以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
酸化珪素膜に比べ酸化窒化珪素膜は窒素を含有することにより、高いガスバリア性を発現することができるが、窒素含有量が増え窒素リッチになってくると着色および膜自体が脆くなる。そのバランスをとった、酸化窒化珪素膜を作製することが望ましい。
本発明の発光素子は、基材の少なくとも一方の面に、窒化酸化珪素層を有するものであり、形成方法については真空蒸着、イオンプレーティング、CVD、スパッタリングなどの手段で実現される。特に、組成のコントロール性がよく、緻密な膜を形成できるスパッタリング、真空工程が不要で成膜コストの安価な大気圧の近傍下で放電プラズマ処理を利用することにより無機膜を成膜する常圧CVDが好ましい。スパッタリングには原材料としてSi3N4ターゲットを用いるRFスパッタリング方式や、Siターゲットを用いてAr、O2、N2ガスを導入するDCスパッタリング方式がある。Siターゲットを用いる場合はRFスパッタリング方式も選択できる。更に好ましくは、ペルヒドロポリシラザン等のポリシラザンを、例えばキシレン等に溶解した塗布液を塗布し、酸化、つまり水蒸気酸化するか、それとは別に、あるいはそれと同時またはその後に空気中熱処理あるいは紫外光照射して得られた酸窒化珪素膜を有するものである。上記の基材は、可撓性を有し、透光性および耐熱性を有する樹脂等の材料により形成され、各種電子ディバイスのようなコーティング体の保護部材(例えば保護膜)として存在していてもよく、例えば基板のように、その構成部材として存在していてもよい。
例えば樹脂基材上に、上述のような酸窒化珪素膜を設けた場合、上記樹脂のもつ可撓性を維持したままで、耐熱性の向上、表面平坦性の向上、透光性の維持ないし改善や、基材のパッシベーション性向上、耐吸水(湿)性、化学劣化性、寸法形態安定性、耐紫外線光劣化性、さらには表面反射低減性等、多くの特性の向上を図ることができる。なおかつ、これらの複合作用として長寿命化、耐候性を付与することができる。すなわち、水蒸気や酸素透過率が極めて低くなるので、発光素子においては、それらによる性能劣化を防止できるとともに、長寿命化を図ることができる。また、緻密な膜が得られるため、強度が向上し、耐食性に優れる。さらに、平坦な膜が得られるため、透光性とともに、発光素子のような電子ディバイスにおいては、光学機能を低下させる要因をとはならない。
また、基材や基材上に形成された機能膜、例えばフィルター等の光学機能膜と、その上に形成される電極層、発光層等の機能性薄膜とのパッシベーションを行うことができ、基材や基材上に形成された機能膜から放出される水分、ガスなどからこれらの素子構成層を保護することができる。
また、このような酸窒化珪素膜は、ペルヒドロポリシラザン等のポリシラザン含有塗布液を塗布し、水蒸気酸化,紫外光照射による酸化、および/または加熱処理(乾燥処理を含む)を行うことによって得られる。この製造方法は、一般的に耐熱性が低い樹脂基材に対して、常圧下で、湿式コーティングといった生産性のよいプロセス技術で酸窒化珪素膜の成膜が可能となる好適な方法である。
本発明は、樹脂基材上に、当該樹脂基材上に近い層から遠い層に向けて、酸窒化珪素層(下層)、窒化酸化珪素層(上層)の順に積層することで、窒化酸化珪素層上層、窒化酸化珪素層下層の個々の層だけでは無くしきれない層構造の欠陥部分を埋め、個々の層だけで形成するよりも水蒸気バリア性を高めた、かつ高い透明性をあわせもつフィルムである。さらに上層の窒化酸化珪素層上層を下層の窒化酸化珪素層よりも緻密性の高い窒素リッチの膜にすることで、膜形成時の樹脂基材や有機物層からのアウトガスを押さえることができ、良好な透明性と水蒸気バリア性を兼ね備えた良質な膜が得られる。各窒化酸化珪素層の組成については特に制限はないが、窒化酸化珪素層上層は元素濃度比0<O/(O+N)≦0.4、窒化酸化珪素層下層は元素濃度比0.3≦O/(O+N)<1が好ましい。また、各層の厚みに関しても特に限定はしないが、窒化酸化珪素層上層は層厚さ1〜50nm、窒化酸化珪素層下層は層厚さ10〜500nmが好ましい。これらの範囲であれば、良好な光線透過率と水蒸気バリア性が得られる。窒化酸化珪素層の形成方法については真空蒸着、イオンプレーティング、CVD、スパッタリングなどの手段で実現される。特に、組成のコントロール性がよく、緻密な膜を形成できるスパッタリング、真空工程が不要で成膜コストの安価な大気圧の近傍下で放電プラズマ処理を利用することにより無機膜を成膜する常圧CVDが好ましい。スパッタリングには原材料としてSi3N4ターゲットを用いるRFスパッタリング方式や、Siターゲットを用いてAr、O2、N2ガスを導入するDCスパッタリング方式がある。Siターゲットを用いる場合はRFスパッタリング方式も選択できる。
本発明の酸窒化珪素膜は、基板、蛍光性物質を含む蛍光変換層、カラーフィルター層、被覆層等との接着性を改善するために下地層を有していてもよい。
<ポリシラザン>
本発明に用いることの出来るポリシラザンは、下記に示すように珪素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO2、Si3N4、および両者の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。通常、側鎖が全て水素であるペルヒドロポリシラザンが用いられる。ペルヒドロポリシラザンは直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質であり、分子量により異なる。
これらは、有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系を用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類などがある。
これらの溶剤を使用する場合、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、溶液の濃度上昇を調節するために選択し、目的に合わせ複数の種類の溶剤を混合してもよい。
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザンの含有量は、目的とするシリカ膜の厚み、塗液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特にもっとも分子量の少ないメチル基を有することにより、下地材料との接着性が改善され、かつ硬くて脆いシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。前記アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、特にシリカ転化後の非晶質シリカ純度向上とパッシベーション性、熱によるアウトガス発生、熱膨張等のシリカ本来の長所を減ずることが少ない点で炭素数1のものが好ましい。しかしながら、塗布の条件により非水系溶液の粘度を上昇させたり、シリカ膜の厚膜化を図るためには、炭素数4のターシャリーブチル基等も使用できる。
