(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
(実施の形態1)
<半導体装置>
まず、本実施の形態に係る半導体装置の構造の概要について説明する。図1は、本実施の形態の半導体装置の表面を示す平面図、図2は図1に示す半導体装置の裏面を示す平面図である。また、図3は、図1に示す半導体装置の表面側の内部構造を示す平面図である。また、図4は、図3のA−A線に沿った断面図である。なお、図3では、図1に示す封止樹脂4の位置を2点鎖線で示している。
本実施の形態では、配線基板10上に半導体チップ2が搭載され、配線基板10上の一部(例えば、略中央部)に形成された封止樹脂(封止体)4により、半導体チップ2が封止された、個片モールドタイプの半導体装置1について説明する。
半導体装置1は、配線基板10の表面10a上に搭載される半導体チップ2、半導体チップ2と配線基板10を電気的に接続する複数の導電性部材(本実施の形態ではワイヤ3)、半導体チップ2および複数のワイヤ3を封止する封止樹脂4、および配線基板10の裏面10b側に形成され、且つ、半導体チップ2と電気的に接続される半田ボール(半田材)5を有している。なお、半田ボール5は、半導体装置1と実装基板(マザーボード)とを電気的に接続するための外部電極(外部接続端子)である。
配線基板10上への半導体チップ2の実装方式は、複数のパッド2cが形成された主面2a側を配線基板10の表面10aと対向させ、複数のバンプ電極を介して実装する、フェイスダウン実装方式(フリップチップ実装方式)と、図4に示すように主面2aの反対側に位置する裏面2bを表面10aと対向させて実装する、フェイスアップ実装方式に大別される。本実施の形態では、フェイスアップ実装方式を用いており、半導体チップ2と配線基板10を電気的に接続する導電性部材として、図4に示すように、例えばワイヤ3を使用している。フェイスアップ実装方式は、フェイスダウン実装方式と比較して、製造コストを低減できるというメリットがある。
フェイスアップ実装方式では、半導体チップ2と配線基板10をワイヤボンディング方式により、電気的に接続する。すなわち、半導体チップ2の主面2a上に形成された複数のパッド(電極、チップ電極)2cと、配線基板10の表面10a側に露出するように、平面視において半導体チップ2の周囲に配置される複数のボンディングリード(端子、ボンディングパッド)11を、複数のワイヤ3を介して電気的に接続する。ワイヤボンディング方式は、ワイヤ3の接合部(パッド2cやボンディングリード11との接合部)を容易に視認することができるので、接続不良が発生しても、これを容易に発見することができる。つまり、完成品の半導体装置1の信頼性が高い。
ただし、ワイヤ3が露出した状態では、衝撃等によりワイヤ3に変形が生じた場合に短絡などの原因となるため、複数のワイヤ3の変形を防止する必要がある。そこで、図4に示すように、配線基板10の表面10a上に封止樹脂4を形成し、半導体チップ2およびワイヤ3を封止することで、ワイヤ3を保護している。
また、配線基板10の表面10aの反対側に位置する裏面10bには、複数の半田ボール5が形成されている。複数の半田ボール5は、配線基板10に形成された複数の配線12を介して表面10a側に形成されたボンディングリード11と電気的に接続されている。このため、半導体装置1を実装基板(図示は省略)に実装する際には、半田ボール5を実装基板の端子(図示は省略)に接合して電気的に接続する。つまり、半田ボール5は半導体装置1の外部電極(外部接続端子)となる。
また、図2に示すように、複数の半田ボール5は、配線基板10の裏面10b側に行列状に配置されている。つまり、半導体装置1は、複数の外部電極が配線基板10の裏面(実装面)10b側に行列状に配置される、所謂、エリアアレイ型の半導体装置である。エリアアレイ型の半導体装置は、配線基板10の裏面10b側を外部電極の配置スペースとして有効に活用することができる。このため、例えば、QFP(Quad Flat Package)やQFN(Quad Flat Non-leaded Package)など、半導体チップを搭載する基材としてリードフレームを用いた半導体装置と比較して、外部電極の数を増やす事ができる点で有利である。
なお、エリアアレイ型の半導体装置としては、本実施の形態の半導体装置1のように、外部電極として半田ボール5が取り付けられたBGA(Ball Grid Array)型半導体装置の他、例えば、半田などの接合部材を取り付けるためのランド13が露出した、LGA(Land Grid Array)型の半導体装置などもある。半田ボール5は、半導体装置を実装基板(マザーボード)に搭載する際の接合材料として機能するので、BGA型の半導体装置は、容易に実装基板に実装できる点で有利である。
本実施の形態の半田ボール5は、鉛(Pb)を実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田からなり、例えば錫(Sn)のみ、錫−ビスマス(Sn−Bi)、または錫−銅−銀(Sn−Cu−Ag)などである。ここで、鉛フリー半田とは、鉛(Pb)の含有量が0.1wt%以下のものを意味し、この含有量は、RoHs(Restriction of Hazardous Substances)指令の基準として定められている。以下、本実施の形態において、半田、あるいは半田ボールについて説明する場合には、特にそうでない旨明示した場合を除き、鉛フリー半田を指す。
<配線基板>
次に、図1〜図4に示す配線基板10の詳細について説明する。図5は図3に示す配線基板の表面側を示す平面図、図6は、図5に示すB部の拡大平面図、図7は図6のC−C線に沿った拡大断面図である。
図7に示すように、配線基板10は、上面(主面)14a、上面14aの反対側に位置する下面(裏面)14bおよび上面14aと下面14bの間に位置する側面14c(図4参照)を有する絶縁層(コア層)14を有している。絶縁層14は、例えば、ガラス繊維または炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグからなる。また、絶縁層14の上面14aおよび下面14bは、それぞれ絶縁膜(ソルダレジスト膜、保護膜)16、17に覆われている。絶縁膜16、17は、絶縁層14の上面14aや下面14bに形成される複数の配線12を覆うように形成され、複数の配線12間の短絡や、断線などを防止する保護膜である。したがって、絶縁膜(上面側絶縁膜)16は、配線基板10の最上面である表面10aに、絶縁膜(下面側絶縁膜)17は、配線基板10の最下面である裏面10bに、それぞれ形成されている。
なお、本願では、配線基板10の最上面である絶縁膜16の上面と、配線基板10の最上層配線が形成される絶縁層14の上面14aを区別して説明する。すなわち、図7に示すように、配線基板10の表面10aとは、配線基板10の最上層に配置される絶縁膜16の上面(最表面)を指し、配線基板10内部の絶縁層の上面14aとは区別される。同様に、配線基板10の裏面10bとは、配線基板10の最下層に配置される絶縁膜17の下面(最表面)を指し、配線基板10内部の絶縁層の下面14bとは区別される。
図5に示すように、配線基板10は、平面視において四角形を成す。配線基板10の表面10aには、半導体チップ2(図3参照)を搭載するチップ搭載領域10cが設けられている。本実施の形態では、チップ搭載領域10cは、平面視において配線基板10の外形に沿った四角形を成し、例えば、表面10aの略中央に配置されている。チップ搭載領域10cの周囲には、上面14aに、複数のボンディングリード(端子、ボンディングパッド)11が形成されている。複数のボンディングリード11は、例えば、銅(Cu)からなり、その表面には、めっき膜(図示は省略)が形成されている。めっき膜は、本実施の形態では、例えば、ニッケル(Ni)膜上に金(Au)膜が積層された積層膜となっている。
また、図5に示すように、複数のボンディングリード11は、チップ搭載領域10cの各辺に沿って配置されている。なお、本実施の形態では、チップ搭載領域10cの各辺(換言すれば、半導体チップ2の各辺)に沿って、それぞれ1列で複数のボンディングリード11が配置されている。しかし、ボンディングリードの配列は図6に示す態様に限定されず、例えば、チップ搭載領域10cの各辺(換言すれば、半導体チップ2の各辺)に沿って、複数列で配置することもできる。この場合、ボンディングリード11の配置スペースの増加を抑制し、かつ、多くのボンディングリード11を配置することができるので、小型で、狭ピッチで、さらに多ピンの半導体装置に適用して有効である。
各ボンディングリード11は、図7に示すように絶縁層14の上面14aを覆う絶縁膜16に形成された、開口部16aにおいて、絶縁膜16から露出している。本実施の形態では、図6に示すように、絶縁膜16のボンディングリード11と重なる位置に、ボンディングリード11よりも小さい開口部16aが形成され、ボンディングリード11の一部が露出している。
また、各ボンディングリード11は、配線基板10の複数の配線層に形成された配線12を介して絶縁層14の下面14bに形成されたランド(端子、電極)13と電気的に接続されている。詳しくは、配線基板10は、複数の配線層を有している。図4および図7では、上面14aに形成される配線層と下面14bに形成される配線層からなる2層の配線層を示している。各配線層には、例えば、銅(Cu)からなる複数の配線12が形成され、上面14aから下面14bに向かって形成されたビア(孔)15a内の配線(ビア内配線、層間配線)15を介して各配線層の配線12が電気的に接続されている。ビア15aは、上面14aから下面14bまで貫通するように形成されており、上面14aに形成された配線12aと下面14bに形成された配線12bを、配線15を介して電気的に接続している。図7に示すように、絶縁層14の上面14aに形成されたボンディングリード11は、同じく上面14aに形成された複数の配線(最上層配線)12aと一体に形成されている。一方、絶縁層14の下面14bに形成されるランド13は、同じく下面14bに形成された配線(最下層配線)12bと一体に形成されている。つまり、複数のボンディングリード11に接続される導電経路は、配線12、15を介して下面14b側に引き出され、複数のランド13と電気的に接続されている。各ランド13は、図7に示すように絶縁層14の下面14bを覆う絶縁膜17に形成された、開口部17aにおいて、絶縁膜17から露出している。本実施の形態では、絶縁膜17のランド13と重なる位置に、ランド13よりも小さい開口部17aが形成され、ランド13の一部が露出している。そして、図4に示すように、複数のランド13には、外部電極である複数の半田ボール5が接合するので、複数のボンディングリード11は、複数の半田ボール5と電気的に接続される。
複数のランド13は、例えば、銅(Cu)からなり、その表面には、めっき膜(図示は省略)が形成されている。めっき膜は、本実施の形態では、例えば、ニッケル(Ni)膜上に金(Au)膜が積層された積層膜となっている。また、図示は省略するが、複数のランド13は、下面14bにおいて、図2に示す半田ボール5と同様に行列状(アレイ状、マトリクス状)に配置されている。言い換えれば、行列状に配置される複数のランド13の露出部のそれぞれに、半田ボール5が接合されている。
