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JP5212124B2 - 厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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JP5212124B2 JP2009003832A JP2009003832A JP5212124B2 JP 5212124 B2 JP5212124 B2 JP 5212124B2 JP 2009003832 A JP2009003832 A JP 2009003832A JP 2009003832 A JP2009003832 A JP 2009003832A JP 5212124 B2 JP5212124 B2 JP 5212124B2
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Description

本発明は、例えば、造船などに用いられる厚鋼板およびその製造方法に関する。
近年の船体大型化にともない、船体向け鋼板の極厚化が進んでいる。船体向け厚鋼板には、作業能率の向上、施工コスト低減などを理由として、1パスで溶接を完了するべく、大入熱溶接を適用することが求められている。特に、板厚50mmを超える鋼板の場合には、入熱量が400kJ/cmを上回る場合がある。一方で、船体向け鋼板の高強度化の要望も高まっており、部位によっては600MPa以上の高強度鋼の適用も進んでいる。
600MPa以上の高強度極厚鋼材を大入熱溶接に適用する試みは、種々検討されている。しかしながら、従来の研究においては、溶接熱影響部(以下、「HAZ」ともいう。)の靭性を安定化させることを主体に検討されており、大入熱溶接後、実構造物として600MPa以上の引張強度を確保できることを検討したものではない。すなわち、溶接熱影響部靭性改善のために炭素当量を低めに設定しているが、炭素当量が低い場合には、大入熱溶接時にHAZ外層部において顕著な軟化が発生する。このため、母材強度が600MPa以上であっても、溶接後の構造物として600MPaを確保できるものではない。
さらに、船体向け鋼板では、近年、全厚での脆性亀裂伝播停止特性(アレスト特性)の確保が求められているが。しかし、靭性の評価は、板厚の1/4位置における試験結果に基づくものにとどまっており、構造物としてその性能が求められる板厚中心部における安全性を確保したものではない。
特許文献1には、大入熱溶接熱影響部靭性に優れた厚手高強度鋼板が提案されている。しかしながら、この文献に記載されている鋼板は、安定して600MPa以上という高い継手強度が得られるものではない。
特許文献2には、引張強度が570MPaを超える大入熱溶接特性に優れた鋼材が提案されている。しかしながら、この文献では、鋼板の板厚中心部までの靭性確保については言及されておらず、しかも、継手靭性評価温度が明示されておらず、この文献に記載された鋼板の船体用鋼板の低温靭性は不明である。
特許文献3では、400kJ/cmを超える大入熱溶接の溶接熱影響部靭性に優れた鋼板が提案されている。しかしながら、この文献に記載されている鋼板は、安定して600MPa以上という高い継手強度が得られるものではなく、この文献では、鋼板の板厚中央部の靭性については言及されていない。
特開2005−307261号公報 特開2002−285279号公報 特開2002−256379号公報
本発明は、板厚が50mm以上であり、かつ引張強度が600MPa以上である極厚鋼板において、鋼材の板厚中心部における低温靭性を安定化させるとともに、400kJ/cm以上の大入熱溶接を適用しても、低温での溶接熱影響部靭性と600MPa以上の高強度を両立させることを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく鋭意研究を重ね、以下の知見を得た。
(a)目標とする鋼材強度および大入熱溶接継手における板厚中心部の靭性を確保するためには、各合金元素の含有量を特定するだけでは足りず、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、MoおよびBの含有量のバランスを調整することが重要である。即ち、これらの元素の含有量のバランスが悪い場合には、大入熱溶接熱影響部において微細フェライトの生成が抑制され、ベイナイト組織主体となり、溶接熱影響部の低温靭性の確保が困難となるか、鋼材強度の確保が困難となる。このため、上記の元素の含有量のバランスを調整するための指標が必要である。