このアルキル基による置換率は、ポリシラザンが以下の構造式であったとすると、構造単位中の水素原子の20%以下がアルキル基、特にメチル基で置換されていることが好ましく、特に10%以下、さらには0.5〜10%程度が好ましい。
式中、R1、R2およびR3は、アルキル基を表す。但し、R1、R2およびR3の少なくともいずれかは水素原子である。
また、必要に応じて光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有することにより、特に下地の第1層のアルキル基部位をアルキレン基のような反応性2重結合とする場合、シリカ形成反応が促進され、より緻密なシリカ膜が得られ易くなり、特に第2層形成の下地膜としての性能が高まる。ペルヒドロポリシラザンは、上記有機シラザンを無機ポリマー本来の特徴を損なわない範囲で導入することにより、ミクロな無機フィラー(SiO2)と有機ポリマーの複合化を助長する。また、“厚膜化”、“安定性向上”、“膜厚限界向上”、“平坦性向上”に寄与し、特にアクリル系樹脂等との高い相溶性によるアロイ化を促し、各ドメインが20nm程度の大きさで相溶していることが確認されている。
光重合開始剤としては、公知〜周知のものを使用できる。特に入手容易な市販のものが好ましい。また、複数の光重合開始剤を使用してもよい。光重合開始剤としては、アリールケトン系光重合開始剤(たとえば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類など)、含イオウ系光重合開始剤(たとえば、スルフィド類、チオキサントン類など)、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、その他の光重合開始剤がある。特に、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤の使用が好ましい。また、光重合開始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせて使用することもできる。具体的な光重合開始剤としては、たとえば以下のような化合物がある。
4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン。
ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラキス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4′,4″ジエチルイソフタロフェノン、α−アシロキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート。
4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン。2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド。
光重合開始剤は、無機のポリシラザンのシリカ転化への寄与は少なく、多すぎると転化シリカ膜の緻密性を損なう。従って、塗布液中、0.01〜5質量%程度、有機ポリシラザンではUV硬化樹脂成分100質量部に対して20質量%以下含有していることが好ましい。
また、必要により反応を促進させるため触媒を用いてもよい。触媒としては、より低温でポリシラザンを硬化させうる触媒が好ましく、たとえば、金、銀、パラジウム、白金、ニッケルなどの金属の微粒子からなる金属触媒(特開平7−196986号公報)、およびそれらのカルボン酸錯体(特開平5−93275号公報)が挙げられる。また、触媒をポリシラザン溶液に添加しておくのではなく、特開平9−31333号公報に提案されているように、触媒溶液、具体的にはアミン水溶液等に直接被覆成型物を接触させる、またはその蒸気に一定時間曝す、などの方法を採用することも好ましい。
ポリシラザンは、前述のとおり、セラミック前駆体ポリマーであり、これを用いてシリカ膜を形成するには、大気焼成で450℃以上を要するが、ポリシラザンのウェット状態の塗膜を、触媒存在下に水蒸気酸化、および/または空気雰囲気下加熱酸化を組み合わせることで100℃以下でも緻密なシリカ膜が得られ、プラスチックフィルム等の耐熱性の低い基板にも成膜できる。特に、クラックが入る限界膜厚を厚くとれるメチル基置換ポリシラザンは、加湿によるシリカ転化効率が特に有効である。従って、シリカ膜の形成には加熱、水蒸気酸化、または加熱、水蒸気酸化および空気雰囲気下加熱の組み合わせの何れの方法を用いてもよい。特に触媒としてトリメチルアミンの5質量%水溶液の蒸気(無相)にポリシラザン塗布液(ポリシラザンのMn100〜50000)を25℃で2分気相接触後、95℃80%RH雰囲気下に5分保持することによりシリカ質セラミックが形成される。この方法は前記プラスチック長尺フィルム等へ連続塗布硬化によるセラミックシリカ層形成が可能になる。
また、例えばMn100〜50000のポリシラザンとアセチルアセトナト錯体(Ni、Pt、Pd、Al、Rh等)を加熱反応して得られるグリシドール/ポリシラザン原子比が1.0×10−6〜2の範囲内かつMnが約200〜50万の上記錯体付加ポリシラザン流体を50〜350℃で低温焼成する方法や、0.5μm以下の金属(Ag、Au、Pd、Ni等)をMn100〜50000のポリシラザンに加え、150〜370℃で低温焼成することにより、シリカセラミック膜が得られる。この場合、N2またはNH3含有雰囲気下で250℃以上で焼成すると、一部窒化ケイ素化された化学量論組成からは多少ずれるがSiOxN層や、SiNy層に近い膜(SiOxNy:O/(O+N)が約50〜80%)に転化し、膜厚の薄い層でもパッシベーション性が向上する。
ポリシラザン含有液を塗工する手段としては特に制限されず、公知〜周知の方法を採用できる。たとえば、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、マイクログラビアコート法等の方法を採用できる。塗工後被覆組成物が溶剤を含んでいる場合は乾燥して溶剤を除き、有機ポリシラザン含有系については、次いで、必要により紫外線等を照射して硬化させ、加熱してまたは室温に放置して硬化させる。アミン類や酸類の水溶液や蒸気に接触させて硬化を促進することもできる。
特に、エチレン不飽和二重結合を有するアクリル系樹脂を含有する有機ポリシラザンにおいては、シリカ膜を形成する際に、紫外線、電子線などの活性エネルギー線を照射してもよい。特に、塗膜中に光重合開始剤を含有している場合には、この光重合開始剤を励起させるのに必要な波長の光、例えばUV光を照射することが必要である。また、光重合開始剤を含有していない場合でも電子線を照射することにより反応が促進し、有機ポリマーとハイブリッド化された緻密なシリカ膜が得られ易くなる。
(積層化)
