本発明の一態様は、質量分析計であって、
第1の複数の電極を有する第1の質量選択的イオントラップと、
第2の複数の電極を有する第2の質量選択的イオントラップで、第1の質量選択的イオントラップの下流側に配置される第2の質量選択的イオントラップと、を備える。
動作モード下で、第1のイオントラップ中に、あるいは、第1のイオントラップ内部に、初期時間T0において、貯蔵またはトラップされるように、イオン群を設定する。
質量分析計は、さらに、制御システムであって、
(i)第1スキャンの間、第1のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第1のイオントラップを制御し、第1のイオントラップから質量選択的に放出される、および/あるいは、第1のイオントラップから出現するイオンの少なくとも一部を、次に、第2のイオントラップが受け取り、第2のイオントラップ中に、あるいは、第2のイオントラップ内部に貯蔵またはトラップするように、第1のイオントラップを制御し、
(ii)第2スキャンの間、第2のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第2のイオントラップを制御する、ように構成される制御システムを備える。
「質量選択的な放出」および「質量選択的に放出される」という表現は、特定の質量あるいは質量対電荷比または所定範囲内の質量あるいは質量対電荷比を有するイオンをイオントラップから放出させる、または、イオントラップ内で特定の質量あるいは質量対電荷比または所定範囲内の質量あるいは質量対電荷比を有するイオンを不安定化し、その結果として、イオントラップから出現するようにする、という実施形態を網羅するものである。
さまざまな実施形態において、質量選択的不安定性、共鳴放出、パラメトリックまたは非線形共鳴励起、あるいは非共鳴放出を含むさまざまな手法により、第1のイオントラップから、および/あるいは、第2のイオントラップから、質量選択的に、または、質量対電荷比選択的に、イオンを放出させることができる。3以上のイオントラップを、望ましくは、直列配置で、備える構成も可能である。後者の構成では、追加のイオントラップからも、質量選択的不安定性、共鳴放出、パラメトリックまたは非線形共鳴励起、あるいは非共鳴放出のいずれかの手法でイオンを放出させることができる。
一実施形態において、第1のイオントラップから、および/あるいは、第2のイオントラップから、質量選択的に、または、質量対電荷比選択的に、軸方向または軸上に、および/あるいは、放射方向または放射状に、イオンを放出させるようにしてもよい。
一実施形態において、第1の複数の電極および/あるいは第2の複数の電極に印加されるAC電圧(交流電圧)またはRF電圧(高周波電圧)の周波数および/あるいは振幅を調節することによって、質量選択的不安定性手法により、第1のイオントラップから、および/あるいは、第2のイオントラップから、イオンを放出させるように、制御システムを構成してもよい。
第1スキャンの間、および/あるいは、第2またはそれに続くスキャンの間、質量選択的不安定性パラメータ(たとえば、印加されるAC電圧またはRF電圧の周波数および/あるいは振幅)が変動、スキャン、増大、あるいは減少されるものでもよい。ここで、パラメータを、漸次、規則的、不規則的、線形、非線形、連続的、または、不連続的のいずれの方法で、変動、スキャン、増大、あるいは減少させるものでもよい。
一実施形態において、第1の複数の電極および/あるいは第2の複数の電極に、AC補助波形または補助電圧またはティックル電圧あるいはRF補助波形または補助電圧またはティックル電圧を印加および/あるいは重畳することによって、共鳴放出手法により、第1のイオントラップから、および/あるいは、第2のイオントラップから、イオンを放出させるように、制御システムを構成してもよい。
第1スキャンの間、および/あるいは、第2またはそれに続くスキャンの間、共鳴放出パラメータ(たとえば、印加されるAC補助波形または補助電圧またはティックル電圧あるいはRF補助波形または補助電圧またはティックル電圧の周波数および/あるいは振幅)が変動、スキャン、増大、あるいは減少されるものでもよい。ここで、パラメータを、漸次、規則的、不規則的、線形、非線形、連続的、または、不連続的のいずれの方法で、変動、スキャン、増大、あるいは減少させるものでもよい。
一実施形態において、第1の複数の電極および/あるいは第2の複数の電極に、DCバイアス電圧を印加および/あるいは重畳することによって、質量選択的手法により、第1のイオントラップから、および/あるいは、第2のイオントラップから、イオンを放出させるように、制御システムを構成してもよい。
第1スキャンの間、および/あるいは、第2またはそれに続くスキャンの間、質量選択的パラメータ(たとえば、印加されるDCバイアス電圧の振幅)が変動、スキャン、増大、あるいは減少されるものでもよい。ここで、パラメータを、漸次、規則的、不規則的、線形、非線形、連続的、または、不連続的のいずれの方法で、変動、スキャン、増大、あるいは減少させるものでもよい。
一実施形態において、第1の複数の電極および/あるいは第2の複数の電極に、補助AC電圧または電位あるいは補助RF電圧または電位を印加および/あるいは重畳することによって、第1のイオントラップ内部で、および/あるいは、第2のイオントラップ内部で、少なくとも一部のイオンをパラメトリックあるいは非線形的に励起するように、制御システムを構成してもよい。ここで、補助AC電圧または電位あるいは補助RF電圧または電位は、パラメトリックな励起の標的イオンの基本周波数または共鳴周波数ωとは実質的に異なる周波数σを有することが望ましい。一実施形態において、補助AC電圧または電位あるいは補助RF電圧または電位は、>2ω、2ω、>1.2ω、>1ω、<1ω、<0.8ω、0.667ω、0.5ω、0.4ω、0.33ω、0.286ω、0.25ω、あるいは、<0.25ωのいずれかに等しい周波数σを有し、ここで、ωはパラメトリックな励起の標的イオンの基本周波数または共鳴周波数である。
第1スキャンの間、および/あるいは、第2またはそれに続くスキャンの間、パラメトリックな励起パラメータあるいは非線形共鳴パラメータ(たとえば、補助AC電圧または補助RF電圧の周波数および/あるいは振幅)が変動、スキャン、増大、あるいは減少されるものでもよい。ここで、パラメータを、漸次、規則的、不規則的、線形、非線形、連続的、または、不連続的のいずれの方法で、変動、スキャン、増大、あるいは減少させるものでもよい。
一実施形態において、第1の複数の電極および/あるいは第2の複数の電極に、一つあるいは複数のAC電圧および/あるいはDC電圧を印加することによって、非共鳴手法により、第1のイオントラップから、および/あるいは、第2のイオントラップから、イオンを放出させるように、制御システムを構成してもよい。
第1スキャンの間、および/あるいは、第2またはそれに続くスキャンの間、非共鳴放出パラメータ(たとえば、印加されるAC電圧またはRF電圧および/あるいは印加されるDC電圧の周波数および/あるいは振幅)が変動、スキャン、増大、あるいは減少されるものでもよい。ここで、パラメータを、漸次、規則的、不規則的、線形、非線形、連続的、または、不連続的のいずれの方法で、変動、スキャン、増大、あるいは減少させるものでもよい。
質量選択的不安定性パラメータ、共鳴放出パラメータ、パラメトリックまたは非線形共鳴放出パラメータ、非共鳴放出パラメータ、AC電圧またはRF電圧および/あるいはDC電圧の振幅(あるいは適当な場合には周波数)および/あるいは周波数を、望ましくはXscanボルトだけ、漸次増大させる、漸次減少させる、漸次変動させる、スキャンする、直線的に増加させる、直線的に減少させる、段階的、漸進的または他の方法で増大させる、段階的、漸進的または他の方法で減少させるように、質量分析計を構成するものでもよい。パラメータ(振幅および/あるいは周波数)を、時間Tscanの間、スキャンすることが望ましい。
ここで、望ましくは、Xscanは、(i)50Vより小さいピークピーク値(peak to peak)、(ii)50Vから100Vの範囲、(iii)100Vから150V の範囲、(iv)150Vから200Vの範囲、(v)200Vから250Vの範囲、(vi)250Vから300Vの範囲、(vii)300Vから350Vの範囲、(viii)350Vから400Vの範囲、(ix) 400Vから450Vの範囲、(x)450Vから500Vの範囲、(xi)500Vから550Vの範囲、(xxii)550Vから600Vの範囲、(xxiii)600Vから650Vの範囲、(xxiv)650Vから700Vの範囲、(xxv)700Vから750Vの範囲、(xxvi)750Vから800Vの範囲、(xxvii)800Vから850Vの範囲、(xxviii)850Vから900Vの範囲、(xxix)900Vから950Vの範囲、(xxx)950Vから1000Vの範囲、および(xxxi)1000Vより大きいピークピーク値、からなる群から選択される。
また、望ましくは、Tscanは、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。
初期時間T0において、および/あるいは、その後の時間ΔTの間、第2のイオントラップに実質上イオンが存在しない。時間ΔTは、望ましくは、(i)0.1マイクロ秒より短い値、(ii)0.1から0.5マイクロ秒の範囲の値、(iii)0.5から1マイクロ秒の範囲の値、(iv)1から5マイクロ秒の範囲の値、(v)5から10マイクロ秒の範囲の値、(vi)10から50マイクロ秒の範囲の値、(vii)50から100マイクロ秒の範囲の値、(viii)100から500マイクロ秒の範囲の値、(ix)500から1000マイクロ秒の範囲の値、(x)1から5ミリ秒の範囲の値、(xi)5から10ミリ秒の範囲の値、(xii)10から50ミリ秒の範囲の値、(xiii)50から100ミリ秒の範囲の値、(xiv)100から500ミリ秒の範囲の値、(xv)500から1000ミリ秒の範囲の値、および(xvi)1秒より長い値、からなる群から選択される。
第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップは、望ましくは、
(i)2次元またはリニア四重極イオントラップと、
(ii)複数の棒電極を備える2次元またはリニア四重極イオントラップで、複数の棒電極にAC(交流)電圧またはRF(高周波)電圧を印加することにより、イオントラップ内部で半径方向にイオンを閉じ込め、一つあるいは複数の電極にDC(直流)電圧および/あるいはAC電圧またはRF電圧を印加することにより、イオントラップ内部で少なくとも一つの軸方向にイオンを閉じ込める、2次元またはリニア四重極イオントラップと、
(iii)3次元四重極またはポール(Paul)型イオントラップと、
(iv)中央リング電極と二つの双曲線エンドキャップ電極とを備える3次元またはポール(Paul)型イオントラップで、中央リング電極および/あるいは一つあるいは複数の双曲線エンドキャップ電極にAC電圧またはRF電圧を印加することにより、イオントラップ内部にイオンを閉じ込める、3次元またはポール(Paul)型イオントラップと、
(v)円筒形イオントラップと、
(vi)円筒電極と一つあるいは複数の平面エンドキャップ電極とを備える円筒形イオントラップと、
(vii)立方体イオントラップと、
(viii)6個の平面電極を備える立方体イオントラップと、
(ix)ペニング(Penning)型イオントラップと、
(x)イオンが円形軌道上にある場合に半径方向にイオンを閉じ込める磁界を備えるペニング(Penning)型イオントラップと、
(xi)静電またはオービトラップ型質量分析器と、
からなる群から選択される。
一実施形態において、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップが、使用時にイオンを透過させる少なくとも一つの孔を有する複数の分割棒電極あるいは複数の電極を備えるものでもよい。ここで、一つあるいは複数の過渡DC電圧または電位、あるいは、一つあるいは複数の過渡DC電圧波形または電位波形を電極に印加することによって、質量対電荷比に応じて、少なくとも一部のイオンが分離されることが望ましい。
一実施形態において、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップが、
複数の電極を備えるイオンガイドと、
複数の電極の少なくとも一部にAC電圧またはRF電圧を印加する装置であって、使用時に、イオンガイドの軸長の少なくとも一部に沿って、複数の軸方向時間平均障壁、コルゲーションまたはウェル、あるいは、複数の疑似電位障壁、コルゲーションまたはウェルを形成する装置と、
イオンガイドの軸長の少なくとも一部に沿って、および/あるいは、イオンガイドの軸長の少なくとも一部を通過するように、イオンを起動・駆動する装置であって、動作モード下で、第1の範囲の質量対電荷比を有するイオンをイオンガイドから抜け出させる一方で、複数の軸方向時間平均障壁、コルゲーションまたはウェル、あるいは、複数の疑似電位障壁、コルゲーションまたはウェルにより、第1の範囲とは異なる第2の範囲の質量対電荷比を有するイオンをイオンガイド内部で軸方向にトラップする、または、閉じ込める装置と、
を備える構成でもよい。
ここで、イオンを起動・駆動する装置は、電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%あるいは100%に、一つあるいは複数の過渡DC電圧または電位、あるいは、一つあるいは複数の過渡DC電圧波形または電位波形を印加する装置を備える。
一実施形態において、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップが、
一つあるいは複数の第1の電極を備えるイオンガイドまたはイオントラップと、
第1の電極の下流側に配置される一つあるいは複数の出口電極と、
動作モード下で、イオンガイドまたはイオントラップ内部にイオンをトラップし、また、複数サイクルの操作を実行するように構成される制御手段であって、各操作サイクルにおいて、第1の時間Teの間、少なくとも一部のイオンを活性化して、イオンガイドまたはイオントラップから抜け出させ、その後、第2の時間Tcの間、イオンガイドまたはイオントラップからイオンが抜け出るのを実質的に防ぐように構成される制御手段と、