(b)鋼材の強度を確保するためには、硬さ(通常は、板厚表面部で評価する。)を一定以上にすることが必要である。しかし、極厚鋼板では圧延過程において板厚中央部の結晶粒微細化を進行させにくいため、鋼板の組織が粗大なベイナイト単相組織になると、板厚中央部における靭性を劣化させる。また、靭性を安定化するためには微細フェライト組織を分散させる必要がある。このため、鋼板の板厚中央部における硬さを評価する必要がある。
(c)各合金元素の含有量の特定、各元素の含有量のバランス調整および板厚中心部硬さの抑制を行う場合には、大入熱溶接継手においてHAZ外層部にて顕著な軟化が発生するため、継手強度の確保が困難となることがある。大入熱溶接継手の継手強度を600MPa以上にするためには鋼材表面の硬さを250〜330にコントロールする必要がある。これにより、鋼板表裏面の硬化層の影響で、鋼板全厚としては安定した強度確保が可能となり、さらに鋼板表面の靭性の劣化は発生しない。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、下記(A)および(B)に示す厚鋼板および下記(C)および(D)に示す厚鋼板の製造方法を要旨とする。
(A)質量%で、
C :0.02〜0.07%、
Si:0.1〜0.5%、
Mn:1.0〜2.0%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Ni:0.1〜1.0%、
sol.Al:0.005〜0.08%、
Ti:0.003〜0.02%、
Nb:0.005〜0.03%、
N:0.003〜0.007%、
B:0.0002〜0.0020%および
O:0.003%以下を含有し、
さらに、
Cu:0.1〜0.6%、
Cr:0.05〜0.60%、
Mo:0.02〜0.10%および
V:0.01〜0.05%から選択される一種以上の元素を含有し、
残部が鉄および不純物からなる厚鋼板であって、
TiおよびNの含有量の比(Ti/N)が1.0〜3.0の範囲内にあり、
下記(1)式から求められるK値が150〜250であり、
鋼板表面のビッカース硬度が250〜330であり、かつ
鋼板の板厚中央部のビッカース硬度が230以下である厚鋼板。
Figure 0005212124
但し、上記(1)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
(B)質量%で、さらに
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下および
sol.Zr:0.01%以下から選択される一種以上を含有する上記(1)の厚鋼板。
(C)上記(A)または(B)の化学組成を有するスラブに下記の工程(1)〜(3)を順次実施することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
(1)1000〜1180℃の温度に加熱する加熱工程
(2)850℃以下の温度にて圧下率45%以上の圧延を実施し、720℃以上の温度にて圧延を完了する圧延工程
(3)680℃以上の温度から水冷を開始し、800〜500℃間の鋼板表面の平均冷却速度が30℃/秒以上とし、表面温度が350℃以下にて水冷を停止する冷却工程
(D)冷却工程の後に、さらに450℃以下の温度に再加熱する工程を実施する上記(C)の厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、板厚が50mm以上の極厚鋼板において、鋼材の板厚中心部における低温靭性を安定化させるとともに、400kJ/cm以上の大入熱溶接を適用しても、低温での溶接熱影響部靭性と600MPa以上の高強度を両立させることができる。
以下、本発明に係る厚鋼板について説明する。なお、各元素についての「%」は「質量%」を意味する。
C :0.02〜0.10%
Cは、鋼材の強度を向上させるとともに、Nb、V等の添加時に組織微細化の効果を生じさせる元素である。これらの効果は、その含有量が0.02%未満では十分ではない。しかし、Cの含有量が過多の場合、溶接部にM−Aと呼ばれる硬化組織を生成して溶接熱影響部靱性を悪化させるとともに、母材の靱性および溶接性に悪影響を及ぼす。従って、Cの含有量は0.02〜0.10%以下とした。C含有量の好ましい下限は0.03%であり、好ましい上限は0.08%である。
Si:0.1〜0.5%