更に好ましい形態として樹脂基材上に、当該樹脂基材上に近い層から遠い層に向けて、酸窒化珪素層(下層)、窒化酸化珪素層(上層)の順に積層することで、窒化酸化珪素層上層、窒化酸化珪素層下層の個々の層だけでは無くしきれない層構造の欠陥部分を埋め、個々の層だけで形成するよりも水蒸気バリア性を高めた、かつ高い透明性をあわせもつフィルムである。さらに上層の窒化酸化珪素層上層を下層の窒化酸化珪素層よりも緻密性の高い窒素リッチの膜にすることで、膜形成時の樹脂基材や有機物層からのアウトガスを押さえることができ、良好な透明性と水蒸気バリア性を兼ね備えた良質な膜が得られる。各窒化酸化珪素層の組成については特に制限はないが、窒化酸化珪素層上層は元素濃度比0<O/(O+N)≦0.4、窒化酸化珪素層下層は元素濃度比0.3≦O/(O+N)<1が好ましい。また、各層の厚みに関しても特に限定はしないが、窒化酸化珪素層上層は層厚さ1〜50nm、窒化酸化珪素層下層は層厚さ10〜500nmが好ましい。これらの範囲であれば、良好な光線透過率と水蒸気バリア性が得られる。窒化酸化珪素層の形成方法については真空蒸着、イオンプレーティング、CVD、スパッタリングなどの手段で実現される。特に、組成のコントロール性がよく、緻密な膜を形成できるスパッタリング、真空工程が不要で成膜コストの安価な大気圧の近傍下で放電プラズマ処理を利用することにより無機膜を成膜する常圧CVDが好ましい。スパッタリングには原材料としてSi3N4ターゲットを用いるRFスパッタリング方式や、Siターゲットを用いてAr、O2、N2ガスを導入するDCスパッタリング方式がある。Siターゲットを用いる場合はRFスパッタリング方式も選択できる。
本発明の酸窒化珪素膜は、基板、蛍光性物質を含む蛍光変換層、カラーフィルター層、被覆層等との接着性を改善するために下地層を有していてもよい。
ポリシラザンを硬化させる活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。更に好ましくは300nm以下の波長のUV光である。しかし、紫外線に限定されず、電子線やその他の活性エネルギー線を使用できる。紫外線源としてはキセノンランプ、パルスキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等を使用できる。
<基材>
本発明に用いる基材としては可撓性を有する基材が好ましく、特に、樹脂材料が好ましい。また、特にガラス転移点Tg65℃以上および/または耐熱温度70℃以上で透光性、耐熱性を有する樹脂製の基材が好ましい。
透光性、耐熱性を有する樹脂製の基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(Tg79℃)、ポリエチレンナフタレート耐熱フィルム(Tg119℃);三フッ化塩化エチレン樹脂〔PCTFE:ネオフロンCTFE(ダイキン工業社製)〕(耐熱温度150℃)、ポリビニリデンフルオライド〔PVDF:デンカDXフィルム(電気化学工業社製)〕(耐熱温度150℃:Tg50℃)、ポリビニルフルオライド(PVF:テドラーPVFフィルム(デュポン社製)〕(耐熱温度100℃)等のホモポリマーや、四フッ化エチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体〔PFA:ネオフロン:PFAフィルム(ダイキン工業社製)(耐熱温度260℃)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体〔FEP:トヨフロンフィルムFEPタイプ(東レ社製)〕(耐熱温度200℃)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体〔ETFE:テフゼルETFEフィルム(デュポン社製)(耐熱温度150℃)、AFLEXフィルム(旭硝子社製:Tg83℃)〕等のコーポリマ等のフッ素系フィルム;芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸/イソフタル酸)−ビスフェノール−A等の2価のフェノールとの共重合芳香族ポリエステル〔PAR:キャスティング(鐘淵化学社製)エルメック、耐熱温度290℃:Tg215℃〕、〔新規PAR“MFシリーズ”(ユニチカ社製)、MF−2000、Tg288℃〕等のポリアリレートフィルム;ポリスルホン〔PSF:スミライトFS−1200(住友ベークライト社製)〕(Tg190℃)、ポリエーテルスルホン(PES:スミライトFS−5300(住友ベークライト)〕(Tg223℃)等の含イオウポリマーフィルム;ポリカーボネートフィルム〔PC:パンライト(帝人化成社製)〕(Tg150℃)、〔ITO膜、バッファー膜、積層複合化耐熱性PCフィルム(帝人社製)HT−60、Tg205℃〕;非晶質ポリオレフィン系樹脂[APO(三井化学製)、シクロオレフィン樹脂;ゼオノア:日本ゼオン(株)(Tg:105〜163℃)]、ファンクショナルノルボルネン系樹脂〔ARTON(日本合成ゴム)〕(耐熱温度164℃:Tg171℃)、ポリシクロヘキセン(PCHE:旭化成社製)Tg218℃;ポリメタクリレート樹脂(PMMA)(三菱レーヨン製や住友化学製:Tg80〜114℃);オレフィン−マレイミド共重合体〔TI−160(東ソー社製)〕(Tg150℃以上)、パラアラミド(アラミカR:旭化成)(耐熱温度200℃)、フッ化ポリイミド(耐熱温度200℃以上)、ポリスチレン(Tg90℃)、ポリ塩化ビニル(Tg70〜80℃)、セルローストリアセテート(Tg107℃)等が挙げられる。
また、ポリカーボネートフィルムをガスバリア性耐溶剤性層で上下両面コートし、さらにその片面にITO導電膜を設けたLCD用複合フィルム(帝人(株)製:エレクリア、HT−60)等はそのまま基材フィルムとして使用可能である。
樹脂基材のガラス転移点Tgは65℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは180℃以上、特に230℃以上で、その上限は特に規制するものではないが、通常350℃、特に300℃、さらには250℃程度である。また、耐熱温度ないし連続使用温度は80℃以上、好ましくは160℃以上、特に200℃以上が好ましく、その上限は高いほど好ましく、特に規制するものではないが、通常250℃程度である。しかし、素子のパッケージ保護部材(例えばラミネートフィルム用樹脂基材)としては80℃以上あれば使用可能である。樹脂基材の厚さは、目的・用途や、要求される強度、曲げ剛性等により適宜決められるが、保護部材として用いるときは、通常5〜150μm、好ましくは35〜135μmの範囲である。樹脂基材は一般には薄くなると、表面保護の効果が得難くなり、反対に500〜1000μm程度に厚くなると、一般にフレキシブル性、光の透過率が低下する傾向を示す。なお、例えばPES(住友ベークライト製の光学グレード、平滑処理FS−1300系)は50μm厚で可視光透過率が、ほぼ90%であり、カラーフィルターを視認直近の基板に設ける発光素子は、このレベルの光透過率で十分使用可能である。
なお、透光性を有するとは、可視光領域(特に素子の発光波長領域)の光の60%、このましくは70%、より好ましくは80%以上を透過することをいう。
共有結合で連結されている有機−無機ハイブリッド樹脂層としては、例えば以下のものがある。
