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JP5163879B2 - 耐欠損性と耐摩耗性にすぐれたダイヤモンド被覆工具 - Google Patents

耐欠損性と耐摩耗性にすぐれたダイヤモンド被覆工具 Download PDF

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JP5163879B2 JP2008099358A JP2008099358A JP5163879B2 JP 5163879 B2 JP5163879 B2 JP 5163879B2 JP 2008099358 A JP2008099358 A JP 2008099358A JP 2008099358 A JP2008099358 A JP 2008099358A JP 5163879 B2 JP5163879 B2 JP 5163879B2
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Description

この発明は、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体にダイヤモンド皮膜を被覆したダイヤモンド被覆工具に関し、特に、金属材料よりも比強度、比剛性の高いCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics。炭素繊維強化プラスチック)あるいは溶着性の高いAl合金等の高速切削に際し、長期の使用に亘って、シャープな切刃が維持されるとともにバリ発生が少なく、すぐれた耐欠損性とすぐれた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆工具に関するものである。
従来、炭化タングステン基(WC基)超硬合金または炭窒化チタン基(TiCN基)サーメットなどの工具基体に、ダイヤモンド皮膜を被覆したダイヤモンド被覆工具が知られており、
例えば、工具基体表面に、ダイヤモンドの結晶成長の起点となる核付着工程およびダイヤモンドを結晶成長させる結晶成長工程とを繰り返し行うことにより、結晶粒径が微細なダイヤモンド皮膜を被覆したダイヤモンド被覆工具が知られており、この被覆工具を用いたAl合金の切削加工で、すぐれた面精度を得られることが知られている。
また、ダイヤモンド皮膜を、ラマン分光分析によるダイヤモンドのピーク強度Iに対する非ダイヤモンド炭素のピーク強度Iの強度比I/Iが0.7以下の層と、I/Iが0.9以上の層とを交互に積層したダイヤモンド被覆工具も知られており、この被覆工具をAl合金の切削加工に用いた場合、靭性、耐欠損性、耐摩耗性にすぐれることも知られている。
特開2002−79406号公報 特開平6−297207号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴って、切削条件はますます高速化している。上記の従来被覆工具は、これを通常条件での切削加工に用いた場合には特段の問題は生じないが、これを、一般の金属材料に比して、比強度、比剛性にすぐれるCFRPの高速切削に用いた場合には、CFRPは炭素繊維とエポキシ系樹脂の複合材であるため工具摩耗が激しいばかりか欠損が生じやすく、工具寿命が短命であるという問題点があった。
また、従来被覆工具を、軟質で溶着性の高いAl合金等の高速切削に用いた場合には、切削時の高熱発生により、溶着性の高い被削材(Al合金)の切粉が、工具切刃へ溶着することにより、シャープな切刃を維持することが困難であるばかりか、欠損が生じやすくなるという問題点があった。
この結果、CFRP、Al合金等の高速切削加工に用いた場合、ダイヤモンド被覆工具の寿命は短いばかりか、さらに、被削材のバリ発生のために仕上げ面精度が粗くなり、寸法精度も劣るという問題点があった。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に難削材であるCFRPあるいは溶着性の高いAl合金等の高速切削加工で、シャープな切刃を維持しつつ、バリの発生を抑制し、長期の使用に亘って、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を備えたダイヤモンド被覆工具を開発すべく鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
図1には、請求項1に係る本発明のダイヤモンド被覆工具の側断面の概略図を示すが、図1において、工具基体1の表面に、例えば、マイクロ波プラズマCVD法、熱フィラメントCVD法、アークプラズマCVD法等のダイヤモンド気相合成法によって、膜厚0.8〜5μmの配向ダイヤモンド皮膜2を形成し、ついで、該配向ダイヤモンド皮膜2の上面に、膜厚0.05〜0.5μmの無配向ダイヤモンド皮膜4を蒸着形成し、少なくとも3層以上の積層構造を構成するようにダイヤモンド皮膜を被覆し、さらに、上記配向ダイヤモンド皮膜が、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて測定・作成した結晶面の傾斜角度数分布グラフにおいて、(110)面または(111)面が該傾斜角度数分布グラフの0〜10度の傾斜角区分で50%以上の度数を占める配向ダイヤモンド皮膜で構成されている場合には、このダイヤモンド被覆工具は、シャープな切刃を維持しつつ、バリの発生が少なく、長期の使用に亘って、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を備えること。