図6および図7では、ボンディングリード11よりも配線基板10の外周側(図6あるいは図7が記載される紙面に対して左側)に向かって延在する配線12を示している。この配線12は、絶縁層14(図7)の上面14a上に配線12やボンディングリード11を電解めっき法により形成する際の給電線12cである。
このように、本実施の形態で使用する配線基板10の最表面(表面10aまたは裏面10b)に形成される絶縁膜(上面側絶縁膜)16、絶縁膜(下面側絶縁膜)17は、図7に示すように、絶縁層14の上面14a及び下面14bに形成され、かつある程度の厚みを有する複数の配線(最上層配線12a、最下層配線12b)12を覆っている。このため、絶縁膜16、17はこの複数の配線12に倣って形成される。言い換えると、配線基板10の最表面(表面10a、裏面10b)の平坦性は、絶縁層14の上面14aおよび下面14aの平坦性に比べて低い。
なお、本実施の形態では、絶縁層14の上面14aおよび下面14bに配線12が形成された、2層の配線層を有する配線基板を示している。しかし、配線基板10の配線層数は2層には限定されず、例えば、絶縁層14内に複数層の配線層(配線12)を形成する、所謂、多層配線基板とすることもできる。この場合、最上層配線層と最下層配線層の間に、さらに配線層を形成することにより、配線を引き回すスペースを増加させることができるので、端子数が多い半導体装置に適用して特に有効である。多層配線基板を用いた実施態様の例は、後述する実施の形態2において、説明する。
<半導体チップ>
次に、配線基板10上に搭載する半導体チップ2について説明する。
図4に示すように本実施の形態の半導体チップ2は、主面(第1主面)2a、主面2aの反対側に位置する裏面(第2主面)2b、およびこの主面2aと裏面2bとの間に位置する側面を有している。また、図3に示すように半導体チップ2の平面形状(主面2a、裏面2bの形状)は略四角形からなる。
半導体チップ2の主面2a上には、複数のパッド(電極、チップ電極)2cが形成されている。複数のパッド2cは、半導体チップ2の各辺に沿って主面2a上の周縁部側にそれぞれ配置されている。
また、半導体チップ2の主面2aには、それぞれダイオードやトランジスタなどの複数の半導体素子(回路素子)が形成され、半導体素子上に形成された図示しない配線(配線層)を介して、複数のパッド2cとそれぞれ電気的に接続されている。このように半導体チップ2は、主面2aに形成された複数の半導体素子とこれら複数の半導体素子を電気的に接続する配線により集積回路を構成している。
なお、半導体チップ2の半導体素子形成面である主面2aを持つ基材(半導体基板)は、例えば、シリコン(Si)からなる。また、主面2a上の最表面には絶縁膜であるパッシベーション膜(図示は省略)が形成されており、複数のパッド2cのそれぞれの表面は、このパッシベーション膜に形成された開口部において、絶縁膜から露出している。
また、このパッド2cは金属からなり、本実施の形態では、例えばアルミニウム(Al)からなる。さらに、このパッド2cの表面には、めっき膜が形成されており、本実施の形態では、例えばニッケル(Ni)膜を介して、金(Au)膜が形成された多層構造の積層めっき膜である。
また、本実施の形態では、半導体チップ2は、裏面2bを配線基板10の表面10aと対向させた状態で、チップ搭載領域10c上に搭載する、所謂フェイスアップ実装方式により搭載する。半導体チップ2は、接着材6を介してチップ搭載領域10cの表面10a上に固定される。接着材6は、配線基板10の表面10aに半導体チップ2をしっかりと固定できるものであれば、特に限定されないが、本実施の形態では、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂を用いている。
また、図3および図4に示すように、半導体チップ2は複数のワイヤ3を介してそれぞれ配線基板10と電気的に接続されている。詳しくは、ワイヤ3の一方の端部は、半導体チップ2の主面2a上のパッド2cに接続され、他方は、配線基板10のボンディングリード11に接続されている。本実施の形態では、ワイヤ3は金(Au)からなり、半導体チップ2のパッド2cおよび配線基板10のボンディングリード11の表面に形成された金めっき膜と、Au−Au接合により接合されている。
<封止樹脂>
次に、半導体チップ2、複数のワイヤ3、および複数のボンディングリード11を封止する封止樹脂4について説明する。図4に示すように、本実施の形態の封止樹脂4は、配線基板10の表面10a上に形成され、半導体チップ2、複数のワイヤ3、および複数のボンディングリード11を封止している。
また、封止樹脂4は配線基板10の表面10a全体を覆うのではなく、配線基板10の周縁部は封止樹脂4から露出している。一般に、配線基板の表面に封止樹脂を形成する樹脂封止型の半導体装置では、配線基板と封止樹脂の線膨張係数の相違に起因して反りが発生する。この反りの程度は、半導体装置の平面サイズに比例して増大する。そして、反りの程度が大きくなると、実装面側(例えば、本実施の形態では裏面10b側)の平坦性が低下するため、図示しない実装基板に実装する際に、一部の外部電極が、実装基板側のランドと接続しない実装不良が発生する原因となる。本実施の形態の半導体装置1は、配線基板10の表面10aの一部(周縁部)が封止樹脂4から露出しているため、表面10a全体を封止樹脂4で覆う、MAPタイプの半導体装置と比較して、反り程度を低減することができる。したがって、大型の半導体装置に適用して特に有効である。例えば、本実施の形態では、配線基板10の平面サイズは、例えば、一辺の長さが、30mm〜40mmの四角形となっている。一方、図1に示す、表面10aにおいて、封止樹脂4の周囲を取り囲んで配置される、封止樹脂4からの露出部10dは、例えば、1mm〜2mm程度の幅を有する枠形状を成す。
<半導体装置の製造工程>
次に、図1〜図4に示す半導体装置1の製造工程について、説明する。本実施の形態における半導体装置1は、図8に示す組立てフローに沿って製造される。図8は、図1〜図4に示す半導体装置の組み立てフローを示す説明図である。各工程の詳細については、図9〜図40を用いて、以下に説明する。
1.基板準備工程;
まず、図8に示す基板準備工程(S1)として、図9に示すような配線基板20を準備する。図9は、図8に示す基板準備工程で準備する配線基板の全体構造を示す平面図、図10は図9に示すD部の拡大平面図、図11は図10に示す配線基板の裏面側を示す拡大平面図である。また、図12は、図10に示すE−E線に沿った拡大断面図である。
図9に示すように、本工程で準備する配線基板20は、枠部(枠体)20bの内側に複数のデバイス領域20aを備えている。デバイス領域20aの数は、図9に示す態様に限定されないが、本実施の形態の配線基板20は、例えば4個のデバイス領域20aを備えている。つまり、配線基板20は、複数のデバイス領域20aを有する、所謂、多数個取り基板である。
各デバイス領域20aは、図5に示す配線基板10に相当し、図5〜図7を用いて説明した配線基板10の各部材が形成されている。例えば、図10に示すように、各デバイス領域20aの表面10aには、チップ搭載領域10cと、チップ搭載領域10cの周囲に並べて配置され、絶縁膜16から露出する複数のボンディングリード(端子、ボンディングパッド)11が形成されている。また、図11に示すように、配線基板20の裏面10bには、各デバイス領域20aに、絶縁膜17から露出する複数のランド13が行列状に配置されている。
また、各デバイス領域20aの周囲(複数のデバイス領域20aのうちの互いに隣り合うデバイス領域間)には、図8に示す個片化工程(S7)で配線基板20を切断する予定領域であるダイシング領域(ダイシングライン)20cが配置されている。図9に示すように、ダイシング領域20cは、隣り合うデバイス領域20aの間、および枠部20bとデバイス領域20aの間、に各デバイス領域20aを取り囲むように配置されている。各デバイス領域20aは、例えば一辺の長さが30mm〜40mmの四角形を成す。また、枠形状を成すダイシング領域20cの幅は、例えば200μm〜400μmとなっている。
ここで、ダイシング領域20cとは、後述する個片化工程(S7)において、ダイシングブレードによって切削加工が施される予定領域であって、個片化工程では、ダイシング領域20c内の一部を切削加工する。また、ダイシングブレードと配線基板20の位置合わせ精度や、切削加工時の熱影響などを考慮して、ダイシング領域20cの幅は、ダイシングブレードの幅よりも広くなっている。このため、完成した半導体装置1(図1参照)の配線基板10(図1参照)の周縁部には、このダイシング領域20cの切削されなかった残部が残っている場合がある。
図9〜図12に示す配線基板20は、例えば以下のように製造する。まず、絶縁層14を準備して、図12に示すように、上面14aから下面14bに向かってビア(孔、貫通孔)15aを形成した後、ビア15a内に導体を埋め込んで配線15を形成する。
次に、絶縁層14の上面14a、および下面14bにそれぞれ配線パターンを形成する。詳しくは、絶縁層14の上面14aに複数の配線12および複数のボンディングリード11を、下面14bに複数の配線12および複数のランド13を形成する。配線パターンの形成方法は、例えば、セミアディティブ法を用いた電解めっきにより形成する。
次に、絶縁層14の上面14aを覆う絶縁膜16、および下面14bを覆う絶縁膜17をそれぞれ形成する。絶縁膜16、17は、絶縁層14の上面14aあるいは下面14bに形成される配線12を覆うように配置(塗布)し、これを硬化させて形成する。このため、絶縁膜16、17の表面は、配線12の形状に倣った凹凸を有している。つまり、絶縁膜16、17の表面の平坦度は、絶縁層14の上面14aあるいは下面14bの平坦度と比較して低くなっている。
次に、絶縁膜16に開口部16a、絶縁膜17に開口部17aを形成し、複数のボンディングリード11および複数のランド13をそれぞれ露出させる。開口部16a、17aは、例えば、エッチングにより形成する。
次に、ダイシング領域20cにエッチング処理を施し、絶縁膜16、17、およびダイシング領域20c内の配線12(給電線12c)を取り除く。これにより、ダイシング領域20cには、図12に示す開口溝16b、17bが形成され、絶縁層14の上面14aあるいは下面14bが絶縁膜16、17から露出する。また、開口溝16b、17bは、ダイシング領域20cに沿って形成され、ダイシング領域20c内の配線12(給電線12c)を取り除くことにより、デバイス領域20a内の各ボンディングリード11は、それぞれ電気的に分離される。また、デバイス領域20a内の各ランド13も、それぞれ電気的に分離される。したがって、配線基板20の各デバイス領域について、例えば導通試験などの電気的試験を行うことができる。
2.半導体チップ準備工程;
また、図8に示す半導体チップ準備工程(S2)として、図3に示す半導体チップ2を準備する。本工程では、例えば、シリコンからなる半導体ウエハ(図示は省略)の主面側に、複数の半導体素子やこれに電気的に接続される配線層からなる半導体ウエハを準備する。その後、半導体ウエハのダイシングラインに沿って、半導体ウエハを切断し、図5に示す半導体チップ2を複数個取得する。
3.ダイボンディング工程;
次に、図8に示すダイボンディング工程(S3)について説明する。図13は、図10に示す配線基板上に半導体チップを搭載した状態を示す拡大平面図、図14は図13に示すF−F線に沿った拡大断面図である。