を備える構成でもよい。
ここで、制御手段が、さらに、複数サイクルの操作が実行されている間、イオンガイドまたはイオントラップへのイオンの実質的な侵入を防ぎ、それに続く操作サイクルにおいて第1の時間Teの長さあるいは幅を変動させるように構成されることが望ましい。
一実施形態において、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップが、
第1の配向に配列される第1の複数の電極と、
第1の配向とは異なる第2の配向に配列される第2の複数の電極と、
を備える構成でもよい。
ここで、第1の複数の電極にDC電圧を印加することにより、第1の半径方向にイオンを閉じ込める構成が望ましい。また、第2の複数の電極にAC電圧またはRF電圧を印加することにより、第1の半径方向とは異なる第2の半径方向にイオンを閉じ込める構成が望ましい。
一実施形態において、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップが、
第1の複数の電極を備える第1電極群と、
第2の複数の電極を備える第2電極群と、
第1の複数の電極のいずれか一つあるいは複数に、および/あるいは、第2の複数の電極のいずれか一つあるいは複数に、一つあるいは複数のDC電圧を印加するように構成される第1の装置であって、
(a)第1の範囲内の半径方向変位を有するイオンを、イオントラップ内部で少なくとも一つの軸方向にイオンの少なくとも一部を閉じ込めるように作用するDCトラップ場、DC電位障壁、または、障壁場にさらし、
(b)第1の範囲と異なる第2の範囲内の半径方向変位を有するイオンを、(i)イオンの少なくとも一部がイオントラップ内部で少なくとも一つの軸方向に閉じ込められないように、実質上ゼロのDCトラップ場、実質的に存在しないDC電位障壁、または、実質的に存在しない障壁場にさらす、および/あるいは、(ii)少なくとも一つの軸方向に、および/あるいは、イオントラップから外に、イオンの少なくとも一部を抽出または加速するように作用するDC抽出場、加速DC電位差、または、抽出場にさらす、ように構成される第1の装置と、
イオントラップ内部において、少なくとも一部のイオンの半径方向変位を変化、増加、減少、変動させるように構成される第2の装置と、
を備える構成でもよい。
一実施形態において、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップが、
複数の電極を備えるイオンガイドと、
複数の電極の少なくとも一部に第1のAC電圧またはRF電圧を印加する装置であって、使用時に、イオンガイドの軸長の少なくとも一部に沿って、第1の振幅を有する複数の第1の軸方向時間平均障壁、コルゲーションまたはウェル、あるいは、複数の第1の疑似電位障壁、コルゲーションまたはウェルを形成する装置と、
イオンガイドの軸長の少なくとも一部に沿ってイオンを起動・駆動する装置と、
複数の電極のうち一つあるいは複数に第2のAC電圧またはRF電圧を印加する装置であって、使用時に、イオンガイドの軸長の少なくとも一部に沿って、第2の振幅を有する一つあるいは複数の第2の軸方向時間平均障壁、コルゲーションまたはウェル、あるいは、複数の第2の疑似電位障壁、コルゲーションまたはウェルを形成する装置と、
を備える構成でもよい。ここで、第2の振幅は、第1の振幅と異なる。
好適な実施形態において、第1のイオントラップが、第2のイオントラップよりも、使用時のイオン貯蔵能力が高い、または、イオン電荷が大きい、あるいは、使用時のイオン貯蔵能力が高くなるように、または、イオン電荷が大きくなるように運転される。動作モード下で、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数が、第1のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数よりも実質的に低くなるように構成されることが望ましい。
また、第2のイオントラップから質量選択的にイオンが放出される一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップ中の、または、第2のイオントラップ内部のイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数が、
(i)第1のイオントラップ中の、または、第1のイオントラップ内部のイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数よりも低くなるように、および/あるいは、
(ii)第1のイオントラップ中に、または、第1のイオントラップ内部に、初期時間T0において貯蔵またはトラップされたイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数よりも低くなるように、および/あるいは、
(iii)第1のイオントラップと第2のイオントラップの両方に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数よりも低くなるように、
構成されることが望ましい。
好適な実施形態において、一つあるいは複数の瞬間において、第1のイオントラップ内部および/あるいは第2のイオントラップ内部のイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数が、(i)0から1000の範囲の値、(ii)1000から2000の範囲の値、(iii)2000から3000の範囲の値、(iv)3000から4000の範囲の値、(v)4000から5000の範囲の値、(vi)5000から10000の範囲の値、(vii)10000から15000の範囲の値、(viii)15000から20000の範囲の値、(ix)20000から25000の範囲の値、(x)25000から30000の範囲の値、(xi)30000から35000の範囲の値、(xii)35000から40000の範囲の値、(xiii)40000から45000の範囲の値、(xiv)45000から50000の範囲の値、および(xv)50000より大きい値、からなる群から選択される。
動作モード下で、第2トラップの質量分解能あるいは質量対電荷比分解能R2は、第1トラップの質量分解能あるいは質量対電荷比分解能R1よりも実質的に高い、あるいは、実質的に高くなるように構成されることが望ましい。ここで、R2/R1の比は、(i)1より大きい値、(ii)1から2の範囲の値、(iii)2から3の範囲の値、(iv)3から4の範囲の値、(v)4から5の範囲の値、(vi)5から6の範囲の値、(vii)6から7の範囲の値、(viii)7から8の範囲の値、(ix)8から9の範囲の値、(x)9から10の範囲の値、(xi)10から15の範囲の値、(xii)15から20の範囲の値、(xiii)20から25の範囲の値、(xiv)25から30の範囲の値、(xv)30から35の範囲の値、(xvi)35から40の範囲の値、(xvii)40から45の範囲の値、(xviii)45から50の範囲の値、および(xix)50より大きい値、からなる群から選択されるように構成されることが望ましい。
第1の質量対電荷比を有するイオンが、第1時間窓(第1タイムウィンドウ)以内に、第1のイオントラップから出現するように、あるいは、出現する可能性があるように、動作モード下で第1のイオントラップを操作することが望ましい。この場合、同じ第1の質量対電荷比を有するイオンは、次に続く第2時間窓(第2タイムウィンドウ)以内に、第2のイオントラップから出現する、あるいは、出現する可能性がある。ここで、望ましくは、第1時間窓は第1の幅を有し、第2時間窓は第2の幅を有する。第2の幅が、第1の幅よりも実質的に狭いことが望ましい。第2の幅に対する第1の幅の比が、(i)1から2の範囲の値、(ii)2から3の範囲の値、(iii)3から4の範囲の値、(iv)4から5の範囲の値、(v)5から6の範囲の値、(vi)6から7の範囲の値、(vii)7から8の範囲の値、(viii)8から9の範囲の値、(ix)9から10の範囲の値、(x)10から15の範囲の値、(xi)15から20の範囲の値、(xii)20から25の範囲の値、(xiii)25から30の範囲の値、(xiv)30から35の範囲の値、(xv)35から40の範囲の値、(xvi)40から45の範囲の値、(xvii)45から50の範囲の値、および(xviii)50より大きい値、からなる群から選択されることが望ましい。
第1の質量対電荷比を有するイオンが、第1時間T1±ΔT1において、第1のイオントラップから出現するように、あるいは、出現する可能性があるように、動作モード下で第1のイオントラップを操作することが望ましい。この場合、同じ第1の質量対電荷比を有するイオンが、次に続く第2時間T2±ΔT2において、第2のイオントラップから出現する、あるいは、出現する可能性がある。ここで、好適な実施形態において、ΔT2 < ΔT1である。
ΔT1/ΔT2の比が、(i)1から2の範囲の値、(ii)2から3の範囲の値、(iii)3から4の範囲の値、(iv)4から5の範囲の値、(v)5から6の範囲の値、(vi)6から7の範囲の値、(vii)7から8の範囲の値、(viii)8から9の範囲の値、(ix)9から10の範囲の値、(x)10から15の範囲の値、(xi)15から20の範囲の値、(xii)20から25の範囲の値、(xiii)25から30の範囲の値、(xiv)30から35の範囲の値、(xv)35から40の範囲の値、(xvi)40から45の範囲の値、(xvii)45から50の範囲の値、および(xviii)50より大きい値、からなる群から選択されることが望ましい。
望ましくは、第1の質量対電荷比を、(i)50、(ii)100、(iii)150、(iv)200、(v)250、(vi)300、(vii)350、(viii)400、(ix)450、(x)500、(xi)550、(xii)600、(xiii)650、(xiv)700、(xv)750、(xvi)800、(xvii)850、(xviii)900、(xix)950、(xx)1000、(xxi)1100、(xxii)1200、(xxiii)1300、(xxiv)1400、(xxv)1500、(xxvi)1600、(xxvii)1700、(xxviii)1800、(xxix)1900、および(xxx)2000、からなる群から選択する。
第1スキャンが時間T1startで開始され、その後の時間T1endで完了することが望ましい。また、第2スキャンが時間T2startで開始され、その後の時間T2endで完了することが望ましい。ここで、(i)T2end>T1end>T2start>T1startあるいは(ii)T2end>T2start>T1end>T1startのいずれかの関係が満たされることが望ましい。
好適な実施形態において、(a)第1スキャンの持続時間T1end−T1startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。および/あるいは、(b)第2スキャンの持続時間T2end−T2startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。および/あるいは、(c)第1スキャンの開始から第2スキャンの完了までを測定した第1スキャンと第2スキャンとの合計持続時間T2end−T1startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。
第1トラップと第2トラップとが、 (i)第1スキャンの持続時間T1end−T1start、および/あるいは、(ii)第2スキャンの持続時間T2end−T2start、および/あるいは、(iii)第1スキャンの開始から第2スキャンの完了までを測定した第1スキャンと第2スキャンとの合計持続時間T2end−T1start、のいずれかの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、あるいは95%の間、同時にスキャンされることが望ましい。
望ましくは、質量分析計が、さらに、第1の複数の電極の少なくとも一部に対して第1のAC電圧またはRF電圧を印加する第1のAC電圧またはRF電圧源を備える。ここで、(a)第1のAC電圧またはRF電圧は、(i)50Vより小さいピークピーク値(peak to peak)、(ii)50Vから100Vの範囲のピークピーク値、(iii)100Vから150V の範囲のピークピーク値、(iv)150Vから200Vの範囲のピークピーク値、(v)200Vから250Vの範囲のピークピーク値、(vi)250Vから300Vの範囲のピークピーク値、(vii)300Vから350Vの範囲のピークピーク値、(viii)350Vから400Vの範囲のピークピーク値、(ix) 400Vから450Vの範囲のピークピーク値、(x)450Vから500Vの範囲のピークピーク値、(xi)500Vから550Vの範囲のピークピーク値、(xxii)550Vから600Vの範囲のピークピーク値、(xxiii)600Vから650Vの範囲のピークピーク値、(xxiv)650Vから700Vの範囲のピークピーク値、(xxv)700Vから750Vの範囲のピークピーク値、(xxvi)750Vから800Vの範囲のピークピーク値、(xxvii)800Vから850Vの範囲のピークピーク値、(xxviii)850Vから900Vの範囲のピークピーク値、(xxix)900Vから950Vの範囲のピークピーク値、(xxx)950Vから1000Vの範囲のピークピーク値、および(xxxi)1000Vより大きいピークピーク値、からなる群から選択される振幅を有する。および/あるいは、(b)第1のAC電圧またはRF電圧は、(i)100kHzより小さな値、(ii)100から200kHzの範囲の値、(iii)200から300kHzの範囲の値、(iv)300から400kHzの範囲の値、(v)400から500kHzの範囲の値、(vi)0.5から1.0MHzの範囲の値、(vii)1.0から1.5MHzの範囲の値、(viii)1.5から2.0MHzの範囲の値、(ix)2.0から2.5MHzの範囲の値、(x)2.5から3.0MHzの範囲の値、(xi)3.0から3.5MHzの範囲の値、(xii)3.5から4.0MHzの範囲の値、(xiii)4.0から4.5MHzの範囲の値、(xiv)4.5から5.0MHzの範囲の値、(xv)5.0から5.5MHzの範囲の値、(xvi)5.5から6.0MHzの範囲の値、(xvii)6.0から6.5MHzの範囲の値、(xviii)6.5から7.0MHzの範囲の値、(xix)7.0から7.5MHzの範囲の値、(xx)7.5から8.0MHzの範囲の値、(xxi)8.0から8.5MHzの範囲の値、(xxii)8.5から9.0MHzの範囲の値、(xxiii)9.0から9.5MHzの範囲の値、(xxiv)9.5から10.0MHzの範囲の値、および(xxv)10.0MHzより大きな値、からなる群から選択される周波数を有する。および/あるいは、(c)第1のAC電圧またはRF電圧源は、複数の第1の電極の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に、および/あるいは、第1の複数の電極のうち少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、あるいは50個の電極に、または50個より多い電極に、第1のAC電圧またはRF電圧を印加するように構成される。および/あるいは、 (d)第1のAC電圧またはRF電圧源は、第1の複数の電極のうち軸方向に隣接する電極または軸方向に隣接する電極群に、逆位相の第1のAC電圧またはRF電圧を印加するように構成される。