また、図2には、請求項2に係る本発明のダイヤモンド被覆工具の側断面の概略図を示すが、図2において、工具基体1の表面に、例えば、マイクロ波プラズマCVD法、熱フィラメントCVD法、アークプラズマCVD法等のダイヤモンド気相合成法によって、配向ダイヤモンド皮膜2と無配向ダイヤモンド皮膜4の積層構造を構成すると同時に、上記配向ダイヤモンド皮膜2のうちの少なくとも一つの層を、膜厚0.8〜5μmのΣ3対応粒界比率の高いダイヤモンド皮膜(以下、高Σ3ダイヤモンド皮膜という)3で構成したものであり、このダイヤモンド被覆工具は、高Σ3ダイヤモンド皮膜の備えるより一段とすぐれた高温強度によって、シャープな切刃を維持しつつ、バリの発生が少なく、長期の使用に亘って、さらに一段とすぐれた耐欠損性と耐摩耗性を備えること。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体表面にダイヤモンド皮膜が被覆されたダイヤモンド被覆工具において、
上記ダイヤモンド皮膜は、一層膜厚0.8〜5μmの配向ダイヤモンド皮膜と一層膜厚0.05〜0.5μmの無配向ダイヤモンド皮膜との少なくとも3層以上の積層構造からなり、さらに、前記配向ダイヤモンド皮膜は、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(110)面および(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表した場合、(110)面または(111)面の少なくともいずれかの面について、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すダイヤモンド皮膜であることを特徴とするダイヤモンド被覆工具。
(2) 前記(1)記載のダイヤモンド被覆工具において、
上記配向ダイヤモンド皮膜のうちの少なくとも一つの層は、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対して垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(110)面および(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点に炭素からなる構成原子が存在するダイヤモンド構造の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(Nはダイヤモンド構造の結晶構造上、2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が40%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示す高Σ3ダイヤモンド皮膜であることを特徴とする前記(1)記載のダイヤモンド被覆工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明のダイヤモンド被覆工具の被覆層について、詳細に説明する。
請求項1に係る本発明の配向ダイヤモンド皮膜は、例えば、
通常の熱フィラメント法による化学蒸着装置を用い、
(110)面配向皮膜は、
フィラメント温度 2200〜2400℃、
フィラメント−基板間隔 10〜30mm、
基板温度 750〜900℃、
反応圧力 1.33〜13.3kPa、
反応ガス CH:0.5〜3vol%,H:残、
(111)面配向皮膜は、
フィラメント温度 2400〜2600℃、
フィラメント−基板間隔 10〜30mm、
基板温度 900〜1050℃、
反応圧力 1.33〜13.3kPa、
反応ガス CH:2〜6vol%,H:残、
という条件の化学蒸着で、一層膜厚が0.8〜5μmになるように蒸着形成するが、一層膜厚が0.8μm未満では、所定の耐摩耗性を確保することができず、一方、5μmを超える一層膜厚となった場合には、ダイヤモンド結晶粒が粗大化し、耐欠損性が低下するようになることから、配向ダイヤモンド皮膜の一層膜厚は0.8〜5μmとする必要がある。
配向ダイヤモンド皮膜は、無配向ダイヤモンド皮膜と比べて、高硬度で耐熱温度が高いというすぐれた特性を備える。
また、無配向ダイヤモンド皮膜は、例えば、
フィラメント温度 1900〜2200℃、
フィラメント−基板間隔 10〜30mm、
基板温度 700〜850℃、
反応圧力 0.67〜6.7kPa、
反応ガス CH:3〜8vol%,H:残、
という条件の化学蒸着で、一層膜厚が0.05〜0.5μmになるように蒸着形成する。この無配向ダイヤモンド皮膜は、配向ダイヤモンド皮膜の結晶粒の成長を遮断し、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有するとともに、配向ダイヤモンド皮膜の再核生成と配向成長を促進する作用を有する。ただ、無配向ダイヤモンド皮膜の一層膜厚が0.05μm未満の場合には、十分な結晶粒粗大化抑制作用を期待できず、一方、一層膜厚が0.5μmを超えると、配向ダイヤモンドの核生成密度が低下することから、無配向ダイヤモンド皮膜の一層膜厚は0.05〜0.5μmとする。