本工程では、半導体チップ2をチップ搭載領域10c上に搭載(接着)する(チップ搭載工程)。図14に示すように、本実施の形態では、半導体チップ2の裏面2bが、チップ搭載領域10cの表面10aと対向するように、接着材6を介してチップ搭載領域10c上に搭載する(フェイスアップ実装)。
本実施の形態では、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂である接着材6を介して半導体チップ2を搭載するが、接着材6は、硬化(熱硬化)させる前には流動性を有するペースト材である。このようにペースト材をダイボンド材として用いる場合には、まず、チップ搭載領域10c上に、接着材6を塗布し、その後、半導体チップ2の裏面2bを配線基板20の表面10aに接着する。そして、接着後に、接着材6を硬化させる(例えば熱処理を施す)と、図14に示すように、半導体チップ2は接着材6を介してチップ搭載領域10c上に固定される。
なお、本実施の形態では、接着材6に、熱硬化性樹脂からなるペースト材を用いる実施態様について説明したが、種々の変形例を適用することができる。例えば、ペースト材ではなく、両面に接着層を備えるテープ材(フィルム材)である接着材を、予め半導体チップ2の裏面2bに貼り付けておき、テープ材を介して半導体チップ2をチップ搭載領域10c上に搭載しても良い。
4.ワイヤボンディング工程;
次に、図8に示すワイヤボンディング工程(S4)について説明する。図15は、図13に示す半導体チップと配線基板を、ワイヤボンディングにより電気的に接続した状態を示す拡大平面図、図16は、図14に示す半導体チップと配線基板を、ワイヤボンディングにより電気的に接続した状態を示す拡大断面図である。
本工程では、図15および図16に示すように、配線基板20と複数の半導体チップ2とを、複数のワイヤ3を介してそれぞれ電気的に接続する。詳しくは、半導体チップ2の主面上に形成された複数のパッド2cと、配線基板20の表面10a側に形成され、絶縁膜16から露出する複数のボンディングリード11を、複数のワイヤ3を介してそれぞれ電気的に接続する。本実施の形態では、半導体チップ2のパッド2cを第1ボンド側、配線基板20のボンディングリード11を第2ボンド側とする、所謂、正ボンディング方式によりワイヤボンディングを行い、パッド2cとボンディングリード11を電気的に接続する。
ワイヤ3は、金属からなり、本実施の形態では、例えば金(Au)からなる。そのため、前記したように、半導体チップ2のパッド2cの表面に金(Au)を形成しておくことで、ワイヤ3とパッド2cとの接合性を向上できるので、ワイヤボンディング不良を防止することができる。
5.封止工程;
次に、図8に示す封止工程(S5)について説明する。図17は、図16に示す配線基板を成形金型でクランプした状態を示す拡大断面図である。また、図18は、図17に示すキャビティ内に封止用樹脂を供給した状態を示す拡大断面図である。また、図19は、図15に示す半導体チップおよびワイヤを樹脂封止した状態を示す拡大平面図、図20は、図19のF−F線に沿った断面図である。
本工程では、まず、図17に示す成形金型30を準備する(金型準備工程)。成形金型30は下面31aを有し、下面31a側にキャビティ(凹部、窪み部)31bが形成された上金型(金型)31、および下面31aと対向する上面32aを有する下金型(金型)32を備えている。図17および図18は、拡大断面図なので、1個のキャビティ31bを示しているが、上金型31のキャビティ31bは配線基板20のデバイス領域20a毎に形成されている。例えば、本実施の形態の配線基板20は、図9に示すように4個のデバイス領域20aを有しているので、図17および図18に示す上金型31は4個のキャビティ31bを有している。
各キャビティ31bは、4つの角部が面取りされた略四角形の平面形状を成す。また、上金型31には、キャビティ31bへの封止用樹脂4a(図18参照)の供給口であるゲート部31c、およびゲート部31cとは異なる位置に配置されるエアベント部(図示は省略)が、それぞれ形成されている。ゲート部31cは、例えば、図17に示すようにキャビティ31bの天面(凹部の底面)に形成されている。すなわち、本実施の形態では、キャビティ31bの天面から配線基板20の表面に向かって封止用樹脂を供給する、所謂トップゲート方式を用いている。
また、本実施の形態では、キャビティ31bの4つの角部のそれぞれに、それぞれエアベント部(図示は省略)を形成している。キャビティ31b内において、封止用樹脂は、ゲート部31cからエアベント部に向かって流れるので、4つの角部にエアベント部を配置することにより、キャビティ31bの角部にしっかりと封止用樹脂を充填することができるからである。
次に、成形金型30の下金型32上に配線基板20を配置する(基材配置工程)。下金型32と組み合わせる上金型31に形成されたキャビティ31bは、配線基板20の各デバイス領域20aよりも面積が狭く、デバイス領域20aの周縁部が、キャビティ31bよりも外側に位置するように配置する。
次に、上金型31と下金型32の距離を近づけて、配線基板20を上金型31と下金型32でクランプする(クランプ工程)。これにより、キャビティ31b内、ゲート部31c、およびエアベント部以外の領域では、上金型31(上金型31の下面31a)と、配線基板20の表面10aが密着する。また、下金型32(下金型32の上面32a)と、配線基板20の裏面10bが密着する。本実施の形態では、キャビティ31bは、配線基板20の各デバイス領域20aよりも面積が狭いので、デバイス領域20aの一部(キャビティ31bよりも外側の領域)は、上金型31の下面31aと密着する。
なお、クランプ工程での密着性を向上させるため、上金型31の下面31a側に、例えば、ポリイミド樹脂などの柔らかい樹脂から成るフィルムを貼り付けて、該フィルムを介して密着させることもできる。この場合、後述する基板取り出し工程で、フィルムと封止樹脂4を容易に剥離することができる。
次に、キャビティ31b内に封止用樹脂4aを供給し、これを硬化させることにより封止樹脂4を形成する(封止体形成工程)。本工程では、図示しないポット部に配置された樹脂タブレットを加熱軟化させて、ゲート部31cからキャビティ31b内に封止用樹脂4aを供給する、トランスファモールド方式により形成する。樹脂タブレットは、例えば熱硬化性樹脂であるエポキシ系の樹脂からなり、硬化温度よりも低い温度では、加熱することにより軟化して、流動性が向上する特性を有している。したがって、例えば図示しないプランジャで軟化した樹脂タブレットを押しこむと、封止用樹脂4aが成形金型30に形成されたゲート部31cからキャビティ31b内(詳しくは、配線基板20の表面10a側)に流れ込む。キャビティ31b内の気体は、封止用樹脂4aが流入する圧力によりエアベント部から排出され、キャビティ31b内は、封止用樹脂4aで満たされる。この結果、配線基板20の表面10a側に搭載された半導体チップ2および複数のワイヤ3は、封止用樹脂4aで封止される。またこの時、配線基板20のボンディングリード11も封止される。その後、キャビティ31b内を加熱することにより、封止用樹脂4aを加熱硬化(仮硬化)させて、封止樹脂4を形成する。
次に、前記した封止体形成工程で用いた成形金型30から複数の封止樹脂4が形成された配線基板20を取り出す(基板取り出し工程)。本工程では、図18に示すゲート部31c内の封止用樹脂4aが硬化したゲートレジン(ゲート内樹脂)4bをキャビティ31b内の封止樹脂4と分割(ゲートブレイク)した後、上金型31と下金型32を引き離して、配線基板20を取り出す。
次に、成形金型30から取り出した配線基板20をベーク炉(図示は省略)に搬送し、再び配線基板20を熱処理する。成形金型30内で加熱された封止用樹脂4aは、樹脂中の硬化成分の半分以上(例えば約70%程度)が硬化する、所謂、仮硬化と呼ばれる状態となる。この仮硬化の状態では、樹脂中の全ての硬化成分が硬化している訳ではないが、半分以上の硬化成分が硬化しており、この時点で半導体チップ2やワイヤ3は封止されている。しかし、封止樹脂4の強度の安定性などの観点からは全ての硬化成分を完全に硬化させることが好ましいので、ベーク工程で、仮硬化した封止樹脂4を再度加熱する、所謂、本硬化を行う。このように、封止用樹脂4aを硬化させる工程を2回に分けることにより、成形金型30に搬送される次の配線基板20に対して、いち早く封止工程を施すことができる。このため、製造効率を向上させることができる。
次に、例えば、ゲート部31cやエアベント部に残留する樹脂バリなどを、除去する。除去方法は、特に限定されないが、例えば、レーザを照射して取り除く事ができる。
上記の封止工程を施すことで、図19に示すように、配線基板10の表面10aにおける周縁部が露出するように、半導体チップ2、複数のワイヤ(導電性部材)3を封止する封止樹脂(封止体)4が配線基板10の各デバイス領域20aに形成される。
6.ボールマウント工程;
次に、図8に示すボールマウント工程(S6)について説明する。図21は、図20に示す配線基板の裏面に、半導体装置1の外部電極(外部接続端子)となる複数の半田ボールを形成(接合)した状態を示す拡大断面図である。
本工程では、図21に示す配線基板20の裏面10b側に形成された複数のランド13のそれぞれに複数の半田ボール(半田材)5を搭載する。詳しく説明すると、まず、図21に示すように配線基板20の上下を反転させて、配線基板20の裏面10bにおいて、絶縁膜17から露出する複数のランド13に複数の半田ボール5をそれぞれ配置する。続いて、半田ボール5を配置した配線基板20に熱処理(リフロー)を施し、複数の半田ボール5をそれぞれ溶融させて複数のランド13とそれぞれ接合する。リフロー工程では、配線基板20をリフロー炉に配置して、半田ボール5の融点よりも高い温度、例えば、260℃以上まで加熱する。絶縁膜17は、ソルダレジスト膜であるため、隣り合う半田ボール5同士の接合(ブリッジ)を防止することができる。
なお、本工程では半田ボール5とランド13を確実に接合するため、例えば、フラックスと呼ばれる活性剤を用いて接合する。フラックスは、例えば、半田ボール5の表面に形成された酸化膜と接触することで、これを取り除くことができるので、半田ボール5の濡れ性を向上させることができる。このようにフラックスを用いて接合した場合には、熱処理後にフラックス成分の残渣を取り除くための洗浄を行う。
7.個片化工程;
次に、図8に示す個片化工程(S7)について説明する。まず、本実施の形態の個片化工程を説明する前に、本願発明者が検討した比較例の個片化工程の概要および課題について、詳しく説明する。
<比較例の個片化工程の概要と課題>
図49は、本実施の形態の個片化工程に対する第1の比較例を示す拡大断面図、図50は、第2の比較例を示す拡大断面図である。なお、図49および図50に示す配線基板20は、図21に示す本実施の形態の配線基板20と、構造、および個片化工程までの製造方法が共通するので、重複する説明は省略する。
個片化工程では、図49および図50に示すように、ダイシングブレード50をダイシング領域(ダイシングライン)20cに沿って走らせて配線基板20を切断し、デバイス領域20a毎に個片化する。ダイシングブレード50は、略円形の外形形状を成す薄板の外周に、ダイヤモンドなどの砥粒を固着させた切断治具(回転刃)であって、薄板を回転させることにより、外周に固着した砥粒が、被切断物を切削加工して切断する。
