものであって、すなわち、反射成分抽出手段11および反射成分強調手段12を経由したときの信号伝播時間と伝送路を経由したときの信号伝播時間とが一致するよう、反射成分増幅手段21によって増幅された反射成分の伝播を遅延させる。伝送路2による信号の遅延時間をτtとしたとき、反射成分遅延手段22により発生させる遅延時間τ1については、τ1=τtとなるように設定する。
加算手段23は、上記同期が取れた信号同士を互いに加算するものであって、すなわち、反射成分遅延手段22によって伝播が遅延させられた反射成分を、伝送路2の出力信号に加算する。
ここで、伝送路2に対する入射波の波振幅を、ポートP1においてはa1、ポートP2においてはa2とし、伝送路2に対する反射波の波振幅を、ポートP1においてはb1、ポートP2においてはb2とする。波振幅は電力の平方根である。また、反射係数をΓS、ΓLとする。このとき、a1、a2、b1およびb2を、伝送路のSパラメータを使って表すと式(1)〜(4)のようになる。
伝送路2のポートP1の電圧VP1、およびポートP2の電圧VP2は、式(1)〜(4)を用いると式(5)および(6)のように表すことができる。
反射成分増幅手段21のゲインをGrとすると、加算手段23の出力P2Sは、式(1)および(6)を用いると式(7)のように表すことができる。
式(7)は、伝送路2のポートP2における電圧VP2(=a2+b2)から、ポートP1における反射波b1のGr倍の信号を減算している(換言すれば、反射波b1のGr倍の信号を反転した信号を加算している)ことを示している。したがって、加算手段23の出力P2Sは、反射成分がより強調されたものである。すなわち、評価信号に対する反射成分抽出手段11によって抽出された反射成分の割合よりも、伝送路2の出力信号に対する加算手段23による加算後の反射成分の割合のほうが大きくなっている。
このような加算手段23の出力P2Sを、オシロスコープなどの評価装置への入力信号とすると、低損失の伝送路の場合であっても、アイダイアグラム、ジッタ量およびビットエラーレートなどいずれの評価項目について、伝送路ごとの明確な差(バラツキ)として現れさせることができる。例えば、オシロスコープで観測できるアイダイアグラムのアイ(eye)が、伝送品質が悪い伝送路ほど、より「閉じた」状態(換言すれば、アイダイアグラムの振幅が小さい状態)にすることができる。
このように、本発明の第1の実施例によれば、伝送路を評価信号が通過することにより生じる反射成分を敢えて強調させた信号を生成して、オシロスコープなどの評価装置への入力信号とするので、伝送路に入力する評価信号の伝送レートを上げるまでもなく、アイダイアグラム、ジッタ量およびビットエラーレートなどいずれの評価項目について、伝送路ごとの明確な差(バラツキ)として現れさせることができるので、伝送路ごとの品質の良し悪しを判別しやすくすることができる。本発明の第1の実施例によるアダプタ装置を、従前の評価装置に接続するだけで容易に、低損失の伝送路の伝送特性についての評価を可能にすることができる。
図2は、本発明の第1の実施例によるアダプタ装置および伝送路評価システムの第1の具体例を示す回路図である。第1の具体例によるアダプタ装置1の回路構成について説明すると次の通りである。
本発明の第1の実施例によるアダプタ装置1の出力ポートOutには、評価対象である伝送路2の伝送特性を評価する評価装置3が接続される。アダプタ装置1の測定ポートP1およびP2の間には、評価対象である伝送路2が接続される。アダプタ装置1の入力ポートInには、評価信号を生成するパルスパターンジェネレータ(PPG)101が接続され、評価信号が入力される。アダプタ装置1のモニタポートM1には、オシロスコープ4の入力ポートCH1が接続され、モニタポートM2には、オシロスコープ4の入力ポートCH2が接続される。伝送路評価システム10は、アダプタ装置1、パルスパターンジェネレータ101、および評価装置3を備えて構成される。
図1に示した反射成分抽出手段11は、図2に示す第1の具体例では、パワーデバイダ31、アイソレーションアンプ32−1および32−2、終端抵抗R、スイッチSW1−1、ならびに広帯域差動アンプAmp1で構成される。
パワーデバイダ31は、入力ポートInから入力される評価信号(例えば擬似ランダムデータ信号)を二分配する。二分配された評価信号は、その一方がアイソレーションアンプ32−1を介して終端抵抗Rに入力され、もう一方がアイソレーションアンプ32−2を介して伝送路2が接続された測定ポートP1に入力される。パワーデバイダ31のインピーダンスは50Ωとし、損失はLデシベルとする。アイソレーションアンプ32−1および32−2の入力インピーダンスは50Ωとし、出力インピーダンスは50Ωとし、ゲインはG1とする。また、終端抵抗Rは50Ωとする。
広帯域差動アンプAmp1のプラス側には、測定ポートP1の電圧が入力される。広帯域差動アンプAmp1のマイナス側はスイッチSW1−1のA接点を介して終端抵抗Rに接続される。広帯域差動アンプAmp1の入力インピーダンスは無限大(∞)とし、出力インピーダンスは50Ωとし、ゲインはG2とする。スイッチSW1−1のB接点は接地されている。
図1に示した反射成分強調手段12は、図2に示す第1の具体例では、低損失可変遅延線41、広帯域アンプAmp1aおよびAmp1b、スイッチSW2−1、SW2−2、SW1−2およびSW1−3、パワーコンバイナ42、広帯域アンプAmp2、ならびに出力アンプAmp3で構成される。
アイソレーションアンプ32−2の出力信号は、測定ポートP1を介して、評価対象である伝送路2に入力される。伝送路2を通過した信号は、測定ポート2を介して広帯域アンプAmp2へ入力される。なお、測定ポートP1と伝送路2のD1および測定ポートP2と伝送路2のD2を接続する各伝送路は、伝送路2と比較して極めて短いものとする。広帯域アンプAmp2の出力信号は、スイッチSW1−2の接点Aを介して、パワーコンバイナ42の端子C2に入力される。広帯域アンプAmp2の入力インピーダンスは50Ωとし、出力インピーダンスは50Ωとし、ゲインはG3とする。