上記配向ダイヤモンド皮膜と無配向ダイヤモンド皮膜について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(110)面および(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成したところ、配向ダイヤモンド皮膜では、(110)面または(111)面の少なくともいずれかの面について、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、無配向ダイヤモンド皮膜では、(110)面、(111)面のいずれの面についても、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークは存在せず、かつに、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計は、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の40%未満という小さな割合を占めるに過ぎなかった。
そして、上記(110)面、(111)面への配向を示す配向ダイヤモンド皮膜は、無配向ダイヤモンド皮膜に比して、すぐれた高硬度と高耐熱温度を相兼ね備えている。
請求項1に係る本発明では、上記の配向ダイヤモンド皮膜と無配向ダイヤモンド皮膜を、少なくとも3層以上積層することにより、ダイヤモンド被覆工具の耐欠損性、耐摩耗性のより一層の向上を図った。
即ち、配向ダイヤモンド皮膜と無配向ダイヤモンド皮膜との少なくとも3層以上の積層構造として構成されているために、ダイヤモンド結晶粒の粗大化が防止されるとともに、(110)面、(111)面への配向度が高まる。その結果、交互積層構造で厚膜化しても、配向ダイヤモンド皮膜は依然としてすぐれた高硬度と高耐熱温度を備えることから、被覆層全体の厚膜化(例えば、全体層厚は10〜30μm)を図ることができるとともに、すぐれた耐欠損性、耐摩耗性を長期の使用に亘って発揮することができる。
また、請求項2に係る高Σ3ダイヤモンド皮膜は、例えば、
フィラメント温度 2300〜2500℃、
フィラメント−基板間隔 5〜20mm、
基板温度 800〜950℃、
反応圧力 0.67〜6.7kPa、
反応ガス CH:1〜4vol%,N:0.3〜3.0vol%,H:残、
という条件の化学蒸着で、一層膜厚0.8〜5μmに蒸着形成することができる。
つまり、前記(110)面配向皮膜あるいは(111)面配向皮膜を成膜する条件の範囲内で、かつ、反応ガス中に微量のNガス成分を含有させた条件下で化学蒸着することによって形成することができる。
高Σ3ダイヤモンド皮膜は、配向ダイヤモンド皮膜の場合と同様に、無配向ダイヤモンド皮膜に比して、すぐれた高硬度を備え、さらに、より一段とすぐれた高強度を備えている。
また、高Σ3ダイヤモンド皮膜の一層膜厚が、0.8〜5μmの範囲を外れると、耐摩耗性、耐欠損性が低下することは、前記の配向ダイヤモンド皮膜の場合と同様である。
配向ダイヤモンド皮膜と無配向ダイヤモンド皮膜との積層構造において、配向ダイヤモンド皮膜の少なくとも一つの層を上記の高Σ3ダイヤモンド皮膜で構成すると、高Σ3ダイヤモンド皮膜の結晶粒の粗大化が、無配向ダイヤモンド皮膜によって防止されるとともに、高Σ3ダイヤモンド皮膜が一段とすぐれた高温強度を備えるために、ダイヤモンド被覆を厚膜化した場合であっても、欠損が発生する恐れはなく、その結果、長期の使用に亘ってより一段とすぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮することができる。
上記高Σ3ダイヤモンド皮膜および無配向ダイヤモンド皮膜について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対して垂直な切断断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(110)面および(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点に炭素からなる構成原子が存在するダイヤモンド構造の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(Nはダイヤモンド結晶構造上、2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフを作成したところ、高Σ3ダイヤモンド皮膜ではΣ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が40%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、無配向ダイヤモンド皮膜では、Σ3に最高ピークは存在せず、しかも、Σ3のΣN+1全体に占める分布割合は10%以下という小さな値であった。
そして、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が40%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示す上記高Σ3ダイヤモンド皮膜は、無配向ダイヤモンド皮膜に比して、すぐれた高硬度、さらに、一段とすぐれた高強度を兼ね備えるものである。
この発明のダイヤモンド被覆工具は、配向ダイヤモンド皮膜(あるいは、その一部を高Σ3ダイヤモンド皮膜で置き換えたもの)が無配向ダイヤモンド皮膜との積層構造を構成していることにより、ダイヤモンド結晶粒の粗大化が防止され、その結果、厚膜化を行った場合でも、配向ダイヤモンド皮膜あるいは高Σ3ダイヤモンド皮膜の備えるすぐれた特性(硬度、強度)の劣化が生じることはない。