(1)ウレタンアクリレート(1分子当たり平均15個のアクリロイル基含有)10gと、ペルヒドロポリシラザンのキシレン溶液(固形分20質量%、数平均分子量Mn≒1000)15gを加え、常温で1時間程度撹拌した組成物(ここで、ウレタンアクリレートは光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド:150mg、UV吸収剤として、2−ヒドロキシ−5−(2−アクリロイルオキシエチル)フェニルベンゾトリアゾール:1000mg、光安定剤として、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバネート:200mgを酢酸ブチル:30gに溶解した溶液よりなる)をドクターブレード等で数μm塗布し、溶剤乾燥後、高圧水銀灯を用い、3000mJ/cm2、波長:300〜390nmで空気雰囲気中でUV照射して得られた透明硬化物。
(2)JSR(株)製、光学部品用UV/EB硬化型樹脂(Zシリーズ)系では、特に可視光波長と対比し、より小さい粒子径0.01μm(10nm)のSiO2粒子に、感光性のアクリロイル基を導入したDesoliteZ7500シリーズ(Z7501、Z7503、KZ71714)等の有機/無機ハイブリッド材の有機溶媒含有タイプをスピンコートし、その塗膜を乾燥した後、1.0J/cm2でUV硬化した樹脂層。
(3)触媒化成工業(株)製、ジルコニアが修飾されたポリシルセスキオキサン(商品名:ZRS、一部Zr置換、SiO骨格の環構造側鎖に、R−、RO−基を有するラダー構造類似ポリマー)の熱硬化型有機−無機ハイブリッド樹脂。
さらに、上記下地層(1)、(2)および(3)のいずれかを形成した後、酸素プラズマ処理を施すことにより、下地層がよりシリカ質に近いものとなり、上層のポリシラザン転化層を形成する際、両者界面の親和性改善によるカバレージも良好となり、下地層のパッシベーション性向上効果が上乗せされる。
極微粒子が高充填されている樹脂層としては、樹脂材料にアクリル性二重結合を有するUV/EB硬化、有機過酸化物熱硬化樹脂、エポキシ環の開環重合熱硬化樹脂、アルミニウムキレート化合物を縮合反応触媒としてアルコキシシリル基含有アクリル樹脂との共縮合樹脂、無黄変イソシアネート基含有ウレタンポリマーと、ヒドロキシアクリレート樹脂や、ポリエステル、ポリエーテル(系水酸基含有ポリオール)プレポリマーとの縮合透明ポリウレタン樹脂等の1種または2種以上を用いたものが好ましい。この樹脂中に高充填される極微粒子としては、SiO2、Al2O3、ZrO2、Ce2O3、SiO、SiOxNy、Si3N4等を挙げることができ、特にSiO2微粒子、SiOxNy微粒子等が好ましい。この極微粒子の平均1次粒径は、0.005〜1.0μm程度が好ましい。
これらの下地層の膜厚は、0.05〜10μm程度が好ましい。
本発明のシリカ膜は、オーバーコート層を用いることなく、直接カラーフィルター層、蛍光変換層等の上に形成することで、良好な平坦性を得ることができる。この場合、得られる表面粗さとしては、Rmaxが30nm以内である。
また、シリカ膜の発光光の透過率は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に80%以上であることが好ましい。透過率が低くなると、発光層からの発光自体が減衰され、発光素子として必要な輝度が得られなくなる傾向がある。
このほか、無機系の紫外線吸収性の微粒子(好ましくは酸化亜鉛(ZnO)微粒子)をシリカ膜中に含有させる場合は、これらが塗布液中に添加される。微粒子の大きさは、平均粒径で0.01〜0.5μmであることが好ましく、ポリシラザンの約25〜35vol%を含むことが好ましい。
ZnOはCdS等の無機半導体粒子と異なり、無公害で、かつ有機物系と比較して、各環境下での耐久性が安定である。このほか、有機物系の紫外線吸収剤として好ましいものもあり、このようなものとしては、反応型紫外線吸収剤とポリマーとを組合せたポリマー型のものが好ましい。
[有機発光素子]
発光素子構造体として好ましい有機発光構造体は、通常、第1の電極であるITO等のホール注入電極(陽電極)と、ホール注入輸送層、発光層、電子注入輸送層等の有機層、および電子注入電極(陰電極)が順次積層された構造となっている。また、その下地として、カラーフィルター層、蛍光変換層、オーバーコート層を有していてもよい。
カラーフィルター層には、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いればよいが、有機発光素子の発光する光に合わせてカラーフィルターの特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよい。このときカットする光は、緑の場合560nm以上の波長の光および480nm以下の波長の光であり、青の場合490nm以上の波長の光であり、赤の場合580nm以下の波長の光である。このようなカラーフィルターを用いて、NTSC標準、あるいは現行のCRTの色度座標に調整することが好ましい。このような色度座標は、一般的な色度座標測定器、例えばトプコン社製のBM−7、SR−1等を用いて測定できる。カラーフィルター層の厚さは0.5〜20μm程度とすればよい。
また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用いてカラーフィルターの代わりにしてもよい。
蛍光変換層は、発光素子の光を吸収し、蛍光変換層中の蛍光体から光を放出させることで、発光色の色変換を行うものである。組成としては、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成される。
蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高いものを用いればよく、発光波長域に吸収が強いことが好ましい。具体的には、蛍光スペクトルの発光極大波長λmaxが580〜630nmである蛍光物質が好ましい。実際には、レーザー用色素などが適しており、ローダミン系化合物、ペリレン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物(サブフタロシアニン等も含む)、ナフタロイミド系化合物、縮合環炭化水素系化合物、縮合複素環系化合物、スチリル系化合物等を用いればよい。
バインダーは、基本的には蛍光を消光しないような材料を選べばよく、フォトリソグラフィー、印刷等で微細なパターニングができるようなものが好ましい。また、陽電極であるITO、IZOの成膜時にダメージを受けないような材料が好ましい。
光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りない場合に用いるが、必要のない場合は用いなくてもよい。光吸収材料は、蛍光材料の蛍光を消光しないような材料を選べばよい。
このような蛍光変換フィルター層を用いることによって、CIE色度座標において好ましいx、y値が得られる。また、蛍光変換フィルター層の厚さは0.5〜20μm程度とすればよい。
オーバーコート層は、本発明では特に設ける必要はなく、直接カラーフィルター層、蛍光変換層上にシリカ膜を形成することにより、オーバーコート層の機能を兼用することができる。必要によりオーバーコート層を設ける場合、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂が好ましく、特に熱硬化型樹脂が硬化の際の熱によって有機層表面がより平坦化されるので好ましい。中でも、ポリシルセスキオキサン樹脂(ラダーシリコン樹脂)、アクリル樹脂が特に好ましい。樹脂は一種を用いても、二種以上を併用してもかまわない。オーバーコート層は、通常、基板、蛍光変換層および/またはカラーフィルター層上に塗布し、熱硬化または紫外線硬化して成膜する。通常の熱硬化型樹脂の硬化温度は140〜180℃程度である。紫外線硬化型樹脂の場合、通常、積算光量が1000〜10000mJとなるようにUV光を照射する。