ダイシングブレード50を用いた個片化工程では、被切断物である配線基板20を固定した状態で切断する必要がある。また、切断された半導体装置1(図1参照)が周囲に飛散する事を防止する観点から、配線基板20のデバイス領域20a毎に固定する必要がある。また、配線基板20には、既に半田ボール5が取り付けられているので、半田ボール5の損傷を回避するため、配線基板20の上下を反転し、配線基板20の表面10a側を固定する必要がある。
本願発明者は、配線基板20を固定する方法として、まず、図49に示すように、ダイシングテープ36を封止樹脂4に貼り付けて、配線基板20を固定する方法について検討した。ダイシングテープ36は、基材層の一方の面に粘着層が配置された片面粘着テープである。
図49に示す第1の比較例では、ダイシングテープ36を封止樹脂4に貼り付けて、テーブル(固定用テーブル)100上に配線基板20を固定する。詳しくは、ダイシングテープ36の粘着層が配置された面を封止樹脂4の上面4cと接着した状態で、ダイシングテープ36の基材層が配置された面を、テーブル100の上面と対向させて、例えば吸着固定する。テーブル100は、例えばポーラスなセラミックから成り、テーブル100に形成された多数の通気経路によって、テーブル100上のダイシングテープ36および配線基板20を吸着固定する。
この第1の比較例による個片化工程では、ダイシングテープ36により、各封止樹脂4を接着固定するので、切断された半導体装置1(図1参照)の飛散を防止することができる。
ところが、図49に示す方法では、以下の課題が生じることが判った。すなわち、ダイシング領域20c周辺の配線基板20の表面10aと、ダイシングテープ36の間に形成される中空空間に起因して、配線基板20やダイシングブレード50に損傷が発生するという問題である。
本実施の形態や第1および第2の比較例のような個片モールドタイプの半導体装置の場合、ダイシング領域20cの周辺には封止樹脂4が形成されず、配線基板20が封止樹脂4から露出している。そのため、図49に示す第1の比較例では、ダイシング領域20cの周辺において、ダイシングテープ36と配線基板20の間に、中空の隙間G1が形成され、配線基板20を固定する力(吸引力)が弱くなっている。
ダイシングブレード50で切削加工する場合、切断領域であるダイシング領域20cの近傍をしっかりと固定しなければ、切削加工時に生じる配線基板20の振動の影響が強くなる。本願発明者の検討によれば、図49に示す封止樹脂4が形成された領域がしっかり固定されていても、ダイシング領域20cに隣接する領域が固定されていなければ、切削加工時に、配線基板20のダイシング領域20c周辺が振動してしまう。図49に示す配線基板20の場合、ダイシング領域20cの幅が、200μm〜400μmであるのに対して、ダイシングテープ36と密着していない中空空間の幅W1は2.2mm〜4.4mm程度となっている。また、隙間G1の高さは、封止樹脂4の高さにより概略規定されるが、封止樹脂4の高さはワイヤ3のワイヤループ高さにより規定されるため、例えば、2mm程度の高さとなる場合もある。
この結果、ダイシング領域20cの近傍では、配線基板20を固定する力(吸引力)が弱くなるため、切削加工時に、配線基板20のダイシング領域20c近傍の振動が大きく成り易い。そして、切削加工時の配線基板20の振動が大きくなると、配線基板20の一部が欠ける、あるいは配線基板20の構成部材にクラックが発生する原因となる。また、中空空間である隙間G1の体積が広いため、切削された部材が飛散して、ダイシングブレード50の破損などの原因となる。
そこで、本願発明者は、個片モールドタイプの半導体装置を個片化する方法として、図50に示す第2の比較例について検討した。図50に示す第2の比較例は、封止樹脂4が形成された領域に凹部(窪み部、溝部)101aが、ダイシング領域20cに溝部101bが、それぞれ形成された固定治具101をテーブル(ベースプレート)102上に配置して、配線基板20を固定する。
詳しくは、固定治具101は、配線基板20上に形成された封止樹脂4と重なる位置に、封止樹脂4が収まる形状から成る凹部101aが形成されている。また、ダイシング領域20cと重なる位置に、配線基板20を切断したダイシングブレード50を挿入する溝部101bが形成されている。また、固定治具101は、例えば硬質ゴムから成り、各凹部101a内には、排気経路(通気孔:図示は省略)が形成されている。この排気経路は、テーブル102に形成された排気経路(通気孔:図示は省略)と連結され、凹部101a内の気体を排出することで、配線基板20を吸着固定する。換言すれば、固定治具101は、溝部101bの側面を構成する、複数の凸部(壁部)101cの上面(押さえ面、支持面)101dを配線基板20の表面10aに当接させて、配線基板20を支持する(固定する)構造となっている。
この第2の比較例による個片化工程では、固定治具101の各溝部101bに形成された排気経路により、配線基板20の各デバイス領域20aを吸着固定することができるので、切断された半導体装置1(図1参照)の飛散を抑制することができる。また、図49に示す第1の比較例よりも、ダイシング領域20cの周囲に形成された中空空間の幅を狭くすることができる。つまり、切削加工時には、ダイシング領域20cの近傍の表面10aを、複数の凸部(壁部)101cの上面(押さえ面、支持面)101dに当接させて固定することができる。このため、切削加工時の配線基板20の振動を抑制することができる。
ところが、図50に示す方法では、以下の課題が生じることが判った。すなわち、ダイシングブレード50による切削加工時に使用する切削液57が、切削加工時に発生する異物(汚染源)を同伴して固定治具101の凹部101aに流れ込んで、封止樹脂4の表面を汚染するという問題である。
ダイシングブレード50による切削加工を行う場合、切削液57をダイシングブレード50に噴きつけながら配線基板20を切断する。この切削液57は、切削時の潤滑性を向上させる潤滑液として、切削時に発生する切削屑を外部に排出するための洗浄液として、および、切削時の摩擦熱によるダイシングブレード50および配線基板20の温度上昇を抑制する冷却液として用いている。切削液57には、一般に水や、水に添加物を加えた溶液が用いられ、第1および第2の比較例では、例えば水を用いている。なお、後述する本実施の形態の個片化工程においても切削液57を用いるが、第1および第2の比較例と同様に、水を用いている。
図50に示す第2の比較例である個片化方法において、切削液57を供給しながら切削加工を行うと、固定治具101の溝部101b内に切削液57が溜ってしまう。そして、溝部101b内に溜った切削液57が、配線基板20の表面10aと固定治具101の凸部101cの上面101dの間の隙間から凹部101aに流れ込むことが判った。
また、溝部101b内には、切削加工時に発生する切削屑などの異物(汚染源)も溜るため、凹部101aに流れ込む切削液57はこれらの異物も含んでいる。また、配線基板20の裏面10b側には、新しい切削液57がノズル56から順次供給されるので、裏面10b側に異物が発生しても容易に排出することができるが、溝部101b内の切削液57は滞留し易いため、汚染源となる異物が、溝部101b内で濃縮され易い。この結果、凹部101aに流れ込んだ異物が、封止樹脂4の表面を汚染することとなる。
ここで、本願発明者は、凹部101aへの汚染源の侵入経路となる配線基板20の表面10aと固定治具101の凸部101cの上面101dの間の隙間を埋める方法について検討した。しかし、配線基板20の表面10aを持つ絶縁膜16は、前記したように絶縁層14の上面14a上に形成される配線12に倣って凹凸を有している。つまり、表面10aの平坦度は、絶縁層14の上面14aの平坦度よりも低い。また、固定治具101を、配線基板20の表面10aの凹凸に倣って弾性変形するような柔らかい材料で構成すれば、凸部101cの上面101dと、配線基板20の表面10aの密着性は向上する。しかし、この場合、切削加工時に固定治具101が変形してしまうので、ダイシングブレード50とダイシング領域20cの位置合わせが困難になる。さらに、半導体装置1(図1参照)の製造工程には、配線基板20に熱処理を施す工程が、含まれるが、配線基板20および配線基板20上に搭載される各部材の線膨張係数の違いに起因して、配線基板20に反り変形が生じる。配線基板20に反り変形が生じると、凸部101cの上面101dと、配線基板20の表面10aの密着性はさらに低下する。したがって、配線基板20の表面10aと固定治具101の凸部101cの上面101dの間の隙間を確実に埋めることは困難である。
また、本願発明者は、溝部101bの溝深さを深くする構成についても検討したが、溝部101bを深くすると、凸部101cの高さが高くなる。しかし、凸部101cは、封止樹脂4とダイシング領域20cの間に配置する部材なので、その幅(壁厚)は、1mm程度である。このため、凸部101cの高さが高くなると、配線基板20を固定するための支持強度(切削加工時の押さえ強度)が不足するという問題が生じる。
このように、図49、図50に示す第1および第2の比較例による個片化工程では、半導体装置の破損や汚染などが発生してしまうという課題がある。
<本実施の形態の個片化工程>
前記した第1および第2の比較例において説明した課題を踏まえ、本実施の形態の個片化工程について説明する。
本実施の形態の個片化工程は、図21に示す配線基板20の封止樹脂4の上面にダイシングテープを貼り付けるテープ貼り付け工程、配線基板20をデバイス領域20a毎に切断し、個片化するパッケージダイシング工程、および個片化された各半導体装置をダイシングテープから取り出すピックアップ工程、を有している。以下、各工程について図面を用いて詳細に説明する。
<テープ貼り付け工程>
テープ貼り付け工程では、図21に示す配線基板20の封止樹脂4の上面にダイシングテープを貼り付ける。図22は、本実施の形態のテープ貼り付け工程を模式的に示す説明図である。また、図23は、図22に示すリングフレームの上面側の平面図、図24は、図22に示すダイシングテープの拡大断面図である。また、図25および図26は、それぞれ図22のG−G線、H−H線に沿った拡大断面図である。また、図27は、図22のJ−J線に沿った断面図である。
図22〜図27を用いてテープ貼り付け工程を詳細に説明すると、まず、図22に示す位置合わせ工程で、ダイシングテープ36が貼り付けられたリングフレーム35を準備して、配線基板20上に配置する。
リングフレーム35は、本実施の形態の個片化工程において、ダイシングテープ36を緊張させた状態で支持する保持治具であって、図23に示すように、例えば、略円環状の形状を成す。また、リングフレーム35は、例えばステンレスから成り、ダイシングテープ36を貼り付ける貼り付け面となる上面35aおよび上面35aの反対側に位置する下面35b(図22参照)を有している。
