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JP5207150B2 - 多孔質中空糸膜およびタンパク質含有液処理用多孔質中空糸膜 - Google Patents

多孔質中空糸膜およびタンパク質含有液処理用多孔質中空糸膜 Download PDF

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Description

本発明は、タンパク質溶液などの水性流体に含まれるウィルス等の微粒子を分離するのに適した多孔質中空糸膜に関する。詳しくは、好ましくは疎水性高分子と親水性高分子からなり、濾過下流側表面がドット状またはスリット状の開孔を有し、濾過上流側表面が網目構造または微粒子集合体構造からなり、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造からなり、かつ膜厚部分が実質的にマクロボイドを持たない構造からなり、純水の透過速度が10〜300L/(h・m2・bar)であり、0.1重量%のウシγ-グロブリン溶液の透過速度が純水の透過速度の30〜100%であることを特徴とし、タンパクなどの成分を含む水性流体からウィルス等の微粒子を分離するのに好適な多孔質中空糸膜に関するものである。
また、好ましくは疎水性高分子と親水性高分子からなり、濾過下流側表面がドット状またはスリット状の開孔を有し、濾過上流側表面が網目構造または微粒子集合体構造からなり、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造からなり、かつ膜厚部分が実質的にマクロボイドを持たない構造からなり、純水の透過速度が10〜300L/(h・m2・bar)であり、ウシγ-グロブリンの0.1重量%-20mmol/Lリン酸緩衝液溶液の透過速度がウシγ-グロブリンの0.1重量%-リン酸緩衝生理食塩水溶液の透過速度の30〜100%であることを特徴とするタンパク質含有液処理用多孔質中空糸膜に関するものである。
水性流体の処理を目的とした中空糸膜は、精密濾過、限外濾過などの工業用途や、血液透析、血液濾過、血液透析濾過などの医療用途に広く利用されている。特に近年、バイオ医薬品や血液製剤の製造工程において、有用成分であるタンパク質の溶液からウィルスなどの病原性物質を除去し、安全性を高める技術が求められている。
非特許文献1によると、血漿分画製剤のウィルス除去・不活化工程に関しては、二つ以上の異なるウィルス不活化および除去工程に取り組むことが望ましいとされている。非特許文献2の記載によれば目標値としての達成すべきLRVを4程度とする、とある。さらに、非特許文献3では『特にウィルス除去・不活化工程に関して、本邦では、「血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドラインについて」医薬発第1047号(平成11年8月30日)のなかで、「二つ以上の異なるウイルス不活化及び除去工程について検討することが望ましい」と明記されており、また特定のウイルスに対しては製造工程が持つウイルスクリアランス指数の合計(総ウイルスクリアランス指数)9以上が要求される。』との記載がある。なお、上記LRVとは非特許文献1で次のように示されているウィルスクリアランス指数Rとほぼ同義である。
ウィルスクリアランス指数R = log ((V1×T1)/(V2×T2))
V1 工程処理前の容量 T1 工程処理前のウィルス力価
V2 工程処理後の容量 T2 工程処理後のウィルス力価
ウィルス除去・不活化法は、加熱処理、ガンマ線や紫外線照射などの光学的処理、低pH処理などの化学処理、エタノール分画法や硫酸アンモニウム分画法などの沈殿分画、膜濾過による除去などがあるが、タンパク質溶液からのウィルス除去では、タンパク質の変性を招くことのない膜濾過法が注目されている。
一方、バイオ医薬品や血液製剤の製造工程においては、生産性の観点から、有用成分であるタンパク質が効率よく透過して回収されなければならない。ところが、分離除去の対象がパルボウィルスなど小径のウィルスである場合には特に、ウィルスの除去特性と有用タンパク質の透過特性を同時に満足するのは困難であった。
特許文献1では、特定の最大孔径を有し、単量体の占める割合が80wt%以上である3wt%ウシ免疫グロブリンを0.3MPaで低圧濾過した時の、濾過開始時から5分間の平均透過速度(グロブリン透過速度A)と、濾過開始後55分経過時から5分間の平均透過速度(グロブリン透過速度B)、最大孔径の関係をパラメータ化した親水性微多孔質膜が開示されている。この膜の構成要件は、次のとおりである。
(1)最大孔径10〜100nm
(2)グロブリン透過速度A>0.0015×最大孔径(nm)2.75
(3)グロブリン透過速度B/グロブリン透過速度A>0.2
ここで、(1)の要件は、明細書第3ページ第21行〜第27行に記載されているように、感染性ウィルス除去に必要とされる孔径を記載したにすぎない。(2)の要件は、微細孔の最大孔径から計算されるある値よりもグロブリン透過速度Aが大きいことを求めており、タンパク溶液からのウィルス除去を目的とする膜においては、タンパク溶液の透過速度は大きいほうが好ましいのは、自明であるから、目標特性を記載したに過ぎない。(3)の要件は、タンパク溶液の透過速度が経時的に低下しないことを求めており、これもまた、タンパク溶液からのウィルス除去を目的とする膜において求められる目標特性の記載に過ぎない。その他、ブタパルボウィルスに対する対数除去率が3以上である親水性微多孔膜、単量体の占める割合が80wt%以上である3wt%ウシ免疫グロブリンを0.3MPaで低圧濾過した時の、濾過開始時から3時間の積算透過量が50リットル/m2以上である親水性微多孔膜などが下位請求項に記載されているが、これらはウィルスが効率的に除去され、タンパク溶液の透過量が高いという、タンパク溶液からのウィルス除去を目的とする膜の目標特性を記載したのみであり、高タンパク透過かつ高ウィルス除去の膜を得るという課題に対して、有用かつ具体的な情報を与えているわけではない。
さらに、開孔率の大きい粗大構造層と、開孔率の小さい緻密層を有する微多孔膜についても開示されているが、そもそもここでは実質的に、熱誘起相分離によって均質構造を作りやすいポリフッ化ビニリデン(以下PVDFと略記する)製の中空糸膜について議論されており、例えば、透水性能が高いことなどから血液透析膜の素材として広く使用されているポリスルホン系樹脂などの素材に、この技術をそのまま適用するのは困難である。
特許文献2では開孔率の大きい粗大構造層と、開孔率の小さい緻密層を有する微多孔膜について開示されているが、ここでも素材として想定されているのは実質的にPVDFである。PVDFは物理的強度に優れている反面、疎水性の素材であるためタンパク質等の吸着、膜の汚染や目詰まりが生じやすく、濾過速度が急激に低下してしまう。この好ましくない特性を改善するため、膜への親水性付与が必要となるが、一般的にPVDF素材の膜は製膜後の後処理によって親水性への改質を行わなければならず、親水性高分子とのブレンド状態で製膜することが一般的なポリスルホン系樹脂と比べて、煩雑な製造工程となってしまう短所がある。
特許文献3では、PhiX174に対する少なくとも4.0の初期LRVを有し、表面がヒドロキシアルキルセルロースで親水化されたウィルス保持限外ろ過膜が開示されている。ここで開示された技術では、親水化が特殊な親水性ポリマーによってなされており、汎用性に欠ける。ポリスルホンなどと、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマーとのブレンドも例示されているが、ヒドロキシアルキルセルロースでの親水化処理は必須である。また、膜は中空糸型も許容されてはいるが、実質的に平膜型が想定されており、中空糸膜型を得るための十分な説明はなされていない。
特許文献4、特許文献5では5重量 %のヒト血清アルブミン水溶液の透過速度(Jp)と純水の透過速度(Jw)の比(Jp/Jw)が1/50以上である高分子多孔質を用いたウィルス除去方法が開示されている。特許文献4では大腸菌ファージφX174の阻止係数が2以上であることが、特許文献5では粒子径30nmの金コロイドの阻止係数が1以上であることが構成要件として記載されているが、いずれにしてもここにある膜特性は、タンパク溶液からのウィルス除去を目的とする膜として、最低限の目標特性を規定したのみであり、高タンパク透過かつ高ウィルス除去の膜を得るという課題に対して、有用かつ具体的な情報を与えているわけではない。また、開示されている主たる膜はセルロースを素材としており、水にぬれた状態での強度が低いため、濾加圧を高く設定することが困難であり、高い透過速度を得ることができない。
特許文献6では、内壁面より壁内部に進むに従って面内空孔率が当初減少し、少なくとも1個の極小部を経過した後、外壁部で再び増大する孔構造を有する高分子多孔質中空糸膜、およびこの膜を用いてタンパク質水溶液を濾過するウィルス除去方法が開示されている。ここで開示された膜構造を端的に表現すれば、膜壁の孔径が、膜厚方向で疎-密-疎となる中空糸膜と言える。このような傾斜構造を持ち、特定の平均孔径を有するのが、高効率でウィルスを除去し、タンパク質を変性させることなく、高透過効率でタンパク質を回収するのに好適であるとされている。素材として種々の高分子物質が例示されてはいるが、実質的には再生セルロースを用いた技術であり、ここで開示された技術を多くの素材に汎用的に展開することは困難である。また、セルロース素材の欠点は既に述べたとおりである。
非特許文献4や非特許文献5では、塩の添加やDNase処理よってタンパクの凝集が解消されることにより、タンパクの透過率やタンパク溶液の透過速度が向上することが報告されている。確かに、塩濃度がタンパク質の存在状態に影響を与え、このように透過効率が向上することは充分に考えられるが、塩濃度が膜表面とタンパクの相互作用に影響し、透過効率を増減させることは注目されていない。
WO2004/035180号公報 WO2003/026779号公報 特開2007-136449号公報 特開平01-254204号公報 特開平03-146067号公報 特公平04-050054号公報
医薬発第1047号(平成11年8月30日)((社)日本血液製剤協会理事長あて厚生省医薬安全局長通知) PDA Journal of GMP and Validation in Japan, Vol.7,No.1,p.44 (2005) PDA Journal of GMP and Validation in Japan, Vol.9, No.1,p.6 (2007) Journal of Membrane Science, 210 (2002), 369-378 Journal of Membrane Science, 236 (2004), 137-144
本発明の課題は、溶液に含まれるウィルスなどの除去物質を効率よく分離除去することができ、同時に、タンパク質などの有用回収物質が効率よく透過し、その透過特性の経時的な落ち込みが少ない多孔質中空糸膜を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構成により上記課題を解決することができ、本発明に至った。
すなわち、本発明1の多孔質中空糸膜は、
(1) 濾過下流側表面がドット状またはスリット状の開孔を有し、濾過上流側表面が網目構造または微粒子集合体構造からなり、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造からなり、かつ膜厚部分が実質的にマクロボイドを持たない構造からなり、純水の透過速度が10〜300L/(h・m2・bar)であり、0.1重量%のウシγ-グロブリン溶液の透過速度が純水の透過速度の30〜100%であることを特徴とする。