Siは、溶鋼の予備脱酸に有効な元素であるとともに、母材強度の上昇に有効な元素である。これらの効果は、その含有量が0.1%未満では不十分である。しかし、Siは、セメンタイト中に固溶しないため、その含有量が過剰になると、未変態オーステナイト粒がフェライト粒とセメンタイトに分解するのを阻害し、島状マルテンサイトの生成を助長する。従って、Siの含有量は0.1〜0.5%とする。Si含有量の好ましい上限は0.3%である。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは、鋼材の強度を確保するために必要な元素であるとともに、脱酸剤として有効な元素である。このため、Mnの含有量は1.0%以上とする必要がある。しかし、Mnの過剰な含有は、焼入れ性を過剰に増加させ、溶接性および溶接熱影響部靱性を劣化させる。特に、Mnの含有量が2.0%を超えると、中心偏析が顕著となる。従って、Mnの含有量は1.0〜2.0%とする。Mn含有量の好ましい下限は1.4%であり、好ましい上限は1.8%である。
P:0.02%以下
Pは、鋼に不可避的に含有される不純物元素であり、粒界偏析を助長して、溶接熱影響部における粒界割れを生じさせる。母材靱性、溶接金属部と溶接熱影響部の靱性低下およびスラブの中心偏析を増大させないため、その含有量は0.02%以下に制限する。Pは0.015%以下に制限するのが好ましい。
S:0.01%以下
Sも、鋼に不可避的に含有される不純物元素である。多量に存在する場合、溶接割れ起点となるMnS単体の析出物を生成する。母材靱性、溶接金属部と溶接熱影響部の靱性低下およびスラブの中心偏析を増大させないため、その含有量は0.01%以下に制限する。Sは0.005%以下に制限するのが好ましい。
Ni:0.1〜1.0%
Niは、鋼材の強度および靱性を高め、さらに溶接熱影響部の靱性を高める効果を有する元素である。しかし、その含有量が0.1%未満ではそれらの効果がなく、また、その含有量が1.0%を超えるとコストに見合うだけの効果を得ることができない。このため、Niの含有量は0.1〜1.0%とする。Ni含有量の好ましい下限は0.2%であり、好ましい上限は0.8%である。
sol.Al:0.005〜0.08%
Alは、溶鋼の予備脱酸に有効な元素であるが、過剰な含有は、未変態オーステナイト粒がフェライト粒とセメンタイトに分解するのを阻害するとともに、島状マルテンサイトの生成を助長して溶接熱影響部の靭性を低下させる。このため、Alの含有量は0.005〜0.08%とする。Al含有量の好ましい下限は0.007%であり、好ましい上限は0.05%である。なお、本発明のAl含有量とは、酸可溶Al(所謂「sol.Al」)を指す。
Ti:0.003〜0.02%
Tiは、窒化物を生成して結晶粒の粗大化を抑制するとともに、変態組織を微細化する作用を有する。しかし、その含有量が0.003%未満では前記作用を発揮せず、また、その含有量が0.02%を超えると、母材靱性および溶接部靱性に悪影響を及ぼす。このため、Tiの含有量は0.003〜0.02%とする。Ti含有量の好ましい下限は0.006%であり、好ましい上限は0.015%である。
Nb:0.005〜0.03%
Nbは、圧延によって加工を受けた未再結晶オーステナイト粒の回復及び再結晶化を抑制する効果を有しており、母材靱性の確保に有効である。しかし、その含有量が0.005%未満では前記作用を発揮せず、また、その含有量が0.03%を超える場合には母材靱性および溶接部靱性に悪影響を及ぼす。このため、Nbの含有量は0.005〜0.03%とする。Nb含有量の好ましい下限は0.007%であり、好ましい上限は0.02%である。
N:0.003〜0.007%
Nは、窒化物を形成することで組織の細粒化に寄与する。この効果を得るために0.003%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.007%を超えてNを含有させると、窒化物の凝集を通じて靭性を劣化させる。このため、Nの含有量は0.003〜0.007%とする。N含有量の好ましい下限は0.004%であり、好ましい上限は0.006%である。
B:0.0002〜0.0020%
Bは、焼入性を改善するのに有効な元素であり、鋼材の強度を確保するのに重要である。さらに溶接熱影響部において粗大な粒界フェライトの生成を抑制することで、溶接熱影響部の靭性を改善できる元素である。しかし、その含有量が0.0002%未満では前記作用を発揮せず、また、0.0020%を超えて含有させると、母材靱性および溶接部靱性に悪影響を及ぼす。このため、Bの含有量は0.0002〜0.0020%とする。B含有量の好ましい下限は0.001%であり、好ましい上限は0.0018%である。
O:0.003%以下