望ましくは、質量分析計が、さらに、時間t1の間に、第1のAC電圧またはRF電圧の振幅を、x1ボルトだけ、漸次増大させる、漸次減少させる、漸次変動させる、スキャンする、直線的に増加させる、直線的に減少させる、段階的、漸進的または他の方法で増大させる、段階的、漸進的または他の方法で減少させるように構成される第1の装置を備える。
ここで、x1が、(i)50Vより小さいピークピーク値(peak to peak)、(ii)50Vから100Vの範囲のピークピーク値、(iii)100Vから150V の範囲のピークピーク値、(iv)150Vから200Vの範囲のピークピーク値、(v)200Vから250Vの範囲のピークピーク値、(vi)250Vから300Vの範囲のピークピーク値、(vii)300Vから350Vの範囲のピークピーク値、(viii)350Vから400Vの範囲のピークピーク値、(ix) 400Vから450Vの範囲のピークピーク値、(x)450Vから500Vの範囲のピークピーク値、(xi)500Vから550Vの範囲のピークピーク値、(xxii)550Vから600Vの範囲のピークピーク値、(xxiii)600Vから650Vの範囲のピークピーク値、(xxiv)650Vから700Vの範囲のピークピーク値、(xxv)700Vから750Vの範囲のピークピーク値、(xxvi)750Vから800Vの範囲のピークピーク値、(xxvii)800Vから850Vの範囲のピークピーク値、(xxviii)850Vから900Vの範囲のピークピーク値、(xxix)900Vから950Vの範囲のピークピーク値、(xxx)950Vから1000Vの範囲のピークピーク値、および(xxxi)1000Vより大きいピークピーク値、からなる群から選択されることが望ましい。
また、t1が、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択されることが望ましい。
好適な実施形態において、使用時に、第1のイオントラップの軸長の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、あるいは95%に沿って、一つあるいは複数の第1軸方向時間平均障壁、コルゲーションまたはウェル、あるいは、一つあるいは複数の第1疑似電位障壁、コルゲーションまたはウェルが形成される。
望ましくは、質量分析計が、さらに、第2の複数の電極の少なくとも一部に対して第2のAC電圧またはRF電圧を印加する第2のAC電圧またはRF電圧源を備える。ここで、(a)第2のAC電圧またはRF電圧は、(i)50Vより小さいピークピーク値(peak to peak)、(ii)50Vから100Vの範囲のピークピーク値、(iii)100Vから150V の範囲のピークピーク値、(iv)150Vから200Vの範囲のピークピーク値、(v)200Vから250Vの範囲のピークピーク値、(vi)250Vから300Vの範囲のピークピーク値、(vii)300Vから350Vの範囲のピークピーク値、(viii)350Vから400Vの範囲のピークピーク値、(ix) 400Vから450Vの範囲のピークピーク値、(x)450Vから500Vの範囲のピークピーク値、(xi)500Vから550Vの範囲のピークピーク値、(xxii)550Vから600Vの範囲のピークピーク値、(xxiii)600Vから650Vの範囲のピークピーク値、(xxiv)650Vから700Vの範囲のピークピーク値、(xxv)700Vから750Vの範囲のピークピーク値、(xxvi)750Vから800Vの範囲のピークピーク値、(xxvii)800Vから850Vの範囲のピークピーク値、(xxviii)850Vから900Vの範囲のピークピーク値、(xxix)900Vから950Vの範囲のピークピーク値、(xxx)950Vから1000Vの範囲のピークピーク値、および(xxxi)1000Vより大きいピークピーク値、からなる群から選択される振幅を有する。および/あるいは、(b)第2のAC電圧またはRF電圧は、(i)100kHzより小さな値、(ii)100から200kHzの範囲の値、(iii)200から300kHzの範囲の値、(iv)300から400kHzの範囲の値、(v)400から500kHzの範囲の値、(vi)0.5から1.0MHzの範囲の値、(vii)1.0から1.5MHzの範囲の値、(viii)1.5から2.0MHzの範囲の値、(ix)2.0から2.5MHzの範囲の値、(x)2.5から3.0MHzの範囲の値、(xi)3.0から3.5MHzの範囲の値、(xii)3.5から4.0MHzの範囲の値、(xiii)4.0から4.5MHzの範囲の値、(xiv)4.5から5.0MHzの範囲の値、(xv)5.0から5.5MHzの範囲の値、(xvi)5.5から6.0MHzの範囲の値、(xvii)6.0から6.5MHzの範囲の値、(xviii)6.5から7.0MHzの範囲の値、(xix)7.0から7.5MHzの範囲の値、(xx)7.5から8.0MHzの範囲の値、(xxi)8.0から8.5MHzの範囲の値、(xxii)8.5から9.0MHzの範囲の値、(xxiii)9.0から9.5MHzの範囲の値、(xxiv)9.5から10.0MHzの範囲の値、および(xxv)10.0MHzより大きな値、からなる群から選択される周波数を有する。および/あるいは、(c)第2のAC電圧またはRF電圧源は、複数の第2の電極の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に、および/あるいは、第2の複数の電極のうち少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、あるいは50個の電極に、または50個より多い電極に、第2のAC電圧またはRF電圧を印加するように構成される。および/あるいは、 (d)第2のAC電圧またはRF電圧源は、第2の複数の電極のうち軸方向に隣接する電極または軸方向に隣接する電極群に、逆位相の第2のAC電圧またはRF電圧を印加するように構成される。
望ましくは、質量分析計が、さらに、時間t2の間に、第2のAC電圧またはRF電圧の振幅を、x2ボルトだけ、漸次増大させる、漸次減少させる、漸次変動させる、スキャンする、直線的に増加させる、直線的に減少させる、段階的、漸進的または他の方法で増大させる、段階的、漸進的または他の方法で減少させるように構成される第2の装置を備える。
ここで、x2が、(i)50Vより小さいピークピーク値(peak to peak)、(ii)50Vから100Vの範囲のピークピーク値、(iii)100Vから150V の範囲のピークピーク値、(iv)150Vから200Vの範囲のピークピーク値、(v)200Vから250Vの範囲のピークピーク値、(vi)250Vから300Vの範囲のピークピーク値、(vii)300Vから350Vの範囲のピークピーク値、(viii)350Vから400Vの範囲のピークピーク値、(ix) 400Vから450Vの範囲のピークピーク値、(x)450Vから500Vの範囲のピークピーク値、(xi)500Vから550Vの範囲のピークピーク値、(xxii)550Vから600Vの範囲のピークピーク値、(xxiii)600Vから650Vの範囲のピークピーク値、(xxiv)650Vから700Vの範囲のピークピーク値、(xxv)700Vから750Vの範囲のピークピーク値、(xxvi)750Vから800Vの範囲のピークピーク値、(xxvii)800Vから850Vの範囲のピークピーク値、(xxviii)850Vから900Vの範囲のピークピーク値、(xxix)900Vから950Vの範囲のピークピーク値、(xxx)950Vから1000Vの範囲のピークピーク値、および(xxxi)1000Vより大きいピークピーク値、からなる群から選択されることが望ましい。
また、t2が、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択されることが望ましい。
好適な実施形態において、使用時に、第2のイオントラップの軸長の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、あるいは95%に沿って、一つあるいは複数の第2軸方向時間平均障壁、コルゲーションまたはウェル、あるいは、一つあるいは複数の第2疑似電位障壁、コルゲーションまたはウェルが形成される。
第1のAC電圧またはRF電圧および第2のAC電圧またはRF電圧は、第1のイオントラップおよび第2のイオントラップの内部に少なくとも放射方向にイオンを閉じ込めるための放射状疑似電位ウェルあるいは障壁を形成するように作用することが望ましい。
好適な実施形態において、第1スキャンの間、M1minからM1maxの範囲の質量対電荷比を有するイオンが、 (i)第1スキャンの間の一つあるいは複数の瞬間において、第1のイオントラップから同時に放出される。および/あるいは、(ii)第1スキャンの間の一つあるいは複数の瞬間において、第1のイオントラップ内部に閉じ込められない。および/あるいは、(iii)第1スキャンの間の一つあるいは複数の瞬間において、第1のイオントラップから少なくとも一つの方向に自由に抜け出る。および/あるいは、(iv)第1スキャンの間の一つあるいは複数の瞬間において、第1のイオントラップから出現する可能性がある。
好適な実施形態において、第2スキャンの間、M2minからM2maxの範囲の質量対電荷比を有するイオンが、 (i)第2スキャンの間の一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップから同時に放出される。および/あるいは、(ii)第2スキャンの間の一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップ内部に閉じ込められない。および/あるいは、(iii)第2スキャンの間の一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップから少なくとも一つの方向に自由に抜け出る。および/あるいは、(iv)第2スキャンの間の一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップから出現する可能性がある。
第1スキャンの開始から第2スキャンの完了までを測定した第1スキャンと第2スキャンとの合計持続時間の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の間、M1max−M1min>M2max−M2minの関係を満たすことが望ましい。
好適な実施形態において、(i)第1スキャンとしばらくの間同時になるように、第2スキャンが開始される。および/あるいは、(ii)第1スキャンが完了する前に、あるいは、完了した後に、第2スキャンが開始される。および/あるいは、(iii)第2スキャンと同時に、第1スキャンが完了する。および/あるいは、(iv)第2スキャンが完了する前に、あるいは、完了した後に、第1スキャンが完了する。
好適な実施形態において、第1スキャンの開始と第2スキャンの開始との間に遅延時間ΔTdelay1が存在し、また、第1スキャンの完了と第2スキャンの完了との間に遅延時間ΔTdelay2が存在する。ここで、遅延時間ΔTdelay1および/あるいは遅延時間ΔTdelay2は、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。
好適な実施形態において、(i)M1minからM1maxの範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、1回のスキャンにより、および/あるいは、実質上連続的に、第1のイオントラップから放出される。および/あるいは、(ii)M2minからM2maxの範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、1回のスキャンにより、および/あるいは、実質上連続的に、第2のイオントラップから放出される。
第1スキャンの開始後に、および/あるいは、第1スキャンの完了後に、第2スキャンが開始されることが望ましい。
好適な実施形態において、(i)M1minからM1maxの範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、複数回のスキャンにより、および/あるいは、実質上不連続的に、第1のイオントラップから放出される。および/あるいは、(ii)M2minからM2maxの範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、複数回のスキャンにより、および/あるいは、実質上不連続的に、第2のイオントラップから放出される。
望ましくは、M1minからM1maxの範囲内および/あるいはM2minからM2maxの範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、あるいは20回の別々のすなわち不連続的なスキャンにより、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップから放出される。