(2) 内径が200〜400μm、膜厚が50〜200μmであることを特徴とする。
(3) 疎水性高分子と親水性高分子を含んでなることを特徴とする。
(4) 疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする。
(5) 親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする。
(6) タンパク質溶液からウィルスを分離するために使用される膜であることを特徴とする。
また、本発明2のタンパク質含有液処理用多孔質中空糸膜は、
(7) 濾過下流側表面がドット状またはスリット状の開孔を有し、濾過上流側表面が網目構造または微粒子集合体構造からなり、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造からなり、かつ膜厚部分が実質的にマクロボイドを持たない構造からなり、純水の透過速度が10〜300L/(h・m2・bar)であり、ウシγ-グロブリンの0.1重量%-20mmol/Lリン酸緩衝液溶液の透過速度がウシγ-グロブリンの0.1重量%-リン酸緩衝生理食塩水溶液の透過速度の30〜100%であることを特徴とする。
本発明の多孔質中空糸膜は、タンパク質溶液からのウィルス分離に利用が可能であり、特にウィルスを効率よく除去することができるのと同時に、タンパク質が効率よく透過し、その透過特性の経時的な落ち込みが少ないことから、バイオ医薬品や血液製剤の製造工程において、有用成分であるタンパク質の溶液からウィルスなどの病原性物質を除去するための膜として好ましく利用され得る。
網目構造の例である。 微粒子集合体構造の例である。 ドット状開孔構造の例である。 ドット状開孔構造の例である。 ドット状開孔構造の例である。 スリット状開孔構造の例である。 中心領域が実質的に均質な構造の例である。像の中央にある両矢印の示す範囲が「膜厚部分の中心領域」であり、両側の両矢印の示す範囲が膜厚部分の内面側領域と外面側領域である。 中心領域が実質的に均質な構造の例である。像の中央にある両矢印の示す範囲が「膜厚部分の中心領域」であり、両側の両矢印の示す範囲が膜厚部分の内面側領域と外面側領域である。 中心領域が不均質な構造の例である。像の中央にある両矢印の示す範囲が「膜厚部分の中心領域」であり、両側の両矢印の示す範囲が膜厚部分の内面側領域と外面側領域である。 中心領域が不均質な構造の例である。像の中央にある両矢印の示す範囲が「膜厚部分の中心領域」であり、両側の両矢印の示す範囲が膜厚部分の内面側領域と外面側領域である。 中心領域が不均質な構造の例である。像の中央にある両矢印の示す範囲が「膜厚部分の中心領域」であり、両側の両矢印の示す範囲が膜厚部分の内面側領域と外面側領域である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の多孔質中空糸膜は、濾過下流側表面がドット状またはスリット状の開孔を有し、濾過上流側表面が網目構造または微粒子集合体構造からなることが好ましい。「ドット状またはスリット状の開孔を有する」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した10000倍の像を目視で観察したとき、構造構成部分の存在する領域(実部)を背景とし、構造構成部分の存在しない領域(空孔部分、虚部)が円状、楕円状、スリット状に存在することを意味する。また、「網目構造」とは、実部が三次元的に網目状に広がっている構造のことを、「微粒子集合体構造」とは、多数の粒状実部が直接または筋状の実部を介して連結している構造を意味する。表面構造の具体例を図1〜図6に示す。本発明においては、濾過下流側表面が図3、図4、図5、図6に示されるような構造であり、濾過上流側表面が図1、図2に示されるような構造であることが好ましい。
被濾過液は上流側膜表面から膜厚部分内部へと導入される。本発明の多孔質中空糸膜は上流側膜表面が、網目構造または微粒子集合体構造からなる三次元構造となっているのが特徴であるが、このような構造は被濾過液に含まれる夾雑物、懸濁物、凝集物など比較的大きな被除去物質を効率的に除去する効果を発揮する。これらの被除去物質は三次元構造によって除去されるので、膜表面に堆積層を形成しにくく、濾過速度の低下を緩和することが可能となる。被濾過液は膜厚部分中心領域を通過して、最終的に濾過下流側表面から濾液として回収される。濾過下流側表面がドット状開孔またはスリット状開孔構造となることで、濾過の最終段階でのスクリーン除去効果が発揮され、ウィルスなどの微小被除去物質が効率的に除去される。このような機構から、本発明の膜構造がウィルスの効率的除去と、タンパク質の効率的透過・回収に好適であると考えられる。
本発明の多孔質中空糸膜は、濾過上流側が中空糸膜内腔側であっても、中空糸膜外壁側であってもよいが、濾過を実施する際に付与する圧力に対する耐久性という視点から、中空糸膜内腔側を濾過上流側とし、中空糸膜の内側から外側に向けて濾過するのが好ましい。
本発明の多孔質中空糸膜は、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造からなり、かつ実質的にマクロボイドを持たない構造からなることが好ましい。「膜厚部分の中心領域」とは、内表面から膜厚の20%に相当する距離だけ外表面側の位置と、外表面から膜厚の20%に相当する距離だけ内表面側の位置に挟まれた領域を意味し、「実質的に均質な構造」とは、1000倍のSEM像を目視で観察したとき、構造の不均一性が確認できないことを意味する。具体的には、図7、図8にあるような構造が「膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造」である。図9では中心領域が内面から外面方向に向かって疎-密となっており、図10では中心領域が内面から外面方向に向かって密-疎-密となっており、図11では中心領域にマクロボイドが包含されている上に、疎密構造が複雑に変遷している。これらはいずれも本発明においては好ましくない構造である。なお、図7〜図11において、像の中央にある両矢印の示す範囲が「膜厚部分の中心領域」であり、両側の両矢印の示す範囲が膜厚部分の内面側領域と外面側領域である。
本発明において「実質的にマクロボイドを持たない」とは、膜厚部分の、異なる領域を5視野撮影したSEM像(1000倍)を目視で観察したとき、いずれの視野においても、均質な膜厚部分の構造と比較して明らかに円状または楕円状または雫型状に膜の実部分が欠落した空孔領域、すなわちマクロボイドが観察されないことを意味する。
免疫グロブリン溶液中からの小径ウィルスの分離除去など、サイズが極端に違っていないものの共存する溶液からウィルスを分離するには、均質膜を利用するのが好ましい。なぜなら、均質な構造を厚み方向にとることで、多くの層で分離を何度も繰り返すような擬似的多段階の効果が期待できるからである。また、このような構造とすることで、万一膜厚部分の一部に欠陥があってそこでの被除去物質トラップがなされなかったとしても、膜厚部分のどこかでとめられる可能性が高く、膜全体として被除去物質リークのリスクを低減することができる。中心領域が均質構造となっていることにより、このようなメリットを得ることができタンパク質の溶液からウィルスなどの物質を除去するのに好適である。マクロボイドの存在は、このような効果を期待できる領域を狭めてしまうことになるので好ましくない。
本発明の多孔質中空糸膜は、純水の透過速度(以下純水Fluxと略記する)が10〜300L/(h・m2・bar)であり、0.1重量%のウシγ-グロブリン溶液の透過速度(以下γG Fluxと略記する)が純水の透過速度の30〜100%であることを特徴とする。なお、「γG Fluxが純水Fluxの30〜100%であること」とは、純水Fluxに対するγG Fluxの比を「Flux比」としたとき、「Flux比が30〜100%であること」と同じ意味であるので、以下、このように表現することがある。純水Fluxは、多孔質膜の孔径を示す目安となる。純水Fluxが上記の数値よりも小さいと、孔径が過度に小さくなってしまい、効率よくタンパク質を透過させるのが困難になってしまう。また、透水量が小さいので濾液回収の効率が低下してしまう。純水Fluxが上記の数値よりも大きいと、孔径が過度に大きくなってしまい、ウィルスなどの除去物質を効率よく分離除去するのが困難になってしまう。純水Fluxは、40〜200 L/(h・m2・bar)がより好ましく、70〜130 L/(h・m2・bar)がさらに好ましい。また、Flux比は60%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。
濾液に回収されるべき成分であるタンパク質は、濾過プロセスを通じて高い透過率を示すことが好ましい。どの程度の透過率が必要であるかは、タンパク質の用途、種類、濃度などにより一概に決定することは困難であるが、一般的には95%以上であることが好ましい。95%を下回ると、濾過によるタンパク質ロスが大きくなり、生産性が低下することとなる。膜濾過では濾過時間が長くなるに従い、詰まりによって透過率が低下してくる可能性がある。そこで、濾過プロセス初期の透過率に対する、充分長時間濾過を行った時点での透過率(透過率保持率)が、タンパク質透過の経時的安定性を示す指標となる。透過率は時間とともに低下する可能性があること、透過率は濾過プロセス全体を通じて常に95%以上であることが好ましいことを考慮し、透過率保持率は95%以上であることが好ましい。ここで、「充分長時間濾過を行った時点」がどの程度であるかは、タンパク質の用途、種類、濃度などにより一概に決定することは困難であるが、タンパク溶液中から小径ウィルスを分離除去するプロセスでは、膜にかかる最大濾過負荷量を50〜200L/m2程度に設定するのが一般的なので、少なくとも50L/m2の1/2、すなわち、25L/m2程度の濾過負荷をかけられた時点と考えるのが妥当であると言える。また、生産効率を向上させる目的で、被処理タンパク溶液の濃度は高くなりつつあるのが近年の傾向であるので、タンパク質の透過性を考える場合には1%程度の濃度で判断するのが妥当である。すなわち、1%タンパク質溶液での、タンパク質透過率が95%以上であり、かつ透過率保持率が約25L/m2の濾過負荷時点で95%以上であることがタンパク質溶液の濾過に使用される膜として好ましい特性である。
本発明者らの検討によると、Flux比が、タンパク質透過の経時的な安定性を示す指標となることがわかった。すなわち、γG Fluxが純水Fluxの30%を下回ると、初期のタンパク透過率が高値であったとしても、経時的な落ち込みが大きく、タンパク質透過率保持率が低下してしまう。ウシγ-グロブリン溶液では、溶質であるウシγ-グロブリンが存在することによって透過速度は低下するのが普通である。γG Fluxが純水Fluxの100%を超えるのは、膜構造に欠陥があるか、タンパク質との接触によって極端に構造が変化してしまうと考えられ、いずれも実用的でない。詳細は不明であるが、次のような機構を考えることができる。膜表面においては、膜素材とタンパク質が微妙な相互作用を及ぼしあっていると考えられる。膜素材とタンパク質の相互作用が穏やかな場合、膜表面へのタンパク質の吸脱着が可逆的であるため、膜表面へのタンパク質の吸着は実質的に無視できるか、あるいは非常に軽微であると考えられる。このような膜表面環境で測定されるγG Fluxは、タンパク質非存在下で測定した純水Fluxと比較して大幅には低下しない。このような状態では、タンパクが膜を通過する際の抵抗は充分に低く抑えられるので、タンパク質が効率よく安定して透過すると考えられる。膜素材とタンパク質が強く相互作用する場合、コート層は非可逆的に積層していくことが考えられるので、タンパク質透過の抵抗が大きくなり、タンパク質透過は落ち込んでいくと考えられる。なお、本発明でのγG Fluxは次の測定条件により求めた。液温は25℃に調整した。