広帯域差動アンプAmp1の出力信号は、低損失可変遅延線41に入力される。低損失可変遅延線41は、入力された信号を、遅延時間τ1かけて伝播させて出力する。低損失可変遅延線41の特性インピーダンスは50Ωとする。
スイッチSW2−1は、接点AまたはBに切り替えることによって、低損失可変遅延線41の出力信号を、広帯域アンプAmp1aまたはAmp1bに入力する。また、スイッチSW2−2は、スイッチSW2−1の切替動作と連動しており、広帯域アンプAmp1aまたはAmp1bの出力信号を、スイッチSW1−3へ入力する。
広帯域アンプAmp1aは、反転増幅器であり、その入力インピーダンスは50Ωとし、出力インピーダンスは50Ωとし、ゲインはGrとする。
広帯域アンプAmp1bは、非反転増幅器であり、その入力インピーダンスは50Ωとし、出力インピーダンスは50Ωとし、ゲインはGrとする。
スイッチSW1−3は、スイッチSW2−2の切替えに依存する広帯域アンプAmp1aまたはAmp1bのうちのいずれかの出力信号を、接点Aを介してパワーコンバイナ42へ入力する。
スイッチSW1−2は、広帯域アンプAmp2の出力信号を、接点Aを介してパワーコンバイナ42へ入力する。
パワーコンバイナ42は、スイッチSW1−3の接点Aを介して入力された信号と、スイッチSW1−2の接点Aを介して入力された信号と、を結合(加算)する。パワーコンバイナ42の出力信号は、出力アンプAmp3へ入力される。パワーコンバイナ42のインピーダンスは50Ωとし、損失はLデシベルとする。出力アンプAmp3の入力インピーダンスは50Ωとし、出力インピーダンスは50Ωとし、ゲインはG5とする。
出力アンプAmp3の出力信号は出力ポートOutに出力される。出力ポートOutには、評価装置3が接続される。評価装置3としては、アイダイアグラム(アイパターン)を観測するオシロスコープ、ビットエラーレート(BER)を計測するビットエラーレートテスター(BERT)などがある。
スイッチSW1−2およびスイッチSW1−3それぞれについて接点Bに接続先が切り替えられると、広帯域アンプAmp1aまたはAmp1bの出力信号はモニタポートM1に出力され、広帯域アンプAmp2の出力信号はモニタポートM2に出力される。
モニタポートM1には、オシロスコープ4の入力ポートCH1が接続され、モニタポートM2には、オシロスコープ4の入力ポートCH2が接続される。オシロスコープ4は、低損失可変遅延線41の遅延時間τ1の設定に用いられる。
ここで、低損失可変遅延線41の遅延時間τ1の設定について説明すると次の通りである。低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を設定する際は、スイッチSW1−1、SW1−2およびSW1−3の全てについて、接続先を接点Bに切り替える。これにより、次の2つのモニタ経路が形成される。すなわち、第1のモニタ経路として、パルスパターンジェネレータ101、パワーデバイダ31の端子C1、パワーデバイダ31の端子C3、アイソレーションアンプ32−2、測定ポートP1、広帯域差動アンプAmp1、低損失可変遅延線41、スイッチSW2−1、広帯域アンプAmp1aもしくはAmp1b、スイッチSW2−2、スイッチSW1−3の接点C、スイッチSW1−3の接点B、およびモニタポートM1の順に経路が構成される。また、第2のモニタ経路として、パルスパターンジェネレータ101、パワーデバイダ31の端子C1、パワーデバイダ31の端子C3、アイソレーションアンプ32−2、測定ポートP1、評価対象の伝送路2、測定ポートP2、広帯域アンプAmp2、スイッチSW1−2の接点C、スイッチSW1−2の接点B、およびモニタポートM2の順に経路が構成される。
第1のモニタ経路は、図1に示した反射成分抽出手段11および反射成分強調手段12を信号が伝播する経路であり、第2のモニタ経路は、評価対象である伝送路を信号が伝播する経路である。これら第1のモニタ経路および第2のモニタ経路の信号伝播時間が一致するよう、次のようにして低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を設定する。
低損失可変遅延線41以外の上述の各デバイスは、それぞれ固有の信号伝播時間(信号の遅延時間)を有するので、これら各デバイスについては、伝送路評価システム10の設計段階で次のように信号伝播時間(信号の遅延時間)を設計しておく。
第2のモニタ経路の一部を構成するパワーデバイダ31の端子C1からパワーデバイダ31の端子C3、アイソレーションアンプ32−2、測定ポートP1および伝送路2の端子D1までの信号伝播時間τs1については、第1のモニタ経路の一部を構成するパワーデバイダ31の端子C1からパワーデバイダ31の端子C2および終端抵抗Rまでの信号伝播時間τs2と一致するように設計する。
第2のモニタ経路の一部を構成するスイッチSW1−2の接点BからモニタポートM2までの信号伝播時間τs5については、第1のモニタ経路の一部を構成するスイッチSW1−3の接点BからモニタポートM1までの信号伝播時間τs6と一致するように設計する。
一方、評価対象の伝送路2の信号伝播時間τtについては、伝送路2ごとに異なるものである。したがって、第2のモニタ経路の一部を構成する伝送路2の端子D1から伝送路2の端子D2、測定ポートP2、広帯域アンプAmp2、スイッチSW1−2の接点C、スイッチSW1−2の接点Aおよびパワーコンバイナ42の端子C2までの信号伝播時間をτs3とし、第1のモニタ経路の一部を構成する伝送路2の端子D1から測定ポートP1、広帯域差動アンプAmp1、低損失可変遅延線41、スイッチSW2−1、広帯域アンプAmp1aもしくはAmp1b、スイッチSW2−2、スイッチSW1−3の接点C、スイッチSW1−3の接点Aおよびパワーコンバイナ42の端子C1までの信号伝播時間をτs4としたとき、「τs3−τt=τs4−τ1」の関係を満たすよう、評価対象の伝送路2の信号伝播時間τtおよび低損失可変遅延線の遅延時間τ1以外について、信号伝播時間を設計する。