また、液晶表示用カラーフィルターを転用する場合、その表面の粗さがAFMで測定してRmaxが30nm以下で、単発的であっても30nmを大きく超える様な凹凸欠陥は、僅かでも存在してはならない。そのような大きな突起を生じないように、先に述べてきた1μm以上の厚さの表面平坦化オーバーコート層を設けることも、“ブラックスポット”、“ショート”等画質劣化対策上有効である。
次に、本発明の発光素子として好ましい有機発光構造体について説明する。有機発光構造体は、図1に示したように、通常シリカ膜上に積層される。その構成の一例を示すと、透明電極である陽電極、ホール注入輸送層、発光層、電子注入輸送層、陰電極が順次積層された構造となっている。
本発明の有機発光構造体は、上記例に限らず、種々の構成とすることができ、例えば、電子注入・輸送層を省略し、あるいは発光層と一体としたり、ホール注入輸送層と発光層とを混合してもよい。また、発光層は2層以上あってもよい。
陰電極および陽電極は蒸着法やスパッタ法等により、発光層等の有機物層は真空蒸着等により成膜することができる。これらの膜は、それぞれ、必要に応じてマスク蒸着、または、膜形成後にエッチングするなどの方法でパターニングでき、これによって、所望の発光パターンを得ることができる。
次に、本発明の有機発光素子に設けられる有機物層について述べる。
この有機層には発光層が含まれる。発光層は、少なくとも発光機能に関与する1種類、または2種類以上の有機化合物薄膜の積層膜からなる。
発光層は、ホール(正孔)および電子の注入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合により励起子を生成させる機能を有する。発光層には、比較的電子的にニュートラルな化合物を用いることで、電子とホールを容易かつバランスよく注入・輸送することができる。
発光層は、必要により、狭義の発光層の他、さらにホール注入輸送層、電子注入輸送層等を有していても良い。
ホール注入輸送層は、ホール注入電極からのホールの注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送する機能および電子を妨げる機能を有するものであり、電子注入輸送層は、電子注入電極からの電子の注入を容易にする機能、電子を安定に輸送する機能およびホールを妨げる機能を有するものである。これらの層は、発光層に注入されるホールや電子を増大・閉じこめさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。
発光層の厚さ、ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送層の厚さは、特に制限されるものではなく、形成方法によっても異なるが、通常5〜500nm程度、特に10〜300nmとすることが好ましい。
ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光層の厚さと同程度または1/10〜10倍程度とすればよい。ホール/電子の注入層と輸送層とを分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は1nm以上とするのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さの上限は、通常、注入層で500nm程度、輸送層で500nm程度である。このような膜厚については、注入輸送層を2層設けるときも同じである。
有機発光素子の発光層には、発光機能を有する化合物である蛍光性物質を含有させる。このような蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−264692号公報に開示されているような化合物、例えばキナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールまたはその誘導体を配位子とする金属錯体色素などのキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体等が挙げられる。さらには、特開平8−12600号公報に記載のフェニルアントラセン誘導体、特開平8−12969号公報に記載のテトラアリールエテン誘導体等を用いることができる。
また、それ自体で発光が可能なホスト物質と組み合わせて使用することも好ましく、ドーパントとしての使用も好ましい。このような場合の発光層における化合物の含有量は0.01〜10体積%、さらには0.1〜5体積%であることが好ましい。特にルブレン系では、0.01〜20体積%が好ましい。ホスト物質と組み合わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上する。
ホスト物質としては、キノリノラト錯体が好ましく、さらには8−キノリノールまたはその誘導体を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このようなアルミニウム錯体としては、特開昭63−264692号、特開平3−255190号、特開平5−70773号、特開平5−258859号、特開平6−215874号等に開示されているものを挙げることができる。
具体的には、まず、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]等がある。
また、8−キノリノールまたはその誘導体のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であってもよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタ−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナフトラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III)等がある。
このほかのホスト物質としては、特開平8−12600号公報に記載のフェニルアントラセン誘導体や特開平8−12969号公報に記載のテトラアリールエテン誘導体なども好ましい。
発光層は電子輸送層を兼ねたものであってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。これらの蛍光性物質を蒸着すればよい。
また、発光層は、必要に応じて、少なくとも1種のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種の電子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ましく、さらにはこの混合層中にドーパントを含有させることが好ましい。このような混合層における化合物の含有量は、0.01〜20体積%、さらには0.1〜15体積%とすることが好ましい。