また、ダイシングテープ36は、図24に示すように、基材層(基材フィルム)36aの一方の面に、粘着層(糊材)36bが配置された粘着テープである。基材層36aは、例えば、ポリオレフィンから成り、緊張状態でリングフレーム35に貼り付けられた状態であっても、局所的に外力を印加すると、弾性変形する程度の柔軟性を有している。一方、粘着層36bは、例えば、紫外線硬化樹脂から成り、硬化前には基材層36aと被貼着物(本実施の形態では、封止樹脂4や配線基板20)をしっかりと接着することができる。また、粘着層36bが硬化すると、接着力は大幅に減少し、被貼着物を容易に引き剥がすことができる。本実施の形態では、例えば、150μm〜200μm程度の厚さの基材層36aの一方の面に30μm程度の粘着層36bを貼り付けている。
図22に示す位置合わせ(アライメント)工程(M1)では、上面35aにダイシングテープ36の粘着層36b(図24参照)を、緊張状態で貼り付けたリングフレーム35を準備して、粘着層36bと配線基板20の表面10aを対向させた状態で位置合わせを行う。
なお、図22に示すリングフレーム35の上面35aにダイシングテープ36を緊張状態で貼り付ける方法については、図示は省略するが、例えば、ロール状、あるいはシート状のダイシングテープ36を準備して、これをリングフレーム35の上面35aに緊張状態で貼り付けた後、リングフレーム35の形状に沿ってダイシングテープ36をカットすることにより得られる。
位置合わせの方法は、例えば、図25に示すように、リングフレーム35および封止樹脂4が形成された配線基板20を、フレームマウント装置40上に配置して行う。フレームマウント装置40は、例えば図25に示すように、独立して移動可能なフレームステージ40aと基板ステージ40bとを有している。したがって、リングフレーム35をフレームステージ40aに、配線基板20を基板ステージ40bのチャック部40cにそれぞれ配置して、それぞれを例えば吸着保持すると、各ステージを移動させることにより、位置合わせを行うことができる。
本実施の形態では、個片化工程の効率化の観点から、複数(2個)の配線基板20をそれぞれの裏面10bをチャック部40cと対向させた状態で配置する例を示している。チャック部40cには、凹部40dが形成されており、配線基板20の裏面10b側に取り付けられた複数の半田ボール5がこの凹部40d内に配置されるようにすることで、半田ボール5の損傷を防止する事が出来る。
次に、図22に示す加圧貼付工程(M2)では、図25および図26に示すように、ダイシングテープ36の基材層36a側からローラ(押圧治具、貼り付け治具)41を配線基板20の方向に押し付けて、ダイシングテープ36を配線基板20上に形成された封止樹脂4の上面4cに貼り付ける。
ローラ41の表面は、ゴムなどの弾性体によって覆われており、図26に示すように、回転しながら配線基板20の長辺に沿って(矢印42の方向に)進む。これにより、ダイシングテープ36は、封止樹脂4の上面4cに向かって弾性変形し、封止樹脂4と接着する。このように、ローラ41のような押圧治具でダイシングテープ36を押しつけて貼り付ける方法は、後述するパッケージダイシング工程において、配線基板20と、ダイシングテープ36の接着不良の原因となる、ダイシングテープ36の皺の発生を防止する観点から好ましい。封止樹脂4に向かってダイシングテープ36を押しつけながら貼ることにより、加圧貼り付け工程中のダイシングテープ36を下方に引っ張りながら貼り付けられるからである。また、同様に皺の発生を防止する観点から、図25および図26に示すように、貼り付け対象である封止樹脂4の上面4cが、リングフレーム35の上面35aよりも低い位置に配置した状態で貼り付けることが好ましい。
次に、図22に示す反転工程(M3)で、リングフレーム35の上下を反転させると、図27に示すように、リングフレーム35に配線基板20を、ダイシングテープを介して接着固定することができる。以降、後述するピックアップ工程までは、配線基板20は、リングフレーム35と伴に搬送される。
なお、フレームマウント工程が完了した段階では、図27に示すように、ダイシングテープ36と配線基板20上に形成された複数の封止樹脂4の上面4cは接着されているが、配線基板20の表面10aとは接着されていない。換言すれば、配線基板20の表面10aと、ダイシングテープ36は離間している。したがって、この状態で、図49に示すような平坦なテーブル100上に配置すると、前記した第1の比較例の実施態様となる。
<パッケージダイシング工程>
次に、パッケージダイシング工程では、図21に示す配線基板20をデバイス領域20a毎に切断し、個片化する。図28は、本実施の形態のパッケージダイシング工程を模式的に示す説明図である。図29は、図27に示すリングフレームおよび配線基板をダイシング装置のテーブルに配置した状態を示す拡大断面図である。また、図30は、図29に示すテーブルの上面側の全体構造を示す平面図、図31は、図30のK部の拡大平面図である。また、図32は、図29に示すL部の拡大断面図、図33は、図32に示す配線基板を吸着固定した状態を示す拡大断面図である。
パッケージダイシング工程を詳細に説明すると、まず、図28に示す位置認識(アライメント)工程(D1)で、ダイシングテープ36を介して配線基板20が固定されたリングフレーム35をダイシング装置51(図29参照)に固定して、ダイシングブレード50と配線基板20の位置関係を調整するための位置認識を行う。
ダイシング装置51は、図29に示すように、リングフレーム35および配線基板20を固定した状態で移動可能なテーブル(固定用テーブル、ダイシングテーブル)52、およびカメラ(イメージセンサ)53を有している。また、ダイシング装置51は、ダイシングブレード50を保持した状態で、テーブル52とは独立して移動させる、ブレード保持部54を有している。したがって、配線基板20をテーブル52の上面52aに固定した状態で、カメラ53で配線基板20の位置を認識し、テーブル52、ダイシングブレード50の一方、あるいは両方を移動させることにより、ダイシングブレード50と配線基板20の位置合わせを高精度で行うことができる。
本実施の形態では、配線基板20の固定方法は、配線基板20が接着されたダイシングテープ36を吸着することにより行う。詳しく説明すると、テーブル52は、例えばステンレスから成り、上面52aには、図30に示すように複数の凹部(窪み部、溝部)52bが形成されている。なお、テーブル52は、配線基板20を固定する固定治具なので、パッケージダイシング工程中に、配線基板20をしっかりと固定するための強度を得る観点からは、他の材料、例えばセラミック製とすることもできる。しかし、後述するように、本実施の形態では、配線基板20上に形成された封止樹脂4を凹部52b内に埋め込んで固定するため、製品種別毎に固有(例えば凹部52bの形状やレイアウトが製品種別毎に異なる)のテーブル52を用いる事が好ましい。したがって、テーブル52をセラミックと比較して、容易に加工できるステンレス製とすると、製品種別毎に固有のテーブル52を安価に揃えることができる点で好ましい。
凹部52bは、パッケージダイシング工程において、図29に示す配線基板20上に形成された複数の封止樹脂4のそれぞれを収納して(埋め込んで)固定するための窪みである。このため、上面52aには、テーブル52上に一度に配置する封止樹脂4の数(つまり、図9に示す配線基板20のデバイス領域20aの数)に対応して形成されている。本実施の形態では、4つのデバイス領域20a(図9参照)を有する配線基板20を2個配置する例を示しているので、図30に示すように8個の凹部52bが形成されている。
また、凹部52bの形状は、封止樹脂4の形状に倣って形成されている。詳しくは、図31に示すように、凹部52bの平面形状は、封止樹脂4(図19参照)の平面形状に沿って略四角形を成し、その大きさは、封止樹脂4の平面形状よりも大きくなっている。また、図32に示すように、凹部52bの深さは、封止樹脂4の高さ以上としている。ただし、配線基板20を吸着固定する際に、図33に示すように、吸引力により封止樹脂4を確実に凹部52bの底面52cに向かって引き込む観点、およびダイシングテープ36と凹部52bの底面52cを密着させてしっかりと固定する観点から、凹部52bの深さは、封止樹脂4の高さと同程度とすることが好ましい。詳しくは、配線基板20の表面10aから封止樹脂4の上面4cまでの高さ以上で、かつ、配線基板20の表面10aからダイシングテープ36の凹部52bの底面52cとの対向面までの高さ以下とすることが好ましい。
さらに、図31に示すように、複数の凹部52bは、図29に示す封止樹脂4の配置に対応して、離間して形成されている。換言すれば、複数の凹部52bの間には、凸部(壁部)52dが形成され、図33に示すように、配線基板20のダイシング領域20cを含む、封止樹脂4から露出した露出部10dは、凸部52dの上面(押さえ面、支持面)52eと対向するように配置されている。したがって、配線基板20を吸着固定した際に、凸部52dの上面52eは、配線基板20の露出部10dを、ダイシングテープ36を介して支持する構造となっている。
また、図31〜図33に示すように、テーブル52の上面52a(複数の凹部52bの底面52c、および複数の凸部52dの上面52eを含む)には、複数(多数)の通気孔(吸気孔)52fが形成されている。複数の通気孔52fは、図33に示すエア通路(気体流路、排気経路)52gを介して、例えば、真空ポンプ(図示は省略)などの吸気装置に接続されている。したがって、図32に示すように、テーブル52の上面52a上に封止樹脂4が貼り付けられたダイシングテープ36を載置した状態で、複数の通気孔52fから吸気すると、封止樹脂4は、図33に示すように、凹部52b内に引き込まれて吸着固定(真空吸着)される。
ダイシングテープ36は、前記したように、例えば、ポリオレフィンから成る樹脂フィルムを基材として用いており、外力に対して弾性変形する柔軟性を有している。このため、複数の通気孔52fから吸気すると、図33に示すように、ダイシングテープ36は、テーブル52の上面52aの形状に倣って変形する。すなわち、テーブル52に形成された通気孔52fからの吸引力により、凹部52bの周囲では、テーブル52の上面52a(凸部52dの上面52eを含む)と、ダイシングテープ36の基材層36aが密着する。さらに、凹部52bの周囲で、ダイシングテープ36とテーブル52が密着することで、凹部52bとダイシングテープ36に囲まれた空間の気密性が上昇する。この結果、封止樹脂4が形成された領域に配置されたダイシングテープ36は、基材層36aが凹部52bの底面52cに向かって引き込まれ、底面52cと密着する。
この時、ダイシングテープ36と接着している封止樹脂4は、凹部52bの底面52cに向かって引き込まれるため、配線基板20の封止樹脂4から露出した露出部10dの表面10aと、ダイシングテープ36(詳しくは粘着層36b)の距離が近づく。そして、凹部52bの深さを封止樹脂4の高さ以上とすることにより、配線基板20の表面10aと、ダイシングテープ36は密着し、粘着層36bの接着力により接着される。また、凹部52bの周囲では、テーブル52の上面52aと密着するダイシングテープ36と、配線基板20の表面10aが密着し、粘着層36bの接着力により接着される。
ここで、配線基板20と接着させるダイシングテープ36に皺が発生している場合、ダイシングテープ36の粘着層36bと、配線基板20の表面10aが十分に接着しない、接着不良が発生する懸念がある。しかし、本実施の形態では、前記したように、加圧貼り付け工程中のダイシングテープ36を下方に引っ張りながら貼り付けることにより、皺の発生を防止できるので、配線基板20の表面10aとダイシングテープ36を確実に接着することができる。