上述のように、評価対象の伝送路2の信号伝播時間については、伝送路2ごとに異なるものであるので、低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を次のようにして調整することにより、最終的に第1のモニタ経路と第2のモニタ経路の信号伝播時間を一致させる。
具体的には、スイッチSW1−2およびスイッチSW1−3それぞれについて接点Bに接続先を切り替え、上述のように第1のモニタ経路および第2のモニタ経路を構成した上で、パルスパターンジェネレータ101から評価信号である擬似ランダムデータ信号を出力したときの、オシロスコープ4で観測されるモニタポートM1およびM2の各波形を観測する。モニタポートM1およびM2の各波形の立ち上がりもしくは立ち下がりのタイミングが一致するよう、低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を調整する。モニタポートM1およびM2の各波形の立ち上がりもしくは立ち下がりのタイミングが一致すると、低損失可変遅延線の遅延時間τ1と評価対象の伝送路2の信号伝播時間τtとが一致する。
上述のようにして低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を設定して反射成分抽出手段11および反射成分強調手段12を経由したときの信号伝播時間と評価対象である伝送路2を経由したときの信号伝播時間と一致させてから、アダプタ装置1を含む伝送路評価システム10を用いて、当該伝送路2の伝送品質を評価する。
ここで、伝送路評価システム10を用いた伝送路2の伝送品質の評価について説明すると次の通りである。
アダプタ装置1の測定ポートP1には、伝送路2への入射電圧と反射電圧(反射成分)とが合わさった電圧が生じている。一方、終端抵抗Rに生じる電圧は、パワーデバイダ31によって二分配されたうちの一方の信号により生じる電圧であり、すなわち、アダプタ装置1の測定ポートP1における入射電圧と同じである。測定ポートP1における入射電圧と反射電圧との加算電圧を広帯域差動アンプAmp1のプラス側の入力とし、終端抵抗Rに生じる電圧を広帯域差動アンプAmp1のマイナス側の入力とすると、広帯域差動アンプAmp1の出力は、アダプタ装置1の測定ポートP1における上記反射電圧(反射成分)となる。
広帯域差動アンプAmp1によって抽出された、伝送路2に評価信号が通過することにより生じる上記反射電圧(反射成分)は、広帯域アンプAmp1aで反転増幅されるか、広帯域アンプAmp1bで非反転増幅される。上述のように、最終的には、アダプタ装置1の出力ポートOutから出力される信号については反射成分が強調されている必要がある。例えば、評価装置3をアイダイアグラムを観測するオシロスコープとした場合、オシロスコープの表示画面を観測しながら、アイダイアグラム(アイパターン)の振幅(アイ:eye)が小さくなるよう、スイッチSW2−1およびSW2−2を操作する。スイッチSW2−1およびSW2−2の接続先を接点Aにすると、入力された信号を反転増幅する広帯域アンプAmp1aが選択され、スイッチSW2−1およびSW2−2の接続先を接点Bにすると、入力された信号を非反転増幅する広帯域アンプAmp1bが選択される。低損失可変遅延線41の出力信号を、反転増幅するか非反転増幅するかは、伝送路2が接続されるポートP1およびP2における反射係数の符号によって異なる。反転増幅する広帯域アンプAmp1aと非反転増幅する広帯域アンプAmp1bのどちらを選択したかにより、伝送路2の端子D1におけるインピーダンスが50Ωより大きいか小さいかを判断することができる。すなわち、反転増幅する広帯域アンプAmp1aを選択した場合は、伝送路2のインピーダンスは50Ωより大きく、非反転増幅する広帯域アンプAmp1bを選択した場合は、伝送路2のインピーダンスは50Ωより小さい。
次に、上述の第1の具体例による伝送路評価システムのシミュレーション結果について説明する。シミュレーションにはザイリンクス社の「Xilinx Virtex−4 RoketIO Simulation Model」(TXモデル)を使用した。評価対象の伝送路として、「特性インピーダンスZ0=50Ω、低損失可変遅延線の遅延時間τ1=88.73ピコ秒」、「特性インピーダンスZ0=45Ω、低損失可変遅延線の遅延時間τ1=89.73ピコ秒」、および「特性インピーダンスZ0=55Ω、低損失可変遅延線の遅延時間τ1=87.73ピコ秒」の3種類の伝送路(いずれについてもLoss Tangent=0.02)を用いた。また、伝送路の出力に接続される広帯域アンプ(図2のAmp2)のゲインG3を0.0デシベル、低損失可変遅延線の出力に広帯域アンプ(図2のAmp1aおよびAmp1b)のゲインGrを12.0デシベルとした。
図3〜5は、本発明の第1の実施例によるアダプタ装置を適用しない場合におけるアイダイアグラムのシミュレーション結果を示す図であって、図3は評価対象の伝送路の特性インピーダンスが45Ωの場合を示し、図4は評価対象の伝送路の特性インピーダンスが50Ωの場合を示し、図5は評価対象の伝送路の特性インピーダンスが55Ωの場合を示す図である。
また、図6〜11は、本発明の第1の実施例によるアダプタ装置を適用した場合におけるアイダイアグラムのシミュレーション結果を示す図であって、図6は評価対象の伝送路の特性インピーダンスが45Ωであり低損失可変遅延線の出力を反転増幅した場合を示し、図7は評価対象の伝送路の特性インピーダンスが50Ωであり低損失可変遅延線の出力を反転増幅した場合を示し、図8は評価対象の伝送路の特性インピーダンスが55Ωであり低損失可変遅延線の出力を反転増幅した場合を示し、図9は評価対象の伝送路の特性インピーダンスが45Ωであり低損失可変遅延線の出力を非反転増幅した場合を示し、図10は評価対象の伝送路の特性インピーダンスが50Ωであり低損失可変遅延線の出力を非反転増幅した場合を示し、図11は評価対象の伝送路の特性インピーダンスが55Ωであり低損失可変遅延線の出力を非反転増幅した場合を示す図である。