(1)ウシγ-グロブリンをリン酸緩衝生理食塩水(以下PBSと略記する)に0.1重量%となるよう溶解した溶液を調製した。
(2)乾燥状態の中空糸膜にこの溶液を導入し、1.0barの濾過圧で、膜面積1m2あたり1Lの濾液を通じて馴化した。馴化処理中の濾液は廃棄した。
(3)馴化処理後、引き続き1.0barの濾過圧で、膜面積1m2あたり2.5Lの濾液を得るまでの所要時間を測定した。
(4)濾過圧、膜面積、濾液量、濾過所要時間からγG Fluxを算出した。
なお、上記「タンパク質の相互作用が穏やかな」膜表面とは、具体的には、タンパク質との接触によってタンパク質のコンフォメーションに変化を与えにくく、タンパク質を吸着しにくい特性を持った表面であると言える。このような膜表面がどのような状態にあるのか、どのような手段で得ることができるかは一概に決定することは困難であるが、ひとつには、充分な親水性が付与されていることが重要な要因であると考えられる。後述する親水性高分子の存在量、存在状態を最適化する手法により、このような好ましい膜表面を得ることが可能となる。
本発明のタンパク質含有液処理用多孔質中空糸膜は、ウシγ-グロブリンの0.1重量%-20mmol/Lリン酸緩衝液溶液の透過速度(以下γG/20mM-PB Fluxと略記する)がウシγ-グロブリンの0.1重量%-リン酸緩衝生理食塩水溶液の透過速度(以下γG/PBS Fluxと略記する)の30〜100%であることを特徴とする。なお、「γG/20mM-PB FluxがγG/PBS Fluxの30〜100%であること」とは、γG/PBS Fluxに対するγG/20mM-PB Fluxの比を「Flux比」としたとき、「Flux比が30〜100%であること」と同じ意味であるので、以下、このように表現することがある。本発明者らの検討によると、Flux比が、タンパク質透過の経時的な安定性を示す指標となることがわかった。すなわち、γG/20mM-PB
FluxがγG/PBS Fluxの30%を下回ると、初期のタンパク質透過率が高値であったとしても、経時的な落ち込みが大きく、タンパク質透過率保持率が低下してしまう。一般的に、グロブリンなどのタンパク質は溶液のイオン強度が低いと凝集しやすい傾向にあり、低イオン強度溶液の膜透過速度は高イオン強度溶液の膜透過速度よりも低くなるのが普通である。γG/20mM-PB
FluxがγG/PBS Fluxの100%を超えるのは、膜構造に欠陥があるか、低イオン強度タンパク質溶液との接触によって極端に構造が変化してしまうと考えられ、いずれも実用的でない。
前記Flux比が高い場合に、経時的に安定したタンパク質透過が実現される機構の詳細は不明であるが、次のような機構を考えることができる。膜表面においては、膜素材とタンパク質が微妙な相互作用(ある種の可逆的な吸脱着)を及ぼしあっていると考えられる。この際、タンパク質溶液に含まれるイオンは、膜表面からタンパク質を引き剥がす作用(吸脱着のバランスを脱着側に傾ける効果)を持つ。従って、タンパク質溶液のイオン強度が強いほうが、膜素材とタンパク質の相互作用は抑制される傾向となる。逆に言えば、イオン強度の低いタンパク質溶液と接触してもなお相互作用が低く抑えられている膜素材・膜表面は、タンパク質に対する相互作用が軽微であり、適合性が高いと考えることができる。すなわち、高イオン強度条件下で測定されるγG/PBS Fluxに対する、低イオン強度条件下で測定されるγG/20mM-PB Fluxの比が高値である膜は、タンパク質に対する相互作用が軽微であり、タンパク質が膜を通過する際の抵抗は充分に低く抑えられるので、タンパク質が効率よく安定して透過すると考えられる。
なお、本発明で言う20mmol/Lリン酸緩衝液(以下20mM-PB)とは、リン酸(PO4 3-)塩および/またはリン酸水素(HPO4 2-)塩および/またはリン酸二水素(H2PO4-)塩および/または遊離リン酸(H3PO4)の合計濃度が20mmol/Lである緩衝液を意味し、pHは6.0〜8.0であることが好ましい。また、本発明で言うリン酸緩衝生理食塩水(以下PBSと略記する)とは、リン酸塩によって緩衝作用を付与された等張食塩水溶液を意味し、pHは6.5〜7.5であることが好ましい。本発明でのγG/PBS Flux、γG/20mM-PB Fluxは次の測定条件により求めた。液温は25℃に調整した。
(1)ウシγ-グロブリンを所定の緩衝液に0.1重量%となるよう溶解した溶液を調製した。
(2)乾燥状態の中空糸膜にこの溶液を導入し、1.0barの濾過圧で、膜面積1m2あたり20Lの濾液を通じて馴化した。馴化処理中の濾液は廃棄した。
(3)馴化処理後、引き続き1.0barの濾過圧で、膜面積1m2あたり2.0Lの濾液を得るまでの所要時間を測定した。
(4)濾過圧、膜面積、濾液量、濾過所要時間から透過速度を算出した。
本発明のタンパク質含有液処理用多孔質中空糸膜の内径は100〜1000μmが好ましく、より好ましくは150〜800μmであり、200〜400μmがさらに好ましく、250〜300μmがさらにより好ましい。また、膜厚は10〜500μmが好ましく、より好ましくは20〜400μmであり、50〜200μmがさらに好ましく、80〜100μmがさらにより好ましい。これよりも内径が小さいと、内側から外側に向けて濾過した場合、通液による圧力損失が大きくなり、中空糸膜の長さ方向で濾過圧が不均一になることがある。また、不純物や凝集成分が多く含まれる被処理液を導入した場合、被処理液中の成分により内腔の閉塞などが生じる可能性がある。これよりも内径が大きいと、中空糸膜のつぶれ、ゆがみなどを生じやすくなる。膜厚がこれよりも小さいと、中空糸膜のつぶれ、ゆがみなどを生じやすくなる。これよりも膜厚が大きいと、被処理液が膜壁を通過する際の抵抗が大きくなり、透過性が低下することがある。
本発明の多孔質中空糸膜は、疎水性高分子と親水性高分子を含んでなることが好ましく、疎水性高分子としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホン(以下PSfと略記する)、ポリエーテルスルホン(以下PESと略記する)、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、PVDFなどが例示される。中でも、下記の化1、化2で示される繰返し単位を有するPSf、PESなどのポリスルホン系高分子は高い透水性の膜を得るのに有利であり、好ましい。ここで言うポリスルホン系高分子は、官能基やアルキル基などの置換基を含んでいてもよく、炭化水素骨格の水素原子はハロゲンなど他の原子や置換基で置換されていてもよい。また、これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
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本発明における親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(以下PVPと略記する)、カルボキシメチルセルロース、デンプンなどの高分子炭水化物などが例示される。中でも、ポリスルホン系高分子との相溶性、水性流体処理膜としての使用実績から、PVPが好ましい。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。PVPの分子量としては重量平均分子量10,000〜1,500,000のものが好ましく用いられ得る。具体的には、BASF社より市販されている分子量9,000のもの(K17)、以下同様に45,000(K30)、450,000(K60)、900,000(K80)、1,200,000(K90)を用いるのが好ましい。
本発明の高分子多孔質中空糸膜の製造方法はなんら限定されるものではないが、疎水性高分子、親水性高分子、溶媒、非溶媒を混合溶解し、脱泡したものを製膜溶液として芯液とともに二重管ノズルの環状部、中心部から同時に吐出し、空走部(エアギャップ部)を経て凝固浴中に導いて中空糸膜を形成し(乾湿式紡糸法)、水洗後巻き取り、乾燥する方法が例示される。
製膜溶液に使用される溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略記する)、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略記する)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下DMAcと略記する)、ジメチルスルホキシド(以下DMSOと略記する)、ε-カプロラクタムなど、使用される疎水性高分子、親水性高分子の良溶媒であれば広く使用することが可能であるが、疎水性高分子としてPSf、PESなどのポリスルホン系高分子を使用する場合には、NMP、DMF、DMAcなどのアミド系アプロティック溶媒が好ましく、NMPが特に好ましい。なお、本発明においてアミド系溶媒とは、構造中にN-C(=O)のアミド結合を含有する溶媒を意味し、アプロティック溶媒とは、構造中において炭素原子以外のヘテロ原子に直接結合した水素原子を含有していない溶媒を意味する。
また、製膜溶液には高分子の非溶媒を添加するのが好ましい。使用される非溶媒としては、例えば、エチレングリコール(以下EGと略記する)、プロピレングリコール(以下PGと略記する)、ジエチレングリコール(以下DEGと略記する)、トリエチレングリコール(以下TEGと略記する)、ポリエチレングリコール(以下PEGと略記する)、グリセリン、水などが例示されるが、疎水性高分子としてPSf、PESなどのポリスルホン系高分子、親水性高分子としてPVPを使用する場合には、DEG、TEG、PEGなどのエーテルポリオールが好ましく、TEGが特に好ましい。なお、本発明においてエーテルポリオールとは、構造中に少なくともひとつのエーテル結合と、ふたつ以上の水酸基を有する物質を意味する。
詳細な機構は不明であるが、これらの溶媒、非溶媒を使用して調製した製膜溶液を使用することで、紡糸工程における相分離(凝固)が制御され、本発明の好ましい膜構造を形成するのに有利になると考えられる。なお、相分離の制御には、後述の芯液組成や凝固浴中の液(外部凝固液)の組成も重要になる。
製膜溶液中における溶媒/非溶媒の比は、紡糸工程における相分離(凝固)の制御に重要な要因となる。溶媒に対して非溶媒が同量かやや過剰気味であることが好ましく、具体的には、溶媒/非溶媒が重量比で25/75〜50/50であることが好ましく、30/70〜50/50であることがより好ましく、35/65〜50/50であることがさらに好ましい。溶媒の含有量がこれよりも少ないと凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下してしまう。また、溶媒含有量がこれよりも多いと相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなり好ましくない。
製膜溶液における疎水性高分子の濃度は、該溶液からの製膜が可能であれば特に制限されないが、10〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましく、15〜25重量%がさらに好ましい。高い透過性を得るには疎水性高分子の濃度は低いほうが好ましいが、過度に低いと強度の低下や、分離特性の悪化を招く可能性があるので、15〜25重量%が好ましい。親水性高分子の添加量は、製膜溶液からの製膜に支障をきたすことなく、中空糸膜に親水性を付与し、被処理液濾過時の非特異吸着を抑制するのに十分な量であれば特に制限されないが、製膜溶液における親水性高分子の濃度として2〜15重量%が好ましく、2〜10重量%がより好ましく、3〜8重量%がさらに好ましい。親水性高分子の添加量がこれよりも少ないと、膜への親水性付与が不十分となり、膜特性の保持性が低下する可能性がある。また、これよりも多いと、親水性付与効果が飽和してしまい効率がよくなく、また、製膜溶液の相分離(凝固)が過度に進行しやすくなり、操業性が悪化するのに加え、本発明の好ましい膜構造を形成するのに不利となる。