O(酸素)は、鋼に不可避的に含有される不純物元素である。多量に存在すると清浄度の劣化が著しくなるため、母材、溶接金属部および溶接熱影響部ともに実用的な靱性確保が困難となる。そこで、Oの含有量は0.003%以下に制限する。O含有量は、0.002%以下に制限するのが好ましい。
本発明の厚鋼板では、鋼板の強度を向上させる目的で、Cu、Cr、MoおよびVから選択される一種以上の元素を含有させる。以下、各元素の限定理由を述べる。
Cu:0.1〜0.6%
Cuは、鋼板の強度を高める効果があるが、含有量が高くなると溶接高温割れ感受性が高くなり、予熱などの溶接施工が複雑になる。このため、その含有量は0.1〜0.6%とする。好ましく0.2%であり、好ましい上限は0.5%である。
Cr:0.05〜0.60%、
Crは、鋼材の焼入れ性を増し、強度確保に有効であるが、その含有量が過剰な場合には、溶接金属部および溶接熱影響部を硬化させて、溶接低温割れ感受性を増大させる傾向にある。このため、その含有量は0.05〜0.60%とする。Cr含有量の好ましい下限は0.07%であり、好ましい上限は0.40%である。
Mo:0.02〜0.10%
Moは、鋼材の焼入れ性を増し、強度確保に有効であるが、その含有量が過剰な場合には、溶接金属部および溶接熱影響部を硬化させて、溶接低温割れ感受性を増大させる傾向にある。このため、その含有量は0.02〜0.10%とする。Mo含有量の好ましい下限は0.03%であり、好ましい上限は0.05%である。
V:0.01〜0.05%
Vは、炭化物および窒化物を形成することにより、鋼材の強度確保に有効であるが、その含有量が過剰な場合には、母材靱性および溶接部靱性に悪影響を及ぼす。このため、その含有量は0.01〜0.05%とする。V含有量の好ましい下限は0.02%である。
なお、靭性の低下を防止する観点から、Cu、Cr、MoおよびVの含有量は、Cu/20+Cr/20+Mo/15+V≦0.08%を満足することが好ましい。
本発明の厚鋼板は、上記の各元素を含有し、残部は鉄および不純物からなるものである。なお、不純物とは、原料鉱石、スクラップ等から混入する不可避的な成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
ただし、TiおよびNの含有量を上記の範囲に制限しても、TiNとして結合出来ない固溶NまたはTiが過剰な場合には、大入熱溶接における溶接熱影響部の靭性安定化が不十分となることがあるため、TiおよびNの含有量比(Ti/N)を調整するのが重要である。
TiおよびNの含有量の比(Ti/N):1.0〜3.0
上記の通り、溶接熱影響部の靭性を安定化するためには、TiおよびNの含有量比(Ti/N)を調整することが必要である。ここで、Ti/Nが1.0未満の場合は、TiNとして結合できない固溶Nが増加して、溶接熱影響部の靭性を劣化させる。一方、Ti/Nが3.0を超える場合には、TiNとして結合できないTiが粗大な炭化物を形成して、溶接熱影響部の靭性を劣化させる。このため、Ti/Nの質量比は1.0〜3.0とする。
本発明の厚鋼板は、低温靭性を向上させる目的で、上記の化学組成に加えて更に、Ca、MgおよびZrから選択される一種以上を含有させることができる。
Ca、MgおよびZrは、粒内フェライトの析出核となる酸化物および硫化物を生成する元素である。また、これらの元素は、硫化物の形態を制御して、低温靱性を向上させる効果を有している。これらの効果が顕著となるのは、Caは0.0005%以上、Mgは0.0001%以上、Zrは0.0001%以上の場合である。一方、Caは0.005%、Mgは0.005%、Zrは0.01%をそれぞれ超えると、粗大介在物またはクラスターを生成して鋼の清浄度を劣化させるおそれがある。従って、これらの元素から選択される一種以上を含有させる場合の含有量は、それぞれCaは0.0005〜0.005%、Mgは0.0001〜0.005%、Zrは0.0001〜0.01%とするのが好ましい。なお、本発明のZr含有量とは、酸可溶Zr(所謂「sol.Zr」)を指す。また、Ca、MgおよびZrの合計量は0.015%以下とすることが好ましい。
下記(1)式から求められるK値:150〜250
Figure 0005212124
但し、上記(1)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