また、表1は、図3〜11のシミュレーション結果において、伝送路の特性インピーダンスと反転増幅もしくは非反転増幅との関係を整理する表である。
図3〜5に示すように、本発明の第1の実施例によるアダプタ装置を適用しないで伝送路に評価信号を入力した場合は、特性インピーダンスがそれぞれ異なっていてもアイダイアグラム(アイパターン)のアイ(eye)の大きさには明確な差が現れない。これに対して、本発明の第1の実施例によるアダプタ装置を適用して伝送路に評価信号を入力した場合は、特性インピーダンスが異なれば、アイ(eye)の大きさに明確な差が現れており、本発明が有効であることが証明された。
また、図6と図9とを比較すると、特性インピーダンスが45Ωの伝送路については、低損失可変遅延線の出力を非反転増幅したほうが反転増幅するよりもアイダイアグラムのアイ(eye)の大きさが小さくなることが分かる。
また、図8と図11とを比較すると、特性インピーダンスが55Ωの伝送路については、低損失可変遅延線の出力を反転増幅したほうが非反転増幅するよりもアイダイアグラムのアイ(eye)の大きさが小さくなることが分かる。
図12は、本発明の第1の実施例によるアダプタ装置および伝送路評価システムの第2の具体例を示す回路図である。第2の具体例は、評価対象が差動の伝送路2である場合に対応すべく、本発明の第1の実施例の第1の具体例によるアダプタ装置および伝送路評価システムを、差動化したものである。
第2の具体例によるアダプタ装置1の出力ポートOut−αには、評価対象である伝送路2の伝送特性を評価する評価装置3の入力端子in+が接続され、アダプタ装置1の出力ポートOut−βには、評価装置3の入力端子in−が接続される。アダプタ装置1の測定ポートP1およびP2の間には、評価対象である伝送路2の端子D1およびD2がそれぞれ接続され、アダプタ装置1の測定ポートP3およびP4の間には、評価対象である伝送路2の端子D3およびD4がそれぞれ接続される。アダプタ装置1の入力ポートIn−αには、評価信号を生成するパルスパターンジェネレータ(PPG)101の出力端子out+が接続され、アダプタ装置1の入力ポートIn−βには、評価信号を生成するパルスパターンジェネレータ(PPG)101の出力端子out−が接続される。アダプタ装置1のモニタポートM1−αには、オシロスコープ4の入力ポートCH1−αが接続され、アダプタ装置1のモニタポートM1−βには、オシロスコープ4の入力ポートCH1−βが接続される。アダプタ装置1のモニタポートM2−αには、オシロスコープ4の入力ポートCH2−αが接続され、アダプタ装置1のモニタポートM2−βには、オシロスコープ4の入力ポートCH2−βが接続される。伝送路評価システム10は、アダプタ装置1、パルスパターンジェネレータ101、および評価装置3を備えて構成される。
なお、第2の具体例における各デバイスの機能は、第1の具体例において説明した対応する各デバイスの機能と同じである。すなわち、第2の具体例におけるパワーデバイダ31−αおよび31−βは、第1の具体例におけるパワーデバイダ31に対応する。また、第2の具体例におけるアイソレーションアンプ32−1−αおよび32−1−βは、第1の具体例におけるアイソレーションアンプ32−1に対応し、第2の具体例におけるアイソレーションアンプ32−2−αおよび32−2−βは、第1の具体例におけるアイソレーションアンプ32−2に対応する。第2の具体例における広帯域差動アンプAmp1−αおよびAmp1−βは、第1の具体例における広帯域差動アンプAmp1に対応する。第2の具体例におけるスイッチSW1−1−αおよびスイッチSW1−1−βは、第1の具体例におけるスイッチSW1−1に対応する。第2の具体例における終端抵抗R−αおよびR−βは、第1の具体例における終端抵抗Rに対応する。第2の具体例における低損失可変遅延線41−αおよび41−βは、第1の具体例における低損失可変遅延線41に対応する。第2の具体例における広帯域アンプAmp1a−αおよびAmp1a−βは、第1の具体例における広帯域アンプAmp1aに対応し、第2の具体例における広帯域アンプAmp1b−αおよびAmp1b−βは、第1の具体例における広帯域アンプAmp1bに対応する。第2の具体例におけるスイッチSW2−1−αおよびSW2−1−βは、第1の具体例におけるスイッチSW2−1に対応し、第2の具体例におけるスイッチSW2−2−αおよびSW2−2−βは、第1の具体例におけるスイッチSW2−2に対応し、第2の具体例におけるスイッチSW1−2−αおよびSW1−2−βは、第1の具体例におけるスイッチSW1−2に対応し、第2の具体例におけるスイッチSW1−3−αおよびSW1−3−βは、第1の具体例におけるスイッチSW1−3に対応する。第2の具体例におけるパワーコンバイナ42−αおよび42−βは、第1の具体例におけるパワーコンバイナ42に対応する。第2の具体例における広帯域アンプAmp2−αおよびAmp2−βは、第1の具体例における広帯域アンプAmp2に対応し、第2の具体例における広帯域アンプAmp3−αおよびAmp3−βは、第1の具体例における広帯域アンプAmp3に対応する。
図13は、本発明の第1の実施例によるアダプタ装置および伝送路評価システムの第3の具体例を示す回路図である。第3の具体例は、本発明の第1の実施例の第1の具体例における反射成分抽出手段を構成する各デバイスのうち、アイソレーションアンプ32−1および32−2、スイッチSW1−1、終端抵抗Rならびに広帯域差動アンプAmp1を、方向性結合器33、終端抵抗RおよびRcならびにスイッチSW3−1およびSW3−2に置き換えたものである。方個性結合器33は、図13に示すように、設定内容に応じて、端子C1と端子C2との間、端子C2と端子C3との間、端子C3と端子C4との間、および端子C4と端子C1との間、の各相互間で信号を伝播するデバイスである。また、低損失可変遅延線41の遅延時間の設定のために、パルスパターンジェネレータ101の基準クロックをオシロスコープ4に入力するためのクロック線CLを設ける。