望ましくは、制御システムが、さらに、 (i)第3スキャンの間、第1のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第1のイオントラップを制御し、第1のイオントラップから質量選択的に放出される、および/あるいは、第1のイオントラップから出現するイオンの少なくとも一部を、次に、第2のイオントラップが受け取り、第2のイオントラップ中に、あるいは、第2のイオントラップ内部に貯蔵またはトラップするように制御し、(ii)第4スキャンの間、第2のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように第2のイオントラップを制御するように、構成される。
第3スキャンが時間T3startで開始され、その後の時間T3endで完了することが望ましい。また、第4スキャンが時間T4startで開始され、その後の時間T4endで完了することが望ましい。ここで、(i)T4end>T3end>T4start>T3startあるいは(ii)T4end>T4start>T3end>T3startのいずれかの関係が満たされることが望ましい。
好適な実施形態において、(a)第3スキャンの持続時間T3end−T3startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。および/あるいは、(b)第4スキャンの持続時間T4end−T4startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。および/あるいは、(c)第3スキャンの開始から第4スキャンの完了までを測定した第3スキャンと第4スキャンとの合計持続時間T4end−T3startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。
第1トラップと第2トラップとが、 (i)第3スキャンの持続時間T3end−T3start、および/あるいは、(ii)第4スキャンの持続時間T4end−T4start、および/あるいは、(iii)第3スキャンの開始から第4スキャンの完了までを測定した第3スキャンと第4スキャンとの合計持続時間T4end−T3start、のいずれかの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、あるいは95%の間、同時にスキャンされることが望ましい。
望ましくは、制御システムが、さらに、(i)第5スキャンの間、第1のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第1のイオントラップを制御し、第1のイオントラップから質量選択的に放出される、および/あるいは、第1のイオントラップから出現するイオンの少なくとも一部を、次に、第2のイオントラップが受け取り、第2のイオントラップ中に、あるいは、第2のイオントラップ内部に貯蔵またはトラップするように制御し、(ii)第6スキャンの間、第2のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように第2のイオントラップを制御するように、構成される。
第5スキャンが時間T5startで開始され、その後の時間T5endで完了することが望ましい。また、第6スキャンが時間T6startで開始され、その後の時間T6endで完了することが望ましい。ここで、(i)T6end>T5end>T6start>T5startあるいは(ii)T6end>T6start>T5end>T5startのいずれかの関係が満たされることが望ましい。
好適な実施形態において、 (a)第5スキャンの持続時間T5end−T5startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。および/あるいは、(b)第6スキャンの持続時間T6end−T6startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。および/あるいは、(c)第5スキャンの開始から第6スキャンの完了までを測定した第5スキャンと第6スキャンとの合計持続時間T6end−T5startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。
第1トラップと第2トラップとが、 (i)第5スキャンの持続時間T5end−T5start、および/あるいは、(ii)第6スキャンの持続時間T6end−T6start、および/あるいは、(iii)第5スキャンの開始から第6スキャンの完了までを測定した第5スキャンと第6スキャンとの合計持続時間T6end−T5start、のいずれかの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、あるいは95%の間、同時にスキャンされることが望ましい。
望ましくは、制御システムが、さらに、(i)第7スキャンの間、第1のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第1のイオントラップを制御し、第1のイオントラップから質量選択的に放出される、および/あるいは、第1のイオントラップから出現するイオンの少なくとも一部を、次に、第2のイオントラップが受け取り、第2のイオントラップ中に、あるいは、第2のイオントラップ内部に貯蔵またはトラップするように制御し、(ii)第8スキャンの間、第2のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように第2のイオントラップを制御するように、構成される。
第7スキャンが時間T7startで開始され、その後の時間T7endで完了することが望ましい。また、第8スキャンが時間T8startで開始され、その後の時間T8endで完了することが望ましい。ここで、(i)T8end>T7end>T8start>T7startあるいは(ii)T8end>T8start>T7end>T7startのいずれかの関係が満たされることが望ましい。
好適な実施形態において、 (a)第7スキャンの持続時間T7end−T7startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。および/あるいは、(b)第8スキャンの持続時間T8end−T8startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。および/あるいは、(c)第7スキャンの開始から第8スキャンの完了までを測定した第7スキャンと第8スキャンとの合計持続時間T8end−T7startが、(i)1ミリ秒より短い値、(ii)1から10ミリ秒の範囲の値、(iii)10から20ミリ秒の範囲の値、(iv)20から30ミリ秒の範囲の値、(v)30から40ミリ秒の範囲の値、(vi)40から50ミリ秒の範囲の値、(vii)50から60ミリ秒の範囲の値、(viii)60から70ミリ秒の範囲の値、(ix)70から80ミリ秒の範囲の値、(x)80から90ミリ秒の範囲の値、(xi)90から100ミリ秒の範囲の値、(xii)100から200ミリ秒の範囲の値、(xiii)200から300ミリ秒の範囲の値、(xiv)300から400ミリ秒の範囲の値、(xv)400から500ミリ秒の範囲の値、(xvi)500から600ミリ秒の範囲の値、(xvii)600から700ミリ秒の範囲の値、(xviii)700から800ミリ秒の範囲の値、(xix)800から900ミリ秒の範囲の値、(xx)900から1000ミリ秒の範囲の値、(xxi)1から2秒の範囲の値、(xxii)2から3秒の範囲の値、(xxiii)3から4秒の範囲の値、(xxiv)4から5秒の範囲の値、および(xxv)5秒より長い値、からなる群から選択される。
第1トラップと第2トラップとが、 (i)第7スキャンの持続時間T7end−T7start、および/あるいは、(ii)第8スキャンの持続時間T8end−T8start、および/あるいは、(iii)第7スキャンの開始から第8スキャンの完了までを測定した第7スキャンと第8スキャンとの合計持続時間T8end−T7start、のいずれかの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、あるいは95%の間、同時にスキャンされることが望ましい。
一実施形態において、(a)第1の時間T0からT1の間に、M0からM1の範囲内のイオンが第1のイオントラップから放出される。および/あるいは、(b)第2の時間T2からT3の間に、M0からM1の範囲内のイオンが第2のイオントラップから放出される。および/あるいは、(c)第3の時間T4からT5の間に、M1からM2の範囲内のイオンが第1のイオントラップから放出される。および/あるいは、(d)第4の時間T6からT7の間に、M1からM2の範囲内のイオンが第2のイオントラップから放出される。および/あるいは、(e)第5の時間T8からT9の間に、M2からM3の範囲内のイオンが第1のイオントラップから放出される。および/あるいは、(f)第6の時間T10からT11の間に、M2からM3の範囲内のイオンが第2のイオントラップから放出される。ここで、T11>T10>T9>T8>T7>T6>T5>T4>T3>T2>T1>T0の関係、および/あるいは、M3>M2>M1>M0の関係が満たされる。
一実施形態において、第1スキャンおよび/あるいは第2スキャンおよび/あるいは第3スキャンおよび/あるいは第4スキャンおよび/あるいは第5スキャンおよび/あるいは第6スキャンおよび/あるいは第7スキャンおよび/あるいは第8スキャンの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の間、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数が、 (i)第1のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数よりも実質的に低くなる、および/あるいは、 (ii)第1のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数の5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、80%以下、85%以下、90%以下、または95%以下である。
望ましくは、質量分析計が、さらに、第1のイオントラップから放出される少なくとも一部のイオンの透過を変化させる、調節する、変更する、増大させる、または減少させることにより、第2のイオントラップに伝達される、および/あるいは、第2のイオントラップが受け取るイオンを制御、限定、または制限するように構成される装置を備える。
この装置が、 (i)減衰レンズであって、第1の度合いまで減衰レンズがイオンビームをフォーカスする(焦点を合わせる)あるいはデフォーカスする(焦点をずらす)比較的高い透過率の第1動作モードと、第1の度合いとは異なる第2の度合いまで減衰レンズが実質的にイオンビームをフォーカスする(焦点を合わせる)あるいはデフォーカスする(焦点をずらす)比較的低い透過率の第2動作モードとの間で規則的に交互に切り替えられる減衰レンズ、および/あるいは、(ii)一つあるいは複数の前面電極、および/あるいは、一つあるいは複数の中間電極、および/あるいは、一つあるいは複数の背面電極を有するアインツェル(Einzel)レンズを備える減衰レンズであって、(a)一つあるいは複数の前面電極が、使用時に、実質的に同一のDC電圧に維持されるように配列される、および/あるいは、(b)一つあるいは複数の中間電極に可変DC電圧を印加することにより、フォーカス(合焦)の度合いあるいはデフォーカス(焦点ずれ)の度合いを変動させるように配列される、および/あるいは、(c)一つあるいは複数の背面電極が、使用時に、実質的に同一のDC電圧に維持されるように配列される、減衰レンズ、を備える構成でもよい。
また、この装置が、(i)イオンビームを透過させて、減衰するイオンビーム減衰器であって、使用時に、イオン透過がほぼ0%である時間ΔT1の第1動作モードと、イオン透過が0%より大きい時間ΔT2の第2動作モードとの間で繰り返し切り替えられるイオンビーム減衰器で、マークスペース比(mark space ratio)ΔT2/ΔT1を調節することにより、イオンビーム減衰器の透過率あるいは減衰率を調節または変動可能なイオンビーム減衰器、および/あるいは、(ii)x%の平均透過率または総透過率を持つように構成されるイオンビーム減衰器であって、ここで、xが、(i)0.01より小さい値、(ii)0.01から0.05の範囲の値、(iii)0.05から0.1の範囲の値、(v)0.1から0.5の範囲の値、(vi)0.5から1.0の範囲の値、(vii)1から5の範囲の値、(viii)5から10の範囲の値、(ix)10から15の範囲の値、(x)15から20の範囲の値、(xi)20から25の範囲の値、(xii)25から30の範囲の値、(xiii)30から35の範囲の値、(xiv)35から40の範囲の値、(xv)40から45の範囲の値、(xvi)45から50の範囲の値、(xvii)50から55の範囲の値、(xviii)55から60の範囲の値、(xix)60から65の範囲の値、(xx)65から70の範囲の値、(xxi)70から75の範囲の値、(xxii)75から80の範囲の値、(xxiii)80から85の範囲の値、(xxiv)85から90の範囲の値、(xxv)90から95の範囲の値、および(xxvi)95より大きい値、からなる群から選択されるイオンビーム減衰器、および/あるいは、(iii)第1動作モードと第2動作モードとの間で切り替えられるイオンビーム減衰器であって、(i)1Hzより小さい値、(ii)1から10Hzの範囲の値、(iii)10から50Hzの範囲の値、(iv)50から100Hzの範囲の値、(v)100から200Hzの範囲の値、(vi)200から300Hzの範囲の値、(vii)300から400Hzの範囲の値、(viii)400から500Hzの範囲の値、(ix)500から600Hzの範囲の値、(x)600から700Hzの範囲の値、(xi)700から800Hzの範囲の値、(xii)800から900Hzの範囲の値、(xiii)900から1000Hzの範囲の値、(xiv)1から2kHzの範囲の値、(xv)2から3kHzの範囲の値、(xvi)3から4kHzの範囲の値、(xvii)4から5kHzの範囲の値、(xviii)5から6kHzの範囲の値、(xix)6から7kHzの範囲の値、(xx)7から8kHzの範囲の値、(xxi)8から9kHzの範囲の値、(xxii)9から10kHzの範囲の値、(xxiii)10から15kHzの範囲の値、(xxiv)15から20kHzの範囲の値、(xxv)20から25kHzの範囲の値、(xxvi)25から30kHzの範囲の値、(xxvii) 30から35kHzの範囲の値、(xxviii)35から40kHzの範囲の値、(xxix)40から45kHzの範囲の値、(xxx)45から50kHzの範囲の値、(xxxi)50kHzより大きい値、のいずれかの周波数を有するイオンビーム減衰器、を備える構成でもよい。