また、本実施の形態では、図33に示すように、ダイシングテープ36の粘着層36bの厚さは、例えば、絶縁膜16の厚さよりも厚くしている。具体的には、絶縁膜16の厚さは例えば、20μm程度であるが、粘着層36bの厚さは、前記したように30μm程度としている。これにより、粘着層36bの接着力が向上し、配線基板20の表面10aとダイシングテープ36を確実に接着することができる。
なお、凹部52bの側面、例えば、図33に示す凹部52bの底面52cと、凸部52dの上面52eの間の傾斜面については、ダイシングテープ36と凹部52bの側面が密着していなくても良い。また、図33に示すように、ダイシングテープ36と封止樹脂4の側面が接着していなくても良い。
前記第1の比較例で説明した、ダイシングブレード50(図49参照)で切削加工を施す際の振動の影響は、ダイシング領域20cに隣接する領域をしっかりと固定していれば、大幅に低減することができる。また前記第2の比較例で説明した、ダイシングブレード50(図50参照)で切削加工を施す際の切削液による汚染の問題についても、ダイシング領域20cに隣接する領域の表面10aがダイシングテープ36と接着されていれば、ダイシングテープ36で汚染源の侵入をシールすることができる。さらに、封止樹脂4が形成された領域に配置されるダイシングテープ36と凹部52bの底面52cが密着していれば、配線基板20全体を、しっかりと固定することができる。したがって、例えば、図33に示すように、凹部52bの側面において、ダイシングテープ36とテーブル52の間、およびダイシングテープ36と封止樹脂4の間に隙間があった場合でも、切削加工時の振動の影響や半導体装置の汚染を防止ないしは抑制することができる。
また、封止樹脂4を凹部52b内に確実に引き込むためには、図33に示すように、凹部52bの側面と封止樹脂4の側面の間にある程度のクリアランスがあることが好ましい。さらに、凹部52bの側面と封止樹脂4の側面の間にクリアランスを設けることで、ダイシングテープ36が弾性変形する際の伸び代(伸縮領域)として用いることができる。つまり、弾性変形する際に、ダイシングテープ36の一部に過剰な応力が集中して破断してしまうのを防止する観点からは、例えば図33に示すように凹部52bの側面においてダイシングテープ36の周囲に隙間が発生する程度のクリアランスを設けることが好ましい。
図28に示す位置認識工程(D1)では、上記のように配線基板20を、ダイシングテープ36を介してダイシング装置51(図29参照)のテーブル52(図29参照)上に固定した後、カメラ53で配線基板20の位置を認識する。なお、本工程では、少なくとも、配線基板20の正確な位置が認識できていれば良く、テーブル52、ダイシングブレード50の一方、あるいは両方を移動させて位置合わせを行うのは、次の切削加工工程(D2)において行うことができる。
次に、図28に示す切削加工工程(D2)では、図34および図35に示すように、ダイシングブレード50をダイシング領域(ダイシングライン)20c(図35参照)に沿って走らせて、配線基板20の裏面10b側から配線基板20を切断し、デバイス領域20a毎に個片化(分割)する。
図34は、図29に示す配線基板を固定した後、個片化する工程を示す拡大断面図、図35は、図34に示すL部の拡大断面図、図36は図35に示すM部の拡大断面図である。また、図37および図38は、ダイシングブレードの回転方向を模式的に示す説明図であって、図37はダウンカット方式、図38はアッパカット方式を示している。
ダイシングブレード50は、前記第1の比較例で説明した通り、略円形の外形形状を成す薄板の外周に、ダイヤモンドなどの砥粒を固着させた切断治具(回転刃)であって、薄板を回転させることにより、外周に固着した砥粒が、被切断物を切削加工して切断する。そして、ダイシングブレード50による切削を行いながら図34に示すテーブル52、ブレード保持部54の一方、あるいは両方を移動させることにより、ダイシング領域(ダイシングライン)20cに沿って切断することができる。
本切削加工工程では、切断された半導体装置1(図1参照)が周囲に飛散する事を防止する観点から、配線基板20のデバイス領域20a毎に固定する必要がある。本実施の形態では、図31に示すように、各凹部52bの底面52c、および凹部52bの周囲のテーブル52の上面52a(複数の凸部52dの上面52eを含む)に、それぞれ複数の通気孔52fが形成されている。つまり、図35に示すように、配線基板20のデバイス領域20a毎に固定することができるので、半導体装置1(図1参照)の飛散を防止することができる。
また、前記第1の比較例で説明したように、切削加工時のダイシング領域20c周辺の振動を抑制し、配線基板20やダイシングブレード50の破損を防止する観点からは、ダイシング領域20cの近傍を固定して切削加工する必要がある。本実施の形態では複数のデバイス領域20aのうちの互いに隣り合うデバイス領域20a間にはテープ36が貼り付けられている。詳しくは、図35に示すように、ダイシング領域20c周辺には、凸部52dが配置され、配線基板20のダイシング領域20cに隣接する領域は、表面10aと接着したダイシングテープ36を介して凸部52dの上面52eにしっかりと固定されている。このため、切削加工時の振動を低減し、配線基板20やダイシングブレード50の破損を防止することができる。
また、前記第2の比較例で説明したように、本実施の形態においても、図35に示すようにノズル56から切削液57をダイシングブレード50に噴きつけながら、配線基板20を切断する。しかし、本実施の形態では、配線基板20のダイシング領域20cに隣接する領域は、表面10aとダイシングテープ36が接着されている。また、表面10aの平坦度は、絶縁層14の上面14aの平坦度よりも低いが、切削加工時には、ダイシングブレード50が配線基板20をテーブル52に向かって押しつける力が作用する。このため、表面10a上の小さな凹凸(例えば10μm〜20μm程度)に倣って、配線基板20の絶縁膜16よりも柔らかいダイシングテープ36(粘着層36b)が変形し、この小さな凹凸に起因する隙間を埋めることができる。換言すれば、本実施の形態では、ダイシング領域20cに隣接する領域では、配線基板20の表面10aとダイシングテープ36が密着しており、配線基板20とダイシングテープ36の間はシールされている。このように、配線基板20とダイシングテープ36の間はシールすることにより、切削液57の配線基板20の表面10a側への侵入を防止ないしは抑制することができる。また、切削液57の侵入を防止することにより、前記第2の比較例において、切削液57に同伴して侵入する異物(汚染源)の侵入も防止ないしは抑制することができる。つまり、本実施の形態によれば、半導体装置1(図1参照)のチップ搭載面側である配線基板20の表面10a、あるいは封止樹脂4の表面の汚染を防止ないしは抑制することができる。
また、本実施の形態では、ダイシングテープ36を介して凸部52d上に配線基板20を固定するので、テーブル52は、前記第2の比較例として説明した図50に示す固定治具101のように溝部101bを形成する必要がない。図36に示すように、ダイシングブレード50でダイシングテープ36の一部まで切削することで、配線基板20を確実に切断することができるからである。このため、図35に示す凸部52dの幅(壁厚)は、図50に示す凸部101cの幅(壁厚)よりも厚くすることができる。したがって、図50に示す凸部101cと比較して支持強度(押さえ強度)を向上させることができる。
また、本実施の形態のテーブル52は、ダイシング領域20c付近(ダイシング領域20cおよびその周辺領域)と重なる位置にも、通気孔52fを形成している。しかし、通気孔52fは、図50に示す溝部101bとは異なり、ダイシングブレード50を挿入するものではなく、テーブル52の上面52a側の空気を吸引することができれば良いので、図31に示すように、略円形の平面形状を成し、その孔径は、ダイシングブレード50の幅よりも小さくしている。このため、例えば、ダイシング領域20cと重なる位置に形成された通気孔52fがあったとしても、支持強度の低下を防止することができる。
ところで、図36に示すように、本実施の形態の配線基板20には、ダイシング領域20cに開口溝16bが形成され、絶縁層14の上面14aが絶縁膜16から露出している。このため、開口溝16bの溝深さやダイシングテープ36の粘着層36bの厚さによっては、開口溝16bとダイシングテープ36の間に図36に示すような小さな空間が形成される場合がある。しかし、本実施の形態では、ダイシング領域20cに隣接する領域では、配線基板20の表面10aとダイシングテープ36が接着され、テーブル52上に固定されている。このため、図36に示すようなダイシング領域20c内に収まる小さな空間であれば、絶縁層14とダイシングテープ36が必ずしも密着していなくても切削加工時の振動を低減し、配線基板20やダイシングブレード50の破損を防止することができる。また、空間内に切削液57が溜る問題についても、開口溝16bとダイシングテープ36の間に形成される空間は、図50に示す溝部101bと比較して極めて容量が小さいため、切削液57が溜り難い。また、仮に溜った場合でも、ダイシング領域20cに隣接する領域は、前記したようにシールされているため、溜った切削液57が配線基板20の表面10a側に侵入することを防止ないしは抑制できる。
また、図36に示すように、ダイシングテープ36の途中(基材層36aの一部)まで切削加工を施し、ダイシングテープ36を完全に切断しないようにするためには、ダイシングテープ36がテーブル52にしっかりと固定されている必要がある。本実施の形態では、図36に示すように凸部52dにも通気孔52fを設ける事で、ダイシング領域20cと重なる領域のダイシングテープ36を凸部52dと密着させて、しっかりと固定することができる。このため、ダイシングテープ36の途中まで切削加工する微調整を容易に行うことができる。
なお、切削加工工程では、略円形の外形形状を成すダイシングブレード50を回転させて切削するが、ダイシングブレード50の回転方向は、一般に2種類ある。すなわち、1つは、図37に示すように、被切削物である配線基板20を移動させる切削方法の場合において、ダイシングブレード50が、配線基板20の進行方向58に対して前方に切削物を削り出すように回転するダウンカット方式である。そしてもう1つは、図38に示すように、配線基板20の進行方向58に対して後方に切削物を削り出すように回転するアッパカット方式である。
本実施の形態では、以下の理由から図37に示すダウンカット方式で切削している。すなわち、アッパカット方式の場合、切削時にダイシングブレード50から配線基板20の切削面に対して上向きの力が働くため、図36に示すダイシング領域20c周辺において、配線基板20の表面10aと、ダイシングテープ36の接着界面で、剥離が発生する懸念がある。したがって、配線基板20とダイシングテープ36の剥離を確実に防止する観点から好ましいダウンカット方式を採用している。