したがって、CFRP、Al合金等の高速切削加工に用いた場合にも、シャープな切刃を維持したまま、バリの発生もなく、すぐれた耐欠損性および耐摩耗性を長期の使用に亘って発揮するものである。
つぎに、この発明のダイヤモンド被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例1、3は、請求項1に係る発明の実施例、また、実施例2、4は、請求項2に係る発明の実施例である。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が13mmの工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の丸棒焼結体から、研削加工にて、切刃部の直径×長さが10mm×22mmの寸法、並びにねじれ角30度の2枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)C−1〜C−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(エンドミル)C−1〜C−4の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した後、酸溶液によるエッチングおよび/またはアルカリ溶液によるエッチング処理を行い、さらに、ダイヤモンド粉末スラリー液を用いて超音波洗浄器で超音波処理を行なった後、
(a1)まず、
フィラメント温度 2300℃、
フィラメント−基板間隔 15mm、
基板温度 850℃、
反応圧力 2.0kPa、
反応ガス CH:1.5vol%,H:残、
という条件で蒸着し、工具基体の表面に、表2に示される一層目標膜厚の(110)面配向ダイヤモンド皮膜を形成し、
(b1)ついで、上記配向ダイヤモンド皮膜の表面に、
フィラメント温度 2000℃、
フィラメント−基板間隔 15mm、
基板温度 800℃、
反応圧力 2.66kPa、
反応ガス CH:4.5vol%,H:残、
という条件で、表2に示される一層目標膜厚の無配向ダイヤモンド皮膜を形成し、
(c1)上記(a1)、(b1)を所要回数繰り返し、所望積層数、所望目標層厚のダイヤモンド皮膜を被覆して本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明ダイヤモンド被覆エンドミル(以下、本発明エンドミルという)1〜4をそれぞれ製造した。
また、上記工具基体(エンドミル)C−5〜C−8の表面に上記と同様のコーティング前処理を行なった後、
(d1)まず、
フィラメント温度 2500℃、
フィラメント−基板間隔 15mm、
基板温度 950℃、
反応圧力 2.0kPa、
反応ガス CH:4.0vol%,H:残、
という条件で蒸着し、工具基体の表面に、表2に示される一層目標膜厚の(111)面配向ダイヤモンド皮膜を形成し、
(e1)ついで、上記配向ダイヤモンド皮膜の表面に、
フィラメント温度 2000℃、
フィラメント−基板間隔 15mm、
基板温度 800℃、
反応圧力 2.66kPa、
反応ガス CH:4.5vol%,H:残、
という条件で、表2に示される一層目標膜厚の無配向ダイヤモンド皮膜を形成し、
(f1)上記(d1)、(e1)を所要回数繰り返し、所望積層数、所望目標層厚のダイヤモンド皮膜を被覆して本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明ダイヤモンド被覆エンドミル(以下、本発明エンドミルという)5〜8をそれぞれ製造した。
比較の目的で、上記の工具基体(エンドミル)C−1〜C−4の表面に上記と同様のコーティング前処理を施した状態で、上記実施例1の(a1)と同一の条件で、上記工具基体(エンドミル)の表面に、表3に示される目標膜厚の配向ダイヤモンド皮膜のみを蒸着形成することにより、比較ダイヤモンド被覆工具としての比較ダイヤモンド被覆エンドミル(以下、比較エンドミルという)1〜4をそれぞれ製造した。
また、さらに比較の目的で、上記の工具基体(エンドミル)C−5〜C−8の表面に上記と同様のコーティング前処理を施した状態で、上記実施例1の(b1)と同一の条件で、上記工具基体(エンドミル)の表面に、表3に示される目標膜厚の無配向ダイヤモンド皮膜のみを蒸着形成することにより、比較ダイヤモンド被覆工具としての比較ダイヤモンド被覆エンドミル(以下、比較エンドミルという)5〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明エンドミル1〜8および上記比較エンドミル1〜8の配向ダイヤモンド皮膜および無配向ダイヤモンド皮膜について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(110)面および(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した。
図3に、一例として、本発明エンドミル1の配向ダイヤモンド皮膜の(110)面についての傾斜角度数分布グラフを示すが、本発明エンドミル1〜8および比較エンドミル1〜4の配向ダイヤモンド皮膜の(110)面の傾斜角度数分布グラフは、いずれもほぼ同様な傾斜角度数分布グラフを示し、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占めていた。