一実施形態において、 (i)ΔT1>ΔT2またはΔT1≦ΔT2である。および/あるいは、(ii)時間ΔT1が、(i)0.1マイクロ秒より短い値、(ii)0.1から0.5マイクロ秒の範囲の値、(iii)0.5から1マイクロ秒の範囲の値、(iv)1から50マイクロ秒の範囲の値、(v)50から100マイクロ秒の範囲の値、(vi)100から150マイクロ秒の範囲の値、(vii)150から200マイクロ秒の範囲の値、(viii)200から250マイクロ秒の範囲の値、(ix)250から300マイクロ秒の範囲の値、(x)300から350マイクロ秒の範囲の値、(xi)350から400マイクロ秒の範囲の値、(xii)400から450マイクロ秒の範囲の値、(xiii)450から500マイクロ秒の範囲の値、(xiv)500から550マイクロ秒の範囲の値、(xv)550から600マイクロ秒の範囲の値、(xvi)600から650マイクロ秒の範囲の値、(xvii)650から700マイクロ秒の範囲の値、(xviii)700から750マイクロ秒の範囲の値、(xix)750から800マイクロ秒の範囲の値、(xx)800から850マイクロ秒の範囲の値、(xxi)850から900マイクロ秒の範囲の値、(xxii)900から950マイクロ秒の範囲の値、(xxiii)950から1000マイクロ秒の範囲の値、(xxiv)1から10ミリ秒の範囲、(xxv)10から50ミリ秒の範囲、(xxvi)50から100ミリ秒の範囲、および(xxvii)100ミリ秒より長い値、からなる群から選択される。および/あるいは、(iii)時間ΔT2が、(i)0.1マイクロ秒より短い値、(ii)0.1から0.5マイクロ秒の範囲の値、(iii)0.5から1マイクロ秒の範囲の値、(iv)1から50マイクロ秒の範囲の値、(v)50から100マイクロ秒の範囲の値、(vi)100から150マイクロ秒の範囲の値、(vii)150から200マイクロ秒の範囲の値、(viii)200から250マイクロ秒の範囲の値、(ix)250から300マイクロ秒の範囲の値、(x)300から350マイクロ秒の範囲の値、(xi)350から400マイクロ秒の範囲の値、(xii)400から450マイクロ秒の範囲の値、(xiii)450から500マイクロ秒の範囲の値、(xiv)500から550マイクロ秒の範囲の値、(xv)550から600マイクロ秒の範囲の値、(xvi)600から650マイクロ秒の範囲の値、(xvii)650から700マイクロ秒の範囲の値、(xviii)700から750マイクロ秒の範囲の値、(xix)750から800マイクロ秒の範囲の値、(xx)800から850マイクロ秒の範囲の値、(xxi)850から900マイクロ秒の範囲の値、(xxii)900から950マイクロ秒の範囲の値、(xxiii)950から1000マイクロ秒の範囲の値、(xxiv)1から10ミリ秒の範囲、(xxv)10から50ミリ秒の範囲、(xxvi)50から100ミリ秒の範囲、および(xxvii)100ミリ秒より長い値、からなる群から選択される。
望ましくは、質量分析計が、さらに、(i)イオン検出器により測定されるイオン電流、および/あるいは、(ii)一つあるいは複数の質量ピークの強度、および/あるいは、(iii)第1のイオントラップと第2のイオントラップとの間に配置される検知装置またはイオン検出器、に基づいて、時間ΔT1および/あるいは時間ΔT2を調節または変動させるように構成される制御装置を備える。
好適な実施形態において、(a)一つあるいは複数の質量スペクトルにおける一つあるいは複数の質量ピークが飽和の影響を受けていると判定される場合に、または、飽和に近付いていると判定される場合に、時間ΔT1および/あるいは時間ΔT2を調節または変動させる。および/あるいは、(b)質量データあるいは質量スペクトルデータが飽和の影響を受けていると判定される場合に、または、飽和に近付いていると判定される場合に、時間ΔT1および/あるいは時間ΔT2を調節または変動させる。および/あるいは、(c)イオン電流または検知装置からの出力が所定レベルまたは所定の閾値を超えていると判定される場合に、時間ΔT1および/あるいは時間ΔT2を調節または変動させる。
この装置が、一つあるいは複数の静電レンズを備え、第1動作モード下で、この装置の一つあるいは複数の電極に電圧を印加することにより、イオンビームを妨害する、および/あるいは、イオンビームを偏向させる、および/あるいは、イオンビームを反射する、および/あるいは、イオンビームをそらす電場が生じるような構成でもよい。
質量分析計が、さらに、第1のイオントラップと第2のイオントラップとの間に配置されるイオン移動度分離器または分光器を備える構成も望ましい。また、別の実施形態として、イオン移動度分離器または分光器を、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置するようにしてもよい。
制御システムが、ある瞬間において、第1上限閾値M1maxおよび第1下限閾値M1minとの間の質量または質量対電荷比を有するイオンを質量選択的に放出させるような構成も望ましい。また、制御システムが、ある瞬間において、第2上限閾値M2maxおよび第2下限閾値M2minとの間の質量または質量対電荷比を有するイオンを質量選択的に放出させるような構成も望ましい。ここで、M1max−M1min>M2max−M2minの関係が満たされることが望ましい。
動作モード下で、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの一つあるいは複数の上流領域および/あるいは中間領域および/あるいは下流領域で、少なくとも一部のイオンをフラグメンテーションする構成が望ましい。
動作モード下で、(i)衝突誘起解離(Collisional Induced Dissociation:CID)と、(ii)表面誘起解離(Surface Induced Dissociation:SID)と、(iii)電子移動解離(Electron Transfer Dissociation:ETD)と、(iv)電子捕獲解離(Electron Capture Dissociation:ECD)と、(v)電子衝突または衝撃解離と、(vi)光誘起解離(Photo Induced Dissociation:PID)と、(vii)レーザー誘起解離と、(viii)赤外線誘起解離と、(ix)紫外線誘起解離と、(x)熱解離または温度解離と、(xi)電場誘起解離と、(xii)磁場誘起解離と、(xiii)酵素消化または酵素分解解離と、(xiv)イオン−イオン反応解離と、(xv)イオン−分子反応解離と、(xvi)イオン−原子反応解離と、(xvii)イオン−準安定イオン反応解離と、(xviii)イオン−準安定分子反応解離と、(xix)イオン−準安定原子反応解離と、(xx)電子イオン化解離(Electron Ionization Dissociation:EID)と、のいずれかの手法により、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの内部でイオンをフラグメンテーションする構成が望ましい。
動作モード下で、(i)100ミリバールより高い値、(ii)10ミリバールより高い値、(iii)1ミリバールより高い値、(iv)0.1ミリバールより高い値、(v)10-2ミリバールより高い値、(vi)10-3ミリバールより高い値、(vii)10-4ミリバールより高い値、(viii)10-5ミリバールより高い値、(ix)10-6ミリバールより高い値、(x)100ミリバールより低い値、(xi)10ミリバールより低い値、(xii)1ミリバールより低い値、(xiii)0.1ミリバールより低い値、(xiv)10-2ミリバールより低い値、(xv)10-3ミリバールより低い値、(xvi)10-4ミリバールより低い値、(xvii)10-5ミリバールより低い値、(xviii)10-6ミリバールより低い値、(xix)10から100ミリバールの範囲の値、(xx)1から10ミリバールの範囲の値、(xxi)0.1から1ミリバールの範囲の値、(xxii)10-2から10-1ミリバールの範囲の値、(xxiii)10-3から10-2ミリバールの範囲の値、(xxiv)10-4から10-3ミリバールの範囲の値、および(xxv)10-5から10-4ミリバールの範囲の値、からなる群から選択される圧力に第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップを維持する構成が望ましい。
動作モード下で、第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの長さの少なくとも一部に沿ってイオンが伝達される際に、電界強度に応じたイオン移動度またはイオン移動度の変化率に従って、少なくとも一部のイオンを一時的に分離する構成が望ましい。
望ましくは、質量分析計が、さらに、(i)第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップ内でイオンをパルス状にする装置またはイオンゲート、および/あるいは、(ii)ほぼ連続的なイオンビームをパルス状のイオンビームに変換する装置、を備える。
望ましくは、質量分析計が、さらに、(a)第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの上流側に配置されるイオン源で、(i)電気スプレーイオン化(Electrospray ionization:ESI)イオン源と、(ii)大気圧光イオン化(Atmospheric Pressure Photo Ionization:APPI)イオン源と、(iii)大気圧化学イオン化(Atmospheric Pressure Chemical Ionization:APCI)イオン源と、(iv)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:MALDI)イオン源と、(v)レーザー脱離イオン化(Laser Desorption Ionization:LDI)イオン源と、(vi)大気圧イオン化(Atmospheric Pressure Ionization:API)イオン源と、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(Desorption Ionization on Silicon:DIOS)イオン源と、(viii)電子衝撃(Electron Impact:EI)イオン源と、(ix)化学イオン化(Chemical Ionization:CI)イオン源と、(x)フィールドイオン化(Field Ionization:FI)イオン源と、(xi)フィールド解離(Field Desorption:FD)イオン源と、(xii)誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)イオン源と、(xiii)高速原子衝撃(Fast Atom Bombardment:FAB)イオン源と、(xiv)液体二次イオン質量分析(Liquid Secondary Ion Mass Spectrometry:LSIMS)イオン源と、(xv)脱離電気スプレーイオン化(Desorption Electrospray Ionization:DESI)イオン源と、(xvi)ニッケル63放射性イオン源と、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化イオン源と、(xviii)サーモスプレーイオン源と、からなる群から選択されるイオン源、および/あるいは、(b)第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置される、一つあるいは複数のイオンガイド、および/あるいは、(c)第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置される、一つあるいは複数のイオン移動度分離装置および/あるいはフィールド非対称型イオン移動度分光計装置、および/あるいは、(d)第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置される、一つあるいは複数のイオントラップまたは一つあるいは複数のイオントラッピング領域、および/あるいは、(e)第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置される、一つあるいは複数の衝突セル、フラグメンテーションセル、または反応セルで、(i)衝突誘起解離(Collisional Induced Dissociation:CID)フラグメンテーション装置と、(ii)表面誘起解離(Surface Induced Dissociation:SID)フラグメンテーション装置と、(iii)電子移動解離(Electron Transfer Dissociation:ETD)フラグメンテーション装置と、(iv)電子捕獲解離(Electron Capture Dissociation:ECD)フラグメンテーション装置と、(v)電子衝突または電子衝撃解離フラグメンテーション装置と、(vi)光誘起解離(Photo Induced