第3の具体例は、第1の具体例とは、低損失可変遅延線41の遅延時間の設定の方法が異なる。なお、これ以外のデバイスについては図2に示すデバイスと同様であるので、同一のデバイスには同一符号を付して当該デバイスについての詳細な説明は省略する。
第3の具体例では、低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を次のようにして調整する。まず、スイッチSW1−3およびスイッチSW1−2それぞれについて接点Bに接続先を切り替える。
そして、スイッチSW3−1およびスイッチSW3−2それぞれについて接点Aに接続先を切り替え、モニタポートM2へ通ずる第2の経路を構成する。第2のモニタ経路は、パルスパターンジェネレータ101から入力端子In、パワーデバイダ31の端子C1、パワーデバイダ31の端子C3、スイッチSW3−1の接点A、スイッチSW3−1の接点C、方向性結合器33の端子C1、方向性結合器33の端子C2、スイッチSW3−2の接点C、スイッチSW3−2の接点A、測定ポートP1、伝送路2、測定ポートP2、広帯域アンプAmp2、スイッチSW1−2の接点C、スイッチSW1−2の接点B、およびモニタポートM2までの経路である。この第2のモニタ経路を構成した上で、パルスパターンジェネレータ101から評価信号である擬似ランダムデータ信号を出力したときの、モニタポートM2における、パルスパターンジェネレータ101の基準クロックに対する信号波形をオシロスコープ4で観測し、遅延時間Td2を測定する。
次に、スイッチSW3−1およびスイッチSW3−2それぞれについて接点Bに接続先を切り替え、モニタポートM1へ通ずる第1の経路を構成する。第1のモニタ経路は、パルスパターンジェネレータ101から入力端子In、パワーデバイダ31の端子C1、パワーデバイダ31の端子C2、スイッチSW3−2の接点B、スイッチSW3−2の接点C、方向性結合器33の端子C2、方向性結合器33の端子C3、低損失可変地変遷41、スイッチSW2−1、広帯域アンプAmp1aもしくはAmp1b、スイッチSW2−2、スイッチSW1−3の接点C、スイッチSW1−3の接点B、およびモニタポートM1までの経路である。この第1のモニタ経路を構成した上で、パルスパターンジェネレータ101から評価信号である擬似ランダムデータ信号を出力したときの、モニタポートM1における、パルスパターンジェネレータ101の基準クロックに対する信号波形をオシロスコープ4で観測して遅延時間Td1を測定し、オシロスコープ4で観測しながら、第1のモニタ経路の遅延時間Td1が、既に測定した第2のモニタ経路の遅延時間Td2と同じになるように、低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を調整する。
上述のようにして低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を設定して反射成分抽出手段11および反射成分強調手段12を経由したときの信号伝播時間と評価対象である伝送路2を経由したときの信号伝播時間と一致させてから、アダプタ装置1を含む伝送路評価システム10を用いて、当該伝送路2の伝送品質を評価する。
ここで、第3の具体例による伝送路評価システム10を用いた伝送路2の伝送品質の評価について説明すると次の通りである。
伝送路2の伝送品質の評価を評価する際には、スイッチSW3−1およびスイッチSW3−2それぞれについて接点Cの接続先を接点Aとする。また方向性結合器33は、端子C1から入力された信号については端子C2へ出力し、端子C2から入力された信号については端子C3へ出力する。
パルスパターンジェネレータ101が生成した評価信号は、アダプタ装置1の入力ポートInに入力されると、パワーデバイダ31の端子C1から、パワーデバイダ31の端子C3を介して方向性結合器33の端子C1へ入力される。方向性結合器33は、この評価信号を端子C2へ出力し、その後、評価信号は、スイッチSW3−2の接点C、スイッチSW3−2の接点A、測定ポートP1、伝送路2の順に流れる。その後、伝送路2から出力された信号は、測定ポートP2、広帯域アンプAmp2、スイッチSW1−2の接点CおよびスイッチSW1−2の接点A介してパワーコンバイナ42の端子C2へ入力される。
また、伝送路2を上述のように評価信号が通過すると、測定ポートP1には反射成分が発生する。この反射成分は、スイッチSW3−2の接点Aおよび接点Cを介して、方向性結合器33の端子C2へ入力される。方向性結合器33は、この反射成分を端子C3へ出力し、その後、反射成分は、低損失可変遅延線41、スイッチSW2−1、広帯域アンプAmp1aもしくはAmp1b、スイッチSW2−2、スイッチSW1−3の接点CおよびスイッチSW1−3の接点Aを介してパワーコンバイナ42の端子C1へ入力される。
パワーコンバイナ42は、端子C1およびC2それぞれから入力された信号を互いに加算して出力アンプAmp3へ出力するが、以後の動作については、上述の第1の具体例と同様である。
図14は、本発明の第1の実施例によるアダプタ装置および伝送路評価システムの第4の具体例を示す回路図である。第4の具体例は、本発明の第1の実施例の第1の具体例における反射成分抽出手段を構成する各デバイスのうち、アイソレーションアンプ32−1および32−2、スイッチSW1−1、終端抵抗Rならびに広帯域差動アンプAmp1を、サーキュレータ34およびスイッチSW4に置き換えたものである。サーキュレータ34は、図14に示すように、端子C1から入力された信号は端子C2へ、端子C2から入力された信号は端子C3へ、端子C3から入力された信号は端子C1へ、それぞれ出力するデバイスである。また、低損失可変遅延線41の遅延時間の設定のために、パルスパターンジェネレータ101の基準クロックをオシロスコープ4に入力するためのクロック線CLを設ける。