図4には、一例として、本発明エンドミル5の配向ダイヤモンド皮膜の(111)面についての傾斜角度数分布グラフを示すが、本発明エンドミル1〜8および比較エンドミル1〜4の配向ダイヤモンド皮膜の(111)面の傾斜角度数分布グラフは、いずれもほぼ同様な傾斜角度数分布グラフを示し、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占めた。
図5には、一例として、比較エンドミル6の無配向ダイヤモンド皮膜の(110)面についての傾斜角度数分布グラフを示すが、本発明エンドミル1〜8および比較エンドミル5〜8の配向ダイヤモンド皮膜の(110)面の傾斜角度数分布グラフは、いずれもほぼ同様な傾斜角度数分布グラフを示した。即ち、0〜10度の範囲内の傾斜角区分には特段のピークが存在せず、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計も、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の40%以下にすぎない小さな値であった。
図6には、一例として、比較エンドミル8の無配向ダイヤモンド皮膜の(111)面についての傾斜角度数分布グラフを示すが、本発明エンドミル1〜8および比較エンドミル5〜8の配向ダイヤモンド皮膜の(111)面の傾斜角度数分布グラフは、いずれもほぼ同様な傾斜角度数分布グラフを示した。即ち、0〜10度の範囲内の傾斜角区分には特段のピークが存在せず、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計も、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の40%以下にすぎない小さな値であった。
表2、表3に、本発明エンドミル1〜8および上記比較エンドミル1〜8の配向ダイヤモンド皮膜および無配向ダイヤモンドダイヤモンド皮膜について測定された最高ピークが存在する傾斜角区分、0〜10度の範囲内に存在する度数割合等を示す。
また、本発明エンドミル1〜8および比較エンドミル1〜4の配向ダイヤモンド皮膜について、平均ダイヤモンド粒径を測定したところ、比較エンドミル1〜4の配向ダイヤモンド皮膜では、平均ダイヤモンド粒径は2.0〜5.0μmであり、一方、本発明エンドミル1〜8の配向ダイヤモンド皮膜では、平均ダイヤモンド粒径は0.2〜1.5μmであることから、本発明の配向ダイヤモンド皮膜では、ダイヤモンド結晶粒の粗大化が充分抑制されていることがわかる。
つぎに、上記本発明エンドミル1〜8および上記比較エンドミル1〜8のうち、
本発明エンドミル1、2、5、6および比較エンドミル1、2、5、6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5mmの、炭素繊維と熱硬化型エポキシ系樹脂が直交積層構造を持つ炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)の板材、
切削速度: 250 m/min.、
切断加工:(5 mm)、
テーブル送り: 1600 mm/分、
エアーブロー、
の条件(切削条件A)での上記CFRPの乾式高速切断加工試験、
本発明エンドミル3、4、7、8および比較エンドミル3、4、7、8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmの、JIS・ADC12の板材、
切削速度: 400 m/min.、
溝深さ(切り込み):径方向(ae)2.5mm,軸方向(ap)8mm、
テーブル送り: 1300 mm/分、
エアーブロー、
の条件(切削条件B)での上記Al合金の乾式高速側面切削加工試験、
をそれぞれ行い、いずれの切削加工試験でも切刃部に欠損が発生するまでの切削溝長、あるいは、被削材にバリが発生するまでの切削溝長を測定した。
これらの測定結果を表4にそれぞれ示した。
Figure 0005163879
Figure 0005163879
Figure 0005163879
Figure 0005163879
次に、実施例1で使用したのと同じ工具基体(エンドミル)C−1〜C−8の表面に実施例1と同様のコーティング前処理を施した状態で、
(a1)まず、
フィラメント温度 2300℃、
フィラメント−基板間隔 15mm、
基板温度 850℃、
反応圧力 2.0kPa、
反応ガス CH:1.5vol%,H:残、
という条件で蒸着し、工具基体の表面に、表5に示される一層目標膜厚の(110)面配向ダイヤモンド皮膜を形成し、
(b2)ついで、上記(110)面配向ダイヤモンド皮膜の表面に、
フィラメント温度 2100℃、
フィラメント−基板間隔 15mm、
基板温度 800℃、
反応圧力 2.66kPa、
反応ガス CH:5.0vol%,H:残、
という条件で、表5に示される一層目標膜厚の無配向ダイヤモンド皮膜を形成し、上記(a1)および(b2)の工程を繰り返し行なうことにより、所望積層数のダイヤモンド皮膜を被覆するにあたり、
上記(a1)により形成される(110)面配向ダイヤモンド皮膜のうちの少なくとも一つの層については、
(a2)
フィラメント温度 2400℃、
フィラメント−基板間隔 15mm、
基板温度 850℃、
反応圧力 2.0kPa、