Dissociation:PID)フラグメンテーション装置と、(vii)レーザー誘起解離フラグメンテーション装置と、(viii)赤外線誘起解離装置と、(ix)紫外線誘起解離装置と、(x)ノズル・スキマー・インターフェース・フラグメンテーション装置と、(xi)インソースフラグメンテーション装置と、(xii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーション装置と、(xiii)熱源または温度源フラグメンテーション装置と、(xiv)電場誘起フラグメンテーション装置と、(xv)磁場誘起フラグメンテーション装置と、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーション装置と、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーション装置と、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーション装置と、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーション装置と、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーション装置と、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーション装置と、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーション装置と、(xxiii)イオンの反応により付加イオンあるいはプロダクトイオンを形成するイオン−イオン反応装置と、(xxiv)イオンの反応により付加イオンあるいはプロダクトイオンを形成するイオン−分子反応装置と、(xxv)イオンの反応により付加イオンあるいはプロダクトイオンを形成するイオン−原子反応装置と、(xxvi)イオンの反応により付加イオンあるいはプロダクトイオンを形成するイオン−準安定イオン反応装置と、(xxvii)イオンの反応により付加イオンあるいはプロダクトイオンを形成するイオン−準安定分子反応装置と、(xxviii)イオンの反応により付加イオンあるいはプロダクトイオンを形成するイオン−準安定原子反応装置と、(xxix)電子イオン化解離(Electron Ionisation Dissociation:EID)フラグメンテーション装置と、からなる群から選択される一つあるいは複数の衝突セル、フラグメンテーションセル、または反応セル、および/あるいは、(f)(i)四重極質量分析器と、(ii)2次元またはリニア四重極質量分析器と、(iii)ポール(Paul)トラップ型または3次元四重極質量分析器と、(iv)ペニング(Penning)トラップ型質量分析器と、(v)イオントラップ型質量分析器と、(vi)磁場型質量分析器と、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(Ion Cyclotron Resonance:ICR)質量分析器と、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance:FTICR)質量分析器と、(ix)静電またはオービトラップ型質量分析器と、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ型質量分析器と、(xi)フーリエ変換質量分析器と、(xii)飛行時間型質量分析器と、(xiii)直交加速飛行時間型質量分析器と、(xiv)線形加速飛行時間型質量分析器と、からなる群から選択される質量分析器、および/あるいは、(g)第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置される、一つあるいは複数のエネルギー分析器または静電エネルギー分析器、および/あるいは、(h)第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置される、一つあるいは複数のイオン検出器、および/あるいは、(i)第1のイオントラップおよび/あるいは第2のイオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置される、一つあるいは複数のマスフィルターであって、(i)四重極マスフィルターと、(ii)2次元またはリニア四重極イオントラップと、(iii)ポール(Paul)型または3次元四重極イオントラップと、(iv)ペニング(Penning)型イオントラップと、(v)イオントラップと、(vi)磁場型マスフィルターと、(vii)飛行時間型マスフィルターと、からなる群から選択される一つあるいは複数のマスフィルター、を備える。
一実施形態において、質量分析計が、さらに、Cトラップと、オービトラップ型質量分析器と、を備えるようにしてもよい。この構成において、第1動作モード下で、イオンがCトラップに伝達され、その後、オービトラップ型質量分析器に注入される。また、第2動作モード下で、イオンがCトラップに、さらに衝突セルに伝達され、少なくとも一部のイオンがフラグメントイオンにフラグメンテーションされ、得られたフラグメントイオンがオービトラップ型質量分析器に注入される前に、Cトラップに伝達される。
本発明の一態様は、質量分析法であって、第1の複数の電極を有する第1の質量選択的イオントラップと、第2の複数の電極を有する第2の質量選択的イオントラップで、第1の質量選択的イオントラップの下流側に配置される第2の質量選択的イオントラップと、を準備する工程と、第1のイオントラップ中に、あるいは、第1のイオントラップ内部に、初期時間T0において、貯蔵またはトラップされるようにイオン群を設定する工程と、 第1スキャンの間、第1のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第1のイオントラップを制御し、第1のイオントラップから質量選択的に放出される、および第1のイオントラップから出現するイオンの少なくとも一部を、次に、第2のイオントラップが受け取り、第2のイオントラップ中に、あるいは、第2のイオントラップ内部に貯蔵またはトラップするように、第1のイオントラップを制御する工程と、第2スキャンの間、第2のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第2のイオントラップを制御する工程と、を備える。
本発明の一態様は、第1の質量選択的イオントラップと第1の質量選択的イオントラップの下流側に配置される第2の質量選択的イオントラップとを備える質量分析計の制御システムにより実行されるコンピュータプログラムである。 コンピュータプログラムは、制御システムにより、 (i)第1のイオントラップ中に、あるいは、第1のイオントラップ内部に、初期時間T0において、貯蔵またはトラップされるようにイオン群を設定し、 (ii)第1スキャンの間、第1のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第1のイオントラップを制御し、第1のイオントラップから質量選択的に放出される、および第1のイオントラップから出現するイオンの少なくとも一部を、次に、第2のイオントラップが受け取り、第2のイオントラップ中に、あるいは、第2のイオントラップ内部に貯蔵またはトラップするように、第1のイオントラップを制御し、 (iii)第2スキャンの間、第2のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第2のイオントラップを制御する。
本発明の一態様は、コンピュータにより実行可能な命令が記憶されるコンピュータ読み取り可能な媒体である。第1の質量選択的イオントラップと第1の質量選択的イオントラップの下流側に配置される第2の質量選択的イオントラップとを備える質量分析計の制御システムにより、命令が実行可能なように構成される。 この命令に従って、制御システムが、 (i)第1のイオントラップ中に、あるいは、第1のイオントラップ内部に、初期時間T0において、貯蔵またはトラップされるようにイオン群を設定し、 (ii)第1スキャンの間、第1のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第1のイオントラップを制御し、第1のイオントラップから質量選択的に放出される、および第1のイオントラップから出現するイオンの少なくとも一部を、次に、第2のイオントラップが受け取り、第2のイオントラップ中に、あるいは、第2のイオントラップ内部に貯蔵またはトラップするように、第1のイオントラップを制御し、 (iii)第2スキャンの間、第2のイオントラップから外に少なくとも一部のイオンが質量選択的に放出されるように、第2のイオントラップを制御する。
望ましくは、コンピュータ読み取り可能な媒体が、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、および(vi)光ディスクからなる群から選択される。
本発明の一態様は、質量分析計であって、 第1のイオントラップと、 第2の質量選択的イオントラップと、 制御システムであって、 (i)第1のイオントラップ中にイオンを貯蔵することによって、一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数を抑制および/あるいは限定および/あるいは制限し、 (ii)第1のイオントラップと第2のイオントラップとからの少なくとも一部のイオンを同時にスキャンする一方で、一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数を確実に抑制および/あるいは限定および/あるいは制限する、ように構成される制御システムと、を備える。
本発明の一態様は、質量分析法であって、 第1のイオントラップと、第2の質量選択的イオントラップと、を準備する工程と、 第1のイオントラップ中にイオンを貯蔵することによって、一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数を抑制および/あるいは限定および/あるいは制限する工程と、 第1のイオントラップと第2のイオントラップとからの少なくとも一部のイオンを同時にスキャンする一方で、一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数を確実に抑制および/あるいは限定および/あるいは制限する工程と、 を備える。
本発明の一態様は、質量分析計であって、 第1のイオントラップと、 第2の質量選択的イオントラップと、 制御システムであって、 (i)第1のイオントラップ中にイオンを貯蔵することによって、一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数を抑制および/あるいは限定および/あるいは制限し、 (ii)第1の時間の間に第1のイオントラップからの少なくとも一部のイオンをスキャンし、第2のイオントラップ内にスキャンされたイオンの少なくとも一部を受け入れる一方で、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数を確実に抑制および/あるいは限定および/あるいは制限し、(iii)第1の時間に続く第2の時間の間に第2のイオントラップからの少なくとも一部のイオンをスキャンするように構成される制御システムと、を備える。ここで、第1の時間と第2の時間との間には、ゼロではない遅延時間が存在する。
本発明の一態様は、質量分析法であって、 第1のイオントラップと、第2の質量選択的イオントラップと、を準備する工程と、 第1のイオントラップ中にイオンを貯蔵することによって、一つあるいは複数の瞬間において、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数を抑制および/あるいは限定および/あるいは制限する工程と、 第1の時間の間に第1のイオントラップからの少なくとも一部のイオンをスキャンし、第2のイオントラップ内にスキャンされたイオンの少なくとも一部を受け入れる一方で、第2のイオントラップ内部に存在するイオンの総電荷および/あるいはイオンの総数を確実に抑制および/あるいは限定および/あるいは制限する工程と、 第1の時間に続く第2の時間の間に第2のイオントラップからの少なくとも一部のイオンをスキャンする工程と、を備える。ここで、第1の時間と第2の時間との間には、ゼロではない遅延時間が存在する。
好適な実施形態は、イオントラップからのイオンをスキャンすることにより形成される質量スペクトルのダイナミックレンジを大幅に拡大した質量分析計および質量分析法に関する。
一実施形態において、任意の瞬間にイオントラップ中に存在するように配列されたイオンの質量対電荷比の範囲を限定、抑制、あるいは制限することが望ましい。これにより、制限された質量対電荷比を有するイオンのみをイオントラップ中に存在させて、解析を行い、最終的な質量スペクトルを生成することが可能になる。イオントラップからのイオンの分析あるいはスキャン中の任意の瞬間における分析用イオントラップ内部のイオン集団を限定することにより、分析用イオントラップのダイナミックレンジを拡大することができる。
一実施形態において、望ましくは分析用の高性能(第2の)イオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置される一つあるいは複数の高容量(第1の)イオントラップから、質量選択的等の方法でイオンを放出させる。一つあるいは複数の高容量(第1の)イオントラップは、一つあるいは複数の3次元またはポール(Paul)型イオントラップおよび/あるいは一つあるいは複数の2次元またはリニアイオントラップを含むものでもよい。
一実施形態において、貯蔵用の高容量(第1の)イオントラップから分析用の高性能(第2の)イオントラップにイオンが透過する際に、減衰係数に従って、イオンを減衰させるようにしてもよい。質量スペクトルの生成中あるいは実験中に、減衰係数を変動させるものとしてもよい。たとえば、制限的開口部を用いてイオン透過を変化させることにより、および/あるいは、マークスペース比(mark space ratio)を変更可能なイオンゲートのイオン透過をオン・オフすることにより、イオンの透過を減衰させることができる。
一実施形態において、イオン移動度分光計あるいはイオン移動度分離装置を、分析用の高性能(第2の)イオントラップの上流側および/あるいは下流側に配置するものでもよい。イオン移動度分光計あるいはイオン移動度分離装置を、バッファガス(緩衝ガス)におけるイオン移動度に応じて一時的にイオンを分離するように構成することが望ましい。分析用(第2の)イオントラップ内へのイオン注入の順序あるいは分析用(第2の)イオントラップへのイオン到達の順序は、気相におけるイオンの移動度により決まる。