第4の具体例は、第1の具体例とは、低損失可変遅延線41の遅延時間の設定の方法が異なる。なお、これ以外のデバイスについては図2に示すデバイスと同様であるので、同一のデバイスには同一符号を付して当該デバイスについての詳細な説明は省略する。
第4の具体例では、低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を次のようにして調整する。まず、スイッチSW1−2およびスイッチSW1−3それぞれについて接点Bに接続先を切り替える。
そして、スイッチSW4について接点Cの接続先を接点Aとし、モニタポートM2へ通ずる第2の経路を構成する。第2のモニタ経路は、パルスパターンジェネレータ101から入力端子In、パワーデバイダ31の端子C1、パワーデバイダ31の端子C2、サーキュレータの端子C1、サーキュレータの端子C2、スイッチSW4の接点C、スイッチSW4の接点A、測定ポートP1、伝送路2、測定ポートP2、広帯域アンプAmp2、スイッチSW1−2の接点C、スイッチSW1−2の接点B、およびモニタポートM2までの経路である。この第2のモニタ経路を構成した上で、パルスパターンジェネレータ101から評価信号である擬似ランダムデータ信号を出力したときの、モニタポートM2における、パルスパターンジェネレータ101の基準クロックに対する信号波形をオシロスコープ4で観測し、遅延時間Td2を測定する。
次に、スイッチSW4について接点Cの接続先を接点Bとし、モニタポートM1へ通ずる第1の経路を構成する。第1のモニタ経路は、パルスパターンジェネレータ101から入力端子In、パワーデバイダ31の端子C1、パワーデバイダ31の端子C3、スイッチSW4の端子B、スイッチSW4の端子C、サーキュレータ34の端子C2、サーキュレータ34の端子C3、低損失可変地変遷41、スイッチSW2−1、広帯域アンプAmp1aもしくはAmp1b、スイッチSW2−2、スイッチSW1−3の接点C、スイッチSW1−3の接点B、およびモニタポートM1までの経路である。この第1のモニタ経路を構成した上で、パルスパターンジェネレータ101から評価信号である擬似ランダムデータ信号を出力したときの、モニタポートM1における、パルスパターンジェネレータ101の基準クロックに対する信号波形をオシロスコープ4で観測して遅延時間Td1を測定し、オシロスコープ4で観測しながら、第1のモニタ経路の遅延時間Td1が、既に測定した第2のモニタ経路の遅延時間Td2と同じになるように、低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を調整する。
上述のようにして低損失可変遅延線41の遅延時間τ1を設定して反射成分抽出手段11および反射成分強調手段12を経由したときの信号伝播時間と評価対象である伝送路2を経由したときの信号伝播時間と一致させてから、アダプタ装置1を含む伝送路評価システム10を用いて、当該伝送路2の伝送品質を評価する。
ここで、第4の具体例による伝送路評価システム10を用いた伝送路2の伝送品質の評価について説明すると次の通りである。
伝送路2の伝送品質の評価を評価する際には、スイッチSW4について接点Cの接続先を接点Aとする。
パルスパターンジェネレータ101が生成した評価信号は、アダプタ装置1の入力ポートInに入力されると、パワーデバイダ31の端子C1から、パワーデバイダ31の端子C2を介してサーキュレータ34の端子C1へ入力される。サーキュレータ34は、この評価信号を端子C2へ出力し、その後、評価信号は、スイッチSW4の接点C、スイッチSW4の接点A、測定ポートP1、伝送路2の順に流れる。その後、伝送路2から出力された信号は、測定ポートP2、広帯域アンプAmp2、スイッチSW1−2の接点CおよびスイッチSW1−2の接点A介してパワーコンバイナ42の端子C2へ入力される。
また、伝送路2を上述のように評価信号が通過すると、測定ポートP1には反射成分が発生する。この反射成分は、スイッチSW4の接点Aおよび接点Cを介して、サーキュレータ34の端子C2へ入力される。サーキュレータ34は、この反射成分を端子C3へ出力し、その後、反射成分は、低損失可変遅延線41、スイッチSW2−1、広帯域アンプAmp1aもしくはAmp1b、スイッチSW2−2、スイッチSW1−3の接点CおよびスイッチSW1−3の接点Aを介してパワーコンバイナ42の端子C1へ入力される。
パワーコンバイナ42は、端子C1およびC2それぞれから入力された信号を互いに加算して出力アンプAmp3へ出力するが、以後の動作については、上述の第1の具体例と同様である。
上述の第1〜第4の具体例は適宜組み合わせて実施してもよい。
次に、本発明の第2の実施例によるアダプタ装置について説明する。第2の実施例によるアダプタ装置は、図1を参照して説明した第1の実施例によるアダプタ装置に、伝送路を通過したときに生じる損失分を抽出し、抽出した損失分を、第1の実施例によるアダプタ装置にさらに加算するものである。第2の実施例によるアダプタ装置を説明するに先立ち、伝送路を通過したときに生じる損失分の抽出の原理について説明する。
図15は、本発明の第2の実施例において用いられる、伝送路を通過したときに生じる損失分の抽出の原理を説明する等価回路図である。伝送路2に対して、パルスパターンジェネレータ101によって評価信号が入力したときに生じる損失分は、損失分抽出手段13によって、次のようにして抽出される。
損失分抽出手段13は、パルスパターンジェネレータ101内の発振器OSC1と同じ波形(ともに振幅をbsとする)およびタイミングを有するパルスパターンを生成する発振器OSC2を有する。また、損失分抽出手段13内の発振器OSC2の出力インピーダンスRs、無損失伝送路51の特性インピーダンスZ0および負荷インピーダンスZLはすべて等しく設計し、さらにパルスパターンジェネレータ101内の発振器OSC1の出力インピーダンスRs、伝送路2の負荷インピーダンスZLも等しくなるように設計する。この設計により、損失分抽出手段13内における伝送系においては、伝送損失が生じないものとする。またさらに、無損失伝送路51の遅延時間τ2は、伝送路2の遅延時間τtと等しく、反転アンプ53の遅延時間τ4は、バッファアンプ54の遅延時間τ3と等しくなるように設計する。