反応ガス CH:2.0vol%,N:1.0vol%,H:残、
という条件に変更して、表5に示される積層数、一層目標膜厚の高Σ3ダイヤモンド皮膜を蒸着形成することにより、
(c2)工具基体の表面に、(110)面配向ダイヤモンド皮膜および無配向ダイヤモンド皮膜の繰り返し積層および少なくとも一層の高Σ3ダイヤモンド皮膜からなる、所望積層数、所望目標層厚の、本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明ダイヤモンド被覆エンドミル(以下、本発明エンドミルという)11〜18をそれぞれ製造した。
つぎに、本発明エンドミル11〜18の高Σ3ダイヤモンド皮膜および前記比較エンドミル1〜8の配向ダイヤモンド皮膜および無配向ダイヤモンドダイヤモンド皮膜について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な切断断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(110)面および(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、構成原子であるC原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(Nは面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフを作成した。
図7に、一例として、本発明エンドミル14の高Σ3ダイヤモンド皮膜の構成原子共有格子点分布グラフを示すが、本発明エンドミル11〜18のいずれもΣ3に最高ピークが存在し、かつΣ3のΣN+1全体に占める分布割合が40%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示している。
これに対して、比較エンドミル1〜8の配向ダイヤモンド皮膜および無配向ダイヤモンドダイヤモンド皮膜の構成原子共有格子点分布グラフでは、Σ3に最高ピークが存在するものの、Σ3のΣN+1全体に占める分布割合は40%未満の小さな値であった。
図8には、一例として、比較エンドミル8の無配向ダイヤモンド皮膜の構成原子共有格子点分布グラフを示すが、比較エンドミル1〜8の配向ダイヤモンド皮膜および無配向ダイヤモンドダイヤモンド皮膜の構成原子共有格子点分布グラフは、いずれもほぼ同様な傾向を示した。
表5に、本発明エンドミル11〜18の高Σ3ダイヤモンド皮膜について測定されたΣ3のΣN+1全体に占める分布割合を示す。なお、参考のため、表3には、比較エンドミル1〜8の配向ダイヤモンド皮膜あるいは無配向ダイヤモンドダイヤモンド皮膜について測定したΣ3のΣN+1全体に占める分布割合を示す。
また、本発明エンドミル11〜18の高Σ3ダイヤモンド皮膜について、平均ダイヤモンド粒径を測定したところ、表5に示すように、平均ダイヤモンド粒径は0.2〜1.5μmであって、本発明の高Σ3ダイヤモンド皮膜では、ダイヤモンド結晶粒の粗大化が充分抑制されていることがわかる。
つぎに、上記本発明エンドミル11〜18のうち、
本発明エンドミル11、12、15、16について、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:8mmの、炭素繊維と熱硬化型エポキシ系樹脂が直交積層構造を持つ炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)の板材、
切削速度: 230 m/min.、
切断加工:(5 mm)、
テーブル送り: 1500 mm/分、
エアーブロー、
の条件(切削条件C)での上記CFRPの乾式高速切断加工試験、
本発明エンドミル13、14、17、18については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmの、JIS・ADC12の板材、
切削速度: 450 m/min.、
溝深さ(切り込み):径方向(ae)2.0mm,軸方向(ap)8mm、
テーブル送り: 1500 mm/分、
の条件(切削条件D)での上記Al合金の乾式高速側面切削加工試験、
をそれぞれ行い、いずれの切削加工試験でも切刃部に欠損が発生するまでの切削溝長、あるいは、被削材にバリが発生するまでの切削溝長を測定した。
これらの測定結果を表5にそれぞれ示した。
Figure 0005163879
上記の実施例1で製造した直径が13mmの丸棒焼結体を用い、この丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さが10mm×22mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(ドリル)D−1〜D−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(ドリル)D−1〜D−4の切刃に、ホーニングを施し、上記実施例1と同様のコーティング前処理を施した後、上記実施例1の(a1)〜(c1)と同一の条件で、工具基体(ドリル)D−1〜D−4の表面に、表6に示される積層数、目標層厚の配向ダイヤモンドおよび無配向ダイヤモンドからなるダイヤモンド皮膜を被覆して本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明ダイヤモンド被覆ドリル(以下、本発明ドリルという)1〜4をそれぞれ製造した。