次に、図28に示す洗浄工程(D3)では、デバイス領域20a(図35参照)毎に個片化された配線基板20に洗浄液59を供給し、前記切削加工工程(D2)で取り除ききれなかった異物や汚れを除去する。洗浄方法は特に限定されないが、本実施の形態では、水を配線基板20の裏面10b側から噴き付けて洗浄している。本工程の段階では、図35に示すダイシングテープ36を硬化させる前なので、テーブル52から取り出した後も、配線基板20の封止樹脂4から露出した露出部10d(図33参照)の表面10aは、ダイシングテープ36と接着されている。したがって、本工程において、洗浄液によって、配線基板20の表面10a側が汚染されることを防止することができる。
この洗浄工程では、配線基板20や、ダイシングテープ36に残留する異物や汚れを除去した後、配線基板20を乾燥させて、次のピックアップ工程に搬送する。
<ピックアップ工程>
ピックアップ工程では個片化された各半導体装置1(図34参照)をダイシングテープ36から取り出す。図39は、図34に示すパッケージダイシング後にダイシングテープの粘着層を硬化させた状態を示す拡大断面図、図40は、図39に示すダイシングテープから個片化された半導体装置を取り出す状態を示す拡大断面図である。
本工程では、まず、図39に示すように、前記パッケージダイシング工程を終えた複数の半導体装置1を、リングフレーム35およびダイシングテープ36と伴に、テープ硬化用ステージ60上に配置して、ダイシングテープ36(詳しくは粘着層36b)を硬化させる(テープ硬化工程)。本実施の形態では粘着層36bとして紫外線硬化樹脂を用いているので、紫外線を、例えばダイシングテープ36の下面(すなわち、基材層36aの下面)側から照射する。粘着層36bは数秒程度紫外線を照射することにより硬化する。
粘着層36bが硬化すると、その接着力は大幅に低下する。このため、図39に示すように、封止樹脂4の上面4cは、ダイシングテープ36に貼り付いているが、配線基板10の表面10aと接着されていた領域のダイシングテープ36は、張力(緊張状態で貼り付けたことによる張力)で、元の状態に復元し、配線基板10の表面から剥離する。
次に、図40に示すように、複数の半導体装置1を、リングフレーム35およびダイシングテープ36と伴に、ピックアップステージ61上に配置して、各半導体装置をダイシングテープ36から取り出す(取り出し工程)。本実施の形態では、吸着治具62で各半導体装置1(詳しくは配線基板10の裏面10b側)を吸着保持して、持ちあげることにより、半導体装置1とダイシングテープ36を剥離する。また、前記したようにダイシングテープ36の接着力は、前記テープ硬化工程で低下しているが、封止樹脂4の上面4cは、まだダイシングテープ36に貼り付いている。このため、本工程では、吸着治具62で持ちあげる半導体装置1を、突き上げピン63でダイシングテープ36側から突き上げている。この突き上げピン63からの衝撃により、ダイシングテープ36と半導体装置1を容易に剥離させることができる。
ここで、前記パッケージダイシング工程で、ダイシングテープ36が完全に切断されていた場合、この取り出し工程で、半導体装置1とダイシングテープ36を剥離することが困難となる。また、ダイシングテープ36が完全に切断されていない場合であっても、前記パッケージダイシング工程で一部を切削したダイシングテープ36の切削箇所の強度が、ダイシングテープ36と半導体装置1を剥離させる力よりも弱い場合、本工程でダイシングテープ36が分断されてしまう場合がある。
しかし、本実施の形態では、前記したように、図36に示すように凸部52dにも通気孔52fを設ける事で、ダイシング領域20cと重なる領域のダイシングテープ36を、凸部52dと密着させて、しっかりと固定することができる。このため、ダイシングテープ36の途中まで切削加工する微調整を容易に行うことができる。つまり、本工程において、ダイシングテープ36と半導体装置1を剥離させる力によって、ダイシングテープ36が分断されないようにすることができる。したがって、本実施の形態によれば、本工程におけるダイシングテープ36の剥離不良を防止ないしは抑制することができる。
本工程でピックアップされた各半導体装置1は、吸着治具62に保持された状態、あるいは、吸着治具62により、図示しないトレーに収納された状態で次工程(例えば、検査工程)に搬送する。そして、外観検査など必要な検査、試験を行い、図1に示す半導体装置1が完成する。
<変形例>
図41は、図35に示す切削加工工程の変形例を示す拡大断面図である。図35と図41の相違点は、切削加工時に配線基板20を固定する固定治具(テーブル)の構造である。
図41に示す切削加工工程では、封止樹脂4が形成された領域に凹部(窪み部、溝部)101aが、ダイシング領域20cに溝部101bが、形成された固定治具101をテーブル(ベースプレート)102上に配置して、ダイシングテープ36を介して配線基板20を固定する。つまり、図50を用いて説明した第2の比較例の固定治具101上にダイシングテープ36を介して配線基板20を固定している。
このように、ダイシング領域20cと重なる領域に溝部101bが形成された固定治具101を用いた場合、ダイシングテープ36のダイシング領域20cと重なる領域の直下には、溝部101bが配置されることとなる。しかし、切削加工時には、ダイシング領域20cの近傍のダイシングテープ36を、複数の凸部(壁部)101cの上面(押さえ面、支持面)101dに当接させて固定することができる。このため、切削加工時の配線基板20の振動を抑制することができる。
なお、図41に示す変形例では、ダイシングテープ36のダイシング領域20cと重なる領域の直下に溝部101bが配置されるため、ダイシングテープ36が中空空間内に浮いた状態で切削されることとなるため、切削加工時にダイシングテープ36が切断されてしまう場合がある。ダイシングテープ36が切断されると、図41に示すように、溝部101b内に切削液57が溜ることとなる。しかし、ダイシングテープ36が切断されても、凸部101cの上面101dに当接させた領域では、ダイシングテープ36と配線基板20の表面10aが密着しているため、封止樹脂4の表面の汚染は防止ないしは抑制することができる。
ただし、ダイシングテープ36が切断された場合、前記したピックアップ工程において、ダイシングテープ36の剥離不良が発生してしまう。したがって、ダイシングテープ36の剥離不良を防止する観点からは、図35に示すように、ダイシング領域20cと重なる領域のダイシングテープ36をテーブル52に密着させて固定することが好ましい。
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、配線基板10の表面10aにおいて、絶縁膜16から露出する各ボンディングリード11が封止樹脂4で封止された構造の半導体装置1について説明した。しかし、前記実施の形態1で説明した半導体装置の製造方法は、半導体装置1とは異なる構造の半導体装置の製造方法にも適用することができる。
例えば、近年、半導体装置(半導体パッケージ)上に、別の半導体装置(半導体パッケージ)を積層する、POP(Package on Package)型の半導体装置が検討されている。本実施の形態では、POP型の半導体装置の下段側に配置される半導体装置、およびその製造工程について説明する。なお、本実施の形態では、以下で説明する相違点を除き、前記実施の形態1と同様である点については説明を省略する。図42は、前記実施の形態1で説明した図3に示す半導体装置の変形例を示す平面図、図43は、図42のN−N線に沿った断面図、図44は、図43のP部の拡大断面図である。
図42、図43に示す半導体装置70は、配線基板71の表面10aにおいて、複数のランド72が封止樹脂4から露出している点で、図3、図4に示す前記実施の形態1の半導体装置1と相違する。この複数のランド72は、半導体装置70の上段に配線基板や半導体装置などの電子装置を配置して、この電子装置と半導体装置70を電気的に接続するための、外部インターフェース用の端子である。このように複数の半導体装置、あるいは半導体装置上に電子装置を積層し、これらを電気的に接続するパッケージは、POP型の半導体装置と呼ばれ、複数の半導体装置を実装基板(図示は省略)上に並べて配置する場合と比較して、実装面積を低減できるメリットがある。例えば、図43に示す上段側の半導体装置(メモリパッケージ)73に、DRAMやフラッシュメモリのようなメモリチップ(半導体チップ)74を搭載し、下段側の半導体装置(コントローラパッケージ)70に前記メモリチップを制御するコントローラチップである半導体チップ2を搭載し、複数のランド(電極、電極パッド、端子)72に接合された複数の半田ボール(接合材、基板間接合材)75を介してこれらを電気的に接続し、システムを構成することができる。そして、メモリチップ74が搭載された半導体装置73と、コントローラチップが搭載された半導体装置70を積層することで、実装面積を低減することができる。
なお、複数の半導体チップを電気的に接続してシステムを構成するPOP型とは別の態様として、複数の半導体チップを配線基板上に積層し、これらを電気的に接続して1つの半導体パッケージ内にシステムを構成する、システム・イン・パッケージ(System In Package:SIP)型の半導体装置もある。しかし、POP型の半導体装置は、上段側の半導体装置と下段側の半導体装置70を、それぞれ別個に製造し、その後これを接続することができるので、SIP型の半導体装置よりも、システムの少量・多品種化に柔軟に対応できる。
このPOP型の半導体装置の下段側のパッケージである本実施の形態の半導体装置70が有する複数のランド72は、配線基板71の配線12を介して複数のボンディングリード11と電気的に接続されている。これにより、上段側の半導体装置73(メモリチップ74)と下段側の半導体装置70(半導体チップ2)を電気的に接続し、システムを構成することができる。また、複数のランド72は、配線基板71の配線12、15を介して、配線基板71の裏面10b側(絶縁層14の下面14b上)に形成された複数のランド13と電気的に接続されている。これにより、上段側の半導体装置73(メモリチップ74)を、外部機器と電気的に接続することができる。
詳しくは、図44に示すように、本実施の形態の配線基板71は、例えば、ビルドアップ工法によって製造された複数(図44では、表面配線層、裏面配線層および2層の内層配線から成る4層)の配線層を有する多層配線基板である。各配線層同士を電気的に絶縁する絶縁層14は、例えば、ガラス繊維または炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグから成る絶縁層(コア層)14dと、絶縁層14dの上面14e、下面14fをそれぞれ覆うように配置され、例えば、エポキシなどの熱硬化性樹脂を硬化させて成る絶縁層14g、14hとからなる。本実施の形態では、絶縁層14gの上面が、絶縁層14の上面14a、絶縁層14hの下面が絶縁層14の下面14bとなっている。
また、各配線層には、複数の配線12が形成され、各絶縁層14d、14g、14hを貫通するビア(孔)15a内の配線(ビア内配線、層間配線)15を介して、各配線層の配線12が電気的に接続されている。詳しくは、表面配線層には、配線(最上層配線)12aが形成され、絶縁層14gに形成された配線15を介して第2層目の配線層に形成された配線12dと電気的に接続されている。また、配線12dは、絶縁層14dに形成された配線15を介して第3層目の配線層に形成された配線12eと電気的に接続されている。また、配線12eは、絶縁層14hに形成された配線15を介して裏面配線層に形成された配線12bと電気的に接続されている。さらに、表面配線層にはボンディングリード11およびランド72が、裏面配線層にはランド13がそれぞれ形成され配線12a、12bを介して電気的に接続されている。つまり、複数のボンディングリード11および複数のランド72は、配線基板71の配線12、15を介して電気的に接続されている。