分析用の高性能(第2の)イオントラップは、3次元またはポール型イオントラップおよび/あるいは2次元またはリニアイオントラップを備えることが望ましい。
貯蔵用の高容量(第1の)イオントラップから、および/あるいは分析用の高性能(第2の)イオントラップから、放射状に、および/あるいは、軸方向にイオンを放出させることができる。
RF閉じ込め(高周波閉じ込め)により、あるいは、貯蔵用の高容量(第1の)イオントラップおよび/あるいは分析用の高性能(第2の)イオントラップを含む電極の少なくとも一部に印加可能なRF電圧(高周波電圧)とDC電圧(直流電圧)とを組み合わせることにより、貯蔵用の高容量(第1の)イオントラップ内部に、および/あるいは分析用の高性能(第2の)イオントラップ内部に、イオンを閉じ込めることが望ましい。
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
本発明の好適な一実施例を、図1を参照して以下に説明する。好適な実施例の構成において、イオンビームあるいはパルス1は、第1のイオントラップ2内に導入される、あるいは、第1のイオントラップ2に伝送される。第1のイオントラップ2は、比較的高容量で、少なくとも一つの動作モードで貯蔵用イオントラップとして利用・動作可能なものが望ましい。レーザー脱離イオン化(Laser Desorption Ionization:LDI)イオン源、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:MALDI)イオン源、シリコンを用いた脱離イオン化(Desorption Ionization on Silicon:DIOS)イオン源等のパルスイオン源を用いて、イオンビームあるいはパルス1を生成するようにしてもよい。
あるいは、連続イオン源を用いて、イオンビームあるいはパルス1を生成するようにしてもよい。連続イオン源を用いる場合には、第1のイオントラップ2の上流側に(図示しない)別のイオントラップを設けるようにしてもよい。この場合、別のイオントラップがイオン源から放出されるイオンを受け取り、受け取ったイオンをイオントラップ内に貯蔵する構成が望ましい。さらに、別のイオントラップが定期的にイオンを放出し、第1のイオントラップ2に対して、一つあるいは複数のイオンパルスを伝送する構成が望ましい。連続イオン源としては、たとえば、電気スプレーイオン化(Electrospray ionization:ESI)イオン源、大気圧化学イオン化(Atmospheric Pressure Chemical Ionization:APCI)イオン源、電子衝撃(Electron Impact:EI)イオン源、大気圧光イオン化(Atmospheric Pressure Photo Ionization:APPI)イオン源、化学イオン化(Chemical Ionization:CI)イオン源、脱離電気スプレーイオン化(Desorption Electrospray Ionization:DESI)イオン源、大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Atmospheric Pressure MALDI: AP−MALDI)イオン源、高速原子衝撃(Fast Atom Bombardment:FAB)イオン源、液体二次イオン質量分析(Liquid Secondary Ion Mass Spectrometry:LSIMS)イオン源、フィールドイオン化(Field Ionization:FI)イオン源、フィールド解離(Field Desorption:FD)イオン源等を用いることができる。これ以外の連続イオン源や疑似連続イオン源を用いることもできる。
上流側の貯蔵用イオントラップ2内にイオンを十分な時間保持することにより、第1のイオントラップ2内に望ましくは存在するバッファーガス(緩衝ガス)分子との衝突による熱エネルギー近傍まで冷却する構成が望ましい。
別の実施形態において、第1のイオントラップ2の上流側に配置される別個の分析装置から、あるいは、フラグメンテーション装置から、イオンを放出あるいは伝達するようにしてもよい。分析装置あるいはフラグメンテーション装置から放出されたイオンを、第1のイオントラップ2が受け取る。
第1のイオントラップ2内に貯蔵されるイオンの一部は、第1のイオントラップ2から、たとえば、質量選択的に、放出され、望ましくは第1のイオントラップ2の下流側に配置される第2のイオントラップ3に伝達される。第2のイオントラップ3が、分析用の高性能イオントラップを備える構成が望ましい。一実施形態において、第1のイオントラップ2よりも実質的に高い質量分解能あるいは高い質量対電荷比分解能を有するように、第2のイオントラップ3を構成・操作するものでもよい。任意の瞬間において第1のイオントラップ2から放出されるイオンあるいは第1のイオントラップ2から出現するイオンが比較的広範囲あるいは比較的広い幅の質量対電荷比を有するものでもよい。第1のイオントラップ2から放出されるイオンあるいは第1のイオントラップ2から出現するイオンは、下流側の分析用の第2のイオントラップ3に対して放出される、あるいは、伝達されることが望ましい。一実施形態において、第2のイオントラップ3の分析性能よりも低い分析性能を有するように、第1のイオントラップ2を構成・操作するものでもよい。
一実施形態において、第2のイオントラップ3がスキャンされる際に第2のイオントラップ3内に保持可能な電荷量よりも、第1のイオントラップ2がスキャンされる際に第1のイオントラップ2内に保持可能な電荷量が多い構成が望ましい。
第1のイオントラップ2から第2のイオントラップ3に注入されるイオンは、第2のイオントラップ3から、たとえば質量選択的に、放出される、あるいは、第2のイオントラップ3から出現する前に、第2のイオントラップ3内に存在するバッファーガス(緩衝ガス)分子との衝突による熱エネルギー近傍まで冷却されるのに十分な時間、第2のイオントラップ3内に保持される構成が望ましい。第2のイオントラップ3内部のイオンは、望ましくは質量選択的に第2のイオントラップ3から放出され、あるいは、第2のイオントラップ3から出てきて、放出されたイオン4は、後段の処理を行うために、第2のイオントラップ3の下流側に配置される(図示しない)イオン検出器等のイオン光学装置に向けられる、あるいは、伝送される構成が望ましい。一実施形態において、第2のイオントラップ3から飛行時間型質量分析器やフーリエ変換型質量分析器等の分析装置あるいはフラグメンテーション装置にイオンを伝達するようにしてもよい。
好適な実施例において、動作モード下で、ほぼ連続的に2つの質量選択的イオントラップ2および3からイオンが放出される、あるいは、イオンが出現する構成も望ましい。図2に、動作モード下で、異なった範囲の質量電荷比を有するイオンがほぼ連続的に、かつ、同時に、2つの質量選択的イオントラップ2および3から放出される、あるいは、2つの質量選択的イオントラップ2および3から出現する実施形態を示す。
図2の広い網掛け領域5は、第1のイオントラップ2のスキャンを実行する間に、比較的広い第1範囲の質量対電荷比を有するイオンが、第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップ2から出現する期間を示す。上部境界線6は、第1のイオントラップ2の性能特性および第1のイオントラップ2内部に同時に存在する過剰な電荷数に起因する空間電荷効果による歪みの影響を考慮に入れて、所定の質量対電荷比を有するイオンが第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップ2から出現する最も早い時間を示す。下部境界線7は、第1のイオントラップ2の性能特性および第1のイオントラップ2内部に同時に存在する過剰な電荷数に起因する空間電荷効果による歪みの影響を考慮に入れて、所定の質量対電荷比を有するイオンが第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップ2から出現する最も遅い時間を示す。
所定の質量対電荷比を有するイオンの正確な放出時間あるいは出現時間は、第1のイオントラップ2内部の空間電荷歪みの影響により、2つの境界線6および7により規定される時間境界内で変動する。
一方、狭い網掛け領域8は、分析用の第2のイオントラップ3の分析スキャンを実行する間に、所定の質量対電荷比を有するイオンが第2のイオントラップ3から放出される、あるいは、第2のイオントラップ3から出現する期間を示す。所定の質量対電荷比を有するイオンが第2のイオントラップ3から放出される、あるいは、第2のイオントラップ3から出現する期間は、所定の質量対電荷比を有するイオンが第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップ2から出現する、これと対応する期間と比較して、狭く、短い一方で、より明瞭に定義可能である。第2のイオントラップ3内の電荷数は、空間電荷効果により有意の歪みが生じるには十分でないと考えられる。その結果、所定の質量対電荷比を有するイオンが第2のイオントラップ3から放出される、あるいは、第2のイオントラップ3から出現する時間に関しては、不確実性が全くない、あるいは、ほとんどない。
望ましい動作モードの一例を、図2を参照して詳述する。イオン源から放出されるイオンを、まず、望ましくは貯蔵用イオントラップとして働く上流側の第1のイオントラップ2に集めて貯蔵する。この際、第2のイオントラップ3にはイオンが存在しないことが望ましい。最初の時間T0において、第1のイオントラップ2の分析スキャンが開始される。比較的広い第1の質量対電荷比の範囲内の質量対電荷比を有するイオンは、任意の瞬間に、第1のイオントラップ2から放出され、あるいは、第1のイオントラップ2から出現して、下流側の分析用の第2のイオントラップ3に入る、あるいは、受け取られる。第1の質量対電荷比M1を有するイオンの場合を例にとって考える。時間T1と時間T2の間のいつでも、M1に等しい質量対電荷比を有するイオンが、第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップ2から出現する(その後、分析用の第2のイオントラップ3に注入される、あるいは、受け取られる)。このような放出時間の不確実性は、空間電荷歪みの影響によるものである。
次の時間T3において、第2のイオントラップ3の分析スキャンが開始される。次の時間T4において、M1に等しい質量対電荷比を有するイオンが、分析用の第2のイオントラップ3から質量選択的に放出される。時間差T4−T2の存在により、第1のイオントラップ2から放出されたイオンが分析用の第2のイオントラップ3に受け取られ、かつ、分析用の第2のイオントラップ3から質量選択的にイオンが放出される前に、分析用の第2のイオントラップ3内部に存在するバッファーガス(緩衝ガス)との衝突による熱エネルギー近傍まで冷却されるのに十分な時間が確保される。第2のイオントラップ3は、空間電荷歪みの影響を受けないため、放出時間T4に関しては不確実性が全くない、あるいは、ほとんどない。
M1に等しい質量対電荷比を有するイオンが分析用の第2のイオントラップ3から放出される、あるいは第2のイオントラップ3から出現する時間T4において、理論的には、M1からM2の範囲内の質量対電荷比を有するイオンが分析用の第2のイオントラップ3内部に存在する。M2よりも大きな質量対電荷比を有するイオンは、第1のイオントラップ2からの放出・出現がまだ行われていないため、第1のイオントラップ2内部に留まっている。M1未満の質量対電荷比を有するイオンは、既に第2のイオントラップ3から放出された、あるいは、第2のイオントラップ3から出現したため、第1のイオントラップ2内部にも第2のイオントラップ3内部にも存在していない。したがって、質量対電荷比M1を有するイオンが第2のイオントラップ3から放出される時間T4において、M2よりも大きな質量対電荷比を有するイオンおよびM1未満の質量対電荷比を有するイオンは、第2のイオントラップ内部に存在する電荷の密度には寄与しない。このため、第2のイオントラップ3の分析性能特性が空間電荷飽和の悪影響を受けることはない。当業者には自明のことであるが、空間電荷飽和の影響により、イオントラップの質量選択的パラメータのスキャンの間の正確にいつの時点で、所定の質量あるいは所定の質量対電荷比を有するイオンが実際に出現するかが、不確実になる。空間電荷飽和の影響により、たとえば、イオンの放出が早くなったり、逆に遅くなったりする。
時間T5までに、分析対象となる最も高い質量対電荷比M3を有するイオンがすべて、第1のイオントラップ2から移動・放出され、第2のイオントラップ3に伝達される。この結果、時間T5に、上流側のイオントラップ2の分析スキャンが終了する。一方、第2のイオントラップ3の分析スキャンは、M3に等しい質量対電荷比を有するイオンがすべて第2のイオントラップ3から放出される、あるいは、第2のイオントラップから出現する時間T6まで継続される。
第1のイオントラップ2および第2のイオントラップ3から不連続的にイオンが放出される段階的動作モードを、本発明の別の実施形態として図3に示す。以下に詳述する図3に示す例では、質量対電荷比の小さい順に第1のイオントラップ2および第2のイオントラップ3からイオンが放出されることが望ましい。ただし、他の任意の順序で第1のイオントラップ2から分析用の第2のイオントラップ3にイオンが伝達されるようにしてもよい。イオンは、その後、後段の処理のために、分析用の第2のイオントラップ3から放出される。
図3の広い網掛け領域あるいは網掛け部分9、10および11は、3回の別個の分析スキャンからなる一連のスキャンを実行する間に、所定の質量対電荷比を有するイオンが、第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップ2から出現する期間を示す。3つの網掛け領域あるいは網掛け部分9、10および11の斜め境界線は、第1のイオントラップ2の性能特性および第1のイオントラップ2内部に存在する過剰な電荷数に起因する空間電荷効果による歪みの影響を考慮に入れて、所定の質量対電荷比を有するイオンが第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップ2から出現する最も早い時間および最も遅い時間を示す。所定の質量対電荷比を有する個々のイオンの放出あるいは出現時間は、空間電荷飽和の影響により、境界線内で変動する。