また、上記工具基体(ドリル)D−5〜D−8の切刃に、ホーニングを施し、上記実施例1と同様のコーティング前処理を施した後、上記実施例1の(d1)〜(f1)と同一の条件で、工具基体(ドリル)D−5〜D−8の表面に、表6に示される積層数、目標層厚の配向ダイヤモンドおよび無配向ダイヤモンドからなるダイヤモンド皮膜を被覆して本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明ダイヤモンド被覆ドリル(以下、本発明ドリルという)5〜8をそれぞれ製造した。
比較の目的で、上記の工具基体(ドリル)D−1、D−2、D−5、D−6の表面に、ホーニングを施し、上記実施例1と同様のコーティング前処理を施した後、上記実施例1の(a1)と同一の条件で、上記工具基体(ドリル)の表面に、表7に示される目標膜厚の配向ダイヤモンド皮膜のみを蒸着形成することにより、比較ダイヤモンド被覆工具としての比較ダイヤモンド被覆ドリル(以下、比較ドリル)1、2、5、6をそれぞれ製造した。
また、さらに比較の目的で、上記の工具基体(ドリル)D−3、D−4、D−7、D−8の表面に上記実施例1と同様のコーティング前処理を施した状態で、上記実施例1の(b1)と同一の条件で、上記工具基体(ドリル)の表面に、表7に示される目標膜厚の無配向ダイヤモンド皮膜のみを蒸着形成することにより、比較ダイヤモンド被覆工具としての比較ダイヤモンド被覆ドリル(以下、比較ドリルという)3、4、7、8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明ドリル1〜8および比較ドリル1〜8のうち、
本発明ドリル1〜4および比較ドリル1〜4については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:8mmの、炭素繊維と熱硬化型エポキシ系樹脂が直交積層構造を持つ炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)の板材、
切削速度: 200 m/min.、
送り: 0.06 mm/rev、
貫通穴:(8 mm)、
エアーブロー、
の条件(切削条件E)での上記CFRPの乾式高速穴あけ切削加工試験、
本発明ドリル5〜8および比較ドリル5〜8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:15mmの、JIS・ADC12の板材
切削速度: 220 m/min.、
送り: 0.08 mm/rev、
貫通穴:(15 mm)、
エアーブロー、
の条件(切削条件F)での上記Al合金の乾式高速穴あけ切削加工試験、
をそれぞれ行い、いずれの乾式高速穴あけ切削加工試験でも、切屑つまりにより切削不能になるまでの穴あけ加工数を測定した。
この測定結果を表8にそれぞれ示した。
Figure 0005163879
Figure 0005163879
Figure 0005163879
次に、実施例3で使用したのと同じ工具基体(ドリル)D−1〜D−8の表面に実施例1と同様のコーティング前処理を施した状態で、上記実施例2の(a1)、(a2)、(b2)、(c2)と同一の条件で、工具基体(ドリル)D−1〜D−8の表面に、表9に示される積層数、目標層厚の配向ダイヤモンド、高Σ3ダイヤモンドおよび無配向ダイヤモンドからなるダイヤモンド皮膜を被覆して、本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明ダイヤモンド被覆ドリル(以下、本発明ドリルという)11〜18をそれぞれ製造した。
つぎに、本発明ドリル11〜18の高Σ3ダイヤモンド皮膜および前記比較ドリル1〜8の配向ダイヤモンド皮膜および無配向ダイヤモンドダイヤモンド皮膜について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な切断断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(110)面および(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、構成原子であるC原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(Nは面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフを作成した。
表9に、本発明ドリル11〜18の高Σ3ダイヤモンド皮膜について測定されたΣ3のΣN+1全体に占める分布割合を示す。なお、参考のため、表7に、比較ドリル1〜8の配向ダイヤモンド皮膜、無配向ダイヤモンドダイヤモンド皮膜について測定したΣ3のΣN+1全体に占める分布割合を示す。
本発明ドリル11〜18の高Σ3ダイヤモンド皮膜について、平均ダイヤモンド粒径を測定したところ、平均ダイヤモンド粒径は0.2〜1.5μmであって、本発明の高Σ3ダイヤモンド皮膜では、ダイヤモンド結晶粒の粗大化が充分抑制されていることがわかる。
つぎに、上記本発明ドリル11〜18のうち、
本発明ドリル11〜14について、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:8mmの、炭素繊維と熱硬化型エポキシ系樹脂が直交積層構造を持つ炭素繊維強化樹脂複合材(CFRP)の板材、
切削速度: 180 m/min.、