混合層では、キャリアのホッピング伝導パスができるため、各キャリアは極性的に有利な物質中を移動し、逆の極性のキャリア注入は起こりにくくなるため、有機化合物がダメージを受けにくくなり、素子寿命がのびるという利点がある。また、前述のドーパントをこのような混合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移行させることができるとともに、発光強度を高め、素子の安定性を向上させることもできる。
混合層に用いられるホール注入輸送性化合物および電子注入輸送性化合物は、各々、後述のホール注入輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の中から選択すればよい。
電子注入輸送性の化合物としては、キノリン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を用いることが好ましい。また、上記のフェニルアントラセン誘導体、テトラアリールエテン誘導体を用いるのも好ましい。
ホール注入輸送層用の化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、例えばトリフェニルジアミン誘導体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を用いるのが好ましい。
この場合の混合比は、それぞれのキャリア移動度とキャリア濃度によるが、一般的には、ホール注入輸送性化合物/電子注入輸送性化合物の質量比が、1/99〜99/1、さらに好ましくは10/90〜90/10、特に好ましくは20/80〜80/20程度となるようにすることが好ましい。
また、混合層の厚さは、分子層一層に相当する厚み以上で、有機化合物層の膜厚未満とすることが好ましい。具体的には1〜100nmとすることが好ましく、さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすることが好ましい。
また、混合層の形成方法としては、異なる蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもできる。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ましいが、場合によっては、化合物が島状に存在するものであってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質を蒸着するか、あるいは、樹脂バインダー中に分散させてコーティングすることにより、発光層を所定の厚さに形成する。
ホール注入輸送性化合物としては、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234681号公報、特開平5−239455号公報、特開平5−299174号公報、特開平7−126225号公報、特開平7−126226号公報、特開平8−100172号公報、EP0650955A1等に記載されている各種有機化合物を用いることができる。例えば、テトラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等である。これらの化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用するときは、別層にして積層したり、混合したりすればよい。
電子注入輸送性化合物は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等の8−キノリノールまたはその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができる。
発光層およびホール注入輸送層、電子注入輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから、真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.2μm以下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.2μmを超えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなければならなくなり、電荷の注入効率も著しく低下する。
真空蒸着の条件は特に限定されないが、10−4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/sec程度とすることが好ましい。また、真空中で連続して各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げるため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低くしたり、ダークスポットの発生・成長を抑制したりすることができる。
これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着することが好ましい。
本発明においては、各有機層を塗布法により形成してもよい。有機層を塗布法により形成することにより、より簡単に素子を形成することができ、生産効率の向上と、素子の低価格化を図ることができる。特にマイクログラビア方式等を用い、膜厚が薄く約30〜100nmのR,G,B各発光層を100μm幅程度のストライプ状に100μmピッチで塗り分け、基材も前述のフレキシブルバリアー性フィルムを用いて、ロール トゥ ロールで印刷するために精密な塗工精度制御を用いる方法が好ましい。
発光層に用いられる有機発光用の公知の高分子発光材料としては、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等を挙げることができ、より具体的にはポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)、ポリ[2,5−ビス[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニレン−アルト−1,4−フェニレン]ジブロマイド(PPP−NEt3+)、ポリ[2−(2′−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ(5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン)(MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス(ヘキシルオキシ−1,4−フェニレン)−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、ポリ[2−(2′−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](MEH−CN−PPV)及び、ポリ(ジオクチルフルオレン)(PDF)等が挙げられる。