K値は、鋼板の強度および靭性、ならびに、大入熱継手の強度および靭性を安定化させるために制御することが必要な指標である。このK値が150未満の場合は、鋼材の板厚中心部における靭性を維持しようとすると、強度を上昇させるのが困難となり、さらに鋼板表面における硬度を上昇させることができなくなる。一方、K値が250を超える場合には、鋼材の板厚中心部における靭性、鋼板表面における靭性、大入熱継手靭性の改善が難しい。従って、上記のK値は150〜250の範囲に調整することとする。
鋼板表面のビッカース硬度:250〜330
大入熱溶接部の靭性改善を指向した材質では、鋼材の焼入性を低めに設定する。しかし、このような材質において、大入熱溶接を適用した場合、HAZ外層部における軟化が生じ、継手の強度低下が問題となる。これは、引張強度600MPa以上の高強度を有する厚鋼板において大きな問題である。そこで、鋼板表面の硬度をビッカース硬さで250〜330に調整することが必要である。これにより、表裏面において変形を拘束することにより、大入熱溶接継手においても充分な継手強度確保が可能となり、鋼板表面の靭性も損なわない。よって、鋼板表面のビッカース硬度は250〜330とする。
鋼板の板厚中央部のビッカース硬度:230以下
鋼板表面の硬度を上昇させることは、靭性の低下を招く。この問題は、特に鋼板の板厚中央部において顕在化する。すなわち、鋼板の板厚中央部において靭性を改善するのが困難となる。このため、鋼板の変形能を向上させる必要があり、鋼板の板厚中央部における硬さを制限する必要がある。従って、鋼板の板厚中央部におけるビッカース硬度は230以下とする。なお、板厚中央部とは、鋼板の板厚1/2t部を意味する。
以下、本発明に係る厚鋼板の製造方法について説明する。
製鋼工程:
本発明の厚鋼板の製造に当たって、製鋼工程については、特に制約はないが、コスト低減の観点より、連続鋳造法にてスラブを作製するのが好ましい。このとき、板厚中心位置における介在物制御のため、連続鋳造過程においては溶鋼の温度を過度に高くせず、溶鋼組成から決まる凝固温度に対し、その差が50℃以内になるように管理するのが好ましい。これに加え、凝固直前の電磁攪拌、凝固時の圧下を行うことが好ましい。
加熱工程:
加熱工程においては、スラブを1000〜1180℃の温度に加熱することが必要である。スラブの加熱温度が1000℃未満では、後の圧延工程における製造条件を変更するだけで充分な強度を得ることができなくなる。一方、スラブの加熱温度が1180℃を超える場合には、オーステナイト粒を細粒かつ整粒に保つことができなくなり、その後の圧延においてもオーステナイト粒を細粒かつ整粒にすることはできない。従って、スラブの加熱温度は1000〜1180℃とする。
圧延工程:
加熱されたスラブは、熱間圧延される。熱間圧延は、850℃以下の温度で圧下率45%以上の圧延を実施する必要がある。これは、850℃以下の未再結晶温度での圧下率を充分に確保することで、セル状転位組織が形成され、微細なベイナイト組織が生成するからである。強度と靭性の両立には微細なベイナイト組織の形成が必要であるため、この圧延は720℃以上で完了させる必要がある。圧延開始温度および仕上げ温度が720℃より低くなると、フェライトの析出が顕著となり、細ベイナイト組織分率が低下するため、目標の強度、靭性を満足できない。従って、圧延工程は、850℃以下の温度にて圧下率45%以上の圧延を実施し、720℃以上の温度にて圧延を完了させることとする。なお、圧延完了温度は750℃以上とするのが好ましい。
冷却工程:
上記圧延の後、680℃以上の温度から水冷を開始し、500℃までの鋼板表面の平均冷却速度を30℃/秒以上とし、表面温度が350℃以下にて水冷を停止する冷却工程を備える必要がある。これは、鋼板表面にて靭性に優れた硬化層を生成させるためであり、かつ熱伝導により鋼板板厚中心部において十分な冷却速度を確保させ靭性を安定化させるためである。なお、冷却開始温度は730℃以下であるのが好ましい。また、水冷開始から500℃までの鋼板表面の平均冷却速度は150℃/sとするのが好ましい。
再加熱工程:
冷却工程後の厚鋼板には、その後、更に、450℃以下の温度に再加熱する工程、すなわち、焼戻しを実施することができる。これは、鋼板表面における硬化層の硬度低下を最小限にとどめつつ、焼戻し処理によって靭性を安定化するためである。再加熱温度の好ましい下限は300℃であり、好ましい上限は400℃である。再加熱工程の均熱保持時間は60分以上であることが好ましい。
なお、加熱工程における温度は、炉内雰囲気温度、圧延工程および水冷工程における温度は、鋼板表層温度、再加熱工程における温度は、炉内雰囲気温度をそれぞれ意味する。