送り: 0.07 mm/rev、
貫通穴:(8 mm)、
の条件(切削条件G)での上記CFRPの乾式高速穴あけ切削加工試験、
本発明ドリル15〜18については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:15mmの、JIS・ADC12の板材
切削速度: 200 m/min.、
送り: 0.10 mm/rev、
貫通穴:(15 mm)、
の条件(切削条件H)での上記Al合金の乾式高速穴あけ切削加工試験、
をそれぞれ行い、いずれの乾式高速穴あけ切削加工試験でも、切屑つまりにより切削不能になるまでの穴あけ加工数を測定した。
この測定結果を表9にそれぞれ示した。
Figure 0005163879
表2〜9に示される結果から、本発明ダイヤモンド被覆工具としての本発明エンドミル1〜8、11〜18および本発明ドリル1〜8、11〜18は、配向ダイヤモンド皮膜あるいは高Σ3ダイヤモンド皮膜がすぐれた高硬度、高強度を備えるとともに、無配向ダイヤモンド皮膜を介して積層構造を構成していることによって、配向ダイヤモンドあるいは高Σ3ダイヤモンドダイヤモンドの結晶粒の粗大化が防止されるため、厚膜化が可能であり、その結果、金属材料よりも比強度、比剛性の高いCFRPあるいは溶着性の高いAl合金等の高速切削に際し、長期の使用に亘って、シャープな切刃が維持されるとともにバリ発生が少なく、すぐれた耐欠損性とすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、配向ダイヤモンド皮膜のみ、あるいは、無配向ダイヤモンド皮膜ダイヤモンド皮膜のみを被覆した比較エンドミル1〜8、また、比較ドリル1〜8においては、強度が劣りまた厚膜化ができないため、切刃の劣化、バリの発生等が生じるとともに、欠損の発生、耐摩耗性の劣化により工具寿命が短命なものであった。
上述のように、この発明のダイヤモンド被覆工具は、通常条件での切削加工は勿論のこと、金属材料よりも比強度、比剛性の高いCFRPあるいは溶着性の高いAl合金等の高速切削においても、切刃の劣化、バリの発生を防止し、長期の使用に亘って、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を発揮するものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
請求項1のダイヤモンド被覆工具の側断面概略図。 請求項2のダイヤモンド被覆工具の側断面概略図。 本発明エンドミル1の配向ダイヤモンド皮膜の(110)面についての傾斜角度数分布グラフ。 本発明エンドミル5の配向ダイヤモンド皮膜の(111)面についての傾斜角度数分布グラフ。 比較エンドミル6の無配向ダイヤモンド皮膜の(110)面についての傾斜角度数分布グラフ。 比較エンドミル8の無配向ダイヤモンド皮膜の(111)面についての傾斜角度数分布グラフ。 本発明エンドミル14の高Σ3ダイヤモンド皮膜の構成原子共有格子点分布グラフ。 比較エンドミル8の無配向ダイヤモンド皮膜の構成原子共有格子点分布グラフ。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体表面にダイヤモンド皮膜が被覆されたダイヤモンド被覆工具において、
    上記ダイヤモンド皮膜は、一層膜厚0.8〜5μmの配向ダイヤモンド皮膜と一層膜厚0.05〜0.5μmの無配向ダイヤモンド皮膜との少なくとも3層以上の積層構造からなり、さらに、前記配向ダイヤモンド皮膜は、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対し垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(110)面および(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表した場合、(110)面または(111)面の少なくともいずれかの面について、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すダイヤモンド皮膜であることを特徴とするダイヤモンド被覆工具。
  2. 請求項1記載のダイヤモンド被覆工具において、
    上記配向ダイヤモンド皮膜のうちの少なくとも一つの層は、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、基体表面に対して垂直な皮膜断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(110)面および(111)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点に炭素からなる構成原子が存在するダイヤモンド構造の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(Nはダイヤモンド構造の結晶構造上、2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が40%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示す高Σ3ダイヤモンド皮膜であることを特徴とする請求項1記載のダイヤモンド被覆工具。
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