あるいは、有機発光用の公知の高分子発光材料の前駆体として、例えば、ポリ(p−フェニレン)前駆体(Pre−PPP)、ポリ(p−フェニレンビニレン)前駆体(Pre−PPV)、ポリ(p−ナフタレンビニレン)前駆体(Pre−PNV)等を用いることができる。
有機発光用の公知の低分子発光材料と、公知の高分子材料、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカルバゾール(PVCz)等とを混合して用いてもよい。
また、必要に応じて粘度調整用の添加剤を用いてもよい。特に、発光層、正孔注入層を100nm以下の均一な薄膜印刷により形成する場合、前記発光性ポリマーを極めて低濃度に希釈する必要があり、転写パターンの流れ防止、版から基材への転写性改善のために有機発光の発光特性に影響を与えないで粘度や溶液の弾性率を高める微量の増粘剤やゲル化剤を添加剤として用いてもよい。
公知の高分子電荷輸送材料として、正孔輸送性材料としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
電子輸送性材料としてはポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
これら高分子材料を塗布法により形成する際に用いられる溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモエチルエーテル、グリセリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノン、1−プロパノール、オクタン、ノナン、デカン、キシレン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ニトロベンゼン等が挙げられる。
上記有機材料は、前記塗布溶媒にそれぞれの濃度が0.1〜5%(質量百分率)になるよう溶解されることが好ましい。塗布に関しては、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フレキソグラビア法などあらゆる溶液を用いる塗布法を用いることができる。塗布後、前記溶媒の乾操のため、素子をホットプレート等で加熱してもよい。加熱は、有機発光材料のTg(ガラス転移温度)以下の温度が好ましく、通常50〜80℃程度の温度であり、減圧下あるいは不活性雰囲気下の乾燥が好ましい。
有機層1層当たりの厚さは、塗布法によるときは、0.5〜1000nmが好ましく、より好ましくは10〜500nmである。また、真空蒸着法等の蒸着法によるときは、1〜500nm程度である。
陽電極(ホール注入電極)材料は、ホール注入層等へホールを効率よく注入することのできるものが好ましく、仕事関数4.5eV〜5.5eVの物質が好ましい。具体的には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)および酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主組成としたものが好ましい。これらの酸化物はその化学量論組成から多少偏倚していてもよい。In2O3に対するSnO2の混合比は、1〜20質量%、さらには5〜12質量%が好ましい。また、IZOでのIn2O3に対するZnOの混合比は、通常、12〜32質量%程度である。
ホール注入電極は、仕事関数を調整するため、酸化シリコン(SiO2)を含有していてもよい。酸化シリコン(SiO2)の含有量は、ITOに対するSiO2のmol比で0.5〜10%程度が好ましい。SiO2を含有することにより、ITOの仕事関数が増大する。
光を取り出す側の電極は、発光波長帯域、通常400〜700nm、特に各発光光に対する光透過率が50%以上、さらには80%以上、特に90%以上であることが好ましい。透過率が低くなりすぎると、発光層からの発光自体が減衰され、発光素子として必要な輝度を得難くなってくる。
電極の厚さは、50〜500nm、特に50〜300nmの範囲が好ましい。また、その上限は特に制限はないが、あまり厚いと透過率の低下や剥離などの心配が生じる。厚さが薄すぎると、十分な効果が得られず、製造時の膜強度等の点でも問題がある。
陰電極は、電子注入性を有する電極として必要に応じて下記のものを用いることができる。例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Sn、Zn、Zr等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金系、例えばAg・Mg(Ag:0.1〜50at%)、Al・Li(Li:0.01〜14at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・Ca(Ca:0.01〜20at%)等が挙げられる。
また、これらアルカリ金属の一価イオン(例えばLi,Na,K)、アルカリ土類金属の二価イオン(例えばPt,Zn)、三価イオン(例えばAl,In)は、酸素の錯体(例えばアセチルアセトン、酢酸、シュウ酸等)と比較的安定な錯体を作り、これらを溶液に溶解して塗布し、薄層の陰極を形成してもよい。
陰電極薄膜の厚さは、電子注入を十分行える一定以上の厚さとすれば良く、0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、特に1nm以上とすればよい。また、その上限値には特に制限はないが、通常膜厚は1〜500nm程度とすればよい。
さらに、素子の有機層や電極の劣化を防ぐために、素子を封止板等により封止することが好ましい。封止板は、湿気の浸入を防ぐために、接着性樹脂層を用いて、封止板を接着し密封する。封止ガスは、Ar、He、N2等の不活性ガス等が好ましい。また、この封止ガスの水分含有量は、100ppm以下、より好ましくは10ppm以下、特には1ppm以下であることが好ましい。この水分含有量に下限値は特にないが、通常0.1ppm程度である。
封止板の材料としては、好ましくは上記で挙げた基材の材料と同様なものである。封止板は、スペーサーを用いて高さを調整し、所望の高さに保持してもよい。スペーサーの材料としては、樹脂ビーズ、シリカビーズ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等が挙げられ、特にガラスビーズ等が好ましい。
なお、封止板に凹部を形成した場合には、スペーサーの好ましい大きさとしては、前記範囲でよいが、特に2〜8μmの範囲が好ましい。
さらに、その内部に乾燥剤、好ましくはCaH2を封入するとよい。
接着剤としては、安定した接着強度が保て、気密性が良好なものであれば特に限定されるものではないが、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を用いることが好ましい。
次に、実施例を比較例とともに示して本発明をより具体的に説明する。
実施例1
有機発光素子3の作製