まず、表1および表2に示す化学成分を有する板厚が300mmであるスラブを連続鋳造法にて作製した。ここで、板厚中心位置の介在物制御の観点より、連続鋳造過程においては、溶鋼の温度を過度に高くせず、溶鋼組成から決まる凝固温度に対し、その差が50℃以内になるように管理し、さらに凝固直前の電磁攪拌、凝固時の圧下を行った。
Figure 0005212124
Figure 0005212124
得られたスラブから表3に示す条件で厚鋼板を作製し、下記の条件で各種性能を調査した。その結果を表4に示す。
<ビッカース硬度>
JISに準拠して、10x10mmの2mmVノッチ試験片を圧延方向と平行(鋼板表面)、板厚1/2t部(板厚中央部)より採取し、−60℃における特性を評価した。
<引張試験>
JISに準拠し、平行部14mmφの引張試験片を圧延方向に直角方向の板厚中央より採取し、引張試験を実施した。
続いて、20°V開先に加工した鋼板について、1パスの縦向き溶接であるエレクトロガスアーク溶接(EGW)によって溶接継手を作製した。溶接材料は神戸製鋼所製DWS-1LGを使用した。
<継手靭性>
上記溶接継手から板厚2mm下の位置よりボンド部ノッチの試験片を採取し、−40℃での試験に供した。
<継手強度>
JISに準拠し、上記溶接継手から全厚-25mm幅、平行部=溶接金属幅+12mmの試験片を採取し、引張試験に供した。
Figure 0005212124
Figure 0005212124
表4に示すように、本発明で規定される化学組成の範囲を満足しない比較例1〜11では、母材のYS、TSおよび低温靭性、ならびに、溶接継手部の低温靭性のうちの一つ以上の性能が劣っていた。また、本発明で規定される化学組成を満足するものの、製造条件を満たさないため、硬度が本発明で規定される範囲を外れた比較例13〜17では、溶接継手部の強度が600MPaに満たなかった。
本発明によれば、板厚が50mm以上の極厚鋼板において、鋼材の板厚中心部における低温靭性を安定化させるとともに、400kJ/cm以上の大入熱溶接を適用しても、低温での溶接熱影響部靭性と600MPa以上の高強度を両立させることができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.02〜0.07%、
    Si:0.1〜0.5%、
    Mn:1.0〜2.0%、
    P:0.02%以下、
    S:0.01%以下、
    Ni:0.1〜1.0%、
    sol.Al:0.005〜0.08%、
    Ti:0.003〜0.02%、
    Nb:0.005〜0.03%、
    N:0.003〜0.007%、
    B:0.0002〜0.0020%および
    O:0.003%以下を含有し、
    さらに、
    Cu:0.1〜0.6%、
    Cr:0.05〜0.60%、
    Mo:0.02〜0.10%および
    V:0.01〜0.05%から選択される一種以上の元素を含有し、
    残部が鉄および不純物からなる厚鋼板であって、
    TiおよびNの含有量の比(Ti/N)が1.0〜3.0の範囲内にあり、
    下記(1)式から求められるK値が150〜250であり、
    鋼板表面のビッカース硬度が250〜330であり、かつ
    鋼板の板厚中央部のビッカース硬度が230以下であることを特徴とする厚鋼板。
    Figure 0005212124
    但し、上記(1)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
  2. 質量%で、さらに
    Ca:0.005%以下、
    Mg:0.005%以下および
    sol.Zr:0.01%以下から選択される一種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の化学組成を有するスラブに下記の工程(1)〜(3)を順次実施することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
    (1)1000〜1180℃の温度に加熱する加熱工程
    (2)850℃以下の温度にて圧下率45%以上の圧延を実施し、720℃以上の温度にて圧延を完了する圧延工程
    (3)680℃以上の温度から水冷を開始し、500℃までの鋼板表面の平均冷却速度を30℃/秒以上とし、表面温度が350℃以下にて水冷を停止する冷却工程
  4. 冷却工程の後に、さらに450℃以下の温度に再加熱する工程を実施することを特徴とする請求項3に記載の厚鋼板の製造方法。
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