また、図42に示すように、複数のランド72は、平面視において、複数のボンディングリード11よりも外側に配置され、封止樹脂4から露出している。また、図44に示すように配線基板71の絶縁層14の上面14aを覆う絶縁膜16には、ランド72と重なる位置に開口部16cが形成され、ランド72の一部は、開口部16cにおいて絶縁膜16から露出している。この開口部16cの高さは、絶縁層14を覆う絶縁膜16の厚さによって規定され、本実施の形態では、20μm〜30μm程度である。
このように、配線基板71の表面10aにおいて、複数のランド72が封止樹脂4から露出する半導体装置の製造工程では、前記実施の形態1で説明した個片化工程において、さらに、以下の課題を有している。すなわち、切削加工工程において、切削液57(図35参照)が配線基板の表面10a側に侵入すると、ランド72の表面が汚染されてしまう。そのため、図43に示す半導体装置70と上段側に配置される半導体装置73の間で、導通不良が発生する原因となる。
そこで、本実施の形態では、配線基板71の表面10a側に露出する複数のランド72の汚染を防止する技術について説明する。図45は、図35に示す個片化工程の変形例を示す拡大断面図、図46は、図45のQ部の拡大断面図である。
図45および図46に示すように、本実施の形態の個片化工程(切削加工工程)においても、前記実施の形態1で説明したテーブル52上に配線基板76(前記実施の形態1で説明した配線基板20に相当する多数個取り基板)を、ダイシングテープ36を介して固定して切削加工を施す。
ここで、本実施の形態では、切削加工工程において、ランド72を絶縁膜16から露出させる開口部16cが、凸部52dの上面(押さえ面、支持面)52eと対向するように配置する。このように、開口部16cの全体を、凸部52dの上面52eと対向させると、開口部16cは、ダイシングテープ36により覆われる。また、開口部16cのエッジ部では、絶縁膜16とダイシングテープ36が接着し、シールされる。このため、切削加工工程において、切削液57を吹き付けながらダイシングブレード50により切削加工を行う際に、切削液57の開口部16c内への侵入を防止することができる。つまり、切削液57に伴って汚染源が侵入しないので、ランド72の汚染を防止することができる。
また、ダイシングテープ36は、前記実施の形態1で説明したように、基材層(基材フィルム)36aの一方の面に、粘着層(糊材)36bが配置された粘着テープであるが、ランド72の汚染を防止する観点から、粘着層36bと、ランド72の表面が接着しないようにする必要がある。粘着層36bがランド72と接着すると、これを硬化させた後でもランド72から剥離し難くなる。そして、粘着層36bの残渣がランド72の表面に残留した場合、図43に示す半導体装置70と上段側に配置される半導体装置73の間で、導通不良が発生する原因となるからである。
そこで、本実施の形態では、図46に示すように、粘着層36bの厚さを絶縁膜16の厚さ、すなわち、開口部16cの高さ(開口高さ)よりも薄くしている。本実施の形態の粘着層36bの厚さは、前記実施の形態1で説明した粘着層36bよりも薄く、例えば10μmである。このように、粘着層36bの厚さを薄くすることにより、例えば切削加工時の圧力により、粘着層36bの一部が開口部16c内に食い込んだ場合でも、ランド72とは接触しない。したがって、粘着層36bと、ランド72の表面との接着を防止することができる。
ところで、粘着層36bの厚さを薄くすると、ダイシングテープ36と配線基板76の表面10aとの接着力は低下する傾向になる。しかし、本実施の形態のように、封止樹脂4からランド72が露出するタイプの半導体装置70では、ランド72を形成するスペースが必要となるため、平面視において封止樹脂4から露出する領域の割合が多くなる。例えば、本実施の形態では、図42に示す、配線基板71の平面サイズは、例えば、一辺の長さが、10mm〜15mmの四角形となっている。一方、表面10aにおいて、封止樹脂4の周囲を取り囲んで配置される、封止樹脂4からの露出部10dは、例えば、2mm〜3mm程度の幅を有する枠形状を成す。したがって、前記実施の形態1よりも露出部10dの面積の割合が大きいので、粘着層36bを薄くしても、必要な接着力を確保することができる。
なお、本実施の形態の半導体装置70の平面サイズは、前記実施の形態1で説明した半導体装置1の平面サイズよりも小さいが、これは、前記したように、POP型の半導体装置は、実装面積を低減できるというメリットがあり、小型〜中型の半導体装置に適用して特に有効だからである。
以上の通り、本実施の形態によれば、前記実施の形態1で説明した効果に加え、さらに、配線基板71の表面10aにおいて封止樹脂4から露出する複数のランド72の汚染を防止することができる。
(実施の形態3)
前記実施の形態1、2では、半導体チップ2が配線基板71上にフェイスアップ実装方式で搭載される態様について説明した。しかし、半導体チップをフェイスダウン実装方式により搭載する半導体装置に適用することもできる。図47は前記実施の形態2で説明した図42に示す半導体装置の変形例を示す平面図、図48は、図47のR−R線に沿った断面図である。
図47および図48に示す半導体装置80は、前記実施の形態2で説明した半導体装置70と同様に、POP型の半導体装置の下段側に配置される半導体装置である。半導体装置80では、半導体チップ2の主面2aが配線基板81の表面10aと対向させた状態で搭載している。また、半導体チップ2と配線基板81はフリップチップ接続により電気的に接続している。すなわち、主面2a上に形成された複数のパッド2c上に、複数のバンプ電極(突起電極、導電性部材)83を接合し、バンプ電極83を介して、パッド2cと対向する位置に形成された複数のボンディングリード(端子、ボンディングパッド)84とそれぞれ電気的に接続している。なお、ボンディングリード84は、半導体チップ2のパッド2cと対向する位置(つまり、チップ搭載領域内)に配置されている点を除き前記実施の形態1、2で説明したボンディングリード11と同様なので重複する説明は省略する。
また、半導体チップ2の主面2aと配線基板81の表面10aの間には、アンダフィル樹脂(封止樹脂、封止体)85が充填され、半導体チップ2の複数のパッド2c、複数のバンプ電極83、および複数のボンディングリード84は封止されている。一方、半導体チップ2の裏面2b側には、アンダフィル樹脂85は配置されず、露出している。なお、複数のランド72も、アンダフィル樹脂85から露出している。このように、フリップチップ接続を行うと、半導体チップ2の裏面2bを露出させることができるので、前記実施の形態2で説明した半導体装置70よりもパッケージ高さを低く(薄く)することができる。
また、半導体装置80のパッケージ高さを低くすることにより、上段側の半導体装置73と電気的に接続する半田ボール(接合材、基板間接合材)86の大きさは、前記実施の形態2で説明した半田ボール75よりも小さくすることができる。また、これに伴い、ランド72の露出面積も小さくすることができる。さらに、フェイスダウン実装方式の場合、ボンディングリード84を、半導体チップ2を搭載するチップ搭載領域内に配置するので、チップ搭載領域の外側のスペースを広く確保することができる。このため、前記実施の形態2で説明した半導体装置70よりも多くのランド72を配置することができる。つまり、半導体装置間を電気的に接続する端子数を増加させることができる。例えば、図47では、ランド72を配線基板81の表面10aの外周に沿って、複数列(図47では2列)で配置する例を示している。
図47および図48に示す半導体装置80は、半導体チップ2の裏面2bの高さが配線基板81の表面10aの高さよりも高いので、前記実施の形態1で説明したように、個片化工程において、配線基板81の表面10a側に搭載される半導体チップ2の裏面2b側が汚染されてしまうという課題が生じる。しかし、前記実施の形態1で説明したように、ダイシングテープ36を配線基板81の表面10aに貼り付けた状態で、切削加工を施すことで、これを防止ないしは抑制することができる。
また、前記実施の形態2で説明した半導体装置70と同様に、複数のランド72が、配線基板81の表面において露出しているので、切削加工工程において、ランド72の表面が汚染されてしまうという課題が生じる。しかし、前記実施の形態2で説明したように、切削加工工程において、ランド72を絶縁膜16から露出させる開口部16c(図46参照)が、凸部52dの上面52e(図46参照)と対向するように配置することでこれを防止することができる。さらに、ダイシングテープ36の粘着層36bの厚さを絶縁膜16の厚さ、すなわち、開口部16cの高さ(開口高さ)よりも薄くすることにより、粘着層36bと、ランド72の表面との接着を防止することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、前記実施の形態1〜前記実施の形態3では、ダイシング領域20cの絶縁膜16、17およびダイシング領域20c内の配線12(給電線12c)を、予め取り除いた配線基板20について説明した。しかし、例えば、給電線12cを形成しない場合など、配線12を取り除く必要がない場合には、この処理を省略することができる。この場合、前記した個片化工程において、ダイシングテープ36と、ダイシング領域20cの絶縁膜16(すなわち、ダイシング領域20cの配線基板20の表面10a)を接着することができるので、より確実に、配線基板20の表面10a側の汚染を防止することができる。
また、例えば、前記実施の形態1〜前記実施の形態3では、切削加工工程において、切削液57をダイシングブレードに供給しながら切削加工を施す態様を説明したが、切削液を供給しないで切削加工を行う場合にも適用することができる。切削液を供給しない場合であっても切削屑が発生するので、切削屑により配線基板のチップ搭載面側が汚染する懸念があるが、前記実施の形態1〜前記実施の形態3で説明した技術を適用することにより、これを防止ないしは抑制することができる。
また、例えば、前記実施の形態3では、フェイスダウン実装方式の半導体装置の例として、POP型の半導体装置について説明した、しかし、フェイスダウン実装方式を採用する半導体装置は、積層構造の半導体装置に限定されず、例えば、前記実施の形態1で説明したような、単層タイプの半導体装置に適用することもできる。
また、例えば、前記実施の形態1では、2層の配線層を有する配線基板10、前記実施の形態2、3では4層の配線層を有する多層配線基板である配線基板71、81を例として説明した。しかし、配線層の数は、半導体装置の平面サイズと、端子数に応じて選択することができる。例えば、配線基板10を4層以上の配線層を有する多層配線基板としても良い。また、配線基板71、81を2層の配線層を有する配線基板としても良い。
また、例えば、前記実施の形態1では、封止工程として、トップゲート方式により封止樹脂4を形成する例について説明した。しかし、トップゲート方式ではなく、封止用樹脂4aを半導体チップ2の側面側から供給する、サイドゲート方式を適用することもできる。