製膜溶液は、疎水性高分子、親水性高分子、溶媒、非溶媒を混合、攪拌して溶解することで得られる。この際、適宜温度をかけることで効率的に溶解を行うことができるが、過度の加熱は高分子の分解を招く危険があるので、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜80℃である。また、親水性高分子としてPVPを使用する場合、PVPは空気中の酸素の影響により酸化分解を起こす傾向にあることから、製膜溶液の調製は不活性気体封入下で行うのが好ましい。不活性気体としては、窒素、アルゴンなどが上げられるが、窒素を用いるのが好ましい。このとき、溶解タンク内の残存酸素濃度は3%以下であることが好ましい。
製膜を行うに際しては、中空糸膜への異物混入による膜構造の欠陥の生成を回避するために、異物を排除した製膜溶液を使用することが好ましい。具体的には、異物の少ない原料を用いる、製膜溶液を濾過し異物を低減する方法等が有効である。本発明では、中空糸膜束の膜厚よりも小さな孔径のフィルターを用いて製膜溶液を濾過してからノズルより吐出するのが好ましく、具体的には均一溶解した製膜溶液を溶解タンクからノズルまで導く間に設けられた孔径10〜50μmの焼結フィルターを通過させる。濾過処理は少なくとも1回行えば良いが、濾過処理を何段階かにわけて行う場合は後段になるに従いフィルターの孔径を小さくしていくのが濾過効率およびフィルター寿命を延ばす意味で好ましい。フィルターの孔径は10〜45μmがより好ましく、10〜40μmがさらに好ましい。フィルター孔径が小さすぎると背圧が上昇し、生産性が落ちることがある。
製膜溶液からは気泡を排除するのが欠陥のない中空糸膜を得るのに有効である。気泡混入を抑える方法としては、製膜溶液の脱泡を行うのが有効である。製膜溶液の粘度にもよるが、静置脱泡や減圧脱泡を用いることができる。この場合、溶解タンク内を常圧-100〜常圧-750mmHgに減圧した後、タンク内を密閉し30分〜180分間静置する。この操作を数回繰り返し脱泡処理を行う。減圧度が低すぎる場合には、脱泡の回数を増やす必要があるため処理に長時間を要することがある。また減圧度が高すぎると、系の密閉度を上げるためのコストが高くなることがある。トータルの処理時間は5分〜5時間とするのが好ましい。処理時間が長すぎると、減圧の影響により製膜溶液の構成成分が分解、劣化することがある。処理時間が短すぎると脱泡の効果が不十分になることがある。
中空糸膜の製膜時に使用される芯液の組成は、製膜溶液に含まれる溶媒および/または非溶媒を主成分とした液体を使用するのが好ましい。ただし、製膜溶液に含まれる溶媒のみでは、内腔壁面での凝固が過度に抑制されるため好ましい表面構造を得ることができない。従って、溶媒と非溶媒の混合液、非溶媒のみ、溶媒と水の混合液、非溶媒と水の混合液、溶媒と非溶媒と水の混合液のいずれかを使用するのが好ましい。芯液に含まれる有機成分の量は、50〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましい。より詳細には、芯液を溶媒と水の混合液とする場合は、有機成分の量が50〜65重量%、芯液を非溶媒と水の混合液とする場合は、有機成分の量が60〜100重量%、芯液を溶媒と非溶媒と水の混合液とする場合は、製膜溶液の溶媒/非溶媒比率と同一とした上でこれを水で希釈し、有機成分濃度を60〜95重量%とするのが好ましい。有機成分の含有量がこれよりも少ないと凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下してしまう。また、有機成分含有量がこれよりも多いと相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなる。
外部凝固液の組成は、製膜溶液に含まれる溶媒および非溶媒と、水との混合液を使用することが好ましい。この際、芯液中に含まれる該溶媒と該非溶媒の比率は、製膜溶液の溶媒/非溶媒比率と同一であることが好ましい。製膜溶液に使用されるのと同一の溶媒および非溶媒を、製膜溶液中の比率と同一にして混合し、これに水を添加して希釈したものが好ましく用いられる。外部凝固液中の水の含量は、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。水の含有量がこれよりも多いと凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下してしまう。また、水含有量がこれよりも少ないと相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなる。また、外部凝固液の温度は、低いと凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下することがある。また、高いと相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなってしまうので、40〜70℃、好ましくは45〜65℃である。
本発明において、膜構造を制御する因子のひとつには、ノズルの温度が挙げられる。ノズルの温度は、低いと凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下してしまう。また、高いと相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなってしまうので、30〜85℃、好ましくは40〜75℃である。
本発明の高分子多孔質中空糸膜を得る好ましい製造方法としては、芯液とともに二重管ノズルから吐出した製膜溶液を、エアギャップ部分を経て外部凝固液を満たした凝固浴中に導いて中空糸膜を形成する乾湿式紡糸法が例示されるが、ノズルから吐出された製膜溶液の、エアギャップ部分での滞留時間が膜構造を制御する因子のひとつとなり得る。滞留時間が短いと、エアギャップ部分での相分離による凝集粒子の成長が抑制された状態で外部凝固液によりクエンチされるので、外表面が緻密化して透過性が低下してしまう。また、外表面の緻密化により、得られた中空糸膜が固着しやすい傾向となって好ましくない。滞留時間が長いと、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなってしまう。エアギャップにおける滞留時間の好ましい範囲は0.01〜2秒であり、0.05〜1秒がより好ましい。
上記、比較的滞留時間の短いエアギャップ部分を経て、凝固浴に導かれた中空糸膜は、芯液からの凝固が進行しながら、外部からの凝固はある程度抑制された状態で外部凝固液と接触する。外部凝固液通過中に中空糸膜は完全に凝固を完了し、構造が決定されて引き上げられる。凝固浴内での滞留時間が膜構造の制御には重要であり、具体的には1〜20秒が好ましく、4〜15秒がより好ましい。凝固浴内での滞留時間がこれよりも短いと凝固が不十分となり、これよりも長いと製膜速度の低下や凝固浴の大型化が必要となりいずれも好ましくない。また、同一組成、同一温度の外部凝固液を満たした凝固浴を2個準備し、第1の凝固浴に導いた中空糸膜を1度引上げ、第2の凝固浴に外部凝固液に浸漬させることで、好ましい分離特性、膜構造を持った中空糸膜を得ることができる。この際、第1の凝固浴滞留時間と第2の凝固浴滞留時間の比は、2:8〜5:5と第2の凝固浴滞留時間をやや長めに設定するのが好ましい。詳細な機構は不明であるが、外部凝固液通過途中での中空糸膜引上げ・再浸漬の際の微妙な張力変化、外部凝固液通過途中で空気の層に接することによる微妙な凝固環境変化が好ましい影響を与えている可能性が考えられる。この微妙な凝固環境変化履歴を与えるために、第1凝固浴と第2凝固浴の間における中空糸膜の滞留時間は、1〜15秒が好ましく、4〜10秒がより好ましい。また、第1凝固浴と第2凝固浴の間では、等速で回転する2個以上のローラーで中空糸膜の走行方向を変えた後、第2凝固浴に導くのが好ましい。このようにすることで、空気走行で微妙に乾燥しながら中空糸膜はやや収縮し、これが等速のローラーで速度を制御されているため、微妙な張力変化が与えられることになる。
本発明の多孔質中空糸膜を得るには、内外両表面からの凝固進行を微妙に制御する必要があるが、その際に注意しなければならない点として、中空糸膜の凝固浴中における屈曲がある。乾湿式紡糸においては、通常、下向きに配列したノズルから製膜溶液を重力方向に吐出、エアギャップ部分を経て凝固浴に導き、凝固浴内で進行方向を上向きに変更して凝固浴から引き上げ、水洗浴での洗浄を経て巻き取るのが一般的である。本発明の高分子多孔質中空糸膜は、凝固浴内突入直後には完全に構造が決定しない状態にあるので、凝固浴内での方向転換が急激に行われると、膜構造の欠陥や破壊を招くことがある。具体的には、多点ガイドを使用し、複数のポイントで徐々に方向を転換する方法が好ましい。
製膜速度(紡速)については、欠陥のない中空糸膜が得られ、生産性が確保できれば特に制限されないが、好ましくは、5〜40m/分、より好ましくは10〜30m/分である。これよりも紡速が低いと、生産性が低下することがある。これよりも紡速が高いと、上記の紡糸条件、特にエアギャップ部分での滞留時間や、凝固浴内での滞留時間を確保するのが困難となる。
本発明の多孔質中空糸膜は、濾過下流側表面がドット状またはスリット状の開孔を有し、濾過上流側表面が網目構造または微粒子集合体構造からなり、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造からなり、かつ膜厚部分が実質的にマクロボイドを持たない構造からなるという構成になっている。このように特徴的な構造を得るには、これまで述べたような好ましい製膜溶液組成、芯液組成、外部凝固液組成、各種温度制御、滞留時間などを組み合わせ、製膜条件を最適化するのが肝要である。
中空糸膜は製膜後、洗浄工程を経て得られる。中空糸膜の洗浄方法は特に制限されないが、洗浄効果、安全性、簡便性から、温水を満たした洗浄浴内に製膜された中空糸膜をそのままオンラインで走行させ、しかる後に巻き取るのが好ましい。この際使用される温水の温度は、常温〜100℃が好ましく、30℃〜90℃がさらに好ましい。これよりも低温では洗浄効果が不十分になってしまう可能性が高く、これよりも高温では洗浄液として水が使用できないことがある。
製膜後、洗浄を経て得られた中空糸膜は、使用中や洗浄操作による膜特性の変化を抑制し、膜特性の保持性・安定性、膜特性の回復性を確保する目的で、加熱処理を施すのが好ましい。この加熱処理を熱水への浸漬処理とすることで、同時に、中空糸膜に残存する溶媒や非溶媒などを洗浄・除去する効果も期待できる。本発明の多孔質中空糸膜を得るには、この熱水中への浸漬処理に先立ち、芯液を中空糸内腔に接触させた状態で、しばらくエージングするのが好ましい手法である。このエージングを施すことによって、膜中の親水性高分子の含量、存在状態が最適化されることにより、純水Flux、γG Flux、γG/20mM-PB Flux、γG/PBS Fluxが最適化されると考えられる。この工程における芯液の濃度は有機成分濃度として10〜60重量%、温度は15〜30℃、時間は10〜180分が好ましい。これよりも有機成分濃度が低い場合、温度が低い場合、時間が短い場合には、過剰な親水性高分子が残存しやすくなり、膜特性の経時的変化、実使用時の溶出による被処理液の汚染などの不具合を招く可能性が大きくなってしまう。これよりも有機成分濃度が高い場合、温度が高い場合、時間が長い場合には、内腔表面構造の破壊、親水性高分子の過度の抽出などにより、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなってしまう。