式(6)において、ΓS=ΓL=0、S11=S22=0、S12=S21=1、とすると、無損失伝送路51の出力端P4における電圧VP4は、VP4=bsとなる。
反転アンプ53は、抽出された上記損失分を、反転増幅する損失分増幅手段である。反転アンプ53のゲインをGtとすると、損失分抽出手段13の出力P5は式(8)のように示される。
よって、損失分加算手段55の出力P2Sは、式(9)のように示される。
式(9)は、伝送路2を通過した信号に、Gt倍した損失分をさらに与えていることを示しており、このことは、伝送路2の伝送損失を強調(拡大)していることを意味する。なお、ゲインGtが式(10)で示される値よりも大きい場合は、損失分加算手段55の出力P2Sの絶対値は、伝送路2の出力P2の絶対値よりも大きくなってしまうので、ゲインGtを式(10)で示される値以下に設定する必要がある。
図16は、本発明の第2の実施例によるアダプタ装置を示す基本構成図である。第2の実施例によるアダプタ装置1は、上述した図15に示される回路を、図1に示した第1の実施例によるアダプタ装置1に組み合わせることによって実現される。すなわち、第2の実施例によるアダプタ装置1は、第1の実施例によるアダプタ装置1において、伝送路2を通過した評価信号の損失分を抽出する損失分抽出手段13と、抽出された損失分を、反転増幅する損失分増幅手段である反転アンプ53と、損失分抽出手段13および損失分増幅手段53を経由したときの信号伝播時間と伝送路2を経由したときの信号伝播時間とが一致するよう、反転増幅された損失分の伝播を遅延させる損失分遅延手段(図示の例では、反転アンプ53およびバッファアンプ54の遅延時間で調整している)と、このように遅延された損失分を、反射成分強調手段が評価装置へ入力する信号に、さらに加算する損失分加算手段55と、をさらに備えるものである。第2の実施例によれば、伝送路2の反射成分および損失分ともに強調(拡大)し、伝送路2の伝送品質の良し悪しをより明確にすることができる。
損失分抽出手段13、損失分増幅手段である反転アンプ53、損失分遅延手段および損失分加算手段55の具体例については、図17に示す回路図を参照して説明する。
図17は、本発明の第2の実施例によるアダプタ装置および伝送路評価システムの具体例を示す回路図である。
本具体例によるアダプタ装置1の出力ポートOutには、評価対象である伝送路2の伝送特性を評価する評価装置3が接続される。アダプタ装置1の測定ポートP1およびP2の間には、評価対象である伝送路2が接続される。アダプタ装置1の入力ポートInには、評価信号を生成するパルスパターンジェネレータ(PPG)101が接続され、評価信号が入力される。アダプタ装置1のモニタポートM1には、オシロスコープ4−1の入力ポートCH1が接続され、モニタポートM2には、オシロスコープ4の入力ポートCH2が接続される。アダプタ装置1のモニタポートM3には、オシロスコープ4−2の入力ポートCH1が接続され、モニタポートM4には、オシロスコープ4−2の入力ポートCH2が接続される。伝送路評価システム10は、アダプタ装置1、パルスパターンジェネレータ101、および評価装置3を備えて構成される。
本具体例によるアダプタ装置1は、図2を参照して説明した第1の実施例の第1の具体例によるアダプタ装置において、低損失可変遅延線41−2、広帯域差動アンプAmp1−2、広帯域アンプAmp2−2、パワーコンバイナ42−2、アイソレーションアンプ32−3、ならびにスイッチSW5−1およびSW5−2を追加したものである。本具体例における、低損失可変遅延線41−1、広帯域差動アンプAmp1−1、広帯域アンプAmp2−1およびパワーコンバイナ42−1は、図2に示した低損失可変遅延線41、広帯域差動アンプAmp1、広帯域アンプAmp2およびパワーコンバイナ42にそれぞれ対応するものである。また、これ以外のデバイスについては図2に示すデバイスと同様であるので、同一のデバイスには同一符号を付して当該デバイスについての詳細な説明は省略する。
アイソレーションアンプ32−1の出力信号は、スイッチSW1−1の接点Aに入力されるほかに、低損失可変遅延線41−2にも入力される。低損失可変遅延線41−2は、入力された信号を、遅延時間τ2かけて伝播させ、終端抵抗RおよびスイッチSW5−1の端子Cへ出力する。低損失可変遅延線41−2の特性インピーダンスは50Ωとする。
スイッチSW5−1は、接点AまたはBに切り替えることによって、低損失可変遅延線41−2の出力信号を、広帯域差動アンプAmp1−2のマイナス側またはモニタポートM3に入力する。
また、スイッチSW5−2は、アイソレーションアンプ32−3を介した伝送路2からの出力信号を、広帯域差動アンプAmp1−2のプラス側またはモニタポートM4に入力する。
広帯域差動アンプAmp1−2の出力信号は、広帯域アンプAmp2−2に入力される。広帯域アンプAmp2−2の出力信号は、パワーコンバイナ42−2の端子C2に入力される。また、パワーコンバイナ42−1の端子C3からの出力信号は、パワーコンバイナ42−2の端子C1に入力される。パワーコンバイナ42−2の端子C3からの出力信号は、出力アンプAmp3に入力される。広帯域差動アンプAmp1−2の入力インピーダンスは無限大(無限大)とし、出力インピーダンスは50Ωとし、ゲインはG2とする。広帯域アンプAmp2−2の入力インピーダンスは50Ωとし、出力インピーダンスは50Ωとし、ゲインはGtとする。パワーコンバイナ42−2のインピーダンスは50Ωとし、損失はLデシベルとする。
本具体例における低損失可変遅延線41−1の遅延時間τ1の調整は、図に示した低損失可変遅延線41の調整方法と同様である。
一方、低損失可変遅延線41−2の遅延時間τ2については次のようにして調整する。まず、スイッチSW5−1およびスイッチSW5−2それぞれについて接点Cの接続先を接点Bにする。