図1に示すように、基材2として厚さ200μmの無色で全光線透過率90%以上の透明性を有し、Tg:79℃の耐熱性を有するポリテレフタレートを用いた。次に2官能のエポキシアクリレート(昭和高分子:VR−60−LAV)25質量%、ジエチレングリコール50質量%、酢酸エチル24質量%、シランカップリング剤1質量%からなる均一な混合溶液をスピンコーターで塗布し、80℃10分加熱乾燥後さらにUV照射で硬化させて2μmの樹脂層を形成した。つぎに、スパッタ装置の真空槽内に前記有機物層を形成したフィルムをセットし10−4Pa台まで真空引きし、放電ガスとして酸素と窒素の混合気体にアルゴンを分圧で0.5Pa導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始しSi3N4ターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開きフィルムへの酸窒化珪素層下層の形成を開始した。5nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。この条件で成膜した酸窒化珪素層上層の元素濃度比O/(O+N)をX線光電子分光分析(ESCA)で測定した結果、0.2であった。続いて、放電ガスとしてアルゴンを分圧で0.5Pa導入、放電ガスとして酸素と窒素の混合気体を導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始しSi3N4ターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開きフィルムへの酸窒化珪素層上層の形成を開始した。95nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。この条件で成膜した酸窒化珪素層上層の元素濃度比O/(O+N)をESCAで測定した結果0.3であった。真空槽内に大気を導入し酸窒化珪素層の形成された酸窒化珪素層形成フィルムを取り出した。
さらに、酸素プラズマ(2kW出力、基板温度200℃)で10分間アッシングした。この処理により、酸窒化珪素層の表面は、さらに清浄化され、かつより平坦で完全なa−SiO2パッシベーション層となる。
次に、ITO透明電極(ホール注入電極)を膜厚85nmで64ドット×7ラインの画素(一画素当たり100×100μm)を構成するよう成膜、パターニングした。そして、パターニングされたホール注入電極が形成された基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥した。その後、UV/O3洗浄を行った。
次いで、基板を成膜室に移動し、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、槽内を1×10−4Pa以下まで減圧した。そして、ホール注入層としてポリ(チオフェン−2,5−ジイル)を10nmの厚さに、ホール輸送層兼黄色発光層としてTPDにルブレンを1質量%の割合でドープしたものを共蒸着で5nmの膜厚に成膜した。濃度は発光色の色バランスより決定すればよく、この後成膜する青色発光層の光強度と波長スペクトルにより左右される。さらに青色発光層としても4′−ビス[(1,2,2−トリフェニル)エテニル]ビフェニルを50nm、電子輸送層としてAlq3を10nm成摸した。
次いで、AlLi(Li:7at%)を1nmの厚さに蒸着し、Al電極層を200nmの厚さに成膜し、有機発光素体4を形成した。有機発光素子として封止する前に乾燥剤(CaH2)をシリコンゴムに混合して固定化したものを封入し、最後に厚さ100μmのPCTFEフィルムにEVAをコートした封止フィルム8にて封止し、有機発光素子3を得た。
使用した化合物は以下の通り
シランカップリング剤:(CH3O)Si(CH2)3NH2
TPD:N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジアミン
ルブレン:5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン
PCTFE:ポリクロロトリフルオロエチレン
EVA:エチレン−ビニルアセテートコポリマー
有機発光素子1、2及び4〜9の作製
有機発光素子3と同様にして、酸窒化珪素層下層と上層を形成する際、放電ガスの酸素と窒素の分圧を変えることにより、表1に示す元素濃度比O/(O+N)を有する酸窒化珪素層形成フィルムを得た。それぞれの酸窒化珪素層形成フィルムに対して、次工程以後は有機発光素子3と同様の工程を経て、有機発光素子4〜8を得た。
なお、有機発光素子2及び9は酸窒化珪素層下層のみを形成し、有機発光素子2の放電ガスは酸素とアルゴンのみのガスを用いた。また、有機発光素子1の基材は、酸窒化珪素層が形成されていない。
上記作製した各有機発光素子に直流電圧を印加し、50mA/cm2の一定電流密度で連続駆動させ輝度半減時間とダークスポットを評価し結果を表1に示す。
表1から、本発明の構成は、輝度半減時間が大幅に伸び、ダークスポットも大幅に抑制されていることがわかる。
実施例2
有機発光素子12の作製
基材2として厚さ100μmの無色で全光線透過率90%以上の透明性を有し、Tg:79℃の耐熱性を有するポリテレフタレートを用いた。次に2官能のエポキシアクリレート(昭和高分子:VR−60−LAV)25質量%、ジエチレングリコール50質量%、酢酸エチル24質量%、実施例1で用いたシランカップリング剤1質量%からなる均一な混合溶液をスピンコーターで塗布し、80℃10分加熱乾燥後さらにUV照射で硬化させて100μmの樹脂層を形成した。次に、この片面にポリシラザン部分メチル変性体〔構造体中の水素10at%置換品〕のジブチルエーテル(DBE)20質量%溶液(L710、東燃(株)製、Pd触媒含有品)を窒素(80%)、酸素(20%)の比率の混合気体でバブリングし、ディップコート法にてコートし、加熱して乾燥した後、エキシマランプ60mw/cm2にて処理を行い、基材に緻密な厚さ約150nmの微少のメチル基を含む酸窒化珪素層得た。成膜した酸窒化珪素層下層の元素濃度比O/(O+N)をESCAで測定した結果、0.2であった。更にこの上に、上記と同様なペルヒドロポリシラザン(Mn=1000)のキシレン溶液(濃度20質量%:東燃(株)製L710、数百nmのPd触媒含有品)の塗布液に、窒素(80%)、酸素(20%)の比率の混合気体でバブリングした後、ディップコート法にてコートし、熱して乾燥した後、エキシマランプ60mw/cm2にて処理を行い、緻密な厚さ約100nmの微少の酸窒化珪素膜層を有する酸窒化珪素層形成フィルムを得た。酸窒化珪素層上層の元素濃度比O/(O+N)をESCAで測定した結果0.3であった。
次工程以後は有機発光素子3と同様の工程を経て、有機発光素子12を得た。
有機発光素子11、13〜18
有機発光素子12と同様にして、酸窒化珪素層下層と上層を形成する際、バブリングガスの酸素と窒素の混合比を変えることにより、表2に示す元素濃度比O/(O+N)を有する酸窒化珪素層形成フィルムを得た。それぞれの酸窒化珪素層形成フィルムに対して、次工程以後は有機発光素子3と同様の工程を経て、有機発光素子13〜18を得た。
なお、有機発光素子11及び18は酸窒化珪素層下層のみを形成し、有機発光素子11のバブリングガスは酸素のみのガスを用いた。
上記作製した各有機発光素子に対して実施例1と同様に、輝度半減時間とダークスポットを評価し結果を表2に示す。
表2から、本発明の有機発光素子は、輝度半減時間が大幅に伸び、ダークスポットも大幅に抑制されていることがわかる。