上記エージングを実施するには、完全に有機成分を除去した中空糸膜を再度溶媒/非溶媒の水溶液に浸漬してもよいが、製膜時の芯液組成を微調整したり、オンラインでの洗浄条件を調整したりすることで芯液中の有機成分濃度を上記の好ましい範囲とし、そのまま上記好ましい温度、時間でエージングするのが簡便である。芯液の好ましい組成は既に述べたとおりであるが、紡糸後の芯液に含まれる有機成分濃度が上記10〜60重量%の範囲に収まるように、という観点からも組成を考慮するのが好ましい。オンライン水洗の条件は、温度としては既に述べたとおり30℃〜90℃が特に好ましいが、水洗浴での中空糸膜の滞留時間は5〜100秒であることが好ましい。具体的には、例えば、芯液をNMP、TEG、水の混合液(組成重量比38.25/46.75/15)とし、オンライン水洗の温度を55℃、滞留時間を11秒としたときには、得られた中空糸膜の内腔の芯液における有機成分濃度は35重量%であった。
上記エージングを経た中空糸膜の加熱処理に使用される熱水の温度は、40〜100℃、より好ましくは60〜95℃、処理時間は30〜90分、より好ましくは40〜80分、さらに好ましくは50〜70分である。温度がこれよりも低く、処理時間がこれよりも短いと中空糸膜にかかる熱履歴が不十分となり、膜特性の保持性・安定性が低下する可能性があり、また、洗浄効果が不十分となり溶出物が増加する可能性が高くなる。温度がこれよりも高く、処理時間がこれよりも長いと、水が沸騰してしまったり、処理に長時間を要したりするため生産性が低下することがある。熱水に対する中空糸膜の浴比は、中空糸膜が十分に浸る量の熱水を使用すれば、特に制限されないが、あまり多量の熱水を使用するのは、生産性が低下する可能性がある。またこの加熱処理の際、中空糸膜を適当な長さのバンドル状にして直立させた状態で熱水に浸漬すると、内腔部分にまで熱水が到達しやすく、加熱処理・洗浄効果の観点から好ましい。
本発明の多孔質中空糸膜は、上記加熱処理の後、ただちに高圧熱水で処理するのが好ましい。具体的には、水没状態で高圧蒸気滅菌機にセットし、通常の高圧蒸気滅菌条件である処理温度120〜134℃、処理時間20〜120分で処理するのが好ましい。この際、上記加熱処理の完了した中空糸膜は、濡れた状態のまま、高温の状態のまま速やかに高圧熱水処理を開始するのが好ましい。詳細な機構は不明だが、加熱処理で膜の温度が上昇し「緩んだ」状態でさらに高圧熱水処理することで、過剰な親水性高分子が除去されるのと同時に存在状態が最適化される、純水Flux、γG Flux、γG/20mM-PB Flux、γG/PBS
Fluxが最適化されると考えられる。上記の範囲よりも処理温度が低い場合、処理時間が短い場合、処理条件がマイルドすぎるために過剰親水性高分子の除去、存在状態の最適化が不十分となり、膜特性の経時的変化、実使用時の溶出による被処理液の汚染などの不具合を招く可能性が大きくなってしまう。上記の範囲よりも処理温度が高い場合、処理時間が長い場合、処理条件が過酷であるために、膜構造の破壊、親水性高分子の過度の抽出などにより、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなってしまう。
本発明のタンパク質含有液処理用多孔質中空糸膜は、上記加熱処理、高圧熱水処理に加え、さらに水による湿潤状態または浸漬状態で放射線照射してもよい。この処理によって親水性高分子の一部が架橋すると同時に、その存在状態が最適化され、純水Flux、γG/20mM-PB Flux、γG/PBS Fluxが最適化されると考えられる。放射線としては例えば、α線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが利用できるが、滅菌処理としての実績や線量制御の容易性などから、γ線が好ましい。放射線線量は5〜100kGyが好ましく、10〜50kGyがより好ましい。これよりも線量が小さいと放射線照射の効果が不十分となり、これよりも線量が多いと親水性高分子の過度の架橋や素材の劣化などを招く可能性がある。放射線照射の際に膜を湿潤化または浸漬する水には、添加剤を加えてもよい。添加剤は、亜硫酸塩や多価アルコールなど酸化防止効果、ラジカルトラップ効果のある物質が好ましい。また、湿潤化または浸漬する水を脱気して溶存酸素を除去したり、放射線照射する膜を封入した容器・包装体の内部に不活性ガスを封入したりすることも好ましい。これらの処理により、放射線照射に由来する過剰な活性種が生成予防・除去され、親水性高分子の架橋度合いと存在状態が最適化される効果や、素材の劣化などを回避する効果が期待できる。添加量は添加剤の種類によっても異なるが、亜硫酸塩の場合0.01〜1%、好ましくは0.01〜0.1%、多価アルコールの場合、0.1〜40%、好ましくは1〜20%である。これよりも少ないと親水性高分子の過度の架橋や素材の劣化を、これよりも多いと放射線照射効果の過度の阻害を招く可能性がある。
製膜、加熱処理、高圧熱水処理、放射線照射を完了した中空糸膜は、乾燥することによって、最終的に完成する。乾燥方法は、風乾、減圧乾燥、熱風乾燥など通常利用される乾燥方法が広く利用できる。最近、血液処理膜の乾燥などで利用されているマイクロ波乾燥なども利用可能であるが、簡便な装置で効率的に大量の中空糸膜を乾燥できる点で、熱風乾燥が好ましく利用され得る。乾燥に先立って、上記の加熱処理を施しておくことで、熱風乾燥による膜特性の変化も抑制することができる。熱風乾燥時の熱風温度は特に制限されないが、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。これよりも温度が低いと乾燥までに長時間を要し、これよりも温度が高いと熱風生成のためのエネルギーコストが高くなり、いずれも好ましくない。熱風の温度は、上記の熱水加熱処理の温度よりも低いことが好ましい。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における評価方法は以下の通りである。
1.ミニモジュールの作製
中空糸膜を約30cmの長さに切断し、両末端をパラフィンフィルムで束ねて中空糸膜束を作製した。この中空糸膜束の両端をパイプ(スリーブ)に挿入し、ウレタンポッティング剤で固めた。端部を切断して、両末端がスリーブで固定された両端開口ミニモジュールを得た。中空糸膜の本数は、内面の表面積が30〜50cm2になるよう適宜設定した。
2.外筒つきミニモジュールの作製
ポリ塩化ビニル製チューブ(約15cm長)の一方の端部に円筒状チップを、他方の端部に側管つき円筒状チップを装着した。この、両端にチップのついたポリ塩化ビニル製チューブに、約15cmの長さに切断した中空糸膜1本から5本を挿入し、中空糸膜内腔を塞がないように両端のチップ部分をシリコーン接着剤で固めた。この外筒つきミニモジュールは、端部のチップ部分から中空糸膜内腔へ液を導入することで中空糸膜の内腔から外壁方向への濾過(内→外濾過)ができる上、側管から液を導入することで外壁から内腔方向への濾過(外→内濾過)を行うこともできる。
3.膜面積の計算
モジュールの膜面積は中空糸膜の内面側の径を基準として求めた。次式[1]によってモジュールの膜面積A[m2]が計算できる。
A = n×π×d×L [1]
ここで、nは中空糸膜の本数、πは円周率、dは中空糸膜の内径[m]、Lはモジュールにおける中空糸膜の有効長[m]である。
4.純水Fluxの測定
ミニモジュールの末端スリーブ2箇所(それぞれ内腔流入口、内腔流出口と呼称する)に回路を接続し、ミニモジュールへの液体の流入圧とミニモジュールからの液体の流出圧を測定できるようにした。純水を加圧タンクに入れて25℃に保温し、濾過圧が1.0bar程度になるようレギュレーターで圧力を制御しながら、ミニモジュールの内腔流入口に純水を導入して中空糸膜の内腔に純水を満たした。内面流出口に接続した回路(圧力測定点よりも下流)を鉗子で封じて流れを止め、モジュールの内腔流入口から入った純水を全濾過するようにした。引き続きミニモジュールへ純水を送り、30秒にわたって濾過を行い、膜の馴化を行った。馴化処理中の濾液は廃棄した。その後、中空糸膜外面から得られる濾液量を2分間にわたって回収し、その量を測定した。また、濾過実施時の内腔流入口側圧力Pi、内腔流出口側圧力Poを測定し、次式[2]で膜間圧力差(TMP)△Pを得た。
△P = (Pi +
Po) / 2 [2]
濾過時間:t[h] 、TMP:△P[bar]、ミニモジュールの膜面積:A[m2]、濾液量:V[L]から次式[3]により純水Flux[L/(h・m2・bar)]を得た。
純水Flux = V ÷ t ÷ A ÷ △P [3]
5.γG Fluxの測定
日水製薬(株)社から市販されているダルベッコPBS(-)粉末「ニッスイ」9.6gを蒸留水に溶解して全量を1000mLとし、PBSを得た。この緩衝液で、シグマアルドリッチジャパン(株)社から市販されているγ-Globulin
from bovine blood(製品番号G5009)を、0.1重量 % となるよう溶解して0.1重量%ウシγ-グロブリン溶液を得た。この0.1重量%ウシγ-グロブリン溶液を使用し、上記純水Fluxの測定と同様の方法で、γG Fluxを測定した。
6.免疫グロブリン透過率の測定
外筒つきミニモジュールの末端チップ2箇所(それぞれ内腔流入口、内腔流出口と呼称する)に回路を接続し、中空糸膜内腔への液導入出を可能にした。液導入側には液の流入圧を測定できるようにした。液導出側は鉗子で封じて流れを止め、モジュールの内腔流入口から入った液が全量濾過されるようにした。武田薬品工業(株)社から市販されている献血グロベニン-I-ニチヤクを、添付された溶解液で溶解して5%濃度とし、さらにこれを PBSで10倍希釈して0.5%静脈注射用ヒト免疫グロブリン製剤溶液(以下IVIGと略記する)を得た。0.5%IVIGを加圧タンクに入れて25℃に保温し、濾過圧が1.0barになるようレギュレーターで圧力を制御しながら、外筒つきミニモジュールの内腔に導入した。中空糸膜外面から得られる濾過液を、チップの側管から回収した。濾液は、中空糸膜面積1m2あたり2Lの濾液が得られるごとに(濾過負荷量2 L/m2ごとに)容器を換えて受けた。免疫グロブリン透過率は、100[%]×(濾液中のタンパク濃度)/(被濾過液のタンパク濃度)で算出した。ここで、被濾過液および濾液中のタンパク濃度は280nmの吸光度を測定し、既知濃度の免疫グロブリン溶液で作成した検量線から濃度を算出した。
7.γG/20mM-PB Fluxの測定
和光純薬工業(株)社から市販されているリン酸二水素カリウムを蒸留水に溶解して、20mmol/Lの溶液を調製した。和光純薬工業(株)社から市販されているリン酸水素二カリウムを蒸留水に溶解して、20mmol/Lの溶液を調製した。リン酸二水素カリウム水溶液28容量部とリン酸水素二カリウム72容量部を混合し、20mM-PBを得た。この緩衝液で、シグマアルドリッチジャパン(株)社から市販されているγ-Globulin
from bovine blood(製品番号G5009)を、0.1重量%となるよう溶解して0.1重量%ウシγ-グロブリン・20mmol/Lリン酸緩衝液溶液(以下γG/20mM-PBと略記する)を得た。外筒つきミニモジュールの末端チップ2箇所(それぞれ内腔流入口、内腔流出口と呼称する)に回路を接続し、中空糸膜内腔への液導入出を可能にした。液導入側には液の流入圧を測定できるようにした。液導出側は鉗子で封じて流れを止め、モジュールの内腔流入口から入った液が全量濾過されるようにした。γG/20mM-PBを加圧タンクに入れて25℃に保温し、濾過圧が1.0barになるようレギュレーターで圧力を制御しながら、外筒つきミニモジュールの内腔に導入した。中空糸膜外面から得られる濾過液は、チップの側管から回収した。中空糸膜1m2あたり20Lの濾液が得られるまでγG/20mM-PBを供給して膜を馴化した。この間得られた濾液は廃棄した。馴化終了後、引き続き1.0barの濾過圧でγG/20mM-PBを供給し、膜面積1m2あたり2.0Lの濾液を得るまでの所要時間を測定した。濾過圧、膜面積、濾液量、濾過所要時間から上記式[3]により、γG/20mM-PB Fluxを算出した。