一方、狭い網掛け領域あるいは網掛け部分12、13および14は、分析用の第2のイオントラップ3の分析スキャンを実行する間に、所定の質量対電荷比を有するイオンが第2のイオントラップ3から放出される、あるいは、第2のイオントラップ3から出現する期間を示す。所定の質量対電荷比を有するイオンが分析用の第2のイオントラップ3から放出される、あるいは、第2のイオントラップ3から出現する期間は、所定の質量対電荷比を有するイオンが第1のイオントラップ2から放出される、これと対応する期間と比較して、狭い一方で、より明瞭に定義可能である。分析用の第2のイオントラップ3内の電荷数は、どの時点においても、空間電荷効果により歪みが生じるには十分でないと考えられる。したがって、所定の質量対電荷比を有するイオンの正確な放出時間に関しては、不確実性が全くない、あるいは、ほとんどない。
図3の太い実線15は、第1のイオントラップ2からのイオン放出あるいはイオン出現を支配する一つ以上のパラメータが一連のスキャンの間に変化する様子を示す。図3の太い点線16は、分析用の第2のイオントラップ3からのイオン放出あるいはイオン出現を支配する一つ以上のパラメータが一連のスキャンの間に変化する様子を示す。パラメータは、たとえば、第1のイオントラップ2および/あるいは第2のイオントラップ3の電極に印加されるAC電圧および/あるいはDC電圧の振幅あるいは周波数に関するものでもよい。共鳴放出、質量選択的不安定性、パラメトリックまたは非線形共鳴、あるいは、非共鳴放出等の手法によりイオンを放出可能である。
時間T0において、第1のイオントラップ2内の条件が変化して、イオン放出あるいはイオン出現を支配する一つ以上のパラメータが所定値まで迅速にスキャンされ、M0からM1の範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップから出現する。第1のイオントラップ2内の条件は、時間T1まで同じ条件に保たれる。時間T1において、第1のイオントラップ2内の条件が所定レベルまで変化することにより、第1のイオントラップ2内部に残ったイオンがすべて安定化されて、所定の期間中に第1のイオントラップ2からこれ以上イオンが放出されなくなる。
T0からT1までの期間に、M0からM1の範囲内の質量対電荷比を有するイオンがすべて第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップ2から出現する。時間T1において、M1よりもわずかに大きな質量対電荷比を有するイオンも第1のイオントラップ2から放出される可能性がある。このような放出が生じるかどうかは、第1のイオントラップ2の特性、並びに、第1のイオントラップ2内部に存在する過剰な数のイオンの存在およびその影響に依存する。
時間T2において、分析用の第2のイオントラップ3の1回目の分析スキャンが開始される。第2のイオントラップ3の1回目の分析スキャンは、次の時間T3まで続けられる。時間T3において、分析用の第2のイオントラップ3内部に存在する全イオン集団が分析用の第2のイオントラップ3から放出される。時間差T2−T1の存在により、分析用の第2のイオントラップ3内部に存在するM0からM1の範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、分析用の第2のイオントラップ3からのイオンの放出・出現前に、第2のイオントラップ3内部に存在するバッファーガス(緩衝ガス)との衝突による熱エネルギー近傍まで冷却されるのに十分な時間が確保される。
次の時間T3において、第2のイオントラップ3内部の条件が変化して、M1よりも大きな質量対電荷比を有するイオンが安定化して、第2のイオントラップ3内に留まる。
次の時間T4において、第1のイオントラップ2内の条件が変化して、イオン放出あるいはイオン出現を支配する一つ以上のパラメータが所定値まで迅速にスキャンされ、M1からM2の範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップから出現する。第1のイオントラップ2内の条件は、次の時間T5まで同じ条件に保たれる。時間T5において、第1のイオントラップ2内の条件が所定レベルまで変化することにより、第1のイオントラップ2内部に残ったイオンがすべて安定化されて、所定の期間中にこれ以上イオンが第1のイオントラップ2から放出されなくなる、あるいは、第1のイオントラップ2から出現しなくなる。
次の時間T6において、分析用の第2のイオントラップ3の2回目の分析スキャンが開始される。第2のイオントラップ3の2回目の分析スキャンは、次の時間T7まで続けられる。時間T7において、分析用の第2のイオントラップ3内部に存在する全イオン集団が分析用の第2のイオントラップ3から放出される。時間差T6−T5の存在により、分析用の第2のイオントラップ3内部に存在するM1からM2の範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、分析用の第2のイオントラップ3からのイオンの放出・出現前に、第2のイオントラップ3内部に存在するバッファーガス(緩衝ガス)との衝突による熱エネルギー近傍まで冷却されるのに十分な時間が確保される。
次の時間T7において、第2のイオントラップ3内部の条件が変化して、M2よりも大きな質量対電荷比を有するイオンが安定化して、第2のイオントラップ3内に留まる。
次の時間T8において、第1のイオントラップ2内の条件が変化して、イオン放出あるいはイオン出現を支配する一つ以上のパラメータが所定値まで迅速にスキャンされ、M2からM3の範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップから出現する。第1のイオントラップ2内の条件は、次の時間T9まで同じ条件に保たれる。時間T9において、分析対象となる最も高い質量電荷比M3を有するイオンがすべて上流側の貯蔵用の第1のイオントラップ2から放出される、あるいは、第1のイオントラップ2から出現する。
次の時間T10において、分析用の第2のイオントラップ3の最後となる3回目の分析スキャンが開始される。第2のイオントラップ3の3回目の分析スキャンは、次の時間T11まで続けられる。時間T11において、分析用の第2のイオントラップ3内部に存在する全イオン集団が分析用の第2のイオントラップ3から放出される。これにより、分析対象となる全範囲の質量対電荷比の分析が完了する。時間差T10−T9の存在により、分析用の第2のイオントラップ3内部に存在するM2からM3の範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、分析用の第2のイオントラップ3からのイオンの放出・出現前に、第2のイオントラップ3内部に存在するバッファーガス(緩衝ガス)との衝突による熱エネルギー近傍まで冷却されるのに十分な時間が確保される。
図3に示した実施形態では、第1のイオントラップ2および第2のイオントラップ3のスキャンは3回ずつ実行されている。ただし、第1のイオントラップ2および第2のイオントラップ3のスキャンを実行する回数は3回でなくてもよく、他の回数でもよい。たとえば、第1のイオントラップ2および第2のイオントラップ3のスキャンを2回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、あるいはそれ以上の回数、実行してもよい。
分析用の第2のイオントラップ3から質量選択的にイオンが放出・スキャンされる際に、分析用の第2のイオントラップ3内部に存在するイオンの質量対電荷比の範囲および/あるいはイオンの数を限定する実施形態が望ましい。これにより、分析スキャンの際のイオン集団が、全分析スキャン期間に分析される総イオン数に比べて、小さくなる。この手法では、大きなイオン集団全体が分析できると同時に空間電荷の影響により第2のイオントラップ3の分析性能が劣化することがないため、分析用の第2のイオントラップ3のダイナミックレンジを拡大することができる。
以下に図4を参照して説明する他の実施形態において、第1のイオントラップ2からの質量選択的なイオンの放出の際に、第1のイオントラップ2から分析用の第2のイオントラップ3へのイオンの透過を変化させたり、制御・制限したりするようにしてもよい。これにより、分析用の第2のイオントラップ3の分析スキャンの際に、あるいは、分析スキャンの前に、第2のイオントラップ3に入るイオン集団を、質量対電荷比に依存して、制御、限定、制限することができる。たとえば、比較的存在度が高い質量対電荷比を有するイオンを区別することにより、分析用の第2のイオントラップ3のダイナミックレンジをさらに拡大することが可能である。この場合には、存在度が高いイオンの上流側イオントラップ2から分析用の第2のイオントラップ3への透過率を、存在度が低いイオンの透過率よりも低く設定するようにしてもよい。
質量あるいは質量対電荷比に依存して上流側のイオントラップ2から放出されるイオン集団の減衰を、不連続的な段階的動作モードで実行するようにしてもよいし、あるいは、連続的なスキャン動作モードで実行するようにしてもよい。
一つの実施形態において、減衰レンズ17あるいはそれに類する装置を第1のイオントラップ2と分析用の第2のイオントラップ3との間に備えるようにしてもよい。減衰レンズ17あるいはそれに類する装置を用いることにより、分析スキャンの際に、第1のイオントラップ2から放出され、あるいは、出現して、第2のイオントラップ3に伝達されるイオンの透過を連続的に調節することが可能である。
減衰レンズ17あるいはそれに類する装置の一つの実施例として、たとえば米国特許US−6878929に開示されるような偏向静電レンズあるいはフォーカス(合焦)/デフォーカス(焦点ずらし)静電レンズを備える構成でもよい。
減衰レンズ17あるいはそれに類する装置の別の実施例として、第1のイオントラップと第2のイオントラップ3との間に、比較的高速の静電ゲートあるいはシャッターを配置して、ゲートあるいはシャッターのスイッチが入っている比較的短い期間、第2のイオントラップ3へのイオンの入射を停止する構成でもよい。静電ゲートあるいはシャッターのスイッチが切られている比較的短い期間、第2のイオントラップ3へのイオンの入射が可能になる。ゲートあるいはシャッターのマークスペース比(mark space ratio)を100%(イオンをすべて透過させる)と0%(実質的にイオンを透過させない)の間で変更可能である。ゲートあるいはシャッターを用いることにより、分析スキャンの際に各範囲の質量対電荷比に対するイオントラップの総充填時間の動的制御が可能になる。
第2のイオントラップ3の下流にイオン検出器18を配置するようにしてもよい。第2のイオントラップ3の分析スキャンを実行する前に、第1のイオントラップ2をスキャンして、実験の際に存在している可能性が高い総電荷量を確認するようにしてもよい。動作モードにおいて、第1のイオントラップ2から質量選択的にイオンを放出させて、イオン検出器18に直接入射させることにより、初期質量スペクトルを得ることができる、および/あるいは、初期定量を実行することができる。この動作モードで、高透過率のリニアイオンガイドとして第2のイオントラップ3を作動させる。質量スペクトルにより、第1のイオントラップ2および第2のイオントラップ3の分析スキャンの際に第2のイオントラップ3内部にトラップするべき所望の最大イオン集団を推定することが可能になる。この情報を利用して、第2のイオントラップ3が空間電荷飽和の影響を受けることがないように、分析スキャンの際の、第1のイオントラップ2と第2のイオントラップ3との間のイオン透過を調節することも可能である。
また、他の方法を用いて、第1のイオントラップ2により生成される質量スペクトルを記録するようにしてもよい。たとえば、第1のイオントラップ2の望ましくは下流に配置される飛行時間型質量分析器を含むハイブリッド質量分析計の一部として、第1のイオントラップ2を構成するようにしてもよい。この構成では、第1のイオントラップ2から放出されるイオンを下流の質量分析器に向かわせて分析を実行するようにしてもよい。
他にもさまざまな実施形態が考えられる。一つの実施形態として、第1のイオントラップ2と第2のイオントラップ3との間に、非破壊あるいは主に非破壊のイオン検出器あるいはセンサー装置を配置させる構成も可能である。2つのイオントラップ2および3の間に配置される高透過性のグリッド等に入射されるイオンの割合に応じて生成される信号、あるいは、センサー装置からの信号を用いて、分析用の第2のイオントラップ3のスキャンの前に、あるいは、スキャンの際に、第1のイオントラップ2から放出されるイオン集団をモニターするようにしてもよい。この情報を利用して、分析用の第2のイオントラップ3に入射されるイオン集団を、時間の関数として調節することも可能である。
本発明の別の実施形態として、質量選択的不安定性、共鳴放出、パラメトリックまたは非線形共鳴励起、非共鳴放出など、さまざまな手法により、第1のイオントラップ2および/あるいは第2のイオントラップ3から質量選択的にイオンを放出するものとしてもよい。イオンは、第1のイオントラップ2および/あるいは第2のイオントラップ3から、軸方向および/あるいは放射方向に放出されるものでもよい。さらに別の実施形態として、一つあるいは複数のティックル電圧を第1のイオントラップ2および/あるいは第2のイオントラップ3の少なくとも一部の電極に印加して、第1のイオントラップ2および/あるいは第2のイオントラップ3から質量選択的にイオンを放出するものとしてもよい。
直列に配置される2個のイオントラップ2および3を備える構成を本発明の実施例として説明したが、直列および/あるいは並列に配置される3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、あるいはそれ以上の数のイオントラップを備える構成としてもよい。
以上、本発明をその好適な実施例を参照して詳述したが、本発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、当業者には自明のことであるが、特許請求の範囲に記載される本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態および態様において実施することが可能である。