これにより、次の2つのモニタ経路が形成される。すなわち、第1のモニタ経路として、パルスパターンジェネレータ101、パワーデバイダ31の端子C1、パワーデバイダ31の端子C2、アイソレーションアンプ32−1、低損失可変遅延線41−2、スイッチSW5−1の接点C、スイッチSW5−1の接点B、およびモニタポートM3の順に経路が構成される。また、第2のモニタ経路として、パルスパターンジェネレータ101、パワーデバイダ31の端子C1、パワーデバイダ31の端子C3、アイソレーションアンプ32−2、測定ポートP1、評価対象の伝送路2、測定ポートP2、アイソレーションアンプ32−3、スイッチSW5−2の接点C、スイッチSW5−2の接点B、およびモニタポートM4の順に経路が構成される。
これら第1のモニタ経路および第2のモニタ経路の信号伝播時間が一致するよう、次のようにして低損失可変遅延線41−2の遅延時間τ2を設定する。
低損失可変遅延線41−2以外の上述の各デバイスは、それぞれ固有の信号伝播時間(信号の遅延時間)を有するので、これら各デバイスについては、伝送路評価システム10の設計段階で次のように信号伝播時間(信号の遅延時間)を設計しておく。
第2のモニタ経路の一部を構成するパワーデバイダ31の端子C1からパワーデバイダ31の端子C3、アイソレーションアンプ32−2、測定ポートP1および伝送路2の端子D1までの信号伝播時間τs1については、第1のモニタ経路の一部を構成するパワーデバイダ31の端子C1からパワーデバイダ31の端子C2および低損失可変遅延線41−2の端子C1までの信号伝播時間τs2と一致するように設計する。
第2のモニタ経路の一部を構成するスイッチSW5−2の接点BからモニタポートM4までの信号伝播時間τs10については、第1のモニタ経路の一部を構成するスイッチSW5−1の接点BからモニタポートM3までの信号伝播時間τs9と一致するように設計する。
第2のモニタ経路の一部を構成するパワーデバイダ31の端子C1からパワーデバイダ31の端子C3、アイソレーションアンプ32−2、測定ポートP1、伝送路2の端子D1、伝送路2の端子D2、測定ポートP2、アイソレーションアンプ32−3、スイッチSW5−2の端子C、スイッチSW5−2の端子A、および広帯域差動アンプAmp1−2のプラス入力までの信号伝播時間をτs7とし、第1のモニタ経路の一部を構成するパワーデバイダ31の端子C1からパワーデバイダ31の端子C2、アイソレーションアンプ32−1、低損失可変遅延線41−2の端子C1、低損失可変遅延線41−2の端子C2、スイッチSW5−1の端子C、スイッチSW5−1の端子A、および広帯域差動アンプAmp1−2のマイナス入力までの信号伝播時間をτs8としたとき、「τs7−τt=τs8−τ2」の関係を満たすよう、評価対象の伝送路2の信号伝播時間τtおよび低損失可変遅延線の遅延時間τ2以外について、信号伝播時間を設計する。
上述のように第1のモニタ経路および第2のモニタ経路を構成した上で、パルスパターンジェネレータ101から評価信号である擬似ランダムデータ信号を出力したときの、オシロスコープ4−2で観測されるモニタポートM3およびM4の各波形を観測する。モニタポートM3およびM4の各波形の立ち上がりもしくは立ち下がりのタイミングが一致するよう、低損失可変遅延線41−2の遅延時間τ2を調整する。
低損失可変遅延線41−1の遅延時間τ1および低損失可変遅延線41−2の遅延時間τ2を設定してから、アダプタ装置1を含む伝送路評価システム10を用いて、当該伝送路2の伝送品質を評価する。
伝送路2に評価信号が通過することによって生じる反射成分については、図2に示した第1の実施例の第1の具体例において説明したようにして抽出され、パワーコンバイナ42−1の端子C3からパワーコンバイナ42−2の端子C1に入力される。
一方、伝送路2に評価信号が通過することによって生じる損失分については、次のようにして得られる。すなわち、伝送路2を通過した信号であるアイソレーションアンプ32−3の出力信号は、広帯域差動アンプAmp1−2のプラス側に入力される。低損失可変遅延線41−2の端子C2からの出力は、広帯域差動アンプAmp1−2のマイナス側に入力される。これにより、広帯域差動アンプAmp1−2の出力として、伝送路2の損失分が抽出されることになる。
広帯域差動アンプAmp1−2の出力信号は、広帯域アンプAmp2−2を介してパワーコンバイナ42−2の端子C2に入力される。パワーコンバイナ42−2は、端子C1およびC2を介して入力された各信号を加算して端子C3を介して出力アンプAmp3へ出力する。出力アンプAmp3の出力信号は出力ポートOutを介して評価装置3に入力される。
次に、上述の本具体例による伝送路評価システムのシミュレーション結果について説明する。シミュレーションには、第1の実施例と同様、ザイリンクス社の「Xilinx Virtex−4 RoketIO Simulation Model」(TXモデル)を使用した。評価対象の伝送路として、「特性インピーダンスZ0=45Ω、低損失可変遅延線の遅延時間τ1=89.73ピコ秒」の伝送路(Loss Tangent=0.02)を用いた。その他各パラメータについては第1の実施例と同様である。
また、図18〜20は、本発明の第2の実施例によるアダプタ装置を適用した場合におけるアイダイアグラムの比較結果を説明するシミュレーション結果を示す図であって、図18は本発明の第2の実施例によるアダプタ装置を適用して伝送路の損失成分のみを強調した場合を示し、図19は伝送路の反射成分のみを強調した場合を示し、図20は伝送路の反射成分および損失分の両方を強調した場合を示す図である。
図19に示す本発明の第2の実施例によるアダプタ装置を適用して伝送路の反射成分のみを強調した場合に比べて、図20に示す伝送路の反射成分および損失分の両方を強調した場合のほうが、アイ(eye)の大きさがより一層明確な差として現れていることが分かり、本発明の第2の実施例が有効であることが証明された。