8.γG/PBS Flux
日水製薬(株)社から市販されているダルベッコPBS(-)粉末「ニッスイ」9.6gを蒸留水に溶解して全量を1000mLとし、PBSを得た。この緩衝液で、シグマアルドリッチジャパン(株)社から市販されているγ-Globulin
from bovine blood(製品番号G5009)を、0.1重量%となるよう溶解して0.1重量%ウシγ-グロブリン・PBS溶液(以下γG/PBSと略記する)を得た。このγG/PBSを使用し、上記γG/20mM-PB Fluxの測定と同様の方法で、γG/PBS Fluxを測定した。
9.静脈注射用免疫グロブリン透過率および透過速度の測定
外筒つきミニモジュールの末端チップ2箇所(それぞれ内腔流入口、内腔流出口と呼称する)に回路を接続し、中空糸膜内腔への液導入出を可能にした。液導入側には液の流入圧を測定できるようにした。液導出側は鉗子で封じて流れを止め、モジュールの内腔流入口から入った液が全量濾過されるようにした。武田薬品工業(株)社から市販されている献血グロベニン-I-ニチヤクを、添付された溶解液で溶解して5%濃度とし、さらにこれをPBSで5倍希釈して1.0%静脈注射用ヒト免疫グロブリン製剤溶液(以下IVIGと略記する)を得た。1.0%IVIGを加圧タンクに入れて25℃に保温し、濾過圧が1.0barになるようレギュレーターで圧力を制御しながら、外筒つきミニモジュールの内腔に導入した。中空糸膜外面から得られる濾過液を、チップの側管から回収した。濾液は、中空糸膜面積1m2あたり2Lの濾液が得られるごとに(濾過負荷量2 L/m2ごとに)容器を換えて受けた。免疫グロブリン透過率は、100[%]×(濾液中のタンパク濃度)/(被濾過液のタンパク濃度)で算出した。ここで、被濾過液および濾液中のタンパク濃度は280nmの吸光度を測定し、既知濃度の免疫グロブリン溶液で作成した検量線から濃度を算出した。また、各画分分取時の濾過圧、膜面積、濾液量、濾過所要時間から上記式[3]により、IVIGの透過速度(以下IVIG Fluxと略記する)を算出した。
10.バクテリオファージφX174のクリアランス指数測定
(1)試験用ファージ液の調製
既述の手法で調製したPBSで、シグマアルドリッチジャパン(株)社から市販されているAlbumin from bovine serum(製品番号A2153)を、0.1重量%となるよう溶解して0.1重量%BSA溶液(以下単にBSA溶液と呼称する)を得た。凍結保存した濃厚なφX174含有液(力価1〜10×109pfu/mL)を解凍し、このBSA溶液で100倍に希釈した。さらに、0.1μm孔径のメンブレンフィルターで濾過、凝集成分などを除去して試験用ファージ液とした。
(2)試験用ファージ液を使用した濾過試験
外筒つきミニモジュールの末端チップ2箇所(それぞれ内腔流入口、内腔流出口と呼称する)に回路を接続し、中空糸膜内腔への液導入出を可能にした。液導入側には液の流入圧を測定できるようにした。液導出側は鉗子で封じて流れを止め、モジュールの内腔流入口から入った液が全量濾過されるようにした。試験用ファージ液を加圧タンクに入れて25℃に保温し、濾過圧が1.0barになるようレギュレーターで圧力を制御しながら、外筒つきミニモジュールの内腔に導入した。中空糸膜外面から得られる濾過液を、チップの側管から回収した。濾過は、中空糸膜面積1m2あたり50Lの濾液が得られるまで実施した。
(3)試験用ファージ液と濾液のファージ力価測定
10mM濃度のMgSO4水溶液に、660nmでの吸光度が4.0となるように大腸菌を懸濁させておいた(以下E.Coli液と呼称する)。また、寒天培地、トップアガーを準備し、あらかじめ50℃に暖めておいた。特にトップアガーは、流動性を保っておくよう注意した。試験用ファージ液をBSA溶液で適当に希釈した液10μLと、E.Coli液50μLを混和し、37℃で20分インキュベートして大腸菌にファージを感染させた。インキュベート完了後、この混合液全量を、トップアガー3mLと混和し、速やかに全量を寒天培地上に展開した。寒天培地上でトップアガーが完全に固化した後、37℃で2〜4時間インキュベートした。インキュベート完了後、寒天培地上のプラーク数をカウントし、希釈倍率を考慮して試験用ファージ液の力価(以下Tpreと略記する)[pfu/mL]を算出した。同様の手法で濾液のファージ力価(以下Tpostと略記する)を得た。
(4)中空糸膜のファージクリアランス指数算出
次式[4]により中空糸膜のファージクリアランス指数を算出した。ここで、Tpre[pfu/mL]とは評価用中空糸膜に導入した試験用ファージ液の力価を、Tpost[pfu/mL]とは試験用ファージ液を評価用中空糸膜で濾過して得られた濾液のファージ力価である。
ファージクリアランス指数 [LRV] =
log10(Tpre / Tpost) [4]
本発明1について具体例を挙げて、以下に説明する。
(実施例1)
PES(住友ケムテック社製スミカエクセル(登録商標)4800P)20.0重量部、BASF社製PVP(コリドン(登録商標)K90)5.5重量部、三菱化学社製NMP33.53重量部、三井化学社製TEG40.97重量部を60℃で3時間にわたって混合、溶解し均一な溶液を得た。さらに、60℃で常圧−700mmHgまで減圧した後、溶媒等が揮発して溶液組成が変化しないようにすぐに系内を密封して4時間放置脱泡を行い、この溶液を製膜溶液とした。二重管ノズルの環状部から上記製膜溶液を、中心部から芯液としてTEGを吐出し、20mmのエアギャップを経て、NMP27重量部、TEG33重量部、RO水40重量部の混合液からなる外部凝固液を満たした凝固浴に導いた。この際、ノズル温度は66℃、外部凝固液温度は46℃に設定した。凝固浴は第1凝固浴、第2凝固浴のふたつを準備し、第1凝固浴内では直径12mmの棒状ガイドを3個使用して中空糸膜の進行方向を徐々に変えて引き出した。その後、ローラー3個で走行方向を変更しながら2000mmの空走を経た後第2凝固浴に中空糸膜を導入した。さらに中空糸膜は、第2凝固浴内を走行させ、第2凝固浴から引き出した後に洗浄槽を走行させてオンラインでの洗浄を実施後、巻取り機で巻き取った。
紡糸速度は18m/分、第1凝固浴での中空糸膜の浸漬深さは液面からの最深部で200mm、第1凝固浴内での中空糸膜の走行距離は800mm、第2凝固浴内での中空糸膜の走行距離は1200mmであった。中空糸膜は、内径が約280μm、膜厚が約80μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御した。上記の条件から算出される中空糸膜のエアギャップ部滞留時間は0.067秒、凝固浴滞留時間は第1凝固浴で2.67秒、第2凝固浴で4秒、あわせて6.67秒、第1凝固浴と第2凝固浴の間の空走部分の滞留時間は6.67秒であった。洗浄槽には55℃の温水を満たし、洗浄槽における中空糸膜の滞留時間が11秒になるよう走行長を設定した。
巻き取った中空糸膜は、本数800本、長さ35cmのバンドルとし、90℃のRO水に60分、直立状態で浸漬して加熱処理を行った。なお、巻取り開始からバンドル化を経て、加熱処理に供されるまでの時間は、10〜90分になるようにした。巻取り機は20℃に設定された環境に設置し、巻取りからバンドル化までの処理温度が20℃になるようにした。巻き取った中空糸膜の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は26重量%であった。すなわち、中空糸膜は有機成分濃度26重量%の芯液と接触した状態で、20℃において10〜90分のエージングを施したこととなる。
加熱処理が完了した中空糸膜は、濡れた状態のまま、速やかに40℃の温水を入れた高圧蒸気滅菌機に水没させ、132℃×20minの条件で高圧熱水処理を行った。その後、50℃で10時間にわたり熱風乾燥を実施し、内径287μm、膜厚75μmの中空糸膜(A)を得た。SEM観察を行ったところ、中空糸膜(A)は、外壁表面(内側から外側へ向けて濾過を実施する場合の濾過下流側表面)がドット状開孔、内腔表面(内側から外側へ向けて濾過を実施する場合の濾過上流側表面)が微粒子集合体構造、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造、膜厚部分が実質的にマクロボイドを持たない構造であった。既述の方法によって中空糸膜(A)の純水Flux、γG Fluxを測定し、その値からFlux比を算出した。これら中空糸膜(A)の特徴・特性は表1にまとめて示した。
Figure 0005207150
記述の方法によって、中空糸膜(A)の免疫グロブリン透過率(IVIG透過率)を測定した。濾過負荷量2 L/m2、6 L/m2、16 L/m2、24 L/m2時点でのIVIG透過率を求め、次式[5]により「IVIG透過率保持率」を算出して経時的なIVIG透過率の安定性の指標とした。
IVIG透過率保持率 [%]
= 100×(濾過負荷量24L/m2時点のIVIG透過率)÷(濾過負荷量2L/m2時点のIVIG透過率)
既述の方法によって、中空糸膜(A)のバクテリオファージφX174のクリアランス指数(以下φX174クリアランスと略記する)を測定した。IVIG透過率、IVIG透過率保持率、φX174クリアランスは中空糸膜のタンパク透過・バクテリオファージ除去性能として、表2にまとめて示した。
Figure 0005207150
(実施例2)
製膜溶液の構成をPES(4800P)20.0重量部、PVP(K90)6.0重量部、NMP33.3重量部、TEG40.7重量部とし、芯液をNMP38.25重量部、TEG46.75重量部、RO水15重量部の混合液体とし、ノズル温度を56℃に、外部凝固液温度を55℃に変更した以外は実施例1と同様にして、内径が約280μm、膜厚が約80μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御し、内径274μm、膜厚86μmの中空糸膜(B)を得た。なお、製膜のプロセスにおける巻取り時点での中空糸膜(B)の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は35重量%であった。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(実施例3)
製膜溶液の構成をPES(4800P)20.0重量部、PVP(K30)6.0重量部、NMP33.3重量部、TEG40.7重量部とし、ノズル温度を66℃に、外部凝固液温度を40℃に変更した以外は実施例1と同様にして、内径が約280μm、膜厚が約120μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御し、内径271μm、膜厚119μmの中空糸膜(C)を得た。なお、製膜のプロセスにおける巻取り時点での中空糸膜(C)の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は19重量%であった。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(実施例4)
製膜溶液の構成をPSf(アモコ社製P-3500)20.0重量部、PVP(K90)6.0重量部、NMP33.3重量部、TEG40.7重量部とし、芯液をNMP38.25重量部、TEG46.75重量部、RO水15重量部の混合液体とし、ノズル温度を55℃に、外部凝固液温度を54℃に変更した以外は実施例1と同様にして、内径が約280μm、膜厚が約80μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御し、内径282μm、膜厚84μmの中空糸膜(D)を得た。なお、製膜のプロセスにおける巻取り時点での中空糸膜(D)の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は33重量%であった。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(比較例1)
PES(4800P)20.0重量部、PVP(K90)1.0重量部、NMP35.55重量部、TEG43.45重量部を実施例1と同様の方法で溶解し、製膜溶液を得た。二重管ノズルの環状部から上記製膜溶液を、中心部から芯液として NMP36重量部、TEG44重量部、RO水20重量部の混合液体を吐出し、20mmのエアギャップを経て、NMP27重量部、TEG33重量部、RO水40重量部の混合液からなる外部凝固液を満たした凝固浴に導いた。この際、ノズル温度は65℃、外部凝固液温度は55℃に設定した。凝固浴は第1凝固浴、第2凝固浴のふたつを準備し、第1凝固浴内では直径12mmの棒状ガイドを1個で中空糸膜の進行方向を変えて引き出した。その後、ローラー3個で走行方向を変更しながら2000mmの空走を経た後第2凝固浴に中空糸膜を導入した。さらに中空糸膜は、第2凝固浴内を走行させ、第2凝固浴から引き出した後に洗浄槽を走行させてオンラインでの洗浄を実施後、巻取り機で巻き取った。
紡糸速度は18m/分、第1凝固浴での中空糸膜の浸漬深さは液面からの最深部で250mm、第1凝固浴内での中空糸膜の走行距離は800mm、第2凝固浴内での中空糸膜の走行距離は1200mmであった。中空糸膜は、内径が約280μm、膜厚が約120μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御した。上記の条件から算出される中空糸膜のエアギャップ部滞留時間は0.067秒、凝固浴滞留時間は第1凝固浴で2.67秒、第2凝固浴で4秒、あわせて6.67秒、第1凝固浴と第2凝固浴の間の空走部分の滞留時間は6.67秒であった。洗浄槽には55℃の温水を満たし、洗浄槽における中空糸膜の滞留時間が75秒になるよう走行長を設定した。
巻き取った中空糸膜は、本数800本、長さ35cmのバンドルとし、90℃のRO水に60分、直立状態で浸漬して加熱処理を行った。なお、巻取り開始からバンドル化を経て、加熱処理に供されるまでの時間は、10〜90分になるようにした。巻取り機は20℃に設定された環境に設置し、巻取りからバンドル化までの処理温度が20℃になるようにした。巻き取った中空糸膜の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は1.2重量%であった。すなわち、中空糸膜は有機成分濃度1.2重量%の芯液と接触した状態で、20℃において10〜90分のエージングを施したこととなる。
加熱処理が完了した中空糸膜は50℃で10時間にわたり熱風乾燥を実施し、内径284μm、膜厚116μmの中空糸膜(E)を得た。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(比較例2)
製膜溶液の構成をPES(4800P)19.0重量部、PVP(K90)2.0重量部、NMP35.55重量部、TEG43.45重量部に変更し、内径が約280μm、膜厚が約140μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御した以外は比較例1と同様にして、内径280μm、膜厚144μmの中空糸膜(C)を得た。なお、製膜のプロセスにおける巻取り時点での中空糸膜(F)の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は1.8重量%であった。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(比較例3)
製膜溶液の構成をPES(4800P)20.0重量部、PVP(K30)3.0重量部、NMP34.65重量部、TEG42.35重量部に変更し、芯液をNMP20重量部、TEG80重量部の混合液体とし、ノズル温度を68℃に、外部凝固液温度を40℃に変更した以外は比較例1と同様にして、内径が約280μm、膜厚が約120μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御し、内径279μm、膜厚125μmの中空糸膜(G)を得た。なお、製膜のプロセスにおける巻取り時点での中空糸膜(G)の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は2.6重量%であった。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(比較例4)
実施例2で得た中空糸膜(B)を使用し、外側から内側へ(外壁表面から内腔表面に向けて)濾過することによって、IVIG透過率、IVIG透過率保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
IVIG透過率、IVIG透過率保持率、φX174クリアランスの結果から明らかになったように、本発明の多孔質中空糸膜は、タンパク質が効率よく透過し、その透過率の経時的な落ち込みが少なく、さらに充分なバクテリオファージ除去性能が同時に発揮されている。本発明の特徴である特定の膜構造、純水Flux値、Flux比がこれらの優れた特性の発揮に寄与していると考えられる。また、一方で、比較例の結果から明らかになったように、特定の膜構造、純水Flux値、Flux比いずれかの構成要件が満たされていない場合には、タンパク質透過、バクテリオファージ除去性能のいずれかが不十分となってしまっている。
本発明2について具体例を挙げて、以下に説明する。
(実施例5)
PES(住友ケムテック社製スミカエクセル(登録商標)4800P)20.0重量部、BASF社製PVP(コリドン(登録商標)K90)6重量部、三菱化学社製NMP33.3重量部、三井化学社製TEG40.7重量部を50℃で3時間にわたって混合、溶解し均一な溶液を得た。さらに、50℃で常圧−700mmHgまで減圧した後、溶媒等が揮発して溶液組成が変化しないようにすぐに系内を密封して4時間放置脱泡を行い、この溶液を製膜溶液とした。二重管ノズルの環状部から上記製膜溶液を、中心部から芯液としてNMP38.25重量部、TEG46.75重量部、RO水15重量部の混合液を吐出し、20mmのエアギャップを経て、NMP26.1重量部、TEG31.9重量部、RO水42重量部の混合液からなる外部凝固液を満たした凝固浴に導いた。この際、ノズル温度は55℃、外部凝固液温度は55℃に設定した。凝固浴は第1凝固浴、第2凝固浴のふたつを準備し、第1凝固浴内では直径12mmの棒状ガイドを3個使用して中空糸膜の進行方向を徐々に変えて引き出した。その後、ローラー3個で走行方向を変更しながら2000mmの空走を経た後第2凝固浴に中空糸膜を導入した。さらに中空糸膜は、第2凝固浴内を走行させ、第2凝固浴から引き出した後に洗浄槽を走行させてオンラインでの洗浄を実施後、巻取り機で巻き取った。
紡糸速度は18m/分、第1凝固浴での中空糸膜の浸漬深さは液面からの最深部で200mm、第1凝固浴内での中空糸膜の走行距離は800mm、第2凝固浴内での中空糸膜の走行距離は1200mmであった。中空糸膜は、内径が約280μm、膜厚が約80μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御した。上記の条件から算出される中空糸膜のエアギャップ部滞留時間は0.067秒、凝固浴滞留時間は第1凝固浴で2.67秒、第2凝固浴で4秒、あわせて6.67秒、第1凝固浴と第2凝固浴の間の空走部分の滞留時間は6.67秒であった。洗浄槽には55℃の温水を満たし、洗浄槽における中空糸膜の滞留時間が11秒になるよう走行長を設定した。
巻き取った中空糸膜は、本数800本、長さ35cmのバンドルとし、85℃のRO水に60分、直立状態で浸漬して加熱処理を行った。なお、巻取り開始からバンドル化を経て、加熱処理に供されるまでの時間は、10〜90分になるようにした。巻取り機は20℃に設定された環境に設置し、巻取りからバンドル化までの処理温度が20℃になるようにした。巻き取った中空糸膜の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は37重量%であった。すなわち、中空糸膜は有機成分濃度37重量%の芯液と接触した状態で、20℃において10〜90分のエージングを施したこととなる。
加熱処理が完了した中空糸膜は、濡れた状態のまま、速やかに40℃の温水を入れた高圧蒸気滅菌機に水没させ、132℃×20minの条件で高圧熱水処理を行った。その後、50℃で10時間にわたり熱風乾燥を実施した。1重量%のグルコース水溶液をアルミラミネート袋に準備し、この溶液に中空糸膜バンドルを浸漬した状態で封じて20kGyのγ線を照射した。γ線照射の完了した中空糸膜は水洗後、50℃で10時間にわたり熱風乾燥を実施し、内径275μm、膜厚85μmの中空糸膜(H)を得た。SEM観察(段落[0021]、[0024]参照)を行ったところ、中空糸膜(H)は、外壁表面(内側から外側へ向けて濾過を実施する場合の濾過下流側表面)がドット状開孔、内腔表面(内側から外側へ向けて濾過を実施する場合の濾過上流側表面)が網目構造、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造、膜厚部分が実質的にマクロボイドを持たない構造であった。既述の方法によって中空糸膜(H)の純水Flux、γG/20mM-PB Flux、γG/PBS Fluxを測定し、Flux比を算出した。これら中空糸膜(H)の特徴・特性は表1にまとめて示した。
Figure 0005207150
既述の方法によって、中空糸膜(H)の免疫グロブリン透過率(IVIG透過率)を測定した。濾過負荷量2 L/m2、20 L/m2、24 L/m2、28 L/m2、30 L/m2時点でのIVIG透過率を求め、次式[5]により「IVIG透過率保持率」を算出して経時的なIVIG透過率の安定性の指標とした。
IVIG透過率保持率 [%]
= 100×(濾過負荷量30L/m2時点のIVIG透過率)÷(濾過負荷量2L/m2時点のIVIG透過率)
既述の方法によって、中空糸膜(H)の免疫グロブリン透過速度(IVIG Flux)を測定した。濾過負荷量2 L/m2、20 L/m2、24 L/m2、28 L/m2、30 L/m2時点でのIVIG Fluxを求め、次式[5]により「IVIG Flux保持率」を算出して経時的なIVIG Fluxの安定性の指標とした。
IVIG Flux保持率 [%]
= 100×(濾過負荷量30L/m2時点のIVIG Flux)÷(濾過負荷量2L/m2時点のIVIG Flux)
既述の方法によって、中空糸膜(H)のバクテリオファージφX174のクリアランス指数(以下φX174クリアランスと略記する)を測定した。IVIG透過率、IVIG透過率保持率、IVIG Flux、IVIG Flux保持率、φX174クリアランスは中空糸膜のタンパク透過・バクテリオファージ除去性能として、表2にまとめて示した。
Figure 0005207150
(実施例6)
ノズル温度を57℃に、エアギャップ長を10mmに、外部凝固液温度を63℃に変更した以外は実施例1と同様にして、内径が約280μm、膜厚が約80μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御し、内径276μm、膜厚88μmの中空糸膜(I)を得た。エアギャップ長が短縮されてことにより、中空糸膜のエアギャップ部滞留時間は0.033秒となった。なお、製膜のプロセスにおける巻取り時点での中空糸膜(I)の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は33重量%であった。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG/20mM-PB Flux測定、γG/PBS
Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、IVIG Flux、IVIG Flux保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(実施例7)
製膜溶液の構成をPSf(アモコ社製P-3500)20.0重量部、PVP(K90)6.0重量部、NMP33.3重量部、TEG40.7重量部とし、芯液をNMP38.25重量部、TEG46.75重量部、RO水15重量部の混合液体とし、ノズル温度を56℃に、外部凝固液温度を55℃に変更した以外は実施例1と同様にして、内径が約280μm、膜厚が約80μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御し、内径280μm、膜厚83μmの中空糸膜(J)を得た。なお、製膜のプロセスにおける巻取り時点での中空糸膜(J)の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は32重量%であった。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG/20mM-PB Flux測定、γG/PBS Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、IVIG Flux、IVIG Flux保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(比較例5)
PES(4800P)20.0重量部、PVP(K90)1.0重量部、NMP35.55重量部、TEG43.45重量部を実施例1と同様の方法で溶解し、製膜溶液を得た。二重管ノズルの環状部から上記製膜溶液を、中心部から芯液として NMP36重量部、TEG44重量部、RO水20重量部の混合液体を吐出し、20mmのエアギャップを経て、NMP26.1重量部、TEG31.9重量部、RO水42重量部の混合液からなる外部凝固液を満たした凝固浴に導いた。この際、ノズル温度は65℃、外部凝固液温度は55℃に設定した。凝固浴は第1凝固浴、第2凝固浴のふたつを準備し、第1凝固浴内では直径12mmの棒状ガイドを1個で中空糸膜の進行方向を変えて引き出した。その後、ローラー3個で走行方向を変更しながら2000mmの空走を経た後第2凝固浴に中空糸膜を導入した。さらに中空糸膜は、第2凝固浴内を走行させ、第2凝固浴から引き出した後に洗浄槽を走行させてオンラインでの洗浄を実施後、巻取り機で巻き取った。
紡糸速度は18m/分、第1凝固浴での中空糸膜の浸漬深さは液面からの最深部で250mm、第1凝固浴内での中空糸膜の走行距離は800mm、第2凝固浴内での中空糸膜の走行距離は1200mmであった。中空糸膜は、内径が約280μm、膜厚が約120μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御した。上記の条件から算出される中空糸膜のエアギャップ部滞留時間は0.067秒、凝固浴滞留時間は第1凝固浴で2.67秒、第2凝固浴で4秒、あわせて6.67秒、第1凝固浴と第2凝固浴の間の空走部分の滞留時間は6.67秒である。洗浄槽には55℃の温水を満たし、洗浄槽における中空糸膜の滞留時間が75秒になるよう走行長を設定した。
巻き取った中空糸膜は、本数800本、長さ35cmのバンドルとし、85℃のRO水に60分、直立状態で浸漬して加熱処理を行った。なお、巻取り開始からバンドル化を経て、加熱処理に供されるまでの時間は、10〜90分になるようにした。巻取り機は20℃に設定された環境に設置し、巻取りからバンドル化までの処理温度が20℃になるようにした。巻き取った中空糸膜の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は1.3重量%であった。すなわち、中空糸膜は有機成分濃度1.3重量%の芯液と接触した状態で、20℃において10〜90分のエージングを施したこととなる。
加熱処理が完了した中空糸膜は、濡れた状態のまま、速やかに40℃の温水を入れた高圧蒸気滅菌機に水没させ、132℃×20minの条件で高圧熱水処理を行った。その後、50℃で10時間にわたり熱風乾燥を実施し、内径282μm、膜厚115μmの中空糸膜(K)を得た。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG/20mM-PB Flux測定、γG/PBS Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、IVIG Flux、IVIG Flux保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(比較例6)
製膜溶液の構成をPES(4800P)19.0重量部、PVP(K90)2.0重量部、NMP35.55重量部、TEG43.45重量部に変更し、内径が約280μm、膜厚が約140μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御した以外は比較例1と同様にして、内径278μm、膜厚140μmの中空糸膜(L)を得た。なお、製膜のプロセスにおける巻取り時点での中空糸膜(L)の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は1.6重量%であった。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG/20mM-PB Flux測定、γG/PBS Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、IVIG Flux、IVIG Flux保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(比較例7)
製膜溶液の構成をPES(4800P)20.0重量部、PVP(K30)3.0重量部、NMP34.65重量部、TEG42.35重量部に変更し、芯液をNMP20重量部、TEG80重量部の混合液体とし、ノズル温度を68℃に、外部凝固液温度を40℃に変更した以外は比較例1と同様にして、内径が約280μm、膜厚が約120μmになるよう、製膜溶液、芯液の吐出量を制御し、内径278μm、膜厚123μmの中空糸膜(M)を得た。なお、製膜のプロセスにおける巻取り時点での中空糸膜(M)の内腔に含まれる芯液の有機成分濃度は2.5重量%であった。実施例1と同様にSEM観察、水Flux測定、γG/20mM-PB Flux測定、γG/PBS Flux測定を実施し、Flux比を算出した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様にIVIG透過率、IVIG透過率保持率、IVIG Flux、IVIG Flux保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
(比較例8)
実施例1で得た中空糸膜(H)を使用し、外側から内側へ(外壁表面から内腔表面に向けて)濾過することによって、IVIG透過率、IVIG透過率保持率、IVIG Flux、IVIG Flux保持率、φX174クリアランスを測定、算出した。結果は表2に示した。
IVIG透過率、IVIG透過率保持率、IVIG
Flux、IVIG Flux保持率、φX174クリアランスの結果から明らかになったように、本発明のタンパク質含有液処理用多孔質中空糸膜は、タンパク質が効率よく透過し、その透過率、Fluxの経時的な落ち込みが少なく、さらに充分なバクテリオファージ除去性能が同時に発揮されている。本発明の特徴である特定の膜構造、純水Flux値、Flux比がこれらの優れた特性の発揮に寄与していると考えられる。また、一方で、比較例の結果から明らかになったように、特定の膜構造、純水Flux値、Flux比いずれかの構成要件が満たされていない場合には、タンパク質透過、バクテリオファージ除去性能のいずれかが不十分となってしまっている。
本発明の多孔質中空糸膜は、溶液に含まれる小径ウィルスなどの除去物質を効率よく分離除去することができ、同時に、タンパク質などの有用回収物質が効率よく透過し、その透過率、溶液の透過速度の経時的な落ち込みが少ないという利点を有し、特に、タンパク質溶液からのウィルス除去に有用であり、産業界に大きく寄与する。

Claims (6)

  1. ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンからなる多孔質中空糸膜であって、濾過下流側表面がドット状またはスリット状の開孔を有し、濾過上流側表面が網目構造または微粒子集合体構造からなり、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造からなり、かつ膜厚部分が実質的にマクロボイドを持たない構造からなり、純水の透過速度が10〜300L/(h・m・bar)であり、0.1重量%のウシγ−グロブリン溶液の透過速度が純水の透過速度の30〜100%であることを特徴とする多孔質中空糸膜。
  2. 内径が200〜400μm、膜厚が50〜200μmである請求項1記載の多孔質中空糸膜。
  3. タンパク質溶液からウィルスを分離するために使用される膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質中空糸膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質中空糸膜の製造方法であって、中空糸膜が、乾湿式紡糸法で製造され、10〜40重量%のポリスルホン系高分子、2〜15重量%のポリビニルピロリドン、及び25/75〜50/50の重量比の溶媒/非溶媒を含有する製膜溶液をノズルから吐出した後に凝固浴内に導いてから凝固浴から引き上げるまでに複数のポイントでガイドを使用して方向を転換していること、及び製膜後、洗浄を経て得られた中空糸膜が、10〜60重量%の有機成分濃度の芯液を中空糸内腔に接触させた状態でエージングを施した後、熱水への浸漬処理を行なっていることを特徴とする製造方法
  5. ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンからなる多孔質中空糸膜であって、濾過下流側表面がドット状またはスリット状の開孔を有し、濾過上流側表面が網目構造または微粒子集合体構造からなり、膜厚部分の中心領域が実質的に均質な構造からなり、かつ膜厚部分が実質的にマクロボイドを持たない構造からなり、純水の透過速度が10〜300L/(h・m・bar)であり、ウシγ−グロブリンの0.1重量%−20mmol/Lリン酸緩衝液溶液の透過速度がウシγ−グロブリンの0.1重量%−リン酸緩衝生理食塩水溶液の透過速度の30〜100%であることを特徴とするタンパク質含有液処理用多孔質中空糸膜。
  6. 請求項5に記載の多孔質中空糸膜の製造方法であって、中空糸膜が、乾湿式紡糸法で製造され、10〜40重量%のポリスルホン系高分子、2〜15重量%のポリビニルピロリドン、及び25/75〜50/50の重量比の溶媒/非溶媒を含有する製膜溶液をノズルから吐出した後に凝固浴内に導いてから凝固浴から引き上げるまでに複数のポイントでガイドを使用して方向を転換していること、及び製膜後、洗浄を経て得られた中空糸膜が、10〜60重量%の有機成分濃度の芯液を中空糸内腔に接触させた状態でエージングを施した後、熱水への浸漬処理を行なっていることを特徴とする製造方法
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